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2016年加工編 法制審議会信託法部会 第7回会議 議事録
2016年01月15日

2016年加工編

法制審議会信託法部会

                       第7回会議 議事録

 

 

 

第1 日 時  平成16年12月17日(金)  自 午後1時00分

至 午後5時10分

 

第2 場 所   法務省第1会議室

 

第3 議 題

信託法の見直しに関する検討課題(5)について

 

第4 議 事   (次のとおり)

 

 

 

議    事

 

  •  それでは,法制審議会の信託法部会第7回の会議を開きたいと思います。

お忙しいところお集まりいただきまして,ありがとうございました。

 

それでは,いつものようにたくさんの論点がございますので,これを適宜幾つかに区切って議論していきたいと思います。その議論の区切り方も含めて,○○幹事の方から説明をお願いします。

 

  •  それでは,本日の議論の進行でございますけれども,テーマは全部で10項目ございますが,次のとおりに分けさせていただきたいと思います。

 

まず最初に,受益者の利益の享受と受益権の放棄の問題をあわせて行わせていただきます。

 

次に,受益者を指定又は変更する権利の問題を行わせていただきます。3番目に,信託管理人の問題を行わせていただきます。

 

 

この辺りで休憩かと思いますが,その後,第4番目といたしまして,信託行為の定めに基づく単独受益者権の制限,それから受益者が複数の信託の意思決定方法と受益者名簿の問題を行わせていただきます。

 

 

最後に,第5といたしまして,受益権の譲渡,有価証券化,受益債権等の消滅時効の問題というように,全体を五つに区切って進めさせていただければと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

  •  それでは,最初のセッションから説明をお願いします。

 

 

  •  それでは,早速,受益者の利益の享受と,受益権の放棄につきまして御説明いたします。

 

 

まず,第45でございますが,これは信託行為により受益者として指定された者の利益享受に関する提案でございます。

 

 

現行法第7条は,信託行為により受益者として指定された者は,受益の意思表示をすることなく,その信託から生じる利益を享受する旨規定しております。

 

 

この規定は,契約当事者以外の者がその契約から生じる利益を享受するには,その者による受益の意思表示が必要であるという民法の原則を修正したものであると考えられております。

 

 

信託では,不特定の者や未存在の者が信託行為により受益者として指定されることがございますが,このような者に対して受益の意思表示を求めることは困難又は不可能であると考えられます。

 

 

また,例えば,重度の障害をお持ちの方のように,自ら意思表示をすることが困難な方が受益者として指定されている場合には,受益者が受益の意思表示をすることなく信託から生じる利益を享受できるとすることによって,その受益者の保護に資し,かつ,信託を設定した委託者の意思にもかなうものと考えられます。

 

 

すみれ

「たしかに。」

 

 

このような点にかんがみまして,1におきましては,信託行為により受益者として指定された者は,信託行為に別段の定めがない限り,受益の意思表示をすることなく,その信託から生じる利益を享受することができるものといたしまして,現行法第7条の規律を維持することとしております。

 

 

もっとも,このように措置した場合には,自らの関与なく信託から生じる利益を受け,又は不利益をこうむる者が生じ得ます。

 

 

この点につきましては,次の受益権の放棄のところで詳しく御説明いたしますが,これらの受益者に対して受益権を放棄する機会を与えた上で,放棄の効果を遡及させることによりまして,自己の意思に反して利益又は不利益を強制されることがないような解決を図ることが可能ではないかと考えております。

 

 

次に,2でございますが,これは受託者の通知義務に関する提案でございます。

 

信託行為により受益者として指定された者は,自己の意思によらずに受益者となることがあり得ます。

 

このような場合には,当該受益者に対して自らを受益者とする信託が設定されたことを認識させることが,受益者として有する各種の権利行使の機会を確保することにつながり,受益者の実効的な権利保護の観点からも相当であると考えられます。

 

 

そこで,2におきましては,受託者が,信託行為により受益者として指定された者に対して,当該者を受益者とする信託が設定された事実を通知しなければならないとしております。

 

 

もっとも,信託行為により受益者として指定された者が自らを受益者とする信託が設定されたことを知っているような場合にまで通知義務を課す必要はないと考えられますので,ただし書におきましては,このような場合においては受託者は通知義務を負わないということにしております。

 

 

なお,ここで,受託者が受益者として指定された者に対して通知しなければならないのは,受益者として指定されたという事実,すなわち受益者となったという事実でございまして,受益権の内容などの信託行為の具体的内容等についてまで通知の対象とは考えておりません。

 

 

といいますのは,信託行為の内容等につきましては,別途,受益者が受託者に対して説明を求める権利などを認めておりますので,受益者がこれらの権利を行使することによって必要な情報を入手することは可能であると考えているからでございます。

 

 

次に,3でございますが,これは,受託者その他の利害関係人が,信託行為により受益者として指定された者に対して,相当な期間を定めて,受益権を放棄するか否かについて意思表示をすべき旨を催告できるとしたものでして,遺贈義務者その他の利害関係人の催告権,民法第987条でございますが,これと類似の規律を受託者その他の利害関係人に対して認めることとしたものでございます。

 

 

 

これも次に説明いたしますが,信託行為により受益者として指定された者は受益権を放棄することができまして,受益権を放棄した場合には,放棄の時点までに生じた原因に基づく責任も免れることを提案しております。

 

 

このように,信託行為により受益者として指定された者が受益権を放棄した場合の効果が遡及することとした場合には,当該受益者が受益権を放棄するか否かが確定するまでは,信託事務によって生じる責任を最終的にだれが負担することになるのかが判明しないことがあり,その場合には,当該信託に関して利害を有する者が不安定な地位に立たされるおそれがあるということになります。

 

 

この点,遺言信託におきましては,遺贈に関する民法第987条の規定が準用されまして,利害関係人が受益者 --受遺者になりますが--に対して受益の承認又は放棄をすべき旨を催告することができるとの解釈が有力でございまして,遺言信託以外の信託の利害関係人にも同様の催告権を与えることが,受益の拒絶を認めることによって生ずる不安定な状態を除去するとの観点から相当であると考えられます。

 

 

そこで,3におきましては,遺言信託,生前信託ともに,受託者その他の利害関係人が,信託行為により受益者として指定された者に対し受益権を放棄するか否かについて確認する手段として,催告権を与えることとしております。

 

 

 

その上で,受益者として指定された第三者が催告に対して自己の意思を明らかにしない場合には,受益権を放棄することができなくなることとしております。

 

 

すなわち,このような第三者は受益の意思を要しないで受益者となっておりますので,受益者であるという現在の状況を拒絶する旨の意思表示をしない以上は当該状況を受け入れたものとみなすことが合理的であるとの考えに基づくものでございます。

 

すみれ

「家族信託ではあまりないだろうけど、面談かな。」

 

 

 

 

もっとも,このように措置することにつきましては,受益者への補償請求権等の行使が認められている場合がある信託におきましては,催告に対して意思表示をしなかったことから直ちに受益権の放棄ができなくなるとするのは当該受益者にとって酷であり,受益者への補償請求権の行使が認められているか否かによって効果に差異を設けてはどうかなどの指摘がされているところでございます。

 

 

 

そこで,この3の規律の要否やその効果の在り方については是非とも御審議をいただければと考えております。

 

 

以上で受益者の利益の享受についての説明は終わらせていただきます。

 

 

次に,第51の「受益権の放棄について」というところの説明に移らせていただきます。

 

 

現行法の第36条第3項によりますと,補償請求権に関する第36条第2項の規定は受益者が受益権を放棄した場合には適用されないとしておりまして,受益者が受益権を放棄することができることと,受益者が受益権を放棄した場合においては補償請求権の規定の適用がないことを明らかにしております。

 

 

この現行法の規律に対しましては,受益権を放棄できる受益者の範囲が明確でないために解釈上疑義が生じているとの指摘や,受益者が受益権を放棄した場合の効果に関して,補償請求権の規定の適用がないというにとどまるために取扱いが定かではないといった指摘がされております。

 

 

そこで,このような指摘を踏まえまして,受益権の放棄に関する規律の整備を提案したものでございます。

 

 

まず,1の(1)でございますが,これは,信託契約締結時におきまして委託者が受益者の場合,すなわちいわゆる自益信託の場合には,委託者兼受益者は,信託契約に別段の定めがない限り受益権を放棄することはできないとするものでございます。

 

 

委託者兼受益者は受託者との間で自己の意思に基づいて信託契約を締結した上で受益者となったのですから,委託者兼受益者が受益権を放棄して自由に当該信託から生ずる法律関係から離脱することを認めることは,受託者を始めとする利害関係人に対して不測の損害を与えることにもなりかねず,公平の見地に照らしても妥当ではないと考えられるところでございます。

 

 

そこで,委託者兼受益者は信託契約に別段の定めがない限り受益権を放棄することはできないとしております。

 

 

 

次に,1の(2)でございますが,委託者兼受益者から受益権の譲渡を受けた者についても受益権を放棄することができないとするものでございます。

 

 

委託者兼受益者が受益権を譲渡したか否かによって受益権放棄の可否が左右されるとした場合には,受託者を始めとする利害関係人に対してやはり不測の損害を与えかねないものと考えられます。

 

そこで,委託者兼受益者から受益権の譲渡を受けた者も受益権を放棄することができないものとしております。

 

 

 

次に,2の(1)でございますが,これは,いわゆる他益信託の場合には,信託行為により受益者として指定された者は原則として受益権を放棄することができるとするものでございます。

 

 

 

先ほど受益者の利益の享受のところで御説明しましたが,他益信託で信託行為の定めにより受益者として指定された者は受益の意思表示をすることなく受益者となりますので,自らを受益者とする信託が設定されたことを知らないまま受益者となることがあり得ます。

 

 

 

自己の意思に反して利益や不利益を強制されることはないという原則に照らしますと,このような受益者については信託から離脱する機会を与えることが相当であると考えられます。

 

 

そこで,信託行為により受益者として指定された者は受益権を放棄することができるものとし,例外としまして,信託から生ずる利益・不利益を十分認識した上で,受託者に対して受益の承認,すなわち言葉を変えれば受益権を放棄する権利の放棄ということになりますが,そのようなことをした場合には,当該者はもはや受益権を放棄することができないことを確認的に明らかにしております。

 

 

また,前受益者が受益権を承認している場合にまで譲受人に放棄を認めることは,先ほど申しましたとおり,受益権の譲渡の有無によって受益権の放棄の可否が左右されることになりまして,信託関係者に不測の損害を与えることになりかねず,また,譲受人が自ら受益を承認した場合には受益権の放棄を認めないとしても,当該者は不測の損害をこうむることはないと考えられます。

 

 

 

そこで,2の(2)では,信託行為により受益者と指定された者から受益権の譲渡を受けた者は,前受益者が受益を承認し,又は自ら受益を承認した場合には,信託行為に別段の定めがない限り受益権を放棄することはできないとしております。

 

最後に,3でございますが,これは受益権の放棄の効果に関する提案でございます。

 

 

受益者が受益権を放棄できる旨の信託行為の定めを置いた当事者の意思としましては,受益権を放棄した受益者は,既に発生した信託債務に係る責任については責任を免れませんが,将来発生する責任については免れ得ることを意図していると考えるのが公平の見地から妥当かつ合理的であると考えられます。

 

 

そこで,(1)におきましては,信託行為に別段の定めがない限り,受益権を放棄した受益者は放棄の時点までに生じた原因に基づく責任を免れることはできないものとしております。

 

 

他方で,先ほど申しましたとおり,信託行為により受益者として指定された者の中には,自らを受益者とする信託の設定に全く関与していない者もあり得ますので,そのような者が受益権を放棄した場合には,既に発生した信託債務に係る責任等についても免れるとすることが妥当であると考えられます。

 

 

 

このような観点から,(2)では,信託行為により受益者として指定された者が受益権を放棄した場合には,既に発生した責任も免れる,つまり何らの責任も負わないとしております。

 

 

そして,この場合には,受益者として指定された者には受益権は遡及的に帰属していなかったことになりますので,仮に当該者が信託から生じる利益を受領していた場合には,信託行為に別段の定めがない限り,不当利得として,受領した信託の利益を返還する必要があると考えられます。

 

なお,補足いたしますと,以上の提案は,受益権を放棄できる受益者の範囲及び放棄の効果につきまして,信託設定の時点においていわゆる自益信託か他益信託かによって明確に区別した規律を設けることを提案するものでございます。

 

 

 

しかし,これに対しましては,理屈としては理解し得るものの,経済実態としては自益信託,他益信託の間に相違がない場合が多い,例えば,いずれも実態は自ら出捐して利益も得ているわけですが,合同金信は自益信託で,証券投資信託は他益信託であるということになりますし,また,いずれも企業が委託者となって従業員の生活保障を図るものでございますが,厚生年金基金信託は自益信託で,適格退職年金信託は他益信託であるといった具合でございますが,このような状況にもかかわらず規律が大幅に異なるのは相当ではないのではないかという指摘もございます。

 

 

ポリー

「経済実態としては、自益であろうが他益であろうが出来る方法でやるのですね。」

 

 

 

この点につきましてはなお検討したいと考えておりますが,何か実態を踏まえた適切な規律の在り方があるようでございましたら,是非とも御審議,御意見を賜れればと存じます。

 

 

 

  •  それでは,今の二つの問題につきまして御議論いただければと思いますが,いかがでしょうか。

 

 

  •  この問題はやはり非常に重要だと思うのですね。信託のイメージという,だれのための信託かということを常に私も繰り返し申し上げているので,この受益者の利益の享受で,受益権の放棄だという話ですから,そこに一番関係があるところなので,ここは重要だと。

 

番人

「不動産の場合、受益権の放棄に関する定めは、法律と違う定めをするなら原則として信託目録に記録する必要があるだろうね。」

 

 

これを前振りにして,まず第1点は,最後に○○幹事がおっしゃったことと密接に関係する話だと思いますが,第45の受益権の利益の享受の部分と,受益権の放棄の部分というのは,これは基本的に任意規定なのだろうか,強行規定なのだろうかという話がやはりあると思います。

 

 

原則は,「信託契約に別段の定めがない限り」というような文章が入っているのは,当然これは任意規定だという話になりますから,大体任意規定なのかなと思って--ちょっと問題を自分の頭の中で整理して,受益権の発生の話ですね。

 

 

受益者となるかどうかについては,そういうものが書いてないので。特に通知義務のところですけれども,ないですよね。

 

 

だから,これはやはり強行規定なのかなというふうに思って聞いていたのですが,強行規定にする必要があるのかどうかというのは,これは非常に大きな問題だと思います。これが第1点です。

 

 

 

二つ目の方が本当は私にとっては重要なのですが,ダイコトミーの話がありましたよね。

 

 

いわゆる自益信託の場合と他益信託の場合というので,こんなふうにはっきりルールを異にしていることというのをどういうふうに評価しているかというと,一つの反論は,日本における経済実体として,自益か他益かというのは極めてテクニカルな話だけであって,実体をあらわしていない。

 

 

だから,こういうような概念的な装置を使っても意味がないのではないかと。これは一つ重要な点だと思います。

 

 

すみれ

「ダイコトミー?」

 

 

これは英語にならないんですね,「自益信託」,「他益信託」というのは。それに当たる英語はないですから。

 

 

日本の学者の中には,これが一番重要な分類だというふうにおっしゃる人もいますけれども,英米では通用しない話だというのは,実際には,自益であり他益である場合が,民事信託の場合ですけれども,相当にある。

 

 

 

 

すみれ

「自益信託、他益信託って他英語にはないんだ。ギリシャ語とかにはあるかな。」

 

 

 

 

つまり,共同受益者の一人になっていてというケースが,生前信託の場合は典型的にはそうなんですね。

 

 

だから,今,私の頭の中では民事信託を考えているのですけれども,まず自分が受益者にもなり,しかし,その後,ほかの家族,配偶者,子供が受益者になる,それで連続的になっていくというような仕組みを考えた場合に,自分が受益権を放棄することができないというのは何だかおかしいのですね。

 

 

 

すみれ

「民事信託のことを考えてくれているんだ。」

 

 

 

受益権を放棄することをすれば,ほかの人たちのためになりますから。だから,そういう自益か他益かというダイコトミーではなくて,それが複合される,自益アンド他益というケースの方を想定して彼らはルールをつくっているのです。

 

 

すみれ

「彼らってイギリスとかアメリカの人かな。イギリスやアメリカでは自益、他益を問わず、原則として受益権を放棄する権利があるんだ。」

 

 

だから,そういう意味から言っても,この二つの区分というのは,日本での今ある経済的なというか取引のための信託ということを想定すれば,それはそうかもしれない。

 

 

しかし,将来起こるような,英米と同じような形の民事信託が発展するのかどうかというのはこれから見ないといけないけれども,そういう形の信託になった場合に,このようなことをやっているとちょっと困るんじゃないかというのが二つ目です。

 

 

すみれ

「今、英米と同じような形の民事信託は発展してるかな。」

 

 

 

 

それに関連させて,結局,強行規定,任意規定のところに話を持っていこうと思っているのは,私は,こういったものを強行規定にする必要はなくて,それぞれがきちっとしたリスクの引受けが本当になされているような取引関係のところであれば,それはそれでいいと思うのです。

 

 

 

ちょっと,最後,何か疲れてしまって,うまくまとまらないのですが。

済みません,後でもう一回,発言の機会があればと思いますが,一言だけ。

 

いわゆる他益信託の場合で,私の考えは,とにかく本来は受益者にリスクを負わせるようなものは信託ではないと思っているのです。それが原則なんですね。

 

 

ただ,自益信託の場合については,こういうような定めをするということには理解できる部分があるのですが,いわゆる他益信託の場合で,○○幹事は,図らずもか,意識的にか分かりませんが,当該者が受益を承認した場合には信託行為に定めがない限り受益権を放棄することはできないものとするというのは,受益権の放棄の放棄だというふうにおっしゃった。

 

 

すみれ

「受益権の放棄の放棄か。すごいな。」

 

 

それだったら,この受益の承認ということの意味が,後の注のところでも問題になっていますよね,一体これは何なのだと。

 

 

という話なので,はっきり信託行為の中で受益者が受益権の放棄はもはやできないことにするということをうたって,そこへチェックして,それでリスクを引き受けるというならともかく。という形で,極めて限定した話にした方がいいと私は感じました。

 

 

 

 

  •  この問題は,○○委員が言われたように,だれが基本的にリスクを負うべきかという,簡単に言えば現在の36条みたいな問題ですけれども,そういう補償請求権の有無と密接に絡んでいるわけですよね。

 

 

少なくとも理論的には区別できますけれども,デフォルトのルールが何になるかによって大分意味が違ってくるので。

 

 

そういう観点から,今,御質問があったのだと思いますけれども,また後で議論させていただくとして。

 

 

すみれ

「家族信託では受託者かな。誰もリスクを負わないと思うんだけど。強いて言えば全員じゃないの。」

 

 

  •  私の方は,第45の「受益者の利益の享受について」という部分について申し上げたいと思います。

 

 

 

ここの規律につきましては,1の「受益権の取得時期」というところの記載については,現行法を踏襲ということですので,まあこういうことだろうなというふうに思います。

 

2と3につきましても,受託者が受益者について通知をするのだろうなというところはありますし,催告もするのだろうなと,そういう意味合いでは割と自然に入ってくるのですが,ただ,例えば2であれば,通知義務という形で義務化されているということと,催告権という形で催告したことによっての効果が生じると,こういうことになりますと,はたと考えるところが出てきまして,それに関して若干の質問と意見をということなのですけれども。

 

 

 

まず,質問の方なのですけれども,これは非常に基本的な質問でお恥ずかしいのですけれども,ここで言う通知義務の相手方と催告の相手方なのですけれども,この受益者というものの能力といいますか,意思能力と行為能力というのはどういうふうに考えたらいいのかというのが一つあります。

 

 

例えば催告の方で考えますと,やはり行為能力がないといけないんじゃないかなと。

 

 

その場合に,ぱっと考えてよくある信託のパターンとして,民事的な信託で考えますと,おじいさんが孫に受益権を与えて給付しましょうといったときに,親に対して--済みません,行為能力というふうに考えると,未成年の場合は親に対して催告すると。

 

 

すみれ

「審議会の時にもよくある信託だったんだ。民事的な信託だ。」

 

 

 

そうすると,親と子供との関係からすると利益相反関係になりますので,特別代理人みたいな形の選任が必要になってくると。何かここまで大掛かりなものが必要なのかなというのが一つ。

 

 

 

ただ,リスクがあるのであれば,これは仕方がないのかなと,自問自答ですけれども,そんな感じがいたします。

 

 

すみれ

「家族信託では、通知は要らないかな。親と子供で利益相反関係になるのだろうか。子供に代わって受益権を放棄すると親に遺産が入るってことか。利益相反的かな。子供が不利益になるような、よっぽどのことがない限り受益権の放棄はできないと思うんだけど。受益権の放棄に、受託者の承諾を必要とすることもできるし。受益者代理人を付けておくこともできるし。子供に不利益になるようなら信託を終わらせる権限を受託者に渡しておいてもいいし。受託者と親が仲良しだったら可能性あるけど、それだったらおじいさんの受託者選任ミスってことかな。」

 

 

ただ,通知義務というところで考えますと,果たしてこういうような義務というところまでのものが必要なのだろうかという気がいたします。

 

 

先ほどのシチュエーションでいきますと,多分おじいさんは親に対して教えたくないというのが普通ではないかなということですので,例えば未成年の子供の親が親権者であって,その人に対してしか通知できないとすれば--要するに通知したくないなというようなパターンというのは多いと思うのですけれども,そのときの対応ができないかなという感じがしまして,これが非常に異例なところだったらいいのですけれども,こういうような信託というのは割とよく考えられるのではないかと思いますので,ここら辺について通知義務というのはどうしても外せないものなんだよということであるとすれば,すべてデフォルト・ルールにしていただけないかなということです。

 

 

 

 

 

 

ここの部分につきましては,後から議論の対象になります第46のところにも通じる部分がありますので,ここの部分についても同様の対応をお願いできればということでございます。

 

 

すみれ

「親にはいつか知られるんじゃないっかな。」

 

 

  •  私の意見も○○委員とほぼ同じなのですけれども,それにつけ加えるという意味で,まず第45に関しての通知義務に関するお話と,それから第51についての若干の質問ということです。

 

 

 

まず,第45につきましては,やはり通知義務というのはデフォルト化できないかということでございます。

 

 

まず最初に,そもそも通知義務の有無ということについてのデフォルト化ということでございますが,これは,先ほど○○委員がおっしゃられたとおり,民事信託だったとしても,遺言信託で,先ほどは親に知らせたくないということもあったと思うのですけれども,そもそも本人に知らせたくないと。

 

 

例えば,私が死ぬまでは頑張って勉強してほしいと。もしこれが,実質上遺産が承継されるのであればもう努力することができないからということで,死ぬまで,ぎりぎりまで知らせたくないというニーズは意外と多いのではないのかなというふうに思っております。

 

 

そういったときにもあえて通知義務という形でしてしまえば,そもそもそういう遺言信託のスキーム自体が壊れてしまうことがあるのかなというふうに思っております。

 

 

すみれ

「受益権をもらう条件つけたら良いんじゃないかと思うけど。単純かな。」

 

 

また,商事信託の場合でも,例えばエスクローにおいて,よく第1受益権,第2受益権という形で設定しておいて,ある条件が成就した場合に第1受益権の支払いがなくなって,第2受益権が発生するという場合がございます。

 

 

その第2受益権が多数の場合において,今度は受託者としての身勝手な話かもしれませんけれども,非常に事務コストが高い,かつ,そういうニーズが余りないという場合に,あえてそこまでする必要があるのかというような商事信託はあるのではないかというふうに思っております。

 

 

 

 

そこで,これは質問もあるわけですけれども,ここで言う「指定された者」というものの概念自体が,一応受益権として確定している,特定しているという場合であったとしても,実質上経済的な効果があらわれたくないという場合においてもやはり知らしめるというのは不合理な場合もあるわけですので,そういう意味においても,通知義務というのはデフォルトとしておいた方がいいということもあるということでございます。

 

 

ポリー

「商事信託は商事信託で通知がやりずらいのですね。」

 

 

 

それから,細かい話ですけれども,二つ目の通知義務者の任意化ということですけれども,特に当初,第46の問題は別として,最初の場合,仮に受益者保護の観点から何らかの通知が必要であるというふうにしたとしても,第45の,特に設定の場合においては,別に受託者がその指定された者に対して通知をする必要はないのではないかと。

 

 

 

委託者が直接通知した方がいいこともあるし,その方が便宜ということもあると思いますので,仮に通知義務は必ず必要であるというふうにしたとしても,通知義務者がだれであるのかということはなお検討の余地があるのではないかというふうに思っております。

 

 

続きまして,第51の話ですが,これは質問ですが,先ほどの○○幹事の御説明及び部会資料の39ページから40ページにかけてのことでございますが,承認する場合に,「信託から生じる利益及び不利益を十分に認識したうえで受益を承認した場合」というふうに書いてございます。

 

 

最初の質問は,まずこれは要件なのかということです。次に,十分に認識していなかった場合に一体どうなるのかという話です。

 

 

3番目に,これが一番大事なのですが,だれがその説明責任を負うのかということです。

 

 

これは,まだ確定的に受益者になっていない者に対する受託者の善管注意義務ないしは忠実義務という話になるのか,そこら辺の理屈の話も含めて,ここの記述をなぜ「十分に認識」にしたのかということをお伺いしたいと思います。

 

 

仮にこれが例えば商事信託で,かつ金融商品云々ということであれば,それは業法の問題なのかなというふうにも思ったものですから,あえてこういう質問をいたす次第でございます。

 

 

 

  •  それでは,順次,可能な範囲でお答えいたしたいと思います。

 

まず一番最初に,○○委員の方からございました,第45の規律が任意規定かどうかというところ,あるいは受益権の発生時期というところについてお答えしますと,受益権の発生時期は信託行為を設定したときであって,かつ受益の意思表示を要しないでというところは,これは基本的には任意規定でいいのではないかと。

 

 

○○委員もそれでいいのではないかとおっしゃっていただけたかと思いますが,任意規定でいいのではないかというふうに考えております。

 

 

もちろん,受益者の利益保護という観点もございますが,やはり信託を設定している委託者の意思にかなう,受益の意思を要しないで受益権を享受できるとする方が委託者の意思にかなうという点を重視しておりますので,委託者が受益の意思が必要だというふうに設定したのであれば,それを尊重していけばいいのではないかと考えているところでございます。

 

もう一つの点は後で御説明するといたしまして,○○委員の方からございました通知の相手方につきましては,もしも相手方が能力が足りない方のような場合には,代理人ですとか,あるいは信託管理人に対して通知をするのであろうと思うところでございます。

 

 

すみれ

「受益者代理人かな。」

 

 

あと,○○委員とも重なりますけれども,デフォルト・ルールとできないかというところにつきましては,なかなか難しい問題がございまして……。

 

 

難しいというのは,できないという意味ではなくて,どちらがいいのかというふうに事務局では考えていると。

 

 

あくまで受益者の保護につながるという観点からすると,やはり強行規定的に考えた方がいいわけですが,しかし,今おっしゃったように,委託者の中には一定の時期が来るまで言いたくないというニーズは十分あるだろうと,それはやはり尊重する必要がある場合は幾らでもあるかと思います。

 

 

したがいまして,そのように信託行為で定めれば,基本的には任意規定ということで,通知義務を受託者に課す必要はないのではないかなという気がしているところでございます。

 

 

ただ,その場合におきましても,全く通知しないでいいかどうかという点が一つございまして,これは○○委員からもございましたけれども,受託者がする必要はないだろうというのは,それはそうかと思いますので,その場合には委託者がすると。

 

 

 

更にそれを強行規定とするかどうかという点は問題でございますが,最初に私が言いましたところにかんがみますと,そこも委託者が信託行為で任意規定としているのであれば,必ず委託者が通知しなければならないというところまで強行規定にしなくてもいいのではないかというふうに,現時点では思っているところでございます。

 

 

 

したがいまして,結論的には,全体的に任意規定であるということでいかがかと思いますが,もしも御意見があれば,是非とも,ここは受益者保護の観点にもつながりますので,伺いたいところでございます。

 

 

すみれ

「全体的に任意規定なら要らない気もするね。受益者はお金をもらった時に受託者に内容を聞いて、放棄するか判断したらいいんじゃないかな。」

 

 

それから,○○委員から御質問のありました(注1)の関係で,利益・不利益を十分認識した上でという点は,これは要件というか,それが前提条件だというふうに考えておりまして,認識しないでいた場合はどうかというと,それは結局,受益権の承認,いわば放棄権の放棄という効果が発生しませんので,また放棄できるというか,放棄の権利が奪われないということになると考えております。

 

 

 

 

 

なお,だれが説明責任を負うのかという観点でございますが,これはやはり受託者ではないかと考えているところでございまして,確かに確定的な受益者にはなっていないとおっしゃられましたが,しかし,第45で説明しましたように,意思表示をしなくても,将来地位を失う可能性があるとはいえ,受益者になるわけでございますので,やはりそのような者に対して善管注意義務及び忠実義務を負う受託者が説明をするというのが筋ではないかと考えるところでございます。

 

 

 

 

最後に,一番難しいのが,○○委員が御質問というかお話しになられました,自益・他益の区別の当否というところでございまして,実はこれは事務局としても困っているところでございます。

 

 

御承知のとおり,受益者に対して補償債務を負うかどうかという規律がどうなるかというのがやはり一番大きなところでございますので,それとの関係が決まらないと,ここについても議論がしにくいという点があるわけでございますが,私どもとしましては,自益・他益というのが確かに形式的な区別になってしまいかねないという点は懸念しているところでございまして,何か,例えば自ら利益を得ている者は放棄できないとか,そういう実態を踏まえた規律があれば,その方が本当は望ましいとは思うわけでございますが,なかなかそのような規律を明文的にすることもできないということもありまして,一応,自益・他益,しかも信託設定時で分けているというところで落ち着かせているところでございます。

 

 

 

ただ,ここは是非とも,ほかの先生方からも,よりよい規律の仕方があれば,御意見をいただきたいというふうに思っているところでございます。

とりあえず,以上でございます。

 

 

 

  •  先ほど○○委員が,生前は自分で,その後他人にという例を挙げられましたけれども,そういう場合をこれは必ずしも念頭に置いていないかもしれませんけれども,考え方によっては,自分を受益者にしている部分は自益信託であって,その後の2番目の,連続受益者の次のは他益信託だという形で適用することはできないわけではないかもしれませんね,形上は。

 

 

  •  経時的にではなくて,同時的な場合ももちろんあるのですね。

 

 

それで,○○委員がおっしゃってくださったように,これが問題になるのは,結局,受益権が権利的なところでだけであれば何の問題もなくて,もっと簡単な規律でできるところが,補償請求権という--補償義務というのですかね,逆に言えば,義務を伴う受益権だという話が日本ではあり得るので,そうすると非常に慎重にならざるを得ないということなんですよ。

 

 

だから,あそこのところが本当にクリアになって,補償請求権というのが,ほとんどの場合というか,本当にビジネスで,いわばジョイントベンチャーでやっているのだというような話,一種信託というスキームを利用しているだけであって,という話であれば,それはまたそれで別のスキームがちゃんとできると思うのですが,一般の信託においては補償請求権というのがどうなのかというのが根本的な疑問としてあるものだから,さっきのような話になる。

 

 

 

 

 

もう一言だけ追加。第45の方が任意規定で,第51の基本のところは強行規定なのですね。第45についても,ほかの方と同じように私も確かめたかったので,2と3のところですね,さっきは言葉足らずで,通知義務と何とかについては,今おっしゃったように,これは任意規定だというふうにお考えだということですか。

 

 

 

  •  それは任意規定で……。

 

 

  •  議論が残るけれども,一言だけ言うと,アメリカでも非常に大きな議論があって,ここで言うところの通知義務は米国統一信託法典では強行規定にしたのだけれども,採択した州ではそれを外している例が随分あるのです。ですから,非常に難しい問題だということはあるけれども,一応任意規定だと。

第51の方は強行規定なんですよね。

 

 

 

すみれ

「アメリカでも難しいんだ。」

 

 

 

 

  •  これは「信託行為に別段の定めがない限り」と,事務局としては任意規定だと考えておりますが。ですから,自益信託でも放棄できるということを信託行為に書いてあれば,放棄できるという形になります。

 

  •  これは任意規定でしょうね,恐らく。

 

  •  分かりました。

 

  •  また議論があれば,後で伺うとして。

 

  •  受益権の放棄の問題について,意見を述べさせていただきたいのですが。

 

現行法に比して,今回の御提案の趣旨というのは,かなり費用償還請求が受託者の立場からしやすくなるという規定になっているというふうに受けとめております。

 

 

今,○○委員からありましたように,基本的に,規定の在り方が,間接的に受益者に無限責任を負わせる場面が増えるという規定になっているものですから,これは一般の人が商品として買う場合にはかなりのハイリスク商品になるのではないかというふうに受けとめられます。

 

 

そうするとすれば,もし一般の市民にこういったものが売られるということを想定されているのであれば,やはりこういった制度設計には慎重であるべきと考えます。

 

 

それから,受託者の信託の運営という観点からも,信託の運営というのは信託財産の範囲内で行われるというのが本来的な在り方ではないかというふうに思います。

 

 

そうした運営が確保されるという観点からすると,制度設計の在り方としては,受益者に対して費用償還請求が行いやすい制度よりも,行いにくい制度を設計した方がいいのではないかというふうに思われます。

 

 

受益者の方に請求しやすいということになれば,どうしても管理が甘くなってしまうということは,これはあり得ることではないかということで,このような観点から,やはり受益者に対して簡単に費用償還請求ができるような制度設計というのはしない方がいいのではないかというような感想を持っております。

 

 

すみれ

「たしかにですね。」

 

 

このような観点からしますと,御提案になっておられますように,広く受益者に対する費用償還請求権を認めるような制度設計とか,あるいは将来的な受益権の放棄についても制限できるという制度については,やはりにわかには賛成できないものがあります。

 

 

仮にこのような制度をするのであれば,先ほど○○委員からも多少御意見があったやに思いますけれども,やはり受益者がリスクの負担といいますか責任の負担というものをきちんと認識できる形でないと,こういった責任を負わせるというのはまずいのではないかと。

 

 

そういった観点からしますと,受益権の放棄という形でこういった責任を課すよりも,やはりここはきちんと間接的な無限責任を課すのだというようなことを承諾するといいますか,そういった制度設計が本来あるべき形なのではないかというふうに思います。

 

 

 

 

 

  •  今のも非常に根本にかかわる問題だと思いますけれども,若干私の理解を申し上げますと,第1には,デフォルト・ルールとして受益者に対する費用償還請求権というものを認めるのか認めないのかと。

 

 

 

仮に認める,多少この辺は認めた場合のことを考慮しながらできているルールがあると思いますけれども,いずれにせよ,認めるか認めないか。

 

 

しかし,いずれもデフォルト・ルールですから,受益者に対する補償請求権を認めない場合にも,信託行為でもって認めるというタイプのもあり得るわけですね。そのときにこれらの規定がどうかというのが,また2段目で問題になる。

 

 

恐らく今の○○幹事のは両方を念頭に置いておられると思いますけれども,両方ある意味では関連するものですから,先ほどから議論になっている,補償請求権のところのイメージが決まらないとなかなか議論がしにくいというところは確かにあるのですね。

 

 

ただ,補償請求権をどうするかについては重要な問題ですので,少し先延ばしして,皆さんの御意見をいろいろ伺ってから決めたいと考えていますので,ちょっと分かりにくい点があるのではないかと思います。

 

 

  •  細かい点を2点と,一つ大きい点なのですが。

 

細かい点は確認みたいなことなのですが,一つ目は,今お話がありました受益権の放棄の強行法規性ですが,第51の1は任意規定ですけれども,2は強行規定ですよね。

 

 

(注3)がある本文に書いてあるとおり,「これに反する信託行為の定めは許されない」ということですから,放棄しないというこの原案は,他益信託において放棄しないというふうに定めることはできないと。

 

 

これは確認です。それを前提に意見を申し上げます。

 

 

 

 

二つ目の細かい点は,○○委員がおっしゃっているように,もう論点は出尽くしていると思いますけれども,私法のルールとしては,私の理解では,(注1)にある,利益・不利益を分かっていれば,いわばリスクが移転する,分かっていなければ移転しないということですから,それでいいと思いますね。

 

 

 

そういうふうに決まれば,業法などでは,説明しなければならないという義務を課すことがあって,それに違反すれば,行政処分とか,そういうものになるということです。

 

 

私法のルールでは,それはこうなる,こうなればああするというか,要は要件・効果ですから,ここでの考え方はそういう考え方,どういう考え方でどういうルールを定めるかということが問題だと思います。

以上が小さな点です。

 

 

 

すみれ

「そっか。」

 

 

大きな点は,○○幹事も○○委員もおっしゃっていることで,私は○○委員のおっしゃっていることに実質的には非常に近いのですけれども,多少違った表現で若干申し上げます。もう論点は出尽くしているかもしれません。

 

 

 

私も,従来から,自益・他益というのは,そういう理屈は理屈として成り立ち得る理屈だとは思いますけれども,やはり非常に形式的でテクニカルではないかというふうに思ってきました。

 

 

 

 

 

 

○○幹事が既に御指摘されましたように,日本では,年金信託,運用型の信託,これらは,経済実態から言えば,年金であれ運用であれ,投資家というかお金を出す人がいて,その人へ運用益,あるいは年金の場合には年金の給付がなされる。

 

 

その仕組みをどう作るかというのは,必ずしも信託の仕組みだけが使われてきたわけではありませんで,年金の場合で言えば,保険会社も運用してきているわけですから,保険の仕組みも使われているわけです。

 

 

 

いずれにしても,そういう中で,信託を使う場合に,自益という形を使うものもあれば,他益という形を使うものもある。

 

 

 

もう一つ違ったタイプとしてつけ加えるならば,流動化型と呼ばれているものでも,他益でつくっているものもありますし,自益でつくっているものもあります。

 

 

例えば,証券取引法を適用するために,金銭債権信託と言っていますけれども,証券取引法2条2項1号という有名な類型がありますけれども,わざわざ自益にして,それはなぜわざわざ自益にするかというと,委託者兼当初受益者をもって証券取引法上のみなし有価証券の発行者にして,そこに証券取引法上のディスクロージャー義務をかけると,こういう構造をつくり出すために,言ってみればテクニカルに,本来なら他益でも自益でもいいはずなのですけれども,私法上の仕組みから言えば,それをわざわざ自益につくっているという例があるわけです。

 

 

 

 

したがって--という言い方がいいかどうか分かりませんけれども,自益・他益という区別は,少なくとも今行われているものについては,この放棄という点について説明が非常につきにくい。もしルールを分けるとしますとですね。

 

 

 

それで,実態はというと,よく外国で使われる言葉ですけれども,○○委員や私がよく使っている,「ディールかギフトか」という言い方をするのですけれども,信託の仕組みの原因関係というのでしょうか,「商事か民事か」と言ってもいいのかもしれませんけれども,これが,ギフトというか贈与であって,受益者が何かただでもらうというような類型のものと,私が言いましたように,商事の場合,多くは,受益者となる者というのは実質的な経済的出捐をしているのですね。

 

 

 

それを投資と呼んでもいいかもしれませんけれども。したがって,それに見合った利益なりリターンを受け取ろうとする。

 

 

 

年金の場合でも運用の場合でもそうです。これを分けた方がよくて,最初に,もし線引きが自益・他益以外の線引きだとすると,利益をどうこうという話があったのですが,私は,本質的なのはむしろ,もしも今の言葉を使うとすれば,ディールなのかギフトなのかという気がします。それが一つの区分の基準になるように思います。

 

 

すみれ

「たしかにですね。取引か、贈与か。信託の目的も大分違いそうだし。」

 

 

もう一つの区分の基準は,何度も出ていることですが,利益を受ける話なのか,マイナスの義務を負う話なのか。費用償還でも,信託財産でカバーされる範囲なら恐らくいいと思いますけれども,それを超えて追加出資義務を負うという話になりますと,放棄という意味はそれを追わないという意味ですから,単に増えるプラスをもう結構ですというのとは,少なくとも経済実態としては側面が違うということが言えるかと思います。

 

 

 

 

そういうふうに考えますと,ではどうしたらいいかということなのですけれども,私の感想で自信はありませんけれども,実質論で言うと,ディール,すなわち,投資家というか受益者となる,譲受人の場合もありますけれども,実質的な出捐をするような場合には,これは先ほど○○幹事もおっしゃったことですけれども,いわゆる有限責任と我々が呼んでいる,つまり追加出資義務は負わないという線を引くのが基本的な考え方ではないかと思います。

 

 

 

 

ただ,例外的な類型として,例えば土地信託のような場合には,当事者間で,共同事業というのでしょうか,利益も分け合うしリスクも分け合いますと,そういう特約というか契約があってもいいと思いますけれども,一般的な運用型や年金型のものについては,基本的には,信託以外の法形式のものはすべて,匿名組合であれ,有限責任組合であれ,それから株式会社であれそうですけれども,出資者の有限責任というのは法律上のルールになっていますから,原則はそういうことでいいと思います。

 

 

 

 

細かいことを言えば,金融商品の世界には,追い証というのでしょうか,後から追加義務を負うものもあるし,私法上の法形態で言えば組合形式の出資組合もありますので,いろいろ例外はあり得ると思いますけれども,基本的な考え方としては,若干の例外的な場合を除くと,基本的には契約で定めるけれども,デフォルト・ルールは有限責任であり,場合によっては有限責任を強行規定とするという考え方ではないかと思います。

 

 

 

 

これに対して,民事というかギフトの場合ですけれども,これは普通は利益が来るだけで,恐らくマイナスになって追加出資という話は,まあ費用償還がどういう場合になされるかにもよりますけれども,余りないとは思うのですけれども,しかし,この資料にも書いてあるのですけれども,全然知らないところで自分が物をいただくような場合であっても,やはりそれは放棄する自由はあるでしょう。

 

 

 

それは全くそのとおりだと私は思います。特に日本の場合には,余計なことですけれども,税制なども,他益ならば贈与,自益ならそうでないというのが基本的な考え方で,特定贈与信託でしたか,要するに特別な社会政策上の理由がある場合だけ免税にしているという,そういう影響もありますので,ですから具体的に言いますと,財産が他益で来ても,キャッシュ・フローはないけれども税金は納めなければいけないということになっていますので,まあそれは付随的な理由ですけれども,いずれにしても,利益を受けても,やはり受けたくないという事由は当然あってしかるべきだと思いますので,民事の方はやはり原則は放棄オーケーであろうという気がいたします。

 

 

 

 

それで,そうだとしますと,どういうふうにルールを設けたらよいかということなのですけれども,いろいろなつくり方があるのですけれども,一つは,もちろん,放棄という概念を使わないで組み立てるということも,費用償還プラスなんかで考える,利益の放棄とかで考えるということもあるかと思いますけれども,もし現行法との連続性を重視するのであれば,放棄は原則できることにしておいて,先ほど言いました,商事のある種の類型のものについて実質有限責任を認めるような形でのみ線を引いておく,つまり,放棄はできるのが原則だけれども,制限もしていいけれども,その制限の限界をうまく書ければ書くというようなのも一つのアプローチだと思います。

 

 

 

一言で言えば,やはり自益・他益というのはちょっと,これは○○委員がおっしゃったことだと思いますけれども,見誤るおそれがあって,それを使って全部書いていくと,何かうその上にうそを書いていくと,最後はうまくおさまるようなルールが書けるような気もするのですけれども,まだこの段階で私も名案はありませんけれども,もうちょっと違った概念を使ってうまく妥当なルールが書けるような気がしています。

 

 

すみれ

「放棄は制限の限界をうまく書く、か。」

 

 

  •  たくさん重要な問題点が指摘されたと思います。

 

ディールとギフトの区切り方の問題ですけれども,例えば,ある人が出資というのでしょうか,お金を出して,自分が受益者になる,自分が対価としての受益権からの利益を享受するという場合には,これは○○委員の言われたディールの方に当たるのですね。

 

 

その受益権を自分自身が享受しないで,だれか別な人間に与える,そうすると,他益信託の形ですけれども,そのときの受益者というのは,確かに自分自身は払っていないけれども,○○委員のあれだとギフトになるわけですね,そのときに。

 

 

 

 

  •  そうなのですけれども,例えば証券投資信託の仕組みなのですけれども,形の上だけ言いますと,委託業者と呼ばれている会社が,出資というか,信託受託会社にお金を渡すのです。

 

 

それによって投資信託が成立するのです。そして,その受益権を分割して,直接,いわゆる投資家に売るわけです。

 

 

しかし,委託会社はお金を出してギフトしているという実態はないのですね。

 

 

それはどういうことかというと,当初,他益信託というテクニックを使っていますけれども,投資家からお金を集めて,その集めたお金を委託会社は受託会社に渡しているのです。

 

 

ちょっと時間的な順序として,したがって,信託がいつ成立したか,信託が成立するそれまでどういうのか,いろいろ細かい法律問題は別途ありますけれども,それもそもそも他益信託と構成するから生じる法律問題なのですけれども,まあそれは立ち入りませんけれども。

 

 

 

ですから,今,○○委員のおっしゃったあれで言いますと,私がディールと呼んでいるものというのは,だれかお金を出して人に利益を帰属させるという類型は含まなくて,それはそういう意味で答えはイエスなのですけれども,多くの運用型のものというのは,合同金信でもそうですけれども--合同金信というのはもちろん委託者兼受益者になっていますけれども--証券投資信託の場合でも,形はといえば委託会社がお金を出していますけれども,お金は自分が出して人に与えているのではなくて,実質的には受益者が出しているということなのです。

 

 

ですから,そういうものとギフトというのは,世代間承継が一番典型的だとは思いますけれども,お金を出すという類型はほとんどなくて,財産管理して,そのベネフィットを,伝統的な英米における民事信託だと思いますけれども,子供とか次の世代の人に承継するという,そういう類型です。

 

 

 

 

 

 

  •  私は,この区別自体はそんなにたくさん議論しなくてもいいのかと思いますけれども,ちょっと十分私が理解していないせいもありますけれども,今のように,委託者に相当する人が自分の持っている財産というか,土地だとかそういうのをだれかに信託でもって与えると,これはある意味で一種の贈与の違った形だと思いますので,こういうのは典型的なギフトなんでしょうね。

 

 

番人

「一種の贈与の違った形か。なるほど。」

 

 

 

ただ,委託者が金銭でもって出資はしているけれども,金銭をいきなり受益者に与えるのではなくて,いったん受託者に信託という形で運用してもらって,その利益が別な人間である受益者に帰属するという形をとると,これは形上は,要するに自益信託の形でもって委託者が自分でその信託からの利益を享受するタイプと余り変わらないような気がするのですね。つまり,他人にその信託の利益を与えるか,あるいは出資した自分自身が享受するかというのは余り変わらないような気がして,だから,○○委員,むしろこういうのはディールでいいのですか。

 

 

  •  いや,もう同じことを言っていると思うのです。私は,自分が出資して他人に利益を与えるというのはないと思います。

 

 

したがって,結論は○○委員がおっしゃっているとおりで,ディールなのですけれども,ないというのはどういうことかといいますと,証券投資信託以外の例を例にとってもいいのですけれども,実質的な出捐をする人がいまして,年金の場合で言いますと,自益信託の場合でもいいと思いますが,厚生年金基金という仕組みがどうなっているかといいますと,受益者となる人,結局,年金基金が委託者兼受益者になるわけですけれども,それは基金に法人性がありますから,ですから,それが出していて,その利益はというと,これは自益信託という形ですけれども,実質的には受給者なのですけれども,しかし,お金はもともとどこから出ていますかと言われたら,それは受給者というか,加入者と企業がどのぐらいの割合を出すかという問題はありますけれども,実質的な出捐をしている人がそこにいるわけですね。

 

 

 

では企業から見ればそれは寄付しているのかというと,もしそういう議論をしていけば,それはそうではなくて,それを企業と見るかどう見るかという問題はありますけれども,働いた対価として払っているわけですから。

 

 

 

ディールというジャンルにおいては,ある人が出して,そのベネフィットを自分ではなくて他人に帰属させるというのは,形式的にはあるのですけれども,実質的にはそういう類型はなくて,そういう意味で,ディールかギフトかというのは非常に--○○委員がおっしゃろうとしているのは,あの類型というのはすべてディールに含めていいというふうに私は思います。

 

 

 

すみれ

「厚生年金基金か。色々あったね。」

 

 

  •  この区別は,区別自体に,ここでそれを延々と議論するわけにはいかないと思いますけれども,先ほど○○委員が言われたように,どういうルールをそれに結びつけるかということとつながるとなると重要な問題だと思いましたので,ちょっと言及しましたけれども。

 

 

  •  ○○委員も○○幹事も,私の思いをもっと上手に言葉に変えて下さっているので,本当に有り難い。

 

 

それで,○○委員のおっしゃっていることは,今,ディールとギフトという話は出ましたが,ディールですら受益権を放棄することができるというのがデフォルト・ルールですよということをおっしゃっているので,そこが一番--つまり,余りディールとギフトというのをこの場合は区別しなくてよいというところの方が重要なので,その点だけは確認をしておきたい。

 

 

 

もう一つ言うと,39ページのところで,そうじゃないよと。自益信託については,ここの真ん中の文章で,委託者兼受益者が自分で設定しておきながら自由に後から離脱することは,「受託者をはじめとする利害関係人に不測の損害を与えることにかねず」と。

 

 

不測の損害を与えることには絶対ならないでしょう。

 

 

受託者は信託契約の当事者なのですから。だから,これをこういう形でデフォルト・ルールだということにして,しかし原則はこうですよとうたってしまうのは,これが何より受託者のための信託だということをはっきり出したいということ以外のものではなくて,「公平の見地に照らしても妥当ではない」というのも,受託者サイドに立っているだけで。受託者は絶対に不測の損害にはならんのですよ。ということなんですね。

 

 

 

 

だから,デフォルト・ルールはやはり受益権を放棄することができるということに商事の世界でも普通はなっているでしょうというところを○○委員が強調してくださったので,それは非常に私は共感するところです。いわんや民事をやという。

 

 

 

 

  •  根本的な話ではないところで,かつ,私の単なる聞き逃しかもしれないのですが,第45の3の催告権で,その期間内に応じなければ受益権を放棄することができないという話と,第51の受益を承認するということとの概念の関係というのはどうなっているのでしょうか。

 

 

  •  これも非常に重要な問題ですね。

 

 

  •  今の御指摘ですが,直接的な関係ではないのではないかと。

 

といいますのは,第45の3というのは,催告して返事がないと承認とみなすということでございまして,これは積極的な意思表示がないわけでございます。

 

 

第51の方は,自らがリスクを知った上でそれを承認するという能動的な意思表示がある場合ですので,両方はちょっと局面が違うのではないかという気がいたしますが。

 

 

  •  しかし,第45の3の効果は,受益権の放棄ができなくなるということですよ。

 

 

  •  効果は同じになりますが。

 

  •  そうすると,催告に応じて,このときには内容のリスクとかの説明がなくても,答えなくても,受益権の放棄ができなくなると。

 

 

  •  失礼しました。当然のことながら,その催告の中で,どういうリスクがあるかということは十分伝えた上で,その上で何も意思表示をしないと,この提案では承認とみなされるということですので,受託者としてやるべき,あるいは催告者としてやるべきことは同じ,リスクの提供というか説明ということにはなります。

 

 

 

それで,その効果も同じでございますが,受益者がやることが異なりまして,第65の3では,無視すると承認とみなされますということでございます。

 

 

 

 

  •  その議論には2点疑問があるわけでありまして,先ほど,受益者であることのリスクの説明義務はだれが負うのかという話につきまして,受託者という話が出たわけですが,第45の3は,受託者その他の利害関係人に与えられている催告権でありまして,受託者がその説明義務を負うという第51のところと必ずしも整合的ではないのではないかというのが,第1点です。

 

 

 

第2点は,第51のところで述べておりますような,リスクを引き受けるというふうな,受益権を放棄する権利を放棄するという積極的な行為は,自益信託・他益信託の問題はともかくとして,リスクを十分に分かった上で受益権を放棄する権利を放棄するという意思表示をしたならば,それは放棄できなくなるだろうと私も思います。

 

 

 

しかしながら,それは,催告期間内に催告をしなければそういうサンクションを課すことができるかという問題とはやはりかなり違うのではないかという気がするのですが。

 

 

 

  •  前段でおっしゃいました点は,御指摘のとおり,第51であれば受託者が説明義務があるのに,第45の場合はどうかというのは,確かにちょっと整合性を欠くような嫌いがありますので,そこは検討させていただきたいと思います。

 

 

 

後段でおっしゃいました点でございますけれども,正におっしゃるところを私が最初にちょっと申しましたが,我々として果たしてどちらがいいのかというふうに迷っているところでございまして,一応ここでは現状を追認するという形で,無視したら承認とみなす,放棄ができなくなるとしたわけでございますが,しかし,それはやはり受益者にとって酷ではないかと。

 

 

 

特に遺贈の場合であれば,あれはたしか遺贈の限度で責任を負うという形に,承認とされても,なるわけでございますけれども,こちらの方では,原則として,もしも補償債務を負うような信託の設定がされていれば,それによって受ける利益を超えてまで責任を負うということにもなり得るわけでございまして,より一層受益者に対しては酷ではないかという懸念もあるところでございます。

 

 

 

ですから,ここは果たして受益権を放棄することができないとするのがいいのか,それとも,この場合には,受益権を放棄した,あるいは受益権を承認しなかったものとみなすのがいいのかというあたりにつきましては,正に問題視しているところでございまして,御意見をいただければと思いますが,今の○○幹事の御意見は,どちらかというと,この場合にはむしろ受益権を承認しなかったとみなした方がいいのではないかというふうに理解させていただいてよろしいのでございましょうか。

 

 

 

 

  •  かつ,先ほどの説明義務者の問題もあるのですが,受益権を放棄する権利を放棄するというのと,期間を区切られて何かするというのとはかなり性格が違うものであって,受益しなかったことになるというのならまだよろしいのですけれども,その間に,大丈夫です,それじゃ受益者になりますというふうに言えば,受益権を放棄する権利を放棄するという効果まで導けるのかというと……。

 

 

 

もちろん,信託から生じる利益・不利益を十分認識した上でそういう承認行為を行うという要件を当てはめれば,それはそれでよいのかもしれませんけれども,私は,第51のところにこのような規律があるのであるならば,第45の3の規律自体が不要なのではないかという気がいたします。

 

 

 

 

  •  今の点は非常に重要な問題ですね。

 

 

  •  今までの御意見の単なる整理だけかもしれませんけれども,二つの問題があって,実態としてどういう信託の場合に無限責任を負わせるのかという問題で,その切り分け方として,自益か他益かとか,あるいはディールがギフトかとか,あるいは,今日の御提案の中では,49ページに証券化されている場合は別だというような切り分けもある。ということで,まず,どういう類型について認めるかという問題が一つあると思うのです。

 

 

 

 

もう一つの問題は,リスクの移転をどういうふうにしてするかということがあると思います。

 

 

 

 

そこでいろいろなのが出ているのですが,幾つかの違った問題があって,受益者の能力が限定されているから何らかの手続的な保護が必要だと。

 

 

 

それは,例えば意思表示の受領能力をどういうふうに考えるのかとかいうこととも関係しまして,民法第98条の適用だけでいいのか,それ以上必要なのかという問題があると思います。

 

 

それから,行為能力の問題とは別に,例えば消費者である場合に,消費者契約法4条の2項のような不利益事実の不告知というような発想もあり得るのではないか。

 

 

更に,いずれでもないとしても一般的に説明義務を課すということがあり得るのではないかと。どうも手続的にどの時点でリスクを移転するのかについてもいろいろな考慮要素があると思うのです。

 

 

 

大きく分けてその二つの問題があるのですが,その根っこにあるのは,なぜ無限責任を負担させることができるのかということがどうもよく分からないのです。

 

 

何となくそれが前提になっているようなのですけれども。負担をさせることが可能であって,それを幾つかに分けたりして,一定の場合にはさせる,させないというような考え方ですが,むしろ,そもそもなぜ負担させることができるのかという,そこがもし明確になれば,ではこの場合には負担させようというような逆の発想になるんじゃないかなというふうに思います。

 

 

 

  •  先ほどの議論にも関連することですが,まだ考えがまとまっていないわけなのですけれども,信託から生じる利益及び不利益を十分認識した上ということで,先ほどの○○委員のお話にもつながるのですけれども,要件・効果という話なのですが,仮に忠実義務ということで手続義務が発生しているということであれば,それを履行しなかったという場合は,単に債務不履行ということで,損害賠償というようなことで,受益者となった者が受託者に対して損害賠償請求をすればいいという話になるのではないのかなと思っています。

 

 

 

例えば,私法上の契約の中で,十分に利益を説明して認識した上で回答しなかった場合の効果として,効果があらわれないと,これは当然,同意を得たか得ていないかという,そういうレベルの問題はあるわけですけれども,説明義務をいったん与えておいて,それの効果を発生させないということが,ほかの法体系と比べてどうなのかというのがちょっと分からないわけです。

 

 

むしろ,先ほど○○委員がおっしゃられたように,それは例えば消費者保護法であるとか,又は業界の金販法であるとか,そういうところで整理されて,それなりのペナルティーを与えるというふうに整理した方がいいのではないかなというふうには思っているわけなのですけれども。

 

 

余りまとまった考えではないわけですけれども,ちょっとコメントいたします。

 

 

 

 

 

 

  •  非常に大きな枠組みとしては,どういう場合にどうするかは別として,デフォルト・ルールが受益者の有限責任になるか無限責任になるか。

 

 

もちろん,放棄はどっちもあり得るのですけれども,特に補償請求権との関係で言うと,無限責任の場合には放棄というのがセットになって,一定の場合に受益者が放棄すると,その利益が守られるというのでしょうか,要するに無限責任をどこかで打ち切ることができる,恐らくそういう構造がまず大きくあるわけですね。

 

 

そのときに,さっきからの繰り返しになりますけれども,どこをデフォルト・ルールにするかによって後の問題が微妙に変わってくるという問題があります。

 

 

 

ただ,いずれにせよデフォルト・ルールですから,仮に有限責任だというのがデフォルト・ルールになっても,無限責任を信託行為で設定する場合があり得て,そのときまた,放棄はどうするか,その放棄のための要件というのは,今問題になったように,どういうことを説明して放棄できるようにするかということにつながってくるのだと思います。

 

 

その全体の構造について今いろいろ御議論いただいているところだと思います。

 

 

 

 

  •  これは,端的にこの要件というのは明文化されるわけですか。それとも,当然,私法上の考え方として,こういう認識をした上でなければそのような効果が発生しないというふうに読み込むということですか。

 

 

  •  仮に条文に書かなかったとしても,恐らくそういうことが読み込まれた要件になるのではないでしょうか。

 

 

  •  条文化するかどうかということはともかくといたしまして,十分なリスクの説明をしない場合には,承認という効果を生じさせることはできないということで,書かなくても当然前提要件になるということでございます。

 

 

 

  •  錯誤無効とか,そういう法理とはまた違った法理でやるということですか。

 

 

そんなことを知ってなかったからこうしたんだよと,そういうものではなく,正しくこういう規範があって,この規範に反したからその効果が発生する,発生しないという,そういうことですか。

 

 

 

  •  錯誤無効というか,承認という効果が生じないという意味で言いますと,その承認自体が錯誤と言えば言えるかなと思いますが,いずれにいたしましても,説明義務に違反した場合には損害賠償責任が問えるか否かというような話ではなくて,やはり説明義務を果たさない場合には承認という効果を認めることはできないというふうに考えているところでございますし,その方が受益者の保護には資すると。

 

 

損害賠償責任を問えるということよりは,やはり放棄できるという方が恐らくはるかに受益者の保護には資するというように考えているところでございます。

 

 

 

  •  この第45の3ですけれども,私も先ほど○○幹事との間でもって議論になりましたけれども,○○幹事がさっき言われたのは,この段階での承認という問題と,放棄という問題は恐らく別な問題で,この催告期間が何も意思表示がなくして徒過したときに,受益権を一応承認したものとみなされるけれども,しかし放棄はまた別ですよと,放棄はまた後からできますと。最後に言われたのはそういうことでしたか。

 

 

 

 

  •  ○○委員がおっしゃった問題とも関係するのですが,結局,受益の承認というものをどこまでドラスチックなものとしてとらえるかということだと思うのです。

 

 

これは,リスクを完全に理解した上で,マイナスが出たらそれは支払いますという意思表示であるというふうに言って,そしてそれはそういう意思が特別に表明されたからそういった効果を生むのだ,そういった義務を受益者が負うようになるのだと,こういうふうに解しますと,やはりなかなかそれは認められないという方向になってきて,そう催告をして,何日間以内に答えよというふうにせっつけるような話ではないだろうという感じがするわけですね。

 

 

 

それに対して,そうではなくて,受益権の承認というものがあれば自然にそういうふうな効果が発生するんだよと。

 

 

もっと類型的な話で,場合によっては,それはこんなリスクがあるとは思いませんでしたというのは正に錯誤の問題として処理されるようになるかもしれないけれども,受益者になりますという定型的な意思の中に含まれているものとして一応は考えていくんだよというふうになりますと,非常に軽いものになって,こういう催告とかにもなじむ形になると思うのです。

 

 

私自体は前者のように理解していて,かなり分かった上で,ここの場合は引き受けるというふうに言った場合にそういう義務を負うのだと考えていますので,そうすると,やはり催告などという制度にそもそもなじまないのではないかというふうに申し上げたわけであります。

 

 

 

 

  •  恐らく,受益権を承認するというときに,少しレベルの違う承認というものがあるのですね。

 

  •  そういうふうに考えてもいいのかもしれませんけれども。

 

  •  これは,例えば,信託設定してすぐに最初の段階でもって放棄するかどうかということを催告して,信託設定の段階でもう既に受益権を放棄させるようなことができるという,そういうことになるんですかね。
  •  設定の段階で催告することも,この規律を維持すれば,できるということになります。

 

 

事務局としても,受益の承認というのは大ごとであると,○○幹事のおっしゃる前者の方の考え方だというふうには考えておりまして,それであるからこそ,十分な利益と不利益の認識が必要だと考えているわけでございます。

 

 

 

すみれ

「この条文が通っていたら受益者になるのも一苦労だったね。」

 

 

 

それにもかかわらず,いつまでたってもそのような責任を負うのかどうかというのが分からないということになると,先ほどちょっと御批判もありましたが,関係者にとっては不安定であるということから,この催告という規律を設けたということでございまして,私が勝手に思うところでございますが,○○幹事の御趣旨からすると,催告は認めるけれども,意思を表示しないときは承認しなかったものとみなすということでは足りないということになるのでしょうか。

 

 

  •  むしろ承認じゃないの,単なる催告の場合には。

 

  •  いえ,承認してしまうと,放棄……。

 

  •  放棄をできなくなるような承認というのは,もっとちゃんと内容を,リスクなどを与えた ……。

 

 

  •  ○○委員の放棄二元論と,○○幹事の放棄一元論とのあれですが,放棄一元論の質問として回答いたしますと,おっしゃるように放棄とみなすということでもよろしいのかもしれません。

 

 

 

 

それと,ついでに言わせていただければ有り難いのですが,今,自益信託,他益信託という切り口での問題点が指摘されているのですが,それも確かに問題だと思うのですけれども,仮に放棄する権利を放棄するということの受益権の承認というものを結構大ごとのことだととらえましたときに,自益信託で最初につくった人,当初受益者が承認をしたから,その後は当然に承認の効果が続いていくんだよと。

 

 

 

 

これは,他益・自益と分けているから何かすごく違和感がありますけれども,結局,当初受益者であろうが,途中の受益者であろうが,だれかが承認したら,その後はずっと承認になるというだけの規律だと私は思うのですけれども,そこが本当にそれでいいのか。

 

 

それは,本当に金融商品として受益権が販売されるというふうに考えたときには,金融商品の販売にかかわる規律だけで本当にいいのか,それとも信託の問題としてそこは考えていかなければならないのかというところが実際には問題なのではないかということを,ちょっと一言だけ申し上げておきます。

 

 

 

 

  •  ちょっと混ぜっ返すような話になってしまうかもしれませんが,受益者に対する補償請求権があるという前提でこの辺が考えられているので,それ自体がどうもやはり信託の議論としてすごくおかしい。

 

 

日本の信託法ではおかしくないのでしょうけれども,○○委員がいつもおっしゃっているようなことで,すごくおかしい感じがして,例えば,受益者が無限責任を負うのだというのを信託行為で設定できるという前提でずっと議論が来ていますけれども,それも私は実はついていけなくて,受益者が無限責任を負うことを承諾したら,その受益者は無限責任を負うという,そういうレベルで考えていただくと,それと今の承認とか放棄とか,もう一段上のレベルの意思表示がないと,やはり受益者は無限責任を負うのは酷ということになってしまうのではないかというふうに考えています。とりあえず私の考えはそういうことです。

 

 

 

  •  先ほどから繰り返しているだけですけれども,仮にデフォルト・ルールでもって,原則として受益者に対する補償請求権がない,だけど信託行為で定めれば補償請求権が発生するという考え方は,これは恐らく○○委員も--私が勝手にそんたくしてはいけないかもしれないけれども--特約で定めれば,それはしようがないだろうというぐらいはお考えなのだと思いますけれども,これは確認しないと。後でまた議論します。

 

 

 

そうすると,信託行為のレベルでもって補償請求権が書かれてしまうと,これは従来の議論は,それはしようがないといいますか,その場合には補償請求権は発生するでしょうということを一応前提に議論してきたのですね。

 

それで,今の○○委員の御意見は,信託行為でただ書くだけでも足りないのではないかと。無限責任を負うというのであれば,そのこと自体についてのもっとはっきりした承諾がなくてはいけない,そういう御意見ということでしょうか。

 

 

  •  はい。

 

 

  •  いろいろ御意見をいただきました。まだもうちょっと詰めなくてはいけない問題,特に補償請求権との関係でまだ議論があると思いますので,また全体をどこかでまとめて議論できるチャンスがあるといいと思います。

 

 

  •  議論を余り継続するつもりはないのですけれども,もともとこの放棄のところは,今回は私も意見を言わないでおこうと思ったのですけれども,それは基本的に,先ほど来出ておりますように,受益者に対する補償請求権というものがどう決まるかによって,例えば先生方がおっしゃるような形で,もともとデフォルト・ルールとして受益者に行けませんということであるとすると,変な話,せめてこれぐらいのことはやってくださいよという話になりますし,それが逆転すると,私どもの方は,やはりもっと手当てをお願いしますというような話になりますので,基本的には,やはりそちらの方を詰めていただいてということでないと,なかなか私どもの方としても意見が申し上げられないかなという感じがいたします。

 

 

 

 

  •  せっかく1回だけ機会をいただいたので,二つだけ。

 

○○委員のおっしゃるように,私は--○○委員は,こういう極端な場合というのですか,全部書いてあってというところまでは樋口は否定しないだろうとおっしゃる。

 

 

それはそうなのですけれども,それは英米的な感じで言うと本当は信託ではないのですね。パートナーシップですから。

 

 

共同事業だという話で,双方リスクを負いますよという,そういう枠組みになりますので。

 

受益者に無限責任を課しているような信託というのは本当はないと私は思っているのです,英米では。だから,○○委員のおっしゃるような感じの方が私は近いのです。

 

 

それから,○○幹事がおっしゃった,いったん承認したら後どんどん行くというのも,これは本当に金融というかそういうのとして大丈夫なんだろうかという点についても共感します。

 

 

 

 

 

 

すみれ

「英米的な感じで言うと、トラストではない、だよね。でも日本の他の法律でできなくて、信託法でできるなら、それは日本の信託だよね。」

 

番人

「不公平感がなければ、日本の信託がトラストじゃなくても良いと思うんだけど。」

 

 

 

  •  二,三点補足いたしますが,先ほどから議論を伺っていますと,事務局の提案は補償請求権を前提に,受益者に酷な規律を前提にしているのではないかというようなお話があって,気にしているところでございますが,事務局としてはあくまで中立でございまして,どちらがデフォルト・ルールになるかというのは,全くまだこれから議論したいと思っているところでございます。

 

ただ,○○委員が何度もおっしゃっておられますように,いずれにしてもデフォルト・ルールでございますというのが一応の考えでございますので,そうすると,仮に原則補償請求がないとしても,デフォルト・ルールですので,特約で定められれば,そのときには当然このような規律は必要になるだろうということで提案しているということを,是非とも御理解いただきたいと思います。

 

 

あと,いったん承認したら後ずっと放棄できないのは酷ではないかというのは,事務局としてもそういう問題意識は持っておりまして,以前には,そういう場合は担保責任の規定で当事者間で処理すればいいのではないかということも申し上げたことはございますが,それに対してはいろいろな御批判もいただきまして,そのような,担保責任であるのか,あるいは,先ほど○○委員がおっしゃったように,そういう場合は個別的に承諾したら責任を負うというふうに個々に決めるべきなのか,そこら辺につきましても,なお,今日いただきました御指摘を踏まえて検討したいというふうに思います。

 

 

 

  •  それでは,次のセッション,「受益者を指定又は変更する権利について」の説明をお願いします。

 

 

 

  •  それでは,続きまして,第46の「受益者を指定又は変更する権利について」を御説明いたします。

 

 

 

 

信託行為により受益者として指定された者は,受益の意思表示を要することなく当然に受益者となる等につきましては,先ほど御説明いたしましたとおりでございます。

 

 

この規律によりますと,原則として信託設定後は委託者等が受益者を変更することは許されないということになります。

 

 

ただし,現行法や第45の提案におきましても,信託行為で別段の定めを置くことは許容しておりまして,これによりますと,信託行為で受益者変更権を自己又は第三者に与えている場合には,当該権利の行使によって受益者の受益権を失わせることができるものと解されます。

 

 

このような別段の定めは,遺言代用の信託を始め,主として民事信託において有効に活用することができると考えられますが,現行法のもとではその法律関係が明確ではありませんので,その明確化を提案するものでございます。

 

 

 

 

まず,1及び2でございますが,これは受託者以外の者による受益者指定権等の行使を定めるものでございます。

 

 

ここで,受益者指定権及び受益者変更権について特に定義を設けておりませんが,受益者指定権とは,受益者が受益権を放棄した場合,あるいは受益権が受益者の一身に専属していたときに受益者が死亡した場合,これらの場合において信託存続中に受益者が存在しない場合に,新たに受益者を指定する権利と考えておりまして,変更権というのは,受益者が存在しているにもかかわらず,その受益権を剥奪して別人を新たに受益者と指定する権利と考えております。

 

 

 

 

まず,1でございますが,これは,受託者以外の者が受益者指定権等を行使する場合においては,受託者に対する意思表示によってするものとして,その行使方法を提案しております。

 

その結果,指定権等の行使の効果は,受託者に当該意思表示が到達したときに生ずることになります。

 

 

 

次に,2でございますが,受託者以外の者が受益者指定権等を行使する場合におきましては,遺言によってもすることができることを提案するものでございます。

 

 

他方,遺言による受益者指定権等の行使の効果は,遺言の効力発生時,すなわち,受益者指定権等を有する者が死亡したときに生ずることになりますが,遺言は,相手方のない一方的かつ単独の意思表示でございますので,受益者指定権等を有する者が死亡してから受益者指定権等が行使されたことを受託者が知るまでに一定の期間を要し,その間に受託者が,これらの権利行使がされていないという前提のもとで,従前の受益者であった者に対して信託から生ずる利益を交付すること等が考えられるところでございます。

 

 

そこで,このように遺言によって受益者指定権等が行使された場合の特殊性を考慮しまして,この場合におきましては,その内容が受託者に通知され,又は受託者がこれを知っている場合でなければ受託者に対抗できないものとして,遺言の存在及び内容を知らない受託者の保護を図ることとしております。

 

 

番人

「受託者に知らせないまま遺言信託をするってこわいよ。信託契約の方が確実じゃないかな。」

 

 

次に,3は,受託者以外の者によって受益者指定権等が行使された場合の受託者の通知義務に関するものでございます。

 

 

まず,(1)は,受益者指定権が行使された場合における通知義務について提案するものでございます。

 

 

指定権が行使されることにより新たに受益者として指定された者は,信託行為により受益者として指定された者と同様に,信託の利益を共有することに関して意思表示を要しないということになります。

 

 

 

その場合におきまして,受益者として有する各種の権利,これは配当を受ける権利にとどまらず,受託者に対する監督権能なども含むわけでございますが,このような権利を行使する機会を確保するためには,指定された者に対して受益者であることを認識させることが必要であると考えられます。

 

 

そこで,第45,先ほど説明しました「受益者の利益の享受について」と同じように,受託者の通知義務を提案するものでございます。

 

 

(2)は,受益者変更権が行使された場合の通知義務について提案するものでございまして,変更権が行使されることによって受益者としての地位を失う者は,受益者変更権が行使されるまでは,将来にわたって受益者としての信託の利益を享受し得ることについて期待を有していると考えられます。

 

 

 

そこで,受益権を失ったことについての通知義務を受託者に課すことによって,   この期待が実現しないことを認識させ,地位を失った者が不測の損害をこうむることを防止しようとするものでございます。

 

 

 

 

なお,この場合におきましては,新たに受益者として指定された者に対しても通知をすべきことは,先ほど説明したところと同様でございます。

 

次に,4でございますが,これは指定権者又は変更権者が死亡した場合に関する提案でございまして,指定権者が死亡した場合におきましては,信託行為に別段の定めがない限り,信託は終了するものとしております。

 

 

 

 

ポリー

「信託が終了するんですね。」

 

 

 

それから,(2)でございますけれども,変更権者が死亡した場合につきましては,現在受益者である者に確定的に受益権が帰属するとしております。

 

 

もっとも,信託行為において後継の受益者変更権者の定めをしている場合や新たな受益者変更権者の選任方法が定められている場合には,受益者は確定しないとしているところでございます。

 

 

最後に,5でございますが,これは受託者が受益者指定権者又は受益者変更権者である場合の特則に関する提案でございます。

 

 

 

まず,(1)は,受託者が受益者指定権等を行使する方法に関するものでございまして,これは,受託者が自己に対して意思表示をするという1の規律によることができませんので,これとは別に規律を設けることといたしまして,まず,受益者指定権等の行使につきましては,新たに受益者となる者に対して意思表示をすべきであるというのが①でございますし,それから,変更権の行使につきましては,②のとおり,地位を失うものに対して意思表示をするというふうにさせていただいたところでございます。

 

 

(2)につきましては,原則として,先ほど言いましたとおり,指定権等の行使は遺言ではできるわけでございますが,受託者が指定権者等である場合につきましては,遺言によってはできないということを明記したものでございます。

 

 

すみれ

「契約でも厳しい感じもするけど。」

 

 

(3)でございますが,これは,受託者が受益者指定権等を有する場合において,その受託者が受益者指定権等を行使せずに死亡した場合に関する提案でございます。

 

 

このような受益者指定権等の行使というのは,信託事務処理の一環であると考えられますので,このように受託者が死亡した場合には,受託者の交代に関する規律に従いまして,新たな受託者がその受益者変更権を承継するというふうに考えられると思います。

 

 

したがいまして,この場合には,先ほどの受託者以外の者が指定権を有する場合と異なりまして,受託者が死亡したとしても信託は終了しませんし,死亡した受託者が変更権を有する場合においても,受益者はこれによっては確定しない,新たな受託者がまだ指定権ないし変更権を承継しているからであるというふうに考えるものでございます。

 

 

 

 

 

最後に,(注)において書かせていただきましたのは,受益者変更権の濫用防止について検討したものでございまして,信託行為により裁量的に受益者指定権等を行使できることとし,その指定権等を行使することによって受益者となった者から対価を得ることは,受益権を分割して譲渡することと同様の経済的な利益を享受しているとも考えられます。

 

 

 

そこで,このような指定権等の行使によって経済的利益を得られるという地位をいかに捕捉するかという問題があると思われます。

 

 

 

この点に関しましては,例えば米国統一信託法典を見ますと,委託者が撤回又は変更権を留保している場合のような撤回可能信託の財産は委託者の債権者の債権の引当てとなると規定されておりますが,この提案では,受益者指定権等を有する者がいる場合においても,あくまで信託が設定されております以上は信託財産は受託者の所有財産であって,これを指定権等を有する者の財産として取り扱うことは難しいのではないかと言わざるを得ないと思われます。

 

 

 

そこで,受益者指定権自体を経済的価値のある権利と認めて,これを差し押さえることができるとするか,あるいは,このような考え方が困難であれば,受益者となった者から対価を得ることが容認されているような受益者指定権を有する者は,実質的には信託による利益を享受している者,すなわち受益者であると考えまして,そのような者が享受している利益を受益権と認めて,それを差し押さえるというふうに考えることもできるのではないかと。

 

 

番人

「差し押さえとかそういうことができるんだろうか。不動産の場合、受益者を指定する条件や受益者を定める方法は信託目録に記録する事項になるね。」

 

 

そうしますと,それ以上に受益者指定権等の濫用的行使を制限する規定を設けるまでの必要はないのではないかというふうにも思われるところでございますが,この点について御意見をいただきたいというふうに考えているところでございます。

 

 

 

 

 

 

  •  それでは,今の第46の問題について,いかがでしょうか。

それなりに合理的な内容であると,大体そういう御理解でしょうか。

 

 

 

  •  細かい話で恐縮ですが,2点ございます。

一つは,先ほどの第45と同じ話なのですけれども,ここにおける通知義務というのも同じようにデフォルト・ルールというふうに考えていいのかということです。

 

 

もっとも,これは受託者が意思表示を受けなければ発生しないという場合もありますので,そうしますと,当然のことながらということがあると思いまして,そこはちょっと確認ということで,これがデフォルト・ルールなのかということを御質問したいと思います。

 

 

 

もう一つは,第三者として受益者指定権を受けた者というのは,濫用の話でございますけれども,先ほど債権者からの差押えということで濫用防止するというお考えの披露があったと思いますけれども,そもそもこの指定権者というものが何らかのそれ以外の義務というのをだれかに持っているのかどうかということです。

 

 

ちょっと観念しにくいのかもしれませんけれども,何かしらの忠実義務等を負っていて,よって,何らかの不当な,わいろ等の対価を得た場合にそれを罰せられる規律があるのかどうかと。

 

 

信託の信頼性を維持するという観点からは何らかの規律があった方がいいのかなというふうには思いますけれども,他方,そういうふうに指定したのが悪いということなのかもしれませんし,又は,先ほどの提案で十分な規律であるということなのかもしれませんけれども,この点,どうお考えなのかということをお尋ねしたいと思います。

 

 

 

  •  3の通知義務につきましては,これもやはり同じように,デフォルト・ルールでいいのではないかなという気がいたしますけれども。

 

 

指定された者に対して通知をする義務という話は,先ほどと同じ平仄を合わせる考え方で書いておりますので,あちらも先ほど説明しましたようにデフォルト・ルールでございますので,こちらもデフォルト・ルールでいいのではないかという考えでございます。

 

 

 

  •  次に,だれがその通知義務を負うかということですけれども,先ほど,第45の場合には,別に委託者でもいいのではないのかという議論があったと思うのですけれども,この場合はそれでもいいのかと。

 

 

  •  この場合も,信託行為でそのように定めていれば,委託者でもいいのではないかと思われます。

 

 

  •  受託者が意思表示を得た,到達があったということをもって変更権の要件としているわけですけれども,その事実を確認するかどうかというのは別として,それは委託者が別途通知をすれば,それで足りるという話ですか。

 

 

  •  それは受益者の権利行使の確保という観点でございますので,いつこの効力が発生するかという問題とは別として,だれかが通知すればいいということで,デフォルト・ルールでいいのではないかというふうに考えているところでございます。

 

 

 

失礼ですが,もう1点は何でしたでしょうか。

 

  •  指定権者の規律として,何らかの義務を負っているのかどうかという話,だれかに義務を負っているかという話ですけれども。

 

 

 

  •  個人的な考えですけれども,これは信託の枠組みの中で信託行為でもってつくられるので,そういう意味では,信託の目的とかそういうものにはやはり拘束されるのだろうと思うのです。

 

 

そういうことで,やはり一定の義務というのはあるのだと思います。いろいろな受益者指定権の指定の仕方というものも,かなり狭い枠をはめている場合もあれば,非常に広い裁量権が与えられている場合もありますけれども,最低限,信託目的というものには拘束されるだろうと。

 

 

 

ただ,私の感じでは,そのときに指定権者がどういう義務を負うかというのはなかなか難しそうで。

 

 

これが,受託者が指定権を持っている場合であれば,恐らく受託者の義務の中で解決するのでしょうね。ところが,第三者だということになると,これはどうなるんですかね。

 

 

 

  •  だれに対してというところは,ちょっと今,○○委員の話の前としまして,事務局の考えとしては,これは変更権,指定権を有しているのは委託者であるので,委託者と委任の関係に立つのではないかということで,委託者に対して受任者としての義務を負うのではないかと考えております。

 

すみれ

「委託者が受益者の変更や指定権を持っているって想定なんだ。」

 

 

ただ,権利をどのように行使すべきかというのは,これは,その委任契約の中でどこまでの裁量権が変更権者ないし指定権者に与えられているかということで,一義的には決まらないのではないかと。

 

 

やはり譲渡した契約の定め方とか信託行為の定め方によって異なるのではないかなという気がいたします。

 

 

 

  •  私の理解では,この第46というのは,英語で言えばパワー・オブ・アポイントメントというのを,初めて--多分初めてなんでしょうね--日本のこの信託法の中に入れてみようと。

 

 

どうも英米ではそういうものが信託と組み合わせて使われているらしいと。私も英米についてよく分からないところがいっぱいありますけれども,そのうちの一つでもあるのですね。

 

 

今日出てきた中では,まず,自分にとっての課題ということですけれども,二つ。

 

 

一つは,この5のところで,話で聞くと,どちらかというと,このパワー・オブ・アポイントメントを持っている人は受託者以外の人の方が多分一般的だと思うのですが,受託者であってはいけないかというと,きっとそうでもない。

 

 

 

そこで,この5のところで,受託者が受益者を指定したり何なりという話になると,すぐ問題になるのは,とにかく自分のかいらいを受益者にしておいて,こことここの間に正に信認関係があるのだけれども,結局受託者が好き勝手にできるわけですよね。

 

 

ここの信認関係,信認義務,フィデュシャリー・デューティーをどうやって担保するのかという課題が向こうだってあるはずだというのが一つ。

 

 

すみれ

「フィデュシャリー・デューティー、受認者の義務だ。タマ―ル教授。」

 

 

二つ目が,今ちょっと話に出ていたのですが,そのホルダー・オブ・パワー・オブ・アポイントメントという人たちにどういう義務があるかという話ですね。

 

 

ここでは,「受益者となった者から対価を得ることは」なんていうことで,対価を得ることが前提となっているような感じでもあるのですけれども,一般的には,まあそういう表現ではないのかもしれませんが,やはり今のは委任契約があるでしょうという話なので,そういう委任関係は向こうでは大きな意味ではフィデュシャリーですから,フィデュシャリー・デューティーの一部であることは間違いなくて,フィデュシャリー・デューティーを負っていますよということは間違いないと思うのです。

 

 

その中身で,受託者の負うフィデュシャリー・デューティーと,このパワー・オブ・アポイントメントのホルダーが負っているところの信認義務というのがどの程度違うのかという話だと思います。

 

 

 

 

 

 

最後にもう1点だけつけ加えて,今度は(注)のところで,これはちょっとあいまいな言い方で申し訳ないのですが,このパワー・オブ・アポイントメントを持っている人は,アメリカでは割に重い義務があるらしいのですね。

 

 

ここで全部当該者が享受している利益を差し押さえることができるかどうかというところまでは,ちょっと私,分からないのですが。

 

 

 

それから,これから言うことも意味が分からない。税法上はもうパワー・オブ・アポイントメントのホルダーの間でも,税法上の何かの負担がかかってきてもしようがないように思われているという話をちょっと聞いたことがあるのです。これはもう伝聞だけなので。

 

 

二つの課題ではなくて,三つ目の課題まで申し上げて,コメントとします。

 

 

 

  •  受益者を指定又は変更するその行使の方法について,1点御質問させていただきたいと思うのですが。

 

 

この第46の1では,受託者に対する意思表示によってするというふうに方法が厳格に限定されておりまして,4の(1)のところで,指定権を行使せずに死亡したようなときには信託は終了するという非常にドラスチックな重い効果と結びついております。

 

 

私がやや疑問に思いましたのは,受託者には通知していないのだけれども,指定権者の意思としては明らかである,だれかを指定するということが明らかである場合に,単に受託者への通知を対抗要件にとどめずに,効力要件としているかのように読めるのですけれども,そのようにした理由はなぜでしょうかということを1点お聞かせいただければと存じます。

 

 

 

 

  •  ここで効力要件というふうにいたしましたのは,まず一つは,もし対抗要件としますと,相手方のない意思表示のようなことになりまして,一体いつ効力が発生したか分からないという点が一つあります。

 

 

それから,対抗要件とすると,受託者は,利益を例えば変更前の受益者に給付してしまうような場合がありまして,そうしますと,受託者は対抗されないからよいのですが,前受益者と新受益者との間では紛争が生じ得ます。

 

 

そのような観点からも,一体いつ受益者の地位が交代されたのかということがはっきりすることが適当であり,受託者に対する意思表示ということをもって,いつ効果が発生したかを明確にするのが妥当ではないかということで,対抗要件ではなくて,効力発生要件という規律にしたわけでございます。

 

 

 

 

  •  よろしいですか,○○幹事。

 

  •  御説明は分かりました。

 

  •  先ほども少し議論に出てまいりましたが,9ページの一番下から10ページにかけての(注)について,質問なのですけれども。

 

この指定権というのは一種の形成権だということになるのだと思うのですが,9ページの(注)の見出し,「受益者変更権の濫用防止について」,あるいは,10ページの中ほどの,「そこで,」で始まる段落に書いてある中身を読みますと,その問題意識は,指定権行使の濫用防止をどうするかというようにも読めますが,しかし,例えばその上の,「しかしながら,」で始まる段落,あるいは,最後の,「この点に関しては,」の段落を読みますと,指定権自体,あるいは指定権を有する地位というのでしょうか,これが経済的な価値のある権利なんだから差押え可能じゃなきゃおかしいじゃないかというようにも読める。どちらに焦点がある話なのかよく分からないなというのが質問の第1で,仮に後者としますと,その他財産権等差し押さえることになるのだと思うのですが,一体どういうふうになるのか,差し押さえた後どうなるのか,全然イメージがわかないので,もし何かお考えがあれば教えていただきたいというのが2点目です。

 

 

 

 

 

  •  まず第1点目は,確かにタイトルは濫用防止で,しかし,ねらいは差押えになっておりますが,一つ言えるのは,ここでやりたいことは,受益者変更権者が自らの利益を得るような,言ってみれば差押え対象となるような財産をつくり出すことによって不当な利益を得るようなことを防ぎたい,不当な利益を得られる地位を捕捉することができれば結局濫用も防げるのではないかということで,濫用防止のための方策としては,差押えができることであればいいのではないかと考えたわけでございます。

 

 

もちろん,濫用してはならないという規定を設ければ,それは一つの方法でございますが,それに違反した場合にどうなるかということがございますので,それよりはむしろ,そのような受益者変更権自体,あるいはそのような権利を有するという地位を差し押さえることができれば,結局濫用によって得られる利益がなくなりますので,濫用もされなくなるのではないかというように考えているところでございます。

 

 

 

  •  第2点は第1点をクリアした後の話ですので,あれなのですが,そうしますと,今のお話は,受益者変更権を有する者に対してだれかが債務名義を持っている場合だけ濫用防止ができるということになるわけでしょうか。

 

 

 

しかし,お話を伺っていますと,そういうシチュエーションに限らず,一般的に広く,ここで言うところの濫用を防止する必要があるのではないかという気がいたしますが。

 

 

  •  確かに,差押えとなると債務名義がないとできませんので,御指摘のとおり,債務名義がないと濫用防止はできないわけですが,債務名義がない場合については,結局そういう場合には受益者変更権者に対する債務名義をとればいいのではないかなという……。やや乱暴な言い方ですが。

 

 

 

 

  •  しかし,だれも債権を持っていなければ,債務名義のとりようもないわけですし,その債務名義の基礎になる権利というのは,信託とは全く関係のない債権なわけですよね,普通は。

 

 

何かないと裁量権をコントロールできないというのは,何かえらくターゲットの狭い話のような気がするのですが。

 

 

 

  •  説明の中にも書いてございますが,ここでのねらいは,強制執行ができないような経済的価値のある権利を容認したくないということでございますので,債務名義もない,何ら債務を負っていないような変更権者であれば,それをどのように行使して利益を得ても,別にだれも害されないのではないかという気がいたしますが。まあ,一つの考えでございますけれども。

 

 

 

 

  •  今の○○幹事の御質問との関係での関連ですが,「差し押さえることができると考えればよいと思われるが,どうか」というふうに締めくくっておられるのですが,法務省として何かしようと思っておられるのでしょうか。

 

 

 

  •  受益者指定権自体がもしも差押え可能なその他財産権といえるとしますと,譲渡命令か何かで債権者が自分で譲渡を受けて,それで受益者変更権を行使して自分の債務者を受益者にして,その受益権を差し押さえていくというような方法があるのかなと。

 

 

 

  •  いや,そういう,方法としてどうこうというものではなくて,要は,何か立法的にこう解決しようというおつもりで書いておられるのか,こういうふうに解釈できるので裁判所はよろしくねというふうにおっしゃっておられるのかということなのですが。

 

 

 

  •  ただ,とりあえず濫用防止という観点から解釈論としてこういうことがということになられたわけですけれども,立法の形にならないということであれば,そこは全く闇の中ということで,だれがそういう解釈を伝えていくのかという問題で,結局この部会での内輪の議論で終わってしまうのではないかという気はいたします。

 

 

 

 

  •  今のお話なのですけれども,(注)の意味自体が私自身は必ずしも分かっておりませんで,先ほどの説明やこの文案を読みますと,何が問題かというと,強制執行できない財産権をつくり出すということで,差押禁止財産をつくり出すことが問題ではないかというような問題意識のようにも思われ,そうであるとすると,信託行為によって与えられた指定権の適切な行使がされないという話とはやはり全然別ではないのかと。

 

 

 

それから,その後の方--後の方と申しますのは,差押禁止財産のようなものをつくり出すのが問題で,そうだとすると,差押えできるようにすればそれでいいじゃないかという点についてなのですが,○○幹事から御質問があった,差し押さえた後どうなるのかという話で,財産権として十分活用して,例えば売ってしまうというようなことになりますと,この指定権を行使する人は別の人が行使するということになるのかどうか,そういうような考え方をとった場合に,4で,この指定権を有する者が死亡したときというのは基本的に終了する,これは多分,個人的な信頼に依拠しているから,この人だけに行使させるのが適切だという考え方にのっとっているのだと思うのですけれども,差押えできて,ほかの人が権利者となっても構わないのだという説明はどう整合していくのかというのが疑問に思われますので,お考えをお聞かせ願えればと思います。

 

 

 

 

  •  こういうことができないかという意見なのですけれども。

このできる場合は,もしかしたらかなり限定されるのかという気がするのですけれども,例えば債権者が受益者指定権を代位行使するということがもし可能であれば,それを代位行使して受益者を確定した上で受益権を押さえるということはできないでしょうか。

 

 

  •  ちょっと関連している問題ですね。

 

 

  •  代位行使という方法も考えたことがありますが,それよりはむしろ,代位行使される権利を持っている者の財産と認めて直接押さえていった方が簡明ではないかというような考えもありましたし,代位行使となると,もとの被代位債権が条件つきであるような場合については機能しないというような問題もありますので,そのような方法は直截的ではないだろうということで,それは落としています。

 

 

 

あと,○○幹事のおっしゃった点は十分考えていないところでございまして,確かに死亡の場合には相続されないということですが,あとは変更権者が変わった場合,やはりちょっと……,変更権を与えられた趣旨にもよると思いまして,もしそれがある者の一身専属的なもの--通常はそうだと思うのですが--だとすると,譲渡命令というか,第三者が取得した場合は難しいかなというのが答えになりまして,そうすると,受益者変更権を押さえるというのは難しいということで,これはまた考え直したいというふうに思います。

 

 

すみれ

「亡くなってしまったら大変てことかな。」

 

 

考えたところといいますのは,受益権を行使して利益を得られるような者はもう受益者と同視できると考えて,受益権を差し押さえると。

 

 

事務局としては,そのような利益を得る地位を差し押さえたいという気持ちがあったわけでございますが,漠然とした地位ということでは執行の対象財産にならないので,受益権という形にすれば差し押さえやすくなるのではないかと考えられましたので,このような考え方も示したわけでございます。

 

 

 

あくまで,これが事務局の案というよりは,今,試行錯誤の過程でございますが,いかがでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

  •  もし御意見があれば,どうぞ。

 

 

  •  きちんと問題を把握していないかと思うのですが,受益権とみなして差押えができるとすることと,しかし,その内実が受益権そのものに転じるかというと,あくまで指定権ということで,かつ,指定権の行使者というのがこの個人に限定するというところが変わらないのであれば,その問題は残るように思うのですが。

 

 

 

  •  形だけ受益権としていても,実は変更権であるとなると,最初におっしゃった問題が出てくるということですね。

 

 

  •  ですから,受益権とみなすということは,逆にそこを取り払って,別にだれが行使してもいいというふうにして,ただ相続だけは排除するという,そういう説明なのかと思いますけれども。

 

 

 

  •  もう一度検討したいと思いますが,むしろ端的に,受益者変更権を濫用してはならないというような規定を設けるしかないかなというところでしょうか。

 

 

 

  •  なかなか,ちょっと規定の仕方はまた難しい。また,今のような濫用してはならないという規定でどういう効果が生じるのかも,もうちょっと詰めなくてはいけないと思いますけれども,少なくとも指定権の問題として考えたときに,だれかほかの人間が強制執行を介して行使できるというのは,指定権の趣旨からするとちょっとおかしいような気がしますね。

 

これはもうちょっと詰めて,また議論していただくということにしましょう。

 

 

  •  ちょっと今までの議論とは違いまして,第45の方でお聞きした方がよかったかもしれないのですが,共通するのですけれども,通知義務との関係でこの効果はどういうふうにお考えなのかということの確認です。

 

 

一つ考えられますのは,今日の資料の53ページの受益債権の消滅時効がいつから始まるかで,「受益者として指定された者が受益者となったことを知った後でなければ」とありますので,これと結びついているのかなというふうにも思ったのですが,そういう理解でよろしいのか,あるいはそれ以外にも何か効果をお考えなのか,確認ですが。

 

 

 

 

  •  いえ,ここは通知をすることによって受益者になったということを認識させるということをねらっているにとどまるものでございまして,それ以外に特に効果が生ずるというものではないと考えておりますが。

 

  •  時効とは関係するという理解でよろしいのでしょうか。

 

  •  時効の通知とはまたちょっと別でございます。時効の通知につきましては,あれは忠実義務の言ってみれば消極的な解除の必要性という観点から……。

 

 

  •  そのこととは違いまして,53ページの第54の1の(1)。

 

 

  •  起算点の関係ですか。そちらにつきましては,起算点に絡む問題かというふうに考えておりまして,通知を受けて受益者と知った時点が起算点ということになります。

 

 

  •  そうしますと,通知を受ける側の資格とか能力とかというのは何かお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

 

 

  •  もし能力に欠けるような者であれば,その代理人が通知を受けてということになるのではないかと思います。

 

 

 

  •  よろしいですか。

このテーマについて,まだ御意見があれば。--よろしいでしょうか。

それでは,ここで休憩をさせていただきます。

 

(休     憩)

 

  •  それでは,再開させていただきたいと思います。

それでは,信託管理人についてでございます。

 

 

 

  •  それでは,信託管理人についての説明に移らせていただきます。第47でございます。

 

 

信託管理人とは,受益者のために自己の名をもって信託に関する受益者の権利を行使し,それにより受託者の職務執行を監督する者でございまして,現行法は第8条において信託管理人に関する規律を設けております。

 

 

 

 

すみれ

「受益者代理人と信託監督人が混ざったような人かな。」

 

 

 

この現行法の規律に対しましては,不特定又は未存在の受益者がある場合に限って信託管理人を置くことができるかのような規律となっているのは,受益者保護の観点から狭きに失するのではないかとの指摘ですとか,信託管理人の権限や義務等に関する規律が不明確ではないかなどの指摘がされております。

 

 

今回の提案は,これらの指摘を踏まえまして,信託管理人に関する規定の整備を提案するものでございます。

 

まず,1ですが,これは信託管理人の選任に関する提案でございます。

 

 

このうち,(1)は信託行為の定めに基づく信託管理人の選任,(2)は裁判所の決定に基づく信託管理人の選任,(3)は受益者の意思に基づく信託管理人の選任について,それぞれ提案しております。

 

 

 

ポリー

「家族信託で信託管理人はほどんどないと思うのですが、不動産の場合、信託管理人がいたら信託目録に記録する必要がありますね。」

 

 

 

現行法の規律からの主な変更点といたしましては,まず,信託行為に定めを置いた場合には,受益者が不特定又は未存在の場合に限られることなく信託管理人を置くことができることを明らかにしたこと,2点目といたしまして,裁判所は,受益者の不特定又は未存在の場合に限らず,受益者を保護するために必要があると認められるときには,利害関係人の申立てによって信託管理人を選任できるとして,裁判所による信託管理人の選任の余地を広げたこと,他方で,裁判所が職権で信託管理人を選任するとはしないとしたこと,それから,資産流動化法の権利者集会によって受益者の中から代表権者を選任することが認められることを参考にいたしまして,受益者の意思に基づく信託管理人の選任を認めたことなどが挙げられるかと思います。

 

 

 

このように措置した理由につきましては,資料の13ページ以下に記載しておりますので,説明は省略させていただきますが,受益者の保護という役割を果たす信託管理人の地位の重要性にかんがみまして,今回の信託法改正の一つの柱であります受益者保護の観点から,信託管理人を置くことができる局面を拡大していることを付言させていただきます。

 

 

 

すみれ

「受益者の保護は、信託法改正の一つの柱だったんだ。この時点で受益者が認知症になった場合に備えて利用されることは想定されていなかったのかな。」

 

 

 

次に,2でございますが,信託管理人の権限等に関する提案でございます。

(1)は,信託管理人が有する権限について検討しております。

 

 

ここでは,信託管理人は原則として,信託に関する受益者の権利のうち①から③までを除いた権利について,自己の名で行使できるとしております。

 

 

なお,権利のうち①から③までの権利を除外しましたのは,資料の15ページ以下に記載したとおりですので,説明は省略させていただきます。

 

 

次に,(2)は,信託管理人による権利行使と受益者による権利行使の関係について検討したものでございます。

 

 

現行法のように受益者が不特定又は未存在の場合に限って選任を認めた場合には,権利行使の主体である受益者が存在しないことになると考えられますので,信託管理人が専属的に受益者の権利を行使するという提案は,当然のことを明らかにしたにすぎないことになると考えられます。

 

 

これに対しまして,受益者が特定又は現存する場合にも当該受益者のために信託管理人の選任を認めるとした場合につきましては,信託管理人による権利行使と受益者による権利行使の競合・抵触という問題が生じ得ます。

 

 

ここでは,資料の16ページに記載しましたような理由から,信託行為に別段の定めのない限り,信託管理人が選任された場合には信託管理人が受益者の権利を専属的に行使するものとしております。

 

 

ただし,受益者に付与した権利のうち,帳簿等の閲覧謄写請求権,説明を受ける権利,検査役選任請求権,差止請求権,それから裁判所に対する各種の申立権につきましては,信託管理人に加えて受益者にも権利行使の機会を与えることとしております。

 

 

 

なお,アステリスクの2に記載しましたとおり,信託行為の変更や信託の終了など,信託の基礎的変更に関する受益者の決定権限については,受益者が特定・現存する場合には,信託管理人ではなく,受益者が行使することが相当ではないかとの指摘がされております。

 

 

 

この点につきましては,契約自由の原則に照らしますと,信託行為の変更や信託の終了等に係る受益者の関与に関する規律も任意規定であって,これらの決定権限を第三者に対して委ねることも可能であると考えておりますことからしますと,信託管理人に対してこれらの決定権限を専属的に委ねることも可能ではないかと考えているところでございます。

 

 

もっとも,信託管理人がこれらの権限を専属的に行使することを認めますと,信託管理人と受託者とが通謀などをすることによりまして受益者の権利が害されるおそれがございます。

 

 

 

そこで,受益者の保護をいかに図るかが問題となりますが,この点につきましては,信託管理人が信託の基礎的な変更に関する意思決定をする場合には各受益者に対して事前の通知を要するとした上で,決定に対して反対の意思を有する受益者に対しては受益権の取得請求権を認めることによって保護を図ることが可能ではないかと考えておりますが,このような考え方の妥当性につきましては是非とも御審議をいただきたいと思っております。

 

 

 

それから,3は信託管理人の義務に関する提案でございまして,現行の非訟事件手続法によりますと,裁判所が選任した信託管理人について,民法の委任に関する規定が準用されるとしております。

 

 

ここでは,裁判所が選任した信託管理人については今の規定を踏襲し,更に,信託行為の定め又は受益者の意思に基づいて選任された信託管理人についても同様な法的地位に立つことを明らかにしております。

 

 

 

ただし,アステリスクの3に記載したところでございますが,信託の基礎的な変更に関する決定権限について信託管理人に専属的に行使することを認めた場合には,信託管理人の義務は委任の受任者と比べて厳格なものとすべきではないかという考え方があることを踏まえまして,信託管理人の義務及び責任に関する規律の在り方については,信託管理人の権限の問題ともあわせて,なお検討したいと考えております。

 

 

 

 

最後に,(注3)から(注5)でございますが,これは信託管理人に関するその他所要の規定の整備に関するものでございまして,(注3)は,現行法に規定のない信託管理人の不適格事由について,(注4)は,信託管理人の報酬等に関する規律について,(注5)は,信託管理人の任務終了事由に関する規律について,それぞれ検討しております。

 

 

 

現行法の8条3項によりますと,裁判所は事情により信託財産の中から相当な報酬を信託管理人に与えることができるとしまして,更に,非訟事件手続法では信託管理人の解任及び辞任に関する規定を設けておりますが,これらは,規定の文言上,いずれも裁判所が選任した信託管理人に関する規定であると考えられます。

 

 

 

したがいまして,信託行為の定めに基づいて選任された信託管理人についてはどのような規律が適用されるのか明らかではないと言うことができますし,また,今回の提案のように受益者の意思に基づく信託管理人の選任を認めた場合には,そのような信託管理人についても新たに報酬等の規定を設ける必要があると考えられます。

 

 

このような観点から,報酬等の規律及び任務終了事由等の規律につきまして,検討の方向性をお示ししておりますが,これらの点につきましても,御指摘があれば承りたいと思っております。

 

 

  •  それでは,信託管理人について御議論をお願いします。

 

 

  •  それでは,何点か申し上げます。

 

まず,1点目は総論的なお話なのですけれども,現行法の信託管理人の制度と比較して適用範囲がかなり拡大されているということでございますので,この点については,受益者保護という観点から,また信託事務を円滑化するという観点からも非常にいい制度であるというふうに歓迎しております。

 

 

ただ,何点か意見がありまして,まず,12ページのところのアステリスクの2,先ほど○○幹事からも御説明がありましたけれども,信託管理人が信託の基礎的な変更に関する意思決定をする場合に,各受益者に対し事前の通知を要するとした上で,反対した受益者に対して取得請求権を認める,それによって保護を図るというようなことが書かれておりますけれども,ここの部分につきましては,信託業界といたしましては,信託の基礎的な変更の内容が本当に重大なものである限りにおいてはやむを得ないなという少数の意見はあるのですけれども,やはり信託事務処理を円滑化するためには,こういう取得請求権というのを認めるのはいかがなものかというような意見が大勢を占めております。

 

 

 

それと,先ほどの18ページの(注4)のところなのですけれども,この(1),(2),報酬と費用償還請求権のところなのですけれども,ここの部分については信託財産から支出すると。

 

 

 

報酬については,信託行為に定めがある場合というふうに書いていますけれども,信託財産から支出するというふうにされておりますけれども,この場合,これらの請求権といいますのは,基本的に信託財産に限定されるようなものなのか,それとも固有財産にもかかっていくというものなのか,それと,信託財産に対する他の請求権との優劣というのがあるのかどうかというようなことをちょっと考えまして,御意見をお聞かせいただきたいと。

 

 

 

基本的には受益者に関するものでございますので,受益者が得る権利と同列でいいのではないかなというふうに基本的には考えていますけれども,そこら辺のところはいかがでしょうかということです。

 

 

 

 

あと,この場面での議論ではないのですけれども,この信託管理人の報酬と費用のところを検討するに当たって,信託財産管理人であるとか,検査役であるとか,後ほど出てきます受益者集会の費用,ここら辺のところについても同様の問題があると思いますので,この場というよりも,今御検討をされているところがあれば,お聞かせいただきたいということでございます。

 

 

 

 

  •  まず,取得請求権についての御意見ということですが,信託というのはあくまで,会社のような法人組織と違って,基本的には契約によって定められる,契約自由の原則が働くものであると,しかしながら,やはり受益者の保護の観点からは,契約自由の原則について一定の歯どめが必要ではあって,それは意思決定の方法等に関して強行規定を設けるというような解決の方法もあるとは思うのですが,そうではなくて,反対受益者の保護という点を確保することによってバランスをとっていこうというのが大きな方針でございますので,あらゆる変更というわけではないのですが,コアの部分については強行的に受益権取得請求権を認めざるを得ないというスタンスでございます。

 

 

 

 

それから,債務の責任財産の問題でございますが,これは現時点では,いわゆる有限責任債権といいますか,信託財産に対して責任が限定されるものだというふうに考えております。

 

 

ただ,この場面ですが,受益者集会のところで触れておりますように,流動資産が信託財産にないような場合を考えまして,とりあえず受託者に費用を負担させて,受託者が求償するというようなスキームを設けるということも,選択肢としては,この信託管理の場面でもあり得るかなというところでございます。

 

 

それから,優劣の問題につきましては,まだ十分検討しているわけではございませんのでとりあえずの感触でございますけれども,まず,信託管理人は受益者のために選任される者であるということにかんがみますと,信託債権者の債権と比べてはその優先性は低いというのが原則かというふうに思っております。

 

 

 

 

なお,受益債権との関係でございますけれども,社債管理会社の規定なども参考にいたしますと,信託管理人の報酬は,受益者の受益債権よりは優先していいのではないかというふうに考えております。

 

 

 

恐らく一番関心のございます受託者との関係につきましては,受益債権が受託者の債権には劣後するということにかんがみますと,信託管理人の報酬も受託者の債権に劣後するという考えもあるかと思いますが,この受託者の債権と信託管理人の報酬との優先劣後関係というのはなお検討したいというふうに思っているのが今の状況でございます。

 

とりあえず以上でございます。

 

  •  ほかに御意見,いかがでしょうか。

 

 

  •  信託管理人の裁判所による選任というあたりについて,いろいろお聞きしないといけないことがあるかなというふうに思っております。

 

 

先ほど,○○幹事の方からは,受益者の保護という,正にそのための制度であるというお話がありましたが,○○委員の方からは,信託の円滑な執行というお話がありました。

 

 

この裁判所による選任というところで要件がありまして,「受益者の全員又は一部の権利を保護するために必要があると認められる場合」というふうにあるわけですが,全員なのか一部なのかによって実はこの制度はかなり色合いが違うのではないかという気がしております。

 

 

つまり,受益者の一部の権利を保護するためということであれば,当該受益者という感じがいたしますが,受益者が複数いる場合の全員ということになりますと,各受益者が本来行使し得た権利を受益者全員の利益のために制約して信託管理人を選任するということですので,当該個人である受益者の保護というところがむしろ落ちて,全体の利益あるいは信託の円滑な執行という,本当はそういう話なのではないかという気がしておりますが,その点いかがかということを含めて,そもそも,この「保護するために必要がある場合」というのは一体具体的にどういう場合を想定しておられるのかといったあたりをまずお聞きしたいと思っております。

 

 

 

 

 

  •  現行法では,不特定・未存在ではありますが,ここは,特定・現存する場合であっても保護する必要性があるという例示といたしましては,例えば精神又は身体に重度の障害がある者が受益者として指定された場合とか,受益者が多数に上って受益者による円滑な意思決定が困難又は不可能である場合,このような場合を挙げることができると思われます。

 

 

  •  今の○○幹事のお答えを前提として,このような場合に裁判所による選任というのが本当に必要なのか,あるいは法制度として相当なのかといったあたりについて,かなり疑問がありますので,御意見を伺いたいと思っている次第でございます。

 

 

まず,例えば最初の,一部の権利を保護するためということで重度の障害というようなお話がありましたが,その場合には民法上の制限能力者の制度との関係がどのようなものになるのかという点について,学者の先生方を中心として御意見を伺いたいと思っている次第でございます。

 

 

というのは,民法の原則としては,本来権利は自分で行使できるものだけれども,そういう民法上定められた一定の場合には,後見人なり保佐人がつくというような形でその権利をかわって行使するという前提になっているはずでございます。

 

 

そうすると,もし,例えばそういう本来成年後見によって図られるべきところについて信託管理人が選任されるということになりますと,そういう民法の原則から若干外れたところで信託固有のいわば法定代理の制度というのを認めることになりはしないかということでございます。

 

 

 

 

もしそうであるとすれば,裁判所としては,こういう事件が来たときにだれが扱うかということも含めて検討すべきということになるかもしれません。

 

 

そういう意味では,非常に民法の原則との関係でも大きな問題があるのではないかというふうに考えております。

 

 

仮に,民法の原則よりもうちょっと広いところで,こういう一部の権利の保護のために必要があると,もしそういう議論であるとすれば,本当にそういうことが許されていいのかと。

 

 

例えば,民法では,重度の精神障害がある場合というところで成年後見というのが定められているわけですが,そこを超えて,例えば重度の身体障害がある場合に,裁判所が決定によって,この人は重度の身体障害があるから,この人が権利を行使するのは相当ではないと言って管理人を選任するというような制度が本当に今の民法の秩序の中であり得るのかというようなところが疑問であるということでございます。

 

 

すみれ

「当事者で決めることかな。競合する場合もあれば、しない場合もあるだろうね。」

 

 

次に,多数の受益者がいる場合に,全員のために選任するという場合であるとしますと,受益者が多数であって円滑な意思決定ができないということであるとすれば,そこは受益者が多数の場合の意思決定の方法というところを後に定めて,法定多数決というような概念も取り入れて検討がされるところであるというふうに理解しております。

 

 

そういうところで裁判所が管理人を選任することによって問題の解決を図ろうとするというのは,ほかにそういった例があるのかどうかというのを私は存じていないということになろうかと思います。

 

 

何かありましたら,是非教えていただきたいなと思っておるところでございます。

 

言ってみれば,本来直接民主制でみんなでやっているところに,裁判所が突然,大統領みたいな人を置くというような制度なのかなと,資料だけ見ますと,そういうふうな理解もしてしまうところなのですが,そういう制度がほかにあるのかどうかといったあたりを含めて,教えていただければと考えております。

 

 

 

 

 

 

 

  •  なかなか難しい,根本的な問題を提起されたように思いますけれども,いかがでしょうか。

 

 

 

 

 

  •  今のお話の横に並ぶような話だと思いますけれども,受益者が不特定・未存在の場合に信託管理人を必要とするというのはよく分かるのですが,受益者が特定して,現にいるという場合に,こういう形の人を選ぶことが果たして受益者の保護になるのかというところが疑問だと考えております。

 

特に,受益者が選べるというところが一番抵抗のあるところですが,受益者が,いつでも,信託管理人の名前で裁判を起こせる人を選ぶことができるのだということになりますと,訴訟行為をさせることを主たる目的として信託管理人を選ぶこともできてしまいまして,訴訟信託と類似の問題が出てくるのではないかということを懸念いたします。

 

 

 

 

それから,そういう場合に,具体的な例はちょっと想像しにくいですけれども,信託管理人と取引をした第三者が受益者に対する抗弁を信託管理人に対抗できるかとか,いろいろ複雑な問題が出てくるということが,とりあえず理屈の上では考えられます。

 

 

任意的訴訟担当の場合によく問題になる例ですが,そういう論点も出てくるというふうに考えております。

 

 

 

資産流動化法第193条が,一部の受益者を代表権利者として権利の行使を委任することができるという制度を設けている,それをここで引いていますけれども,これは,とにかく受益者の一部の人が代表になる,しかもその権利の行使を委任するというものですから,こういう,その人の名前で何でもできる,受益者としての行為を受益者ではなくて信託管理人という名前で何でもできるというのを,現に受益者がいるのに設けるという制度というのは,受益者の保護という観点からもプラスになるとは思えないという意見です。

 

 

 

 

  •  一連の議論に関連しまして,私も,裁判所の介入という観点で,これは基本的にはデフォルト・ローにしていただきたいという観点から,商事信託について言及したいと思います。

 

個人に関しても,先ほど○○幹事がおっしゃられたとおり,やはり具体的なイメージとして権利制限者等の制度以外にどういう使い方があるのかなというのがよく分からなかったわけですが,私の場合は,それに加えて商事信託のことをお話ししたいと思います。

 

 

 

つまり,複数受益者がいる場合で,例えば不動産信託で優先劣後がある場合において,一部の受益者のために信託管理人が裁判所の選任を受けて設置された場合にどういう問題が起こるかという話ですけれども,やはりこれは,利益がある意味で対立する場合がある判断について信託管理人が行うということになりますので,それは妥当なものなのかどうかということでございます。

 

 

 

一応,提案の中では,最低限の権利,帳簿閲覧権等は残しておくという話なのですけれども,商事信託の場合は指図権とか大きな権限というのも持っているわけですから,そういった場合に,かかる権限自体も一人一人に任せてしまうと,それも利益相反という状況であるのかどうなのかという問題があるわけです。

 

 

 

これに関して,この提案では,一応,管理人の規律というのは委任ということしか置いていないということですので,そもそも,委任というのは,利益状況が違う者両方からの委任ということでございますので,それはなかなかワークしないのではないかというふうに思っております。

 

 

 

 

もう一つ考え得る話として,この提案にも,複数の信託管理人も可能であるというふうに書いてあるわけですが,具体的にどういう話になるのか分かりませんが,例えば優先受益権のための信託管理人と劣後人のための信託管理人ということが制度上認められるのかどうかというのも質問したいところでありますけれども,仮にそうだとしても,ここに書いていますように,実際の判断は過半数で決すべきという話になっていますから,そこで単純に頭数で決めていいのかどうかということも出てくるのではないかという話です。

 

 

 

  •  この信託管理人というのは,先ほどから問題になっているように,どういう理念のもとで考えるかと。

 

 

一方で,これは,受益者の方がいろいろ権利を行使する場合に不便な場合があって,そういう意味では受益者の利益を守るところもありますけれども,逆に,権利行使ができるような受益者が混じっているような場合,あるいは,先ほど○○幹事が言われたように,何らかの別な方法でもって受益者の利益を,法定代理人などを使って権利行使ができるような場合に,多少,受益者と信託管理人の間の利益の衝突というのでしょうか,そういうものもあり得るので,それがために非常に難しい制度なのですね。

 

 

更にいろいろな御意見をいただけると有り難いと思いますが,いかがでしょうか。

あるいは,これまでの問題について,幾つか……。

 

 

 

  •  それでは,とりあえず事務局で答えられる範囲でお答えしたいと思います。

 

まず,○○幹事の方からあった,民法にかかわるという大きな問題でございますけれども,例えば,精神上の障害があることによって,法定代理人の制度,民法第7条のようなものがある場合があるではないかという御指摘でございますが,ここは選任権者が限定列挙されておりまして,それに比べますと,裁判所に対する選任というのは利害関係人ということで,やはりその実情に応じた柔軟な選定ができるのではないかというメリットが信託管理人にはあるのではないかという気がいたします。

 

 

 

それから,身体に障害がある場合にはこのような法定代理人の制度というのが使えないと思われますが,例えば特別障害者扶養信託における受益者についても,なかなか自己の意思に基づいて信託管理人を選任することもできない,難しいのではないかと考えられますので,身体に重大な障害がある場合についてもやはり信託管理人の制度というのがあった方が機能するのではないかという気がいたします。

 

 

 

それから,不特定の受益者が多数に上るという場合でございますが,実は現行法でも,受益者が不特定の場合にはどういうものが当たるかといいますと,例えば年金信託のように受益者が次々に変動するという場合も入るという解釈が有力でございます。

 

 

これは,しかし,ある一定の時点をとらえれば受益者は特定しているわけですが,その変動するということを見て不特定と言っているのではないかと。

 

 

 

その本質は何かというと,恐らく,そのように受益者が次々に変わるということになると,受益者の意思決定を円滑にし,受益者を保護するという観点から,信託管理人がいた方がいいのではないかという価値判断があるような気がいたします。

 

 

そうしますと,結局,不特定という中に,このように特定しているけれども受益者が変わるというような場合があることにかんがみますと,それは保護の必要性が高いからであると。

 

 

そうすると,受益者が多数に上っていて意思決定が困難で,保護の必要性が高いという場合も,実は現行法でも認められていると言えば言えるのではないかというような気がするところでございます。

 

 

 

なお,信託管理人のような制度がほかにあれば御指摘願いたいということですが,たしかに指摘することは難しく,例えば,委任等の制度にはないのですが,それは信託というのが,御承知のとおり,受託者に名義まで移すという特性がありまして,だからこそ受託者の監視というのが非常に重大なテーマになっておりまして,であればこそ,委託者や受益者はもちろん,裁判所,あるいは信託管理人という制度がいろいろ設けられているのだと思われます。

 

 

番人

「受託者の監視が重大だったんだ。家族信託の場合は違うかな。監視される方も嫌だろうし、監視する必要があるなら信託しなければいいって話にもなるかな。」

 

 

 

そういう点にかんがみますと,実は,事務局の提案では,委託者の権限というのはどちらかというと縮小傾向で考えておりますし,報告書にございますが,裁判所の監督,現行法では非営業信託については信託事務の監督ができるわけですが,それについても後退させてはどうかという提案をしております。

 

 

 

 

そうである以上は,やはり信託管理人の制度をより一層充実させる必要があるわけでございまして,逆に言いますと,信託管理人の制度が軽微なものになると,それだけ,例えば委託者あるいは裁判所の監督をもっと強めるべきだという方向に回帰するのではないかとも考えられるところでございます。

 

 

 

なお,法定代理人との間で権限が重複した場合はどうかという点は,事務局の提案では,権利を保護するために必要があるときには選べる,逆に,権利を保護するために必要がなくなれば裁判所は一種の選任決定の取消しができるというような案を提示しておりますので,権限が重複するというおそれはないのではないかと。

 

 

後で法定代理人が選ばれれば,取消し決定をすればいいし,初めに法定代理人がいれば,そもそも保護の必要性がないのであるから,そもそも信託管理人は選ばれないという問題になってくるのではないかという気がするところでございます。

 

 

以上が,とりあえず○○幹事の御質問に対するお答えということでございます。

 

 

 

それから,○○委員の御質問は,受益者による選任の問題でございまして,これは,我々といたしましても,受益者の意思に基づく信託管理人の選任というのが果たして必要かという点につきましては,11ページのアステリスク1のところに書いてありますように,疑問がないわけではない。

 

 

単に代理人を選べばいいのではないかと。

 

 

代理人を選べば,訴訟信託とかそういうおそれもなくなると思いますので,そのような点につきましては,なおこちらとしては検討したいというふうに思っているところでございます。

 

 

 

 

 

むしろ気になりますのは,受益者間の争いに例えば裁判所が巻き込まれてしまうのではないかというようなおそれがあるところでございますが,それは選任のところで,選ばれる受益者の意思を聞くことによって,自分の意に反した信託管理人が選ばれるおそれはなくなるであろうというようなことによって担保することができるのではないかという気がしているところでございます。

 

 

それから,最後に○○委員がおっしゃった,利益相反関係があるような場合があるではないかと。

 

 

確かにそのような場合もあり得るかとは思うのですが,そういう場合につきましては,例えば特別代理人を例外的に選任するというような方策によって対応することもできるのではないかと思われるところでして,例えば商法ですと,社債管理会社の場合に,社債権者と社債管理会社の利益が相反する場合には特別代理人が選べるというような規律がございまして,こういうものも参考になるのではないかと思いますが,なお御意見をいただければと思います。

 

 

とりあえず,事務局としては,いろいろな議論をいただく前提としまして,とりあえずの考え方を述べさせていただきました。

 

 

  •  若干だけ補足させていただきたいと思うのですが。

 

 

今,○○幹事の方から,選任権者が違うというお話がありましたが,選任権者が違うからこそ,民法の原則との関係で大きな問題があるのではないかということが申し上げたいということでございます。

 

 

要は,契約上の利害関係人から,そういった法定代理人の選任を請求するというような制度を認めるということについて問題がないかという趣旨で御質問しているということになります。

 

 

身体障害者についても,正に民法上は保護の規定はないのですが,それがないということは,基本的には民法は自ら意思決定するということを前提としていると。

 

 

福祉の問題等はあるかもしれませんが,それは,この信託法上の裁判所の信託管理人の選任というところでそこを考慮するということになるのかどうかといったあたりが問題になるのではないかと考えているということでございます。

 

 

 

 

  •  おっしゃるところはもっともなところもあるという気がいたします。

 

半面,確かに,法定代理人につきましては選任権者が制限されておりますが,これは恐らく,法定代理人というのは本人にかわってあらゆる代理権を取得するからだという気がいたしまして,それだけ権限が広い気がいたしますが,ここではあくまで信託の局面での管理人,いわば範囲が狭いわけでございまして,そう

いう観点からいたしますと,仮に選べる選任権者が利害関係人ということで広いといたしましても,やれる範囲が信託にかかわるものに限られている面で調和されているのではないかという気がするというのが1点でございます。

 

 

それから,もう一つはどのような質問でしたでしょうか。

 

  •  身体障害者というのは,正に違うところで,違う趣旨からのお話なのではないでしょうかということです。

 

  •  確かに精神障害の場合とは局面が違いますが,やはりここは受益者の保護という趣旨をより強調しまして,こういう場合も一つの例として,裁判所による選任によって解決できるのではないかという気がしているというところでございます。

 

 

 

  •  私,制度そのものに賛否ではないのですが,身体障害者の問題につきましては,成年後見制度の導入に際して,身体障害者を対象にしろという意見も一時期出たわけです。

 

 

 

それに対して,それは自己で代理人が選任できるのだからと,かえって裁判所等が介入するということに対しては,自己決定権の侵害の問題があるという話になった。そこでいったんそういうふうな価値判断がなされているわけなので,制度が悪いというよりも,身体障害者の問題を例として出されるのは適切ではないと私は思います。

 

 

  •  分かりました。

 

 

ポリー

「たしかにですね。自己決定権があります。」

番人

「自己決定権か。色々自分で決めるのも大変かもしれないけど。受益者になりますっていうのは決めやすいかな。」

 

 

 

 

  •  考慮した方がいいかもしれませんね。
  •  はい。
  •  ほかに御意見,いかがでしょうか。

 

 

  •  私は,一般論といたしましては,受益者が多数あるいは複数存在するような信託が我が国に現実にたくさんあって,しかも受益者に受託者のコントロールをする十分な能力あるいは時間があるとは限らないという状況のもとで,こういった,信託管理人制度を現行よりも少し拡充してガバナンスの観点から位置づけるということは,基本的には望ましい方向なのではないかと思うのですけれども,若干疑問点もございますので,その点について教えていただければと思います。

 

 

 

まず第1点は,一部の受益者のために信託管理人を選任することができるということが,信託行為の定めと裁判所による選任においては可能とされているわけですけれども,信託全体,全受益者,あるいは非常に抽象化された全受益者のための信託管理人制度というのは,非常に分かりやすいと申しますか,理解できるところがあるのですけれども,一部の受益者のために,こういった権限を有する信託管理人制度が必要なのかどうかと。

 

 

 

やはり,信託全体を一つと見て,その信託全体,あるいは全受益者のために行動すると,こういう制度設計の方がむしろ分かりやすいような気がいたしましたので,一部の受益者のための信託管理人制度を御提案されている理由について教えていただければというのが第1点でございます。

 

 

 

第2点は,信託管理人の解任についての規律でございますけれども,特に受益者による選任がなされたときには,受益者がそれこそ変更される可能性もありますので,基本的には現在の受益者の意思を問うというのが,本当に受益者のための信託管理人制度であろうかと思います。

 

 

 

解任についての規律は,19ページのところで,まだ注の段階でございますけれども,例えばこの19ページの(2)の②を拝見いたしますと,信託行為等で別段の定めをすれば解任についても自由にルールを設定できる,そのような読み方ができますけれども,しかし,受益者が選任する場合には,やはり解任も受益者が,しかも合理的な,できる限り総意を反映するような方法で解任をしなければ,本当の受益者のための信託管理人制度とはなり得ない可能性があるのではないかということを懸念いたします。

 

 

 

第3点は,信託管理人の権限でございますけれども,重大な基礎的変更--基礎的変更も,確かに重大であるものとないものとあると思いますけれども,とりわけ重大な基礎的変更については,やはり信託管理人の権限から外しておく必要があるのではないかと。では重大な基礎的変更とは何かと言われると,直ちにはお答えできないわけですけれども,第47の2の(1)の①から③はやや狭いのではないかという印象を持っております。

 

以上,3点について質問とコメントをさせていただきました。

 

 

  •  一部のところをなぜ認めているかという点でございますが,これは,例えば,委託者の意思によって定められる信託行為の定めによる場合には,特定の受益者についてだけ特に保護の必要性が高くて,例えば複数受益者がいるけれども一人だけ未成年であるとか,そういうような場合を考えますと,その一人のためだけに選ぶという余地を認めてやってもいいのではないか,そこまで全員でなければだめだというふうに厳格に規律する必要はないのではないかと,信託の柔軟性という観点から一部を認めているというのが,(1)の趣旨でございます。

 

 

それから,裁判所による選任につきましても同じような話でございまして,やはり複数受益者の中の一部についてのみ特に保護の必要性が高い者がいる場合において,それがいるのに全員のために選んで,かつ,我々の提案ですと,選ばれると権限が相当程度吸収されますので,そのような者を全員のために選ぶよりは,やはり保護の必要性が高い者についてだけ選ぶ方が,その受益者のためにもほかの受益者のためにもなるのではないかという観点で一部というのを置いているというのが,とりあえずのお答えでございます。

 

 

 

 

あと,コメントということでございますけれども,19ページの(2)の②の解任のところでございますが,これは恐らく,選任行為に別段の定めがある場合は自分たちで決めているのだからいいのではないかとして,信託行為で解任を制限しているときもやはりそれはおかしいのではないかという御趣旨かと思いますので,それはそういうことも言えると思われる半面,これは前からの私の疑問でもあるのですが,信託行為に書いてあって,それを承知の上で受益者になっているのだから,それはある程度は仕方がないのではないかという気が前からしているところはございまして,確かに信託行為の設定には関与できない受益者ではありつつも,それを知った上で受益権を取得して,承認もしているということになると,それが制限されるということも甘受していると言えないのかなという疑問がございます。

 

 

 

もっとも,だからといって受益者を軽視しているわけでは全くないのですが,そのようなことも考えられるのではないかということでございます。

 

 

 

あと,重大な基礎的変更についてはやはり信託管理人の権限から外すべきではないかというのは,これは我々も,どこまで信託管理人の権限とすべきかというのは,ここのアステリスク2のところにるる書いてありますとおり,前から非常に重要な問題かと思っているところでございまして,御指摘も踏まえて検討したいというふうに思っておりますが,とりあえずは,事前の通知と受益権取得請求権の強行規定化ということをもって,しかも契約の自由とのバランスという観点からはそのぐらいあればいいのではないかなと思っているところでございますが,それは御意見として承りまして,検討したいと思います。

 

 

 

 

  •  先ほどの,一部の受益者を保護するために,いわば一部の受益者だけを代表する信託管理人を設けることができると。

 

 

私は,これは個人的な意見ですけれども,そういうのができるという方が本当はいいのではないかというふうに思っております。説明は,先ほど○○幹事が言われたとおりですが。

 

 

 

信託行為でもって定める場合は余り問題ないと思いますけれども,特に裁判所の場合,全員についての信託管理人しか選べないと。

 

 

本当の理由は,一部の受益者が権利行使が十分できないというのが理由で,その当該受益者のためだけでなくて,全体について選ばなくてはいけないというと,これはまた先ほどの○○幹事の疑問にぶつかってくると思いますけれども,なかなか難しいのではないかという感じがちょっとしています。

 

本当は恐らくその延長線上にある問題でしょうけれども,私も,受益者全員が一応権利行使はしようと思えばできるけれども,多数いるために意思決定などが不便だということから,裁判所にその中のだれかが信託管理人を選んでくれというふうな申立てができるという趣旨もこの案には含まれているのですか。

 

 

  •  そういうのも,保護の必要がある一類型ではないかという考えでございます。

 

 

 

 

 

  •  多くの場合は,恐らく多数の受益者がいるときは,最初に信託行為の中でもって信託管理人を定めて,これは委託者の意向によって定めて,それによって機能するのだと思いますので,実際上は裁判所が選ばなくてはいけないという場面は余りないとは思いますけれども,今のような,全員が一応権利行使ができるという集団信託のときに事後的に裁判所がだれかの請求で選ぶというのは,なかなか難しい場面があるかもしれませんね,裁判所としては。まあ,これはもうちょっと検討させていただけると……。

 

 

 

それから,効果のところも非常に難しい問題で,どの程度権限を吸収させてしまうのかということで,○○委員の先ほどの御意見もありましたし,○○幹事の御意見もありましたし,これもまだ少し検討の余地があるのではないかと思っています。

 

 

 

 

ただ,なかなか切り分けが難しいので,うまくこういうものを,つまり①から③まで,一応これを外したものがありますけれども,それに類するものとしてうまく切り分けるものがあれば,それは可能かもしれませんね。そんなところも少し検討して……。

 

 

 

 

  •  事務局としては,重大な信託の基礎的変更が入るかどうかぐらい……。

 

 

あとはちょっと思い当たりませんが,そこのところが問題でございまして,○○幹事もおっしゃいましたように,なかなか切り分けが難しいという問題とかございますし,やはり契約自由の原則なのだというところを強調しますと,それを知って受益者は入ってきているわけであって,しかも信託管理人の選任も,信託行為にあれば受益者は分かっているわけで,裁判所が選任する場合は裁判所がそこら辺はおもんぱかってくれるでしょうし,受益者が選ぶ場合というのは,これは信託行為に定めがなければ受益者全員の合意ですし,信託行為で多数決がとられている場合にも特別多数でないと選べないというようなことになっておりまして,そのような慎重な手続で選ばれた信託管理人については,反対受益者には受益権取得請求権をもって手当てをするということで足りるのではないかというのが今の考えでございます。

 

 

 

 

 

  •  ちょっと細かい質問なのですけれども,この信託管理人というのは法人もなれるという理解でいいのかということです。

 

 

 

具体的に言うと,この信託管理人というのはどういう人が就任するのかというイメージがわかないわけで,一部,現在でも,年金信託の場合にはどこかの人事部長がなるとか,そういうのはあると思うのですけれども,広く信託が使われた場合に,ある意味信託管理人のなり手,担い手というのが,専門業者なんかが出てくるとは思いませんけれども,継続的なことも考えれば法人が適当な場合もあると思うので,法人も認めるという余地を残すということの確認ということです。

 

 

二つ目に,先ほどの,一部のためにということと,○○幹事からの特別利害関係人を選任してはどうかという議論につながるわけですけれども,いったん信託管理人になって,全員のために,ないしは一部のためにということであったとしても,その一部の中で利益相反があった場合に,その救済策として,先ほどのお話では社債管理会社の特別代理人のようにしたらどうかという御提案がありましたけれども,その者の身に立ってみれば,やめたいというのもあるのではないかなというのもあるのですが,ただ,この御提案を見ると,辞任に関しては,基本的には,裁判所の選任を経た信託管理人であれば,やめるということは想定されていないというような理解でいいのかということですけれども。

 

 

 

では仮に,やめないけれども,そうしたら特別代理人ということであるのであれば,例えば引いておられた社債管理会社の特別代理人と同じであれば,それによれば社債権者の集会の請求によりと書いてありまして,非常に困った判断を迫られても,自分だけでは特別代理人を選んでくれというふうには言えないという話ですから,そこは柔軟に,信託管理人の動きやすいように制度設計をお願いしたいということです。

 

 

 

 

 

  •  法人は信託管理人になれると考えておりまして,これは,19ページのところなどを御覧いただきますと,例えば任務終了事由として,法人である信託管理人が解散したときは任務終了すると,我々もそのような前提でございます。

 

 

 

あと,私の誤解かもしれませんが,裁判所が選んだ信託管理人は辞任できないというわけではなくて,これはあくまで注のレベルでございますが,正当な事由があれば,裁判所の許可を得て辞任できると。ほかのところに似たような規定があったかと思いますが。

 

 

 

  •  許可を得てということですか。

 

 

  •  そのような要件はかかっておりますが,辞任ができないわけではないということでございます。

 

 

 

  •  法人も可能なのだと思いますけれども,だれが信託管理人になるかという現実の問題というのは結構難しい問題があることは御承知だと思いますけれども,これは特別なルールは何も書いてありませんけれども,例えば,受託者と関係があるような者はやはり外れるとか,それから微妙なのは,年金信託などでもって,委託会社の総務部長だとかそういうのがなるタイプですね,これも一概に排せないところもあるけれども,果たして受益者の利益を代表する者としてはそれで適当なのかどうかというようなことは,これはなかなかルールが決めにくいので,条文にはなりにくいと思いますけれども,こういうルールを考える際の前提の問題としてはちょっと頭の隅に置いておかなくてはいけないのではないかという気はいたします。

ほかに。

 

 

 

 

  •  主として質問をさせてください。

第47の1(3)の「受益者による選任」の性格についてであります。

 

 

こういう規定を置くことについては,必要ないのではないかという指摘も御紹介されているところでありますが,私の意見としては,受益者が多数いるような場合に信託管理人を置くことによって信託全体が円滑に運営されることになり得るという点については意味があると思います。

 

 

そして,必ずしも(1)のように信託行為に定めがなくとも,受益者のイニシアチブで信託管理人を置けるという可能性が開かれるというのは,適切ではないかと思います。

 

 

その上で質問なのですが,この(3)を置く意味なのですけれども,これがもしなかった場合には,仮に受益者が全員そろってある人を信託管理人に選びたいとしても,信託管理人選任の要件としては(1)と(2)の二つの制度しかないとすると,受益者だけの選任行為では信託管理人にはならないと。

 

 

 

せめて可能なのは代理人であって,要するに受益者の代理として権利行使をすることはできるけれども,2の権限のところに出ていますけれども,自己の名で受益者の権利を行使するということが私的自治の一般ルールの世界ではできないと,そういうことを意味していると考えたらよろしいでしょうか。

 

 

 

 

 

  •  (3)がない場合どうなるかということでございますが,まず一つは,(1)の信託行為の定めというところに関係いたしまして,そういう場合は受益者が信託行為の変更を合意する,あるいは請求して信託行為の変更によって信託管理人を定めてやるという手当てはあります。

 

 

 

しかし,それよりも直截的に受益者が選任できた方がよりストレートではないかと。

 

 

どういう場合に信託行為の変更ができるかという問題はさておくといたしまして,いったん信託行為という,そのような迂回路を通るよりは,ストレートに選べればいいのではないかというのが,1の(3)を置いた理由でございます。

 

 

あと,(2)でございますが,これは確かに,今,○○幹事がおっしゃった例,複数受益者がいるときに意思決定が円滑にいかない問題があるということをもって,保護の必要性と先ほど私ちょっと言いましたが,それと見れば,裁判所が選任するという手だてもあり得るわけでございますが,しかし,裁判所という経路を通らずに受益者自身が直接選ぶことができていいのではないかと,そういう観点から,ほかで代替できないわけではないのですが,やはりよりストレートに,受益者保護の観点から,自ら選ぶルートを残したというのが,(3)を置いた趣旨ということになります。

 

 

 

 

  •  申し訳ありません,私の質問が必ずしもクリアでなかったわけですが,今のお話の前提に,次のような考え方があるかどうかという形で質問させてください。

 

 

すなわち,(3)がなかった場合に,受益者が信託管理人を選んで,そして2の(1)のような権限を与えたとしても,それは法的にはサポートされないという考えが前提にあるからこそ1の(3)を置き,1の(3)がなければ,今,○○幹事が御説明いただいたように,1の(1)か1の(2)を経由しなければならないと,そういうものとして信託管理人というのはあるのだということでしょうか。

 

 

 

 

  •  今おっしゃった趣旨は,こういう(3)を置かなければ,でも受益者は全員で代理人を選べるではないかと。

 

 

ただ,代理人ですと,ここで言う自己の名をもってというようなことができませんので,やはり自己の名をもって権利を行使できるというのが信託管理人であると,一種信託の機関的な位置づけになってまいりますが,そのような信託管理人という制度を置く以上は,やはり受益者がこういう選任行為をもって信託管理人を選べるという規律がないと難しいのではないかということでございます。

 

ただ,代理で足りるのではないかという御意見もあり得るとは思いますので,そこは1のところでどうされるかというのは,ちょっと……。

 

 

  •  実質的には代理で足りるけれども,形式的には代理とは違うものとして信託管理人を置いていると。

 

 

 

  •  その点はもちろんそうですね。ただ,それを私的自治でもって,こういう規定がなくてできるかどうかということですよね。
  •  はい。
  •  何かできてもよさそうな気がするけれども……。

 

 

 

 

 

  •  今の点でございますけれども,受益権の中には,「共益権」というふうに会社法の者は言っておるのですけれども,いろいろ受託者を監督・是正するような様々な権利が認められておりまして,それらをごそっと代理人に出すことができるのかどうかということについては,そんなに簡単な話ではないと思います。

 

 

 

したがって,やはりこういった信託管理人の制度は代理だけでは非常に難しい部分があるのではないかというふうに,会社法の観点からは考えられるのですけれども。

 

 

 

  •  それはまた,要するにどの程度の権限を移すかという観点からの問題点ですね。

 

○○幹事が言われたのは,いわば自己の名をもって権利行使するような人間を,受益者たちが合意して自由に私的自治の範囲でつくれるかということですよね。

 

 

 

恐らくそれは若干争いがあるのではないかという気がするのですね。

 

 

できるという考え方もあるかもしれないし,そういうものはできない,特に訴訟なんか自己の名でもって提起できるわけですから,そういうものは問題だという御意見もさっきありましたし,そういう意味で,(3)のような規定があった方が明確だということなんじゃないでしょうか。

 

 

 

  •  細かなことなのですけれども,報酬ですとか費用償還なんかの規律も代理とは違ってくるということがありますが,そういうものをセットとして別途作るかということが問題なのかと思います。
  •  そうですね。

 

 

 

 

  •  私,一つ感想と,ちょっと私の読み方が足りないのでしょうから,一つ質問を。

 

感想の方は,信託管理人という制度は今まで公益信託等に日本で使われていて,これがまた英語で訳せない概念というか,「信託管理人」ってどう訳せばいいのかといっても,向こうにはないわけですよね。公益信託についてすらないわけで,だから日本特有なので,すごく面白い。それを今度,公益信託どころか,もっと広く拡充しようというわけですから,一層面白い話だと思うのですね。

 

 

すみれ

「信託管理人は日本にしかないんだ。」

 

 

 

それは一体何のためなのか。今までも,信託管理人というのは何なんだという話がどうしてもあって,○○幹事がおっしゃったように,実はやはり受託者の方の便宜で,複数の受益者がいる場合に一人にまとめておくと本当に助かるねという部分が相当にあるのかなと。

 

 

 

それが結局は受益者全体の利益にもなるのだというふうにハッピーにつながればいいけれど,ということかなと思っています。かなと思っていますというのは,少し疑問が残っているという意味ですが。

 

 

 

 

質問の方は,そういう背景のもとになのですが,受益者による選任のところが特にそうかな。

 

 

結局,これは一体どうやって選任するかというと,私が分かっていないのだと思いますが,24ページの表を見ると,受益者全員の合意,34ページを見ると特別決議ということですね。

 

 

かつ,信託管理人の権限としてはこういうものだという話で並んでいるので,24ページのところを見ると,各受益者単独で受益者は権利行使できますよというのがずっと並んでいますね。

 

 

そのうちの一部は信託管理人がいてももちろん単独でできますよということだけれども,ある部分については各受益者単独ではできなくなるということですよね,信託管理人を置くと。本当にそれでいいのかなという感じがあるということだけです。

 

 

 

今の話で,14ページから15ページにかけて,とにかく受益者全員の合意が必要だというふうに,第48の別表の方の何とかという最初の方のところが維持されていて,それで,「円滑性の確保や受益者の一部による権利の濫用の防止」,全員で同意して選任しておいて,一部の権利濫用を阻止するためだというのが,私は--まあ,そういうこともあり得るのかなとは思いますけれど,理屈の上でこういう話になるのだろうかという……。

 

 

 

それは一番最初の感想のところへ戻ってきて,本来の目的は,やはり信託事務処理の円滑性の確保というところへ結局戻ってくるのかなというところへつながる話です。

ちょっと私の理解が足りない部分だけ教えていただけますか,さっきのところで。

 

 

 

 

  •  ○○委員に私が教えるような能力はないのですが,どの点でしょうか。
  •  まず,全員なのですか。

 

 

  •  全員ですが,しかし,これは,多数決がなければ全員ですね。しかし,多数決の制度を設ければ,原則特別決議。

 

 

しかも,それも,我々の提案ですとかなり自由ですから,過半数という制限はかかるにしても,2分の1とかでもあり得ると。少なくとも3分の2で選べますので,3分の1は反対しているということはあり得るわけでございます。

 

 

 

  •  あり得て,その受益者単独という権利の一部がなくなってしまうわけですか。

 

 

  •  なくなってしまうものがあります。それが吸収されるということになります。

 

 

 

  •  そこは,先ほどから問題にしている点ですね。

また繰り返して申し訳ないけれども,裁判所が受益者全員のために選任するというときに,一応,例えば多数決を導入しているような集団信託というのでしょうか,そういうときには多数決でやる道はあるけれども--まあ,そういうときは裁判所は選ばないと思いますけれども--それを通らないで,一部の受益者が裁判所の選任を求めてくるなんていうのは,一応この制度に乗っかったときにも,やはりそれはだめだと。

 

 

 

  •  請求はできますが,保護要件というところに引っ掛かってくるかと思います。

 

 

ですから,例としては挙げましたが,現実問題として,全員一致しかないときはともかく,多数決制度がある中で,更にこの信託管理人の請求があったときに,果たして裁判所が選ぶことになるかというと,それはケース・バイ・ケースでしょうが,なかなか難しい問題があるという気がいたします。

 

 

 

  •  大分長い時間をとりましたけれども,やはり非常に重要な問題の一つですので,御議論いただきました。なお残っている問題については,更にいろいろ検討させていただきたいと思います。

 

 

 

 

それでは,次の方に移りたいと思いますが,いかがでしょうか。

 

 

  •  では,第48から第50までを説明をさせていただきます。

 

まず,第48は,受益者が複数の信託において,信託行為に定めを置くことを条件として,受益者が単独で行使できる権利について,単独行使の制限を認めることの可否について検討したものでございます。

 

 

複数受益者による意思決定に係る事項としては,一つは受益者全員の合意を要する事項と,もう一つは各受益者が単独で意思決定できる事項とに分けられますが,全員の合意を要する事項につきましては後ほど説明することといたしまして,ここでは,単独で意思決定できる事項について,信託行為に定めを置くことにより単独での権利行使を制限することを認めるべきか否かを問題とするものでございます。

 

 

 

資料の21ページ以下では,単独受益者権,すなわち,24ページの別表で,「受益者による権利行使の方法(原則)」欄におきまして,「各受益者単独」と記載したものにつきまして,単独行使の制限を認めるべきか否かについて,順次検討しております。

 

 

 

結論的には,信託違反行為の第三者に対する取消権については,単独行使の制限を認めることも検討の対象となり得るのではないかという観点から,制限を認めるという甲案と,認めないという乙案の両案を併記しております。

 

 

なお,信託違反行為によって信託財産に損失が生じた場合においては,受益者は原則として原状回復を請求するか損失てん補を請求するかを選択することができるわけですが,各受益者が受託者に対し単独でこれらの請求をできるとした場合には,例えば,ある受益者は原状回復を請求し,ある受益者は損失てん補を請求すると,このような場合には受託者としてどのような対応をとればよいのか判断に迷うこと,あるいは判決になればその内容が矛盾・抵触することが想定されますが,この問題につきましてはなお検討したいと考えているところでございます。

 

 

 

続きまして,受益者が複数の信託の意思決定の方法について御説明いたします。

 

 

 

第49でございますが,第2回会議の際にも申し上げましたように,現行法は,制定当時,主として受益者が単数の信託を想定していたと考えられますので,受益者が複数の場合の受益者による権利の行使の在り方について適切な規律を置いているとは言い難い状況にあると思われます。

 

 

 

他方で,現行の信託実務におきましては,受益者が複数に上る信託も多く見られますので,今回,受益者が複数の信託について適正な規律を設けることを提案しているものでございます。

 

 

 

1の(1)でございますが,これは,複数の受益者がある場合においては,信託行為に定めを置くことを条件として,受益者全員の合意にかえて,受益者の多数決をもって意思決定をすることを認めたものでございます。

 

 

 

34ページの別表にありますとおり,受益者の権利というのは,単独で行使できるものと全員の合意を要する事項とに分けられますが,ここで問題になりますのは全員の合意を要する事項の権利行使についてでありまして,常に受益者全員の合意を要するといたしますと,複数の受益者による権利行使は困難なものになると思われます。

 

 

そこで,複数の受益者による合理的な意思決定の機会を確保しつつ,信託事務処理の円滑性も図るという観点から,信託行為に定めを置くことを条件として,受益者全員の合意を要する事項の全部又は一部について多数決をもって決定することを認めております。

 

 

 

なお,いかなる事項を多数決の対象とするかは信託行為の定めにゆだねられることになると考えております。

 

 

 

 

また,このように多数決での意思決定を認めた場合におきましては,どのような方法で決議を実施することを認めるかが問題となりますが,(2)におきまして,信託の特徴の一つであります柔軟性を確保するという観点から,決議の方法については,各信託の設計,すなわち信託行為の定めに委ねるものとしております。

 

 

 

次に,2でございますが,受益者集会制度の創設に関する提案でございます。

 

 

先ほど申しましたように,多数決制度のもとにおける決議の方法につきましては各信託の設計に委ねるわけでございますが,契約コストの削減等の観点からは,複数受益者による意思決定の方法及び手続についてデフォルト・ルールを明らかにしておくことが有意義であると思われます。

 

 

ポリー

「家族信託では受益者集会は利用しないかな。」

 

 

 

そこで,主要な方法の一つであると考えられます受益者集会についての規律の創設を提案しております。

 

 

まず,(1)は受益者集会の招集に関する提案でございまして,招集権限は,信託行為に別段の定めがない限り,受託者と信託管理人が有するとしまして,また,受益者集会は,必要が認められた場合に随時招集されることとしております。

 

 

そのほか,正当な理由がないのに招集権者が集会を招集しない場合には,アステリスク1のとおり,受益者による集会招集請求権等に関する規律を設けることを検討しております。

 

 

 

(2)でございますが,これは受益者による議決権の数及び受益者集会の決議方法に関する提案でございまして,①では,原則として受益者がそれぞれ1個の議決権を有することを定めております。

 

 

また,②では,受益者集会の決議方法を明らかにしておりまして,すなわち,受益者集会の決議方法につきましては,商法の規定なども参考に,いわゆる普通決議と特別決議を設けるものとしております。

 

 

このように措置した場合におきましては,特別決議を要する事項と普通決議で足りる事項との振り分けが問題となりますが,これは,34ページ別表の「決議の種類」欄に記載しましたとおり,信託の基礎的変更に関する承認及び受益者にとって特に重要であると考えられる意思決定,具体的には信託管理人の選任に関する同意権でございますが,これについては特別決議を要するものとし,それ以外の事項は普通決議で足りるものと考えております。

 

 

もっとも,先ほどより何度も御説明しているところにかかわりますが,信託におきましては,契約自由の原則から,信託行為の変更や終了など基礎的変更に係る承認権限につきましては特定の者に委ねることも可能であると考えられておりますので,信託行為に定めを置くことによって,特定の受益者に対してこれらの承認権限を与えることも可能であると考えられます。

 

 

 

このような信託の柔軟性にかんがみますと,特別決議事項と普通決議事項の振り分けですとか,あるいは定足数につきましては信託行為で自由に定めることができるとするのが相当ではないかと考えられるところでございます。

 

 

 

そして,このように決議の方法や定足数につきまして自由に定めることができるとした場合におきましては,少数派の受益者を適切に保護する必要が生じると考えられますが,この点につきましては,反対受益者の受益権取得請求権に関する規律を整備することによって妥当な解決を図ることが可能ではないかと考えているところでございます。

 

 

 

 

 

もっとも,このように契約の自由を前提とした見解に対しましては,受益者集会という合議体での決議を法定する以上は,受益者保護の観点から,一定の限界,すなわち強行規定を設けることが必要ではないかとの指摘がまたあり得るところでございます。

 

 

 

そこで,アステリスク5に記載しましたとおり,決議要件等につきまして一部強行規定を設けることとするか否かにつきまして,なお検討したいと思っておりますが,契約自由の原則から自由に制度設計できるということの適否につきまして,是非ともこの場でも御審議を賜れればというふうに思っております。

 

 

 

次に,(3)は受益者集会の効力に関する提案でございまして,すべての受益者に及ぶということを明らかにしております。

 

 

ただし,信託におきましては,種類の異なる受益者が存在することがありますので,受益者集会で決議した内容によっては受益者集会の効力が特定の種類の受益者に損害を与えることがあり得ます。

 

 

この点につきましては,まず,種類受益者保護の観点から,受益者集会の決議は種類受益者には及ばないとすべきであるという考え方があり得ると思います。

 

 

 

もう一つは,契約自由の原則によれば特定の受益者に対して決定権限を委ねることも可能なので,異なる種類の受益者が存在する場合において,受益者による決議の効力がどのように発生するかについても信託行為の定めに委ねることとするのが相当であり,それに伴って生じ得る不都合につきましては,受益権取得請求権を一部強行規定として認めることで解決すれば足りるという考え方があると思います。

 

 

 

そこで,アステリスク7のとおり,種類受益者の保護に関して規律を設けるべきか否かにつきまして,なお検討するものとしておりますが,この点につきましても是非とも御審議をいただければと思います。

 

 

 

 

 

 

 

(4)は,受益者集会の費用に関する提案でして,信託財産から負担すると,共益的な費用と見て,そのように考えているところでございます。

 

 

次に,3は書面による決議に関する提案でございまして,受益者による多数決の方につきましては,信託行為で自由に定めることができますが,決議を必要とする事項によっては書面による決議が利用されることも多いのではないかと思われます。

 

 

 

そこで,書面による決議が採用された場合についての一つのサンプルとして,契約コストを削減するという観点も踏まえ,デフォルト・ルールを明らかにすることとしております。

以上で受益者集会の説明を終わります。

次に,第50の「受益者名簿について」の説明に移らせていただきます。

 

まず,1は受益者名簿の作成義務に関する提案でございます。現行法の39条,40条の規定では,受託者は受益者名簿の作成義務を課されておりません。

 

 

 

しかし,信託におきましては,受益者が複数となることがありますが,権利の行使に当たって受益者全員の合意が必要な事項については,各受益者は権利行使に当たって他の受益者の個人情報を知る必要があり,このような場合におきましては,受託者に受益者名簿の作成義務を課すことが,当該信託に関係する者,特に受益者にとって便宜であると考えられます。

 

 

 

そこで,1では,受益者が複数の場合におきましては,受託者が受益者名簿の作成義務を負うこととしております。

 

 

 

なお,記載事項につきましては,アステリスク1のとおり,なお検討したいというふうに考えております。

 

 

次に,2は受益者名簿の閲覧・謄写に関する提案でございまして,先ほど申しましたとおり,受益者に認められた信託法上の権利の中には,受益者が複数の場合においては全員の合意が必要となるものがありますので,受益者がこれらの権利行使をするに当たりましては,前提として,各受益者が他の受益者の正確な個人情報を知ることができるようにする必要があると考えられます。

 

 

このような観点から,受益者は,理由を明示して受益者名簿の閲覧・謄写を請求できるというふうにしております。

 

 

また,信託管理人は受益者を保護するために置かれるものですので,保護の対象である受益者の正確な個人情報を知ることができるようにするという観点から,受益者と同様の権利を有するものとしております。

 

 

 

さらに,受益者集会制度や書面による決議の制度が採用されている場合におきましては,受益者集会の開催や書面決議の実施に当たりまして,決議を行う受益者に関する正確な情報を知ることができるようにする必要があると考えられますので,このような観点から,(2)では,受益者集会の招集権者又は書面による決議の実施権者は受益者名簿の閲覧・謄写請求権を有するとしております。

 

 

 

他方で,これらの者につきましては,集会の招集又は書面による決議の実施のために必要があると認められる場合に限って名簿の閲覧・謄写を認めれば足りると考えられますので,提案におきましては,その旨を明らかにしております。

 

 

 

なお,受益者名簿の閲覧・謄写に関しましては,受益者の個人情報や受託者の営業秘密を保護する観点から,帳簿等の閲覧・謄写の場合と同様に,受託者は,①から⑦で列挙した正当な理由がある場合には受益者名簿の閲覧・謄写を拒むことができるとする方向で規律を整備する方向で考えております。

 

 

 

 

  •  それでは,今の範囲で御議論いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。

 

 

 

  •  今のところの最初の,「信託行為の定めに基づく単独受益者権の制限について」という部分なのですけれども,結局,ここの表だけを見ると,やはりそう簡単には制限できないよというふうなニュアンスで語られているのが--さっきの続きなのですけれども,信託管理人が選任された場合には,そのうちの幾つかについて,なしになるのですね。

 

 

 

それだとどうかなということなのですけれども,今の私の狭い経験で言うと,私は,ある公益信託の運営委員会の委員というのをやっておりまして,会議になると,そこへ信託管理人の方が出てこられます。

 

 

それは,その信託銀行の関係の弁護士さんなんですね。だから,これで新しい制度を拡充していくのはいいのですけれども,そうすると,私が受託者であれば,やはり信託管理人を置いておきましょうよということになりかねない,現状の実務を。

 

 

今のところ,それで問題があるかというと,何ら問題がないのですけれどもね。

 

 

誤解を生むようだと困りますから。そうなのですけれども,しかし,今はそうだけれども,これが広がっていってどうだろうかという話にはなるので,この各受益者単独というところを,この幾つかの点だけですから,信託管理人のところへ全部行ってしまうということにする必要が本当にあるのだろうかというのが私の疑問です。

 

 

すみれ

「信託銀行の関係の弁護士さんで意味あるのかな。何かあるんだろうね。」

 

 

  •  御意見はよく分かりました。先ほどの問題と関連する問題ですね。

それから,今言われた,信託管理人というのはどういう人間がなっていいかという問題も恐らく今の問題には本当は入っていて……。

 

公益信託だから余り問題ないのでしょうね。まあ,それも問題はあるかもしれないけれどね。いや,ちょっと言い過ぎました。

 

 

 

 

 

ほかに。

  •  私は,第49の受益者が複数の信託の場合の意思決定方法について意見を申し上げたいと思います。

 

今回,全員合意ということの現行法にかえて多数決制度を導入されるということについては,非常に賛成でございます。

 

 

ただ,その中で,債権の流動化というところで考えまして,質問が一つと,要望が一つございます。

 

一つは,この第49の2の(2)の「議決権の数・受益者集会の決議」というところで,「受益者は,信託行為に別段の定めがない限り,それぞれ1個の議決権を有するものとする」ということなのですけれども,別段の定めがあるということがあればまた別なのでしょうけれども,基本的に考え方をお尋ねしたいのは,債権の流動化では,すべての受益権が同じではない,幾つかの受益権のグループに分かれているというところがあります。

 

 

 

一般的には優先的受益権とか劣後的受益権,それからオリジネーターが持っている売主の劣後受益権というようなものがあると思うのですけれども,そういったときに,基本的にどういうふうに考えたらいいのかということと,これは後の取得請求権のところにもちょっとかかわってくるのですけれども,その際にどういうふうに考えたらいいのかなということがあります。

 

 

 

御承知のとおり,商法では,普通株式のほかに,優先株式,劣後株式があって,通常は普通株式のもとに意思決定がされるということになって,特定の場合に優先株式等が議決権を持つというつくりになっているのですけれども,債権流動化の場合は普通株式に該当するようなものがないということが一つあるので,そういった質問をさせていただきました。

 

 

 

 

二つ目に,次の26ページに書いてございますアステリスク5のところなのですけれども,債権者集会や書面決議とは別に,そもそも決議の方法及びその要件についても信託行為で自由に定めることができるものとするということについては,非常に賛成でございます。

 

 

 

 

ただ,この場合,その反対として,自由に信託を設計する当然の少数の受益者の保護という観点から,何らかの強行規定をもって少数受益者を保護しないといけないのではないかという考え方が示されておりまして,それは一般的にはしようがないのかなというふうに思っております。

 

 

 

 

 

 

しかしながら,先ほども申し上げましたけれども,債権の流動化のときに,受益権の種類がいろいろございますので,そういったときに,もともと差がある受益権があって,そのときまでそういった種類の受益権を保護する必要がないケースがあるわけですね。

 

 

 

したがって,そういうものまで強行規定という形になってしまうと,非常にスキームがつくりにくくなってしまう可能性はないのかなと。

 

 

 

これについては全然詳しく検討しておりませんので,杞憂にすぎないのかもしれないですけれども,例えば,反対する受益者の受益権取得請求がされるという中で,幾つかの受益権がなくなってしまう,例えば優先部分がなくなってしまうとか,実際にある程度の時間がたっていきますと,だんだん劣後部分の方が極めて大きくなってしまって,優先部分は全体からすると受益権としては非常に少ない,劣後の部分だけがまだたくさん残っているとか,そういったものもありますし,また,劣後受益権もいろいろなパターンがありまして,スキーム自体の中で劣後という形で--その中では当然順番を決めたりはしているのですけれども,当社の例なんかでは,オリジネーターが持っている受益権,複数のスキームの中に発生している劣後受益権をまたまとめまして,それを更に優先部分と劣後部分に分けて売却するなどするわけです。

 

 

番人

「劣後をまとめて、それを優先と劣後に分けて。大変だね。」

 

 

そうすると,またその中での関係もかなり複雑になってきますので,強行規定という形で一律の保護というものを決めた場合,そのあたりにかなり影響が来るのではなかろうかというふうに懸念をしております。

 

 

これについては,これから詳しく検討したいなというふうに思っておりますけれども,そのあたりはいかがなのかなということで,思いつきなのですけれども,受益権がすべて平等の場合はこれで構わないと思うのですけれども,受益権について差がある場合については別段の定めがあるというようなものがあれば,うまくいく可能性はあるのかなというふうな感想も持っております。

 

 

 

 

 

 

 

  •  これは○○幹事の説明の中にもありましたけれども,いろいろな種類で,かつ優先・劣後の関係があるような,そういう受益者の種類があったようなときにどういうやり方でやるかと。結構難しい問題なのだろうと思いますけれども。

 

 

 

 

  •  まず,一つは,それぞれ1個の議決権でいいか,受益権の種類はいろいろあるではないかという御指摘ですが,そこは30ページのところにも書かせていただきましたが,そのように受益権の内容が均一でないからこそ,細かな類型の違いに応じて議決権の数を法律で一律に調整するというのはなかなか難しいと。

 

 

 

それであるからこそ,デフォルト・ルールとしては1受益者1議決権というよう

にさせていただいて,あとは,微妙な違いに応じて議決権を変えるのは信託行為に任せたいというのが,ここでの考え方でございます。

 

 

それから,受益権取得請求権につきましては,これは我々は強行規定と考えておりますけれども,先ほど言いましたが,あらゆる変更ないしは基礎的な変更につきまして常に取得請求権が認められるというわけではないと。

 

 

 

どういう場合に取得請求権が認められるかというのは,正にこれから検討したいと思っているところですが,恐らく,実質的な変更に当たるような場合というような,そんな感じの要件になってくるかと思いますが,そうすると,そもそもの受益権の中である程度劣後していたものについて,それが多少変わって劣後がもっと劣後するようになったとか,その程度の話であれば重大な変更には当たらないが,優先していたものがいきなり劣後するとか,それはさすがに重大な変更とか,そのような実質的な判断というのが可能になるのではないかというふうに考えておりますが,その点を,御指摘なども踏まえつつ,また,これについては次回会合以降で検討する点でございますので,御指摘があれば,また後日でもいただければというふうに思います。

 

 

 

  •  第48,第49,第50,3点意見を申し上げたいと思います。

 

 

まず,第48の単独受益者権の制限のところでございますが,これについては,甲案,乙案というふうに提示がございますので,基本的には,私どもの業界としての多数意見は甲案ということです。

 

 

 

それ以外は乙案かというと,そうではなくて,基本的には信託の柔軟性を確保するという観点から,信託違反行為の第三者に対する取消権だけではなくて,ほかの単独受益者権についても信託行為の定めによって制限ができないかと,そういう少数意見がございました。

 

 

 

 

実際の多数派の甲案の方の理由なのですけれども,これは22ページのところにも書いてありますけれども,実際に受益者が多数いますと,当然,それぞれの受益者にとって得なのか損なのか,それはいろいろ評価が分かれるということでございますので,あと,濫用ということもやはりどうしても出てくるものでございますので,信託行為によって制限を認めてもらいたいということでございます。

 

 

 

次に,第49の受益者が複数の意思決定方法のところでございますが,ここの部分につきましては第2回に意見を申し上げましたが,引き続き,受益者が複数の意思決定方法として,多数決が導入されたということと,その方法について,先ほど来出ていますけれども,信託行為の定めで自由に設計できると,ここの部分については従来から要望していた部分でございますので,賛成だということでございます。

 

 

 

 

ただ,これも先ほど○○委員の方から出ていましたけれども,アステリスクの5のところで,それに伴う不都合についての対応につきまして,決議に反対する受益者に取得請求権を認めるという形のものであるとか,ほかの強行法規を求めるという点につきましては,信託の特色であります柔軟性をちょっと阻害するようなことも出てくるのではないかということで,業界の意見の大勢としては,それについても,強行法規化というのは勘弁していただきたいというところでございます。

 

 

ただ,一部の意見としては,とは言うものの,何らかの制限はやはり必要なのではないかというような意見もございました。

 

 

 

 

あと,複数の意思決定方法につきましては,これは多分後で議論されることになりますけれども,合同運用の信託についても適用される部分があると思いますので,そのときにまた御議論いただければいいと思いますけれども,そういう問題があるということをテークノートしていただければと思います。

 

 

あと,第50の受益者名簿のところでございますが,これが最近になっていろいろと議論が錯綜していまして,意見としては,1の名簿の作成義務の規律と,2の閲覧・謄写請求,このいずれも基本的には強行規定であるということだろうと思いますが,これをデフォルト・ルールにしていただけないかということでございます。

 

 

 

まず,1の方なのですけれども,第2回の会議のときにちょっと申し上げたのですが,例えば投資信託というものを考えた場合に,受託者は基本的には受益者を把握していないというようなことがございまして,これから先以降いろいろな信託が出てきたときに,把握できないものもかなり出てくるのではないかと。

 

 

ということは,受益者名簿というのは果たしてつくれるのだろうかというのが,ちょっと余り自信がなくて……。

 

 

例えば,投信ということで限定して考えますと,当然,投信法という特別の法律がありますので,そこで緩和するという方法が一つあると思います。

 

 

 

それと,無記名証券が大半でございますので,例えば無記名証券については名簿を設けないという方法もあるかもしれません。

 

 

あと,第53の提案5で言う甲案ですか,これをとればいいというようなお話かもしれませんけれども,それ以外に,信託業法も変わりまして,受益権の販売業者というのが出てきて,受益者との関係は専らその販売業者が相対する,そして受託者と受益者の距離があいていくというような種類の信託もあるのではないかと。

 

 

その場合に,どこまで受益者名簿というものを作成できるか,そこら辺のところは,今後の展開次第によっては,できないようなものもあるのではないかということがありまして,基本的にはここはデフォルト・ルールにしていただけないかということでございます。

 

 

2の閲覧・謄写請求のところですが,当然,名簿がないとできないというのが一つあります。

 

 

それと,よく株主名簿とパラレルに言われますけれども,株主名簿というのは基本的に社会的に閲覧できるのだということが認知されておりますが,信託の名簿につきましては,基本的には,現行法で言ったら見れませんので,見れないものだということを前提に組み立てられています。

 

 

 

その中で,法律が変わったら当然考え方も変えるのだというお話かもしれませんけれども,例えば私が個人的に考えても,横のつながりを重視して,権利行使するために横のつながりを知りたいということで名簿の閲覧をするのと,プライバシーの観点から自分のことを知られたくないというのと,そのどちらに重きを置くのかというところではないかと思いますが,今の一般のお客さん,受益者の方々に聞いてみたら,多分,知られたくないという方も結構いらっしゃるのではないかなと。

 

 

すみれ

「株主さんも知られたくないという方がいるんじゃないかな。」

 

 

そういう観点から,やはり一律に決めてしまうのではなくて,信託ごとにデフォルトという形で対応していくのがよろしいのではないかなと思います。

 

 

 

 

あと,ここの規律につきましては,基本的には賛成なのですけれども,強行規定ではなくて,デフォルト・ルールにというところでございます。

 

 

 

 

 

 

  •  第49で,総論的な意見と,質問を二,三,それと第50で質問を一つお願いします。

 

 

受益者集会に関する強行法規を採用すべきかどうかという話についてでございますけれども,これについては,第2回で私が申し上げましたとおり,基本的にはデフォルト化を追求すべきであるということでございます。

 

 

 

その意見をもう1度繰り返したいところでございますけれども,もちろん,先ほど○○幹事がおっしゃられたとおり,信託の重要なところである信託の柔軟性であるから自由ということもありますけれども,考えてみますに,もう一つ,1の(2)で,そもそも多数決についての方法というのは,別に受益者集会に限らず,書面その他の方法によって行うことができるということが書いてあります。

 

 

そうしますと,書面その他の方法については別に規律がないということですので,ここで平仄を考えますと,受益者集会を選んだときに,勢い団体性の議論が入ってきて,かつ,ある意味セットとしてやってくると。仮に定足数であるとか特別決議ということの意思決定に関することだけであればいいとしても,先ほどから出ています反対者の取得請求権というのもセットで出てくるということを考えますと,その他の方法によって行うことと,受益者集会との乖離が非常に大きいのではないかと思います。

 

 

うがった見方をするのであれば,例えば,「その他の方法」というのを,自治的に,受益者集会の方法と同じようなその他の方法でやると,ただし反対者の取得請求権はないものとして,独自の受益者集会でない集会を行うというのも,1の(2)であれば可能なような感じがしますので,そうしますと,2の強行法規を維持する意味がどこまであるのかということを思います。

 

 

 

 

あとは,仮に強行法規であるということを前提とした場合の若干の御質問なのですけれども,ではどこまでデフォルトなのかということでございますが,1の(1)の中で,基本的な決議事項の場合というのは,この表によって判断すべきだというふうになっているわけですが,これ以外の事項というのもあるとは思うのですけれども,この場合に,これはそもそも受益者集会の決議事項になるのかどうか,また,その場合にそれが普通決議なのか特別決議なのかということが判然としないわけなのですけれども,例えば,セキュリティー・トラストが出てきた場合に,では担保物を買いますというようなことがあると。

 

 

 

一つの考え方は,これはもう信託そのものの変更ということで,信託行為の変更ということで第57の規律によるというような形で出てくるのかもしれませんけれども,片や,例えば担信法で言う担保の変更ということで何らかの決議に付すという考え方もあるとは思うのですけれども,私が申し上げたのは単なる一例でございますけれども,このような,この項目に想定されないようなものがあった場合に,その会議体ではどういうふうに扱うのかということを御質問させていただきたいと思います。

 

 

 

二つ目は,決議の方法なのですけれども,いわゆるみなし賛成ということが可能なのかどうかということでございます。

 

 

株式会社の場合では,御案内のとおり,例えば,賛否を問うて,何も書かなかった場合には賛成とみなすというのを書くというようなことが行われておりますけれども,それに加えて,非常に自由な会議体ということを目指すのであれば,例えば,極端な話,返送しなかった場合は賛成とみなすというようなことも可能ではないのかというふうにも思います。

 

 

 

先ほどの1の(2)の中での「その他の方法」という,いわゆる私的自治の,会議体でない場合にはそういうことも可能なのかなと。

 

 

契約法の考え方からしても,あらかじめそういうふうに決めておけば可能ではないのかなというふうには思うわけですけれども,では受益者集会の場合にそういう方法が認められるのかどうかということです。

 

 

 

それから,議決権で何を1票とするのかということについて,これは余り絶対的な意見を持っているというわけではないのですけれども,質問があります。

 

 

 

やはり多様なニーズに応じるためにデフォルト化賛成ということで,ここに書いてありますとおり,基本的には一人1票でいいであろうと。

 

 

商事信託の場合にはいろいろなニーズがあるわけだけれども,基本的にはそういうのは信託行為で決められるわけだから,それで対応すればいいだろうということで,基本的にはデフォルト・ルールを前提とし,ただし原則は一人1議決権というふうに整理されていると理解しております。

 

 

 

ただ,考えるに,その原則自体,本当に一人1議決権でいいのかどうかということがございます。

 

 

恐らく,民事信託の場合で特別な場合,どちらを--つまり,持分権に応じて1議決権と考えるのか,一人と考えるのかということについてはいろいろな判断があり得るとは思うのですけれども,私は,民事信託であったとしても,いろいろな金銭的な,経済的なことを目的とした信託ということが多いと思いますので,民事信託としても原則は何らかの持分ということを想起して,それを単位とするということが望ましいのではないかと。

 

 

 

そこで質問なのですけれども,ここで一人1議決権とした理由といいましょうか,例えばこういう場合にはやはり一人1議決権にしなければ不便だな,また,当事者の意思からしてその方が合理的だなというような具体的なものがあるのかどうかということについて,最後の質問とさせていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

それから,第50の受益者名簿については,簡単な質問一つでございますけれども,基本的には,先ほど○○委員からお話がありましたように,これもデフォルト化ということを希望したいとは思うのですけれども,1点確認したいのは,正当な理由によって拒絶することができるということなのですけれども,これはどういう事項を名簿に載せるのかにもよりますけれども,仮に多様な情報を名簿に載せるということになった場合に,やはり理由によっては,開示の内容,また範囲を限定することもできるのではないかというふうに思っているのですけれども,それがそうなのかということについて確認したいというふうに思っています。

 

 

 

 

 

  •  第48の単独受益者の制限について,信託違反の取消権について意見を述べさせていただきます。

 

 

 

今回の御提案は,従前出ております取引の安全と,今回は少数受益者権の取消権の濫用に配慮して御提案されているかと思われますけれども,この制度を作るに当たっては,信託違反行為の抑止という点も是非御検討いただきたいというふうに思っております。

 

 

 

すなわち,信託違反行為の効力が否定されにくい制度のもとでは,信託違反行為の抑止力が弱まるのではないかというふうに懸念しております。

 

 

 

もちろん,受託者の忠実義務等の規定は存するわけですけれども,抑止効果として一番効力を持つのは,やはり信託違反行為の効果が否定される現実的可能性があるという場合。

 

 

 

こうした制度のもとの方が抑止効果が働くのではないかと思います。

 

 

受益者の立場からしますと,信託違反行為の効果が否定されにくいということになりやすいという場合には,もともと受益者が信託目的を基本的に前提として受益権を享受するということにしたにもかかわらず,この範囲外の行為によって負担ないし損害を負わされることになりまして,これは,受益者の立場からすれば,不測の負担を負わされるということになってしまいます。

 

 

 

 

 

こうした観点ですとか,あるいは紛争の防止・予防や信託への信頼確保という観点からも,信託違反行為の抑止というのは重要な課題であろうと思われますので,是非,この観点からの制度設計をお願いしたいと。

 

 

このような観点から,甲案,乙案提示されておりますけれども,乙案に賛成する意見を述べたいと思います。

 

 

なお,個人的には,従前述べさせていただきましたけれども,悪意重過失の立証責任についても,制度設計に当たってあわせて考えるべきではないかというふうに考えております。

 

 

 

これとの組み合わせの中でこの単独受益権の制限をどうするかということについても検討すべきかと考えております。

 

 

 

 

 

  •  今言われた点は,現行の信託法というのは,たくさん受益者がいる場合というのはいろいろな場合があるのでしょうけれども,取消権についてだけはわざわざ32条が入っているというのは,恐らくそういう趣旨でできたのだと思います。

 

 

ただ,この規定ができた当時は,そんなにたくさんの集団信託というのは考えていなかったので,集団信託についてはどうするかという問題はなおあるような気がいたしますけれどね。

以上,幾つか質問等について,ここでちょっとまとめて,○○幹事から。

 

 

  •  では,可能な範囲でお答えいたします。

 

まず,受益権取得請求につきましては,受益者集会であればかかるのに,書面その他の方法ではというお話があったかと思いますが,我々の考えでは,いかなる方法をとろうとも,取得請求権は強行規定としてかかるという理解でおりますので,受益者集会だったら取得請求権があるのに,ほかの方法だったらないということはあり得ないというふうに考えております。

 

 

次に,書いていない事項があったときにどうなるかと。我々としては一応網羅しているつもりでございますが,もし漏れている事項があるとすれば,御指摘を是非,また後日でもいただきたいのですが,基本的に自由に信託行為で設計できるという前提をとりますと,そもそも受益者集会の事項にするかどうかが信託行為で定められればいいということになりますので,漏れている事項があるとして,それを受益者集会の対象とするかどうかというのも信託行為で決めていただければいいのではないかというふうに思っております。

 

 

 

それから,いわゆるみなし賛成で,これは,兼営法にあるものですとか,投信法とか,いろいろな法律があるかと思いますが,かねてより問題になっていたところでございましたが,現在の我々の考えといたしましては,そこをどのような方法をとるかというのも,あくまで多数決を前提として,そのもとでの方法というのは信託行為で定めればいいということですので,多数決の前提である上で兼営法のみなし承認のような規律を設けることも,信託行為で定めれば可能であるというふうに,現時点では考えているところでございます。

 

 

 

 

 

 

 

それから,議決権について,一人1議決権よりは,受益権の持分で決める方がいいのではないかというような御指摘が,デフォルト・ルールの定め方としてありましたが,その不都合というのは,例えば受益者全員の一致が必要とされる場合,仮にその持分が,ほかの人は全部1万円だとして,一人だけ1円だという場合でも同一といたしますと,その1円の人がノーと言えば権利行使は認められないということになるとやはり不都合であって,一人1票とする方が合理的ではないかというような考え方に基づいたものであるという点を答えさせていただきます。

 

 

 

あと,取消権の行使について,これは御質問というよりは御意見ということでございますが,確かに,なるべく違法な行為を取り消した方が監督権の行使に資するという観点も全くそのとおりかと思います。

 

 

 

ただ,監督権の行使の方法としては取消権が一番ドラスティックではございますが,その他に,例えば,利益吐き出しはともかくといたしまして,損失てん補ですとか原状回復というような方法もありますので,そのような方法は単独として認めております。

 

 

 

更にその取消権についてもプラスアルファ単独にすべきかどうかというところについては,いろいろな考え方があるかなという,直感的にですが,そういう気がしております。

 

いずれがいいかというのは,ちょっとまだ分からないというふうに言わせていただきます。

 

 

 

あと,受益者名簿を一部隠していいかどうかというのは,余り検討していなかったところでございますが,少なくとも現在言えますのは,⑦の請求によって必要と認められる限度を超える請求が行われたときは,見せないことができますので,受益者ごとに区切って,Aの受益者の受益者名簿だけ見ればいい場合には,Bのところは目隠しをして,Aの部分だけ見せればいいということは可能というか,そうすべきであると。A,Bとも見せないのではなくて,少なくともAは見せなければいけないが,Bは隠すことはできるということになると思いますが,更にAで例えば名前だけ見せて住所は隠すとか,そういうのができるかというと,それでこの受益者名簿の閲覧請求権を認めた趣旨にかなうのかという点,疑問がないわけではございませんが,まだ未検討でございますので,御指摘を踏まえて,今後検討させていただきたいと思います。

  •  ほかに。

 

 

 

  •  その他の方法によってということが,取得請求権を逃れるようなことができるかという話を御質問したわけですが,それは強行法規だからできないという話なのですが,そういたしますと,例えば,31ページの(3)からの説明の中で反対受益者の取得請求権云々という議論というのは,これはいわゆる1の(2)の,「その他の方法」というところの記述でもあるということで,そうしますと,その「その他の方法」の中で,ほかの受益者集会の規範というのも,「その他の方法」の類型の自由な決め方の中にやはり強行法規的なものが入ってくる余地があるということでございますか。

 

 

 

 

  •  はい。どの限度で強行法規かというのはともかくとして,どのような方法をとったとしても,それはやはりそれによって,例えばその方法によって変更されて実質的に害される受益者がいれば,反対受益者が取得請求権を行使できるという点,コアの部分は強行法規であると。方法にかかわらないというふうに考えています。

 

 

 

  •  一言で言うと,1の(2)の「その他の方法」というのは,完全なデフォルト・ルールではないと。

 

 

 

  •  そう定めることはデフォルト・ルールですが,その内実として,受益権や取得請求権がかかるというところは強行的であるという考え方でございます。
  •  そうすると,私の意見としては,それもデフォルト・ルールにしていただきたいというのがあります。

 

 

 

  •  第49について発言させていただきたいと思いますが,受益者が複数の場合の意思決定方法として受益者集会制度を導入するということは,特にディールを中心とする日本の信託の現状を考えると,大変適切な方向ではないかと思うのですが,ただ,説明の中でも出てまいりますように,例えば,「契約自由の原則を踏まえて」という箇所が何か所か出ておりますけれども,この受益者集会による意思決定というのは本来契約の限界があるところから出てきているわけで,あらかじめ事前に決めることができないから,どう決まるか分からないけれども,こういう方法で決定しましょうという制度ですので,契約自由のアナロジーでこの集会制度を規律するというのは,やはり非常に疑問があると思っております。

 

 

すみれ

「たしかにですね。」

 

 

もう少し具体的に申しますと,例えば手続的な規定,それから情報に関する規定,それから,少数派あるいは反対派だけではなくて,そもそも出席しなかった人も拘束されるわけですので,そういう人も決議に拘束されるような合理的な手続,情報,それから少数派,反対派,あるいは参加しなかった者の保護について,かなりの強行法規がないと,逆に受益者保護のための受益者集会制度が本来の趣旨に反するものになってしまうのではないかという気がいたします。

 

 

特に,そういう観点からいたしますと,種類受益者集会制度のようなものはやはり強行規定として定めておく必要があるのではないかと考えております。

 

 

 

逆に,会社法の方でも,株主総会の決議の瑕疵を争う訴訟というのは,会社法上争われている類型で最も訴訟が多い。

 

 

そういう意味では非常にトラブルになりやすい面があるかと思います。

 

 

そういうときには,やはりある程度きちんとルールを定めておいて,逆に決議の効力についてはある程度の効力を高めるという方向も一つあり得ると思いますので,強行法規性を認めるかわりに決議の効力について少し安定的な制度にするといった選択肢も一つあり得るのではないかと思っております。

 

 

 

それから,受益権の取得請求権についてですけれども,これも本来,受益者による意思決定によって,より健全かつ効率的な信託の運営を目指していると思いますので,取得請求によってかえって信託の基礎が揺らいでしまったり,信託がうまくいかなくなるということになったのでは,これはもう元も子もない話ではないかと思います。

 

 

 

そういう観点からすると,やはり受益権の取得請求というのは,やはりよほど限られた限定的な場合にのみ認められるものであって,本来の趣旨,集団的な意思決定によって恐らく合理的な決定がなされるだろうと,こういう決定を可能にする限りにおいて限定的に認めるべきではないかと思っております。

 

 

それから,第50の方の受益者名簿について,一言だけ申し上げさせていただきたいと思います。

 

 

受益者名簿を必ず作成しなければならないということは,特に受益者集会制度を採用していない信託においてはないと思うのですけれども,そのときは,逆に,受益者に対して一定の情報を通知するための公告についての何らかのルール,あるいは信託についての何らかの情報を伝えるための仕組みについて検討する必要があるのではないかと。

 

 

逆に,受益者名簿を作るのはコストがかかると思いますけれども,そういった公告等もなかなか大変な場合もあるかと思いますが,最近はIT化の進展等で,ホームページ等も利用してそういった公告を行うということもあり得ると思いますので,その後には柔軟に考えることができるのではないかと。

 

 

受益者名簿は,そういう意味では必ずしもつくらなければいけないというものではないというふうに私も思います。

以上,ちょっと長くなって恐縮ですけれども,3点についてコメントさせていただきました。

 

 

 

 

 

 

 

  •  この受益者集会というのは,確かに合理的な意思決定をするための制度としてつくられているので,そこが契約自由で何でも自由になって,かえって合理的な意思決定ではないということになると,意思決定自体が効力を争われる可能性が出てくると,そういう御発言だったと思いますけれども,それなりに重要な御指摘だと思いますね。

 

 

これもまだ幾つか検討すべき点が残っていると思いますので,今のような御指摘も踏まえて考えていきたいと思っています。

 

 

 

それから,第48でしたか,甲案,乙案というのが出ていまして,これも,今までのところ,両方の御意見が出ております。

 

 

こういう二つの案が出ているところについては,いずれだんだん集約して決定していかなくてはいけないわけで,今日は時間が余りありませんので,皆さんの御意見を伺うということはいたしませんけれども,基本的には皆さんの御意見を伺いながら,それに沿いつつ決まっていくということだと思いますので。ここは審議会ですから。ということで,皆さんの御意見を積極的に御発言いただければと思います。

 

 

 

本来,もう一つセッションが残っているのですが,今日は途中でいろいろ時間をとってしまったために,全部予定どおりできませんでしたけれども,これで終わりたいと思います。

 

 

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すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。らんの花ありがとうございます。」

 

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