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2016年加工編 法制審議会信託法部会 第6回会議 議事録
2016年01月14日

2016年加工編

法制審議会信託法部会

第6回会議 議事録

 

 

 

第1 日 時  平成16年12月3日(金)  自 午後1時00分

至 午後5時00分

 

第2 場 所   法務省第1会議室

 

第3 議 題

信託法の見直しに関する検討課題(4)について

 

第4 議 事   (次のとおり)

 

 

 

議    事

 

  •  それでは,1時になりましたので,法制審議会信託法部会を開催したいと思います。

今日もたくさんのテーマがございますので,適宜区切って説明してまいりたいと思いますけれども,これについて,では,○○幹事からお願いします。

 

 

  •  それでは,今日の進行についてでございますが,まず,全体を六つに分けてやりたいと思います。1番最初は,受託者の解任・辞任等に関する前回の積み残しの問題があります。

 

続きまして,資料で言いますと第40,第41になりますが,受託者が欠けた場合の取扱いと受託者の交代の問題をやらせていただきまして,3番目に,第44でございますが,信託財産の管理人の問題を扱いたいと思います。

 

 

 

そのあたりでいったん休憩といたしまして,4番目に,受託者が複数の信託の問題,5番目に,受託者が倒産した場合の問題,最後に,委託者の問題と遺言信託の問題ということで,全体を六つに分けてやりたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

 

 

それでは,早速,受託者の解任・辞任の問題,それから合併・会社分割による受託者の変更問題について,概要を御説明したいと思います。

 

 

まず,第37でございますが,これは,受託者の解任・辞任及び新受託者の選任に関する提案でございまして,提案内容は信託法制研究会報告書の記述とほとんど変わるところはございませんので,簡単にその趣旨を再び申し上げたいと思います。

 

 

 

 

 

まず,1ないし4というのは,受託者の解任に関する提案でございます。

 

このうち,1ないし3というのは,受託者を交代させるためにいったん信託本体を終了させてしまうというのでは余りにもロスが大きいということから,特約のない限り,委託者と受益者の合意をもって,理由の有無いかんを問わず受託者を解任できることとし,解任された受託者に損害が生ずれば,別途その損害はてん補するとしたものでございます。

 

 

2というのは,このような受託者の損害のてん補につきまして,委任に関する民法651条2項の規律に倣ったものでございます。

 

もっとも,ここで言います「不利な時期」ですとか「損害」の意味につきましては,民法の解釈上もいささか判然としないところがあるようでございますので,ここでは,民法の解釈に委ねるべく,民法651条2項の文言をそのまま引用するにとどめているところでございます。

 

 

最後に,4でございますが,このような合意による解任ができない場合に備えまして,受託者がその任務に違反したことその他重要な事実があるときにおける委託者又は受益者の解任請求権を認める現行法47条の規律を維持したというものでございます。

 

 

 

次に,5でございますが,これは,受託者の辞任に関する提案でございまして,信託は受託者に対する信頼関係を基礎といたしますので,受託者が勝手に辞任することができないとするのが委託者及び受益者の意思に合致すると考えられます。

 

 

現行法43条,46条におきましては,受託者が辞任できる場合というのを3点,すなわち,信託行為に別段の定めがある場合,受益者及び委託者の承諾がある場合,それから,やむことを得ない事由があるために裁判所の許可を得た場合に限っておりますが,提案におきましてもこの規律を維持したものでございます。

 

 

 

最後に,6,7でございますが,これは,新受託者の選任に関する提案でございます。

 

現行法49条は,利害関係人が裁判所に対して新受託者の選任を請求することができると規定しております。

 

 

提案では,7におきまして現行法49条の規律を維持することとした上で,私的自治の観点からは,裁判所の関与を経ずとも,委託者及び受益者の合意によって新受託者を選任することが可能であるということを明らかにすべく,その旨を6で明文化したものでございます。

 

 

 

 

続きまして,第38の「合併又は会社分割による受託者の変更について」という提案について簡単に御説明いたします。

 

 

まず,受託者たる会社が合併した場合につきまして,現行法42条1項によりますと,「受託者タル法人カ解散シタルトキ」に当たり,受託者の任務が終了することとされております。

 

 

しかし,会社の合併の場合には,新設合併であれ,吸収合併であれ,消滅会社の契約上の地位は存続会社にすべて包括承継されることになるわけですので,消滅会社の方が受託者であった場合においても,契約上の地位である受託者の任務が合併により消滅してしまうと解する必要はなくて,やはり存続会社の方に包括承継されて引き継がれると解すればよいものと考えられます。

 

 

そこで,1の第1文では,このような考えに基づきまして,現行法を改める規律を設けることを提案するものでございます。

 

 

 

 

 

 

また,現行法につきましては,株式会社であった受託者が会社分割され,信託財産が設立会社あるいは承継会社の方に移転された場合におきまして,受託者たる地位はどうなるかが明らかではございません。

 

 

しかし,この点につきましても,会社分割は合併の場合に類似しまして,被分割会社の営業を新会社に部分的包括承継させるものでございますので,新会社に移転される営業の中に信託が含まれている場合には,受託者の任務もこれとあわせて新会社の方に包括承継されるものと解すればよいものと考えられます。

 

 

 

そこで,2の第1文で,このような考え方を明記した規律を設けることを提案するものでございます。

 

 

なお,受託者の合併の場合であれ,会社分割の場合であれ,信託行為自体は,受託者が変わるということ以外には変わりございません。

 

 

すなわち,信託財産は,信託の併合の場合のように信託行為自体が変更されて他の信託財産と統合されてしまうわけではなくて,あくまで独立性を保ったまま新たな受託者のもとに承継されるにすぎないものでございます。

 

 

したがいまして,信託財産のみを責任財産とする債権,つまり受益債権ですとか前回の会議で説明いたしました有限責任債権につきましては,合併又は会社分割自体による信託財産の承継によってその利益を害されるものではないと考えられます。

 

 

そこで,1及び2のそれぞれ第2文とアステリスクの2のとおり,これらの債権につきましては,商法上の債権者保護手続の対象とはならないというふうにしたものでございます。

 

 

もちろん,受益者の有する債権でありましても,いわゆる受益債権ではなくて,受託者の固有財産に対する損害賠償請求権のようなものにつきましては,商法上の債権者保護手続の対象となるものと考えられます。

以上でございます。

 

 

 

  •  それでは,第37と第38について,いかがでしょうか。いずれも,受託者がいわばそこで交代するというような場面ですが。

 

  •  それでは,第37,第38について,2点申し上げたいと思います。

まず,1点目の第37の受託者の解任・辞任のところの受託者の解任についてでございますが,解任について信託の終了の要件と一致させるということについて,これがまあ自然だろうと。

 

 

それと,この規定は当然任意規定ということでございますので,受託者の承諾というのを要件の一つに入れてもいいということもございますので,基本的には原案に賛成というのが多数ではございますが,一方で,現行法において,解任というのが,任務の懈怠があって,任務の違背があって,なおかつ裁判所の許可が要ると,そういう状況のもとで解任されるということと,あと,今回の規律で第40の4の解任されたときの受託者の権利義務のところの書きぶり等を見ますと,ほとんど何もできないような状況になっていると,そういうところから,ちょっとある程度心象的なところなのですけれども,もともと終了するよりも解任の方が非常に重いのではないかというような意見もありまして,そういった意味合いで反対するという意見であるとか,あと,経済的な効果でいきますと,例えば,信託財産に対して補償請求権を持っているような場合に,信託財産を売却してそれに充てようというような状況のもとで,いきなり解任されてしまいましたと,そういうようなときに,信託財産管理人が選任されるまでの間の,例えば信託財産が相場物であったような場合については変動リスク,そういうのを負う可能性があるということで,ここについてもちょっと慎重な検討をいただきたいというような意見がございました。

 

 

 

ただ,前半に申し上げたように,多数的な意見としては,原案でいいのではないかというようなことでございます。

 

 

 

次に,第38の合併又は会社分割による受託者の変更のところでございますが,合併と会社分割の際に受益債務が商法上の債権者保護の対象とならないこと,この部分につきましては,実は私自身,会社の合併と分割,両方とも経験いたしておりまして,この部分で非常に悩みまして,兼営法と信託法と商法,この関係というのがよく分からなかったということで,いろいろな解釈論を立ててやっていったのですが,そういうことがこの規律によってすべて解消できるかなということもありまして,非常に実務に即した有り難い規定だなというふうに考えております。

 

 

 

 

それとあわせまして,ここでアステリスクの1と2に書いてありますように,減資のときとか法定準備金の減少の際の問題であるとか,信託の有限責任の債務についても同様の規律を是非とも入れていただきたいというふうに考えております。

 

 

それと,本席の議論にはなじまないことかもしれないのですけれども,この規律がもしも入れられるとしますと,当然,業法と兼営法というのが変わってくると思います。

 

 

その際に,あわせて--今は,信託兼営銀行,要するに銀行と呼ばれるところが営業譲渡をやるときの話なのですけれども,現行の銀行法からいきますと,営業譲渡のときには商法の債権者保護手続と同じような手続をしなさいというふうになっているのですね。

 

 

実際に,譲渡する営業の対象になっている分については多分更迭の手続になるのだと思うのですが,営業譲渡の対象になっていないところの営業に係る債権の債権者であるとか,営業を譲り受ける方の債権者であるとか,それに対しても債権者保護手続をとりなさいという規律になっておりまして,ここで言われているような規律が採用されるというふうになりますと,ここの部分についても,同様の理屈で債権者保護手続というのは必要でなくなるのではないかというふうに考えておりまして,多分この信託法の中に入れるというのはそぐわない話だと思うのですけれども,この点についてもちょっとテークノートしておいていただけたらなと思います。

 

 

 

 

 

  •  第37の方に関しては,今の御発言に少しありましたように,従来の規定との比較で言いますと,信託の終了と受託者の解任というのは少し違ったルールになっておりまして,今回,それを終了の方に少し合わせている。

 

 

そうしますと,解任に関しましては,受託者からすると従来より解任されやすくなっているというところがあるわけですね。ここら辺をどう見るかというのが一つの問題だということです。

 

 

それから,第38の方は,これはちょっと,債権者保護手続の対象としないところがポイントなわけですが,今の御指摘にありましたように,兼営法とか銀行法とか,いろいろなところと関連しておりまして,問題自体は非常に複雑なところがあるのだろうと思います。

 

この辺についても,いろいろお詳しい方がおられると思いますので,もし御意見をいただければと思いますが,いかがでしょうか。

 

 

番人

「家族信託では不要だと思うけど、受託者の変更の日付に影響を与える定め、添付書類に影響を与える定めは信託目録への記録が必要だね。受託者変更の登記が受理されるように。」

 

 

  •  今の点に詳しいということではなくて,細かいことなのですけれども,第37の解任・辞任のところで,2の規定で,不利な時期の解任の場合に損害を賠償しなければいけないという部分ですが,これは,先ほど,民法の考え方に委ねるというような御説明をいただきました。

 

 

36ページの下の方に,2の趣旨として,受託者が報酬を頼りにしている場合というのを最初に挙げておられるのですけれども,民法の解釈としては報酬の定めとは切り離しているのではないかなと思います。

 

 

信託法の教科書の中では報酬と結びつけているのもありますが,恐らく民法の考え方からいくと,委任の不利な時期というのと報酬の支払いというのは別のことではないかと。

 

とりわけ,第36の「報酬請求権について」というところの3の(2)で,中途終了の場合に割合的な報酬が支払われるということもございますので,ここで報酬を最初に出してくるというのはかえってミスリーディングではないかという気がいたします。

 

 

 

 

 

 

  •  確かにそういう面がありますね。

 

  •  補足いたしますが,確かに資料には報酬が前面に出ておりますが,私が口頭で説明したところでは一歩引いているというのは,○○委員からも御指摘がありましたが,例えば,信託の教科書を見ますと,信託行為において受託者に対して一定期間報酬を支払うべきことを定めた場合に,その期間中に信託を解除したときは,委託者や相続人は受託者に対し損害賠償として残存期間に対する信託報酬の支払いをしなければならないというようなコンメンタールの記載ですとか,あるいは四宮先生の教科書にも,受託者の損害として,報酬の減少というのが例として挙げられているのですが,他方,「注釈民法」などを見ますと,有償委任であっても,その中途解約の場合に,不利な時期における解除の損害賠償として報酬を請求し得るものではないというふうに解されておりますので,そういうこともあって判然としないというところで,民法の規定に委ねるということにしたいと思っておりますので,この点は,御指摘のとおり,報酬を前面に出すことについては控えるべきかなと考えております。

 

 

 

  •  ほかに,いかがでしょうか。

 

  •  私もそれほど詳しくはないのですけれども,○○委員がおっしゃられた点についてちょっとつけ加えさせていただきますと,金融機関の場合の破たん処理の中で受託者が交代するというときに考えなければならない法律として,預金保険法132条の信託業務の承継における受託者更迭手続の特例ということがございます。

 

 

これについても,同じく,あわせて検討しておく必要があるのではないかというところをちょっとテークノートしていただきたいというふうに思います。

 

 

  •  先ほど,銀行法とか,そういうほかの法律との関係のことを指摘されたわけですが,私もよく分かりませんけれども,信託法でここに書いてある債権者保護手続の対象にしないということがどういうインパクトを持つのかというのは,恐らくここではなかなか決めかねるのですかね。

 

 

やはりそちらの,銀行法だったら銀行法の解釈の問題として解決されるのではないかという気がいたしますけれども,どうなんでしょうか。むしろ○○委員がこれは一番お詳しいし……。

 

 

  •  多分,商法のところを修正するために今回の信託法によって規律されるというのは修正が可能だと思うのですけれども,当然,銀行法という一つの特別法のところを信託法でもって修正というのはできないことだと思いますので,基本的には,銀行法であるとか--多分,業務上の問題からすると,兼営法のところで特例を認めていただいて,ここにあるような規律で,受益債務についてはその対象としないというようなことの規律を設けていただくのが,一番有り難い方法ではないかというふうに思います。

 

 

 

 

 

 

  •  それでは,ほかに,今の第37,第38はよろしゅうございますか。大体御賛同いただけたということでしょうかね。

それでは,先に行きましょう。

  •  それでは,先ほど御説明いたしました順序に従いまして,第40と第41,受託者が欠けた場合の取扱いと受託者の交代についての説明に移らせていただきます。今回お配りした資料でございます。

 

 

まず,第40の方でございますが,これは,受託者が欠けた場合の取扱いに関する提案でございまして,現行法で申し上げますと42条2項ですとか45条に相当する規律についてでございます。

 

 

なお,報告書では,信託法48条の信託財産管理人の選任に関する規律もここであわせて提案しておりましたが,この部分については,第44においてまとめて御提案することとしたいと考えております。

 

 

まず,1の(1)でございますが,これは,受託者の死亡,解散,破産手続の開始などによりまして受託者の任務が終了した場合には,現行法42条2項の趣旨を維持しまして,新受託者,信託財産管理人又は信託財産法人の管理人が事務の処理をすることができるようになるまで,相続人,清算人,破産管財人等に信託財産の保管及び引継ぎに必要な行為をする義務を課すものでございます。

 

 

これは,受託者の任務終了によりまして信託財産に不測の損害が生ずることを回避するため,いわば緊急避難的に保管義務を課すものでございます。

 

 

すみれ

「新しい人がくるまで少し時間がかかるから、止まることがないようにしよう。家族信託が終わっても困るし。」

 

 

 

次に,1の(2)でございますが,これは,相続人等が信託財産の保管等のために支出した費用につきましては,新受託者,信託財産管理人又は信託財産法人の管理人に対して請求することができることを規定したものでございます。

 

 

なお,信託財産管理人等は,その固有財産で責任を負うものではないと考えられますので,このような費用償還請求につきましては,信託財産のみをもって負担することになると考えております。

 

 

次に,2でございますが,これは,現行法44条は削除するという提案でございます。

 

特定の資格を有する者を受託者とすることとされた信託におきましては,受託者となった者がその資格を喪失したときにはその任務が終了するということになりますが,これは,信託行為において受託者の任務終了事由を定めたものと解すれば足りると考えられるからでございます。

 

 

 

なお,信託行為にそのような定めがある場合につきましては,次の3の規律によることとなります。

 

3と4でございますが,これは,1の(1)に該当しない場合,すなわち,辞任ですとか任期の満了,解任などによりまして受託者の任務が終了した場合には,信託財産を管理する者が不在となる事態を避けるために,新受託者等が事務の処理をすることができるようになるまで,前受託者に引き続き信託財産の管理をさせるものでございまして,現行法45条の趣旨を維持しつつ,その適用を拡大したものでございます。

 

 

ただし,4でございますが,解任の場合には,前受託者に信託財産の管理を行わせることは望ましくないという事情もあると思われますので,その権利義務を,信託財産の保管と信託事務に関する計算及び信託事務の処理を行うのに必要な事務の引継ぎというこの3点,2ページの4の①から③のものに限定して弊害が生じないようにしているところでございます。

 

 

なお,この第40の提案全般に言えることでございますが,共同受託者の一人又は数人についてその任務が終了した場合におきましては,ここで言う「受託者が欠けた場合」には該当しないものとしております。

 

 

その場合には,前受託者が有する信託に関する権利義務は他の受託者に帰属することになるからでございます。

 

 

ただし,提案では,これはあくまでデフォルト・ルールでございますので,他の受託者が前受託者の権利義務を承継しないということも,信託行為でその旨を定めればあり得ることになるわけでございますが,その場合につきましては,後ほど第41にて改めて説明いたしますが,結論的には,ここでの規律に準じた取扱いをすればよいのではないかと考えているところでございます。

 

 

 

 

 

 

では,続きまして,第41の受託者の交代の方に移らせていただきます。

 

 

第41でございますが,これは,受託者の交代に伴う信託財産の帰属,権利義務の承継,事務の引継ぎ等に関する提案でございまして,現行法では50条から55条に相当するものでございます。

 

 

基本的には現行法の趣旨を変更するものではなく,むしろ,現行法の規定からは明らかではない点を明確にしようとするものでございます。

 

 

まず,1でございますが,これは,受託者の全員につきまして任務が終了した場合の信託財産等の承継に関する規律を提案するものでございます。

 

 

まず,(1)でございますが,受託者の任務終了事由が生じた後,新受託者が選任されるまでの間の信託財産の帰属者を明確にするものでございます。

 

現行法50条1項を見ますと,新受託者が選任されたときに,前受託者の任務終了時にさかのぼって前受託者から新受託者に信託財産が承継されたこととしております。

 

 

この規律は,新受託者が選任される限りにおいては特段の問題を生じさせないわけですが,前受託者の任務終了事由が生じた場合に必ず新受託者が選任されるとは限りませんので,例えば新受託者が選任されないまま信託が終了するということもあり得るわけでございます。

 

 

そうしますと,前受託者の任務終了事由が生じた後に信託財産がだれに帰属するかについて明確にする必要があると考えるものでございます。

 

 

現行法では,前受託者の任務終了後に信託財産がだれに帰属するかにつきまして明文の規定を置いてはおりませんが,先ほど言いました50条1項の規律からいたしますと,新受託者が選任されるまでは前受託者に信託財産は帰属しているものと解するのが自然であると思われます。

 

 

もっとも,前受託者が死亡したという場合には,もはや前受託者,死者に信託財産が帰属しているとすることは適当ではないと思われますし,かといいまして,受託者の相続人に信託財産が帰属していると解することも,信託財産が前受託者の相続財産に含まれないという原則に照らせば,適当ではないと考えられます。

 

 

そこで,(1)では,信託財産は,新受託者が就任しない限り前受託者に帰属することを明らかにするとともに,前受託者が死亡したという場合には,相続人のあることが明らかではない場合における相続財産の規律を参考にいたしまして,信託財産をもって法人と擬制するということにしております。

 

 

 

次に,(2)でございますが,これは,(1)ただし書によって存立した信託財産法人につきまして,新受託者が就任したときには,当初から存立しなかったとみなすものでございます。

 

 

もっとも,このように当初から存立しなかったものといたしますと,信託財産法人の管理人,すなわち信託財産法人の機関として信託財産の管理権限を行使する者の行為の効果が信託財産に結局帰属しないということになると解されかねないおそれがございます。

 

そこで,新受託者が就任するまでの間に法人の管理人がその権限内で行った行為は,新受託者が就任したとしてもその効力を失わないということにしたものでございます。

 

 

 

なお,報告書におきましては,信託財産法人の管理人の制度の詳細についてはなお検討事項としておりましたが,信託財産法人の管理人というのは,受託者が不在の間における臨時の信託財産の管理者であるという点におきまして信託財産管理人と共通する性格を有すると言えますので,6ページのアステリスクの1に記載しておりますとおり,その権限義務等につきましては,後ほど説明いたします信託財産管理人と 同様にすることを提案するものでございます。

 

次に,(3)でございますが,これは,新受託者が就任した場合には,前受託者の任務が終了したときにさかのぼって新受託者は前受託者より信託に関する権利義務を承継したものとみなすと規定するものでございまして,現行法50条1項の趣旨を維持するものでございます。

 

 

ところで,現行法は,新受託者が前受託者から承継する対象を信託財産としておりますが,前受託者が信託事務処理に当たって第三者と締結した契約についての契約上の地位ですとか信託債務についても承継の対象となるということを明確にするために,「前受託者より信託に関する権利及び義務を承継」するものと書いているところでございます。

 

 

ここで「信託に関する権利及び義務」としておりますのは,前受託者が固有財産のみで有し,あるいは責任を負担する権利や義務は承継しないということを含意しているものでございまして,例えば,いわゆる受益債務であれば,新受託者が承継する対象に含まれると思われますが,損失てん補債務のように前受託者がその固有財産のみで負担する債務は含まれないと考えております。

 

 

また,当然のことではございますが,前受託者が固有財産として有します補償請求権や報酬請求権も承継の対象には含まれないと考えております。

 

 

 

なお,資料12ページの(注2)に記載してあるところでございますが,新受託者というのは,当然に,すなわち契約上の地位の譲渡とは異なりまして,取引相手方の同意がなくても前受託者の地位を承継するということになりますと,受託者の契約の相手方の権利を害することにもなりかねません。

 

 

この点は,後に説明いたします3の規律で提案いたしますように,新受託者が選任された場合にも,前受託者は任務終了時までに生じた債務については新受託者と併存的に負担するとすることによって,かなりの程度解決されることになると思われます。

 

ただ,継続的な取引契約における当事者の地位も当然承継されるといたしますと,取引の相手方に想定していない不利益を強いることもあり得ると考えております。

 

 

例えば,無限責任の信託取引で,特に受託者の信用力を当てにしていてもやむを得ないと言えるような場合など,取引相手方を特に保護すべき事情がある場合には,受託者が交代したことをもって取引の相手方に解除権や損害賠償請求権が生じるというような規律を設けるという考えもあり得るかと思われますが,この点につきましては特に御意見を賜れればというふうに思っております。

 

 

 

 

 

 

 

続きまして,2でございますが,これは,受託者が複数の信託におきまして受託者の一部の任務が終了した場合の規律に関するもので,現行法50条2項の規律をほぼ維持しております。

 

 

ただし,次のような原則,すなわち,共同受託者の一部の者の任務が終了した場合には,当該者が受託者として有する権利義務は,任務の終了していない方の受託者に帰属し,任務の終了していない他の受託者のみで信託事務を処理するという原則,このような原則を画一的に適用いたしますと,その任務の内容いかんによっては,他の受託者に酷な場合等の不都合が生ずるおそれがあると考えております。

 

 

そこで,2におきましては,信託行為に別段の定めを置くことができるものといたしまして,現行法に比して柔軟に対処できるように手当てしております。

 

 

ここで言う信託行為の別段の定めといいますのは,例えば,信託行為の定めによりまして共同受託者のうちの特定の受託者が信託財産の単独名義を有するとした上で,信託財産の名義を有する受託者の任務が終了した場合には,任務の終了した受託者から新たに就任する受託者に直接信託財産の名義を移転することを定めるというようなことですとか,あるいは,職務分掌の定めのある信託におきまして,一方の受託者の任務が終了したとしても,他方の受託者がその任務を承継しないことを定めるというようなことが考えられます。

 

 

ポリー

「不動産の場合、付記登記により合有登記名義人変更登記で他の受託者の名義になるのですね。信託目録の受託者の表示も変わりますね。」

 

 

なお,この後者のような定めを設けた場合でございますが,これは,資料13ページの(注3)というところに書かせていただいておりますが,共同受託者のうちの一人の任務が終了した場合,例えば,運用を行う受託者と保管を行う受託者とがいる場合におきまして,保管を行う受託者の任務が終了した場合には,後任の受託者が選ばれるまでのいわばつなぎ役を務める者,今の例で言いますと信託財産の保管をすべき者を定めておく必要があると考えられるところでございます。

 

 

この点につきましては,先ほど第40の最後で述べましたように,第40の規律を準用することが適当だと考えておりますが,この点につきましても御意見をいただければと考えております。

 

 

 

次に,3でございますが,これは,受託者の交代時におきまして前受託者及び新受託者が負担すべき責任の範囲などについて提案するものでございます。

 

(1)でございますが,これは,前受託者の任務終了時に現に存した債務のうち固有財産でも責任を負うものにつきましては,受託者の交代後も前受託者が債務とともに責任も負い続けるというものでございます。

 

 

また,前受託者が共同受託者の一人である場合には,前受託者が固有財産でも責任を負担していた部分の債務については引き続き責任を負い続けるというものでございます。

 

 

(2)でございますが,これは,前受託者の任務終了時に存在する信託財産に属する債務につきましては,新受託者は信託財産の限度において責任を負うとしたものでございます。

 

 

以上申しましたものは,いずれも現行法52条3項の規定の趣旨を維持するものでございます。

 

 

 

 

 

 

なお,今申し上げましたことのいわば反対解釈といたしまして,前受託者の任務終了時には存せず,任務終了後に生じた債務,例えば利息債務ですとか所有者責任による債務,あるいは信託財産管理人の負担した債務などにつきましては,これは新受託者が固有財産で負担するというふうに考えております。

 

 

新受託者は,その就任に当たりまして,信託債務の存在を認識して引き受ける以上は,その負担を課しても酷ではないというふうに考えるからでございます。

 

 

次に,4は,前受託者の費用,損害の補償又は報酬の支払いを受ける権利に関するものでございます。

 

(1)及び(2)では,前受託者に費用,損害の補償又は報酬を支払う必要がある場合には,例えば,任務終了前に費用を支出し,損害を受けたものの,その補償を受けていない場合ですとか,任務終了後に信託債務の弁済を行った場合ですとか,こういう場合におきましては新受託者又は信託財産管理人等から補償を受けるというふうにしているところでございます。

 

 

なお,現行法第54条1項を見ますと,前受託者が補償請求権又は報酬請求権に基づいて信託財産に対して強制執行できるというふうに規定してるわけでございますが,このような規定がなくても前受託者は新受託者に対する債務名義を取得いたしまして,新受託者の所有に係る信託財産に執行することができるというふうに考えられるわけでございます。

 

 

また,現行法におきましては,受託者の任務終了後は補償請求権の優先権は失われると解されておりますが,信託財産に関する補償請求権の優先性の根拠は,支出者の属性ではなくて,債権の発生原因そのものに求めておりますので,前受託者の補償請求権の信託財産に対する優先権は任務終了後においても効力を維持すると考えております。

 

 

 

番人

「支出者の属性ではなくて、債権の発生原因か。誰がお金を出したかじゃなくて、何に出したかってことかな。」

 

 

次に,(3)でございますが,これは前受託者が補償請求権等を行使するために前受託者に信託財産の留置権を認めるものでございまして,現行法54条2項の規律を維持するものでございます。

 

 

すみれ

「留置権て、土地に座ってても良いってことかな。」

 

 

それから,(4)と(5)でございますが,これは前受託者が受益者から補償を受ける権利の行使に関するものでございまして,受益者に対する補償請求権の有無ですとか,あるいは受益者に対する補償請求権行使の順序につきましては,先日御提案申し上げました補償請求権一般に関する規律と同様の規律を提案しているものでございます。

 

 

最後に,5でございますが,これは,前受託者の任務終了後における計算義務,それから事務の引継ぎを行う義務,みなし承認及び承認の効果などにつきまして提案しているものでございます。

 

 

現行法55条との違いは,まず,引継ぎの相手方として新受託者のほか信託財産管理人を加えたこと,受益者の立会いを要しないとしたこと,それからみなし承認に関する規律を新たに設けたということがございます。

 

 

すみれ

「受託者変更の時に、受益者の立会いが必要だったんだ。」

 

 

なお,この規律の対象となります前受託者というのは,先ほど説明申し上げました,辞任若しくは任期の満了等により任務が終了した前受託者又は解任により任務が終了した前受託者というものを考えております。

 

 

これに対しまして,42条2項の規定する信託財産の保管義務者,相続人ですとかそのようなものですが,そういう者にも計算義務があるとの解釈も存します。

 

 

しかし,このような臨時の信託財産保管義務者の行う計算と,前受託者の課された計算義務における計算の範囲・程度は異なると考えられます。

 

 

すなわち,臨時の信託財産保管義務者の行う計算は,前受託者が残した資料,信託財産から残存信託財産の内容の報告程度で足りると解されるのに対しまして,前受託者の行う計算は,当初の信託財産から事務引継ぎに当たり引き渡す信託財産への変遷が明らかになるようなもの,すなわち,過去の事務処理までさかのぼって信託取引の内容が明らかになるようなものまで作成することを要し,そのような内容の報告であればこそ,計算承認に責任解除の効果が付与されてしかるべきであると思われるからでございます。

 

以上で終わります。

 

 

 

 

 

 

  •  なかなか複雑な部分でございますけれども,いろいろ理論的には問題がありますので,御議論いただければと思います。

 

 

簡単に言えば,要するに,受託者が交代するときに,すぐ新しい受託者がそこで選任されれば,それでもいろいろ複雑な問題がありますけれども,そう問題はないのですけれども,すぐに新しい受託者が選任されるとは限らず,前の受託者と新受託者の間に一定の期間があると,そんなことからいろいろ複雑な問題が生じているということでございます。

いかがでございましょうか。

 

 

 

  •  第40の4について,先ほど○○委員も軽く触れられたことでございますけれども,それに敷えんしてお話ししたいと思います。

 

ここで,受託者の解任の場合には,受託者の権利義務というのは3点に限られるということでございますけれども,この点についてもデフォルト・ルールでよいのではないかという意見を述べたいと思います。

 

 

 

実務のニーズにおいては,今後,信託業法の改正により受託者の担い手が拡大するものですので,そういうことを踏まえまして,やはり信託契約において,特に商事信託においては,あらかじめ第37の規律に従って解任のルールを決めておくことが考えられます。

 

 

例えば,受託者の格付が一定以下に下がった場合に受託者を交代させるということがあると思います。

 

 

すみれ

「格付けで受託者が交代したりするんだ。世知辛い世界だね。」

 

 

 

こうした場合に,実際には,予防的に,完全にその信任関係が崩れる前にある一定の解任をしておこうと。

 

 

その後,新受託者が選任されるまで,なお,解任を前提とするけれども,一定の受託義務ということはやらせておこうと,こういうニーズがあると思います。

 

 

特に不動産信託の場合には,修繕であるとか賃料の収受であるとか,考えようによっては保存行為あるいは改良行為も必要だと思いますけれども,それは間断なく実行される必要があると思います。

 

 

そこにおいて,もう一つ,管理制度というのがありますけれども,そこまで移行するのもまた実務的にも困難だと思いますので,そうしたときに ,新受託者がこの3点の行為しかできないということになると,やはり実務的に難しいのではないかというふうに思っております。

 

 

したがいまして,やはりここも,第37,理論的にも解任の手続自体がデフォルト・フォールになるわけですので,この解任の場合の受託者の権利義務,その残った受託義務についてもやはりデフォルト・ルールで任意に決められるということにしたらどうかというふうに思います。

 

 

  •  今のは,第40の4に関してですね。

ほかに。

よろしいですか,○○幹事。

 

 

  •  確かに,委託者,受託者がそれで合意していれば,これにプラスする方向というのはあり得ると思います。逆に,これを減らすというのはちょっと難しいということですので,片面的な強行規定といいますか,そういうことであれば,まあそれでいいのかなという感じがしております。

 

 

 

  •  ほかに,いかがでしょうか。かなりテクニカルな問題もたくさんあるのですが。

 

 

  •  第41に移ってよろしいでしょうか。

受託者の交代のところでございますが,基本的には,受託者の交代の規定をいろいろと盛っていただいておりますが,おおむね賛成の方向ということでございます。

 

 

その中でも,(注3),(注4)というのを,先ほど○○幹事の方からもお話がありましたけれども,職務分担型の共同受託が一般化してきたときには,こういうような規律が必要になるのではないかと思いますので,そういう方向でお願いできたらなというふうに考えております。

 

 

 

ただ,少数意見なのですけれども,ここの2のところの規律,それと,後のところで議論されることになっていますけれども,第43の共同受託のところの規律でございますが,この二つの部分は,現在ここで検討されております法改正の以前に設定されたものについては適用されないという形での整理をお願いしたいと。

 

そこについては多分経過措置の問題で,後になって議論されるのだと思うのですけれども,特にここの部分についてはそういう形での御対応をお願いしたいという意見もございましたので,あわせてつけ加えておきます。

 

 

  •  特に気になっている部分はどこでしょうか。今の場合。

 

  •  例えば,受託者が複数いて,それで解任になりましたというときに,その信託財産が--例えば,3人受託者がいて,一人が解任されましたと。
  • それが,その二つのところに信託財産が行くというのがデフォルト・ルールで,契約があればそれは別に構いませんよということなのですけれども,多分そういう契約体系に今はなっていないと思うのですね。

 

 

そうすると,いきなり新法ができたときにそういう状況になってしまうと,対応ができなくなるということではないかと思います。

 

 

  •  恐らく,それはそう対応すべきだと思いますね。

ほかに,この辺はいかがでしょうか。

 

 

 

 

  •  第40の1の(1)なのでございますが,そこに,引継ぎの事務処理をする人として,受託者の相続人,清算人,破産管財人,成年後見人又は保佐人というのが並列的に並んでいるわけですが,破産管財人というのは,今まだ御説明いただいていない第42とか第39のところとも密接に関連しますし,そもそも破産管財人について第三者性というのを認められると仮定しますと,例えば信託財産に公示がないといったときに,成年後見人や相続人は,公示がないことを理由にして,この財産は信託財産でないというふうに言う権利は持っていないと思うのですが,それに対して,破産管財人というのは持ち得るわけですよね。

 

 

 

もちろん,解釈論として,持ち得ない,やはり破産管財人もそのまま受託者の権利義務を引き継ぐだけであって,仮に公示が欠けていてもそのことについて主張はできないのだというのもあり得るかもしれませんが,それは恐らくは一般的な破産法のほかのところの解釈と整合性が出なくなると思うのです。

 

 

そうなりますと,破産管財人というのはもうここの第40から外してしまって,別の,受託者の破産の特別な条文というところに入れ込んだ方がいいのではないかという気がするのですが。

 

 

ちょっと私が十分に理解できていないだけかもしれませんが。

 

 

  •  確かに,破産管財人というのは受託者のその他の債権者の利益を代表するところでもあり,ただ,事実上信託財産を管理しやすい立場にもある,そういう意味でちょっと二面性があるわけですね。確かに,おっしゃるのも一つの……。

 

 

 

  •  なお考えなければいけないと思いますが,現段階では,今の○○幹事のような解釈論はむしろとらないということになるのではないかと思います。

 

 

破産管財人が第三者性を持つのは,破産財団を管理する機構としての地位であって,ここではそうではなくて,いわば事務処理を引き継ぐというのですか,保管し,引継ぎに必要な行為をするだけの地位ではないかと思いますので,換価して清算する対象ではない財産について第三者性はないというふうに解釈することになるのではないでしょうか。

 

 

 

  •  恐らく受託者のそういう事務を引き継ぐわけですが,しかし,同じ破産管財人が,受託者の債権者の利益というか,破産管財人としては利益を代弁しなければいけないというので,○○幹事が例を挙げられたように,信託財産について公示がなかったときにどういう行動をとるべきかと,そういうところが恐らく問題なのだろうと思いますけれども。

あるいは,○○幹事の方で何か。

 

 

 

  •  確かに,破産管財人は事務の引継ぎとかをする義務があるわけですが,恐らく,最初に○○幹事がおっしゃった趣旨は,公示がないものについてどうするかという御趣旨かと思いますので,そうすると,やはり,私もそんなに破産に詳しいわけではないのですが,公示がない財産については,破産管財人はそれを破産財団だと主張することが,受託者の債権者の利益を代弁するという立場からはあり得るのではないかという気がいたしますので,やはり第三者性というのは否定できないような気がいたします。

 

 

 

そうしますと,これは第42の1のところで破産管財人については特出しして規律を書いているわけでございますが,この中では唯一,このような二面性のある立場に属する者だということで,特別に規律を特出しするという考えもあり得るかと思うところでございますが,まだ事務局の中で,この破産管財人を特別に別途規律すべきかどうかとかいうところまで詰めているわけではございませんが,直感的にはそういう印象でございます。

 

 

 

  •  恐らく,この第40でもって積極的に第三者性を否定したというわけではないということなのですね。

 

ですから,○○幹事のような--○○幹事御自身の積極的な御意見ではないのかもしれませんけれども,仮に第三者性を否定するということがあったときに,それで破産との関係は大丈夫なのかということはどうでしょうね。

 

  •  受託者の管財人が第三者性を持つのは,受託者の固有財産が破産財団になって,それとの関係だと思うのです。

 

信託財産というのは,要するに実質的には自分のものではないわけですから,ここに書いてあるとおり,正に保管をし,事務の引継ぎに必要な行為をするだけであって,人の財産を預かっているだけですから,その局面では第三者性の問題は出てこないのではないかと思うのです。

 

先ほど申し上げたのはそういう趣旨なのですが。

 

ですから,矛盾するところではない,つまり,この原案のままでも別に構わないのではないかというのが,私の今日の段階での理解ですけれども。

 

 

  •  前のときにちょっと議論がありましたが,破産管財人というのは一方的に受託者の固有債権者の利益ばかり図ってはいけないのであって,中立的な立場にいなければいけないとすると,例えば,今,○○幹事のおっしゃるのは,公示がなくても,それが信託財産である以上は,これは信託財産だというふうに認めなければいけない,いや破産財団だなどという主張をしてはならないという趣旨が破産管財人に課されていると。

 

 

 

 

 

 

  •  そうです。固有財産の中で対抗要件のないものが相手方にあれば,それは第三者として頑張らなければいけない義務を負うわけでしょうけれども,信託財産を保管,引継ぎするための必要な行為をするだけだったら,これはただ受託者としての事務の引継ぎをやっているだけではないかと,そういう理解になるのではないでしょうか。

 

 

  •  実は,私,現行法の解釈論については,今,○○幹事のおっしゃったものと同じ立場をとっているのですが,必ずしも私がそう思っていることをみんなもそう思っているということではなかったような気がするのですね,現在。

 

 

私の解釈論の基礎というのは,相続人,清算人,管財人,後見人と,こういうふうに並べられていて,一人だけ第三者で,そもそも公示がないときに信託財産性というものを否定できるというのはおかしくて,ただ単に受託者の義務を引き継いでやるだけだろうと,それが並行に並んでいるのだろうというふうに私は現行法は解釈しているのですけれども。

 

 

いずれにせよ,そのあたりのところは現行法の解釈論として明確になっていたわけではないような気がいたしますので,そういうふうなあいまいなものをそのまま引き継ぐよりも,第三者性を否定するのか--「第三者性」という言葉がいいかどうか分かりませんけれども,公示がないと,公示の欠缺というものを主張し得ないというふうに解するのか,それとも,やはり主張し得るというふうに解するのかというのは,これを機会にやはり明らかにしておいた方がいい問題ではないかというふうに思います。

  •  それは確かにそうですね。

 

 

 

 

 

  •  私も,○○幹事の方の感覚に賛成します。

やはり信託法というのは,こういう利益相反的な状況あるいはそのおそれがある場合に対して敏感であるべきであって,○○幹事の言うことも分からないではないですけれども,結局,本当のところで問題になるのは,これは信託財産である,固有財産であると頭の中でクリアに分かれて,しかもそれが現実にはっきりしている場合は何の問題もないでしょうけれども,現実には,これはどうなんだろうという話が問題になってきたときに,あんたどうするのと言われるわけですよね。そのときに,こちらの利益もある,しかしこうやってこういう立場もあるというのが正に利益相反的な状況なので,やはりそういうのを一緒に並べておくのはいかがなものかという感触です。

 

 

 

 

  •  ほかにも何か御示唆をいただければ。

確かにそういう両面はあるのですけれども,現実問題としては,恐らく破産管財人に事務を引き継がせるということは必要なんだと思いますけれども,そのときのルールですね,どういう考え方に基づいて,破産管財人としては何をしなくてはいけないか,その指針を明らかにするということだと思いますが。

 

 

条文にするときに,破産管財人については別にするということももちろんあり得るし,ここら辺は,また事務局の方で検討してもらうということでよろしいでしょうか。

 

 

  •  実質に関することはなくて,複数の規定相互間の関係についての理解をお伺いしたいというものであります。

 

先ほどいたしました第38の合併又は会社分割における受託者の変更と,今の第41の受託者の交代の関係について,少しお伺いさせてください。

 

 

第38の方は,任務を承継するというのが基本的な考え方になろうかと思います。

 

 

そして,第41の方は,任務がいったん終了し,新たな任務を新しい受託者が負うという形で対比・対照できるのではないかと思います。

 

しかし,第41の方も,信託行為の変更がない限り,新受託者が負う任務は旧受託者が負っていた任務と基本的に同一の内容になるのだろうと思います。

 

 

しかし,そこを,旧の任務は終了し,新の任務が新たに成立というか,発生というか,創設されたと考えることの具体的な意味が何かあるかどうかということを伺えればと思います。

 

 

それは単に,第38の世界では,第41の新受託者への事務の引継ぎ等,あるいはその前提としての新受託者の選任が必要ない,そして,特に分割の場合では受託者の法人格が変わるわけですが,そのときに新受託者への事務の引継ぎ等がないということを意味していると考えれば足りるのか,それとも,それに加えて,一つの任務が承継されるのと,いったん任務が終了して新たな任務が成立するという第38と第41との違いが何かもう少し実質的な意味を持つのか,お教えいただければと思います。

 

 

  •  なかなか難しいですね。

○○幹事御自身はどうお考えですか。

 

 

  •  私は,同じなのかなと。

そうすると,任務が承継するというのは,第38のところで一つ強調していただいたところですけれども,それ自体は,任務が終了しないということを意味しているにすぎないのかなと感じたところですが,いかがでしょうか,○○幹事。

 

 

 

  •  おっしゃったように新受託者の選任云々ということだと,債務の承継なんかが,場合によっては,包括承継ですと全部移転するのが,この受託者交代の規律ですと有限責任の限度しか承継しないというようなところが違うのかなという気がいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ,我々が前から分からないのは,この受託者の交代というのはいわゆる包括承継なのか特定承継なのかというところがちょっと分からなくて,もし特定承継だったら,登記の問題とか第三者性の問題が出てきますが,包括承継でしたら,例えば登記をしなくても二重譲渡の問題等は生じないので,もしも包括承継的に受託者のことを考えるのですと,微細な点は違うとしても,おっしゃるとおり,余り第38の規律とは違ってこないと。

 

 

むしろ,そこら辺をどう考えているのかというところを教えていただければと思っているところです。

 

 

番人

「んー。合併は包括承継で、死亡、辞任、解任は特定承継って感じがするけど間違ってるかな。」

 

 

  •  引き続き考えてきます。ちょっと今はよく分かりません。

 

  •  ここら辺は余り議論の蓄積があるところではないので,むしろ,これからどう考えていったらいいかという観点から御議論いただければと思いますけれども。

 

  •  これも質問で,申し訳ありませんが,先ほど,恐らく○○委員のお話の中に営業譲渡の話が少し出てきたと思うのですが,信託財産を含む営業譲渡を信託銀行なり信託会社がするときは,これは第41の世界で考えると。

 

 

  •  そうですね。任務終了して,新たな受託者と,そういうことになります。

 

  •  そして,そのときに信託財産とか権利義務とかを移転するけれども,それが特定承継なのか包括承継なのかというようなことが……。
  •  それはそういうことですね。

 

ただ,恐らくそれは民法上の債務引受け,債権譲渡と同じような話なので,そう考えると,特定承継なんでしょうかね。

 

でも,特定承継だと,対抗要件を具備していなければいけないんでしょうか,前受託者から交代した新受託者は。

 

 

そうしないと,前受託者から譲渡を受けた人に対抗できないとかいうことになるのも不自然な気もいたしまして,よく分からないところでございます。

 

 

  •  ちょっと違う話ですけれども,第41の「受託者の交代について」のところで,4の「前受託者の補償を受ける権利等」というところ,これは多分,前の受託者の受益者に対する補償請求権のところとも同じ議論がここで持ってこられて,甲案,乙案というふうに7ページの方で分けられていると思うのですが,書きぶりが若干違うので,その辺,何か異なって扱う趣旨があるのかという質問なのですが。

 

 

例えば,この(5)に,「(4)の権利は,(1)又は(2)の権利を行使することによっても補償を受けられない場合に限り,行使することができる」というふうに書いてあって,12ページのこの説明の方を見ますと,12ページの上から7行目ですか,「新受託者等が信託財産を責任財産とする補償請求に応じない場合」という書き方になっているのですね。

 

 

ですから,この応じないとき,責任財産として信託財産があるのだけど補償請求に応じないよという場合も含まれてしまうような書き方になっていて。前のところでは,「弁済に不足する」とか,そういう条件だったと思います。この辺はいかがでしょうか。

 

 

 

  •  ちょっと私は気がつかなかったけれども,そんなに違える趣旨はなかったかと思いますけれども,どうですかね。

 

 

  •  (5)の書きぶりですが,ここが書きぶりが違うというのは,実は事務局でも少し感じてはいたところでございますが,さほど積極的な理由でもないのでございますけれども,一般的な補償請求権の局面では,信託財産の維持を図るべき待機義務というものもかかっておりますので,より受益者に行きやすくしてあげた方が受託者のためではないかと。

 

 

しかし,この局面では,もはや信託任務が終了しておりますので,より受益者に行ける場合を限定していいのではないかというようなニュアンスで考えているところでございまして,繰り返しますと,信託継続中の補償の方がより受益者に対しても行けてしかるべきではないかということをにおわせていると言えば言えるということでございます。

 

 

 

 

 

 

 

  •  余り別に解しない方がいいかなというのが私の意見でございます。

 

  •  別にというのは,どちらかにそろえるという意味ですか。それとも,積極的にどちらかにそろえた方がいいと。

 

  •  それは,前の補償請求のところの記載の方が受益者に行きにくいのではないですか。

 

  •  前は,「補償請求権の弁済に不足する場合,又は弁済を受けることができなくなる蓋然性が高い場合に限り」ですから,危なっかしかったら行けるという意味で言えば,より行きやすいのです。

 

  •  受けられないというのは,もっと厳しいということですね。

 

  •  判明しないとだめなので,厳しいです。

 

  •  では,さっきの補償請求に応じないというのは,あれはまたちょっと違うと。

 

  •  そこら辺の書きぶりは余り詰めていませんが。
  •  そういう意味では,○○委員の御意見は,こちらにそろえた方がいいと。

 

  •  そうです。

 

  •  ほかに,いかがでしょうか。--よろしゅうございますか。

あるいは事務局の方で,この点は是非聞いておきたいという点がありますか。

 

 

  •  先ほど申し上げました(注2)のところでしょうか,かつての研究会でも議論になりましたが,当事者が交代したときに,相手方の,特に継続的契約取引の相手方に対して何らかの保護措置を与えるべきか。

 

 

一般的な有限責任取引であれば,受託者が変わったからといって保護してやる必要は乏しいと思うのですが,特に信託の受託者の資力を当てにして契約をしていたような状況が認められるときには,何らかの,解除権とかが発生するという考え方をとる余地があるかどうかというあたりの御意見がもしあればというふうに思っているところでございます。

 

 

  •  私は,一般的なルールにゆだねておいていいのではないかなという印象を持ちました。

 

 

特に,受託者の固有財産を当てにしているのであれば,それに対応するような特約なりを結ぶという方法もあるでしょうし,そういう特約を結んでいない場合に,受託者が交代したという場合であっても,一般的な,例えば期限の定めがない場合には,解約申入れをするとか,あるいは不安の抗弁を主張するとかということで対応できるかなと思います。

 

 

それからもう一つは,特別の契約類型を切り出すということは実際上はなかなか難しいのではないかなという印象を持ちまして,結論としては,一般ルールにゆだねていいのではないかと思います。

 

 

 

  •  もう一つは,13ページの(注3)のところで,先ほど○○委員もおっしゃっていましたが,共同受託者のうちの一人の者が任務を終了したと。

 

 

そうすると,名義は当然,残りの方に行きますが,任務についても行く,しかしそれが酷な場合については任務は行かないということで並立はしておいて,しかし,ここの(注3)の提案では,そういう場合には,事務引継ぎをする者は,第40の規律のように,例えば前受託者がそのままとりあえずやるとか,あるいは共同受託者の一人の者が破産した場合には破産管財人がやるとか,そういう規律を持ってきてはどうかということを提案しているところでございますが,それについてはこのような考え方をとるということで,特によろしゅうございますでしょうか。

 

 

 

 

 

 

  •  まあ,そんなに不合理なルールではないと思いますので,特に御反対がなければ……。では,そういうことにいたしましょう。そういうことにいたしましょうというのは,皆さんの大方の賛成は得られたということですね。

では,次に行きましょうか。

 

  •  では,続きまして,信託財産の管理人の説明,第44に移らせていただきます。

 

 

 

信託財産管理人とは,受託者が欠けた場合におきまして受託者のかわりに信託財産を管理する者を言いますが,現行法のもとでは,信託財産の管理人を選べる場合というのが限られておりまして,一つは,46条で,受託者の辞任を裁判所が許可した場合,それから47条で,裁判所が受託者を解任した場合,それでこれらの場合には,裁判所は受託者がいなくなったことが分かりますので,裁判所が職権で信託財産管理人を選任するとしております。

 

 

この規律に対しましては,信託財産管理人の選任を今の二つの場合に限定することは信託財産保護の観点から狭きに失するのではないかという指摘ですとか,あるいは,信託財産管理人の法的地位につきましては特に規定がありませんので,その地位が不明確ではないかという批判がございます。

 

 

 

ところで,信託がこれからますます使われるようになりますと,受託者が欠けることも今より増えることが予想されますので,一時的な信託財産の管理者として信託財産管理人の必要性も高まることが予想されます。そこで,信託財産管理人に関する規律の整備を提案したものでございます。

 

以下,簡単に各提案内容を御説明申し上げます。

 

まず,1でございますが,これは,信託財産管理人が選任される場合について検討したものでございます。

 

この選任につきましては,大きく分けて3点ほど,現行法の規律を改めておりまして,その3点といいますのは,一つは,受託者の任務終了事由に限定を設けず,信託財産管理人の選任余地をずっと広げたということ,第2点といたしまして,受託者の全部が欠けた場合だけではなくて,一部が欠けた場合にも選任の余地を認めたこと,3番目に,職権で裁判所が選任するのではなくて,利害関係人による請求があった場合に選任されるとしたことでございます。

 

 

 

 

特に,第2点目の,受託者の全部だけではなくて,受託者の一部が欠けた場合にも信託財産管理人の選任の余地を認めたという点について御説明いたします。

 

 

先ほどのお話にも重複してまいりますけれども,第41の2で提案いたしましたとおり,共同受託者の一部が欠けた場合には,欠けた受託者の権利義務は残りの受託者が引き継ぐことになるのがデフォルト・ルールでございます。

 

 

しかしながら,信託行為によって運用を行う受託者と管理を行う受託者が定められている場合などには,残りの受託者に対して欠けた受託者の事務を引き継がせることが,信託財産保護の観点から適当ではない場合も想定されるところでございます。

 

 

そこで,受託者の全部が欠けた場合ではなくて,一部が欠けた場合にも,信託財産保護の観点から必要があると認められるときには,裁判所が信託財産管理人を選任できることを明らかにしたものでございます。

 

 

なお,受託者の一部が欠けた場合,全部が欠けた場合に信託財産管理人の選任の余地を認めるということにつきましては,これは任務が終了した場合を前提としているわけでございますが,信託財産の保護の観点から言いますと,信託財産管理人を選任する必要があるのは必ずしも受託者が欠けた場合に限られないと考えられるところでございます。

 

 

このような観点から,33ページのアステリスクの1と,38ページの(注1)というところでございますが,ここで,受託者の任務が終了した場合だけではなくて,「受託者の一部又は全部について,職務を執行することが困難又は不適当な者がある場合」,例は38ページに三つほど詳しく書かせていただきましたが,そのような場合にも,信託財産管理人が選任される余地を認めてはどうかという点について考え方を示しているところでございまして,このような考え方の当否について,是非とも御意見を賜れればというふうに思っているところでございます。

 

続きまして,2でございますけれども,これは,信託財産管理人の権限について検討しているものでございます。現行法では信託財産管理人の権限が明確ではございませんので,その点の明確化を図ろうとするものでございます。

 

 

信託財産管理人は,新たな受託者が選任されるまでの間,受託者にかわって信託財産を管理処分する者ですので,信託財産管理人の権限は任務が終了した受託者と同一であるとすることが適当だと考えられるところでございます。

 

 

しかし,他方で,信託財産管理人は暫定的に置かれるものであり,しかも,受託者とは異なりまして,その固有財産では責任を負わないなどの違いがありますので,前受託者と同一の権限を自由に行使できるとすることは相当でないとも考えられます。

 

 

そこで,2の(1)におきましては,信託財産管理人は 前受託者と同一の権限を有するとしつつも,民法103条の定める権限,すなわち,「保存行為」ですとか,「目的タル物又ハ権利ノ性質ヲ変セサル範囲内ニ於テ其利用又ハ改良ヲ目的トスル行為」,このような行為を超える権限を行使する場合には裁判所の許可を受けなければならないとしております。

 

 

 

 

また,信託財産管理人が選任されますのは,前受託者や受託者の相続人等に事務処理を委ねることが適当ではないという場合ですので,選任された場合におきましては,前受託者等が有していた権限は信託財産管理人に専属するということが相当であると考えられます。そこで,(2)におきまして,このような趣旨を明らかにしているところでございます。

 

 

 

 

さらに,現行法上は,信託財産管理人が選任された場合の信託財産に関する訴訟の帰趨が明らかではありませんので,(3)におきまして,信託財産に関する訴えにおきましては,信託財産管理人が選任されれば,その者が原告又は被告になるということを明らかにしております。

 

 

 

次に,3でございますが,これは信託財産管理人の義務について検討するものでございます。

 

信託財産管理人は,新受託者が選任されるまでに置かれる臨時の受託者としての性格を有しますので,信託財産管理人が負う義務につきましては原則として受託者と同様であるとすることが相当であると,先ほども申し上げたところでございます。

 

 

しかし,他方で,33ページのアステリスク3に記載いたしましたとおり,信託財産管理人は裁判所によって選任され,信託財産の所有者にはならないなど,受託者とは異なる性格を有しますので,例えば,信託財産管理人が第三者に対してその事務を自由に委任できるとすることは相当ではないと考えられます。

 

 

番人

「登記は入るんだね。信託目録の受益者の定めも。」

 

 

そこで,40ページの(注6)に記載いたしましたとおり,信託財産管理人がその職務をかわって行う者を選任するためには裁判所の許可を受けなければならないというふうにしております。

 

なお,このほかにも,受託者と異なる規律を設ける必要があるか否かにつきましては,なお検討したいと思っておりまして,その趣旨は,38ページの上の方に書いてあるとおり,例えば利益取得行為の禁止に関する義務を課さないこととしてはどうかとか,こういうことを今後検討していきたいと考えているところでございますが,何か御指摘があれば,是非とも賜りたいというところでございます。

 

 

続きまして,4でございますが,これは,信託財産管理人がその職務を行うため必要と認めるべき費用については,信託財産の中からその前払い又は支出額の償還を受けることができるといたしまして,また,相当な報酬につきましても信託財産の中から受けられるというように,規律の明確化を図っております。

 

 

また,信託財産管理人の任務終了事由につきましては,40ページの(注7)に書いてございますけれども,受託者の許可辞任,すなわち裁判所の許可を得ての辞任に関する規律に準じた辞任の規律,それから解任,これは受託者の解任と同じような並びでございますが,そのような規律を設けるほか,その臨時的な地位にかんがみまして,新受託者が正式に選任された場合にも任務が終了するというようなことを定めて,規律を整備していきたいと考えているところでございます。

 

以上でございます。

 

  •  それでは,信託財産管理人というのについて,いかがでしょうか。

 

  •  1の「信託財産の管理人の選任」のところでございますが,現行法と比較いたしまして,許可辞任のときであるとか,解任を許可したとき,それ以外のものにも認めるということについては賛成だと。特に,受託者の一部が欠けた場合にも認めるということについては,結構使い勝手がよくなったのではないかなというふうに 考えておりまして,賛成いたします。

 

 

それと,先ほど○○幹事からもお話がありましたが,アステリスク1のところの,「受託者の一部又は全部について,職務を執行することの困難又は不適当な者がある場合にも」認めると,こういう場合も結構出てくるのではないかと思いますので,これについても是非ともお願いしたいというふうに考えております。

 

 

 

すみれ

「どういう場合を想定しているのかな。」

 

 

それと,これは法定化する話では全然ないのですけれども,こういう規律が法定化された際には,信託財産の管理人の選任というのをより迅速にするというようなことが一番重要ではないかと思いますので,直接は関係ないのですけれども,是非ともお願いしたいと思います。

 

 

  •  現在は余り使われることはないんですかね。これからこうやって少し広げると,それなりに使い方が便利になってくると思いますので,更に一層使われるようになりますが,そういうことを考えたときに,こういう権限ですとか義務ですとか,こういうことでいいのかどうかというあたりの御感触をいただければと思いますが 。

 

 

 

  •  権限や義務の本体の問題ではなく,33ページの1のアステリスクの1で書かれている点なのですけれども,こういう対処が必要な場合も出てくるかなという気はしているのですけれども,(注1)のところで,38ページ以下に挙げられております例えば第1の例や第3の例,第1ですと,受託者にやむを得ない事情が生じて,自らは職務を遂行できないという場合,あるいは,辞任するような事情があるのだけれども,その手続に時間がかかって,やはり自ら職務をとれないというような場合は,現行法のもとですと,やむを得ない事由があるということで,他人に事務を委託するという形で処理をしていたのではないかと。

 

 

 

それは,受託者の責任において選任と監督を行う形で対応していたということになるかと思うのですけれども,そういうふうにこの信託財産管理人を入れるということは,そこの部分を,受託者の選任・監督の責任のもとに対応するということではなく,利害関係人のイニシアチブによって裁判所の選任・監督によるというものとするということを含んでいるのかどうか,その関係が少し気になっておりまして。

 

 

それとも,相変わらず受託者は本来自分で手当てをすべきで,そこが適切にされないと善管注意義務違反というような話になってくるのか,ちょっと整理として気になりますので,お考えを聞かせていただければと思います。

 

 

  •  信託管理人をだれのイニシアチブで選ぶかという,そういった基本的な原則に関連する問題かと思いますけれども。

 

 

  •  やはり,裁判所が選んだ場合には裁判所が監督することになるのではないかという気がしておりますので,信託財産管理人の場合には裁判所で,おっしゃったような委託の場合には受託者が選任・監督ということで,ちょっと主体は変わってくるというのが今の考えでございます。

 

 

  •  よろしいですか。

 

 

  •  ですので,現行法の下ですと,それも含めてすべて受託者の責任でやるというお話ではなかったかと思うのですが。

 

 

  •  だれが申立てをするかとか,そういう点ですね。特に,職務を執行することが困難,不適当であるという場合には,自分でやるのではなくて,周りの利害関係人が申し立てるという形になるので,言ってみれば,受託者本人からするとその意思に反してということもあるかもしれないし,そこら辺は少し難しい問題を含んでいるかもしれませんね。

 

 

 

  •  十分調べてはおりませんが,やはり,イニシアチブをとったのが利害関係人であるといたしましても,裁判所が選任している以上は裁判所が選任--まあ,選任は当然ですが--監督するのではないかという感じがいたしますけれども。

 

 

  •  その部分については何ら疑問を挟んでおりません。

 

 

  •  恐らく,現行法での信託財産の管理人というのは,そもそも今までの受託者というのが解任されたり,要するにもう受託者ではないという状態で選任されるので,これはもう利害関係人が選ぶので全く問題ないわけですね。

 

 

だけど,このようにアステリスクの1のように広げると,一応受託者として存続しているけれども,職務を行うことができないというので,自分が選んでほしいというのだったら問題ないけれども,そのときにほかの利害関係人が信託財産管理人を選んでくれと申し立てるということがどうかという,そういう問題ですね,○○幹事が言われているのは。

どうですか。

 

 

  •  一度検討して,後で御回答させていただきたいと思います。

 

 

  •  広げることによって少し新しい問題が入ってきたということは十分我々としても理解しているというふうに思いますけれども,ではどういうふうにしたらいいかということについてもうちょっと検討してもらうということにしましょうか。

 

 

 

  •  信託財産管理人の権限についてなのですが,また私が御説明を聞き落としているだけだと大変恐縮なのですけれども,これは,基本的に民法103条に定められた権限の範囲内でやればいいのだけれども,超えることもあり得るよねという話なのか,それとも,前受託者,任務が終了した受託者がやるべきであったことはすべてやるという義務があって,しかし,そのやるという際に民法103条の範囲を超える場合には裁判所に聞かなければならないという趣旨なのかということなのですが,仮に後者だとしたときに,果たしてそれは可能なのか,妥当なのかという感じがするわけでありまして,まず,可能なのかということから考えますと,信託の受託者の権限とか権限行使の態様というのは,この御説明の途中にも出てまいっておりますけれども,信託財産の所有権を有しているというところと密接に結びついているわけでありまして,例えば,信託財産を売却をするというときも自分の名前で売却するわけですよね。

 

 

しかるに,信託財産管理人というものはではどうやって売却できるのかというと,当然には代理権限が与えられているというふうには読めないような気もいたしますし,代理権限を与えられているというときも,ではだれの代理人なのかということになりますと,それもよく分からないのですね。

 

 

前受託者が例えば欠けた場合なんて考えますと,その前受託者の代理人というわけでもないといたしますと,これはよく分からない。そこらあたりのことについてどうお考えなのか,どう考えるべきなのかということをお教え願いたいというのが,1点。

 

 

 

2点目,簡単な話ですが,先ほど出ました38ページの(注1)の問題なのですが,第3というのは本当に可能なのかというのが,読んでいて若干気になるのですが。

 

 

つまり,受託者は同意がなければ辞任できないのだけれども,すぐに解放してやることが必要な場合もあると。

 

 

それはいいのですが,解放してやるという条文というのはあるのでしたっけ。つまり,私は同意がないから辞任できないけれども,解放を受けるだけの事情があるので,私はもうしなくていいというふうに認めてくれと言わなければ,その人は義務を負い続けることになるような気がするのですが,解放すべきときに解放するということが本当にできるのかということについてお教えいただければと思うのですが。

 

 

 

 

 

 

  •  ○○幹事の第1点と同じ点なのですが,1点だけ,○○幹事の御質問に追加して,私も一緒に,同じ問題ですので,聞かせていただければと思いますが。

 

 

私も,このただし書の制約が場合によっては信託の価値を毀損する場合があるのではないかと。

 

 

すなわち,103条に定められた権限ではやや狭過ぎる場合があるような気がいたしまして,この信託がいろいろな商事目的のようなものも含まれているということにかんがみますと,例えば商法の70条ノ2におけます業務代行者の権限のように,この商法の条文では「会社ノ常務ニ属セサル行為」という制限を付しておりますけれども,もし商事目的,様々な目的の信託があることを前提とするのであれば,通常の信託の当該信託事務の処理に属する行為かどうかという,そういう基準を採用することも考え得ると思うのですけれども,なぜ民法103条に定められた権限に限定しているのかというのを,○○幹事の御質問と関連して,ついでにお聞きできればと存じます。

 

 

 

  •  まず,信託財産管理人の権限の御質問の関係でございますが,ここはやはり原則として信託財産管理人がその前受託者と同一のことができるというわけではなくて,裁判所が命じた範囲でできるのであると。

 

 

ただ,それが103条に定められた権限を超える場合については初めて許可が要ると,こういうような考え方によっているところでございます。

 

 

民法28条の不在者の財産管理人と同じ規律と,あと現行法でも同じような解釈がとられているということでございますので,それに基づいてそのような制限を設けたということでございます。

 

それからもう一つ,○○幹事の方からありました任務の解放の話でございますが,これは,前受託者が解任された後,任務を解放されるためには,信託財産管理人の選任があってそこで初めて任務が解放されるということになるかと考えているところでございます。

 

 

 

 

  •  ○○幹事の御意見は,むしろ,こういう規定を置いても本当にできるのかというような御趣旨だったような……。

 

 

そもそも処分権限がない,というか,信託財産の帰属しない信託財産管理人に例えば処分をするということができるのだろうか,前受託者と同じようにと,そういうことですね。

 

 

単純に考えると,裁判所の許可によって,先ほどの○○幹事の挙げられた商法70条ノ2ですか--○○幹事と○○幹事とは,ちょっと方向が違うのですね。

 

むしろ逆なのですね。同じ問題を論じてはおられるけれども。

 

だから,こういうような規定が商法70条ノ2のような規定なのだと,まあ,それが適当かどうかは別として,そういうふうに考えれば,裁判所の許可によって特別に処分はできるようになるということなんでしょうかね。

 

 

 

  •  それによって処分権限のようなものが付与されるということですね。
  •  まあ,そうですね。

 

 

  •  信託財産管理人の権限は,先ほど言いましたように専属することになりますので,そこで責任を免れるということになります。第44の2の(2)で,「前受託者の権限は,信託財産管理人に専属」いたしますので,そこをもって切りかわるという趣旨でございます。

 

  •  よろしゅうございますか。

 

  •  私からは,権限に対応する義務についての質問をさせていただきたいのですが,権限の部分がぶれますと,それに応じてまた変わってくるという問題はあって,ちょっと連動していると思います。

 

 

お話しいただいた中で言いますと,33ページ及び38ページの上の方で,義務を若干軽減する可能性があるのではないかという点についてですが,考え方はよく分かるところではありますけれども,若干整理を幾つかしておく必要があるのではないかなと思います。

 

 

まず,権限の方で103条が一応ベースラインになりますと,保存行為あるいは性質を変ぜざる範囲での利用改良行為に仮に原則として限定されるとして,どのような場合にこの利益取得行為というのが考えられるのか,どういう例を想定してこのような形でお書きになっているのかというのをまずお聞かせいただきたい。

 

 

それから,もう一方では,「103条に定められた権限を超える行為をするには,裁判所の許可を得なければならない」となっていて,裁判所が必要と認めて,これこれこういうことをせよということが命ぜられた場合に,なおかつ義務はやはり軽減されるというお考えなのか,それはどういうふうに考えておられるのかというのがもう一つの質問です。

 

 

 

そして,一番最後に,恐らく一番よく考えておかないといけないポイントといいますのは,受託者の義務について新たな規定を置くというのが,そして具体的な内容としては忠実義務以下いろいろな御提案をしていただいているわけですけれども,これは信託の受託者固有の義務であって,信託の受託者以外についてはこのような義務が当然に当てはまるわけではないという考え方を恐らくは前提にしておられるのかなという感覚があるのですけれども,これはいろいろな考え方があるところでして,人の財産を管理する人間については一般的にこれこれこういう義務があって,信託法にはその考え方があらわれているというような考え方もあり得るであろうと思われます。

 

 

そうしますと,こういう形で,受託者とは異なる,若干義務を軽減するというようなことをもし書くとしますと,信託の受託者固有の義務というのはどの範囲で,それ以外については一体どういう義務が一般的にはあり得るのかということまで視野に入れて,軽減するかしないか,あるいはどこまでするのかということを考えていく必要があるのではないかなと思います。それが第3点目です。

 

 

 

 

 

  •  なかなか難しい問題ですね。確かに,原案は比較的区別してというのでしょうか,忠実義務とか信託本来の義務は受託者の義務であって,それ以外の例えば信託財産管理人になると,当然にはそういう義務が及んでこないという考え方ではあるのですけれどね。

 

 

  •  まず,利益取得行為はどういうものを想定しているかといいますと,例えば信託財産を保管している中で知った情報を利用して利得を得る行為ですとか,あるいは信託財産の処分行為をする過程で何らかのリベートを受け取るとか,そういう行為というのがあり得るのではないかという気がいたします。

 

 

それから,裁判所の命令を受けてやったときには義務が軽減されるのかということですが,裁判所の命令があった場合にはそういう行為をする権限及び義務が付与されるわけですが,それに基づいてやるべき注意義務がそれによって軽減されるという感じはいたしませんので,やはり,義務は付与されるけれども,やるべき注意義務の基準というのは変わらないのではないかという感じがいたします。

 

 

 

それから,もう一つおっしゃったのは,どこまで受託者の義務が信託財産管理人に付与されるか,これは正に我々がどこまでと考えたらいいのかなというところを皆様に伺いたいところでございまして,ここに書いてありますように,例えば自己執行義務といいますか,信託事務処理の委託に関しては,義務ととらえるかどうかはともかく,少し性質が違うのだろうなという気はいたしますが,忠実義務のようなものにつきましては,信託財産管理人といっても,基本的には受益者に対して忠実に義務を執行すべき義務があるでしょうし,善管注意義務もやはり当然,裁判所の選任によるとはいえ,かかってくるというような気がいたしますので,確かに受託者を念頭に置いて我々は義務を提案いたしておりますが,その多くのものは,信託財産管理人というのは臨時の受託者であるということにかんがみますと,及んでくるのではないかなという気がしております。

 

むしろ,どこを落としていいのかというところをお伺いできればというふうに考えております。

 

 

 

 

 

  •  これはまたアメリカの例の紹介なので,参考までにということなのですが,アメリカで,いわゆるフィデュシャリーという概念を立てておいて,受託者が典型ですけれども,それ以外の人,今お話に出たような人の財産を管理しているような人が一般的にフィデュシャリーだという話になって,ある判例があるのです。

 

 

それは遺言執行者なのですけれども,英米の相続制度だと,遺産をとりあえず遺産管理人あるいは遺言執行者のところへ預けるような形になっている。

 

 

それで,もちろん,その間というのは短期を想定しているわけですね。

 

 

すみれ

「英米の遺言預かりって半年とか1年とかだったっけ。」

 

 

その遺言執行者,遺産管理人は銀行が行うこともできますので,受託者が銀行になっている場合もあるので,同じように財産を預かっているよというのと比較ができるのです。

 

 

それで,これが問題になった判例というのがあって,そこでは,今,○○幹事がおっしゃったように忠実義務等の一般的な義務はかかってくる。

 

 

したがって,片方は利得を図っていいよという話はない。

 

 

ただ,受託者の方は,プルーデント・インベスター・ルールというので,今の考え方では,むしろ積極的な財産運用を--ただ持っていればいいよという話ではなくなっていますね。

 

 

やはり普通にプルーデントに,場合によっては財産を管理・運用もするのだと,そういう話がデフォルトで出てきていますけれども,こちらの一時的な預かりという人たちは,同じ銀行でも,本当に低利か何か,とにかくただ安全にという話で持っていればそれで十分だという話になっていて,そういう違いがあるということを明言している判決があります。御参考までに。

 

 

すみれ

「銀行も遺言執行者になることができるんだ。プルーデント・インベスター・ルール?」

 

 

  •  確かに,そういう臨時の財産管理人である信託財産管理人などについては今の遺言執行者と似たような地位にあって,積極的に財産を運用するというような義務は恐らくかかるべきではないので,おっしゃるとおりのところはありますね。

 

 

ただ,やはり問題は忠実義務,これは基本的に及んでいくのだというふうにしたときに,利益吐き出しの部分だけは違いますよと。

 

 

ここら辺は,感覚としては分かるけれども,理論的に説明しようとすると,どういうふうに言ったらいいかというところはもうちょっと詰めなければいけないのかもしれませんね。

 

 

 

  •  信託法のことだけ考えていればいいのかもしれませんけれども,仮に,ここで例として挙げられていますように利益取得行為の禁止については課さないとなりますと,例えば,他の領域,一番分かりやすいのは委任者ですね,これも,委任者についてはこのような形での利益取得行為の禁止というのがかかるのか,かからないのか,少なくとも利益の吐き出しというのは認められないということになるのか,あるいは法定代理人だったらどうなのかなどなど,こういう区別をすることによって何かほかの問題を考えるときの手掛かりになる可能性もありますので,少なくともそこまでよく考えた上で決めるべきだろうなと,そういう問題だということだけは申し上げて おきます。

 

 

  •  これは,○○幹事,何か一言あるんじゃないですか。

 

 

 

 

  •  いや,別にありませんが,○○委員が感覚的には分かるんだけれどねとおっしゃったのが感覚的には分からないなというのが私の感想だと。吐き出しは全員にかかるだろうなと。

 

 

 

  •  同じ責任といいますか権限といいますか,役割が小さいので余り重い責任を負わすべきではないというぐらいの感覚です。私も○○幹事と同じように,同じ責任だから同じようにかぶるのかなというふうにも思いますけれどね。

 

 

 

  •  全く同じ,その感想というところなのですけれども,先ほど,権限との関係がやはり重要だという御指摘があったと思いますけれども,利得禁止のところの利得禁止という行為規範自体は当然--利得禁止のところで挙がっていた話というのは,信託財産を活用して不当な利得を得るという話ですとか,わいろを取るとか,情報を利用するとか,そういうことだったと思いますので,そういうことをしてはいけないというレベルでは当然だと思うのですけれども,そもそも権限や監督等の関係でそういうことができる権限を与えられているのかというのと,かつ,これは裁判所の選任監督がかかって逐一許可にかからしめられるというような行動であるときに,こういうルールを必要とするような管理人なのかというと,そこがそうではないのではないかというところが,感覚的にということの内容なのかなというふうに私は理解しておりましたが。

 

 

 

 

 

 

  •  そもそも,そういう裁量権限の幅も狭いし,その範囲内でもって……。

 

 

  •  権限がなければ悪いことをしないというのは,極めてナイーブな発想に思えますが。チャンスがあるというだけで十分なわけですから。権限だけの世界なら信託法は要りません。

 

 

すみれ

「権限だけの世界なら信託法は要りません、か。」

 

 

  •  恐らく○○幹事が言われようとしたのは--私が代弁する必要はないけれども--この信託財産管理人は,少なくとも103条の範囲を超える行為については一々裁判所の許可が必要で……。

 

 

  •  だから,許可をとらないでやればいいじゃないですか。

 

  •  それは完全な違反の問題になって,そっちはその問題として処理すればいいということなのではないですか。

 

つまり,忠実義務などが典型的に問題になるように,一定の権限の範囲内なんだけれども受益者に損害を与えるような行為があったときに,それを忠実義務違反として一定の責任を負わせようと。

 

 

そもそも,そういう場面に至る前に,信託財産管理人については狭い範囲の権限しか与えられないので,権限の中でもって受益者の利益を害するような行為が行われるということがないのではないかということなのではないですか。

 

済みません,勝手な代弁をして。

○○委員がおっしゃることはもちろんそのとおりで。ですから,権限の範囲外のことをやればね。

 

 

 

  •  もしかしたら,私の方がナイーブに過ぎるのかもしれない。

 

  •  恐らくそんなに違うわけではないと思います,考え方として。

よろしゅうございますでしょうか。皆様のいろいろな御意見は大体分かったような気がいたしますけれども。

 

 

 

 

  •  済みません,事務局の方から,一,二点,教えてほしいことがあります。

 

信託財産管理人の権利義務の点につきましては,御承知のとおり,現行法の非訟事件手続法71条ノ6というところでは,委任の規定をむしろ準用してやっているわけでございますが,我々の提案では,受託者と同一の議論ということで,権利も基本的には受託者と同じ方向の権利ということになっておりまして,この点について何か御意見があれば,是非教えていただきたいという点がございますが,いかがでしょうか。

 

 

 

  •  委任の規定を準用しているというのは,受託者そのものではないので,やはり信託法のいろいろな権利義務が当然に及んでくるわけではないと。それで,一番近いのは委任だろうということで,委任になっているのですかね。

 

 

  •  だと思いますが。

 

  •  まあ,単純な委任よりは,やはり受託者に近づけてというような方がそこはいいような気がしますけれども,どうでしょうか。

 

 

  •  ○○幹事がおっしゃったことに関連して申しますと,委任の規定を準用することにしてしまうというのは,ソフトランディングなんですよね,恐らく。

 

 

受託者の規定を準用して何かを外すということになりますと,それは通常の管理人には適用されない規定なのだという何か実質的な判断をするということになるわけですが,委任の規定を準用するというのは,民法の委任の条文の解釈によるだけであって,それについては一切触っていないという話になる可能性があるのだと思いますね。

 

 

もう一つ,権限の範囲という問題はまた別個の問題としてもちろんあるわけで,委任の規定を準用したからといって権限の範囲が定まるわけではなくて,それは,その受託者の権限の範囲であるという規定はあったって,別に委任の規定を準用することの妨げになるわけではないと思いますが。

 

ある意味では議論を先送りするための一つの方法なのかなとは思いますが。

 

  •  そういう点もちょっとあるかもしれないですね。

まあ,もうちょっと検討するということでよろしいですか。

 

  •  もう1点,よろしいでしょうか。

 

最初に○○委員がおっしゃいましたことですけれども,欠けた場合だけではなくて,困難又は不適切な者がある場合についても認められるといいだろうというようなお話があったかと思いますが,そういう場合に,この注の中で書かせていただいております例えば職務執行停止・代行者選任の仮処分とか,そういうものとの重複ということがあり得るわけですが,それはどちらの方がよいというか,両方あった方がいいのか,何かそこら辺の御意見というか,御感触はあるのでしょうか。

 

 

 

 

 

  •  これは,信託の方のこういう新しい制度を設けると,一般的な制度である職務執行停止の仮処分とか,そういうのが排除される関係にはならないのでしょうね。

 

 

  •  それは,民事保全法がある以上はできるので。

 

ただ,民事保全法があるのだから管理人の処分は要らないというような考えもあるでしょうしと。

 

やはり,民事保全法だけでは足りないというか,要件がまず違いますので,権利関係に争いがあるとか,保全の必要性というあたりは違ってまいりますので。

 

 

まあ,必要性あたりは全くないのに信託財産管理人を選ぶということはないと思うのですけれども,要件が多少違うので,別に両方あっても問題はないということもあり得ると思いますが,何か,いい点,悪い点というか,御指摘があれば後日でも結構でございますので,また教えていただければというふうに思います。

 

 

  •  そうですね。実務的な感覚からの御意見をまた後でいただければと思います。

それでは,この点についてはこれでよろしいでしょうか。

それでは,ここで休憩にいたしましょう。

 

(休     憩)

 

  •  それでは,再開したいと思います。

最初に,先ほど来議論されていた何点かにつきまして,○○幹事の方から補足の説明があります。

 

 

  •  先ほど御質問がありました,○○幹事,それから○○幹事の関係で,事務局で休憩時間中に検討したことについて御回答したいと思います。

 

 

一つは,○○幹事がおっしゃったのは,私,先ほど十分に理解できなくて失礼いたしましたが,欠けた場合以外の,例えば職務を執行することが困難な事態について,例えば辞任する事情があるとか,解任する事情というときについて,現行であれば,第26条第1項で「已ムコトヲ得サル事由」がある場合に当たるとして,受託者が第三者を選んできて,しかし,その後,選任監督責任を負うはずであると。

 

 

しかし,今回の我々の提案であると,受託者は,こういうときに信託財産管理人の選任請求をすれば,あとは裁判所が選任監督の責任をとってくれるので,責任を免れるということになるのではないかと。

 

そうするとバランスを欠くのではないかという御趣旨だということで認識いたしまして,ここまでの私が申し上げたところは事務局と同じ考えでございまして,やはり受託者が選任請求をすれば,受託者はその後責任を免れるということになると考えております。

 

 

 

 

 

○○幹事の御質問の趣旨は,それが果たしてどういう根拠に基づくのかというところかと思うのですが,実はそこは,検討しましたが,なかなか名案が見つからないというところでございまして,果たして,第26条の規律による場合と,この信託財産管理人の選任請求による場合とで受託者の責任が違っていいのか,違ったとしてそれがどのような根拠に基づくのかというところにつきましては,もう少々時間をいただいて検討させていただければと思いますが,以上のようなことでよろしゅうございますでしょうか。

 

 

それから,先ほど○○幹事,それから○○幹事もちょっと関係してお尋ねがありました信託財産管理人の権限の関係でございますが,私は先ほどちょっと不正確なことを申しましたけれども,信託財産管理人の権限というのは,この提案にございますように,前受託者と同一の権限を有するということが原則でございますので,同じものを引っ張ってくるということになります。

 

 

ただ,それが,我々の提案では,103条を超えるようなものについては行使に制約がかかっている,裁判所の許可というような条件がかかっていると。

 

103条の範囲内であれば同じように権限行使していいわけですが,そういうものについては裁判所の許可を条件とする意味において,権限はあるけれども,その行使の仕方に制約がかかっているというような理解の仕方をしているということで説明し直させていただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。

 

 

  •  よろしいですか。

○○幹事,もし何かあれば。

 

 

 

 

  •  それで権限はよろしいのですが,その権限をフルに使って前と同じ状態を保つというのが信託財産管理人の義務なのか,それとも,103条に定められた権限を超える場合には裁判所の許可を得なければならないというところに端的にあらわれているように,基本的には保存行為だけを行って,どうしても必要な場合に103条を超えた行為を行うというのが行為規範なのかという点については,いかがでしょうか。

 

 

○○幹事は,それに対して,広く,前と同じような行為をさせるということが大切なのではないかというお立場を示されたわけですが。

 

 

  •  御質問の点につきましては,恐らく,権限がある以上は義務もあるというふうな考えに基づきまして,やはり前の受託者と同じような権限を行使すべき義務もあるのではないかという気がいたしております。

 

 

したがいまして,103条を超えるようなものをしなければならないということになりましたときは,裁判所の許可を得るべき義務も管理人は負うというふうに考えるところでございます。

 

 

 

  •  なかなか難しいところですよね。

基本的な考え方は,今,○○幹事の説明にあったとおりだと思います。

 

それで,この臨時的な,というのでしょうか,次の受託者が選ばれるまでの信託財産管理人の時期というのでしょうか,どのぐらいの間こういう臨時的な状態なのかとか,その間に従来と同じような信託行為ができないと--信託行為というか,受託者の行為ができないと信託財産に対して損害を与える可能性もあるし,そういう意味で基本的に前受託者と同じ権限をという考え方だというふうに理解しますけれども。

 

 

 

  •  一見すると重そうですが,利害関係人として嫌だったら,新受託者の選任請求をすればよいという気もいたします。そうすれば責任は免れます。

 

 

  •  まだ幾つか御意見があるかもしれませんけれども,一応,問題点といいますか,考え方はある程度明らかになったと思いますので,次のテーマの方に移ってよろしいでしょうか。

 

 

 

 

  •  では,続きまして,第43の「受託者が複数の信託に関する規律について」,いわゆる共同受託者といわれている問題でございますが,そちらの説明に移らせていただきます。

 

 

現行法で言いますと24条,25条に当たるところでございます。少々複雑ですので,ちょっとお時間をいただいて御説明させていただきます。

 

 

信託におきましては,1個の信託行為により複数の者が受託者として選任されることがあるわけですが,現行法では,受託者が複数の信託に関しましては,ただいま申しました2個の条文だけがあるわけでして,信託財産の帰属,事務処理の方法,受託者の責任について規定を置いているのみであって,十分であるとは言い難いところでございます。

 

そこで,受託者が複数の信託に関する規律の整備を比較的詳細に提案するものでございます。

 

まず,1でございますが,これは,共同受託の財産関係について検討しております。

 

 

 

 

 

信託財産は,受託者に所有権が移転しますが,受託者は信託財産を自由に処分できないなど,信託目的に拘束された財産であると言うことができるかと思います。

 

 

そして,受託者は信託財産に対して固有の利益を有していないと考えられますので,各受託者は信託財産に対して持分を有しておらず,その結果,各受託者は信託財産の分割請求をすることもできず,持分の譲渡もできないなど,共同受託者による信託財産の所有形態は,民法上の共有とは異なる性格を有すると考えられます。

 

 

このような内実を含む概念として,信託法上,「合有」という概念を用いることには意味があると考えられますことから,共同受託者による信託財産の所有形態は,今のような内実を含むものということで合有であるとして,現行法の規律を維持するというふうに考えております。

 

 

 

なお,このように共同受託者による信託財産の所有形態を合有と考えましたときには,信託行為の定めにより共同受託者間で職務分掌の定めがある場合についてどのように考えるべきかが問題となりますが,ここでは,資料の23ページ以下に記載いたしましたような理由から,信託行為の定めにより,受託者間で職務分掌がされている場合においても,やはり信託財産は合有となる,名義を有する受託者と,名義を有しない受託者との合有になると考えるものでございます。

 

 

 

 

 

次に,2でございますけれども,これは,共同受託者による信託事務処理の方法について検討したものでございます。

 

 

共同受託者の信託事務処理に関しましては,一つは,事務処理に必要な意思決定をだれがどのように行うかという対内的な職務執行の問題と,決定された事項の執行をだれがどのように行うかという対外的な職務執行の問題について,それぞれ分けて検討する必要があると思われるところでございます。

 

 

現行法のもとでは,この点につきまして,いずれも信託行為に別段の定めがない限り全員一致という規律を設けているわけですが,このような規律に対しましては,効率的な事務処理の観点から妥当ではないということなどの批判がされておりますので,このような批判を踏まえまして,信託事務処理について規律の合理化を検討したものでございます。

 

 

まず,2の(1)でございますが,これは,共同受託者による原則的な信託事務処理の在り方に関して明らかにしております。

 

 

まず,アの(ア)でございますが,これは,信託違反行為の防止を図りつつ効率的な信託事務処理を実現するという観点から,信託事務の処理は,信託行為に別段の定めがない限り,共同受託者の過半数で決定するというふうにしております。

 

また,(ア)のただし書では,不在等の一定の事情がある場合には,当該事情の存する限りにおいて,信託事務の処理は残りの受託者の過半数で決定することができるとしております。

 

 

次に,このように共同受託者の過半数で決定された事項について,対外的な執行行為が必要とされる場合に,だれがどのように執行すべきかという点でございますが,これは,25ページの(イ)に書いてございますとおり,信託行為の定めにより複数の受託者が選任されている場合には,各受託者は相互に代理権を授与されているものとみなすことによって,受託者は,決定された事項について,それぞれ単独で対外的な執行をすることができるということにしております。

 

 

したがって,対外的な執行行為をする受託者は,一つは,意思決定をしたすべての共同受託者の名において取引をするという方法とか,第2に,受託者の代表である旨を明示して取引をする,このような方法で執行行為をすることによりまして,信託財産に効果が帰属するだけではなくて,各受託者の固有財産にもその効果が帰属することになります。

 

 

 

 

他方で,対外的な職務執行を行う受託者が,第三者との間で自己の名のみにおいて取引をした場合には,当該行為の効果は信託財産には帰属しますが,他の受託者の固有財産には帰属しないということになると考えております。この点は後ほどまた御説明をするところでございます。

 

 

 

なお,以上は,過半数の賛成に基づいて行われた職務執行の効果でございますが,これに対し,過半数の賛成がないにもかかわらずなされた信託事務処理の効果については,19ページのアステリスク1のところに記載いたしましたとおり,受託者の権限外行為と同様に考える甲案と,共同代表取締役が単独で行為をなした場合と同様に,原則として無効であるが善意無過失の相手方は保護されるというように考える乙案とが考えられるところでございます。

 

 

 

 

続きまして,イの保存行為でございますが,保存行為につきましては,信託行為に別段の定めがない場合にも各受託者が単独で行うことができることとしております。

 

 

これは,保存行為につきましては,その性質上迅速な処理を必要とするものが多く,過半数で行わなければならないとすることは適当でないと考えられますし,単独で保存行為を行うことができるとしても,受益者の利益にこそなれ,受益者を害するおそれは少ないと考えられるからでございます。

 

 

 

続きまして,(2)でございますけれども,これは信託行為に受託者間の職務分掌の定めがある場合について検討するものでございます。

 

 

現行の信託実務におきましても受託者間で職務分掌の定めをされることがあると伺っておりますが,このような職務分掌の定めがある場合につきましては,委託者は,各受託者が分掌された職務の限度において独立して事務を処理することを期待していると考えられます。

 

 

したがいまして,信託行為の定めにより受託者間で職務分掌をすることができること,及び,各受託者が分掌された職務の限度において単独で意思決定をし,かつ対外的な職務執行を行うことができることということを,この(2)において明らかにしております。

 

 

続きまして,3は,共同受託者の責任について検討したものでございます。

まず,(1)でございますが,これは受益者に対する責任でございまして,大別いたしまして,アの受益債権に関する責任と,イの信託違反行為をした場合の損失てん補責任とが考えられます。

 

 

このうち,アの受益債権に対する受託者の責任でございますが,この受益債権に対する責任というのは,信託財産のみをもって履行の責めを負うとする内容の物的有限責任であるということは前回御説明いたしましたところでして,このことは共同受託者の場合にも同様に当てはまると考えられるところでございます。

 

そこで,アでは,受託者が複数の場合においても,受託者が受益者に対して負う受益債権についての責任が物的有限責任であることを確認的に明らかにしております。

 

 

次に,イでございますが,これは,共同受託者の全部又は一部が信託違反行為をした場合における他の受託者の責任について検討するものでございます。

 

 

受託者の損失てん補責任等は,信託違反行為について故意又は過失のある受託者に対して信託財産に生じた損失等をてん補させるものですので,これらの責任を負う受託者は当該違反行為に関与した受託者に限ることが相当であって,信託違反行為に全く関与していない受託者にまで連帯して責任を負わせることは相当ではないと考えられます。

 

そこで,イにおきましては,信託違反行為に関与した受託者,具体的には意思決定又は対外的な執行行為をした受託者が連帯責任を負うということを明らかにしております。

 

 

次に,(2)でございますが,これは,受益者以外の第三者に対する共同受託者の責任についてのものでございます。

 

 

 

 

 

共同受託者の第三者に対する責任には,一つは信託財産を引当てにする責任というものと,もう一つは固有財産を引当てにする責任とが考えられるところでございます。

 

 

まず,信託財産を引当てとする責任の方でございますが,信託財産は共同受託者の合有となりますので,受託者が信託事務の処理をすることによって信託財産に属することとなった債務は,信託財産を引当てにする責任という限度で共同受託者の合同債務となるものと考えられます。

 

 

そして,そのことは,受託者が共同して信託事務を処理した場合であるか,あるいは信託行為に職務分掌の定めがあり各受託者が単独で事務を処理した場合であるかを問わないと考えられます。

 

 

したがいまして,例えば,信託行為に職務分掌の定めがある場合におきまして,受託者Aの信託事務処理によって生じた信託財産に属する債務に係る債権を有する債権者,信託債権者は,受託者Bの単独名義となっている信託財産にも執行していくことができるというふうに考えられます。

番人

「受託者Bの単独名義で登記されている信託不動産があった場合、受託者Aは信託目録には記録されるんだろうか。条文では受託者としか記載されていないから職務分掌に関わりなく信託目録に記録する必要があるね。」

 

 

 

これに対しまして,第三者に対して共同受託者が固有財産で負う責任につきましては,これから述べるような方向で考えております。

 

 

まず,複数の受託者が共同して信託事務を決定している場合におきましては,各受託者は相互に代理権を授与されているとみなされますので,対外的な職務執行を自らするか否かにかかわらず,意思決定をした受託者は取引相手方に対して責任を負うものと考えております。

 

 

ただし,過半数の意思決定に反対した受託者も固有財産で責任を負うのかが問題となるところではございまして,この点につきましては,20ページのアステリスク2のところに記載しておりますが,反対者は対外的な責任を負わないとする考え方と,対外的責任は負うものとし,あとは内部的な損失分担の問題で処理するという考え方とがあり得るところでございます。

 

 

ポリー

「対外的には責任を負いそうですが。他の人からすると、反対したかどうか知らないですし。」

 

 

次に,各受託者が保存行為を行った場合におきましては,保存行為を行う限度において各受託者は相互に代理権を授与されているものとみなされますので,保存行為を実際に行ったか否かにかかわらず,各受託者は保存行為の相手方に対して責任を負うものと考えております。

 

 

これに対しまして,信託行為に職務分掌の定めがある場合におきましては,各受託者は分掌された職務の限度において独立して事務を処理することになりますので,当該職務を行った受託者のみが第三者に対して固有財産で責任を負うことになると考えております。

 

 

要するに,1番目と2番目の場合におきましては,すなわち,意思決定が過半数で行われた場合と,それから,保存行為の場合には,各受託者全員が固有財産をもって責任を負うけれども,職務分掌の定めがある場合には,職務を行った受託者のみが固有財産をもって責任を負うという違いが出てくるわけでございまして,このような帰結につきましては,21ページのアステリスク3のところで具体例をA・B・Cで挙げておりますけれども,そこに示されているところを後で御覧いただければ,提案の内容が具体的にお分かりいただけるかと思います。

 

 

 

 

次に,4でございますが,これは,共同受託における受託者間の信託事務処理の委託について検討したものでございます。

 

ここでは,各受託者は,信託行為に別段の定めがない限り,他の受託者に対して信託事務処理の委託をすることはできないとしております。

 

 

信託行為で複数の者を受託者に指名した委託者の意思といたしましては,複数の受託者が関与することによって慎重な意思決定がされることを期待していると考えられますので,それにもかかわらず受託者が他の受託者に対して自由に委託をすることができるというのでは,慎重な意思決定の実現という委託者の合理的意思が害されますので,特に定めのない限り,委託できないという規律を設けているところでございます。

 

 

それから,5でございますけれども,これは,共同受託の場合における受託者に対する意思表示の効力について検討したものでございます。

受託者に対する意思表示には,一つは受益者の受託者に対する意思表示,(1)でございますが,もう一つは取引相手方などの第三者の受託者に対する意思表示,(2)でございますが,が考えられるところであります。

 

 

まず,(1)につきましては,信託行為で複数の者が受託者に指名されている場合には,受託者間には相互に連絡関係があると考えられることなどを考慮いたしまして,受益者が受託者の一人に対して意思表示をすれば,特にだれかに対して意思表示をしてほしいというような信託行為の定めがない限り,その効果は他の受託者にも及ぶとしております。

 

 

 

それから,(2)でございますが,第三者は受託者のだれか一人に対して意思表示をすれば,その効果は他の受託者にも及ぶとしております。

 

 

これに対しまして,職務分掌の定めがある場合でございますが,これについては(2)のただし書に書いてあるところでございますけれども,各受託者は独立して職務を執行しておりますので,各受託者は他の受託者がだれとどのような取引をしているかは通常は認識し得ないと考えられるところでございます。

 

 

 

そうだとしますと,これらの場合におきましては,取引の相手方は実際に取引をした受託者に対して意思表示をしなければ,その意思表示の効果は及ばないものと考えることが相当であると考えられます。

 

 

そこで,ただし書におきましては,信託行為の定めにより職務分掌がされている場合におきましては,第三者は取引をした受託者に対して意思表示をしなければならないということを明らかにしております。

 

 

 

最後に,6でございますが,これは,共同受託者の一部について任務が終了した場合には,残存者を受託者として存続させても,当事者の意思に反しない場合にはその方が便宜なので,これを認めようとしたと,いわゆる残存者の原則といわれる考え方を敷えんしたものでございまして,信託行為により複数の者が受託者として指名された場合において,当該者の一部が信託の引受けを拒絶し,又は引受けをすることができなかったときには,信託財産は原則として引受けを承諾した他の受託者に帰属するとしております。

 

 

 

共同受託にする目的の一つは,だれか一人が欠けても,それで信託を終了しないようにさせるということにもあるということを考慮して,このような規律を設けたということでございます。

以上で説明を終わります。

 

 

  •  それでは,この複数の受託者について,御意見をいただければと思いますが,いかがでしょうか。

 

現行の規定と比べると,先ほど説明がありましたように,この職務分掌の場合については積極的に条文で明確にするということで,現在でも合意である程度はやっていたかもしれませんけれども,合意だけですとちょっと不安定ですので,そういう意味で規定を設けるということでございます。

 

 

 

 

 

  •  今回の御提案につきましては,例えば財産の分属型の共同受託,例えば年金信託なんかによくあるのですけれども,そういったものの場合を想定しますと,ある受託者が債務を負担した場合に,それによって別の受託者が単独名義で所有している信託財産にかかっていくと,そういうところでは若干違和感があるなという感じがいたしますが,そこについても,例えば財産を限定する特約をつけるとか,そういうことで十分に対応できるのではないかと思いますので,基本的にこれはこれでいいのかなというふうに考えております。

 

 

 

 

そのほかの部分につきましては,基本的にいろいろと実務上の御配慮をいただいておりまして,それぞれについて実務がワークするような形で御検討いただいているように思いますので,賛成したいと考えております。

 

 

  •  非常に細かいことで恐縮なのですが,共同受託者の責任のところが結構難しくて,私も十分に理解できていないところがあるのですが,例えば,共同受託者のうちの一人で,ある財産の名義人であると,しかしながら他に共同受託者がいて,その人は別の財産の名義人になっているというときに,どのような形で債務名義をとって,どのような形で執行していくのかというのが,いま一歩,私,イメージがわかない。

 

 

実体的な責任関係はこうなるというのはまだ分かるのですけれども,ちょっとイメージがわかないところがあるのですが,もしその御検討あられましたら,お教えいただければと思うのですが。

 

 

 

  •  執行の仕方については,原則としては,先ほどの特に信託財産に対して執行していくという場合につきましては,これは合同ということで,合有債務ということになりますので,固有必要的共同訴訟であって,受託者全員に対して訴えを起こして,債務名義をとって,それに基づいて信託財産に執行していくというやり方が一つ考えられるかと思います。

 

 

あと,組合の規律についての説明を参考にいたしますと,もう一つの方法,これも二つありますが,一つは,例えば各受託者に対してそれぞれ債務名義をとって,例えば3人なら3人分債務名義をとって,それを三つまとめて信託財産に執行していくというのが一つあるようでございます。

 

 

すみれ

「そんな方法もあるんだ。」

 

 

もう一つの考え方は,不可分債務と同じように考えまして,ある一人の受託者に対して,信託財産全部にかかっていけるというような債務名義を取得することができるという考え方もあると聞いております。

 

 

この点につきましては,むしろ,どのような執行をしていいのかというところ,特に,受託者が全員の名前を表示して,それによって信託財産と各受託者の固有財産全部に執行していけるという場合におきまして,信託財産に対して果たしてどのように執行していけるのか,それから,各受託者の有する固有財産についてどのように執行していけるのかという執行の方法について,もう少し我々も検討したいと思っておりますが,何かお知恵をいただければと考えているところでございます。

  •  いかがでしょうか。

 

 

 

 

  •  何か私に考えがあってということではないのですが,ある財産の名義上の帰属人が,自己の名前である債務を負ったということになったときに,固有財産に対して執行していくときの債務名義と,信託財産に対して執行していくときの債務名義はかなり違ったものを用意しなければいけないというのは,何となくおかしいんじゃないかという感じがすると。

 

 

そこら辺をうまく処理できるような形で実体法的にも仕組まなければいけないのかなという気がしたものですから,もし検討の結果があられましたらというつもりで伺わせていただいた次第です。

 

 

別に何か考えが私にあったわけではございません。済みません。

 

 

 

 

 

すみれ

「色々仕組むんだ。」

 

 

 

  •  各受託者の固有財産に行く限度であれば,それは恐らくその受託者に対してだけ債務名義をとればいいと思うのですが,もしも,最初に言いましたように,信託財産に対してかかっていくのは固有必要的共同訴訟であるということになりますと,今,○○幹事がおっしゃったように債務名義のとり方が違ってくるというおそれはありますので,もし同じにするのだとすると,不可分債務だとか,あるいは,債務名義を複数とって合わせて執行していくというようなやり方の方が手間は省けるという気はいたしますが。

 

 

 

  •  この問題については余り考えていないのですけれども,組合の話を少しここに使うことができるならば,大まかには次のように考えます。

 

 

 

○○幹事のおっしゃったのと大体重なるのですけれども,一つ違う点は,訴訟と執行を分けて考える必要があるのだろうと。

 

 

執行の局面で複数受託者の信託財産に対して執行するときには,複数受託者全員に対する,それこそ債務者としている債務名義が必要だと。それはある種の固有必要的な執行になるのだろうと思います。

 

 

 

しかし,その執行をするために必要な債務名義をそろえるために訴訟を--まあ,ほかの方法でも債務名義はとれるのかもしれませんが,確定判決で債務名義を取得するところを考えた場合に,その訴訟が要するに固有必要的共同訴訟なのかどうかというところは考え方が分かれるのだろうと思います。

 

 

 

共同で起きたときには類似必要的共同訴訟という考え方もあるのかもしれませんが,それぞれ別々に,訴訟は複数の受託者一人ずつに対しても起こせるという考え方もあろうかと思います。

 

 

 

 

 

 

そして,○○幹事の話につなげるならば,固有財産をねらう場合も,信託財産をねらう場合も同じ債務名義になって,その債務名義の中を見て信託の債務であるということが明らかであれば,信託財産に対しても,そろえばできるけれども,信託財産であるということがその債務名義の中で明らかにならなければ--これは複数であることの問題ではなくて,一般の問題ですけれども--信託財産には強制執行できないと。

 

 

しかし,固有財産に対しては,判決の理由のところで,いかなる債務であっても固有財産には強制執行できると,そういうことになるかなと思います。

 

 

二つに分けるというところを申し上げたいと思いまして,それから,分けた上で判決をとるとり方が二つ考え方があろうかと思うのですが,どちらが望ましいのか,あるいは組合とそろえるとすると組合がどうなのかというのはまだちょっとよく分かりません。

 

 

 

  •  なかなか難しい問題ですね。組合自身についても余りはっきりしていないところがあるのでね。

 

 

 

 

  •  私,非常にジェネラルな質問をしてしまったものですから,いろいろ難しいことになってしまっているような気がするのですが,私がひどく気になっているのは1点だけで,共同受託者の中にAという人がいて,Aが信託財産のある種のものについて自己名義で登記をしていると。

 

 

 

しかしながら,実体法的には,A,B,C3人が共同受託者だったならば,そのA,B,Cの合有であるというのがございますね。

 

 

そして,Aは受託者として第三者と取引をして,債権者Gという者が登場したと。GはAに対して支払えという訴訟を起こして,判決をとったわけなのですが,そのときに,A名義になっている財産を差し押さえていったら,いや,これは信託財産だというふうに言われたと。

 

 

いや,でもA名義でしょう,私,Aに対する債務名義をとっているんですよというふうに言ったときに,なお,これは合有なんだという実体法的な効果を差押債権者に対して言っていけるだろうかどうなんだろうかという話で,結局,A名義の財産を差し押さえるときに必要な債務名義は,A,B,C3人を名あて人にした債務名義なのか,それとも,Aを名あて人にした債務名義で足りるのかというのが,ちょっと急には分からなかったものですから--急にというか,時間をかけても分からないかもしれませんが--お聞きした次第だったのです。問題を特定いたしませんで申し訳ございませんでした。

 

 

番人

「債権者からするとA名義で足りないときつい感じがする。」

 

 

 

  •  信託債権者,信託に対してそもそも持っている債権者がどういう形で判決を取得するかという問題と,それから,今,差押債権者のことを言われましたか。

 

 

 

 

  •  いえ,信託債権者が債務名義をとって差押えをしたという事例です。

 

 

 

 

 

  •  不動産であることを考えると,そのとき個人の名義で登記されていても,やはり信託の登記がされているということなんでしょうね。

 

 

だから,そういう形で信託財産であることが分かる。

 

だけど,ほかに受託者がいるかどうかというのは登記で分かるのかな。共同受託者の一人であるかどうかというのは。

 

 

  •  受託者も信託原簿の方には書かれるはずですので,信託原簿を見れば……。

 

 

  •  とにかく,一番最初の出発点は,○○幹事が言われたことが比較的穏当な考え方だと思いますけれども,債務名義をとるときの名あて人の問題と,執行のところを一応分けて,その判決をとるところは,これは○○幹事の問題とつなげると,受託者個人の責任も一方で発生しているときに,同じ判決でもって両方行けないとおかしいような気がするのですね。

 

 

一方で信託財産の方にかかっていこうという場合と,受託者個人の責任を追及する場合で債務名義をそれぞれ別にとってこいというのは,ちょっとやはり合理的ではないので,そうすると,どっちにも行けるという形の判決あるいは訴訟がなされるべきだと。

 

 

あと,財産に行くときにはまた別な考慮で考えればいいというのが,大筋としてはよさそうな気がしますけれどね。

何かございますか。

 

 

 

  •  実体的には,先ほど議論が出ておりますように,もちろん権限の範囲で顕名をちゃんとした場合ですが,信託財産にも固有財産にも効果が及んでいるというのが前提といたしまして,ではどういうふうに判決をとって執行していくかということにつきまして,確かに債権者が債務名義を2種類とらなければいけないというのはいかんせん負担が大きいということになると,恐らく,一つの考え方は,A,B,Cがいれば,A,B,C3人に対する必要的共同訴訟としてその債務名義をとって,信託財産にも行けるし,それに基づいて固有財産にも行けるとするか,あるいは不可分債務のように考えて,例えばAならAに対する債務名義をとれば,A個人の固有財産にも行けるし,しかし信託財産にもそれをもって不可分的に行けるというふうにするか,どちらかでいかないといけないかなという気はしております。

 

 

 

ただ,どっちがいいのかとか,あるいはこの考え方自体が正しいのかというところは,ちょっとまだ十分検討したわけではございませんので,もし御指摘があれば,いただければ。

 

 

 

  •  今,最後に○○幹事がおっしゃったのには,もう一つ考え方があると思うのですが。

 

訴訟は複数の受託者一人一人に対して起こせると。それで,その債務名義一つだけならば,固有財産にしか強制執行できないと。

 

 

しかし,全員に対する債務名義がそろえば,そして,信託が原因になっているといいますか,信託の取引だということが明らかな債務名義が複数の受託者全員そろえば,そこで初めて信託財産に対して強制執行することができると。

 

 

ですから,不可分債務と言わない第3の解決があるのではないかなと。私は,それが適切な解決ではないかなと思いますが,しかし十分には自信がありませんので,三つ目の選択肢としてあり得るということだけ,発言をさせていただきたいと思います。

 

 

 

それで,今のことと関連するのですが,一つ別なことなのですけれども,○○幹事のおっしゃったことについては,私,答えを持っていないのですけれども,正にそれに直接関連するのですが,第43の2の(2)の職務分掌がなされているときにも,これは1の合有というのは維持されていると思うのです。

 

 

 

そうすると,その職務分掌のときの取引の相手方,債権者が差押えをしようとするときに,財産の名義の問題が最後に出てくるのかもしれませんが,私としてスペシファイしたいのは,そのときにも,やはり基本的には複数の受託者全員に対する債務名義がそろわないと信託財産に対して強制執行できないということになるように思うのですが,それは実質的にうまく動くのでしょうか。

 

 

すみれ

「スペシファイ?」

 

 

 

職務分掌の一番極端なものですと,22ページの④の例ですけれども,不動産と債権と有価証券を分けているときに,不動産に関する取引の相手方というのは,受託者はその職務分掌している人のみと見ていることもあり得るわけですね。

 

 

 

不動産の場合には信託原簿を見ればいいのかもしれませんが,有価証券とか債権になりますと,何かその受託者さえつかまえて信託財産に対して強制執行しようというふうに考えるのがどうも自然かなと思うのですが,そこが,受託者全員に対する債務名義をそろえないといけないということになるならば,やや,私は違和感が残るように思います。

 

 

 

 

 

  •  今のも,しかし,職務分掌でもって,だれか単独の受託者の名義でもって登記されていても,なお合有だということを言ってしまうと,同じことになってしまうのですね。同じというか,○○幹事の最初の原則どおり,3人の。

 

 

 

  •  この書き方ですと,1が残りそうですので,ですから,残すのが不適切な場合があるのではないかなと。

 

 

  •  残さないようにするとすると,どうするんですかね。合有のところをまた外すのですか。

 

 

  •  いや,そこが……。

 

  •  なかなか難しいですね。

何か御意見があれば。

○○委員のは受託者の側からなので,相手方の債権者の立場からとはちょっと違うので,御意見が特にこれについてはないかもしれないけれども。

何かありますか。

 

 

  •  先ほど○○幹事がおっしゃったのは,債務名義を集めて執行するという方法ですが,今のお話ですと,その方法はしかし職務分掌のときにはいささか現実味がないということだとすると,○○幹事御自身の推薦パターンというのは,やはりだれか一人に集めてとったら不可分債務という考え方がいいということでございましょうか。

 

 

  •  今の視点からの簡明な解決は,その財産は職務分掌を受けたその受託者の信託財産という解決が簡明だと思うのですね。しかし,それは多分,いろいろなところに派生するのだろうと思うので,ちょっと自信を持ってはそれを推奨の解決と申し上げられない。

 

 

  •  おっしゃる趣旨は,それは合有ではなくて。

 

  •  そうですね。

 

  •  単独処理になってしまうと。

そこは,やはり合有というやり方にしておりますが……。

 

  •  だから,合有であっても,合有だという主張ができるのかというのは分からないのですが……,あ,やめましょう。動産や債権ですとできますからね。

 

 

だから,自分に対する債務名義で自分名義の財産を差し押さえられているときに,信託債権者ではない人に対してこれは信託財産であると言うのは,異議事由,抗弁事由になると思うのですけれども,そして,それに対して,いや,私は信託事務の執行に関連する債権を持っているのであるというふうに相手方が言ったときに,なお,それはそうなんだが,形式的には合有なんだから,債務名義がこれでは足りないという更なる抗弁が本当に認められるのが妥当なのかというのがちょっと分からなくて,そんなのは不要なんじゃないかなと思うのですが。

 

それをまた実体法上どういうふうに仕組むかと言われますと,何か名案があって発言しているわけではありませんので,申し訳ない次第なのですが。

 

 

  •  単独で執行できるというふうにしてしまえばいいのでしょう。
  •  まあ,そうなんですが。
  •  不可分債権と。先ほどの説明によると。

 

 

  •  第43の2の(1)のアの「保存行為以外の信託事務」のただし書のところですね,「不在,病気その他のやむを得ない事情があるために,信託事務の処理に関与することが困難な受託者があるときは」というところの特則について,実務家の観点から意見と質問があるのですけれども。

 

 

これは19ページの下の甲案,乙案の話にも及ぶことなのですが,受託者の立場からについては○○委員からお話がありましたけれども,片や取引者等の観点から,この例外があった場合に,実際にその代理権が本当にあるのかどうかということを確認する必要が出てくると思います。

 

 

 

そうしたときに,このただし書の「困難な受託者があるときは」ということのメルクマールというのが私にはちょっと不明確だなということがあります。

 

 

 

不在,病気ということであったとしても,何らかの意思決定ができるとか,電話をかけるとか,そういった場合には,もちろん内容によっては処理することができる場合もありますし,外部から見て実際に受託が困難かどうかということは非常に見えにくいということがあると思います。

 

 

 

 

 

そもそも,なぜこのただし書の除外規定をこういう形で置いたのか,ここの多数決のルールを,こういう,実際にできない,困難であるということとしたのはどういう理由なのかということを次に質問したいわけですけれども,考えるに,意思決定ですから,単純に意思を表示することができることを要件とすればよろしいわけだと思いますけれども,ここで,そうではなくて,いわゆる受託処理能力ということをメルクマールにしたのはどういうことなのかと。

 

 

考えてみるに,ある意味,そういう人は信託事務処理に要する意思決定に責任を持てないわけだから,一種特別利害関係人だということで配慮するということなのか,又は,そもそもそういうことに対して不適格なのかということで,そういう理屈づけはあるかもしれませんけれども,いずれにしても,この(イ)のところで,何らかの意思決定ができるのであれば,単独で他の受託者を代理することができるのであれば,取引としては,その意思決定の内容が正しいのであれば,別にその当該受託者が処理能力があるかどうかということは無関係であるということも考え得ると思います。

 

 

そうしたときに,どうしてこういうメルクマールを置いたのかということがちょっと分からなくなったわけです。

 

 

なぜこのような疑問かといいますと,もとに戻りますけれども,この甲案,乙案のところで,特に甲案で「重大な過失により知らなかったとき」ということがあるわけですけれども,取引相手方としては,例えば共同受託者の一部だけの者が来て,この者は困難だから,我々の決定で過半数とったから取引してくださいと言われたときに,重大な過失の内容は幾らでもありますけれども,一応の調査等をしなければならない場合もあると思います。

 

 

 

そうしたときに,この困難な状態というのが一体どうなのかということを検索しなければいけないこともあると思いまして,そこで,実務上,そのメルクマールが不明確であれば取引に差し障るのではないかなというふうに思っております。

 

 

 

 

あと,非常に瑣末な話になるかもしれませんが,実務的には重要だと思うのですけれども,そうしたときに,今度は登記面ですけれども,実際に不動産を処理するときに,登記としては,一部を除いて過半数であるということを証明する書類を出す必要が出てくるのかどうかと。

 

 

 

もしそういう書類が必要だということになると,今度は登記実務からすると非常に困難な書類をつくらざるを得ないという,そういう状況もありますので,そこら辺をどう手続上乗せていくのかということが,検討すべき論点なのかなというふうに思います。

 

 

 

 

 

  •  なぜ「困難な受託者」を入れたかということでございますが,これは,「信託事務の処理に関与することが困難」ということですから,意思決定ができれば,困難なこの事情に当たりませんので,意思決定もできないような事情があるときにはということでございますけれども,そういう前提で,何か更に,もしもそれでも解釈上不明確だと言われれば……。しかし,このぐらいの条文を設けることはあるのではないかと思いますが,意思決定には関与できれば,この場合には当たらないという趣旨でございます。

 

 

登記実務上の話はちょっとよく分かりませんが,何かその書面が要るということはちょっと想定し難いのですが。要するに,甲案であれ,乙案であれ,有効に契約が成立していれば,それに基づいて登記を請求するだけの話でありまして,共同受託者の過半数の意思決定があったかどうかというようなことを,あるいは困難な受託者がいたので残りの過半数でやったかというようなことを何か書面で証明しないと移転登記ができないとか,そういうことはちょっと……。登記実務には詳しくないのですが,そういうことは普通はないのではないかと思いますけれども。

 

もしもそれで問題が生ずれば,訴訟で移転登記の紛争になるというだけでございまして,単に普通の移転登記請求をするだけではないかなという気がいたしますけれども。共同申請するか,あるいは判決による申請をするということになると思いますが。

 

 

 

 

 

  •  何かございますか。

 

  •  私も詳しくは調べていないのですけれども,これで信託財産が売却されたような場合は,受託者が登記義務者となって,買主の方が登記権利者となって共同申請ということになるのですけれども,登記簿上,受託者が仮に3人登記されていれば,その3人全員が登記義務者として申請しなければなりませんので,そのうちの二人しか申請人になっていないと,登記はやはり難しいと思うので,その3人のうちの一人欠けた人については代位をしてやるとか。代位であれば,代位原因があることを証明する書類なり何なりをつけていただかないと,登記としては受けられないと思いますので,こういう契約が成立したからそれでいいということではないのではないかなというふうに認識しておりますが。

 

 

番人

「登記原因証明情報には過半数の同意があったことが記載して3名全員の記名押印されていればいい。登記名義人が3名なら、3人全員が登記義務者として申請しないといけない。過半数の同意は内部の意思決定だしね。」

 

 

  •  ただ,2の(1)のアの(イ)のところで,実体法上は少なくとも代理することができるというふうになっているわけですけれども,その代理権が当然実体法上あるということをもって3人のうち二人しか登記していないという場合でも,やはり登記実務上は3人の共同申請であるということですか。

 

 

 

 

  •  実体法上代理権があるということが明らかであって,その代理権があるのであれば,その代理権があるということを証明するものをつけていただかないと,登記の方では,本当に代理権があってやっているのかというのが分からないので。

 

 

 

番人

「代理権があることを証明する必要はある。信託財産は3人で合有されている。信託目録には記載されている。前提として、登記手続き上、登記名義人を3人にしておく必要があると思う。」

 

 

 

  •  そこで代理権があるかどうかを確認する場合に,過半数で決定しているかどうかということの証明が必要になってくるということだと思うのですけれども,そこで私の問題提起というのは,やむを得ない事情のあった場合にその者を外したといったときに,その証明というのはなかなか難しいのではないかという,そういうお話です。

 

 

 

 

 

  •  分かりました。もう少し検討させていただければと思います。

便乗するようであれですが,甲案,乙案につきましてはどちらがいいかとか,何かお考えはございますでしょうか。

 

  •  ちょっとこれは組合せがございまして,実務上の観点から,余り過大なものはよろしくないなというのがございますけれども,少なくとも過失要件というのは外してほしいなというのがございます。

 

  •  甲案の場合ですね。

これは,31条と同じような規律を設けているわけで,しかも重過失ですから,過失要件というか,悪意に準ずるようなものということですが,これでも問題がありますか。

  •  必ずしもそういうわけではございませんけれども,そもそも困難な状態というのは一体どうなのかということが分からないうちに,では一体どういう注意義務というのが出てくるのかということが分からなかったものですので,ちょっと御質問したわけでございます。
  •  ほかに,いかがでしょうか。

 

 

 

 

  •  この共同受託者の責任の中で,受益者に対する責任のところで確認をしておきたいのですけれども。

 

共同受託者のところで--今日は,もう当たり前ということになっていて,余りそこは触れられていないと思いますけれども,従来,共同受託者については,合手的行動の義務というのでしたっけ,とにかく全員一致でというので,相互監視というか,間違ったことをしないようにという極めて消極的な態度がとられていたのが,今回はそうじゃないですよということですよね。

 

 

まず過半数ルールというのをつくり,それは分掌のない場合であって,分掌がある場合には,それぞれのところでちゃんと一人ずつでやれますよという形で,信託財産の管理運用をやりやすいようにという方に一歩を踏み出す,あるいは二歩も三歩も踏み出すということになると,共同受託者の間の責任の関係がどうなるのだろうかという話で,やはりバランスのとり方というのがあるような気がするのですけれども。

 

 

ここで受益債権についての責任の方はいいのですけれども,後の方の損失てん補責任のところで,これは,まず二つ確認なのですが,分掌してある場合は,実際には,分掌してあるので,相互監視なんていうことは難しいと思うのですね。

 

 

だから,これは本当に机上の空論なのかもしれませんけれども,しかし理屈の上では何らかの監視義務というのはやはりあるんだよということなのかどうか。

 

 

二つ目は,過半数ルールのところで反対すれば,もう責任はないような感じで読めるのですけれども,しかし,明らかに--もちろん反対もするけれども,明らかにこれは多数派が信託違反行為だという場合には,もちろんそれ以上のアクションに出る義務はあるのだと。

 

 

その義務に出ないで反対だけしておきましたよというので責任を免れることはない。

 

 

これは善管注意義務かどこか別のところで書いてあったかもしれないのですけれども,ちょっと確認をしておきたいのですが。

 

 

 

 

 

  •  御質問の趣旨について十分に理解できているかどうか分かりませんが,お答えします。

 

 

まず,職務分掌があった場合でございますけれども,その場合には,分掌された職務の限度で独立して職務を執行することになりますので,ある受託者による職務執行が信託違反行為とされた場合については,当該受託者のみが責任を負うことになるのではないかというふうに考えております。

 

それから,意思決定に反対した者が損失てん補責任を負うかどうかというところでございますけれども,損失てん補責任というのは,御承知のとおり,故意過失による場合の責任でございますので,基本的に反対の意思を表示した受託者というのは,それについて特に故意過失がないと評価されるのが普通ではないかと。

 

 

特に明々白々な違反行為について,認識していながら放置していたというようなときは,特段の事情があって責任を負うということもあり得ると思うのですが,原則として,意思決定に反対していれば過失がないというところで,こちらの損失てん補責任の方は切れるのではないかという気がしております。

 

 

過失があるという理由では切れないというのは第三者に対する債務の方でして,こっちの方は悩ましいところでございますが,損失てん補責任は,意思決定に反対していれば責任がないという結論を導き出しやすいのではないかという気がしております。

 

 

 

  •  そういう普通のケースと,今おっしゃられたように,反対だけではやはりそれでは過失があるよという場合はあり得るということですね。

 

  •  特段の事情があれば,あり得ると思います。

 

  •  だから,同じことは前者についても言えますね。分掌してあっても,たまたま私が了知する範囲に入ってきたというわけです,その人がとんでもないことをしていると。

 

だから共同受託者はやはり放っておけないということは,常識と言えば常識なのですが。

 

 

  •  職務分掌されておりましても,絶対に責任がないというわけではなくて,やはりそこは,特段の事情があれば,過失があるということで責任を負うということはあると思います。あくまで過失責任の場合についてはそのような構成が可能かと考えております。

 

 

  •  前に差止めのところも少し議論したと思いますけれども,あれは,ほかの共同受託者に差止めの権利を与えるかどうかというのは今後検討するというふうになっているのでしたっけ。

 

 

  •  前に問題提起はしましたが,その点は今後なお検討するということで考えております。

 

 

  •  まあ,そういうのもちょっと関係しますね。

よろしゅうございますか。

 

 

 

 

  •  また細かいことなのかもしれないのですが,確認させていただきたいのですが,第三者に対する債務の受託者の責任の在り方のところで,固有財産による責任の負い方が分割責任なのかどうかということでして,こちらの資料は,基本的に分割責任であるということを前提に書かれているのだと思います。

 

 

特に資料の26ページの記述などは,そういう前提で3段落目の「なぜなら,」以下などが書かれているのではないかと思うのですけれども,一方で,A,B,C3者の受託者が,A,B,Cの名で意思決定もして,そして対外的に行動して負う債務が分割ということが果たして適切なのかというのはちょっと気になっておりまして,分割債務の原則は,民法上原則といっても,認定は非常に慎重にというふうに言われておりますし,民法上の組合の分割責任ということについても立法論的にはいろいろ議論があるようでございますので,分掌もしていなくてA,B,C3者で意思決定をしているというときに,固有財産の責任の在り方が分割でいいのかどうか,念のために,この時期にもう一度確認させていただきたいのですが。

 

 

 

  •  この固有財産の責任が分割か連帯かというのは,事務局内でもいろいろ検討はいたしましたけれども,そこは基本的には民法の原則に委ねるということで,ここでも金銭債権だから分割というふうに考えているわけでして,債権の種類によりましては不可分債務になるようなこともあるかと思います。

 

 

ただ,どのようなものについて可分で,どのようなものについて不可分になるかというのは,正にそれは,信託法の世界というよりは,民法で共同で債務者になった場合にそれが分割になるのか連帯になるのかというところに合わせて考えていきたいというふうに考えております。

 

 

 

  •  金銭債務であっても,受託者として共同で行って債務を負っているというときには,それゆえに一般的に金銭債務で分割債務になるとしても,違う種類ということがあり得るのではないかというふうに,ちょっとそこが疑問に思っているのですけれども,そういう考え方はとらないということですか。

 

 

  •  それは,民法でそういう考え方もあるのであれば,とり得るかと思いますが。

例えば,何か連帯の意識が当事者間にあったような場合ということですか。

 

 

  •  はい。

 

  •  普通は,金銭債務であれば分割になってしまうと思うのですが,私,どういう金銭債務が連帯債務になるのか,不可分債務になるのかというのは,ちょっと……。不可分的に負った対価としての債務とか……。

 

  •  単純な借入れについて。

 

 

  •  それはなかなか……,やはり分割になってしまうのではないかなという感じで考えておりましたけれども。あくまで全員として表示した場合でございます。そういう場合には,分割でもそれは相手も分かっているので,いいのではないかということで,分割債務になるという民法の原則に従うべきではないかという考え方でございます。

 

 

  •  どこまで民法の原則でどうなるかということも余りはっきりしないところもありますけれども,仮に信託目的で借入れした場合,そのときの受託者の個人の責任がどうなるかですよね。

 

 

 

  •  おっしゃる趣旨は,こういう共同受託の場合については,民法の原則を離れて,やはり連帯,金銭についても連帯にするのが妥当ではないかと。

 

 

  •  それが民法の原則を離れているかどうか自体,そこは理解が別途あり得ると思うのですけれども,信託財産に関する事務処理ですとか保存ですとか,そういうもののために借入れを3者が意思決定をして,共同で,行為者としても名前を出してやっているときに,単純に分割なのかという,そういう疑問なのですが。

 

 

さらに,そこからすると,名前を出さなかったときに--名前を出すということは分割にするということなので,名前を出さなかったときは違う処理だというところにつながっていきますので,大もとが違ってくると,そこの処理も違うように思うものですから。

 

ただ,全く疑問のないところなのであれば……。

 

 

  •  そんなことはありません。テークノートさせていただいて……,ちょっと難しいところですので。

 

 

まあ,直感的には,みんなでやっているんだからみんなでというのもあり得るのかなという気はいたしておりますが,いかんせん,民法の一応の原則が金銭債務は分割となっておりますので,そちらによるのかなと考えておりましたけれども,共同受託の場合についてなお考慮を働かすべきかどうかというところについては,もう少し検討を深めたいというふうに思っております。

 

 

 

 

 

  •  恐らく,民法とちょっと違うかもしれないのは,民法の場合は,3人が一緒に,連帯ではないけれども,3人がいて借入れをするというと,分割の原則が適用されてもいいのかもしれないけれども,ここは信託で,借入れの目的が最初から一つ,その信託のためというふうに一つに限定されているので,そういう一つの目的のために3人が借入れという--3人というか,その中の一人が全員の名前を出して借り入れたと,そういうときには,場合によっては,まあこれは民法の原則の問題として,そっちの方でも連帯……,まあ不可分なのかな。

 

 

  •  性質上の不可分性ということはいかがですか。

 

 

  •  そういうのが可能性がないわけではないだろうという感じはするけれども,私も自信がないな。

 

 

普通の民法の場面とちょっと違う信託の構造ゆえに。

 

借り入れて何に使うかという,その借入れはすべて信託のために使うという点が普通の民法の世界とちょっと違う点があって,民法の原則を適用するのだけれども,連帯というか,不可分……,連帯は推定しないとすると,不可分ですかね……。いや,反対がありそうだから。

 

 

 

  •  近い問題ですけれども,確認の質問だけさせていただきます。

 

 

この第三者に対する債務,20ページの部分ですね,対外関係で考え方はこれでいいのかどうかの確認だけなのですが,信託財産に対して行く場合と固有財産に対して行く場合があって,信託財産の方はまあ分かるわけですけれども,固有財産に対して行けるかという問題に関して,実際に行為をした者に対するのもいいのですが,実際の行為をしていない者の固有財産に対してかかっていく前提として,どういう債務名義をとればいいのかというときに,これを見ていますと,過半数の意思決定を行い,かつ他の受託者の名前を挙げた代理をしているということが言えるか,あるいは,保存行為であり,かつ他の受託者の名前を出した代理行為をしているか,どちらかである場合に限って,実際に行為をしていない者たちの固有財産にもかかっていけるという理解でよろしいのでしょうかということですね。

 

 

 

もし仮に本当にそうだとすると,(ウ)の,職務分掌されている場合に固有財産で職務を執行した受託者のみが固有財産で責任を負うというのは全くそのとおりなのですが,職務分掌している場合に,先ほどの二つの場合があり得るのかと。

 

 

つまり,実際に行為をしていない者の固有財産にかかっていく場合というのが,過半数の意思決定プラス代理,あるいは保存行為プラス代理というときに,職務分掌の問題というのは,言わずとももう当然なのかなという感じがちょっとしたので。

 

ただ,前提が間違っているかもしれないので,確認だけさせていただければということです。

 

 

 

  •  前提はそのとおりの理解でございます。

 

その原則からすると,職務分掌の場合も自明ではないのでしょうか。

 

  •  むしろ,ほかの人の,全員の固有財産に行くべきではないかと。

 

  •  というか,先ほどの二つの要件がある場合にのみ,二つの場合にのみ他の受託者の固有財産にかかっていけるとするならば,このルールさえあれば職務分掌の場合はもう言うまでもなく当然行けないはずではないかなと。

 

ですから,結論はそのとおりなのですけれども,言うまでもないかなという感じがしただけで。言うとかえって混乱してきますので,質問だけさせていただいただけです。

 

 

  •  おっしゃる趣旨は,恐らくそういうことかなと。職務分掌の場合はいろいろなところに取り出しておりますので,なるべく規律を書いた方が分かりやすいかと思いましたが,御趣旨としては,(ア)と(イ)でそういうことであれば,(ウ)はなくても自明かなという気はいたします。

 

 

  •  恐らく先ほどの問題があるというのは,そのとおりなのですが。

 

 

 

 

 

  •  大分議論が錯綜しておりまして,私も混乱してきたのですけれども,今日の整理は,信託財産との関係では合有であって,合有的債権債務関係があるということから何か話があるように理解しておりました。

 

 

ところが,固有財産については,共有的債権債務関係を前提として,それで分割になるのか連帯になるのかというような話になっているように思います。

 

 

ところが,信託財産についても不可分債務であるというような可能性の検討がされたりもしておりまして,恐らく,その合有という概念がかえって混乱を来しているのではないかなというふうにも思います。

 

 

 

特に,組合との比較をする際に,組合の方を合有と見るのか見ないのかというところでも議論があると思いますし,それから,今回の案では,持分がないということと,合有ということとをくっつけているようですけれども,そこも必ずしも論理必然ではないだろうと。そうしますと,今日出たような議論を整理する際に,最終的に合有ということでも結構なのですけれども,合有的債権債務関係ということを前提にしてしまうと,かえって整理しにくいのではないかなというふうに思いました。印象だけです。

 

 

 

  •  そこはもうちょっと検討した方がいいかもしれませんね。

ほかにも若干まだ残っておりますので,特に御意見がなければ,このぐらいでよろしいでしょうか。

 

それでは,次の項目に行きましょうか。

 

  •  次は,第39と第42の倒産関係のところについての御説明をさせていただきます。

 

まず,第39は,任務終了事由と倒産手続の開始の関係でございまして,現行法では42条1項に対応するとともに,受託者の不適格事由を定めた現行法5条にも関連するものでございます。

 

42条1項によりますと,受託者に破産手続が開始したときは当然の任務終了事由となるものと解されておりまして,しかも,5条におきまして,破産者であることは受託者の不適格事由とされておりますので,破産手続の開始にもかかわらず任務が終了しないとの特約は有効ではないと解されるものと思われます。

 

 

しかし,第3回会議のときに提案いたしましたが,受託者の不適格事由から破産者を除くことといたしますと,受託者につき破産手続が開始されたとしてもその任務を終了させないという特約を置くことは許容されてよいものと考えられます。そこで,民法の委任に関する653条--資料には「654」と書いてあったかと思いますが,「653」でございます--の解釈と同様に,破産手続の開始をもって原則として任務終了事由としながら,任務が終了しない旨の別段の定めを信託行為に設けることを許容するという提案をするものでございます。

 

なお,破産手続の開始の場合とは逆に,再生手続等の再建型倒産処理手続が開始されたとしても,現行と同様に当然に任務終了事由となるわけではございませんが,信託行為の定めをもって任務終了事由とする,信託行為の定めで任期とかを定めるのと同じように考えるわけでございまして,その定めによって任務終了事由とすることは可能であると解するものでございます。

 

 

次に,第42の「受託者倒産の場合における信託財産の取扱い等について」,資料14ページのところからの説明に移らせていただきます。

 

 

このポイントでございますけれども,2点ございまして,第1は,42条2項と同様に,受託者の破産管財人に信託財産の保管義務及び信託事務の引継ぎ義務を課すものとしたこと,これは先ほどからいろいろ議論になっているところでございます。

 

 

第2に,受託者破産の場合において,明文の規律をもって,受益者にも一定の限度で信託財産を確保するための手段を付与することとした点でございます。

 

 

 

まず,第1の点でございますけれども,受託者について破産手続が開始された場合を考えてみますと,17ページの(注1)に記載いたしましたとおり,先ほどからいろいろ議論がある点でございますけれども,受託者の破産管財人は受託者の固有財産に係る債権者の利益を代表するものであるから,信託財産との関係では,登記・登録をもって対抗されるべき第三者,こういう意味で少なくとも第三者に当たると解される上に,信託財産は破産財団に属しませんので,本来,受託者の破産管財人の権限の及ぶところではないと思われるわけでございます。

 

 

しかしながら,そうしますと,信託財産を管理すべき受託者が不在となってしまうことからの不都合がありますので,この不都合を解消するためのいわば便宜的な観点から,1の(1)のとおり,破産管財人に対して,あくまでも一時保管の限度にとどまる義務のみを課すことを提案するものでございます。

 

 

 

 

 

 

次に,第2の信託財産確保の手段の点でございますが,破産手続の開始によりまして受託者の任務が終了し,受託者の全部が欠けることになった場合には,新受託者の選任がされるわけでございますが,この任務終了後,選任までの間は,旧受託者の破産管財人が信託財産の保管義務を負うことになるわけでございます。

 

 

しかし,信託の中心的な機能である受託者の倒産からの隔離機能の問題となる場面であることに加えまして,信託財産が名義上は受託者の財産であるがゆえに,受託者の固有財産,つまり破産財団と一体なものとして取り扱われやすいということを考慮いたしますと,受益者にも信託財産を確保するための手段を認めることが望ましいと思われるところでございます。

 

 

この点につき,学説上は,受託者破産の場合については受益者が取戻権を有するとの解釈が有力でございますが,受益者は信託財産について所有権等の物権を有するものではございませんので,一体いかなる権利に基づいて,いかなる訴訟を提起できるのかが不明でありますし,信託財産の管理運用は受託者にゆだねられるのが信託でございまして,受益者が信託財産を自己の手元にとどめ置く筋合いのものではございませんので,信託財産の受益者への引渡しまで認める必要性があるかは疑問でございます。

 

 

 

 

 

そこで,2の(1)のとおり,受益者は,新受託者が選任されるまでの間に限ってでございますが,破産管財人を被告として,当該財産が信託財産であることの確認の訴えを提起することができる旨の明文規定を置くことを提案するものでございます。

 

 

なお,この確認の訴えの関係では,受益者が複数の場合をいかに規律すべきかがむしろ問題になりまして,14ページの2の(3)のところに書いてございますけれども,一つは,単独の訴訟提起権プラス他の受益者への訴訟告知の枠組みをとるという甲案,それから,複数受益者の必要的共同訴訟とする乙案とが考えられるところでございます。

 

 

甲案による場合には,しかし,送達以外の方法による特別の訴訟告知の方法を認めない限りワークしないのではないか,乙案によるときは,事実上,受益者全員による訴訟提起は困難ではないかというような問題点があることにつきまして,16ページから17ページに書かせていただいたところでございます。

以上で終わります。

 

 

 

  •  それでは,この倒産関係に関して,いかがでしょうか。先ほど少し,関連することを議論していただきましたが。

 

 

  •  今,二つポイントがあると言った第2点の方ですね。第1点の方は先ほど既に出てきまして,これはつけ加えることはございませんので,第2点の方について何点か申し上げます。

 

 

御提案の理由は非常によく分かるのですが,まず,問題になる局面というのは,特に,破産管財人がこれは信託財産ではなくて固有財産であると言って例えば処分しようとしているときではないかと思うのですが,一番シビアに問題になるのは。

 

 

 

一つ目の問題ですけれども,新受託者とか何かが選任されるまでの間に訴えを起こせるということですけれども,事実上間に合わないのではないかと。判決が確定しない限りは既判力を生じませんから。というのが一つ。

 

 

それから,それに関連して,二つ目の問題点ですが,こういう確認の訴えで仕組むとして,何か保全処分というのは観念できるのだろうかと,処分禁止みたいなですね。

 

 

多分,そういうところまで手当てしないとワークしないのではないかと。

 

 

だから,確認訴訟を本案とする処分禁止の仮処分みたいなことが考えられるかどうかという,今まで余り考えたことがない問題を考えなければいけないような気がします。

以上はワンセットの問題です。

 

 

 

それから,甲案,乙案に関してですが,乙案は非常に重たいなと。

 

 

特に,甲案,乙案共通の問題ですが,受益権が有価証券化されていてどこに行ってしまっているか分からないような場合には,どっちにしてもワークしない,甲案も乙案もワークしないということが考えられないかなというのが気になるところでありまして,例えば公告で済ますとか……。

 

 

単独で提起できて,公告をして,入ってきた人はおいでというあたりぐらいまでしないと,ワークしない,もしこういう仕組みを作るのであればワークしないのかなというのが,受けた印象です。

 

 

しかし,公告だけでほかの受益者の手続保障は足りるのかというと,これまた,会社関係の訴訟を考えれば,足りるような気もするのですが,それと同じように考えていいのかどうかはちょっとよく分からないところです。

 

 

 

 

 

 

  •  いかがですかね。なかなか……。

さっきの,確認訴訟でもって処分禁止の仮処分というのは,私もちょっとよく分からないけれども。何かそういうものがないと,とにかく間に合わないということですよね。それは確かに何か迅速な手続というのは必要かもしれませんね。

 

 

 

  •  今の意見に関連することなのですけれども,同じく第42の2のことなのですけれども,ちょっとこれは知識不足で恐縮なのですけれども,直截に給付訴訟を申し立てるという枠組みがつくれないかどうかということなのですけれども。

 

 

 

例えば,その状況として,破産管財人が財団のものと思っている,それでそれを確認すると。

 

 

その制度を設けること自体はよろしいのですけれども,やはり直截に,破産管財人から,今後生じるところの,選任されるところの信託財産管理人ないし新受託者に対してそれを渡せというような訴訟ということを展望することができないのかと。

 

 

現行法でできないのであれば,そういう訴訟を可能とするような枠組みを,どうせ確認の訴えということができるのであれば,この機会にここで定めることができないのかということを,質問といいましょうか,コメントしたいと思います。

 

二つ目は,甲案,乙案という話ですけれども,この資料の中身を見ますと,やはり困難であるということがありまして,17ページの第2段落目にありますけれども,信託財産管理人を選んだらどうかとかいう話がありましたけれども,むしろそういうことは必要でない,それより以前にやりたいということですので,円滑な提起をしたいということの観点からは,やはり乙案というのは非現実的であって,少なくとも甲案ということであります。

 

 

そして,甲案であったとしても,やはり告知というのは非常に難しいという観点からは,○○幹事がおっしゃられた公告とか,そこら辺の手続にして簡易にすべきだというふうに思います。

 

  •  直截な給付というのも,私もよく分からないけれども。まだ給付すべき相手がいないわけですよね。

 

  •  それは厳しいのではないかと。受益者に対する給付というのは,また新受託者に戻さなければいけないのでおかしいですし,新受託者が選ばれれば,その人は直接所有権に基づいて給付請求できますが,まだだれがなるか分からないけれどもというのは,ちょっと……。

 

 

 

  •  実務的には余り考えられませんけれども,嫌がる破産管財人に対して確認訴訟があったとしても,なお抗する場合には給付訴訟でワンショットでやれるので便利ではないのかということでございます。

 

 

  •  御指摘の中では,特に迅速な手続が必要だというのは正に皆様のおっしゃるとおりだと思いますので,そこは考えてみたいと思いますが,引き渡すというのは……。せいぜい保全処分で執行官保管にするかとか,その程度のことぐらいしか考えられないのかなという気はいたしますけれども。

 

 

 

  •  受益者多数の方はどうですかね。

 

 

 

 

 

  •  甲案,乙案というお話ですけれども,私どもの信託銀行ということをベースに考えますと,どうしても,どちらもどうしようもないのかなと。要するに,両方ともワークはしないのだろうということだろうと思います。

 

 

 

もちろん,時限性の問題があって,信託財産管理人を選任してとかという方法を基本的に考えられているのだと思うのですけれども,基本的に,受託者が破たんしたときの受益者保護というか,信託財産の確認の訴えというのはこうあるべきだよというのはやはり法律できちっと書いていただいて,それがワークするという形でないと,私ども,受託者としてお客さんなり受益者に説明するに際して,こういうことで安心なんだよということは,この状態だったら言いづらいかなという感じがいたしますので,何らかの手当て,先ほど来出ております,例えば公告--もちろん,問題があることも承知はしておりますけれども,公告をするであるとか,もう少し……,例えば,迅速に,信託財産管理人が,訴えが起こされたらすぐに選任されて,何らかの形で手当てできるとか,そういうことをちょっと御検討賜れればというふうに思います。

 

 

 

  •  課題は比較的明確なんだけれども,なかなかうまい手段が見つからないという,そういう問題ですね。なお検討させていただくことにいたしましょうか。

よろしいですか。もし御意見がなければ,次に行きましょうか。

 

 

 

 

  •  では,最後に,委託者と遺言信託の関係のところに移らせていただきます。

 

 

 

まず,第55でございますが,これは,私益信託における委託者の信託上の権利義務に関する提案でございまして,第2回会議で御説明したところから基本的には変わっておりません。

 

 

 

すなわち,法律関係の当事者としての委託者の地位を強調して,信託関係における各種の権利義務を認めるといたしますと,法律関係を錯綜させ,委託者と受益者との間に意見対立が生じ,受託者による信託事務の円滑な処理にも支障を来すおそれがありますところ,このような問題を解消するためには,原則として,信託の利益を直接享受する受益者に判断権を委ねるのが合理的であると考えられることから,信託関係の当事者としての委託者の地位は後退させることとしております。

 

 

 

具体的には,46ページの別表に記載しましたとおり,デフォルト・ルールといたしましては,信託の監視・監督的権能としては,受託者,信託管理人,信託財産管理人の選任,解任,辞任に関する権利,すなわち委託者との合意あるいは裁判所に対する申立権など。

 

 

それと,利害関係人にも認められる権利として,提案済み,あるいは今後提案予定である,別表に書いてある五つほどの権利。

 

 

あとは,信託行為の変更,信託の併合,分割,終了など,信託の枠組み自体に重大な影響を与える行為については,信託目的に反しないことが明らかな場合を除いて,委託者にも同意権又は裁判所に対する申立権を付与するとしております。

 

 

 

 

それから,31番の,信託終了時の残余財産につき指定された帰属権利者の存しない場合には,その帰続権利者となるということ,この点を提案しているものでございます。

 

すみれ

「そうだったんだ。」

 

 

 

なお,「第62の4(2)」と書いてありますが,「第62の5」でございますので,訂正させていただきます。

 

 

 

 

なお,別表記載の個別の権利のうち,いずれを委託者に認められるデフォルト・ルール,ここで言うと丸というふうにするかということは,非常に重要ではございますが,更に,第2回会議でいただいた御指摘の関係で,次の2点について付言申し上げます。

 

 

 

第1は,ただいま概括的に説明した別表の一番右の欄に丸とある権利につきましては,デフォルト・ルールとしてではございますが,原則として委託者に付与することとしている点でございます。すなわち,第2回会議におきましては,デフォルト・ルールとして委託者の権利をゼロとするところから出発してはどうかという御意見もありましたが,そのような考え方はとらないという提案でございます。

 

 

 

第2に,別表にペケとある権利についても,委託者が信託行為によって留保すれば,その権利を委託者に認める,すなわちプラスする方向が認められることにつきましては,第2回会議で説明したところでございますが,第2回会議におきましては,これとは逆の方向の指摘といたしまして,別表に丸とある権利については,委託者に最低限度認められるべき権利とする趣旨なのか,それとも,これらの権利についても委託者が信託行為で放棄することができるのかについて質問がなされました。

 

 

 

この点の検討結果が,42ページのアステリスク1,アステリスク2,それから45ページの(注6)に書いてあるところでございまして,委託者は,信託の監視・監督的権能,あるいは信託の基礎的な変更に関する権利としてデフォルト・ルール上認められている丸の権利につきましても,裁判所に対する申立権も含めて,信託行為の定めをもって放棄することができる,すなわちマイナスあるいはゼロとすることも可能であることを提案するものでございます。

 

 

 

続きまして,第56の相続人の権利義務の方についての説明に移らせていただきます。

 

 

 

 

 

これについては,甲案と乙案というのを,47ページで,対比しております。

甲案というのは,委託者自身が信託行為の定めをもって相続人の関与を排斥しない限り,委託者の相続人は委託者が有していた信託法上の権利義務を承継するという考え方でございます。

 

 

 

その根拠は,47ページから48ページに記載してありますとおり,委託者と受託者間の個人的信頼関係を重視して委託者の権利を一身専属的なものとまで考える必要はないということ,合併などの包括承継の場合との平仄,それから,先ほど申しましたとおり,委託者の信託法上の権利を現行法よりも縮小することを提案している上に,信託行為において,そもそも委託者の権利を放棄し,あるいは相続人の関与を排除する旨の定めを設けることも可能であるというようなことを理由とするものでございます。

 

 

ポリー

「信頼関係は相続できない気もしますが。」

 

 

 

これに対しまして,乙案でございますが,委託者の相続人は,法定帰属権者としての地位と報酬支払義務について信託行為に別段の定めを置いた場合を除いて,委託者が有していた信託法上の権利義務は承継しないという考え方でございます。

 

 

その根拠は,48ページに記載してございますけれども,主として,承継を認めると委託者の地位を有する者が多数になって法律関係が複雑化することを懸念するものでございます。

 

 

ただ,この考え方によるときは,委託者の相続人とはいいましても,委託者と無関係の第三者と異ならない地位を有するにとどまる,言ってみれば友達と変わらないということになりますので,例えば,信託債権者以外の者による信託財産に対する強制執行について,信託行為の定めをもってしても相続人に異議申立権を付与することができなくなってしまうのではないかというようなおそれがあり,不適当ではないかという指摘があり得るところでございます。

 

 

 

 

なお,念のためでございますが,乙案によった場合でも,委託者に利害関係人として認められている権利につきましては一律に否定されるわけではなくて,権利の性質ですとか,その相続人の立場に応じた,利害関係を有すると言えるか否かについての個別的な判断によるものと思われることを付言いたします。

 

 

 

 

最後に,第67の遺言信託についての説明に移らせていただきます。

 

遺言によって遺贈はできることは民法964条に定めておりますが,信託では,財産権の名義の帰属と実質的な利益享受者とが分裂する点におきまして一般の遺贈とは異なるので,遺言をもって信託を設定することが可能であるか疑義が生じ得ないではないと言われております。

 

 

そこで,現行法2条の趣旨を維持して,契約による信託の設定のほかに,単独行為である遺言による信託の設定も可能であることを注意的に明らかにするものでございます。

 

 

なお,ここで特に御審議いただきたいのは,遺言信託における遺言者の相続人に付与すべき権利義務についてでございます。

 

 

遺言は遺言者の死亡したときにその効力が生じますので,遺言信託におきましては委託者は当初から不在でございまして,委託者の地位の相続ということも観念し難いと考えられますので,遺言者の相続人が委託者としての権利義務を承継するとは言い難いと思われます。

 

 

そこで,契約による私益信託における相続人の権利義務の場合とは異なりまして,相続による承継ということではなくて,遺言者の相続人に原始的に権利義務を付与すべきか否かが問題となるわけでございます。

 

 

すみれ

「たしかに。」

 

 

もっとも,権利義務の原始的付与と申しましても,義務の方でございますが,これは,信託行為の定めをもって相続人に信託報酬支払い義務を課すか否かということでありまして,あくまで信託行為の定め方の問題であって,法律に基づく遺言者の義務の付与という問題ではないように考えられます。

そこで,問題となりますのは,先ほど御説明いたしました,信託に対する監視・監督的権能及び基礎的な変更に関する権利並びに信託終了時の法定帰属権者としての地位を原始的に付与すべきであるか否かという問題であると思われるわけでございますが,ここでは,このような点に関しまして,甲案と乙案の両案を提示しております。

 

 

 

 

甲案でございますけれども,遺言者の相続人に対し,生前信託の委託者が有する権利と同様の権利を付与するものとするものでございます。

 

 

これは,信託に関して委託者が有していた利害,例えば信託目的が達成されるか否か等を保護するためには,当初より委託者が不在である以上,かわりに,遺言者の相続人に委託者が存していたならば,有していた権利を付与することがふさわしい。

 

 

言いかえますと,委託者の有すべき権利を行使できるものがだれもいないとするよりは,委託者に最も近い立場にあるその相続人にこの権利を付与した方がベターであるというふうに考えるものでございます。

 

 

遺言者の相続人と受益者との間で利害が対立することによる弊害につきましても,資料に書いてございますような理由でさほど懸念するには及ばないか又は,対処可能ではないかと考えるものでございます。

 

 

 

 

これに対し,乙案は,遺言者の相続人に対しまして,法定帰属権利者の地位を除いて,生前信託の受託者が有する権利と同様の権利を付与しないとするものでございます。

 

 

受益者と遺言者の相続人とは相対立する利害関係にございますので,遺言者の相続人に適切な権利の行使を期待することは困難であると考えるものでございます。

 

すみれ

「乙案かなぁ。」

 

 

 

なお,利害関係人につきましては個別の判断によるべきであるというところは先ほどと同様でございますが,付言させていただきます。

以上で終わります。

 

 

  •  それでは,今の三つの点につきまして,いかがでしょうか。

 

 

 

 

  •  この問題はやはり非常に大きな問題だと思うのですね。これは,相続というものと信託というものをどう考えるか。今,余りないというか,ほとんどない民事信託というのの将来の発展可能性を残すのか,それとも残さないのかぐらいの話だと思うのですね。

 

 

 

すみれ

「そうだったんだ。」

 

 

とりあえず,コメントというか,私の意見だけ申し上げますけれども,まず申し上げるのは,相続人との関係のところですが,生前信託と遺言信託とで取扱いを異にするのはおかしくて,簡単に言うと,乙案ですね。とにかく。

 

 

 

つまり,英米において信託はいろいろな理由で使われていると思いますが,民事信託のところで使われている理由の大きなものの一つは,相続人から切り離そうという話ですから,ここで,自分が死んだ後,相続人がまた出てくるというような話は,本当はそういう意味での信託の真髄に反するような話ですね。だから,やはりこれは全然切り離してしまうと。

 

 

ただ,もちろんこれはデフォルト・ルールですから,委託者が相続人の中でこの人だけは信頼しているという人がいれば,信託条項に何らかの形で,この人にはこういう権限を残しておきたいと書いておけばいいだけの話でありますから。

 

 

 

それで,すぐにそういう形の信託がいっぱい出てくるかどうか分からないですが,ここでルールを決めてしまうのが将来の発展可能性を--特に甲案をとる場合ですけれども--閉ざすような気がするものですから,一言だけ,コメントします。

 

 

すみれ

「信託の真髄か。多分トラストの真髄だよね。」

 

 

 

  •  3点,続けて。

まず1点目,第55の「私益信託における委託者の信託法上の権利義務について」ということですけれども,この部分につきましては,先ほど○○幹事の方からお話がありましたけれども,別段の定めで現行法における権利まで付加することもできるし,逆に引くこともできるというふうな形で御提案いただいておりますので,ファミリー・トラスト的なものから流動化の信託まで,幅広く利用しやすいものではないかということで,非常に歓迎しております。

 

 

 

すみれ

「ファミリー・トラスト的はそうだと思う。」

 

 

ただ,その場合のデフォルト・ルールの在り方のところなのですけれども,これについては,実際,ちょっと業界内で意見とかも分かれておりまして,多数派の方は,信託関係が錯綜するとかいうことから,基本的には原案の方がいいのではないかということなのですけれども,一部からは,ファミリー・トラスト的な信託の場合についてはやはり委託者の意向を非常によく聞かないといけないということもありまして,この別表の権利についてはすべてデフォルト状態で付与していただけないかというような意見も少数意見としてございました。

 

 

 

次に,第56の相続人の権利義務のところですけれども,これにつきましては,やはり法律関係が錯綜するということもございますので,乙案と。

 

 

第67のところにつきましても,遺言信託というのはそもそも相続人の意向を排除するというようなことが大きいと思いますので,これについても乙案ということで,受託者に対する監視のところにつきましてはまたこれから御提案があると思うのですけれども,信託管理人のところとかが大分整備されておりますので,そういう形で対応すればいいのではないかというふうに考えております。

 

 

 

 

 

  •  私も,第67,第56についての甲案,乙案の話についてですけれども,○○委員,○○委員と同じく,乙案を支持するという立場から意見を申し上げたいのですが,つけ加えるのであれば,銀行において一番法律的な問題が出てくるのは預金の相続でございまして,かように日本において相続間の紛争というのは多いということでございます。

 

 

すみれ

「日本て相続に関する争いが多い国なのかな。」

 

 

 

 

今現在,遺言信託というのは余りないと。

 

もちろん,民事信託ということもないわけですけれども,商事信託といいましょうか,銀行が行うこと,遺言信託もできる信託銀行はありますけれども,ただ,実際に量的には英米と比べたらもちろん余りないわけでございまして,実際にやっているとしても,遺言の作成であるとか遺産整理であるとか,狭義の遺言信託と言われるものでございます。

 

 

 

これを発展させていこうということであれば,やはりそういう事実上トラブルが生じるということを避けていきたい,安心して使えるような遺言信託を作るということであれば,やはり乙案を採用すべきではないのかなというふうに思っています。

 

 

 

○○委員がおっしゃるとおり,デフォルト・ルールということでございますので,当該委託者ないしは遺言者が特に望むということであれば,そのように設計すればいいということだと思います。

 

 

すみれ

「遺言の作成や遺産整理は狭義の遺言信託って言われていたのか。」

 

 

 

  •  ほかに,御意見いかがでしょうか。

○○委員は,要するに第56,第67とも乙案の方がいいという御意見ですね。

  •  はい,そうです。

 

 

  •  別に甲案支持ということではないのですが,乙案をとった場合にどういう関係になるかということを確認したいのですが。

 

第56の方が分かりやすいと思うのですが,第56で乙案をとった場合は,これは,しかし,一定の権利義務についてはなお相続人が取得するということになっていますね。帰属権利者としての地位等々。

 

 

そうしますと,それは何によって取得するのでしょうか。特定承継なのか,あるいは原始取得するのか,それと相続放棄との関係はどうなるのかと,そのあたりを確認させていただければと思います。

 

 

 

 

  •  確かに,何によって帰属権利者の地位を取得するか。もしかしたら,極端な意見は--いや,○○委員が言われるのかもしれないけれども,それも与える必要はないという意見が出てくるのかもしれないけれども。

 

 

 

  •  いえいえ,そんなことは申しません。

法定帰属権利者というのは,一番最後に終了してしまって,しかもだれもいない場合に仕方なくという形ですので,本当は信託の枠外みたいな話ですから。

 

 

復帰信託ですので,それはしようがないでしょうというだけの話ですから。まあ,それにどういう理屈をつけるかというのが難しいんだよと言われれば,それはそれまでのことですけれども,まあ大した問題ではないと私なんかは思うのですけれどね,向こうでもそうやっているんだし,というだけの話です。

 

 

すみれ

「向こうでやってるから、こっちでもこれでいいだろうって話かな。」

 

 

  •  でも,やはり承継ではなくなるんでしょうね。信託法の法制の中で,もうだれも受益者あるいは先順位の帰属権利者がいないときに,最後は無主物にしないで,少しは関係ある委託者の相続人にと。

 

 

 

すみれ

「信託法の中で承継はやっぱりないのかな。」

 

 

 

  •  そうですね。何十年もたって,何で国庫に帰属させないんだという感じもあるのかもしれませんけれども,英米でも。

 

 

まあ,向こうでは黙示の意思説というのをとっているのですけれども,結局のところは。だから,結局読み込むんですよね。そこのところだけは読み込む。

 

 

 

 

  •  委託者の意思として。

 

 

  •  そうですね。

まあ,でも,本当に擬制された,推定された意思という……。擬制と推定は同じなのかな。

仕方がなくというだけの話なんですね。

 

 

 

  •  擬制というか,委託者の意思だというふうに言えば,結局,信託行為の中で黙示的な意思として最後の帰属権利者だという考え方なんですね。

 

 

 

確かに,理論的な説明はしにくいところがあるけれども……。

○○委員も,御意見としては乙案の方が適当だという御意見ですか。

 

 

 

  •  いえ,甲と乙,どちらも相続によって承継するのかなというふうに思いまして,そうだとすると,あとは範囲を実質的に考えればいいにすぎないのかなという印象を持ったわけです。

 

 

  •  それはそうですが,しかし,甲案でいくと,排除するものを列挙していくわけですね。

 

 

  •  どの範囲で排除するかというのは,これは次の段階の問題で,まず,何によって承継するのかということがはっきりしませんと,議論しにくいなと思ったのです。

 

 

多分,そういうことを言うと,○○委員から,そんなことはないんだというような御批判をいただくと思うのですが。

 

 

 

 

 

  •  なかなか難しい問題ですけれども,何を承継するのか,何が最後相続人に行くのかというのは先に決めていって……。

 

 

 

  •  ただ,ここは,報酬支払義務も承継するというふうになっていますよね。

 

 

しかし,それは,相続人が相続放棄すれば承継しないことになると思うのです。

 

 

だとすると,承継するのはやはり相続によって承継するのではないかと思いまして,だとすると,結局は範囲の問題かなというふうに思ったわけですが。あるいは,そういう考え方自体が何か間違っているのかもしれませんけれども。

 

 

 

  •  よく考えているわけではないのですが,相続で対象の一身専属性を広く認めるというような説明もできるでしょうし,政策的にこの部分についてはいわば特定の承継者を決めているのだけれども,その承継者自体が相続人という地位に依拠しているので,したがって,相続放棄をすればもはや相続人ではない以上,承継者たる資格もないという,いずれの説明も可能ではないかという感じはしておるのですが,説明としましては。

 

 

 

それで,ちょっとまた違う話かもしれませんが,中身としては乙案でもよろしいのかなと思うのですが,その際気になりますのは,先ほどから,報酬支払義務だけは継承させるというところで,そういたしますと,報酬支払義務がかかっているときに,やはり相続人というのは,その義務者として,受託者がきちんと事務をやっているかということについてかなり利害を持つということが考えられるのですけれども,その際に,報酬義務だけは負って,あとは,一般の利害関係人としての職務の引受けの催告権とか,こういうことだけでいいのか,その部分も結局は委託者がそこまで考えて書くでしょうということに期待していいのかというのはちょっと気になるところです。

 

 

 

 

もう一つ,これはむしろ前提事項として確認したいのですけれども,相続人に行くというような手当てがないとしますと,委託者としては,わざわざ自分にある程度監督権を留保したときに,自分が監督権を行使できなくなったときにどうなるだろうということを考えたときに,ほかの人に任せたいということがあるかと思うのですが,その際に,可能性としては,自分の権能を授権するような形にするというと,地位を移転するということが考えられるかと思うのですが,それはいずれも可能という前提でよろしいでしょうか。

 

 

個別に権限を授権していく,与えていくということも,まとめてこの監督権を含めた委託者の地位を移転する形で,自分の思う人に権限を引き継いでもらうということが可能であるという前提であるかどうかということなのですけれども。

 

 

 

 

 

  •  これも私の個人的な意見だけれども,相続の方は否定しても,その否定する理由が仮に一身専属性,委託者のところだけにとどまるという一身専属性だとしても,権限をだれかに引き継いでもらうというのはまた別なもので,本来,一身専属性といっても,相続と譲渡なんかはちょっと違うのではないかという感じがしていますけれども。

 

 

しかし,○○幹事が言われたように,一つの問題であることは確かですね。

 

 

まあ,ここは,どういう前提でもって全部が組み立てられているか,まだ余りそこまでは踏み込んでいないと思いますけれども,どうでしょうかね。

 

 

すみれ

「相続と譲渡は違う感じがする。」

 

 

  •  委託者の地位の移転はできると思いますが,複数の人にそれぞればらばらにということでございますか。例えば,Aの権利はこの人,Bの権利はこの人と。

 

 

そこは何か,一人の人ならいいけれども,ばらばらにそれぞれの権利を,代理ではなくて,地位の移転ができるかというと,ちょっとどうかな,難しいかなという気がいたしますけれども。

 

 

  •  信託行為で定めておけばいいのでしょうか。委託者が留保できるような権限について,これは自分ではなく,Bに行くという。

 

 

  •  まとめてだれかに行くと。

 

  •  いえ,この権限はBというふうに,別々に。そこはやはりできないと。

 

 

  •  例えば,生前,委託者の権限を幾つかに分散するということは信託行為でできるはずですよね。それは今だって,例えば指図権だけ取り出してだれかに与えるという形で。

 

 

  •  そうすると,その後の処分によっては,しかし,できないと。

 

 

  •  ただ,できるといっても何か限度があるかもしれないけれども。

 

例えば,取消しの関係の権限だけはだれだれとか,書類閲覧請求権はだれだれとか,そういうのはちょっと余りにナンセンスだと思うし,それはできないというか……。しかし,あえてそれをやれば,だめだとも言いにくいのかもしれませんけれどね。

 

 

ですから,基本的には,委託者が信託行為で定めれば,その権限をいろいろ分散することも不可能ではないのではないでしょうか。

 

いや,分かりません,私の個人的な意見ですけれどね。

 

ほかに,何か。民法等の一般的な原則にかなり関係する問題かもしれませんので。

  •  既に出ている話の繰り返しかもしれませんが,乙案をとった場合に,報酬支払義務のほかに,例えば監督是正権限をある程度パッケージにして相続人に与えるということを信託行為で決めるとすれば,有効というお考えでしょうか。

 

 

  •  それは有効だと思います。

 

 

 

 

  •  しかし,なぜそれができるかというところが,やはり乙案をとったときにはやや難しいかなと思います。

 

 

○○委員がおっしゃった,相続なのかどうかということなのですけれども。

 

 

相続財産の範囲を被相続人と第三者との間で自由に定めることができるということの一例になるのだろうと思うのですね。

 

 

それは,全部外に出してしまうのか,まだ少し手元に置いておくのかということだから,手元に置いておけば,相続の規律で被相続人から相続人に承継されるのかもしれないのですけれども,何か,相続財産の範囲を被相続人と第三者との間の契約でというか,法律行為で決めるというのはどうも余り例がないかなというふうに思います。

 

 

 

あと,○○幹事がおっしゃったようなことは,あるいは指図を第三者に与えるというようなものは,その指図の権限を,受ける方との間の,そこでちゃんと権限の移転に関する当事者間の合意があれば,それはそれで一定の範囲では可能だと思うのですが,相続人の意思的な関与がないままに,相続人に,権利であれ,取得されるというのは,第三者のためにする契約とか,何かそういうのを使わないといけないのではないかなというふうに思います。

 

 

あるいは相続と言うか。相続と言うと,先ほど申し上げたような問題が残っているのではないかなと思います。

 

 

 

  •  何か相続の根本原因にまで来て,意外と難しい問題になってきましたけれども。

特定の人間に承継させるというのはいいんですかね。相続人という形で一般的に承継させるのが,相続の原理からするとおかしいということですね。

 

 

 

 

  •  特定の人に承継させるというのは,遺贈で承継させることはできると思うのですが,信託行為で特定の人に承継させることが信託行為の当事者である委託者と受託者との間でできるのかというところに,私はまだ少しこだわりがあります。

 

 

 

  •  ここでは,恐らく遺贈という形をわざわざとらないでやるという場合は考えられるでしょうからね。

なかなか理論的に難しいところがあるかもしれません。

 

まあ,仮に甲案をとっても,実質上同じようなことができるのであればいいのですが。

 

 

  •  実質的には乙案の方がいいのだろうなとは思いますが,乙案をとったときに,これはデフォルト・ルールであって,信託行為で変えられるという,そこの命題がほかのところの問題とは少し違うように思います。

 

 

 

  •  だから,先ほど方式と中身の話をしたけれども,中身としては乙案でねらおうとしているところがよさそうだと。だけどうまく説明できるかという問題ですよね。

 

 

  •  今の○○幹事のおっしゃった点については,検討したいと思います。

 

もう一つ,乙案で,乙案の方が大勢な感じでございますが,気になっておりますのは,このペーパーにも書いてございますが,裁判所に対する申立権みたいなものを相続人に付与すると勝手に信託行為に書いて,それによって申立権を付与する,言ってみれば訴訟提起権というのを第三者に契約で付与するということは難しいのではないかなという気がするのですが,そうしますと,乙案をとった場合にはそういう点でも何か難しい問題が生ずるのではないかと。

 

 

信託行為の定めによって,例えば第三者異議権を付与することができるのかというあたりが疑問があるところでございまして,その点からどのように考えたらいいのかというところを御教授いただければと思っておりますが。

 

 

 

 

甲案でしたら,外せばいいわけですけれども,乙案ですと,さっき言いましたように,相続人というのは言ってみれば赤の他人と同じようなものであると。

 

 

それで,赤の他人に,あなたには訴訟提起権がありますよと契約で書いたら,じゃあ訴訟提起権があるということになるかというと,それはちょっと難しいのではないかということで,範囲の問題に加えまして,そういう付与できる権利も限定されてくる可能性があるのではないかというところが気になっておりますが,いかがでしょうか。

 

 

 

  •  これは,さっき○○委員がおっしゃったことを私が理解しているのかということなのですけれども,これは,例えば「信託管理人」という言葉が出ている。信託管理人に好きな相続人を入れ込んでおけば全然何の心配も要らないということになるのですか,今の話は。

 

 

もしそうなら,方法はある。相続人ということにこだわる必要はないのであって,相続人全部にこういう権限を与えようという人はないと思うのですね,デフォルト・ルールでこういうルールがあったときに。相続人の中のだれかだと思いますから,それを信託管理人にしておけばいい。

 

 

 

  •  そうやれば対応できると思います。

 

 

  •  いろいろ御意見が出ましたが,ちょっと法律構成,それから結論の点も含めて,ある程度皆さんの御意見の方向はそれなりに出ているようですけれども,なお詰めなければいけない点もあると思いますので,また第2ラウンドで御議論を……。

 

 

  •  1点だけよろしいですか。

 

これは今日がいいチャンスなのかどうか,よく分からないのですけれども,英米での民事信託の使われ方で典型的な形は,今,生前信託と遺言信託と両方ありますが--とにかく一つまず受益権を設定して,典型的には配偶者。

 

 

配偶者が生きている限りは,こうやって,受益権がありますよと。配偶者が死んだ後は,今度は息子ですよとか,娘ですよという話をつくりますね,こういう形で。

 

 

今度,こういう日本の信託法改正の中で,特に遺言信託の形でそういうような枠組みを作るということができるかどうかは,民法上のそれこそ相続法理でどういうことが認められているかということによって決まるので,直ちにそうはならないのか,あるいは……。いや,どういうことなのか,ちょっと教えていただきたいだけなのですが。あるいは,生前の場合もそうです,もちろん。

 

 

 

 

  •  生前の場合で言えば,それは連続の受益者を定めるということですよね。それはできるということで。

 

 

 

 

  •  遺言の場合は。

 

  •  遺言といっても,遺言の信託ですよね。だから,信託として連続の受益者を定めるということは,少なくとも信託の問題としては構わないということになるのではないでしょうか。

 

 

それで,あとは相続法,要するに遺留分だとかそういう問題が関係してくれば,それはまた別の問題として……。

 

 

いや,分かりません,そこまで言い切っていいのかどうか。少なくとも,ここは,遺言信託という形で遺言で信託を設定することができるという話で,今のように,どういう形の受益者の決め方をしなくてはいけないのかというのは,またどこかで……,連続受益者はやるのでしたっけ。テーマにはないのですか。

 

 

すみれ

「遺言信託って名前だから、遺言のイメージが強いのかな。信託遺言でも良かったかもね。信託で遺言するんだから。」

 

 

 

  •  受益者変更とか,そのあたりで。

 

  •  そこら辺と少し関係すると思いますけれどね。

まあ,今ので結論が決まったわけではないと思いますけれども,お考えいただくということにいたしましょうか。

 

では,特に御意見がなければ,今日はこのぐらいにしたいと思いますけれども,どうも長いことありがとうございました。

 

 

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すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。フェルメール、牛乳を注ぐ女観ました。テレビで。」

 

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