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2016年加工編  法制審議会信託法部会   第12回会議 議事録
2016年01月24日

2016年加工編

                     法制審議会信託法部会

                     第12回会議 議事録

 

 

 

第1 日 時  平成17年3月25日(金)  自 午後1時00分

至 午後5時00分

 

第2 場 所   法務省第1会議室

 

第3 議 題

信託法の見直しに関する検討課題(9)について(続)

信託法の見直しに関する検討課題(10)について

 

第4 議 事   (次のとおり)

 

 

 

議    事

 

  •  時間になりましたので,法制審議会信託法部会を開催したいと思います。

(委員の異動紹介省略)

それでは,今日の審議ですが,またいつものように幾つかに区切って御審議をいただきたいと思います。その区切り方等につきましては,また○○幹事から説明をお願いします。

 

 

  •  それでは,本日の題目でございますが,以下のとおり四つに分けたいと思っております。

 

 

まず最初に,前回の積み残しでございますが,受託者の損失てん補責任とその消滅時効の問題につきまして,御審議をいただきたいと存じます。

 

続きまして,受託者の忠実義務と公平義務の問題について,それから,引き続きまして受託者の補償請求権と報酬請求権の問題につきまして御審議をいただきたいと存じます。

 

 

最後に,受益者の差止請求権・検査役選任請求権,法人役員の連帯責任の問題という四つの区分でやっていきたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

  •  では,お願いいたします。

 

 

 

  •  それでは,最初に前回の積み残しとなっております受託者の損失てん補責任等と,その消滅時効等につきまして,提案の内容を御説明申し上げます。

 

まず,第24の原状回復責任及び損失てん補責任に関する提案でございますが,これは基本的な考え方は前回提案から変更はございません。

 

 

以下では,前回提案に対する指摘事項を踏まえまして,事務局において更に検討した事項について,2点御説明いたします。

 

 

まず,前回提案におきましては,原状を回復するには著しく多額の費用を要するときは,原状回復責任を負わないこととしておりましたが,第4回会議におきまして,ここで問題とすべきは費用の絶対額の多寡ではなくて,原状回復によって増加する信託財産の価値と,原状回復に要する費用との相対的な多寡であるとの指摘がされたことを踏まえまして,その旨を明らかにいたしますとともに,請負人の担保責任に関します民法634条1項を見ますと,「仕事の目的物に瑕疵があるときは,注文者は,請負人に対し,相当の期間を定めて,その瑕疵の修補を請求することができる。ただし,瑕疵が重要でない場合において,その修補に過分な費用を要するときはこの限りでない」という規定がありますのも参考にいたしまして,「原状の回復を要する程度が大きくないときであって原状の回復をするには過分の費用を要するとき」との文言に改めました。

 

 

 

 

その結果,原状回復に要する費用が回復される価値に比して過分とは言えない場合はもちろん,たとえ原状回復に過分の費用を要するときであっても,信託目的を達成するためには,信託財産に生じた不具合を是正すべき要請が高いときには,なお原状回復が義務づけられることになるものでございます。

 

第2に,我が国の損害賠償体系は金銭賠償を原則としているにもかかわらず,信託においては原状回復を原則とすることは果たして妥当であるかという問題を解決する必要があることにつきましては,かつてより指摘してきたところでございます。

 

 

 

この点につきましては,第4回会議におきまして,信託の受託者は経済的な価値を扱っているのではなくて,信託財産そのものを,その態様まで含めて受託しているというのが基本的な在り方であることに関連しているのではないかとの指摘がございました。

 

 

すみれ

「受託者は信託財産の形も扱っているんだ。ただお金に換えればいいってもんでもないんだ。」

 

 

このような指摘を踏まえまして,信託において原状回復責任を原則として考えることの当否について検討したところが,資料の12ページに記載したところでございます。

 

 

 

すなわち,請負人の担保責任に関する規定に見られますように,契約の性質等によりましては,当事者の救済方法として,金銭賠償ではなくて,原状回復責任の方を基本にとらえることも可能であると解されるものでございます。

 

 

すみれ

「受託者は請負人とも少し似た面があるんだ。」

 

 

 

これを信託について見ますと,受託者は,信認義務の内容といたしまして,単に受託財産の経済的な価値を維持すべき義務を負うというにとどまらず,むしろ信託財産の態様を,信託目的の達成のために必要な形で管理すべき義務を負うものと解するべきであって,かかる義務に違反して信託財産に不具合を生じさせたときには,金銭賠償をすれば足りるというわけではなく,むしろ原則としては,本来の信託目的の達成が可能となるように,信託財産をもとの状態に戻すべき義務,すなわち原状回復義務を負うことになると解すればよいのではないかと考えるものでございます。平たく言うと,要するに金の問題ではないという考え方をするものでございます。

以上で第24についての御説明を終わります。

 

 

番人

「受託者の原状回復、損失填補は、基本的に登記で信託目録へ記録することではないね。内部的な約束だし。」

 

すみれ

「原状ってどこの時点に戻すんだろ。」

 

 

 

続きまして,第26の消滅時効等についての提案内容について簡単に御説明いたします。

 

これは受託者に対する原状回復請求権,損失てん補請求権,それから仮に認めることとした場合の利益吐き出し請求権の消滅時効期間,除斥期間及びその起算点に関し提案するものでございます。

 

前回の提案を踏まえた検討事項のうち,信託行為の定めをもって委託者にもこれらの請求権を付与することとした場合の起算点につきましては,受託者の信託違反行為のときといたしましたが,その点を除きまして,ほか2点につきまして,いずれも前回からの指摘にかんがみた検討結果の概要を説明したいと思います。

 

 

 

まず第1点といたしまして,損失てん補等請求権の消滅時効の起算点及び消滅時効の期間につきましては,資料の指摘事項3②,③と書いてございますが,米国統一信託法典との対比に基づく指摘の内容を踏まえまして,消滅時効の起算点については客観的な信託違反行為のときからではなくて,受益者が信託違反行為を知ったときから起算することとした方が受益者の保護に資すること,それから客観的な信託違反行為のときから進行する除斥期間の規律もあわせて導入することによりまして,受益者が信託違反行為の存在を認識しない限り,損失てん補等請求権が消滅時効にかからず,法的安定性を害するという弊害が,相当程度解消されるであろうこと,それから損失てん補等請求権の基本的性質を,債務不履行責任と位置づけることからすれば,債務不履行に基づく損害賠償請求権の場合と同様に,その消滅時効期間を10年間とすることが民法の規定と整合的であること,営業信託におきましては,消滅時効期間は商法522条により5年間に短縮されるので,営業信託の実務にも支障がないと思われること,以上のような諸事情にかんがみまして,受益者が有する損失てん補等請求権につきましては,その消滅時効は,受益者が信託違反行為があったことを知ったときから10年間,除斥期間につきましては信託違反行為のときから20年間とすることとしたものでございます。

 

 

 

 

 

次に,第2点といたしまして,第4回会議におきましては損失てん補等請求権の消滅時効の援用に当たりましても,受益債権の消滅時効の援用の場合と同様に,受益者に対する通知を必要とすべきかとの問題指摘がございました。

 

 

 

この点につきましては,資料15ページ以下の4に詳しく理由を記載しておりますが,結論として,受益債権の消滅時効と同じような通知というものは不要であると解するものでございます。

 

 

理由を申し上げますと,受益債権というのは信託における基本的な受益者の権利であります上に,原則として受益者による受領を要しますので,受益者に対して権利行使を促し,これを時効消滅させることについても慎重を期するという仕組みをとることが合理的であると考えられます。

 

 

これに対しまして,損失てん補等請求権は,受益者の本来的な権利というわけではなくて,受託者に対する責任を追及するものでごさいまして,しかも受益者の行為がなくても受託者のみで履行することが可能であると思われますので,受託者が自身のみでできるはずの履行をすることとはせず,受益者に通知して,自己に対する責任追及を促すという仕組みをとることに不自然な感があります上に,消滅時効期間の起算に当たりまして,受託者の信託違反行為の存在を知ったことを要件とする以上,消滅時効の援用の際に改めて権利の存在及び内容を通知して,権利行使の機会を再度確保してやるまでの慎重な手続を経る必要性はないと考えられるからでございます。

 

 

 

その結果,損失てん補等請求権の消滅時効及び除斥期間につきましては,時効の援用権者,各起算点及び期間につきまして信託法上に規定を設ける以外には,民法の規定が援用を含めまして適用されることとなると解するものでございます。

以上で終わります。

 

 

 

  •  それでは,前回の積み残しの第24,それから第26,これについて御議論いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。

大体,この辺はそれほど大きな対立点もなかったようには思いますが。

 

 

 

  •  1点だけ。検討をお願いしたい点なのですが。

 

 

損失てん補責任等を請求し得る者として,委託者については「信託行為に別段の定めがある場合に限る」というふうにされておりますが,委託者の方で恐らくこういった責任追及が必要な場合というのは,例えば親族関係の信託で,受益者が幼少の場合ですとか,あるいは受益者が未存在ですとか,不特定の場合ということになるのではないかと思われます。

 

 

 

こういった場合に,信託行為に定めがない場合に,損失てん補責任を追及し得ないというのは,ややちょっと不都合ではないかというふうに思われます。

 

 

したがいまして,この別段の定めをすればいいということになるのかもしれませんけれども,今後一般の民事信託の普及ということを考えた場合には,できるだけデフォルト・ルールとしてはそういった規定がない場合にも不都合がないようにしていただけると助かるかと思います。

 

 

したがいまして,先ほど申し上げた場合について,規定の工夫をしていただけないかというのが意見です。よろしくお願いいたします。

 

 

  •  普通は,そういうときには信託管理人というのを定めるということで,信託管理人が受益者の権利を守るのだと思いますけれども。まあ,そういう問題があるというのが一つ。

 

 

 

すみれ

「信託管理人かぁ。受益者代理人かな。」

 

 

 

それから,委託者にデフォルトのルールとして当然にそういう権利を与えるというのは,信託の構造からどうかという問題があって,そういう意味でここでは少し慎重な立場をとっているわけですが,これについても何か御意見があれば……。

あるいは,○○幹事の方から何か。

 

 

 

  •  それについては,○○委員が今おっしゃったような問題点がありつつ,御指摘につきましては受益者の不特定又は未存在の場合一般に通ずる問題,あるいは委託者の権利をどこまで認めるかという問題に関連するところと思いますので,関連のところで検討したいと思います。

 

 

  •  細かい話で,かつ提案について賛成とか反対とかいう話ではないのですが,実務的な観点から第26についてコメントを一つです。

 

 

除斥期間ですが,20年ということになっておりまして,これが長いか短いかというのは正しく判断の話だと思っておりますけれども,第23の帳簿保存義務というのが10年というふうになっておりますので,片や除斥期間20年ということになりますと,もちろん挙証責任の云々という話で,必ず受託者が帳簿を20年まで持たなければいけないかということはないわけですけれども,10年と20年の乖離というのをどう考えたらいいのだろうかと。保守的な受託者であれば,結果として20年帳簿を持たないといけないのではないかという懸念の声が一部あったということについて,御報告したいと思います。

 

 

 

  •  除斥期間の場合には,これは一律に20年で切ってしまうので,逆に言えば帳簿はなくても切れるというところに意味があるのかもしれませんね。

ほかに,御意見ございますか。

 

 

 

 

 

  •  読み方なのですけれども,「故意又は過失により法令又は信託行為の定めに違反する」というふうに記載されているのですけれども,法令違反に関して,過失とか故意を議論するというのはなかなか観念し難いのではないかと思うのですけれども,これはかかり方としては法令違反は別であって,信託契約違反について故意・過失ということなのでしょうかという質問と,これは信託契約に対する債務不履行責任ですから,立証責任という観点からしても,ここではそこまでの,分配はまだ議論する前の話なのかもしれませんけれども,損害賠償請求する立場,また損失てん補請求をする立場の受益者が,自ら受託者の信託行為違反があるにもかかわらず過失まで立証責任を負うというのはちょっと過重ではないのかと,そんなふうに感じるのですけれども,いかがでしょうか。

 

 

ポリー

「たしかにですね。受託者がちゃんとやりましたって証明するような書き方の方がいいんですかね。」

 

 

  •  ごもっともな御意見のような気がしますが。

法令については余り議論しなかったけれども。

 

 

  •  法令の中に,故意・過失を要件としている場合があるのではないかという観点から書いているところでございますが。

 

 

  •  通常の法令違反は,当然ある意味では過失ということ。法律の不知ということは,過失ということもできますので。

債務不履行責任との関連では,どうなのでしょうか。

 

 

 

  •  これは,債務不履行責任という性質だと基本的に位置づけておりますので,受託者側で故意・過失がないという,帰責事由がないという立証が必要になるのではないかと考えているところでございます。

 

 

 

  •  第26について,説明だけのことなのですけれども,2点ございまして,受益者に対する事前の通知を要件とする必要はないという結論についての説明は,受領が不必要だということと,それから本来の債務ではないのだという,この2点があったと思うのですが,他方で12ページでは,損失てん補責任の性質として,これは受託者の債務の内容として内在しているという点を強調しておられます。

 

 

 

そこが少し違うんじゃないかなという印象があるということです。それから,受領の有無で区別するというのも必ずしも決定的ではないのではないか。

 

 

むしろ,信託違反を知って,受益者が放置したという,その懈怠があるのだから忠実義務違反を問うこともなくなると,そんな説明がオーソドックスといいますか,伝統的な考え方かなという気がいたします。以上が1点。

 

 

 

それから,もう1点は,第26の3と4なのですけれども,前回から出ていた問題ですが,委託者,あるいは他の受託者については,起算点は消滅時効も除斥期間も同じになるわけですね。

 

 

 

これは,他の法制と比べてみると,少し変わっているのではないかと。ほかは,主観的要件を加味したものが時効の起算点になって,客観的なものが除斥期間の起算点になるというのが多いと思うのですけれども,これが一致していることについて,少し説明をしておいた方がいいんじゃないかなと思います。

以上,2点です。

 

 

 

  •  前者の御指摘の説明文につきましては,ちょっともう一度整合性を含めて検討したいと思います。

後者は,起算点がずれているのがおかしいのではないかという御指摘であれば,受益者については知ったときから,他の受託者とか委託者につきましては客観的な行為のときからということになっておりますが。

 

 

 

 

  •  そうではありませんで,委託者,それから他の受託者については,消滅時効の起算点も除斥期間の起算点も同じときから始まるというのが,ほかの法制との関係では少し特色があるのではないかということです。

 

 

 

 

  •  今のは,受益者以外の者の損失てん補請求権の消滅時効の起算点を,こういうふうに客観的に定めた結果としてそうなってしまったわけですね。

 

 

  •  そうです。

 

 

  •  多くの場合,確かに消滅時効の場合と除斥期間とで起算点が違うということはあると思いますけれども。

 

ただ,必ずしも一緒になっていてだめだというわけではなくて,ほかに何か御提案はございますか。消滅時効の方の起算点を変えるわけですね。

 

 

  •  消滅時効について,主観的要件を入れるということもあり得るかなとは思うのですけれども,そうした場合には,今度は受益者に比べて時効期間を少し短くするというような調整もまた出てくるかもしれませんで,かえって複雑になるから,これはこれで仕方がないかなという気もするのですが。

 

 

 

  •  こちらとしては,受益者については特に保護の要請が強いので「知ったときから」としましたが,ほかのものについてはそこまでの必要性がないでしょうし,他の受託者であれば,より信託違反行為の存在を認識してほしいという要請が強いからという気がいたしまして,客観的な時点からでいいのではないかと。むしろ,受益者についてだけ特に遅らせているというのが基本的な発想でございます。

 

 

 

 

  •  ちょっと私,よく分からないのですが,第26に関して14ページの説明で,損失てん補等請求権というのは,原状回復請求権及び損失てん補請求権並びに利益吐き出し請求権というものを含んだ言葉として使っているということなのですが,この利益吐き出し請求権のときの消滅時効の在り方というのが,ちょっと私,細かいところまで今頭の中で詰まっていないのですが,分かりにくいところがあるような気がするのです。

 

 

 

つまり,受託者がある忠実違反行為によって利益を上げたというときに,例えば受益者側で,それは信託行為としてなされているというふうに主張すれば,得られた利益というのは信託財産そのものであって,そこには時効なんて観念する余地はないのですよね。そこにある財産が信託財産になるわけですから。

 

 

 

 

これに対して,これは忠実義務違反である,おまえはそれで利益を上げて,そこに財産がある,だからそれを吐き出せという請求の形をとりますと,これで消滅時効にかかるという形になるわけですが,この利益吐き出し請求権というものをどういうふうに位置づけるのか,追認をする,一部追認みたいな形で,物権的な救済を受益者に与えると,つまり自分のためにやっていたのだということの主張を許さないというタイプの,そういうふうな性格を持った救済方法として位置づけていくのか,それともいずれにせよ自分のためにやった限りにおいては,そこに信託財産にするという行為が必要であって,そこにおいては消滅時効というものは観念できるというべきなのか。

 

 

 

私は,前者であるということも十分にあり得ると。つまり,受託者の側で,これは自分のためにやったのだということを言うことは許さないということは十分にあり得ると思いますし,また追認ができないかというふうにいいますと,できるような気もするわけです。

 

 

 

そうしますと,消滅時効で利益吐き出し請求権も当然にこれと同じ,原状回復請求権や損失てん補請求権と同じ規律にのるのだよというふうに説明するのは,もうちょっと利益吐き出し請求権の性格を詰めてからにした方がいいのではないかという気がいたします。

 

 

 

 

 

  •  ただ,今の問題は恐らく時効についてだけではなくて,もっと一般的に利益吐き出し請求権とそれから信託違反行為を追認してというのでしょうか,それは信託財産であるということを主張する,その二つの権利の関係,そういう問題にどうもかかわってきそうですね。時効だけでおさまるような問題ではないような気がしますが,どうですか。

 

 

 

 

 

  •  御指摘のとおり,とりあえず債務不履行というのですか,受託者の忠実義務違反の類型だということで大ざっぱにひっくるめてしまっておりまして,御指摘のとおり利益吐き出し請求権については忠実義務のところでいろいろとまた,そもそもそういう責任を認めるべきかどうか,どういう性格かというところは詳細な御議論いただく必要がございますので,その御議論を踏まえた上で,改めて同じ消滅時効の規定にのせることができるかどうか,再検討いたしたいと考えているところでございます。

 

 

 

  •  考え方をちょっと教えてほしいのですけれども。

 

 

この原状回復の方は,受託者のもとに戻るということですね。損失てん補は,信託財産に対する損失てん補というと,損害賠償請求--義務があるのも受託者ですけれども,それが請求するのも受託者ということで,信託財産に帰属するということなのでしょうか。

 

 

何となく考え方として,受益者という理解もできるのではないかと思うのですけれども。

 

 

番人

「最後には受益者に帰属すると思うけど、一回信託財産を通すってことかな。」

 

 

もう一つ,似たような大きい議論として,違反をした受託者のもとに戻るという--ほかのところでも議論されているのかもしれませんけれども,違反した受託者が自らに損害を賠償するというところの考え方とか,何か違反者に対してそういうことでよろしいのかなと思うわけですけれども,その辺の考え方をちょっとお知らせいただければと思うのですが。

 

 

 

 

  •  そこは,確かに受託者の所有名義に係るものが信託財産でございますので,御懸念はあるかとは思うのですが,一般的な議論といたしましては,原状回復にせよ損失てん補にせよ,信託財産に戻すと。

 

 

 

ですから,場合によってどういう行為が必要かと。要するに受託者の固有財産から信託財産に戻すというのは一種の形成的なというのですか,外部的な行為がどこまで必要かと,そういう問題はあるとは思うのですが,いずれにしても戻す対象は信託財産というところは変わりがないと考えております。

 

 

 

  •  そうすると,受益者はこの議論とはまた別に,自ら損害があれば自らの損害を一般法理として請求できるということになるのでしょうか。

 

 

  •  415条の損害賠償責任は,できると考えております。

 

 

  •  受益者自身が自分に損害賠償せよという,そういう権利のことをお考えですか。

 

 

  •  場合によっては,ですね。

 

 

  •  そこは,本当はなかなか難しい問題が信託についてはあると思いますけれども,一般論としては,この信託の枠組の外の問題として,一般法理であり得るかもしれない。

 

 

  •  原則はどちらに。

 

 

 

  •  原則は,ここに書いてある規定のルールに従うわけですけれども。

ちょっと別な話に関係するかもしれませんが,受益者自身が債務不履行責任とか,場合によっては自分の受益権を侵害されたというので不法行為による損害賠償とか,いろいろな権利を行使する可能性があるのですが,それがどこまで認められるかというのは,なかなか難しいですね。

 

 

信託財産自体を専属的にといいますか,専ら管理しているのは受託者で,受益者の損害というのは,基本的には受託者が--受託者自身の義務違反がある場合はちょっとまた別ですけれども,一般論で申し上げますと,受託者がいろいろ権利を行使して信託財産に戻すことによって受益者の損害というのは回復されるというふうに考えると,受益者自身がどこまで請求できるかというのは,結構難しい問題があるような気がしますね。

 

 

ただ,今,○○委員が言われたのは,受託者の義務違反の場合を前提に考えられている。

 

 

 

  •  そうですね,ですから受託者に戻すのが原則だと考えます。ただ,違反した受託者に戻すということは,なかなか……。そうすると,受益者という考え方も場合によってはあり得るのかなと思った次第です。

 

 

 

  •  どうしても受託者が信用できないということであれば,受託者の解任とか,そちらで対処するのかなと。とりあえず財産は,信託財産に戻すということで考えております。

 

 

 

 

 

  •  よろしいでしょうか。

 

 

 

  •  ○○委員が最初に発言されたことに関連するのですけれども,損失てん補責任の「故意又は過失」というのが原状回復責任の要件に加えられているというところについて,ちょっと一言発言させてください。

 

 

これが,受託者が負う責任の一般的な規定になると思うのですが,受託者が負う義務には様々なものがあって,例えば今日これから予定されている忠実義務とか,あるいはその中に入る利得,取得行為の禁止とか競合行為の禁止とか,そういうものが入ってきます。

 

 

こういうものに,果たして「故意又は過失」という要件を追加的に必要とするのかどうかというところは,答えを持っているわけではないのですけれども,少し細かな検討を必要とするのではないかと思います。

 

 

 

それから,ばかな話になってしまうかもしれないので,そうであればすぐに撤回しますけれども,善管注意義務というのは重要な問題としてあって,善管注意義務というのは注意のレベルの問題だと言っておりますので,そういうときに法令でデフォルトのルールが定められていて,そして信託行為でもそれを動かすことは可能だとしているのだろうと思うのですが,果たしてそういう問題を,この第24の1のここに書かれている方向で要件を拾い出していったときに,どういうふうに当てはめていくのか,面倒な問題があるのではないかと思います。

 

 

 

 

それは,やはり一つは「故意又は過失」というのが,趣旨は分からないではないのですけれども,原状回復責任を負う場合の一般的な要件として書き込まれたというところに起因するのではないかと思います。

 

 

したがって,例えば受託者が運用をするようなタイプの信託で,十分な調査とか情報収集とかをせずに運用した結果,損害が生じたので,そのときにではどういうふうに考えるのか,「故意又は過失」が要るだろうというような議論になるということはそのとおりだと思うのですが,何かうまく「故意又は過失」というのが必要となる局面というのは必ずしも全部に及んでいなくて,その一部なのではないかなという感じがいたしますので,少しここはなお検討を要するというふうに考えていただけると有り難いと思います。私も,引き続き考えてみます。

 

 

 

 

 

  •  忠実義務の方はまた後で議論になると思いますけれども,無過失責任と見るかどうかという問題がありますので,○○幹事がおっしゃるとおりだと思うのです。

 

 

善管注意義務の方に関して,これについても「故意又は過失」が及ぶ場合と及ばない場合があるという,そういう御趣旨ですか。

 

 

 

  •  信託事務を遂行する義務というのが善管注意義務のところの最初にありまして,それには「故意又は過失」というのをかけていくことになるのだろうと思うのですが,ただその次の項に,善管注意義務の注意のレベルについて定めているので,それが過失のところに当てはまって,そのレベルをデフォルト・ルールとして定めているものとして位置づけるのか,それとも法令の定めというところに当たるのか,あるいはそれを変更している信託行為の定めがあった場合に,そこをどういうふうに「故意又は過失」によって法令又は信託行為の定めに違反した場合というのをどういうふうに読んでいくのかというのは,やや多くの要件が競合して入り込み過ぎているのではないかなという感じがいたします。

 

 

 

 

基本的にそういうのが無過失責任になるだろうということで言っているわけではないのですけれども,幾つかの競合し得る要件が,何か全部書いておけばどれかに当たるだろうというような感じをちょっと受けるということでございます。

 

 

 

  •  善管注意義務というもの自体をどういうふうに位置づけるかということで,たしかこの場か,あるいはどこか別の場所だったかで議論いたしましたが,それとも少し関係する問題ですね。

一般論としてはこれでよさそうだけれどもという……。

 

 

 

 

  •  一般論として,説明の最初のところの「故意又は過失」が必要となるというのは,忠実義務のような問題を除けば,一般論としてはそれはそれでいいのだろうと思いますが,しかしそれを表現しているときに,こういう形でいいのかどうかというのは,ちょっとまだ整理し切れていないのではないかなと思います。

 

 

 

  •  では,それはもうちょっと検討させていただきます。

 

 

  •  私も,第24の損失てん補責任についてですが,結論はよろしいのですが,整理だけをお願いしたいということです。

 

 

この原状回復責任の免責要件として,今回,先ほど一つはありましたけれども,二つ挙げておられて,「原状の回復が著しく困難であるとき」というのを一つ明確に挙げて,もう一つが「原状の回復を要する程度が大きくないときであって,原状の回復をするには過分の費用を要するとき」と。

 

 

後者については参考にされたのが請負の規定でして,これは正におっしゃるとおりでこれで結構かとは思うのですけれども,請負に関しましては,明文で規定されていますのは正に瑕疵が重大ではなくて,過分の費用を要するときのみなんですね。

 

 

 

それで,それだけかといいますと,実はそうではなくて,修補請求に対して修補義務の履行が不能であると,履行不能であるといえるときには,やはり修補義務の履行は免れるということになる,解釈上間違いなくそうなっていると思うのです。

 

 

その際の履行不能というのが,物理的に不可能だというだけではなくて,もう少し広くとらえられているというのが民法の解釈論だろうと思います。

 

 

 

としますと,今回挙げられました「原状の回復が著しく困難であるとき」という第1のものが,これは履行不能の御趣旨で挙げておられるのかそうでないのかというのは,ちょっと整理をした上でお考えいただいた方がいいのかなという気がいたします。それだけでございます。

 

 

 

これでよいのだろうと思うのですけれども,書く必要があるのかどうか,あるとしてどう書くのかというのをちょっとお考えいただきたい。民法にもかかわってくるところですので,ということです。

 

 

 

  •  「原状の回復が著しく困難であるとき」と書いたのは,正に御指摘のとおりの趣旨でございます。

 

 

ちょっと幅広く,履行不能をとらえているということでございますが,それとあわせて「特別の事情」ということを重複して書く必要があるかどうか,検討したいと思います。

 

 

  •  それでは,第24,それから第26についてまだ御議論があるかもしれませんけれども,一通り御議論いただいたということで次に移りたいと思います。

 

 

 

  •  それでは,第19の受託者の忠実義務と利益吐き出し責任のところについて御説明いたしますので,どうぞよろしくお願いいたします。ちょっと長くなりますが,御容赦ください。

 

 

 

 

 

今回の資料の最初のところからになりますが,全体的な枠組をまず御説明しておきますと,実は前回の提案では,大まかに申し上げまして受託者の忠実義務に関する総則的な規定,利益相反行為の禁止規定,利益取得行為の禁止規定と分類しておりまして,更に利益相反行為については受託者が複数の信託を受託していたか否かで分け,権限行使上の競合行為,あるいは信託の機会の奪取行為という場面につきましては,利益相反行為に当たる場合と利益取得行為に当たる場合がある,こういうようなデマケーションをしておりました。

 

 

 

これに対しまして,今回の提案でございますが,まず総則的規定がございまして,それから利益相反行為の禁止規定,利益取得行為の禁止規定がございまして,そのほかに競合行為の禁止規定,これは3ということになりますが,これを受託者が複数の信託を受託している場合か否かを問わず,独立の禁止類型と挙げております。

 

 

 

さらに,利益相反行為,2になりますが,これにつきましては,受託者が複数の信託を受託しているか否かという切り口ではなくて,信託外の第三者を相手にする行為かそうではないのか,内部的なものが2の(1),第三者を相手にするのが2の(2)と,このような切り口で分けているものでございます。

 

 

 

なお,今回の提案におきまして,競合行為の禁止については信託外の第三者を相手にする行為でありまして,かつ,受益者の利益を犠牲にする目的がございまして,更に受益者との利益相反関係があるということを要件にしている点におきましては,信託外の第三者を相手方とする利益相反行為に関する2の場合に包摂されると考えることも可能かと思います。

 

 

しかし,それにもかかわらず,独立にこの競合行為の禁止という類型を挙げましたのは,まず第1点として,競合行為というのは比較的ありがちな顕著な行為類型であって,取り上げるに値するということ,それに加えまして,競合行為は第一次的には信託財産にではなくて受託者の固有財産への効果帰属が問題となる点におきまして,第一次的には信託財産への効果帰属が問題となる利益相反行為とは異なる特色を有すると思われること,あと付随的にではございますが,例えば商法においても利益相反行為の禁止と競業行為の禁止とは別々に規定していること,このような点などを考慮して,独立に競合行為の禁止という類型を取り上げたものでございます。

 

 

 

 

 

 

以上のようなデマケーションを前提といたしまして,まず忠実義務違反に関する各類型について,前回の提案に対する指摘等を踏まえて更に検討した点について,順次簡単に言及してまいります。

 

 

まず,1の総則的規定でございますが,これは信託の利用の拡大に伴い,2ないし4の具体的な規定ではとらえ切れない忠実義務違反行為があり得るとの指摘を踏まえまして,訓示規定との位置づけを改め,効力規定と考えるものでございます。

 

 

 

効力規定と解することによりまして,資料13ページの(注1)というところに書いてございますけれども,受益者の利益を害しないものの違法性の高い行為,例えば信託財産の負担により取得した非公知の情報による一定の利得行為,このようなものを禁止の対象とできるメリットがあるのではないか。

 

 

その反面,2や3の場合と同様に,禁止の例外を明らかにする必要が出てくるのではないかといった問題が生じてくると思われます。

 

 

 

次に,2の利益相反行為の禁止に関しましては,7ページから8ページの<説明>の2の(1)ないし(3)に記載したとおりの検討を加えております。

 

 

まず,7ページの(1)記載の点でございますが,いわゆる信託財産・信託財産間の取引につきましては,その行為の実体が民法の双方代理に類似することにかんがみまして,受託者の主観的意図を要件に含めていた前回の提案を改めまして,自己取引の場合と同様に,受託者の主観的意図を問うことなく,客観的に判断して利益相反状態を生ずるのであれば,当該行為は,原則として無効となる,追認されなければ無効となるものと整理することといたしました。

 

なお,前回会議では,受託者側からも無効を確定する手段の必要性が指摘されまして,要否を含め検討することとしておりましたが,この点につきましては資料14ページの(注4)というところに記載させていただきました理由から,このような受託者側から無効を確定する手続規定は設けなくてもよい,追認するかどうかということを請求すればよいということですが,そのように結論いたしております。

 

 

 

 

次に,7ページの(2)記載の点でございますが,利益相反行為の効果のうち,先ほど説明した点に関係いたしますが,行為の有効性につきましては,受託者の主観的意図を問わず,客観的に判断して決せられるべきものと考えております。

 

 

 

他方,受託者の損失てん補責任等の問題につきましては,先ほど御説明しましたように一般の場合は過失責任と整理しておりますが,特に忠実義務違反の場合に限っては,ここに書いてございますように,無過失責任とする考え方,過失責任とする考え方,第三として自己のために利益相反行為をした場合は悪性が強いので無過失責任,第三者のために利益相反行為をした場合には過失責任といういわば折衷的な考え方のいずれが妥当か,あるいはそれは責任の内容,すなわち損失てん補,原状回復か利益吐き出しかということによって異なるべきかということを問うているものでございます。

 

 

すみれ

「複雑だね。」

 

 

最後に,利益相反行為の禁止につきまして,受益者の利益を害しないことが明らかであるときとの例外要件を設けることに伴いまして,受益者に対する透明性を確保する観点から,この場合,受託者は受益者に対し,原則としてその行為について重要な事実を通知すべき義務を課すことといたしました。

 

 

この通知と,利益相反行為の先後関係につきましては,14ページの(注6)に記載してございますが,両様あり得ると,先に通知してから行為をすることもあるでしょうし,行為をしてから通知するということもあると考えております。

 

 

 

なお,信託行為の定め又は受益者の承諾がある場合ですとか,市場を介している場合など,受託者において利益相反取引がされたことを認識し得ないやむを得ない事由がある場合,このような場合には,このような通知義務を例外的に負わないこととしてよいのではないかと考えるものでございます。

 

 

すみれ

「受託者も分からなかったら通知できないしね。」

 

 

なお,付随的に,15ページの(注8)でございますけれども,これは受託者と受益者間の受益権の取引に関しまして,判例・学説上伝統的には忠実義務の問題ではなくて,せいぜい公序良俗の問題として無効になる場合があるにすぎないと解されてきておりましたが,これに対して前回会議におきましては,一定の場合,例えば信託財産の中に将来非常に価値のあるものが含まれているが,受益者がそれを知らないという状況のときに,受託者は受益権を安く買い取ってしまうというような行為は,忠実義務違反行為,利益相反行為の問題と考える余地があるのではないかという指摘がございましたので,この点についてこのような考え方をとるべきか,御意見を伺いたいというものでございます。

 

 

次に,「3 競合行為の禁止」でございますが,これは8ページから9ページの<説明>3の(1)及び(2)に記載とおりの検討を加えております。

 

まず(1)ですが,これは競合行為の位置づけに関するものでごさいまして,今回の提案においては独立の禁止類型として挙げることとしたこと,先ほど説明申し上げたとおりでございます。

 

 

次に,(2)でございますが,禁止される競合行為に当たるための要件として,「受益者の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図る目的」を加えていることに関しまして,むしろ米国統一信託法典のように,当該競合行為が信託に属すると見るのが適切な機会を利用したものか否かという客観的基準によるべきではないかとの指摘を踏まえて検討したものでございます。

 

結論といたしましては,客観的基準のみによるときは,禁止されるべき競合行為の範ちゅうをしかるべく限定することができず,過剰な規制に陥るのではないかとの観点から,主観的要件をも加えることが相当と判断するものでございますが,御意見を伺えればと考えております。

 

 

 

なお,付言申し上げますと,これも前回指摘があったことでございますが,受益者の利益と第三者の利益とが相反する場合につきましては,利益相反行為の禁止であれ競合行為の禁止であれ,受益者の利益を犠牲にして第三者の利益を図る目的があることを忠実義務違反の要件としております。

 

 

 

しかし,仮に,この目的要件を満たさないために忠実義務違反に問われない場合におきましても,別途,善管注意義務違反に問われ得る場合があることがあることを,13ページ(注3)のとおり確認するものでございます。

 

 

 

なお,9ページの末尾には「(注4)」と書いてありますが,「(注3)」の誤植でございますので,御訂正をいただければと存じます。忠実義務違反と善管注意義務違反はあくまで別個に考えられるということを確認させていただいたものでございます。

 

次に,「4 利益取得行為の禁止」に関しましては,10ページの<説明>4に記載したとおりの検討を加えております。

 

 

 

まず,前回の提案でございますが,3類型設けまして,信託財産を利用して利益を取得する行為,例えば預かった土地の上に建物を建ててもうけた,信託財産であるダイヤを展示してもうけたと,こういう場合でございます。

 

 

 

それから,信託事務の処理に当たって利益を取得する行為,リベートなどを受け取ったというようなことでございます。

 

 

それから,信託財産に係る情報を利用して利益を取得する行為,この三つを禁止の対象の候補として挙げておりました。

 

 

このうち,特に③番目の情報利用行為につきましては,禁止対象となるべき行為,すなわち情報の内容を適切に限定しないときは,規制の内容が漠然となって受託者に困難を強い,翻って信託事務処理にも過度の萎縮効果を与えかねないこと,しかるに情報というのは抽象的なものであって,そもそも定義した上で限定を加えるといったことも困難であるという指摘がされました。

 

 

 

 

このような指摘にかんがみまして,今回の提案では,利益取得行為の禁止の対象からは情報利用行為を外すことといたしまして,5ページに記載のとおり,これを外した甲,乙,丙の3案を提示するものでございます。

 

 

ただし,情報利用行為につきましては,それを一般的に利益取得行為の禁止の対象とすることは外しますが,信託に係るいかなる情報の利用行為をも忠実義務に抵触しないとまで考えているわけではなくて,特に違法性の強い信託情報の利用行為につきましては,別途忠実義務の一般原則に関する1の規律を効力規定と解することによってつかまえることができるのではないかと考えることは,先ほど申し上げたところでございます。

 

 

 

 

 

甲案ないし丙案のいずれが妥当か,あるいは情報利用行為についての今申し上げたような考え方が妥当かなどにつきまして,是非とも御意見をいただきたいと思っております。

 

 

 

 

 

次に,前回の提案では,禁止の原則規定の方では利得の性質について特に限定を加えず,例外規定の方で正当な理由がある場合を除外しておりました。これに対しまして,今回の提案では,禁止の原則規定の方で不当な利益であることを積極要件とすることに改めたものでございます。

 

 

なお,前回会議では,「正当な理由」という要件の内容をより明確化すべきとの指摘がありまして,このような指摘は不当な利益であることを要件とした場合にも同様に当てはまると解されますが,今後不当性の要件の明確化につきましては,例示を挙げることなどによって努めていきたいと考えているところでございます。

 

 

 

続きまして,要件の話はいったん終わりまして,次に忠実義務違反行為の効果に関する提案について,御説明を続けさせていただきます。効果につきましては,11ページからということになります。

 

 

まず,利益吐き出し責任の根拠に関する分析を除きますと,基本的な考え方につきましては前回提案から変更はなく,11ページの<説明>5に記載したとおりでございます。

 

 

なお,利益相反取引の場合における第三者との間の取引の効果が信託財産に帰属するものとするか否か,換言しますと,無効な自己取引を追認するか否かということは,受益者の権利でございますし,信託違反行為の取消権も前に申し上げましたが受益者のみの権利であると考えておりますところ,競合行為ないし利益取得行為の場合におけるその取引の効果を固有財産から信託財産に引っ張ってくる,帰属させるというような行為,このような効果を生じさせる権利につきましても,当該行為の効果帰属の所在が信託財産か固有財産かを決定する基本的な権限として,受益者のみの権利であると考えているものでごさいますが,では受益者が複数いる信託において,この権利の行使が単独でできる権利であるのか否か,あるいは受益者間において選択が異なる場合にはどちらが優先するか等の問題につきましては,ここに限らず,例えば損失てん補と原状回復など,種々の場面で問題になりますので,別途受益者複数の問題のところなどで検討したいと考えているところでございます。

 

 

 

 

 

最後に,利益吐き出し責任について取り上げているところにつきまして,若干御説明を申し上げたいと思います。

 

 

 

まず,受託者にこの責任を認めるか否かというのは,結局忠実義務違反の予防による受益者の保護の要請をどこまで認めるかにあるところ,その規律の在り方としては,資料6ページの5において,あくまでも実損による損失てん補を原則としながら,忠実義務違反による利益の額を損失の額と推定することによって損失の金額の立証を容易ならしめる規律を設けるにとどめるべきとする甲案と,それから正面から利益吐き出し責任を認めまして,忠実義務違反による実損を超える額の利益を受託者が得ている場合には,その利益の返還までも受託者に義務づけるべきとする乙案とを提案していることは前回と同様でございます。

 

 

 

なお,この乙案におきましては,利益吐き出し請求の請求権者には信託行為に別段の定めがある場合の委託者を含むということが書き漏れておりますので,追加して訂正申し上げます。

 

 

ところで,前回の提案におきましては,利益吐き出し責任を正面から認める今回の乙案を採用するとした場合の法的根拠についての検討はとりあえず置きまして,このような乙案をとることによって受益者の保護が甲案に比して具体的にはどのように強化されることとなるかという実際的な観点から3点ほど考えまして,一つは善管注意義務のもとでの損失てん補責任の規定によっても損失としては把握し切れない受託者の利得部分についても,その吐き出しを請求できることとすべきか,それから実際に受託者の利益に相当する金額の損害は信託財産に生じていないという反証を受託者に認めないこととすべきか,更には利益取得行為の禁止も認めるのであれば,その実効性を確保するためには,受益者による損失がないとしても受託者の利益を吐き出させることとすることが不可欠ではないかなどについて検討する必要性があるとの指摘をさせていただきました。

 

 

 

 

これに対しまして,今回の提案では,このような実際的な観点からの検討に加えまして,利益吐き出し責任の法的な観点からの検討の視点を明らかにしたつもりでございます。

 

 

そして,資料12ページ以下の<説明>において示しました事務局の考え方を端的に申し上げますと,利益吐き出し責任の法的根拠といたしましては,不当利得の問題としてとらえる考え方,あるいは準事務管理の問題としてとらえる考え方などがございますが,受託者と受益者間には信託という一定の法律上の原因が存在することにかんがみますと,法律上の原因が存在しないことを前提とする不当利得や事務管理の問題としてとらえることが必ずしも適切な結論を導かないのではないか,むしろより端的に,利益吐き出し責任は受託者の債務の内容であるとして,すなわち信託における受託者の債務は,信託行為に定められた範囲を超えて信託財産を使ったり,受託者としての地位を利用したりすることによって,仮に信託財産に損失が生じていなくても利益を得てはならず,仮に受託者に利益が生じた場合には,それを信託財産に帰属させなければならないということを債務の内容として含むものと構成して,解決すべきではないかと考えているものでございます。

 

 

 

その上で,利益吐き出し責任を正面から認めるべきかにつきましては,今回の資料に記載しましたとおり,信託における受託者に,かかる重い債務,すなわち利益取得行為を独立の違反類型として規律した上で,利益相反でとらえ切れない受託者の利益を吐き出すべき義務,あるいは利益取得行為の類型を独立して規律しないこととしても,なお損失てん補プラス善管注意義務違反ではとらえ切れない更なる受託者の利得を吐き出すべき義務,このような重い義務を課し得るだけの十分な立法的根拠があると言えるかという理論的な側面,それから前回の資料に記載したところでございますが,受託者にかかる重い債務を課すこととしてまでも忠実義務違反を予防して,受益者の利益を保護すべきか,それとも吐き出すべき利益の程度いかんによっては,受託者に過度の萎縮効果を招き,信託財産にとってもかえってマイナスではないかなどの実際的側面,このような両面からの検討が必要となると思われます。

 

 

 

 

この点につきましては,これまで必ずしも十分な御議論のなかった部分ではないかと認識しているところでございますので,本日は是非とも詳細な御審議をいただければと願うところでございます。

 

 

 

最後に,第20の受託者の公平義務でございますが,公平義務につきましては,忠実義務の類型と考えておりますのであわせて説明させていただきます。

 

 

前回も申し上げましたとおり,公平義務の位置づけにつきましては,一人の受託者が複数の信託を受託している場合の複数信託間の利益相反が忠実義務の問題,一つの信託の中に複数の受益者がいる場合の複数受益者間の利益相反が公平義務の問題であると整理しておりますところ,前回会議で指摘されましたとおり,一つの信託の中に二人の受益者なのか,二つの別々の信託なのかということは容易に互換性のある相互に代替的な法律構成の違いにすぎないと考えられますことから,忠実義務と公平義務とは基本的に同じルールに服するのが適当ではないかとの観点のもとに,改めて整理を試みたものでございます。

 

 

 

このような観点から,まず第1に公平義務の例外要件といたしましては,基本的に忠実義務の例外要件と同じ規律を設定することといたしまして,受託者がその行為を行うことについて,正当な理由があるときと判断した場合には,その行為について重要な事実を事前又は事後に,不利益を受けるおそれのある受益者に通知しなければならないといたしております。

 

 

 

それから,公平義務に違反した場合の効果に関するアステリスク3におきましては,忠実義務に関する規律と同様に,固有財産と信託財産間で行ういわゆる自己取引の場合,それからいわゆる信・信間取引の場合を今回は追加いたしますとともに,3番目といたしまして受託者が受益者を含む第三者との間で行う行為については,受益者か受益者以外の第三者かで区別することなく,同様に取引の安全を図る必要があるものと考え,原則として有効との規律をすることを提案しております。

 

 

 

 

 

 

なお,(3)では,受託者の主観的要件を問わず,客観的な見地から公平義務違反を認定した上で,正当な理由があるときは例外要件として外すとの形式をとっておりますが,仮に忠実義務に関する規律と平仄を合わせるのであれば,ここは受託者の主観的目的,すなわち特定の受益者の利益を害して第三者の利益を図る目的というようなものを要件とした上で,正当な理由をもって例外要件とはしないという規律とすることも考えられるのではないかと思うところでございます。

 

 

最後に,例外要件の一つたる「正当な理由があるとき」とは具体的にどのような場合であるのかとの指摘が前回ございました。

 

 

この点は,抽象的に申し上げますと公平義務違反の有無はあくまで形式的に判断するとの立場に基づき,形式的には公平義務に違反するけれども,他の諸事情を考慮すれば実質的には違反しないという場合を救済することを意図したものでございます。

 

 

 

この中には,例えば20ページの(注)の①のとおり,いわば一つの行為を横断的に見て実質的に公平に反しないと考える場合と,それから②のように,いわば複数の行為を縦断的に見て実質的には公平に反しない場合とがあると考えるものでございます。

以上で説明を終わらせていただきます。

 

 

 

  •  この忠実義務のところは非常に重要な問題ですけれども,なかなか全体像をつかまえることも非常に難しいところですので,是非御意見をいただきたいと思いますけれども,私自身も何度か読んでいて時々混乱してくることがあるのですけれども,大きな分け方として,第1の総則的な規定がありますね。

 

 

 

あくまで大きな分け方として。次は利益相反と言われるもので,そこでの利益相反は従来と違って非常にいろいろな効用が入ってきますけれども,基本的には受益者の利益が何らかの形で侵害されるというタイプをすべて利益相反として入れているということですね。

 

 

  •  はい。

 

 

  •  そして,競合行為というのは,利益相反の中の一つの特殊な場合ということですね。

 

 

  •  そういうことです。

 

 

 

  •  そして最後,利益取得というのは,今度は受益者には損害がなくて,専ら受託者が何らかの形で利益を取得する,そういう理解でよろしいですか。

 

 

  •  はい,そのような分類で結構でございます。

 

 

  •  ということで,私もそれなりに大きな枠組のところは……。だんだんテーマが大きくなってきたものですから。

 

 

  •  重要なところですので,ちょっと長くなりますが。

 

まず,全体の大きな問題が一つと,あと個別の問題3点,申し上げたいと思います。

 

 

まず,全体の大きな問題のところですけれども,前回の御提案の方と比較しまして,先ほど○○幹事の方からも御説明がありましたけれども,枠組が変わったということで,この点については非常に分かりやすくなったかなというふうな感じを持っております。

 

 

その分かりやすくなった中で,全体を通して見ますと,忠実義務違反の類型として4番のところの利益取得行為というものが果たして必要なのかどうかというような感じを持っております。

 

 

 

例えば,例の13というのがありますけれども,これについては今検討されている信託法の中では,権限外行為についても信託財産に帰属するのですよということになっておりますので,受益者が受けた収益というのはそもそも信託財産に帰属するというような考え方もあるのではないかと,そうするとそれを受託者がとってしまっているということですので,基本的に信託財産に損失が生じているということも考えられるのではないかと。

 

 

 

一方,例の14につきましても,リベートを受け取っているということですけれども,リベートの相当額だけ不動産の売却金額がふえたと,本来ならふえたのが減ってしまったというようなことも言えますので,これについても信託財産に損失が発生しているという考え方ができるのではないかと。

 

 

ということを考えますと,4の利益取得行為という類型については,基本的には2の利益相反行為に,場合によっては3の競合行為の類型にほとんど入ってしまうのではないかなというふうに考えられます。

 

 

 

 

仮に,4の利益取得行為について,今申し上げたような形で整理が可能であるとすれば,利益相反行為又は競合行為についての違反の効果として,物権的な救済であるとか債権的な救済というのが用意されて可能になっておりますので,実質的に考えるとこれは利益吐き出しになっているのではないかというふうに考えられます。

 

 

そうしますと,あえて5のところの利益吐き出しというような規定というのは要らないのではないか,実質論から考えると,利益相反だけで考えていって,その違反の効果というものを考えると,わざわざ類型として分けなくても,全く同じような効果があるのではないかというふうな感じがしております。

 

 

 

 

 

 

忠実義務違反の効果につきましては,2の利益相反行為と3の競合行為について,固有財産に存在します取引の対価であるとか利得が信託財産に帰属するものとして,さきに申し上げた物権的な救済であるとか,あとは債権的な救済であって,我々の実務で考えますとかなりこれ,重いサンクションなんじゃないかなというふうに考えております。

 

 

 

それに,またプラスアルファするところの,例えば中間最高値のところの部分での吐き出しをせよとか,これについては余りにも重いんじゃないかなというふうに考えておりまして,今申し上げたような利益相反という形の類型にした上で,それの効果をもって利益吐き出しにかえるというか,そういうような考え方ができるのではないかなと思います。

 

 

 

このような整理を行った場合については,現行実務で想定されるところでいきますと,今申し上げたように利益相反と競合行為,これで大体おさまるのかなという気がするのですが,どうしても捕捉し切れないような非常に悪性の強い場合,悪性の高いようなものがあった場合については,この1の総則的な規定ですけれども,これを効力規定として使うというようなことも考えられるんじゃないかなと考えております。これが全体の大きな問題でございます。

 

 

 

 

 

次に,個別の問題でございますが,これについては2の(1)の②のところの部分ですけれども,これは信託勘定間の利益相反行為の要件のところで,受託者の主観的要件が削除されているというところでございますが,このような取引については,基本的には信託財産と固有財産との間の取引と同じようなものだろうなと,基本的には相手方がないような,内部取引だということだと思いますので,今回の提案の方がバランスがとれているのではないかなと思いまして,これについては異論はございません。

 

 

 

 

次に,2の(3)のイの受益者の利益を害しないことが明らかであるときに,受益者に対して重要な事実を通知するという御提案ですけれども,これについても学者の先生方から,必要性について御説明があって,これについても理解ができますので,異論はございません。

 

 

 

ただ,これについてはちょっと業法の問題かもしれないのですけれども,例えば受益者がプロであるような場合であるとか,あとは投資信託のように受託者が受益者の名前とか所在を知らない,分からないような場合,そんな場合であるとか,あとは委託者であるとか委託者から委託を受けた指図権を持ったような人が指図するとか,それで利益相反になってしまうような場合ですけれども,そのような場合については,例えば通知義務というのはそういう人がするのではないかとか,そういう実務の観点から見ると細かい問題があります。

 

 

そういうような問題については,アステリスクの5のところで,電磁的方法であるとか公告による通知の方法であるとか,また信託行為の定め又は受益者の同意により通知の省略が提案されておりますので,これとあわせてもう少し検討を加えていただければなというふうに考えております。

 

 

 

 

あと,先ほどちょっと出ておりましたが,7ページの2の(2)の説明のところの利益相反行為として受託者が損失てん補等の責任を負担する場合についてですけれども,やはりこれについては前にも主張させていただきましたが,②の過失責任とすることが自然ではないかなというふうに考えております。

ちょっと長くなりましたけれども,以上でございます。

 

 

 

  •  利益の取得禁止というところですね,これが一つの問題点だったわけですが,これ,仮に○○委員がおっしゃったように利益相反の中に結局は解消されるのではないかというふうに考えたときに,利益吐き出し責任の5として今甲案と乙案が出ていますが,甲案であればおかしくないということになりますか。

 

 

 

 

 

  •  今申し上げたところからすると,整合するかもしれませんが,特段こういう形のものも設ける必要もないのかなと思っておりますが。

 

 

  •  ほかに,御意見ございますか。

 

 

 

 

 

 

  •  実務の立場からコメントしたいと思います。

 

 

議論がたくさんありますので,まずは総論的なこと,それから今回位置づけが変わりました1の総則規定について,まずは述べたいと思います。

 

 

結論から言いますと,効力規定化するということについては,なお検討ということだと思います。

 

まず,全体的な印象を申しますと,実務者としては,これは全体の規定ぶりというのが非常に分かりづらいということです。

 

 

先ほど○○委員がおっしゃられたように,前回の提案よりは比較していいのかもしれませんけれども,なお分かりづらいかなというふうに思っております。

 

 

そういうことで,検討段階においてはやはり分析して検討すべきだと思いますけれども,法文化する段においては,やはり分かりやすい文章といいましょうか,使われやすい文章にしていただきたいと思っております。

 

 

 

これがなぜ分かりづらいのかということは,各論にもいろいろ述べたいと思いますけれども,まず一般規定の効力化というところで分かりづらくなっているということを述べたいと思います。

 

 

まず,1の忠実義務があるかどうかということについては,これはもちろん一般規範としては疑いのないということと思いますし,また別の問題になるのかもしれませんが,公法規範でありますけれども,改正信託業法においても,今般「信託会社は,法令及び信託の本旨に従い信託財産に係る受益者のため忠実に信託業務を行わなければならない」というふうに明確化されたところでございます。

 

 

しかしこれは,私法上の効力規定をここでこういう形で行うことについては,なお次の点をあわせて考える必要があると思っておりまして,問題提起を主に2点したいと思っています。

 

 

まず第1点は,ここで規定化された2から4,つまり利益相反,競合行為,利益取得行為の3類型と,それから1の一般規定との関係が不明確にならないのかということです。

 

 

先ほどの御説明では,漏れがある場合にこれの適用をするということでございますけれども,すなわちまず2から4の行為については,この1の規定と排除する排除されない関係にあるのかどうかということです。

 

 

 

例えば,競合行為の禁止に当てはまりますといった場合に,抽象的には競合行為ということに当たるわけですが,実際3で規定されている要件の中に一つ落ちていたものがあった場合,例えば競合行為の類型なのだけれども,その主観的な要素がなかったとか,又は免責といいましょうか,禁止の例外に当たった場合に,これはもう3の規定で一応閉じているわけだから,もう1の規定は適用がないというふうに考えるのか,いや,そうじゃない,3の類型に当たらないという場合であったとしても,やはり最終的には1がキャッチオールとして,先ほどの説明では違法性の高いものということが出ましたけれども,そういうものは適用されるのだということなのかどうかということがよく分からないということです。

 

 

番人

「廃除されない関係になりそうだけど。」

 

 

 

仮に,情報利用規定についてここで説明されておりますけれども,違法性が強いものはというものが入った場合に,ではどういうことが1の類型に当たるメルクマールなのかどうかということが明確にならないのではないかということです。

 

 

 

例えば,これは4の類型になるわけですけれども,4の類型であったとしても,ここに規定がないということで排除されたと思ったところ,ではそれが違法性が強いということを一つのメルクマールとして,では1の類型になるということになると,ますます,1と,2から3の関係がよく分からないということです。

 

 

こうなりますと,やはり実際の受託者の立場からすると,萎縮効果が出てくるのでよろしくないのかなというふうに思っております。

 

 

 

それから,第2に,そういったあいまいさを残してしまうと,利益吐き出しルール,制定されるかどうかとは別の問題として,もしこれが制定されるのであれば,なお萎縮効果が強くなるのではないかなと思っております。

 

 

そのために,御説明にもありましたけれども,では1の類型を効力規定化するとしても,それではやはりこれをもっと明確化するべきではないかという話になると思うのですけれども,こうした場合に,もし1の類型をもっと明確化した場合に,また同じ2から4のような細かな議論が出てきて,結局その議論が循環してしまうのではないかと。

 

 

 

また,禁止の例外を書いた場合に,それも同じような議論が出てくるのではないかということになりますので,非常に1の規範というのを効力規定化するということは余りよろしくないのではないかなという気がしております。

 

 

 

むしろ1の規定を規定化するよりも,2から4の規定が過不足ないかどうかということを検証するという方がまず先ではないかのかなと。

 

 

 

又は,それで漏れるものがあるのでは,その漏れるものを別の類型として出すのがいいのではないかなというふうにも思っております。

 

 

すみれ

「きりがなさそうな気もするけど。でも必要かな。」

 

 

それから,最後に御質問が1点ございますけれども,1について,「法令又は信託行為の定めに従い」ということですけれども,これは基本的には信託行為でデフォルト化を認めているという話だというふうに理解しているのですけれども,これは忠実義務の程度を減らす,縮減するということも可能だということを考えているということでしょうか。

 

 

そうした場合に,2から4との関係というのがどうなるのか,正しく2から4における禁止の例外のところでデフォルト化ということもうたわれていますけれども,それとの関係というのがどうなるのかということも,同じような文脈において1と2から4の類型があいまいであるということの問題が出てくるかなと思っています。

 

 

ちょっと長くなりましたが,以上です。

 

 

  •  1にどういう意味を持たせるかという点で,これは前から議論にあったと思いますね。

 

 

 

 

 

  •  まず第19の1を効力規定とするというのは,これはこういう種類の条文だったら当然のことかなと思います。

 

 

ただし,今,○○委員がお話しされたように,2,3,4に当たらない場合でも,それに近いようなやつが1に当たるとか,そういうような話になりますと,これは2,3,4の定め方の問題かなと思います。

 

 

 

要するに,現段階で分かっているもので,具体的にできるものはできるだけ具体的に規定する,それ以外で現段階で分からなくても,やはり忠実義務違反ということでそこにかけて妥当な結果を導くことができる道は残しておく,そういう考え方が基本的に必要なのかなと思います。

 

 

 

 

 

それで,特に4,5に関して若干更に意見をつけ加えたいのですが,4の「利益取得行為の禁止」のところで,先ほど○○委員の方からもお話がありましたような情報利用の関係ですが,これは特に違法性が強い場合は,場合によっては1に当たるのではないかというような,そういう記載もありますけれども,それについてはそういうものがあると現段階で具体的に判断されるならば,それは4の(1)の甲案に①,②と二つありますけれども,前回のクールでありましたような情報取得によって不当な利益を取得する行為というのを,もうちょっと限定的に何か入れるような工夫ができないかということを考えております。

 

 

例えば,「不当な利益」というのは相当限定されるはずなのですね,具体的な情報利用行為によって利益を得たって,それが不当であるかというと,むしろ不当でない場合は幾らでもあると,そこらあたり限定されますし,更にそれ以上にもうちょっと限定する方法があれば,ここに入れた方がいいのではないかと考えております。

 

 

 

それから,利益取得行為の禁止で,禁止をして,次に5の利益吐き出し責任の方にいきますけれども,禁止をした以上は,取得した利益を吐き出させるという制度にしないと意味がないということで,5では当然のことながら乙案になるはずだというふうに考えます。

 

 

 

 

 

ここで,具体的に乙案というか,利益を吐き出させる根拠として,13ページの方に,先ほどの御説明でこれは信託の場合の受託者の債務の内容ということで説明するというお話で,それは確かに分かりやすい考え方で賛成いたします。

 

 

更に,何でそれが債務内容になるのかという根拠として,13ページの上から8行目あたりから三つほど根拠が書かれていて,「当事者の合理的な公平感に合致するからなのか」とか,その下にいくと,「効率的な財産の利用を生じさせるからなのか」とか,更にその下に,「信託においては……特に課すこととしなければならない必要性があるからなのか」と,三つほど根拠として考えられることをここに書かれていますけれども,このうちの3番目の信託の場合,特にこういう利益吐き出し責任というのを課す必要があるということに関連して,具体的なお話を一つだけさせていただきたいと思うのですが。

 

 

 

この信託を原因とする不動産の所有権移転登記は,司法書士が行うわけですけれども,それに関する情報は,したがって司法書士のところに集まりますが,これは弁護士を介した伝聞ですけれども,司法書士会の役員の話として,信託を原因とする不動産の所有権移転登記を扱うと,事件屋的な人間が信託の受託者として登場するケースが複数出てきている,高齢者とか認知障害の人とか,そういう人がうまい話に乗せられているとか,あるいはだまされているのではないかと心配していると,そういうような話が最近の話として伝わってきておりまして,そういう場合に利益吐き出し責任を明確に規定しないと,抑制できないのではないかというふうに考えます。

 

 

 

信託の場合,所有権が移ってしまうわけですから,こういう事件屋的な人にいいように利用されても,損害のてん補しか請求できないといことでは,抑制できないということだと思います。したがって,利益吐き出しを規定する必要性は,特に信託の場合あるのだと考えております。

 

 

 

すみれ

「司法書士が出てきてるよ。」

 

ポリー

「認知障害の人は自分で登記できるんでしょうか。」

 

 

 

  •  今の○○委員の意見と違うところもあるのですけれども。

 

 

先ほどから御発言されている方は,信託銀行が行っている商事信託を前提とされていると思うのですけれども,信託法である以上,民事信託ということも当然対象となりますし,民事信託の場合で考えるべきこととしましては,今の○○委員のお話に近いところがあるのですけれども,やはり悪質な受託者ということと,善良な,又は無知な受益者という視点も必要だと思います。それが,この辺の議論に大きく影響してくると思うのですけれども。

 

 

すみれ

「民事信託も出てきているよ。」

 

 

 

まず,信託行為の定めが必要であるといいましても,受益者は信託行為に関与することはできませんから,やはり一般規定として忠実義務というものは必要でありますし,それは効力規定であることも当然といいますか,受益者救済のためには必要だと思いますし,なおかつ信託行為の定めというよりは,やはり信託の本旨というふうにしていただかないと,信託行為自体にはほとんど大したことは書いてないという状況もあり得るかと思います。

 

 

 

それとの関連で,忠実義務一般についての適用除外規定はここでは議論されていないようですけれども,当然のことながら忠実義務一般についてないというような例外規定を設けることはあってはならないと,かように思います。

 

 

 

そうでないと,受益者の保護という視点から,信託法自体がデフォルト・ルールとして救済できないことになってしまうかと思います。

 

 

あと,大きい話だけということに限りますけれども,およそ受託者の違反行為,違法行為というものはすべて利害的には受益者の利害に反しているわけでして,それを一般的に利益相反行為だというふうにとらえてしまって--そこまでおっしゃっているとは思いませんけれども--細かい議論をしないというのは,せっかく議論を詰めているわけですから,やはり細かい議論はしていくということだと思います。

 

 

 

ただし,それだけでは必ずしも全部フォローできない,要するに利益相反行為とか競合行為とか利益吐き出し責任とかいうだけではまだフォローできない。

 

 

先ほど,違法性が高いとおっしゃっていましたけれども,違法性があればそもそも違法性の多い少ない,高い低いということを議論をせずに,忠実義務違反であると思いますし,違法性までいかなくても,本来受託者として不誠実な行為,不適切な行為というものは,経済的に見積もれなくても,忠実義務違反であると,信託行為に定めがなくても受益者としては救済措置が認められるべきではないのかと,かように思います。

 

 

 

 

 

  •  私も大きな問題について少しと,あと,小さくはないと思いますが,論点二つについて申し上げます。

 

 

今まで,お話を伺っていて,○○委員の御意見は,1から5まであるわけですが,1,2,3があれば4と5は要らないだろうという御意見だったと思います。

 

 

○○委員の御意見は,2と3と4を充実させて,1は外そうという趣旨だと理解しましたが,どちらにも反対であるということです。

 

 

ごく簡単に言えば,今まで我々の信託法には22条というのがあって,それが忠実義務だというふうに言われていたのですが,非常に中身が薄いものであった。

 

 

 

今回,ちゃんとした忠実義務の規定を置こうということなので,そういう意味でこの前の提案以上に非常に今回の提案はよく考えていただいたものだと理解していて,非常に手厚いものになっていると思うのです。

 

 

○○委員がおっしゃるように,あるいは○○委員もそういう趣旨だと思いますが,重複する部分があって,それぞれの項目で賄えるものと賄えないものというのがはっきり分からないようなことになっているのですが,私の考えは,今回は重複は害をなさずということかなと思っているのです。

 

 

すみれ

「重複は害をなさず、か。」

 

 

それで,1については,やはり信託の要ですので,我が国のこれから参入しようとしてくださる信託の世界へ,しかも受託者として入ってこようという方たちが,信託というのは何だろうかというのが分かって入ってくるかというと,それはやってみないと分からないという話になるので,やはり忠実義務というのが本当に要ですので,この1を落としては何の新しい信託法かということになり,それを訓示規定ではなくて,あとは裁判所の裁量のところは信頼することになると思いますけれども,やはり効力規定としてまず高らかに宣言する必要があるだろうというふうに思うわけです。

 

 

 

 

 

あと,2,3,4と,それから1というのが,1がオーバーオールで2,3,4がそれを分解しているのだと私も理解しておりますが,4も結局2に入るのではないかという○○委員の御意見は,そう言ってしまえばそうだということなのですが,今回,きちんとお考えになっていただいた5の利益吐き出し責任をどういう形で法律上説明するかというのは,日本ではなかなか現実の問題としては難しくて,今回のように4を書いておくことによって,5の乙案に結びつけるというのは非常に卓見であって,やはり信託の債務の内容としてこういう利益取得の禁止というものがあるから,こういう利益吐き出し責任が出てくるというふうにつなげるのは,非常に分かりやすい気がするわけです。

 

 

私は,本当は政策論としてこういうものが必要だというふうには考えておりますけれども。

 

 

 

それから,甲案では,実際のところ日本の損害概念というのをどんどん薄めていくだけで,そのことによる悪影響だってあるし,また実際に甲案をとったときに,反証を許すようなケースがあるとか,あるいはそれで賄えないような,乙案でないとだめなようなケースというのは現実に出てきそうな気がしますから,やはり乙案でいくべきだと思うのですが,そういうことを考えると,重複はあるのかもしれませんが4を置いておくということには非常に大きな意味があるだろうと思います。

 

 

番人

「忠実義務の違反を予防できる可能性が大きくなるってことは、良い事かも。」

 

 

あと,2点だけですが。

ここで5ページ目の「利益取得行為の禁止」のところで,甲案,乙案,丙案と一応列挙してありますので,私の考えだけを申し上げれば,丙案は今言ったことですが論外として,甲案,乙案で,これは結局信託関係を利用して受託者が利得を図ってはいけないという,忠実義務の基本のようなことをただ書いてあるだけのものを,更に日本では信託財産を利用する場合と信託事務の処理に当たる場合と,それからもう一つ情報の話があるわけですが,そういう形で細分化して精密に考えているということだろうと思いますけれども,具体的な事案によってはどれもいけない場合があるということだろうと思いますので,乙案を採用した場合に,甲案の②のようなケースは,これはもう禁止行為に当たらないのだという反対解釈がない限りは,それもまた第1項目のところで救うことはあり得べしということになるのかもしれませんが,そうでない限りは,私にとっては本当はどれでもいいのですけれども,普通に考えればやはり甲案でいった方がいいかなというふうに考えております。

 

 

 

それから,7ページの過失責任,無過失責任という考え方も,結局日本における過失の考え方がどれだけの意味があるかということに帰着するのだろうと思いますが,一応これは参考になるかどうかはともかくとして,英米では,この忠実義務については無過失責任だというふうに考えているということだけ付言いたします。

 

 

 

 

  •  いろいろ御議論いただきましたが,今のところこの1の総則的な規定,これを置くことの是非と,それから……。

 

 

 

  •  1点,これは言葉じりをとらえているようで問題かもしれないのですが,○○委員が,萎縮効果ということをしきりに言われる。この問題だけは,萎縮効果を持たせるべきです。一言,ちょっとつけ加えたいと思います。

 

 

すみれ

「萎縮効果を持たせるべきか。これか。」

 

 

 

 

  •  目指すところは○○委員と同じだと思うのですが。つまり,よい信託を広げたいということで,ではいかによい信託受託者を参入させ,悪い信託受託者を排するかということでして,私の発言は,どちらかというとよい信託受託者をなるべく多く参入させたい,その中で不要な萎縮効果のあるものはなるべく排除したいという,そういう観点で申し上げております。

 

 

ポリー

「信託受託者としてはどのような方を想定されていたんでしょうか。」

 

 

 

その中で,ちょっと先ほどの話を,○○委員の御意見を踏まえてもう一度お話ししますと,基本的に1の効力要件化ということについては,別にそれに対して絶対反対かというとそうではないのですが,ただ結局整理の仕方の話と,それから利益吐き出し責任の萎縮効果が強いということがあれば,1ということについてそのまま効力要件化するというのはなお疑問が出てくる,そういう話でございます。

 

 

 

利益吐き出しルールの話を,なぜ萎縮効果というふうに見ているのかというところから御説明した方がよかったのかもしれませんが,その点,基本的には受益者に対する保護と,裏返すと受託者に対する監督,抑制効果ということになると思うのですけれども,それについては基本的には○○委員もおっしゃられましたように,一定の物権的な救済も図られるわけですし,また損害賠償とかああいう法制もありますので,それ以上のものが本当に必要なのかどうかということでございます。

 

 

 

あと,ほかの法体系との平仄と,前回この場で吐き出しルールというのは日本の法制度に合うのかどうかということを問題提起いたしましたけれども,それについては今回一応の御説明はいただいておりますが,例えば委任という制度ということとの平仄から考えたとしても,私は委任の制度というのは信託と比べると所有があるかどうかということの違いだと思っておりまして,所有を持っているということからこの利益吐き出しルールというものが出てくるのかどうかというのはよく分からないところですが,ただ委任とパラレルに考えるとしても,ここで民法646条のいわゆる受取物引渡し義務ということを言われておりますけれども,ここでさえ「委任事務ヲ処理スルニ当リ」というふうに限定されておりますし,また受け取った金銭ということでその範囲,また物の対象というものが限定されて,いわんや中間最高価格まで返済を求められるということではないということでございます。

 

 

 

そういったときに,この信託というものを新しくつくっていくときに,今までの委任との平仄において,過度に受託者に責任を負わせるということであればどうなのかという話でございます。

 

 

 

 

例えば,レベルの話として,では甲案はどうなのか,乙案どうなのかという話になると思うのですけれども,甲案ということであれば,結局いわば損害てん補の延長上になるということで,乙案と比べれば現行法と近しいというふうに思いますけれども,これも一つの利益考量だと思いますが,その点また同じように隣接的な法制度を見ますと,商法266条というのが例に引かれておりますが,これも競業取引のみということになります。

 

 

 

信託の場合には,これは競業取引だけではなく,忠実義務一般に及ぼすという話ですから,その忠実義務というのは今議論しているように非常に広い概念でございますから,そこの外延が明確にならないと非常にそういう意味で萎縮効果が出てくるということになろうかなと思っております。

 

 

 

 

また,乙案になりますと,これは言わずもがなかなと思いますけれども,やはり制裁的なもの,また予防的な監督と,一見いいようなものに見えますけれども,やはり1の総則規定,また2から4のその範ちゅうを考えますと,やはり受託者の観点からすると,厳しいものがあるのかなと思っております。

 

 

 

 

  •  私は,基本的には先ほど○○委員がおっしゃったのと同じ方向を考えております。

 

 

ただ,と言っても別に見た目ほど対立しているというか,白熱しているというよりも,大体同じ方向を目指しているのだと思いますが,1から5のうち,1をなくす,あるいは効力要件でなくすということはやはり適当ではない,むしろ○○委員がおっしゃったように,2,3,4との関係については,2,3,4の規定ぶりで多分決めていくことができるだろうと思います。

 

 

 

その上で,2点コメントがありまして,その2,3,4について禁止の例外規定として,「信託行為の定めでその行為をすることが許容されているとき」というのがすべてに入っているわけですが,「その行為」というのは一体何なんだろうか,この定め方によっては随分広い例外が設けられることになって,かえって不安定になるのではないか。

 

 

 

あるいは,その決め方として,例えば2ページに(2)の②というのがありますが,「受益者の利益を犠牲にして当該者又は他の第三者の利益を図る目的をもって,受益者の利益と相反する行為」をするということを事前に書いておけばいいのか,あるいは不当な行為をするということを事前に書いておけばいいのかというようなのは,どうも何か変な感じがいたします。

 

 

 

むしろこの例外規定を信託行為の定めで書くといたしましても,例えば3ページの(3)のアで申しますと,①と②にそれぞれ「その行為」という言葉が出てくるわけですが,②で出ているような「その行為」という具体的な行為をイメージすべきではないか,あるいはそう規定すべきではないかと考えます。

 

 

 

それからもう1点ですが,13ページの利益吐き出し責任の乙案についての根拠が幾つか書かれているわけですが,ここに含まれているかもしれませんけれども,私が思いますには,信託制度というある意味では危険な,所有権を移すという意味で危険な制度があるけれども,なおこれはいい制度なのだと,有用な制度であって,世の中の役に立つというその制度に対する信頼感を高めるという意味でも必要ではないかと思います。

 

 

すみれ

「危険で、なおいい制度、か。」

 

 

 

  •  ○○委員の第1点,初めの方でおっしゃったことの補足的なことのみを申させていただきたいと思います。

 

 

1でいいますと,「法令又は信託行為の定めに従い」というのが入っていて,そして例外規定の中で「信託行為の定め」云々というのが何度も出てくる,この平仄の問題で1点だけですが。

 

 

もう一つ,もし指摘するとしますと,4の「利益取得行為の禁止」で,どの案--丙案は別ですけれども,甲案であれ乙案であれ,「不当な利益を取得する行為」というのが挙がっております。

 

 

こういう形で絞りをかけろというのは本当に結構だと思うのですが,ただ「不当な」というのが一体何を基準にして判断されるべきかというその基準の根幹に当たるのが正しく「法令又は信託行為の定めに従って」これは不当と判断されるのかされないのかということに,今の1から4までの流れだとすると,そう読むのだろうと思います。

 

 

としますと,「不当な」というところで信託行為の定めというのが考慮され,しかし例外で定めで許容されているときというのは,いかにもちょっと両方で基準が同じものが出てくるというのはおかしかろうと,やはりこのあたりを整理する必要があると私も思います。

 

 

 

 

 

その上で,○○委員のおっしゃったことが非常に重要でして,信託行為の定めで書いていればいろいろなことが忠実義務違反でなくなったりしていくということが,本当にこのルールを定める趣旨なのかどうかということを考えましたときに,法令はともかくとしまして,「信託行為の定めに従い」というのは一体何を言おうとしているのか,言葉としてはさっき○○委員だったでしょうか,何人かの方が御指摘されていたと思いますけれども,その信託を一体何のために行うのかというその信託行為が行われる目的なり趣旨なりからして,これはやはり忠実義務違反に当たる当たらないというのがまず第1に判断されていくべきなんだろうかなと思います。

 

 

番人

「条文を別にする必要があるってことかな。」

 

 

そうしますと,1の書きぶりを少し考える必要があろうかなという気がいたします。

 

 

 

そしてもあくまでもそういう信託行為が行われる趣旨からすると,一見すると忠実義務違反のあたり,例えば「不当」に当たるけれども,しかし例外としてどういう場合があるかというときに,信託行為そのものではないのだけれども,その後重要な,例えば6ページの一番上にありますように「重要な事実を開示して……承認を得た」というような事情があるので,例外的に許されるのだよというのは平仄が合っていくのかなという気がいたします。

 

 

補足にすぎませんけれども,以上です。

 

 

 

 

 

  •  私の方は,全体的な御提案の枠組についてはこういった考え方で賛同したいと思うのですけれども,2点。

 

一つは,受益者に対する情報提供の関係と,それから利益吐き出し責任について若干意見を述べさせていただきます。

 

 

 

まず,今しがた議論されたこともあるいは関係するのかとも思うのですけれども,受益者の立場から見たときには,本来こういった忠実義務違反の規定については強行法規できっちり定めていただくと一番安心できるということになろうかとは思います。

 

 

ただ,信託の柔軟性という観点から,やはりこれはデフォルト・ルールというふうに定めるというのが基本的な方向であろうかと思いますが,そういった場合にも,やはり受益者の立場からすると,いわば受託者と受益者の利害が対立する可能性がある行為が行われるような場合には,きちんと説明をしてほしいといいますか,きちんと情報提供を得たいということはあろうかと思います。

 

 

 

やはり受益者が何も分からないところでそういった取引がされるということは,そういった状況というのは作るべきではないのではないかというふうに思われます。

 

 

そういった観点から,この御提案の中では3ページの(3)のイのところで,禁止の例外について,③の場合について「重要な事実を通知しなければならない」という規律が御提案されていますが,これについては是非こういった規律をきちんと定めていただきたい。

 

 

 

それから,この御提案の中では③の場合についてだけ提案がされておりますが,例えば①の場合,これは恐らく信託行為の中にどれだけ具体的に規定がされているかということにもかかわるかと思うのですけれども,信託行為の定めが抽象的である場合には,やはり重要な事実の開示というものは,これは受益者に対してするという規律が必要ではないかと。

 

 

②については,この「重要な事実を開示して」というのがこの中に入っておりますので,これに含まれるかと思いますけれども,そういった点の御検討をお願いできないかというふうに思います。

 

 

 

それから,今の点につきましては,いわゆる利益相反行為の禁止に関する部分ですけれども,それでは競合行為の禁止ですとか,あるいは利益取得行為禁止の場合にはどうなのかということについても,これもやはり情報提供の問題については是非御検討いただけないかというふうに思います。

 

 

 

それから,御提案の中では,このような通知については信託行為の定めか,あるいは受益者による同意がある場合には省略することができるというふうにしてはどうかという御提案がされていますけれども,やはりこれはそういった形でこれを外すというのは慎重であるべきではないかと思います。

 

 

 

基本的に,こういった情報については,恐らく受託者からの通知が,受益者がこういった情報を得る入口になるものと思われます。

 

 

この情報提供がないと,基本的には受益者の方でこういった取引について知り得る機会というのがなかなか難しいのではないかと,受益者としてはこういった通知が行われることによって,あるいは信託の内容といいますか,これをチェックする,あるいは疑問がある場合には帳簿閲覧請求権や説明請求を通じて信託事務処理の適正化のための手段を講じることができるということになるのではないかと思います。

 

 

こうした観点から,この情報提供については,是非きちんとした定めをお願いしたいと考えております。

 

 

そうしたことをすることによって,恐らく受託者の方々もきちんと情報提供しなければならないということで,いろいろな行為の適正化というのが図っていくことができるのではないかと思いますし,またそういった情報提供が行われることによって,受益者の方も,信託についての信頼をすることができるということになると思いますので,是非ここはひとつよろしくお願いしたいと思います。

 

 

 

それからもう1点,利益吐き出し責任の方ですけれども,これは御提案の中で5ページの例13が挙げられておりますけれども,例えばこの事例についてどう考えるのかということなのかというふうにも思います。

 

 

 

この例13の中で,更地として管理すべき土地に受託者が建物を建ててしまったというようなことが挙げられていますけれども,これは例えば御提案されております甲案ですとか,あるいはこれまでの伝統的な議論の中では,なかなかこれについて受託者が得た利益を吐き出させるということは難しいのではなかろうかというふうに思われます。

 

 

すみれ

「そうなんだ。」

 

 

損害賠償の考え方でいった場合には,恐らく信託が適正に行われた場合に,受益者が得べかりし利益というのが損害ということに基本的には考えられるのではないかと思うのですけれども,そうした場合に,信託行為が当初予定していない建物を建てて,利益を得るというところまで損害に通常含められるかというと,これはなかなかちょっと難しいのではないかと思われます。

 

 

 

その利益を受託者に得させることが妥当かどうかという問題があるのだと思いますけれども,やはりこれは信託の関係ですから,受託者が信認を得てこの土地の管理をしている以上,そこで行われるものについてはやはり信託財産に帰属させるというのが通常の考え方に合うのではないか,そうでないと,やはり受益者の立場からすると,自分がゆだねている土地を受託者が勝手に使って利益を得た,それが受託者に帰属するというのはどうもやはり納得できない結果になるのではないかと思います。

 

 

 

 

 

それから,1点,この御説明の中で,準事務管理の考え方について,これを立法化した規定として特許法102条等が挙げられていますが,これは若干規定の趣旨を御確認いただけないかと思うのですが。

 

一般にお聞きしているところでは,特許法102条等の規定は,むしろ準事務管理の考え方を取り入れてない規定というふうに理解されているのではないかと思われます。

 

 

 

したがいまして,若干御説明が再度御検討いただけないかと思うのですけれども,準事務管理とそれから特許法との関係の議論の整理でいいますと,一つは恐らく準事務管理の考え方というのは理屈の説明としては乙案の根拠となり得るものではないかと思うのですが,逆に特許法102条との関係でいうと,特許法102条等がとっていない準事務管理の考え方を信託法においてとることができるのかどうなのか,そういった観点からの整理が必要なのではないかと。

 

 

 

信託法においては,先ほど申し上げましたように特殊な関係が受益者,受託者の関係であるわけですから,それを根拠に御提案の趣旨に沿った形で,やはり乙案として根拠づけということが可能なのではないかと思いますし,そういった規律をしていくべきなのではないかと思います。

 

 

 

それから,1点つけ加えさせていただきますと,やはり乙案を採用することによって,受託者が信託違反の行為をする可能性がかなり低まるということはあるのだろうと。

 

 

 

逆に,これを甲案とかあるいは一般法理に委ねるということになりますと,やはり信託違反行為を誘発する可能性というのは高まるのではないか,この点については先ほど萎縮効果がいいという話もありましたけれども,そういうことよりも,信託行為の適正を図るという観点から,乙案をとるべきだと考えます。

 

 

 

 

 

 

  •  繰り返しの面もあるのですけれども,私も少し補足をさせていただきたいと思います。

 

 

結論といたしましては,○○委員や○○委員,○○委員,○○幹事がおっしゃったような形で,1については訓示規定ではなく,一般的な通常の規定という形で考えるべきであり,また4,5については規律を設けるべきだという考え方を持っております。

 

 

 

1については特に加えて申し上げることはありませんけれども,ただ通常の規定だとすると,例外規定についても検討すべきだという○○委員の御意見は,やはり検討すべきなのだろうと思います。

 

 

4と5につきましてですが,これも既に御指摘あるところですけれども,最初に○○委員から御指摘のあった例13や例14のような問題事例について,2や3で受けられるのではないかという御指摘に対しては,直前に御指摘がありましたように,特に例13は非常に難しいであろうと。土地自体の賃料相当額というようなものは,これは取れると思いますけれども,店舗を自分の財産とお金で建立したときに,それ自体を信託財産とするということは非常に難しいと思いますし,その店舗の賃貸借契約によって上げる利益というのは,これは受託者が固有財産を貸しているだけだという構造になると思われますので,そうしますと2や3で入れるのはかなり難しいのではないかと思われます。

 

 

 

もともと更地として管理すべきであるということだとすると,競合行為というふうに言うことも非常に困難であると思われますし,また例14につきましても,確かにリベートのようなものはかなりそれで実は売却代金が下がっているのではないかということはあるかもしれませんが,しかし廉価売却であるということであれば,もう忠実義務違反以前にそれ自体が適正ではないということになると思いますので,問題なのはそこそこ市価であるというようなときにどうかという場合に問題となってくると思われますので,この部分というのはたとえ損失についての推定規定を入れたとしても,非常に難しいのではないかと思っております。

 

 

 

 

 

逆に,これが2や3で含まれ得るのだとしますと,むしろそちらでいったときの2や3の要件の解釈が広がり過ぎて,特に例えば競合行為の禁止などで「受益者の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図る目的」という非常に限定され,一定の配慮を示されているところが,こういうものもこの要件に当たるのだということになりますと,かえって2と3の規律の意味を没却することにならないかというふうに思われますので,これが問題事例であって,やはりこのような場合に利益の取得を認めるべきではないというふうに考えるのであれば,別途4のような規定が要るのではないかと思っております。

 

 

 

番人

「なるほど。」

 

 

 

また,既に例13につきまして○○幹事が御指摘あったところですけれども,これを損失の方で持ってくるというのはやはりちょっと難しいのではないかと,推定規定を入れたとしても難しいのではないかと考えておりますので,5についても利益吐き出しということをするのであれば,乙案の方が適合的ではないかと考えております。

 

 

 

問題は,その際の説明ないし性質ということで,今回の資料で非常に詳細に書いていただいておりますけれども,不当利得,それから準事務管理とその信託の本来的な性質ないし内容からという三つの考え方が出されておりまして,これはただ幾つか次元のある問題だろうと思います。

 

 

不当利得,準事務管理について申しますと,現在の考え方,しかもその主流となるような考え方から容易に導けるような結論となるかという意味で,これを基礎にできるかという話と,この性質は根本はどこかというようなのはまた違ってくる話ではないかと考えておりまして,例えば不当利得でいきますと,現在の類型論からした場合に,法律上の原因について当てはまるような類型があり得るのかという点を考えると,欠落があるのではないかと私自身は考えておりますけれども,しかしながらその場合の利益を返還させるというのが,不当利得的な性質を持つのか,つまり不当な利得であって許されないということを持つのかというと,またそれは別の考え方もあり得るところだと思いますので,少し次元が整理の中でも異なるのかなとは思っておりますが,ただ私個人はこの資料で御提案,それから御説明いただいたような形で,信託そのものに内在するというか,正に中核であるような性質のものであると考えておりまして,もともと信託の定義からいたしましても,その財産権等を移転しながら利益だけは取得しない,自己の利益を図る以外の目的を持って財産を管理運営していくと,しかしその財産権の主体は自分にあるというのが信託の特色であり,しかも昨年の私法学会での御報告によりますと,それが責任財産を裏打ちする点でもあると。

 

 

 

 

信託財産の責任財産としての独立性も,受託者の固有の債権者がそれにかかっていけないのは,およそ受託者自身が利益取得できないからという説明もあるわけですし,この利益も取得しないというのは,何と言っても信託制度の根幹であって中核であると考えておりますので,それをいかに確保するかというのが,先ほど○○委員のお言葉をかりると制度への信頼という意味でも,この信託制度をきっちりつくっていくためにはこの部分が手当てされないといけないのではないかと思っております。

 

 

ポリー

「たしかにですね。」

 

隣接制度とのバランスということで,これ自体は非常に議論のあるところで,委任についても同様だという考え方も少なくないということですから,信託だけと言い切ることは問題だと思いますけれども,しかし少なくとも信託においては,ということは言えると思いますし,○○委員がおっしゃった委任とは所有があるかどうかだけが違うのではないかということでしたけれども,しかしそれ自体が非常に重要なことで,所有権がいっていながら利益取得ができないということをいかに確保するかというのが信託においては非常に重要になってくるということがあると思われます。もちろん,ほかにも指図の問題ですとか,既に指摘された点はあるかと思いますが,少なくとも信託においてはということは言えるかと思います。

 

 

すみれ

「名義イコール所有権イコール利益が原則なのかな。」

 

 

 

あと,ちょっと細かいところを更に少しだけお話しさせていただきますと,通知の点ですけれども,8ページ,それから本体自体は3ページの(3)の「禁止の例外」ということで書かれておりまして,大変細かい問題で恐縮ですけれども,「受託者が自己取引がされたことを認識し得ない場合などのやむを得ない事情がある場合には通知義務を負わない」という点ですが,やむを得ない事情と言われると,通知できないこともやむを得ない以上は通知義務は課されないという一般論としてはそうかもしれないのですが,例として挙がっている自己取引がされたことを認識できなかった場合というのは,通知義務をおよそ免除する場合というよりは,知ったら速やかに通知すべきだという形で働くのではないかと思われまして,具体例との関係でもう少し検討する必要があるのではないかと考えております。

 

 

 

長くなって恐縮ですが,もう1点,萎縮効果についてですけれども,これはもちろん当然それが前提に入っているわけですけれども,およそこういう行為をするなという規律ではなく,あくまでそれをするときには信託行為にきちんと定めがあるか,受益者の承認を得るかをしてからやってくださいということですので,萎縮効果というときにも,もちろん機動性はある程度含まれるとは思いますけれども,一般的に禁止しているというわけではないということも改めて強調させていただきたいと思います。

 

 

 

 

  •  先ほど言えばよかったことを,一つだけ。結局,また○○幹事が言われてしまったので補足になってしまいますけれども。

 

 

最後の利益吐き出しに関する問題で,準事務管理,不当利得等との関係で,○○幹事の方からも御説明があったところの補足です。

 

 

 

○○幹事だったかが多分おっしゃったと思いますけれども,この問題に関しては準事務管理に類するような形でとらえやすい問題ではないかとおっしゃったのは,ほかの問題と比べますと確かにそのとおりかなという気はいたしますけれども,やはり主観的には本人である受益者のためにやっているとは言えない行為であるということ,例えばリベートのようなものが本当に受取物と言えるかどうかなど考えますと,かなり異質な側面があるというのは従来から言われているとおりのところなのですが,むしろ問題の位置づけだけを言いたいのですが,問題の位置づけとしては,要するに受託者がこういった行為を通じて受け取った利益が,一体だれに帰属させるべきか,だれに割り当てるかというところがこの問題の本質でして,そしてもしこれが受益者に割り当てるというルールが確立しますと,これは正しく不当利得に当たると言っても全然おかしくない行為になる。

 

 

 

つまりは,本来ならば受益者に割り当てられた利益が侵害されたということですから,正に侵害利得の類型に当たっているのですね。

 

 

ただ,従来は,侵害利得というのはそういうものだというのはよいとしても,一体こういった利益をだれに割り当てるかというところが必ずしも明確ではないというのでずっと争われてきたということだと思います。

 

 

○○幹事の御説明も,よく読むと多分そういうことが書いてあるのだろうと思います。問題の本質はそこにあると。

 

 

 

 

ですので,ここからは先ほどの○○委員等の御指摘につながるのですが,やはりこの信託の問題に関して,こういった忠実義務違反によって受託者が受け取った利益をだれに割り当てるか,このルールをはっきりさせようと,これはやはり受益者に帰属させるべきものとして確立させましょうと,その理由は何かというときには,何度ももう既に指摘されておりますように,信託というのは要するに他人の財産を受託者が,名義は別として運用しているわけであって,そこから利益を受託者が得るというのはおかしい,本来はその利益の帰属先である受益者等に帰属をさせるべき性格のものだ,信託というのはそういう制度として信頼されるものにしようという立場決定をすれば,受託者ではなく受益者にこの利益の帰属割当てルールを作る,そうすると侵害利得と言おうが何と言おうが,信託法で明文のルールとしてこの吐き出し請求権というのが位置づけられる,そういう位置づけになるのだろうと思います。

 

 

 

 

そういう意味で,構成の問題でこれは準事務管理でもないし不当利得でもないというような問題ではなくて,正に割当てルールをこういう形でつくりましょうかどうかという問題で,私自身はこの信託法の制度趣旨からいって,やはり受益者に帰属割当てをするというルールを明確にした上で,この吐き出し請求権を認めるべきではないかというふうに個人的には考えております。蛇足にすぎませんが。

 

 

 

 

  •  まず,ちょっと確認なのですが。

これは,現行法の9条にかわるものであって,9条はなくなるのでしたか。私,資料を持ってくるのを忘れたので。

 

 

 

  •  受託者の利益享受の禁止に関する……,あれは別途規定を設けますが。

 

 

  •  別途残るわけですね。結局,この規定の性格が,先ほど○○幹事から御指摘がありましたように,例えば受託者の個人債権者が信託財産を差押え得ないということが,当該財産からは受託者は利益を得られないのであるということによって基礎づけられているというふうに考えたときに,そのこと自体の最終的な確保というのは,9条類似のものによってなされるのか本条によってなされるのかというのがちょっと気になるのです。

 

 

 

と申しますのは,本条に関して申しますと,先ほどから何人かの方が御指摘になられておられますように,信託行為に規定があればいろいろここに書いてある制約は免れることができるという形になっているわけですが,じゃあ信託行為に書かれていれば自由にそこから利益を取得できるのかということになりますと--利益を取得できるというのは,お金をもらえるということではなくて,例えば自己取引を何の制約もなくできるのかということになりますと,先ほどの○○幹事の責任財産に関する一つの考え方の説明からしますと,受託者の債権者が差し押え得ないということの根拠がなくなってくるのですね。

 

 

 

そうなりますと,ここに言う「信託行為に別段の定めがあるとき」というのには,やはりおのずから限界があるはずであって,そのあたりのことはまずはっきりさせなければならないのではないかという気がいたします。

 

 

 

それが第1点でございます。したがって,書けばよいという雰囲気を醸し出すのはよくないと思います。

 

 

 

2番目でございますが,先ほどから1の忠実義務の一般規定というのを置くべきか置かざるべきかという話がございまして,結論からしますと私は置くべきであると思うのですが,ただこれが置かなければどうなるのかということになりますと,大きな違いが出てくるとは私には思えないのですね。

 

 

と申しますのは,1を置かないという考え方というのは,2,3,4で個別具体的に規定されている禁止行為に反しない場合には,そもそも違反にはならないというふうな前提になっている,そういう考え方が前提になっていると思うのですが,受益者に損害をこうむらせるような行為をするということは,別に2,3,4に,あるいはそれで自己が利益を得て,それによって不当なことをしてしまうということになりますと,2,3,4に直接に当てはまらなくても,それは善管注意義務違反には十分なり得るわけであって,1を外せば2,3,4がやっていることだけが禁止の対象になるかというと,私はそうではないと思います。

 

 

 

 

 

 

では,1があるのと2,3,4に外れるものは善管注意義務の規定で対処するのと,どこが実定法的には違いが出てくるのかというと,これは結局5が適用されるかどうかのところだと思うのです。

 

 

 

つまり,利益吐き出し請求という話を忠実義務違反に特殊な効果であるというふうに考えますと,善管注意義務違反であるという話で処理をいたしますと,5の利益吐き出し責任というものは適用されないのに対して,1も含めた忠実義務違反であるといたしますと,5の利益吐き出し責任がかかってくるということになるわけです。

 

 

そこは重要な点であろうかと思うのですが,しかしそうなりますと,これは違いが結構大きいわけであって,忠実義務違反であるか,それとも善管注意義務違反の解釈の問題の中に入れられるのかというのは,かなり明確な区別ができないと,それこそ萎縮効果を招く可能性があるのかもしれない。

 

 

つまり,キャッチオールだからほわっとした定義で1はいいだろうということにはならないのではないかというふうに思うわけであります。

 

 

 

そうなりますと,今度は1は置くべきだというふうに申しておりながら,何か矛盾するよようなことを言うかもしれませんけれども,「忠実に信託事務を処理しなければならないものとする」という条文で本当にいいのだろうか,一般規定を置くということの必要性というのは,私は一般規定を置く必要はあるという立場におりますけれども,忠実義務ということの定義というものが法典外在的に存在していて,それを前提としながら忠実にしなければならないというふうに置くべきなのか,それとももうちょっとダウンして,専ら受益者の利益を図るために行動しなければならないとか,自己又は第三者の利益を図らず,受益者の何とかをしなければならないという規定にするのか,もう少し私は内容を明確化した方が,5の適用範囲が明確になるという面があるのではないかと思います。

 

 

番人

「たしかに。」

 

 

  •  大分いろいろな御意見が出ておりまして,そろそろ休憩の時間に入りますので,また休憩の後,御意見いただきたいと思いますけれども,今までの大きな問題点は,一つは1にある総則的な規定。

 

 

 

これは,いろいろな形の御意見ございましたけれども,これ自体が適当でないという御意見は恐らく余りないのではないか,本来信託であって,受託者は忠実義務を負うという原則自体は,恐らく皆さん大体御承認いただいて,ただ○○委員も,また後で補足していただきたいと思いますけれども,2,3,4,5との関係で明確でないのではないかということで,そうすると,1自体については,私の曲解かもしれませんけれども,そんなに御異論がないのかもしれないという気がいたします。ということで,1の問題点。

 

 

 

それから,2,3,4,特に4あたりの効果の問題,それから忠実義務を外すときのいろいろな要件,信託行為でもって広く定めることができるのかどうか,それから5の違反の場合の効果,こういった問題点については更に御意見を伺いたいと思いますが,ちょっと白熱した議論を中断して申し訳ございませんけれども,少し休憩に入りたいと思います。

(休     憩)

 

  •  それでは,再開したいと思います。

 

 

  •  私が最初に問題提起したことについて議論が出ておりますので,ちょっとまとめた話として再度申し上げたいことがあるのですけれども。

 

 

確認ですけれども,私の1に関する趣旨というのは,別に効力規定化そのものについて反対しているというわけではございません。

 

 

ただ,やはり2から4の範ちゅうとの関係が不明確なので,1の範囲が逆に不明確になるのではないかと。

 

 

また,1の規範としても,要件,またその例外--デフォルト化がどこまで自由なのかどうかということも含みますけれども--が不明であると。

 

 

 

そうであるのであれば,5に関して非常に適用が拡大するかもしれないので,そうした場合に萎縮効果があるのではないかという,そういう議論です。

 

 

5に関して,特に前半の議論では乙案の議論が出てきたと認識しておりますけれども,この点について私の意見を述べたいと思います。

 

 

基本的には,前半で述べたことなのですけれども,5の利益吐き出し責任を認めるかどうかということについては,信託をどうすべきなのか,信託の設計の問題,それから信託をどう広げるべきなのかどうか,ちょっと政策的な話としてどういうものにするか,どういう広がりを持たせるのか,そのためには現行法規制度の親和性,委任との関係であるとか,そういうところに大きな違いが出てこないのか,そういったところが大きなポイントだと思っております。

 

 

その観点から見ますと,前半で出ていた議論をお聞きしていますと,なおちょっと疑問がありますので,その点についてお話ししたいと思うのですけれども。

 

 

 

 

 

 

 

すなわち,先ほどの議論では,主にこの事例の13ないしは14では,不当利得とか損害賠償とかでは説明できない,よってこういう乙案のような規律を設けるべきたというような議論が多かったかなと認識しております。

 

 

 

十歩譲って,ないしは百歩譲ってかもわかりませんけれども,譲ったとして,もしそういうことで必要であると,つまりそういうことをやはり利益を吐き出せと,それについては現行法規では難しいので,そういう規定を設ける必要があるというふうにしたとしても,私のそもそもの疑問は,ではなぜそういう必要なものだけを切り出して,それを規律しないのかということでございます。

 

 

 

先ほど,冒頭に事務局による乙案の性質決定の説明として,不当利得とか事務管理とか,そういう議論,新たな考え方,つまりそういうふうに行う債務であるというふうに私理解したわけですけれども,もしそういう考え方を使えるのであれば,例えば例13ないしは14の類型を出して,正しく受託者がそういうことをしてはならず,かつそれをした場合に,信託財産に引き渡す義務を負う,そういうものが信託の義務であるというふうに規定する,つまり5を規定せずに,2から4のところでそういうふうに規定すればいいのではないかと。

 

 

なぜそういうことを申し上げるかというと,不用意な--不用意と言うとまた問題ありますけれども,不必要に5の場面が出てくるのではないかと。

 

 

例えば,競合行為の禁止について,これについて必ず利益吐き出し責任を持ってこなければならないのかということでございますけれども,もちろんそういう場合もありましょう。

 

 

 

ただ,例えば競合行為というのも,そもそも競合行為かどうかということについてまずは受益者の利益を犠牲にしてということでございますので,犠牲でないものについては入らない。

 

 

 

1で引っ掛かるかどうかは別としてあるのですけれども,仮に犠牲にしたというときにもいろいろな犠牲の仕方があって,多分1円でも犠牲にした場合にも勢い3の類型に当てはまって,よってこの規律が出てくるということはどうなのかなと思います。

 

 

 

例えば,いろいろな競合行為があると思いますけれども,その競合行為を実際やったとしても,受託者が利益を得たその利益の中身は,もうちょっと犠牲の部分から成り立ってくるものもあるかもしれませんが,おのずからのエクスパティーを使った能力であるとか努力であるとか,そういうものが関連してあった,ある場合もあるかもしれません。

 

 

 

又は,当該行為における取引というのが,非常に競争的な市場であって,よって別に受託者が自らの資産で固有財産としてやったから犠牲が出てきたということも言えるのかもしれませんけれども,別にそうしなかったとしても,ほかのマーケット参加者が同じような取引をするわけで,いずれにしても信託財産に余り変わらなかったということもあり得ましょう。

 

 

 

そういったような場合でも,やはり5の規律を入れるのかどうかという話がありますものですから,1ないしは2から4までに当てはまったからといって5で救えるというような決め方はどうなのかなというふうに思っています。

 

 

すみれ

「明確にして欲しいんだね。予想しなかったところで文句言われないように。」

 

 

 

よって,やはりここではもう一度そもそもの規律の是非を御検討いただきたいということと,それからもう一つ,十歩,百歩の話になれば,外延が明確でないからこういう議論が出てくる,萎縮効果という議論を出さざるを得ないわけでして,その外延を,甲案,乙案いずれにしても明確にした上で,議論をしていただければなというふうに思っております。これが大きな1点でございます。

 

 

 

ついでで恐縮ですけれども,同様な考えで2と3の話をしたいと思うのですけれども。

 

 

先ほど,○○委員から,競合があってもいいのではないかという話がありました。

 

 

そういう考え方もあろうとは思いますけれども,2と3に違いがあるというのは,含む含まないということもあるわけですが,本当は違いがないということなのかもしれませんけれども,効力が大きく違うという話があります。

 

 

 

そういう意味で,そういう関係にあると,ある程度あいまいな関係であるというふうにしたとしても,実務の観点からすると,有効か無効かが違うということであれば大きな違いになってくるということでございます。

 

 

 

そこにおいては,やはり外延というものを明確化する必要があるのではないかというふうに思っております。

 

 

 

その点,ちょっと私の理解不足かもしれませんけれども,今の提案の中身はまだまだ不明瞭なものがあるのではないかというふうに思っております。

 

 

 

  •  今までそれほど議論になっていない点を簡単に申し上げますと,ちょっと調べてこなかったのですが,証取法の中に短期売買,ショートスイング・プロフィットの規定があったかと思うのですが,法制的な背景等はもちろん違いますけれども,仮に証取法という政策的な視点からの規定だとしても,利益を帰属させるというのは現行法上もあるのではないかという……,一応御参考までに,それが第1点。

 

 

 

あと,これもどの法律とは指摘できればよかったのですが,ちょっとすぐには分からないのですけれども,法律の中に忠実義務がありますと一般的に規定されているものがあると思うのですね,ですから先ほどから効力規定か云々かという議論がありますけれども,法律に忠実義務があると書いてある場合に,それ自体が意味がないというのは,余りにも変な議論ではないか,もちろん先ほどから議論してそれ以上細かい議論というのは当然必要ですけれども。という,これも御参考までですけれども。

 

 

 

 

あと,実務をやっていて,契約の中に忠実義務がありますと,こう書いてある契約書も結構ありまして,ですからその契約上の条項自体が「信託契約に従い」と書いてあって,信託契約を見ると「忠実義務があります」と書いてあって,そうするとそれが訓示規定になってしまう,効力ない,それも何か変な気がいたします。

 

 

もちろん,先ほどから申し上げているように細かい議論というのは当然必要だと思いますけれども。

 

 

 

 

 

あと,利益の帰属のところですけれども,法的な性質云々ということで先ほどから非常に民法的な難しい議論が続いているのですけれども,準事務管理的とでもいいましょうか,そういうふうに考えたとき,ここから先は余り議論されてなくて,先ほど○○委員が少し指摘されていましたけれども,別に事務管理であるときに過失の要件とは関係ないのではないかと,本来プロフィットは帰属すべきところに帰属するわけですから,過失要件というものは果たしてここで契約責任のような--要するに,責任があるから帰属するという議論ではないのではないかと。

 

 

 

 

 

責任の方は,債務不履行責任ということで損害賠償責任の方で担保すればよろしいわけでして,あくまで損害賠償責任とは違う意味においてこのプロフィット,利益の帰属ということを議論していると私としては理解していますし,乙案,この中でもそういう提案がされておりますから。

 

 

 

ということで,過失の議論というものは余り議論されていなかったので,過失というのはこんな必要ないのではないかと。

 

 

 

その際に,株式の売買と市場取引を例に挙げて,市場取引のときに場合によってはということがありましたけれども,例として市場取引の場合は別に信託の受託者に限らず,一法人であっても一個人であっても,同じ日の同じタイミングに売って買えば,もしかしたら自分で買って自分で売っているかもしれませんけれども,そういう市場取引が一つの例になるというのは必ずしも妥当ではないのではないかと思います。だから,過失が必要だとかいう議論というのは,ですね。

 

 

 

 

あと,もう一つ,今まで議論されていなかったポイントで,なおかつこの検討課題の9ページのあたりにどう考えるかということで指摘されている点で,目的を判断の基準とするか否か,何らかの制限は必要なのではないかという議論,今まで続いてきたようですけれども,現在の「受益者の利益を犠牲にして」,多分これは「かつ」で読むのでしょうか,「かつ」だとしますと,「自己又は第三者の利益を図る目的」,ここまで立証して利益相反行為をとらえ,なおかつ利益相反行為まで立証してということは,せっかく忠実義務という本来信託の本質に迫るものを議論して,その一貫としての重要なポイントとしての競合避止義務とか利益相反に対する責任というのを規定している以上,やはりこれはちょっと強過ぎる規定ではないのかと思います。

 

 

 

どういう規定が適切かということはもちろん必要かもしれませんけれども,恐らく利益相反行為ということだけで十分であって,受託者の方はそれがちゃんと利益相反行為ではないのだということを主張立証することによって責任を免れていくというのが,本来妥当なことだというふうに思います。

 

 

 

  •  今,無過失責任の問題ですとか,求償責任も含めてどこまで証明すべきかという問題などについて新しい御意見がございました。関連していかがでしょうか。

 

 

 

  •  先ほど,4と5について不要じゃないかというふうに申し上げていろいろな御批判をいただきましたが,先ほど○○幹事の方からお話がありましたように,例えば13のところで1番,2番,3番で救済できないという解釈であるとすれば,それは済みません,私自身の考え違いですので,ここの13番については私は救済すべきかなというふうな考え方を持っております。

 

 

それについて,利益取得行為というものを立てないことには救済できないということであるとすると,ちょっと考え方はもう一度検討しないといけないのかなと考えております。

 

 

 

私自身が懸念していますのは,まず利益取得行為というのがあって,そういう概念があって,なおかつ利益吐き出しの責任という概念を設けると,そうするとどこまでなんだという部分がありまして,先ほど申し上げたように物権的な形の救済があって,債権的な救済もありますというと,一般的に救済したらいいなと私はぼやっと考えて,ほとんどのところが救済できるのだろうなというふうに思っているわけです。

 

 

それ以上の,例えば利益相反行為であったとしても,利益吐き出し責任があるのですよといったら,あとはやはり考えられるのは,先ほど申し上げたように,では中間最高値までとって,受益者の選択によってそこまでの利益を吐き出せというところまであるのでしょうかという懸念があるわけです。

 

 

 

先ほど,○○委員にもお聞きしたのですけれども,英米では裁判所の裁量でそこら辺のところがかなりの範囲があるいうことですけれども,日本においてはなかなかそういう裁量ということもいかないとすれば,やはり際限というのが,どこまでやれるのかというのが非常に我々にとって懸念材料ですので,その辺のところの考え方を一つ整理していただくということをもって,再度検討したいと思います。

 

 

 

  •  いろいろな御意見いただきまして,問題となっている論点についてはかなりどういう形で対立しているかということが明らかになってきたように思います。

 

 

特に,利益取得行為の禁止のルール,これを立てることの意味,それからそれと密接に結びつく利益吐き出しの責任について,範囲を明確になるように限定してくれないと困るという御意見が,受託者などの実務を経験されている方からは出てきましたし,これらにの点についてはもうちょっと,そういう厳密な定義なり範囲の確定なりができるのかどうかについては,事務局の方でもって少し検討してもらいたいと思いますけれども,今まで対立が激しくあったように思われていた問題について,かなり共通の理解も得られてきたように思います。

 

 

 

これについては,再度また事務局に検討してもらうことにして,とりあえず皆様の御意見……。

 

 

 

 

  •  今まで全く議論になっていなかったごく瑣末な点で,1点だけ申し上げたいと思います。

 

 

 

資料でいいますと4ページのアステリスク9というところでございまして,特別代理人の選任という点について,ごく軽く資料で取り上げているのみというところでございまして,このようなところで御発言申し上げるのも若干気が引けるところではございますが。

 

 

 

こちらの方に,幾つか現行法にある例というのが書かれております。法人の理事,親権者,社債管理会社がそれぞれ利益相反行為をする場合というものでございます。

 

 

ただ,こちらの方を若干見てみますと,今こちらに書かれている例というのは,まず法人の代表者又は親権者が利益相反行為について代理権を失うということを前提としまして,ほかに代表者がいないですとか,あるいは本人が無能力者であるという理由によって,有効に意思表示ができる者がいないという場合ですとか,あと社債管理会社の問題につきましては,社債権者集会によって特別代理人の選任については意思決定自体はされていると,ただ社債権者集会自体が法的主体となることができないことから,特別代理人を選任するというような事例のように思われます。

 

 

 

いずれも,本来その行為によって利益を害される者の同意を得る必要があるとされている場合に,代理人を選任することによって同意を省略すると,ショートカットさせるような制度ではないと思われます。

 

 

この点,今回の提案においては,利益相反行為については受益者の同意がある場合にはこれが許されるというふうにしておるわけですが,その点と,特別代理人の制度の導入との関係が若干不明確ではないかと思っておりまして,その点,現行法にある特別代理人の制度とは若干異質な制度ではないかなという点が気になっております。

 

 

 

番人

「特別代理人とかもあったんだ。」

 

 

ちょっとこの点,もし引き続き今後にでも検討されるのであれば,是非慎重な検討をお願いしたいということでございます。

 

 

  •  それでは,一応このテーマについては終わりたいと思います。

 

 

 

 

 

 

  •  公平義務については何かございますでしょうか。
  •  公平義務の方はいかがでしょうか。

 

 

 

  •  公平義務の部分につきましては,本文については特段の異論はございませんが,アステリスクの3の公平義務に違反した場合の効果のところですが,これについては不利益をこうむった受益者の救済という観点から,(1)のような固有財産との取引のところの部分については結構理解できるのですが,(2)の信託財産と他の信託財産との間で行う行為のところの部分について,信託財産間において無効とするのは,ちょっと公平義務と関係のない信託にとってみたら,通常の取引であったにもかかわらず,別の信託の公平義務の是正のために無効になってしまうということですので,この辺についてはちょっと解決策としてバランスを欠いているのではないかなという感じがいたします。

 

 

この場合には,(3)の第三者との取引と同じような取扱いの方がいいんじゃないかなという感じがいたします。

 

 

  •  おっしゃりたい御趣旨はよく分かりました。

ほかにございますでしょうか。

 

 

  •  別段の定めが信託行為にある場合というのを,もし一般的な解除ということで公平義務なしという契約を認めてしまいますと,受益者としては非常に戸惑ってしまう,またもちろん受益者は信託契約に関与できませんという視点がございますから。

 

 

 

もちろん,商事信託においてそういうことがあるとは思いませんけれども,民事信託を前提としたときにはあり得るのではないかと思います。

 

 

 

したがって,一つの考え方としましては,先ほどからの「別段の定め」の議論のときに出てきましたように,具体的にどういうシチュエーションにおいて公平義務が担保されないのかというような具体的なところまで明示し,一種の説明的な規定になるのかもしれませんけれども,その上で解除されるというふうにする必要があるのではないかと思います。

 

 

ほかの義務と同じですけれども,一般的な解除規定というのは,信託の受託者という視点からしますと適切ではないのかと思います。

 

 

 

  •  そうですね,「この信託では公平義務はないものとする」なんていう規定は,やはり適当じゃないでしょうからね。

 

 

これは,この問題に限らずいろいろなところに恐らく出てくる問題なので,もうちょっと注意しながら議論していきたいと思います。

 

 

それでは,忠実義務と公平義務につきましては,一応ここでとりあえず終えまして,次の部分に移りたいと思います。

 

 

  •  それでは,次は,補償請求権と報酬請求権の方を先に御説明させていただきたいと思います。資料でいいますと28ページ以降でございます。

 

 

補償請求権につきましては,前回の提案からの変更点を含め,次の5点について説明を申し上げたいと思います。

 

 

まず第1に,大きな変更点といたしまして,資料30ページの<説明>1に記載しましたとおり,2の受益者から補償を受ける権利に関しまして,従来の甲案,乙案に追加いたしまして丙案を加えた点でございます。

 

 

 

念のため申し上げますと,受益者に対する補償請求権が原則としてあるのが甲案,原則としてないのが乙案,原則としてはありますが,受託者が報酬請求を受ける権利を有する場合,又は,受託者が信託の引受けを行う営業をするものである場合,このような要件を満たす場合には,原則として補償請求権なしとするというのが丙案でございます。

 

 

 

 

甲案,乙案が受益者に対する補償請求権の有無を信託行為の定めの有無によってのみ規律しようとしているのに対しまして,丙案というのは信託報酬の有無,あるいは受託者の属性を決定要素に含めて考えるものでございます。

 

 

この丙案のうち,信託報酬請求権のみによって区別する考え方というのは,信託報酬には信託財産を超える損失が生じるリスクは受託者が引き受けることの対価の趣旨も含まれていると解することによりまして,受託者が係る趣旨の信託報酬請求権を有している以上は,特に定めのない限り補償請求権はないと解するものでございます。

 

 

 

 

 

 

これに対しまして,受託者が信託業者であるか否かによって区別する考え方といいますのは,このような受託者につきましては自ら信託行為において受益者に対する補償請求権を有することを定めることが可能なはずであって,受益者に対する補償請求権を当然に付与する便宜を与えるまでの必要はないという考えに基づくものでございます。

 

 

 

 

受益者に対する補償請求権のデフォルト・ルールをどうするかにつきましては,当部会においても見解の対立が大きい分野の一つでございますので,今回,新たに加えた丙案も含めて御意見をいただければと思います。

 

 

第2の変更点は,やや細かい点でございますが,受託者の固有財産による信託債務の弁済について,法定代位と同様の法制をとる1(3)に関しまして,前回の提案では,債権者に通知しなければ債権者に対抗することができないとしていた点でございます。

 

 

 

この点につきましては,弁済後において受託者にかかる通知義務を課すのは,信託債権者の利益を保護するためにすぎず,仮にこれに違反した場合には損害賠償責任が受託者に生ずるということにすぎないと思われまして,対抗問題が生ずる場面ではないと考えられますので,31ページの<説明>,あるいは提案本文にございますとおり,単に「債権者に通知しなければならない」と改めたものでございます。

 

 

 

 

さらに,この代位の点に関しまして,前回の提案におきましては,債権者が係る弁済を受けるよりも前においても,民法第504条の場合と同様に,「担保保存義務等を負うものとするか,その要件はどのようにすべきかについては,なお検討する」としておりました。

 

 

 

この点について検討を加えましたのが,31ページの<説明>3でございまして,事務局といたしましては,民法第504条によりますと,債権者に担保保存義務が課せられるのは,弁済をするについて正当な利益を有する者がある場合であることを要しますところ,信託の受託者は,ここで言う「正当な利益を有する者」には当たると思われるわけですが,債権者にとっては受託者に対する債務が,単なる受託者個人の債務であるのか,それとも受託者による代位の可能性のある信託債務であるのかが必ずしも明らかでないと思われますので,受託者が債権者に対して,当該債務が信託債務であることを知らせることによって,初めて債権者は民法第504条の担保保存義務を負うことになると考えるものでございます。

 

 

 

なお,代位の件に関しましては,以上の2点のほかに,信託財産に設定していた信託債権者の担保権,例えば抵当権について弁済し,受託者への移転の付記登記をいかにするか,自分の財産についての付記登記をいかにするかという問題がありますところ,この点につきましては28ページのアステリスク1のとおり,前回提案に引き続きましてなお検討いたすものといたしまして,後日,信託財産の公示方法など,登記全般の問題となるところにおきまして,あわせて検討の結果をお示ししたいと考えております。

 

 

番人

「抵当権移転登記をすると思うんだけど。」

 

 

 

第4に,信託財産について競売手続が開始された場合の配当要求手続に関しましては,前回の提案におきましては,実体法上補償請求権は一般先取特権とみなすという方法と,権利の存在を証明することによって配当要求できる等の手続上の例外的な規定を設ける方法とを対峙させておりました。この点につきましては,前回限りでの御意見を踏まえまして,28ページのアステリスク2のとおり,後者,すなわち手続上の例外的な規律を設けるという方法をとることで整理を進めていきたいと結論したものでございます。

 

 

 

最後に,補償請求権の優先性に関しましては,前回の提案におきまして受託者の支出した費用が必要費又は有益費に該当する場合にのみ優先性を認めることを提案いたしましたところ,32ページの①,②に記載いたしておりますとおり,優先性を認めないと信託財産の経済状態が芳しくない場合には,受託者としては,補償請求権が担保されないようなおそれのある立替払いはせず,あるいは信託終了の結果を招くことにもなりかねず,かえって受益者に不利益ではないか,あるいは信託継続のためには受託者に立替払いの義務があるとされながら,優先権を認めないということになりますと,受託者としては対応に窮するのであって,酷ではないかなどの指摘がございました。

 

 

 

 

しかしながら,この点につきましては,32ページに記載してございますけれども,受益債権に対して補償請求権を優先すべきとの理由とはなり得たといたしましても,他の信託債権に対してまで優先する理由とはなり得ないと思われること,補償請求権が満足されない蓋然性が高いことを理由とする信託の終了に当たりましては,受益者に対して履行催告や通知などの手続的保障がとられること,あるいは一般的には受託者には立替払いをし,あるいは立替払いを前提とする信託債務を負担してまで信託を継続すべき義務を負うものではないと考えられることなどにかんがみまして,このような反論が可能であると思われるところでございます。

 

 

 

 

やはり補償請求権の優先権を認める実質的な根拠といいますのは,当該支出の共益性にあるものと思われますので,前回提案どおり,補償請求権の優先性が認められるのは,その原因となった支出が必要費又は有益費に当たる場合に限られるとの提案を維持することとしたものでございます。

 

 

 

以上が補償請求権についての規律の提案の内容でございます。

最後に,報酬請求権でございますが,これは非常に細かい点が2点直っただけでございまして,すなわち1(2)におきまして,信託報酬額の相当性に関する受益者への通知の内容につきまして,前回の提案では,「信託報酬の額又は算定方法について,これを相当とする理由を明らかにして」とあったところでございますが,この点を「信託報酬の額及びその算定根拠」と改めたこと,それから信託報酬の支払時期に関します3(1)におきまして,「受託者の任務の終了後」とありましたのを,「信託事務を履行した後」と改めたこと,この2点だけ変更したものでございます。

 

 

 

 

 

なお,信託報酬請求権につきましても,実質的には必要費,有益費に当たる部分を除く純粋な利潤部分については優先権を認めないという事務局の提案に対しましては,35ページに記載のとおり,受託者の職務には,信託財産の価値の維持,増加に資するという共益的な側面があるから,優先権が認められるべきではないかとの指摘がございました。

 

 

 

この指摘によりましても,しかしながら実質的に共益性が認められる範囲,すなわち必要費,有益費に当たる部分を除いて,それ以外の利潤部分についてまで優先権を認める根拠とはならないと考えまして,従来の提案を維持しているものでございます。

以上で終わります。

 

 

 

  •  それでは,今までのところで御意見いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。

 

 

 

  •  2点,意見を申し上げます。

1点目は,「信託財産から補償を受ける権利」のところでございますが,信託財産から補償を受ける権利につきましては,第2回と第5回の会議におきまして,原案に賛成というような少数の意見はあるけれども,受託者として債務を負担するときに優先権が認められないとやはりいろいろなところで逡巡してしまうので,信託事務の円滑な運営に支障が出ますということで,優先権を現行法どおり認めていただきたいというお話をしてきたわけですけれども,ただ2回,5回のところで学者の先生方からいろいろと御意見を聞いて,現行法においても基本的にはそういうことではないのだよと,○○幹事だったかもしれませんけれども,御意見もいただきまして,業界内でもいろいろ議論いたしまして,基本的には信託債権者との関係というものにもかんがみて,原案でやむを得ないのかなというふうに考え直しております。

 

 

 

一方,受益者から補償を受ける権利につきましては,第2回,第5回会議と同様,デフォルト・ルールとして認められるべきであるということで,甲案ということに賛成したいと思っております。

 

 

これは,2回,5回で申し上げて非常にくどいようですけれども,そもそも信託というのは受託者は受益者のためにいろいろな義務とか責任を負って一生懸命信託事務処理をしますと,それで受益者はその損益を受けるというのが大原則であろうというふうに考えておりますので,当然最終的な帰属というのは受益者が受けるのだろうと思っています。

 

 

 

特殊なケースとして,これもこの前申し上げましたけれども,信託財産がマイナスになるというのは非常にまれなケースだと思うのですけれども,考えられるのは二つ。

 

 

一つは,管理の失当,もう一つは非常に不可抗力な大きな天災等の事故があったときということだと思います。

 

 

 

1点目については,もともとリスクコントロールするのは受託者のところですので,当然それによって管理の失当があったら受託者が責任を負うということだと思いますので,それで責任を負うと。

 

 

2点目につきましては,やはりこれはそもそも論からいって受益者が責任を負うべきなんだろうなと,受益者の利益のために職務を遂行する受託者が,過失もないのに生じた費用を負担するという,その合理的な根拠というのはなかなか見出せないということがございまして,前回に引き続き甲案支持ということでございます。

 

 

すみれ

「保険かな。」

 

 

 

  •  この点について,いかがでしょうか。

 

 

  •  ただいまの第2点目に関連することでございますけれども,受託者の受益者に対する補償請求権は,私は乙案,つまり信託行為に受益者から補償を受ける権利を付与する旨を定めない限りはないと,このように考えるのがむしろ合理的ではないかと思っております。

 

 

すみれ

「みんな定めそうだね。」

 

 

その理由は,まず○○委員もおっしゃいましたように,受託者は信託財産を管理運用するわけですけれども,最近いろいろな信託も出てまいりまして,むしろリスク管理が重要であるという,場合によっては信託財産がマイナスになるということもあり得るわけであります。

 

 

 

そのリスクを管理する際に,やはり管理者である受託者に基本的に責任を集中させた方が,リスク管理が一般的にいうとうまくいくのではないか。

 

 

逆に申しますと,結果的に穴があいたから受益者にといったところで,受益者にそのリスクを事前に,どのように回避する手段があるのか,このような回避手段のための方法等,具体的なプロセスを考えますと,やはり原則としては受益者に対する補償請求権はないこととしておき,信託行為に定めておけば,それによって一種の注意を喚起することが可能になるわけですので,場合によっては受益者の方で手を打つということが可能になるわけです。

 

 

 

特に,民事信託だけではなくて商事信託の方に話を発展させますと,やはり信託で一番広く使われるものは,投資の対象としての信託であり,現に我が国はそうなっていると思いますけれども,投資対象がマイナスになるということは,これはもう投資商品としては非常に,不適格とまでは申しませんけれども適切ではない。

 

 

したがって,この民事信託,商事信託,いずれにしても,補償請求権はデフォルトとしてはないと,このように考えることがむしろ合理的ではないかと思いますので御発言させていただきました。

 

 

 

  •  今の○○委員の意見と近いところがあるのですけれども。結論は丙案の方かと思うのですけれども。

 

 

金融商品といいますか,証券化とか最近使われている管理型の信託においては,投資家は社債型受益権,資産流動化法でもそう言っていますけれども,社債型受益権ということで社債と同様な商品として購入しているわけでして,なおかつ,信託契約,信託行為に投資家は当然関与できませんから,それがデフォルト・ルールとしてたまたま信託契約に書いてなかったことによって,あるとき請求が来ると。

 

 

非常に抽象的な議論かもしれませんけれども,それでもそれが必要だという議論なのでしているのですけれども。

 

 

 

というのは,管理型の信託については何十兆と報道されていますし,今後信託を利用しようという正しく信託法の改正の議論において,受託者の受益者に対する補償請求権の行使を原則認めるという議論自体が,今までそういう議論が強かったのでそのとおりだと思うのですけれども,やはり変な議論ではないのかなと。

 

 

信託そのものからの議論もそうですし,今日における信託の利用という視点からもそのように思います。

 

 

 

 

他方,ですから信託契約に書く書かないというよりも,商事信託--すべての領域ではないかもしれません,土地信託みたいなものを考えたときは違うのかもしれませんけれども,今日主流を占めているところの商事信託とでも言うのでしょうか--においては,ですから,年金等も入るのかもしれませんね。

 

 

 

 

年金等で,もし年金加入者が受益者というふうに認識されるときに,そこに請求がいくと,これ自体だれも認識していない話でして,ですから一般的な意味においての商事信託においては,そもそも丙案とでもいうのでしょうか,属性によって補償請求権はないのだという本来の信託の姿というのは,通常ではないのかなと思います。

 

 

すみれ

「年金で請求がきたらびっくりだね。」

 

 

 

他方,民事信託になりますと,民事信託として何を念頭に置くかということによって違うかもしれませんけれども,弁護士の業務としては親亡き後の子の信託とか,要するに高齢者とか身体障害者とか,親が先に亡くなった場合の子供の扶養とか,そういう形で民事信託が利用されるということが今後考えられますけれども,そういう場合において子に請求するというよりも,信託財産にわざわざ手を付けずに,適切なところから補償を受けるということも場合によっては必要かもしれません。

 

 

 

ただ,それが絶対必要という意味ではなくて,1の信託財産から本来補償を得ればいいわけでして,何も知らない受益者,先ほどちょっと議論したような悪質な民事信託を考えるときに,何も知らない受益者が信託にした方がいいと言ったところ,多額の補償請求されたということにもなりますものですから,属性といっても民事信託の場合には補償請求があらゆる場合にあってもいいのだとまではもちろん言い切っているつもりではございません,より細かい議論が必要だと思うのですけれども,ただ丙案のような形て,やはり原則ないのだと,商事信託においては原則ないのだということで,あとは例外的なことを考えていくということが適切なのではないかと思います。

 

 

 

  •  私も,この問題については何度か発言していて,同じことを申し上げるようで恐縮ですが,28ページの第2項の「受益者から補償を受ける権利」のところですね,○○委員がおっしゃるのも,日本のこれまでの信託のことを考えると,現行法として36条があるわけですから,そういう考えも理解し得るのですが,そもそも信託とはというそもそも論で始められると,ちょっとやはり異論があって,そもそも信託とはと,日本の信託とはという御趣旨だとは思いますが,「日本の」というのを外してしまって,信託とはという話にしてしまいますと,受益者から補償を受ける権利というのが受託者に認められ,かつ報酬についてもこれはいくことができるわけですね,後の方で全部準用していますから。

 

 

 

 

報酬についても受益者からと。そして利益の存するところに損失ありという,極めてもっともらしい原則が正に信託のそもそも論だよと言われると,実際にアメリカの信託法学者もイギリスの信託法学者もびっくりするわけですので,彼らの信託がそもそも信託なのかということで居直ることもできますけれども,どうなんだろうかという感じがするわけです。

 

 

 

 

 

 

今までの36条は,私の勝手な理解では,設定当時に,信託のその点については理解していないために入った条項であり,しかし現実に何の問題もなかったのは,特に戦後ですが立派な信託銀行に限って受託者になれるという,そういう体制をとってきたから今まで何の問題もなくて,空理空論のところで,こうなった場合はどうなるのだろうという議論が行われただけで済んでいたと思うのですが,繰り返しますが,信託事業というのが今後いろいろな形で広がるという話になってくると,この機会にそれを見直す必要が出てくると思うのですね。

 

 

 

 

次の話は,少しこれも概念論ですが,代理と組合と会社と信託という話で,しかもリスクとかロスのところだけで比較をしてみようかと思っているのですが,通常の代理は,ここにおられる方には釈迦に説法で,ただ私だけが間違ったことを言う可能性があるわけですが,つまり効果は,というか,この場合はロス,リスクの方だけを考えますけれども,本人に帰属するということなので,今度,今この信託法の改正で問題になっている受託者について,有限責任というようなことを認めた場合,しかもこの補償請求権というのをこういう形で残すと,先ほど○○委員は別の文脈でどこまでいくか分からないということですが,この補償請求権のリスクというのは受益者にとっては突然,しかもどこまでいくか分からないという意味では無限責任ですので,受益者に無限責任があって,受託者には責任が限定されているというような形の信託がもしこれからできるとすれば,それは信託ではなくて代理ですね。

 

 

ロスの面からだけ見れば,ということですけれどもね。

 

 

すみれ

「代理か。」

 

 

それから,そうじゃなくて,現行のように受託者もいろいろなリスクを負っているのですよと,無限責任を負っているのですと。

 

 

同じように,だから受益者だって負ってもいいでしょうというのは,無限責任を負って,無限責任を負っているのが二人いるというのは,私の考えだと普通には,アメリカでいえばパートナーシップ,日本でいえば組合ということになると思うのです。

 

 

業務執行はこの人だけやるかもしれませんが,特に何の特約もない場合には,ロスがみんなに及んでくるという形だと思って,それはやはりある意味では信託ではないですね。組合である。

 

 

 

すみれ

「組合か。」

 

 

 

もう一つ,会社の話をしますけれども,会社は御存じのように株主について有限責任を認めていて,この信託のところだけで受益者のところへ無限責任というのが出てくるというのがちょっと政策論として問題,投資とか商事のところで特に問題になると思うのですが,もう一つ信託のところに戻って,信託がそもそも信託たるゆえんというのは,信じられないことに受託者が無限責任を負い,受益者は責任を負わない,有限責任ですけれども,期待していた受益権が実際に信託がつぶれてしまって,なくなってがっかりしたというだけの,そういうリスクはありますけれども,そういうものが信託なので,だからこそおもしろいというのでしょうか。

 

 

 

そういうようなスキームにやはり意味があって使われるのだろうと思うのです。一つの証拠には,やはり受益者の同意がなくても,とにかく受益権が発生するのだというふうに,これは日本でも英米でもそうなっていて,それはどうしてそんなことが可能かというと,受益者の方にはロス,リスクがないのですよという話なら,この話は分かるわけですね,同意なんか要らないでしょうという話になるということですね。

 

 

 

 

結局,受託者にリスクもあるかわりに裁量権をゆだねて,専門家としてとにかくいろいろなことをやってもらおうというためには,この受益者のところからはとにかくリスクはないのだという仕組みをつくっておかないといかんのじゃないかと思って,これは私はやはり考え方の問題ですが,忠実義務と並んでここの補償請求権について受益者のところにいく--報酬の方も同じですけれども--というのをなくすということが,少なくともデフォルトとしては当然乙案になるわけですけれども,乙案でなければならないというふうに私としては信託の,いわば人の言葉をかりて言えばそもそも論からして,この乙案で今回はいってもらいたいというふうにお願いしたいと思います。

 

 

 

 

 

  •  私も,結論を申しますと,この甲,乙,丙という3案,とりわけ今回丙案も出していただいて,事務局の御苦労というが大変忍ばれるのですけれども,やはり乙案が適切ではないかと考えております。

 

 

言い方を変えますと,とりわけ甲案は制度化が非常に困難ではないかというふうに考えておりまして,私,この問題,発言させていただくのは初めてですので,ちょっと重複もあるかと思いますけれども,少しお時間をいただければと思います。

 

 

まず,そもそも任意規定の在り方としてどういうものが適切かということですけれども,任意規定の在り方については,現在のところは恐らくは多数の人が考えるものがどうであるかという考え方と,制裁的な考え方,情報を出させるための任意規定という両方の考え方があるかと思いますけれども,いずれからいたしましても,結論として乙案のような形になるのではないかと。

 

 

 

 

 

多数の当事者がどう考えるかというときに,典型例をどういうものを考えるかですけれども,商事信託につきましては既にもう御指摘がございましたように,現在の主流である投資や年金において,これを多くが受益者にかかっていけるというのが普通だというのは,そういうふうに考えられないということはこの場で一致を見ていることだろうと思われます。

 

 

 

それについて,逐一信託行為で負わないということを書いていくというようなこと,またそういう情報を出させるということに意味があるかというと,その意味もないと思われますので,そういった商事の利用についてはやはり乙案にならざるを得ないだろうと。

 

 

 

民事信託の方ですけれども,民事信託としてどういうものを考えるかというときに,これもまた最も典型的な例として考えられるのは,有能な受託者と,残念ながらそうではない,それだけに保護に値する受益者のための信託ということですから,リスク管理の点,保険等も含めてそういう点からしても受益者に対して,最終的な責任を負わせるというのが多数の当事者であれば考えるものとして合理的かというと,そうでもないでしょうし,また情報を出させるという点からしても,そうではないというふうに考えられますので,そういたしますと一般的な任意規定の在り方と信託の典型例ということを考えたときには,乙案にならざるを得ないのではないかと。

 

 

 

 

2点目は,比較法の観点との関係ですけれども,比較法の観点から甲案のような考え方が異例であるということは,○○委員が繰り返し御指摘になっているところです。

 

 

問題は,現行法との関係で,日本の信託法は現在そうなっているのではないかということについて説明をしておく必要があるのではないかと思いますので,この点を補足させていただきたいと思うのですが,現行法36条がどういうような規律であるのかというのは,また更に詳細を踏まえる必要があるとは思うのですけれども,これはやはり3項というのは非常に大きいもので,常に放棄ができると,もともとは必ずしもはっきりしないかもしれませんけれども,受益権の放棄さえしてしまえば,全面的に責任を免れるというものが想定され,また大本になったイギリスなどもそうではないかという指摘もあるようでございます。

 

 

 

 

そういたしますと,現行法というのは受益者が補償責任を負うような形になっていながら,その実質は具体的にそれが問題となった段階でいつでも選択できると,負わないことも選択できるというような形を規律しているわけで,それを今回の改正の中ではその部分をかぎ括弧つきの合理化しようというので,いったんいわば受益者たる地位を引き受けたというようなときには,それまでに発生したものは負うというような考え方が出されているわけですので,それとのセットですけれども,もしそういう考え方を受益権の引受けないし放棄との関係でとるのだとすると,これはやはり甲案というのは現行法からもかなり,現行法の受益者の地位よりもずっと厳しいものにしてしまうというものですから,そういうような規律を提案することになるのであって,その点はやはり問題ではないかと。その正当化というのは難しいのではないかと思っております。

 

 

番人

「かぎ括弧つきの合理化、か。」

 

 

 

それから3点目で,しばしば挙げられる利益の帰すところ損失もまた帰すべきであるという一般論なんですけれども,これもきちんと調べていないのですが,そのルールだけでこの問題が規律できるのかということでして,局面は違いますけれども,例えば不法行為の715条,716条などですと,利益が帰しているところ常に損失も帰すというような立場はとっていないわけで,指揮命令関係があるという場合であるからこそ責任を課すという,もう一つの段階があって,ただその根底にはどういう考え方があるのかというときに,説明原理として出てくるというものではないかと思いますので,利益を得ているような人は常に最終的な損失も帰すべきなんだということが民法一般のルールであり,直接にここで解決を導くようなルールとして使えるのか,考え方として使えるのかというのは,もう一つステップが要るのではないかと。

 

 

 

かえって指図等を全然していないような場合にも,損失を帰すことができるというのは,異例だというふうにも考えることができるように思われますので,その一般的な考え方の当てはめについても,なお検討する必要があるのではないかと思います。

 

 

 

番人

「たしかに。もう一つ段階を踏んで、か。」

 

 

 

最後,4点目で,丙案についてですけれども,丙案は非常に工夫のされた考え方だと思うのですが,この考え方によりますと,有償でない,報酬がないような場合であって,かつ営業等はしていないような場合には,この場合にはなお受益者に対して補償請求ができるというのがデフォルトであるということなのですが,どういった場合がそういう場合に当たるのかということで考えていきますと,例えば友人の弁護士さんに自分の子供のことを頼むとか,そういうような場合なんかが入ってくるのかと思います。

 

 

 

無償であって,別に営業として引受けをするような立場でもないとしますと。

 

 

ただ,そういったときに信託財産で賄うに足りなくなったというときに,子供にかかっていける,あるいは高齢者にかかっていけるとか,そういうのが果たして適切なのかというと,最初の話に戻ってくるわけですけれども,報酬を得ているような人はリスクも引き受けていると,営業でやる人には分かっているはずだというような,それ自体としてもそうだと思うのですが,ではそれ以外の場合は正当化できるかというと,それはやはり困難ではないかと思われまして,それとの関連でこの2の(5)のアステリスクの3の「補償を受ける権利が認められていない場合についても……終了に関する規律を設ける」というのは,私はこれが非常に重要だと思っておりまして,義務を課すかどうかとは別に,しかし促すような形でこの部分を検討してくれるのであればまだ続けていけるけれども,というような提案ができるような形にしているということが重要で,逆に言うとそこまでの限りでいいのではないかというふうに考えております。

 

 

 

 

さらに,多少細かいことですけれども,資料の記述のところについて最後の最後に申し上げますと,30ページの<説明>の1の2段落目,「甲案及び乙案は」と書かれているところの5行目から,「特に,乙案においては」ということで,乙案の問題点が指摘されております。

 

 

 

信託財産ですとか,それを売却することによって得た金銭によって費用のすべてを賄わなければならないときに,引受けの際の事情等によってはそういう認識を有する機会が存しないおそれが否定できないというふうに書かれているわけですが,これは甲案であるときには受益者がそれは全部分かっていてという状態になるわけで,しかも受益者についてはもちろん受託者がこういうことですよという説明ですから,受託者の認識をもとに受益権をとるかとらないかという話をするわけで,受託者についてなかなか機会がないのであれば,受益者については一層ないというふうにも感じますので,この部分の記述というのは,甲案をベースにされた丙案を導くための一つの根拠として出されているものというふうに推測しますけれども,非常に甲案に偏った視点ではないかと考えております。

 

 

 

 

  •  この点について,何かもしありましたら……。

 

 

 

  •  補足で1点だけ。

先ほど,○○幹事の方から,現行法の36条3項のところの解釈として,常に放棄できるという考え方もありますというお話でしたけれども,私自身は基本的に債務超過状態になっているようなものについては,特に自益信託についてはそれは放棄できないというふうに考えておりますし,学説上も多分そういうふうに考えられている方もいらっしゃると思います。ということだけを,ちょっと申し上げたいと思います。

 

 

  •  放棄の問題と密接に関係しているということは確かだと思いますね。

 

 

  •  一言だけですけれども。

この補償請求権については,通常信託をした場合には,受託者の方としても信託財産の範囲内でこれをやるべきだというふうに考えているのが通常ではないかと。

 

 

受益者の方も,そのように考えているのがむしろ通常ではないかと思います。

 

 

信託財産の管理ということからすると,やはりどちらかというと,受託者としては信託財産の範囲内できちんと管理運営をしていくというのが本来的な在り方で,それがむしろ義務というふうに考えられてもいいのではないかと個人的には考えております。

 

 

そういった観点からすると,受託者の責任なり,そうした義務という観点からすると,これは乙案を原則とすべきというふうに考えております。

 

 

  •  1点だけ,補足的なことですが。

 

 

私も乙案がいいと思うのですけれども,その理由の一つとして,受益権の放棄,これは最初信託を受けるかどうかという段階で放棄あるいは承認をする判断をする際に,書かれていると判断が適切にできるだろうと,そういう観点からも書くことが原則だということでいいと思います。

 

 

 

  •  それでは,この問題については恐らく御意見があると思いますので,また後で戻ってくるかもしれませんけれども。

 

 

 

 

  •  済みません,違う論点で2点でございます。

一つは,第2回及び第5回で繰り返し申し上げたことですけれども,この資料でいきますと32ページの優先性について,有益費,必要費に限られるということでございまして,要は立替払いについて優先権は認められないという話で,これは繰り返し申し上げましたけれども,かつ,事務局として非常に御検討いただいたということは非常にありがたいと思っておりますが,結論としては消極扱いということで非常に残念に思っているわけでございます。

 

 

ここに書かれている理由はもちろん分からないわけではないのですけれども,私から申し上げたことは,結局ここも同じ話で,こういう信託でよろしいのですかという話になってくると思います。

 

 

もちろん,義務としてやらなければいけないことはやらなければいけないのですけれども,受益者のことをおもんぱかって立替払いをする,それによって信託も維持されて,よって受益者も満足するし,信託債権者もほぼ満足する場合が多いだろうといったときに,そういう立替払いをすることにちゅうちょされるような規律を設けるのはどうかという話で申し上げたわけです。

 

 

もちろん,そういうことが難しいということであれば,基本的にはそういう信託になると,結局親切な信託ではなくなるという,義務さえあればいいという信託になる,そういうものを我々は追求しているのだというふうな理解でいるのかなと思った次第でございます。

 

番人

「特約か。」

 

 

仮に,これを認めた場合でも,これは第2回目でも申し上げたことでございますけれども,そうしたときに,やはり必要費,有益費の定義が明確でないと,同じようなちゅうちょの問題が出てきますものですから,ここは是非とも解説等で明確化していただきたいと思っております。

 

 

殊に,必要費と有益費の違いについても,やはり明確にしなければならないわけで,これは範囲が違ってくるわけですから,ただ実務上は何かで申し上げたかもしれませんけれども,なかなか区分がしづらいところもあり得ましょうから,そこもあわせてなお検討していただきたいというふうに思っております。

 

 

 

 

 

それから,また違った論点で,今回加わった論点で,担保保存義務の話ですけれども,これは債権者の立場から申し上げると,ここでも31ページのところで考慮はされていますけれども,要するに債権者がこの債権が信託財産にかかるものものかどうかということを知っているかどうかということです。

 

 

 

 

もし知らなければ,かかる義務を負わすと非常に酷だと思っております。

 

 

よって,こういう義務を仮に置くとしたとしても,少なくとも債権者がそういう状況を知っているということを確保できるような状態でないと,債権者にとって困った事態になるのではないかと思っております。

 

 

 

そこで,ここでは規律の在り方としては本文のところで「知らせた場合」とか,そういうことが書いてございませんが,ただ先ほどの事務局の御説明では,たしかそういうことを前提としたような議論だと理解していますけれども,そういった知らせたという場合を前提にしていただきたい。

 

 

 

かつ,これも有限責任信託のところでも同じような議論をしたと思うのですけれども,やはり確実に知らせるということを配慮していただきたいという意味で,例として,書面で知らせた場合とか,そういうところの御配慮もいただきたいかなというふうに思っております。

 

 

 

 

  •  受益者に対する補償請求権,先ほどから御意見がありますように大きな争点の一つでございます。先ほどからの議論にありますように,今度丙案というのが出てまいりまして,これについての御意見も伺っているわけでございますが,賛成される方,反対される方がございました。

 

 

 

これは,こういう言い方をしては申し訳ないけれども,例えば信託銀行等の

受託者の立場からすると,今のところ丙案的なことは--丙案的なというか,商事の信託については,少なくとも受益者に対する補償請求権はなくてもいいというようなお考えだったのではないかと。

 

 

 

  •  商事信託においては,例えば投資商品については今までもお話があったように,基本的に補償請求がいったりしては商売になりませんので,そういうことは全然考えておりません。

 

 

投資信託等についても,基本的にはこれは書くという方法で対処は可能ではあります。

 

 

 

  •  商事信託法要綱なんかでも,商事の信託に関しては少なくともこういうルールで,信託銀行もそんなに不満ではないというふうに私なんかは理解していたのですけれども。そういう意味では,一々書くというのではなくて,デフォルトのルールとしてね。

 

 

 

 

ただ,民事の信託まで含めて議論しますと,先ほどから若干また別な御意見もあったかと思いますけれども,ただ民事の信託においても,信託というのが……。

 

 

 

先ほどちょっと,委任との比較,別な忠実義務との観点で委任との比較がございましたけれども,補償請求権についても委任契約との比較などは若干気を付けなくてはいけない点だとは思いますけれども,信託というのが単に財産の名義を受託者に移すだけではなくて,私の個人的な理解かもしれないけれども,基本的に信託というのは,受益者は指図をしない,委任の場合には受益者は指図をするというのが基本的な性格で,そこが非常に大きいのだと思うのですね。

 

 

 

 

 

したがって,信託の場合には受益者が指図をすることもできない,特別に権利を与えれば別ですけれども,そういう状況のもとで受託者が全面的に責任を持って管理する制度なので,したがって何かの場合,損失が生じたような場合にも受託者が一応責任を負うと,責任というのはリスクを負担するという意味での責任を負うというのを,何人かのさっきの御意見にちょっと私の個人的な意見もつけ加えたいと思います。

 

 

すみれ

「指図できるかできないか、か。」

 

 

 

いずれにしても,ただこれは大きな争点であり,ここでもって一気に決着をつけるというつもりはございませんけれども,更に御意見等があれば……。

 

 

  •  ちょっと違った角度から。直接,甲,乙,丙の話ではないのですが。

 

 

一つは,補償請求権の優先性についてですが,先ほど○○委員の方から,前回これが問題となったときに○○幹事の方から説明があって,現行法でも優先権というのはないのだなというのが分かったので,その点は構いませんというふうにおっしゃったのですが,私は○○幹事が前回説明されたとおりであろうというふうに思っております。

 

 

 

何を説明されたかと申しますと,幾ら受託者に優先権を認めても,受託者自体は信託債権者に対して自ら債務を負っているわけですから,信託債権者と競合する場面において,信託財産に対してどちらが優先権を持っているかなんていうことを議論したってむだなんですね。

 

 

 

そこから先に取れたって,個人資産も含めて信託債権者に対して弁済しなければいけないわけですから。

 

 

 

ですから,私は現行法が根本的におかしいというふうに思っていて,何を考えているのかさっぱり分からないというのが現行法の理解なんです。

 

 

 

 

 

 

私は,そこがポイントなのであって,そこに○○委員も納得されたと思うのですが,しかるに,説明は,先ほど○○委員がおっしゃったように共益性云々の話で言っているのは,私はどうかなと。

 

 

 

説明の仕方として,そもそも優先権を認めるという法制度というのが,率直に言うと論理的にあり得ないということを理由にすべきなのではないかというのが第1点であります。

 

 

 

第2点は,直接甲,乙,丙案について口を挟むわけではないのですが,個人的に私も原則は乙案でいいのだと思うのですけれども,乙案をとったときのバランスの問題というのがやはりあると思うのです。

 

 

つまり,この第35の1のところで,一応信託財産から補償を受ける権利というのを持っていると,しかしながら(2)で,「信託目的の達成の妨げとなる場合又は受託者に信託財産を処分する権限が付与されていない場合」には求償を待ちなさいという話になっていて,私は乙案をとったときにはちょっとこれはかわいそうじゃないかという感じがするのです。

 

 

 

 

乙案をとる限りにおいては,マイナスになるというふうな危険があるときには,すぐに信託の事務の履行というものを停止できる,そしてどんどん立替払いしたものについては取れるというふうにしてあげなければ,履行は継続しなさいと,もちろん信託を終了するという道はあるのですが,それはそれなりの手続をとらなければいけないので大変なわけでありまして,そういうふうな終了について簡易な道がないと仮に仮定したときに,信託は継続しなさい,補償請求権については信託財産から取るのも我慢しなさい,しかるにマイナスになったときには受益者に対しては言えませんというのは,少しバランスを欠いているのではないか,乙案をとるときには1の(2)のところの若干の緩和が必要なのではないかというふうに思うということを1点申し上げておきます。

 

 

 

 

 

 

  •  今のは,重要な御指摘ですね。

ほかに,御意見ございますでしょうか。意見の分布は,大分明確になってきたと思いますけれども。

優先性については,○○幹事の御意見だとおよそ認めるのはどれについても意味がないと,そういうことになりますか。今,必要費,有益費についてだけは優先性を認めるということもあり得るわけですけれども。

 

 

 

 

  •  しかし,優先するというのは信託債権者に対しても優先するのですか。しかるに,信託債権者に対しては,個人財産も含めて……。

 

 

 

  •  結局,意味ないということになるのでしょう。例えば,税金なんかが典型的には……。税金はちょっとあれかな。

いずれにしても信託債権者は受託者に対してかかっていけるのだから,だから信託財産の取り合いのときに優先性を認めても……。

 

 

 

 

  •  そこはそうなんじゃないかと思うのですけれども,もちろん信託財産に責任限定特約を締結しているということになりますと,これは別になるのですが,責任限定特約を締結しているにもかかわらず,いったん有益費とかそういう必要費というものを自己の財産から支弁するという行為をするというのが,私には多少矛盾があるような気がするのですが。

 

 

 

つまり,自分のポケットは使えませんと,信託財産から支弁いたしますと,私の固有の財産からは支払いませんというふうに言って,しかし支払ったときに,優先権というのは,かなり非常に特殊な場面を念頭に置くことになるのではないかなという気がしますが。

 

 

 

 

  •  この案は,そういうのが有益費等であるような場合には,優先的な権利を認めていいだろうということになるのだろうと思いますけれどもね。

 

 

 

  •  ○○幹事の最後の方の御意見にちょっと違うことを申し上げることになるかもしれません。

 

 

必要費,有益費,ちょっとこれいいか悪いかは十分まだ意見を持っていないのですけれども,意味がないことはないのだろうと思うのです。

 

 

すなわち,必要費,有益費に限ってですが優先性を受託者の固有財産に認めることは,受託者の固有債権者,受託者の個人債権者との関係で意味を持つと。

 

 

 

すなわち,必要費,有益費に限っては信託財産の中で信託債権者が割合的に弁済を受けるのではなくて,そこは固有財産にまず移して,固有財産に対して債権者は,受託者の個人債権者と信託債権者とそろいますので,そこで割合的に弁済をしなさいということで,その部分は個人債権者もかかっていける原資になるというところで違いがあるだろうと。

 

 

それは,現行法についてもそういうふうな説明ができるのだと思います。したがって,その範囲を費用全部ではなくて,有益費,必要費に限るというのが今回の御提案だと思いますので,無意味ではないので,その当否を考えていくべきなのだろうと思います。

 

 

 

その当否を考えるのは,妥当ではないかと私は思います。しかし,そこについては十分うまく今理由を述べることはできませんが,無意味ではないということは強く申し上げたいと思います。

 

 

 

 

 

 

  •  今まで議論に出ていなかった認識のところで,受益権の放棄と非常に密接に関連があると,もちろん放棄の議論をする場ではないのですけれども,私の理解ですと自益信託には受益権の譲受人が放棄できないような方向の議論があったと思うのですけれども,やはりそれだと,仮に乙案だとしても,信託契約に書いて,投資商品というのは自益信託形式ですから,そうすると放棄もできないという議論になってしまうので,それはちょっと問題ではないかと思います。

 

 

 

あともう1点,ここは議論できていなかったかと思うのですけれども,受益権が有価証券化された場合ですけれども,有価証券化された場合でももともとの信託契約に求償権ありと,補償請求ありと書いてあると,やはり受益者は義務を負うという理解になってしまうとすると,そもそも有価証券--政策論ではなくて,やはり有価証券という視点からしても,何か素直に受け入れられないことだと思いますし,有価証券に何を書くのか,そもそも受益権は単なる権利ですから,その有価証券の券面の書き方とか,信託契約そのものを受益者はどういう形で常に見る権利を持っているのかということ自体にも影響してくると思います。

 

 

番人

「受益権は地位も入っているらしい。」

 

 

特に有価証券化された場合には。ということで,乙案というのが一般的に妥当な議論なのかもしれませんけれども,常に信託契約に書けばいいのだというだけでは,やはりまだまだ信託法を有効に利用しようとするときには不十分なのではないかと思います。

 

 

 

  •  今の点,1点だけ補足いたしますけれども,事務局の提案では,有価証券化された場合につきましては,補償請求権,報酬請求権,ここの規律にかかわらず認めないものとするという提案はしておりますので,念のために1点補足させていただきます。

 

 

  •  恐らく,それは合理的な内容でしょうね。

 

 

  •  今まで,補償請求権については乙案に賛成するという対応をとっていましたけれども,この問題に関連して,弁護士が一般の法律事務として,有償で信託の受託者になるということがこれからあるのではないかと考えていますが,そういう受託者の立場で見ても,乙案となるのがやはりいいのかなと考えております。

 

 

 

ただし,先ほど○○幹事の方からお話があったように,1の(2),要するに信託財産を処分してかけた費用を回収する道が制限されていると。

 

 

 

これが余りきついと,やはり受託者となる場合を自分で想像してみるときついかなという感じがいたしますので,○○幹事の御指摘は大変もっともなことだと思いました。

 

 

 

 

  •  この点は重要な問題点で,信託財産が処分できるようにならなくては困るという問題と,それから仮に信託財産は処分してはいけないというようなタイプの信託であれば,やはり信託は終了するという方向が簡単にできないと困るということですね。

 

 

 

大体の御意見の分布は分かりましたし,また○○委員,まだなお御意見あるかもしれませんけれども,よろしいでしょうか。

 

それでは,次のテーマに行きましょう。

 

 

  •  では,最後の差止請求権,検査役選任請求権と,それから受託者が法人である場合の理事の責任について,簡単に御説明をいたします。

 

 

まず,第30の差止請求権の規律でございますが,これは受託者の将来の信託違反行為に対する差止請求権に関する提案ということになります。

 

 

まず,前回の提案に比べまして,提案自体を改めた点でございますが,これは<説明>の1のとおり,差止請求権者に他の受託者を加えることとした点でございます。

 

 

 

これは,受益者保護の観点からは,他の受託者も差止請求権者に加えることが複数受託者間の相互監視義務の実効性を確保するとともに,事後的な救済手段として損失てん補請求等が認められている以上,事前の救済手段としても差止請求権を認めることは適当だと考えられるからでございます。

 

 

 

なお,21ページの末尾及び(注2)に記載しておりますけれども,他の受託者の差止請求権については,特に要件を軽くすべきではないかという指摘もあり得るところでございますが,この点について御意見があれば伺いたいと思っております。

 

 

 

以下では,提案の文言自体は改めませんが,前回会議での指摘を踏まえまして検討した点につきまして概略を御説明いたします。全部で4点ほどでございます。

 

まず,一つは<説明>の2に関しまして,差止請求権の態様としては,あくまでも受託者の将来において行おうとしている信託違反行為,これは法律行為のみならず,無効な法律行為に基づく履行行為のような事実行為も含むものでございますが,その将来の行為の差止めというものでございます。

 

 

 

それにもかかわらず,提案のような文言を採用しておりますのは,受託者が信託違反行為を継続している場合があることを考慮したことなどによるものでございます。

 

 

次に,<説明>の3に関しまして,前回会議におきましては,複数受益者の受益権の内容に差異があるような場合においては,差止請求を受けた受託者が判断に困るおそれはないかとの指摘がされました。

 

 

 

この点につきましては,受託者としては,差止請求権の厳格な要件が満たされているか否かを善管注意義務のもとで判断すべきであり,これは通常の信託事務処理の場合と何ら異なるところはないのでありまして,差止請求の局面においてのみ受託者に判断の困難を強いるとの指摘は当たらないと考えるものでございます。

 

 

 

 

次に,<説明>の4に関しまして,前回会議におきましては,受益者の受任者に対する差止請求権をも認めるべきではないかとの指摘がされましたが,受任者に対しましては直接の契約関係にある受託者がしかるべき権利行使すべきであって,受益者としては受託者に対する監督権行使をもって自己の権利の擁護を図るべきであると考えるものでございます。

 

 

 

最後に,<説明>の5に関しまして,前回会議では,差止請求権の濫用を防ぐために,裁判所は,受託者の請求により差止請求者に担保の提供を命ずることができるとの規律を設けてはどうかとの指摘がされました。

 

 

この点につきましては,資料23ページに記しました現行商法における合併無効の訴えですとか,株主代表訴訟,そのほか被告の請求により悪意の提訴者に担保の提供を命ずる規定は商法に多数存在いたしますけれども,このように商法におきましてこのような規定があるのは,恐らく総会の存在を前提にこのような訴訟類型について類型的に濫訴のおそれが高いと想定されるのに対しまして,信託における差止請求権にはこのような特殊事情があるとは思われませんし,商法においても差止請求権には被告取締役に担保請求を認める規定は存しておりません。

 

 

 

 

その他,保全であれば民事保全法により担保の提供を命ずることができますし,本案であれば請求を認めないという方法もありますので,今回の提案でも担保提供に関する制度を設けることは提案しておりません。以上が差止請求権でございます。

 

 

次に,第31の検査役選任請求権でございますが,これは前回の提案から特段の変更はございません。

 

 

 

 

 

なお,前回会議におきまして,裁判所は,検査役の報酬を決定する手続のみならず,検査役を選任する手続においても「受託者の意見を聴取しなければならない」とすべきではないかとの指摘がございました。

 

 

 

しかし,報酬は,選ばれた以上は必ず決定することを要するのに対しまして,選任についてはそもそも明らかに濫用的な申立てであって,およそ受託者の意見を聞くまでもなく,選任を要しないというような場合もあり得ることにかんがみますと,裁判所が選任の要否を判断するに当たって義務的に受託者の意見を聞かなければならないとするのは,硬直的に過ぎて妥当ではないと思われます。

 

 

 

そこで,裁判所は,検査役選任手続に当たりまして受託者の意見を聞くか否かは,現行法であれば非訟事件手続法11条の趣旨に従いまして,裁判所の職権による裁量的判断にゆだねればよいと考えるものでございます。

 

 

最後に,第32の法人役員の連帯責任ですが,これも変更はございません。すなわち,本条は受益者保護のための規定でございますので,対象となる責任は受託者の受益者に対する責任,典型的には損失てん補や原状回復の責任であること,理事等が受託法人の任務違反行為に単に関与しただけでは責任を負わず,受託法人の違反行為について自ら悪意又は重過失があるときにのみ責任を負うものであること,以上のような点を明らかにしたものでございます。

 

 

  •  それでは,ここまででお願いいたします。

 

 

  •  それでは,差止請求権と検査役の選任請求について申し上げます。

 

 

まず,1点目の差止請求権につきましては,今回は他の共同受託者の差止請求というのが提案として入っているわけですけれども,これについては損失てん補請求であるとか,原状回復請求とか,それとの平仄から基本的には特段の異論はございません。

 

 

あと,職務分担型の共同受託の場合につきましては,23ページの(注1)のところで,特段の事情がない限り,他の受託者が信託違反行為の差止めをしなかったとしても,相互監視義務に基づく責任を問われることはないというような説明がありますので,これについても賛成しておりますが,ただ1点だけ,年金信託等で見られます財産分属型の共同受託につきましても,やはり基本的には相互監視というのはやっておりませんので,ここについても基本的には職能分担型と同じような形で,相互監視がないという形で差止請求をしなくても善管注意義務違反にはならないという形のことを明らかにしていただきたいということが1点です。

 

 

 

次に,信託事務の受任者の行為に対する差止請求でございますが,これについては22ページの<説明>の4のところにあるとおり,現行法の26条3項を削除して,受任者の過失による損害は,受託者による責任追及によって回復するというふうに私ども主張しておりますので,それとの平仄から,ここにおいても差止請求の対象外の行為というふうに整理されるべきだと考えております。

 

 

 

それと,次に検査役の選任請求ですけれども,これについては第5回の会議で非訟事件手続法の129条の2で取締役と監査役の陳述聴取というのが規定されているから,同じようにしてくださいというお話を申し上げましたら,今般,基本的には裁判所が職権をもってするし,通常聴取されるであろうから,必要が特にないのではないかというお話がございました。

 

 

 

それで別にこだわるつもりはないのですけれども,通常されるのだったら規定していただいてもいいのかなということをちょっと申し上げたいということでございます。

 

 

 

 

 

 

  •  今のお話にもありました,受任者の差止請求の可否の点について御意見申し上げたいのですけれども。

 

 

これは,前回の中でも受任者の行為についてどうかという議論があったかと思いますけれども,やはり受益者の立場からすると非常に心配なところです。

 

 

 

受託者が単独で違反行為を行った場合にはとまる,ところが受託者が例えば委託によって受任者とともに行為をした場合とか,あるいは受任者を利用して行為を行った場合,あるいは受任者が違反行為を行おうとしていて,それに対して受託者が適正な権限行使をしていただけないような場合には,やはりそういう場合であっても受益者としては何とかして違反行為はとめたいと考えるのが通常だろうと思います。

 

 

 

 

この点に関しては,記述の中で,「受益者等による信託事務処理への介入は最低限度にとどめるべきではないか」という御指摘がありますが,これは正常な信託が行われているような場合には,正に御指摘のとおりだと思うのですが,法令違反,信託行為違反が行われようとしている場合には,むしろ受益者の権限行使が期待される場面なのではないかというふうに思われます。

 

 

 

 

具体的に,どういった制度を作るのがいいか,あるいはどういった態様を考えるのがいいかということが問題になろうかと思うのですけれども,26条3項を削除するという前提では,なかなか容易ではないと思いますけれども,信託の重要な部分については26条3項の規律を維持するということも一案かというふうに,個人的には思います。

 

 

 

これがない場合には,じゃあ受託者の権限について受益者が代位行使を何らかの形でするのかと。

 

 

ただ,これも前回もちょっと議論がありましたけれども,どうも十分ではないと。そうしたことからすると,何らかの形で規律を設けるということを是非御検討いただけないかというふうに,重ねて思います。

 

 

 

 

 

あと,もう一つのアプローチの方法としては,受任者に事務処理を委託する場合の責任の規律について,こういった受任者の違反行為が行われにくいような規律の仕方,比較的受託者にある程度の責任を負っていただくことになるのかと思いますけれども,そういった方向からのアプローチも考えられるのかなと思いますけれども,できればこれは基本的には何らかの形でとまるような制度というものを御検討いただけないかと考えております。

 

 

 

 

  •  受任者の問題はなかなか重要な問題だとは思いますけれども。この差止請求権の根拠をどこに求めるかとも関係してくると思いますけれども。

これは,今のところ差止請求権の根拠については説明はなかったかな。

 

 

 

  •  特に説明はしておりません。考え方としては,そもそも受益者と受託者の間には契約的な関係があるから,当然に固有的な権利としてあるという考え方もありますが,それですと一定の要件のもとにこれを限定したという方向になります。

 

 

 

他方,こうやって法定で特に付与したという考え方もあるかと思いまして,ちょっとどちらかというのは決め打ちしているわけではございません。

 

 

 

 

  •  純粋な質問でございますが,第30の差止請求権で,ある行為が差し止められた場合に,その行為が事実行為の場合,法律行為の場合,両者あり得るというお話でしたが,法律行為の場合に,その差止めに違反して契約が結ばれた,信託財産に属する重要な財産が処分されたというような場合は,この差止めによって特に影響を受けるのか,あるいは受けずに,単に,第34ではないかと思いますが,受託者の権限違反行為等の問題として差止めがなされていたかどうかは,差し当たって実体法上影響はなく判断されるという構造になるのか,もし事務局としてお考えがありましたらお教えください。

 

 

 

 

  •  対外的効力につきましては,やはり行為の効力に影響しないと解さざるを得ないということになりますので,損害賠償請求権の問題にとどまると。あとは,おっしゃるとおり取消権を行使するかどうかという問題になってくるかというのが基本的な認識でございます。

 

 

 

  •  ほかの受託者からの差止請求については,要件を少し軽くしたらどうかという御意見もあり,それについても皆様の感触を伺えればということでしたけれども。

この原案自体は,そこは差を設けていないわけですね。

 

 

 

  •  とりあえず設けていませんが,これは設けない方がいいかなというわけではなくて,とりあえずそっちの方を出しているだけで,両案併記と思っていただいていいかと思いますが。

 

 

 

  •  両案併記ということですと,対案と申しますか,他の受託者の方が行使の要件を緩やかにするという案についてですが,裏返しに言うと,受益者の方がより重くなるということになると思うのですが,差止請求権の根拠ともかかわりますけれども,受益者の方が重いという説明がなかなか難しいのではないかという気がいたしますが,理由をお聞かせいただければと思います。

 

 

 

 

 

  •  そこまで考えていなくて,おっしゃるとおり確かにそういう見方としては非常におかしいと思いまして,ここでは単に他の受託者についてはここに書いてありますような理由をもちまして軽く認めた方がいいのではないかという,素朴な観点から御指摘させていただいただけで,そのようにおっしゃられますと,ちょっと反論のしようがないという感じもいたします。

 

 

 

  •  いろいろな派生するところがありそうな気がしますね。つまり,受益者の方が重いというのをどう説明するかという問題と,先ほど○○委員からありましたように,ほかの受託者--これは義務とされると困るという場合があると思うのですけれども,しかし軽い要件でできるということになると,何か義務みたいなものが発生してこないとは限らない。

 

 

 

 

  •  ○○幹事がおっしゃったことと関係するのですが,差止請求権の違反の問題ですけれども,私法上の効力には一切影響がないということになりますと,差止めがいったんあって,それに違反してそういった行為をした場合と,差止めなくそういった行為をした場合と,結局同じということになりますよね。

 

 

 

つまり,いずれにしてもそれは信託行為の定めに違反する行為なわけですから,損害賠償請求権を最終的には引き起こす行為ですから,この第30に従って差止めが起こらないでやった場合にも,損害賠償というのは発生しますよね。

 

 

差止請求権の行使があって,差止命令が出たあとに違反して行った場合も,これは同じということになりそうなのですが,それは一つとして同じという規律にするというのもあり得ないではないような気がするのですが,私は,違うんじゃないかなという気がするのです。

 

 

 

 

 

どう違うのかというと,恐らく受託者がやってはいけない行為というのは二通りあり得て,それは権限内なんだけれども,それは不当であると,善管注意義務違反でもいいですし,忠実義務違反でもいいのかもしれませんが,例えば有価証券を処分するという権限は持っているのだけれども処分の仕方が悪いという場合と,無権限であると,先ほどある財産について処分の権限はそもそも与えられていない場合というふうな話が書いてありましたけれども,そういうふうな無権限でやるという場合とが違うのではないかと。

 

 

 

 

そして,差止めの命令が出るというのは,仮にそれが権限内の不当な行為であるという場合でも無権限と同じに扱うというような効果は発生するのではないか,そして,発生しないということになりますと,何かいかにも裁判所侮辱罪がない法制度のもとでは,何をやったのかよく分からないことになってしまうので,何か私法上の効力に結びつける解釈論が必要なのではないかという気がするのですが。

○○幹事の趣旨を,私が曲解しているのかもしれないのですけれども。

 

 

 

 

 

 

  •  理論的にはおもしろい問題だけれども。

○○幹事は,何に結びつけると。私法上の効果ということになると,無効ぐらいしかないわけですが。

 

 

 

  •  だから,やはり無権限で無効なんでしょうね。権限を剥奪するということになるのではないかと。そうしないと,いずれにしても定めに違反する行為を行うわけですから,別に何でもなかったという話になってしまうような気がするのですけれども。

 

 

  •  これは,商法なんかの方でも規定があるのだと思うのですが。

 

 

  •  実は,先ほど言いました商法の差止請求権に関する規定を参考にさせていただいてものでごさいまして,例えば商法の教科書を拝見いたしますと,「仮処分違反につき悪意の取引の相手方に対しては会社は無効を主張できるとの見解がある。

 

 

 

この見解は,その仮処分に取締役がその行為をなす権限を制限する効力があると解するのであろうが,現行の民事保全法上,仮処分そのものにそのような効力があるか極めて疑問である」とされておりまして,行為の効力には影響しないと解さざるを得ないという一つの見解。東京高判にもあるようでございますが,そのような見解がとられております。

 

 

 

○○幹事の指摘は,確かにそういう点もありまして,事務当局としては,行為の効力には影響しないとしても,では,やってしまうのはまずいということであれば,例えば解任をすると,しかし解任は時間がかかるので更にまずいとすれば,例えば職務執行停止の仮処分とか,そういう問題はあるかと認識しておりまして,たしか信託財産管理人のところで前にそういう提案をしてはおりましたが,ちょっとそのような方策があり得るかどうかというのは,その信託財産管理人のところなどでまた検討したいと思っておりますが,当面の事務局の見解といたしましては,やはり行為の効力,権限を制限するというのは難しくて,その他の方法で職務執行停止する等によらないと難しいのではないかというのが,今の考え方でございます。

 

 

 

 

 

  •  そういうことで,もうちょっと商法の方の考え方なども比較しながら検討していきたいと思います。

 

 

  •  民事保全法上の効力がないという問題と,実体法の中で差止請求権をわざわざ規定するというのとはかなり違う話であって,民事保全法からそのような効力が引き出せないというのは,理由になっていない……。

 

 

別にそれは,○○幹事に対する批判なのか,当該教科書に対する批判なのか……。

 

 

  •  仮処分の違反ということですから,差止請求権を本案でやったときに,それに違反したときというのは,ちょっとまた確かに別の問題かという気はいたします。

 

 

今のは,あくまで仮処分違反の効力という説明でございましたので。

確かに御指摘のとおりですので,検討したいと思います。

 

 

  •  一通り御議論いただいたかと思いますけれども,よろしゅうございますか。

 

 

  •  先ほど,○○委員の方から御指摘のありました,検査役選任の場合の意見聴取でございますが,本来であれば会社の場合にどうしているかというあたり,お調べした上でお答えすべきなのかと思います。

 

 

 

そういった詳しいところは次の機会にでもと思いますが,恐らく聞かないということであるとすれば,先ほど○○幹事がおっしゃったように,聞くまでもないという場合のほか,ひょっとしたら聞いてしまってはまずいのではないかというような場合もあり得る。

 

 

例えば,非常に受託者が怪しげなことをやっているということが明白であるような場合というのを考えますと,その受託者の意見を聞くということによって,受託者に対して対策を立てる間を与えてしまうという場合もあり得るということだろうと思います。

 

 

 

場合によっては,証拠書類の破棄,隠匿といったことも含めてということがあるかもしれませんので,そういったところからもある程度意見聴取ということについては柔軟性のある規定というのが必要になってくるのではないかなと思っております。

 

 

 

 

 

具体的なところは,また新しい会社法においてどうなっているかというあたりも本来確認すべきだったかと思うのですが,そういったあたりも踏まえてなお御検討いただければと思っております。

 

 

 

 

 

 

  •  ちょっと非常に基本的なことで恐縮でございます。質問で,32の法人役員の連帯責任のところで,「法人の理事又はこれに準じる者」というのは,基本的にどういうふうに考えればよろしいのでしょうか。

 

 

 

  •  「準ずる者」ですか。教科書などでの例を見ていただくしかないと思うのですが。

 

 

  •  何か基本的には会社であれば代表取締役と,準ずる者は取締役みたいな解説があったやに思うのですけれども,どういうところでどこまでなのかなというのがちょっと疑問になったものですから。

 

 

  •  それはまた説明事項かとは思いますが,必要があれば説明中に書くように検討したいと思います。

 

 

  •  この法人の理事というのは,民法の概念というか,民法に使っているような言葉ですけれども,民法の場合には確かに理事というのは原則代表権があって,密接に絡んでいるのだけど,会社なんかの場合ですとどういうふうに当てはめて考えたらいいのかというのは,ちょっと分かりにくいですね。

 

 

つまり,代表取締役というのがいて,普通の取締役がいるというときに,そもそもそういう場面で法人の理事というのはどこまで含むのかというのも余りはっきりしないような気がしますね。

感覚としては,どうなんですか。普通の取締役も責任を負うべきだというのは,厳し過ぎるという感じがしますか。

 

 

  •  基本的には,代表訴訟の形の対象になる人みたいな意識でもって我々実務上は考えていましたけれども。

 

 

  •  これもちょっと少し調べた上で,また検討します。

 

 

 

すみれ

「監査役は入らないんだよね。」

 

 

  •  まとまらなくて質問なのですけれども。

先ほど,○○幹事からの御回答で,法律行為の場合には詐害行為取消権を受益者は行使するというような御回答でしたか。

 

 

それは,民法上の詐害行為ということになると,また要件とか違ってくるかと思うのですけれども。

 

 

 

というふうに思って,法律行為についても正しく現に信託契約違反,また法令違反の法律行為をしようとしている場面においては,事前であれば差止めがあっても,詐害行為取消しとは必ずしもパラレルじゃないような気もしますし,また全然違う議論ですけれども,詐害信託の議論のように,相手方の善意重過失か何かを要件として,法律行為についての効果についても,何か違った手当てをするとかいう議論もあってもいいのかないのか,ちょっとその辺,何か御説明いただければと思うのですけれども。

 

 

 

  •  ちょっと私の説明が不十分だったかもしれませんが,まずとりあえず先ほどの説明の前提では,仮処分によっては権限を奪えませんので,それによって法律行為の効力は何か瑕疵を見るわけではありませんが,それが例えば義務違反行為であった場合には,権限違反という問題が出てまいりまして,それに対しまして現行法でいえば31条に当たります法律行為の取消権,あちらの規定でございまして,詐害行為の問題とは全然別だと考えております。

 

 

 

  •  よろしゅうございますか。

それでは,本日の会議はこのぐらいにしたいと思います。どうもありがとうございました。

─了─

 

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すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。ショパンは39歳で亡くなるまで、200曲以上を作ったそうです。」

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