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2016年加工編   法制審議会信託法部会   第9回会議 議事録
2016年01月17日

2016年加工編

                      法制審議会信託法部会

                       第9回会議 議事録

 

 

 

第1 日 時  平成17年2月8日(火)  自 午後1時03分

至 午後4時56分

 

第2 場 所   法務省第1会議室

 

第3 議 題

信託法の見直しに関する検討課題(6)(続き)について

信託法の見直しに関する検討課題(7)について

 

第4 議 事   (次のとおり)

 

 

 

議    事

 

  •  それでは,定刻になりましたので,始めさせていただきます。

 

実は,今回は○○部会長が御都合でお出ましになれません。そこで,部会長代理という制度がありまして,部会長代理は部会長の指名によるということに規則上なっているそうでございます。

 

そこで,私が○○部会長から図らずもその指名を受けまして,本日,議長の役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

(委員の異動紹介省略)

それでは,○○幹事の方から,本日の資料等についての御紹介をお願いいたします。

 

 

  •  本日席上に配布しております「現行信託法第11条(訴訟信託の禁止)の改正についての意見書」という資料がございます。

 

 

これは日弁連の方から参考資料として本席で配布していただきたいという資料でございますので,その趣旨につきまして,○○委員の方から簡単に御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。

 

 

 

  •  法務省作成の検討課題と題する資料を,その度に日弁連の方にはこちらから渡しておりまして,その中で,特に信託法第11条の改正の関係では日弁連が密接な関係があるということで,それを受けて検討されまして,その結果が,今,席上に配布されている,信託法11条の改正についての意見書です。

 

 

すみれ

「司法書士にはなかったんだろうな。」

 

 

これについては,次回にこれがテーマの一つに入ってくると伺っておりますので,そのときに御覧の上,議論していただければと思います。今日は簡単に項目だけ御紹介させていただきます。

 

まず,結論としては,信託法11条の関係で「正当理由ある訴訟信託」という例外を設けること,これについて反対をするという結論でございます。

 

第2では,まず1で法務省作成の「検討課題(1)」と題する資料中の「説明」において示された見解の要約が書かれていまして,2がこの見解に対する日弁連の意見ということです。

この日弁連の意見は全部で7項目ありまして,(1)から(7)までですが,(1)は,信託法第11条の立法趣旨の理解について,この資料中の見解に書かれている立法趣旨とは違うところがあるのではないかという指摘でございます。

 

 

(2)は,このような正当な理由がある場合というのを訴訟信託の例外として設ける立法事実がそもそも存在しないのではないかということが書かれています。

 

 

 

 

(3)では,この資料中の見解の方は,任意的訴訟担当が許容される場合があることを,正当な理由のある場合という例外を設ける理由にしているところ,その任意的訴訟担当が許容されることが,この正当な理由がある場合という例外を設ける理由にはならないのではないかということが書かれています。

 

 

 

そもそも次元が違うとか,あるいは,訴訟法上,任意的訴訟担当自体が未解決の困難な問題をたくさん抱えているので,それが許容されるからといって,そちらの方向からこの訴訟信託の許容される範囲を考えるというのは,アプローチの方法としては妥当ではないのではないかということ。

 

 

 

(4)は,手続上の問題として,ちょっと複雑な事態になる場合というのを幾つか想定して書かれています。

 

 

(5)は,信託法10条と信託法11条の関係について,資料中の見解の方では,信託法10条を総則的な規定,信託法11条を具体的事例に関する規定として位置づけているけれども,両者は並列的なものなのではないかと。

 

 

 

それで,信託法10条の方に例外的に認められる場合があるとしながらそういう例外規定を設けずに,11条の方にだけ例外規定を入れるというのはバランスを失するということが書かれています。

 

 

 

(6)は,正当理由による例外を許容することの合理性がないのではないかと。

 

 

正当理由という例外を法律で書くという場合には,例えば判例の蓄積があるとか,あるいはそれなりの類型化が具体的になされているということが必要ですが,信託法11条の場合は,そういう具体的な類型化等まだ何もなされていないということ,それから,正当性ということが入ることによって概念の誤解あるいは拡張が見られて,実際上問題が起きるのではないかという,そういう懸念です。

 

 

 

すみれ

「正当理由な理由がある場合は、って法律になる場合は、そんな事実が既にあることが必要なんだ。」

 

 

 

(7)が,信託法11条にこういうただし書をつけなくとも特に困らないということが書かれています。

 

大体内容は以上のとおりです。

 

  •  ありがとうございました。

では,このテーマにつきましては次回の会議で扱いたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

 

 

  •  それでは,今日もまたいつものように幾つかに区切って進行したいと思います。

それでは,進行も含めて,お願いいたします。

 

 

 

  •  それでは,本日の進行でございますが,前回積み残しました信託の終了原因と信託の清算の問題,それから,今回の資料に書いていございます,信託財産に係る倒産手続,裁判所の監督,営業信託の商行為性,合同運用,遺言代用信託の問題を順次やっていきたいと思います。

 

 

 

信託の終了原因と清算をまずまとめまして,その後は各項目について一つずつ順番にやっていくということとさせていただきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

  •  そういうことですので,最初は二つということになりましょうか,お願いします。

 

 

  •  それでは,第61と第62の問題につきまして,順次,資料の内容を御説明いたしたいと思います。

 

 

まず,第61の信託の終了に関する提案でございますが,現行法にも定めのある信託の終了原因につきまして改めて整理を試みた上,一括して列挙するとともに,信託の終了に伴う信託の清算以外の効果について規律したものでございます。

 

 

提案内容は第2回の部会で提示した内容とほぼ同じでございますので,詳細な説明は割愛させていただきまして,第2回部会にて提示した内容から変更した点についてのみ説明をいたします。

 

 

 

まず,1点目は,1の(1)の④というところでございまして,裁判所の命令による信託の終了というところでございますが,前回の提案におきましては,「信託行為の当時予見することのできない特別の事情により信託を継続することが受益者の利益に適合しないこととなった場合において」としておりました。

 

 

 

これを,「信託行為の当時予見することのできない特別の事情により信託を継続することが信託の目的に適合しないこととなった場合において」と変更しております。

 

 

 

このように変更した理由でございますが,これは,26ページの末尾の(注)にも書いてありますとおり,例えば,ファイナンス目的の信託におきまして,この規定による中途での信託終了が認められる可能性をできる限り排除するためのものでございます。

 

 

 

 

この規定は,現行法の58条に対応しまして,裁判所に対する信託終了の申立権を認めた規定で,当事者の合意等によって信託を終了させることができない場合におきまして,裁判所の判断で信託行為を終了させた方がよい場合があるという判断に基づきまして,現行法から申立要件,申立権者を変更して,信託法制研究会報告書に記載したとおり提案していたものでございますが,第2回会議における御意見を踏まえまして,申立要件を今回更に変更して提案したものでございます。

 

 

 

報告書の記載におきましては,裁判所に対して信託の変更を求める申立要件と同じような要件として,「信託行為の当時予見することのできない特別の事情により信託を継続することが受益者の利益に適合しないこととなった場合」には裁判所が信託を終了し得るとして,受益者の利益に重点を置いた要件としておりました。

 

 

この要件におきましても,現行法に比べまして信託の終了が認められる可能性はかなり減じられていると考えられますが,更に裁判所の判断による信託終了のリスクを回避するには,信託行為にて想定し得る状況についての定めを設けて予見不能との要件を排除することが必要でありました。

 

 

 

しかし,今回の提案のように改めることによりまして,継続することが信託の目的にかなう場合,裏返しますと中途で信託を終了することが信託の目的に適合しないファイナンス目的の信託,あるいは資産流動化のための信託というようなものにつきましては,裁判所による信託の終了の要件を満たさないことになるのではないかと考えているものでございます。

 

 

 

 

 

このように要件を変更することにつきまして,御意見をいただければと考えております。

 

 

 

もう一つ,第2回会議で提案した内容からの修正点は,1の(2)と(3)の規定を追加した点でございます。

 

 

この規定は,1の(1)の⑥の信託行為の定めによりまして受託者あるいは受託者以外の者に信託の終了権限を付与する場合に,この終了権限の行使は相手方のある意思表示によることを定めるものでございます。

 

 

 

このように新たな提案をする理由は,信託の終了権限の行使による効力発生時期が明確になる規律とする必要があると考えたからでございます。

 

 

 

なお,規定として提案してはおりませんが,資料の25ページで⑥に関しまして問題提起をいたしましたとおり,信託の終了権限を信託行為の定めにより受託者又は受託者以外の特定の者に付与する場合に,これらの者に対して信託の終了権限を無制限に付与することは可能か否か,前回,信託の変更について無限定の権限を付与していいかどうかという問題を議論させていただきましたが,それと同様な問題が信託の終了の局面でもあるということを指摘したものでございます。

 

 

 

この問題につきましては,一つの考え方は,信託行為において何ら制約のない終了権限を付与された者が存する限り,信託は終了権限を有する者の判断により終了する可能性があることは明らかであって,受益者の享受し得る利益はその限度で制限されるということは受益者に予見可能であるということ,しかも,信託の変更の場合には,いかなる変更がなされるか正に多様で,予見不能であるのに対しまして,信託の終了の場合には,信託はいつかは終了するものでございまして,その効果も一義的で明確であると考えられること,更には,信託の終了は,信託の変更の場合と異なりまして,受益者に対して新たな内容の信託に関与せざるを得ないという負担を負わせるものではないことなどを理由として,特段の制限を設ける必要はない,すなわち,信託の終了については制限不要という考え方があると思います。

 

 

 

 

もう一方,受益者保護の観点から,一定の場合には受託者又は受託者以外の者の終了権限について制限がかかるという規定を設ける必要があるという考え方もあるかと思います。

 

 

 

 

この点につきましても御意見をいただければというのが,ここの25ページに書いた趣旨でございます。

続きまして,第62の信託の清算の説明に移らせていただきます。

 

 

 

 

 

信託の終了事由が生じた後におきまして,その当時に存した信託財産に属する債務の弁済を済ませた上で残余財産が生じた場合には,これを受益者等に移転する必要がございます。

 

 

番人

「家族信託では、信託目録に記録する必要があるね。商事信託でも信託の抹消登記の仮登記をする場合があるらしい。」

 

 

ここでは,このような信託のいわば清算手続につきまして,受託者,受益者その他信託財産に関して利害関係を有する者の権利義務の内容をより明確化・合理化する観点から,提案を行うものでございます。

 

 

 

なお,信託終了の効果としまして,信託終了事由が生じた場合において受益者又は帰属権利者へ信託財産がいつ移転するかという問題があることは承知しておりますが,この提案におきましては,信託財産の移転時期を明確にする規定を設けることは困難であると考え,特段の規定を設けることとはしておりません。

 

 

したがいまして,所有権移転時期につきましては,現行法と同様に,解釈に委ねることになるものでございます。

 

 

 

 

まず,提案の1でございますが,これは,信託の終了事由が生じた後も清算目的の範囲内において信託が存続することを規定するものでございます。

 

 

 

現行法の解釈といたしまして,信託の終了事由が生じた場合において,信託終了事由が生ずる前の信託,すなわちいわゆる原信託が存続するという見解と,新たにいわば復帰信託が生ずるという見解とに分かれておりますが,ここでは原信託の延長と位置づけることとしております。

 

 

 

信託の終了事由が生ずることによりまして,信託目的遂行のための管理処分を中止し,信託財産を受益者又は帰属権利者に早期に引き渡す義務が生ずるという点におきまして受託者の職務内容に変化は生じますが,しかし,受託者又は受益者の権利義務等に関する信託行為の定めは従前と同様に効力を有することとするのが適当であると考えられたため,このように原信託の延長と位置づけたものでございます。

 

 

 

なお,現行法では,信託の存続する期限につきまして,63条におきまして,「信託財産カ其ノ帰属権利者ニ移転スル迄」としておりますが,信託財産に属する債務を弁済し,残余財産の引渡しを行って,最終計算の報告を行うまで,受託者としての義務を負うべきものと考えられますので,信託財産の移転時期と信託存続の期限は切り離しまして,清算事務の結了,すなわち,残余財産の引渡しを行って,最終計算の報告を行うまで,信託が存続するものと考えているものでございます。

 

 

次に,2でございますが,これは,信託の終了事由が生じた以後の受託者,この提案ではこれを「清算受託者」と命名しておりますが,この清算受託者の職務及びその権限に関する規定を提案したものでございます。

 

 

 

まず,(1)は①から④までございますが,これは清算受託者の職務内容でございまして,法人の清算人の職務とほぼ同様のものとしております。

 

次に,(2)でございますが,これは,清算受託者は,信託行為で排除されていない限り,清算目的に必要な権限を有することを確認的に定めるものでございます。

 

 

 

例えば,財産の管理のみを目的とする管理信託におきましても,清算手続における債務の弁済のために信託財産の処分が必要となる場合には,当然に清算受託者は信託財産を処分する権限を有することになるものと考えております。

 

 

次に,3は,信託財産に属する債務の弁済に関するものでございます。

 

 

清算受託者は,職務遂行のために債務の弁済等を速やかに進めなければならない場合があると考えられますが,清算受託者が弁済すべきこれらの債務の中には条件付債務も含まれると考えられます。

 

 

 

しかしながら,条件付債務につきましては,条件が成就するまでは当該債務を消滅させるのに妥当な金額が明らかではない場合があると考えられますので,商法125条4項などを参考にいたしまして,清算受託者が条件付債務等を弁済する場合におきましては,裁判所が選任した鑑定人の評価に従って弁済しなければならないとしたものでございます。

 

 

ポリー

「家族信託では条件付きの債務も現状のまま引き渡すのが基本になります。」

 

 

なお,弁済期が未到来の債務につきましても,清算受託者は速やかに弁済しなければならない場合があると考えられますが,債権者との関係におきましては,期限の利益に関する民法第136条の規律によるべきものと考えまして,ここでは特段の規律を置くことはしておりません。

 

 

 

 

 

次に,4でございますが,これは,受託者は信託財産に属する債務及び確定した未履行受益債務を弁済しなければ,残余財産の給付を内容とする受益債権を有する受益者又は帰属権利者に対して信託財産を引き渡すことができないとするものでございます。

 

 

信託財産に属する債務及び未履行受益債務を弁済しなければ,残余財産の給付を内容とする受益債権を有する受益者等の権利の内容が確定しないと考えられるからでございます。

 

 

 

もっとも,これは信託債権者等の利益保護のための制限でございますので,弁済に必要な財産を留保した場合ですとか,あるいは,ここには明示的に記載していませんが,信託債権者の同意がある場合には,信託財産に属する債務の弁済前でも受益者に対する弁済等をすることができるものと考えております。

 

 

次に,5でございますが,これは信託財産の帰属に関する提案でございまして,残余財産は,信託行為によって指定された残余財産の分配を受ける受益者又は指定帰属権利者に帰属するものと考えております。

 

 

 

ただし,これらの者の指定がない場合には,残余財産は,現行法と同様に,委託者に帰属することとしております。

 

 

 

さらに,例えば,帰属権利者が有する残余財産引渡請求権が時効消滅するなどして帰属権利者が存しないこととなった場合には,残余財産は受託者の固有財産に属するものとしております。

 

 

番人

「偶然に受託者にいくこともあるんだ。帰属権利者に受託者を定めておいて、信託を終了することもあるだろうし。」

 

 

現行法のもとでは,受託者の固有財産に帰属し受託者は完全権者になるという見解と,受託者が完全権者となるわけではなく無主物になるという見解がございますが,受益債権の消滅時効に関するところでも御説明いたしましたとおり,現行法は,信託財産は受託者の所有に属することを建前としておりまして,固有財産と信託財産の区分は,このような建前を前提としつつ,信託財産に関する対内的・対外的法律関係を律するために存するにすぎないものであるというふうに考えられますことからすれば,帰属権利者の不存在によって当然に残余財産が無主物になるとすることは困難と考えられますので,受託者が完全権者となると考えております。

 

 

 

 

次に,6でございますが,これは帰属権利者の権利に関する提案でございます。

 

 

 

 

 

(1)では,帰属権利者は,信託の終了事由が発生する前は受益者としての権利義務を有さず,信託の終了事由発生後に受益者としての権利義務を有するものとしております。

 

 

現行法のもとでは,帰属権利者は信託の終了事由発生前においても受益者としての権利の行使が認められるとする解釈もございますが,帰属権利者は,本来的に信託から利益を享受するものとされた受益者への給付が終了した後に残存する財産が帰属する者にすぎませんので,信託の終了後においてのみ,受益者としての権利及び義務を認めることとしたものでございます。

 

 

 

(2)でございますが,これは,帰属権利者の利益の享受及び権利の放棄につきましては,受益者の利益の享受及び権利の放棄に関するのと同様の規律とするものでございます。

 

 

 

なお,委託者が帰属権利者となる場合には委託者が受益者となる場合の規律,委託者以外の者が帰属権利者となる場合には委託者以外の者が受益者となる場合の規律それぞれに整合する内容となると考えております。

 

 

 

ただし,放棄に関しましては,(3)のとおり,委託者が受益者である場合には,信託行為で別段の定めがある場合には受益権を放棄することはできるとしておりましたが,委託者が帰属権利者である場合におきましては,帰属権利者としての権利義務の放棄は認めないとしております。

 

 

これは,委託者は,法定帰属権利者として補償債務を負わないことを信託行為で定めることができますし,また,委託者自らについて残余財産の帰属先とすることを望まない場合には,信託行為で第三者を帰属権利者と指定することができるわけでございます。

 

 

 

そうだといたしますと,自らを帰属権利者として指定した場合,あるいは帰属権利者を指定しなかった場合には,帰属権利者としての権利義務の放棄までこの時点で認める必要はないと考えるものでございます。

 

 

 

 

 

 

次に,7は,清算受託者の信託財産から補償を受ける権利に関するものでございます。

 

 

信託終了後に受益者又は帰属権利者に対して受託者が交付した信託財産,ここで言う「信託財産」には受益者に交付する財産と帰属権利者に交付する残余財産を双方含むものと考えておりますが,この信託財産につきまして,受託者は補償請求権等を満足するために強制執行等ができるとするものでございまして,現行法第54条を準用する現行法第64条の規律を維持するものでございます。

 

 

先ほど申しました2と4の規律から明らかなとおり,受託者は補償請求権を有している場合には信託財産を留保することができるわけですが,例えば留保する財産の価値に比して補償請求権の額が極めてわずかであるというような場合には,受益者等に財産を移転することが合理的だという場合があり得ると考えております。

 

 

このような場合には,信託財産としての特定性が維持されている限り,補償請求権に基づく強制執行等を引き渡してもできるとするものでございます。

 

 

なお,現行法第64条は,現行法第53条も準用しておりますが,これは,資料の33ページの(注5)に記載いたしましたとおり,この第53条を準用する規定,これは強制執行を開始していれば信託財産を引き渡しても続行できるという規定だと承知しておりますが,この規定はもう不要ではないかと考えております。

 

 

 

それから,8でございますが,これは,最終計算の承認及びその効果に関する規定でございます。

 

 

まず,(1)は,現行法第65条前段と同趣旨でございますが,現行法では,最終計算をして「受益者ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス」とされておりますが,これでは,受託者として果たすべき注意義務を尽くして承認を求めているにもかかわらず受益者が承認しないという場合にも,なお承認を求め続ける必要があるというように考えられかねないという指摘がございます。

 

 

そこで,信託の終了事由が生じたときの受益者及び帰属権利者の承認を求めなければならないと,逆に言えば,承認を得ることまでは要しないとするものでございます。

 

 

 

 

 

 

(2)は,最終計算承認の効果を定めるものでございまして,これは,現行法第65条後段において準用しております第55条2項と同趣旨でございます。

 

 

もっとも,受益者等が積極的に承認を行うことは期待し難い面もございますので,受託者が承認を求め,1か月を経過するまでに異議がなかった場合には,計算が承認されたものとみなすこととしております。

 

 

1か月という期間につきましては,商法第133条ですとか,破産法第89条第2項などを参考にしたものでございます。

 

 

最後に,9の清算受託者の信託財産の競売権に関する提案でございます。

 

 

信託の清算におきましては,残存する信託財産を受益者等に引き渡すことになるわけですが,受益者の所在が不明である等の理由により引渡しを行うことができない場合もございます。

 

 

そこで,商事売買の売主あるいは倉庫営業者に認められておりますように,このような場合には,信託財産を競売して金銭化し,これを保管することを清算受託者に認めることによりまして,管理にかかる負担を軽減することを可能とするものでございます。

 

 

このような,清算目的の観点からではなく,管理義務軽減の観点から受託者に換価権限を認めることにつきましては,先ほどの2の(2)というところ,受託者は清算のために必要な一切の行為をする権限を有するという清算目的の規定で読み込むことは困難と思われますので,別途に明確に管理義務軽減のための処分権限の規定を設けたものでございます。

 

 

 

なお,信託終了時には信託財産を金銭で返還することとされております金銭信託のような場合,あるいは,原信託において受託者に信託財産の換価権限があり,したがって原信託の延長である信託終了事由発生後の清算受託者にもこの換価権限が引き継がれるような場合におきましては,清算受託者はその権限に基づきまして信託財産を売却等することができると考えられますので,あえてこのような規定に依拠する必要はないということを念のため付言申し上げます。

 

 

 

  •  それでは,二つの項目がありますので,順に進めたいと思います。

 

まず,信託の終了原因について,前の第2回に比べて幾つかの変更点があったということも含めまして,どうぞ御自由に御議論をお願いいたします。

 

 

 

 

  •  第61の1の(1)の④のところなのですけれども,これは,私,以前も申し上げたことがあるかもしれませんが,こちらの説明資料の26ページの(注)のところに書いていただいたように,現状,現行法の58条があるがために信託の終了のリスクがある,裁判所が信託の終了を命ずる可能性があるということで,現状の58条は「受益者カ信託利益ノ全部ヲ享受スル場合ニ於テ」という条件がついておりますので,言いかえれば受益者が一人の場合においてということになっております。

 

 

 

したがって,証券化・流動化取引で信託が用いられる場合で,信託が終了しては困るような場合,例えば資産流動化法における特定持分信託であるとか,あるいは受託者が信託財産を引当てに借入れを行うアセット・バックド・ローンと呼ばれるような取引においては,形の上で二人以上の受益者を置くことによって58条の解除命令のリスクを排除しているというのが現状でございます。

 

 

 

したがいまして,こちらに書いておりますような方向で変更される,すなわち,要件のうち受益者が一人である部分がなくなるということは,かなり関係者の抵抗というものが予想されるのですが,一方,終了が認められる要件がかなり厳格化されている,すなわち,「信託を継続することが信託の目的に適合しないこととなった場合」というような要件を御提案されているということと,申立てを行える者を限定しているという,この2点から,この方向で改正されたとしても,それを前提に流動化・証券化取引を組成していくべきではないかなというふうに整理しております。

 

 

 

 

  •  この58条リスクというのは前から御意見をいただいていたところですけれども,ほかにございますでしょうか。

 

 

 

  •  まず,第61の全体観でございますけれども,おおむね御提案の方向で賛成ということでございます。

 

 

 

特に2点ありまして,1点目は,先ほど○○委員の方からお話のあった,58条リスクというのが,前回御提案の「受益者の利益に適合しないこととなった場合」とかという,まあ,この場合でもかなりの部分排除できるのかなというふうに考えていたわけですが,今回の御提案で更に,「信託の目的に適合しないこととなった場合」というような記載になっておりますので,これについては歓迎すべきものではないか,若干①との関係が分かりにくいなというような感じはあるのですけれども,58条リスクという観点からいたしますと,歓迎できるものではないかというふうに考えております。

 

 

もう1点は,1の(1)の⑥のところでございますが,これは,先ほど○○幹事の方からも御説明がありましたけれども,25ページ上段のなお書のところに書いてありますように,「「信託行為に定める終了事由」には,信託の終了権限を信託行為の定めにより受託者又は受託者以外の特定の者に付与する場合を含む」ということでございまして,この権限を行使する場合においては受益者保護ということを考えないといけないのだろうと思いますが,これについては,先ほど御説明がありましたが,信託行為の変更と同様に,信託行為にもともと書いてある以上,当然終了する,ある権限を持った人がそういう意思を表示すれば終了させると,そういうことを予見できますので,その点については何らかの保護が図られるのではないかということと,あとは,変更と違って,これも先ほどお話がありましたけれども,新たな負担を強いられるというようなことがありませんので,これについては特段の制限を設けるべきではないというふうに考えております。

 

 

 

 

 

  •  今の○○委員の御意見の中で,一つ御質問といいますか,第61の1の(1)の①と④の関係が少し分かりにくいという点がありましたけれども,その点,御説明いただけますでしょうか。

 

 

  •  おっしゃる趣旨は,恐らく,信託の目的に適合しなくなった場合というのと,信託の目的が達成不能の場合の食い違いというか,そこが微妙ではないかという御趣旨かと思います。

 

 

二つほど例が考えられるかと思うのですが,確かに微妙ではございますが,例えば,会社の業績に貢献があった者に対して報奨金を付与するという信託があって,信託元本が1,000万円で,1回あたり褒美で50万円を与えますというようなことを決めていたとします。

 

 

ところが,非常にひどいインフレが起こりまして貨幣価値が100分の1になったと。そうすると,結局5,000円しかもらえないわけでして,5,000円でももらえれば有り難いということで,目的達成不能とまでは言えないと思うのですが,それを与えてより士気を高めるという目的に適合するかというと極めて疑問であるという意味で,目的達成不能とは言えないけれども,目的に適合しないとは言えるのではないかと,一つ極端な例ですが,考えられます。

 

 

 

 

 

 

また,例えば,子供が大学に進学したときに学費に充当するために信託を設定していたとしたところ,子どもは大学に行かないで就職してしまったという場合があるかと思います。

 

 

 

こういう場合でも,子供は学校をやめてまた就職するかもしれないと,そういう可能性がある限りにおいて目的達成不能とは言えないのですが,信託設定の意図が,大学進学を望んで,その結果,卒業して職を得るということを考えていたのであれば,就職してしまったというのは,目的には適合しないということで言えるのではないかと。

 

 

 

 

 

そういう意味で,目的達成不能と,目的の適合・不適合というのが若干の食い違いがあるのではないかと,二つほど,こんな例を考えているところでございます。

 

 

すみれ

「目的達成不能と目的の適合・不適合は違うんだ。分かりやすい説明。就職したら一旦信託は終了でも良いし、孫のために使うでも良いと思う。」

 

 

  •  ○○委員,よろしいでしょうか。
  •  はい。

 

  •  それでは,ほかに。

 

  •  いわゆる58条問題というかリスクについて,第2回の審議において発言したのでございますけれども,その発言の方向性の御検討をいただきまして,ありがとうございました。

 

 

ただ,方向性については非常に御配慮も見られておるわけですが,かつ,また,私,そのときには,国家の介入を外すようなデフォルト化ということも考えられないかという趣旨のことを申し上げたのですが,考えてみますに,完全に国家の介入を回避するということは法技術的に難しいかなという気もいたしますので,このように制限していくということは一つの方向としてはあるのかなと思いました。

 

 

ただ,○○委員も議論されたわけなのですけれども,実際に証券化・流動化においてこの問題が本当に解決できるのかということで,○○委員はそれでよろしいのではないかという御発言と私は認識しているのですが,ただ,なお,やはり証券の流動化においてはプレーヤーがいろいろございますものですから,その実務のインパクトにかんがみて,格付機関等の意見を徴した上で,最終的に私としての考え方を整理したいかなというふうには思っております。

 

 

ちょっとこの段階では,これについて賛成かどうかということについて,発言は留保させていただきます。

 

 

 

すみれ

「格付けに影響するんだ。」

 

 

 

そこで,2点ほど御質問があるのですけれども。

 

一つは,第2回においても発言したわけですが,やはりできるだけ申立ての事由を減らすという観点で,申立権者,これも現行法と比べて大分制限的になっているということはございますけれども,この御提案では,委託者,受益者,受託者が申立人と,三者が掲げられているわけです。

 

 

私は第2回のときに,委託者ということは不要ではないのかというようなことを発言した記憶がございます。

 

 

これは,今回の信託法の全体の流れの中で委託者の地位又は権限というのが全体的に低くなっているということでございまして,そういうことを考えますと,これはデフォルト化でも結構なのですけれども,物によっては委託者の申立権というのが不要又は不適当の場合があるのではないかということでございます。

 

 

よって,ちょっと御質問なのですが,委託者ということを外すということが検討の余地があるのかということが1点でございます。

 

 

2点目は,これは非常に細かい話でございますが,○○幹事からの御説明にもありましたように,今回の修正として,「信託の目的」ということに変えましたという話なのですが,他方,ここの文章の書きぶりとしては,第57,この資料の2ページでございますが,現行法でもございますが,信託の管理方法についての変更の規範というのがございまして,ここでは,「受益者の利益」と書いてあります。

 

ここと第61との違いというのはこの整理でよろしいのかどうかということです。

 

逆に第57で議論すべきだったのかもしれませんが,第57の6のところも「信託の目的」に変える必要はないのかどうかということをいま一度確認したいということでございます。

 

 

 

 

 

  •  前者の,委託者は不要ではないかとおっしゃる点は,前,たしか,委託者の権限をどこまでにするかと,ゼロから出発してはどうかというようなお話もあったかと思いますが,事務局といたしましては,原則として,このような裁判所に対する申立権のようなのは,デフォルトルールではありますが,まず委託者にありとした上で,しかし信託行為において委託者の権利を外すことはできるということで,ゼロからは出発しなくて,原則与えますが,委託者が自分で信託行為で終了の申立権はないというふうに定めることはできると考えておりますので,そういう位置づけにとどまるといいますか,そこまではいけるということでございます。

 

 

それから,第57と第61の関係というのは,第61の方で58条リスクの問題を可及的に回避する観点からどうしたらいいかということに知恵を絞った関係で,ちょっと平仄というようなところまでは思い至らなかったのですが,御指摘を踏まえて再検討いたします。

 

直感的には,続けていくものと終わるものとで要件が多少違うということはあってもいいのかなという気がいたしますが。

 

 

  •  まず,先ほど出ております58条リスクについて,私自身は流動化についてはかかわっておらないのですが,流動化にかかわっている弁護士の方から意見を聞いてきておりますので,お伝えしたいと思います。

 

 

 

御提案の中で,提案内容で出されておりますけれども,(注)の中で一番最後のところに,「裁判所による信託終了の申立てが認容されることはないものとも考えられるが,どうか」と問われておりまして,ないというところまでは言えないけれども,裁判所により信託が終了される可能性というのは,御提案内容によれば,相当程度低まるのではないか,あるいはかなり低まるのではないかというのが,流動化実務をやっている弁護士の意見です。

 

 

 

そういった観点から,万全とは言えないけれども,提案の趣旨によれば,格付機関にもかなり好感されるのではないかというような意見が寄せられております。

 

 

ポリー

「格付機関に好感されるといいですね。」

 

 

それから,1の(1)の⑥,終了権限の問題について,若干意見を述べたいと思うのですが。

 

 

この御提案の文章の中で,受託者等へ終了権限を無制限に付与できるかということが提起されておるのですが,こういった規定がもし信託行為の中に盛られた場合に,仮にその信託行為あるいは信託法に制限規定がない場合であっても,果たして無制限な終了権限が認められることになるのだろうかということについては,若干疑問があります。

 

 

継続的な契約関係の中では,解除権留保がされている場合にも,やむを得ない事由を必要とするであるとか,あるいは信義則違反や権利濫用の法理によって一定程度限定解釈がされているというのが一つの解釈の行き方なのではないかと考えられます。

 

 

そうしますと,仮に制限規定がない場合でも,額面どおり無制限な終了権限が認められるということにはならないのではないかと思われます。

 

 

それから,二つ述べられております,特段の制限を設ける必要があるかどうかという点についてですけれども,特段の制限を設ける必要がないという考え方の根拠として,受益者の予見可能性ということが述べられておりますけれども,受益者の予見という観点からしますと,一番重要なのは,信託に具体的にどのような事態が生じたときに終了ということになり,どのような事態が生じない限り契約関係が存続されるのかという点であろうかと思います。

 

 

 

権限者の権限行使にゆだねられると,いつそれが権限行使されるのか分からないということでは,やはり受益者の予見可能性という観点からは問題があるのではないかと思われます。

 

 

 

こういったことを考えますと,受益者の予見を何らかの形で確保できるような規律というのがやはり必要ではないかと考えられます。

 

 

 

 

 

 

 

具体的にどういった規律が考えられるのかということは,ちょっと検討しなければいけないとは思うのですけれども,例えば終了事由について信託行為で定め得るとすることについては,これはいいと思うのですけれども,その定め方について,例えば,具体的な内容を定めるべきであるというようなことを要求するとかそういうことを盛り込めば,あるいは予見可能性を確保できるのではないかと考えております。そういった観点からの検討をお願いできればと思います。

 

 

それから,前回出ておりました信託行為の変更のところでも,信託の柔軟性,デフォルト化ということが議論されておりましたけれども,このことについて一言申し上げておきたいと思います。

 

 

 

信託の柔軟性という観点からすると,それを図ることは非常に重要な要請だというふうには理解しておりますけれども,信託を作る段階と,いったんできた信託の維持といいますか継続性の観点という段階と,おのずと柔軟性のレベルというのが違ってくるのではないかという気がしております。

 

 

番人

「柔軟性のレベルか。たしかに。」

 

 

つまり,信託の組成の段階で柔軟性は広く認められるべきであるけれども,いったんできた信託については,信託の安定性の確保といいますか契約の拘束力の確保という観点から,ある程度それを維持するという観点が必要になるのではないか,こういった観点からの配慮というのも必要になるのではないかと考えております。

 

 

 

個人的には,信託への信頼を高めるという観点からは,信託の安定性,契約の拘束性に配慮した制度設計が行われるべきではないかと考えておりますけれども,こういった観点からも御検討いただければと思います。

 

 

 

 

 

  •  最後の点は,より大きな問題を御意見いただいたと思いますが,ほかにございますでしょうか。

 

 

 

第61の1の(1)の④で,「受益者の利益」というのを「信託の目的」に変えることについては大体賛成意見が出ているようですけれども,あるいは,この第61に関しまして,ほかの点でも。

 

 

 

  •  先ほどの○○幹事のお話とも共通した話なのですけれども,信託行為の変更と信託の終了のところで第三者に権限を委ねるというところのお話なのですが,ちょっとよく分からないところがありまして……。

 

 

そのゆだねられた者は,だれのために,どういう観点から動くのかというのは,多分それは受益者のためだろうなというふうには思っているのですけれども,それが例えば受託者にゆだねられた場合については,受託者としての義務というのが課せられていますので,その受託者の義務の範囲内といいますか,義務を果たしてそれを履行していくということなのか。

 

 

それと,それが第三者の場合についてはその制限がないわけですから,そうすると,いわばだれから委託……。

 

 

委託というのもちょっと変な話だと思うのですけれども,そういった関係がちょっとよく分からないものですから,その辺のところをお教えいただければと思いますが。

 

 

  •  おっしゃるとおり,どちらの場合も,恐らく第一義的には受益者の利益をおもんぱかるということになるかと思います。

 

 

 

ただ,「信託の目的に適合」というと,受益者だけではなくて,委託者の意思というのも考える必要が出てくるのかなというのが,まず一つ,ちょっと違うかなという気がいたします。

 

それから,受託者が指定権者であれば,当然,忠実義務とかがかかってきますので,信託法上の義務を履行するという観点から,変更するについても相当程度の実質的な制限がかかり得るという気がしますけれども,第三者の場合には,委託した人との委任関係に基づいて,受益者の利益を図りつつ,委任の趣旨に反しないように変更するのかなと,抽象的にはそういう感じで考えております。

 

 

 

 

 

  •  そうしますと,信託行為にだれそれというふうに書かれた場合については,その信託行為から授権されているということですので,それは,その信託行為から来る信託目的的なことに拘束を受けてやるということなのでしょうか。

 

 

 

  •  信託目的に従ってやるというのが委任の趣旨ということになるので,その信託目的も考慮してやるということになるのではないかと思いますけれども。

 

 

 

  •  二つございまして,一つは,もう既に今のやりとりで大分分かってきたのですけれども,簡単な方から一つ確認させていただきたいことがございます。

 

 

この終了原因についてということで,「信託行為に定める終了事由が発生したとき」の中には,第三者等に終了権限を付与したときが含まれるということなのですが,これは,委託者自身が撤回権を留保するという場合もこれで規律を対応するという趣旨でよいか。これは確認させていただきたいということです。

 

 

  •  そういう趣旨でございます。

 

 

  •  もう一つは,今ちょうどお話しになっております,第三者,だれかに終了権限を付与した場合にそれがどういう意味を持つのかということなのですけれども,記述自身は25ページに説明のあるところですが,私自身は,今のやりとりで既に明らかになったのかとは思うのですけれども,終了権限は信託行為によって付与されておりますので,権限としてどこまで与えられているかというのは,やはり信託行為の解釈によるのだろうと思われます。

 

 

 

どういう趣旨でこの人に権限が与えられているのかということになると思いますので,そうしますと,全く何も特に書かれていない場合に当然に,信託の目的に反しても終了させていいということを与える趣旨かというと,それはむしろそこまでは普通は与えないということになって,内在的制約というものが当然かかるのではないかというふうに思っております。

 

 

 

ですから,逆に,それを与える場合には,明示に,そういう場合でも終了させる権限を与えるというような記述があって初めてそれが可能で,それで,更にそういうものを認めてよいかという問題はあるのだと思いますけれども,これは実際にどういう場合に権限が与えられるのかというのは正直分からないのですが,例えば,信頼できる第三者に信託についてチェックをしてほしいと。

 

 

 

すみれ

「私も、どういう場合に第3者が信託を終了することができるのか、分からないな。」

 

 

それで,具体的に何かを書きますと,例えば,信託目的に適合するかどうかというようなことをめぐって争いがあるようなときにこの人の判断でやってほしいというようなことはあり得るのかと思われまして,そうすると,かなり一般的な記述で終了権限を与えるような信託行為の定めも認めていいのではないかというふうに思っております。

 

 

その点,変更と終了はやはり違うという面はあるかと思いますので,それは25ページに関して意見ですけれども,申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

  •  そうすると,25ページのところでは一般的な書き方でよかろうということですね。

 

 

 

  •  はい。ただ,それが25ページに書かれているような完全無制限説と解釈されるかというのは,それはまた別の話で,もう一つハードルがあるだろうということです。

 

 

  •  ほかに,第61について,よろしいでしょうか。

 

 

  •  御意見を伺って,2点ほど補足いたします。

 

 

一つは,○○幹事がおっしゃった,変更といっても公序良俗とか限界はあるだろうということで,恐らく,終了であれ変更であれ,そういう一般条項的な制限というのはかかってくるだろうという気がしております。

 

 

 

 

その上で,ここでは,信託の変更について,例えば,反対受益者に受益権取得請求権が生じるような場合については制限を課すという考え方もあり得ることを指摘しましたが,このような明示的な制限を果たして終了の場合にまで課すべきかどうかというところを問題提起しているというところでございますので,また御意見をいただければと思っております。

 

 

それから,これは一般的な実務に疑問を呈するわけではないのですが,受益者を二人にして58条リスクを回避するという御発言がありまして,ただ,受益者というのは別に一人ではなくても,二人でも,その二人が全部の利益を合わせて享受していればいいというような解説をしているものもございまして,果たして受益者を二人にすることによって58条リスクを全面的に回避できるのかというところにつきましては,どうもよく分からないところでございます。

 

 

もしもこの疑問が必ずしもおかしくないといたしますと,現在の提案というのは,なるべくリスクを排除するという観点から,より実務には芳しい提案になっているのではないかという気がしておりますので,念のため,一言申し上げさせていただきました。

 

 

 

 

 

 

  •  それでは,第62に進みます。後でまた戻っていただいても結構ですが,第62の信託の清算について御意見をいただけますでしょうか。

 

 

  •  そんなに強い意見というわけではないのですけれども,まず,当然のことだと思うのですけれども,この「第62 信託の清算について」というのは基本的には強行規定ということだと思うのですけれども,これの3の「債務の弁済」のところで,常に裁判所の選任した鑑定人の評価に従わなければいけないというふうに書いてあるのですけれども,信託の場合についてはいろいろなものがありますし,かなり軽微なものもあるのではないかなという感じがしまして,そういう観点からいくと,ちょっと窮屈かなというような感想といいますか,そういった感じを持っています。

 

 

 

あと,ちょっとお聞きしたいのは,こういうような規定があったとしても,要するに関係者全員が合意していれば,別にその合意した金額で清算してもいいということでよろしいんですよね。

 

 

  •  ほかの利害関係人というか,ほかの債権者の関係がありますので。関係者全員というと,委託者,受託者,受益者,当該債権者と……。全部ですか。

 

 

  •  イメージとしては非常に少人数のものをイメージしていますので,そういう場合については……。

 

 

  •  全員が合意すればいいのではないかという気がいたしておりますが。

 

 

  •  それは,債権者全員が把握できているという前提ですね。

 

 

  •  はい。

 

 

  •  関連してでございますけれども,1点だけ確認させていただきたいのが,ここの「条件付債権」や「存続期間が不確定である債権等」というのには,受益者が有する権利,受益者が例えば受益権の内容として数年後に幾らもらえるとか,そういった金銭的権利もすべてこの条件付債権等に含まれるという前提でこれを考えておられるのか,そういうものではなくて,ただ受益者は信託財産を信託行為等の定めによって返してもらうだけであると,そういう理解で書かれているのかというのを1点確認させていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

それから,○○委員がおっしゃったことは,裁判所としても,というか個人的には同感なところがあるのですが,多分,世の中,清算会社はいっぱいあるのでしょうけれども,鑑定人を選任した事件というのははるかに少ないというのが現実としてはあるのだろうなと。

 

 

 

裁判所がそういうことを言うのはちょっとよくないのですけれども,そういったこともあり得ようかなと。

 

 

ただ,信託の場合で説明がつくのであれば,任意的な規定とするということも一応考えられるのではないのかなという気はしたというところでございます。

 

 

 

 

 

  •  第2点は御意見ということで,第1点について,いかがでしょうか。

 

 

 

  •  期限が未到来の場合には,やはり条件付債権として,評価という方向に行くのではないかなという気がいたしますけれどね。

 

 

ポリー

「信託が終わる時の受益者と帰属権利者が違っていたら結構大変ですね。」

 

 

  •  ただ,受益者は,言ってみれば本来の債務が弁済された後の持分を最後に返還してもらうというような,株主的な立場にもあると。

 

 

  •  そういう人もいますね。

 

 

④に当たる人もいますし,③に当たる人もいますしということですよね。

 

 

残余財産の分配を受ける受益者と,そうではなくて普通に定期的に配当を受ける受益者と,両方のたぐいがいて。

 

 

残余財産の分配を受ける受益者というのは,残った部分を受けるだけですからよいとしても,前者もいる場合には,やはり評価ということになってくるんじゃないかなという気がいたしますが。

 

 

  •  受益者に,帰属権利者的な受益者と,その前の受益者というのがあって,今の○○幹事の御質問は,従来の受益者ということですか。既に発生している受益債権。

 

 

  •  受益債権の中で既に確定しているものがいわば信託債務として取り扱われるということは多分間違いないのだろうと思うのですけれども,それ以降将来にわたって例えば配当を受ける権利というのは,例えば株主であればそういう配当を受ける権利はあるわけですけれども,会社が清算されたときには,そういったものを債権として評価してもらって弁済されるというだけではなくて,残余財産から分配を受けるというのが株主であろうと。

 

 

そうであれば,受益者の取扱いというのはこの清算の中ではどうなるのかなというのがちょっと疑問に思ったというだけのことでございます。

 

 

 

  •  今,○○幹事がお話しになっていることというのは,恐らく何回か前に,受益権の譲渡のところで少し事務局の方でペーパーにしたためたところと若干関係するのかなという気もしておりますが,恐らく,今までの実務上の考え方で一番強い考え方というのは,受益権と受益債権の関係というのは株式と非常に似ているというふうに理解するという考え方があったかと思います。

 

 

その考え方に沿って信託の受益権というのを作るのであれば,恐らく今言われたような,つまり株式と全く同じような結論になるということになるのかなという気が,事務局の方ではしております。

 

 

 

ただ,必ず株式と同じように受益権あるいは受益債権の関係を把握するかというと,そうではなくて,信託も契約の一種ですので,いろいろな受益債権のつくり方というのはあるということではないのだろうかという気がしております。

 

 

つまり,信託契約の時点から給付の内容が確定した受益債権というのを作ることができる,その意味でちょっと株式と違うようなタイプのものもできるということではないかという気がいたします。

 

 

 

 

 

 

  •  3点あるのですけれども。

 

一つは,条件付債権とかいう,今話題になっているものなのですけれども,これは,当該債権が信託財産のみを引当てにするものに限られているのでしょうか,それとも,より一般的になるのでしょうか。

 

 

より一般的だと,私はおかしいと思うのですね。

 

 

受託者が個人で無限責任を負っているというものが,信託が清算されるというときに勝手に8割になったり9割になったりするというのは妙ではないかという気がいたします。

 

 

2番目は,先ほど出ております受益債権の話なのですけれども,私は,3のところには当然に入らないのだろうと考えていたのですが。それは○○関係官のおっしゃったことと必ずしも矛盾するとは限らなくて,結局,当該受益権の内容が信託の趣旨に従ってどう決められているかという問題に尽きると思うのですが。

 

 

 

10年間給付を受けるというふうな受益権の内容であるというときに,そもそも7年でやめられるのかという問題があって,ところがもはや信託の目的を達成することはできないという話になって,7年で終わると。

 

 

 

それは致し方がないというふうな話でありますと,それは受益権は7年で終わってしまうだけなのではないかという気もいたしまして,10年もらえるはずだったのだから鑑定評価をしてというのがどういう場合に起こるのかというのは私にはよく分からなくて,これは一般の債権者の話ではないかというふうに思うというのが2点目です。

 

 

 

 

 

3点目なのですが,これは今までとちょっと毛色が変わる問題でありまして,残余財産の帰属のメカニズムというものについてお考えがあれば,お聞かせ願いたいということでございます。

 

 

4のところを読みますと,そこには,「残余財産の給付を内容とする受益債権」という書き方がしてありまして,残余財産がそういう受益者ないしは帰属権利者に行くというメカニズムというのを,給付を目的とする債権だといえば,それはもちろんそうなのですけれども,何か給付行為というものがあって初めて行くという感じがするのに対して,5の(1)を見ますと,「残余財産は……帰属するものとする」と書いてありますね。

 

 

 

例えば,特定物が1個残っていて,かつ,帰属権利者が一人だけであるというときに,それは,信託の終了というものが起こって,清算,まあ債権者が先ですから弁済が済んでからということになるかもしれませんが,それで自動的にその帰属権利者に所有権なら所有権というものが帰属するというのか,それとも,そこで清算人ないしは受託者から帰属権利者に対する給付みたいなものがあって初めて帰属するのか。

 

 

 

 

もし仮に後者であるとしたときには,それは,日本民法が物権行為としての引渡しというのを観念していないということと整合的なのかという話について,もしお考えがあれば,お聞かせいただきたいということでございます。

 

 

 

 

 

 

  •  第1の点につきましては,たしかに,信託の清算において8割になることによって受託者個人に対しても8割になるというのはおかしいというのは,おっしゃるとおりかと思いますが,反面,評価の対象はあくまで信託にかかってくる部分だけだというような分け方ができるのかどうかというのは一つ気になっているところでございます。御指摘を踏まえて検討したいと思います。

 

 

 

 

 

それから,3点目の所有権移転時期の問題でございますが,これは,御意見が分かれているところでして,物権行為独自論に近いような,引渡しによって初めて移転するという考えもあれば,終了によって意思主義のもとで当然移転しているはずだという考えもあるところと承知しております。

 

 

 

 

事務局といたしましては,給付行為ないし引渡行為という行為が必要であるということは前提としておりますが,それが所有権移転に連動しているかどうかという点につきましては沈黙しているわけでございまして,いつ移転するかという点につきましては,あえて規定を設けず,解釈にゆだねたいというところでございます。

 

 

すみれ

「沈黙という手もあるのか。」

 

 

  •  今の整理というか確認なのですけれども,既発生の受益債権というのと,それから,33ページの下から5行目ぐらいに,「残余財産の給付を内容とする受益債権を有する受益者」というのと,それから,それと別に,受益者が帰属権利者と指定された場合というのとありそうな感じがするのですが,それぞれ違ってくるのでしょうか。

 

 

すみれ

「この話から残余財産受益者と帰属権利者が決まるのかな。」

 

 

あるいは,今後もし整理していただくとすると,そういった点も整理すると議論が分かりやすくなるかなというふうな……。まあ,これは印象ですが。

 

 

それから,所有権移転時期については解釈に委ねるということでよろしいでしょうか。

ほかに。

 

 

 

  •  1点質問させていただきたいと思います。今の点とも若干かかわるのですが。実質にかかわる問題というよりは,言葉だけかもしれないのですが。

 

 

 

信託の存続と言われることの意味なのですが,現行法で言いますと63条が正にその規定でして,資料で言いますと29ページの真ん中あたりですけれども,「信託財産カ其ノ帰属権利者ニ移転スル迄ハ仍信託ハ存続スルモノト看做ス」という規定が置かれていると。

 

 

 

それが,この29ページの真ん中を見ますと,そうではなくて,信託の終了事由が生じた後でも存続し,結了までは存続するというふうに扱うと。

 

 

 

これは,現行法ですと,あくまでも財産の所有権なら所有権の移転,財産の所在に合わせて信託の存続というものを語ると。

 

 

そういう意味では,信託の中心的な効果といいますか側面を財産の帰属に見た上で信託の存続というのを語っているかなと。

 

 

その意味では,賛成するかどうかは別として,分かりやすいのですが,今回の御提案ですと,財産の所有権の所在とは別に信託が存続するというような形になっているのかなと思うのですね。

 

 

そうすると,存続するということの意味というのをどういう意味でとっておられるのだろうなというのがちょっとよく分からなかったもので,御説明をいただければということです。

 

ちょっとぼやっとした質問で申し訳ないのですが,存続を語ることにどういう意味があるのかと。

 

 

 

 

  •  確かに,信託というのは財産が中心だという意味で考えますと,財産がなくなったのに信託が残るというのはどういうことかという問題意識は当然おありかと思いますが,ここで事務局が考えておりましたのは,なお受託者として忠実義務,善管注意義務に従って,引き渡した後も,最終計算をして報告をするというところまでの受託者の義務が存続するだろうと。

 

 

 

信託が終了してしまうと,受託者の義務ということも観念しにくくなりますので,受託者をしてなお忠実義務,善管注意義務等に従った事務処理を最後までさせたいということもありまして,清算事務の結了まで信託の存続を認めているということでございます。

 

 

 

私,現行法に疎いのですが,現行法ではどう解釈されているという前提なのでしょうか,その点は。

 

 

 

 

  •  現行法は63条でございますが,条文そのままですと,移転したところで,あと何か残っていても信託自体は終了していると読まざるを得ないように,規定としては見えますので。

 

 

 

解釈としては,もちろん,我々と同じような,信託財産を引き渡した後もちゃんと受託者としての義務をもって報告まですべきだということになるのかもしれませんが,我々の提案では,それをより明確にするべく1の規定を持ってきたということもございます。

 

 

 

  •  現行法の63条については解釈が分かれているということは共通の前提として,その上で新たに明確化したというのが事務局の御提案だと思います。

 

 

もし,更に何か,○○幹事の方で,こうしたらどうかというふうな御意見がございましたら。

 

 

  •  論理的には信託自身は終了するけれども,なお残る清算のための義務というのは存続するのだという説明はもちろん可能だろうとは思いますし,そうではなくて,「存続」という言葉を非常に広げて,財産自体はなくなっているけれども,その財産の取扱いを除く,財産の帰属を除く部分については効果はなお存続するということを含めて「信託の存続」と語っているのだと,そういう意味では,信託によってどういう効果が出てくるかということの理解をやや広げておられるのかなという気がしたというので,ちょっと質問させていただいたということです。

 

 

 

 

  •  今の点でも,あるいはほかの点でも。

 

  •  ほかの点でございまして,非常に細かい点で恐縮でございますけれども,9の「競売の権利」というところでございまして,清算受託者は,受益者等が信託財産の受領を拒んだ場合には信託財産を競売することができると。

 

 

これは商法にある規定でございまして,その趣旨はよく分かるのですが,ただ,ここは清算というコンテクストであるということを考えると,保管し続けるか競売かという二者択一ではなくて,このような場合には清算受託者が信託財産を換価することができるという権限を与えてもよろしいのではないかなと思った次第でございます。

 

 

 

  •  今の点に賛成ということで発言しようと思っていたのですけれども,やはり信託の柔軟性ということを考えますと,また実際の競売という手続の重さ,ないしはその競売の手続が本当に妥当かどうかということを考えると,清算受託者の適正な処分によって換価するということもできるのではないかと思います。

 

 

1点,そういう意味で確認なのですが,9のタイトル自体は「競売の権利」ということになっておりますけれども,9の(2)になりますと,「競売をすることを要するとともに」と書いてございますので,これはもう義務ということですよね。

 

 

 

そうであれば,やはりそういう処分をするということ自体の選択肢をふやしてほしいということです。

 

 

 

 

 

  •  事務局といたしましては,競売手続は最近割と迅速・簡便になっていると思うのですけれども,それはともかくといたしまして,競売という手続でやることが一番公正な価格により処分できると考えまして,ここでは,ほかの規定の例にも倣って,「競売」という文言を書いているところでございます。

 

 

 

 

ただ,御指摘を敷えんすれば,競売費用に満たないような価値のない財産とかいうものもあるかと思いますので,その点につきましては,商法の所在不明株主の株式の処分のように,原則競売,例外として,市場価格があるものは市場価格で,あるいは市場価格がないものについては裁判所の許可をもって競売以外の方法によって売却するというような方法というのもあり得るかとは思いますが,受託者限りで処分して果たして公正な処分ができるのかというあたりが……。

 

 

確かに忠実義務がかかっていますので,それに従ってやれば問題ないという考え方もあるでしょうが,果たして本当に競売じゃなくしてしまっていいのかというあたり,なお考えさせていただければと思います。

 

 

いや,絶対競売なんかよりも受託者に任せれば安心だというような御意見があれば,是非また御指摘いただければ有り難いと思いますが。

 

 

 

すみれ

「競売か。言葉の響きもね。」

 

 

 

  •  受託者に任せれば安心だというふうに私は思っていないのですが,ただ,9の競売の権利というのが働く場面というのが極めて狭いということは,もうちょっと解説中で書く方向の方がいいんじゃないかと思うのですね。

 

 

つまり,例えば,(3)に,「腐敗その他損傷しやすい物」というのがございますけれども,これは,仮に表面上は信託終了時には現物をもって交付するというふうに書いてあったとしましても,腐敗しやすいものを現物をもって交付するという義務が課されているというふうには普通は考えられなくて,これは,すぐに渡せないときには処分して金銭で渡すということは当然にその信託の終了時に予定されたことであって,できるのだという話になると思いますし,ほかのところでも,信託行為の解釈によって,現物ではなく,処分をして金銭で渡すことも可であるということは十分にあり得ると思うのですね。

 

 

 

 

それがどうしてもなくて,どうしても現物で渡すというふうにしか信託行為が解釈できない,しかし現物の保管にはなかなか費用がかかって耐えられないというときに処分をするということなのですが,ここの処分だって,非常に冷たく考えますと,例えば不動産が手元にあると,その不動産を引き渡そうと思うのだけれども相手が受領しないと-動産の方がいいですね-これは保管費用を取れるわけですから。

 

 

 

かつ,保管費用はその信託財産から取るしかないと仮定しますと,これは報酬を取得する度に売却だってできるんじゃないかと思うのですね。ほかの条文によって。

 

 

ですから,本当にこういう自助売却的なものが必要になる場面というのは狭くて,普通の場合には受託者が自らの裁量で売却して金銭で交付すれば足りるのだということは明らかにした方がいいのではないかと。

 

 

はっきり申し上げますと,今までの御心配は誠にごもっともなんだけれども,その御心配が起こるような場面は,まあ本当はないんじゃないかなという気がするということでございます。

 

 

 

 

  •  ちょっと○○委員に教えていただきたいのですが,自分で処分するという場合,かえって不安ということはないですか。

 

 

 

どこかにオーソライズしてもらっていた方が安心だということにはならないですか。

 

 

 

 

  •  もちろん双方あると思いますけれども,受益者のためということを考えれば,競売という手続を待たずに処分した方がよいのではないかということだと思います。

 

 

 

もちろん,その一つの方法として,処分の方法をあらかじめ信託行為の中に定めておくと。

 

 

 

もって,それを続けていけば,もちろん別途の善管注意・忠実義務が出てきますけれども,原則としては,それに従えば受託者としては特段の責任を負わないというやり方もあるのではないかと。

 

 

もちろん,これは物の中身いかんによって,腐りやすいもの,腐りにくいもの,処分性のあるもの,いろいろあると思いますから,それはその当該信託の中で個々に決めていけばいいのではないかと。

 

 

 

 

私の発言の趣旨というのは,ここの9に書かれているように,一元的に受託者の義務として定めてあって-もちろん①の場合においてはということですけれども-かつ,その方法が競売と。

 

 

 

実際にはその競売のやり方というのは実務においてはいろいろ簡易的なことが行われるということは私も認識していますけれども,それのほかにもいろいろなやり方を認めてはどうかという,そういう趣旨でございます。

 

 

 

  •  信託行為の中に書いてある,あるいは解釈で相当程度賄えるのではないかという御発言もあったわけですけれども,この点については。

 

 

  •  もう1点だけ。

義務というふうに書いてあるとおっしゃる点ですが,(2)で「要する」と書いてあるのは,これは競売をするには催告をすることを要するという趣旨でございまして,競売するかどうかは自由ということでございますので,決して競売を義務化しているわけではありませんので,そこは念のため付言させていただきます。

 

 

 

  •  ほかに,第62について。

 

 

  •  先ほど議論になりました,28ページの9,「競売の権利」のいわば自助売却権ですが,細かい話なのですけれども,この競売のための手続費用の負担というのはどうなるのでしょうか。

 

 

  •  手続費用は信託財産から取るということになると思います。

 

 

 

 

  •  状況が違うのかもしれませんが,自助売却という点で言うと,民法の497条でしょうか,競売代金の供託という項目があって,このもろもろの費用については,非訟事件手続法の83条から81条に飛んで,81条の3項ですか,債権者負担だと書いてあるのですが,これとは違うという仕切りですか。

 

 

 

  •  やはり信託事務処理に必要な費用というふうに考えますので,費用の補償として信託財産から行くということになるかと考えております。

 

 

 

 

  •  28ページの9の(1)の②の方は,まあそういうことかなと思うのですけれども,①でも同じですか。

 

 

つまり,特定の人間がわざわざ受け取らないというときに,全体に負担を課していいのかというのが疑問の実質なのですけれども。

 

 

②はしようがないですね。これはみんなで負担するしかないと思うのですが。

 

 

  •  事務局としては,先ほど言いましたように費用の補償ということで考えておりましたが,受益者が複数いるときに一人の受益者のこういうことで全体の負担がおかしいと言われると,確かにそうですが……。

 

 

そうしますと,例えば特約で受益者に行けるとか,そういう特約次第になってしまいますね。

 

 

  •  要するに,デフォルトは何だろうということですね,特約がなければ。

 

 

  •  事務局としては,御質問には十分答えられないわけでございますが,デフォルトとしては信託財産というふうに考えてしまっておりました。

 

 

 

  •  こちらでも引き続き考えさせていただきます。

 

 

  •  これは,民法497条と,それから,さっき御紹介のあった商法524条と,少しずつ規律の仕方も違っておりますので,またそういう点も踏まえて御検討いただければと思います。

 

ほかに,第62について,いかがでしょうか。

 

それでは,第61,第62,特にございませんようでしたら,次に進みたいと思います。

 

 

 

  •  では,続きまして,第63の信託財産に係る倒産手続の問題につきましての御説明に移らせていただきます。

 

 

現行法では,信託財産をめぐり倒産状態が生じた場合に備えた制度というのは設けられていないわけでございます。

 

 

しかし,第2回会議でも申し上げましたとおり,信託財産に責任が限定された有限責任信託債権を制度上も認めることとする場合には,信託債権者間の公平な弁済を確保するために,信託財産の倒産処理手続を整備する必要性は高まると言えます。

 

 

さらに,事業活動形態での信託の利用をより円滑に進める観点からも,信託財産に係る倒産処理手続を整備することが望ましいという指摘もございます。

 

 

これらを踏まえますと,信託財産に係る倒産処理手続を設けることが望ましいとも考えられるところでございます。

 

 

信託法制研究会の報告書では,以上のような諸点にかんがみまして,信託財産に係る倒産処理手続の整備を検討するものとしておりましたが,第2回会議におきましては,結論として,このような手続を設けることについては賛成する御意見が多かったと認識しております。

 

 

 

 

 

もっとも,信託財産の破産手続を新たに創設するか否かを決定するに際しまして最も重要な要素は,言うまでもなく有限責任信託債権の導入にありますところ,御承知のとおり,有限責任信託債権の導入につきましては,事務局案として,一般信託と,有限責任を原則とする特殊な信託に分けることなどを提案しておりますが,現状ではまだ大方の一致を見るには至っておりません。

 

 

 

 

そのため,信託財産に係る破産手続を整備するといいましても,そもそもそれは有限責任を原則とする特殊な信託に限られるのか,それとも一般信託にも導入するのか,あるいは破産原因をどのように考えるかなどの,制度の正に入口論については議論を行いにくい状況にあると考えております。

 

 

 

しかしながら,部会における議論を拝見しておりますと,現状では,何らかの形で有限責任信託債権の導入を行う方向での御意見が強いようにも思われたことから,信託財産に係る破産手続を整備することを提案しまして,また,入口論を一定程度棚上げにせざるを得ないものの,ある程度議論を進めていただく必要があると思われることから,資料の2ページ以降に記載しましたとおり,幾つかの論点につきまして一応の検討を試みたところでございます。

 

 

 

まず,2でございますけれども,信託財産に係る破産手続を整備することを前提としまして,各論的な事項として問題となると思われる事項につきまして,順次検討を試みていったものでございます。

 

 

まず,(1)の「破産手続の対象となる信託の範囲の限定の要否」についてでございますが,これは報告書や第2回会議におきましても,破産手続の対象を信託一般とはせずに,例えば事業目的とする信託に限定すべきか否かについて問題指摘していたところでございます。

 

 

この点につきましては,資料の3ページ上段に記載いたしました理由から,破産手続の対象となる信託の範囲を限定する必要はないという考え方を提案するものでございます。

 

 

 

 

次に,(2)の「破産手続開始の原因」でございますが,これは,破産法15条,16条におきまして,いわゆる人的会社を含む一般的な破産手続の開始原因としては債務者の支払不能が得られ,ただし,いわゆる物的会社につきましては,債務者の支払不能のほかに債務者の債務超過をも破産手続開始の原因に加えられておりまして,それに対して,他方,破産法223条によりますと,相続財産については債務超過のみが破産手続開始の原因になっているというようなことの対比から,信託財産について破産手続の開始の原因をいかなるものとすべきかという問題を提起したものでございます。

 

 

 

この点につきましては,資料の3ページから5ページに書いてありますアというところ,それから(注4)というところに関連してまいりますが,受託者の無限責任を原則としながらも,一定の事項を明示した場合には信託財産のみが責任財産となるとの規律を仮に設けることとした場合には,信託財産のみの債務超過をもって破産手続開始の原因になるとする見解と,信託財産の債務超過をもって破産手続開始の原因とならないとする見解との両様があり得ると考えられます。

 

 

これに対しまして,受託者の有限責任を原則とする新たな信託類型,言ってみれば「リミテッド・ライアビリティー・トラスト」というようなものを創設した場合におきましては,信託財産の債務超過をもって破産手続の開始の原因となることというのを書いてございます。

 

 

 

 

 

 

 

それからもう一つ,4ページのイの「支払不能について」というところに書いてございますが,上のいずれの場合におきましても,相続財産と異なり,信託財産につきましては,財産以外の要素を考慮してその弁済能力をはかること,すなわち支払不能を観念することができ,少なくとも支払不能については破産手続開始の原因となると考えられるのではないかと整理しているところでございます。

 

 

 

 

 

次に,(3)の「申立権者」というところですが,これは,信託財産を引当てとする債権者のほか,信託財産の管理処分を行う者として,受託者又は信託財産管理人等に破産手続開始の申立権を与えることとしてはどうかという考え方を提案するものでございます。

 

 

 

次に,(4)の「申立期間」でございますが,これは,法人破産の申立期間に関する破産法19条の規定に準じまして,信託の終了後であっても,残余財産の引渡し又は分配が終了するまでの間は申立てができるとする考え方を提案するものでございます。

 

 

 

次に,(5)の「破産財団の範囲」でございますが,これは,相続財産の破産に関し,破産財団の範囲を規定した破産法229条の規定に準じまして,信託財産に属する一切の財産をもって破産財団にするとの考え方を提案するものでございます。

 

 

 

次に,(6)の「破産債権の範囲」というところでございますが,これは,破産法2条5項,すなわち,破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって財団債権に該当しないものとする規定に準じまして,信託債権であって財団債権に該当しないものを破産債権とすること,それから受益債権もこの定義に当たりますので破産債権に含まれること,これに対しまして,6ページの(注6)に記載しておりますとおり,帰属権利者又は受益者の有する残余財産分配請求権については,その性質上,仮に破産清算後に残余財産があれば,信託の清算手続において分配がなされることになること,すなわち破産手続外で分配がなされることになること,以上の考え方を提案したものでございます。

 

 

 

 

 

それから,(7)の「信託債権者と受益者との間の優先順位」でございますが,これは,6ページの下段になりますが,そこに書いた理由から,信託財産の破産手続におきまして,受益債権は破産債権に含まれ,破産手続に参加できるものの,破産配当手続の中では信託債権に劣後させるべきこととなるとの考え方を提案するものでございます。

 

 

 

次に,(8)の「受託者の権利」でございますが,まず,信託財産が破産したときに受託者と破産管財人との権限関係はどうなるのかという点につきまして,第2回会議でも議論が及びましたが,これは,7ページの(注7)というところに書かせていただきましたとおり,破産手続の開始によりまして,破産財団に属する信託財産の管理処分権は受託者から離れ,破産管財人に専属することになると考えられること,その上で,受託者が有していた信託財産又は受益者に対する補償ないし報酬請求権については破産管財人に移らず,受託者自身が破産財団につき破産管財人に対して請求できるということを提案しているものでございます。

 

 

 

次に,(9)でございますが,受託者の債権者の地位というところでございますが,これは,全部の履行をする義務を負う者が数人ある場合等の手続参加に関する破産法104条などの規定に準じまして,信託財産に責任が限定されない信託債権者は,信託財産に係る破産手続及び受託者に係る破産手続の双方に対して,その有する債権の全額をもって参加することができるという考え方を提案するものでございます。

 

 

 

 

 

次に,(10)でございますが,これは,破産手続におけるいわゆる否認権の行使に関しまして,信託財産の破産においては,相続財産の破産と同様に,破産者に当たる概念が存しないことから,受託者等がした行為をもって破産者がした行為とみなすとの考え方を提案するものでございます。

 

 

 

最後に,(11),それから(注8),(注9)でございますけれども,これは,現行信託法27条の規定する受託者の損失てん補責任その他受益者の有する受託者に対する監督的権能につきましては,信託財産の破産手続が開始された場合には,破産管財人が専属的にこの監督的権能を行使するということになるとの考え方を示したものでございます。

 

 

 

 

 

以上の諸点にわたる提案についての御意見のほか,他に検討すべき課題があれば,あわせて御指摘をいただきたいというふうに思っております。

 

 

なお,冒頭に申し上げるべきだったかと思うのですが,委員・幹事の皆様からは,破産を簡易にした手続を設けることも検討に値するのではないかという御意見もいただいたところでございますが,ここでは,そのような御指摘は踏まえつつも,資料1Pの(注2)に記載した理由から,信託財産に関する破産手続を,法人格がないという点で共通していると見られます相続財産に関する破産手続に倣って整理することを試みたものでございます。

 

 

 

 

 

最後に,3でございますが,これは,報告書や第2回会議でも言及いたしましたが,事業活動のビークルとして信託の需要が今後更に進展することも考えられますことから,信託を存続させつつ信託が営む事業活動の継続を図るべく,信託財産に係る再建型の倒産処理手続についてもこれを整備すべきかについて問題提起したものでございます。

 

 

 

もっとも,この点は,専ら再建型の処理手続まで整備する必要があるかというニーズの有無・程度にかかわる事柄であると考えられますものの,当該受託者のもとにおいて信託事業の再生を図ることにはこだわらず,ともかくも信託が営む事業活動自体の継続を図ることを重視するのであれば,あえて再建型の手続まで設けなくとも,信託財産に係る破産手続の中で営業の継続を図りつつ,事業の譲渡を行うことによって対処することができるのではないかと考えられるところでございまして,現状において果たしてどの程度のニーズがあるのかにつきまして,是非とも御意見をいただければというふうに思っております。

 

 

 

とりあえず以上でございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

  •  それでは,3時ぐらいをめどに休憩が入ると思いますので,とりあえず,まず御意見をいただきまして,休憩後にまた再開したいと思います。

第63について,いかがでしょうか。

 

 

 

 

  •  まず,総論としてなのですけれども,今回の御提案のような破産の手続を導入するということについては,一足飛びに破産に至るのではなくて,例えば特別清算のようなものを入れていただけないかとか,もうちょっと軽目のものを入れてもらえないかというような意見もあったのですけれども,大勢は,やはり債権者から見た信頼性,安定性といいますか,そういう観点から,破産の手続を導入することについて賛成という方向でございます。

 

 

 

あとは各論でございますが,破産手続開始の原因のアの債務超過のところなのですけれども,今回の御提案では,受益債務が債務超過の計算の際の債務に入るということですけれども,どうもここのところが若干違和感があるということでございます。

 

 

 

このことに関しまして若干質問がありまして。ちょっとよく分からないので。

 

 

 

簡単な例でいきますと,例えば,100万円を管理運用して毎月末に10万円ずつ10か月間給付するというような契約の信託を設定したとしますけれども,そのときに,例えば,1か月たったところで10万円の給付の時期は来ているのだけれども,まだ払っていませんというものと,その時点においてあと残っているのが,9か月間10万円ずつですから,90万円残っていますけれども,ただ,これは信託契約で約束された支払いということですけれども,この分と,あとは,全く支払いの時期とか金額とかが書いていないような,要するに利殖してくださいという形で渡されたようなもの,この三つについて,要するに債務超過の中の債務に入るのかどうかということをお聞きしたいのと,その三つが,先ほどの議論にちょっとプレイバックしてしまいますけれども,普通の信託債権に劣後するのかどうか,それをちょっとお教えいただきたいと思います。

 

 

 

  •  先ほど言いましたように,受益債権は破産債権に入るということからいたしますと,確定未払いの10万円はもちろん入りますし,あらかじめ信託契約で発生して,ただ期限が到来していない90万円,これも入ると思います。

 

 

 

最後におっしゃったのは,支払時期も金額も不明で,ただふやしてくださいというのですか,それは債権かどうかよく分からないのですが,それも残余財産分配みたいなものなんでしょうか。

 

 

これを受益債権と位置づけることができれば,評価をして,破産債権に入っていくのではないかという気がいたしますけれども。

 

 

 

  •  そこまで入るということになりますと,設定した段階でかなりの部分の債務があるという状況になってしまって,例えば,それが株式等の価格の変動を受けるようなものになっていた場合についてはすぐに債務超過になってしまうというようなおそれがありますので,ここの部分については,受益債務ということを債務超過の金額に入れるということについて御検討いただけないか。

 

 

すみれ

「信託した元本も計算に入れないってことかな。」

 

 

 

また,そういうことがちょっと位置づけとしてはおかしいということであれば,例えば,債務超過というもの自体が破産の原因になるということですけれども,そこら辺のところの御検討をいただけないかということでございます。

 

 

 

 

  •  1点申し上げ忘れましたけれども,劣後かどうかという関係につきましては,受益債権は信託債権に劣後すると考えております。

 

 

  •  完全に確定していても,支払時期が来ていてもということですか。

 

 

  •  劣後すると考えています。そこは清算の局面でも同じでございますけれども,配当規制のようなものがない信託については,一般債権に比べて受益債権は劣後すると考えておりますので,その上で御指摘を踏まえて検討いたしたいと思いますが,受益債権が債務超過に当たってどのように評価されるかと。

 

 

請求額丸々考慮されれば破産に行きやすいということになりますが,その半面,破産手続によって受益債権の公平な弁済は図られる。

 

 

他方,信託の延命といいますか,終了させたくないということからいたしますと,例えば契約によって,受益債権の額は信託財産の額が縮減することによって縮まるのだというような契約を設けておけば,あるいは,その破産債権額,債務超過に当たって考慮する額の評価に当たって,劣後するという点を考慮して低く見積もるということができるのであれば,直ちに債務超過に至ることもないのではないかと思います。

 

 

 

 

 

あと,受益債権と同額の信託財産しかないということは普通なくて,もうちょっとバッファーといいますか,余裕がある信託財産を持っていることが普通であって,多少債権があろうが,費用がかかろうが,それによって債務超過に直ちになるという事態は少ないのではないかというような気もするところでございますが,いずれにいたしましても,何をもって破産原因とするかというところも含めまして,御指摘を踏まえて今後また検討していきたいと考えております。

 

 

 

 

  •  一番最初に○○幹事の方から御説明があったように,有限責任信託という新しい制度を認めるかどうかによって随分これの意味が違ってくると思うのですが。

 

 

 

三,四年前に破産法改正のときに,やはりこの信託の破産というのを作るかどうかというのが議題になって,結局,有限責任という制度ができるかどうかが決まらないのでとりあえず見送ると,そういう経過があったと思うのですが,それとの関係でいくと,今回のこの御提案が,破産手続の対象となる信託の範囲を限定する必要性に乏しいと考えられるということは,もう全部を対象にした提案になっていて,私も,有限責任信託というものならば破産というのは観念できる,必要性もよく分かるのですが,受託者無限責任というのがある場合の破産手続というのは,大変難しい,いろいろな問題が生じてきて,果たしてうまく制度ができるのだろうかという懸念を持っております。

 

 

 

 

 

それから,特に範囲の問題として言うと,当事者に明確な信託の合意がなくて,個別の事実関係というか契約関係を全部組み合わせるとこれは信託と評価できる,そういうような場合というのが現に判決で認められた例もありますけれども,そういうような場合もやはりこの破産手続に乗るのだということになってくると,そもそもそれが信託なのかどうかというところと,破産というところと,入口のところで大変な争いになってもめてしまうというおそれもありますので,とにかく範囲の限定の問題は非常に重要な問題だというふうに考えております。

 

 

すみれ

「信託法理ってやつかな。」

 

 

  •  それはおっしゃるとおりで,もちろん,ここでは有限責任信託というのを前提とはしないで,御自由に御議論いただいてよろしいと思いますけれども,確かに一般的に言うと頭の体操みたいな非常に難しい問題がいろいろあると思いますが,今日はそれも含めて御意見を出していただければと思います。

 

 

 

  •  もちろん,有限責任信託を設ければより必要性が高いという問題もございますが,事務局として限定の対象とすべきかどうかと考えておりますのは,事業を目的とした信託に限るかどうかという視点からでございまして,結論的に,事業目的でなくても債権というのは幾らでも発生する可能性はありますし,入口のところでもめてはおかしいということで,事業目的の信託には限らないという切り口でございますので,有限責任信託かどうかという点で切り口を設けているわけではないというところは,念のため御留意いただければと思います。

 

 

 

 

  •  第2回の会議において,簡易な手続が望ましいという発言をした立場から申し上げます。

 

 

 

確かに,公平性の観点からは破産手続の一律的な適用が望ましいということもあるわけですので,ここら辺はなかなか議論が難しいところだと認識しております。

 

 

 

ただ,一律に本当に破産法の導入がいいのかどうかということについてはなお疑問があるところで,そこで質問が2点あるわけです。

 

 

 

一つは,これも第2回で申し上げましたけれども,なかなか理論的には難しいかもしれませんが,破産制度の対象とならない信託ということを概念することができるのかどうかということです。

 

 

 

例えば,信託行為の中でそういうことを定めていればできるのかどうかという話なのですが,そこはなかなか難しいかもしれません。

 

 

ただ,実務的な話としましては,例えば債務超過ということで破産が申し立てられて信託が壊れてしまい得る,それも一部の債権者から申立てがあったときに壊れてしまうということもあるわけですが,実際のいろいろな信託の中で,一時的に債務超過になったとしても,将来は通常の受益者に対する配当ができ得るというものもあるわけで,そうしたときに,大多数の受益者はよろしいけれども一部の債権者が壊してしまうということを認めるのかどうかという話を考えたときに,やはり破産手続とはならないような信託を設定するニーズがあるのではないかと思います。

 

 

 

 

 

せめての話なのですが,例えば,商事信託法要綱を見ますと,これは全く違う解決方法だと思うのですけれども,そういったときに,一部の債権者に対して弁済をすることによって破産手続を回避することもでき得るというふうな理解をしておりますけれども,そういった,破産の手続を導入するとしても,出口みたいなものを検討する余地がないのかどうかということもあると思います。

 

 

 

 

 

 

 

二つ目は,これも第2回で申し上げたところなのですけれども,DIPというような考え方があるのかどうかという話でございます。

 

 

 

先ほどの○○幹事の御説明の中で,7ページの(注7)のところで,信託受託者の整理というのは,基本的には,破産管財人が管理処分権を専属するというところで整理したということでございますので,基本的には,受託者が処分権限を持つということは想定していないと認識しています。

 

 

 

DIPというのは,これは再生型にはある概念だと思いますけれども,破産についてはないと認識しているわけですが,なお,この前も申し上げましたけれども,信託の場合には,受託者がまだ正常に行為し得る能力がある場合もあるわけですから,また受益者の立場からしても,一番取引の内容を知り得る立場として受託者が引き続き権限を持ち続けるということが適当な場合もあるわけですので,やはり一つの選択肢としてDIPというのを検討されてもいいのではないかと思います。

 

 

 

 

もちろん,いろいろな,受託者の補償請求権の問題であるとか,忠実義務の問題であるとかあるわけですので,例外は認めてもいいわけですけれども,この点,やはり商事信託法要綱を見ますと,選択肢だということだと理解しているのですけれども,受託者は破産管財人となることができるということがそのときには提案されておりまして,それは検討に値するものだというふうに思っております。

 

 

  •  休憩との関係がありますので,○○委員の御意見をいただいて……。
  •  1点目は同じなので,よろしいですか。
  •  では,続けてお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

  •  私の方も,○○委員のおっしゃられますように,信託一般について破産手続を設ける必要が果たしてあるのかというところで同じような意見を持っておりますので,あわせて申し上げさせていただきたいと思います。

 

 

御説明にありましたように,信託が事業を目的とするものであれば,これはまあ必要なのかなというふうに思うわけなのですけれども,一般の信託,特に流動化の場合を想定しますと,従来,例えば特債法のもとでSPCを使って流動化しているときに,社債を発行するに当たって優先劣後構造とかを持ってやっておったわけですけれども,同じSPCに譲渡するときに,そこの中での個別の格付を維持するために,他の資産に強制執行できない,若しくはSPCの役員等に対しての,若しくは債権者の方に倒産の申立てをしないという条項を認めさせる,そういう特約を設ける形で対応しておったわけですけれども,今回,信託の方に,信託財産について破産手続が認められるような場合,先ほど○○委員がおっしゃられましたような倒産手続の申立てをしないという信託契約を有効にできるということであれば,これでも構わないのですけれども,そうではない場合については,かなり流動化の実務の中で混乱を生じせしめるのではないかという懸念があって,そういうものが可能かどうか,そういうところまで考えておられるのかどうなのかをまずお尋ねしたいと思います。

 

 

 

特にそういうふうに申し上げないといけないのが,実際にそれができないということになって,破産手続に入った場合,先ほどから,信託債権の方が受益債権より優先するということですけれども,それ自体も若干問題があるのですが,更に,その受益権の中でも優先的受益権と劣後的受益権というふうに分かれて,かつ,その優先的受益権についても幾つかの,これは非常に大切で,どういう形で売っていくかということにも関係するのですけれども,様々な形で区別が設けられまして,その中で格付等もとっていっていると。

 

 

 

トリプルAのものもあるし,シングルA,トリプルB程度の,そういった優先の部分でもそういう区別があるわけですけれども,こういったものが破産手続の中で実際どういうふうな形で評価されていくのか,破産債権として評価されていくのかというところが非常に複雑になってきますし,法律で破産手続の中で決めることではなくて,実際は破産の手続の実務の中で決める形にはなるのでしょうけれども,非常にそのあたりが不安定になってしまうのではなかろうかと。

 

 

そういった懸念もありますので,先ほど冒頭に申し上げました特約みたいなものの有効性というのが考えられる余地がどの程度あるのか,そのあたりについてお尋ねしたいと思います。

  •  それでは,いったん休憩ということにいたします。

 

(休     憩)

 

  •  それでは,再開したいと思います。

休憩前に○○委員,○○委員からいただいていました御質問で,一般に破産を認めるとしても,商事信託法要綱の713条にあるような形での弁済を認める方法でなくすることはできないかとか,あるいは,そもそも特約を事前に設定しておくことはできないだろうかということ,それから,DIP型を選択肢として認め得るかといったような御質問だったと思いますが。

 

 

 

  •  では,順次お答えしていきます。

まず,今ございました,一部弁済したら破産がとまるのではないかという点につきましては,いったん破産が始まった以上は,しかしながら破産債権者以外の全関係者の利益にもなるということが考えられますので,一部の債権者に弁済することによって破産手続がとまるということは難しいのではないかと考えております。

 

 

 

それから,両委員から御質問がございました,破産手続の対象としない信託,換言すれば,破産申立てをしない特約の有効性という観点でございますが, このような申立ての特約の有効性につきましては,法人についての破産と信託の破産を特に区別しているわけではございませんので,法人についての破産の場合の議論はこちらでも妥当するのではないかと考えております。

 

 

 

最後に,DIP型というか,受託者が信託財産の破産手続を遂行するということはどうかという御見解でございましたが,事務局といたしましては,やはりそれは難しくて,信託財産が破産した以上は,信託財産破産についての破産管財人が必ず選任されて,受託者からその者に権限が全面的に移行するという手続をとるというところを現在考えているところでございます。

 

 

 

  •  私の確認したいことは,それでしたら,確かに破産を一律に導入するということであればそういう結論になったとして,次の質問としましては,では,この信託の破産制度を作るときに,その破産制度の例外的な条項を入れることを検討する余地があるのかどうかということです。

 

 

通常の破産法を導入します,ただ信託においては破産法の何々は適用しないものとするとか,ないしは,例えば破産管財人は受託者が務めることができるものとするというような特別の規定ということを手当てすることができるのかどうか。法技術的にということですが。

 

 

 

  •  今おっしゃったのは,破産法改正をここでやろうというわけじゃなくて,信託法の方で何か対応できないかということですね。

 

 

  •  はい。

 

 

  •  今,○○委員がおっしゃいました,受託者を破産管財人に選任することができるというような明文の規定を設けるかどうかという話で,法技術的に難しいという話はともかく,その前の問題として,そういう条文を設けることによって本当に合理的な話になるのかどうかというのは一応はあるのだと思います。

 

 

つまり,受託者というのは一部の債権者のための立場ですし,恐らくは補償請求権みたいなものもございますので,利益相反的な立場に立ち得るという関係にございます。

 

 

そういう方を法律上明文で管財人になれるというふうに-破産法自体にそういう条文はもちろんないわけですけれども,そういうことをするのがいいのかどうかというのは,やはり慎重に考えないといけないのではないかというふうには思っておりますが。

 

 

 

  •  一律に認めるというわけではなく,例えば,裁判所の関与によってそういう利害関係がないという場合において,かつ受益者のためになるのであれば,受託者が管財人になれるという余地を残すというような特約を検討する余地がこの場においてあるのかどうかという話なのですけれども。

 

 

 

もちろん,ある意味判断の話ですので,そういう規律を導入する必要があるのかどうかということはこの場で議論しなければならないわけですけれども,そういうことを前提に今後議論を続けていくということが可能なのかどうかという話なのですが。

 

  •  済みません,特約を設けるというふうに今おっしゃったかと……。

 

 

  •  特約というのは,信託法の特則として破産法の例外を認めることが立法的にできるのかどうかと。また,この場においてそれを議論する余地があるのかどうかという話です。

 

 

  •  議論する余地は恐らくあるだろうと思います。問題は,それが可能かどうかという話で,今,○○委員がおっしゃった御意見についてもまた検討する必要はあるかと思いますけれども,直ちに可能であると申し上げるわけにはいかないと思います。

 

 

 

  •  何点か申し上げたいことがあるのですが,とりあえず,今の受託者を管財人とする特約についてだけ申し述べ,それについて議論が収束したら,またほかの点についてお話を申し上げたいと思います。

 

 

 

 

そもそも何で破産管財人が置かれるのかといえば,公平・中立な,裁判所が選んだ機関が財産を公平・適正に分配すると。

 

 

確かに手続的には軽くはないわけですが,先ほど出たDIP型とも関係しますけれども,そこで大事なのは,やはり公平・中立だと裁判所が判断をするという要素がありまして,最近非常に多いですけれども,特に会社更生なんかで顕著ですが,経営破たんをして,しかし経営破たんする直前にいわばターンアラウンドのために入った取締役なんかがいると。

 

 

これをそのまま管財人に据えたらいいじゃないかという議論は会社更生法のときも随分しましたが,やはり裁判所が選任し,裁判所が監督するという体制が大事だということで,会社更生法の67条3項ですが,裏から,責任がない人はなれますよということにしたわけで,あれは確認的な規定だと言われていますので,裁判所がこの受託者が管財人としてふさわしいと思えば管財人にすればいいだけの話で,それ以上の資格は,破産法の中で例えば弁護士でなければいけないとかですね。

 

 

 

冗談みたいな話ですが,破産者だって破産管財人になれるということですから,その人が適切だと思えばそれを選ぶだけのことで,ただ,それは,繰り返しますが,裁判所が適切であると判断したことが大事なのであって,あらかじめだれかとだれかの特約でできるということではなかなかないのだろうと。

 

 

それはほかの倒産手続における手続機関と同じで,裁判所が真っ白いところから判断しますよということにならざるを得ないのではないか,ここだけ外す理由はなかなかないのではないかと思います。

 

 

とりあえず今の点についてはそれだけで,もし時間がありましたら,また別の点についてお話しさせていただきたいと思います。

 

 

  •  今の点,御専門の○○幹事からのお話で,まあそういうことかなという気もするのですが,更に○○委員としてはまた御検討いただいて……。

 

  •  はい。

特約ということにまだこだわっているわけではなく,結果として受託者が裁判所の判断によって管財人になれるという余地があるということをここで確認できれば,それでいいわけですが。

 

 

 

 

  •  それは,一般論としては特に限定はないということでしょうか。

 

 

  •  今度,破産規則で,ふさわしい人を選ぶと。たしか会社更生における調査委員なんかと違って,利害関係がちょっとでもあるとだめということではないと。

 

 

適切な,わずかに利害関係があってもいいと。だから,そういう意味では,先ほど補償請求権の話が出てきましたけれども,それがいわば管財人としての公平・中立を奪わない程度の利害関係であれば,そこは排除しないということではないでしょうか。

 

  •  よろしいでしょうか。

 

 

  •  今のは,私も現行破産法の解釈論を十分存じ上げないのですが,破産債務者も管財人になれるのですか。

 

 

  •  さっき○○幹事が,破産者も破産管財人になれると,冗談のようなとおっしゃった点ですね。

 

 

 

 

  •  そういうのはだめなんじゃないですか。

 

 

 

  •  それで,これは債権の債務者は受託者ですから,第三者性を持った人がなるという例を挙げてもだめなので,破産債務者そのものが管財人になれるかという問題ではないかと思うのですが。

 

 

  •  確かに第三者なのかよく分からないですが,例えばへんぱ弁済を否認するなんていう場合は,自分がやった行為を否認しなければいけないわけですね。

 

 

 

もう利害関係の典型みたいな状況で,それはない。先ほど,一般的な資格の問題としては半分冗談で申し上げましたが,自分の事件はさすがに定型的に無理なんじゃないでしょうか。

 

 

 

  •  無理ならば,受託者はなれないんじゃないでしょうか。つまり,この破産手続における破産債権者はだれに対して債権を持っているのかというと,債務者名義は受託者ですから。

 

 

 

 

  •  ○○幹事がおっしゃるとおりで,法律的には確かに債務者は受託者であり,それ以外の人であるというわけにはいかないのは確かなのですが,ここでは,信託財産をかなり独立のものというふうに取り扱うことができるという,そういう前提で特別に信託財産の破産制度というのを考えましょうという話でございまして,そういう意味では,受託者というのは,もしかすると,破産者自身というよりかは,連帯保証している立場にある人というような-実質論においてということで,法律的といいますか,法律行為の当事者としてはもちろん債務者と言わざるを得ないところはあるのですが,ここでは,破産者に類するような立場は,どちらかといえば信託財産であると言わざるを得ないところがございますので,そこを重視すれば,受託者が破産管財人になるということがおよそおかしい,議論の余地がないということではないのかなという感じで考えております。

 

 

 

 

 

  •  説明の仕方には全く反対ですが。

 

 

というのは,保証人的立場とか,債務者は信託財産であるとかというふうな説明の概念はすべてに対して反対ですが,私は,具体的には,受託者が破産管財人になるということが認められておかしくはないというふうに思います。

 

 

ただ,それは当然に認められるんだよねという話ではなくて,本来は破産債務者だから認められないんだけれども,この例に関しては特別に破産債務者たる受託者も便宜の面等から破産管財人になれるという制度をあえて置いたのだというふうにすることは全然差し支えないのではないかと思っているのですが。

 

 

すみれ

「たしかに。」

 

 

 

  •  この点が大きな問題になると思っていなかったものですから,余り深くは考えてこなかったのですが,破産手続の実務という点で言いますと,破産手続というのは,普通は管財人が選任され,一方,債務者側で説明義務を負う者がいて,管財人がその破産者から説明を聞いて,財産状況を調査し,債権を調査し,配当するというのが破産手続だと思っておりました。

 

 

 

そういう意味で,そういう説明をすべき破産者と,その説明を受けて調査をする破産管財人が同一人である破産手続を観念するというのは,今の破産手続の実務を前提とすれば,かなり違和感があると言わざるを得ない面はあるのではないかなというふうに思っております。

 

 

破産手続においては,債務者の側はもう破産してしまっているので,それから債権者の理解を得ようとか,そういったインセンティブというのは働かないというのが通常だと思います。

 

 

そういう意味で,第三者である破産管財人がついて,それが手続を遂行するというのが本来の姿ではないかなというふうに思っておりまして,今の議論で,○○幹事が,政策的にそういった新しい制度を設けることは不可能ではないとおっしゃったのですが,実務の観点から見ますと,破産手続の適正な遂行という面から言うと,かなり違和感があるのではないかというふうに思うということでございます。

 

 

 

 

  •  これは破産法の根幹にかかわるようなことでしょうから,ここでこれ以上議論を続けてもなかなか難しいかもしれませんが,欠格事由になるのか,特約が可能なのか,あるいは裁判所の選任というので配慮できるのか,いろいろ問題があるかと思います。

 

 

 

 

 

  •  今の点について,一言だけ。

先ほど,会社更生法の67条3項を挙げましたが,それは再建型の特質というのが大きゅうございまして,事業を再建するには,やはりかなり人に依存するというのでしょうか,今までの経過をよく知っている人を選ぶということであって,破産の場合には余りそういう配慮が要らないのかもしれないです。

 

 

ですから,質が違うのではなくて,いわば量というか,運用レベルの問題で,どっちがしっくりくるかといえば,再建型で従前の経緯をよく知っている,それを生かして今後の事業の再生をしていかなければいけないというような再建型については,まだ,いわゆるDIP型というのでしょうか,なじみやすいと思うのですが,破産の場合には,やはり厳格な公平性というのを追求するという方向で……。

 

 

 

ただ,これは何か質が違うというか,だんだん色が濃くなったり薄くなったりというような話だと思いますので,理屈ですっぱり割り切れるのかどうかはよく分かりません。

それから,先ほど出ている御意見について,幾つか,私が考えているところを申し述べさせていただきます。

 

債務超過を信託財産の破産についての破産原因とすることについて幾つか御意見が出て,特に,立上げのときにお金が入ってきて,しかし立上げのために費用がかかって,立ち上げた瞬間は,じっと見たらそれは債務超過じゃないかという御指摘が冒頭ございましたけれども,それは資産評価の問題ではないかと思うのです。

 

 

 

つまり,動き出してすぐ,単にピースミールで財産の評価をするのではなくて,動き出した事業の将来収益なども勘案してゴーイングコンサーン・ベースで資産の評価をして,それでなお債務超過があったら,それはもうしようがないですね。

 

 

すみれ

「ピースミール?」

 

 

 

それはしばらくは様子を見なければいけないかもしれませんが,そういう傾向が強いというのであれば,それは破産に持ち込まざるを得ない。

 

 

それは,債務超過を破産原因にした趣旨,つまり,傷が広がらないうちに財産を解体し,弁済をして,その債権者の損失を防ぐということから言えば,ほかの制度との並びで言えば,ゴーイングコンサーン・ベースでも,レギュレーション・ベースでも,どう評価しても債務超過だったら,これはもうしようがないんじゃないかと。

 

 

そういうものとしてみんな物的会社を位置づけている以上は,ほかと並べるのであれば,債務超過も破産原因にせざるを得ないのではないかと思われます。

 

 

 

それから,先ほど,無限責任という制度と破産という制度がなじむのかという御指摘がございまして,これはなかなか奥の深い問題だと私は思いますが,現行の中で見ますと,合名会社・合資会社について,無限責任の会社なのに破産というのが想定されているということを想起すべきだろうと思います。

 

 

 

ただ,非常に難しい問題が生ずることは確かなので,この点はかなり,リミテッド・ライアビリティー・トラストみたいなことを考えずに,もっと広げるとすると,いろいろな難問が出てきそうな気がいたします。

 

 

 

 

 

 

それから,先ほどのDIP型とも若干関連しますけれども,破産法以外の簡易な清算方法は考えられないかということですけれども,これはもちろん考えられると思います。

 

 

政策でどこまでぎりぎりやるかということで,いろいろな仕組みはつくれると思いますが,もし破産法以外の簡易な方法という御意見のベースが,破産手続自体が遅い,あるいは無用に厳格であるということだとすれば,その懸念は大分減っているのではないかなと。

 

 

実務の運用は,例えば5年前と今と全然違って,改正前はここまで柔軟な解釈ができるのかと思うぐらいですね。

 

 

それを法律をかけたみたいなところもあるような気がいたしまして,そこはあとは立法事実の問題で,どこがどう不都合なのかということの各論もした方がいいのではないかという気がいたします。

 

 

およそ倒産手続と位置づける限りは,どんな手続であれ,債権の個別的な権利行使の禁止というのは要は倒産手続の本質ですので,手続を設ける以上はつくらざるを得ない。

 

 

 

先ほどSPC型の話が出ましたけれども,どっちみち1回はキャッシュフローがとまる話になってしまうのではないかと思います。

 

 

それすらない簡易なものというので,逆に,欠乏した責任財産に対する債権者の権利行使を個別にしないで,集団的にして公平に財産を分配するというのができるのかどうかですね。それを考えるべきなんだろうと思います。

いろいろ申し上げましたけれども,以上でございます。

 

 

  •  その簡易な手続については,一体現行の破産手続のどこがネックになるということなのかまた具体的に御指摘いただければと思います。

ほかに。

 

 

  •  信託財産について破産手続が入ることに特段の反対ということではないのですけれども,ただ一方で,何かちょっとぴんとこないなという感じを持っているのですが。

 

 

 

 

 

 

例えば,事業を目的とする信託という制度ができたときに,恐らく,信託を受けて事業を行っている者は受託者ということになるんじゃないかなと。

 

 

対外的には,すべてその受託者が行っている事業行為というふうに見えるのではないかなと思うのですね。

 

 

にもかかわらず,受託者とは別に切り離した信託財産の部分だけの倒産手続を考えるというふうにしたときに,事業として取引の相手方から見ると,恐らく受託者しか見えない。

 

 

いろいろな,例えば契約名義上も受託者としてしか登場しない。だから,当然,受託者という会社と取引をしていたと思っていたら,実は信託財産といいますか信託部分と取引をしていたというようなことにならないだろうかと。

 

 

 

そうすると,例えば,この取引の相手方から見ると,会社と取引するに当たっては,その会社が信用できる先かどうかというのは必ず事前に見るわけですね。

 

 

 

受託者のBS・PLを見て,ああ,この会社は立派だと思っていたら,実は自分が取引していたのは信託財産であって,それはぼろぼろだったということになっても,そこは全然公開もされ-まあ,それは今後の制度設計の問題かもしれませんけれども,信託財産というものが独自に何らかの公示をされるという制度というのは,多分,信託の枠組みの中ではつくりにくいかなと。

 

 

信託というのは,やはり受託者として対外的に行為をしているところに特徴があるように思うので。

 

 

 

ですので,そういう観点で,例えばこの事業目的のものに倒産手続を入れるのはどうかということになっても……。何か理念としては分かるのですけれども,受託者と信託財産の区別というのはどんなふうに考えていくんだろうかというような観点から,ちょっとどうかなと思います。

 

 

 

 

  •  確かにおっしゃるとおり,一般的な信託,受託者が無限責任を負って,受託者の信用というのもある程度関与されているものについてまで破産手続を入れるべきかどうかというのは大きな問題があると思いますが,他方,どのような信託類型について破産手続を入れるべきかという問題がございまして,いわゆる有限責任信託という特殊な類型を認めれば,それは受託者個人の責任財産とかいうものは基本的に度外視されて,かつ,信託財産について一種の公示制度というのも整える予定でおりますし,そのようなものになりますと,信託財産の法人格は認めるわけではございませんが,やはりそこは責任財産が限られるものとして何らかの公平な弁済手続が必要な気がいたしますし,あと,一定の事項を表示したときには有限責任になるというような制度を仮に入れたとしますと,それも相手にとっては,これは信託財産が相手だということが分かるわけでございますので,そのような形態のものを入れたときには,それについては,有限責任信託ほどではないにしても,何らかの破産手続というのを設けることは,少なくとも検討に値するのではないかという気がしております。

 

 

 

 

 

 

 

  •  もう1点追加して申し上げますと,信託財産の破産において,信託財産を換価して信託の債権者に対して弁済をするという手続はとりますが,これは,これまであった無限責任の債権者との関係で,その弁済が終わって,例えば100万円の債権なのに60万円しか信託財産からは配当がもらえなかったと。

 

 

 

そのときに40万円の部分が当然に債権として消滅するかというと,もちろんそういうことはございませんで,40万円の部分は,それはそれで残って,受託者に対して,つまり固有財産に対して強制執行できるという関係は残ると,そういうつもりで整理しておりますので,破産手続が入ったことによって相手方の信頼がいきなり害されるということはないのではないかという気がしております。

 

 

 

  •  その前提として,どういう信託を想定するかということともかかわっていると思います。

ほかに。

 

 

 

  •  債務超過の概念について私が触れたところ,○○幹事の方から,こういう考え方があるよという御紹介があったのですけれども,その点について,2点ほど,意見ではなくて,コメントなのですけれども。

 

 

 

一つは,今,信託の会計というのがどうなっているのかといいますと,物の本なんかを見ますと,信託慣行会計と言われるものがあって,どういうことかというと,通常の法人が行っている会計とは違った,つまり,具体的なルールが明記的にはないわけですので,信託としては保守的に,それが慣行化しているわけですけれども,ある意味独自の会計をとっているということです。

 

 

 

とすると,通常の法人で観念している債務超過概念ということとまた違ってくるのではないかと。そこをどう考えるのか,今後,会計ということを見直す必要になるのかどうかということも含めて整理する必要があるのかなというふうに思いました。

 

 

 

 

二つ目に,ゆえに,実際に破産申立てがあったときに,受託者の立場からするとどうしたらいいのかという話なのですが,一つの考え方としては,やはり信託受託者としては信託を守らなければいけないと。

 

 

 

確かに信託会計上はプラスになっているけれども,ひょっとして将来の収益とかいろいろ考えると債務超過かもしれないと,そう訴えられているといったときに,では受託者としてはどういうふうな立場で,どういうふうな方向で考えなければいけないのか。

 

 

 

ひょっとして,信託を守るためにこれは資産超過だよということを強弁すること自体が受益者に対する義務違反なのかもしれないというように思うわけでして,そうしたときに,これは枝葉の議論なのかもしれませんけれども,受託者はある意味板挟みになるようなことになるのではないかなというふうに思いました。

 

 

  •  ○○幹事,何かございますか。

 

 

 

 

 

  •  では,一言だけ。

私も会計のルールはよく分かりませんけれども,技術的なところはともかく,本質的には債務超過の判断基準は多分変わらない。

 

 

申立て時に,そのときの財産状況を示す非常貸借対照表をつくらせて見るというのが筋だろうと思います。

 

 

どの資産をどう表現するのかについては各論がいろいろあると思いますが,本質的には多分変わらないものではないかと私は思います。

 

 

それから,今おっしゃったのは多分債権者申立ての場合ですね。

 

 

債権者申立ての場合に受託者としてどう行動すべきかですが,これは多分一律には言えないのだろうと思います。

 

 

それは,今早く破産手続に入った方が結局債権者全体の利益を図れるということであれば,資産超過であることを無理やり証明するというのはかえって善管注意義務に反するでしょうし,本当にまだこの信託は,一般的な言い方をすると,破産させる意味がない,むしろその方が有害だと思ったら,それは債務超過ではないということを言うとかいうことになるのだろうと思います。

 

 

それは結局,今ここで自己破産の申立てをするかどうかというのと全く同じ判断構造ではないかと。

 

 

自己破産の申立てを今した方が債権者の利益が守れると思ったら,それをあえてしないことは善管注意義務違反になるのと同じことではないかと思います。

 

 

ポリー

「たしかにですね。」

 

 

 

  •  このほか,事務局の方から幾つか,御意見をいただきたいという点が出ておりまして,7ページのあたりですが,受託者の地位に関して,受託者が補償請求権で破産手続に参加できるかとか,同じページの下の方ですけれども,否認権の適用についてどうかとか,それから8ページですけれども,損失てん補責任はどうかと,こういった点について御意見をいただければと思いますが。

 

 

 

  •  7ページの(9)のところの②として書かれているところなのですけれども,全部義務者が複数いる場合になぞらえて問題を考えるというこの発想というのは,法人格はないけれども,やはり,信託財産という一つの全部義務者と,信託財産を除いた受託者の財産という全部義務者がいるという,こういった雰囲気なんじゃないかなと思うのですね。

 

 

 

しかるに,もし仮にこれを,債務者というのはあくまで受託者であると,しかし,ある債権者は特定の財産に対してしか執行できる地位を持っていない,他方,すべての財産について執行できる地位を持っている,他の財産に対しても執行できる地位を持っているという人がいるとしますと,この破産法104条とか231条の問題なのか,それとも民法の394条に近いシチュエーションなのかというのが,どちらかといえば,民法394条の,抵当権者がいるときにその抵当権の目的以外の財産について執行がなされた場合の抵当権者の地位というものに近いのかなという気もします。

 

 

 

ぴったりでないことは重々承知しているのですけれども,必ずしも全部義務者のことで考えるのが妥当とは限らないのではないかと。

 

かつ,もう1点だけ申し上げますと,私,これは不勉強で恐縮なのですけれども,やはり責任財産限定特約の一般の場合と整合性を持った処理をする必要があると思うのですが。責任財産限定特約のある人について執行のときにどうなっているのかというのは,私,十分に存じ上げませんので,お恥ずかしい話なのですけれども,基本としてそういうことも考えなければいけないのではないかということだけ申し上げておきます。

 

 

 

 

  •  ほかにも,事務局からの御質問が6ページにあります。とりあえず清算型について御意見をいただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

  •  今触れなかった点ですが,よろしいですか。6ページの(7)の優劣関係なのですけれども。ちょっと間が抜けた質問というか感想なのですけれども。

 

 

私,本当に受益債権が劣後するという整理でいいのかというのは,やや自信がないのですね。なぜ自信がないと思うかというと,その理由がよく分からないということもあるのですけれども,直感的に言いますと,例えば,多数の投資家から信託の仕組みを使ってお金を集めましょうと。

 

 

集めた投資家に,あなたの出していただいたお金に対して返すものは全部劣後しますと,こういう仕組みというのは余りほかにないと思うのですね。預金であれ,保険契約であれ。

 

 

 

それで,なぜそうするとこういう理屈になっていくのかというのは,もちろん,多数の投資家からお金を集める器として信託を使う場合だけを考えているわけでは決してありませんので,ここは信託法の基本の議論をしているわけですけれども,先ほどの御説明ですと,例えば株式会社の場合には,株主に対する配当支払請求権というのが,必要な総会決議等を経て具体的に確定して,発生したと,その場合には発生したものについては劣後はしなくて,それはもう債権ですので同等なのだけれども,まだ未発生というか,そういうものについてはもちろん劣後するわけですけれども,そういう区別がこちらではできないので,受益債権については,既に発生しているもの,例えば毎月5万円ずつ払っていきますということが既に全部確定して発生していたとしても,株式会社の株主よりもより悪く,ここで言うと信託債権には劣後しますという御説明。

 

 

 

その理由はというと,配当規制がないというのが一つ挙げられたと思うのですね。

 

 

その配当規制がないというのはそのとおりなのですけれども,果たして配当規制に代替するものがないこととのいわば引換えが劣後ということになってしまうのかどうかというところは,論理的に必ずしも結びつかないように思うのですね。

 

 

 

(7)の①に書かれている理由というのは,信託事務に基づいて利益が行くのでしょうというのは,これは委任でも何でも同じだと思いますし,②が今の点に関係するのですけれども,そうすると,配当規制に代替するルールというのは,多分それは否認とか詐害行為取消しとか,そういうものであるように思うのですね。

 

 

②を厳格に言うと,というか,信託の受益者は,一遍も配当を受け取っていなくても,やはり劣後するわけですよね,今の御提案は。ですから,ちょっとそれでいいのか。

 

 

ちょっと観点を変えて言いますと,私が例えば多数の投資家からお金を集めて何かやろうと思ったときにどうするかということですけれども,これですと,信託で,あなたは受益者ですというのでは,ちょっと集めにくいですよね。

 

 

その後,借入れとかいろいろなことをすることが仮に許容されているとしますと。

 

 

そうすると,例えば,第1に,その集める受益債権に物上担保をつけますと。担保付社債みたいにですね。これはそういう根担保がつけられるかどうかという問題は別途ありますけれども,そもそも物上担保というものを受益債権につけられるということを前提にお考えなのか,その場合にこの優先劣後関係との関係はどうなるのかと。

 

 

 

それから,2番目の例として,もしそれがうまくいかないなら,もう受益債権ではなくて,信託債というか,社債のように信託債権として投資家からお金を集めざるを得ないですよね。

 

 

さもないと受益債権ですから劣後してしまうわけですから。それでも,もちろん,受益権はだれかが持っていて,私なら私自身が持って,関係会社か何かが持っていてという仕組みになるとしても,どうも,せっかく信託が使われる話がおかしなところに行きそうな感じがある。

 

 

 

 

 

もう1点だけですけれども,間接的な影響ですが,もしこれが信託法のルールだということになりますと,投資家保護とかそういう観点から,特別法では,結局,借入れはもちろんのこと,債務負担というのを禁止していくことになると思うのですね。

 

 

 

さもないと,投資家,すなわち受益者の債務,投資家が受け取るキャッシュフローに対する権利というのは一番劣後してしまうということになるからなのですね。

 

 

それが信託の将来にとっていいことなのかどうなのかというのはやや疑問で,何か常識的にはこれでいいように私は思うのですけれども-これでいいという意味は,受益権というのはエクイティーだというのですか,余り表現はよくないのですけれども,最後残ったものはもらえるのだというようなことでいいように思うのですけれども,果たして発生したものも含めて全部劣後しますということを言い切ってしまっていいのかというのは,もうちょっと慎重な検討が要るように思うものですから,よく考えて物を言っているわけではないのですけれども,何となく,もう少し詰めてみた方がいいような気がいたします。

 

 

 

  •  御指摘を踏まえて,また検討いたしたいと思います。
  •  それでは,清算型について,御意見……。

 

 

 

  •  7ページの補償請求権のところと,先ほどの全部義務者のところも少し関係するかと思いますので。

 

 

 

受託者が,補償等の請求権が既に発生しているようなものについて破産手続に参加することができるというのは,それでよろしいのではないかと。

 

 

強制執行等がかかったときにも,そこから取れる,そこに参加していけるような手続を講じるということだったと思いますので,同じような形でよろしいのではないかと思っております。

 

 

相続財産のときも,たしか相続人と被相続人との間で混同による消滅の例外規定が設けられていると思いますので,そういった処理も参考になるのではないかと思われます。

 

 

 

こういう求償権的な-求償権という位置づけをすること自体問題なのですけれども,更に申しますと,少し私の方で気になっておりますのは,破産手続開始後にどうなるかということで,信託財産について破産が認められ,手続を遂行するとしますと,固有財産からの弁済にどういう影響を与えるかということで,強制執行等の禁止が固有財産に対しても及ぶのかどうかという点はもう一つ問題としてあるのではないかと思われます。

 

 

 

これが及ぶとしますと,任意の弁済はどうかという問題があり,いずれにいたしましても,固有財産から破産手続開始後に弁済を受けたというような場合には,本来的には信託債務であるということからしますと信託財産が最終的に負うものだということになると,いわば求償的な話が出て,受託者の固有の債権者のためにその部分を取り返してくるというような問題が生じます。

 

 

 

 

 

そうしますと,先ほどの全部義務者のところの話にかかわってまいりますけれども,私自身は,信託というのはやはり受託者こそが法人格一つだということを強調すべきだとは思いますけれども,責任財産の独立性の面ではある程度二面を持つということを意識せざるを得ないのかなというふうに思っておりまして,およそ固有財産から破産手続開始後弁済を受けるという道が遮断されているのであれば,もうそこで問題は解決するかと思いますけれども,それが遮断されないのであれば,こういった処理が必要になってくるのではないかと思います。

 

 

 

 

それで,不足額責任主義との,民法394条型の関係ですと,本来は信託財産から取るというのが信託債権者だとすると,正に信託財産の方からこそ取れるというような形にしなければいけないはずですので,ちょっと不足額責任主義とは違うような考え方になってくるのかと。

 

 

 

それから,責任財産限定特約付の処理との均衡というのも考える必要はあるとは思うのですが,責任財産限定特約の場合は,やはり固有財産と考えられるものも含めてまとめて倒産処理をするという局面ですので,固有財産的なものに当たる,本来は責任財産であるものとないものとがあって,両方から受けてくるということ,破産手続外にある財産から受けてくるというような問題が出てこないのかなというふうに思いますので,更に慎重に考える必要があるのではないかと思います。

 

 

 

  •  その点も,御指摘を踏まえてなお検討いたしたいと思います。

 

 

 

 

 

  •  それでは,8ページの3とあります再建型の手続の整備についてですけれども,もし御意見がございましたら。

 

 

 

  •  先ほどの,再建型ではない方の破産手続とも関係するのですけれども,受益者に対してもこういった破たん処理手続へのトリガーを与えるということとの関係で,他方,信託契約の変更,受益者集会制度の導入等々,受益者については信託の将来,運命についてのある程度の意思決定権を与えて,それでいわば内部的といいますか自治的に解決する道も与え,それをむしろ広げていく方向にあると思うのですけれども,もし私の理解が間違っていなければ,例えば,約定どおりの弁済を受けられなかった受益者は,そういった信託契約の変更等の努力をするまでもなく,破たん処理手続を申し立てることができるということにもしなりますと,むしろこの再建型というのは非常に必要になってくるのではないかという気がいたしております。

 

 

 

逆に言いますと,私は,やはりどうしても,受益者に対してトリガーを引く権利を与えるというのが,これはむしろ前半の論点にかかわりますけれども,やや分かりづらいところがありまして,そうすると,これまでの受益者に対しては,単なる債権ではないので,いろいろ,受託者に対する情報権を始めとして,意思決定等に参加する権利,いわばコントロール・ライツと言われるものをむしろ拡充する方向で話を進めてきたのではないかと思っておりまして,そのときに,6ページの説明で言いますと,ここだけ債権説が非常に顔を出してきて,受益債権も債権であるということが言われているのですけれども,むしろエクイティーとデットを区別して,信託債の発行を正面から認めることとするということも一つ考えられると思いますし,もしそうしないということであれば,この再建型の倒産処理手続は非常に必要なのではないかという気がいたします。

 

 

ちょっと誤解があるかもしれませんが,むしろ御教示いただければ幸いです。

 

 

 

 

 

  •  これは,理屈で信託財産に係る再建型手続が要るとか要らないという問題ではなくて,どこまで仕組むかということだと思います。論理的にあってはいけないとか,なければならないというものではないのだろうと思います。

 

 

 

それを前提にして考えますと,まず結論から申しますと,私は,そうは言いながらこれは作る必要は余りないのではないかということなのですが,まず,再建型手続の整備の必要性というのが,事業の継続のためだということであれば,この(注11)に書いてあることが正しく当てはまるのだろうと思います。

 

 

 

実際,例えば民事再生手続でも,手続内で営業の全部又は重要な一部を非常に迅速に譲渡して事業の再建を果たしているというのが最近の倒産実務の傾向でございますので,営業譲渡を使った事業譲渡ができるのであれば,更にそれに加えて,論理的にはもちろん可能なのですけれども,そこまで仕組む,信託についても再建型手続を仕組む意味がどのぐらいあるのかなという気がします。

 

 

そんなにしょっちゅうあることなのかということですね,簡単に申しますと。

 

 

二つ目に,これは非常に細かい話ではあるのですが,6ページの(7)に書いてあるとおり,信託債権と受益債権について実体法上優先順位がついているという理解を仮に前提としますと,再生計画を決議するときに必ず組分けをしなければいけないことになります。

 

 

 

これは,民事再生の手続を作るときには,手続構造を簡易にするということで,組分けという仕組みは一切設けないという-その場の細かい例外はありましたけれども,常に組み分けが入ってくるというのは,再建型手続としては非常に重たいものになるんじゃないかなと。

 

 

あるいは,信託債権は全部満足される,100%弁済を受けるのだけれども,受益債権は100%弁済を受けないときに,そういう議決権を与えるかどうかとか,非常に細かい議論が必要になって,手続構造がいたずらに複雑になるような気がいたします。以上が第2点です。

 

 

 

 

仮に再建型まで作る必要がないのだということを前提にしますと,次のようなことを考えないといけないことになろうかと思います。

 

 

株式会社については,その営業の全部又は重要な一部を譲渡するときには株主総会決議の特別決議が必要だということになっていますが,仮に,同じような営業譲渡をする場合に受益権集会の特別決議みたいなものをを仕組むということを考えるのであれば,さっき言ったような,上の方の債権者は全額弁済を受けられるけれども第2順位は100%弁済が受けられないという場合に,議決権はどうするかと。再生法の43条ですが,代替許可みたいな仕組みまで仕組むのか。

 

 

 

早く営業譲渡をするのが大事なわけですから,そういうことを考える必要があるのか。

 

 

あるいは,完全に破産に寄せてしまって,現行の破産法だと,営業譲渡するときに別に裁判所の許可だけでできて,債務超過なのか何なのか関係なしに,支払不能だけで入った場合でもなっていますが,あるいはそういう仕切りにしてしまうのか。

 

 

後者の方が,より今の破産の制度と親近性が高いと思いますけれども。

 

 

というわけで,破産で営業譲渡を早くするということができるのであれば,それに加えて別途再建型まで仕組む必要は,論理的にはないとは言いませんけれども,低いのではないかなというのが私の印象でございます。

 

 

  •  いずれも,受益権,あるいは受益者の位置づけということともかかわっていると思いますが。

では,簡単に。

 

 

 

  •  事務局の方は,どちらかというと○○幹事と同じような発想で考えていたわけでございますが,○○幹事がおっしゃられた,トリガーを受益者に与えるということから再建型を認めた方がいいというのが,ちょっと私にはいま一つぴんとこなかったところもあるのですが,できればもう少し……。

 

 

 

 

  •  これは私が誤解しているのかもしれませんが,例えば信託債権者がいないような場合であっても,非常に優先的に組成されている受益権に対する支払いが滞ったと,そしてその支払不能が破産原因になると,その受益者は申立てをできるのではないかと理解したのですが,それはそういうことはない……。

 

 

  •  そういう可能性もあるのではないかと思います。

 

 

  •  そうだとすると,外部の者はだれも迷惑を受けていないのに,その一人の優先受益者がもう破産だと言うと,破産手続に移行することになると思うのです。

 

 

ところが,その信託全体で見れば再建させられる可能性は大いにあると,そういうシチュエーションは出てくるのではないかというのが私の認識だったのですが。

 

 

  •  恐らく,債務超過の判断は,これは先ほど少し話がございましたけれども,ゴーイングコンサーン・バリューで考えるかどうかというのも若干は影響するのかなという気がいたしますが,片や,仮に受益者についても公平弁済というのがやはり重要だということになるのだとしますと,破産は必要だというふうな……。

 

 

 

  •  ただ,そこで言われている受益者間の公平な分配というのは,何も破産だけではなくて,清算の場面でも妥当する話だと思いますので,そういう意味では,信託債権者と受益者との間の利益調整と,受益者間の利益調整との問題が二つあって,一応,私のエクイティーの理解だと,受益者の問題というのはむしろ後者の問題,受益者間の分配の公平の問題として処理されるべきではないかというふうに思いましたので。

 

もしかしたら,ちょっと誤解をしているのかもしれませんけれども。

 

 

  •  そうしますと,受益者間の公平というのはエクイティーで,受益者同士で処理すればいいというのは,もうほとんど破産は要らないのではないかというのに近いと思ってもよろしいでしょうか。

 

 

  •  いえ,破産は,もし信託債権者がいなければ,それは清算手続で,信託の清算の中で行えばいいのではないかということですけれども。

 

 

  •  よろしいでしょうか。

 

 

  •  再生手続の実務的なニーズに関しては,残念ながら網羅的な調査をしておらないので,確定的なことはお答えできませんけれども,ただ,これは内部での議論の話になるかもしれませんけれども,それほど実務的なニーズはないのではないかなということが,今のところの印象でございます。

 

 

 

 

 

それはなぜかというと,先ほど○○幹事からも御指摘のとおり,(注11)のところで営業譲渡で対処できるのかという話もありましたし,また,考えてみますに,通常,再生,例えば銀行を再生させなければいけないというときには,その従業員であるなり周りの利害関係人なりを見て,やはり社会的に再生を起こすことが必要であるというようなことがおもんぱかられるわけですけれども,このような場合,通常の場合は従業員が独自に雇われていることも余り想起されないので,そういうことをおもんぱかる必要もないのではないかということでございます。

 

 

すみれ

「最初から受託者の従業員かな。」

 

 

ただ,さきの議論の中で事業信託ということが議論されましたけれども,そこでどのような広がりがあるのか,どのようなニーズがあるのかということが次のステップで議論が出てくるかもしれませんけれども,その中で,やはり必要であるということであれば,また別だと思いますので,そこは基本的には事業信託との絡みでニーズを勘案して考えていけばいいのではないかなというふうには思います。

 

 

 

  •  それでは,よろしいでしょうか。
  •  では,続きまして,裁判所の監督と営業信託を続けて御説明いたします。

 

 

 

 

まず,第64でございますが,現行法第41条第1項で,非営業信託に係る受託者の信託事務は裁判所の監督に属する旨規定されております。

 

この条項が置かれた理由につきましては,制定当時の信託法案説明書を拝読いたしますと,「信託事務ニ付テ特ニ裁判所ノ監督権ヲ認ムル所以ノモノハ固ヨリ信託ノ本質ニ起因シ受託者ノ権限ノ大,従テ濫用ノ弊代理,委任ノ比ニ非サルヲ以テナリ」ということが挙げられております。

 

 

 

更に,「信託の制度の運用に当たっては,裁判所の監視と判断のもとに置くことにより,信託の不正な利用を抑制することをねらったものと思われる。」との立法過程に関する研究成果も見られるところでございます。

 

 

 

確かに,信託では,信託財産の所有権が委託者から受託者に移転しますので,非営業信託を裁判所の継続的な監督のもとに置くことは,信託な不正な利用の抑制や,受託者による権限濫用の防止のためには有用であるようにも考えられます。

 

 

 

しかしながら,まず,裁判所は通常,信託設定の事実を認識し得ませんので,裁判所が継続的に受託者の信託事務を監督する旨規定しても実効性があるとは言い難いですし,また,裁判所による監督の実効性を確保する観点から当事者が裁判所に対して信託設定の事実等を適宜報告しなければならないとすることは,信託の自由な利用の阻害にもつながりかねないと思われます。

 

 

 

 

そもそも,現行法が非営業信託を裁判所の監督のもとに置くとしたのは,信託の不正な目的のために利用されるなど,信託及び受託者に対する信用が低かったという制定当時の状況を反映したものであると考えられますが,このような要請は現在では相対的に低いものと考えられます。

 

 

ポリー

「信託銀行などのお陰ですね。」

 

 

そして,信託の不正な利用に対しましては,脱法信託や詐害信託の禁止等の規定の適用によって排除することができると考えられますし,今回の信託法改正においても,委託者,受益者その他の利害関係人に対して受託者の信託事務処理に対する監督是正権を付与することとしておりますので,受益者らがこれらの権利を適切に行使することによって受託者の監督は十分可能であって,これに加えて裁判所が非営業信託を継続的に監督するまでの必要性ないし合理性はなく,委任等の他の法制度とのバランスからも適当ではないのではないかと考えられるところでございます。

 

 

 

また,現行法は米国等の扱いに倣ったものとされておりますが,米国での信託に対する裁判所の関与の在り方については近時変化が見られるようでございまして,例えば統一信託法典を見ましても,裁判所は,その管轄権が利害関係人により,また法律の規定により発動される限度で信託の管理に介入することができるですとか,信託は裁判所による命令のない限り継続的司法監督に服さない旨規定がございます。このような米国での変化は,我が国の信託法の改正においても参考になるのではないかと思われるところでございます。

 

 

 

以上申し上げたような点を総合的に考慮いたしまして,今回の提案では,非営業信託に係る受託者の信託事務を裁判所が継続的に監督するとの規律を採用しない,すなわち,現行法第41条第1項の規定を削除することを提案するものでございます。

 

 

 

なお,念のためでございますが,(注)にも書きましたとおり,この提案は,信託に対する裁判所の関与を全く認めないとするものではございません。

 

 

 

すなわち,受益者らの申立権の行使に基づく裁判所の個別的な関与は認めるわけでございますが,それを超えて裁判所の一般的・継続的な監督までは認めないということを提案するものでございます。

 

 

 

 

 

続きまして,営業信託のところ,第65に移ります。

 

第65は,信託の引受行為を商行為とする現行法第6条の趣旨を維持し,商法第502条に1号を付加するのと同様の効果を有するものでございます。

 

 

 

営業として信託の引受けを行った場合には,当該引受行為はもちろん,これに基づく信託の事務処理全体が商業的色彩を帯びると考えられるからでございます。

 

 

 

営業として行った信託の引受行為が商行為とされる結果,営業として信託の引受けを行った受託者は商法第4条によりまして商人となりますので,当該受託者には商人に関する規定が適用されまして,また,その受託者がその営業のためにした行為は附属的商行為となり,商行為に関する規定が商法第503条により適用されるということになります。

 

 

 

例えば,信託報酬の支払義務,受益債権の支払義務は,商行為によって生じた債務に該当し,商事法定利率,あるいは商事時効等が適用されることになります。

 

 

なお,会社が営業として公益信託を引き受けた場合,実務上は,当該信託を営業信託と考え,商行為に当たると考えておりますが,公益法人が営業としてではなく信託を引き受けた場合には,どのような信託を引き受けた場合であっても商行為にはならず,受益債権の消滅時効等の扱いが異なるのは問題がないかといった指摘もございました。

 

 

 

しかしながら,同様のことは,同じ内容の売買等の契約を商人が行うか非商人が行うかでも生じ得るのでございまして,取引主体の違いによって結果が異なることは不合理とは言えないと考えているところでございます。

以上が,営業信託についての説明でございます。

 

 

 

 

  •  少し性格の違う問題ですので,順に御議論いただきたいと思います。

まず,「第64 裁判所の監督について」ですが,いかがでしょうか。41条1項の規定は削除すると。もちろん,一切関与を認めないという趣旨ではないということですが。

 

 

 

  •  結論に異論があるわけではないのですけれども,御説明の箇所について,2点。

 

 

 

一つは,米国の状況ということでございまして,裁判所の関与の在り方が変わってきているというのは確かだと思いますけれども,信託というのは常に一般的・継続的に裁判所の監督のもとで行われる仕組みだという性質は変わっていないのだろうと思います。

 

 

 

ただ,現実に照らして,その具体的発現の仕方に変化が出ているということだろうと思います。

 

ただ,そういう状況がそのまま日本に当てはまるかというのはまた別の問題ですので,アメリカの理解の仕方について少し留保が必要なのかなというふうに思います。

 

 

 

それから,当初の41条の規定の趣旨との関係での御説明で,信託の不正な利用を抑制することを目的としていたという点,現在ではそういう懸念はないだろうということなのですが,今まではなかったろうと思うのですけれども,他方で,信託業法の改正によっていろいろな主体が受託者として登場するということによって,むしろ懸念が復活するということも言われておりますので,この第64自体についてどうということではなく,一般的にはそういう懸念もありますので,例えば,特に個別の裁判所による監督の在り方のところでは,やはりそういう面は留意する必要があるのだろうと思います。

 

 

 

 

  •  41条1項の削除自体はいいけれども,しかし,主体の多様化にかんがみて個別の手当てを更に検討すべきだと,こういうことですね。

 

 

この41条1項の削除自体について,御異論は特にございませんでしょうか。

それでは,○○幹事の御意見を踏まえて更に検討するということで。

 

 

続きまして,「第65 営業信託の商行為性について」,いかがでしょうか。

 

 

これも特に御異論はございませんでしょうか。首を振っていらっしゃる委員・幹事の方が何人かいらっしゃるようですので……。

では,特にないようでしたら,先に進めたいと思います。

 

 

 

 

 

  •  では,続けて,第66,合同運用の方に移らせていただきます。

 

信託におきましても,信託財産の効率的な運用の見地から複数の信託契約に係る複数の信託財産について合同運用がなされておりまして,例えば,ある信託に属する金銭と他の信託に属する金銭とを合わせて第三者に利息付で貸し付けたり,あるいは収益を生ずる資産を購入し,あるいは投資目的で再信託契約を締結するなどの例があると聞いております。

 

 

現行実務で利用されているものとしては,貸付信託,合同運用金銭信託等が挙げられているところでございます。

 

 

 

まず,1でございますが,これは,いかなる要件のもとで受託者が各信託財産を合同運用できるものとするかについて,甲案と乙案の2案を提示するものでございます。

 

 

このうち,甲案は,合同運用のためには信託行為においてこれを許容する別段の定めがあることが必要であるとする考え方でございます。

 

 

この考え方は,合同運用には分別管理義務と抵触を来す面があるものととらえるために,合同運用を行うためには信託行為において合同運用ができる旨の定めがあることを要すると解するものでございます。

 

 

 

このように甲案が合同運用を分別管理義務の問題と位置づけることの根拠は,分別管理義務の趣旨につきまして,信託財産の倒産隔離を図ることのみならず,各信託に属する財産について生じた損害は当該財産のみが個別に負担すべきことを確保することにもあるととらえているところにあると考えられます。

 

 

 

そして,各信託に属する財産につきまして,これが個別運用されている場合とは異なり,合同運用されている場合には,合同運用財産について生じた損害は各財産を拠出した各信託財産が案分して負担することになりますので,損害の個別負担ではなく案分負担という結果を招くことになる合同運用は分別管理義務の例外に当たるものであると整理することになると考えられます。

 

 

 

これに対して,乙案でございますが,これは,合同運用のためには信託行為においてこれを許容する明示的な定めがあることは要しないとする考え方でございます。

 

 

甲案と異なり,合同運用をもって分別管理義務上の問題があるものとはとらえておりません。

 

 

 

もっとも,別途受託者の権限の問題については検討する必要がございますが,合同運用を行うことが受託者の権限の範囲内であることは必要というわけでございますが,受託者の権限に関しましては,かつて第5回会議で扱われました「受託者の権限について」というところで,「受託者は……信託財産の管理又は処分その他信託目的の達成のために必要な行為を行う権限を有する」という幅の広い規律を提案しておりまして,このような柔軟な権限規定のもとでは,規模の利益を追求し,リスクの平準化を図ることができるという点において,受益者の利益に資する合同運用につきましては,信託行為にあえて明示的な定めを置かなくとも,「信託目的の達成のために必要な行為」に当たる場合には,当然に受託者の有する権限の範囲内に含まれるとするのが合理的であると考えられます。

 

 

 

そこで,結論として,合同運用を行うことができるとするためには特段の規定は要しないと解するものでございます。

 

 

 

 

 

 

 

乙案が合同運用に分別管理義務上の問題がないと考えますのは,14ページの(注4)というところにも書きましたけれども,分別管理義務の趣旨は,究極的には信託財産の管理の局面において倒産隔離を図ることにありまして,信託財産を合同して処分することまで禁止する規範ではないととらえた上で,まず,各信託財産が合同運用財産について有する共有持分権,又は再信託契約に基づき有する受益権が計算上区別されていれば,倒産隔離は図られ,分別管理義務も果たされていると考えられることですとか,あるいは,合同運用は,信託財産と他の信託財産又は受託者の固有財産との場合に限らず,信託財産と第三者の財産との場合もあり得ますところ,この最後の場合,第三者の財産が入る場合については分別管理義務の問題として整理されてはいないと思われることにかんがみますと,そもそも分別管理義務の問題として整理することには疑問があると考えられることなどを理由とするものでございます。

 

すみれ

「分別管理は管理のところで必要で処分、運用のところではあまり意味がないってことか。」

 

 

以上の甲案,乙案につきまして,あるいはほかにより適切な考え方があれば,御審議をいただければと思います。

 

 

 

 

 

次に,2でございますが,これは,複数の信託契約に基づく信託ではあるものの,各信託財産が合同して運用されており,実質的な一個の信託であるとの評価が可能である場合には,一つの信託契約に基づく信託に複数の受益者が存する場合と同様の取扱いをすることが合理的である,こういう指摘があることを踏まえたものでございます。

 

 

 

仮にこの考え方が妥当としますと,実質的に一個の信託であるとの評価が可能である信託を選別するための要件はいかなるものか,あるいは,いかなる規定について一つの信託契約に複数の受益者が存する場合と同様の取扱いをすることが合理的であるのかということを踏まえつつ,このような考え方に基づく制度を設けることの当否について御審議をいただければと考えております。

 

 

最後に,3でございますが,これは,理論的には,合同運用団をもってあえて複数受益者の存する一つの信託と同視する必要はなく,あくまでもその法形式どおりに,複数の信託契約に基づく複数の信託財産,受益者の束であるという前提をとったといたしまして,その上で,実務的に,この考え方に従った場合には不都合があると指摘されている場面について,本当に不都合があり,対処すべく何らかの規定を設ける必要があると言えるのかについて検討を試みたものでございます。

 

 

 

まず,第1点の前段でございますが,これは,合同運用財産全体に関する信託帳簿の閲覧請求権を各信託の受益者に認めた場合には,信託事務の円滑な遂行の支障となったり,請求者以外の受益者の利益が害されかねず,かかる弊害に対処する必要があることにかんがみ,閲覧請求権については,合同運用団を単位とした一つの信託に複数の受益者が存するものと解する必要があるのではないかという問題指摘でございます。

 

 

 

これは,閲覧請求権を少数受益者権とする,例えば商法に倣って総受益権の100分の3以上を要するというようなことにするのであれば,合同運用団全体を一つの信託とみなすことによって分母を飛躍的に増大させることによりまして,受益権の保有要件を満たす受益者が著しく減少するという効果があると考えられます。

 

 

 

しかしながら,かつて提案いたしましたとおり,受益者の信託帳簿閲覧請求権を単独受益者権とするのであれば,結局,どのように分母をふやしましても,いずれの受益者も自由に閲覧請求権を行使できることに変わりはないので,このような考え方を維持する限りにおいては,実益の乏しい議論ではないかと思われるわけでございます。

 

 

 

 

 

また,第1点の後段でございますが,これは,合同運用団全体を一つの信託と解することができない限りは,信託帳簿を一個作成するのみでは足りず,信託契約の個数に応じた複数の信託帳簿を作成しなければならなくなるのではないかという問題指摘だと思われます。

 

 

 

 

この点につきましては,15ページの(注5)に書きましたところですが,信託帳簿の作成義務については,合同運用財産全体についての帳簿は作成せざるを得ず,他方,これを作成すれば,この帳簿をもって各信託に係る信託帳簿とすることができ,各信託ごとに更に帳簿を作成する必要はないと考えられますので,実務上格別の不都合が生ずることはないと思われるということを書かせていただいたものでございます。

 

 

 

 

 

次に,第2点は,例えば,合同運用財産につきまして,運営方法の変更,すなわち個々の信託契約における信託の変更を要する場合などを考えてみますと,合同運用団を単位とした一つの信託に複数の受益者が存するものと解すれば,受益者が複数の信託に関する規律,例えば多数決制度を導入することができて効率的ではないかという問題指摘でございます。

 

 

 

この点につきましては(注6)に書きましたが,かつて第8回会議で取り扱いました「信託行為の変更について」において提案しているところによりますと,信託行為の変更に関する方法を定めた規定は任意規定でございまして,例えば,各信託契約において,合同運用団の運用方法の変更は同一の合同運用団の受益者全員の多数決による決議に基づき行うものとするというような別段の定めを設けることによって対処可能であるようにも思われますが,このような信託行為における別段の定めに委ねることとした場合の不都合の存否も勘案して,この点はなお検討したいと考えているところでございます。

 

 

 

 

 

 

最後に,第3点は,合同運用信託の受託者が受益権を取得したとしても,現行法9条に定める受託者の信託利益享受禁止の原則に抵触せず,信託が終了しないものとする実務上の要請がありますところ,合同運用団を単位とした一つの信託に複数の受益者がいるものと説明することができるとすれば,受託者が共同受益者の一人になった場合にすぎないと解することができ,9条に違反するものではないということになって,実務の必要性にかなうのではないかという問題指摘でございます。

 

 

 

 

この点につきましては(注7)に記載したとおりでございますが,第3回会議で取り扱いました「受託者の利益享受の制限について」で提案しているところによれば,単独受託者が単独受益者から受益権全部を取得したといたしましても,相当な時期に受益権の全部又は一部を処分すれば信託を終了しないということを明らかにするのであれば,合同運用団をもって一つの信託とみなさなくても不都合は生じないのではないかと考えられるところでございます。

 

 

 

以上のような諸問題についての考え方,その他検討すべき事項があれば,あわせて御意見,御審議をお願いしたいと思います。

 

 

 

 

  •  それでは,合同運用について,大きく分けて三つの問題点があるわけですけれども,どこからでも御自由に御発言いただきたいと思います。

 

 

  •  それでは,2点。

1点目でございますが,一つ目の丸の問題でございますが,これについては,乙案を支持ということでございます。

 

 

一般に,利殖を目的とする信託の場合につきましては,合同運用を行うことが,規模のメリットとリスクの分散という二つの観点から,基本的には信託目的に合致しているということと,あと,当然,権限の範囲内であると考えられますので,信託契約に明示的な定めを置く必要はないのではないかと。

 

 

また,合同運用をしている場合については,それぞれの信託に,これは説明文の中に入っていましたけれども,共有持分権が帰属していると考えられますし,その共有持分権が計算上管理されていれば,言いかえますと帳簿により管理されていれば,分別管理義務というのは果たされているのではないかと思われますので,特段の規定は設けなくてもいいのではないかということで,乙案支持ということでございます。

 

 

 

2点目は,二つ目の丸と三つ目の丸ということでございますけれども,私の方から,第3回の本席におきまして,「第6 受託者の利益享受の制限について」という部分と,第7回目の「第49 受益者が複数の信託の意思決定方法について」というところで,複数の信託契約ではあるけれども合同運用によって一つの信託であると評価できるものについては特別の規定をお願いできないかというような主張を行わせていただきましたけれども,その後いろいろと検討しました結果,ここについては考え方を変えております。

 

 

 

 

実際,実務上懸念していましたのは,先ほど御説明がありましたけれども,受託者の利益享受の制限の部分について,新しい規律によりますと,受益権全部を取得したとしても相当期間保有できるというようなことであるとか,あとは,複数受益者の意思決定の問題につきましても,基本的には契約に書くことによって対応ができると。

 

 

逆に,書く・書かないというところでの自由度が増すというところがございますので,基本的には特別の規定を設けていただきたいというようなことを申し上げましたが,ここの部分については撤回いたしまして,こういう規定のないような形でお願いできないかということでございます。

 

 

すみれ

「撤回だ。」

 

 

  •  ほかに。
  •  一番最初の甲案,乙案のところですけれども,これは甲案の方に賛成いたします。

 

例えば,受益権の販売という形で多数の人からお金を集めるような場合を想定しますと,この受益権を買うという立場からすれば,買う段階でそれを買うかどうかを判断するわけですから,その段階では,信託行為で,将来はこういう規模でやりますよとか,これとこれが一緒になる可能性がありますよとか,そういうのが明示されていないと判断のしようがない。

 

 

受益権を買った後で,それが知らないところで,別のところと合同でこうやってこんな規模になっているという,そういう全くそれに対するリスクを負担する覚悟のないリスクがかぶってくることもありますので,信託行為の明示が必要と考えます。

 

 

 

 

 

 

  •  今,甲案,乙案,それぞれ意見が出たわけですが,ほかにいかがでしょうか。

 

 

  •  質問なのですが,仮に甲案となった場合に,例えばその甲案のとおりに履践しなかった場合の効果というのはどうなるのでしょうかということです。

 

 

 

本件に関しては,ちょっと私の意見はないわけでして,ただ,実務においては信託の場合は書いているというわけですので,まあどちらでもいいのかなというふうには思います。

 

 

ただ,実際に○○委員がおっしゃったとおり,いわば投資家保護の観点もありますし,他方,自由な規律を求めるために,こういうものはあえて必要ない,必要なときに入れるべきであって,ないしは信託業法であるとか投資ルールの中で決めるべきであるという考え方もあろうと思うのですけれども,それを考える前に,そもそも,これを置いたとして,それを守らなかった場合の効果ということについてどうお考えなのかということをお尋ねしたいと思います。

 

 

 

  •  今のは,甲案の考え方をとった場合に,その違反があった場合ということだろうと思います。

 

 

甲案というのは,結局,信託行為に定めを置きましょうというだけしか書いておりませんが,一応,ここに掲げましたところでは,その背景にあるのは,基本的には分別管理義務の問題が控えているからであるという考え方だろうかと思います。

 

 

その考え方によりますと,これは結局,分別管理義務違反そのものでございますので,分別管理義務に違反した状態で損害が生じたときにどういう責任を負うのかと。

 

 

今の信託法ですと,28条に俗に無過失責任といわれる規定があったかと思いますが,そういう規定がかかるような状態になるというようなことではないかと思います。

 

 

 

あるいは,全く逆に,乙案のように権限の問題にも関係するのではないかという考え方も一応あり得るのかなという気はいたしまして,つまり,合同運用の権限がありますよと書かない限りは合同運用の権限はないという趣旨であるとすると,結局は権限違反の問題になりますので,取消しとか何とかという話になるのかなと。

 

 

 

恐らく,○○委員がおっしゃったのは,どちらかというと権限の問題で整理した方が話はつながりやすいのかもわかりません。

 

 

それはよく分かりませんけれども,分別管理の問題というふうに考える,あるいは権限の問題として考える,一応両方あり得るのではないかなというのが……。

 

 

 

 

 

  •  そうしますと,私なりの整理をすると,一見甲案の方が受益者保護にたけているというふうに見えたとしても,今さっきの御説明によれば,甲案によれば受託者に対する損害賠償請求権にとどまって,本質的な,こんな信託は認められないという取消しまでは認められないと。

 

 

 

むしろ乙案の方が取消しができるということである-もちろん,いろいろな場合があって,どっちがいいか悪いかということは一概に言えませんけれども,乙案をとった場合に取消しができるという余地を残すという意味で,乙案の方がいいという考え方もあるという,そういう整理になるということですか。

 

 

 

  •  一概にどうだというのは,今おっしゃったように言いにくいところではありまして……。

 

 

分岐点としては,まず,権限違反あるいは権限の問題として合同運用をとらえるかどうか,ここで一つ分岐点がございますし,更に分別管理上も問題があるかと,二つ分岐点があって,ここでは,もともとほかの研究会がございましたが,そちらの研究会の方で指摘された考え方ということで一応二つ挙げておりますが,分岐点は2掛ける2で4になるのかなという気はいたしますけれども。ですから,一概に甲案なら,乙案ならと言うと,ちょっと語弊があるかもわかりません。

 

 

 

  •  確かに2種類の問題があって,それから更に,結果としてはどちらの方がどういう利益を保護できるかということとかかわってくるのだと思いますけれども,今の○○委員の御意見の中で,いずれにしても信託行為に書くのだから実務では余り影響ないというふうなことだったのですが,その点は,○○委員はいかがでしょうか。

 

 

 

  •  基本的にはほとんど書いていると思いますので,実務上の影響はないと思うのですけれども,基本的な合同運用についての考え方というところからすると,やはりそういう-例えば利殖ということを目的にする限りにおいては,基本的に,それこそ規模を追求して,そのメリットと,リスクを分散するというような観点からすると,まあいい方向に行くのだろうと思いますし,そういう権限はそもそもあるのだろうということですので,あえてそこは書く必要がないのではないかということと,あと,合同運用の状態というもの自体を考えたときに,共有というものは今まで余り考えられてこなかったのではないかと思うのですけれども,共有状態というもの自体がそもそも認められると,そういうことを分かっていただきたいというか,そういう状態にしていただきたいというようなことで,乙案支持ということを申し上げた次第です。

 

 

 

  •  そうすると,実務上の便宜というよりも,むしろ考え方として認めてほしいということですね。

 

 

 

 

 

  •  私も余り実益のあるコメントではないのですけれども,どちらをデフォルトにするかという問題で,実際は余り困らないでしょうということだと思うのですけれども,考え方ということで1点。(注2)に関連するのですけれども。

 

 

信信間を合同運用する場合はどうか,そして,しかし固有財産と合同運用するというのは,これは(注2)だけを読みますと,その合同運用を続けていった後の状況次第では忠実義務の問題が生じますよというふうに読めるのですけれども,固有財産と合同運用するということ自体がやはり忠実義務の問題ではないかと思うのですね。

 

 

したがって,例えば乙案のような考え方をとる場合には,もうこれは忠実義務の例外規定であって,合同運用に関する限りはこの法律の規定がそれを認めているのだという理解にすべきではないかと思います。

 

 

 

甲案をとる場合には,ここで言う信託契約に書いた,信託行為に書いたということをもっていわば忠実義務を解除するというふうに解釈できますので,そこの問題はないと思うのですけれども。ちょっとそういう点が考え方のレベルであるように思います。

 

 

 

 

実際どうするかは,運用目的の場合には,実際問題としては合同運用しないと動かない話だとは思うのですけれども,デフォルトルールがどちらであるにせよ,恐らく実益はないので,そこは実務的に詰めていただければと思います。

もう1点,ついでによろしいですか。甲,乙以外で。

 

 

 

 

 

これは○○委員がおっしゃったことで,私,過去,大学の授業等で欠席してしまっていますものですから,大きな誤解をしているかもしれないのですけれども,先ほどの○○委員の御発言を伺っていますと,分割して多数の受益者がいる場合には,多数決というのでしょうか,前の方でやったようなルール,現在の信託法ではなくて,新しいルールを設けた方がいいけれども,ここで問題になっているような場合,すなわち信託契約が複数ある典型的な場合は不要ですと,なぜならばそれは信託契約で定めることによって対応できるからですというふうに聞こえたのですけれども,私がこの第66を読ませていただいた限りにおいては,二つ目の丸のような提案というのはどのように考えるべきかというか,提案ではないと思うのですけれども,確かに,14ページに書かれたように,どういうように線引きをするかというのは,仮にこういうルールを設けるとすると物すごく難しい問題はあると思うのですけれども,ただ,もし○○委員がおっしゃったようなことであれば私も心配はないのですけれども,本当にそうなのかというのがちょっと心配なのです。

 

 

 

つまり,どういうことかというと,多数決等で定めてよろしいというのは,受益者が複数いるときに,その過半数とか3分の2とかで決めてもいいですということを議論しておられたのではないかと思うのですけれども,そうだとすると,今は受益者以外の人の意思で決めますというのがここの問題になるのですね。

 

 

例えば,100本信託契約がある場合に,受益者は一人なのですけれども,1本1本は,あなたの意思では決まりませんよと。

 

 

物事を決めるときには,ほかの67人か何かの意思で,内容はそれぞれいろいろありますけれども,あなたの信託契約も決まりますよということをここの信託契約で決めていいということを前提での御発言だと思うのですけれども,もしそうであれば私も心配はないのですけれども,果たしてそうなのかはちょっと疑問です。

 

 

現在,例えば信託約款の変更というのが,兼営法の5条の3に基づく手続等ありますけれども,これは,1本1本あって,しかし集団的信託約款というか内容は全部同一であって,本来は一人一人の同意があって変更すべきものを特別法でああいうルールを設けているにすぎないと思うのですね。

 

 

 

ですから,信託行為で書いておけば,その受益者-一人しかいないわけですけれども-の割合に関係なく,ほかの人の意見で決めますということも議論されて,そういうものをもって多数決ということであったならばいいのですけれども,○○委員がおっしゃった前提のところが確認されているかどうかが,もし私が欠席していたときに議論されていたのだとすれば

 

 

 

 

 

 

 

 

申し訳ないのですけれども,一応発言させていただきます。

 

 

  •  今,○○委員がおっしゃった,ほかの信託の受益者の同意というようなことも別の信託の信託行為で書けるかということでございますが,事務局の方のこれまでの提案では,例えば信託行為の変更などの局面でも,第三者,あるいはもちろん受益者でもいいですけれども,第三者に対して変更権を与えるということも信託行為で定めることができると。

 

 

 

 

そういうことからいたしますと,第三者,例えば別の信託の受益者,A,B,Cという同じような運用をしている他の受益者の意思も合わせて信託行為の変更を定めることができるというように信託行為で定めれば,そういうことも許されるのではないかと考えられまして,結局,信託行為でそのような権限を与えられる者が,同一信託の中でなくても,外部の者であっても,信託行為でそういう授権はできるというところは,信託行為の変更一般の場合であっても,このような合同運用の他の信託がいる場合であっても,同じように信託行為で決められるのではないかということで,それとの並びで,我々としては,ある信託行為で他の合同運用に供されている信託財産の受益者との共通の意思決定で定めることができますというような規定を設けることは,可能ではないかと考えているところでございます。

 

 

 

  •  もう1点,先へ進めて,例えば利益相反行為があるものに同意をするような場合というのはどうなんでしょうか。

 

 

信託行為に,他の受益者の-他のというのはどう特定するのかよく分かりませんけれども,100本あるうちの他の67本の者-全部均等ではありませんけれども-が同意すれば,それで結構でございますというようなことでよろしい……。信託行為の変更は分かりましたけれども。

 

 

 

 

 

  •  ○○委員が今おっしゃった点に関しましては,これまでの部会での議論の状況について申し上げますと,少なくとも信託行為の変更だけでございましたので,忠実義務違反に対する同意というところはもちろん任意規定でという話はございますけれども,そこのところでの信託行為による別段の定めがどこまでという議論は恐らくまだこの部会ではされておりません。

 

 

 

 

  •  そうすると,もうちょっと考えなければいけないということかと思いますけれども,より一般的に言えば,まだいろいろな場合がありますよね。

 

 

 

今,二つ典型的な場合を挙げただけでして。多数決で決める必要があるのではないかと。

 

 

複数の場合に,分割されている場合に。ですから,そうだとすると,もうこっちは何も要らないよと○○委員のように言い切ってしまっていいのかどうかが私はかえって心配になってきまして……。

 

 

 

もうちょっと,幾つかのケースというか,ひょっとするとすべてのケースについて詰める必要があるのではないでしょうか。どうも信託行為の変更は不要そうなのですけれども,今の御説明を伺いますと。

 

 

 

  •  恐らくおっしゃるとおりで,受益者が同意をして意思決定をしますというようなのは幾つかパターンがございますし,あるいは委託者が入ったりというのを他のところで網罪的に整理しておりますので,そのあたりについてということかなというふうに思います。また検討するということかと思います。

 

 

それから,今,こちらの考えとして申し上げましたけれども,まだ信託行為の変更の部分についても方向性が決まったということではもちろんございません。

 

 

 

  •  いずれまた変更のところでも御議論いただけると思いますが。
  •  今の点に重ねて,一つ質問なのですが。

 

 

そこで前提にされていますのは,実質的に1個の信託であるとの評価は可能であるということで,そして,そのような信託を選別するための要件を検討する必要があると。

 

 

 

正にそのとおりなのですが,必要がある,どう考えましょうということをお聞きになっているだけだろうとは思うのですが,大体どういうものを想定されているのかというのがちょっと分からないもので,議論のしようがないということもあろうかと思います。

 

 

 

考え方といたしましては,いろいろあるだろうとは思うのですけれども,一番問題が生ずるかなと思いますのは,客観的に見て何か基準を立てて,これは同一だから1個のものとして扱うというのが何か外からふってわいてくる,それによって,個々の受益者としては,自分は1本だと思っていたところが,まとまった扱いを受けることになると。それが,今の○○委員の一番大きい問題を生む原因なんだろうと思うのですね。

 

 

 

ですから,やはり,何が1個の信託であると評価するかという,その規準を語らないと進まないんじゃないかなという気がいたします。

 

 

何か想定されているものがあるならば,お教えいただきたいですし,それも全部オープンなのだということであれば,今後の課題かなというところですが。

 

 

 

  •  具体的な例としては,ここの2のところに,例えば貸付信託とか合同運用金銭信託と,こういう実務でやっているものが典型的に想定しているものでございますが,こういう例は例といたしまして,ではどういう要件を設けるかというのは特に想定しているものはございませんで,そこについてオープンに議論をしていただければという趣旨でございます。

 

 

 

  •  今の点につきましては,私自身は,契約に分かるように書いていればそれがそうなんだろうなというふうに思っていたのですが,そういうことでもないのでしょうか。

 

 

例えば貸付信託であってもそうですし,合同運用でもそうですけれども,それは契約があって,その契約に入ってくる人からすると,ある一定の範囲内のものは一つの運用団として運用されるのだろうなということが分かりますので。私はそんなイメージでいたのですけれども,そういうことではないのですか。

 

 

  •  逆に言うと,信託行為に書いていないとだめだということですね。

 

  •  はい。

 

 

 

 

 

 

  •  恐らくそういう切り口も-つまり,結局のところ当事者がどう思ったかにかからしめるという考え方かと思いますが,そういうのもあるのではないかという気もいたしますが,それは結局のところ,実は一つの信託であるという契約を結ぶのと変わらないか,あるいは,この2で言いますと,この考え方自体は,以前御指摘を受けてというところはございますけれども,当事者が1個の信託になりますというふうに書かなくても,一つの信託であるという扱いをすることに合理性がある局面というのは多いのではないかということでこういった発想が出てきているんじゃないかなという気がいたしますので,そういうふうに解しますと,当事者がどう書いたというよりは,先ほど○○幹事がおっしゃったような,外部的に客観的要件を決めてという方が,何となく発想自体からはなじみがあるのかなという気はいたします。

 

 

この提案をされる方からすればということかと思いますが。

 

 

  •  今の点に関連して。

 

 

余り細かい話はどうかと思うのですけれども,私も今の点は気になっていまして,もし線を引くとすると,合同運用だから特別だということなんですよね。

 

 

 

そうすると,それを合同運用しますと書いてあれば,実際にされなくてもこの中に入ってくるのか。

 

 

それから,乙案なんかをとると,仮に何も書いていなくても,勝手にといっては何ですけれども,必要の限りで合同運用できるわけですから,これは書いてあるものを基準にすることはできないわけですし,仮に一部だけ書いておくこともできるわけですから,やはり書いてあるものを基準には恐らくできない。

 

 

基準にしていいというルールを書けばいいのですけれども,書かない限りにおいては,現在提案されているような形での線引きは恐らくできないということだと思うのです。

 

 

 

それから,全部書いたところでということだけで決められるかというと,これも,横の運用もあれば,並列的なものと,それから縦の再信託を含めての直列的なものもありますので,これまた書き方によってなかなかややこしい問題が出てくるような感じもするのですね。

 

 

 

他方,もう実態でというのは,もうもともとの発想が,これは実態が合同運用ならそうじゃないですかという,実質から出発した提案だと思いますから,その意味では全く正しいのですけれども,それを法律にどう書くかという非常に難しい問題があるものですから,そうすると,どうしてもある程度,信託契約に書いてくださいというテクニックを使うとか,何かをやはり経由しなければいけないという,そういう問題だと思います。

 

 

 

何か,全然意見もなくて,問題の所在だけ言っていて,大変申し訳ないのですけれども。

 

 

それで,多数決のところの資料を拝見しますと,表があって,前の方の資料ですけれども,部会資料7か何かで,やはり,「多数決による意思決定の可否」が「可」と書いてあるのがたくさんありますよね,ほかにも。

 

 

先ほどの例以外にも。ですから,例えば信託の併合・分割の合意権,受託者の辞任に対する承諾権,受託者の解任…… 。

 

 

私,表だけしか見ていませんので,何か間が抜けているかもしれませんけれども。ですから,全部やっていかないとまずいんじゃないでしょうかね。この合同運用の場合について今の問題をどう考えるかということを検討するためには。

 

 

 

 

 

 

  •  そうですね。更に具体的に,できるだけケースをすべて網羅するような形で検討するということが必要だろうと思いますし,それはまた今後,引き続き検討するということになると思います。

 

 

 

  •  1点だけなのですが,当事者意思の問題が出ておりますので,一言だけ申し上げますと,当事者意思が合同運用にあったからといって,複数受益者の規律に関して適用されるという当事者意思があるというふうには言えないわけであって,合同運用されるという意思が,定型的に,すべてのものを一緒に持ってくる意思を持っているとは言えないわけですので,結論から申しますと,すべてのことについて書かないとだめなんじゃないかと思うのですけれども。

 

 

 

  •  実体的にどういうふうに切るかということと,それから,それが外から見たときに明確に区別できるかと,多分,論理的には2種類あると思うのですが,それが実はもう切れないかもしれないということでしょうか。

 

 

 

この甲案,乙案について,それぞれ御意見が出ておりまして,実務的にはそれほど変わらないかもしれないけれども,しかし投資者保護というようなことを考える必要があるのではないかと。

 

 

更に,忠実義務との関係,分別管理との関係を検討すると。更に,この一つ目,二つ目の丸を通じてより分析的に考えていくべきだというような御意見をいただいております。

 

 

 

15ページに,具体的な問題として,信託帳簿の閲覧等々についての事務局からの質問もあるわけですが,もしこの点について御意見があれば。

 

 

 

あるいはほかの点でも結構ですけれども。もう時間が近づいておりますから,今日は合同運用までしかできませんけれども。

 

 

 

  •  もう1点だけ,よろしいでしょうか。

かねがねから,私,疑問に思っていた点を,ちょっと今の点に関係するので,簡単に申し上げさせていただきたいと思います。

 

 

今回,信託法の改正の方で手当てがされるのかもしれないのですけれども,それは信託業法とか-信託業法も今度変わりましたけれども,この部分は変わってないと思うのですけれども,兼営法とかがある部分でして,受託者-今で言えば信託銀行ですけれども-が合併をしたり分割をしたりする場合なのですけれども,こういう合同運用,例えば合同運用金銭信託が行われていたとしまして,そこで一人が文句を言うとどうなるかということがありまして,これはどうもよく分からないのですね。

 

 

 

 

よく分からないというのはどういうことかといいますと,信託法の合併というのは解散と同じ扱いに現在はなっている。

 

 

受託者の更迭が起きるかどうかということなのですけれども,業法の方は特別規定になっていまして。ですから,原則は,引き継がれると。

 

 

A信託銀行さんがやっていた合同運用金銭信託は,A信託銀行がB信託銀行と合併すれば,B信託銀行が存続会社だとしますと,それはB信託銀行に引き継がれるというのが普通の,そういうふうに規定は書いてあるのですけれども,ただ,問題は,その中で一人の人が合同運用金銭信託で反対したらどうなるかというと,よく分からないのですね。

 

 

 

すみれ

「今まで反対した人はいなかったんだね。」

 

 

どうもその部分についてだけ受託者の更迭-今の言葉で言うと更迭というか,交代と言ってもいいと思いますけれども-が起きるというふうに読まざるを得ないのか。

 

 

しかし,それは余り現実的でないことは明らかですよね。1,000人いて,999人の部分についてはB銀行が引き続き受託者でございます,しかし残りの一人の分については,一体どうするのか知りませんけれども,新しい受託者を選ぶのか何か,とにかく合同運用しているからです。

 

 

 

 

 

これはちょっと例として申し上げただけで,そういう場合も,契約であらかじめ決めておくことによって対応できるということであれば誠に結構だと思うのですけれども,もしそういう問題があるとすると,その線の引き方は非常に難しいのですけれども,少なくとも非常に典型的な合同運用の場合-というのでしょうか,うまい表現ができませんけれども-については,やはり何らかの知恵がないと,実際は分からないまま推移するということになるのではないか。

 

 

そういう意味ではちょっと改善が必要なのではないかと思います。ひょっとすると特別法の方の問題なのかもしれませんけれども。

 

 

 

  •  ほかにございませんでしょうか。

それでは,これで閉会いたします。

 

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すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。三遊亭圓窓師匠、子別れ聴きました。」

 

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