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2016年加工編   法制審議会信託法部会    第5回会議 議事録
2016年01月12日

2016年加工編

法制審議会信託法部会

第5回会議 議事録

 

 

 

第1 日 時  平成16年11月19日(金)  自 午後1時03分

至 午後5時06分

 

第2 場 所   東京高等検察庁会議室

 

第3 議 題

信託法の見直しに関する検討課題(3)について

 

第4 議 事   (次のとおり)

 

 

 

議    事

 

  •  それでは,今日も何回かに分けて議論していきたいと思いますので,その分け方も含めまして,○○幹事に説明をお願いします。

 

  •  それでは,本日のテーマでございますが,先回積み残しをいたしました受託者の権限の問題をまず最初にやりまして,それから本日のテーマを幾つかに分けてやりたいと思います。

 

まずは,受託者の有限責任に関する問題をやりまして,それから補償,報酬の問題,それから差止め,検査役,法人役員の連帯責任の問題,最後に受託者の解任等及び合併・会社分割による受託者の変更の問題と,大体五つに分けまして,この順番でやりたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

 

では,私の方から,まず最初に,前回の資料で積み残しとなりました「第33 受託者の権限について」と「第34 受託者の権限違反の行為等について」につきまして,提案の中身を概略説明したいと思いますので,よろしくお願いいたします。

 

まず,受託者の権限でございますが,第1回会議でも御説明しましたとおり,受託者の権限といいますのは信託財産の管理又は処分に限定されるわけではなくて,信託行為に定められた目的の達成のために必要な行為であればこれを行い得るものと考えております。

 

ところで,受託者は信託目的の達成のために必要な行為を行い得るからといいましても,例えば,利殖を図ることを目的とする信託に係る信託行為において投資対象の財産について限定が付されている場合のその限定でありますとか,あるいは,共同受託者全員の承諾を要するなど受託者の権限の行使方法についての制約が課されている場合におけるその制約,こういうものは権限に対する制限であると解すべきことになると思われます。

 

この点は第1回会議でも指摘されたところでございます。

 

そこで,今回の提案におきましては,御覧のとおり,甲案,乙案と書いてございますけれども,この趣旨を明らかにするために両論併記としております。

 

 

 

 

甲案というのは,「信託行為の定めに従い」という文言を挿入したものでありまして,乙案というのは,ただし書の方で,「信託行為に別段の定めがある場合には,この限りでない」と規定する方法によったものでございまして,実質的には書きぶりの問題ではございますが,検討すべきは,信託行為の定めと申しましても,信託目的も形式的には信託行為の定めの中に含まれますので,意味がダブってしまうのではないかという懸念があるところでございます。

 

そのような観点から,本文で「信託行為の定めに従い」とする甲案と,ただし書に記載する乙案とのいずれが適当かということを御審議いただきたいと思っております。

 

 

なお,アステリスクで記載した点及びその説明につきましても報告書と同一でございまして,かいつまんで申し上げれば,緊急のために必要があるときは借入れを行うことができる旨を確認的に規定すべきであるとの見解,あるいは,借入れや信託財産に対する担保権の設定等の行為は信託財産に対して危険を与えかねない行為であることから,これは特別に規制すべきであるとの見解,このような見解を前提として,これらの行為に関する特別の規定を設けるべきであるという考え方もあるかと思います。

 

 

すみれ

「信託の目的と受託者の仕事内容ははっきり書くんだね。」

 

 

番人

「家族信託の契約書だと、信託不動産の管理、運用および処分の方法に当たる部分。不動産になると受益者の指図や承諾が必要であれば、信託目録に記録する必要がある。」

 

 

もっとも,これらの行為を技術的に特定できるかについて検討することが必要になりまして,例えばデリバティブというようなものも入ってまいりますと,具体的にその性質を有する行為を包括的に規定することはなかなか難しくなってまいりますので,それであれば,むしろ受託者に対する善管注意義務,忠実義務に委ねるべきであるとの考え方などもあり得るということを指摘させていただいた次第でございます。

 

 

 

 

続きまして,「第34 受託者の権限違反の行為等について」というところの説明に移らせていただきます。

 

現行法31条によりますと,受託者による信託の本旨に反する信託財産の処分行為につきまして,一定の場合における受益者による取消権に関する規定を置いております。

 

そこで,まず提案の1でございますが,第1回会議でも御説明いたしましたとおり,受託者の信託違反行為については現行法と同じく取消権構成をとることとした上で,次に述べる5点につきまして検討ないし変更を加えたものでございます。

 

 

 

 

まず第1に,現行法においては,取消しの対象は処分行為としておりますが,ここでは,54ページの下から二つ目の段落に記載しておりますが,処分行為であるか否かにかかわらず,当該行為が受託者の権限に違反したものであるか否かを端的に問題とし,権限違反行為であれば,悪意又は重過失の第三者に対しては受益者は当該行為を取り消すことができるものといたしました。

 

 

第2に,現行法におきましては,信託財産に対する登記・登録制度の有無により取扱いが異なるものとされておりますが,ここでは,56ページの第2段落に記載いたしましたとおり,登記・登録を問題とすることなく,第三者において受託者の行為が権限違反行為であることについて悪意であるか否かを問題とすることにいたしました。

 

 

第3に,56ページの第3段落に記載してございますけれども,前回,第18で信託事務遂行義務というものを提案いたしましたが,そのような受託者,受益者間の対内的な関係と異なりまして,対外的な第三者との関係での受託者の権限の有無が問題となる局面であることにかんがみまして,ここでは「信託の本旨」という表現は用いないことといたしました。

 

 

すなわち,受託者の対外的権限の範囲については,第33の説明で申し上げたとおり,信託行為の定めに従い明確に定められることになるわけでございます。

 

第4に,提案1の文言にはあらわれておりませんけれども,55ページの末尾から記載しましたとおり,この提案における取消しというのは,信託財産に対する効果帰属を否定するという,いわば相対的取消しにとどまるものではなく,権限違反行為自体のいわば絶対的な取消しでございまして,第三者としては,信託財産に対する効果帰属を主張できなくなることはもちろん,受託者の固有財産に対する効果帰属も主張できなくなるものと考えております。

 

 

 

 

第5に,54ページの最後の段落から55ページの上段にかけまして,第1回会議での御議論も踏まえまして,第三者が保護されるための主観的要件につき検討いたしました。

 

その結果でございますが,受託者は信託財産の名義人であり,外部からは完全な権利者と見えることにかんがみまして,第三者の軽過失までは問わず,原則として第三者の善意・悪意のみをもって判断基準としつつ,重過失については悪意と同視し得るものと考えまして,結局,悪意又は重過失の第三者に対しては取り消し得ることとしたものでございます。

 

 

以上の5点について,このような結論に至った理由につきましては今回の資料に詳しく記述させていただいておりまして,第1回会議でも簡単にではありますが御説明したところでございますので,本日での口頭での説明はこれ以上は省略させていただきたいと思います。

 

 

なお,受託者は信託財産に効果を帰属させる意思であったが,取引相手方としては受託者個人と取引していることを認識しているにすぎず,それ以上に信託財産に効果を帰属させる取引であるとの認識までは有していなかったという場合はどうなるのかということにつきましては,結論としては,第三者が受託者の権限違反について善意無重過失であれば,信託財産に効果を帰属させてよいと考えるものでございます。

 

 

 

 

 

理由の詳細は資料の記述に譲りたいと存じますが,現実的な利益衡量だけを申し上げますと,受託者が信託財産に効果を帰属させる意思を有し,一方,取引相手方はかかる意思を有しない場合でありましても,仮に受託者の行為が権限内であれば取引の効果は信託財産に帰属し,取引相手が信託財産にもかかっていけることになります。そうでありますと,受託者の行為が権限外である場合であっても,同様の結論をとっていいのではないかと。

 

確かに,権限外であるということであれば受益者の利益が害されそうでございますが,他方において,取引の相手方も権限外であることについては善意無重過失で保護されるべきであって,権限の内外で結論を異ならせるようなアンバランスには至らないのではないかということで,このような結論を示させていただいたところでございます。

 

 

 

 

 

続きまして,提案の2に移らせていただきますが,提案の2は,受託者の権限違反についての問題とはいわば別次元の,受託者と第三者の効果意思,認識の相違に関する問題でございます。

 

 

 

しかし,報告書において第34のアステリスク3として問題提起しておりました関係上,ここで議論をさせていただきたいと思っているところでございます。

 

第1回会議で申し上げましたとおり,受託者と第三者との間で取引の効果の帰属先について認識が異なる場合についての取扱いの規定がないということから生じる問題でございます。

 

ところで,このような認識の相違につきましては,一つは,受託者は自己の固有財産に効果を帰属させる意思しか有していなかったが,取引相手方は信託財産に効果を帰属させる意思だった場合,逆に,第2の場合としては,受託者は信託財産に効果を帰属させる意思であったが,取引相手方は受託者の固有財産に効果を帰属させる意思であった場合と,そのように二通りあるわけでございます。

 

 

今のを具体例で申し上げますと,例えば,56ページの末尾から記載しておりますとおり,受託者は自己の固有財産に効果を帰属させる意思しか有していなかったものの,取引相手方は信託財産に効果が帰属する取引であると信頼し,かつ,取引の外観からしてもそのように信頼することに相当な理由がある場合において,当該第三者が信託財産にかかっていけるとするかという問題でございます。

 

 

この点につきましては,例えば,借入債務負担行為につきまして,現行法16条の記述に従えば,相手方の善意にかかわらず,受託者の認識に従って,固有財産のみに効果が帰属する行為となりそうでございます。

 

 

その方が信託財産の安全性には資するわけでございますが,このような結論は相手方の期待を犠牲にすることになりますので,信託取引が敬遠されることになり,かえって受益者の利益に資さないことになるとも考えられます。

 

 

しかも,特に実務的に対処する必要性の高いと考えられます相殺の局面においてどのように解決するかという問題が生じてくることになります。

 

そして,仮に相殺の場合には取引の相手方の相殺の期待を保護することといたしますと,今度は単純な債務負担行為の場合と平仄が合わなくてもよいのか,あるいは相殺の場合には民法478条の準占有者弁済の規定の類推によって解決することができますので,その趣旨をここでは規定したものだから,特に保護されると相殺の場合は考えてよいのかと。

 

 

あるいは,相殺の局面ではなくて,単純な債務負担行為の局面におきましても,表見法理等により取引相手方の期待を保護することとするのか,それとも,民法の代理の場合と同じように,受託者に信託財産の効果を帰属させるという意思があるのであれば,表見法理によって信託財産に効果を帰属させるということも言えるといたしましても,そもそも受託者にこのような効果意思もないときには,表見法理によって信託財産に効果を帰属させるとも言いにくいのではないか等が問題になってくるところでございます。

 

 

 

更に1点付言すれば,商法504条によりますと,代理人には本人の効果を帰属させる意思しかない場合でありましても,相手方が本人のためにすることを知らないときは,代理人に対して履行の請求ができるとしておりまして,すなわち効果意思のない者にも請求できるとしております。

 

 

そのような考え方,効果意思のない者にも効果が帰属するという考え方をここでも応用することができるか,などの点が問題となってくると思われるところでございます。

 

 

ポリー

「法律が変わってきた時に条文の量が多くなりそうですね。」

 

 

 

 

以上につきまして是非とも審議願いたいというのが,提案2の趣旨でございます。

 

最後に,アステリスクの1,2の点につきまして,若干付言申し上げます。

 

アステリスクの1でございますが,これは,取消権者につきまして,受託者の行為のチェックについてはまずもって受益者の判断を優先させるべきであるという考え方をとれば,現行法どおり受益者のみということでいいと思うのですが,受益者の利益を可及的に保護するという観点からは,委託者,他の受託者はもちろん,実際に行為を行った受託者自身も含めるべきかというのが問題となるところでございます。

 

ただ,特に自ら違反行為をした受託者がその行為を取り消すというのは信義則に反し妥当ではないという印象もございますので,更に検討することとしたいということでございます。

 

アステリスクの2でございますが,これは,本来受託者個人にはかかっていけないはずの有限責任取引に係る取引相手方につきましても,受託者の行為が権限違反であるときには,受益者とのトラブルを避ける観点から受託者の固有財産に対する請求を認めることとするか否かにつきまして,なお検討することとしたいということでございまして,その理由は57ページの末尾以降に記載したところでございます。

 

以上,全般につきまして,考え方,検討すべき点について御審議をお願いいたします。

 

 

 

  •  それでは,第33と第34のところ,いかがでしょうか。

 

  •  第33と第34両方,簡単に御意見を申し上げます。

 

第33の受託者の権限のところにつきましては,私ども受託者としては,やはり借入れというのが信託事務を円滑に進める上で非常に重要なウエートを占めておりますので,信託行為の定めによって禁止されていない限り,受託者には信託目的の範囲内で権限があるものという形にしていただきたいと思っております。

 

 

 

その考え方との平仄というところからしますと,もちろん甲案でもそういうような可能性はあると思うのですが,乙案の方がより整合的ですので,乙案の方に賛成したいと考えております。

 

 

 

 

 

次に,第34の1でございますが,この規律につきましては,原案で賛成だということでの意見が大勢を占めておるわけですけれども,他方で現行法においては31条と16条に分かれておりますので,やはりその趣旨を生かして,登記というのは別にいたしまして,処分行為と非処分行為とを分けて規律した方がいいのではないかというふうな意見と,第三者との権限違反の行為のところについては有償行為と無償行為というのを分けるという考え方もあるのではないかと,そういうような意見もございました。

 

 

すみれ

「何で登記登録の場面で、処分行為と非処分行為を分けるの?何で有償行為と無償行為を分けるの?」

 

番人

「何でだろうね。」

 

 

 

あと,2のところの外観の問題につきましては,この問題というのは,当然のことながら,信託財産の独立性,受益者の保護という問題と取引の安全性,どっちに重点を置くのかということだと思います。

 

そういう観点から,どちらかというと,私ども受託者の立場からいたしますと,受益者の保護を図りたいというふうに考えております。

 

ただ,そういう形の規律を設けていただきたいということではなくて,現行と同じような形で,解釈といいますか,そういう形に任せたらどうかなというところでございます。

 

 

 

 

  •  ほかに,今の点に関連して,いかがでしょうか。

 

先ほどの○○委員の,処分行為と非処分行為とで分けるというのは,一応現行法の立場をそれなりに尊重したいという意見ですね。

 

  •  そういう意見もあったということです。原案の方が大勢ではありますが。
  •  第34の方からでもよろしいでしょうか。

 

これは,「権限に属しない行為」というのは,例えば,権限として借入れ行為はあったけれども,不適切であると,必ずしも現在借入れをしなくてよいときに借入れをしたとか,売却すべきではないときに売却をしたというときは,「権限に属しない行為」を行ったときに当たるという前提なのでしょうか,それとも当たらないという前提なのでしょうか。

  •  まあ,一種の善管注意義務の違反……。権限があるわけですよね,借り入れる。

 

  •  一言だけつけ加えて申させていただきますと,信託の本旨に反する処分というのは,本旨に反するわけであって,別に権限外であるということではなかったと思うのですが,それを前提として,疑問なのですが。

 

  •  御指摘の点は,恐らく善管注意義務違反が果たしてここの規律に入るのかという点かと思いますけれども,我々といたしましては,単なる善管注意義務違反につきましては権限外というふうには言えないということですので,この規律の対象からは除かれるということになると考えております。

 

 

すみれ

「単なる注意義務違反と重い注意義務違反と軽い注意義務違反があるのかな。」

 

 

番人

「初めて知った。不動産登記の信託目録では、善管注意義務の規定は原則として記録しない。」

 

 

 

  •  その点は,現行法とは大きな違いであるわけですね。

 

  •  現行法におきましては,重大な善管注意義務違反は権限外というような見解はあるかと思いますけれども,単なる注意義務違反というのはこの処分行為の対象からは外れるという理解だったかと存じておりますけれども。

 

  •  それは処分行為の解釈の問題ではなくて,本旨に反するということの解釈の問題ではないかと思うのですが。

 

その行為が現在不適切な行為であると相手方が分かったときにも,別段救済は一切されないということになりますでしょうか。

 

 

  •  そうですね。まあ,今の例なんかだと単なる善管注意義務違反は違反なのかもしれないけれども,○○幹事が言われたように,どういうものが本旨に反した処分と言えるかと,現行法で言えばその解釈の問題なのでしょうね。

 

まあ,どこまでどういうものが入るかという厳密な議論は恐らく今までも余りなかったと思いますけれども,○○幹事は,入るべきだというふうにお考えなのでしょうね,推測するところ。

 

  •  権限の問題ではなくて,本旨に反するかどうかというのは適切かどうかで決まるというのは,議論がないというよりは,ある意味では当然のことではないかと思いますが。

 

 

 

 

  •  多少理論的な問題も含まれているけれども,皆さん,いかがでしょうか。

 

 

  •  今の問題と関連してなのですけれども,相手方の保護をどのように図るかということはもう少し検討した方がいいのかなという気がいたします。

 

つまり,民法117条の問題として扱っているようですけれども,無権代理だとしますと,追認が可能かどうか,追認が可能だとすると,だれが追認するかという問題もあるかと思います。

 

それから,それに関して,催告権,あるいは相手方の取消権,それから現行法で言う32条の短期消滅時効といった,相手方保護をどういうふうに図るのかというのが,もし,今,○○幹事のおっしゃったように第34の権限違反が広がり得る場合には,とりわけ考えておく必要があるかなと思います。

 

 

 

 

それからもう一つは,今度は,受託者と取引をしようとする相手方は一体何をすればいいのかということも詰めておく必要があるのではないだろうかと思います。例えば受託者と和解をするというときに,一体何を調べればいいのかということがよく分からなくて,そうしますと受託者と取引をする相手方が不安定になって,受託者が行動しにくいという危険がないだろうかというふうに思います。

 

 

  •  さらにもう1点。

私の発言が,善管注意義務違反の場合はどうかという発言だというふうに御理解されたのですが,前回やりました忠実義務違反の利益相反行為とかに当たるとされているものについては,これは権限がないのですか。

 

 

  •  忠実義務違反は権限外と考えております。

 

  •  すべてのものがそうだったかは,ちょっと今,細かいところは忘れましたけれども,典型的な忠実義務違反行為であれば,第三者との関係での行為が,そこも幾つか……。

 

 

  •  この前お話ししましたのは,対内的には無効であると。それで,第三者が絡んできたときにはこの規律によりますので,権限違反行為となりまして,相手方が善意無重過失であれば取り消すことができないと,相手方に対しては有効な行為になる。

 

そのかわり,もしも相手方に対して取り消し得る行為であれば,取り消して物の返還を請求できるという考え方によりました。

 

  •  2点なのですけれども。

1点は,今の忠実義務の点についての御参考というか,会社法が参考になるかどうか分かりませんけれども,忠実義務については一般的な規定と個別的な規定があるのですけれども,一般的な規定の場合には,それに例えば代表取締役が反して対外的行為をしたとしても,その行為の効力は無効だというふうには普通は解されていません。

 

それに対して,個別的な規定で,例えば264条の競業取引の規定と265条の利益相反取引の規定がありますけれども,後者については,一般に違反した行為の効力は無効だと,ただし,いわゆる相対的無効とする大法廷判決がありまして,相手が善意であれば主張できないという考え方であるのに対して,264条の競業取引の方は,具体的な規定はあるのですけれども,違反したからといってその効力が当然に影響を受けるというふうには解されていないということがあります。

 

まあ,これは御参考にすぎないので。結局,抽象的に,忠実義務違反の場合はどうですか,あるいは善管注意義務違反の場合はどうですかというのは,なかなか難しい問題だというぐらいのことかと思います。

 

第2点は,○○幹事が最初におっしゃったことに戻って,民法の先生方にお聞きしたいのですけれども,代理人が財産の処分権を持っている場合に,その財産の処分が委任の本旨に反したという場合は,これは無権代理になるものなのかどうかと,そういった平仄も参考になるのではないかと思うものですから。

 

あるいは,委任の善管注意義務に違反した場合というのはあるのかもしれませんけれども,その辺も教えていただければと思います。

 

 

  •  今の御指摘のとおり,代理のところでも同じ問題が普通議論されていると思いますけれども,善管注意義務違反の行為が当然には権限外の行為だとは解されていなくて,むしろ多くのものは内部的な責任が発生するにすぎないと考えていると思いますね。

 

 

だけども,これはすべての教科書かどうか分かりませんけれども,少なくとも一部の有力な説は,重大な善管注意義務違反はやはり権限外の問題として扱うという,そういう考え方もあるのではないかと思っています。

 

 

ですから,○○委員のおっしゃるように,善管注意義務の違反かどうかとか,忠実義務の違反かどうかと,抽象的には決められないところがあるかもしれませんね。特に第三者との行為等の関係では。

 

 

その点,現在の信託法は,「信託ノ本旨ニ従ヒ」でしたか,ちょっと別な概念を立てて,そこが善管注意義務と忠実義務とを切り離した形の規定になっているので,その行為の解釈として解決すると,それなりに連動させない解決ができる。

 

ただ,ここでは,今までの規定の基準も余り明確ではないので,もうちょっとはっきりしたいというのが恐らく趣旨なんだと思いますけれども,十分それができるかどうかの問題ですかね。

 

 

 

番人

「信託の本旨に従い、と注意深く、忠実に仕事をするってことがつながっているんだね。」

 

 

 

○○幹事の方から,何か,今までのところで。

 

 

 

 

  •  これは資料に若干書かせていただきましたけれども,委任の場合におきましても,対内的には「委任ノ本旨ニ従ヒ」という文言が使われておりますが,対外的には代理権の有無というところで切っておりますので,ここでも,対内的には信託の本旨ということにしましたが,第三者との行為の有効性を考えるに当たっては信託行為の定めに基づく権限の有無ということで,より明確に規律していきたいという考えに基づいているところでございます。

 

 

  •  ちょっと蛇足だけれども,四宮先生の教科書,民法総則の改訂をするところに同じような問題が書いてあって,四宮先生はたしか,善管注意義務のうちの一部重大な善管注意義務違反は権限外の行為で,無権代理になると書いておられたのですね。

 

それを,やや,どうしようかなと思いながら,引き継いで書いたのですけれども。

 

 

 

 

まあ,多少理論的な問題があるので,もうちょっと問題点は整理したいと思いますけれども,恐らく○○幹事の問題提起の御趣旨は,ここは権限外か権限内かという形でもって取消しの範囲,取消しができるかどうかというのを規律しているけれども,果たしてそういう切り方でいいのかどうかという御指摘だったと思うのですね。

 

問題点としては十分理解したつもりでおりますが,少し検討させていただければと思いますけれども,いかがでしょうか。

 

  •  今,○○幹事が御指摘の点につきましては,もう一度事務局内部でそしゃくして検討したいと思います。

 

それから,○○委員から御指摘のありました,追認ですとか催告,あるいは32条,33条の問題,これは我々も十分そういうことがあることは認識しておりまして,これは,まず前提として,この部会で取消権構成をとるということでコンセンサスがいただければ,その上で当然そのような規定の整備というのは検討していきたいというふうに思っておりまして,まず前段階としてここまで提示したという趣旨でございます。

 

 

 

  •  よろしいでしょうか。

権限,更にさっきの幾つかの,53ページの2とか,いろいろ難しい問題があるのですが……。

 

 

 

 

  •  1点よろしいでしょうか。

この第34の権限違反の行為についてなのですけれども,「第三者が当該行為が受託者の権限に属しないことを知り,又は重大な過失により知らなかったときに限り」という点の,これは立証責任が,恐らく,この表記で言いますと,受益者側になるということを前提にされているのではないかと拝察するのですけれども,そうすると,これは,受益者の立場に立ったときに,この立証をしなければならないというのはかなりきついことではないかなというふうに感じます。

 

これの立証責任をどうするかという点についてはちょっと慎重に考えた方がいいのではないかというふうに考えるのですが,いかがでしょうか。

 

  •  挙証責任については受益者側にあると今は考えておりますが,その指摘につきましては,もう一度検討したいと思います。

 

 

  •  それでは,今日の御意見を踏まえて,更にまた事務局の方で検討するものと思います。

それでは,少し先に行かせてもらいます。

 

  •  では,本日の資料に従いまして,受託者の責任の問題,第27の受益債権についての物的有限責任と,第28の信託債権についての物的有限責任の問題につきまして,あわせて御説明いたします。

 

まず,第27でございますが,これは,現行法19条が規定する受益債権についての受託者の物的有限責任に関する規定の見直しの提案でございます。

 

現行法19条の趣旨というのは,受託者が信託行為の定めに基づいて有する本来的な給付請求権,契約上の給付義務と異なるところはございませんが,いわゆる受益債権の対象を信託財産のみに限定し,信託財産に対してのみ執行できることを明らかにした規定であると解されます。

 

 

しかるに,現行法19条の文言は,「信託財産ノ限度ニ於テノミ」とされておりますので,信託財産の限度において受託者の固有財産に対しても執行できるかのような誤解を生じさせかねない規定ぶりとなっております。

 

 

そこで,現行法19条が,受益債権の責任財産が信託財産に限られること,換言すれば受益債務の物的有限責任性を規定したものであることを明確にすべく,規律の文言を改めることを提案したものでございます。

 

 

この物的有限責任によりますと,受益債権に対応する受託者の給付義務,責任の実質は,信託財産を分配ないし給付する義務でございますので,受託者は信託財産の範囲内で給付義務を負うにすぎず,給付すべき信託財産が減少した場合には,その減少について受託者に信託義務違反の責任がない限り,受託者はその減少した信託財産の範囲内で給付義務を負うにすぎないこととなり,損失は受益者の負担となります。

 

 

なお,受益債権給付義務の不履行により受益者に遅延損害金が発生すれば,この遅延損害金の分については民法の通常の債務不履行として受託者の固有財産が責任を負うことになりますし,また,受託者の信託違反行為に起因して信託財産が減少すれば,受託者は信託法27条の損失てん補責任を負い,受託者は固有財産をもって信託財産の穴埋めをしなければならないということになると考えられます。

 

 

 

 

 

続きまして,第28の「受託者の有限責任の許容について」というところでございます。

 

 

報告書では第29として提示しておりました受託者の第三者に対する責任についてもここに含まれておりますので,あわせて説明をしていきたいと思います。

 

重要な問題が,特に「2 新たな信託の類型」というところに含まれておりますので,少し詳し目に御説明をしたいと思います。

 

まず,1でございますが,これは「既存の信託の類型」,通常の形態に関する提案でございまして,受託者は,第三者との関係ではいわゆる無限責任を負いますが,受託者が第三者との間で,責任財産を信託財産に限定する旨の特約を締結することはこれまでも有効であると解されてきました。

 

 

 

(1)は,責任財産を限定した取引に対するニーズの高まり,あるいは信託における責任財産限定特約を付した取引の浸透を踏まえ,現行法のもとでの取扱いを進めまして,受託者が取引をする場合において,特定の信託の受託者である旨,それから特定の信託に係る信託財産に責任が限定される旨,この二つを明示した場合には,信託に係る債権者が受託者の固有財産に対して執行することはできない,すなわち責任財産が信託財産に限定されることになるとしたものでございます。

 

 

なお,従来の実務では,有限責任となるための要件が必ずしも明確でないために,有限責任特約を締結するために詳細な契約条項を設けるなど,契約書の作成に苦労したり,あるいはその有効性にも懸念があったようにも聞いておりますが,ここでは,有限責任特約の有効性を承認した上で,その要件を明確にすることによりまして,取引コストの削減を図り,信託における取引の活性化に資するものと考えております。

 

 

 

なお,明示すべき事項として,「特定の信託の受託者である旨及び特定の信託に係る信託財産に責任が限定される旨」を求めることとしましたのは,現在の実務慣行に照らしますと,いわゆる無限責任による取引との混同を避け,取引の安定を図るためには,特定の信託の受託者であるというのみでは不十分で,信託財産に責任が限定されることまでを明確にする必要があると指摘されていることですとか,債権者の保護のためには,その引当てとなる責任財産が特定される必要があると考えたことによるものでございます。

 

 

それから,1の(2)でございますが,これは,債権者保護のために受託者にいわゆる第三者責任を課すものでございます。

 

 

このように,有限責任の制度を設けました場合には,責任財産が信託財産に限定されることになりますので,債権者保護のために信託財産の財産的基盤を確固たるものにする必要があると考えられます。他方,厳格な規制を設けることとした場合には信託の柔軟性を損ねるとの指摘もされているところでございます。

 

 

 

 

 

そこで,ここでは,有限責任となるのは取引上の債権に限定されること,有限責任となるには特定の信託に係る信託財産に責任が限定される旨を明示する必要があること,これらを勘案しまして,現行商法第266条ノ3に倣いまして,受託者に,(1)で有限責任となる信託財産に属する債務に係る債権者に対する損害賠償義務を法定し,受託者の責任を強化して信託財産の価値維持を図ったものでございます。

 

 

 

 

続いて,「2 新たな信託の類型」というところについて申し上げます。

まず,このような提案をいたしました動機について説明いたします。

 

 

近時,社会活動の高度化の進展の中で,1で述べましたような取引に限定せずに,外部関係一般については有限責任性を確保しながら,内部関係については柔軟性を有した組織による事業の実施や,こうした事業への投資に対するニーズに対応するため,英米におけるLLC,LLP,ビジネス・トラスト等の組織形態を導入すべきという声が存するところでございます。

 

 

ポリー

「有限責任事業組合や合同会社ですね。」

 

 

我が国におきましても,出資者又は業務を執行する者に対する有限責任を確保した組織形態は既に存在しますが,これらに類似した,受託者の有限責任を基調とするスキームを,信託制度の中において新たな類型として創設することとするかが問題となるわけでございます。

 

仮にこのような制度が導入されますと,受託者の有限責任性が確保されるとともに,信託財産の独立性,柔軟性等の信託の特徴を兼ね備えた新たな組織形態が創設されることになりまして,国民の選択肢の拡大に資することになると考えられます。

 

 

 

 

これまで,出資者や業務執行者の有限責任の議論をする際には,法人格の存在を前提にする傾向があったように存じております。

 

星野教授のかつての有名な御研究によりますと,構成員に対して有限責任が認められるためには,第1に,構成員に対する債権者による団体財産への執行を断ち切っておくことが必要であり,これにより,団体財産に対する債権者が構成員に対する債権者に優先するという状況がつくられるわけでございます。

 

更に,この要件にあわせて,第2に,脱退が持分払戻しを伴わないことにより資本充実の原則が満たされることが必要であるとされております。

 

 

 

 

ところで,星野教授は,法人とは,構成員の個人財産から区別され,個人に対する債権者の責任財産ではなくなって,法人自体の債権者に対する排他的責任をつくり出す法技術であるとされておりましたが,そうでございますと,法人には正しく先ほど申し上げました出資者の有限責任を認めるための第1の要件が内在しておりまして,そのため,法人格の存在を前提にして議論する傾向に結びついたのではないかとも考えられます。

 

 

すみれ

「人の有限責任と、法人といえるための要件とか。」

 

 

しかしながら,この第1の構成員に対する債権者による団体財産への執行を断ち切るというポイントにつきましては,法人に限らず,信託についても等しく当てはまるものでございます。

 

換言すれば,信託につきましては,先ほどの星野教授が挙げられた2点の要件のうち,第1の要件,執行を断ち切るという要件は満たされているものと考えられます。

 

したがいまして,資本充実の原則とおっしゃっておられます第2の要件をいかにして満たすこととするかが検討課題になってくると考えられるわけでございます。

 

 

ところで,更に最近の御研究におきましては,例えば一つとしては,払戻しが禁止されていることを常に前提の条件とする必要はなく,「事業の開始に当たり,リスクに応じた合理的な出資の引受けが構成員によってされ,以後維持され,かつ財務状況に関して合理的な方法で第三者に対する開示がなされること」,これをもって共同企業の構成員の有限責任を認めることにとっての必要十分条件であるとする御見解もございますし,あるいは,「債権者の期待するキャッシュフローが他に流用されない方策が講じられ,その仕組みを債権者が十分に認識している」場合には,構成員の間接有限責任を認めてよいとの御見解も提唱されております。

 

 

このように最近の研究成果を踏まえて考えますと,受託者に対する有限責任を許容するためには,第1の,構成員に対する債権者による団体財産への執行を断ち切っておくという要件のほかに,まず一つは,責任財産を確保するための制度的仕組みがあること,第2に,有限責任であることについて債権者の予見可能性を確保する制度的仕組みがあること,この二つが要件になると考えられます。

 

 

そして,その検討の際におきましては,有限会社,有限責任中間法人等の既存の出資者に対する有限責任を前提にしたスキームと比較して,責任財産の確保や予見可能性の確保という点において遜色のないものになっていることが必要であると考えられます。

 

 

 

このような見地から見ますと,信託財産の状況等に関する書類の作成あるいは開示等の仕組みが整備されていることなど,既に相応の措置を図ることが信託においても予定されているわけではありますが,他のスキームと比較した場合にはなお改善の余地があるものと考えられるわけでございます。

 

 

資料の2ページのアステリスク1というのは,こうした観点から,設けるべき債権者保護の規定について提案するものでございます。

 

 

 

 

 

まず,アとして,信託財産を確保するための方策として,いわゆる三本の柱を提示しております。

 

 

すみれ

「3本の柱だ。」

 

 

第1の柱は,当該信託における信託財産の確保のための方策を信託行為に定めることにより明確にすることとしております。

 

信託財産を確保するための方策といたしましては,受益者への財産分与規制のみならず,流動化目的や事業目的の信託など,信託の類型によりましては,債権者の期待するキャッシュフローが他に流用されない仕組みを設けることが重要な場合があると考えられるからでございます。

 

 

 

なお,その方策が債権者に知らせずして変更された場合には,債権者が不測の損害をこうむるおそれがございますので,変更するに当たりましては,受託者は債権者保護手続をするものとしております。(ア)の○1に書いているところでございます。

 

 

 

第2に,有限責任を許容する他の制度におきましては,商法第290条における利益配当の制限ですとか,中間法人法第65条における基金の返還の制限,あるいは投資事業有限責任組合法第10条などにおきまして最低限の責任財産を維持するために財産分与規制のための規定が定められております。

 

 

このような規制があることを踏まえまして,信託におきましてもいわゆる財産分与規制を設けることといたしまして,受託者は,純資産額を超えて,いわゆる利益の配当に限らず,受益債務の弁済をすることができないというふうにしてはどうかと考えております。

 

 

3本目の柱でございますが,これに違反して弁済がされた場合の信託財産の回復策につき提案しております。

 

 

受託者が純資産額を超えて受益債務の弁済をした場合には,責任財産たる信託財産が毀損し,このような制度的責任を設けた意味が没却されることになると考えられます。

 

 

そこで,まず,違法な弁済をした受託者の責任を重視いたしまして,第一次的には,3ページの一番最初,(ウ)というところでございますが,受託者に原状回復義務を課すことにしております。

 

そして,受託者は受益者に対して超過受領財産の返還を請求することができるものとしておりますが,当該受益者が,超過財産を受領した日におきまして,受託者が違法な受益債務の弁済をしたことについて善意であるという場合には,返還請求に応じる義務はないということにしております。これが,3ページの(エ),(オ)というところでございまして,受託者,受益者間の対内的な関係についての責任の規律を定めたものでございます。

 

 

 

 

 

それから,ここでは,受託者による原状回復がされない場合には,今度は対外的でございますが,債権者は受益者に対して,こちらは受益者の善意・悪意を問わず,超過受領財産の返還等を請求できるとしております。

 

 

これが(カ)というところでございます。純資産額を超えてされた弁済は,受益者には受領する原因が本来ない不当な利得であり,信託財産を確保するという要請のもとでは,受益者に返還を求めることもやむを得ないと考えられるからでございます。

 

 

なお,ここでは受益者の善意・悪意を問うておりませんが,先ほど言いました受託者からの返還につきましては,受益者が善意である場合には返還請求に応じる必要がありませんと。

 

 

受託者自らが違法行為をしておりますので,そのような規律にして差異を設けているところでございます。

 

次に,3ページのイでございますが,予見可能性の確保に関する方策を提案しております。

 

まず,第1には,受託者が取引等をする場合には,新たな信託の類型の特定の信託の受託者である旨の明示をしなければならないこと,イの(ア)のところで,「信託の」が抜けておりますが,「特定の信託の受託者である旨を明示しなければならない」というふうにしております。

 

 

それから,第2に,既存の信託の類型で認められているものに加えまして,ここでは,利害関係人は理由を明示して信託財産の確保に関する方策について説明を求めることができるものとしております。

 

 

責任財産確保のための方策について債権者が十分に知り,十分に理解するための制度的仕組みを設ける必要があると考えられるからでございまして,これはイの(イ)で書いてあるところでございます。

 

 

なお,当該団体が有限責任であるということについて第三者が予見可能であるような客観的状況を作る手段としては,登記等の公示制度が用いられることが他の法律ではございますが,ここでは,このような公示制度を設けることにつきましてはどのように考えるべきかということを,3ページの○5で提案しております。

 

 

 

すみれ

「登記だ。」

 

 

以上が,予見可能性の確保についての二本柱プラス検討課題一つというところでございます。

 

 

 

 

 

最後に,3ページのウでございますが,これは,受託者にいわゆる第三者責任を課すものでございまして,ただ,ここで受託者が損害賠償をする相手方につきましては,原則類型とは異なりまして,取引上の債権者に加え,不法行為債権者が含まれることになります。

 

以上のような種々の債権者保護の措置を講じた場合には,有限責任を許容している他の制度に比べましても債権者保護の仕組みは決して遜色のないものになっていると考えられますが,この点につきまして是非とも御意見をいただければということでございます。

以上について御審議をお願いいたします。

 

 

  •  それでは,いかがでしょうか。特にこの受託者の有限責任に関連する問題はかなりいろいろな問題点を含んでいると思いますが。

 

 

 

  •  第28の受託者の有限責任について,意見を述べさせていただきます。

第28の2に挙げられております,「新たな信託の類型」ということで,有限責任を明確にする信託制度を設けるという点については賛成です。また,資産の証券化・流動化の観点からも,このような信託というものは実務上のニーズが強いのではないかと思います。

 

 

 

 

 

ただ,1の方の既存の信託について,単に受託者が特定の信託に係る受託者である旨及び責任が信託財産に限定される旨を明示するのみをもって有限責任としてしまう点については,弊害が考えられるのではないかと思っておりまして,この1の部分については反対させていただきます。

 

 

 

具体的な事例を挙げますと,例えば,信託銀行と金融機関の間のデリバティブ取引等で,現に,信託銀行が特定の信託の受託者である旨を表示して取引している例もございます。

 

また,数年前から,それに加えて,責任財産を信託財産に限定すると。

 

ただ,その場合でもいろいろな約定をしているわけですね。

 

信託銀行側,受託者側に情報開示義務を課して,その情報開示義務が守られなかった場合は責任財産限定特約が外れるというような約定がなされている場合があるかと思うのですけれども,そういった取引において信託銀行と取引する金融機関は,信託銀行の信用力を加味して取引しているというのが実態だろうと思います。

 

 

それで,この1のところでは,債権者の保護という観点が欠落しているのではないかなという気がいたします。

 

 

2の「新たな信託の類型」のところでは,債権者保護のための規律,様々なところが考慮されているわけですけれども,1の既存の信託を有限責任にするというところについては,その観点が欠落しているように思われます。

 

 

したがって,これまで過去において,信託銀行,受託者が責任を負うという理解で行われてきた取引が,典型的にはデリバティブだと思うのですけれども,突如,有限責任ですという扱いになることで,取引を萎縮させてしまう可能性というものがあるのではないかなと思います。

 

 

また,情報開示義務がない場合,例えば会社にとっての債権者を考えますと,例えば減資をする場合に債権者に対する催告義務みたいなものがありますけれども,信託に関しては,例えば,必ずしも債権者に対して通知するとか同意を得ることなく信託財産が減ってしまうとか,受益権を償還してしまうということもあるわけですので,これに関しては様々な問題点も考えられ得るのではないかなと思います。

 

それと,以前から存在する信託を有限責任化するニーズが本当にあるのかという点についても,若干疑問に思います。

 

また,今ちょっとデリバティブみたいな話をしたのですけれども,例えば民事信託みたいなものを考えると,必ずしも受託者の責任を有限責任化する必要性というのは考えられないのではないかなと思います。

 

 

 

すみれ

「民事信託みたいなもの、が出てきた。」

 

 

 

まとめますと,実務上のニーズ,これは資産流動化・証券化の観点からも,あるいはその他の金融取引の観点からも,有限責任信託というものは必要だと思いますので,それは2のところについて議論を深めて,特に債権者保護の仕組みを十分議論した上で導入するということは賛成いたしますけれども,1のところについては削除していただきたいなというふうに考えております。

 

 

 

 

 

  •  ○○委員と重複するところもあるかもしれませんけれども,第28の「受託者の有限責任の許容について」の1について,両論的な御指摘等についても,同じく,質問といいましょうか,コメントを申し上げたいと思います。

 

 

まず,1の通常形態の方ですけれども,これはやはり,実務の観点からすると賛成・反対両論あり得ると思いまして,まず,現状でも,有限責任契約ということで一定の効果ということは実現できるわけですので,今回の御提案というのは,これの契約コストを低減することに帰するというところで評価できると思いますし,また,信託の柔軟性,また選択肢の多様化という観点からすると,実務にも歓迎されるべき点があると思います。

 

 

 

すみれ

「法律で決めてもらうと、契約コストは低くなるんだ。」

 

 

他方,懸念される点というのは,先ほど○○委員からおっしゃられたこともありますけれども,繰返しになる部分もあるかもしれませんけれども,2点ございまして,一つは,契約に入るときの契約交渉の機会が実質上奪われてしまうのかもしれないということです。

 

 

 

例えば先ほどの責任財産限定特約を結ぶ場合には,例えば開示について問題があるとかいったときには,ではそのかわりにレポーティングをしてくださいとか,そういうようなことについて,交渉する機縁があったわけですが,このように明示して取引をした場合ということ,もちろん,取引を断るという選択肢は相手方に残されているわけですけれども,その詳細な,いわゆる債権者保護的な条件交渉をする機会が奪われるという点では,第三者,特に力関係において弱い者にとってみれば実質的に不利な結果になる可能性もあるのではないかなというふうには思っております。

 

 

 

ポリー

「細かいところは交渉して契約するんですね。」

 

すみれ

「弱いものが不利になるかもしれないっていうのはどういう理由だろう。」

 

 

 

二つ目に,取引の安全性という観点からですけれども,これは,前回,私からコメントを差し上げたところで,明示して取引した場合にはというところで,明示の内容及びその方法という点について検討をお願いしたい,また問題提起をするということをいたしましたけれども,それについては,今回,御提案の中でコメントをちょうだいしておりまして,9ページの(注2)というところで,御検討いただいた上で,そういう方法に関しては手当てする必要がないという事務局としての御結論をいただいているところですが,私としては,なおそれについて疑問といいましょうか,検討をお願いしたいというふうに思っております。

 

 

 

 

といいますのは,もちろん,挙証責任の問題であるとか信託契約の非書面性ということもあるわけですが,やはり取引の安定化の観点からしますと,有限責任なのかどうかということについては,やはり非常にリスクが大きいということですので,いざ言い争いレベルの話になったときに,取引当事者の置かれる状況というのは大きく変わってくると。

 

 

そうしますと,そういうようなことを提言するためには,やはり,ある程度の取引コストはかかっても仕方ないけれども,例えば書面とか,一定の外形的な基準を置いた方がよろしいのではないかと思っております。

 

 

注のところで非書面性ということが書いてありますが,ここもとの民法の改正においても,例えば根保証について書面を要求するということも近時改正されたところでありまして,必ずしも,そもそも信託契約は書面が必要ではないというところでもって,こういう取引安定性のために書面を設けることがおかしいという議論にはならないと思っておりますものですから,その点について,なお御検討いただければ幸いです。

 

 

 

 

 

2の「新たな信託の類型」ということでございますけれども,この点については総論的なお話を差し上げたいのですが,まず第1に,これは○○委員もおっしゃったとおり,そもそもこのようなニーズが本当にあるのかどうかということをいま一度とらえる必要があると思います。

 

 

番人

「たしかにですね。これから利用する人は増えるかなぁ。」

 

 

聞くところによりますと,今,同時並行的に検討されているところのLLC,これはもう実際に大分煮詰まっているところですけれども,あとLLPであるとかについては,実務界において,どういう使い方があるのかということ,また海外ではどう使われているのかということの研究が進んでいると聞いております。

 

 

もちろん,この信託の有限責任性は,事業信託を中心にいろいろ日本においても検討があるというのは存じておりますけれども,今この形でLLP,LLCを並べておくということが,一体どういう使われ方をするのかということを把握しておく必要があります。

 

と申しますのは,やはり,こういうものをつくりますと逆に弊害になってくるという点もあるのではないかというふうに思っていまして,同じ作るにしても,それを踏まえた制度設計というのが必要ではないのかなと思っています。

 

 

 

すみれ

「逆に弊害って何だろ。」

 

 

 

 

その中の一つとしては,ここでも議論されていますように,債権者保護手続というのがありますけれども,もう一つ,ちょっと懸念いたしますのは,これによって事業の信託を行う場合には,例えば監査というのは一体どうなるのであろうかと。

 

エンティティーを使うのであれば,例えば商法特例法に基づいて監査というのが出てくるわけですけれども,信託を使えばそれが要らなくなってしまうということになるのか。

 

 

すみれ

「エンティティー?実態かな。今回はエンティティーでいこう。そうですね。エンティティーにしておきましょうか。とかあるのかな。」

 

 

 

また,税金の話,これは実体法とは関係ない話なのかもしれませんけれども,実務上は大きな話だと思いますけれども,信託は原則として税金の導管性というのがあるわけですけれども,これをもって,実質上会社と同じことをしても税金が要らなくなるということになれば,これを悪用するということが出てくるのではないのかというようなことも検討する必要があると思います。

 

以上,ちょっと長く申し上げましたけれども,実務的に,選択肢をふやすことのメリットと,それから来る弊害点,それを保護するための手当てということについて,いま一度検討する必要があるということを申し上げたかったわけです。

 

 

 

 

 

  •  私も,第28の部分について申し上げたいと思います。

 

私自身の理解が違っているのかもしれませんけれども,先ほど○○委員,○○委員から御意見があったのとちょっと違って,まず1のところにつきましては,この規律というのは,新法においても信託取引というのは基本的にデフォルト状態では無限責任であるということがあって,それに加えて特定の信託の受託者である旨をまず表示しますと,もう一つは,特定の信託に係る信託財産に責任が限定される旨を表示しますと,この二つが加わると有限責任になりますよという規律だと思っておりますので,基本的には何ら現在の有限責任の特約を付したものと変わりはないというふうに思っております。

 

 

ただ,こういうふうにやると簡便にできるので,こういう形にした方がいいと。

 

それで,この規律があると,多分,(2)のところの規律が自動的にきいてきて,信託の契約上のコストであるとか,説明とか,そういうものが省略できるというふうに理解しておりますので,弊害というのは,基本的に現在の責任限定の特約をつけたものと何ら変わりないものだというふうに理解をしております。

 

 

もちろん,ちょっと理解が違うのかもしれませんけれども,そういうふうに理解しております。

 

あと,表示のところなのですが,多分,商事信託法要綱のときには,特定の信託の受託者である旨を明示するということだけだったと思うのですが,これについては,やはり弊害が出る可能性があるのだと,信託実務で結構そういうような表示をすることが多いものですから,それはちょっと弊害が出るので,やはり責任が限定されているということも加えた方がいいと思っておりますので,この規律については,実務家の方から考えて非常に即したものであるというふうに考えております。

 

 

 

すみれ

「商事信託の実務で使っていたものを参考にしたのかな。それだとぽんぽん進みそう。」

 

 

 

(2)の保護規定でございますが,余り保護規定ががちがちになってしまうと,動きづらいというところがあるのですが,この規定につきましては,信託の柔軟性というもの自体もまだ確保できるような規定で,いろいろ使い勝手がいいような規定だと思いますので,この(2)についても賛成いたします。

 

 

次に,問題になっております2のところの有限責任を原則とする新しい信託の類型でございますが,これについては,私どもは,これまで活用されてこなかった新しい領域で信託の可能性を拡大するものだということで,期待しております。

 

 

創設の方向でお願いしたいと考えております。

 

この信託は,ビジネスを行う上で,一つは柔軟に意思決定ができますということと,あと有限責任性を確保できると,この二つがありますので,非常に魅力を感じております。

 

多分,実務上のニーズはあるだろうというふうに思っております。

 

例えば,まあ私なんかは発想が貧困ですので,よく分からないのですけれども,コストであるとか人材の募集とか,そういうような観点からいきますと,パイロット事業であるとか,期間を限定したような事業,そのようなものに向いているのかなというふうに考えています。

 

 

すみれ

「期間も責任も限定だね。」

 

 

またプロジェクトの事業のビークルとして使うとか,そのようなことにも十分使えるんじゃないかなというふうに考えております。

 

信託は,御承知のように倒産隔離が法的に担保されているということと,あとは受益権の内容を複層化できたりするということで,制度設計が非常に柔軟であるということもありまして,ビジネスを行う上で非常に利用価値が高いと考えております。

 

 

ただ,ニーズがあっても,受託者が無限責任を負うということでありますと,事業的なことを考えると,やはりリスクがあるということで,報酬等も考えますとリスクとリターンのバランスがちょっと悪いなということもありますので,こういうような有限責任の新しい信託,こういうものについては非常に有効ではないかなというふうに考えておりまして,この2の規律についても賛成いたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

  •  私は,新たな信託の類型について意見を申し上げたいと思うのですけれども,○○委員,○○委員がおっしゃられたように,私も,新たな信託の類型としてこのような新しい制度・モデルをつくられることには賛成でございます。

 

 

ただ,その中身について,その検討に当たって留意すべきことについて御意

見を申し上げたいと思うのです。

 

 

先ほど○○委員が税金の関係を取り上げられたのですけれども,私もそれについては非常に興味がございまして,実際にこういった類型を使っていく場合,特に債権の流動化というときには,この主体に対する課税問題というのは非常に大きな影響があるわけです。

 

 

 

 

○○委員が言われた部分については,濫用的な部分についての問題提起だと思うのですけれども,債権流動化においては,この制度を考える上に当たっては,やはり課税が回避されるような点もあわせて検討すべきではないかなと思われます。

 

 

と申しますのは,この基本的な新しい制度を作るに当たっての信託財産の確保,それから,特に,最低純資産額規制を設けるとか登記等の公示制度を設けるということになってだんだん法人そのものに近いものになっていきますと,課税される可能性というのは非常に高まってくるかと思います。

 

 

すみれ

「登記は嫌だとして、信託財産の確保ができなかったら、信託も使えないんじゃないかと思うんだけど。税金は安くしてくれってことかな。」

 

 

したがいまして,そういったものを確保しながら課税が回避できるようなものをつくり上げないと,実務上,特に債権の流動化等では使えなくなるのではないかなと思われます。

 

 

私も詳しくは知らないのですけれども,アメリカでビジネス・トラストが発展はしてきたという歴史があるわけなのですけれども,最終的には課税問題がネックになって,リートなど一部の課税回避ができた制度を除いて,他はかなり衰退してしまっているというようなこともあるというふうに伺っておりますので,是非そのあたりも頭に入れて制度設計をしていただけたらと思います。

 

 

 

 

 

  •  先ほどから皆さんの御意見を伺っていて,少し整理しておかなければいけないかと思ったのは,既存の信託における有限責任の特約というのでしょうか,有限責任をつけるというのは,これは皆さん御理解は共通していると思うのです,若干のニュアンスの差はあるにしても。

 

 

2の「新しい信託の類型」の方の,先ほどから「有限責任」という言葉が出てまいりますけれども,これは私の理解かもしれないけれども,ほかのLLPだとかいろいろな制度との比較で言うと,あれは全部,投資家の有限責任だと思うのですね,LLPにしろ。今,有限責任組合の議論をしていますけれども,やはりこれは投資家,構成員のあれなのですが,信託はちょっと複雑ですけれども,有限責任を比較するのであれば,本当は受益者の有限責任の方なのではないかという感じもするのですね。それが一つ。

 

 

すみれ

「たしかに。受託者じゃないね。」

 

 

 

それから,「有限責任」と言うときに,1との違いがどこにあるのかというのをもうちょっと理解しておいた方がいいと思うのですが,先ほど,1のような形で明示をしないでも,基本的にこういうタイプの信託は一応受託者の有限責任だと。

 

 

それで,当然ながら受益者も有限責任なわけですけれども,補償請求権がないような,そういうところにメリットがあるわけですが,これはLLPの方でも議論になっていますけれども,不法行為責任が全部有限責任になるのかというと,恐らく必ずしもそうではなくて,LLPの方も,実際に行為をした者は,過失がある場合には少なくとも709条の普通の責任を負うのですね。

 

 

これは法人の場合も全く同じで,法人は完全に有限責任ですけれども,代表者は過失があれば44条の2項でもって責任を負うわけですから,信託の場合は少し複雑な構造になっているけれども,信託の受託者というのはちょうど法人の代表者みたいなものだと考えると,不法行為責任は709条の場合に負うと。

 

ただ,若干違うかもしれないのが,工作物責任とか,709条を介さない責任なのかなという気がいたします。

 

ちょっと,「有限責任」と言うときに何を考えているかということを少し明らかにして議論した方がいいと思いますので,私の個人的な意見も入っていますけれども,少し整理させていただきました。

 

 

 

 

 

 

  •  今,○○委員が言われてしまったことなのですけれども,私も,ロジックというか,物の考え方をちょっと整理する必要があると思いまして。

 

今までLLPとか何とかやっていたのは,○○委員がおっしゃったとおり,私の頭でも,出資者が構成員となるような団体において,その出資者が出資した額を超えて責任を負うかどうかというのが,星野先生以来のここに御紹介のある文献での議論だと思うのですね。

 

 

それに対して,ここで議論している受託者の有限責任というのは全然違うので,もちろん,例えば合名会社とかLL何とかでも,無限責任社員,出資者である人が同時に業務執行者という場合もあるかもしれませんけれども,信託の場合,原則は違う。

 

つまり,受託者は出資はしていないのですね,普通は,そういう言葉を使うとすると。

 

 

すみれ

「受託者は出資してないね。」

 

 

それで報酬を得て他人の財産を管理処分するわけなので,そういうものが取引あるいは不法行為上の責任を固有財産で負うのが原則なのかどうか,あるいはそれを限定することが認められないのかどうかということであって,他の団体にはない,非常に信託に特殊なものであり,言葉を変えて言うと,信託とは何かという方から論じなければいけない問題だというふうに思います。

 

 

では,どういう視点でここの有限責任の線を引くかというと,従来の星野先生以来の議論とは違う視点で物事を考えなければいけないので,私の感じでは,二つぐらい柱があるように思うのです。

 

 

一つは,これも○○委員がおっしゃったことなのですけれども,行為をした者が責任を負うというロジックはあるのですね,既に。不法行為は基本的にそういうロジックだと思います。

 

 

もう一つは,では取引みたいな局面ではどうかというと,余りうまく言えないのですけれども,誤認というのでしょうか,特に示さずにやっている場合は,相手方はどっちでやっているのか分からないわけですから,無限責任という言葉がいいかどうかは分かりませんけれども,これは明らかに信託財産ですと言っていれば,原則は信託財産であって,もちろん,それを固有財産をもって補償することは妨げられませんので,どちらをデフォルト・ルールにしてもいいと思うのですけれども,この2の「新たな信託の類型」であったとしても,なお固有財産で任意に補償することは別に禁止されるわけではないと私は理解しています。

 

 

ですから,ロジックは1の(1)も2も同じであって,私は,誤認みたいなことで,本来の考え方から言えば,信託財産と固有財産は別なんだけれども,しかしそれをはっきりさせない場合には一緒にやってもよろしいというのが従来の実務だった--ロジックから言うと--にすぎないのではないかと思うのですけれども。

 

 

 

 

いずれにしても,出資者の有限責任というロジックとは違う線引きなり,ロジックの問題ですので,そういう観点から物事を整理していただく必要があると思います。

 

 

  •  この第28は,私,よく分からなくて。1も2もですが。しかし,1の方は既存の話であるということなので,私の理解で,1点だけ。

 

これはちょっと問題を拡散してしまうかもしれませんけれども,1のところでは,受託者が責任財産は信託財産だけですよという形で取引をして,第三者との取引の中で責任限定を行う,これは別に何の問題もなくて,そういうことができるんですよ,こういうことをやれば大丈夫ですよということを明示することはいいことだと思うのですが,この(2)がよく分からなくて,そうだとすると責任財産は債権者にとっては非常に重要なものになる,それは本当によく分かるのですが,その関係で,受託者は債権者に対して一定のこういう条件がありますけれども,悪意というのが何についての悪意なのかというのがよく分からないのですが,この点ちょっと御説明を願いたいのですが。

 

 

それで,悪意又は重過失があったときには賠償責任が発生するのだということになると,債権者に対して一定の責任があるのだという話になりますよね。

 

しかし,受託者がまず一番考えるべきは常に受益者という話なのに,これで利益相反的な状況を生じさせているわけですよね,こういうふうに理解すると。

 

これはどうなんだろうかというのがよく分からないのです。これが上の方です。

 

 

 

 

下の方の「新たな信託の類型」に至ってはもっと分からなくて,これは今,しかし,いろいろ説明を願ったので,これは誤解でなければいいと思うのですが,一種レッテルをつくって,有限責任事業信託みたいなものをぽーんとつくってしまおうと。

 

 

そうすると,このレッテルの中に入っていれば,何らかの要件は作るのでしょうけれども,1の(1)みたいなのは自動的に受託者の有限責任がついてきますよ,受益者の有限責任は当たり前ですよと。

 

 

しかし,受益者の有限責任は本当は信託については全部当たり前だと私なんかは思っていますが。

 

 

それで,しかも,これは事業型なんだけれども,今のお話だと,会社までいかないので二重課税みたいな話にもなりませんねという,まあほかにも幾つかのメリットがあるのかもしれませんけれども,そういうものをつくろうという話かなと思うのですけれども,それは正に--アメリカでもビジネス・トラスト・アクトというようなものをつくっている州法はあるのですが,正に信託法一般ではなくて,事業法ですから,これは信託法の中で規律するような話なんだろうかという気がするのですけれども。

 

会社法と並べて--まあ,会社法とは別個なのかもしれませんけれども,むしろ業法的なところで考えるような話なのかなと思うのですけれども,そもそもそこが理解が違うのかどうか,お伺いしたいと思います。

 

 

 

 

  •  恐らく1の方は簡単な方で,後者は難しいのですけれども,1は,受益者との関係で言えば,利益相反になるかどうかという話だと思いますけれども,信託財産が減るということをしてはいけないというのが基本的に受託者の義務なわけですね。

 

 

信託財産は債権者にとっても責任財産であって,それを信託事務を行うに際して悪意重過失で減らしてはいけないと,そういう責任を負わせている。ですから,これは,その限りでは受益者にとっても利益になる。

 

 

  •  利益相反はないとおっしゃいますか。

 

  •  一般的には,責任財産が減らないようにするという……,信託財産がですね,結局。それで,信託財産は……。

 

  •  この「悪意又は重過失」というのは,悪意又は重過失で減らそうとしているというケースなのですか。

 

  •  これは,基本的にはそうですね。会社法の266条ノ3なんていうのと同じです。少なくとも,それがまず典型的な……,ほかにいろいろな場合があるかもしれませんけれども。

 

 

 

 

 

  •  今の点を補足いたしましょうか。

会社法で全く同じことがあって,これがだめだったら,会社法は利益相反だということになるのですけれども,266条ノ3と株主の利益最大化と債権者の利益最大化が完全には一致しない局面というのが当然出てくるのですけれども,それはその範囲で,266条ノ3の責任が生じる局面で,にもかかわらず株主の利益を最大化させるという要請があるとは恐らく考えていないと思うのですね。

 

だから,こちらはそのかわり非常に強い限定がかかっている。悪意重過失,これも言葉は266条ノ3そのままなのですけれども。例えば,極端にリスクの高い事業をさせると,その場合は,受益者としてはハイリスク・ハイリターンでいいかもしれないけれども,債権者から見るとたまったものじゃないというのがあり得ると思うのですけれども,それをやっていいかというと,たとえ株主のためにハイリスク・ハイリターンの物すごい極端なのをやるのはいいとしても,やるならこの責任を覚悟してやりなさいということになって,その限りで抑制されて,そこで,この規定があるがゆえに抑制されたからといって,それをしないことが当然に株主との関係でベストを尽くしていないから義務違反だとは整理しないという,その限りで……。

 

 

まあ,相反が全くないわけではなくて,潜在的には違った方向性を向いた義務を課している面はあることはあるのですけれども,ここで初めて出てきた話では恐らくないのだと思います。

 

 

 

 

  •  分かりました。そうすると,信託条項でハイリスク・ハイリターンで投資しなさいというような条項があっても,もうそれに従えないということになるのですか。

 

 

 

 

 

  •  1の(2)の条文が適用されることをやるなら,事前に排除できない以上は,そうならざるを得ないと思います。ただし,これは有限責任の債権者との関係だけの話だと思いますけれども。

 

 

  •  イエス・オア・ノーで,それはやはり責任を負わされることになるのですか。ハイリスク・ハイリターンの信託条項に従ってやっていても。

 

 

 

  •  なります。これは会社法266条ノ3でも同じです。
  •  そこら辺の理解になると,ちょっと私も分からないな。しかし,問題点がそこにありそうな気がしますね,確かに。

会社法ではそう考えているということですね。

 

 

  •  はい,そうです。
  •  原案をつくられた方の○○幹事の方で何か意見は。
  •  そこは,特に補足するようなことはございません。
  •  基本的には会社法と同じようなものというふうに理解してつくられた提案ではあるのですけれどね。

 

 

私は,逆に,信託行為でそういうふうに定められていれば,それはそういう信託だということで債権者の方も考えなければいけないので,信託条項の方が優先するのかと素人的には思ったのですけれども,そう単純ではないということなのですね,○○幹事の御意見は。

 

 

  •  ハイリスク・ハイリターンをやる意味がちょっとよく分からないですが。ここで問題となっているようなものというのは,少なくとも会社法の世界で問題にしているような話は,そういう条項でセーフになるような話では必ずしもないのだと思うのですけれどもね。どういうものを念頭に置かれているか分からないのですけれども。

 

 

  •  でも,利益相反があるということは○○幹事は認めているわけですね。

 

 

 

 

 

  •  もちろん。

利益相反というか,債権者の利益を最大化させる局面と受益者の利益を最大化させる局面で違った要請が課せられること自体は認めている。それを利益相反と言うかどうかは分かりませんけれども。

 

 

  •  受益者のために頑張っていても--つまり,受益者との関係では信託違反にならなくても,債権者との関係ではこちらの違反になり得るというので,こちらが優先されるということがあるということですよね,結局。

 

 

  •  それはそうです。それはもう既に266条ノ3で起きていることです。

 

 

  •  266条ノ3について既に解釈があるのであれば,むしろ教えていただきたいけれども。信託条項でもってどういう投資行動をすべきかという枠が一応決まっていると,そういう行為をする限りにおいては,たとえ信託財産が多少リスクにさらされても,これはここで言うところの悪意だとか重過失にはやはり当たらないのではないかという気もするのですけれども。

 

 

  •  恐らく,信託契約でハイリスク・ハイリターンな信託事務を行うということが書いてある場合には,そのことをやることが信託目的に反するという意味での受託者の義務違反は生じないのですが,やはり善管注意義務違反の問題は残りまして,やはりハイリスク・ハイリターンなことを悪意又は重過失で善管注意義務に違反したということは考えられる。

 

常にそうなるわけではないですけれども,やはり場合によってはそういうことはあり得るので,そういうふうに考えると,○○幹事が指摘されたとおり,信託条項を守っていれば悪意重過失による義務違反がないかと言われると,それは多分,場合によるということになるのではないかと思います。

 

 

すみれ

「受託者がプロだったら、信託財産少なくなってきましたんで、ちょっと変更しませんか、って受益者に報告したらいいんじゃない。」

 

 

  •  会社法の266条の構造というのは,取締役が会社との関係でもって負っている職務上の任務というのでしょうか,それを悪意重過失でもって違反した場合に責任を負わされるというわけですよね。

 

こっちは,信託で同じように考えれば,当該受託者が信託財産との関係で負わされている義務に違反して,まず第一次的には信託財産に損害を与え,それが間接的に債権者にも損害を与えるというときに,債権者に対する直接の責任を負わせると,そういう構造ですよね。

 

だから……。まあ,ちょっと単純なのかもしれないけれども,やはり……。

 

 

 

 

  •  1点追加してよろしいですか。

会社法の場合,しかも,これは新しい信託の類型--ちょっとこれは対比しない方がいいかもしれませんけれども,物的有限責任ですので,結局,そういう形態でやっていい事業については,内在的に債権者との関係でもそもそも限界があって,その範囲でしか,幾ら高いリスクをとっていいといっても,株主もそこまでしかさせられないという意味でやはり制約がかかっていると思うのですね。

 

 

だから,266条ノ3との関係で言えば,完全に矛盾するというよりは,まあ言いかえているだけかもしれませんけれども,さっき言われたような特約は,もし極端なものを念頭に置かれているのであれば,やはり内在的に制約がかかっていて,意味がない,266条ノ3には負けることになるのだと思います。

 

 

ただ,1点,そこでつけ足しなのですけれども,この1の場合は,明らかに入ってくる段階で了承して入ってきている人しか対象になっていないので,266条ノ3では,今言った理屈で,物的有限責任だから,ある種の行為というのは,幾らあらかじめ株主がいいと言ってもだめという理屈は十分成り立つ余地はあるのですが,ここは了承して入ってきている債権者なので,266条ノ3の解釈がそのまま当てはまるかどうかについては若干疑問があって,その限りで,○○委員の言われたような,覚悟して入ったのだからという議論は出てくる余地はある。

 

そうなると,恐らく,悪意重過失や「信託事務を行うについて」の解釈のところが会社法の266条ノ3の解釈論とはややずれてくるといったことなのかと思います。

 

 

ポリー

「登記事項も限られているから、結局は契約書の中の細かい交渉になるのでしょうか。」

 

 

  •  深い話をするつもりはありませんで,先ほどの○○幹事の,ここは了承して入ってきているというのだったら,株式会社相手の人はみんな物的有限責任を了承して入っているというふうにも……。

 

 

 

 

  •  不法行為債権者は,好きで債権者になっているわけではないですから。でも有限責任ですから。

 

 

  •  ああ,不法行為債権者は有限責任……。済みません。

ということと,私,2の「悪意又は重過失」が何に向かっているのかということについて,微妙な食い違いをどうも皆さんの意見の中に見出してしまうのですが,いずれにせよ,266条ノ3の文言に合わせていることは確かなのですが,もうちょっと丁寧に,例えば財産を減らすとか,あるいは○○委員の解釈のように信託事務違反に関してという話にするのか,もう少し明快にした方がいいのではないかなという気がします。

 

 

 

 

 

  •  もう一回確認ですけれども,会社法266条ノ3が適用される場合には,必ず会社に対する義務違反にもなるわけですよね。

 

  •  私,そこが非常に分からなくて,266条ノ3の任務懈怠と266条の会社に対する責任との関係での義務違反というのが完全にぴったり一致するのかどうかというのは,実はよく分からないのですね。

 

明らかに株主から見れば得かもしれないけれども,道義に外れたことをして債権者に損害を与えるような行為というのはあり得て,それが266条ノ3で一切責任が認められていないかというと,私はそうじゃないと思うのですね。

 

 

典型的なのは,取込み詐欺的な,倒産寸前での手形の振出しによる責任というのがよく認められている類型なのですけれども,こういったものは相当,株主との関係で言えば,よくぞやってくれた,とは言いませんが,それに近いことかもしれなくても,やはり責任は認められているのですね。だから,ちょっと……,今言われたようになるのかもしれません。

 

 

 

 

  •  だから,恐らく信託事務を行うについての悪意重過失というのではちょっと不明確で,どういう考え方に基づいているかというのが明確になっていない。

 

 

会社法も,あの規定のもとでは明確だと思うけれども,それでも,今のようにいろいろな考え方があるとすると,ちょっと問題なのかもしれませんね。ここら辺は少し,文言をただいじるだけではなくて,基本的な考え方をもうちょっと整理しておくということですかね。

 

 

 

  •  同じくこの点で,この「悪意又は重過失」というのがよく分からなかったのですけれども,その前提として,1の(1)について,むしろ二つ前の第34の2の米印の2という,そちらの方とかかわるかもしれないのですけれども,権限外で,しかし責任財産限定特約はしているという場合なのですけれども,これが当然に受託者の固有財産の免責をもたらすということでいいのかということが気になっておりまして,今までの議論の流れからも明らかになっておりますように,本来は受託者の固有財産で責任を負うということが前提になった上で,しかし(1)のような要件を満たす場合にはそれが免責されるというのが責任財産限定の趣旨だろうとすると,およそ信託財産の方に帰属させられる権限がないような場合についても当然にこの効果が発生するのかと。

 

 

第34のところでは,むしろ無権代理と同じという構成をされていますが,代理と類似であるという出発点自体がそもそも違うのではないかという気がしておりまして,それで,相手方の保護の観点で信託財産の方に帰属するという効果がもたらされるときは同じような効果が結局もたらされるので,免責の効果を認めるという話はあると思うのですけれども,そもそも第28の1の(1)の要件がこれだけで足りるのか,特に権限外の場合にどうなるのかということを確認したいと思います。

 

 

それとの関係で,実は,この資料を拝見したときには,例えば,権限外であることを受託者がもちろん分かりながら,しかし特約だけはしてやったときは(2)に当たるのかというのがよく分かりませんで,もし(2)に当たるのであれば,受託者の主観的要件によっては,これはもちろん結局免責の効果はないということになってきますので,そういうことまで含むのか,それとも,(2)というのはあくまで責任財産の不足を生じさせるという局面だけの問題で,その後の責任財産維持義務みたいな話なのか。

 

 

もしそうだとすると,やはり明確にしていただいた方が……。中身がそもそもよく分からないということがありますので。

 

 

 

 

 

 

あと,これ自体はむしろ個人的な感覚で申し訳ないのですが,責任財産維持ということを考えますと,非常に問題となってくるのは詐害行為取消しなんかの行使という話になってくると思うのですが,これ自体は信託財産固有の話ではないのですけれども,こういう責任財産限定がされたときは,当該債権者との関係では,例えば詐害行為取消権の行使などをしていく場合の無資力というのは当然その信託財産ベースで,それに対して,無限責任的な債権者の場合には無資力要件の判断がちょっと変わってくると,そういう理解でよろしいでしょうか。

 

最後のところは全く解釈の問題で,確認だけさせていただきたいのですが。

 

 

番人

「原則としては、信託財産を基礎として考えることになると思うんだけど。」

 

 

 

  •  規定の趣旨を必ずしもまだ十分検討していない部分についての確認なので,なかなか確認という形で確認できないのではないかと思いますけれども。

 

  •  最後のところだけは,その御理解でいいと思いますが,最初の二つは,まだ検討不十分ですので,いったん持ち帰らせていただければと思います。

 

  •  派生的なことですけれども,最後のところもちょっと疑問があるのですけれども。今の○○幹事のお答えに対して疑問があります。

 

というのは,1の(1)でいった場合には,その信託は,責任財産限定債務と,責任財産に限定されない債務,両方負うことがありますよね。

 

そのときに,全部が責任財産限定であれば,確かに,その信託に限って債権と債務を見て無資力要件を考えればいいのだと思うのですが,固有財産も責任を負っている債務が併存しているときにどういうふうに無資力要件を考えるのかというのは,ちょっと工夫をしないと,簡単には出てこないのではないかなと思います。

 

  •  これは,1の方の既存の信託のもとでもって責任限定をしていくタイプというのは,○○幹事が言われたように,責任限定される債権者の方から見たときに,されるのと,されないのと,両方が混じってくる場合があって,これはどこかではまた検討するかもしれませんけれども,その両方が混じっているためにどういう問題が生じるかという問題は,恐らくたくさんあるのですね。今の点も少し関係するのかもしれませんが。

 

 

  •  多分,現在,責任財産限定特約というのを契約ベースで結んでいるときには,今言ったようなことは頻繁に生じるのだろうと思うのですけれども,そのときの無資力要件というのはそう簡単には考えられないというか,答えが出てこないのではないかと思いますので,それ自体が私の誤解かもしれませんけれども,御検討いただければと思います。私も考えてみます。

 

 

 

 

 

  •  この新たな信託の類型に関することなのですけれども,必ずしも十分制度的なものが理解でき切れているわけではないとは思うのですけれども,今,LLCとかLLPとか,いろいろ検討はされていますけれども,信託は非常に制度設計がしやすい,機関設計とか受益権の設計なんかも非常にしやすいということもありますので,こういう形で可能性としていろいろな道ができてくるというのは,将来,ビジネスニーズに応じて,創意工夫によっていろいろな事業や投資に利用できる道が広がるのではないかという期待ができると思います。

 

 

したがいまして,いろいろな道がとれる,いろいろな可能性を広げるという意味で,是非こういう制度も積極的に検討していっていただきたいと思います。

 

 

  •  先ほどの○○委員の意見といいますか,どこにこういうのを設けるべきなのかという,信託法一般の中なのか,それとも別の場所なのかという問題もあるということでしたね,さっきの○○委員の2番目の意見は。

 

 

  •  はい。

それで,もう一つ確認ですけれども,これは○○委員もおっしゃっていたことですけれども,この新たな有限責任事業信託なるものの特色がどこにあるのかという話が今あって,もう一回確認なのですけれども,受益者はもちろん出資者で有限責任だよと,それはいいですね。

 

受託者の有限責任というのは,この1のところで出てきた通常形態の契約・取引ベースではっきり明示したような場合だけではなくて,だから明示する必要すら今後はなく,かつ,不法行為であれ何であれ,公租公果まであるのかどうか分かりませんが,とにかく責任限定だというところまで入っていると理解するのでしょうか。

 

 

 

 

 

  •  そこは,先ほど申し上げたように,そういうふうに当然になるものかどうかというのは,私は個人的には疑問を持っている。

 

 

それで,不法行為は,先ほど言ったように,法人の場合であっても代表者は当然責任を負うので,それはこの信託の受託者も同じではないかと思います。

 

ただ,契約上生じる債権あるいは債務の方についてはもう一律に責任限定になるというところは,一つの新しい特徴なのではないでしょうか。

 

 

  •  事務局の考え方といたしましては,おっしゃるとおり,基本的に,取引債権であれ不法行為債権であれ有限責任になって,受託者個人にはかかっていけないと。

 

ただし,もちろん,受託者個人に故意過失があれば,それは民法の個人的な責任は負いますし,あるいは266条ノ3のような責任は負うという理解でございます。

 

その限度では受託者個人が責任を負う場合もあり得るということになります。

 

基本的には,あらゆる債権の種類--租税公課はともかく,そこは私どもも考えてきませんでしたが,基本的には不法行為債権も会社と同じく有限責任であるという理解でございます。

  •  新たな信託の方の関係ですが,7ページの上2行ぐらいのところに書いてありますけれども,「有限責任性を確保しつつ内部関係については柔軟性を有する組織による事業等の実施に対するニーズ」というのがあって,それにこたえるのだという説明ですが,先ほどから,こういうニーズがあるのだという方と,本当にあるのかという御意見も出たりしていますが,普通の事業をやる方からのニーズというのがあるのかどうか,それはちょっと私は分かりませんが,少なくとも経済的な事業活動を行って悪いことをする人たちにとってはニーズがあるのだろうと思うのですね。

 

 

すみれ

「経済的な事業活動を行って悪いことをする人たちってどんなことするんだろ。」

 

 

 

かつ,中の構造が柔軟性があって監督とかされていないという,こういうものを信託で作る必要があるのかという,そういう感じを疑問として持っております。もし作るのだったら,やはり相当その辺も意識したものをつくらないといけない。

 

 

 

それで,信託一般で作るのではなくて,やはり,そういう限定したものを,もし作るのだったら,考えた方がいいのではないかと。信託法でこういったものを入れることについては反対であると,一応そういう意見でございます。

 

 

  •  新たな信託の類型の方なのですが,イメージがよくつかめないということがありまして,これで何をとらえようとするのか。先ほど,パイロット事業や期間を限定した事業などに使えるのではないか,またビジネスとしてもいろいろ可能性があるという御指摘があったのですが,私が関心を持っておりますのは,委託者,受益者,受託者の関係はどういうふうなものを想定したらいいのかということで,説明のところですと所有と経営の分離的な説明がされていて,専門家としての受託者の知見を活用できると。

 

 

そういう意味では,受託者自身は利益は取らない,受益者と受託者は別であるというような類型を想定していていいのか,それとも,むしろベンチャー的に,受託者も受益者だけど,お金だけ出す受益者もいるというような構造を考えた方がいいのか,そういったことによって信託の法理というのは変わってき得るのではないかという気がしております。

 

 

例えば,ここで出されている,受益者に対する弁済のところでも,それを緩和するかというときに,受託者も全員受益者です,しかしほかに資金だけ出している受益者もいますというような類型の場合もやはり緩和ということでいいのかどうかというのも若干気になるところがありますので,もしこういったものを想定しているということが仮に明らかにできるのであれば,その三者の関係を含めてイメージを出していただけると非常に有り難いような気はします。

 

 

 

 

 

それから,中身自体についてはいろいろ分からないところがありまして,一応羅列だけ申し上げますと,信託財産を確保するための方策を定めるということですけれども,これが,定めたけれども履践されていなかったときはどういう効果になるかとか,受益債務の弁済について純資産額を超えては弁済できないというところの緩和のときの,信託財産に属する債務に係る債権者の承認をもって緩和するというときのその緩和の仕方,あるいは手続みたいな話なのですが,これは個々別々に,今回,今回というような承認で,包括的なものではなく,その意味では,各時点の全債権者,不法行為債権者ですとか租税債権者を含めた全債権者の承認をとるというようなことなのか,包括的になりますと,新しく入ってくる債権者というのはその後出てきますので,そういうようなことなのかとか,3ページに行きますと,3行目の「原状の回復をするには著しく多額の費用を要する」というのは,以前この文言が出てきたときは補修のケースが念頭に置かれていて,それに対して,物自体の所有権回復というのはこのような局面はほとんどないのではないかというお話だったと思うのですが,受益債務を弁済するときでどういうような局面がこれで想定されているのか,それから,(オ),(カ)に関して,前者の場合の返還の話なのですが,現存利益だけを返還させるというような方策がとられないのはなぜかというあたり,あるいは「イ 予見可能性の確保」の(ア)の「取引等をする」の「等」に何が入っているかとか,明示しなかったときにどうなるかとか,細かいところで若干気になることがありますので,もちろん,この場でお答えいただかなくても,また別の機会にでも教えていただければと思います。

 

 

すみれ

「たくさんあるね。」

 

 

 

  •  細かいのはすべてお答えする時間もないかもしれませんので,むしろ,こういう制度を設けるべきかどうかという観点からの大きな問題について答えてもらった方がいいと思いますが,先ほど○○幹事が挙げられた例の中で重要だと思われるのは,受託者も受益者の一人であって,そういう意味では投資家が集まっていて,しかし受託者が同時にジェネラル・パートナー的な役割を果たしているというのをイメージするのか,あるいはどこか違うのをイメージするのか,そこら辺ですね。これによって,この信託というのをどういうふうに理解するかというのは大分違うと思いますので。

これはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

 

  •  こちらとしては,○○幹事がおっしゃられた,受託者が受益者の一人である場合であろうが,それ以外のベンチャーみたいな場合であろうが,特にこういう類型を念頭に置いているというよりは,いろいろな用途に応じて,単に出資だけする人もいるでしょうし,事業を執行しつつ出資もするという人もいるでしょうし,いろいろな類型を考えている,特に限定してこれといった一つのイメージを抱いているというわけではないというところでございます。

 

 

それによって果たしてどのように信託の見方が違ってくるのかというところがよく分からないのですが,特定の類型を念頭に置いて考えているわけではないというところが一つのお答えになるかと思います。

 

あと,細かい点は,ちょっと今直ちにはお答えできませんが,例えば言ったことを守らなかったときはどうなるかというのは,信託財産を確保する方策の中で,それを履行しなかったときには無限責任に戻るというような履行確保策というのを定めるようなこともできるでしょうし,そのような方策をいろいろ考えていくことになるのではないかと考えているところでございます。

 

 

 

 

 

  •  1点,質問でございます。

新たな信託の類型というところで,もちろんユーザーの立場からすると,このような選択肢が増えることは評価できると申し上げたところですが,先ほど御発言があったように,悪用されるリスクがあるかもしれないと。

 

その観点から,例えば,いろいろな信託会社に対して,また受託者に対して取引を行う者,取引債権者の立場からどういう問題が起こるのかということで質問なのですが。

 

 

要は,1の通常形態における信託の債権者保護の在り方と,2の新たな信託の類型の在り方と,差があるわけですけれども,ここはどう違うのかということです。

 

例えば,銀行の立場からすると,1の場合でも2の場合でもそんなに入り方は変わらないわけですが,この分類でいきますと,1でいくと明示するものが二つありまして,2でいくと,新たな類型の信託の特定の信託の受託者であるということの明示があって,登記を見なさいという話になっているわけですけれども,そこで分かれまして,その効果として,1では,悪意重過失というところでいわば間接的に保護されて,2として,そういう確保のための規律があるというところとの差が出てくると。

 

 

 

一番大きいものは,やはり前に申しました開示の話でありまして,1に関していうと,開示については規律がないと。

 

ところが,2について言いますと,一応,開示は,3ページのイの(イ)の,利害関係人は書類の閲覧等ができるということで,あと,それに加えて,任意には,債権者保護手続の一つとして,信託行為を変更することができるとする場合には債権者保護手続があるということですが,そうしますと,言葉を変えますと,1で入ってきた人というのは,そういう開示も受けられず,かつ,信託が勝手に変わっても債権者保護は得られないという話になるわけですけれども,取引債権者からすると1も2もそんなに変わらないはずなのに,どうしてこの差が出てくるのかというところがちょっと理解できないところなので,もし教えていただければ有り難いのですけれども。

 

 

  •  結構重要な問題点ですね。

これはいかがでしょうか。

 

  •  2というのはあらゆる債権を対象にしておりますので,それだけ制度を十分整備する必要性が高いのではないかと。

 

 

それに対しまして,1といいますのは,有限責任になるということを認識した上で入ってきている債権者ですので,それを保護する観点から,ここまで,新たな信託の類型と言われるほどまでの制度の整備は要らないのではないかなという気がしておりまして,それでそういう差異が設けられているということでございますけれども。

 

 

  •  確認なのですが,そうしますと,2の場合には必ずしも覚悟して入っているということではないということ,つまり,3ページのイの「新たな類型の信託の特定の信託の受託者である旨を明示しなければならない」ということと,1の「特定の信託の受託者である旨及び特定の信託に係る信託財産に責任が限定される旨を明示」した取引であることを明らかにするということとは本質的に違うということですね。

 

 

 

 

 

  •  1というのは,実質的には,現在あります責任財産限定特約と同じような趣旨を,よりコストを低減させるために認めたにすぎないといいますか,そう変わるものではないわけでして,取引債権者だけを見ますと,確かに明示するという点だけ見れば違いはないように見えますけれども,2はほかの債権者も対象に置いているということで,保護策が大分違ってきているということになりますが。

 

 

 

 

  •  実務的な観点から申し上げますと,物は言いようということにもなるかもしれませんけれども,1と2とでどこが大きく違うのか,入り方としてですね,という気はいたします。

 

 

 

2のところで,例えば,特定事業信託者でありますけれどもといったときに,ある程度覚悟して来てくれるというようなことを期待しているのかもしれませんし,逆に,そもそも1のところでそういうことを言ったとしても,それほどの覚悟で来ているのかどうかというのはよく分からないと思いますので,1と2と,入り方としてそんなに差があるのではないのかなという印象はあるわけですが,その違い,私から見るとわずかな違いにもかかわらず,この法規定が大きく変わるということが,どうしてそこが違うのか,逆に言うと,当初私が申し上げたように,1の保護規定というのは本当にこれで十分なのかという疑問にもなってしまうということでございます。ちょっと実務的な印象を申し上げました。

 

 

 

  •  今の○○委員のお話をお聞きして,私が今まで抱いていた認識が違っていたかもしれないと思って,再度お聞きするのですけれども。

 

 

 

1のところは,先ほど申し上げましたけれども,普通デフォルトで特約をつけてやりましょうというのと何ら変わっていないと思いますので,普通であれば,それプラスアルファで特約がついてやるのではないかと。

 

 

ですから,(2)の規律だけがきいてくるのではなくて,多分,(2)以外に,そのとき規制しようと思うようなものを契約の中で入れてくるのではないかなというふうに考えていたのですが,それはそういう認識でよろしいですね。

 

 

 

それで,2の方については,とりあえずパッケージ化した形で有限責任になっていますということで,1は,ただ,明示するというようなところの部分でいろいろとごちゃごちゃ書くところが軽減されると,ある意味それぐらいのことなのかなという意識を持っていたのですけれども,そういう認識でよろしいのでしょうか。

 

 

  •  基本的にはそういう考え方でございます。

 

 

  •  1の既存の信託の考え方なのですけれども,デフォルトとして受託者が無限責任で,責任財産限定特約を付すことで有限責任になるということについては,先ほどの○○幹事からの御説明で,その趣旨は責任財産限定特約のコスト削減であるということだったのですけれども,そのニーズが一体どれぐらいあるのかというのがちょっとよく分からないなというところがあります。

 

 

 

それと,現状,責任財産限定特約を付して取引を行う場合とどこが違うのかというようなところもちょっと引っ掛かっているところでございます。

 

 

それと,実際に行われている金融取引についてちょっと御紹介しますと,やはりこれで多いのは,年金等の信託で信託銀行が受託者になっているような場合,これが,金利ですとか為替ですとかのヘッジで,デリバティブですとか,あるいは債券・株式の貸借取引といったものが起きるわけですけれども,通常,信託銀行は,信託勘定と銀行勘定でそういったヘッジを提供しているわけですが,場合によっては外銀と行うということが多いわけでして,外銀と信託銀行との間の取引では,従来から,特定の年金の信託における,受託者であるという旨の表示というものがなされてきたわけですけれども,責任財産限定特約というものがスワップ契約のスケジュールの形で一部使われるようになってきている。

 

 

ただ,それには,ただ単に責任財産が限定されるということだけではなくて,信託銀行側,受託者側に信託財産の分別管理義務と一定の情報開示義務を課していて,それが守られなかった場合は責任財産限定特約が外れるというような書きぶりになっているのですね。

 

 

すみれ

「何々が守られなかったら特約が外れるってやり方もあるんだね。」

 

 

 

あと,実情,これは私が勤めている会社,あるいはその同業者からよく聞くことなのですけれども,では受託者,信託銀行に信託財産に関する情報を開示してほしいといった場合に,ほとんどの場合,委託者の同意が得られないということで,何の情報も開示されないということです。

 

 

それでも実際にデリバティブ取引は多く行われているわけですけれども,これは,債権者側としては,もう信託銀行の信用力に依存してやっているのだという割り切りで行われているというのが実態ではないかなと思います。

 

 

こういった取引が有限責任ということになれば,恐らく,信託財産に限定して与信を行うということが,受託者自身の銀行勘定は別として,金融機関にとって非常に難しくなるかと思いますので,実務上の支障も大きいのではないかなという気がいたします。

 

 

  •  これは先ほど○○委員も言われましたけれども,私は,1に関しては恐らく現在のとそんなに違わなくて,責任財産限定特約でもって取引をするときには,ここに書いてある要件のように,「特定の信託の受託者である旨及び特定の信託に係る信託財産に責任が限定される旨を明示して」と,要するに責任が限定されますよと,それで取引をしてくれますかと,そういうことで,応じるかどうかだと思うのです。

 

 

ですから,そのときに,これだけの条件ではそういう責任限定の取引には応じたくないというのであれば,やはり条件を出して,それでいろいろな付随的な条件をそこで合意して取引に入るという構造は今までと基本的には変わらないのだろうと。

 

この点では,私,○○委員と基本的に同じ認識を持っておりますけれども,あるいは,まだそこら辺でちょっとニュアンスの差があるのでしょうか。そんなに差がないのではないかと思いましたけれども。

 

 

 

  •  差がないということならば,私は異論がないのですけれども,明示して取引というのと,責任限定を合意するというのは果たして同じなのかというのは,私,ちょっとよく分からないところがありまして。

 

例えば,個人的には羽振りのいい受託者が,しかしながら,もうどうしようもなくなって末期症状にある信託を持っているというときに,この明示をして相手方と取引をする際に,本当に相手方に,現在この信託は赤字でどうしようもないということを何ら言わなくても,明示をすればそれで責任財産限定の効果が発生するのかというと,私はちょっと疑問のような気がいたします。

 

 

責任財産限定を認めてよい最近の学説として私の論文を引用してくださっているのは有り難いのですけれども,ここには,私,責任財産限定特約というのは強い説明義務が課せられる特約であって,場合によっては内容とか現在の状態とかを言わなければならないという話を,余り自信はありませんが,書いたような覚えがありまして,そこら辺,若干ニュアンスが違うのではないかと。

 

 

とりわけ,もし仮に2の新たな信託の類型というのを作ると仮定したときには,その辺のところのイの(ア)の「明示しなければならない」というのと同じ文言にする,それで同じ明示という形にするのは,私は,どうかなという気がいたします。

 

 

すみれ

「報告書ないからよく分からないけど、明示って言葉が2回使われていて違う意味ってことかな。」

 

 

 

 

 

2番目に,これは○○委員がおっしゃっていることに全く異論はないことで,繰り返しだけなのですけれども,2の方向,新たな信託の類型という形をとりましても,不法行為債権というものは実は排除はされないはずですよね。

 

 

なぜならば,受託者が例えば自然人の場合を考えますと,そもそも受託者に故意過失がなければ不法行為責任は発生しないわけであって,そうだとすると不法行為責任が発生するときには,受託者には故意過失があるわけですから,受託者は不法行為者として責任を負うわけですね。

 

 

それは法人の場合も同じであって,法人の不法行為を認めるかという話はありますけれども,仮に認めるということになりましたらそうなるわけであって,そして,その法人が持っている財産すべてが尽きたらもう終わりだというのは,これは当たり前の話で,それは自然人がすべての財産が尽きたら終わりだというのと同じなので,不法行為債権というのは,理論的には全く限定がかからないものではないかと思います。

 

 

 

ただ,これも○○委員がおっしゃったことの繰り返しになりますが,工作物責任等についてどう考えるかという問題はなお残るとは思いますけれども,個人的には,なぜ,あるものが信託財産であるからといって,当該工作物の瑕疵から被害をこうむった人が責任財産限定みたいな形にならなければならないのかというのは私はよく分かりませんので,私はそれもかからないと思いますけれども,全くもって,不法行為については○○委員がおっしゃったことを繰り返しただけです。

 

 

 

  •  私の申し方が悪かったので,ちょっと確認を申し上げたいと思うのですけれども。

 

私が1について申し上げているのは,もちろん理論的には1というのは現状と変わらないと。

 

 

もちろん,それを契約というのか,擬似契約的なものというのかどうか,ちょっと変わるかもしれませんけれども,そこについては認識の差異はないと思っています。

 

 

私が申し上げたいのは,どちらかというと実務的に,こういうことをやると結局契約交渉のバーゲニングパワーというのが実質上信託側に移るので,そうすると,実務上の問題も,又は立法政策上の問題かもしれませんけれども,それを保護するために,第三者に対して何らかの保護規定として開示の権利を受けるとか,また,言った言わないということも,もちろん挙証責任の問題はありますけれども,事実上の問題としてそういうトラブルを回避するために,より明示的な方法を取り入れるかどうかと,そういうことでございます。

 

 

すみれ

「バーゲニングパワー?」

 

 

 

  •  恐らくまだ御意見があるのかもしれませんが,ちょっとここでいったん休憩いたしましょう。それで,その後,もし御意見があれば,若干御議論いただいて,更に先に進みたいと考えております。

それでは,休憩にしましょう。

 

(休     憩)

 

  •  それでは,再開いたします。

今の有限責任のところについては大分御議論いただきましたけれども,もしなお御意見があるということであれば,伺いますが。

 

 

  •  法制度的な論点ではなくて,有限責任の信託制度がどういう使われ方をするのだろうか,実需があるのだろうかと,こういう御議論でございます。

 

 

経済産業省は最近,新産業創造戦略をまとめて,その中で,「ビジネス・トラストへの期待」という言葉を入れさせていただいております。

 

 

すみれ

「そういうのもあったんだ。」

 

 

 

経過で言うと,やはり有限責任制で出資する方々にインセンティブを与えてほしいという点と,内部関係をなるべく自由な設計を認めていただいて簡素にしてもらいたいと,これは経済界の方は大体この二つは非常に強く望んでいるのだと思います。

 

 

現在,その二つの要素を兼ね備える組織体ということで,いわゆる人的な会社をベースにしたLLCと,パートナーシップをベースにしたLLPと,それから信託をベースにした有限責任信託,この三つのアプローチがあるのではないかと我々は思っていて,もともとLLCについてもかなり強く制度の実現を働きかけてきた経緯もありますし,LLPについては,現在,経済産業省の方で新しい立法をつくろうということに,今,頑張っている最中です。

 

 

すみれ

「限定責任信託って合同会社と並ぶような位置だったんだ。」

 

 

 

 

ただ,このLLCとLLPは,どちらかというと出資する方と経営に参画する方が大体一致しているイメージの制度の立てつけになっていまして,共同事業性のビークルとなっております。どんな使われ方をするのかというのは,私の感じですと,つくった当初は,アメリカも石油の開発会社あたりがつくっていたところが,どんどん利用実態が広がっていって,結構専門人材の集まるところでどんどん使われているというような議論になっていると思いますし,例えばイギリスのLLP制度も,当初は会計事務所が使いたいという議論で始まったのだけれども,ふたをあけてみると,サービス産業だとかコンテンツハウス,ITハウスだとか,そういういろいろな人たちが使い始めているということを見ると,やはり制度というのは,一回できてみると,いろいろな柔軟な使い方が創意工夫の中で出てくるのかなというふうに期待を持っております。

 

 

 

 

 

有限責任信託について言うと,LLPとかLLCとの違いについて言えば,恐らく受益者と受託者がある程度分離している。LLPの議論をずっと突き詰めると若干出てくるのが,いわゆる出資組合的な人を排除するような仕組みに最後はならざるを得ないですけれども,有限責任信託ならば,そうした,出資をする方と実際にノウハウを回していく方がある程度分離して,なおかつ有限責任制で内部自治が非常に柔軟だというようなところにも使えるような気がしていて,そこは新たな事業活動のベースになるのかなと思っています。

 

 

 

 

一番心配なのはやはり税制でありまして,LLCは,法人格があれば法人税という壁はなかなか越え難いというふうに思っています。

 

 

LLPは,今,構成員課税の話を主税局と一生懸命やっていて,これは構成員課税が取れるのではないかと思っていますが,有限責任信託についても,最後は税制の議論が非常に重要だと思っています。

 

 

すみれ

「税金は取れるか取れないかで勝負なんだね。」

 

 

できれば有限責任制で,内部自治が非常に簡素で,なおかつ構成員課税という道ができて,かつ,LLPと違って,必ずしも出資者全員が事業に参画しなくてもいい,ある種出資だけに特化するような方も許容するような組織形態ができれば,新しいビジネスの一つのビークルになるというふうに思っています。

 

 

ただ,正直申し上げて,日本に全くない制度ですので,想像の域を出ないといいますか,ちょっとまだ……,もしかすると妄想の域を出ないのかもしれません。

 

 

 

すみれ

「妄想も楽しそう。」

 

 

 

それから,特に,先ほど悪用という議論がございましたが,これは実はLLPでも相当議論はしています。

 

 

特に税制が構成員課税になったらそういう議論は必ず出てくるのですね。

 

したがって,こういう有限責任信託制度を作る際も,税制の議論がどう落ちるかにもよるのですけれども,そういった悪用防止という視点からのチェックという議論は避けて通れないと我々は考えております。

 

 

ただ,これは制度の実情が見えてこないと,どこまでが過剰でどこまでが適正かという議論は今の段階ではなかなか難しいのですが,さっき○○委員がおっしゃったような視点というのは,我々の方もそこがあっての前提だというふうに考えております。

 

 

 

ただ,立法形式で,先ほどの特別立法かどうかという議論は,実は経産省はそういうところは余り関心がなくて,信託法の現代化の中でこなしていただいてもいいし,別法ができてもいいし,とにかく利用者にとって分かりやすいような立法ができてくれれば有り難いと思っています。

 

 

すみれ

「経済産業省は実務的なんだ。」

 

 

 

それで,経産省がやりたいことは,海外の活用例というのを一回調べてみなければいけないなという感じはしています。

 

 

それともう一つは,今ちょっと申し上げたようなLLCだとかLLPとの比較対照で,さっき○○幹事がおっしゃったような,受託者がいて,受益者がいて,委託者がいてという三者関係が,いわゆる既存の組織形態の株主だとか経営者だとか,そういう関係との関係でどう整理ができて,どういうバリエーションがあって,それぞれがどういうところに特徴があるのかという頭の整理をして,海外の実例とかもまた別途調べに行きたいとは思っておりますが,先ほど申し上げましたように,新しい仕組みができると,大体,当初想定した以上に,いい利用もされるし,悪い利用もされる。

 

 

悪い利用はなるべく排除しながら,いい利用が出るということを期待して,この有限責任信託制度を是非この法制審の中で適切な形で立案していただければ非常に有り難いというふうに考えております。

 

 

また後日,調査結果ができ上がり,御紹介する機会があれば,皆様方の前に御紹介したいなというふうには思っております。

 

 

 

 

  •  LLPと非常に似たところは確かにあるのですね。

 

ただ,あくまでこちらは信託ですので,信託であるということから来るいろいろな問題,当然,受託者なんかについての信託業法的な規制もあると思いますけれども,そういうところは違ってくると思います。

 

 

  •  先ほど○○委員から,アメリカにおいて,ビジネス・トラストは結局のところ,投資信託ですとかリートですとか,非常に限られた,いわゆる集団的投資スキームの分野に限定されることになって,その最大の理由は税制にあるというような御指摘がなされて,それは全くおっしゃるとおりだと思いますけれども,私法上もやはりビジネス・トラストの利用が限定された理由があると思いますので,その点についてちょっと御紹介させていただければと思います。

 

 

 

 

その問題は,○○委員,それから○○委員が指摘されましたけれども,通常,ビジネスのビークル等で有限責任というときには,出資者の有限責任が一番問題となるわけですけれども,この仕組みでビジネス・トラストを使って受益者が有限責任を確保できるかどうかということがアメリカでは結局非常に不安定になったというのが,私法上の問題点ではないかと思います。

 

 

すみれ

「受益者の有限責任か。」

 

 

すなわち,受益者が受託者に様々な指図を出して,いわば所有と経営が分離していないような信託の運営をするときは,アメリカでは,これはもうパートナーシップであるという法的性質の認定がなされまして,受益者に対して無限責任が課されるケースがあったと。

 

 

これはコントロール・テスト等と呼ばれておりますけれども,支配権,コントロールがあったかどうかということを判断して受益者の責任を判断したわけですけれども,結局そのような非常な不安定さがあって,それだったらやはり会社を使おうかという面があったのではないかと思います。

 

 

 

 

 

この受益者の責任については,この注の中で,基本的原則としては受託者からの補償請求権がないということを書いて,一応,受託者と受益者との関係では受益者有限責任のように見えますけれども,第三者との関係でも本当に有限責任を確保できるのか,逆に言うと,コントロール・テストのようなものが使われないような債権者保護のためのルールを設けられるかどうかという点が非常にポイントになるのではないかと思います。

 

 

 

そういう意味では,私は,やはり,それこそ今通常の株式会社がやっているようなことがこのビジネス・トラストでどんどんなされるというようなことは余り考えられないし,望ましくもないのではないかという気がするのですけれども,他方で,余り物的施設なんかを必要としないような,むしろアイデアですとか知的財産があれば何か生み出されるというような仕組みとして,一般の受益者からは資金を集め,能力・技術を持っている人たちが受益者の指図等を受けないで何か生み出していくということには,この有限責任信託というのはふさわしい仕組みになり得ると思いますし,何よりも信託は,事業目的に限らず,どんなことでも行えるわけですので,例えば他益的な事業,あるいは幅広い受益者のために行う中間法人的な事業,こういったものもこの有限責任信託を使ってできるというのが,先ほどの○○幹事の御説明だったと思います。

 

 

 

そうだとすると,この有限責任信託という制度自体を作ることは,やはりいろいろな可能性を生み出すという点で望ましいことなのではないかという気がいたしますけれども,先ほどのアメリカの経験等も踏まえて,受益者の責任を本当に確実に確保できるかどうかというところは更に慎重な検討が必要ではないかと考えております。

 

 

 

 

 

 

  •  ○○幹事から米国の実態の御紹介がございまして,その点につきましては,なお私どもでもう少し調査をしてみないといけないかなと思いますが,私どもが拝見しておりますところによりますと,○○幹事が御指摘のように,最初は確かに,米国におきましても,受益者が指図をしているときには,これは実質的にはパートナーシップではないかということで,受益者に対して責任を追及していったという状況にあった,と存じあげております。

 

 

ただ現在は更にそれを超えて,各州において,これは信託といえば信託だろうという形で,ビジネス・トラストという形ではございますが,独自の立法というものがなされているような状況にあるのではないかというふうに……。

 

 

 

  •  もしそうだといたしますと,○○委員が先ほど御指摘になった問題に戻って,これは事業形態としての特殊な信託の一類型だということとなると思うのです。

 

 

そういう意味では,ビジネス・トラストという形で特別な立法をすると,それはいわば企業形態として規律しているのであって,トラストということにどれだけ実際上の意味があるのかという問題にまた戻ってしまうのではないかと思います。

 

 

むしろ,○○幹事が先ほどの御回答の中で,何を行うかについては開かれているということを言われたと思うのですけれども,そうだとすると,ビジネス・トラストについての特別立法というのとはまたちょっと違う話になってくるのかなという感じを持っております。

 

 

だから,逆に言うと,そこのところをきちんと整理する必要がひょっとしたらあるのかもしれません。

 

 

すみれ

「難しいね。会社や組合ではだめなのかな。」

 

 

  •  目的のところについては,先ほどお答え申しましたように,限定しないということで考えさせていただいていましたので,我が国法において入れるときに,そういう限定を加えることが必要であるかどうかというようなことについては,またなお検討させていただきたいとは思います。

 

 

すみれ

「目的を限定しないで責任を限定するか。限定責任信託って名前が。もうちょっと他にあったかも。有限信託とか。有限会社みたいじゃないかな。」

 

 

それから,先ほど,受託者の有限責任というところと出資者の有限責任というところを混同しているのではないか,星野先生の論文の挙げ方が混同しているのではないかという御指摘をちょうだいしたところでございまして,説明の書き方が一言ざくっと書いてあるだけでしたので,ちょっとよくなかったのかもしれないと思って反省いたしておりますが,ここで私どもが星野先生の論文を引用させていただきましたのは,いわゆる形式的な所有者であれ,実質的な所有者であれ,その所有者に対する債権者というものがいわゆる一定目的の財産に対してかかっていけないということが,その一定目的の財産に対する債権について形式的あるいは実質的な所有者が有限責任を担保されるということの前提条件になっているというような趣旨で引用させていただきたかったと。

 

 

もうちょっと具体的に申しますと,星野先生の第1の要件というときに,出資者に対する債権者というのが団体財産にかかっていけない,したがって,その団体財産に対する債権者というのが出資者個人に対する債権者に優先するというところが,出資者に対する有限責任を認めるためのまず第1ステップだということで,現行信託法を見ましたときに,受託者は確かにその信託財産の所有者なのですけれども,16条によりまして,固有財産に対する債権者というのは信託財産にかかっていけない。

 

 

その意味において,信託財産に対する信託債権者というのは固有財産に対する債権者には優先するというようなところで,その第1の要件と同じような,信託債権は有限責任であるというようなベースがあるのではないかという意味で引用させていただいたということだけで,ちょっと指摘の仕方が悪かったかもしれませんが。

 

 

 

 

 

  •  そのロジックは分かりますけれども,その話をまた言い出すと,全体として,投資家というか,そういうものの有限責任というのをいろいろな器でもって考えようというときに,受託者の,まあ受益者を兼ねる場合もあるかもしれないけれども,さっき○○委員がまとめられたように,投資家とは違って,全然投資はしないけれども事業の担い手として活動する者の責任を有限責任にするか,それとも無限責任にするかという問題なので,星野教授の論文というのは,やはり適切じゃないんじゃないですかね,場面として。

 

 

ただ,全体として二つの問題があって,こういう制度でもって投資家の有限責任というものを確保しようというのがまず一つであり,かつ,受託者については,これは○○委員が言ったように,受託者自身はこれによって利益を受けるわけではないし,基本的には投資の危険というのはその信託財産自体が負うべきなので,そういう信託において受託者の有限責任というのを認めていいのではないかと,それでさっきの一々特約をしないでも一律に認めるようなタイプがあり得るかどうかと,そういう問題なのではないですかね。だから,やはり星野先生の論文を引用する場面がちょっと違うのかもしれない。

 

 

いろいろ御議論いただきましたけれども,問題点は恐らくもう一回詰めるということになりますが,また,仮にこういうのがあってもいいというときにどういう形で立法するかというのは,○○委員あるいは何人かの委員から言われましたように,更に検討しなくてはいけないのではないかというふうに思います。

それでは,一応これで一区切りにさせていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

  •  それでは,第35,第36の補償請求権と報酬請求権についての説明をいたします。

 

補償請求権でございますけれども,現行法36条1項,2項に関する見直しの提案でございます。

 

まず,1でございますが,これは,信託財産に対する補償請求権に関する提案でございまして,このうち,受託者が補償請求権を行使する方法といたしまして,信託財産の処分,まあ固有財産化すなわち金銭の充当ですとか,あるいは利益相反行為に該当しない限り,その買受けというものも含むと解しておりますが,そのような方法,又は信託財産の強制換価手続に対する配当要求の方法を定めるというところは,報告書と変わりはありませんし,第2回会議でも説明したところでございます。

 

 

そこで,本日は,まず,1の規律に関して最も重要と思われます補償請求権の優先性の問題について御説明いたします。

 

 

この優先性に関しましては,現行法36条1項が,受託者が信託財産から補償を受ける権利は,受託者の負担した費用の性質を問わず,他の権利者に優先して行使することができるとされておりますのに対しまして,提案では,(4)のとおり,受託者が信託財産の価値の維持増大に資する必要費又は有益費を直接信託財産に対して出資した場合に限って優先性を認めることとしております。

 

 

この提案内容は報告書と変わらず,その理由についても第2回会議で説明したとおりでございまして,信託財産に関して負担した費用の中には信託財産に属する借入債務の弁済費用などもあり得るところ,このような費用の支出については他の債権者の利益になるものとは言い難く,優先性を認める根拠となる共益性を認めることはできないと考えられるからでございます。

 

 

 

このように補償請求権の優先性を限定する提案に対しましては,やはり第2回会議におきまして,主として実務サイドの意見として,受託者の信託目的遂行の観点から,優先性を限定するのは信託財産にとっても望ましくないとの考え方,あるいは,共益性を緩やかに解すれば,信託財産に属する貸金債務を弁済した場合でも優先性を肯定できるのではないかとの考え方が示されたところでございます。

 

 

番人

「信託財産に属する貸金債務を弁済した場合は、優先になってほしいな。」

 

 

 

そこで,この信託財産に対する補償請求権の優先性をいかなる範囲で認めるかにつきまして,改めて是非とも御審議を願いたいと思います。

 

 

なお,優先性に関連しまして,事務局の提案内容に関し2点補足させていただきます。

第1に,第2回会議では,事務局の提案内容に対する批判論といたしまして,提案内容によるときは,いずれも信託財産に対して共益的費用が支出されたという場合におきまして,いったん外部から信託財産を引当てとする借入れがなされ,これを共益的費用に支出した後で受託者がその借入債務を弁済したというケースでは,先ほど言いましたように優先性が認められないことになるのに対しまして,外部から借入れをなさず,受託者が直接共益的費用を支出したというケースでは優先性が認められることになると考えられますが,この点については,信託財産が利益を受けていること,それから受託者は結果的にその費用を出していることには変わりがないにもかかわらず,たまたま資金の流れ方が異なるために優先性が異なるというのはおかしいのではないかという指摘がございました。

 

 

 

 

 

この点につきましては,31ページの(注5)にも記載したところでございますけれども,受託者としては,信託財産が貧困で,必要費や有益費を支出しても回収の見込みがないような場合であれば,2の規律によって受益者に対する前払請求や信託終了の方向に持っていく方法もあったでしょうし,あるいは外部から借入れをするにしても,信託財産のみの有限責任債務とすることもできたにもかかわらず,あえてこれらの方法をとらず,第三者に対する無限責任債務を負担して立替払いをするというリスクを自ら負担したということを考慮すると,優先性に違いが生ずることも許容できるのではないかというふうに事務局としては考えたものでございます。

 

 

 

第2に,優先性を認める根拠をその費用の共益性に認めることにいたしますと,優先性の有無は,受託者による費用の支出によって利益を受けているか否かを,その権利者単位にではなくて,その有する個々の権利単位で判断して決することになると思われます。

 

 

 

 

例えば,信託財産たる土地が複数ある場合におきまして,受託者がそのうちの一つの土地の不法占拠者を排除する費用を支出した場合について考えてみますと,信託に対する貸付債権者については,その有する貸付債権の対象が特定の信託土地に限られるものではないことになりますので,受託者の出したこの排除費用がどの信託土地に関するものであろうと,貸付債権は恩恵を受けている,すなわち,これを受託者の側から見れば,この排除費用をもって,どの信託土地についても貸付債権に対する優先性を主張することができてよいと考えられます。

 

 

番人

「たしかに。」

 

 

 

これに対し,特定の信託土地についてのみ抵当権を設定している貸付債権者については,不法占拠者が抵当権の対象土地にいたのであれば,一般債権たる貸付債権のみならず,併有する抵当権もまた恩恵を受けたと言えるのに対しまして,不法占拠者が別の信託土地にいたのであれば,貸付債権としては恩恵を受けたと言えますが,抵当権としては恩恵を受けたとは言えませんので,受益者としては,貸付債権に対しては優先性を主張することができても,抵当権に対しては優先性を主張することができないというふうに解されます。

 

 

番人

「たしかに。」

 

 

(4)のただし書及び30ページの(注3)は,このような考え方を示したものでございます。

 

なお,御参考までに,現行の民法307条,共益費用の先取特権というところにおきまして,2項で,支出費用のうち,すべての債権者に有益でなかったものについては,先取特権はその費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在すると書いてありますのは,ただいま御説明いたしましたところと同じような趣旨かと思います。

 

 

 

 

次に,2は,受益者に対する補償請求権に関する提案でございます。

 

その提案内容は,のちほど御説明する一つの点を除いて報告書と変わるところはございませんが,この2の規律で最も重要と思われますのは,(1)におきまして,デフォルト・ルールとしてではございますが,受益者に対する補償請求権について,現行法と同じく肯定する甲案と,否定する乙案のいずれをとるかという点でございます。

 

 

ここは第2回会議においても議論をいただきまして,その際の大まかな印象としては,実務サイドの方は甲案を支持し,学者サイドの方は乙案を支持するというものであったと思われますが,この点につきましても,本日改めて,是非とも審議を願いたい点でございます。

 

 

すみれ

「実務サイドの人と学者サイドの人で分かれるんだ。」

 

 

なお,その他若干の点につきまして,付随的に御説明をいたします。

まず,第1といたしまして,1(3)のただし書,すなわち,「受託者は,固有財産をもって信託財産に属する債務の弁済をした旨を債権者に通知しなければ,債権者に代位の効果を対抗することができないものとする」としております。

 

これは,受託者が固有財産で弁済しても,債権者は,受託者の固有財産が原資となっているのか,信託財産が原資となっているのかは関知せず,単に弁済により自己の債権が消滅したとの認識しか有しないのが一般的であり,弁済の効果により受託者が当然に代位しているという認識を有し難いために,当該債権者が不測の損害をこうむるおそれがあると考えるからでございます。

 

そもそも,事務局内部の検討では,通知をもって代位の要件とする考え方も示されましたが,やはり法定代位と同様に考えまして,弁済をもって当然に代位するとの構成はとっております。

 

 

もっとも,説明の中では信託債権者の担保保存義務の観点からの必要性を論じておりますが,むしろ,債権者が自己の債権が完全に消滅したと認識してしまうことから生ずる不測の不利益を防止する観点を重視するものでございまして,例えば,抵当権付債権者としては代位弁済がなされたとの認識がなく,単に被担保債権が減少したという認識しかない場合には,新たに信託財産に対して担保付貸出しに応じるとか,抵当権の処分をしてしまうということもあり得なくはないと考えられるからでございます。

 

 

 

 

さらに,通知を怠った場合の効果につきまして,代位の効果を対抗することができないとしておりますが,この点につきましても,通知を怠った受託者は債権者に対して損害賠償義務を負うとするにとどめるべきか,あるいは代位された権利と債権者の新たな行為との間の優劣関係にまで及ぶべきかにつきましては,恐らく損害賠償義務の限度になるのではないかとは思われますが,なお検討したいと考えているところでございます。

 

 

 

なお,(3)のただし書は,弁済後における通知の要否について規定したものでございますが,民法504条は弁済前における担保保存義務について規定しておりますところ,受託者の固有財産による弁済に代位の効果を認める以上は,信託債務の関係で,受託者は「弁済ヲ為スニ付キ正当ノ利益ヲ有スル者」に当たるようにも思われます。

 

 

もっとも,そのためには,債権者において,受託者に対して有する債権が信託債権であるということを知っていることがやはり必要であると思われますところ,この点についても,30ページの(注2)にありますとおり,なお検討することとしたいと考えております。

それから,(3)のアステリスク1の点でございますが,これは,担保不動産が信託財産である場合には,担保権者として配当を受ける関係では,やはり受託者が付記登記を経由する必要があると解されるわけでございますが,当該不動産が受託者自身の所有名義であるために,自己名義の不動産について付記登記ができるのかという問題が生ずると思われますので,この点についてなお検討することとしたものでございます。

 

 

番人

「一部弁済の場合に付記登記できないとおかしい気がする。」

 

 

次に,(5)のアステリスク2の点でございますが,これは,第2回会議で指摘いたしましたとおり,補償請求権に基づく配当要求といいましても,受託者自身を債務者とする債務名義を取得することはできないと思われます以上,他にいかなる方法によることができるのかという点でございます。

 

 

 

 

 

この点については,執行法上認められている債務名義以外による配当要求の方法,すなわち,先取特権と同様に,文書によって補償請求権の存在を証明する方法によることが適当であると思われますが,それには現行法の規定では対応できないことから,新たに次の二つのうちいずれかの手当てを選択することになると解されます。

 

その一つは,実体法上,補償請求権を先取特権とみなすという方法でございますが,これによるときは,執行法におきまして配当要求を有名義債権のほかには先取特権に限っている趣旨を維持することはできますが,その半面,補償請求権一般に先取特権としての優先性を認めることになりますと,補償請求権の優先性の範囲を必要費又は有益費の限度に限った趣旨が没却されてしまうことになるおそれがあると考えられます。

 

 

 

もう一つの方法は,先取特権のほかに,補償請求権については,その存在を文書で証明することによって配当要求できるとする手続的な特例措置を信託法あるいは執行法上に設けるという方法でございます。

 

 

これによるときは,手続上の例外を認める必要性はあるものの,補償請求権の実体的な性質には何ら触れるものではございませんので,補償請求権の優先性の範囲を限定した趣旨にはかなうものと考えられます。

 

 

最後に,2の(4)の点でございますが,第2回会議で説明いたしましたとおり,受託者としては,信託財産に対する補償請求権が効を奏しない場合において初めて受益者に対する補償請求権を行使することができるという意味において,補償請求権の順位づけを図ったものでございます。

 

 

その趣旨は報告書と変わるところではございませんが,受益者に対して補償請求権を行使できる場合につきまして,報告書では,信託財産に対する補償請求権を行使することによっても補償を受けられない場合に限りとしておりましたが,ここでは,信託財産に対する補償請求権を行使しても補償請求権の弁済に不足する場合,又は弁済を受けることができなくなる蓋然性が高い場合に限りと,より補償請求権を行使できる機会を広げる方向に改めております。

 

 

これは,信託財産をもってしては補償請求権の満足に不足することとなる蓋然性が高い場合においても,現実に不足が判明しない限り,受益者に対する補償請求権を行使できず,あるいは信託を終了させる手続に入ることもできないとすれば,受託者にとって酷にすぎると考えられるからでございます。

以上が補償請求権についての説明でございます。

 

 

すみれ

「保全したりするのかな。」

 

 

次に,報酬請求権につきまして,簡単に3点ほど御説明いたします。

報酬請求権のポイントでございますが,これは,まず第1点として,無償を原則としつつも,(1)の①ないし③の場合においては,相当の額の信託報酬を受けることができること,第2点といたしまして,信託報酬は信託財産のみから受けることを原則とし,特約のない限りは受益者からは受けられないこと,第3点といたしまして,実質費用を含まない純粋な報酬,すなわち利潤部分につきましては優先権を認めないということがありまして,その他の部分を含め,次に述べます2点を除きましては,報告書の記述,あるいは第2回会議で説明したところと変わりがございません。

 

 

報告書の記述に追加いたしました点は,報告書において検討事項としておりました,受託者が相当額の報酬を恣意的に信託財産から控除するおそれを排除する観点から,1(2)のただし書のように,報酬の額又は計算方法についての通知義務を受託者に課した点でございます。

 

通知義務の相手方を受益者としていることや,通知時期を第1回目の報酬受領日前としていることの理由につきましては,資料の34ページに記載してあるとおりですので,ここでは説明を省略させていただきます。

 

 

それから,報告書の記述を改めた点でございますが,信託報酬の支払時期等に関する3(1),(2)の記述に関しまして,報告書では「信託の終了」としておりましたが,委任と異なりまして,信託の場合には受託者の任務が終了しても信託自体は新たな受託者のもとで存続していくのが原則でございますので,「受託者の任務の終了」と改めた点でございます。

以上で説明は終わらせていただきます。

 

 

  •  それでは,補償請求権と報酬請求権,それぞれ若干似た性格のある問題ですが,これをまとめて御議論いただければと思いますが,いかがでしょうか。

 

 

  •  それでは,第35と第36,両方とも述べさせていただきます。

まず,第35の補償請求権でございますが,その中でも,1の「信託財産から補償を受ける権利」のところでございますが,ここの部分につきましては,第2回の部会で申し上げた意見と基本的には変わっておりません。

 

 

原案に賛成だという少数意見もあるのですけれども,受託者として債務を負担するときに優先権が認められないと,やはりその行為について逡巡してしまうということであるとか,立替え等の場合にそれが必要費になるのか有益費になるのか,その辺のところはいずれにしても分かりにくいというところがございますので,そういうことを勘案した場合,やはり現行法どおり優先権を認めていただきたいというのが大勢の意見でございます。

 

 

2の「受益者から補償を受ける権利」のところでございますが,これについても,第2回の部会で申し上げたとおり,デフォルト・ルールとして受益者から補償を受ける権利等を認めていただきたいということで,甲案ということに賛成したいと考えています。

 

 

 

 

 

第2回の部会で○○委員の方から,英米では受益者に対する補償請求というのはないというのが本当に当たり前である,受益者のための制度なんだからという御指摘がございましたし,○○委員からは,やはりデフォルトは受益者有限責任なんでしょうと,信託みたいな形でリスクを負うようなものについては話し合いで決めたらどうでしょうかというような御指摘もあったと思います。

 

 

二人の先生方の御指摘というのは,そのおっしゃっている範囲内ではそのとおりだなと思うのですけれども,やはり,そもそも信託で受益者への補償請求というのはできないんだろうかと。

 

 

受託者というのは,基本的に正に受益者のために一生懸命信託事務を遂行すると。

 

 

当然そのコスト管理もすべきであろうと思いますし,いろいろな義務が課せられていて,それを負って一生懸命遂行する,ただ最終的にはその損益というのは受益者が負うと,それがやはり相当なのではないかなと。

 

 

 

多分,信託財産がマイナスになるようなケースというのは極めて異例なケースだと思うのですけれども,そのときをちょっと想定した場合,どういうことがあるかというと,基本的には,受託者がとんでもないことをやってしまったと。

 

 

管理の失当がありましたということであるとか,あとはもう正に外的な要因として,非常に大きな災害等が起こりましたと,そういう場合ではないかと思います。

 

 

前者につきましては,受託者が管理の失当を起こしたときに補てんするというのは当たり前のことでしょうし,そうすべきだろうと思います。

 

 

ただ,外的な要因でそういうふうになったときに,もともと利益をすべて受けている受益者が損害はこうむらないと,それはどういうことかなと。

 

 

そこら辺が素朴な疑問としてありますので,先ほど申し上げたとおり,甲案に賛成するということでございます。

 

 

番人

「ここでいう受託者って報酬もらってるんだよね。報酬もらってたら受益者が利益をすべて受けているわけじゃないよね。信託事務を頑張るのは委託者に信頼してもらうためだよね。他の受託者がいる中で。」

 

 

 

次の第36の報酬請求権のところでございますが,これについては,第2回の部会の方で,現行法どおり,信託財産から報酬を受ける権利については優先権を認めていただきたいということと,受益者から報酬を受ける権利についてもデフォルトで認めていただきたいというふうに申し上げました。

 

現在においても,その考え方を維持するという意見が大勢を占めておりますが,少数意見なのですけれども,報酬については一般債権と同列でも,それは仕方がないんじゃないかなと,特に利益の部分についてはやむを得ないと,ただし,原案の35ページのところに書いてありますように,名目上は信託報酬なんだけれども実質的に費用と認められるようなものについては費用のところの規律を適用すると,そういうことが維持されるのであれば賛成してもいいなという少数意見というのが出てきております。

  •  ほかにいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

  •  私も,前回と同じ議論を差し上げたいと思っているのですが。

結論的には先ほどの○○委員と同じような立場になろうかとは思いますが,ここでは質問とコメントを取り混ぜて,第35,第36についてお話ししたいと思います。

 

 

一つは,やはり全体的な話ですけれども,受託者が善管注意義務をもって行動するということについて,いわゆる板挟み的な立場に置かれているならば,それが本当に受益者のためになるのかどうかという話でございます。

 

 

片や,この前の例でいきますと,結局,不動産信託であって,不動産自体にはキャッシュがないので--立替払いのケースですが--信託財産からは借入れを返済できないので,やむを得ず立替払いを行うというケースを設定いたしますと,やはり受託者としては,善管注意義務という,もしそれを履行しないならば,取引債権者が抵当権を持っていって競売されてしまうかもしれないというようなこともあり得ますので,そうした場合に,やはり注意義務に基づいて代払いをしなければならないというようなケースもあるのではないかなというふうに思います。

 

それに対して,今回,提案で幾つか事務局から御説明がありまして,それは主に(注3)と(注5)で御回答いただいていると認識して,ほかのところにもございますけれども,その御回答についてもなお疑問が残るところでございまして,例えば,(注5)にございます,そもそも信託財産限定で借入れをすれば特にリスクを負わなかったではないかということで,確かに,今さっきの議論と同じですけれども,そういう契約を結べばいいのかもしれませんけれども,これもやはり実務においては相手方のある話でありますし,また,そういう明示をして取引した場合には断られるかもしれませんし,契約において特約をすれば,相手がそれをのまないということもあるかもしれません。

 

 

 

そういうことで,片や資金の調達が必要である,片やノンリコースもできないという状況がもし生じるのであれば,やはりそういう萎縮効果が出てしまいますものですから,そういう結論を導くような政策はどうなのかという話もあります。

 

 

すみれ

「これって政策なんだ。」

 

 

 

それからもう一つは,もしそれができないとなれば,結局,受託者としては終了というところで出口を見出すという話になるのですが,これには二つ。

 

 

 

一つは,そもそもそういう終了しやすい信託ということが本当に受益者のためになるのであろうかという話でございます。

 

これは一つの判断として,それはそういうものだという考えもあるかもしれませんけれども,大体において維持しておいた方がいい場合もあると思いますし,もし仮にそういう場合に終了させたいというのであれば,例えばあらかじめその信託行為にそういうことを明示するなり,それを示唆するような内容の本旨といいましょうか,そういうことでやればいい話かなというふうに思っております。

 

 

また,受託者としても,終了し,かつ受託していた財産を現物交付するまでの間の,法定信託の間の受託者としての義務が残ってしまうわけですから,早く終了してしまえといって受託者が救われるかというと,完全にそうでもないという話でございます。

 

 

 

 

 

(注3)の話も,先ほど○○幹事からございましたけれども,確かに,この例からいくと,信託財産という観点からはやはり差が出てくるということもあり得べしかもしれませんが,ここも同じ話でありまして,善管注意義務を負う受託者の立場からして,そういうことをもって行動を変えるということができない場合もあるのではないかと思っております。

 

 

 

次に,報酬請求権についてでございますけれども,ここも同じ話でございます。

 

これも一つの政策判断でございまして,もしこの規律になるのであれば,また受託者としても,そのように受託するに当たり審査を行い対応していくという,そういうことで対応することになろうとは思いますが,同じように,そうした場合に,結局受託者に対する萎縮効果を持ってしまうのではないかという話と,終了してしまいやすいということについてどうかということの問題と,それからもう一つは,前回問題とした理屈的な話として二つ,すなわち,例えば倒産ということになった場合に,受託者が一生懸命汗をかいて信託財産の価値増加のために働いた場合に,それを否定するようなことになれば,かえって受益者のためにならないであろうということもありますし,また,理屈的として完全なのかどうか分かりませんけれども,一種管財人的な発想であれば,それなりの共益的な地位を見出していただいてもいいのではないかということでございます。

 

 

 

 

  •  質問なのですけれども,まず補償請求権の方ですが,「2 受益者から補償を受ける権利」のところでも甲案,乙案の2案が挙げられていて,この二つ,私は乙案の方がいいと思うのですが,いずれにせよ受益者から補償を受ける権利を有する場合があるという前提で,そうしますと,現行の信託法の36条の3項ですね,あれがどうもないような……。既に説明があったのか,私が聞き落としたのかどうか分かりませんが,それについて一つ質問です。

 

 

  •  それにつきましては,後日,受益権の放棄ということは提案させていただく予定でございます。今日は出ておりませんが,現行法の36条3項と同じような趣旨のものを後日提案する予定にしております。

 

 

 

  •  もう一つ質問です。

第36の方の報酬請求権の関係ですが,1の(2)で,相当の額に関して受益者に通知するというやり方が書いてあって,これの説明として,受益者に通知して,受益者がその受けた通知の額で異議がない場合はその額で決まるということが書いてありますけれども,異議がある場合は報酬額は決まるということを想定して考えられたのかということです。

 

 

  •  異議がある場合には,恐らく訴訟手続で報酬額確認請求をしまして,そこで受託者側と受益者側の意見を裁判所が聞いて決定するということになっていくと考えております。

 

  •  例えば,裁判所に決めてくれという簡単な手続とか,そういう……。

 

  •  普通の訴訟手続で報酬額確認をすればいいのではないかと考えております。

 

 

 

  •  補償請求権の優先権に関して,少しお話をさせていただきたいと思います。

現行法の36条から出発しますが,36条1項は,確かに受託者が支出した費用についての補償請求権に優先権を認めております。

 

 

しかも無制限であるわけです。しかし,これは,信託の債権者に対して受託者が優先することを実質的には意味していないと思います。

 

 

なぜならば,現行法では,信託の債権者は,特に今日の前半でも議論になったことですが,責任財産制限特約について合意しない限り,受託者の固有財産についても履行を求めることができますし,強制執行することができるからであります。

 

いったん受託者の固有財産に移った後も,信託の債権者はそこから回収することができるということです。

 

 

そうすると,そもそも36条1項はどのような機能を現行法において有しているのかということが問題になるわけですが,ここは十分には自信がないのですけれども,次のように考えられる。

 

 

それは,信託の債権者と受託者の個人債権者とが,立替費用支出分については債権者平等の関係に置かれるという意味を持っているのだろうと思います。

 

 

これに対して--まあ,今我々がやっている作業の全体がどういう方向に進むかによるわけですが,今日の前半にやりました第28の「受託者の有限責任の許容について」という方向で進んでいくとすると,第28の1の明示による責任財産限定の債権者との関係では,もし36条のような規律をそのまま維持するとしますと,実質的に受託者が,あるいは最終的にと言ってもいいかもしれませんが,信託の債権者に優先することになってしまう。

 

 

 

受託者の固有財産に一度とってしまいますと,有限責任信託の債権者との関係では,もう信託の債権者はそこに全然手を出せなくなるから,完全に受託者が優先してしまうということになると思います。

 

 

そうすると,優先権を認めるためにはその実質的な根拠が必要になってきて,そうすると,やはりこの事務局案のように共益費用的な考え方に立つことが有力な考え方であり,その範囲でのみ認められるとする解決が適切なのだろうと思います。

 

 

したがって,○○委員から,必要費,有益費に限っているところに反対という御意見がありましたが,私は,今申し上げたような理由で,このように限定することが正に平仄が合うと思います。

 

 

あと二つ,簡単に申し上げますと,そうすると,第35の1(5)で,一般先取特権にするか,それとも単に,優先権を認めないけれども文書があればいいとするかというところですけれども,おのずから答えは出てきて,後者であって,一般先取特権にはせずに,文書があれば,権利の存在を証明すればですか,配当要求できると,そちらで位置づけるべきだと思いますし,そしてもう一つは,実際上は非常にクルーシャルな問題かもしれませんが,報酬請求権についても,共益費用的な性格はないか,極めて弱い。

 

 

すみれ

「たしかに。クルーシャル?」

 

 

したがって,実質的に必要費,有益費に当たるようなものはともかくとして,これについては優先権を認めるべきでないということを考えたところであります。

 

 

  •  どこまでが現在の36条の条文でもって優先的な扱いを受けるのかというのは非常にクルーシャルで,結構重要な問題ですね。さっきの○○委員と,今の○○幹事の御意見の中に,二つちょっと違う考え方が出ていましたが,もし更にあれば。

 

 

 

 

  •  ○○幹事に完全に賛成です。それが第1点です。

第2点は,これは細かい質問なのですが,求償と代位の関係なのですが,第35の1の(2)と(3)の関係なのですが,これも確認だけなのですが,例えば,信託に対する債権者というのは,自分が抵当権を実行して,そのことによって信託目的の達成が不可能になるような状況になってしまった,破滅的な状況になってしまったといっても,それは構わないわけで,抵当権を実行すればいいわけですよね。

 

 

しかるに,受託者は,例えば代位をするということになったときに,抵当権を行使できる立場になったときに,更に(2)の制約というのはかかってくるのかというのが,ちょっとよく分からないなと。

 

 

つまり,抵当権は移ってきたのだけれども,信託を破滅に陥れるので抵当権は実行しちゃいけないとかですね。その辺のことについてお考えがあれば,お聞かせ願いたいという,細かな話です。

 

 

 

  •  今まで十分考えたことはないのですが,代位によって取得した担保権の実行と申しましても,あくまで自己の有する債権の満足のためということからいたしますと,この(2)の規律はかぶってまいりまして,やはり信託を破滅させるような担保権実行はできなくなって,終了の方向に向かっていかざるを得ないというふうに考えるものでございます。

 

 

  •  第35の補償請求権及び第36の報酬請求権について,先ほど○○幹事のおっしゃった点について,私の思うところを申し述べます。

 

まず,補償請求権については,先ほどの○○幹事の御意見に全く賛成でございまして,一言で申しますと,やはり共益性というのが優先性の根拠だろうと思いますので,22ページの1の(4)のような形で限定するというのは,ある意味当然ではないかと。民法の306条の1号をいわば信託版に引き直したような形になるのではないかと思います。

 

 

それに関連しまして,22ページから23ページにあります,執行法上どうするかですけれども,私は,○○幹事がおっしゃるほど論理必然かどうか分からないですが,やはり後者の方法になるのだろうと思いますけれども,これをとった場合には,補償請求権を,こうやってその権利の存在を証明して,配当要求して,あとは(4)の範囲でのみ優先し,残りの部分については一般債権扱いということになるのでしょうかね,配当の局面では。

 

 

  •  (4)の範囲といいますと,優先する範囲だけ優先しまして,あとは一般債権と。

 

  •  そうすると,権利の存在を証明するときも,いわば内訳を示し,全額はこれだけなんだけれども,そのうち1の(4)で優先するのはこれだけですよと,こういう内訳を示して,いわば一昔前の株式会社以外のところに雇用されていた自然人が未払賃金を請求するみたいに,総額幾らなんだけれども優先部分は幾らと,こういうことをしていくことになるんですかね。

 

 

 

 

 

  •  そうやって,あとは配当異議で争うということになるのではないかと思います。

 

  •  以上が第1点です。

それから,第36の報酬請求権ですが,上げたり下げたりで恐縮ですが,私は,これは○○幹事とは全然逆でありまして,何を考えているかと申しますと,例えば破産手続で管財人の報酬というのは最も共益的な費用と言われている,いわば受益者である破産債権者のために働いている報酬というのは共益費用の最たるものだと言われているわけですが,それとの平仄は合うのだろうかと。

 

あるいは,今次の改正で,社債管理会社の費用のみならず報酬についても財団債権とするという手当てがされ,あれも大きく言えば手続全体の円滑な進行のために資しているのだからと,社債を発行するような会社については,直接の受益者は社債権者であっても,手続全体に資している部分もあるのだからということで割り切ったということだと思いますけれども,そういうのと平仄は合うのだろうかというのが疑問に残るので,報酬請求権についても,優先性についてはなお検討するということの方がよろしいのではないかというのが私の意見でございます。

 

 

  •  先ほど,○○委員が後回しになって申し訳ない。どうぞお願いします。

 

 

  •  今のところも,本当は私,関心はあるのですけれども,やはり,「受益者から補償を受ける権利」という2の方の話で,結論はもちろん乙案ですよということですけれども,ただ,乙案すら,例えば法典になっているもので,イギリスでもアメリカでも,こんな条文はないのですね。

 

 

やはり,受益者に補償をさせようというのは--本当に書いておけば何とかなるとは思います。そういうのもあり得ると思いますけれども,そういうのを法典の中に書いておくようなものではそもそもないんですよね。

 

それは信託に対するイメージが全然違うのだろうということで,三つだけ,同じことなのですが,申し上げます。

 

 

 

 

 

 

日本で36条ができたのは,結局,金もうけのための信託というので我々の信託は始まったわけですよね。

 

 

信託会社がいて,投資家というのですか,とにかくそこで何かうまいことしてお金をもうけようという人たちが集まったものだから,こういう36条みたいな話が出てきたのだろうということだと思うのです,歴史的に言えば。

 

 

 

しかし,やはり信託の本流というのはそういうものでもなく,理屈だけ言いますと,先ほど○○委員は,大災害,とにかく日本は大災害の国になってしまっているわけですから,それは困るじゃないかという話があるのですが,これはごく簡単な理屈で,一つは,受益者と受託者と比べて第一に考えるのは,こういう信託財産がなくなるような事態をどちらが防ぎやすいかという,何かちょっと釈迦に説法みたいな話で恐縮なのですけれども,どっちがそういう立場にあるだろうかというと,それは受託者ですよね。

 

 

受益者は一々文句を言えないはずですから,信託財産の管理運用について,基本的には。それが一つ。

 

 

 

 

二つ目が大災害の話ですけれども,そうは言ってもいろいろなことがありますねというときに,やはり損害の分散が一番簡単なのは保険をつけるという話で,だから,アメリカの統一信託法典なんかでも,当然に保険をつける権限があり,場合によっては義務があるという話になっているわけで,だれができるのでしょうかというと,受益者ではなくて,受託者ですよという話ですから,いずれをとってみても,やはり受託者のところでリスク管理をやるのは当たり前みたいな話が1点です。

 

 

すみれ

「受託者で保険をかけるといいのか。日本は災害の多い国だね。」

 

 

2点目は,そうではないと。営利のためのスキームではない。そもそも信託というのはそういうスキームとしては始まっていなくて,それが商事的に利用されてそういう話も出てきたんですよというのが歴史的にあると思うのですけれども,その営利のためのスキームですら,会社の株主との違いはどうやって説明するのですかという話が出てくると思うのですが,ここでは,いやいや,会社は会社,信託はここにこそ特色ありというふうに居直るのかどうかですよね,結局。

 

ほかのところで特色を出したらどうでしょうかという感じが私はするということです。

 

 

 

 

3点目は,今ちょっと○○幹事からもお話があったように,やはり流れは受託者の有限責任を広く認めていきましょうという話になり,それで受益者から補償を受ける権利だけは残すという話になると,信託の色合いが一層はっきりしますよね。だれのための信託なんだろうかという話で,リスクは受益者が最後は負いなさい,出資者が負いなさいというようなものが我が日本の信託ですよということになるので,やはりそれは私は本当に反対したいと思います。

 

 

 

すみれ

「うーん。我が日本の信託か。何なんだろ。」

 

 

 

  •  ○○委員のお話はもっともな部分もたくさんあると思うのですけれども,2点目のリスク管理のお話なのですけれども,例えば保険を掛けるとかいうお話がありましたけれども,例えば地震の発生の非常に多いところにおいて保険を掛けるというようなことについては,受託者が多分やらなければいけないことなのだろうと思うのですね。

 

 

そういう観点からいくと,先ほど申し上げたように,そういうことで信託財産が毀損してしまいましたよというときについては,まあ,これは,どこまでかという程度が難しいのですけれども,ある意味,受託者の管理の失当とかというような部分があるんじゃないかなと思うのですね。

 

ですから,そこの部分についてはやはり損失をてん補しないといけないと。

 

そういうようなことをいろいろと考えた上でも,なおかつ予測できないようなこととか,そういうようなことが起きたときというようなことが私の頭の中にはあったものですから,それだけちょっと,済みません。

 

 

  •  1点だけ,先ほど言い落とした点です。

報酬請求権について,先ほど,破産管財人等の報酬との対比で,優先権というのは一律否定するという議論だけでもなかろうという話をしましたが,1点だけその点を補充しておきますと,倒産手続の場合には,管財人等の報酬は裁判所が決めるのですね。

 

 

その必要な範囲で決めると。あるいは社債管理会社の費用についても,相当な範囲で許可するというようなスキームになっていますので,そういう目で見てみますと,この32ページの第36の1(2)のこの決める手続は,相当かどうかという観点から,つまり共益性を洗い出すのに適切な手続なんだろうかと,そういう観点から見直すということが必要になってくるのだろうと思います。

 

 

したがいまして,青天井に報酬請求権の優先権を付与するという主張ではないということを一言申し添えます。

 

 

  •  補償請求権も,先ほどの,特に受益者からの補償請求権に関しては両方の意見があり,かつ,なかなか,理論的に考えるとこうなるべきだという決め手がないので難しいところですが,最終的にはどちらにするかというのは決めなくてはいけないと思いますけれども,今の段階では皆さんの御意見がまだ二分しているということでよろしいでしょうか。

 

 

あるいは,意見を表明されていない方がおられて,意見をおっしゃっていただければ,それはそれで有り難いと思いますが。

 

 

  •  確認なのですが,別段立場を変えることではないのですが,仮にということでお尋ねしたいわけなのですが,必要費と有益費ということで分けた規律を設けるということなのですけれども,これは2点質問がありまして,前回も申し上げたところですけれども,この必要費と有益費というのが本当に区分できるのかどうかという話なのですけれども,例えばの例として,不動産信託で物を建てましたと,2階建てにしましたと,受託者としてエレベーターが必要だと思いましたと。

 

 

それで,エレベーターというのは有益なんだろうか,必要なんだろうかというようなことというのはあると思うのですね。

 

 

ですから,実際の判断において,有益か必要かということの判断は難しいでしょうし,かつ,また,有益費だと言ったとしても,じゃあ一体どういう価値が増加したのかどうかと。

 

 

邪魔になるのかもしれませんし,楽になってそれで価値が高まるかもしれないですし,また売却価格が上がるのかもしれませんし,いろいろな考え方があると思うのですけれども,そこが非常に明確な規律というのは難しいのではないのかということです。

 

 

それから,二つ目に,この,必要だ,ないしは有益だということの判断基準というのがいつなのかと。

 

つまり,受託者がそういう判断をして行為をしたときなのか,それとも,結果的に役に立たなかったということで結果責任が出てくるのかということです。

 

 

この点,ちょっと理論的には私は分からないのですが,例えば委任とのパラレルに考えますと,我妻先生の教科書から見ますと,これは受任者がその事務を処理する際に相当の注意をもって判断して必要と考えた費用であると,つまり行動したときで決めるということですので,もし仮にこの規律になったとして,ここで言う判断基準というのがいつなのかということをここで確認というか,御質問したいと思っております。

 

 

 

 

 

  •  我妻先生の叙述は,取れるかどうかの話であって,判断基準の時期の話,先取特権の成立の話ではありませんので,関係ないのではないかと思いますが。

 

 

  •  お答えします。

まず,第1点目の,必要費か有益費かの区分は明確にできるかというと,これは,条文的にはこれ以上書きようがないと。

 

 

必要費・有益費は,占有者の196条とか,あるいは賃借人とか,いろいろなところに挙がってきておりますが,やはりそれは,支出費用とかそれを取り巻く状況の性質によってどちらに当たるかを区別するしかないのではないかというふうな気がしておりまして,実務上もそれで対応しているのが現状ではないかと思っております。

 

 

それから,判断時につきましては,私どもの考えでは,あくまで支出時でありまして,支出時に有益であったか必要であったかで判断すると。

 

 

それで,結果責任かどうかという点は,例えば有益費であれば,結果的に価値がなくなれば,この規律であれば,現存価値がないわけですから,もう請求できないということになるだけのことでございまして,あくまでその判断時は支出時というふうに考えております。

 

 

  •  必要費か有益費かという判断自体はその支出時であって,有益と分類されたときに増加価値が幾らになったかというのは結果でと,そういう御判断ですか。

 

 

  •  そうなります。
  •  細かいことと,一般的なことなのですが。

補償請求権における求償と代位についてですが,26ページに「担保保存義務」という言葉が出ていますが,これは,先ほど○○幹事の御説明にありましたように,ちょっと異質な話ではないかなという印象を受けました。

 

 

つまり,弁済することによって法律上当然に移転してしまうわけですから,その後の担保というのはそれまでのとは違うんじゃないかなというふうに思いますので,先ほどの御説明の方が分かりやすかったと思います。

 

 

これに関連いたしまして,30ページの(注1)で,代位債権と求償権の関係についてはいわゆる請求権競合だというふうに書いていらっしゃいますけれども,判例の考え方によると,求償権を確保するために原債権担保権が移転するという考え方でしょうから,広い意味での請求権競合だろうと思いますけれども,やや,「いわゆる」というのとはちょっと違う面もあるのではないかなと思いました。

 

 

 

 

 

それから,大きい方の話は,受益者から補償を受ける権利についてですけれども,これは○○委員のおっしゃったことに非常に感銘を受けたということに尽きるわけですが,更に申しますと,受益権放棄については,別途報告書第51を参照ということになっておりますので,その放棄する際の受益者に少なくとも分からせるということが必要ではないかと。

 

 

甲案,乙案といいましても,いずれにしても信託行為の段階でお書きになるのでしょうから,その書いたものを少なくとも受益者が見ることができるというのを残しておいた方がいいのではないかというのが,追加的な理由かなと思います。

 

 

 

 

 

  •  違う点なのですが,1点お聞きしたいところが,1の(2)のただし書の方の,売却の処分権限が付与されていない場合についてなのですけれども,特に受託者となる立場の配慮という点からすると,例えば,ここの部分が少し緩和されればそれは若干よいということになるのか。

 

 

つまり,この場面というのは,売却の権限は付与されていないので処分等はできないけれども,それを処分したとしても目的達成の妨げにはならないので信託自体を終了させるほどのことではないというときに,ここももう少し緩和されて,例えば,裁判所の許可を得るならば,その費用の補償のためにはそこまでの権限が認められるということになれば,多少はよろしいものなのか。

 

 

それとも,そういう場面は全然大したことはなくて,やはり同じなのか。受託者の立場の話と,もう一つは,信託の終了へ向かっていく,即終了をもたらすのが適切なのかということへの対応としては,ここを少し緩和するということがあり得るのかなと思われまして,原案では,恐らく当事者のイニシアチブで変更でいくということだと思うのですが,そこを更に緩和するという道があるのかと思われますので,それについての感覚みたいなものが分かれば,少しお伺いできたらと思いますが。

 

 

実務的には,そんなのをされても大したことはないという感覚なんでしょうか。そんな制度が一個あったとしても。

余り時間を取っては申し訳ないので……。

 

 

 

 

  •  また考えていただきましょう。

それでは,補償請求権,それから報酬請求権については,なお争点もあります。特に基本的な部分についてはまだ意見が対立したままでございます。

 

 

それから,報酬請求権に優先的な権限を付与するかどうかということについては,信託銀行サイドからするとやはり今と同じようにしてほしいという御希望もありましたけれども,現在のところは必ずしも多数意見ではないかもしれません。

 

 

ただ,今の段階ですぐ決着するわけではございませんが,一応,意見分布としてはそんな状況にあるということだけ確認させてください。

それでは,次のテーマに行きましょうか。

 

 

 

 

 

  •  それでは,差止請求権,検査役選任請求権,法人役員の連帯責任につきまして御説明いたします。

 

 

まず,差止請求権でございますが,現行法によりますと,受託者が信託違反行為をした場合の受益者の救済手段としては,損失てん補等の請求権の行使と取消権の行使を認めておりますが,これらはいずれも事後的な制度でありますので,受益者保護の観点からは十分ではないという指摘がされております。

 

 

他方で,受益者は,受託者と直接の法的関係,少なくとも債権的な関係があると言うことができますので,受託者に対して信託事務の履行を請求をでき,その半面,受託者が信託違反行為をしようとしている場合においてはその行為を差し止めることができるという見解も有力に主張されております。

 

 

そこで,受益者が受託者に対して信託違反行為の差止めを請求できることを明文化するとともに,差止請求権の行使を合理的な範囲に限定するとの観点から,資料に記載しましたような要件のもとで受益者が受託者に対して当該行為の差止めを請求できる権利を認めております。

 

 

 

なお,差止請求権の行使につきまして,委託者にも認められるか否かが問題になりますが,この点につきましては,信託行為で委託者に差止請求権の行使が認められると定められている場合に限って認めるということにしております。

 

 

 

若干付言いたしますが,まず,差止請求権を行使できる場合を,受益者又は信託財産に著しい損害が生ずるおそれがあるときに限定しましたのは,資料に書いてありますとおり,信託においては受益者は受託者を信頼して事務処理をゆだねておりますので,受益者又は信託財産に軽微な損害が生ずるおそれがあるにすぎない場合にまで差止請求権の行使を認めることは,事務処理の効率性を害する結果ともなりかねず,相当ではないこと,特に受益者が複数の場合には,一部の受益者による差止請求権の行使が他の受益者の利益を害する結果をもたらすおそれがあると考えたからでございます。

 

 

 

また,受益者又は信託財産に損害が生ずるおそれがあることを要件といたしましたのは,受託者の信託違反行為によって一部の受益者が損害をこうむる一方で,信託財産には何ら損害が発生しないことがあり得るため,信託財産に損害が生じるか否かだけを問題にするのは適当ではないこと,他方,受益者が複数の場合には,信託違反行為によって,ある受益者としては著しい損害をこうむるとは言い難い一方で,信託財産全体を見れば著しい損害を生じることがあるということにかんがみまして,このような要件を定めたものでございます。

 

 

なお,信託行為に定めを置くことにより受益者による差止請求権の行使を制限できるか否かにつきましては,資料に記載しましたように,差止請求権の緊急性に照らしまして消極に考えておりまして,この権利はいわゆる単独受益者権であると考えております。

 

最後に,アステリスクで記載しておりますのは,受託者が複数の場合において,一部の受託者が信託違反行為をしている場合に他の受託者が差止請求権を行使することを認めるべきか否かについてでございまして,この点についても,根拠,考え方につきましては資料にも書いてあるかと存じますが,是非とも御審議をいただければというふうに思っているところでございます。

 

 

 

 

続きまして,検査役選任請求権の方に移ります。これは,裁判所によって選任された検査役が受託者の信託事務及び信託財産の状況について調査を行う制度の整備に関する提案でございます。

 

 

現行法では,受益者等に対して帳簿等の閲覧請求権などを認めて信託事務を監督する権限を与えておりますので,これを適切に行使すれば信託事務の適正さが確保されるようにも思われますが,なお受託者が作成した帳簿等に虚偽の事実が記載されている場合などに備えまして,このような検査役の選任等の権限,検査役の調査権限等を認めることにして,信託事務処理の適正さの確保を図る必要があると考えたものでございます。

 

 

以下,簡単に提案内容を御説明いたしますが,まず,1では,検査役の選任請求権の要件について規定しております。

 

ところで,現行法41条を見ますと,裁判所の監督として,「信託事務ハ営業トシテ信託ノ引受ヲ為ス場合ヲ除クノ外裁判所ノ監督ニ属ス」というのを前提に,第2項で,「裁判所ハ利害関係人ノ請求ニ因リ又ハ職権ヲ以テ信託事務ノ処理ニ付検査ヲ為シ且検査役ヲ選任シ其ノ他必要ナル処分ヲ命スルコトヲ得」としてございますが,この規定に関しましては,検査役選任の対象を非営業信託のみに限る必要はないのではないか,裁判所の権限については,裁判所が検査役を選任することなく直接検査を実施することは想定し難いし,「其ノ他必要ナル処分」というのは,信託法上の個別規定に基づく処分権限のほかにいかなる処分を想定しているのかが明らかではない,更に,選任の契機として,職権による選任や信託債権者--利害関係人でございますので信託債権者も含まれるわけですが,そのような者にまで請求権を認める必要はないのではないかというような指摘があるところでございます。

 

 

 

そこで,このような指摘にかんがみまして,この提案では,まず,検査役選任請求権の対象となる信託に関しては,非営業信託に限らず営業信託にも及ぶこととしたこと,それから,裁判所の権限としては,必要な処分を命じ得るとか直接検査の権限は認めず,検査役を選任できるということにとどめるとしたこと,更に,職権による選任というのは認めず,あくまで申立てによる場合に限るわけでして,かつ,申立権者も,信託に最も利害が深いと思われる受益者と,信託行為に定めのある場合の委託者に限るとしたこと,以上のような制度の改正を提案しているものでございます。

 

 

 

さらに,今回は,検査役の選任の申立てにつきまして,「信託事務の処理に関し,法令又は信託行為に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるとき」に限定しております。

 

 

このように,「重大な事実があることを疑うに足りる事由がある」といたしましたのは,軽微な違反がある場合にまで選任請求を認めますと,検査役の調査費用や報酬が信託財産から支出されることですとか,あるいは検査役による調査が受託者の信託事務処理に与える影響などに照らし,妥当ではないというふうに考えたからでございます。

 

 

 

次に,2でございますが,これは,検査役の調査を実効的なものとするために検査役の権限を明らかにしたものでございます。

 

次に,3でございますが,これは検査役の調査終了後の手続でございまして,現行の非訟事件手続法の規律などを参考にいたしまして,検査役は裁判所に対し,調査報告書,更に裁判所が求めたときには追加報告書を出すというようなことを(1),(2)で規律したものでございます。

 

 

 

次に,4でございますが,これは調査報告書の内容の通知等に関して検討しておりまして,若干複雑でございますので,少し詳しく説明します。

 

現行の非訟事件手続法では,検査役が裁判所に対して調査結果を報告した後の手続が定められておりませんので,検査役の調査結果について申立人がどのような方法で報告を受けることができるのか,疑義があるとされているところでございます。

 

 

そこで,4の(1)では,裁判所に対しまして調査報告書を提出した検査役は,検査役選任の申立てをした者に対しても,調査報告書の写しを交付する等の方法により,調査結果の内容を通知しなければならないとしております。

 

さらに,検査役は受託者の信託事務処理を調査するために選任されることを踏まえますと,申立てをした者だけではなくて,それ以外の受益者や委託者にも調査報告書の内容を知る機会を与えることが相当であると考えられます。

 

 

つまり,受益者はそれぞれ単独で検査役の選任を請求することができますので,申立てをした者以外の受益者や委託者の中には,検査役による調査が実施されたことを知らない者が生じ得ます。

 

 

他方で,検査役の調査に要した費用が信託財産の中から支払われますように,検査役の調査は,申立てをした者だけではなく,受益者全員のために行われると考えられますので,検査役の調査結果につきましては,申立てをした者以外の受益者や検査役選任請求権を有する委託者にもその内容を知る機会を与えることが相当と考えられます。

 

 

 

そこで,4の(1)では,申立てをした者だけではなく,受託者もまた,検査役から調査報告書の写しの交付を受ける等の方法により調査結果の内容の通知を受けるものとし,その上で,4の(2)において,検査役から調査結果の内容の通知を受けた受託者は,すべての受益者及び選任請求権を有する委託者に対して,通知を受けたという事実を伝えなければならないとしております。

 

 

 

こうして検査役の調査があったことを知った受益者や委託者は,検査役から交付を受けた調査報告書の写し等を有する受託者に対してその閲覧・謄写等を請求することによって調査結果の内容を知ることができることになるわけでございます。

 

 

 

なお,この調査報告書は「信託事務に関する重要な書類」に当たりますので,前回説明いたしました帳簿作成義務等に関する提案により,受益者及び一定の委託者は,受託者に対して調査報告書の閲覧・謄写請求権を有することになると解されます。

 

 

 

さらに,受託者が4の(2)に違反して検査役から通知を受けた事実を受益者に通知しないことも想定されますが,調査結果の内容によっては,すべての受益者及び委託者に対してその内容を認識する機会を与えることが相当な場合もあると考えられますことから,4の(3)において,裁判所が必要があると認めたときは,裁判所の定めた相当な方法によって,調査結果の内容--こちらは事実ではなくて内容ですが,これを受益者及び委託者に対して通知をするよう命ずるということにしております。

 

 

 

 

 

 

最後に,検査役の報酬や費用等につきましては,信託財産の中から受けることができるということを規定しているのが,5でございます。

 

 

次に,第32の受託法人の役員の連帯責任でございますが,これは現行上もほとんど例がなく,解説もないところでございますけれども,現行法の規定では, 「受託者タル法人カ其ノ任務ニ背キタルトキハ之ニ干与シタル理事又ハ之ニ準スヘキ者亦連帯シテ其ノ責ニ任ス」と規定しておりまして,受託者が法人である場合の理事等の責任を規定してこれを強化し,かつ,信託財産においては受益者の保護を図る内容となっておりますが,受託者法人がいかなる責任を負う場合について規定したものか,それから,理事等が受託者の任務違反行為に「関与」したことのみをもって責任を負わせることが妥当かという2点について規定の見直しを図ったものでございます。

 

 

 

まず第1に,本条の規定では,「受託者タル法人カ其ノ任務ニ背キタルトキ」とあるのみでありまして,この文言によりますと,受託法人の信託違反行為に基づく損失てん補責任はもとより,いわゆる利益吐き出し責任ですとか,それ以外の信託管理上の義務,例えば帳簿作成義務,分別管理義務ですとか,更には民法上の損害賠償責任まで含むようにも解することができまして,その範囲が不明確であると言わざるを得ません。

 

 

 

そこで,この提案では,信託における受益者の保護を図るという本条の趣旨にかんがみまして,本条による責任の対象を,現行法27条に相当する損失てん補責任又は原状回復責任を負う場合を前提とした上で,更に利益吐き出し責任を含めるべきか否かについては検討することとしたものでございます。

 

 

第2に,本条の規定では,受託法人の機関である理事又はこれに準じる者が受託法人の任務違反行為に,積極的のみならず,消極的にでも関与したことのみをもって責任の発生根拠としております。

 

 

しかし,法人の機関たる理事等の責任を規定した民法44条2項では,法人の目的の範囲内にあらざる行為により他人に損害を加えた場合において,理事等がその事項の議決に賛成したか又はこれを履行した場合のみに責任を限っていること,同様に商法266条ノ3第1項におきましても,取締役がその職務を行うにつき悪意又は重大なる過失あるときにはその取締役は責任を負うとして責任を限っているということに比べますと,信託の場合においてのみ,単に関与したことのみをもって責任の発生根拠とすることは理事等に酷に過ぎ,信託財産ひいては受益者の利益にも資さないのではないかと考えられるところでございます。

 

 

そこで,この提案では,受益者が受託者の法人格を超えて直接の法律関係にない理事等の責任を追及できるのは,理事等に受託法人の法令違反行為等についての悪意又は重過失のあることを要件とすることにいたしました。

 

 

なお,この場合において,理事等の悪意又は重過失の対象は受託法人の法令違反行為等でございまして,信託財産の侵害の事実についてまで悪意又は重過失を要するものではないと考えておりますし,理事等の悪意又は重過失の立証責任には,直接の契約関係にない以上,受益者側にあると解しているものでございます。

以上で終わります。

 

 

 

  •  では,御議論をお願いいたします。
  •  第30の差止請求権について幾つかですが。

まず,これはやはり一種の強行規定なんでしょうね,全体として。ここに規定がない限りはだめだよと。

 

 

  •  はい,これは強行規定でございます。

 

  •  ただしオプションがあって,委託者についてだけはオプションがあるという理解なのだと思いますけれども,その上で,まず共同受託者の話があって,13ページの(注2)のところで両方の議論があるよということですが,後の方の議論は全く理解ができないですね。

 

 

共同受託者が特に利害関係が深い者に当たらないというのは全然理解ができなくて,共同受託者を入れないという話がどうやって出てくるのかが私にはちょっと理解できないというのが一つ。

 

 

 

二つ目は,今日のほかの部分の話に関連しているのですが,もしこれで信託財産に著しい損害が生ずるおそれがあるということであるとしたら,まず受益者については,こういう法令違反とか信託行為違反の場合だけではなくて,さっきの議論を蒸し返しているのですけれども,信託財産のところで物すごいマイナスが出る場合に,過失があろうが何であろうが受益者のところに戻ってくるというのであれば,やはり受益者にその前の差止請求権ぐらいは認めておかないとおかしいじゃないかということになりかねない。

 

 

 

同じことは,責任財産を限定した債権者の方だって,悪意重過失の場合については何だかんだということであれば,差止請求まで認める必要はないよという話があるのかもしれませんけれども,しかし信託財産がなくなってしまうのですから,だからその人に対してだって認めてもいいじゃないかという……。

 

 

つまり,限定列挙するからこういう話になるのだと思うのですけれども,そういうのはどうなんだろうかという疑問が生ずるのが,二つ目です。

 

 

 

 

三つ目は,我々はやはり一種金もうけのための信託だけ考えているからでしょうけれども,公益信託なんていうのはどうなるのでしょうか。

 

 

これで忘れられていくと,公益信託については差止請求権はないということに日本の法律ではなってしまうのでしょうか。

 

 

その場合,受益者はいませんよね。日本では検察官という話になっているのですけれども,アメリカでは委託者を入れようという話にはなっている,この部分では。もちろん,意識しておいて,たまたまここには触れていないのかもしれないのですが。

 

 

 

以上3点,意見と質問を申し上げました。

  •  公益信託につきましては,後日まとめて御提案する予定でございますので,ここで忘れたということではなくて,後日,もし必要があればということでございます。

 

 

 

それから,他の受託者についてはどうしたのかというのは,確かに利害関係が深いかどうかという問題はございますが,いきなり差止請求をするのか。

 

 

普通は訴えということまでしなくても,まず説得とかそういうことではないかなと。例えば,裁判所に差止めの仮処分を申し立てると,そういうのは少しドラスティックではないかなという感じもありまして,ここの当事者にはしなかったということはございます。

 

 

 

  •  でも,説得するなという意味はないでしょう,しかし。
  •  書かなかったのですが,そういう気持ちもありました。
  •  いやいや,分かりますけれども。

 

 

すみれ

「そういう感じもあるんだ。」

 

 

  •  あと,もう一つ御質問は何でしたでしょうか。

 

  •  それはちょっと江戸のかたきをという話なんだけれども,さっきの受益者への補償請求権ということになると,著しい損害が生じてしまってマイナスが出てしまうと,結局受益者のところにかかってきますよね。

 

 

そうすると,信託違反とか何とかいうこと以前の,そういう要件がなくてもとにかく受益者は差し止めることができるんじゃないかという話にならないと困るでしょうという話と,それから,それは私にとってはついでなのですけれども,責任財産限定されたときの債権者について,一定の範囲で債権者にも口を出す権利を認めているわけですから,これで信託の定めに違反する行為をして信託財産がなくなってしまう,それで信託財産は限定されていて,どうするんだという……。

 

 

まあ,それでも,その場合は,損害賠償という,重過失か何かでやっていくのだという話はあると思いますけれども,やはり差止請求権の権利者というのを,とにかく書いてある範囲にしか,まあそれはあり得ると思うのですけれども,認めないということになると,そういう人たちはとにかく,意識したんだけれども落としましたよということなら,それはそうなのですけれども,そうなんだろうかという,そういう質問ですね。

 

 

 

  •  主体とか要件を限定しておりますのは,おっしゃるように,なるべく信託財産の保護を図るという観点からであれば,主体をふやし,要件を緩くするということもあり得ると思うのですが,やはり信託は基本的には受託者の信託事務処理にゆだねているわけですので,違法行為でもないのに差し止めるというのはやり過ぎではないかということもございますし,信託事務処理の影響を考えますと,差止請求を余りに広く認め過ぎるのもいかがなものかと。

 

 

単独受益者権でもございますので,そういう意味で言うと,割と差止めしやすい。要件さえ満たせば一人でできますので。

 

 

そういうことも考えますと,ある程度主体と要件を絞った方がいいのではないかと考えられたということでございますので,ここは意識して限定しているということでございます。

 

 

 

  •  第30の差止請求権について1点と,第31の検査役選任請求権について1点,申し上げたいと思います。

 

 

差止請求権の方につきましては,やはり非常に強い権利だということもありまして,請求権者による濫用ということも結構あるのではないかということで,最初の請求ができる場合を裁判所が関与する場合に限定してほしいというような,これは少数意見ですけれども,そういう意見もございましたが,大勢はやはり,○○委員がおっしゃったように,差止請求権というのは受益者保護の観点から必要なのだろうという意見が大勢を占めております。

 

 

ただ,これも少数意見なのですけれども,先ほど強行法規というお話がありましたが,この規律だけではなくて,単独受益者権と言われているものについて,契約による制限を認めてもらえないかというような意見もございます。

 

 

 

次に,第31の検査役の選任請求権のところでございますが,この要件について,商事非訟事件のところで,手続法の129条ノ2というところで取締役と監査役の陳述聴取というものが規定されているということですので,信託の検査役選任請求についても同様に受託者の陳述というものがあっていいのかなというような意見でございます。

 

 

 

 

  •  第30で一つコメントと,第32でコメントがございます。

 

まず,第30の差止請求権でございますけれども,いわゆる板挟みリスクということについてお話ししたいのですが,受益者が複数の場合についての考えについては,この提案で既に書かれているわけですが,受益者が優先・劣後になったときの問題はどうであろうかということです。

 

 

 

この提案書を見ますと,どちらかというと同じ地位の受益者が複数いるというようなことをイメージしているのではないかと思うわけですけれども,例えば不動産信託の場合において,収益受益権と元本受益権といいましょうか,賃料と元本になったときに,その立替えをすべきかどうかということになると,恐らく両者において意見が分かれるだろうと。

 

それで,その片方から差止請求があった場合に一体どうするのかという話です。

 

 

 

そうした場合に,今度は受託者としては一人ですから,その差止めに対して抗するのか,抗しないのか,これはつまり,他方の受益者に対する善管注意義務から抗するべきだということもあるかもしれません。

 

 

こうしたときに,それが実際に裁判とかが長引いて損害が拡大した場合に,その他方の受益者に対しては問題になるよといった場合に,受託者としては困ってしまうことではないのかという話です。

 

 

また,その受益者の差止めが間違っていた,過誤であったといった場合に,その得べかりし利益が発生した場合に,その損失というのは一体だれが負担するのかということについても,受託者の善管注意義務との関係でそれを阻止すべきだったかどうか,また最終的にそういうリスクをどこに置くのかというところをちょっと整理する必要があるかと思っております。

それから,そういったことを考えますと,その差止請求権者というのが一体だれなのかということですけれども,ここでは結局,受益者,委託者といって,多分,受益者が複数の場合にも一人で差止請求が可能だというふうに思います。

 

 

それについては,恐らく,パラレルに考えますと,株式会社においての株主の差止めも同じような考え方だと思うのですが,ただ,政策的な判断として,このような信託のときに,こういった受益環境が違うときに,いわば片方の受益者のために片方が損したといったときに,濫用的なことを防ぐために,例えば担保請求権を設置するとか,そういう考え方があるのではないかなというふうに思っております。

 

 

 

 

一応,問題提起だけということで,コメントでございます。

 

それから,第32,法人役員の連帯責任ということでございますけれども,これはコメントだけということですけれども,利益吐き出し責任については,そもそもその存在について疑問を申し上げたところでございますけれども,仮にこれを第19において認めるという場合でも,かかる連帯責任について及ぼすのが本当に,例えば不当利得というふうに性質決定をしたときに理論的に整合性があるのかどうかということと,やはり実際に受託者としての理事とか役員との関与の仕方を実際考えますと,非常に萎縮的効果が出て,そこまで負わすというのは,実務的にはちょっと重い負担をかけるというふうに思っております。

 

 

 

  •  何かお答えありますか。

 

  •  検査役選任請求のところで,先ほど,受託者から意見を聞いた方がいいのではないかというお話がありましたけれども,我々の提案では,選任のところについては,裁判所が選任するに当たって事実上当事者の話も聞くのではないかと。

 

 

 

法律的には,報酬の決定のところで意見を聞くことができますので,そちらの方でカバーできるのではないかというふうに考えているところでございます。

 

 

  •  差止請求権で,いろいろな優先・劣後の関係があって,両者でもって差止めをするかしないかで意見が食い違うという場面は,もちろん例外的には考えられるのでしょうけれども,ここではあくまで「法令又は信託行為の定めに違反する行為」というのが要件になっているので,そういう意味では,その要件さえ満たしていれば,つまり,そういう違反があったときに,両方の受益者でもって,片方は違反があるけどいいやと思って,片方はやはり違反を追及しようというときに,その場面であれば恐らく,違反があるので,やはり差止めを求めたいというのが優先するのではないかと思います。一般論ですけれどね。

 

 

番人

「たしかに。」

 

 

 

  •  更に確認なのですが,そうした場合に,その差止めに従って受託者が行為をやめたといったときに,それでその責任が免責されるのかどうかということですけれども,もちろん,法令とか信託行為の中に解釈の余地があるわけですので,その余地が残った場合に受託者としてどう裁量的に判断したらいいのかという問題が起こるわけで,そういう意味でなお板挟み的なところがあるのかなというふうには思っているわけですけれども,ただ,一つの考え方として,そういう考え方だったとしても,差止請求権ということは,法に従うというのが受託者としての義務であるというふうに整理できるのであれば,受託者としてはそれに従って免責されるということになるのかなと。

 

 

ただ,そうではなくて,やはり受託者としては法令とか信託行為とかを誠実に解釈して,自らの全体に対する善管注意義務に従って行動せよということになれば,ある程度そういう責任を持って,抗すか,それに従うかという判断を求められて,その責任も受託者としての固有の責任を負うという整理になるのかなというふうに思っておりますけれども,後者というのは,実務的にはちょっと重いのかなというふうに思います。

  •  差止請求が認められる要件を相当絞っていますのでね。

 

 

これがもっと広いと,おっしゃるような問題がたくさん出てくるのだと思いますけれども,繰り返しになりますけれども,法令と信託行為の定めに違反する行為があることを前提にして,かつ,著しい損害とか,そういうのが要件になっていますので,基本的には,その要件が満たされていれば,それで受益者が差止めを求めれば,それは認められることになるし,受託者としても,差止請求権の要件が満たされていれば,それに応じていれば,それでもって何か損害がほかに生じて責任が生ずるということはないと思いますね。

 

 

 

  •  今の○○委員と○○委員の間の話なのですが,裁判所が差止命令を発した場合の話をされているのか,ただ単にその裁判外も含めて差止請求をした場合を考えていらっしゃるのかがよく分からなかったのですが,後者の,裁判外でやった場合にどうなるかということは,○○委員は,差止請求が来てもやった方がいいのか,やらない方がいいのか,これは信託行為の定めに違反しているのかどうなのかという判断をする責任を負わされるのは実務的に耐えられないとおっしゃいましたが,しかし,それは常に生じていることですよね。

 

 

 

ある行為をするときに,これは信託違反かもしれない,やればもうかるんだけれども,信託行為で認められている行為なんだろうかどうなんだろうか,それは常に受託者がリスクを負って判断をするわけであって,そのときに裁判外で差止めをするという電話がかかってきている,書面が来ているということは,別段何ら影響を及ぼす事柄ではないと思うのですね。

 

 

それに対して,裁判所の命令によって差止めを命じられて,それでやめたと,これは帰責事由がそもそもないわけで,責任を負わないというのは分かるのですけれども,裁判外の話を前提におっしゃっているのならば,全く納得できないということを申し上げておきます。

 

 

 

  •  ちょっと私も,裁判外と,裁判所の命令による場合と,必ずしも区別しませんでしたけれども,裁判外の場合にも,少なくとも要件は客観的には満たされているという--これは後から判断されるので,そこが問題になるわけでしょうけれども,満たされているというのを前提にした抽象論でございます。

よろしいですね,これはこのぐらいで。

 

 

 

  •  確認的な質問なのですけれども,検査役の選任について,単独受益者権になっておりますけれども,少数受益者権になさらなかったのはなぜかということを一応御説明いただければと思います。

 

 

 

 

  •  裁判所に対する権利は受託者にとって非常に重要な権利であるという観点から,基本的にすべて単独受益者権としておりまして,この検査役選任請求権につきましても,帳簿閲覧請求権とかが単独受益者権にもなっておりますし,その延長としてこれも単独受益者権にしないと実効性がないのではないかということでございます。

 

 

 

  •  他の法制との比較で,ここが単独になっているというのが信託特有の意味があるかどうかということを,まあ確認的なことでございます。

 

 

  •  さっきの差止めなんかも,株式会社の場合には単独株主でよかったのでしたっけ。違いますかね。

 

  •  差止めは単独ですね。

単独かどうかではなくて,質問なのですが。

今の商法272条,株主の差止請求権で,恐らくこの条文は,むしろ監査役の差止請求権と同じような書き方,著しいという要件が普通の書き方なのですけれども,商法と条文の書き方が一部違っていて,そこがどういう御趣旨かということの確認なのですが,「又はこれらの行為をするおそれがある場合において」という文章が入っておりますが,272条とか275条ノ2の規定はこれがないのですね。

 

 

 

どう読んでいるかというと,まだ行為していないことは当然であって,それをやれば損害を生じるおそれがあるというふうに,あわせて両方おそれというか,将来性というのはそこで読んでいるのですね。

 

 

しかし,こういう書き方をしますと,もうやった行為で将来損害が生じるおそれがある場合と,これからやって損害が生じるおそれがある場合と,二つ含んでいるように読めるのですね。

 

 

 

それはどうしてそういうふうに,済んだ行為も含んでいるかのような書き方をこの前段でされているかというのが,質問です。

 

 

もし,これが継続的にやっている行為のことを指しておられるのであれば,とめる部分は,しかし将来行われる部分であって,そういう考慮だったらちょっとおかしいですし,逆に,最近問題となっている,実は商法でも判例があるのですけれども,何かやって,それが損害を起こす可能性があるときに,積極的に何かさせるためにこの差止めが使えるかという議論があり得て,それを含む趣旨でこれを書かれているとすれば,これはかなり実質を差止請求権で変えることになりますので……。

 

 

 

 

 

それで,商法で問題となったのはもっと限界事例で,原子炉の運転を再開してしまったのですね,事故の後。

 

 

それを原発株主が差し止めようとした。要するに火を切れと,切らせることを差止請求権でできるかというのが問題となって,それなんかは,ひょっとすると,継続している場合,いったんやって,その後効果が継続していって,それを差し止めるという類型なのかもしれませんが,ちょっと……。

 

 

まあ,それは最終的には,下級審の判例は1件も結論としては認めていないのですけれども,差止請求権の対象となり得ることは前提としているような判決が多いのですが,そういうのは潜在的に含むという御趣旨なのか,ちょっと書き方を変えた理由を説明いただければと思います。

 

 

 

 

 

  •  違反する行為を「した」というのが入っているという理由でございますが,一つは,おっしゃるとおり,継続的な違反行為をしているときには,それを根拠に将来の違法行為も差し止めるという趣旨と,あと,過去にあった行為であって,しかし無効であるというものについても,その履行行為を差し止める意味はあるだろうと,そういう意味もありまして,両方を含めてここで書いているということでございます。

 

 

  •  履行行為は,将来行われるところを差し止めるわけですね。継続のも,将来やることを,それが違法でないと差し止められないわけですよね。

 

  •  はい。

 

  •  そうしたら,何かちょっとどうかなと……。

 

  •  違法な法律行為に基づく違法な履行行為を差し止めると。

 

  •  ですよね。そうしたら,やはりいずれも将来のものだけですね,念頭に置かれているのは。

 

  •  将来のものです。将来の行為を差し止めるということではございます。

 

  •  それならば,書き方は商法と同じにした方が……。いや,結構です。

 

  •  一種の原状回復みたいな……。

 

  •  今の差止請求に関してなのですけれども,前回やりました,信託事務処理の委託が行われた場合にこの差止めの対象というのがどうなっていくのかというか,要するに,受託者が行う場合には差し止めることができるということに多分なるのだろうと思うのですけれども,これを委託して,その受けた委託者が問題ある行為を行おうとした場合には,これを受益者がとめようとした場合には,どういった手段がとり得るのか,そのことを考えなくていいかどうかということで御検討いただけないかと思うのですけれども。

 

 

  •  とめられた方がいいようにも思われますが,次回までに検討いたします。

 

  •  ほかによろしいでしょうか。

 

  •  差止請求権のところなのですが,私どもの意見というのは先ほど申し上げたとおりなのですけれども,ちょっと実務上困った例があるので申し上げたいのですけれども。

 

 

やはり,複数受益者のときには,差止めするかどうかということで受益者間で意見の対立があると。

 

 

○○委員が先ほど,例として,違反だと思っている人と,違反ではないと思っている人がいる,それの比較で,やはり違反だと思っている人の意見を採用してというふうなお話があったと思うのですけれども,多分,実務的にいくと,その行為自体が違反しているかどうかというよりも,それぞれの受益者の感じ方によって,そっちの方が得だと思っている人と,損だと思っている人がいて,一つの事例を挙げると,不動産を運用していましたと。

 

 

その不動産を売却しようと思ったときに,非常に低廉譲渡だということで,処分禁止の仮処分が入りましたというときに,大半の受益者の方々は,それを売ってしまわないともっと下がってしまう,だから早く売ってくれというふうに考えられている人がいるし,一方で,やはりそんな低廉で売られてしまうと困ると思う人がいて,その受益者間の利害の対立といいますか,考え方の対立というのが出てきて,そういう意味合いで何か濫用的に使われたりするというようなことが,やはり実務的なところで出てきたりもしておりますので。

 

 

かといって,これを単独受益者権からやめましょうというお話ではなくて,そういうことがあったので業界の方ではかなり悩んだという部分がございましたので,ちょっとそういうことを知っていただきたいと。

 

 

 

 

 

 

  •  ちなみに,私がさっき申し上げたのは,どちらにとっても違反ではあると。

 

 

信託行為の定めに反する,あるいは法令に反するというのは,どちらの受益者にとっても一応は違反なんだけれども,片方は差止請求権を行使する意思がなくて,片方は行使する意思があるというときに,これは行使する意思がある方が優先されるのではないかという,その程度の話です。

 

 

 

おっしゃるように,実務的には,そもそも要件を満たしているかどうかのところでも争いがある,受託者の方から見れば争いがあったりして,対応に困る場合があるということはよく分かると思います。

 

 

番人

「なるほど。」

 

 

 

それでは,時間が来ましたので,ここで終わりたいと思います。

 

 

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すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。今日は雨が降っていて散歩に行けませんでした。」

 

 

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