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2016年加工編   法制審議会信託法部会 第8回会議 議事録
2016年01月16日

2016年加工編

法制審議会信託法部会

第8回会議 議事録

 

 

 

第1 日 時  平成17年1月14日(金)  自 午後1時00分

至 午後4時44分

 

第2 場 所   法務省第1会議室

 

第3 議 題

信託法の見直しに関する検討課題(5)(続き)について

信託法の見直しに関する検討課題(6)について

 

第4 議 事   (次のとおり)

 

 

 

議    事

 

  •  それでは,時間になりましたので,法制審議会信託法部会を開催したいと思います。

 

 

すみれ

「平成17年か。まだ生まれてないや。」

 

 

どうもお忙しいところお集まりいただきまして,ありがとうございました。

 

(関係官の異動紹介省略)

  •  本日は,具体的な議題に入る前に,事務当局の方から,当部会の審議スケジュールの変更について皆様にお諮り申し上げたいと思います。

 

当部会の審議スケジュールにつきましては,昨年10月1日に開催されました第1回会議の冒頭におきまして,事務当局より,信託法の改正についての関係法案を本年の臨時国会に提出することを目途として,本年2月中に要綱試案を取りまとめた上でパブリックコメント手続を行い,その結果も踏まえて,本年7月までに要綱案を決定すること等をお諮り申し上げて,部会の御承認をいただきました。

 

 

その後,当部会におきましては,このスケジュールに基づきまして,昨年は合計7回にわたり会議を開催いただきまして,多岐にわたる論点について,順調かつ精力的に御審議をお進めいただいてきたところでございます。

 

 

もっとも,今般の信託法の全面改正に当たりまして検討を要する事項は,これまでの御審議からも明らかなとおり,極めて複雑かつ多岐にわたるものでして,実務界に与える影響の大きさにかんがみましても,拙速に陥ることなく,引き続き慎重かつ綿密な御審議をいただくことが適当であると考えております。

 

 

そのほか,公益法人制度の見直し状況や関係法令の整備の必要性などにもかんがみまして,事務当局といたしましては,当初の審議スケジュールを改め,信託法の改正についての関係法案の提出時期につきましては,平成18年の通常国会を目途としたいと考えております。

 

 

なお,このようなスケジュールの変更に伴いまして,当初のスケジュールでは本年3月に行うこととしていましたパブリックコメントの手続につきましては,私益信託部分を中心として本年6月ごろに行うこととし,その後も私益信託部分を中心に審議を進めまして,他方,公益信託部分につきましては,公益法人制度改革における作業の進捗状況をも踏まえまして,本年の秋以降に本格的な審議を行っていただくことを予定しております。

 

 

また,当部会における信託法改正要綱案の決定は本年の年末か年明けに,法制審議会総会における要綱の決定,法務大臣への答申は,来年2月ごろとなることが見込まれるところでございます。

 

 

 

最後に,部会の開催頻度につきましては,これまでも月2回の審議をお願いしまして,相当の御負担をおかけしているところでございますが,信託法の改正項目が相当多数に上ることが見込まれることにかんがみますと,今後も差し当たり毎月2回の割合で隔週金曜日に部会を開催する必要があると考えております。そこで,当部会のとりあえず本年7月までの具体的なスケジュール案を,本日席上配布させていただきました。

 

 

すみれ

「月2回って結構な頻度だ。お疲れ様でした。」

 

 

なお,具体的な審議事項及び本年9月以降のスケジュール案などにつきましては,今後の審議状況等を踏まえつつ,改めて提案申し上げていくこととしたいと存じております。

 

 

委員・幹事の皆様には引き続き多大な御負担をおかけすることとなりますが,よろしくお願い申し上げたいと存じます。

以上のとおり,お諮り申し上げます。よろしくお願いいたします。

 

 

 

  •  そういうことですので,半年延びたというようなところがありますので,大変でございますが,よろしくお願いいたします。

ちなみに,9月以降の日程についてはこれから具体的に決まっていくのだと思いますけれども,曜日は大体金曜日というふうに理解してよろしいですか。

 

  •  はい。

 

  •  皆様のいろいろな日程調整などあると思いますので,曜日は大体金曜日を中心とするというふうに御理解ください。

 

それでは,ここで何か御質問等ございますでしょうか。--よろしいですか。

それでは,本日の審議に入りたいと思います。

今日も幾つかのセッションに分けて審議していただきたいと思いますので,その分け方等につきましても,○○幹事からお願いいたします。

 

 

  •  本日も,大きく四つに分けて議論させていただきたいと存じます。

まず最初に,前回積み残しました受益権の譲渡,有価証券化,消滅時効についての御審議をお願いします。

 

 

2番目に,信託行為の変更,併合,分割につきましての御審議をお願いしたいと存じます。

 

 

3番目に,反対受益者の受益権取得請求権についての御審議をお願いしたいと存じます。

 

最後に,信託の終了原因と信託の清算についての御審議をお願いしたいと存じます。

 

 

なお,本日は所用がございまして,5時より少し前に終わるように見込んでおりますので,どうぞ御協力をお願い申し上げます。

 

 

  •  それでは,第1セッションからお願いします。

 

 

 

 

  •  それでは,早速,「第52 受益権の譲渡について」というところから御説明を申し上げたいと存じます。

 

 

現行法上,受益権の譲渡に関する法律関係は明確ではございませんが,学説上は,受益権は指名債権に準ずるものと理解した上で,その譲渡性を原則的に承認し,対抗要件についても指名債権に準ずるものと解する見解が有力でございます。

 

 

すみれ

「指名債権に準ずるものか。」

 

 

もっとも,受益者は権利のみならず補償債務や報酬債務をも負担し得べき地位にあることから,このような特殊性にも配慮しつつ,受益権の有価証券化に関する規律を整備する前提としても,受益権の譲渡に関する一般的な規律を明らかにすることが適当であると考えるものでございます。

 

なお,以下におきましては,受益者が信託行為に基づいて有する権利義務の総体としての地位を「受益権」ということとし,他方,受益者がかかる受益権に基づいて信託の利益を受ける債権を「受益債権」と呼んで区別することとしております。

 

 

 

まず,1でございますが,これは受益権の譲渡性に関する提案でございます。

 

 

1番目として,受益者は原則として受益権を自由に譲渡できること,2番目としまして,受益権の譲渡については受託者の承認とか承諾は必要としないこと,3番目に,ただし,受益権の譲渡がその性質に反するとき,信託行為に受益権の譲渡禁止の特約があるとき,あるいは受益権の譲渡が信託目的に反するときには,例外的に受益権の譲渡ができないことなどを規律したものでございます。

 

 

ポリー

「家族信託では、信託行為の中で譲渡制限を付けます。」

 

 

次に,2でございますが,これは,受益権譲渡に関する対抗要件につきましては,ゴルフクラブ会員権の譲渡に関する判例なども参考といたしまして,指名債権の譲渡に関する民法467条の規律に準じまして,受託者に対する通知又は受託者の承諾をもって受託者対抗要件とするとともに,確定日付のある証書による通知又は承諾をもって受託者以外の第三者対抗要件とするものでございます。

 

 

 

 

次に,3ですが,これは受益権譲渡における受託者の抗弁事由に関するものでございまして,受託者は,通知又は承諾があるまでに譲渡人たる旧受益者に生じた事由をもって譲受人たる新受益者に常に対抗できることとし,通知はもちろん,異議をとどめない承諾にも,民法468条のような抗弁事由喪失の効果を持たせないとするものでございます。

 

 

 

次に,4でございますが,これは,受益権の譲渡に受託者の承諾を要しないこととしたことのいわば見返りといたしまして,受託者対抗要件たる通知又は承諾までに既に旧受益者に発生していた補償債務又は報酬債務につきましては,受益権の譲渡後も譲渡人が譲受人とともに併存的に債務を引き受け,弁済の責任も負うことを原則といたしますとともに,旧受託者の債務の負担につき信託行為に別段の定めのある場合には,受託者は,善意の譲渡人に対してはかかる特約に基づく不利益を負わせることはできないとするものでございます。

 

 

 

なお,提案では,通知又は承諾があるまでに生じた債務につき併存的責任を負うということをデフォルト・ルールとしておりますが,例えば債務の発生直前に受益権の譲渡がなされる場合などを想定しますと,受託者保護の観点から,例えば通知又は承諾があるまでに生じた原因に基づく債務,あるいは通知又は承諾後一定期間内に生じた債務のようなものにつきまして併存的責任を負うことをもってデフォルト・ルールとすべきであるか,それとも,受益者の債務はせいぜい二次的債務であることや,受託者としては譲渡制限特約や併存的責任を広げる特約で対処できることなども考えますと,デフォルト・ルールとしてそこまで併存的責任を広げることはやはり適当ではないか,いろいろな考え方があり得るところでございますので,御意見があれば是非とも御教示を賜れればと存じます。

 

 

 

 

 

なお,以上はいずれも受益権の譲渡に関する規律でございますが,一般の契約におきましては契約上の地位の移転と契約の一部である指名債権部分の譲渡とが別個に観念されますように,受益権の譲渡とは別に,受益債権の譲渡を観念すべきかについて検討を試みましたのが,44ページ以下の5の記述でございます。

 

 

 

すみれ

「受益権が契約上の地位の移転で、受益債権が契約の一部である指名債権部分か。」

 

 

ここでは,考え方の一例といたしまして,甲案と乙案とを併記しております。

 

このうち,甲案でございますが,これは,一般の契約を類推しまして,受益権が契約上の地位,受益債権が契約に基づく指名債権に相当するものと考え,受益権の譲渡とは別に,受益債権の譲渡のみ行うこともできると考えるものでございます。

 

 

なお,この考え方のもとにおきましても,受益債権の譲渡の範囲には制限がないとする考え方と,個々の受益債権のすべて,あるいはこれに相当する受益債権の総体を譲渡することは,受益債権を有しない受益者を認めることになるから許されないとする考え方とがあり得るところでございます。

 

 

 

 

これに対し,乙案でございますが,これは,株式についての考え方を類推いたしまして,受益権が株式に,受益債権が基本権たる配当請求権と支分権たる具体化した配当請求権に相当するものと考えまして,具体化した支分権たる受益債権を除いては,受益債権の譲渡のみを行うことはできず,常に受益権の譲渡として行う必要があると考えるものでございます。

 

 

 

この点につきまして,資料47ページの(注6)におきましては,更に折衷的な考え方も示させていただいておりますが,受益権の譲渡と受益債権の譲渡の関係については,譲渡のみならず,差押えの局面におきましても問題となることが考えられますので,条文化の要否はともかくといたしまして,考え方をいかに整理すべきかにつきまして御審議をいただけると有り難いと存じます。

以上が,受益権の譲渡についての提案でございます。

 

 

番人

「信託行為で、受益権の譲渡に制限がついている場合は、信託目録に記録しておく必要があるね。非公開会社みたい。」

 

 

続きまして,第53の受益権の有価証券化につきましての提案に移らせていただきます。

 

 

資産流動化目的での信託など,信託を利用した金融商品の市場の活性化のためには,受益権の流通性を高める必要があるとの観点から,貸付信託法,投信法,資産流動化法などの特別法のみならず,一般法である信託法におきましても受益権の有価証券化を認める規定を設けるべきであるということが指摘されております。

 

 

そこで,必要的にではなく,あくまでも信託行為に定めた場合ではございますが,受益権についての有価証券--すなわち受益証券でございますが--を発行できることとした上で,受益証券の類型,譲渡の方法及び効力,受託者及び第三者への対抗要件などにつきまして規律の整備を図ろうとするものでございます。

 

 

 

まず,受益証券の法的性質につきましては,権利の流通性を高めるという目的から,いわゆる講学上の無記名証券とすること,その上で記名式と無記名式の双方を発行できるとすること,株式と同じく有因証券でありまして,その表章する受益権の内容は証券の記載ではなく信託行為によって定まること,また,無記名証券であるという性質にかんがみまして,受益権の譲渡には譲渡の合意とともに受益証券の交付を要すること,受益証券の所持人にはいわゆる資格授与的効力が付与され,善意取得を認めること,以上につきましては第2回会議でも御説明したとおりでございます。

 

 

また,法律関係の複雑化を回避すべく,証券化された受益者の地位が譲渡された場合には原則として委託者の地位も移転いたしますが,委託者の地位を固定し,受益権のみを流通させるタイプの信託も考えられますので,信託行為をもってこの原則が適用されないものとすることも可能としていることも,第2回会議において御説明したところでございます。

 

 

 

 

そこで,以下におきましては,第2回会議以降,事務当局におきまして更に検討を進めた事項につきまして,2点,御説明を申し上げたいと存じます。

 

 

まず第1は,資料の5及び6に記載しておりますとおり,受益者名簿の作成の要否及び受益証券の譲渡の対抗要件につきまして,報告書に記載しておりました案を甲案といたしまして,新たに乙案というものも提示した点でございます。

 

 

 

 

 

従来の甲案でございますが,これは,記名式の受益証券については株式に類似した取扱いをするものでありまして,無記名式の受益証券については無記名社債に類似した取扱いをするものでございます。

 

 

具体的には,記名式についてのみ受益者名簿の作成を要するものとした上で,対抗要件につきましては,受託者との関係では,記名式については受益者名簿の記載又は記録により,無記名式につきましては券面の占有によるものとし,他方,第三者に対しましては,記名式,無記名式を問わず券面の占有によるとするのが,甲案でございます。

 

 

 

これに対しまして,乙案でございますが,これは,記名式,無記名式いずれについても受益者名簿の作成を必要とした上で,対抗要件につきましては,受託者に対しては,記名式,無記名式を問わず受益者名簿の記載又は記録によるものとし,他方,第三者に対しましては,記名式につきましては,受益証券の占有のほか,券面への氏名または名称の記載を要するものとし,無記名式については券面の占有によるものとするものでございまして,資産流動化法の174条1項・2項と同様の取扱いをするものでございます。

 

 

 

 

この乙案というのは,受益者に対しましては,信託の類型を問わず,受託者に対する各種の監督権能や信託行為の変更・信託の終了に関与する権限が認められていることにかんがみますと,その権利行使の機会を確保することを重視して,記名式,無記名式を問わず,受益者名簿の作成を要するとするものでございます。

 

 

 

 

 

これに対し,甲案でございますが,これは信託の類型によって,例えば投資信託など,基本的には配当を受領するにとどまり,それ以上に法律上認められている各種の権利の行使が実際にされることは少ないと考えられる社債タイプの信託商品と,配当を受領する以外に権利の行使もある程度想定できる株式タイプの信託商品とが考えられること,常に受益者名簿の作成を要するとした場合の受託者の負担への懸念,あるいは券面への氏名の記載を要求するのが手続的に煩雑であることなどを考慮しました上で,株式タイプの記名式と社債タイプの無記名式のいずれの受益証券を発行するかについては,受託者の合理的な選択に期待しようとするものでございます。

 

 

 

 

次に,受益証券が譲渡された場合に原則として委託者の地位も移転することは先ほど申しましたとおりですが,証券の譲受人が証券発行者たる受託者に対する権利のみならず義務までも承継するのは相当でないと考えられることから,委託者の義務,例えば報酬支払義務などにつきましては承継されず,受益者が補償支払義務や報酬支払義務を負担することも認めないこととしまして,これらについては信託行為に基づく例外的な定めも許容されないことと結論したものでございます。

 

 

すみれ

「家族信託で、受益証券は発行しないね。それにしても受益証券に関係する条文っていっぱいあって30条くらいあるよ。」

 

 

なお,受益権の有価証券化につきましては,更に進めまして,受益権を振替制度の対象としてペーパーレス化を図る実務上のニーズがあることが第2回会議などで指摘されております。資料49ページのアステリスク3に記載しているところでございまして,一般の受益権も振替制度の対象とすることにつきましては,今後検討していきたいと考えているところでございます。

 

 

また,同じく資料の52ページ,(注1)記載のとおり,実務上,信託財産を引当てとした債券発行を認めるニーズがあると言われておりまして,第2回会議におきましても,信託財産を引当てとする債券発行ができると好都合ではないかと考えているという御意見もございました。

 

 

この点につきまして,一体具体的なニーズがどういうものか,このような債券発行を認めることのメリットはどこにあるのか,受益権の複層化によって対応できないということがあるのか,などにつきましてもう少し御教示いただけると有り難いと存じております。

 

 

 

 

以上が,受益権の有価証券化についての提案内容でございます。

 

最後に,第54といたしまして,受益債権等の消滅時効についての提案に移らせていただきます。

 

 

 

 

なお,あらかじめ申し上げますけれども,56ページの(注1)に記載したところでございますが,「受益権」とは,受益者の有する権利義務の総体,すなわち受益者の地位を言うものであると整理しておりますので,契約上の地位たる受益権自体ではなくて,そこから生ずる「受益債権」,すなわち信託の利益を受ける債権の部分が消滅時効にかかるものとして規律を設けることとしております。

 

 

そして,預託金会員制ゴルフクラブ の施設利用権の消滅時効と会員権の消長に関する平成7年9月5日の最高裁判決も参考にいたしますと,消滅時効の援用によって受益債権が消滅した場合には,受益債権を基本的な構成部分とする受益権ももはや包括的な地位としては存続し得なくなると考えられまして,その結果,ほかに受益者がいるような場合ではない限り,受益権すなわち受益者が不存在となって,当該信託は目的不達成により終了し,その結果,行使可能となる帰属権利者の残余財産分配請求権もまた時効消滅した場合には,信託財産は信託の拘束から完全に解かれて,受託者の固有財産に帰属することになると整理していることをあらかじめ付言申し上げます。

 

 

ポリー

「そうなんですね。信託自体が終了してしまうのですね。予想しないところで家族信託が終わらないようにする必要がありますね。」

 

 

提案内容の1でございますが,これは,受益債権の消滅時効の時効期間とその起算点,それから受託者が消滅時効を援用するに当たっての手続的要件,更に受益債権の除斥期間に関する提案でございます。

 

 

 

まず,(1)でございますが,受益債権の消滅時効に係る時効期間につきましては,受益権が民法167条2項の「債権又ハ所有権ニ非サル財産権」に当たる性質を有するものであるとしまして,20年とする見解もございますが,ここでは,資料54ページの①ないし③に記載した理由から,「債権」に係る消滅時効に関する規定に従うものといたしました。

 

 

その結果,例えば通常の民事信託における受益債権の消滅時効期間は民法167条1項によりまして10年となり,営業信託における受益債権の消滅時効期間は商法522条により5年となるというふうに考えられます。

 

 

更に,前回,受益者の利益の享受というところで申しましたとおり,受益者は特段の意思表示を要することなく当然に信託の利益を享受することになりますことを踏まえまして,受益者自身が受益者となったことを知らないままに消滅時効が進行してしまう弊害を回避するため,受益者として指定された者が受益者となったことを知った後でなければ消滅時効が進行しないこととしております。

 

 

番人

「民法の消滅時効期間が変わると受益債権の期間も変わるかな。」

 

 

次に,受託者が受益者の受益債権について消滅時効を援用することは,その受益者の利益の犠牲のもとに他の受益者や帰属権利者が利益を得ることが考えられますので,受託者の負担する忠実義務に抵触することになることが考えられます。

 

 

そこで,受託者の忠実義務を確保する観点から,受託者が受益債権の消滅時効を援用するためには,(2)のとおり,原則として時効期間の経過後におきまして,一定の猶予期間を置いた上で,受益債権の存在等を受益者に通知することを要し,猶予期間内に受益債権の請求がなかった場合には,これをいわば消極的な同意とみなして,忠実義務が解除され,消滅時効を援用することができることとするものでございます。

 

 

 

なお,このような受託者の通知義務につきましては,(3)のとおり,例外を設けることとしております。

 

最後に,(4)におきましては,受益債権は,受益者がこれを行使できるときから20年の経過をもって除斥期間にかかり,消滅することといたしました。

 

 

これは,(1)のとおり,受益債権の消滅時効の起算点を受益者の主観的認識にかからしめておりますので,受益者が自己が受益者となったことを認識しない限り,いつまでたっても受益債権が消滅時効にかからないこととなる弊害を回避しようとするものでございます。

 

 

 

なお,除斥期間の場合,受益債権は,受託者による援用の意思表示を要することなく,客観的な期間の経過をもって当然に消滅することとなり,援用が忠実義務に違反するかといった問題が生じませんので,忠実義務違反の解除の要件たる(2)の通知といったことも必要ないことになると考えております。

 

 

 

次に,2でございますが,これは,信託終了後の残余財産の引渡請求権に関しましても,受益債権と同様に,一定の期間の経過をもって消滅時効又は除斥期間にかかること,受託者が消滅時効を援用するに当たっては原則として受益者に対する一定の通知を要することなどを規律したものでございます。

 

 

 

 

 

  •  それでは,受益権の譲渡から受益債権等の消滅時効のところまでの間で御議論いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。

 

 

  •  第53の有価証券化と第54の消滅時効のところについて,若干の御意見を申し上げたいと思います。

 

 

まず,有価証券化のところでございますが,第2回の席上におきまして,受益権の有価証券化につきましては振替制度を利用できることを前提にしてお願いしたいということを申し上げていましたが,現在も当然同様の意見でございますので,是非ともお願いしたいということです。

 

 

 

 

あと,各論的なところでですけれども,受益証券の受託者の対抗要件のところでございますが,第2回の席上におきまして,無記名のものについても受益者名簿のところを対抗要件にしていただきたいというふうに申し上げまして,なおかつ,前回の席上で,受益者名簿が作成できない場合もありますと,ちょっと矛盾したようなことを申し上げております。

 

 

 

 

実際,ちょっと困っておりまして……。ただ,特に受益者名簿についてはやはり作成できないということもあるのではないかということもかんがみまして,非常にわがまま的な話で言いますと,場合分けするような対抗要件というのができるのであれば,そういう形でお願いできないかということでございます。

 

 

 

 

2点目は,先ほど○○幹事の方からもお話がありましたけれども,信託財産を引当財産とする債券の発行,これについても,現状,当然やっておりませんので,どこまでのニーズがあるかは分かりませんけれども,やはり大量な資金を調達する場合であるとか,複層化を明確にするような場合,そういう必要性からニーズはあるのではないかなと思います。

 

 

先ほど,何かそれ以上の理由はというようなお話がありましたけれども,もう想像にすぎませんので,なかなか明確なことは言えないのですけれども,やはり受益者の権利を要しないような債券というものができるというのは,そこは違うところではないかなというふうに考えております。

 

 

すみれ

「やりたいことはいっぱいあるんだね。」

 

 

次に,消滅時効のところにつきましては,総論的には,今は規定がございませんので,こういう規定を設けていただくということについては賛成ということでございますが,実務的なところに落として考えますと,これはひょっとしたら実務家の方が工夫してやらなければいけない部分ではないかと思いますけれども,2点ほど問題があるので,ちょっと申し上げたいと思います。

 

 

1点目は,例えばという話ですけれども,貸付信託で15年間たったものがありますと。5年間が満期ですので,要するに消滅時効期間を過ぎたようなものがあって,その通知を持ってお客さんが来られたと。

 

 

そのときに,どうも残高がないようだと。

 

 

要するに,払い出しの伝票等については割と短期間でなくしてしまいますので,その人に払い出ししたかどうか分からないけれども,元帳については割と長期間残っておりますので,残高があるかないかというのは大体分かりますと。

 

 

ところが,その人に払ったかどうかは分からないという状況がありまして,こういうときに時効を援用して払いたくないというのが,時効制度を導入していただきたいというニーズのうちの一つ,大きなニーズのうちの一つなのですけれども,そういうことを前提にした上で,この規律に置きかえてみますと,ちょっと不都合がありまして,援用する際に,残高がありませんので,通知というのは当然しておりません。

 

 

ということになりますと,「受託者が受益債権が存在しないと信ずるに足りる相当の理由がある場合」というのが要件になっていますので,結局,その人に対して払い出しをしたような伝票類がない限りにおいて,なかなかそんな証明もできないと。

 

 

ということになりますと,実際には時効を援用するというようなことが非常にやりにくいのではないかというふうに思われます。

 

 

ここら辺については,何か実務上の工夫をして対応しろというようなお話かもしれませんけれども,法的な手当てで何らかの対応をお願いできるのであれば,御検討をお願いしたいということが1点でございます。

 

 

 

 

 

 

 

もう1点ですけれども,55ページの一番下の「もっとも,」以下のところですけれども,ある受益権が消滅時効で消滅した場合に,「当該受益者へ給付されるはずであった信託財産は,他の受益者又は帰属権利者が存する場合には,これらの者へ給付されることになる」とされています。

 

 

この場合に,ある受益権の消滅時効の満了の時点と,援用して消滅したその間に受益者がその信託から出ていったときには,その受益者を追っかけていってもう一回分配しないといけないと。

 

 

時効の場合には遡及する形になるでしょうから,時効の満了した時点まで戻って考えると,そこから後に出ていった人に追加で分配しないといけないというような不都合があって,それはなかなか実務上厳しいのかなというふうに考えておりまして,これにつきましては,例えば「帰属権利者」というのを別に設けて対応するという実務上の対応もあるのではないかということですけれども,実際に,例えばそれを「受託者」というふうに書いて果たして書き切れるかというような問題もございますので,これも実務上対応すべき問題かもしれませんけれども,何らかの法的対応ができるのであれば,御検討いただければなというふうに考えております。

 

 

 

 

 

  •  ちょっと細かい問題ではあったかもしれませんけれども,一つは,この時効の方で言えば(3)のことですか。元帳はあるけれども,伝票はもう捨てられていて,そういうときに時効を援用したい,だけど支払ったということまでの証明はできないので,だから正に時効を援用したいわけですね。そのときに,(2)の方でもって通知をすれば,それでいいわけですね。

 

 

すみれ

「捨てられていてってはっきり言うね。」

 

 

  •  いえ,通知をすれば,その人は残高があると思って来られていますので,じゃあ払い出ししてくださいというふうに多分言われるのではないかと。

 

 

 

  •  そのときに争いが生じるというのが困ると。

それで,それに対して,証拠はもうないのでということですね。しかし,それは正に時効の機能みたいなものだという気もしますけれどね。

 

 

  •  今おっしゃられていたところは,恐らく,(3)では,「(2)の通知をしなかったことについて正当な理由がある場合」というのが基本的な要件になっておりますので,そちらの方に果たして当たるのかどうかということなのだと思います。

 

 

先ほど,相当な理由があるかどうかというふうに言われましたけれども,この要件では,正当な理由があるかどうかというふうに考えるのだと思います。

 

 

それで,残高については確認できるけれども,払ったかどうかは分からないというのが,果たして通知をしなかったことについて正当なのかどうかということで判断がされるということ……。

 

 

  •  残高がその元帳上ない限りにおいては,その人に対して通知をするということはあり得ないと思うのですね。

 

 

  •  ということになりますと,通知をしなかったとしてもしようがないのではないか,つまり,その銀行の処理体制として相当なものであるという前提のもとで,残高しか分からない,それで残高がないということで通知をしないのはもうしようがないのだというふうに言われるのであれば,それが「正当な理由がある場合」と判断され得る可能性もあるのではないかという気はいたします。

 

 

 

それから,私の方から言わせていただくのがよろしければ,後の方で言われた消滅時効についての問題ですけれども,恐らくは,他の受益者とか帰属権利者とかがいる場合にどうするかという話だったかと思うのですが,その場合は受託者が当然に取れるというふうにはやはり言い難いのではないかと。

 

 

 

つまり,例えば,100万円の債権が3人に,受益者が3人いますというときに,そのうち一人分が時効消滅しましたと。

 

 

そうすると,実質的には,100万円分の信託財産が余るわけですが,その100万円分はやはり帰属権利者に行くべきものと言わざるを得ないのではないかという気がいたします。

 

 

そうすると,ではその100万円分をその帰属権利者に渡さなければいけない,ところが帰属権利者は今どこにいるかよく分からなくなっているというようなことは,恐らく実務上はあり得ることだろうとは思うのですが,やはりそのあたりは,もしそういうことが問題になる,そういうタイプの信託であれば,契約の定め方の中で多少努力していただくということを考えざるを得ないのではないかなという気がしております。

 

 

 

 

 

 

 

  •  そこは再度こちらの方で検討したいと思います。
  •  ほかに,いかがでしょうか。

 

 

  •  今の関連なのですが,今の御説明の中で,(3)の「正当な理由」の問題だというふうにおっしゃったのですけれども,先ほどの○○委員の御疑問は,弁済したというふうに思っているわけですから,弁済したと信ずるに足りる相当な理由がある場合だと理解していたのですが,そうではないのでしょうか。

 

 

と申しますのは,弁済した受託者がその後どういうことをすべきか,弁済の証明はしなくてよいけれども,債務不存在の相当理由の証明ができるという状態になっていれば,それで正当な理由があるというふうにつながるのかなと思ったのですが,そういう理解ではないのでしょうか。

 

 

  •  債務不存在の相当理由の方も当たりますが,そのほか「正当な理由がある場合」というのが根本的な要件であるということを申し上げただけで,今,○○委員がおっしゃったように,「正当な理由」のうちの例示として,ここでは今二つ挙げておりまして,受益者の所在不明というものと,弁済したと信ずるに足りる理由がありますということを二つ例示しているわけですけれども,その例示の言うところは,結局は,「正当な理由」があるのかどうかというところだということを申し上げたかったということです。

 

 

 

今の局面で○○委員がおっしゃった話をどこに落ち着けるかということで言えば,「相当の理由がある場合」なのかもしれませんが。

 

 

 

  •  最初に○○委員がおっしゃった点でございますが,無記名式の受益証券の場合については場合分けで対抗要件を認めてはどうかという,その場合分けというのは,無記名式の受益証券につきましても,場合によっては受益者名簿をつくっているし,場合によってはつくらなくて,つくっている場合は受益者名簿への記載を対抗要件とする,つくっていない場合はそれを対抗要件としないと,そういう場合分けという趣旨でございますでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

そうすると,無記名式の受益証券につきましても更に2類型認めるということになりますと,例えば甲案をとると,記名式の場合と無記名式の場合二つということで,3類型の受託者対抗要件を認めるということになりますが,事務局としては,果たして3類型も認める必要があるのかなと。

 

 

むしろ,受益者名簿がつくりにくい場合があるのだったら,それは無記名式にして,受益者名簿を不要とする形にしていってしまえばより簡明ではないかと,そのような感じもいたしておりますので,御検討いただければと思います。

 

 

  •  ほかの点,いかがでしょうか。

 

 

  •  先ほど御説明があった中で,第53の(注1)のところで,借入れを必要とするような場合,流動化なんかの場合でもあり得るとは思うのですけれども,その場合,債券発行を認めるニーズがあるのではないかということで,検討したらということで御説明があったかと思うのですけれども,先ほど○○委員がおっしゃられたように具体的にどういうものができるというのが念頭にあって申し上げているわけではないのですけれども,実際にこのようなものができることについては,選択肢が増えるということで大変賛成なわけですけれども,現実問題として,債券発行ということで,例えば社債を例にとりますと,株式会社など,当然,発行主体というのは法人格がないと我が国の法制では認められないと思うのですけれども,この場合については,どういうことを念頭に置かれて,これが可能ではないかというような意見があるのか,そのあたりをお知らせいただけたら有り難いなと思って,ちょっと質問させていただきました。

 

 

 

 

 

  •  恐らくこれは,事務局の方がいろいろなお考えをお聞きしたいという部分だと思いますけれども。

 

 

  •  学者の先生方に,もしよろしければ,お伺いしたい。

 

 

  •  先ほど○○委員もおっしゃっていた,第53の(注1)に書かれていたような信託財産を引当てとした債券の発行ですね,これが認められたら,証券化・流動化の観点からはフレキシビリティーが高まって便利だなという気はいたします。

 

 

現に,信託財産のみを引当てに受託者が借入れを行う信託借入スキーム--ABL,アセット・バックド・ローンというふうに呼ばれる場合が多いですけれども--が広く用いられていることは御存じのとおりだと思いますけれども,ローンにかえて社債類似の債券という形をとれるということは,フレキシビリティーが増すのかなと。

 

 

 

 

 

 

例えば中小企業金融であっても,中小企業であれば株式会社ですから,社債を発行できるわけですけれども,あえて融資せずに,私募債を発行させるというような方法もとられていますし,また,会社ですと一応株式会社と特定目的会社しか社債発行できないという形になっていますけれども,医療法人,学校法人といったところも,証取法上の有価証券にならない債券を発行して資金調達しているという現実もございますし,便利になるのではないかなという気はいたします。

 

 

 

 

○○委員のおっしゃっていた,ではほかの類型の債券は発行体が法人ではないかという,そこら辺のテクニカルな難しさというのはあるのかなという気はします。

 

 

それと,第53の5と6のところ,受益者名簿と,有価証券の形にした受益証券の対抗要件についてなのですけれども,これも,既存の社債とか,あるいは株式との整合性を考えれば,5,6とも,何となく甲案の方がすっきりするような気がするのですけれども,かといって,乙案であれば絶対に困るというようなことはないのかなという気はいたしております。

 

 

 

  •  先ほどの,信託財産を引当てにして受託者が債券を発行するというのですかね,これは,信託そのものとしては別にそれを制約するような理屈はないのだろうと思いますけれども,ほかのいろいろな法制との比較だとかいうことがネックになってくると,それなりに必要性が高いということが言えないと,そちらの方に働きかけが難しいという,そういう関係なのではないでしょうか。

 

 

ですから,いろいろそういう必要性があるのかどうかと。

それから,(注1)にも書いてありますように,受益権の複層化ということでもって同じようなことができるのか,できないのかとか,そういうことを御検討いただければということだと思います。

 

 

これについては,引き続き今後もいろいろ御意見をいただければと思いますが,ほかに,この譲渡の関係,消滅時効の関係はいかがでございましょうか。

 

 

 

 

 

  •  若干細かくなるわけですが,第52と第53でコメントがございます。

第52については二つございますけれども,基本的に第52の規律というのは選択肢をふやすということもありますし,流通を円滑にするという点でも賛成な立場でいるわけなのですけれども,個別論として御質問があるのですが,この考え方で,基本的に受益権というのを指名債権とみなして,同じ規律を入れようというふうに考えておられるのですけれども,一つ,非常にテクニカルな話なのですけれども,譲渡登記によって対抗要件具備ということができるのかどうかということです。

 

 

すみれ

「登記だ。受益権かな。受益債権かな。受益債権は登記できるんじゃないの。特定されているし現実にあるし。対抗要件になるかは信託法次第だけど。受益債権は法人が持っているってことかな。」

 

 

これは立法論の話で,必要であれば,そのようにほかの--譲渡特例法を直すかどうかという話だと思うのですけれども,少なくとも現行法は指名債権というふうになっていますので,受益権の性質を指名債権と決めておかなければ,譲渡特例法というのは当然には適用にならないのかなというふうに思っておりますので,その点について,事務局として譲渡特例法を改正するところまで念頭に入れているのか,又は,そもそもそういう対抗要件具備というのは考えていないということなのかということをお伺いしたいということが一つ目です。

 

 

 

 

二つ目は,同じく指名債権の規律ということで,善意の第三者に対する保護ということでございますけれども,流通性を確保するためにはかような規律が必要だということは分かるわけですが,これはちょっと難しいとは思うのですけれども,実務的なニーズに応じては,そういうことを必要としないというものもあるのではないかというふうに思っていることで,そこで御見解をお聞きしたいということです。

 

 

 

すなわち,例えば,典型的な流動化スキームの場合に,不動産を信託に入れて,受益権をSPCに入れましたと。

 

 

それで,SPCが証券を発行するといった場合に,このSPCが有する受益権というのは,これはもう動かさないということが前提になっていると思うわけですが,そのときに,SPCの管理の関係でその受益権が第三者に移ってしまうといった場合に,ある意味,このスキームの安全装置,例えば,今までは受益権というのはそういう規律がなかった,善意の第三者の保護にあずかるという,そういう規律がなかったということで安心していたわけですが,この規律が導入されたことによってそのスキーム自体の安定性というのが若干落ちるのではないかなという懸念がしております。

 

 

もちろん,実務においては,そうさせないというような別途の手当てをすればそれで足りるという考え方もあるかもしれませんけれども,そういった規律というのは本来デフォルト・ロー的なこともできるのかなというような感じもいたします。

 

 

 

 

 

もう一つは,これも細かい話になるわけですが,その対象について,第52の1の(2)を拝見しますと,「別段の定めをした場合又は受益権の譲渡が信託の目的に反する場合には,適用しないものとする」と。

 

 

「受益権の譲渡が信託の目的に反する場合」というのも,善意の第三者には対抗できないものの範ちゅうに入れているわけですが,ここは若干テクニカルな御質問になるかもしれませんけれども,現行民法466条の1項と2項との関係を見ますと,どちらかというと,「信託行為において別段の定めをした場合」というのは2項の柱書きの範ちゅう,「受益権の譲渡が信託の目的に反する場合」というのは1項の範ちゅうだというふうに思っておりまして,民法においては2項において第三者の保護手続があるということと私は理解しているのですけれども,間違いがあれば御指摘いただきたいのですが,ただ,この御提案を見ますと,両方とも第三者の保護規定があるというふうに読めるわけですけれども,この点はそういう理解でいいのかどうかということを確認したいと思っております。

 

 

 

 

 

それから,第53について,有価証券化ということでございますけれども,これも非常にテクニカルな話でございますが,仮にこの有価証券化ということをなされていくと,他の法律との関係があいまいになるということがあるのではないかという点で,関連法規の見直しの必要性ということを申し上げたいと思います。

 

 

 

すなわち,例えば,合同運用金銭信託の受益権というのは基本的には有価証券ということで,実務においては,有価証券化したいから現行法ではそういう投信法を使っているということ,特に委託者非指図型投資信託でございますけれども,ただ,この一般法規たる信託法において有価証券化ということが図られますと,この一般法規化ということで規律された有価証券なのか,投信法で言う有価証券なのかということが非常に見分けづらくなるのではないかと。

 

 

片や一方は基本的にはレギュレーションが低い,片やレギュレーションが高いというところで,そこのレギュレーターから見た規律というのがあいまいなのではないかという懸念を感じております。

 

 

ゆえに,この点について,関連法規の御検討も必要ではないかというふうには思っております。

 

 

 

  •  これも,すべて直ちに答えられるようなものなのかどうか分かりませんけれども,答えられる範囲で。

 

 

  •  まず,第1点目にお話しされました,譲渡特例法に乗るかどうかという点でございますが,ここでは,受益権につきましてはあくまでも指名債権に準ずるものと考えて,対抗要件については,ゴルフ会員権の場合と同様に民法467条などの規定によっていこうという考えにとどめているわけでございます。

 

 

受益権というのは,債権の部分のみならず義務なども含む一種の包括的な地位と考えておりますので,ここの債権譲渡特例法に乗るような指名債権ではないと考えております。

 

 

したがいまして,少なくとも現行の譲渡特例法を前提とする限り,登記をもって対抗要件とすることができるような債権には当たらないというのが,我々の理解でございます。

 

 

これを改正するかどうかというのは,まだそこまで考えておらないところでございますけれども,当面,ここまで対象にすることは考えていないというふうにお答えさせていただきます。

 

 

 

それから,SPCの受益権の譲渡が第三者に対抗できないということについて,しかし善意の第三者には対抗できるという規律を設けているのは不都合だというようなお話だったかと思うのですが……。

 

  •  不都合な場合もあるのではないかというコメントです。

 

  •  ここは,受益権の譲渡性を原則として我々は考えておりますので,やはり,仮に当事者間で譲渡制限の特約をしたとしても,それは第三者に対抗できないというのが一律にかぶってくるのではないかなと思うわけですが,もう少し,実務上,譲渡性があっては困るというような債権の切り出しとかが明確にできれば,それは「性質に反する」というようなことになってきて,そもそも譲渡性が奪われるということが言えると思うのですけれども,「性質に反する」ということまで言えないと,善意の第三者には対抗できないという規律から逃れるのはなかなか難しいのではないかという気がいたしております。

 

 

もう一つ,目的に反するという点と,別段の定めという点,それと民法の関係でございますが,私の理解が間違いでなければ,民法の466条では,性質に反するときはできないと。

 

それは1の(1)の方で書いているところでございます。

 

 

(2)の方は,別段の定め又は信託の目的ということで,信託の目的に反する場合は,実質的にはほとんど譲渡禁止特約がある場合と解することができると思いますので,この二つにつきましては,466条の2項に準ずるものとして,それは第三者に対抗することができないというふうに考えているところでございます。

 

 

やはり,性質に反するときは譲渡できないというような規律,それは差押えも許されなくなるわけでございますが,そのような受益権というのもどうしてもあるだろうということで,ここで(注5)ですか,性質が譲渡を許さないような場合というものの例を挙げさせていただきましたが,こういうものも,譲渡禁止特約ですとか信託の目的に反する場合ではカバーし切れないものが残るだろうと。

 

 

こういう性質に反するものについては,そもそも譲渡もできないし,差押えもできない場合が残るだろうという考えに基づきまして,最終的には,466条と同じような二つの区分を設けているというところでございます。

 

とりあえず,以上のとおりでございます。

 

 

 

 

 

  •  受益権の有価証券化の話なのですが,有価証券化が必要な場合というのは確かにあって,実務上の需要はあるのだと思うのですけれども,先ほど○○委員が後半でおっしゃったことにも関係するのですけれども,いろいろな法律というのは,この場合にはこういう必要性とジャスティフィケーションの論理によって有価証券化というものを認めようというのがあって,それである種の法律によって,この場合は有価証券を発行できますとか,できませんとか,この場合はこういう権利を有価証券にできますというふうな,いろいろな法律があるわけですよね。

 

 

すみれ

「ジャスティフィケーション?」

 

 

しかるに,信託である,そしてその受益権であるということが,有価証券化ということを認める包括的な正当化根拠になり得るのかというと,私は,何も発見できないような気がするのですね。

 

 

つまり,例えば,流動化でこういうふうな場合に有価証券化というものが必要である,だから有価証券の発行を認めましょう,受益権を有価証券化するスキームを認めましょうと,こういう論理はよく分かるのですけれども,およそ信託においては受益権は有価証券化できるのかというと,例えばおじいさんが孫を受益者として信託を設定する,そういうときにも有価証券化できるわけですよね,この条文で言えば。

 

 

しかし,なぜそこに,有価証券を発行できるという……。どうせその場合にはしないじゃないかと言われればそれまでなのですが,やはり有価証券を発行することによって様々な--まあ,流通性が高まるというのはいいことばかりではないわけで,やはり何らかの正当化があって初めて認められるというのが日本の法制度ではないかというふうに私は思うのですが,違うのかもしれませんけれども,そうすると,信託法の中に,およそ有価証券を発行できるという条文を置くのはいかがかという感じがするのですけれども。

 

 

 

すみれ

「流動性が高まるというのはいいことばかりじゃない、か。」

 

 

  •  かなり根本的な問題提起がありましたけれども,いかがでしょうか。あるいは,ほかの委員の御意見も。

 

 

  •  今,○○幹事がおっしゃられたように,一定のニーズがあって有価証券化が図られるというのが多いというのはおっしゃるとおりなのかとは思うのですが,一番典型的な有価証券というと,例えば手形とか小切手とか,あるいは金銭債権一般に認められているということで,そこから先,使うかどうかというのは選択にゆだねられるということになります。

 

 

信託の受益権についても同じような整理をすることが,美しくはないのかもしれませんけれども,一応は可能なのかなというような気もいたすのですが。

 

 

すみれ

「美しさも求められるのか。」

 

 

  •  手形というのは金銭債権を証券化するのだというふうにとらえれば,確かに今のような説も可能であり,信託の場合も似ているではないかという,そういう説明だったと思いますが。

 

 

 

  •  これは私だけの理解だということです。だから,ひっきょう独自の見解であるという典型的なものなのですけれども。

 

 

 

我が国において受益権というのは,通説としてというか,つまり債権ですね,結局のところは。

 

 

債権の譲渡というのはいろいろな面倒があって,債権債務関係を引きずっていますから。

 

 

しかし,英米では受益権というのはプロパティーですから,日本語で言えば物権ということになるのだと思いますけれども,つまり,自分のものなのですから,自分のものを譲渡するのは簡単だよという話になっているので,譲渡するかどうかはともかくとしてですが,非常に簡単なんですね。

 

 

ところが,日本ではそういうことはとれない。それで,せめて証券化という話にすると譲渡が容易になるのかなというのが,私の理解です。

 

 

 

すみれ

「そういうことなのか。国によって債権の考え方が違うんだね。せめて証券化、という話か。」

 

 

 

 

  •  金銭債権を手形にすればいいと言えば,それはそうなのかもしれませんが,譲渡一般を認めるということは,第52のところで出ているわけですよね。

 

 

私が問題としているのは,なぜ有価証券化を認めるのかという話であって。

 

 

手形小切手の場合もそうじゃないかというふうにおっしゃったわけですが,それはいろいろな歴史的な説明とか,金銭債権になっているとか,いろいろな手形小切手法の教科書にも書いてあるような説明とかできると思うのですね。

 

 

 

でも,受益権の内容というのは千差万別であり得るというときに,なぜ信託の受益権であるということから有価証券化が認められるというところで説明の論理が書けるのかというと,何か書きにくいんじゃないかなという気がするというだけで,別にそれで納得できるような論理があったり,論理はないかもしれないけれども必要なとき以外は使わないからいいじゃないかということの中でそうなるというのならば,それはそれで仕方がないのかもしれませんけれども,必ずしも納得はできないような感じがします。

 

 

すみれ

「たしか。歴史的な説明も必要なんだ。」

 

 

  •  有価証券化のメリットはいろいろ挙げられると思いますけれども,基本的には,有価証券化した場合には,証券の所持人に有価証券が発行されていなかった場合に比べてより強い保護があるという点には異論がないのではないかと思います。

 

 

例えば,権利の推定が働くですとか,譲渡の際の効力が強まる等々。そういう意味では,一言で言うと,受益者の保護という観点から見ると,受益権が有価証券化されていることは,もちろんマイナスになる場合も決してないとは言えないと思いますけれども,一般的に言えば有価証券化は受益者の利益に資するということは言えるのではないかと思われますので,私は,有価証券化を,選択的に,しようと思えば認めるというのは,特に受益者保護を中心的なテーマとする信託法においては充分に考えられることではないかと思います。

 

 

 

 

  •  ○○幹事の指摘された点は二つありまして,特別法ではなくて信託法に置くということの意味がどうかということと,具体的な場合以外に一般的に受益権の有価証券化を認めることがいいかどうかという2種類の問題が含まれていると思うのですけれども,一般的に受益権の有価証券化を認めるとして,その意味が受益者の保護であるという今の○○幹事のお話があったのですけれども,そのことは,逆に言うと,証券化されていない場合には受益者の保護がより少なくてよいというふうにならないかという懸念を若干感じます。

 

 

 

特に,例えば49ページの米印1のところで,証券化されている場合には,受益者に対する補償請求権,報酬請求権の行使を認めないということが出ているのですが,これは一体なぜなのかと。証券化から導かれることなのか。

 

 

だとすると,証券化されていない場合にはそういうことがなくてもいいのではないかという反作用があり得ないだろうかということが若干気になります。

 

 

としますと,○○幹事がおっしゃった受益者保護ということは,より一般的に考えるべきではないのかなという気もいたしますが,いかがでしょうか。

 

 

 

 

  •  この証券化,先ほど○○幹事が,受益者の保護になるのだという言い方をされて,そういう視点もあるかと思って感心して伺っていたのですけれども,やはり,どういう信託をここで想定するかとか,受益者の地位との関係,いろいろなことを考えながら,果たして証券化の道を開いていいのかどうかということを考えなければいけないのだろうと思うのです。

 

 

 

最初の○○幹事の質問からは少し離れた視点かもしれませんけれども,例えば,不動産などが信託財産になっていて,受益権を発行して,それが証券化されて,これは積極的にそれを肯定する意見の方が多いかもしれませんけれども,その受益証券を転々流通することによって不動産という財産は善意取得が可能な財産に変わっていく,むしろそこにこそメリットがあるので,受益証券というものを発行させるべきだという意見もあるかもしれませんけれども,不動産というものがそういう形で変わってしまっていいのかという逆の考え方もあるかもしれないし,証券化というのは便利な面があることは確かだと思いますけれども,最終的にこういう一般的な形でもって認めていいかどうかということについては,やはりいろいろなことは考えなくてはいけないのだろうという気がいたしますね。

 

 

 

 

  •  全く別の論点でよろしいでしょうか。

第52の受益権の譲渡について,ゴシックのところではなくて,むしろ説明の部分に出てくる,「受益債権」という概念の中身について御質問させていただきたいと思います。

 

 

具体的な例を挙げて御質問したいと思うのですけれども,そもそも,この受益債権というのは43ページの(注2)の前の部分で定義されておりまして,「受益者が信託行為に基づき信託の利益を受ける債権」,これを受益債権と定義されております。

 

 

それで,46ページの【ケース1】を例に挙げて御質問させていただきたいと思うのですが,「受託者は,受益者Aに対し,10年間,毎年1月1日に,一定額の金銭を支払う」と。この,毎年1月1日に一定の金額100万円を受ける権利,これを10年間,例えば10人別々に譲渡すると。

 

 

そうすると,これが受益債権の譲渡というのでしょうか,例えば,もしそうした場合に信託財産が5年で全部なくなってしまったとすると,6年目以降にこの受益債権を受けた人というのは,だれに対してどういう権利を主張することができるのか。

 

 

 

 

すなわち,信託法の19条にございます,信託財産に受託者の責任の範囲が限定されるという信託財産との物的相関関係というのが受益権の非常に大きな特徴とされてきたと思うのですが,この「受益債権」という概念を持ってきたときに,物的相関関係との関係はどうなるのか,あくまでもその限定は付された特殊な債権として譲渡されていくというふうに理解されているのか,それとも,もうちょっと純粋な,受託者に対する債権として観念されているのか,これが具体的な一つの質問でございますけれども。

 

 

 

要するに,私は,結論としては,この44ページの甲案の考え方を推し進めていくということは,今の受益権の物的相関性との関係で慎重に考えるべき側面があるのではないかと考えましたので,あわせて意見を述べさせていただきました。どうかよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

  •  受益債権を譲渡すると本来の受益権の譲渡以上のことができるというのは,何かおかしな気がしますから,私も,物的相関関係という枠は残るのではないかという気もしますけれども,どうですか。

 

 

 

 

  •  【ケース1】で,10年分の各毎年払われるべき金銭債権を譲渡する,これは我々の考えで言うと受益債権の譲渡ということになるのは,おっしゃるとおりでございます。物的相関関係は残ると考えています。

 

 

それで,5年たったところでなくなってしまったらどうなるかということでございますけれども,そこら辺,余り明晰に考えていたわけではないのですが,やはり受益権とは異なる,あくまで債権だということといたしますと,なくなってしまった場合には,もはやそれは履行不能ということにならざるを得ないのではないかという気がいたします。

 

 

そこはやはり受益権の譲渡と受益債権の譲渡との違いではないかなという気がいたします。

 

 

すみれ

「受益権の譲渡と受益債権の譲渡の違いか。」

 

 

そういう観点からすると,甲案が不適当であるということであれば,我々はまた,ここの甲案と乙案のどちらが適当かというところも是非ともお伺いしたいところでございますので,そこが甲案が不適当であるというのであれば,検討したいと思います。

 

 

  •  空になってしまった場合には,受益権を譲渡した人に責任が追求できるのですか。

 

 

  •  そうですね,旧受益者に対して債務不履行責任なども追及していくということになるかと存じます。

 

 

  •  もちろん,信託財産が減ったことについて受託者に過失があれば,責任が追及できるような場合があれば,それはまた別の問題があるかもしれませんけれども。

 

 

さっき○○委員が言われた,証券化との関係での補償請求権,あるいは受益者の方からすれば補償の義務の関係ですけれども,証券化する場合には,途中の受益者等に補償の義務だとか報酬支払いの義務がなくなって,証券を持っている者だけが責任を負うというのでいいのだと思いますけれども,その一般原則,証券化されていないときの一般原則である第52の方ですけれども,これもなかなか,自分で考えていて,どういうのが一番いいのかよく分かりませんが,受益権が証券化されないで何度も何度も譲渡されたときに,いったんでも受益者の地位にあった者は,その前の段階でもって発生していた補償請求権ないし報酬請求権については常に連帯的な責任を負うと,そういうことにこれはなるのでしょうね。

 

 

少なくとも,この文言からすると。例えば,補償の義務というふうに受益者の方から見たときに,途中いったんでも受益者になっていて受益権を享受したような人間についてはそれでもいいのかもしれないけれども,享受もしないでまた譲渡していったというような場合もあるかもしれないし,この一般原則はこれで本当にいいのかどうかというのは,さっきお話を聞きながら,あるいは○○委員の意見を聞きながら気にはなったのですが,まず,考え方として,ここではどういう前提で,今のような場合--転々されていった,第52の例えば4ですけれども--を考えていたのかなと。

 

 

 

 

 

  •  転々流通したときに,各譲渡人,譲受人というのがどういう責任を補償債務との関係で負うかということですか。

 

  •  特に途中のね。

 

 

  •  一応,ここでは,途中の人も責任を負って,その後更に譲渡した場合でも責任は負い続けるほかないのではないかというふうに考えています。

 

 

そのあたりはなぜかと申しますと,結局のところ,債務があるにもかかわらず,受託者,債権者の立場になりますが,債権者の同意を得ないで譲渡できてしまうというふうにしておりますので,その見合いとして併存的責任を課すほかないかということにしたものですから,残らざるを得ないということになると考えています。

 

 

すみれ

「基本的に譲渡しても債務は残るんだ。」

 

 

逆に言えば,譲渡するときに,受託者との間で合意をするというか,承諾を得て,補償債務部分については私はもう負いませんというようなことを個別にとるということで対処するほかないのかなというのが,とりあえずのここでの整理ということでございます。

 

  •  ここでの原案は,そういう考え方をとっているということですけれども。

 

  •  ○○委員のお話の続きで,繰り返す部分が多いかもしれませんが。

 

これは,第35,第36をどう仕組むかにかかわりますし,それから受益権の放棄についてどうするかという,多分この三つが相互にかかわるので,どうもよく見えないのですが,しかし,すべてを受益者側に不利な形でこれが落ち着くとしますと,受託者の地位は相当強くなるだろうというふうに思います。

 

だれからでもというのですか,受益権の譲渡があると,それを奇貨として--という言い方はおかしいかもしれませんが,資力のある現受益者,前受益者,元受益者,だれかからか持ってくると。

 

 

それで,ずっとそれが信託会社に対して補償請求権が上回っていて,赤字の信託の受益権がずっと動いたのならば,それはそれで,そういうものを転々流通したという言い方もあるのかもしれませんが,補償請求権だけは請求権として残っていて,信託財産がずっと減っていくということもありますよね。

 

 

そうすると,ある段階での受益者が持っていたときは黒字の信託だったのが,それが赤字になったら,前の者も,まだ補償請求権として弁済されずに残っていたので,そこについてもある種の求償を受けてしまうというようなことにもなりかねない。

 

 

ルールの方もはっきりしていないし,今のようなケースはレアケースなのかもしれませんが,ルールの方がいずれも受益者に不利な形になって,そして考えられるケースを想定すると,何か受託者のための信託というようなものがこの局面においては想定できるような形になってきてしまうように思います。

 

 

 

 

 

 

それで,どこで歯どめをかけていくかということになるのだろうと思うのですが,第35,第36をどう仕組むかというのが一つの大きな選択だろうと思いますが,ここで現行信託法に近い形で残すとすると,やはり別のところで手当てをしていかないといけないだろうと。

 

 

すみれ

「仕組むんですかー。」

 

 

第35,第36で受益者の義務を現行法と原則・例外を転換するならば,こういう問題を置いておかれていても,そう困った問題は生じないのではないかと思います。

したがって,全面的にはうまく答えられないのですけれども,一つだけ申し上げることができるかなと思うのは,この第52の中での話なのですけれども,受益権の譲渡は自由だと,ここから出発していて,これはそれでいいと思うのですが,しかし譲渡禁止特約も認められると。

 

 

したがって,4の問題が生ずるような,受益者に対する補償請求権を受託者が確保しておきたいと,それが意味のあるような信託であると,土地信託のようなのがその一つの例だというふうに多分比較的広く理解されていると思うのですが,そういうものについては,受益権について譲渡禁止特約を入れておいて,そして,受益者の側で,事業から離脱したいというようなときに,その受益権の譲渡をするときには正にそこで禁止特約がありますから,今,○○関係官が御説明になったように,受託者の承諾・同意を得ずして受益者が交代するということを防げますので,そこでまた更に既発生の補償請求権についてどう処理するかというようなことを取り決めるような形で解決できるのではないかなというふうに思います。

 

 

 

 

 

 

  •  今,○○幹事が言われたように,第35,第36との関係が一番根本的に重要なのでしょうけれども,仮に第52の範囲で考えるときに,そう一般化できないかもしれないけれども,そんなに受益権を享受しないで譲渡したような人間というのは,受益権を放棄したようなものだという場合もあり得るかもしれないという気もちょっとしますけれどね。

 

 

 

これは無償で譲渡する場合もあるかもしれないし,対価を得て譲渡する場合もあって,いろいろなのがあるので,そう簡単に言えないかもしれないけれども,第52の範囲内でどんなことが考えられるかというときの一つの考え方になるかもしれませんね。

 

ほかに,この三つについて,もしなければ。

 

  •  細かい話になるかもしれませんけれども,確かに,受託者のサイドから見ると,連帯債務になったときに選択肢がふえてしまうと,これは受託者のためであるということはあると思うのですけれども,仮にその対案として,一つの規律として,最終的に受益者となった者にのみ補償請求権等を請求できるとなった場合に,今度は受託者は,ある意味チェリーピッキング的なことを受益者サイドからされてしまう。

 

 

例えば,受益者がいまして,実際にふたをあけてみて,これは信託財産がほとんどなくて補償請求権が出てくるというマイナスのものだと分かった瞬間に無資力の者に渡してしまえば,受託者は,そういうある意味詐欺的なといいましょうか濫用的なことによって,結局補償請求権を追及する手段を失ってしまうということもありますので,そこの点についてもし御検討されるのであれば,受託者サイドの問題としてもバランスをとった検討をする必要があるというふうに思います。

 

 

 

すみれ

「チェリーピッキング?」

 

 

 

  •  濫用的なのは,恐らくまたそれなりに対応の仕方があるのだと思いますけれども,やはり,一つの根本的な問題は,仮に補償請求権というのがあったときに,受益者がそういう支払いの補償をする義務の根拠が一体何なのかということも関係していて,信託の場合には,受益者であるという--つまり,補償請求権というのは,単純な普通の債権債務の債務みたいなのとはちょっと違って,受益者であるがゆえに負っている債務だというふうに考えると,現在の受益者が負うというのはそんなにおかしくないのだろうと思うのですね。

 

 

すみれ

「うん。」

 

 

ただ,今のような濫用的なことがあれば,これはまた別途対応した方がいいと思いますけれども。まあ,途中の中間の受益者が全部負うというのはどうかなというのは,素朴な疑問としてあるような気がします。

 

 

これは,第35,第36は非常に大きな問題なので,またそちらでもって総合的に,全体的な--恐らく一つ一つ取り出して議論すべきではなくて,やはり全体として議論しなければいけないと思いますので,そういう場を必ず設けたいと考えております。

 

 

それでは,今の三つについてはこのぐらいでよろしいでしょうか。また時間がありましたら御議論いただきたいと思いますが。

では,次に行きましょう。

 

 

 

 

  •  では,本日用にお配りした資料に基づきまして,まず,信託行為の変更,それから信託の併合,分割について,一括して提案内容の概略を御説明したいと存じます。

 

 

まず,第57は,信託行為の変更についての提案でございます。

 

趣旨でございますが,信託の設定後の事情の変更に対応して迅速かつ柔軟な信託行為の事後的変更を可能とすべく,委託者及び受益者の利益を適切に保護する内容のデフォルト・ルールを設けようとするものでございまして,このように,現実に即した具体的かつ詳細なルールを設けることの合理性については,第2回会議においても御支持をいただいたところと理解しております。

 

 

 

まず,1でございますが,これは,私的自治の観点から,委託者,受託者及び受益者全員の合意があれば,裁判所の関与を必要とせず,信託行為を自由に変更できること,すなわち,信託財産の管理方法はもとより,信託財産の分配方法,更には,1ページから2ページのアステリスク1の乙案にあるような,信託の目的の変更ですとか,受益者にとって不利益な内容の変更も,三者の合意があればなし得るということを明らかにしたものでございます。

 

 

 

続きまして,2でございますが,これは,変更の内容いかんによっては,常に信託当事者三者の合意又は裁判所に対する申立てを要するとした場合には無駄な手続的・時間的コストがかかるおそれがあることにかんがみまして,信託当事者の利益に配慮しながら,柔軟な変更手続を設けようとするものでございます。

 

 

 

なお,アないしエ以外に,理論的には,委託者のみによる変更ですとか,委託者及び受託者による変更という場合があり得るわけでございます。

 

 

例えば,委託者の当初の目的は受益者に対する生活費の定額割賦給付であったものの,受益者の緊急ニーズから残額一括給付に変えるような場合が想定されます。

 

 

しかしながら,このような場合には受益者の側から信託行為変更の申出があると思われますので,あえて受益者の合意を不要とする特例を設けなくとも,1によります三者の合意ですとか、あるいは2のウによります委託者と受益者の合意によって変更を行えば足りるものと考えられますので,あえて委託者のみによる変更あるいは委託者及び受託者による変更という場合分けは設けなかったものでございます。

 

 

 

 

 

 

なお,念のため,信託の目的を変更するというような場合に該当することになれば,委託者,受益者,受託者の合意を必要とするのが原則になると考えられます。

 

 

番人

「不動産の場合、信託の変更方法に関しては、信託目録に記録する必要があるね。信託法と同じ方法ならケースバイケースかな。」

 

 

ところで,この2につきましては,第2回会議において,何点か問題指摘がなされました。

 

まず,「信託の目的に反しないことが明らかであるとき」ですとか,「受益者の利益に適合することが明らかであるとき」といった要件は,実務上ワークし得るだけの明確性を備えているかという御指摘がございました。

 

 

確かに,受託者としては,かかる要件を充足したと言えるかの判断に窮し,慎重を期して,念のため1の三者間の合意をとりにいくという事態も想定されるわけですが,事務局といたしましては,このような要件を充足していることが明白な場合もあり得る以上,少なくともその限度では変更手続の簡易・柔軟化に資していると考えられますし,法律上のデフォルト・ルールの規定としてはこれ以上の明確化を図ることは困難であり,あとは信託行為における別段の定めによる実務上の工夫をもって対処せざるを得ないと考えているところでございます。

 

 

 

次に,この要件に違反した場合の効果でございますが,例えば,2の場合におきまして,複数受益者の一部の受益者の利益に反するにもかかわらず,受託者が信託行為を当該受益者に無断で変更したような場合には,かかる変更はすべての信託関係者との間で無効と言わざるを得ず,変更内容に不服のある受益者は,当該変更が無効であることを前提問題として,受託者に対して給付請求等をすることもできるでしょうし,また,確認の利益がある場合であれば,信託行為変更の無効確認訴訟を提起することもできるのではないかと考えております。

 

 

 

 

 

さらに,より理念的な問題としまして,1において,信託行為の変更には受託者の同意を必要とし,更に2のウ,エなどにおきまして,「受託者の利益」を要件として前面に出すといたしますと,あたかも受託者が信託行為の変更に当たって自己の利益を顧慮することを容認するかのような印象を与え,不適当ではないかとの指摘もなされました。

 

 

 

しかしながら,原則として辞任の自由のない受託者としては,当初受託した信託行為の内容とは異なる新たな内容の信託行為について,善管注意義務や忠実義務のもとで受託者としての職務を適切に果たしていかなければならなくなるわけでございますので,そのような責務を十分に果たすべき受託者の同意ないし利益を信託の変更に当たって考慮することは,受託者による信託事務の適切な処理を期待する観点からも不合理とは言えないと考えるものでございます。

 

 

したがいまして,ここで言う「受託者の利益」とは,受託者の個人的な利益のことではもちろんなくて,受託者が善管注意義務や忠実義務違反に問われることなく適切に信託事務を処理し得る利益というようにとらえるべきものと考えております。

 

 

次に,3でございますが,これは,2によりまして信託行為の変更に関与しないこととなる信託当事者に対して変更の内容をあらかじめ了知させることによりまして,変更の効力発生前における反対の意思表明の機会を保障し,あるいは変更の効力発生後における不服申立てや反対受益者の受益権取得請求権の行使の必要性があり得ることを予告しておこうとする趣旨でございます。

 

したがいまして,受益者に対する通知は,信託管理人が選任されていない限り,各受益者に対して個別になすべきことになると思われます。

 

 

もっとも,この通知は変更の効力発生要件ではございませんので,2の要件に合致している限り,通知を怠ったとしても変更自体の効力に影響があるわけではなくて,ただ,通知を怠った受託者の注意義務違反の責任が問われるにとどまることになるというふうに考えております。

 

 

 

 

 

 

 

なお,通知の時期に関しまして,かつてお配りしました報告書におきましては,単に「あらかじめ」としていましたのを,ここでは,「信託の行為の変更の効力が生じる日の前日までに」というふうに改めております。

 

 

これは,通知を受ける者の利益保護の観点から,変更の正に直前に通知するようなこととなる事態を避け,通知から変更までに少なくとも1日間は猶予を設けようという趣旨でございます。

 

 

次に,4でございますが,これは,1又は2にかかわらず,信託行為において,特定の者--これは委託者であり,あるいは受益者であり,受託者である場合もあるでしょうし,それ以外の第三者である場合もあると思うのですが,このような特定の者に変更権限を付与することも可能であるということを明らかにするとともに,この場合におきまして,変更権者としては,変更内容に従って信託事務処理をすることになる受託者に対して,変更の効力発生に先立って,変更内容をあらかじめ通知しておくことが必要になると思われますところ,このように通知を受けた受託者は,3の場合と同様の趣旨から,変更の効力発生日の前日までに受益者及び委託者に対して変更内容を通知すべきこととしたものでございます。

 

 

 

ところで,このように変更権限を特定の者に付与することにつきましては,第2回会議の場におきまして,その者の変更権限に一定の制約を課すべきではないか,例えば受益者の保護ですとか信託の目的あるいは本質に反するような変更まではできないとすべきではないかといった指摘がされたところでございます。

 

 

そこで,ここでは,甲案といたしまして,信託行為が定めた変更権者が存することは,信託行為の当事者たる委託者と受託者はもちろん,信託行為の内容を了知しているはずの受益者にとっても明らかなのであるから,変更権限の内容に制約を設ける必要はないという甲案の考え方,これに対し,乙案といたしまして,変更権限を無制限とするのはやはり不適当であるという観点から,後ほど第60で説明しますが,反対受益者の受益権取得請求権が強行的に付与されるべき内容の変更まではできないとの制約を設けるべきであるという考え方,甲案,乙案を併記して御審議をいただきたいと考えております。

 

 

 

 

 

なお,乙案というのはあくまでも制約内容の一例を示したにとどまりまして,これとは別の制約方法が適当であるならば,その点についてもあわせて御審議を願えればと存じます。

 

 

 

 

 

 

 

次に,5でございますが,これは,信託当事者による信託の変更において,変更の内容が反対受益者の受益権取得請求権の発生原因となるような場合,したがいまして,2のイの受益者の利益に適合することが明らかであるときは当然除かれることになるわけでございますが,このような場合におきましては,変更の内容とあわせて,変更を中止するための条件をも合意するか,あるいは決定すべきものとしたところでございます。

 

 

その趣旨は,反対受益者の受益権取得請求権の多寡,あるいは変更当時の経済情勢やファンドの運用状況によりましては,予定どおりに変更を実施することが信託の運用を著しく損ないかねないことになる事態も想定し得るわけですので,このような場合には,受託者は,いったんなされた合意又は決定にもかかわらず,善管注意義務及び忠実義務のもとで信託を存続させていくためには,あらかじめ設定された条件に従えば変更を中止し得ることとしまして,受託者が判断に窮する事態から救済しようという趣旨でございます。

 

 

 

 

御参考までに,変更に当たって想定し得るプロセスを述べますと,例えば受益者から変更を打診する場合には,受益者側において変更内容と中止の条件とを決議した上で,受託者と合意するか又は受託者に通知するということになるでしょうし,一方,受託者から変更を打診する場合には,受託者側において変更の内容と中止の条件とを決定した上で,受益者と合意するということになると考えております。

 

 

 

なお,以上はあくまでも1又は2の場合であることが前提でありまして,4の場合につきましては対象としておりません。

 

 

これは,信託行為でどのような定めがなされることになるかを予想することが不可能でありますので,変更時の中止の条件をあらかじめ信託行為に定めておくことですとか,あるいは受託者の善管注意義務の一般的解釈などによって対処せざるを得ないと考えているからでございます。

 

 

 

 

6は,信託行為の変更に当たっての裁判所の関与の在り方について問題提起するものでございます。

 

 

ここでの事務局の当面の問題意識は,裁判所による変更の対象を,現行法のように信託財産の管理方法のみに限るか,それとも米国統一信託法典のように分配条項まで含めるべきかという点が中心でございまして,資料の5ページに詳細に示させていただきましたように,いろいろの考え方があり得るところでございます。

 

 

この点についての審議状況を踏まえた上で,更に手続的規定や判断基準の整備等も後に検討していきたいというふうに考えております。

 

 

 

なお,信託財産の管理方法以外の変更が常に信託目的の変更に直結するわけではないと考えておりますが,信託当事者による合意の場合と異なりまして,裁判所が信託目的を変更するような変更をすることはできないという限界があるということ,裁判所に対する変更の申立てには信託行為の当時予見することのできない特別の事情があることが必要ですので,信託行為において事情変更に応じた手当てがされている限りにおいては,予見不能性,すなわち申立ての要件は欠けることになると思われるということを付言させていただきます。

 

 

 

 

 

 

続きまして,第58の信託の併合についての提案でございます。

 

ここに言う「信託の併合」でございますが,1の定義にございますとおり,ある信託行為に係る信託財産と,他の信託行為に係る信託財産とを新たな信託行為における信託財産とすることを言いまして,信託行為の変更の一形態と考えております。

 

 

 

このように,信託の併合は会社の合併に類似するものでございまして,信託の管理コストの削減ですとか,資本の集合によって効率的な投資が可能となり運用の自由度も増すといった,いわゆる規模のメリットが図られることなどの点で有益であると考えられます。

 

 

 

現行法には信託の併合に関する規定がないため,信託行為の変更と信託財産の併合の手続によらざるを得ないようにも考えられますが,ここでは,実務上のニーズにかんがみまして,信託の併合に関する独立の手続的規定を設けようとするものでございます。

 

 

まず,2の(1)でございますが,これは,信託の併合に当たりまして各信託の受益者に対して提供すべき情報を明らかにしたものでございます。

 

 

総じて言いますと,受益者において,提案されている内容の信託の併合比率を始めとする併合条件を知ることによりまして,併合の利害得失を分析し,当該併合を承認するか否か,あるいは反対受益者の受益権取得請求権を行使するか否か等の判断材料を提供しようとするものでございます。

 

 

次に,2の(2)でございますが,先ほど申しましたように,信託の併合も信託行為の変更の一形態であることから,信託行為の変更に関する規律を準用するものでございます。

 

 

 

もっとも,極めて大規模な信託が極めて小規模の信託と併合される場合におきまして,信託行為の変更の特則として,第57の2のイで述べましたように,「受益者の利益に適合することが明らかであるとき」というふうな要件にはまって,大規模信託の受益者の同意は不要と言えるか,あるいはこの場合をもってこのように言うのは難しいかという問題がございまして,株式会社の簡易合併に類似するような特別な規定を別途設けるべきかにつきましては,なお検討する必要があると考えているところでございます。

 

 

2の(3)以降は,信託の併合と信託債権者に関する提案でございます。

 

 

まず,2の(3)でございますが,これは,併合対象となる双方の信託財産の運用状況によりましては,各信託の信託財産に対する債権者,殊に責任財産が信託財産に限定されている信託債権者にとっては多大な悪影響を受けることともなりかねないということにかんがみまして,会社の合併の場合と同様の債権者保護手続を設けることとするものでございます。

 

 

これに対しまして,2の(4)ですとか,あるいは資料9ページの最後の(注)というところでございますが,これは,このような債権者保護手続が必要以上に重厚な手続となることを回避するために一定の例外を設けようとするものでご

ざいます。

 

 

最後に,2の(5)でございますが,これは,信託の併合におきましては,会社の合併の場合と同様に,各信託に係る権利義務が併合後の新たな信託に包括承継されることを明らかにしたものでございます。

 

 

ポリー

「信託の併合ですか。家族信託でも利用することができますかね。受託者が一緒で、信託行為が2つ以上ある場合。債権者保護を考えて、課税を考えて、信託財産の追加で対応できるか考えてからの話になるのでしょうか。」

 

 

 

続きまして,第59の信託の分割の提案でございます。

 

ここに言う「信託の分割」でございますが,2類型考えておりまして,一つは,1の(1)にございますように,便宜的に「単純信託分割」と命名しておりますが,ある信託行為に係る信託財産の一部を,新たな信託行為における信託財産とするものでありまして,株式会社の新設分割に類似するものでございます。

 

 

具体的には,11ページ,12ページのケース1から4に相当するものと考えております。分割後において受託者が共通するか否か,それから,受益者が分割後の双方の信託財産の受益者となるか否かによりまして,ケース1からケース4までの4通りがあるかというように考えております。

 

 

 

もう一つは,1の(2)の定義におきまして,便宜的に「吸収信託分割」と命名しておりますが,ある信託行為に係る信託財産の一部を,これは既に存する他の信託行為における信託財産の一部とするものでありまして,株式会社の吸収分割に類似するものでございます。

 

 

具体例として,13ページのケース5,6というものを挙げさせていただいております。

 

 

受益者が双方の財産に行けるか,それとも分かれるかという点で二つに分けて例示しております。

 

 

信託の分割というのも信託行為の変更の一形態と言うことができまして,信託財産の効率的な運用を図る上で有用な場合があると考えられます。

 

 

現行法には信託の分割に関する規定がありませんので,信託行為の変更と信託財産の分割の手続によらざるを得ないとも考えられますが,信託の併合の場合と同じく,実務上のニーズにかんがみまして,信託の分割に関する独立の手続的規定を設けようとするものでございます。

 

 

 

 

 

まず,2の(1)と3の(1)でございますが,これは,信託の分割に当たりまして信託の受益者に対して提供すべき情報を明らかにしたものでございまして,信託の併合の場合と同様に,受益者において,提案されている内容の信託の分割条件を知ることにより,分割の利害得失を分析し,当該分割を承認するか否か,あるいは反対受益者による受益権取得請求権を行使するか否か等の判断材料を提供しようとするものでございます。

 

 

次に,単純信託分割に関する2の(2)と,吸収信託分割に関する3の(3),2の(2)を準用する3の(3)でございますが,これは,信託の分割も先ほど申しましたとおり信託行為の変更の一形態であることから,信託行為の変更に関する規律を準用するものでございます。

 

 

 

それから,2の(3)と3の(2),(3)というのは,信託の分割と信託債権者に関する規定でございます。

 

 

まず,単純信託分割に関する2の(3)と,吸収信託分割の場合にこれを準用する3の(3)でございますが,いずれも,信託の分割におきましては,分割前の信託財産に対する債権者は,信託の分割後はいずれの信託財産に対してもかかっていけるということを明らかにしたものでございます。

 

 

 

もっとも,その例外といたしまして,11ページのアステリスク1のところに記載しましたとおり,信託債権者を信託財産によって切り分けることに関する規定を設けるか否かについては,そのニーズを踏まえながら検討したいと考えておりますので,実務上このような切り分けをするニーズが存するか否かについて,是非とも御教示をいただきたいというふうに考えております。

 

 

最後に,吸収信託分割のみに関する3の(2)でございますけれども,これは,吸収信託分割の場合におきまして,既に存する信託財産間で一部移転が行われる点において信託の併合の要素が含まれていることにかんがみまして,信託の併合の場合と同様に,分割前の双方の信託財産に対する債権者に対し,債権者保護手続とその一定の例外を規定したものでございます。

以上で終わります。

 

 

すみれ

「信託の分割か。家族信託ではどうだろう。分割しないといけないような場合なら信託を終了した方が良いような気もするけど。受益者や信託財産をすっきりさせたい場合には利用することがあるのかな。」

 

 

 

  •  この絵の見方ですけれども,例えば11ページで言えば,小さい黒丸が受益者ですね。それから,白丸で中にAと書いてあるのが信託財産で,大きい四角が受託者ということですね。

 

 

  •  そういうことでございます。

 

 

  •  併合,分割より前の,信託行為の変更というのも大きな話なので。

 

私が前に申し上げたこともちゃんと取り上げていただいて,それに一定の配慮をいただいたというふうに今の御説明は理解しておるのですが,それでもなお十分分からないところがあって。

 

 

この第57の1のところで,今まで私自身も全然不思議に思っていなかったのです。

 

 

委託者,受益者,受託者というのがとにかく信託の三者ですから,それで合意すればもちろん信託行為の変更もできるよ,終了もできるよと,当たり前の話だと思っていたのですが,2の方を見ていくと,翻って,どうなんだろうと。

 

 

委託者と受益者と受託者を,あたかも--これは結局のところは,もともと日本では信託も単なる契約だと考えているから,契約当事者としてこういうことに関与するのは当たり前だという発想でできているのだと私は思うのですけれども,やはり信託は違うのだというふうに考えていただいた方がいいと思うのです。

 

 

 

 

 

 

だから,これも本当は,委託者と受益者が合意すれば受託者は信託行為の変更をすることができる,当たり前のことですよね,そこへ合意の当事者として受託者を出す必要は全くないような……。

 

 

受託者というのは信託財産を管理しているわけですから,その管理内容であれ何であれ,委託者と受益者がこう言ってきたのだと,そうすれば受託者はそれに従うというだけの話のものをこうやって三つ並べるというのは,やはりおかしいというような気がするのです。

 

 

すみれ

「そうかな。受託者も管理方法が変わるとやりたくない場合もありそうだけど。」

 

 

それが,2のところで,「受託者の利益を害しない」というような形で顕在化するものだから,この前も申し上げて,しかし,今日のお話では,この「受託者の利益」というのは受託者の個人的な利益ではないと。

 

 

すみれ

「受託者の利益を害しないっていうのはちょっと違うような気もします。」

 

 

そして,勝手に信託行為が変更されて,それでも受託者としてとどまらざるを得ないと--ちょっと私,全部書き切ることができないというか,覚えられなかったのですが,もう一回繰り返していただけると有り難いのですが,新たな信託のもとで善管注意義務や忠実義務を果たすのが難しくなる場合があろう,そういうものを受託者に課すのは酷ではないかと。

 

 

そういうものを果たせなくなれば,それは信託の不利益になりますよね。

 

 

だから,私が例1としてまず考えたのは,変更された新たな信託では善管注意義務の内容が非常に高度であって,例えば私が受託者ですが,私が今まで投資したこともないようなところへ投資せよというようなことを言われても,私は困りますと。

 

 

そんなことを押しつけられたのでは本当に困るということなのですが,困らないかもしれないのですね。

 

 

今のような例を考えておられないのかもしれないのですけれども,もう一回,ちょっと私の枠組みを……。

 

 

今,善管注意義務の話が一つ,それから忠実義務を果たすことが難しくなる場合というのは,ちょっと私,想像ができなくて,これは教えてもらいたいのです。これは後の話です。

 

善管注意義務の方は,今のような形で私が想像するには,今までにないような,自分の能力を超えるような投資の方法とか何とかかんとかと言われたら,それは困りますねということなのですが,しかし,方法は二つありますよね,その場合ですら。

 

 

 

第1の方法は,我々は自己執行義務の変更というのを大胆にやることに多分なるのですね。

 

 

そうだとすると,とりあえず,それでも,樋口,あんたやれよと受益者と委託者がおっしゃるのであれば,私は,自分の能力を超えているのだけれども,能力のある人を見つけますよ,それでそこへ委託してやってもらいますということで,善管注意義務の履行はできそうな気がするのですね。

 

 

 

 

でも,そういうことがもしできないなら,第2の方法は,辞任のところでは,今のところは43条から46条 をそのまま残すというのですが,そのまま残すのの中には,「已ムコトヲ得サル事由アルトキハ受託者ハ裁判所ノ許可ヲ受ケ其ノ任務ヲ辞スルコトヲ得」と書いてあるのですから,そういう方法をとってやめることができそうなのですね。

 

 

あるいは,本当はもう少し辞任を容易にするという選択肢も,今立法作業をやっているのですから,あり得るような気がするのですね。

 

 

だから,「受託者の利益」というのが,今日のお話では,この前,もしかしたら私がそもそも誤解していて,受託者の個人的利益をこんなにはっきりしてくるようでは信託の本質という点から問題なのではないかということを強く申し上げたのですが,そうではないというふうにおっしゃってくださったので,もうそこで満足すべきなのかもしれませんが,更にもう一歩,これは,私が「受託者の利益」の意味というのを十分分かっていないところがあって,ちょっと教えていただければ有り難い。具体的な例で示してくださると有り難い。

 

 

 

  •  では,「受託者の利益」という方があるいは答えやすいかもしれないので,まずは……。もう一つはもっと根本的な問題ですから。

 

 

 

  •  「受託者の利益」というのも決して答えやすいわけではないのですが。

ここで,例えばどういう場合に受託者は困るかといいますと,善管注意義務は,○○委員がおっしゃったとおり,自分の能力に余るような信託財産の管理運用方法の変更がなされたときに困るだろうという気がいたしますし,忠実義務は,確かに,まじめにやっていればいいんじゃないかということに変わりないと言われればそうなのですが,例えば,もともとは自分が投資していた先について,信託行為の変更によってそこに投資するというような変更がもしされたときには,投資先が競合して,忠実義務の問題というのは生じてくるのではないかなというような気がいたしております。

 

 

 

そういうときに義務に従った行動をとれなくなるということが,ここで言う「受託者の利益」に反する場合に該当するのではないかなというような感じがいたしております。

 

 

 

 

 

  •  済みません,「受託者の利益」というのはこういうものだというふうにさっきおっしゃったものをもう1回読み上げていただくことと,それから,今の忠実義務の方は,正に委託者と受益者がそういうふうに言ってくれたのだから,忠実義務違反はもはやなくなるわけですね。

 

 

 

  •  受益者が言ってきた場合で,受託者が従ったということですね。

 

  •  ええ,忠実義務にならない例外の典型みたいなものだから。

 

それでも,実際にやってみると,どうしたらというので困る例はあり得るとは思うのですけれども,一応大きな意味では,そこまでおっしゃるなら,もはや忠実義務違反は私にはありませんという話になるので,大丈夫なような気もするのですね。

定義的な,「受託者の利益」とはこれだというのをもう1回だけ。

 

 

 

 

  •  定義というか,私がいわば独自の見解を申し上げているだけなのですが,この点につきましては,「受託者の利益」は,原則として辞任の自由がないというのが我々の前提でございますので,当初受託した信託行為の内容とは異なる新たな内容の信託行為についても,善管注意義務や忠実義務のもとで受託者としての職務を適切に果たしていかなければならなくなる,そのような責務を十分に果たすべき受託者の同意ないし利益を信託の変更に当たって考慮することは,受託者による信託事務の適切な処理を期待するという観点からも不合理とは言えないと考えられる。

 

 

 

したがいまして,ここに言う「受託者の利益」とは,受託者の個人的利益のことではなくて,受託者が善管注意義務や忠実義務違反に問われることなく,適切に信託事務を処理し得る利益というふうに考えているというところでございます。

 

 

あと,辞任の自由を認めた方がというお話は,これはかつてもいろいろ議論があったわけでございますが,ここでは,信頼というのは,別に受託者が受益者を信用しているわけではなくて,受益者が受託者を信用しているという,言ってみれば片面的な形になっておりますので,受託者に対するガバナンスなどの観点からも,委託者や受益者が受託者を自由に解任できるというのは,信頼をしている方からの解任なのでいいと思うのですが,逆に,信頼されている方が自分で自由にやめるというのはそれとパラレルにはいかないということもありまして,受託者には辞任の自由は原則ないということで通しているということも付言させていただきます。

 

 

  •  今の問題と密接に関係しますけれども,○○委員の意見のもう一つ,いわば1に相当する部分ですか,根本的に,変更というものについて。

 

 

  •  1の方でございますか。三者の合意としているのはおかしいという。

 

○○委員が先ほどおっしゃったのは,委託者と受益者の合意に基づいて受託者がやればいいじゃないかということですが,先ほど私申しましたけれども,二者がいいからといって,できないこともあるだろうと。

 

 

やはり,そういう能力という観点から,受託者の意向というのもこの場に反映させるべきではないか,それは当然,自己の利益というよりは,善管注意義務,忠実義務のもとで事務処理をし得るという自分の能力にかんがみて,誠実に合意に関与するということは認めていいのではないかということで,三者の並立にしているということでございます。

 

 

  •  私,○○委員のおっしゃることに80パーセント賛成で,20パーセント反対なのですが,反対なのは,受託者が困る場面というのは結構あるだろうというところが反対であって,○○委員のおっしゃるような形では処理できないだろうと思うのです。

 

 

ただ,そもそも三面契約としてでき上がっているわけではなくて,委託者が信託を設定して,受託者が引き受けるという形ででき上がっているわけですから,三者の合意と書くのはやはり余りよくないのではないかと思うのですね。

 

 

そうすると,やはり,委託者と受益者の合意による,そして受託者の同意を得なければならないというふうに書き分けるべきであって,本当に細かい技術的な話ですが,やはり精神は違うので,三者並立よりも,二人の人が受託者の同意を得て変更を行うという形の方が何かいいんじゃないかなという気がするということだけです。それが賛成の方の話です。

 

 

すみれ

「精神か。」

 

 

  •  実質は,今の○○幹事のことは非常によく分かるわけですけれども,そもそも信託の構造が何かという観点からすると,なかなかそこは難しい問題があって,契約によって設定された信託のそもそもの当事者はだれかとか,形式的に考えるとこれはやはり委託者と受託者であるとか,そういうふうにもなりかねないので,なかなか単純にはいかないところもありますね。

 

 

ただ,実質は,○○幹事のような形でやればそんなに弊害はないと私も思いますけれども。

 

 

  •  おっしゃったように,委託者と受益者の合意をもって受託者が同意するというスキームというのは,正に理念的には我々が考えていたとおりでございまして,おっしゃるとおりかというふうに思っております。

 

 

ただ,事務局の方として教えていただきたいのは,このように三者の合意としておりますのは,受託者から積極的に変更の提案もできるという趣旨も含まれているわけでございますが,もしも受託者は同意ができるとすると,消極的に同意はできるけれども,積極的に変更の提案はできないということになるのではないかと。

 

 

その点につきましての懸念というのがありますので,そういうことはないのか,それともそれでも構わないのか,この問題につきましての御見解を是非ともお教えいただければというふうに思います。

 

 

 

  •  私が答える立場にいるとも思えませんが,受託者が,例えば,受託者の負う善管注意義務の範囲において,変更した方がよい,変更した方がより信託の目的を達することができると思うときに提案をすべきであるという義務を考えるというのは十分にあり得ることだと思うのですね。

 

 

しかし,提案をして,直した方がいいですねというふうに言うという話と,自らが直すことの当事者になるかというのは別問題なのではないかなという気がします。

 

 

すみれ

「言われてみれば違うね。」

 

 

 

が,おっしゃることもよく分かりますし,それよりも,○○委員がおっしゃったこともよく分かりますので,単純に受託者の同意とすればいいじゃないかというふうに言ったのは,考えがまだ浅かったというふうに思いますけれども。

 

だから,○○委員がおっしゃったように,そもそもの信託の設定の在り方というのをどういうふうにとらえるかというところと平仄を合わせて書くようにしないといけない--まあ結論はないわけですが--ということで御勘弁をいただければと思います。

 

 

 

 

 

  •  いろいろと考慮しなければいけないような問題がありそうなので,これについては引き続き検討させていただいたらよろしいのではないでしょうか。

 

 

  •  受託者の利益に関して受託者の同意が必要かという今の議論についての話で,受託者サイドの意見としてお話ししたいのですけれども。

 

もちろん,この制度の必要性というのは,事務局がおっしゃられた,受託者の善管注意義務,忠実義務を真っ当に確保するためという点もあろうかと思います。

 

ただ,考え方にもよると思うのですけれども,受託者個人としての利益もある程度おもんぱかっていただくことはできないのかということでございます。

 

 

 

これは理由が二つありまして,一つは,正しく実務的には契約というふうにとらえているわけですけれども,そうした場合に,契約を一方的に変えられてしまうということは,実務感覚からは非常にかけ離れているということでございます。

 

 

 

 

すみれ

「たしかに。受託者は契約の当事者だし。多分一番長い時間契約に拘束されるよね。」

 

 

 

二つ目は,これは補償請求権ということにも関係し得るわけですけれども,例えば,変更を求められましたと,やれるかやれないかというと,やれますと,ただし莫大な長期投資が必要ですと。

 

 

例えば,やれるのですけれども,人を新たに雇わなければいけないですよと,ただ,その信託自体はすぐ終わります,他方,人をいったん雇った場合にはなかなかやめられませんといったときに,結局,その補償請求権の金額いかん,どれぐらいでつけるかということにもよると思うのですけれども,信託が終わった後にそういう負担を受託者として負い続けてしまうことになる。

 

 

それで,もし補償請求権を全部負わなければ,結局は信託受託者の個人の損失になってしまうという場合もあろうかと思います。

 

 

そうした場合に,やはりそういうことは受託者の担い手として萎縮効果を及ぼしてしまうこともあり得ますので,そこら辺を考えますと,そういう御提案があったときに受託者の同意を得るということを原則としていただきたいというふうには思っております。

 

 

すみれ

「萎縮か。」

 

 

 

  •  ○○委員のお話とほとんどかぶってしまうのですけれども,非常にレベルの低い話になってしまうのですけれども,理念的に言いますと○○委員のおっしゃることというのは非常によく分かるのですけれども,本当に現実の問題として考えた場合に受託者として対応できるかという,先ほど○○委員からお話があったようなこともありますし,非常に困難な場合があります。

 

 

例えば,信託行為,信託契約一つとってみても,当然,商品を開発してお客様に提供するということからすると,受託者のリスクというのはもちろんいろいろと勘案するわけですけれども,お客様にとってどういう効果があるのだろうかということをある意味どんどん練った上で何らかの対応をしていくということをやっていくわけですけれども,それで一つの商品ができ上がって,提供すると。

 

 

そういう中で突発的な形で変更を求められるということについて,どこまで対応できるかというと,そういうのはレベルの低い受託者なのだと言われてしまえばそれまでなのですけれども,なかなか対応は難しいのかなというのと,もう一つは辞任のところについて,確かにおっしゃるとおり辞任というのを緩めてという部分もあるかもしれませんけれども,これも現実の問題としてとらえた場合には,そういうところで辞任したときに,受けてくれるところが本当にあるのだろうかという--これも本当にレベルの低い話なのですけれども--ところがあるので,実務上からいくと,やはりかなりしんどい話かなと,そういうことを分かっていただきたいと。

 

 

 

 

 

 

  •  今までのお話と少し関連しますが,若干異なると言えば異なる問題なのですが。

 

 

第57の1,2を今お話しされていたのですが,その下の4に正にかかわる問題だと思いますが,「信託行為に別段の定めがあるときは,当該定めに従うものとする」と。

 

 

別段の定めの例としましては,3ページ以下に,特定の第三者等々に変更を委任するような定めも許容されると。

 

 

これは本当にいろいろなパターンがあり得るところだろうと思います。

 

 

当事者のだれかに委ねるという場合もあるでしょうし,第三者,それもいろいろな第三者があるだろうと思いますが,そのあたりについては最初の御説明の中でも御指摘されていたところです。

 

 

そして,これについては甲案,乙案というのがあって,甲案ですと,最初から別段の定めが分かってやっているのだから,どういうことになったとしてもそれは仕方がないでしょうと。乙案は,それではやはりまずいので,限定を加えようというようなお話だったと思います。

 

 

 

これは,広い意味での契約といいますと,契約内容の変更権限を当事者のどちらかないしは第三者に委ねるというような契約がそもそも効力を認められるべきものかどうかということ自体からして既に大きい問題があろうかと思います。

 

 

特に,消費者契約に相当する場合,つまり,一方は事業者で他方は消費者だというような場合ですと,消費者契約法の10条,不当条項規制の一般条項ですが,その一般条項に当たる代表例の一つが,正に変更権限を他方当事者ないしは一方当事者と密接に関連する者に委ねるというような条項だろうと思うのですね。

 

 

そういう意味で,この4で,「別段の定めがあるとき」と,そしてその例として,一方当事者ないしは第三者に委ねるような定めがそもそも有効かどうかということ自体,やはり気にする必要があるのではないかなと思います。

 

そして,いろいろあるうちの一つの例として,例えば受託者に変更権限を委ねるというような定めが最初からあるとしたような場合に,それが果たして有効なのかと。

 

 

 

有効だとして,もちろん受託者は善管注意義務,忠実義務を負っているわけでして,それを履行しないといけないわけですけれども,客観的に見ればその義務に違反しているような変更をした場合に,その変更自身は効力を認められるのか,認められるけれども善管注意義務違反,忠実義務違反の責任が問えるというふうに考えるのか,それとも,やはりそれはちょっと迂遠なことであって,そもそも変更の効力が認められない,ないしは,そもそもこういう定め,受託者に変更権限を委ねるような定め自体が無効なのだというような考え方もあり得るだろうと思うのですが,そのあたりはいかがお考えなのでしょうか。

 

 

 

 

 

  •  私も同じ問題意識を持っていまして,契約で空白部分を第三者に委ねるということはあり得ると思うのです。

 

例えば代金を第三者に決定させるとかですね。それから,紛争が生じたときに第三者の判断に解決を委ねるということもあると思うのです。

 

 

ただ,ここは,積極的に合意したことを新たに第三者に変更させるという権限を与えるものですから,どうも今まであった例とは違うのではないかということで,○○幹事のおっしゃっていることと同じ問題意識を持っています。

 

 

  •  非常に根本的な問題で……。

 

 

  •  我々としては,正にそういう,権限を与えることはできるという前提のもとにどうするかというレベル,第2段階の議論をしていたところでございまして,そもそもそういう権限を与えることができるかどうかというところも正に皆様方の御議論もいただきたいというところでございまして,いろいろな文献などを見ておりましても,そこのところを書いたものは余りないという気がいたしております。

 

 

 

ただ,そもそもそういう権限を与えるのは,いったん決めたものを変更して受益者の不利になるおそれがあるのではないかという観点からとられるのであれば,例えば乙案のようにするのであれば,仮に第三者に変更権限を与えていても,このような縛りがかかっているのであれば,それをあえて無効とまでしなくてもいいのではないかなというような感じがいたしますので,無効とするぐらいだったら,乙案というのも十分あり得るかなと。

 

 

ただ,御指摘の趣旨からすると,甲案というのは問題が多いというような感じが,今のところ,事務局としてはいたしております。

 

 

  •  甲か乙かというと,乙の方がもちろんいいと思うのですけれども,そもそもこういう変更権限を第三者あるいは当事者の一方に認めるということが可能なのかということが根本的な問題提起としてあるわけですね。

 

そこで,むしろ,具体的にどういう場合を想定しておられるのかということから考えていった方が解決に近いのかなという気がするのですが。

 

 

大上段に第三者に変更権限を認めると言うと非常に大きな話になりますので,こういうことが問題なのだということをお教えいただいたらいいかなと思いますけれども。

 

 

 

  •  少し考えてから答えた方がいいかもしれませんね。

では,ちょっとここで休憩にしましょうか。

 

(休     憩)

 

  •  それでは,再開の時間になりましたので,お席にお戻りください。

それでは,先ほど非常に難しい問題を提起されましたので,それについて,○○幹事の方でお願いします。

 

 

 

  •  休憩時間中に考えてみたのですけれども,例えばどういう例があるかといいますと,アメリカなどでは割と使われていると思うのですが,例えば,子供が3人ぐらいいまして,そのときの経済状況に応じて配分額を決めてくださいと。

 

 

それで,その変更権というのを受託者に与える。

 

これは,裁量信託になると思うのですが。もちろん,その子供たちのことをよく知る第三者に与えてもいいですけれども,そういう者がその時々の状況を見て適宜配分額を変更できると,このような変更権限を第三者に与えるということが一番想定される場合ではないかなという気がいたしております。

 

 

番人

「受益者は特定されている場合だね。受託者の権限内容でできると思うんだけど。第三者っていうのは子供のことをよく知っている人か運営委員会みたいなものを作るかってことかな。」

 

 

 

今のは民事信託ですけれども,他方,商事信託でどういう場合があるかというと,これはなかなか我々としても適切な例というのが思い当たらなくて……。

 

仄聞したところによりますと,例えばポートフォリオを決めると。例えば投資先,運用先なんかを決めるときに,ある第三者がその時々の経済状況に応じてベストと思われるところを決定すると。

 

 

これは変更というよりは,その時々に信託行為の中身を決定していくというような形をとっているというようにも伺っておりますが,考え方によっては一種の変更とも言えるのではないかと思われるところです。

 

 

もちろん,それは無制限というわけではなくて,少なくとも,今言ったような,そのときの経済情勢を見て,受益者の利益に最も適合するとか,ある程度の縛りがかかっているのかと思います。

 

余り実務で使われているかどうかということはよく分からないのですが,商事信託でもそういうことは考え得るかというふうに思います。

 

 

 

 

そもそも変更権限を与えていいのかどうかという問題になってまいりますと,しかし,契約の世界,あるいは信託のこれまでの使われ方などを見ましても,第三者に変更権限を与えること自体が許されないというのは,ちょっとそこまで言うのは一般的には難しいのではないか。

 

 

やはり,そのときの設定の状況とか周囲の状況などを見まして,変更権限の付与がそもそも公序良俗違反で無効になるとか,あるいは,ここで言いますと乙案的なもののように,無制限ではなくて,委託者の設定した目的とか受益者の利益という観点からの制限のかかった変更権限までは付与されるけれども,それ以上はできないというような,いったんオーケーとした上で絞るというようなやり方という方が現実的ではないかなというように考えられるところです。

 

 

 

 

 

  •  この点につきましては,更にもうちょっと考えていきたいと思いますけれども,今の○○幹事の答えに関して,何か更にもし御質問があれば。

 

 

  •  先ほどの,商事で信託というお話ですけれども,当然,現行実務においてはありませんので,こういうことがありますよという御紹介はできないのですけれども,ぱっとイメージするに,やはり我々が持っているノウハウよりも高いレベルであるとか,特に,例えば知財の関係の信託等で,法的な問題であるとか,ほかに技術的な問題,そういったものについて我々では分からないような形で,もう完全に例えば弁護士さんなり弁理士さんとかにゆだねてしまった方がいいような場合というのが出てくるのではないかなというふうに考えております。

 

ポリー

「知的財産権の信託ですか。大きいですね。もう少し利用される予定だったのでしょうか。」

 

 

そういうこともありまして,信託制度自体の柔軟性を確保したいという観点から見て,先ほどの甲案,乙案からいくと,やはり甲案を支持したいというふうに思っています。

 

 

弊害というのは当然出てくるのだと思いますけれども,これについては,契約で書いているでしょうというのが一つと,これから先,第60のところで議論があると思いますけれども,反対受益者の取得請求権を強行規定として確保するというところでもって弊害を防止する,受益者救済を図るという手段があると思いますので,自由度を高めるという意味合いから,甲案ということでお願いしたいというところです。

 

 

 

 

 

 

  •  ○○幹事のおっしゃったようなことで,私,十分に理解できると思っていますが,この第57の4について言うと,○○幹事がおっしゃるような懸念にも非常に共感することがあって,これから申し上げることは今後何度か申し上げようと思っているので,もう二度と繰り返すなと言われても困るのですが。

 

 

つまり,アメリカでは,信託行為に別段の定めというので,例えば受託者に変更権を認めている場合だってあるわけです。それが一番典型的な形では,裁量信託というようなものですから。

 

 

ただ,英米法の場合はやはり歴史的なバックグラウンドがあって,最後はエクイティーの裁判所。

 

 

つまり,何を言いたいかというと,この信託法の見直しで我々ずっとやってきていて,何度も耳にする言葉が,「デフォルト・ルール」というものですね。

 

 

基本的なものをここで書いておいて,しかしあとは契約でいかようにでもなるんですよ,別段の定めでいかようにでもなるんですよというので,その半面は非常にいいことだと思っているのです。

 

 

やはり信託の自由というのは契約の自由に通ずるところがあって,それでないと信託はいろいろな形で発展していかない。

 

 

しかし,今,アメリカの例えば統一信託法典で任意法規化ということが強く言われているのは,彼らの世界では,それでも後ろにエクイティーの裁判所が常にあって,例えば一つ判例を挙げるとすれば,ある信託条項で受託者にアブソリュート・ディスクレッションを上げると書いてあるのですね,はっきり。

 

 

すみれ

「アブソリュート・ディスクレッション?絶対的な裁量か。」

 

 

それに対して何の制約もないとまで書いてあるのです。しかし,紛争になりますね。

 

それで裁判所に行くと,アブソリュート・ディスクレッション,絶対的な裁量と書いてあってもだめですよというようなことを言ってくれるわけです。

 

これは,信託というのは単純な契約ではないですからという話をやってくれるのですね。

 

 

日本でそういうバックグラウンドがあるだろうかということを翻って考えると,やはり我々はそういうような何百年間の歴史というのは持っていない。

 

 

すみれ

「たしかに。」

 

 

書いてあるからという話で,契約だという話で。完全な商取引のときは,私はそれでいいと思っているのです。

 

 

商人対商人,プロ対プロという話はそれでいいと思っているのですが,それが波及していって,先ほど例に挙がった消費者であれ何であれというところへ行って,信託というのはそんなものなのかというふうな風評,評価がなされるような事態が出てくることはやはり非常に問題だと思うのですね。

 

 

それは商事信託にとっても問題であると思うので,そういう意味で,日本としては,この4についても何らかの制約をつけざるを得ないような形になっても仕方がないのかなと思っていますが。

 

 

すみれ

「他の国とは歴史的な背景とか違うし。信託というのは単純な契約じゃない、か。」

 

 

 

 

 

  •  この信託全体を通じて共通する問題ですけれども,一方で商事信託で,またその中でも,いろいろ最先端ので,いろいろ充当性といいますか,融通性を持たせた方がいいというタイプのものから,商事で信託はあっても消費者相手に使う信託であるとか,あるいは,現実にはまだそんなにないわけですけれども,ファミリー信託的なものと,いろいろなものを含んでいるために,なかなか,どこにデフォルト・ルール的なものを置いたらいいかというのを常に考えていかなくてはいけないのですね。

 

 

ポリー

「ファミリー信託的なものですね。今は利用される方も多くなってきています。」

 

 

 

この問題につきましても,先ほどいろいろ御意見が--多少両極端的な御意見がありますけれども,どこか中間的といいますか,それなりに合理性のあるところに落ち着くように,これからまた議論していきたいと思いますので,そういうことでよろしいでしょうか。

 

 

 

 

  •  甲案,乙案ということで出ているのですけれども,議論の中では,この甲案,乙案については,要するに特定の者に権限を付与する場合の権限の限定ということで議論がされているようなのですが,私もどちらかというと,甲,乙で言うと乙の方がいいのではないかと思うのですが,この指示する場合だけの限定で足りるのかというのがちょっと気になっておりまして,特に,乙案に書かれている目的を変更する場合ですとか,あるいは第60の記載の内容の変更というのは信託の根幹にかかわる部分だと思いますので,これについては,基本的に1とか2とかの規律によるというふうにすることを検討するべきではないかと思うのですが,その点も含めて御検討いただければと思います。

 

 

 

 

 

  •  今のは,もちろん三者が合意すればいいわけでしょうけれども,信託行為の別段の定めでもって例えば目的の変更ができるというのは困るではないかと。

 

 

つまり,特定の人に権限を与えた上での話ではなくて,一般的に,この変更できるときのその変更できる中身について,信託行為に別段の定めを設けて信託目的の変更もできるという形の規定を設けるのは問題があると,そういう趣旨ですね。

 

 

 

  •  別のところですけれども,変更のところで2点,あと分割のところで1点です。

 

 

変更のところの第1点目につきましては,これは3,4の通知義務のところでございますけれども,多分これは強行規定だろうと思います。

 

 

 

これの前の段階においては,通知義務だけだったと--「あらかじめ」という言葉が入っていたかもしれませんけれども,こういう形で「前日までに」というものが入りますと,やはりかなり窮屈な感じがいたします。

 

 

例えば,2とかでいくと,軽微な変更というのも結構あるんじゃないかなと。

 

 

軽微な変更の場合については,例えば,次の通知なり,お客さんに対して通知しているところの一部分に盛り込ませた方が費用面も非常に安く済むであるとか,非常に多数の受益者であったとしたら公告で済ますとか,そういうこともあっていいのではないかと。

 

 

もちろん,重要な変更である場合においてはそういうことはいけないと思いますし,原則としては,前日までにするということを普通はすると思うのですけれども,ただ,こういう形で強行法規で決められてしまうと,かなり窮屈な感じがします。

 

 

したがいまして,デフォルト・ルールにしていただけないかというのと,そういうことが難しければ,例えば前日という部分だけカットしていただくとか,そこら辺のところをちょっと御検討をお願いできないかなというのが1点目です。

 

 

すみれ

「あとから知らされるってのもあまりいい気分じゃないかも。でも事情があるんだ。何も影響がない変更で通知する時間もないこととかあるのかな。」

 

 

2点目につきましては,6のアステリスク2の裁判所の関与のところにつきましては,結構いろいろな問題があるということのようですけれども,実務においては,信託財産の管理方法以外でも,やはり当初予見できないような状況でデッドロック状態になるということも十分に考えられますので,最終的な救済といいますか,そういう手段として裁判所の関与というのを認めていただけたらなというふうに思います。これが2点目です。

 

 

もう1点は,分割のところでございますが,併合と分割につきましては,現行法に規定のない中で結構実務上もやっておりまして,併合も受託者の合併とかに伴いましてやっていますし,分割につきましては,流動化のところで,不動産を一つの信託に入れて管理信託をやっておいて,その一つずつを物権化して流動化していくというようなことも結構ありまして,分割というのも割と盛んに行われつつあるというような状況です。

 

 

 

 

 

 

そういう中で考えますと,ここのアステリスク1にも書いてあるのですけれども,その場合については,やはり信託債権というもの自体が,分割の場合,分割するもとの信託と,分割した先の信託,両方にかかっていくというところについて何らかの債権者保護手続をとることによってその片一方の方に寄せると,そういう制度というのは御検討されるということですけれども,ここら辺のところ,簡便に,なおかつ確実にできるような方法の御検討をお願いしたいということでございます。

 

 

 

 

 

  •  同じことの繰り返しで恐縮ですけれども,ちょっと○○委員には恐縮なのですけれども,反対のことを申し上げたいと思うのですが。

 

 

今日の議題の第57から第60は特にそうですし,前回の複数受益者の意思決定方法のところもそうなのですけれども,全体的に実務的な感覚からいきますと,今の信託法に対比しますと,非常に窮屈な,重い信託法になりつつあるのかなという面が否めないと思っております。

 

 

例えば分割とか併合とかいう点においても,今でも実務的に行っておりますけれども,後で御質問したいと思うのですけれども,この第58,第59の規律というのは強行法規のところが大きいとは思いますけれども,そうした場合に,現行対法とくらべて,デフォルト化というのがだんだん後退しているという面もあるのではないかなというふうな印象を持っております。

 

 

 

 

 

もう一つの話としては,この場というのは信託一般法の在り方を議論する場であるわけですけれども,受益者への保護であるとか,特定の信託類型における保護の在り方であるとかいった場合には,やはりそれなりの法体系において別々に検討すべきところもあるのではないかと。

 

 

 

すなわち,信託一般法の場合もありますし,信託業法ないし資産流動化等の個別特別法とか,また,今議論されております投資サービス法等の一般規制法とかいうところで規律されるべきというところはあるとは思うのですが,私の印象からすると,本来ならそれら業法等で規制すべきものが,この一般法に入っているところもあるのではないかなというふうに思っております。

 

 

 

 

この観点で個別論点についてのコメントを差し上げたいのですけれども,そういう意味で,第57の4に関しましては,甲案が妥当だというふうに考えています。

 

 

あと,第58,第59の信託の併合等について,確認をしたいのですけれども,そもそもこの規定というのは強行法規であるのかということです。

 

 

具体的には二つあるわけですけれども,一つは,例えば,そもそも信託の併合,分割を認めない信託というのはつくれるのかどうかということです。

 

 

つまり,信託契約において併合禁止,分割禁止を定めておくことは有効かと。

 

 

もっとも,考えてみますと,概念的には信託併合等も信託変更の一部であるということでしたので,手続を1回やるのか2回やるのかは別として,当該禁止を含めた信託行為自体も第57の規律によって変更することが可能であるということであるから,余り実務的に議論する実益はないのかなとも思いますけれども,第58,第59の在り方として,全体的に強行法規かどうかということをお尋ねしたいというのが一つです。

 

 

 

二つ目に,仮に強行法規性が全体的にどうかということは個々具体的に検討すべきだということになった場合に,第58の2の「信託の変更手続」の例えば(1)でしたら,アからカまで開示しなければならないとか,いろいろありますけれども,これが強行規定なのかどうかということです。

 

 

実務においては,こういうある意味法定化されたものを意識せず,ある程度契約という概念の中でやっていたわけですけれども,その対比から言うと窮屈になっているのかなというふうには思っております。

 

 

 

もっとも,債権者の立場からすると,これだけの債権者保護手続ということがあるわけですから,非常にいい制度だということもあるわけで,ここは非常に矛盾したことを申し上げているわけですけれども,そもそも概念の整理として,個別の手続等についても強行法規なのかどうかということを確認したいと思っております。

 

 

 

 

 

 

  •  まず,○○委員がおっしゃった,通知が強行規定かどうか。これは,質問というよりは,そう理解しておられるというお話でしたが,これは,受益者の利益をどこまで図るかという制度的な観点から通知義務を義務づけたものでございまして,我々としては強行規定であるというふうに考えております。

 

 

「前日までに」では厳しくて,「あらかじめ」にしてほしいというのは,どう違うのかよく分からないのですが。

 

 

 

 

  •  「あらかじめ」というのではなくて,通知義務だけなら,例えば事後的なものとかいうのも認められると思いますので。

 

 

 

  •  ここの通知義務というのは,事前にすることによって初めて,変更自体に対して効力発生前に不服を言わせる機会を保障するという趣旨がございますので,「あらかじめ」であれ,「前日までに」であれ,それは我々としては特にこだわらないというか,まあ「前日までに」がいいと思っているわけですが,事後でもいいかというと,ちょっとそこは,そもそも通知をする趣旨に反してきますので,難しいのではないかなと。

 

 

 

事後に通知するのは,ある意味では当たり前といいますか,変更された中身を受託者や受益者に,こういう信託になりましたと言うのはむしろ当然の報告義務だというふうに考えておりますので。

 

 

ポリー

「言われてみると当たり前ですね。」

 

 

ここは,通知というのはもう少し意味合いが違うのではないかというのが,とりあえず事務局の理解でございますが,御指摘を踏まえて考えてみたいとは思っております。

 

 

 

 

それから,分割の場合の債権者保護手続につきましてはどのようなものにするか,これは,特に独自のものを考えているというよりは,普通の商法上の債権者保護手続の併合のようなものと,また個別催告のようなものを考えておりますが,具体的な手続につきましては,検討していきたいと思っております。

 

 

それから,○○委員がおっしゃった点,2点ですが,まず,そもそも併合,分割ができないような信託行為の定めをすることはできるかということにつきましては,それはいいのではないかと思っておりまして,御自身がおっしゃられましたように,そのような禁止の定めをそもそも三者の合意とかで解除した上で更に併合する,それもまた可能でございますが,もしも,いったん信託行為の中で,この信託は分割できませんよとか,併合できません,あるいは変更できませんもあるのでしょうが,そう書いてあったら,いきなりそれに違反して併合,分割,変更することはできない。

 

 

いったん解除してというプロセスを経るべきかと考えております。

 

 

 

 

 

それから,併合,分割に当たっての受益者に対する併合条件の通知とかそういうところでございますが,ここも,受益者が要らないと言うのであれば,あえてしなくていいのではないかなと。

 

 

 

ちょっとそこはまだ十分検討しておりませんし,受益者の保護の観点からするともう少し強いものかなという気もしてはいる半面,受益者が要らなければ要らないのではないかという考え方もございまして,そこは御指摘を踏まえて検討したいと思っております。

 

 

 

 

  • ○○委員の先ほど言われた,非常に小さな変更で,明らかに利益に反することはないだろうというようなものについては,場合によっては通知の仕方の方でも解決できるのではないでしょうか。

 

 

さっきの,どこかに公示すればいいというのであれば,それはそれで解決するわけですね,事前であっても。さっきの御発言はそういう御趣旨ではありませんでしたか。

 

 

 

  •  そうですね。今は通信手段とか通知手段というのは結構いろいろとありますから。

 

 

  •  個別にやれと言われると大変だけれども。

 

 

  •  そういうふうに前日までで個別にと言われてしまうと,結構困る部分というか,窮屈だなということで,そこも何らかの御配慮をと。

 

 

  •  ちょっとこれを見ていて,基本的にはこれでいいのだけれども,この通知の持つ意味というのは,事前に異議がある人がいるかもしれないから,事実上反対するというか,自分の意見を表明するチャンスを与えようということで,それはそれで結構なのですけれども,これは一応,第57の2のアからエまでの要件を満たされていた場合には,結局変更は効力を生じて……。

 

  •  通知はしなくても。

 

 

  •  ですから,通知をしないで,効力が発生して,先ほど,通知をする義務の違反という問題は生じるかもしれないと言われたけれども,しかし,それも何か損害賠償とかいうものが生じるわけでもないでしょうね。

 

 

 

この要件が満たされて,変更ができるのだという前提で考えると。

 

 

 

 

 

 

  •  そうですね。結果的に不利益がなかったわけですから。そうすると,違反は違反ですけれども,損害がないという……。

 

 

  •  私が最初にこれを読んだときには,そういう変更ができるかどうかの要件は第57の2に書いてあるので,この要件を満たせば変更はできるわけですが,その変更の効力が発生する時期を通知にかからしめているのかと思ったのですけれども,そうではないのですか。

 

 

  •  そうではありません。

 

 

番人

「効力要件ではないんだ。損があった場合に、通知義務の違反も追加で請求することになるのかな。」

 

 

  •  だとすると,さっきのように,通知をしなくても効力は発生し,その義務違反を問おうと思っても,実際上は余り何もないと。

 

 

  •  まあ,そういうことになりますね。

 

あくまで受託者の判断が適正かどうかをチェックするという趣旨がありますので,結果的に適正であれば,それは別に構わない。例えば株式の場合でも,新株発行の場合に公告を怠っても,結局,差止事由がなければ有効になるのと同じような話になるかなという気がいたしますけれども。

 

 

 

 

  •  ほかに,よろしいでしょうか。

 

 

 

 

 

  •  2点申し上げたいのですが。

まず1点は,第58,第59の併合と分割に共通の問題だと思いますけれども,先ほど,株式会社の合併等になぞらえてというお話がございましたが,仮にそういうふうに考えますと,それぞれの無効の訴えみたいなものを仕組む必要が出てくるのではないかと。

 

 

 

形成訴訟として仕組んで,だれが原告で,対世効が出てというようなことまで考える必要があるのかどうか,御検討いただきたいというのが第1点です。

 

 

 

特に,受益権について有価証券化されて流通しているような場合には,対世的な,画一的な処理を行う必要が出てくるのではないかなという気がいたします。

 

 

 

第2点は,第57の信託行為の変更の6の米印の2,先ほどから何回か出ていますが,裁判所が変更をするという話ですが,私は,ここについては,5ページのあたりに,もう少し広げられないかということが,最後の「しかしながら,」以下の段落で出てくるわけですが,慎重に考えた方がいいのかなという気がしております。

 

 

現行の信託法は裁判所の関与というのを幾つか定めておりますけれども,多くは,何かをしようとするのに裁判所の許可が要ると。

 

 

 

つまり,何かしなければいけないことがあって,だれかから提示されて,それに対して裁判所が許可をするという形のものが多い。

 

 

8条でしたか,信託管理人を選ぶというときには,だれを選ぶかというので幅がありますけれども,しかし,信託管理人を選ぶかどうかということはオンかオフかしかないわけですが,この現行法23条というのは,そういう意味では随分幅の広い,裁判所がしなければいけない判断の幅が広いものではないかと。

 

 

 

更にこれを広げるというのは,非常に慎重であるべきだと思います。

 

 

 

つまり,別の言い方をしますと,この私的な財産管理に許可みたいな形で公権的に関与するというのを超えて,積極的に内容を形成するということまで裁判所の権限あるいは義務とするのが適当なのかどうか。

 

 

 

更に別の言い方をしますと,財産関係で何かデッドロックに乗り上げるというのは,ほかのシチュエーションでは幾らでもあると思うのですが,信託についてだけそういうことを設けるのは果たして適当なのかどうかということです。

 

 

 

先ほど○○委員から,最後はエクイティー・コートが控えているというのが英米の信託であるというお話がございました。

 

 

 

そういうことができないと,信託というのはそんなものかという風評が立つというお話がございました。

 

 

 

一面それは真実だと思いますけれども,その半面で,裁判所による変更によって不利益を感じる人にとっては,裁判所はこんなことにまで関与してくるのかという風評が立つという側面も必ずついて回るということも考える必要があるのではないかと思います。

 

 

それぞれの国で司法制度に伝統がございますので,もちろん,これで世の中を変えていこうということは議論としてはあり得ると思うのですけれども,踏み出すときには,二歩三歩踏み出すのではなくて,半歩ずつぐらい踏み出すという考え方もあると思いますので,それとの関係で23条の見直しを考えるべきではないかというのが私の意見でございます。

 

 

番人

「難しいね。裁判所に関わる前に、あいだを取って合意できるといいな。」

 

 

  •  御指摘になりました無効取消しの訴えにつきましては,検討いたしたいと思いますし,裁判所の変更の範囲につきましては,是非ともまた皆様の御議論をいただきたいというふうに思います。

 

 

 

  •  そうですね。もうちょっと具体的に,どういう場合に必要なのかということも検討しながら考えていきたいと思います。

 

 

 

  •  先ほどの○○幹事からの御意見と同趣旨でございまして,第2回の部会で申し上げたこととも重なることが多いということでございますが,非常に多様な形態がある信託において,一方,裁判所が信託に関与してきたという,そういった伝統においては非常に乏しいということがございます。

 

 

若干,統計などもざっとだけ見たのですが,平成11年から15年まで,裁判所が信託に関する非訟事件といたしまして--訴訟ではなくて,こういった信託行為の変更ですとか受託者の解任等全部含めまして,非訟事件の数と申しますと,全国で大体5件から10件程度という状態が続いているという状況でございます。

 

 

 

そういったことで,現在のところ,裁判所にとって信託というのは非常になじみが薄いというのが実情でございます。

 

 

 

すみれ

「裁判所が関わるのは年間10件か。」

 

 

そのような中で,今回,信託について法改正ということで,信託行為の変更ということで裁判所が信託行為の変更をすることができる,変更後の信託行為というものを裁判所が定めることができるということになりますと,裁判所にとっては非常に不安が大きいということになります。

 

 

受託者から変更の請求があることもあれば,受益者から変更の請求があるということもあり得るものでございますし,裁判所はその当事者の主張に拘束されずに信託行為を変更することができるということが多分非訟事件の基本的な建前ということになってしまうと思いますので,そこを裁判所が決めてしまうということで本当にいいのかということに尽きてしまうのではないかというふうに考えておりまして,現在の裁判所,今までの裁判所の在り方からすれば,非常に消極的に考えざるを得ないのではないかというふうに考えているところでございます。

 

 

 

したがいまして,現在ございます信託の管理方法の変更につきましても可能な限り要件を明確化していただきたい,判断基準を明確化していただきたいというのを第2回の部会の際にも申し上げたところでございまして,この点は,先ほど○○幹事の方から,今後検討するというお話がございましたので,是非お願いしたいというふうに考えているところでございます。

 

 

 

 

一方,財産の分配についての変更ということになりますと,こちらはもう受益権の内容そのものを裁判所が変えてしまうということになりまして,そのようなことを,合意を前提とせずに裁判所が判断してしまってよいのかという意味では,やはり消極ということになるのではないかというふうに考えているものでございます。

 

 

 

  •  現在の規定のもとでも大変な難しい問題があるということだと思いますけれども,確かにこれは,範囲を余り広げ過ぎるのには非常に慎重でなければいけないという点があると思いますけれども,少なくとも管理方法の変更については,先ほどの5件ですか--先ほどの5件というのは,必ずしもこの23条の関連ではなくて,もっと……。

 

 

 

  •  要は信託に関する事件ということでございまして,信託に関する非訟事件全部を加えてということでございます。

 

 

 

ひょっとしたら,何かほかのものと一緒になっているとかいったことがあって若干数が増えるということもないわけではないと思うのですが,信託に関する事件として裁判所が統計をとっているものとしては,年間5件から10件ぐらいで推移しているというところでございます。

 

 

 

  •  ちょっと私の個人的な意見も入るので,申し上げるのが適当かどうか分かりませんけれども,ある種の事情変更の原則ですよね,これは。

 

 

 

事情変更の原則というのは,実体法のルールがあっても実際上はなかなかできなくて,要するに,変更されたということで当事者が変更してしまって,あとは裁判で争えというのも,これも本当は事情変更の原則としては余り適当ではないと私は思っているのですが,たまたま信託にはこういう形で裁判所が関与して事情変更の原則を行使できる規定があるので,本当はうまく使えればいいと思っているのですけれども,5件といいますか,更に実際には少ないのかもしれませんけれども,まあ,いろいろ問題点があることはよく分かっております。

 

 

 

 

 

  •  簡単なことで,質問でございます。

第58と第59の併合,分割ですが,だれがこれをするかという点についての質問です。

 

 

どちらも第57を準用しているので,先ほど議論があったところですが,原案のままですと,原則は三者の合意,そして,第57の2も当てはまるので,それぞれに当たると3人いなくてもいいということで,併合と分割はできると,こういうふうに理解しましたが,それでよろしゅうございますでしょうか。

 

  •  はい。

 

  •  あと,もう一つです。

 

併合には債権者保護手続が入っておりますが,この債権者保護手続の対象債権者には受益者は含まれないということですか。

 

 

  •  受益者は含まれないと考えております。自ら変更に同意しておりますし,かつ受益権取得請求権もありますので,入らないということで考えております。

 

  •  分かりました。ありがとうございます。

 

 

  •  第60のいわゆる証券化の58条リスクについて敷えんして述べようかと思ったのですけれども,今お話が出ましたので,一言だけ申し上げます。

 

証券化という,全体からすると非常に一部の部分かもしれませんが,その観点からすると,やはり同じ文脈において裁判所の介入リスクというのはできるだけ減らした方がいいと思います。

 

 

 

その観点からすると,このアステリスク2の中での検討ということで裁判所の関与の可能性を拡大しているということについては,やはり消極的に解すべきではないのかというふうに思っております。

 

 

現に,今お話にありましたように,そんなにニーズもないようでございますし,証券化の観点から,ちょっとどうなのかなというふうに思っております。

 

 

 

 

  •  この第57から第59までの,信託行為の変更,併合及び分割,この三つの規律の関係について,質問,あるいは意見を述べさせていただきたいと思います。

 

 

 

基本的に,まず第57の1で,委託者,受益者,受託者の合意によると。恐らくこれは現行の信託法でも,解釈論においてはこのような考え方が通説であろうかと思います。

 

 

 

したがって,2以下で三者の合意がなくてもいい場合等があるのは,むしろ規制緩和になるというふうに理解しておりまして,先ほどの○○委員の,このルールが入るとむしろ規制が強化されるというのはどういう御趣旨なのか,つまり,今までの分割とか併合というのはどうやってやってきているのかというのをまず教えていただきたいというのが,第1点の質問でございます。

 

 

 

 

それから,それとの関係で,信託の分割と併合につきましては,信託行為の変更についてのルールがそのまま適用されておりまして,いわばそれに上乗せする形で債権者保護手続がついていると。

 

 

 

これは,この債権者保護手続についてどう考えるかという点なのですけれども,確かに,会社法との対比で申しますと,定款変更については債権者保護手続はないのですが,合併,分割等については基本的には債権者保護手続があると。

 

 

 

ところが,この信託行為の変更も,考えようによっては債権者を非常に害する信託行為の変更というのが十分に考えられるわけでございますし,特に資本制度による流出の抑制がありませんので,場合によっては,信託行為を変更して,受益者に全財産を一挙に分配してしまうことにするということすらできる可能性がある。

 

 

 

しかも,それを信託行為の変更という形でやられてしまうと,受託者は信託行為に従ったとおりにやっているだけだということにもなりかねないので,特に受託者の責任が有限となった場合には,債権者保護手続というのはむしろ信託行為の変更についても考え得るのではないかと。

 

 

 

そして,信託行為の変更について,もし仮に債権者保護手続が入れられるとすると,アメリカの統一信託法典等は,信託の併合と分割については一般的な信託行為の変更よりもむしろ緩やかにそれを認めてあげましょうと。

 

 

実務上のニーズも非常に多いということは,これはアメリカでもそうでありますので,むしろ信託行為の変更よりもやや受託者の権限を広げる形で,いわば更に規制を緩和するというのがアメリカ法の状況ではないかと理解しております。

 

 

 

それがちょうど第57から第59までの提案は逆になっておりますので,その点についてやや違和感があると申しますか,どのように考えたらいいのでしょうかというのが,質問ないしコメントでございます。

 

 

 

 

 

  •  先ほど○○幹事の方から御質問がありましたので,お答えしたいと思います。少々言葉足らずのことがあるかもしれませんが,その点については釈明したいと思いますけれども。

 

 

 

私の申し上げたのは,まず第1点に,御案内のとおり,信託の特徴というのは,信託の柔軟化ということを非常に重視すべきではないかということで,デフォルト・ローということをその点で追求すべきではないのかという話でございます。

 

 

 

確かに,おっしゃられたとおり,現行法と比べますと,現行法ではかかる変更等の規律に関して規定がないという点で,今回,それをある程度,利害調整のバランスを考えつつ,可能とするという枠組みを立てたという点では非常に評価できることだと思います。

 

 

 

 

ただ,この点は,実は次の第60,受益者取得請求権でコメントを差し上げようと思ったのですが,第58,第59の話で先ほど,○○幹事の方から御回答がありまして,必ずしも強行法規ではないというふうな御回答でしたので,よろしいのですけれども,例えば信託の分割ないしは併合において,私も現状というのをすべてを知っているわけではないのですけれども,基本的には,契約当事者の間で合意をしてかかる変更手続等を行うという話でございます。

 

 

 

そのときに,仮にこの第59の提案の中の手続として,2の(1)のように,「次に掲げる事項を明らかにしなければならない」というようなことを立てた場合には,その点においては,少なくとも現状と比べては規制強化--というと言葉がちょっと悪いかもしれませんけれども--になるのではないかと。

 

 

 

 

 

ゆえに,もし緩和するということであれば,できるだけ,不要な,ないしは信託の内容に応じて必ずしも必要ないというものであれば,それは基本的にはデフォルト・ローというふうにして,もし内容によって規制が必要であれば,それは業法等で規制しておくべきではないのかという趣旨で申し上げたわけでございます。

 

 

 

 

  •  ○○幹事が最初,信託行為の変更においても債権者保護手続が必要な場合があるのではないかということを言われて,私も,責任限定特約なんかがついている場合にはそういうことが大いにあり得ると思います。

 

 

ただ,仮におよそ一般的に信託行為の変更のときに債権者保護手続を設けるとしても,どういう場合に要求するかというのはなかなか難しくて,ちょっと今記憶がはっきりしておりませんけれども,これは責任限定特約のところに何か入れましたっけ。

 

 

  •  いえ,入れていません。

 

 

  •  あるいは,そこでそういうのが必要かどうかというのを検討するということはあり得るのではないでしょうか。

 

 

 

  •  変更の場合にはやはり債権者保護手続が必要ではないかというのは,○○幹事のお書きになったもののみならず,いろいろなところで指摘がされているところでございますので,その点についての事務局のとりあえずの現時点の考え方をお示ししたいと思います。

 

 

もちろん,御指摘を踏まえて,なお再検討はしたいと思っております。

 

 

ただいま○○委員もおっしゃいましたとおり,変更の場合というのは,変更によって重大な影響を受ける者もいれば,そうでもない者もいるのではないか。

 

 

 

例えば,物権的な引渡請求権を有する者であれば,変更されても特に影響を受けませんし,無限責任債権者であれば,受託者の固有財産も引当てになっておりますので,それが充実してさえいれば特段の影響はないであろう。

 

 

これに対しまして,今御指摘がありましたように,有限責任の債権者であれば,信託財産の状況次第によっては重大な影響を受けることがあるのではないかというふうに考えられます。

 

 

このように,利害関係人が影響を受ける場合というのが多様でありまして,その利益状況を完全に仕切るということがなかなか難しいということですとか,あるいは,この三者の合意で変更できるというルールを設ければ,利害関係人も契約で特に手当てをしない限り,自らの関与なく変更されるということが予測できるわけですので,そうであれば,必要であれば自ら個別の契約で,変更には自分の同意が要るとか,そのような手当てをすることもできるのではないかということも考えまして,デフォルト・ルールとしては,三者の合意のみでできるとしたということでございます。

 

 

 

 

なお,株式会社との比較でございますけれども,これも,合併,分割,資本減少などの場合には債権者保護手続がございますけれども,変更と類似の定款変更の場合にはそういう手続がないということにも考慮しているところでございます。

 

 

すみれ

「株式会社の定款変更か。」

 

 

では,なぜ合併,分割の場合に保護があるのだということ,米国統一信託法典と比べて平仄が合わないではないかということで,そこも検討はしたいと思っているのですが,とりあえず,その理由といたしましては,ただいま申しましたように,信託行為の変更につきましては関係者に与える利害に多種多様なものがあって仕切り難いということに比べますと,併合,分割の場合というのは,我々の意識としては,相対的に利害関係人に与える影響が大きいのではないかというふうに考えられることですとか,それから,商法では,合併ではそういう債権者保護手続が必要とされていることなどとの平仄などにもかんがみまして,規律が逆転しているといいますか,提案のようになっているということでございます。

 

 

 

  •  この点,○○委員がおられると,一般の変更と合併等の場合とのバランスということでよくおっしゃっておりましたので,また御意見を伺えると思いますので,またいつか別な機会にでも御意見を伺うことにいたしましょう。

 

 

 

それでは,次の問題にも関連いたしますので,少し先にいかせていただければと思いますが,よろしいですか。

 

 

 

では,次の第60に。

  •  それでは,続きまして,第60の反対受益者の受益権取得請求権について説明させていただきます。

 

 

 

まず,1の(1)でございますが,受益者の多数決をもって信託行為の変更に関する承認決議をした場合における,受益権取得請求権の成立要件等について検討したものでございます。

 

 

 

 

今回の信託法の改正におきましては,信託行為に定めを置くことにより,受益者が多数決によって意思決定をすることを認めてはどうかとの提案をしたところでございます。

 

 

 

このように,多数決をもって信託行為の変更を承認することができるとした場合には,自己の意思に反して変更された信託行為の内容に拘束される受益者が生ずることになりますが,信託行為の変更の中には受益者の利害に重大な影響を及ぼすものがありますので,そのような場合につきましては,変更に反対の受益者に対して受益権取得請求を認め,合理的な対価を得て当該信託から離脱する機会を与えることが,受益者保護の観点から相当であると考えられます。

 

 

 

 

 

このような観点から,1の(1)のアにおきましては①から⑦まで挙げた,ここでは「特別決定事項」ととりあえず命名しておりますが,これにつきまして受益者の承認決議がされた場合には,決議に賛成した受益者以外の受益者,換言しますと決議に賛成の意思を表示しなかった受益者には,受託者に対して自己の有する受益権を公正な価格で取得することを請求できることとしております。

 

 

 

ここでは,このように,主体を,決議に反対する旨の意思を表明した受益者ではなくて,「決議に賛成した受益者以外の受益者」といたしておりますのは,信託におきましては信託行為の定めにより多種多様な多数決の方法を採用できますので,信託行為で採用された多数決の方法によっては,受益者が変更に反対する旨を決議に先立って表明することが事実上困難な場合が想定できますが,このような場合にも反対の意思を表明しなければ取得請求できないとすることは,受益者保護の観点から相当ではないと考えたからでございます。詳細は,16ページのアステリスク4でも書いているところでございます。

 

 

 

なお,受益権取得請求の規律は,その性質上,受益者に不利な形での別段の定めを置くことが許されないという意味での強行規定と考えておりますので,一体いかなる場合に受益権取得請求が認められるかを明らかにする必要があると考えております。

 

 

この問題につきましては,とりあえず①から⑦の事項を挙げた上で,軽微な変更の場合にまで受益権取得請求権を付与する必要はないという考えのもとに,ただし書をもって,受益者を害するおそれのないことが明らかである場合を除外することを提案しておりますが,資料15ページの最後のアステリスク1に記載しましたとおり,いかなる事項について承認決議がされた場合に,受益者に対して取得請求を認めることとするか,例えば,受託者の忠実義務を解除するようなものについては,信託の本質に反するからそもそもできないと考えられますが,忠実義務を緩和するようなものについてはこの①から⑦には当てはまらないと思われますので,このようなものも取得請求権が発生すると考えるべきかなど,是非とも御議論をいただければと思っております。

 

 

 

また,受益者による取得請求は,信託財産の規模の縮小をもたらすほか,受託者の信託事務処理の円滑を損なうおそれもございますので,その期間は合理的な期間に限定することが相当であると考えられます。

 

 

 

 

このような観点から,(1)のイでは,反対株主の買取請求権の規律を参考といたしまして,受託者は,決議賛成者以外の受益者に対して,特別決定事項に関する信託行為の変更の効力が生ずる日の例えば20日前までに決議内容を通知しなければならないといたしまして,これを受けて,(1)のウでは,通知を受けた受益者は,効力発生日の20日前から効力発生日の前日までに取得請求をしなければならないとしております。

 

 

 

 

次に,1の(2)でございますが,これは「特別決定事項の変更権限を有する者」,多数決ではなくて,変更権限を有する者によって変更の決定がされた場合における取得請求権の成立要件を検討したものでございます。

 

 

 

先ほど説明しましたように,信託行為に定めを置くことによりまして,特定の者に信託行為の変更権限を付与することができると事務局は現時点では考えておりますが,仮に先ほど信託行為の変更のところで申しました,変更権限に制限がないという甲案を採用しますと,特別決定事項につきましても変更権を付与できるということになります。

 

 

 

ちなみに乙案ですと,そもそも変更権限がないので,こういう問題は生じてこないということになります。

 

 

 

甲案をとった場合につきましては,承認決議がされた場合と同様に,自己の意思に基づかずに変更後の信託行為の内容に拘束される受益者が生じ得ますので,そのような変更に反対する受益者に対して受益権取得請求の機会を認めて,合理的な対価を得て信託から離脱する機会を与えることが,受益者保護の観点から相当であると考えられるところです。

 

 

 

このような観点から,決定権者が特別決定事項について,受益者に不利益となる方向で変更する旨の決定をした場合につきましては,各受益者は受託者に対して受益権取得請求をすることができるとして,受益者の保護を図ることとしております。

 

 

 

取得請求期間に関するイ及びウにつきましては,先ほど説明した場合と同様の規律を設けることとしております。

 

 

なお,若干付言いたしますと,決定権者が変更決定をした場合には,受託者に対して変更内容及び効力発生日を通知することになりまして,通知を受けた受託者は更に,今度は各受益者及び,場合によっては委託者に対して,変更内容等を通知することになります。

 

 

 

そこで,イでは,「受託者は,各受益者に対し,効力発生日の【20日前】までに,その決定の内容を通知しなければならない」としておりますので,決定権者が受託者に対して決定内容を通知する場合には,受託者が各受益者に対して当該期限までに通知することができるように効力発生日を定めなければならなくなると考えているところでございます。

 

 

 

 

次に,「2 受益権の取得価格の決定等」でございますが,まず受益権の内容のことですけれども,これは原則として信託行為で自由に定めることができますので,受益権の取得価格について,客観的な決定基準を法定することは困難であると考えられます。

 

 

 

そこで,反対株主の株式買取請求権に関する規律を参考といたしまして,受益権の取得価格は,請求する受益者と,請求に応じて取得する受託者との間の協議によって決定するのを第一次としております。

 

 

 

 

さらに,協議が調ったとしても,合理的な期間内に代金の支払がされなければ意味がないと思われますので,例えば効力発生日から例えば60日以内に代金の支払いをしなければならないとしております。

 

 

 

ただし,信託財産に流動資産がないような場合には,60日以内に代金の支払いをすることが困難な場合も想定されますので,そのような場合には,受託者が裁判所に対して相当の期限の許与の申立てができることとしております。

 

 

 

以上のとおり,受益権の取得価格につきましては協議によって決定されることになりますが,協議が調わないことも考えられますところ,このような場合におきましては,受益者保護の観点から,公平な第三者が受益権の取得価格を決定することが適当であると考えられます。

 

 

そこで,2の(2)におきましては,受益権の取得価格の決定につきまして一定期間内に協議が調わない場合には,受益者は一定期間内に裁判所に対し価格決定の申立てをすることができるとしております。

 

 

 

なお,受益権取得請求権が行使された場合の原資でございますけれども,これを幾らまでは信託財産からか,幾ら以上は固有財産からとするか,固有財産からとする場合には信託財産に求償することとするか否かなどにつきましては,先ほど信託行為の変更のところで,御説明しましたとおり,受託者,受益者間で合意すべき事項になるものと考えております。

 

 

 

 

 

 

最後に,「3 受益権取得請求権の失効等」でございますけれども,前段は「1の決議又は決定に基づく行為がされなかったときは,その効力を失うものする」としているわけでございまして,例えば信託行為の変更につきまして,受益者の決議があったものの,委託者又は受託者がその変更に反対した場合には結局変更ができなくなりますので,こういう場合が含まれると考えております。

 

 

 

2の(2)につきましては,先ほど説明いたしました,取得請求の手続上の期間的な限定に違反した場合には,当然ながらそのような請求権は失効するということを記したものでして,これによって法律関係の早期の明確化が図られるものと考えております。

以上でございます。

 

 

 

  •  それでは,御意見を。
  •  先ほどの話に関連することですが,デフォルト・ルール化の推進化という観点から意見を述べたいと思います。

 

 

すみれ

「デフォルト・ルール化の推進化、か。」

 

 

 

まず,この第60という規律は,基本的には強行法規だと理解しています。

 

これは,アステリスク2の反対解釈からしてもそうだと理解しているのですが,それを前提にしてお話したいのですが,よろしいでしょうか。

 

 

それならば,やはり信託の柔軟性ということを考えるのであれば,ここは強行法規とすることは疑問でございまして,先ほどの○○幹事のお話の延長ではありますが,私の立場からすると,どうせ緩和するのであれば利益調整のことも考えるけれども,信託行為の多様性を認める必要があるわけなので,基本的には任意化ということを推進すべきではないかと思っております。

 

すみれ

「どうせ緩和、か。」

 

 

 

例えば不動産信託において,取得請求権ということが認められるのであれば,仮に取得請求権が一部であってもそれが行使されたときに,当該信託財産においては金銭というのはないわけですし,換価することが非常に難しい話であるわけですから,その場合,実質的には当該少数反対者のために,例えば全体の信託にとってはよい変更をしようとしていても,それができないということもあり得るのかなと思っております。

 

 

 

もちろん,これが全部の信託においてもそうなのかということではないわけですけれども,信託内容によっては取得請求権を認めない,又は自由なアレンジを認めるような信託というのを認めてもいいのではないかと思っております。

 

 

 

これは総論ですけれども,個別の論点で二つございまして,一つは1の(1)のアの⑤でございますけれども,「受益債権の内容を変更する場合」の中身でございます。

 

 

 

仮に,1の強行法規化を仕方がないとしたとしても,⑤を除いた①から⑦というのは非常に大きな変更であるわけですから,このような事項があってもよかろうということだと思いますが,⑤というのは「受益債権」と書いてあるわけなのですが,「受益債権の内容を変更」というのがどういうところを意味しているのかというのが,まず不明確であると思います。

 

 

 

また,その解釈によってそれが広がるのであれば,いかなる信託行為の変更であったとしても,結果として受益債権の変更に間接ないしは実質的に影響し得るのであれば,もしこの取得請求権が発生するという解釈を許すということであれば,実務上やはり大きな影響があるのではないかと思います。

 

 

 

この点,投資家保護の観点からどうなのかということで申し上げたいと思うのですが,例えばデット投資ということであれば,このような保護まで必ずしも必要ないのではないかと思っております。

 

 

 

例えば法制度でいえば,担保附社債信託法の制度において,担保の変更を行うということを考えていきますと,確かに特別決議というプロセスは法定化されておりますけれども,では決議がなされた場合に,基本的には全体を拘束しているという話で,そこにおいては反対決議者の買取請求権,償還請求権になるのでしょうか,というものは認めていないという話でございますので,このバランスからするとどうなのかなと思っております。

 

 

 

 

 

また,契約の世界,シンジケーションの世界も,これはセキュリティー・トラストもございまして,やはり信託法に設けないといけない話だと思っておりますけれども,それを例に取り上げますと,シンジケーションにおいてもエージェント行為,エージェントにおいてある程度の権限を与えているということがございます。

 

 

 

エージェントは,全債権者を代理していろいろな権限を行使するという場面がございますが,そういうアレンジは,基本的には自由な契約で決めているということでございます。

 

 

 

ただ,実際的には,日本ローン債権市場協会,「JSLA」と言われているのでございますが,そういうところで標準契約を出しておりますが,それを見ても,別に多数決のことが書いてあったとしても,反対があったからといって当該反対者に対して買取請求権等を付与しているというわけではございません。

 

 

 

このような実務感覚からすると,必ずしも取得請求権というのを認めるということがミニマムな保護なのかどうかということについて疑問でございますので,よってこの点についてはデフォルト・ルール化ということを望みたいと思います。

 

 

 

 

次に,1の(2)の特別決定事項の話でございますけれども,ここも同様の文脈の話になるわけなのですが,例えばファミリーの信託であったとして,おじさんに権限を与えていましたといったときに,こういう使い方もされるのではないか。

 

 

すなわち,おじさんが子供のためによかれと思って変更した,子供はそれに反対した,そうすると本当はおじさんは長期的に運用したかったのに,いきなり子供がそのときに大金をつかむということも,この規律からするとそういうことにもなりそうでございますが,やはり信託の設定においてそういうようなことを使われたくないということであれば,やはりそこは設定時において,こういう取得請求権は認めないというアレンジメントは認めていいのではないかと思っておりますので,強行法規化というのはどうなのかということでございます。

 

 

すみれ

「たしかに。」

 

 

それを敷えんして,実効性という観点から申し上げますと,2でございますが,実際に取得権が請求された場合に,こう言っては恐縮なんですが,本当に裁判所が対応していただけるのかというところがございまして,例えば非常に極端な話ですが,これは60日の期限を設定しておりますけれども,例えば不動産信託で処分に非常に時間がかかる,通常不動産流動化の場合はテール・ピリオドということが言われまして,実際に売ると決めてから2年ぐらいとか,いろいろと期間がございますが,長期間を設定しているわけですけれども,そうした場合に,59日目に延期しましょうという申立てをして,翌日裁判所が許可してくれるのかどうか,もし許可がおりなくて,あと1週間かかりますと言われたときに,その間,受託者はある意味で債務不履行の状況になるわけですけれども,そういう結果を生み出すようなことをこの規律が認めようとしているのかということを考えますと,やはりそもそもそういうものは取得請求権を認めなくてもいいのではないかということにもなると思っております。

 

 

 

  •  根本的な問題なので,ここでも十分検討していきたいと思います。

 

 

 

  •  ○○委員のところとかなりかぶっている部分もございますけれども,4点ばかり意見を申し上げます。

 

 

 

まず1点目は,受益権の取得請求権のところでございますけれども,これは先ほどの特別決定事項の決定権限を有する者のところで,それは自由度を認めてほしいということで,そのかわりに取得請求権というのは強行規定やむなしと申し上げましたが,ここの部分については,信託契約であるとか信託制度そのものの柔軟性というのはやはりできるだけ確保したいというのが一つありまして,ただその弊害というのが必ず出てくるということですので,その弊害を防止するための受益者保護策というのはどうしても強行規定で必要だろうということで,そこの部分についてはやむなしというのが,全体としてはやむなしという方向があります。

 

 

 

 

あと,個別の問題として,先ほど○○委員からもありましたが,①から⑦のところの文をずらっと見て,⑤だけやはり異質かなということで,ほかの重要度からしますと余りにも一般的な書き方がしてありますので,この前に,例えば「重大な」とか,そういうのを入れていただいて,なおかつ説明文の中に,こういうようなものは含めませんよとか,もちろんただし書で「受益者を害しないことが明らかであるとき」と書いてありますが,こういう趣旨であるとすれば条文上の形の手当てもお願いしたい,解説上の手当ても,そこら辺のところをお願いしたいというのが2点目です。

 

 

 

 

3点目につきましては,当初の御提案では,取得請求権を取得できる者につきましては「決議に反対した受益者」というところを,今回につきましては「決議に賛成した受益者以外の受益者」,これはどういうものかというと,「反対の意思を積極的に明らかにしていない受益者」と書かれておりますが,こういう受益者の中には,変更の内容を承知しているけれども意向を表明しなかったという人も当然いると思いますので,そういう人にまで取得請求権を与えるのだろうかという疑問が少しあります。そこは,ちょっと与え過ぎかなという感じがいたします。

 

 

 

 

 

 

4点目につきましては,これはまた第57のところと同じなのですが,イのところの通知義務ですけれども,ここら辺については通知しなければいけないというのは,ここについては多分軽微なものは余りないと思いますので,通知はしないといけないと思うのですが,20日間とかいうふうに限定されますと,緊急を要するような場合というのは対応できないということもあるかもしれないので,デフォルト・ルールにしてくださいというお話ではないですが,何らかの対応をお願いできないかなということでございます。

 

 

 

 

それと,一番最初に,受益権の取得請求権については方向性としては賛成だと申し上げましたけれども,それはそうなのですが,実務上いろいろと考えると,例えば信用補完をするための劣後受益権とか,そういうことを考えたら,それについて取得請求を認めてしまうと信用補完はどうなるのかなということもちらっと考えたりして,これは実務上いろいろと工夫して対応していくことかもしれませんけれども,方向性としては取得請求自体は強行法規ということでいいのですけれども,いろいろと法制度上の問題としても,又は実務上の工夫としても考えていかなければいけないのかなと思っております。

 

 

 

  •  今,多少ニュアンスが違う点がありますけれども,二つ御意見をいただきました。

 

 

ただ,先ほどの第57のところで議論したことと非常に関連していまして,やはり入口というのでしょうか,最初のところを自由にするのか,少し狭めるのかということに関係しているわけですね。これについては,いかがでしょうか。

 

 

 

  •  最後に○○委員がおっしゃったこととは違うのですが,第60についてよろしいでしょうか。

 

 

○○幹事が口頭でおっしゃってくださった中に,取得請求権を受益者が行使した場合に,その取得請求権が固有財産に属するか信託財産に属するかという問題については,ルールを定める必要はないだろうということでまとめられたのだろうと思います。

 

 

 

 

その理由は,その前提に,広い意味での併合,分割を含む信託行為の変更が必ずあるから,その中で少数の反対者からの取得請求権が行使された場合には,どちらで買い取るかということを決めなければならないし,決めることによって対応できるだろうということと理解いたしました。

 

 

 

 

そういたしますと,強い意見ではなくて,大丈夫かなという疑問を少し申し上げたいのですが,第57の1とか2のアとか,これでいったときには,おっしゃるように必ず受益者,受託者が変更の当事者でありますので,決め忘れるということはあるかもしれませんが,合理的な当事者であれば,それもあわせて決めるということが考えられますが,第60の特別決定事項というものの分類と,信託行為の変更についての2のところの分類とがうまくかみ合っているのかどうかがよく分かりませんで,これがすべて2のアに入るならばよろしいのだろうと思いますが,もしイやウやエになってしまって,信託行為の変更が受託者,受益者のどちらかが欠けてしまう形で行われると,もう一つ別個の合意が必要になってこないかなということが気になりました。

 

 

 

 

既にうまく解決されているのかもしれませんが,いかがでございましょうか。

 

 

 

 

 

 

  •  そういうことも起こりそうな感じがしますね。

 

 

 

  •  第57の5のところで,条件を決めると,この中で一体幾らを信託財産から出すか,幾らを固有財産から出すかということを決めることができるわけでございます。

 

 

 

そして,5では1又は2のア,ウ,エの場合をすべてカバーしておりまして,もちろん,今,○○幹事がおっしゃったように,1とか2のアの場合は合意で決めればいいと思うのですが,ウとかエの場合などにおきましても,この場合は受益者とかが決定して,受託者は決定自体には関与してこないわけでございますが,その中で別途,やはり合意しなければいけないということになってくるのではないかと私どもとしては考えておりまして,そうであればその中で決めていけばいいのではないかと思われるところでございます。

 

 

 

  •  分かりました。

 

 

5は,場合によっては変更の当事者だけでなくて,受託者も加わった形でこれを決めると。

 

 

  •  しかし,うまくワークするかどうか。

もし,デフォルト・ルールが必要ということであれば,これは今おっしゃったような1とか2のアの場合以外の場合は,原則として「信託財産から」というのを書いておいて,ただしこういう合意ができる場合は合意によって決める,こういうのもあるなと思ってはおります。

 

 

 

  •  その方が安全かなという感じがいたしましたので。

 

 

  •  5だけでいこうと思ったのですが,ちょっと検討してみたいと思います。

 

  •  分かりました。

 

  •  ほかに,いかがでしょうか。

 

  •  まず第60で,反対受益者に受益権取得請求権を認めることについては,信託法の一般ルールとしては,私としては,やはり強行規定として必要なのではないかと考えております。

 

 

その理由は,まず第一に,やはり第57の1が原則的なルール,つまり委託者,受託者,全受益者の合意が必要である,これが議論の出発点であると思いますので,いわばその原則を破って多数決原理を取り入れる場合には,少数派に対する公正な配慮が必要であると。

 

私益信託を今念頭に置いているわけですけれども,私益,経済的な目的のために設定された信託においては,少数派に対する公正な配慮というのはこのような受益権取得請求権という形であらわれるのが当然ではないかと思われるのが,第1点であります。

 

 

 

第2点は,確かに,全体にとって利益となる基礎的変更を行おうとしているわけですけれども,このときにやっぱりある種のハードルを課しておくことが,本当にプラスになる基礎的変更を行うためのチェックポイントとなり得る。

 

 

 

したがって,ある程度のコストはやはり覚悟していただいて,それにもかかわらずプラスがあるんだと。

 

 

そういう意味では,一定のハードルを課すというのは,私は,合理的な制度なのではないかと思っております。

 

 

 

ただ,どんな信託においても反対受益者の受益権取得請求権が必須かというと,それこそ受益者がプロのような場合には,これは別途検討する必要があると思いますけれども,冒頭に申し上げましたように,信託法の一般ルールとしてはやはり強行法規として課しておくべきで,あと業法,特別法等で外すことはあり得べしということではないかと思います。

 

 

 

長くなって恐縮ですが,もう一点だけコメントさせていただきたいと思うのですが,1の(1)のアの⑤,先ほど○○委員が御指摘された点なのですが,私も,受益債権の内容を変更する場合に,一律に反対受益者の取得請求権が認められるというのは,何か非常に違和感がありまして,みんなで我慢しようというときに,それで多数決原理を入れて決めたときに,自分は嫌だ,抜けるというのは,⑤については違和感があるわけです。

 

 

 

これは,前回の部会のときに申し上げさせていただきましたが,やはり受益者集会制度の中に種類受益者集会制度のようなものを設けて,クラスが分かれていて,あるクラスの受益者が害されるときに当該受益者集会で反対をした者に対しては,こういった取得請求権を与えるという制度として仕組む方が合理的であって,⑤はやや一般的過ぎるのではないかという印象を持っております。

 

 

 

  •  ⑤については,私も,一体どんなものが具体的に入ってくるのかが分かりにくかったのですが,これはどんな場合を……。

 

 

 

  •  例えば受益債権の期限を,半年後だったところを10年後にするとか,あるいは利率を大幅に下げるとか,具体的にはそういう場合を想定しておりまして,今①から⑦の中で,⑤だけ非常に広いような印象があるというのはおっしゃるとおりかと思いますが,そこはただし書で,多くの場合は外れていくのではないかという認識のもとに⑤を入れているところではございます。

 

 

 

 

  •  典型的には,受益者の利益が絶対的に減るのかどうか分からないけれども,期限が延びるとか,そういう形の不利益をこうむる場合ですね。

若干広過ぎる感じもしますが,議論の余地があるかなと。

 

 

  •  1点だけ確認したいのですが,私が前に申し上げたことですが,受益債権に対して直接変更を加える場合と理解してよろしいのですか。

 

 

 

 

つまり,直接は加えないけれども,信託行為を変更し,結果として受益債権の弁済が変わり得るといった場合は含まないと,こういう理解でよろしいのですか。

 

 

  •  これは,受益債権で考える……。

 

 

  •  直接,受益債権を変更すると。

 

 

  •  受益権の内容が変わることによって受益債権が変わる場合は当然入ってきます。

 

 

  •  区別は難しいですよね。

例えば投資の対象を変えて,長期的には値上がりするかもしれないけど,現在配当に回せる利益が少ないというものに投資したときに,受益債権が減るというような例ですよね。

 

 

  •  おっしゃるとおりです。

そういう場合を想定しているのか,想定していないのかという話ですが。

 

  •  そういう場合も入ってくる……。

 

 

  •  入ってくると。

 

  •  と,我々としては思っておりますが。

 

 

  •  ちょっと広範囲なのかなというのが私の意見です。

 

 

  •  これは,皆さんの御意見もあるので,少し検討させていただきましょうか。

この受益権の取得請求権自体を認めるかどうか,これをデフォルトにするかという,そこがまずは一番大きな問題点ですけれども,先ほどから両方の御意見が出ておりますが,どちらかというと,こういう限られた範囲で一応必要なのではないかという御意見が多かったような気がしますけれども,ほかに何か御意見があれば。--よろしいですか。

 

 

 

  •  通知をここで要求しているという点では先ほどと同じなのですが,通知をしなかった場合について何か私法上のサンクション等があるかというと,それはないという前提なんでしょうか。

 

 

通知しなかった場合の効果ですね,あるいは通知に遺漏があったとかおくれたとか,そういうことです。

 

 

  •  十分な検討しておりませんが,一つは受託者の責任ということがあるでしょうし,あとは通知をしなければ,結局支払請求権の期限が到来せず,失効しないで,いつまででも行使できるような事態になるのではないかという気がいたします。

 

 

 

  •  ただ,第60の1の(1)のウ,「受益権取得請求は効力発生日の【20日前】の日から効力発生日の【前日】まで」という,通知にかかわりない書き方になっていますので。

 

 

  •  そこは,通知を当然しなければいけないと思います。

 

 

御指摘の書き振りだと客観的に時期が決まってしまっておりますので,検討したいと思いますが,私の個人的な理解では,やはり通知で当然効力発生日も明らかにされているので,その20日間という期間が設定されると思っておりますので,何も通知がなければ,このように期間を制限して受益権取得請求権を失効させるということはできないのではないかと思われます。

 

 

 

  •  そういう意味では,さっきの第57とちょっと違った点があるわけですね。

それでは,まだ未了の意見が残っておりますので,いずれまた,もうちょっと詰めていきたいと思います。それでは,本日はこれで終わります。どうもありがとうございました。

 

 

 

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すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。渡部篤郎さんの朗読CDを途中まで聴きました。」

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