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2016年加工編   法制審議会信託法部会   第10回会議 議事録
2016年01月19日

2016年加工編

法制審議会信託法部会

第10回会議 議事録

 

 

 

第1 日 時  平成17年2月25日(金)  自 午後1時00分

至 午後5時03分

 

第2 場 所   法務省第1会議室

 

第3 議 題

信託法の見直しに関する検討課題(7)(続)について

信託法の見直しに関する検討課題(8)について

 

第4 議 事   (次のとおり)

 

 

 

議    事

 

  •  それでは,時間になりましたので,法制審議会信託法部会を開催したいと思います。

なお,後で資料に沿って○○幹事から御説明がありますが,今日からいわば第二読会というものに入ってまいります。

 

 

資料を御覧いただければ大体分かると思いますけれども,法制審議会の制度を必ずしもよく御存じない方もおられるかもしれませんが,この場での大体こんな方向だろうという御意見,方向性が示されているようなときには,大体それに従って事務局の方でまとめてくれることになっております。

 

 

 

 

 

しかし,意見が対立しているような問題については,どういう点で対立しているかということを明らかにした上で更に議論を進め,中間試案に向けて議論していただくということになるかと思います。

 

 

必ずしもこの段階でどの立場をとるということを決定する必要はありませんで,これは中間試案,パブリックコメントなどを経て,最終的に方向性は決めることになると思いますが,しかし,多少は,どういう方向に行ったらいいかということを考えながら議論を進めていきたいと思っております。

 

 

そういうことで多少対立点なども明確になってくるかもしれませんけれども,それはむしろ,どういうところに問題があるということを明らかにするという点で好ましいことであり,最終的には何らかの形で合意に至るように努力したいと思いますけれども,この先は余り言う必要がないかもしれませんが,万が一,なかなか合意が得られないときには,最悪というか,そういう場合には多数決なんていうことで決めることがないわけではありません。

 

 

しかし,私としてはできるだけ皆様が納得いけるような形でまとめていきたいと思いますので,どうか御協力をお願いしたいと思います。

 

 

 

 

それでは,今日もいつものように幾つかに分けて○○幹事の方から説明していただくことにいたしますが,まず前回の積み残しがありますので,それからお願いいたします。

 

 

  •  まず,御説明に入る前に,二,三点,事務連絡がございます。

一つは,第二読会のうち,信託の公示,第8でございますが,不動産登記等にかかわる部分でございますけれども,これにつきましては関係当局との調整を要しますので,5月ごろに第二読会の御審議をいただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

 

 

 

それから,本日席上に,一つは有限責任の信託債権,一定の事項を表示した場合には有限責任になるという事項についての御意見をいただいておりますので,これは○○委員の方から,あらかじめその御趣旨を簡単に御説明いただきたいと思っております。

 

 

それからもう一つ,訴訟信託に関しまして○○委員の方から資料を1枚席上に配布させていただいておりますが,これにつきましては,本日,その項目の議論の中で○○委員の方から御趣旨を御説明いただきたいと思っております。

 

 

あと,議論の順番でございますが,ただいま部会長からお話がございましたように,遺言代用信託の問題をまずやりまして,その後,第一読会の最終といたしまして,信託宣言と目的信託の問題を取り扱いたいと思います。

 

 

その後,第二読会に入りまして,基本的には項目の順番に,しかしながら,変更点の多さなどにかんがみまして,こちらの方で何回かに分けて御説明,御議論というふうに進めたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

それでは,まず○○委員の方から,ペーパーの簡単な御趣旨の説明をお願いいたしたいと思います。

 

 

 

  •  皆様のお手元に,国際銀行協会からの「信託の法定有限責任制度の導入に関する意見」というペーパーが配られているかと思いますけれども,これは部会での検討課題でいえば第28に関連するものです。

 

 

 

趣旨,要点だけ申し上げると,有限責任を原則とする新たな類型の信託の導入については,特に反対するものでもないですし,それについては何も述べておりません。

 

 

問題は,既存の信託において,有限責任である旨明示することで有限責任になるという点について,これは弊害が多いのではないかということ,それと,このような制度を導入する意図である取引コストの低減にもつながらないのではないかというような趣旨の意見でございます。詳しくは,このペーパーを読んでいただければと思います。

 

 

背景をちょっと御説明申し上げますと,国際銀行協会といいますのは外資系金融機関の寄り集まりのようなものでございまして,現に,特にデリバティブ関係,有価証券の貸借関係で,責任財産限定特約を契約で合意した上で,一部に信託といいますか,信託銀行と取引を行っているという背景がございます。

 

 

 

 

 

  •  ありがとうございました。

 

それでは,早速本日の議題でございますが,まず最初に,前回の積み残しでございます,第68の遺言代用信託における死亡後受益者の変更権の留保という問題に関しましての資料内容を御説明いたしたいと思います。

 

 

まず,遺言代用の信託の定義でございますが,「委託者の死亡を始期として信託から給付を受ける権利を取得する受益者についての定めのある信託」としておりまして,このような受益者を「死亡後受益者」と定義しております。

 

 

なお,「始期(委託者の死亡に係る条件又は期限を含む)」と幅のある定義としておりますが,これは,委託者の死亡をもって直ちに始期とする場合のほか,死亡を契機としているような場合,例えば委託者の死亡の1か月後とか,委託者の葬儀後とされているような場合におきまして,実質的に委託者の死亡を期限又は条件としているものはこの定義に含まれることを明らかにしまして,本規定の適用範囲を明確にする趣旨でございます。

 

 

 

まず,1でございますが,遺言代用の信託におきましては,原則として委託者は死亡後受益者を変更し,又はその指定を取り消す権利を有することを明らかにしたものでございます。

 

 

遺言代用の信託が死因贈与に類似する機能を有することにかんがみますと,遺言代用の信託の委託者としましては,遺贈の規定が準用される死因贈与の場合と同様に,死亡後受益者の変更や指定の取消しをいつでもできるとの意思を有することが通常であると考えられます。

 

 

そこで,この提案におきましては,委託者のかかる通常の意思を重視いたしまして,委託者は原則としていつでも死亡後受益者を変更し,又はその指定を取り消すことができることといたしました。

 

 

 

 

 

もっとも,この規律は委託者の通常の意思を推定したデフォルトルールでございますので,委託者自らが信託契約において死亡後受益者の変更権を有しない旨の定めを設けることは何ら妨げられないと考えております。

 

 

すなわち,遺言代用の信託が死因贈与に類似する機能を有するとは申しましても,死因贈与の撤回につきましては,遺贈の撤回の自由を定めた民法第1022条が準用されまして,民法第1026条により撤回権をあらかじめ放棄することは許されないと考えられているのに対しまして,遺言代用の信託におきましては,撤回権をあらかじめ放棄することも許されるということになるわけでございます。

 

 

すみれ

「遺言や死因贈与とも違うところだ。」

 

 

次に,2でございますが,死亡後受益者は,委託者が死亡後受益者の変更権を有している場合には,原則として委託者が死亡するまでは受益者としての権利義務を有しないこととしたものでございます。

 

 

番人

「死亡後受益者は受益者になるまで、権利が一切ないってことかな。期待権も。第2次受益者についても同じことがいえるのかな。」

 

 

死亡後受益者はあくまでも信託契約の時点におきまして受益者となり,ただ信託から給付を受ける権利の取得時期が委託者の死亡にかからしめられているにすぎません。

 

 

そうすると,信託一般の原則に従いますと,遺言代用の信託におきまして死亡後受益者が受益権全般を有することを認めた場合には,例えば信託行為の変更ですとか信託の終了の場面におきまして原則として死亡後受益者の同意を必要とすることになると思われますが,これは遺言代用の信託の委託者の通常の意思には沿わないものと思われます。

 

 

 

そこで,ここでも委託者の通常の意思を重視いたしまして,遺言代用の信託におきまして委託者が死亡後受益者の変更権を有している場合には,死亡後受益者は原則として委託者が死亡するまでは受益者としての権利義務を有しないものといたしました。

 

 

これは,見方を変えますと,当該信託が遺言代用信託であることは,受益の意思表示を要しないでその信託から生じる利益すなわち受益権全般を享受するという原則に対する例外となります,いわば別段の定めに相当するものと言うこともできるのではないかと思われます。

 

 

 

 

 

もっとも,この2の規律も,委託者の通常の意思を推定したデフォルトルールにとどまるものと思われますので,委託者が信託契約において,死亡後受益者が委託者の死亡前においても受益権全般を有することを定めることは何ら妨げられないと考えております。

 

 

番人

「90条1項1号の場合でも死亡後受益者が期待権を持つには、信託契約に定めないといけないのかな。」

 

 

なお,このように,遺言代用の信託におきましては死亡後受益者は委託者死亡時までは受益者としての権利義務を有しないことをデフォルトルールとするのに対しまして,信託一般におきましては,以前に提案いたしましたとおり,変更権が行使されるまでは受益者は受益者としての権利義務を有することをデフォルトルールとしておりました。

 

 

このように規律内容が逆転しておりますのは,先ほど申しました,遺言代用の信託における委託者の通常の意思は一般の信託の場合と異なり,自己の死亡時までは,死亡後受益者に受益者としての権利義務を付与することを意図しないであろうと思われることを重視したからでございます。

 

 

 

 

次に,3でございますが,2によりますと,死亡後受益者以外の受益者が存しない遺言代用の信託におきましては,委託者の死亡までは受託者に対する監督的権能を有する受益者がいないことになってしまうと思われます。

 

 

つまり,委託者しかいないという状態になります。

 

 

しかし,だれかが受益者の権利を行使して受託者の監督をできるようにすべきではないかという指摘がありますことを踏まえまして,この点に関しまして,かつてお配りいたしました信託法制研究会報告書で提示しておりました考え方が甲案,これに対しまして新たに乙案をも提示するものでございます。

 

両案の考え方は資料中に記述したとおりでございますが,1点付言いたしますと,甲案と乙案との違いといいますのは,甲案が,受託者に対する監督のためには委託者側が信託契約等で積極的に対処すべきであると考えるのに対しまして,乙案におきましては,受託者に対する監督強化のために,信託契約に反対の定めを置かない限りは委託者の権能を強化しておくべきであると考えるものでございまして,このような意味におきまして,デフォルトルールが反対となっているものと言うこともできると思われます。

 

 

 

 

 

もっとも,乙案に対しましては,受託者監督の必要性が同様に認められます受益者未存在の私益信託の場合ですとか,受益者不存在のいわゆる目的信託を仮に認めることとした場合におきましては,委託者が受益者の権利も有する旨の規定を設けないということを考えております。

 

 

 

これにつきましては,なぜ遺言代用の信託の場合においてのみ委託者の権限を拡大して受託者監督のための手厚い規定を設けるのかという問題がございます。

 

 

 

これにつきましては遺言代用の信託では委託者はいつでも死亡後受益者を変更したり信託自体を終了させることができるから,信託財産が委託者自身の財産であるという実質的性格がありまして,それが,ただいま申しました目的信託とか受益者未存在の私益信託の場合よりも強いというので,委託者に受益者の権利も付与することとしても不自然ではないといったような説明による区別が可能かといった点が問題となると思われます。

 

 

 

 

 

最後に,資料末尾の(注1)でございますが,これは,遺言代用の信託におきまして,死亡後受益者と委託者の相続人,又は相続債権者と死亡後受益者との利害調整に関する規定を設けないこととするものでございますが,その趣旨を若干敷えんして申し上げますと,次のとおりでございます。

 

 

 

すなわち,仮に利害調整に関する規定を設けることといたしますと,遺言代用の信託が死因贈与に類似する機能を有することですとか,死因贈与に遺贈に関する規定が準用されることなどを考え合わせますと,民法の遺贈の規定に従いまして,委託者の相続人との関係では,遺留分制度の制限に服するという意味において死亡後受益者は委託者の相続人に劣後し,委託者の相続債権者との関係では死亡後受益者は相続債権者に劣後する,限定承認に関する民法第931条にそのような規定がございますが,そういう規律を導くことになると思われるわけでございます。

 

 

 

 

しかしながら,相続法の局面におきまして,遺言代用の信託に関しまして死因贈与の場合と同じ内容の規律を設けることの政策的な当否はおくといたしましても,このような規律が適用されることとなる遺言代用の信託を明確に定義いたしますと,あえてこの定義に該当しないように工夫した形式の信託を設定し,死亡後受益者が委託者の相続人や相続債権者に劣後するという規律が適用されないようにする,言いかえますと委託者の相続人や相続債権者の利益が害されることとなるような形式の信託を設定することを誘引するおそれがあるという気がいたします。

 

 

 

 

これでは,遺言代用の信託につきまして死因贈与の場合に準じて利害調整の規律を設けた趣旨が没却されることになると考えるわけでございます。

 

 

 

そうすると,このような結果を招来しかねない利害調整の規定をあえて設けるよりは,何ら規定を設けることとはせず,遺言代用の信託の場合における死亡後受益者と委託者の相続人あるいは相続債権者との優劣関係については解釈に委ねるということが妥当ではないかと考えたものでございます。

 

 

以上で説明を終わらせていただきます。

 

 

 

 

 

  •  それでは,ここまでで御意見をいただきたいと思いますが,いかがでしょうか。

 

 

  •  それでは,1点確認と,意見を申し上げたいと思います。

 

 

先ほどの御説明の中で,この第68の御提案につきましては,基本的には遺言代用の信託という一つの類型を設けて,それのデフォルトルールをつくったということではないかと思いますので,こういう方向性については異論はございません。

 

 

ただ,この規定によって,反対の意味で言いますと,先ほど○○幹事から御説明がありましたように,一般の信託であった場合どうかということを確認させていただきたい。

 

 

ちょっと言いかえますと,例えば10年ごとに,一番最初は自分の妻が受益者になって,次の10年間は長男がなって,次の10年間は次男がなりましたというようなタイプの信託があったときに,最初の10年間については妻だけが受益者としての権利義務を得て,あとの長男,次男については権利義務を有しないというタイプの信託というのがつくれるのかどうかということをお聞きしたいと思います。

 

 

 

 

  •  先ほど申し上げたことに関連するかと思いますが,信託設定のときに受益権があるというのはデフォルトルールでございますので,信託契約において受益権を付与しないという定めをすれば,それは可能ではないかと考えるところでございます。

 

 

例えば,10年間は妻だけが受益権を有し,受益者としての権利義務を有するというような信託契約の定めも許されるのではないかと思います。

 

 

 

すみれ

「そっか。」

 

 

 

  •  その間については,ほかの受益者の権利義務を,言葉は悪いですけれども,奪うことができるということですか。

 

  •  というふうに思われます。

 

  •  分かりました。それであれば……。

 

  •  今のは,連続受益者と言われるタイプですよね。その場合にもいろいろなタイプがあるかもしれないけれども,今のように,妻,その後子供という形で受益者が連続するけれども,その2番目の子供というものは,妻が受益者である間には受益者としての権利を行使できないという,そういうタイプですね。

 

 

今の設例は,10年間というのは,まだ委託者が生前であるということを前提に考えられていたのですか。

 

 

  •  そうですね。

 

 

 

 

 

  •  この遺言代用の信託というのがどういう場合なのかというのが,もしかすると,厳密に言うと,いろいろな,これに入るのか入らないのかとかいうのがはっきりしないようなのが出てくるかもしれないということをちょっと危ぐするのですけれども。

 

 

ちょっとどんな例がいいのか分からないけれども,例えば,夫が,自分と妻が生きている間は自分たちが信託利益を享受する,その両方が死亡したら子供に利益を享受させるというときには,どうですかね。

 

 

  •  今おっしゃられましたのは,委託者としては一人だけ,ただ妻も設定時の受益者と。

 

 

  •  それで,その子供は,夫婦両方が死亡したときに初めて受益者になると。

 

 

  •  「委託者の死亡を始期として」というのに,今のお話ですと,少なくとも夫が死亡したら……,あ,でも,妻の死亡も条件になっているわけですね。

 

 

  •  そうそう。

だから,問題は,その子供の受益権というのを自由に奪えるようなタイプかどうかということになるのだと思いますけれどね。

 

 

いや,ちょっとどういう設例がいいのか分からないけれども,ここでは一応典型的な遺言代用の信託というのを念頭に置いて,そういう場合には死亡後受益者を変更する権利を与えるのがいいだろうということで,これ自体は恐らく皆さんそんなに異論はない。

 

 

 

 

ただ,問題は,その典型的な遺言代用の信託というものの中にどんなものが入ってくるのかというのは,もしかすると,いろいろ細かい問題を議論していく中で余りはっきりしないものが出てくるかもしれないと,それだけの問題ですね。大きな枠組み自体は問題ないと思いますけれども。

 

 

 

  •  ちょっと私の質問の説明の仕方が悪かったかもしれませんけれども,要するにお聞きしたいのは,受益者が複数あります,それで給付を受ける期間が決まっていますというときに,だれかが受益者としての権利を行使できるのであれば,ほかの人の権利を奪うことができるのか。

 

 

もっと敷えんして言いますと,そうすると,ある一定の期間,受益者としての権利を奪うような信託というのも,そういうことはできるのでしょうかというところまで……,いや,それがいいですよということではなくて,そういうところまで認められるのでしょうかということをお聞きしたかったのですが。

 

 

 

 

 

  •  一般の信託として,ということですね。

 

 

  •  はい。

 

 

  •  原則として受益者が確定可能だというのが一般の信託でございますので,目的信託なら別としまして,一般の信託において,だれも受益者がいない,ゼロというのは,信託の本来の趣旨に反してしまうのではないか,無理ではないかという気がいたしますが,ただ,先ほどちょっと申しましたが,信託設定において原則として受益の意思表示をしなくとも受益者になるというのはあくまでデフォルトルールでございますので,そういう意味で言いますと,3人受益者がいる中で,その二人については,給付の時期だけではなくて,受益権自体の始期も信託行為で後ろにずらして,例えば10年間は最初の一人だけが受益者であるというような信託契約の定めをすること自体は許されるのではないかと考えております。

 

 

 

 

  •  ある受益者の権利というものが前の受益者の権利が終わった段階で初めて発生するというタイプの信託,私が連続受益者と申し上げた言葉ですけれども,そういうタイプを認めるかどうかということと,だれか受益者が必ずどこかにいなくてはいけないかという問題は,一応理論的には少し違う問題のような気がするのですね。

 

 

 

密接に関連しているかもしれませんけれども。連続受益者はまだ余り議論はしていないのかもしれないけれども,今の○○幹事の話も,それは信託行為で定めれば一応可能なのではないかという考えだと思いますけれども。

 

 

 

しかし,その問題と,連続受益者のタイプを認めるときに,ある段階でもって,ある期間中,全然受益者がいないというようなことにしていいかどうかというのはまた別の問題で,受益者が全然いない状態というのをつくり出すというのは……,これはどうなんですかね。

 

 

 

  •  信託の本来の姿ではないのではないかという感じがいたします。確定可能性もないようなものは難しいと。

 

 

 

 

  •  ちょっと関連して,私も教えていただきたいことがあります。

 

この遺言代替方法としての信託というのは,今,アメリカ合衆国で,この20年間,30年間ぐらいだと思いますけれども,非常にはやっていて,信託の利用を飛躍的に増大させたのはその型だと言われているわけですよね。それが背景になって統一信託法典もできたのだと。

 

 

 

ポリー

「非常に流行っているのですね。なぜでしょうね。」

 

 

では,なぜこの遺言代用信託,あるいは遺言代替方法としての信託がふえたのかというのには,やはり幾つかの理由があると思うのですね。

 

 

今日の御説明でも,こういうものができるとこういうような法理が適用されますよということなのですけれども,その前の問題として,今後我が国においてどうしてこういうものが必要なのかとか,何のためにこういうものができるのだろうか,あるいはできたらいいのだろうかということがやはりまずスタートラインとしてあって,その上で,実際にそういうものができたときにどういう法理が適用されるのだろうかと,そういうふうに考えるのだと私は思うのですけれども。

 

 

 

 

そこでアメリカの話に戻って,アメリカで遺言代替方法としての信託が使われる最大の理由は,とにかく向こうの相続手続,いわゆる遺言を-もちろん,遺言がない場合もたまにありますけれども,遺言があった場合の遺言検認手続というのが余りにも大変で,コストもかかり,時間もかかり,だからそっちには行かせたくないという需要というのが相当にあって。

 

 

 

だから,信託にしておけば,これらの手続を外れるのですね。

 

 

それが一番大きいのですが,日本でそういう需要があるのかどうかということと,それから,もちろん遺留分というのはアメリカでもある,妻についてはあるところがほとんどですから,それを全部外すようなことになれば,信託にしておきましたと言ったって,こちらの方の遺言検認手続のところでだれかが文句を言えば,あの信託はという話に絶対なりますのでね。

 

 

すみれ

「アメリカでは信託で遺留分も外せるんだっけ。外しておいて文句を言われたら対応するってことかな。」

 

番人

「日本では認知症への備えが一番大きいかな。」

 

 

だから,そういう意味では完全に外れるということはないのですが,我が国において,信託にしておくとこちらからは外れるのだという話になるのかどうかというのが,まず第1点。外す必要があるのかどうか,これが第1点だと思うのですね。

 

 

 

だから,そうじゃないよという話になると,アメリカとは違う事情で我々はこういう型の信託も認めた方がいいのだという話になると思うのですけれども,そのほかに遺言というか相続代替方法としての信託が使われる付随的な理由を考えると,ほかにもあるのかもしれないのですけれども,とりあえず二つ。

 

 

 

 

一つは,やはり,今ここでとりあえずは信託を設定しておきますね。

 

 

遺言のかわりなのですけれども,アメリカの場合は自分で受託者になる場合も実は多いと思いますから,完全に,遺言代用の場合も。

 

 

しかし,考え方をとれば,自分はある一定の財産を信託財産にしておいて,これは一種相続財産である信託財産なのですね,遺言代替ですから。

 

 

 

しかし,これの管理は専門家に任せておきたいと。それでちゃんとやってくれた方が,自分が死んだときにも財産は残るし,あるいはもしかしたらふえているかもしれない。だから,こういう専門家の利用というのは日本でもあり得るようなことだと,当然あってしかるべきことだと思うのです。

 

 

番人

「自宅や収益不動産などの家族のための財産で、管理が必要なものは信託にするってことか。」

 

 

 

二つ目が,やはりこの段階で,今やっている段階で,受益者について,この受益権というのが英米では本当に融通無碍なものだから,今お話に出ている連続みたいなこともできますね。

 

 

普通,遺産として残った場合は分割という話になりますから,すぐにぽんぽんとこういうふうに分かれるものを,受益権という形にしておけば,私が望めばですけれども,もちろんすぐに3人の子供たちで分けていいよという話にすることもできますけれども,3人の子供たちに順番をつけたり,条件をつけたり,今話に出てきているように,まず長男が最初の10年,収益受益権というような形の連続的な話。

 

 

普通はまず配偶者からだと思いますけれどもね。だから,そういう形で連続的なものにすることもできるし,一人一人について条件をつけて,大学まで進んだら学費が要るとか,そういうふうな融通無碍なことができるし,かつ,まだ私が死んでいないというか,設定時点では生まれるかどうかも分からない子供,それから死んだ時点でもまだ実は生まれていない子供のまた子供という話にして,そういう人にも受益権を一応確定的に,私が死んだ時点で上げることもできる。

 

 

 

 

それは普通の相続では考えられないことですよね,そこでは生きていないのですから。そういうようなことまでできるのだろうと思うのですね,アメリカだったら。

 

 

それができたらいいねという話で,普通の相続制度だと簡単に分けて終わりというのではないようなものを,とにかくこれを作るとできるのだったら,一般の人の中で,ああ,それはいいねという形で,税金とか何とかいう考慮はなくても,使うように考える。それは,しかし,いいことだという……。

 

 

 

 

最初のところへ戻ると,我が国においてこの遺言代用信託というのがどういう需要があって,しかも,その需要が一応適正な需要というのですか,適当なものだと思われてここで議論すべきなのかという点について,ヒントでも何でもなのですが,基本的なところをちょっと教えていただけると有り難いと思います。

 

 

 

  •  とりあえず事務局として考えておりましたところは,特に,遺言検認手続が大変で,それを逃れるために信託を使いたいというアメリカのようなニーズがあるということを聞いているわけでもなくて,具体的なニーズというよりは,むしろ,今お話がありましたように専門家を利用して,委託者の意思をなるべく尊重して-もちろん,最低限の限界というのはあると思うのですが,その範囲でなるべく委託者の意思を尊重して自分の財産の分配を図る制度を信託法の中に導入して,民事の分野における信託の活用も図りたいと,そういう政策的な観点がかなりあるところでございます。

 

 

すみれ

「民事の信託って政策なんだ。」

 

 

 

これは,我々の考え方はそうでございますが,遺言代用の信託につきましてお詳しい先生方もたくさんおられると思いますので,またほかのニーズなどがあれば,御紹介いただければ助かるところでございますが。

 

 

 

  •  私は,この第68に遺言代替の信託を我が国で盛んにしようという意図は全く感じないのであり,私は盛んにした方がいいとも思わないのですが,ただ,私が見るところ,この第68はどこにポイントがあるかというと,受益者の変更権というものについて,通常は,信託を設定するということになりますと,その委託者から一応離れて,受益者を自由に変更することができないわけだけれども,ある一定の要件がある場合にはデフォルトルールを逆さにした方が当事者の意思に合致しているだろう,あるいは他の法制度との関係もバランスがとれたものとなるだろう,それじゃあどういった場合にはデフォルトルールを変更して,その受益者の変更権というものを委託者に与えた方がいいのだろうか,それは,相続と同じような形で信託が用いられている場合には当事者意思として逆だと考えるべきだし,かつ遺言との間の制度間のバランスにおいても妥当であろう,だから,ある一定の死亡を始期として信託から給付を受ける権利を取得する受益者というものの定めがある信託の場合には任意規定を逆にしようというだけではないかと私は考えているわけです。

 

 

 

 

 

 

そうなりますと,第68が遺言代替で行われる信託のすべてを包摂していないというのは全く問題のない事柄であって,なぜならば,一般論としては,受益者の変更権というものをあえて規定することができるのが前提であって,しかし,それが,どういった場合には逆転した任意規定にするかという場合で,しかしそれは明らかな場合に限っておこうという話ならば,それがある程度狭くなっていても全然おかしくはないわけであって,私は,そういうものではないかというふうに考えていて,遺言代替の信託を活用していくべきであるかどうかということをここで議論する必要はないと思うのですが,いかがでしょうか。

 

 

番人

「たしかに。」

 

 

  •  この第68自体は,○○幹事がおっしゃるとおり,こういう形で,ちょうど遺言あるいは相続と同じような形あるいは効果をもたらすような遺言代用の信託の場合に,委託者は自由に死亡後受益者の受益権を変更したり奪ったりすることができるということを規定しただけであって,それ以上のことは確かにここには何も規定していない。

 

 

先ほどから話が遺言代用信託に少し拡張されて議論されてきましたけれども,その議論は,もちろんこの規定の上で議論しなければいけない問題ではないし,あるいはもっと大きな問題がたくさん含まれていますので,遺言代用の信託といいますか,そういうのを使ったときにどういうことまでできるのかという問題は,恐らく別途に議論する必要があるのだろうという気がしますね。

 

 

 

 

  •  もう一言だけ。

ですから,「遺言代用の信託」という名前のつけ方も,その意味からすると多少ミスリーディングなところがあって,こういった場合には相続とか遺言とかの制度バランスでこうなるということだけじゃないかなと思うのが,繰り返しになりましたが,あれでございます。

 

 

すみれ

「いい名前ないかな。他の制度とバランスが取れていたらいいんだよね。引き継ぐ信託、とかは。」

 

 

 

もう1点だけ,簡単な,これは細かい話でございますが,3の乙案のところがよく分からなかったのですが。

 

 

と申しますのは,同じ17ページのところに,「遺言代用の信託とは,例えば,他人に財産を信託して,委託者自身を自己生存中の受益者とし」と書いてあるわけですが,こうなりますと,受益者は存在しているわけですよね,死亡前に。

 

 

それで,委託者の死亡前に受益者が存在していないということになりますと,これはそもそも死亡を始期として処分行為が行われて信託が設定されるというふうなものなのかなと。

 

 

そうなると,もちろん設定される前に受益者としての権利というものがあり得るわけではないわけでありまして,乙案のところの説明がどういった場面を念頭においていらっしゃるのか,ちょっと細かい話なのですが,お教えいただければと思います。

 

 

 

  •  御指摘のとおり,我々の考えといたしましては,遺言代用的に用いられる信託におきまして,信託を設定すれば,本来は受益者としてはそこで確定すると。

 

 

 

しかし,2で,この局面におけるデフォルトルールとしては,受益者としての権利義務がない受益者というものがいるだけであると。

 

 

そういう局面においては,受益者の監督的権能を行使できる人がいないことになりますので,そのときは委託者が受益者の権利をかわりに行使できるという方法にしてはどうかということで乙案を提示しているわけでございますけれども。

 

 

 

 

 

  •  2は,設定後,委託者の死亡までは受益者がいないのですか。

 

 

  •  説明の仕方かもしれませんが,設定して死亡まで,受益者はいるけれども,権利義務がないという形になります。

 

 

  •  それで,それは……。

 

  •  いるけれども何もできないわけですね。ので,かわりに委託者にやらせましょうという形でございます。

 

 

  •  分かりました。給付を受ける権利というものがその時点から始まるというだけであって,抽象的に受益者であるという形では存在していると。しかしながら,受益者としてのいろいろな監督権限等は持っていないと。

 

 

  •  はい。帳簿閲覧とか取消しとかはできないと,そういう趣旨でございます。

 

 

  •  今のと関連してお聞きしたいのですが。

 

 

甲案にしても乙案にしても,どちらをデフォルトにするかというだけで,受託者に対する監督をなくするということができるわけですね。

 

あと,撤回も,信託行為でさせないということができる。

 

 

としますと,受託者に対する監督は,委託者が死亡するまでの間,何らかの方法が残るのかどうか。

 

 

信託行為に定めれば一切監督がないという状態が生じるのかどうかについて,お教えいただければと思います。

 

例えば信託管理人を置く方法とか,解除する方法とか,幾つかあり得ると思うのですが,それらが全部外れるという可能性があるのか,ないのか。

 

 

  •  受託者に対する監督者が全くいない状態になるのはまずいということから,甲案であれば規定を設けませんで,委託者が自分で権利をふやしてという方向を考えているわけですし,乙案であれば受益者の権利を委託者がかわりに行使するということですので,乙案であれば委託者が受益権を行使できるから問題ないと思われますが,甲案ですと,仮に委託者が全部要らないと言ったときにはだれもいなくなると,そういう御趣旨でございますか。

 

 

 

 

 

  •  もしこれが悪用されるとすると,変な人が受託者と称してそれをすべて外したような信託を用意して,それに委託者を引き込むという場合に,引き込まれた委託者はあと何ができるのかということなのです。普通はそういうことはないと思うのですけれども。

 

 

  •  ちょっと私の方が言葉を誤解しているかもしれませんが,委託者に撤回権も受益者変更権もなければ,それはもはや遺言代用信託とは言えないというふうに私は理解しています。

 

既に受益者が確定し,その受益者としての権限がないということはあり得ないので,全然別の,つまり普通の信託へ戻るということかなと思いますが。

 

 

すみれ

「今の家族信託だと、委託者は最初の受益者になる場合がほとんどで確定しているから、これは普通の信託ってことかな。委託者は受益者として権利を使えばいいし。それとも実質的には遺言代用信託といえるのかな。」

 

 

 

  •  そういう権限はもちろんあるということを前提にして,受託者を監督する権限がだれにもないような信託が一時的にせよ生じていいかということだと思いますけれども。

 

すみれ

「受託者も監督されて大変だね。受益者のためか。」

 

 

それを悪用するようなタイプについては,また設定の段階でいろいろ対処の仕方があるのだと思いますけれども,悪用するのでなくて,普通に,委託者も善意で遺言代用の信託を設定しようとし,受託者も例えば民事信託で普通の人が受託者になったようなときに,何も気がつかないで委託者の権利を残すような規定を設けなかったというときに,甲案だと委託者に何も監督的な権能がない と。そこがどうかということなのではないでしょうか。

 

 

 

  •  我々の提案では,委託者に,ゼロではなくて,スタートラインはある程度の権能がある,もちろん現行よりも立場は弱めますが,ある程度の権利はあるということで,放っておけばその程度の権能はありますが,委託者があえて全部要らないと言い,かつ,信託管理人も置かなかった場合には,甲案では受託者に対する監督者がいないという事態になってきますので,御指摘のような事態が生ずるわけですが,そういう信託を委託者が設定した以上は,余り好ましくないですが,だれも監督者がいないという事態になっても仕方がないかなという気はいたしますけれども,御反論があれば。

 

 

 

  •  デフォルトといいますか,委託者の権能として何を残しましたっけ。例えば帳簿閲覧請求なんていうのはある。

 

 

  •  それはあります。

 

  •  それらも信託行為で減らせるという方向にはもちろんなるわけですけれども,非常に例外的な場合を除けば,委託者は裁判所に行って信託管理人を選任するということは,少なくとも利害関係人としてできるということだったのではないかという気がいたします。委託者ももちろんそういう……。

 

 

  •  後で気がついて,やっぱり必要だというときに,そういう手はあるということですね。

 

 

 

 

 

  •  あるいは,死亡後受益者も利害関係人ということではあるかもしれませんので,そういう方向性があるかと。
  •  ○○委員と○○委員と話は共通しているのではないかと思うのですけれども,結局,裁量信託みたいなものがあって,完全に不特定の受益者だけがいる,それでピックアップされるまでは具体的な受益者とならないという通常の信託においても,受益者は監督できないという事態は生じるわけであって,そのときのために信託管理人とかいろいろな制度が現行法でもあるわけですよね。

 

 

なぜそれとこの3の場合だけが切り離されて別個な規律になるのかというのが,いま一歩分かりにくいのですけれども。

 

 

 

  •  乙案をとると,正に何でこの場合だけ手厚い保護をするのかということで,むしろ一般と合わせて,甲案というのは十分あり得る選択ではないかと。

 

 

  •  それで一般論に戻すということですね。

 

  •  はい,甲案であれば。

 

  •  だから,だれも監督できないということではなくて,ほかのやつと同じスキームになると。

 

  •  ということでございます。

 

 

乙案は,この遺言代用だけ手厚くするのだけれども,アンバランスではないかという嫌いがあるという趣旨で御説明させていただきました。

 

 

 

 

  •  話は変わりますが,銀行業界からこの制度を見ますと,例えば債権者ないしは預金者としてどういう影響があるのかということに関心があるわけで,ただ,内部で議論したところ,具体的によく見えにくいなということで,現時点では賛成も反対もできにくいような状況でございます。

 

 

 

ただ,ここもと,遺言信託というのが-狭い意味での遺言信託でございますけれども,新聞報道等で御案内のとおり,ニーズが出てきているという中で,こういう遺言のやり方が一つオプションとして増えるということであれば,そういうマーケットの増大にもつながるのではないかなというふうに,個人的には思うところでございます。

 

 

すみれ

「マーケットの増大か。」

 

 

 

ちょっと質問をしたいわけなのですが,そういう意味で債権者としての立場がどうなるのかというところの関心なのですが,そこで,(注1)で今回御説明もあったわけですけれども,相続放棄等の債権者との優劣の規律をどうすべきか,明確に規律すべきかどうかということについて,この提案では,あえてしないということでございました。

 

 

そこの内容がもう一つよく分からないもので御質問するわけですが,その中の「脱法的な信託の設定がされることにもなりかねず」というところは,具体的にどういうような信託を念頭に置いているのかというようなことがちょっと分かりにくかったということが一つあるわけです。

 

 

 

 

それに加えて,二つ目に,もしこの規律を設けなかったという場合には解釈によるという御説明でしたけれども,その解釈によるという場合には,相続法規が原則として類推適用される,931条のように債権者の保護が図られるというふうに考えるべきなのか,いやいやそうではないと,そもそも相続法規とは全く関係ない規律であるわけだから,原則として全く白紙のままの解釈であるということなのかということ。

 

 

 

そのどちらを想定されてこの提案をされているのかということをお尋ねしたいというのが二つ目でございます。

 

 

 

三つ目に,仮に相続法規と債権の優劣というところだけ切り出して明確化したいというときに,御提案は多分,反対解釈されるリスク,正に脱法的なものを作るリスクを御認識のもと,こういうふうにされていると思いますけれども,そうではなくて,この規律はあえて確認的にそこの部分について規定がされる,よって,脱法的なものとされたものについても,当然に反対解釈としてその反対の解釈をされるわけではないというふうな立法的な手当てというのが可能なのかどうかということ。

 

 

 

この3点についてお尋ねしたいと思っています。

 

 

 

 

 

  •  今,委託者が生前に信託を設定して,形上は財産はもう受託者に移転していると。

 

 

ですから,普通の信託はそこで設定されているけれども,受益者は委託者が死亡するまで確定的な受益者の権利を取得しないし,また,逆に委託者の方から受益者を変えることもできるし,全体を撤回することもできる。

 

 

そういう意味では自由がまだ委託者に全部残っていますので,例えば委託者の債権者というのがどういうふうにかかっていけるかと。

 

 

信託行為で有効に設定されているけれども,なお委託者の財産としてかかっていけるようにすべきではないかと,そういうようなことが一番の問題なんだろうと思いますね。

 

 

それがうまく規定の形でもって設けられるかどうかというのは,また次の問題ですけれども。

そんなふうに思いますけれども,細かいところはいかがでしょうか。

 

 

 

 

  •  お話がありましたうち,まず,脱法的な信託というのはどういうものかというのは,内部で打合せをしているときはいろいろ話があったのですけれども,具体的にこういうものがというわけではなくて,あくまで,この定義にはまらないようなものを何か考え出すのではないかということで,そうしますと,せっかく債権者保護とか相続人保護の規律を設けても,それが抜けられてしまうということで,例えばこういうやり方があり得るというのを前提に置いているわけではないですが,広い意味でこの定義規定にうまく当てはまらないようなものを考え出すのではないかということでございます。

 

 

 

それから,立法的な解決というのは,仮に例えば脱法的にやってもこの規律が適用になるよというような規定を設けるかどうかということかといたしますと,ちょっとそこまでいろいろと……。

 

 

結局,そういう規定を設けても解釈になるわけでございますので,まずこのある特定の規律がかかる,しかも脱法的なものは許されないというような2段の解釈の規定を設けるぐらいだったら,もう最初から民法一般の解釈にゆだねればいいのではないか,抽象的な規律をいくら重ねても余り意味がないのではないかという気がいたします。

 

 

 

あと,相続法規の局面につきましては,ただいま○○委員からも,委託者にある程度の意思の自由がまだ残っている段階で相続の規律が適用になるかというと,そこは相続プロパーではないという見方も十分あり得ると思います。

 

 

しかし,相続法規が適用になるかどうかも,この遺言代用の信託というのをどのように見るかという,正に,立法的に解決するというよりは,今後の解釈にゆだねたいというのが我々の考え方でございます。

 

 

すみれ

「施行から9年経とうとしてるね。」

 

 

  •  確認ですけれども,ですから,委託者に残ったその何かについての相続と見るということですか。

 

 

  •  信託の設定によって相続が起こったと見るということです。

 

 

すみれ

「信託の設定によって相続が起こった、か。」

 

番人

「信託の設定の段階で、委託者の債権者には説明が必要だと思うので、信託財産は、委託者の相続とは関係無くなると思ったんだけど。」

 

 

 

そう見るのは,本来の相続とはちょっと違って,中間的というのですか,相続プロパーではないけれども相続的に利用されているということで,ちょっとそこは事務局として,相続できるともできないとも,明確な結論は出しにくい,今後の解釈にゆだねていきたいということでございます。

 

 

 

それは,ただいま○○委員がおっしゃいました,委託者の財産なんだからまだ委託者の債権者がかかっていけるかどうかということにつきましても,前に委託者による受益者変更権一般のところでも議論させていただきましたが,なかなか明確な規律は設けにくいので,そこら辺につきましても,現時点でこういう規定はどうかというのを提案できる段階ではないと考えております。

 

 

  •  ○○幹事,何か……。

 

 

  •  正に今の話を伺いたくて,死亡する前に委託者の債権者がどういう立場にあるかということを考えていたのですけれども,今のお答えで結構です。

 

 

 

 

  •  確認の質問をさせていただきたいのですが,先ほど来,何度か「撤回」という言葉が出ておりますので,最初に私が理解したのとちょっと違う感じだったので確認させていただきたいということです。

 

 

御提案の説明をお聞きしたときに私が理解しましたのは,これはやはり基本的には,遺言代用の信託と言っているけれども,信託は信託であると。

 

 

ただ,受益者の変更に関しては,特に変更する権利を約定にかかわりなく認めるという趣旨かなというふうに理解しました。

 

 

したがって,信託の終了に関してはあくまでも信託の終了に関する一般ルールが適用されるという前提ではないかというふうに理解しました。

 

 

そうしますと,先ほど○○幹事がおっしゃったように,「遺言代用の信託」という言葉が適切なのかどうか,あくまでも信託は信託であって,受益者の変更に関しては特に遺言ないしは死因贈与に関するルールを準用するという理解かなと思いました。

 

 

 

 

 

ただ,先ほど来何度か,撤回が自由にできないとというようなお話が出ていたのですけれども,信託の終了に関して,この遺言代用の信託に関しては特に通常の信託よりも自由な解消方法を認めるというようなことが前提になっているのでしょうか,いないのでしょうか。

 

 

ちょっとその点を確認させていただきたいのですが。

 

 

 

 

  •  あくまで信託の設定ということを重視しますと,いったん設定したものを自由に撤回できるのはおかしいではないか,契約なんだからということがあり得ると思うのですが,ここは御指摘があったかと思いますが,委託者の通常の意思を考慮し,相続といいますか,自分の財産の承継という場面で利用するときは原則としていつでも自由に,これは撤回してしまうと結局信託は終了するのだろうと思うのですが,そういう方向を認めることが妥当ではないかということでございます。

 

 

 

 

 

  •  そうしますと,これについては信託の終了原因に関しても特別なルールを認めるということなのですか。それがここに書かれていると読めるのでしょうか。

 

 

  •  一応,「取り消す権利を含む」とは書いてあるけれども。

 

  •  取り消すというのは,「死亡後受益者の指定を取り消す権利」と書いてありますね。信託行為全体を取り消すという趣旨なのでしょうか。

 

 

そうすると,終了原因に関して特別なルールをこれについては定めないと認められないのではないかと思うのですが,いかがでしょうか。

 

 

 

 

  •  私の感じですけれども,遺言と同じような自由を残すということになると,もう一切遺言はしないという場合もあり得て,そういう意味では,信託はやはり終了する特別な理由もこの中に-この規定の中にうまく書いてあるかは別として,そういうことも考えられると思いますけれどね。

 

 

  •  理論的にはどちらもあり得ると思うのですね。

 

 

そして,その際にどちらをとるかというのは,○○幹事のような理解の仕方をするのか,それともこの制度についてより積極的な理解をするのか,そのあたりとかかわってくるのではないかと思いましたけれども,事務局のお考えになっていること自体,私にはもう一つどちらかよく理解できなかったので,確認させていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

  •  受益者が多数いて,一部撤回するのは構わないと。

 

 

ゼロになってしまったときはどうかというと,そういうときは,それを契機として信託目的の不達成ということで信託の終了ということでいいのではないかと。

 

 

まあ,ゼロになっても,将来選ぶという可能性はゼロではないのですが,しかし,いったんゼロになったら目的不達成でいいのではないかなと思いますけれども。

 

 

 

  •  その際に,そうすると,信託行為において信託目的というのをどう規定しておけばよいのでしょうか。

 

 

  •  それは,死亡を契機として給付を受ける権利を設定したこと自体からおのずと目的は明らかではないかと。

 

 

死亡によって権利を取得する受益者を定めているのに,その受益者がいなくなってしまったということは,そういう信託を設定した意図がなくなったということで,いったんなくして,またやりたければ再度一からやり直せばいいのではないかという気がいたしますが。

 

 

あえて信託目的を定めなくても,信託行為の設定自体からおのずと目的が見えてくるような気がいたしますが,いかがでしょうか。

 

 

 

 

  •  さっきの委託者の債権者がどういうふうにかかっていけるかという問題と非常に密接に関連していて,いったん信託は設定して,受益者を変えることはできるけれども,信託をゼロにすることはできないと考えると,委託者から財産は一応出た形になるわけですね。

 

 

ですから,委託者の債権者はもうかかっていけないという結論を導くこともその場合には可能。

 

 

だけど,一切を取り消してまた財産が委託者に戻ってくるということまで認めることになると,やはり委託者のところに実質的に財産があるのと同じじゃないかということで,債権者がかかっていけるかと,そういう問題にも関連していく。いろいろなところに波及する問題ですね。

 

英米法は恐らく完全な撤回も認めているのだというふうに理解して……。

 

 

 

 

 

  •  正に「撤回可能信託」と言っているわけですから。

 

それで,もちろん,委託者の債権者は全部にかかっていけます。それはもうはっきり明文で書いてあるので,そういう意味では極めてルールは明快。

 

 

  •  そういう意味で,ちょっと,ここで前提とするような遺言代用-一応,ここでは「遺言代用の信託」という言葉を使いますけれども,ここで問題となっている,自由な変更権,それからその周辺の問題も含めて,更にどんな遺言代用の信託というのを念頭に置くのかということを恐らく詰めなければいけないと,そういう問題提起だったと思いますれども。

 

 

  •  もし,先ほどの事務局でおっしゃっているような理解だとしますと,撤回権そのものを完全に放棄するような特約というのはあり得ない,許されないということなのでしょうか。

 

 

  •  それは本来の遺贈ではできないと思うのですが,この撤回可能信託の局面では,撤回権自体を放棄することも可能であると考えております。

 

 

  •  それは,しかし,信託目的が失われていてもその信託を残すという趣旨になるのではないでしょうか,先ほどの御説明ですと。

 

 

 

  •  撤回権が放棄されていると,撤回ができなくなってしまうので……。

 

 

  •  そもそも受益者を変えたいと思っても変えられないので,信託目的は,委託者の主観においてどうかはともかくとして,形式上はそのまま残るのでという御説明になるという御趣旨ですか。

 

 

 

 

  •  委託者としてはもう何もできないと。

 

 

  •  なるほど。

しかし,それが果たして本当によいことなのかどうかという次の問題に移るわけですね。

 

 

 

  •  デフォルトルールとしては撤回自由ですが,それにもかかわらず委託者が絶対撤回しませんよと言っているのに,後で気が変わったからやっぱり撤回するということまで認めなくてもいいのではないかという気がしたわけでございます。

 

 

 

  •  2点なのですが。

今の「撤回権」とおっしゃるときの意味が,信託全体の撤回である話と,この死亡後受益者についての指定の撤回という両面で使われているような感じがするのですけれども,信託一般の撤回-というか,取消しというか,終了というか-の権限については,たしか前回問題がありまして,委託者が,要はいわゆる撤回可能信託のような形で定めたときの撤回権の行使も,一般の終了権限の行使と全く同一の規律に服するというのが,たしか事務局の御回答であったと記憶しております。

 

 

そういうような終了権限が,ある特定の信託の場合に当然に,むしろデフォルトとしてついてくるのかというと,それは多分そうではないという理解ではないかと思われまして,ここで確かに遺言代用の信託ということが言われておりますけれども,英米,あるいはアメリカの場合は,信託の撤回権が付与されているかどうかということで区切っており,それ自体は実は遺言代用と完全にはマッチしていなくて,自分の能力喪失に対応するとか,ほかの面もあるわけですので,やや広いですが,撤回権をメルクマールとしていると。

 

 

 

 

それに対して,こちらの御提案というのは,委託者の死亡によって財産を取得するという,そういう地位に置かれている者が相続による取得と同様の立場に立つということからこの考え方が出ているということで,メルクマールは多分違うのだろうと思います。

 

 

 

その意味では,○○幹事や○○幹事がおっしゃったような理解がこの提案では妥当するし,これまでの事務局の御説明とも適合的ではないかと考えます。

 

 

それから,死亡後受益者の撤回の話ですけれども,これを撤回して,だれもいなくなったというときに,当然にこれが終了ということになるかという点ですけれども,これは,受益者指名権をだれかに与えているという状況で,だれも受益者として指名されていないという信託は当然信託として成り立たないかということとも絡んでまいりますので,その段階で信託自体は生き残るということは,むしろそちらの方がデフォルトであって,わざわざ委託者がこれによって信託を終了させるということまで含んだものとして設定し,そういうものとして終了権限の行使を含んでいるような形で死亡後受益者の撤回をしているというようなときに限って終了すると考えるのが筋ではないかと思われますので,そうではないということであれば,そうではないという規律をまた改めて設ける必要があるのではないかと思います。

 

 

 

 

 

  •  おっしゃることはよく分かりますね。

ほかに。若しくは,意見がなければ,ちょっとこの点は整理させていただきたいと思います。

それでは,次に移りたいと思います。

 

 

  •  それでは,今回お配りしました資料の中で,信託宣言の問題と,目的信託の問題,第一読会の最終ということで御説明を簡単にさせていただきたいと思います。

 

 

最初が信託宣言の問題でございまして,第2というところになります。資料の4ページでございます。

 

 

ここにおいて論ずべきことといいますのは,信託制度においては委託者と受託者が同一であることはいかなる範囲まで許容されるのかということでございます。

 

 

 

特に,現行信託法の1条では他人をして管理又は処分をさせるとされている文理を踏まえつつ,委託者と受託者は同一であってはならないと解されていることにかんがみますと,新信託法におきまして,この点につきまして,委託者と受託者とは同一であってはならないということを原則とするのか,仮に原則にするとしたら例外は一切認められないのか,仮に例外を認めるとしたらその範囲はどこまでなのか,それとも委託者と受託者が同一であってはならないということを今後は原則としないのかを規定上明確にする必要があると考えております。

 

 

 

 

 

ここにおきましては,差し当たりの議論のたたき台といたしまして,甲案と乙案の2案を提示しております。

 

甲案は,委託者と受託者は同一であってはならないということを原則としながら,一定の例外を許容しようというものでございます。

 

 

例外の①は,現行実務においていわゆる再信託と言われているものを許容していこうというものでございます。

 

 

すなわち,ある信託において受託者となった者が,信託財産の管理の一方法として,自らを委託者兼受託者として,自らが受託者となっている他の信託に再信託を行う,例えば年金信託が原信託で貸付信託が再信託と,こういう運用がされていることを踏まえまして,これを引き続き許容していこうというものであります。

 

 

 

①が許容されますのは,かつて通達があったわけでございますが,このような場合には,委託者と受託者は形式的には同一であるとはいっても,投資信託の委託者が再信託の委託者であると考えられることとか,最初の信託の受益者が実質的には再信託の受益者であるからと考えられるということなどが説明されていまして,そのような考え方を踏襲するものでございます。

 

 

 

 

 

それから,例外の②でございますが,これは,前回,かつての信託法制研究会報告書で,丙案という,一定の手続的な制約を設けるということを提案いたしましたが,それを踏襲するものでございます。

 

 

 

前回は,目的に制限を設けるという方法と,手続に制限を設けるという方法を提案いたしましたが,ここでは,設定手続についての限定を加えるということを提案するものでございます。

 

 

目的による制限というのは,各種のニーズに柔軟に対応できる信託制度を構築するという趣旨から余り好ましくないということ,それから,このように手続的限定を設ければ,債権者詐害的に信託が利用されるということについても必要かつ十分な対応は可能ではないかと思われるからでございます。

 

 

 

この手続的な方法といたしましては,かつて信託法改正試案というところで議論されておりましたものが挙げられておりまして,公正証書,公告による方法,あるいは商業登記と同じような信託宣言設定の登記の制度を設けることなどが議論されております。

 

 

このような方策を用いることについてどのように考えればよいかという点について,御審議をいただければと思います。

 

 

もっとも,このような手続的規定を設けるぐらいであれば,むしろ,不当に債権者詐害的に信託が利用されるもの,信託宣言が利用されるものについて,例えば信託否認の法理を規定する,整理するということですとか,後で御議論いただきたいと思いますが,詐害信託の取消しの要件を信託宣言の場合について緩和するというような方法によって対応すべきだという考え方もあり得ると思います。

 

 

そのような方法につきましてどのように考えるかという点についても,御審議をいただきたいと思います。

 

 

 

 

 

なお,手続的な措置を余りに重厚なものにすると,柔軟な利用のニーズにも十分こたえられないというような懸念もあることを付言させていただきます。

 

それから,①の再信託の場合につきましては手続的な規定を要求しておりませんが,これは,①の場合におきましては,固有財産ではなくて,信託財産について再度自らを受託者として信託を設定しておりますので,固有財産に属する債務に係る債権者との関係で債権者詐害を問題にする必要はないと思われるからでございます。

 

 

もっとも,信託債権者との関係では,債権者詐害の問題の問題は生じ得ますが,信託債権者を害するというような方法で再信託をするということは余り考えられないのではないかということで,ここでは手続的規定をかぶせませんでした。

 

 

しかし,やはりそのような懸念に対処する必要があるのではないかという考えもあり得ると思いますので,その点についても御審議いただければと思っております。

 

 

 

それから,これも資料中に書きましたけれども,再信託の場合について,原信託の受益者の権限が果たして再信託における信託財産の管理方法ですとか信託財産の処分・運用についてまで及び得るのかどうかという点につきましては,必ずしも明らかではございません。

 

 

例えば,原信託の受益者が再信託の受託者の行為について取消権を行使できるかとか,再信託の財産の運用,これは実質的には原信託の財産でございますが,帳簿まで閲覧できるか,必ずしも明らかではないという気がいたしますので,そこについても,再信託について信託宣言の制限を省く以上は規定を設けるべきではないかという考え方もあり得ると思われます。

 

 

これに対しまして,乙案は信託宣言を一般的に許容するというものでございまして,その根拠につきましては,6ページで,信託宣言を一般的に認めていいのではないかという理由がるる挙げられているところを記載させていただきました。

 

 

なお,これは,信託設定当初から受託者と委託者が同一の場合はどうかという点をまず御議論いただきたいということでございまして,最初は別でも途中から一緒になることもあるではないかという話は,肯定説の一つの根拠としてあり得るわけですが,そこは,最初の信託設定の局面で許容されるかどうかが明らかになったことを踏まえまして,中間的に同一になった場合はどうするかという規定を整理していきたいと考えているところでございます。

 

以上で信託宣言の説明を終わらせていただきます。

 

 

それから,もう一つの目的信託,第69というところになりますけれども,ここの説明を簡単にさせていただきたいと思います。

 

 

 

36ページでございますけれども,甲案については,特段変更はございません。

 

 

乙案につきましても,2の期間的な制限を加えたこと以外には大きな変更はございません。

 

 

乙案は現行の考え方を原則として修正するものでございまして,信託の機能の観点からすると,法人制度において実現可能なことが信託制度において実現不可能であるということを合理的に説明するのは困難であるという考え方に基づくものでございます。

 

なお,乙案による場合,受託者の監督というのは,委託者はもちろんのこと,信託管理人の設置を可能にするとの制度設計により行うものと考えております。

 

 

 

すなわち,目的信託におきましては受益者が存在しませんので,受益者のために選任される通常の信託管理人に関する規定そのものが適用されると考えるのは難しいことになりますが,ここでは,委託者によって設定された信託目的が的確に達成されるように受託者を監督する役割を担うべき信託管理人というものを位置づけまして,規定を整備することを考えているところでございます。

 

 

 

 

 

 

それから,2で期間的な制限を設けましたのは,目的信託を設けたといたしますと,永久に実質的な所有者が存在せず,処分されない財産が生み出される懸念があるという指摘がございますので,目的信託の存続に当たって期間制限を設けてはどうかと考えたものでございまして,民法の永小作権ですとか地方税法の規定などで,50年とか100年とか,例えばですが,そのような期間制限を設けるということも考えられるのではないかということで,このような提案をさせていただきました。

以上でとりあえずの説明を終わります。

 

 

すみれ

「税金が。」

 

 

  •  それでは,今の二つについて御意見を。
  •  それでは,意見を申し上げます。

 

 

まず,結論から申し上げますと,資料の4ページから5ページにかけて,いろいろと理由が書かれおりますけれども,そういった理由と今から申し上げるような理由から,信託宣言は認められるべきではないと考えております。

 

 

また,甲案の①の「当該財産が自らを受託者とする他の信託の信託財産であるとき」については,これは5ページの方に書いてありますけれども,先ほど○○幹事からも御説明がありましたが,昭和37年に民事局長回答ということで信託法1条の問題については整理済みであると考えておりますので,基本的には,甲,乙でいきますと,丙案というふうに考えております。

 

 

 

理由でございますが,まず,余り論理的なお話でないかもしれませんけれども,一つは,日本における信託制度といいますのは,自分の大事な財産を,信じて他人に託すことであるという,そういったことが非常に定着しておりまして,その信じて他人に託すことをベースに信託制度の信頼が得られて発展してきたというふうに私どもの方は認識しております。

 

 

このような現状を踏まえまして,以前から執行の免脱等の弊害がいろいろと指摘されている,そういう信託宣言をなぜ今導入しなければいけないのかということがよく分からないということでございます。

 

 

 

私は信託銀行の人間でございまして,信託銀行では,信託宣言がなくても,特にニーズとして挙げられております流動化とかいうものについても十分対応できてきたと認識しておりますので,今までの信頼を崩すような信託宣言というのを何で今ここで導入しようということなのかというのがよく分かりません。

 

 

すみれ

「信託銀行の人も信託宣言に反対だったんだ。」

 

 

 

弊害につきましては,執行免脱というふうに申し上げましたけれども,そのほかでぱっと考えますと,流動化ということを前提に考えますと,例えばある事業会社が固有財産で持っている貸付債権を流動化しましょうといった場合については,現状ですと信託銀行が受託者になりまして,どういった債権があってというチェックを行うということをやっております。

 

 

 

ところが,信託宣言が導入されますと,当然そういうチェック機能というのが働かなくなりますので,基本的には一人で全部やってしまうということになりますので,当然のことながら一人よりは二人の方がきちっとした対応ができるであろうと。

 

 

 

そういったところで,二重譲渡とか三重譲渡とか,そんなようなことが考えられるのではないかと。

 

 

以前,抵当証券の問題で,実際に財産がなくて,そういう譲渡があったというような弊害もあったと聞いております。

 

 

そのような弊害が考えられるのではないかなと。ちょっと考え過ぎかもしれませんけれども,そういうことが言えるのではないかと思います。

 

 

 

あとは,現行の制度のもとにおきましても,以前,信託的な譲渡でマイカルの問題があって,この問題と信託宣言の問題とは,シチュエーションとして完全にイコールであるわけではありませんけれども,いずれも,実質と形式がどうなのかという問題。

 

 

 

それで,今までは絶対大丈夫だと思われていたことがこんなに問題になったということでございますので,正にほとんど動かないようなもの,信託宣言が果たして,例えば流動化に使われたときに,皆様方が思われているようないい格付がとられて,ばら色のような形のものができるのかどうか,そこら辺がちょっと疑問だということでございます。

 

 

すみれ

「ばら色のような形、か。」

 

 

それと,流動化目的のための利用としまして,資料の6ページの方に,ケイマンのチャリタブル・トラストの機能というのが挙げられておりますけれども,現状は,この前もお話がありましたけれども,特定持分信託があって,なおかつ,前回の提案で58条リスクというのがほとんど解消されるということですので,十分に代替できるのではないかということと,あとは,チャリタブルなトラストというような意味合いであれば,当然のことながら信託宣言の問題でなくて,もう一つの目的信託の問題であろうと言うことができると思います。

 

 

 

最後に,ちょっと業法的な問題から申し上げますと,第1回目でしたか,○○委員の方からお話がありましたけれども,例えば信託宣言で流動化を行うというような場合については,当然そのほとんどが信託業に当たるということになると思います。

 

 

 

あと,現行の信託業法というのを前提にいたしますと,例えばある事業会社が信託宣言によって流動化を行おうとした場合については,これも仮定の話なので合っているかどうかよく分かりませんけれども,多分それは信託業ということになって,信託以外の他の業務ができないということになるのではないかと思います。

 

 

 

そうすると,どうするかというと,信託会社を別につくらないといけないという話になってしまいますので,そうしたら,そこに対して信託をするとしたら,これは信託宣言ではないという話になりますので,何で流動化に信託宣言がいいのかというところがいまいち分からないというところでございます。

 

 

 

  •  信託宣言の問題に関してなのですけれども,そもそも私がこちらの委員に選ばれている一つの理由は,流動化・証券化実務をずっとやってきたというところがあろうかと思いますし,大正時代にできた信託法を見直す一つの目的は,現代化ということにあるわけですけれども,信託という制度が,過去10年ほど,流動化・証券化という取引に非常に盛んに用いられてきているという事実がございます。

 

 

それを踏まえて発言させていただきたいのですけれども。

 

 

 

信託宣言につきましては,結論としては,乙案,つまり,基本法である信託法においては特段の制限を設けずに認めるべきではないかなというふうに考えております。

 

 

流動化・証券化の本質は,多くの場合,企業あるいは金融機関による資金調達であるとか,最近では金融機関によるリスク管理の目的で用いられているわけですけれども,これは社会的に言えば,20年ほど前までは信用リスクといったものを銀行がすべて負担-ちょっと語弊があるかもしれませんけれども,銀行が負担していた,そして銀行の信用リスクを政府が負担していたというような形だったと思うのですが,それが徐々に開放されてきて,信用リスクを経済取引の中で負担しなければならなくなってきていると。

 

 

 

そういった中で,例えば企業が資金調達を行う際に,単に借入れを起こす,あるいは社債を発行するということであれば,場合によっては資金を提供する人が限られるかもしれない。

 

 

 

なぜならば,企業が発行する社債の引当財産というものはその企業の固有財産であり,それは特に経営者の裁量があることから,それが確実に債権者に対する返済原資になるとは限りませんし,将来的に企業が生み出したキャッシュフローをどういうふうに用いるか,予想が非常に困難であると。

 

 

 

一方で,では企業が持っている特定の資産だけを切り出して,それが生み出すキャッシュフローのみを引当てに資金を募るというような仕組みを用いれば,将来のキャッシュフローの予測可能性が高まる,そして安心して資金を投下する人がふえてくると,そういう発想に基づいて多くの流動化・証券化という取引が行われているわけですし,これだけ大きくなってきた要因だろうと思うのですけれども,だからこそ,流動化・証券化取引というのは,一つは取引の予測可能性が高くなければならないということと,あと安定性といったものが求められるのではないかなと思います。

 

 

 

 

 

この流動化に関して,信託宣言がなくても対応できていたのかどうかということなのですが,まず,信託宣言は,現に日本における流動化取引で多く用いられております。

 

 

 

それがチャリタブル・トラストというところなのですけれども,これについては後で述べることにして,それ以外にも用途があるわけですね。

 

 

 

取引コスト,あるいは取引に要する時間を節約しつつ流動化取引を行うと。端的に言えば,資産を持っている企業が自らを受託者として信託設定して,それをもとに資金調達するというような仕組みがあり得ると思います。

 

 

 

これに関しては,厳密に言えば自己信託あるいは信託宣言ではございませんけれども,約5年前から信託銀行が住宅ローンを証券化する際に用いてきている仕組みがございます。

 

 

 

これは,信託銀行が保有している住宅ローン債権を,SPCを設立しまして,SPCに債権譲渡する,それでSPCが委託者となって,オリジネーターたる信託銀行を受託者として信託設定すると。

 

 

 

それによってSPCが受益権を保有することになるわけですけれども,その受益権を引当てに社債を出すという仕組みが一部の信託銀行によって用いられている。

 

 

 

では,なぜそのオリジネーターたる信託銀行が自ら受託者となるような信託を設定しているのかということなのですが,これは恐らく,ほかの信託銀行を受託者にするよりは時間が節約できるであるとか,コストが節約できるといったメリットがあるからではないかなというふうに思われます。

 

 

 

あと,マイカルの問題で御発言がございましたけれども,これは,保有していた不動産を信託して,自らが賃借人として使用し続けるといった取引,セール・アンド・リースバック-信託アンド・リースバックですか-の実質と形式の問題ということだろうとは思うのですが,先ほど申し上げたような,SPCをつくってそこにいったん債権譲渡して,自らを受託者として信託設定するといった仕組みが問題あるのかどうかというようなところにも関連するのではないかと思いますし,これはどちらかというと,信託法の枠組みの中で考えるべき問題なのか,むしろ倒産法であるとか,あるいは民法の枠組みで考えるべき問題ではないのかなという気がいたします。

 

 

 

 

それと,既に日本における流動化・証券化取引で数多く信託宣言が用いられていると申し上げました。

 

 

これはチャリタブル・トラスト,御存じのとおりケイマン諸島であるとか英領ジャージー島であるとか,英米法系の法域を使って利用されております。

 

 

 

どういうものかといいますと,会社をつくりまして,その会社の株式をケイマン諸島ならケイマン諸島の信託会社に譲渡して,信託会社が自らを受託者として慈善信託,チャリタブル・トラストを設定するというもので,その目的は,そのSPC,会社がだれにも支配できないといいますか,そういう中立的な,英語で「orphan SPC」と呼んでいますけれども,孤児にするためなわけですね。

 

 

それと同じような趣旨のもの,確かに資産流動化法に特定持分信託というものがございます。

 

 

特定目的会社の特定持分,株式会社における普通株式のようなものですけれども,これに関しては,資産流動化法の規定によって特定持分信託を行うことで,委託者あるいは特定社員に一切議決権を行使できなくさせてしまう,受託者たる信託銀行のみが議決権を行使できる,だれにも支配できない,流動化商品の投資家の観点からすれば利害が相反する人が支配する可能性のない会社を作ることができる。

 

 

 

 

ただし,この資産流動化法の特定持分信託の問題は,資産流動化法上の特定目的会社にしか用いることができないということでございまして,実際の流動化・証券化取引に会社が用いられる場合は,様々な形態の会社・社団が用いられております。

 

 

株式会社が使われる場合もございます。有限会社が使われる場合もございます。

 

 

番人

「有限会社も設立できたんだね。」

 

 

また,外国法に基づいて設立された会社が用いられる場合もございます。すべてが特定目的会社ではないですし,むしろ特定目的会社が利用されているケースというのは全体のごく一部ではないかと思います。

 

 

これは,特定目的会社にはいろいろメリットもあるのですけれども,例えば流動化計画をつくって提出しなければならないといった様々な制約もありますので,ケース・バイ・ケースで株式会社等が用いられる場合があると。

 

 

 

それで,株式会社等が用いられる場合は何が行われているかというと,結局,株式会社の株式をケイマンの会社に持たせて,そのケイマンの会社の株式を,ケイマン諸島においてチャリタブル・トラストをつくって中立化しているというような取引が行われると。

 

 

日本国内で行われている,日本の資産を裏づけに日本の投資家に販売される流動化・証券化取引になぜかケイマン諸島が入ってきているという事実があるわけですね。

 

 

 

確かに,ケイマン諸島なり,英米法系の法域の非常に商売熱心な法律事務所であるとか,あるいは信託会社がありますので,その海外の制度を用いれば対応できる問題でありますし,現に対応しておりますけれども,このように取引の一部が海外に流出してしまっている,あるいは日本国内における経済取引において外国の法制度に依存しなければならないという現状が好ましいのかどうかといった点も考える必要があるのではないかというふうに思います。

とりあえずそんなところなのですけれども。

 

 

 

 

  •  私も,今御発言があった○○委員と同様,流動化の立場の方で乙案の方に賛成するということで意見を述べさせていただきたいと思います。

 

 

当社の方は,クレジット事業者として,クレジット債権を流動化するということで資金調達をやっているわけなのですけれども,資金調達をする以上は,極めてタイムリーに,かつコストを安くやるというのは当然だと思うのですけれども,今,○○委員の方でお話がありましたように,流動化の初期においては,当然,社債の格付をきちんととるためには,オリジネーターの信用から,倒産リスクから隔離をした上で安全性の高い商品としてつくり上げられない限りは投資家さんに買ってもらえないということがありまして,当初,ケイマン諸島等に設立されているSPC等を受け皿として流動化のスキームづくりをやってきたというのがあります。

 

 

 

 

しかしながら,今お話がありましたように,当然,海外の法律事務所を使って,英文でもってSPCの設立をやると。

 

 

 

当然,SPCですから,会社組織としてかなりの費用,弁護士に対する費用とか,設立関係の費用等々かかってくるわけですね。

 

 

 

それから,海外とのやりとりになりますので,翻訳の費用等がかかってきたり,また,実際につくり上げるまで,当初は相当な期間がかかった。なれてきますとパターン化しますので,だんだん早くはなってきますけれども,それでもかなりの制約があるということがありました。

 

 

 

そういうことで,現状では,かなりの部分-実は,先般新しい制度として設けられた中間法人,これを使ってケイマンのチャリタブル・トラストのかわりにできないかということでいろいろ工夫されて,現在は中間法人を使うスキームというのがかなり使われております。

 

 

 

 

しかしながら,中間法人は,当初,例えば同窓会なんかの組織を法人化した方がいろいろ財産管理等で便利だということからつくられたように,もともと流動化目的でつくられているわけでも何でもないわけでございます。

 

 

したがいまして,例えば,当社でも,流動化商品を海外において販売する,海外で起債するということも当然やっておるわけですけれども,海外において,日本の中間法人制度を使ってこれをやっているのだとスキームの説明をすると,中間法人というのは一体何だということになって,当然のことながら,なかなか理解が進まない,それに対する説明等々も非常に大変になってくる。

 

 

 

しかしながら,今後,信託宣言が使えますと,信託宣言によってやっていますということであれば,これは一発で海外のあらゆる層に説明ができる。そういう点で,海外の起債を考えた場合は非常にいいのではないかと考えております。

 

 

すみれ

「今やってるのかな。」

 

 

それから,先ほどのケイマンのSPC,これも同様に説明はしやすいわけなのですけれども,しかしながら,先ほど○○委員がおっしゃられたとおり,やはり他国の制度であるということで,情報が入りにくい。

 

 

 

どういうふうに変わっていくのかということについても予測がしにくい。それから税の問題でも,例えば,ケイマンSPCを設立していると,検査等で,何か変なことをやっているんじゃないか,脱税等の目的とかに使っているんじゃないかということで,その説明資料をばんばん出させられるというような負担もある。実務においてはそういった問題点もあるということで,やはりこれも使いにくいと。

 

 

 

 

したがって,何とか信託宣言を使えるようなスキームにしていただいて,今まで以上に機動的な資金調達ができるような形になったらというふうに思います。

 

 

それから,では実際につくったらどうなのかということで,先ほど○○委員の方から,実際,例えば当社が信託宣言によって信託財産をつくり出すということについては,これを継続的にやれば業法的な問題が生じるのではないかということをおっしゃられましたけれども,その問題は当然あると思います。

 

 

 

ただ,そこまでの問題はまた業法の問題として解決するとして,例えばそうでないケースでは,今日の資料の中にもございますように,損害保険会社の保険料ですね。

 

 

 

 

損害保険会社は大体が複数の損害保険会社の代理店になっている。

 

 

それから,当然自分のところの固有財産もある。

 

 

そういう中で,当社でもかなり例外があるのですけれども,そこの代理店が開設している口座の差押えをした場合に,それは一体固有財産なのか,損保会社の方の財産なのかということで何度も争いになってきたということはありますけれども,例えば,ここに書いてございますように,該当の保険料を,損保から指定された口座に-指定されたというか,自分で開設した損保用の口座に預金して,その預金債権を当該損保会社を受益者として信託宣言をするということで,例えば保険会社が複数ある場合に,信託財産について,当然分別管理もできますし,固有財産との分別もできるということで,非常に仕組みも安定するということがありますし,ほかの業界を見てみますと,例えば当社でもサービサーを立ち上げているわけですけれども,サービサーが債権の回収委託を受けるというときに,複数のいろいろな金融機関からの債権を委託を受けるわけですけれども,その回収金を引渡しの期限まで個別に管理しているわけです。

 

 

 

 

しかしながら,これだって,サービサーは法務省の監督下にありますけれども,やはり回収金がコミングルする可能性がある。それから倒産リスクもある。

 

 

すみれ

「コミングル?混ざるって意味か。」

 

 

 

そういうことになりますと,どんどん受託を拡大するということも難しくなりますので,この場合も,各債権回収の委託者を受益者として,信託宣言によって債権を分別管理する,倒産隔離をするということでも使えるのではないかなと思います。

 

 

それから,翻って,我々の業界の中でいろいろな債権を流動化してきているのですけれども,今難しい債権として,マンスリークリアのクレジットカード債権というのがあります。

 

 

これはマンスリークリアですから,1か月で回収してしまうわけですね。発生から回収まで1か月しかない。

 

 

 

普通に債権流動化しているのは,オートローン債権のように36回払いとか,48回払い,長いときは60回払いとか,そういうような債権があって,それらについては,一括して譲渡して,あとはオリジネーターであるクレジット会社が分割して回収して,それを信託銀行の方に引き渡すということをやっているのですけれども,回数が長いですから,一つ一つの回収金がもし渡せなかったとしても,若しくは回収そのものが非常に成績が悪かったとしてもそんなに影響が出ないようなスキームを作ることが可能なので,どんどん利用されているわけですけれども,1回払いということであれば,それがすべての財産になるわけですから,これらについてもし流動化をするということであれば,信託銀行としてはこれを確実に回収して元利金の支払いに充てるということをやらないといけないわけですけれども,今だと,例えば回収から引渡しまで一定の期間があって,その間に万一会社が倒産するということになると,これはもうだめになってしまうわけですね。

 

 

 

 

したがって高い格付もとれないということになりますが,これらのクレジットカード債権を,信託宣言をすることによって倒産隔離,それから他の流動化している財産の分別,それからの回収金との分別管理というのが可能になれば,このあたりも,現状は先ほど言いましたような理由で難しいわけですけれども,そういったものも可能になってくるのではないかと。

 

 

 

 

そういうふうに使えますので,先ほどのような最終的な問題はありますけれども,たちまちいろいろなところでこういったものが,信託宣言を使うことによって安定性が増すという利点がございますので,このあたりについては,是非ともこれを認める方向で御議論いただきたいと思います。

 

 

 

 

  •  私は銀行業界の者でございまして,第1回で申し上げましたとおり,銀行の中でもいろいろな業態がございまして,意見が分かれております。

 

 

 

例えば,この前も申し上げましたが,都銀懇話会というところは規制緩和要望として信託宣言も推進すると要望しているところもあれば,反対しているという業界もございます。

 

 

したがいまして,申し訳ないのですけれども,現時点では,今の私の立場では,いずれの案がいいかということは述べられません。

 

 

ただ,個人的に思いますと,それぞれ甲,乙,それぞれもっともな点があると思いまして,信託宣言に反対という立場については,報告書にもあるような執行免脱の問題であるとか,信託法の根本を見直す必要が出てくるのではないかとかいうこともあるのではないかと思います。

 

 

 

ただ,実際見ますと,いろいろな詐害的なものとかいうのは,やる人はやるので,そういう手続を復活させても,それを超えてやるということもあるわけで,ある意味でイタチごっこになるようなところもありまして,やはりそれは,そういう詐害なり二重譲渡なりということ自体を詐害行為取消権ないしは刑罰規定で抑えるというところが一つのポイントなのかなと思ったりもいたします。

 

 

ポリー

「たしかにですね。やる人はやるということもありそうです。」

 

 

また,乙案についても,①はさておき,②のように一定の条件をつけるということも,これら弊害を緩和するための立法策として,例えば,お話にありましたような第4次の信託改正要綱なんかの議論を見ますと,それなりに理解できるところはあります。

 

 

 

ただ,例えばの議論として,公正証書というのが本当にいいのかということについては,この改正要綱の中では,公正証書というのも一つのオプションとして,ほかに通知とか公告とかあるわけですから,それが絶対的なものではないということもありますし,また,公正証書だけを言ったとしても,やはり報告書にありましたけれども,機動的な対応ということからするとちょっと弊害になり得るものもあるんじゃないかなと思います。

 

 

また,最後に,信託の可能性を向上させるという観点からすると乙案がよいということにもなるのかなと思っています。

 

 

以上のように,いろいろ悩ましい問題だとは思っておりますけれども,この議論というのは,正しく今できないものをできるようにすべきかどうかということを議論しているわけですので,実務界としてはどういうニーズがあるのかということをよく推し量って,それの弊害というものもあわせて検討すべきだと思っておりまして,その点,先ほどから○○委員,○○委員から御紹介事例が挙がっておりますけれども,それらに重なる部分もありますけれども,幾つか御紹介したいと思っております。

 

 

 

一つ目と二つ目はどちらかというと銀行関係になってしまって恐縮なのですけれども,これは第1回目の審議の中でも申し上げましたが,銀行債権の流動化ということがまずあります。

 

 

 

これは,銀行にとってはオフバランス化であるとかBIS対応というのが重要なことでございますので,不良債権を含めた銀行債権の流動化ということには寄与になるのではないかということでございます。

 

 

 

この理由としては,これも前回ちょっと申し上げたとおりですが,大体,日本のマーケットにおいては,例えばお客さん,債務者にとっても,借入残表が変わるのを嫌がったりとか,銀行とお客さんとの関係,リレーションを変えたくないと。

 

 

 

すなわち,銀行にお返しをしたい,また銀行によって回収されるものを回収されたいというようなニーズもあるわけです。

 

 

また,資金決済リスクも含め考えれば債務者とかいう問題もありますので,そういう意味で,日本のマーケットにおいては,やはり当初貸し出した銀行と取引をしておきたいというニーズがあると思っています。

 

 

 

逆に言いますと,信託銀行とか第三者を使った流動化においてはそういうリレーションを壊すということもありますので,なかなかお客様の御理解もいただけないということで,弊害になっているところもあります。

 

 

 

そういう意味において,もちろん現状でも一定の範囲でそういう流動化というのはできておりますが,この信託宣言を導入できれば一層の発展ができるのではないかなというふうにも思ったりしています。

 

 

 

二つ目は,これと同じ文脈なのですが,特に通常債権において,今,日本の金融市場では,貸出しマーケットを拡大していこうという話がございます。

 

 

 

 

いわゆるローン・トレーディングという話でございますけれども,これも同じ話で,ローン・トレーディングでいろいろ転々流通していくという債権について,やはりお客様からするとなかなか抵抗感があると。

 

 

 

これを宣言信託にして,受益権という形でセカンダリー・マーケットでさばくということであれば,そういうマーケットも広がりますし,翻って,そういうことによって,いわゆるオリジネーションといいましょうか,銀行の貸出しということにも発展し得るということもあるのではないかと思っております。

 

 

 

 

以下は銀行からだんだん離れていきますけれども,三つ目には,やはり,今,ニーズとしては,エスクローといいましょうか,受託者倒産リスクを回避するための資金管理スキームというニーズが高まっております。

 

 

 

これは,先ほど○○委員からも御案内があったとおり,例えば保険代理店の話であったり,またサービサーの資金の問題であったりとかいうのもありますし,例えばM&Aであるとか不動産であるとか,高額の資金についての決済というのをいろいろな他の手続との絡みで事実上同時履行を担保するために,エスクローに,今のところは第三者に入れているというのもあると思うのですが,それをある程度当事者同士で簡単にできるということができるのではないかと思っております。

 

 

 

 

三つ目に-三つ目四つ目はどちらかというと装置産業な話なのですが,ビジネス・トラスト,事業の信託というのが今あるかなと思います。

 

 

 

事業の信託に関しては,この審議会の別の論点の中で議論されておりますけれども,やはり,そういう事業を起こすというときに,ある程度立ち上げというのが必要になりますので,その立ち上げをある程度しておいて,それで投資家に次は売る,そこで宣言信託をするというようなこともあるのではないかなと。

 

 

すみれ

「銀行の人も事業の信託に賛成だったんだ。」

 

 

同じ文脈で,運用マーケットにおいて,集団的投資スキームというのがあるのではないかなというように思います。

 

 

そういうスキームをあらかじめつくっておいて-後で適宜加えるということはあるかもしれませんけれども,そういうスキームを当初から宣言信託によって作るというのもあるのではないかと。

 

 

次には,チャリタブル・トラストというのは,これはいろいろなお話があったとおりだと思いますけれども,これも別になければならないということではないのですけれども,仮に,これは今回の議論ではないですけれども,目的信託ということが認められるのであれば,私としては,目的信託の賛否は別として,目的信託が認められるのであれば日本版チャリタブル・トラストというのもよりやりやすくなるのではないかなと思っています。

 

 

 

よって,今申し上げた事例というのは全部というわけではないのですけれども,そういう創意工夫によって,いろいろな経済的な又は民事的な利用というのができるのではないかなというふうに思いました。

 

 

 

 

 

  •  今,いろいろなニーズ,それから弊害等についての御意見がありましたけれども。

 

 

  •  今回,信託法という極めて基本法の改正をするという話ですので,業法上どういう扱いになるかということはともかくとして,まず,どういう仕組みといいますか,基本的な仕組み,枠組みを認めるのかというような観点でちゃんとした議論をするのがいいんじゃないかなと思います。

 

 

 

信託の根本として,どうしても他人に委託するということが必須条件なのかどうなのかと。

 

 

自ら信託宣言をして,自分で信託を受けるということにしても,根本的に何がいけないのかなというふうにちょっと思います。

 

 

もちろん,一部弊害というものが指摘はされていますけれども,それが執行免脱等々であれば,詐害行為取消しとか,そういうような一般的な法理の中で解決することだろうと思いますし,そういう免脱行為というのは,信託宣言についてだけ何か特別な問題ということではないんじゃないかなと。

 

 

ほかのことでも同じようにある問題の一つなんじゃないかなと思うわけです。

 

 

番人

「たしかに。受託者が他の人でも委託者の手元に通帳がある場合もあるだろうし。」

 

 

今後,社会・経済の発展等々で,あらゆる,本当に今の時点で想像がつかないような形での利用の方法というのが将来考えられるということもありますので,なるべく自由な設計ができるような形で信託法は組み立てるべきではないかなと思います。

 

 

特に,信託というものがそもそもそういうものじゃないかというような気がするもので。

 

 

それで,今幾つかお話がありましたけれども,本当に考えられる事例といたしましては,事業信託なんかで,例えば自分の会社のある事業部門だけを切り出して,今は商法上トラッキング・ストックということができることになっていますけれども,そういうものも,ストックではなくて,受益権という形で切り出すといいますか,切り出しはしないのですけれども,事業部門は会社の中に残っているわけですけれども,その特定の事業部門から得られる利益を受益権という形で販売するというようなこともできるでしょうし,それから,例えば,M&Aが盛んですけれども,営業譲渡なんていうのを考えた場合も,今であれば資産の譲渡という形で営業譲渡になるわけですけれども,これも会社から切り出すわけではなくて,信託宣言をしてもらって受益権という形で外に切り出していくという創意工夫の余地があるのではないかと。

 

 

更に,信託について期間的な設定を設ければ,10年間営業譲渡して,10年後には営業が戻ってくると,そんなような効果をもたらすということもできるかもしれない。そういうような利用価値というのがどんどん広がっていくのではないかなと思います。

 

 

 

 

それから,先ほど○○委員から御紹介がありましたけれども,エスクローという,要するに,倒産隔離を図る必要がある制度が-現にそういうものが必要なのですけれども,日本ではそういう銀行口座が認められないもので,いろいろ四苦八苦した形でやっていますけれども,信託宣言が認められれば,エスクローとほぼ同じ,例えばM&Aの売買代金を払うときに,買った株式なり営業なりに将来瑕疵があったりするとちょっと困るので,売買代金の5%とか10%というお金をちょっと横に置いておいてほしい,それで,将来,買った株式とか営業に瑕疵があったときには,その横においてあるお金から賠償を受けたいと,こういうようなことがよくM&Aの過程でも行われるのですけれども,この信託宣言が使えれば,売主側の中でその5%ないし10%なりを信託宣言して横にどけておいてもらって,買主がその受益権をもらうという形で将来の損害賠償に備えるというようなこともできるのではないかと思います。

 

 

 

 

そういうふうにいろいろな利用価値が高まってくるのではないかと思いますので,信託宣言は認められるのがいいのではないかと思います。

 

 

 

  •  私ども,債権者の代理人として仕事をする場合もありますので,そういう観点から一言意見を申し上げておきたいのですけれども。

 

 

債権者の立場からすると,先ほどから出ておりました財産隠し,執行免脱というところはやはり気になるところです。

 

 

 

これは,信託に固有の問題があるのか,ないのかという御指摘が先ほどありましたけれども,財産隠しをしようとする場合には,例えば土地の名義を移すとか,何か名義を移すときに,普通は協力者が必要になるわけですけれども,信託宣言ということができると,そういった協力者を得ずして財産隠しや執行免脱が可能になるのではないかという問題があろうかと思います。

 

 

すみれ

「そっか。」

 

 

そういった観点からすると,債務者が容易に財産隠しを行い得るという事情というのは,この信託宣言にはどうしてもついて回る問題点なのではないかと思います。

 

 

債権者の立場からすると,そこを何とかきちんと問題解決できるように,やはり制度としてはきちんとつくっていただきたいと思うところです。

 

 

そういった観点からすると,制度として,やや,この御提案の中では公正証書ですとか幾つかの案が出ておりますけれども,また取消権の行使ということも言われておりますけれども,これは恐らく後でのテーマの議論ということになろうかと思いますが,一つは,取消権というのは裁判をやらなければならないということになりますと,債権者の立場からするとこれはやはり手続的にはちょっと重いのではないかということになりますし,また,この取消権の要件効果の定め方によろうかと思いますけれども,これで回収・回復を図るということはなかなか難しいのではないかというふうな感じもしております。

 

 

 

それから,取消権ではなくて,手続のところで要件を重くして,なかなかできないようにしようということになりますと,これは恐らく,先ほど来から出ておりますいろいろなニーズにこたえることとの関係で緊張関係にあろうかと思いますので,なかなか難しい問題はあろうかと思いますけれども,いずれにしろ,そういった財産隠し,執行免脱についての問題点については,制度を検討する際には一度具体的にイメージした上でお願いできればと思います。

 

 

 

  •  ほかに,いかがでしょうか。

 

 

  •  ほとんど○○委員と○○幹事の方で発言された部分とダブる部分があるのですけれども,先ほど○○委員の方でおっしゃられた,執行免脱とか財産隠匿をするのではないかという懸念についてなのですけれども,それについて,私の経験をもとに意見を言わせていただきたいと思います。

 

 

 

私,今の法務部門にくる前は主に債権管理をやっておりまして,現実にいろいろな強制執行や訴訟等をやってきたのですけれども,その中で実際に,○○幹事の方から御紹介がありましたような,信託の制度を使って執行妨害する,差押えをとりあえず回避させようというようなものに何度もぶち当たってきました。

 

 

 

今週もまた1件稟議が上がってきて,こういうものがあるのだけれど,弁護士に相談したところ,詐害行為取消しでやれるという意見なので,訴訟したいというようなことで稟議が上がってきたので,それをオーケーしたのですけれども。

 

 

 

このように,信託宣言を使わなくても,本当に家族とか-まあ,家族だと余りにも露骨なのであれですけれども,大体知り合いを通じてやっているという例は結構あるわけですね。

 

 

それともう一つ,執行妨害としては,家族に贈与するというのがよくあります。

 

 

大体奥さんに贈与するというケースがあります。これについても,やはり訴訟をやり始めた後,ほぼ判決が出そうな時期ぐらいに奥さんに贈与するというようなケースがあって,なかなか立証が難しいのですけれども,長く夫婦をやっているとなかなか難しいというところがありますけれども,これについても詐害行為取消しでもって訴訟して,最終的には和解するというケースが非常に多いのですけれども,そういったことでやっております。

 

 

 

 

それ以外にも,組合をつくって,その組合の中に自分の財産を紛れ込ませるとか,あとは,これは余り例はないのですけれども,例えば,会社を持っている場合,そちらの方と仮装の売買とか,そちらの方に現物出資するとか,そういったことでとりあえず自分の財産からなくすという方法があります。

 

 

そういったことがありますので,何も信託宣言だけを殊更に取り上げて,こういう問題があると言わなくてもよろしいのではないかなと思いますし,これから後の議論になると思いますけれども,詐害信託の取消権というのも検討されているようですし,また,強制執行の免脱罪とか,その他の刑法上の手当てもありますので,このあたりがあれば,債権者としてはそういった権限行使もできますし,信託宣言を認めない理由としてはちょっと弱いのではないかなというのが,私の意見でございます。

 

 

 

  •  今の○○委員の御意見に関連する話ですが,信託宣言の一番の問題は,その人が信託宣言すれば,もうそれで財産の分離が一応できてしまうと,それが執行免脱のおそれが大変大きい,容易にできると。

 

 

今の○○委員のお話にあったように,今ですら何件もあるのだと。それが,信託宣言ができると,数的には恐らく飛躍的に増えるのだろうと思うのです。

 

 

そういう場合に,詐害行為取消しすればいいじゃないかという発想は,普通の人の財産を守るという観点からすると,不十分だと思います。

 

 

番人

「普通の人からすると重い感じはするな。」

 

 

詐害行為取消しというのは訴訟を行わなければならないわけで,それは大きな会社の回収部門がそれなりの流れに乗って,こういう要件があってこういう見込みがあるから,じゃあこれは詐害行為取消しの訴訟だということをやって,実際にそれで回収するということはそれなりにできると思いますけれども,普通の国民のレベルで裁判をやってそれなりの財産を確保してとかいうような場合に,その後,執行の段階で突然信託宣言ということで執行ができなくなってしまう,そこでもう1回詐害行為取消しの裁判をやれということは大変なハードルです。

 

 

 

ですから,執行免脱のおそれを十分クリアするためには詐害行為取消しができるようにすればいいじゃないか,容易にすればいいじゃないかとか,立証を簡単にすればいいじゃないかとか,そういうレベルでは足りないと考えますので,そもそも信託宣言の必要性のところとの関連もありますけれども,少なくとも一般的に認めるというのは弊害の方が大きいので,反対したいと思います。

 

 

 

ただ,流動化の関係の必要性とかそういうのは,意見,いろいろな形の,中間法人でそれなりのカバーができるとか,いろいろな説明がありましたけれども,限定した形での制度設計ということも検討の中に入れてみたらどうかなと思います。

 

 

 

  •  私,この甲案,乙案,あるいは第3の案,特定の案にコミットするというほどまだ自分の考えが練れていないのですが,ただ,今まで出てきた議論の中で1点気になることがありましたので,一言だけ申し上げます。

 

 

執行免脱,財産隠匿ということについて随分御指摘がございました。

 

 

それが信託固有の問題かどうかはともかくとしまして,信託宣言については執行免脱や財産隠匿のおそれがあるというのがいわば古典的な反対の論拠になってきたわけですけれども,平成15年の担保・執行法制の改正で財産開示制度ができ,それから昨年の破産法の改正で,破産者の重要財産開示義務ですとか説明義務が整備されたことをどう考えるかというのを考えに入れる必要があろうかと思います。

 

 

番人

「財産開示制度か。開示してくれる人多いかな。」

 

 

執行免脱や財産隠匿を論拠にするということは,抽象的に財産がどこかに行ってしまうということではなくて,具体的に,例えば債務名義を持っているとか,仮差押えをして債務名義をとる準備が具体化しているとかいうレベルの問題だとしますと,その財産開示を視野に入れるべきでしょうし,あるいは,債権者申立てで破産をするというようなところまで来ているのであれば,同時に重要財産開示義務なども視野に入れて議論すべきだろうという気がいたします。

 

 

 

  •  先ほどから,私以外の実務家の方々は信託宣言について賛成であるという御意見がありまして,皆様方の御意見の中身の大体9割方は私も同意するところであります。

 

 

 

おっしゃっているのは,多分信託の制度の使い道という部分であって,新しい使い道というのは多分あるのだと思いますし,そういうお話があったのですが,それでは果たして既存の信託の制度でできないのかというと,もう自らおっしゃっていましたけれども,いろいろな工夫をされていらっしゃると。

 

 

 

私どもの方の社でもやっておりますけれども,現状やってきているというところがあって,それでなぜ今,信託宣言なのかと。

 

 

 

具体的に申し上げますと,先ほど申し上げましたけれども,例えばチャリタブル・トラスト的なもの。

 

 

今,ケイマンのチャリタブル・トラスト的なものが求められているのは何で求められているかというと,意思を反映するような受益者が出てきたら困るからということであれば,それは目的信託という問題で解決すべき問題だろうと思います。

 

 

 

ですから,そこはそういうふうに工夫するということと,あとは,特定持分信託のところについては,先ほども申し上げましたけれども,58条リスクを回避するという方法でわざわざ御提案いただいているわけですから,そちらの問題で多分解決ができるだろうと。

 

 

 

あと,例えば,普通に一般の事業会社さんがそのまま信託宣言で貸付債権の流動化をするというところについては,基本的にそういう制度自体が果たして本当に信頼性を得られるのだろうかというのが非常な疑問でありまして,そのときに対抗要件とかはどうするのだろうかなというようなことであるとか,当然のことながら,二重で譲渡するということが非常に簡単にできると。

 

 

私,それこそ信託銀行で信託業務をやっているわけですから,どちらかというと,新たなスキームを信託宣言を導入することによってつくっていくということについては,なかなか……。

 

 

信託制度を使っていくということについてはそれなりに及ばせていますけれども,信託宣言を使ってこれしかできないというのはなかなか思いつかないという感じがいたします。

 

 

 

逆に,変な話,資金繰りに窮したらどうするんだといったときに,これを悪用するという方法は割と簡単に思いつくかなと。

 

 

そういう意味合いの,どちらかというと,執行免脱というよりも,資金繰りの問題とか,例えば流動化ということだけを前提にしますと,そういう弊害というのは考えられるのではないかと思います。

 

 

  •  信託宣言に関して弊害として指摘されているところも,私の理解では,一つは執行免脱あるいは財産隠匿に用いられるおそれがあるというところと,二つ目が監督牽制がきかなくなるおそれがあるという,その二つになるのだろうと思います。

 

 

 

前者の執行免脱,財産隠匿云々については,私,余り詳しくないので,余り申し上げられないのですけれども,一つ素朴な疑問として,何らかの財産が受益権に変わるだけじゃないのかなという気がしまして,受益権に対する執行というのを債権者としては考えられ得るのではないかなというような素朴な疑問を持っています。

 

 

 

それと,2番目の,監督牽制がきかなくなるのではないかということなのですけれども,現に数多く行われている流動化・証券化取引,日本における信託のみを用いた仕組みというのは多数あります。

 

 

 

それを見ていますと,確かに委託者と受託者は別です。受託者は委託者の100%子会社ですというケースが非常に多くあります。

 

 

 

銀行が貸付債権を流動化する場合に,自らの100%子会社の信託銀行を受託者として信託設定して,その受益権を売っているというケースが非常に多数ございますし,親会社・子会社の関係でなくても,例えば中央三井信託銀行さんの住宅ローンの証券化の場合ですと,三井アセット信託を受託者として用いています。

 

 

 

あるいはまた,同様なことを信託銀行業界でも,他社でもやっていますけれども,いずれにせよ,委託者と受託者が同一企業グループ,同一の株主にあるというケースが多々あるわけですね。

 

 

この場合は,確かに委託者と受託者が,まあ法人としては別ですけれども,じゃあ一緒だとした場合と投資家として見た場合のリスク評価が一体どう違うのだろうというようなこと,形式より実質を見た場合にどう違うのかなというところがちょっと疑問としてございます。

 

 

 

それと,冒頭に,この信託宣言の議論は,当初から委託者と受託者が同一である場合についてのみというふうなことをおっしゃいましたけれども,現状行われている流動化・証券化取引において,委託者と受託者が,先ほど申し上げたような親子会社であったり,非常に親しい関係である場合が実は多々ございますので,合併するということが起きれば,容易に委託者と受託者が同一になるということはいつでも起き得る状況にあるのではないかなと思います。

 

 

その監督牽制なのですけれども,少なくとも,まず受益者によるチェック,受益者による牽制というのはあり得るのではないかなという気がいたしますし,また,突き詰めれば,不正のリスク等については受益権を取得するなりする人が評価するべき問題じゃないのかなというような気がいたしております。

 

 

 

 

  •  主としてニーズとか弊害という実際的な側面からの議論が今たくさん出て,大体どこに対立点があるかということ自体は明らかになったように思います。

 

 

あと,これは理論的にもうちょっとどういうふうに考えたらいいかというような点とか,それから,今伺っていて,この信託宣言というのは,一方で,受益者が特定していて,明確に受益者に受益権を与えるというタイプ,これは受益者ですから直接信託の設定には関与しませんけれども,委託者だけでただやっているわけではない,そういう意味では受益者が関与するタイプ,それから,受益者がいないような目的信託的な,あるいは場合によっては公益信託かもしれませんけれども,そういうものを信託宣言で作るという場合,何かいろいろな場合があるような気がするのですが,理論的にもう少し整理して,どういうところであればそれほど問題がないのか,あるいは,やっぱりなかなか共通点が見つけられないのか,そういうところを少し整理してみたらどうかという気がいたします。

 

 

 

まだまだ,これは双方おっしゃりたいことがたくさんおありだと思いますけれども,とりあえずここで信託宣言については一段落させていただいて,できるだけ議論を集約するというふうに申し上げましたけれども,どうもなかなか集約ができそうもありませんので,問題点,対立点を明らかにするということで,もうちょっと違った整理ができるかどうかも含めて検討してみたらどうかという気がいたします。

 

 

 

  •  1点だけ。

 

 

 

私,乙案でもいいかと思っているのですけれども,信託宣言に賛成するか反対するかというのはともかくとして,では何日の何時に信託宣言がなされたのかということが明らかにならないといろいろ困る場面がたくさんあって,甲案が十把一からげというか,何か全部が信託宣言を制約するものだという感じでいじめられる対象になっているのですが,②なんてごもっともじゃないかというふうな気がしておりまして,もし整理されるときには,先ほど対抗要件という話も出ましたけれども,いつなされたことにするのか,あるいは債権譲渡なんかのときの対抗要件,よくさかのぼってはいけないとかいう話があるわけですけれども,そういうのをどのような対抗要件制度にするのか,公正証書ですべてやるのか,その点についてもあわせて御検討いただければというだけです。

申し訳ございません,時間がないところで。

 

 

 

  •  今の対立は,どうも甲案と乙案というのではなくて,甲案のような要件のもとで信託宣言を認めることさえも否定すべきだという立場と乙案との対立という形ではないかと思いました。

 

 

 

いずれにせよ,今の○○幹事の御意見も踏まえながら,もうちょっと議論が集約できるような形で整理し直したらいいかと思います。

では,ここで休憩させていただきます。

 

(休     憩)

 

  •  それでは,また再開したいと思います。

 

先ほど,目的信託の方も多少関連しては議論されたかと思いますけれども,なおそれ自体についての議論がまだなされていないかと思いますので,目的信託についてそんな時間はとれないかもしれませんけれども,10分か15分ぐらい議論させていただければと思います。

 

 

 

目的信託について,いかがでしょうか。先ほどの流動化の問題に戻すのは余り適当な方法ではないと思いますけれども,倒産隔離の目的のために,それでまた受益者が必ずしも明確に存在するというわけではない,そういうときに独立の財産をつくり出すというのに目的信託は非常に有効なわけですが,いかがでしょうか。

 

 

  •  意見というよりも,進め方についての確認なのですが,甲案と乙案は,法人法制とパラレルにするかしないかというところが大きな問題になっていると思うのですが,他方で,とりわけ中間財団が認められることになるかどうかというのは,今,流動的な状態だと思います。

 

 

そういう前提で,今こちらの審議会としてどういう審議をすべきなのか,ここの議論はどうもパラレル論が中心になっているものですから,それだけですとなかなかしにくいなという感じがするのですが,いかがでしょうか。

 

 

 

  •  このペーパー自体は多少パラレルなことを意識して書いてありますけれども,私,個人的には,完全に連動しなくてもいいのではないかというふうに思いますが。

どうですか。

 

 

 

  •  おっしゃる趣旨のとおりでございまして,ペーパーは法人制度との平仄ということも視野に入れてはおりますが,信託は信託ということで,御議論自体は独自にしていただければというふうに考えております。

 

 

 

  •  はっきり言えば,場合によっては中間財団というのが認められなくても信託は構わないのだということはあってもいいと思いますね。

 

 

 

  •  目的信託の甲案,乙案のところにつきましては,結論から申し上げますと,乙案ということでございます。

 

 

先ほど公益信託のお話がありまして,公益信託については別途ということですので,それを前提にする限りにおいて余り詳しい検討をしているわけではありませんので,最終意見ということではないのですけれども,公益信託というのは私ども受託していますけれども,基本的には,ブランドイメージ的なものというのはやはり大事にしたいなというふうに考えておりまして,そうしますと,純粋な公益目的以外の部分の受け皿というのはやはり必要なのではないかと考えておりまして,公益信託に類似するようなものであるとか,あとは,先ほどお話が出ましたけれども,チャリタブル・トラストの出資の持分にかかる中立性を確保するような目的,そういうような使い勝手というのがあると思いますので,そういうところの受け皿として必要性があるのだろうということで,乙案ということでございます。

 

 

 

  •  乙案の場合,この2というのがあって,受益者が確定されないような場合,目的信託というのはそういうわけですけれども,一定の期間を超えては存続できないというぐらいの制約はあった方がいいということですね。

ほかに,いかがでしょうか。

 

 

 

  •  私,ここでも,今日の最初の発言と同じように,目的信託に対する需要というようなものをやはり考えざるを得なくて。

 

 

というのは,英米の信託で目的信託というのは非常に問題になっているのですね。

 

 

すみれ

「何が問題になっているんだろ。」

 

 

 

でも,今のところ,イギリスとアメリカだけをとると,ここまで広い目的信託というのは考えられていないと思うのです。

 

 

アメリカの統一信託法典にはっきり目的信託というのは入ったけれども,少なくともコメント等を見る限りは,限定的ですよね。

 

 

ここに出ているようなペットのものとか,あるいは日本で言うと永代供養的というのか,墓地を守ったりというようなもの,そういうものについて認めて,統一信託法典で言えば,しかも,期間の制限というのも,とりあえず案としては21年とかいうので,ここでは例えば50年,100年というようなことを考えている。

 

 

 

それから,ペットや何とかというのはここに少し出てはいますけれども,こういうものに限定しないで,先ほどの議論との関連で言えば,流動化のところで,はっきり財産を切り分けて,これを倒産隔離というか,そういう意味でこのスキーム全体の安定した基軸というところで使いたいという話ですから,やはりビジネスのところで使おうということだと思うのでね。

 

 

 

その当否について,あるいは是非について,すぐ私がどうのこうのと申し上げているのではないのですけれども,やはり非常に英断であることは間違いないので,こういう一般的な話でただ議論していいのかなという感じがするということなのです。

 

 

 

需要というのが,私も,わざわざケイマンで,しかも,チャリタブルなんていったって本当にチャリティーでも何でもないのにそんなものをつくっておいてというのよりはずっといいと思うのです。

 

 

すみれ

「たしかに。」

 

 

 

ずっといいと思うのですけれども,それ以外にもいろいろな形,それから,ビジネスだけではなくて,先ほど,信託宣言についてあれだけ,債権者詐害である何であるというのを問題にするのなら,目的信託だって同じように使おうと思えば使える,受益者が本当はいるのに受益者を隠しておくことすらできるというような形で,つまり危ぐというものを持とうと思えば,新しい制度に対してはもっと危ぐを言い募ることはできるのですね。

 

 

私は,どちらかというと,そんなに恐れているよりは,やはり信託についてはまず進んでみようという方がいいと思うのですけれどもね。

 

 

ちょっと長広舌になったので,この程度にします。今のところはコメントだけです。

 

 

  •  ○○委員自らおっしゃったように,なかなかニーズといっても,経済界の一部では若干あるかもしれませんけれども,それ以外のニーズということになると,必ずしも明確なものがあるわけではありません。

 

 

 

ここに書いてあるような幾つかの例がありますけれども,こういうのがあれば使えるのではないかというぐらいのニーズしか実際にはないですね。

 

 

欧米とはちょっと違ったニーズも入っているかもしれませんし,そこら辺の評価をどうするか,新しい制度でもって今後のいろいろなニーズを先取りするような制度を作るかどうかということですが。

 

 

 

 

  •  ニーズの方なのですけれども,私自身,公益信託の受託推進とかということを仕事でやってきたことがあるのですけれども,現状の制度ということを前提にする限りにおいて,やはり公益目的というのはかなり厳しいところがあって,正に公益的なんだけれども主務官庁が許可してくれないというようなケースは結構よくありまして,結局泣く泣く流してしまったというようなことがよくありました。

 

 

 

そういうことを考えると,もうちょっと公益信託を広げるという方法が一つあると思うのですけれども,これは公益法人との絡みの問題もあろうかと思いますが,我々の方の感覚としては,公益信託は公益信託として今までやってきて,一つの,先ほど申し上げましたけれども,ブランドイメージ的なものもあって,税の問題とかも多分リンクしてくるような問題ではないかなと思いますので,それはそれとして,今まで断ってきたようなものを組み入れたような形の受け皿にしたいと,そんな感じです。

 

 

 

  •  現在の公益信託を前提にしますと,やはり非常に狭いので,その周辺にあるいろいろなものがここで拾えるというところに大きなメリットがある。私も全く同感です。

 

 

 

ちなみに,目的信託のイメージですけれども,仮に乙案をとって,一定の期間を超えて存続してはならないというときに,その期間が到来したときにどうなるかということなのですが,あるいは説明が書いてあったのかもしれないけれども,目的信託の場合には,これは法制度をどう作るかですけれども,帰属権利者を定めることは可能だという前提ですかね。

 

 

 

そこに行くか,あるいはそれが定められていないときは委託者ないしは相続人に戻って,もう一度同じ目的でもって設定したければ,そこからまた同じ期間設定することができる,そんな形ですかね。

 

 

 

常に,一定期間来るとそこで続けるかどうかを見直しをしてと,そういう形で財産が固定化されるのを防ぐ。

 

 

公益の場合には,その財産が公益目的のために永続するということが認められても,それ以外の公益とは言えないような目的のために財産が流通しなくなってしまうというのは必ずしも適当ではないということで,乙案の2のような制約を設けたらということですね。

 

 

 

  •  初歩的な質問なのですが,目的信託のバランスシートを考えたときの純資産の部分がだれに実質的に帰属しているのかという問題をお伺いできればと思います。

 

 

 

それは,既に公益信託が現存するのであるから公益信託と同じなのだ,だれにも帰属していないのだということが一つ考えられる答えで,それを公益信託に限らず目的信託に広げたのだと,あるいは,財団法人のいわゆる純資産の部分はほかでもない財団法人に属しているのであって-財団法人にステークホルダーがいるのかどうか分かりませんけれども,仮に考えたとしても-だれにも帰属していないのだというのと,法人格は持っていないけれども同じなのだというのがもう一つの答えで,まあ同じなのかもしれませんけれども,考えられるのですが,比較的容易に広く認められるような存在として考えると,そこをどう考えたらいいのかというところがどうしても疑問として残るのですけれども,このような提案を事務局としてなさった際に,どんなイメージで考えていらっしゃるのかということをお聞かせいただけると有り難いのですが。

 

 

 

 

  •  バランスシートのことは今初めて考えたわけでございますが,形式的には,やはり受託者が所有者ということにはなりますけれども,実質的な観点で言いますと,受益者がおりませんので,そこはバランスシート上も受益者のものとしては出てこない,公益信託と同じような考え方をするのではないかというふうに考えているところでございます。

 

 

 

 

  •  比喩なのかもしれませんが,公益信託の場合は公益に属するとかいうふうにも言えるのかもしれませんが,公益ではなくて,正にその「目的」に属していると。まあ,それも比喩ですけれども,そういうふうにならざるを得ないだろうということになりますか。

 

 

 

  •  そのように考えております。

 

 

 

  •  難しいところですけれどね,でも,そうならざるを得ない。委託者に属するというわけにもいかないし,受益者はいないという前提で考えると,何だかはっきり分からないけれども,その目的のために存続しているだけだという……。

 

 

 

この目的信託は,我々はここではそんな議論しないけれども,やはり税の問題とか,あるいはそれこそ財産が戻ったときの税の問題だとか,なお実際に使われるまでにはいろいろハードルがあるのではないかとは思いますけれども。

 

 

 

  •  ○○委員がおっしゃったことに関連するのですけれども,帰属権利者を定めて目的信託をするということをしますと,財産隠匿とか何とかいうことが今までよく出ていましたが,これは差押禁止定期預金を作るようなものですよね。

 

 

 

ある不動産を-ペットでもいいし,何かを受益者に相当するものとして置いて,10年後はその目的が終了して,その帰属権利者に戻る,それはイコール委託者かもしれないということになると,10年間は差押えをしないようにしてもらうということなわけですよね。

 

 

もちろん,それは,9割9分は私益に使われるのに一部だけが最後教会に寄付されるからといってチャリタブル・トラストだからいいだろうというのは,○○委員もおっしゃったように,無駄な,ある意味ではフィクションかもしれなくて,それならば正面から目的信託として認めればいいじゃないかというのも分からないではないのですが,一般的に,36ページ以降に書かれているような内容というのが,その10年間は差押禁止にできると。

 

 

 

場合によっては50年,100年というのも書いてあるのですが,そうすると設定する側が余りにその間利益を享受できないということになりますから,10年間ぐらいにしておく方がいいのかもしれませんが,その10年間は差押禁止財産を作ることができるということをもたらしている結果のドラスチックさを中和ないしオーバーライドするほどの需要が書かれているとは私には思えないのですけれども。

 

 

 

 

  •  差押禁止財産を作るのかどうかはあれですけれども,その間は少なくとも財産権を委託者は失っていると,その財産については。

 

 

ただ,一定の期間たつと,だれかにその財産が帰属すると。最初の委託者が自分を権利帰属者にすると,いかにも差押禁止財産を作るような感じがしますけれども,その場合でも,今言ったように,一定期間は財産権を共有できない。

 

 

 

別な人が帰属権利者であれば,とにかくその一定期間はだれにも属さないで,委託者とは別なだれかに最後帰属すると,そういうことですね。

 

 

 

  •  ○○委員がおっしゃったことに追加でございますが,目的信託をした場合であっても,受益者はいないわけですけれども,当該信託目的に従って,その信託行為に定められた事業をするわけですから,その信託事業から生じた債権者という人は当然いるわけで,そういう債権者の担保にはなるわけでして,差押禁止財産というのは聖域を作るものではないのだろうと思います。

 

 

 

その信託目的というのも,通常の信託目的と同じように確定可能なものでなくてはいけなくて,ある程度具体的なものがなければいけないという確定性の要件というのは当然かかってきますので,単なる,置いておくとか,そういうようなものが認められるかというと,必ずしも肯定的ではないのだろうということから,必ずしも差押禁止財産を作るということではないのだろうというふうに,とりあえずは考えておりますが。

 

 

  •  ということだと思いますけれども。

 

 

  •  恐らく,考え出すといろいろな問題点が出てくると思いますが,一応考えておいた方がよかろうと思います。

 

 

 

それが,ここにも出ているような,物資の融通を害するとか。ちょっと古典的な言い方ですけれども。それから,今御指摘のあった差押禁止財産,確かに信託債権者はいるわけですけれども,しかし,実質的にはやはり委託者の債権者から逃れるために使われることが多いのではないかという,その実質問題。

 

 

 

あるいは,後で出てくると思うのですが,詐害信託の場合に,受益者の善意・悪意を基準にするということをしたときに,受益者がいないと一体どうするのかというような問題とかもありますし,受益者が不存在である,かつ,委託者の債権者がかかっていくことができないという場合に,最終的にどうするかは別にして,想像力をたくましくして,どういう問題点があるかというのを洗っていった方がいいかなというふうに思います。

 

 

 

  •  今御指摘のうち,詐害信託のところの問題があるのではないかというところは後で御議論いただければと思いますが,今回の提案では,目的信託につきましては,受益者は不存在ですが,債務者,委託者に詐害意思がある限り常に取消しができるという案を考えておりますので,そういう意味では常に取り消せる,受益者がいなくても差し支えはないということには考えております。
  •  分かりました。どうもありがとうございました。

 

 

  •  それでは,よろしいでしょうか。まだいろいろ問題点はあるということは重々承知しておりますけれども,時間の関係もありますので,次のテーマに移らせていただきたいと思います。

 

 

  •  では,信託の定義の問題と,脱法信託,訴訟信託の禁止,それから詐害信託の禁止まで,一気に説明をさせていただきます。

 

 

 

第1に戻りますが,第1は,主として第3回会議における審議を踏まえまして,信託の定義,契約による信託の成立及び効力発生時期につきまして新たな提案をしたものでございます。

 

 

 

まず,信託の定義,第1でございますが,受託者が分別管理義務を負うことを何らかの形で信託の要件として規定すべきかについてはかねてより問題提起していたところでございますが,第3回会議におきましては,理由は様々でありますが,結論的に消極的な意見が有力であったということにかんがみまして,定義規定には含めないこととすることで提案しているものでございます。

 

 

なお,ここにも書いてございますが,法人への出資ですとか匿名組合契約,あるいは「委任契約+財産の移転」のような信託類似の制度と信託との区別につきましては,法人への出資や匿名組合契約につきましては,信託法以外の法律が適用されることを当事者が明確に意図している場合であることをもって区別できる,「委任契約+財産の移転」につきましては,特に倒産隔離を排除している場合に限っては,信託の本質に反する以上,もはやこのような法律関係をもって信託とは言えないということは当然であると解釈することによって,いずれも区別が可能ではないかと考えております。

 

 

第2に,信託の成立及び効力発生要件に関しまして,前回の提案では3ページのように,信託設定が書面によりなされたとき又は信託設定の履行が一部でもなされたときにはもはや撤回できなくなるという趣旨の規律を提案しております。

 

 

これは贈与契約に関します民法第550条の規定と類似しております。

 

 

ところで,贈与契約については,贈与者の意思が客観的に明確になるのを待つことで将来の紛争を防止するとか,軽率な贈与を防止する等の理由が妥当するとしても,信託契約については,委託者・受託者間の意思表示の合致がありながら,書面によらず,かつ一部の履行もない場合にはいつでも撤回できるとする合理的な理由が果たしてあると言えるかという指摘をいただいたところでございます。

 

 

前回の提案におきましては,信託設定過程に入った当事者の期待利益をなるべく保護するという観点とともに,受託者の忠実義務等による受益者の利益もなるべく保護するとの観点から,財産の処分がなされる以前であっても,書面により信託契約がされていれば,もはや信託設定を撤回できなくなるとしたものでございます。

 

 

しかし,このような趣旨を徹底するのであれば,委託者・受託者間の意思表示の合致さえあれば足りるはずであって,それに加えて書面の存在や履行を要件とする必然性はないと思われます。

 

 

書面によらない限り撤回できるとしてしまうと,かえって,ある契約関係を撤回可能とするためにあえて信託契約として性質決定してしまうというインセンティブというかバイアスが働いたりですとか,書面によらないことも少なくないと思われる民事信託の場面において,例えばせっかく受託者を見つけてきたのに受託者から容易に撤回されるとかいうことになって,不都合が生ずるおそれもあると思われます。

 

 

番人

「民事信託だって書面にするよ。」

 

 

 

そこで,今回の提案では,1ページの2に記載いたしましたとおり,端的に,信託契約は,委託者及び受託者の意思表示の合致があればそれだけで成立して,効力も生じ,もはや撤回し得なくなる諾成契約であることを明らかにすることとしたものでございます。

 

 

なお,この場合におきまして,信託当事者がいかなる段階でいかなる権利義務を有することとなるかは,専らその権利義務の性質によることになると思われます。

 

 

例えば,委託者・受託者間では,契約成立をもちまして直ちに受益権が発生して忠実義務が生じますし,委託者・受託者間では,信託財産の引渡しに関する権利義務が直ちに生ずることになると解されます。

 

 

これに対しまして,信託財産に関連する受託者の義務,例えば信託財産の管理義務ですとか受益債権の給付義務等は,物的有限責任の観点からも,信託財産が現実に委託者から受託者に移転されたことをもって初めて生ずることになると考えております。

 

 

 

第3に,事業信託における雇用契約の位置づけにつきましては,雇用契約の信託設定につきましては,財産の処分とは別途に従業員の同意を要するものの,信託設定の当初からでも委託者の負担している債務を信託債務として引き受けることができるという規律を提案しておりますので,これまでのように,まず積極財産による信託を設定した上で,その後に従業員を含む個別合意により雇用契約を受託者に移転する,信託債務として賃金債務が負担されるわけですが,このような2段階の手続を経る必要はなく,設定当初から,雇用契約も,当然従業員の同意を得た上で,受託者に移転することが可能であるというふうに考えたところでございます。

 

 

すみれ

「一つの契約書でできるかな。」

 

 

続きまして,脱法信託と訴訟信託の問題について御説明いたします。

 

 

まず,脱法信託につきましては,現行第10条の趣旨を維持するということで変更はございません。

 

 

続きまして,「訴訟信託の禁止」というところでございますが,まず,この提案は条文の規定ぶりを必ずしも意識したものではないことを当然の前提としたものであることは確認させていただきたいと思います。

 

 

また,ここで提案しているものも,当然のことながら,当部会における議論を踏まえて随時変更・改善しながら築き上げていきたいと考えております。

 

 

ところで,前回までの考え方でございますが,現行法第11条の規定の趣旨としまして,有力説は,この規定は他人の権利について訴訟行為をなすことが許されない場合に,それを信託の形式を用いて回避することを禁止する趣旨であると解しまして,そのような場合として,①非弁護士が弁護士代理の原則に違反して他人のために訴訟行為をなす場合,②非弁護士が弁護士法第72条に反して法律事務を業として取り扱う場合,それから,③他人間の法的紛争に介入し,司法機関を利用しつつ不当な利益を追求すると見られる場合,この三つを挙げております。

 

 

 

そして,訴訟信託として禁止されるためには,①の弁護士代理の原則の違反の問題につきましては,任意的訴訟担当が許容されない場合であること,②の弁護士法第72条違反の問題につきましては,同条に違反して報酬を得る目的で法律事務を業として取り扱う場合に該当すること,それから,③の他人間の法的紛争に介入するという問題につきましては,公序良俗に反するものであるということを要件として挙げております。

 

 

 

 

そこで,今回の提案でございますが,最後の,他人間の法的紛争に介入するという場合につきましては,民法第90条によって直接規律することと整理すれば足りるのではないかと考えたものでございまして,訴訟を行わせることを主たる目的としているのか否かで区別する必要はない,むしろ民法第90条違反で議論すれば必要十分ではないかと考えたわけでございます。

 

 

 

その他,前回席上配布させていただきました資料などにおきましていろいろ御指摘をいただいた点につきましては,この資料の中でこちらの考え方なども記載させていただいたところでございますが,1点だけ,口頭で補足させていただきますと,ここですと10ページの真ん中下あたり,「第3に,2の正当事由による例外を設けるべき事情が存するか疑問であり,仮に存するとしても現行規定を維持し,裁判所の運用により禁止規定を排除すれば足りるのではないか,また,本件のような場合に正当事由による例外を設けることは許容されないのではないかとの指摘」がございました。

 

 

 

この点につきましては,現行の第11条におきましても,学説上はこの禁止規範の射程範囲を限定的に解すべきであるという研究成果があることですとか,訴訟信託の抗弁が出されたにもかかわらず違法ではないとされた判例が存することを踏まえますと,事務局といたしましては,まずもってこのような学説や判例の成果を文理にできる限り反映させるよう努めるべきであると考えまして,正当事由がある場合にあってはこの限りではないとの例外を設けてはどうかと提案したものでございます。

 

 

 

もっとも,このような「正当事由」を規定いたしますと,これまで実質的に許容されなかったものまで許容されると解されかねないとの懸念があって,かえって弊害の方が大きいのではないかという御見解もあり得るところと存じます。

 

 

 

このような両者の問題につきましてどのように勘案していくか,御議論をいただければと思っております。

 

 

 

なお,実は1点修正がございまして,資料10ページの下の方に高裁の判例を挙げさせていただいています。

 

 

これは,ある論文の記述を引用させていただいたものでございますが,実は,原典に当たってみたところ,判旨におきましては,これは信託譲渡ではなく,直接信託法第11条の明文に反するものではないとされておりまして,要するに,訴訟信託には当たるけれども正当事由があるからいいと言ったというよりは,むしろ,そもそも信託ではなかったのだとした上で,いわゆる任意的訴訟担当を認めたものであって,理由づけが異なるものであったと分かりました。

 

 

この判例をこのような形で挙げさせていただいたのはミスリーディングなところがあったものと深く反省しておりまして,訂正させていただきたいと考えております。

 

 

 

ただ,我々の趣旨をあえて確認させていただければ,財産の譲渡を問わず,通常の任意的訴訟担当として訴訟追行が認められる事案にありましても,いわゆる訴訟信託の形で財産の譲渡を受けて当該財産の所有者たる受託者として訴訟追行したとしても許容されてしかるべき場合が存するであろうということで,このように資料は作成させていただきました。

 

 

最後に,詐害信託につきましての説明をさせていただきたいと思います。

 

第4というところに移りますが,これは,前回の提案に対する第3回会議における指摘事項等を踏まえまして,更なる検討の結果をお示ししたものでございます。

 

 

まず,前回提案時におきましては,詐害信託の取消しにより受託者が信託財産を委託者たる債務者に返還することによって,信託財産の有効な譲渡を受けたことを前提に信託債務の負担行為を行っていた受託者ですとか,信託債権者の利益が害されかねないという問題指摘を指摘させていただきました。

 

 

 

ここにつきましては,12ページ以下の説明1というところに書いてございますが,民法の文献を拝見いたしますと,組合契約における出資行為について詐害行為取消権が行使された場合の効果として,当該組合員の脱退と持分の払戻請求に限るという解釈論が示されております。

 

 

 

このような考え方に準じまして,詐害信託が取り消された場合におきましても,信託財産の価額から信託債務に係る価額を控除した金額の範囲内においてのみ一部取消しを認めることとし,財産の返還につきましては,民法の組合に関する規定に準じ,対象財産の種類を問わず,受託者側において金銭によって払い戻すことも認めることとしてはどうかと考えるものでございます。

 

 

 

それから,第2といたしまして,受益者の善意悪意の判断時期につきまして,前回の提案では「受益権を取得した当時」という表現を用いておりましたが,これが信託設定時のことを指すのか否かが判然とせず,仮に信託設定時を指すのだとすれば,ほとんどの場合において受益者は善意となりそうだし,かといって,判断時期を後ろにずらすほど,それだけ受益者が悪意と判断される可能性が高まって,その程度いかんでは適当ではないという御指摘がございました。

 

 

 

この点につきましては,13ページのところに説明させていただきましたが,受益者として指定された者は原則として受益の意思表示を要しないで信託の利益を享受することを前提に,「受益者として指定された者が受益者となったことを知った当時」を判断基準時としてはどうかというふうに改めて提案させていただくものでございます。

 

 

第3に,提案の2でございますけれども,信託法上の特別の請求権として,債権者から,受益者が悪意の場合において,既に取得した財産の委託者の返還請求権又は受益権の委託者への譲渡請求権を提案しておりますが,第3回会議におきまして,この請求権の性格を明らかにしておくべきであるという御指摘がございました。

 

 

 

 

この点につきましては,この請求権は,複数受益者の一部が善意であるために-資料中には「悪意」と書いてあったかと思いますが,善意と訂正させていただきます-詐害信託取消権を行使できない場合において,悪意の受益者との関係における債権者の救済を図る観点から認めるものでございまして,実質的には詐害信託取消権の代替的機能を果たすものであるということにかんがみまして,受益者の善意悪意を問題にするという点を除いては,民法第424条の詐害行為取消権の要件,範囲,効果についての考え方が当てはまると考えております。

 

 

したがいまして,第3回会議で具体的に指摘のあった事項のうち,返還請求又は譲渡請求の範囲につきましては被保全債権の範囲となりますし,民法上の詐害行為取消権については,債権者は,受益者又は転得者に対して動産又は金銭については自己への引渡しを請求することが認められておりますところ,この提案の場合におきましても,受託者又は受益者が既に取得した財産が動産又は金銭である場合の委託者への返還請求権については,債権者自身への引渡請求も認められることになると解しております。

 

 

 

なお,受益権の委託者への返還請求につきましては,受益権の債権者自身への移転請求を認める必要はなく,単に債務者たる委託者への復帰を認めれば足りると思われますが,取消権行使の在り方や受益権の移転に伴う対抗要件の具備の要否あるいは方法につきましては,債権譲渡が詐害行為に当たる場合の詐害行為取消権の行使の場合と同様と解することになると思われます。

 

 

 

ただ,資料を幾つか当たりましたが,いずれも債権譲渡して実際に取り立ててしまっている場合で,そうすると当然金銭となっていますので,債権者が自分に引き渡せと言っている例はいくらでもあるのですが,例えば代物弁済で債権譲渡して,取り立てる前に取り消したときに,その後どうなるか。

 

 

 

債務者に復帰的に変動するのかなという気がいたしますが,対抗要件をどうするかとか,よく分かりませんでしたので,この点は,具体的な解決方法までは提案できませんが,民法の解釈と同じようにすればいいのではないかと考えているところでございます。

 

 

 

  •  それでは,以上の点,信託の定義から今の詐害信託のところまで,御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

 

 

 

  •  お手元にお配りしてあるメモを御覧いただきながらお願いしたいのですが,「訴訟信託の禁止に正当理由を例外とすることの問題点に関するメモ」という1枚の紙ですが,検討課題の方で,結論としては,正当理由ある場合を訴訟信託禁止の例外とするという提案ですが,これに反対いたします。

 

 

 

その理由を以下に述べます。

まず,「訴訟信託禁止の立法趣旨」ですが,日弁連の意見書の方で書かれていますように,訴訟信託の禁止の趣旨は,検討課題の説明が述べることで尽きるわけではありません。

 

 

 

隠れた取立委任裏書に関する裁判例にあるように,相手方の抗弁を封殺するための債権譲渡や,また専門的知識・能力を欠く受託者がつたない訴訟行為により被害を受けるという可能性の問題もあって,だからこそ一律無効とされてきたのであって,例外規定を置くことについては慎重な検討が必要です。

 

 

 

 

この検討課題による立法趣旨に関する説明を前提としますと,訴訟信託禁止の例外として,これによれば弁護士による訴訟追行のみを規定すれば十分だということになってしまいますが,そのような提案ではなくて,正当理由というふうに置きかえています。

 

 

そして,その理由づけとして,任意的訴訟担当が一定の場合に許容されることを挙げています。

 

 

しかし,任意的訴訟担当そのものに,次に述べますような検討すべき課題がたくさんありまして,また,任意的訴訟担当と訴訟信託とは,実体法上又は訴訟法上相異なるものである点に留意すべきです。

 

 

 

次に,「任意的訴訟担当と訴訟信託の相違」ですが,検討課題の説明では,原告の主張が認められない場合,両者間で「棄却」と「却下」と結論が異なるものの,請求が認容されなかった点では同様ではないかと書かれていますが,訴訟信託の場合には信託設定行為という契約関係までが否定されることになって,訴訟法上の授権行為が否定されるだけの任意的訴訟担当とは明らかに異なります。

 

 

日弁連の意見書では,今お話しした「棄却」と「却下」の問題以外に,任意的訴訟担当及び訴訟信託の両方に関係する問題点として,

 

 

「任意的訴訟担当が許容される場合でも,当事者の訴訟上の授権行為により訴訟上の当事者が変更され得ることになると,裁判官の除斥・忌避の問題,訴訟費用の負担,訴訟費用の担保提供義務,訴訟上の救助,訴訟手続の中断・中止等の適用関係も異なることになる。

 

 

また,原告側が任意的訴訟担当である場合,被告側が本来の権利者に対する関連債権を主張して反訴が可能かといった深刻な問題が生じる」

 

 

と,以上引用ですが,問題点を指摘しており,これらの点について更なる検討が必要です。

 

 

任意的訴訟担当は,選定当事者に関する民訴法30条,債権管理回収業に関する当別措置法11条などの明文の規定に該当しない場合には,その許容性は限定的に解されているのが通説・判例です。

 

 

近時の民事訴訟法改正の際にも,正当理由ある場合,任意的訴訟担当を認めるということが論じられましたが,基準の定立の困難性から解釈論に委ねることとなったという,それで導入が見送られた経過があります。

 

 

 

訴訟信託を一定の場合に認めるとすれば,第三者が訴訟を行う場合に問題となる諸論点につき,民事訴訟法の改正も含め検討の必要があります。

 

 

最後に,「正当理由を例外とすることの問題点」ですが,本来無効である訴訟信託につき,何ら基準もない「正当な理由がある場合」,これは規定ぶりを意識したものではないという御説明がありましたけれども,とりあえずこのように申し述べますが,そういう抽象的かつあいまいな例外を許容することは問題であり,拡大解釈をもたらす恐れがあります。

 

 

例外を規定しなくとも,正当業務性,違法性阻却,主たる目的とする訴訟信託ではないと,そういう解釈論により十分に解決が可能であると。

 

 

したがって,結論としては,こういう正当理由を例外とすることには反対ですということです。

以上,意見です。

 

 

  •  どうもありがとうございました。

いかがでしょうか。

 

 

  •  定義のところと,詐害信託について。

 

まず,信託の定義のところでございますが,ちょっとくどいようで恐縮ですけれども,寺本幹事の先ほどの御説明で大体納得はした部分があるのですけれども,若干確認させていただきたいと思います。

 

1の「信託の定義」につきましては,委託者と受託者間の契約締結の時点で,信託契約を締結するという意思の合致,要するに,信託しますよということが書かれていれば,それは基本的には同時に受託者が分別管理義務を負担するというような合意も普通はあるであろうと考えられますので,そういう場合については事後的に信託が否定されることはないですねということを一つ確認したいということです。

 

 

信託という名前でもっての契約がなされれば,完全に否定的なことを明示しない限りにおいては信託ということでよろしいですねということが1点です。

 

 

そういうことがそれでよろしいということであれば,受託者の倒産からの隔離の意図を消極要件として機能させるということですので,これについては,書かない要件ということを整理をされていますので,信託制度の持つ,ほかの制度にない特徴を明らかにするというようなことと,あとは,信託法理を幅広く利用できる,例えば公共工事の前払金の判例に見られるような救済というのもできるということから,基本的には賛成したいと考えております。それが1点です。

ちょっと1回切らせていただいて,御回答いただければ。

 

 

 

 

  •  事務局といたしましても,御指摘のとおり,信託という名前をつけて特に排除していない限り,それは信託というふうに性質決定してよいと考えております。

 

 

 

  •  2点目に,これも若干くどいようなのですけれども,「信託契約の効力」のところでございまして,当事者の合意によって信託契約の効力が生ずるというところについては,信託契約の効力発生のときから信託財産の受託者への引渡しまでの間の受託者と委託者の義務,これは先ほど御説明がありましたけれども,これについて3点確認させていただきたいと思います。

 

 

一つは,信託財産が特定物であったら,信託契約の効力発生時から,委託者の手元にある財産の所有権が当然移転すると考えられますので,委託者は,少なくとも,これは民法400条ですか,特定引渡債権における保存義務としての善管注意義務を負うということですけれども,これ以外に何か信託法上の義務というのを負うのか,例えば,余り考えられないのですけれども,分別管理義務を負うとか,そういうことがあるのかどうかということを一つ確認したい。

 

 

それと,今度は受託者の方なのですが,当然,信託法と,あとは契約上の義務を負うということにはなると思いますが,財産の管理というところまでの義務は負うことはないですよねということが2点目です。

 

 

 

当然のことながら,物権の所有者としての権利行使とかやらないといけない部分があれば,それはやらないといけないとは思っていますけれども,財産の管理を行うというような義務があるのかどうかというのが2点目です。

 

 

3点目は,これは先ほどの御説明で大体分かりましたけれども,信託の引渡しを受けるまでは,受益者から給付の請求があったとしても,物的有限責任で,給付する義務まではないのですねということです。

 

 

この3点が確認できれば,基本的にはこの方向性で賛成ということでございます。

 

 

  •  まず1点目は,信託設定の合意があった場合の委託者の義務でございますね。これは,信託財産引渡義務はもちろんありますが,それは分別管理義務ということではなくて,その引渡義務を善管注意義務のもとで履行しなければならないと。

 

 

 

それが,考えによっては,ちゃんと保存しておきなさいよという分別管理義務と言えるのかもしれませんが,あくまで善管注意義務のもとでの引渡義務を負うということでいいのではないかと考えおります。

 

 

  •  それは,一般の,例えば譲渡したときと同じような……。

 

 

  •  同じと考えております。

 

 

それから,2番目の,受託者が何か義務を負うかというのは,受託者は,合意をしても,手元に財産が来ない限り,財産に関する管理義務などは負わない,御指摘のとおり,忠実義務のもとで引渡請求をちゃんとするという義務はありますが,財産管理義務は負わないということで考えております。

 

 

 

最後に,受託者が受益者に給付する義務でございますが,これは,おっしゃるとおり物的有限責任の規律も働きますので,実際に手元に来るまではそのような責任は生じないと考えているところでございます。

 

 

  •  それは,契約でいついつまでに引渡しするという期間が過ぎていたとしても,来ない限りにおいてはということですか。

 

 

  •  そこの債務がどうかは別として,ちゃんと請求しなければいけないのでしょうが,実際に来ない限りは,受益者に対しては給付義務というのは負わない,別途の債務不履行はあり得ると思いますけれども,給付義務自体は発生しないと考えております。

 

 

  •  今の○○幹事の説明に,私,全く賛成なのですけれども,一つだけ。

 

 

特定物の場合に所有権が直ちに移転するかという点は,当然にそうなるかどうかというのはもうちょっと慎重に考えた方がいいなという感じがしています。

 

所有権の移転時期については,これはいろいろ,どういう場合に移転するかという議論があって,従来の通説的な見解というのでしょうか,意思主義のもとでは,特定物だと所有権は移転する。

 

 

ただ,そういう意味で,受託者に契約の段階で特定物の所有権が移転してしまうと,委託者のもとに財産がありながら,占有は,受託者に何かある種の責任が生じるかもしれないという気もして,ですから,所有権の移転時期はちょっと……,まだ引き渡されていないときに受託者がどの程度の責任を負うのかと,その問題との関係でもうちょっと詰めた方がいいのかもしれないという気はしますね。

済みません,中断させてしまって。どうぞ続けてください。

 

 

 

 

 

 

  •  次は詐害信託のところでございますが,取消権行使によって受託者が返還すべき信託財産の範囲につきまして,第3回の本席におきまして,検討をお願いしたいと申し上げましたけれども,これについては,13ページに書いてありますように,「委託者の債権者が委託者の受託者に対する処分を取り消した場合にあっては,信託財産の金額から信託債務に係る金額を控除した金額の範囲内においてのみ取消しを認めることとし,また,財産の返還はその処分された財産の種類を問わず,金銭で払い戻すことも認める」と,こういう旨の規定を整備したらどうかというような御提案をいただきました。これについては非常に歓迎しておりまして,賛成したいと考えております。

 

 

 

  •  第1の信託の定義のところで二つコメントと,脱法信託について,セキュリティ・トラストに関連して一つコメントがございます。

まず一つ目,第1の信託の定義でございますけれども,その中の1の「信託の定義」ですが,従前から私の方で,信託の外延が不明確になるのではないのかという漠然とした問題提起をしておりまして,それは,基本的には,ここに書かれているメルクマールだけで十分なのかどうかと。

 

 

 

殊に銀行においては,公共工事前払保証金の判例もあったように,実際信託でないと思ったものが信託とされてしまうというリスクをどう考えるかという話を問題提起しておりました。

 

 

 

番人

「銀行にとってはリスクなんだね。」

 

 

これに対して事務局でも相応の御検討をいただいたと思いますけれども,私どもでも,ではどういうものがあるべきなのかということを考えたところ,結論から申して非常に恐縮ですが,余りいい知恵がないという状況でございまして,困ったなという状況でございます。

 

 

 

考えてみますに,例えば典型的な例としては,現行法でも匿名組合というのが,この二つの定義に照らし合わせると,信託とされてしまう可能性は十分にあると思っておりますが,ただ,実務においては,ここの報告にもありますように,そういう契約が明確にあるのであればそういうことがないということからすれば,恐らく一つの考え方としては,ある信託,これが信託であるという中で,例えば匿名組合だとか,法人であるとか組合であるものについても,明確なものについてはそれを切り出すということで解決できるのかなと思っています。

 

 

そうしますと,残る問題としては,当事者の意思が余り不明確でない場合に信託とされる可能性があるかどうかという話なのですが,その点については,やはり依然として,この二つのメルクマールだけで十分なのかどうかというふうにはちょっと懸念を感じるわけです。

 

 

 

ただ,実務的には,これが信託か信託でないのかというのは,公共工事のことも含めて,救済的なことをすべきかどうかも含めて,大体は分かるということにかんがみれば,恐らくはこの二つのメルクマール・プラス何らかの信託設定意思が,一つの積極的な,ないしは消極的なメルクマールになっているのではないのかなとは思っております。

 

 

 

ただ,ではこれが一体どういうものなのかということは私ども自身はよく分からないものですから,非常に困っている。ちょっと困っていることしか申し上げられないで恐縮なのですが。

 

 

 

そういう意味でお願いということになるわけですが,資料2ページ上のところに消極的要件とかいうことが書いてございますが,そこの切り分けについてどういう考え方があるかというのをもう少し普遍的に,例えばこれが要綱になるときには補足説明で書いていただきたいなというふうに思っております。

 

 

 

 

ちょっと変な話ですけれども,それがなければ,例えば信託業法の話がさっき出てきましたけれども,信託とは思っていなくてやっていたら,いきなり信託とされ,信託業法違反だと言われてしまうリスクもあるのではないかなと思っております。

 

 

 

二つ目は,2の「信託契約の効力」ということでございます。これは,私の方から,第1回目の審議において,諾成的契約かどうかという問題提起の中で出てきたかなと思っておりますが,これは私の今意図するところでございまして,非常に有り難い提案であると思っております。これで非常に柔軟的な信託の設計ができるのかなと思っております。

 

 

 

3点目に,セキュリティ・トラストに関して,第1と脱法信託について若干コメントいたします。

 

 

セキュリティ・トラストに関しては,3ページの注書きで書かれていますように,やはり実務的に一番問題なのは登記法,例えば債権譲渡ごとに信託原簿を変更するかどうかとか,また執行法とか,例えば被担保債権を有しない抵当権者の配当を現行法上弁済を認めるのかどうか,配当を認めるのかどうかという問題はあるということがあります。

 

 

 

 

番人

「信託原簿だ。」

 

 

ここは多分次回以降,具体的な案が出てくるというふうに期待はしておりますけれども,それに加えて,これもある意味,セキュリティ・トラストという商品に関しての問題点というのは信託法の中でも横串の問題としていろいろ出てくると思っておりまして,これも第1回目で申し上げましたけれども,一つは,やはり弁護士法脱法信託の問題と抵触があるのではないかということと,もう一つは,あらかじめ言うのであれば,繰り返しになりますが,例えば複数受益者における反対者の買取請求権を強行法規化した場合に,現状のシンジケーションないしは担保信託と比べればちょっとそごがあるのかなというのもありますので,セキュリティ・トラストの設計を考えますと,この信託法の中身でもいろいろ検討するものがあるのではないかなというふうに思っています。

 

 

 

そこで,第3の脱法信託のことで申し上げますと,2のただし書のところでございますけれども,これは○○委員の御意見と反対になるということになるのかもしれませんが,私としては,この原案どおりでいいのかなと思っております。

 

具体的に問題になりますのは,やはり不良債権におけるセキュリティ・トラストの利用ということでございまして,この場合に訴訟信託の禁止とされて,また弁護士法違反ということで,できない,無効になるというリスクがあるとなれば困るという話でございます。

 

 

 

この点,これは直接に72条の問題ではありませんけれども,法益が同じ73条において,平成14年の1月22日の最高裁の判決において,社会的・経済的に正当業務の範囲にあると認められる場合には弁護士法73条に違反するものではないということもありますので,やはり72条の規律というのはそこまで厳密に考えなければならないものではないのではないか,そういう正当な理由がある場合には認められるのではないかなと思っています。

 

 

この点は,本日の○○委員のメモの最後のところで,正当業務性云々で解釈論で十分に解決が可能であるという御意見がありますけれども,実務家としては,この文言が書かれているのと書かれていないのと,安全サイドに立てば萎縮効果が大きく違うということですので,ここはやはり法文上明確化していただきたいと。そういう意味で原案でいいのではないかというふうに思いました。

 

 

 

  •  第1の信託の定義の2の効力のところなのですが,御説明を伺ったのかもしれませんが,ちょっと私が理解できていないだけかもしれないのですが,委託者は,このようなことで合意が起これば,受託者に対して財産の引渡し義務を負うということですか。

 

 

 

これは自益信託でもそうなんですかね。更に気になるのは,種類物だったらどうなるのかというのが分からなくて。

 

 

金銭はいいのですけれども,とりわけ種類物で引渡請求をするのはいいのですが,代替執行をしたらほかのところから来てしまったりすることもあるのかなという気がいたしまして,何らかの形での効力が発生するというのは誠にごもっともで,そのとおりで全然構わないと思うのですけれども,強制履行ができるのかというのは,ちょっと何だかまだ考えるべき点があるのではないかという気がするということだけでございます。

 

 

  •  今のは,詐害行為取消し一般について。

 

 

  •  いえ,そうではなくて,例えば自益信託で,私が自らの持っている不動産を受託者に引き渡して信託を設定するという約束はしたと。先ほどの,特定物であるからといって所有権の移転を軽々に考えない方がいいという○○委員のお話を前提にいたしますと,そこで引渡義務,所有権移転義務というものが観念されるわけですが,受託者は,確かに信託銀行がそれで信託手数料をもらってあれしようと思って準備をしていて,それに対して損害賠償請求権というのがあるのは分かり切っていることなのですけれども,果たして私に強制履行をさせるというだけの利益を持っているのかというと,私は,それは疑問であります。

 

 

 

  •  そういう意味ですか。分かりました。

それはちょっと考えさせてください。

 

 

 

  •  先ほど,信託宣言のところで,私の方で,執行免脱とか財産隠匿については,詐害行為取消し若しくはこの詐害信託ということで,詐害行為の取消しで対抗すればいいのではないかという意見を申し上げましたけれども,それに対して○○委員の方から,一般の債権者からするとそれは難しいのではないかという御指摘がありました。

 

 

それについては,確かに,実際にやっていましても,債務者の方の悪意を何とか立証できたとしても,転得者の悪意を立証するのがなかなか難しいところはあります。

 

 

 

 

同様に,今回の案につきましても,債務者の方の悪意を立証できたとしても,受益者が「受益者となったことを知った当時に,債務者がその債権者を害することを知って信託を設定するために財産の処分をしたことを知らなかったときは,この限りではない」ということですので,ほとんど同じ形で,時期等の問題は別にして,同じ構成になっているのかなというふうに思います。

 

 

 

 

ただ,これだと,先ほど言いましたように,ちょっと難しいケースもありますので,思いつきで申し訳ないのですけれども,例えば,信託宣言でどうしてもそういう懸念があるということであれば,ここの要件をもうちょっと緩くするということも考えられるのではないかと思います。

 

 

 

 

それについては,改正破産法の方が今回否認の制度を整理しておりますけれども,その中で,破産手続開始の直前の破産者の関係者,すなわち自然人の場合は配偶者などとか,若しくは法人の場合は役員等との取引については悪意とみなすという推定の規定が設けられているわけですけれども,破産の場合と完全にパラレルに持ってくるというのはどうかなとは思いますけれども,例えばそういう形で懸念を解消するという方法も一つ考えられるのではないかなと。

 

 

ちょっと思いつきで申し訳ないのですけれども,そういう意見だけ言わせていただきたいと思います。

 

 

  •  1点補足いたしますが,立証責任の関係につきましては,確かに現行法は,債務者すなわち委託者と,それから受益者の悪意を債権者側で立証すると考えられていると思いますが,我々の提案といたしましてはそこは転換しておりまして,債権者の方で委託者の悪意を立証すれば,今度は受益者側で自己の善意を立証しなければいけないということに変えているということを,念のため申し上げます。

 

 

 

 

あと,今おっしゃったのは,信託宣言の場合だけ手当てすればいいという考え方なのか,そもそも詐害信託の取消し一般について要件をもうちょっと緩くした方がいいのではないかという考え方なのか,そこはどちらでございますか。

 

 

  •  信託宣言の方がどうしても懸念があるということであれば,まあ信託宣言の場合だけということでよろしいのではないかなと思います。

 

 

  •  挙証責任はそのとおりですね,今ので。

 

 

  •  脱法信託の問題と,詐害信託の問題について,若干,意見と質問を述べたいと思うのですが。

 

まず,脱法信託,訴訟信託の問題につきましては,ただし書の部分が議論になっておりますけれども,私も,できればこのただし書についてはない方がいいのではないかと考えております。

 

 

ただ,先ほどお話がありました,この10ページのところで過去の判例を規定化するという問題関心に立って,もしこれを規定化するということを考えたときにも,現在の「正当な理由がある場合」というような表現ではやはりちょっと問題が多いのではないかということを懸念しておりますので,その点について述べたいと思います。

もし,こういった何らかの線引きを考えるような規定を置くとすれば,「正当な事由」というような抽象的な規定の置き方では,やはりなかなか,どこまでやっていいのかというのが難しいのではないかと考えます。

 

 

 

むしろない方が比較的はっきりすることははっきりするというように私は思いますけれども,もしこういった何らかの線引きの規定を設けるとしても,そこはやはり具体的な,どこで線が引けるのかということがある程度分かるといいますか,そういった基準の定立が必要なのではないかと思います。

 

 

 

前の検討課題(1)のところで記載されております内容によりますと,これは恐らく任意的訴訟担当の制度についての判例の蓄積を踏まえた上での表現かと思いますけれども,こういった表現がございます。

 

 

 

「任意的訴訟担当について,現在も必ずしも全てが無効と解されている訳ではなく,共同の利益を有する権利義務の帰属主体が多数の場合であって訴訟担当を認めることがこれらの者の便宜に資するとき,本人又は権利の性質上,訴訟の提起又は追行が困難であり,訴訟担当を認めないことに固執することとすれば,実効的な権利救済に重大な障害を与えるときなどは許容される」

 

 

ということが紹介されておりますけれども,もしこの規定を置くということを検討するのであれば,やはり具体的にこの行為が当たるのか当たらないのかということを判断できるようなある程度の限定的な規律というものが必要なのではないかと思います。

 

 

 

一般的に「正当な事由」というふうになりますと,やはりどうしても広がり過ぎるという懸念がありますので,そういった具体的な基準を設けるということも,もしこれを入れるということを検討されるのであれば,具体的に御検討いただけないかというのが第1点です。

 

 

 

それからもう一つ,この点が広がることの懸念についてはやはりそれでも出てこようかと思うのですけれども,第3回のときにも,この点に関してかどうだったか,ちょっと記憶がありませんけれども,問題場面としては債権回収の現場における問題状況も多少参照すべきものかと思います。

 

 

 

いわゆるサービサー法においては,特別措置法の中で,サービサーが行う裁判上の権利について自己の名をもってできると規定されておりますけれども,この中では,この訴訟行為を行うに際しては本人訴訟ではなくて弁護士代理によるべきであるというような規定が設けられております。

 

 

こういった規定も参照しながら,訴訟信託についてもし見直しを図るということであれば,そういった観点からの検討も行うべきではないかと考えます。

以上,訴訟信託に関してです。

 

 

 

それから,詐害信託の取消権についてですけれども,これについては,質問と意見と,若干ございます。

 

まず一つですけれども,質問なのですが,もし債権者の代理人として我々が立場する場合に,例えば債務者が詐害信託でもって財産を移転したというようなことがあった場合に,我々としては,まず,果たしてだれを被告にしてどういった訴訟を起こせばいいのかと。

 

 

 

 

具体的には,受託者に対して譲渡された財産の返還を求める裁判を起こすのかなという気がするのですが,御提案の内容では,ただし書の中で,受益者の善意悪意で効果を分けるような規定ぶりになっておりまして,そうしますと,受託者が受益者の善意悪意の立証を訴訟の中でやっていくのか,受益者はその訴訟にはかかわってこないことになるのか,あるいは受益者も一緒にその訴訟の被告とすることが必要なのか,その辺のことについて教えていただければと思います。

 

 

 

 

2番目ですけれども,先ほどの取消権の効果について,信託財産が債務を負っている場合に,その債務の控除をした部分について返還するという規律について御紹介がありましたが,この場合について若干問題があるかなと思われますのは,債権者の立場としましては,その信託財産に対して債権を持っている債権者が善意の場合であれば,それは仕方がないだろうという気がするのですが,極端な話,もしそれが委託者と受託者とその信託財産の債権者がぐるになっているような場合になおその債権の額が差し引かれるというのは,ちょっと納得できないのではないかと。

 

 

 

したがって,そういった,信託財産に対する債権者が悪意の場合にまで同じような規律をするのは,ちょっと問題があるのではないかと考えております。

 

 

 

 

それからもう1点,これも質問なのですが,受益者の善意悪意について,ただし書の規定があるのですが,この受益権が譲渡された場合,転得者がいる場合にはどう考えたらいいのだろうかということで,その転得者の善意悪意についても,この取消権の成立について影響するのかどうなのか,その辺のことについても教えていただければと思います。

 

 

 

 

以上の点について,よろしくお願いします。

 

 

 

  •  まず,被告適格の関係でございますけれども,我々としては,善意悪意を問題とされるべき受益者は不可欠であろうと考えております。

 

 

 

あと,実体的な規律が明らかになった上で訴訟的なところは検討したいと思っておりますが,その受益者に対する訴訟の効果が受託者にも及ぶとするのか,それとも受益者と受託者の両名を共同被告にすべきなのかというあたりにつきましては,今回,実体的な規律がこれでよければ,なお検討させていただきたいということで考えております。

 

 

いずれにしても,受益者だけは不可欠であろうというのが一致した認識でございます。

 

 

 

次に,おっしゃるとおり,これは債権者とか受託者を保護するという提案でございますので,差し引いて返すというところでございますが,債権者が悪意の場合はもちろんそうですし,あるいは,受託者が信託債務を負担したのに財産を返したのではたまらないというところも保護してあげようという趣旨もありましたので,受託者が悪意の場合はどうかという問題もあります。

 

 

 

こういう善意悪意の問題につきましては,御指摘を踏まえてなお検討させていただきたいと思います。

 

 

 

ここは,受託者も債権者も善意だったという場合はこうでいいのではないかという提案でございます。

 

 

 

最後に,受益権が譲渡された場合の善意悪意につきましては,これも事務局といたしましては,転得者といいますか,受益権の譲受人の善意悪意を今度は問題にしていくのではないかということで考えておりまして,あくまで,まず信託の枠組みの中でございますので,この詐害信託取消権の範ちゅうは結局は詐害行為取消権と同じ規律になってくるわけでございますが,例えば,最初の受益者が悪意で,転受益者が善意であれば,それはもとの受益者に対してだけ例えば賠償請求していくと。

 

 

しかし,最初の受益者が善意でも,その受益権を譲り受けた譲受人が悪意になったら,その悪意の譲受人に対して取消権を行使していくという形になるのではないかと考えているわけでございます。

 

 

 

  •  今の点に関してなのですけれども,この取消権の取消しの対象というのは,信託行為を取り消すということではないのですか。

 

 

 

  •  その被告の関係で,そこは詐害行為取消権と同じに考えておりまして,相手方との関係で信託の設定行為を取り消すという形になると考えております。信託の中の財産の処分を取り消すと。

 

 

 

  •  そうしますと,例えば不動産でも何でもいいのですけれども,信託をした場合に,その信託財産は受託者の名義になっていると思うのですが,そうすると,被告となるのは受託者ではないかと思っておったのですが。

 

 

 

 

 

  •  信託における財産の処分を取り消して,信託財産をもとへ戻すという効果が生ずるという観点からは,少なくとも受託者に効果は及ばないといけないということは間違いないと思うのですが,それは果たして被告にまでしなければいけないのか,それとも,現在の詐害行為取消権に関する判例解釈と同じように,被告にする必要はないということで,善意悪意を問題にされる受益者だけが被告になるのかというところは少し検討させていただきたいと考えております。

 

 

  •  詐害信託の場合の受益者というのは,424条で言うところの,要するに受託者と受益者と,一つ途中に受託者がいますけれども,実質的には委託者から受益者に利益が移転していると見るので,そういう意味で受益者を中心にして見ていくと。

 

 

 

ただ,確かに受託者に効力が及ばないと取消しができませんから,その点を考えていただくということだと思いますね。

 

 

 

  •  1点,信託の定義について質問させていただければと思います。

 

 

直接的にお聞きしたいのは,信託の定義で,1ページ目ですが,「次の①及び②が満たされるものをいうものとする」とありまして,この①,②を挙げておられるのが,信託と認められるための要件という趣旨でお書きに,あるいはお考えになっているのかという点です。

 

 

これは非常に悩ましい点で,非常に苦労されているのはよく分かった上での,しかし聞かざるを得ないという質問だと理解していただければと思うのですが,下の方で,「法人への出資や匿名組合契約がされた場合」というのが挙がっております。

 

 

 

そして,この①,②が仮に要件だとしますと,①,②を満たしている,つまり信託と認められるための要件が満たされているという場合であったとしても,それが例えば匿名組合契約だということを言えば-これは積極否認に当たるのでしょうか-信託でなくなる,要件は満たしているにもかかわらず否認されてしまうというのは,何か非常に落ち着きの悪いといいますか,気持ちの悪いものを感じないではありません。

 

 

 

そして,下から4行目から3行目にかけまして,「信託法以外の法律が適用になることを当事者が明確に意図しているのであるから……信託ではない」という書き方がされていますが,これもなんとなく分かりはするのですけれども,しかし,一般には,ある契約がどういう契約かということを性質決定する際に,このような,当事者がどういう法律の適用を欲している,欲していないというような意図で性質決定するのかというと,恐らくそうではなくて,どの契約類型に当たるかというのは,もちろん当事者の意思を勘案することはするのですけれども,やはりそれ自体としては客観的に決められざるを得ない性格のものではないかと思いますので,この説明ではちょっと説明になっていないのかなと。

 

 

 

 

先ほど,○○委員からだったでしょうか,よく言葉にはできないけれども,この①,②以外に何らかのメルクマールのようなものがあって,それが働いているのではないかというのは,私もそうかなという気がいたしております。

 

 

 

そして,次の「委任契約+財産の移転」という場合につきましては,これも非常に考えられた末にお書きになったことだろうと思うのですが,①,②が仮に要件だとしますと,こういう積極要件を満たす場合であったとしても,受託者の倒産からの隔離を排除することが意図されていたということが言えるのであれば,それは信託ではないというような構成をお考えなのだろうと思うのですね。

 

 

 

これは正に受託者-受任者と言うべきかもしれませんが-が倒産した場合,あるいは倒産しなくても強制執行を受けたというような場合は,非常にすっと理解できる構成かなと思うのですが,しかし,例えば,委任者が受任者に対して,これは明示はしていないけれども信託なのだと,したがって忠実義務違反があった場合に例えば利益の吐き出しを求めていくというときに,委任者の側が,この①,②の要件を満たしているのだからこれは信託だと,そして忠実義務違反の事実があって,しかもこれだけの利益をその受任者あるいは受託者が受け取っている,それを引き渡せというような請求をしていく場合に,その受任者ないしは受託者側が,倒産からの隔離を排除することは格別に意図されていたのだ,だからこれは信託ではないのだと言っていくというのは,何かこの種の紛争にそぐわないような,何となく落ち着きがまた悪いかなという気がいたします。

 

 

 

これは何が問題かといいますと,そういう財産の帰属に係る事柄というのが信託の一番中心的な問題かなという気はするわけですけれども,その問題についての規律と,忠実義務等々のその他の義務とが信託ではワンセットで扱われているということから来る事柄なのかなという気もちょっとしはするのですけれども,信託法という法律を作る以上はそこはワンセットで扱わざるを得ないというのは分からないではないのですけれども,お考えになったような構成がどうもいま一つぴったりこない感じがいたしますもので,代案をここで示さないと本当はだめなのかなと思うわけですけれども,もう一息何か考えられないものかと。

 

 

 

そして,さかのぼって言いますと,この①,②というのは要件ないしは要件実質的なものとして本当にお考えなのかという点を,質問といいますか意見といいますか,一言つけ加えさせていただければと思います。

 

 

 

  •  なかなか難しいですね。これはどういうふうに書いたらいいか。先ほどから,これ自体は余りいい解決になっていないけれども,信託の意図とか,信託を意図してとか,そんな何かがあるのでしょうけれども,それがなかなかうまく書けないのですね。

 

 

 

これ自体は,今の御意見などを踏まえてまた見直したいと思いますけれども,何か積極的な御提案があると非常に有り難いですね。

 

 

 

  •  訴訟信託について意見と,詐害信託について一つ質問があるのですが。

 

 

まず,資料の8ページ,訴訟信託の禁止についてですけれども,先ほど来,例えば不良債権の回収等で訴訟信託について有用な場面があるというのは,それ自体としては非常によく理解できるわけですが,ここで考えるべきは,やはり弊害の方,光と影があるとすれば,影の方だろうと思います。

 

 

 

先ほど来,この「正当な理由」というのはどうかという御意見がありましたが,事務局の御説明でも,「正当な理由」という文言そのものをここで議論するということではないということは承知しているわけですけれども,従前の判例を見てみても,例えば有名な昭和45年の裁判の例を見ても,あの事案は,選定当事者が使える場合に選定行為がたまたまなかった場合ですし,そうではなくても,任意的訴訟担当の担当者になっている人間が非担当者と何らかの意味で密接な関係にあるとか,あるいは事実上資格が限られるというような場合だと思うのですね。

 

 

 

しかし,この御提案ですと,「正当な理由」という書きぶりになるかどうかは別として,かなり広がってしまうのではないかという懸念を持つわけであります。

 

 

 

やや心配し過ぎかもしれませんが,いったん決壊すると切りがないことになりはしないかという気がしまして,ちょっと脇道にそれるかもしれませんが,昨今の報道を見ておりますと,「振り込め詐欺」で支払督促を使う,つまり暗闇の人たちが裁判所を使って悪いことをするということがあるというようなことを考えますと,どうも気になるというところでございます。

 

 

 

すみれ

「振り込め詐欺って今もあるんだよ。」

 

 

では,何か明確な基準がつくれるかということですが,先ほども,具体的な基準があったらという話でしたけれども,どうも物事の性質上,抽象的にならざるを得ない,非常にたくさんのいろいろなパターンがありますので,抽象的にならざるを得ないのではないかと。

 

 

 

したがって,現在の判例法,といっても多少揺らぎはあるわけですけれども,現時点での判例法と言えるものよりも合理的に切り出せるのかというと,なかなか代案はないかなというのが私の印象でありまして,この「正当な理由」という文言が,非常に失礼な言い方ですが,無益ならいいのですが,有害に働くと困るなというのが私の懸念でございます。

以上が意見でございます。

 

 

 

それから,詐害信託につきまして1点,これは質問なのですが,先ほどの○○委員の御発言の中に,12ページの1で挙げられているシチュエーションで債務者が倒産したらどうなるのだということが出てまいりましたけれども,それについての質問です。

仮に,この12ページの1で書かれているシチュエーションで債務者が破産したら,この権利はどうなるのだろうか。

 

 

 

民法424条に基づく訴訟が例えば破産なら破産の前に係属していれば,それはいったん中断して,否認訴訟として受継される,つまり,実体権としては違うのだけれども,似たような目的だから,いわば木に近いものを接いでいくような形で接いでいくわけですが,この12ページの1にあるものに対応する似て非なるものが破産の中でないとすれば,今度は個々の債権者ではなくて,管財人にその権限が集中して行使していくことになるのか,あるいは,この権限に対応する似たような権利を別途破産法の方で仕組むことをお考えなのか,その辺について教えていただければと思います。

 

 

 

  •  御指摘を踏まえて,否認権のような制度を認めるかというところは検討したいと思いますが,現時点での考えといたしましては,基本的にこれは民法上の詐害行為取消権と性質的には同じようなものであるという理解を踏まえますと,債務者が破産した場合には,おっしゃるとおり,詐害行為取消権のときには否認権が承継されるという考え方と同様に,この場合も詐害信託取消権が否認権という形になって行使されていけばいいのではないかという気はするわけでございます。

 

 

 

要件的にどう違うかとか,細かいことはまた検討したいと思いますが,基本的には同じように転化するので,いいのではないかという気がいたします。

 

 

 

  •  いや,要するに,受託者の善意悪意を問わない否認権というのを作るかどうか,問題はそこに尽きるのですが,それはこれから御検討ということですね。

 

 

  •  はい,検討いたしたいと思います。

 

 

 

  •  今のと関連するのですが,424条とこの新しい詐害信託の制度との関係なのですけれども,現行法ですと,受託者も受益者も善意のときであっても成立するのはおかしいじゃないかと,それはもっともだと思うのですが,その結果,この新しい御提案ですと,受託者の善意悪意は問わない,かつ受益者の何人かのうち一人でも善意であれば成立しないということになって,つまり現在の424条よりもむしろ限定するわけですよね。

 

 

 

現行の12条というのは424条よりも広げているわけで,それはおかしいというのは分かるのですが,その結果,現行法よりも狭くなっている。

 

 

それは,今の受益者のうち一部が善意であったというのと,それから効果の面でも,本日御提案いただきました13ページに出ています,戻す分について限定するということになります。

 

 

 

そうしますと,その積極的な理由づけを述べておく必要があるのではないかと。

 

 

現在の12条が 適当でないというだけではなくて,更に積極的に,現行の424条よりも限定するのはなぜなのかというところが必要かと思います。

 

 

そうすると,先ほど○○幹事から御指摘のあった問題にもあわせて考えることができるのではないかと思います。

 

 

 

ついでに一つなのですが,戻す場合に,受託者が悪意の場合には別途考えるというような御説明がさっきありましたが,受託者の不法行為の場合の債務も含めるかどうかについては議論がまだあると思うのですが,仮に含めるとした場合にその部分はどうなるのかということもあわせて御検討いただければと思います。

 

 

 

  •  まず,要件というか,一人でも善意者がいたら取り消せないというところは,それはなぜかというと,善意悪意混じっているときに取り消して全部戻してしまうと,善意の受益者の利益を害するからということで,善意者を保護するという趣旨でございまして,じゃあ悪意の人は得するじゃないかというのは,2の方で,それは悪意者に利益を保持させておく必要はないので,債務者に対する受益権の移転とか返還を請求できるという規律を信託法上の請求権として別途提案しているというところでございます。

 

 

 

 

ただ,もう一つおっしゃいました,前は注,今回は最初に書きました,持分の範囲で返すというのは現行民法424条よりも債権者に厳しいのではないかというのは,そこは先ほど○○幹事もおっしゃいましたように,一律にこれで持分の範囲とすると確かに現行の民法よりも厳しい結果になる気もいたします。

 

 

 

そこは,善意者保護という趣旨からより限定すべきではないかというところを検討したいと思います。

 

 

ただ,では受託者も善意で債権者も善意のときにも持分の範囲で返還するという規律もまずいかどうかというところは,もし御意見があれば,民法との平仄という観点からお聞かせいただければ有り難いと考えております。

 

 

 

  •  確かに,現行の信託法12条よりは,要するに受益者の善意悪意が詐害行為取消し自体に関係する分だけ違ってくるわけですね。

 

 

現在の12条だと,受益者が善意であっても取り消せるけれども,しかし既に利益を受けている場合にはそれには影響しないという規定になっている。

 

 

確かにそこら辺が微妙に違うので,今の○○幹事のように,善意の受益者を保護するということが一応理由にはなっているわけですけれども,これは,現行法12条との比較,それから民法との比較,もうちょっと考えなくてはいけない点があるかもしれませんね。

 

 

 

  •  現行法はいかにも受益者にきついのではないかと。

 

 

ずっと善意でも,将来分は絶対取り消されますし,仮に設定時に善意でも,給付時に悪意だと,給付を受けたものも返す,それは贈与なんかの場合と比較して余りにも厳しいのではないかということで,そこは民法に寄せたということが,まず一つのベースでございます。

 

 

その上で善意の受益者を保護するということを組み込んだということでございます。

 

 

 

  •  現行法がおかしいという部分については全く理解しているつもりなのですが,その結果,民法よりも更に突き進んでいっているのではないかと。それがいけないというのではなくて,そうだとすると,その理由を積極的に言っておく必要があるのではないかという趣旨です。

 

 

 

  •  十分考えていないので,おかしなことを言ってしまうかもしれないのですけれども,今の議論を伺って,一言発言させてください。

 

 

 

第4はかなり細かくつくり込まれていますので,何を今更ということになるかもしれませんが,民法と比較して考えると,次のような考え方があるのではないかと思います。

 

 

 

すなわち,受託者は民法の詐害行為取消権で言うと「受益者」のところに当たり,信託における受益者が民法の詐害行為における転得者に当たると。

 

 

 

もしそうだとすると,必ずしも平仄が合うわけではないのですけれども,信託の受益者が善意の場合には,これは転得者が善意ですから,詐害行為取消権そのものには及ばないというので,今回の考え方,複数いた場合の問題は残りますが,基本的に民法と平仄が合っているのだと思います。

 

 

 

しかし,民法では,その場合に,詐害行為の「受益者」,すなわち信託の受託者が悪意であれば,受託者は価額賠償をするという効果が生ずる取消しの被告になります。

 

 

 

しかし,ここでは,信託の受益者が善意である限り,単純にして一人の場合ですね,詐害行為が全然取り消せない。

 

 

受託者がたとえ悪意であっても取り消せない。

 

 

 

それは多分,受託者には経済的な実質がないからだということなのだろうと思うのですが,しかし,詐害行為に悪意で協力というか,かかわっているのでありますから,あるいは固有財産で返還させるということはあっていいのではないかなと思うのですが,そこはいかがでしょうか。

 

 

 

  •  その点は,詐害行為取消しの対象にはなりませんけれども,受託者が悪意のときは一般の不法行為で考えていけばよろしいのではないかと。受託者自身は固有の利益はないので,詐害取消権ということではないのですけれども,不法行為で整理したらどうかということで,とりあえず案をつくっております。

 

 

 

 

  •  あと1点追加しますと,御指摘のうち,民法の「受益者」に当たるのは,ここは御指摘のとおり受託者に固有の利益がないので,信託法上の受託者と受益者が一体となって民法の「受益者」に当たるということで考えておりまして,その信託の枠組みから出た場合,例えば受託者が信託財産を処分したとかいう場合には,初めて第三者が転得者に当たってくるという整理をしておりますので,信託の受益者は民法の転得者ではなくて,信託の受益者はあくまで民法上も「受益者」と。

 

だから,二人まとめて民法上の「受益者」という整理をしております。

 

  •  分かりました。

○○関係官がおっしゃった,不法行為と,民法の詐害行為取消権で行使できるのとは,ほぼ同じになるだろうという見通しですか。

 

 

  •  要件的に比べれば,確かに同じになるのではないかと思いますが。

 

 

  •  実質的に固有財産から返させるというのとは同じになるのだろうと思いますので,それで結構です。
  •  案としては面白い考え方かもしれませんね,固有財産から返すというのは。

 

 

 

  •  ただ,立証責任的には,不法行為ですと債権者が全部立証すると。詐害行為取消しですと受益者側に立証責任がかかるので,ちょっと不法行為の方がきついかもしれないという気はいたします。

 

 

 

  •  時間がそろそろ来ておりますけれども,最後に何かおっしゃりたい方がおられれば。

 

 

 

  •  今の不法行為の話なのですけれども,一般の不法行為で当然に行けるという考え方でしょうか。

 

 

そうすると,債権侵害ということになりますか。債権侵害のところを授業でやっておりますと,責任財産を減少させる行為について,法律行為で行く場合には詐害行為取消しで行くのが筋であって,というような説明をするものですから……。

 

 

いや,私の授業がおかしいということなのかもしれないのですけれども,ちょっとやはり何か特別の規定とか要るんじゃないかなという感想を持っておりますので,自信のないところですので,また更に御検討いただければと思います。

 

 

  •  受託者が悪意の場合を含めて検討させていただきます。

 

  •  現行法12条でも,受託者悪意の場合には不法行為で対処すべきだということが教科書等には書かれておりまして……。

 

 

  •  まあ,理論的にももうちょっと詰めなければいけない。

 

 

 

 

  •  あと,○○幹事から御指摘いただいた定義等の要件につきましては,これはあくまで,なるべく信託と見てあげた方が当事者の利益にはなるだろうということですとか,法人法制,それから,匿名組合は信託のいわば特別法であるという考え方の一つの整理だったのですが,おっしゃるとおり,主観的な要件になってしまうと。

 

 

客観的な要件が必要ではないかということですとか,あるいは当事者にとって不意打ちにならないかというような問題は認識しておりまして,かといって名案がなくて困っているところで,是非またお知恵を拝借したいところでございますが,引き続き,できるだけ検討したいというふうに思っております。

 

 

 

  •  それでは,時間になりましたので,今日の信託法部会はこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

 

 

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すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。信託法セミナー3を読んでいます。」

 

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