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2016年加工編   法制審議会信託法部会    第4回会議 議事録
2016年01月11日

2016年加工編

法制審議会信託法部会

第4回会議 議事録

 

 

 

第1 日 時  平成16年11月9日(火)  自 午後1時00分

至 午後5時03分

 

第2 場 所   法曹会館「富士の間」

 

第3 議 題

信託法の見直しに関する検討課題(2)について

 

第4 議 事   (次のとおり)

 

 

 

議    事

 

  •  それでは,法制審議会信託法部会を開きたいと思います。

今日も説明資料はかなり分厚いものがございますが,幾つかに分けて説明していきたいと思います。

 

それでは,○○幹事の方からお願いします。

  •  本日の進行でございますが,資料の中身がかなりありますのと,論点によっては議論がかなりあると思いますので,大まかな進行といたしまして,次のとおり考えております。

 

最初が,受託者の善管注意義務,利益吐き出しを含みます忠実義務,それから公平義務,受託者の損失てん補責任と,その時効の観点,この5項目につきまして,まず最初に私の方から,多少お時間をいただいて御説明いたしまして,途中休憩までは全部これに当てるというふうに考えております。

 

 

休憩後につきましては,まず,分別管理義務,信託事務処理の委託,それから帳簿作成義務等を御審議いただきまして,残りの時間で受託者の権限と権限違反の行為の効果を御審議いただきたいと思っております。議論の進み具合によりまして,どこまでできるか分かりませんが,できれば最後まで御審議いただければと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

 

それでは,まず,善管注意義務のところから順次御説明をしてまいりたいと思います。

 

第18でございますが,これは,受託者の職務に関する現行法第4条,受託者の善管注意義務に関する第20条,それから金銭の管理方法に関する第21条に関連する提案でございます。

 

その骨子は第1回会議で申し上げたとおりでございまして,第4条と第20条の規律内容を整理して,1において,受託者の信託事務遂行義務というもの,2において,かかる事務遂行上の受託者の注意義務の基準がいわゆる善管注意義務であることをそれぞれ示しますとともに,3におきまして,善管注意義務の内容について個別具体的な規定までは設けないこと,4におきまして,現行法第21条は削除することを提案するものでございます。

 

ここでは,第1回会議以降事務局内で検討し,本日の資料に追加して記述した点につきましてのみ,2点,補足的に御説明をいたします。

まず,第1回会議で用いた報告書におきましては,受託者の信託事務遂行義務を示すに当たっては,「信託行為の定めに従い」という文言ではなくて,「信託の本旨に従い」という文言を用いるべきではないかとの指摘があることを示させていただいておりました。

 

この点についての検討結果を示したものが,資料の2ページ中段に記述したところですが,受託者は,信託行為の定めに形式的に従っていれば足りるわけではなくて,委託者の意図した信託目的に適合するするように信託事務を処理する義務を負うことを明らかにすべく,「信託の本旨に従い」という文言を用いることといたしました。

 

 

すみれ

「信託行為の定めに従い、と信託の本旨に従いってそんな違いがあったのか。目的が重要なんだ。」

 

 

ここにおいて,「信託の本旨」といいますのは,いわば契約における信義則と同様に,形式的な定めを実質的に補完する機能を果たすものと考えております。

 

次に,同じく報告書におきましては,受託者が信託行為の定めに従って信託事務の処理をすべきことはいわば当然であって,あえて規定を要しないのではないかという指摘がございました。

 

この点につきましても,「信託の本旨」という文言を用いることを前提とすれば,受託者は,信託行為の定めのみならず,その背後にある信託の本旨に従って信託事務を処理する義務を負うものであるということを明らかにすることによりまして,受託者は,信託行為に具体的に規定されていない,いわば信義則的に膨らんだ義務に基づいて,その義務違反,すなわち責任を追及されるのだと,そういうことを明らかにするという点において規定を設ける意味があると考えるものでございます。

以上の考え方につきまして,後ほど御審議をいただければと存じます。

 

 

 

 

 

続きまして,本日の中心的事項の一つとなると思われます忠実義務,それから利益吐き出し責任も含めて,あわせて御説明をしたいと思います。この点については少々お時間を賜れればと存じます。

 

忠実義務とは,受託者が専ら受益者のために行動しなければならないという原則をいいまして,受託者による信託財産の固有財産化と信託財産に対する権利取得を禁止する第22条第1項が,受託者の忠実義務を前提とした規律であると解されております。

 

他方で,この現行法の規律に関しましては,資料の10ページ以下に記載しましたとおり,禁止の対象が狭いという問題ですとか,裁判所による許可を除いて禁止の例外を認めていないという問題,更には違反行為の効果に関する規律がないという問題が指摘されております。

 

 

そこで,今回の提案では,このような指摘を踏まえまして,受託者の忠実義務につきまして,禁止される行為の類型,禁止の例外,違反した場合の効果につきまして,検討の方向性をお示しさせていただいているところでございます。

 

具体的に提案の内容に入ってまいりますが,まず,禁止される行為の類型と禁止の例外というところから御説明をしてまいります。

 

ところで,提案の概要についてあらかじめ若干の御説明をさせていただきますと,今回の提案は大きく三つの区分に分かれておりまして,1では,忠実義務の総則的な規律,2では,受託者の利益相反行為の禁止とその例外,最後に3では,受託者が利益を取得することの禁止とその例外について,それぞれ提案しております。

 

このうち,信託法部会資料2の報告書の提案内容からの主な変更点といたしましては,次の点を挙げることができると考えております。

 

 

 

番人

「利益相反については、信託目録に記録する場面は限られてくるね。委付に関する定めなどかな。必要な時は登記原因証明情報や承諾書で対応する。」

 

 

第1に,受益者と受託者間の利益相反の問題につきましては,これは資料で言いますと5ページの2の(1)のアでございますが,いわゆる自己取引の問題と,それから②の間接取引とに分けて規律しております。更に,これに対応する形で,受益者と第三者間の利益相反の場合につきましても,③の直接の相手方に対して利益を与える場合,それから④の直接の相手方以外の第三者に利益を与える場合に分けて規律しております。

 

第2に,異なる信託に係る受益者間の利益相反の場合についてですが,まず,7ページの(2)のアの①として,いわゆる信託財産間の取引の問題,②といたしまして,特定の信託の利益のために,他の信託の受益者の利益と相反する行為に関する問題,最後に③といたしまして,信託間の競合行為に関する問題とに分けて規律しております。

 

第3に,受託者が利益を取得することの禁止といたしまして,報告書で禁止した狭義の利益取得行為,後ほど御説明いたします9ページの3の(2)に当たるものでございますが,そのような狭義の利益取得行為のほかに,信託財産の機会を固有財産で奪取する行為というのを,(1)として加えております。これをもちまして,全部を合わせて広義の利益取得行為というように考えていただければと思いますが,これが3の規律でございます。

 

 

最後に,第4といたしまして,ただいま申しました狭義の利益取得行為の禁止につきましては,受益者による取得が禁止される利益の広狭に応じまして,甲案から丙案までの4案を提示しております。

 

 

なお,利益相反行為と利益取得行為の分類につきましては,従前,信託財産に影響を及ぼす行為については利益相反行為の問題として,信託財産に影響を及ぼさない行為については利益取得行為の問題として考えておりました。

 

 

今回の提案におきましても,利益相反行為の禁止と狭義の利益取得行為の禁止という観点からはこのような立場を維持しているわけでございますが,固有財産で信託財産の機会を奪取する行為というものにつきまして特出しいたしましたのは,一つは,専ら固有勘定で行う行為を禁止の対象としているということ,もう一つは,商法でも取締役による利益相反行為と競業取引の禁止とが別個の類型として禁止されていることなどを考慮いたしまして,広義の利益取得行為の禁止の一類型と考えて特別に規律しているということで,変更を加えているところでございます。

 

それでは,更に各論的な説明に移らせていただきます。

 

まず,提案の1でございますが,ここでは,「受託者は,信託行為の定めに従い,受益者のために忠実に信託事務を処理しなければならない」としております。

 

忠実義務違反行為として禁止の対象とすべき行為につきましては,後に御説明いたします提案の2及び3ですべて捕捉されていると考えておりまして,したがいまして,提案の2及び3を設ければ,それに加えて1は不要ではないかという考え方も十分成り立つところではございます。

 

しかしながら,受託者は専ら受益者の利益のために行動すべきであるという原理原則を明文で示すことは,受託者の行動指針を示すという点から意義があると考えまして,このような総則規定を置くことを 提案しております。

 

 

こう考えますと,1の規律は,いわゆる訓示規定としての性格を有するにとどまるものでして,この規定が独自に禁止の対象とする行為はない,すなわち効力規定ではないということになります。このような規定を設けることの要否につきまして御審議をいただければと存じます。

 

続きまして,提案の2の利益相反行為の禁止のところに移らせていただきます。資料の本文では5ページから6ページ,説明では11ページから13ページになります。

 

まず,基本的な考え方でございますけれども,受託者による利益相反行為といたしましては,まず,受託者と受益者の利益が相反する場合,次に,受益者と第三者の利益が相反する場合,最後に,受託者が複数の信託を受託している場合において一方の信託の受益者と他方の信託の受益者の利益が相反する場合,この三つが考えられるところでございます。

 

ここでは,まず,(1)といたしまして,前二者の問題,すなわち,受託者と受益者間の利益相反と第三者と受益者間の利益相反について検討いたしまして,(2)の方では,異なる信託の受益者間の利益相反について検討しているところでございます。

 

まず,受託者と受益者間の利益相反行為でございますけれども,まず,①と②で,禁止される行為の類型を明らかにしております。

 

①でございますが,これは,現行法22条にございます受託者による信託財産の固有財産化,信託財産に対する固有財産での権利取得に加えまして,更に,固有財産の信託財産化,固有財産に対する信託財産での権利取得も含め,いわゆる自己取引はすべて原則として禁止されるということを明らかにしております。

 

続きまして,②でございますが,これは,受託者が第三者との間で,受益者の利益と受託者の利益とが相反する行為,いわゆる間接取引に当たる行為をすることを禁止しております。

 

受託者は,忠実義務に基づき専ら受益者のために行動しなければなりませんので,第三者との間で行為することにより受益者の利益を犠牲にして受託者自身の利益を図ることは許されないと考えられます。

 

②はこのような趣旨を明らかにしたものでして,ここで禁止の対象になる行為といたしましては,受託者が固有財産で負担している自分の債務につきまして信託財産を担保に提供するというようなものが考えられます。

 

 

すみれ

「名義があると、自分の借り入れに信託財産を担保提供することも可能になるのか。家族信託によっては必要な場合もあるかもね。」

 

 

一方,受益者と第三者との利益相反行為につきましては,③と④で,禁止される行為の類型を明らかにしております。

 

③でございますけれども,これは,受託者が第三者との間で,その第三者のために,受益者の利益と当該第三者の利益とが相反する行為をすることを禁じております。

 

 

 

 

 

もっとも,受託者が第三者との間で取引等をする場合におきましては,常に,受益者と当該第三者の利益が抽象的には対立すると考えられます。

 

例えば,第三者から信託財産として特定の財産を購入する場合を例にとりますと,価格をめぐって両者は常に利害が対立すると考えられます。

 

そこで,これらの取引等が原則としてすべて利益相反行為の禁止の対象となると考えることは相当でないと思われるところでして,第三者と受益者間の利益相反については,受益者と受託者間の自己取引の利益相反に比べて限定的に考えるべきではないかと思われます。

 

そこで,③では,「第三者のために」という文言で禁止の対象を限定することを意図しております。

 

ここで「第三者のために」と申しますのは,受益者の利益を犠牲にして第三者の利益を図ることを意味しており,受託者と第三者間の取引等につきまして,このような受託者の主観的事情が認められる場合に限って利益相反行為の禁止の対象とすることを考えております。

 

最後に,④でございますが,これは,受託者が第三者との間で,その第三者以外の者のために,受益者の利益と当該第三者以外の者の利益とが相反する行為をすることを禁止しております。

 

例えば,その禁止対象となる行為につきましては,第三者の債務のために信託財産に担保を設定するというようなものが考えられます。

 

以上申しましたような①から④までの行為が利益相反行為として禁止されるわけですけれども,その例外として認められる場合を6ページから7ページのイで規定しております。

 

 

 

 

 

ところで,利益相反行為が禁止されるのは受益者の利益を保護するためですので,受益者の利益を害するおそれのない場合にまで一律に禁止する必要はないと考えられます。

 

現行法の規律は,裁判所による許可がある場合を除いては禁止の例外を認めておりませんので,実務的には,信託業法ですとか,あるいは銀行勘定貸しについてのかつての通達などによって例外を認めてきたようですが,このような状況は決して望ましいものではないと考えられるところでございます。

 

 

そこで,ここでは,信託行為の定めによって受託者がその行為をすることが許容されている場合,それから,その行為について受益者の承認がある場合には,受益者の利益が害されるおそれがありませんので,禁止の例外を認めるということにしております。

 

 

なお,この二つに限られるかということでございますが,利益相反行為には多種多様なものがありますので,すべての行為について信託行為で許容する旨の定めを置くことは不可能あるいは困難でございますし,受益者が多数に上る場合にすべての受益者の承認を得るということも現実的ではないと考えられます。

 

このような観点から,③といたしまして,第3の例外,すなわち,「受益者の利益を害しないことが明らかであるとき」という要件を設けてはどうかという提案をしているところでございます。

 

 

ところで,このように信託行為の定め又は受益者による承認以外の例外を認めることに対しましては,受託者が受益者に対して強い信認義務を負うことと矛盾するのではないかという有力な見解があることは承知いたしております。

 

 

しかしながら,資料で言いますと15ページ以下に多少理由を詳しく書かせていただきましたけれども,第3の例外を認めるということが信託財産の効率的な運用の機会の確保や信託事務の円滑な処理をもたらし,究極的には受益者の利益となるのではないかと考えまして,報告書の提案と同様,今回も,「受益者の利益を害しないことが明らかであるとき」という例外を設けるとの提案を維持しているところでございます。

 

 

ポリー

「法律においていた方が解釈の余地が広くなるということですかね。」

 

 

続きまして,複数の信託に係る受益者間の利益相反行為の禁止,資料の7ページの(2)のア①から③のところに移らせていただきます。

 

 

ここでは,複数の信託に係る受益者間の利益相反行為につきまして,三つの類型に分けて処理してはどうかという提案をしております。

 

まず,①でございますが,いわゆる信託財産間取引が禁止されることを明らかにしているものでございます。

 

各信託の信託財産はいずれも受託者の所有財産ですので,信託財産間の取引は民法で禁止されている双方代理の禁止と同様の危険,すなわち,片方に不当に不利益な契約をするおそれがあると考えられるところでございます。

 

そこで,このような信託財産間取引が禁止されるということをここでは明らかにしております。

 

他方で,信託財産間取引のすべてを禁止することは相当でないと考えられます。

 

例えば,14ページに記載した例にございますように,A信託では甲株式の売却先を探しており,B信託では甲株式の購入を予定しているというような場合を想定いたしますと,この場合には,仲介手数料の負担などの点では,受託者が取引市場で第三者との取引をするよりは,A信託とB信託間で直接に取引をした方が双方の信託の受益者にとって有利な場合が多いと考えられます。

 

そこで,ここでも,受託者が,「特定の信託に係る受益者のために」という目的を持って信託財産間取引をした場合に限って当該行為が禁止されるとしているわけでございます。

 

先ほど,受益者と第三者間の利益相反行為について,「第三者のために」という要件が必要であると申しましたが,信託財産間の取引でも同様な要件が必要になると考えているところでございます。

 

 

続きまして,②でございますが,これは,受託者が第三者との間において,特定の信託に係る受益者のために,他の信託の受益者の利益と相反する行為をすることを禁止しております。

 

このような行為といたしましては,一方の信託財産に属する債務の担保として他方の信託財産を提供するという行為が考えられますが,このような行為は原則として禁止 されるということを明らかにしたものでございます。

 

 

最後に,③ですが,これは,信託財産間の競合行為が禁止されることを明らかにしております。

 

複数の信託行為の定めによりまして受託者に同一の権限が与えられている場合には,受託者が当該権限を行使することによって,特定の信託に係る受益者を正当な理由なく有利に扱ってはならないと考えられます。

 

 

他方で,信託銀行のように,多数の信託を受託している受託者にとりましては,ある権限の行使が恒常的に複数の信託に係る受益者間の競合行為に該当するということにもなりかねず,このような行為をすべて禁止するという結論は,相当とは考え難いところでございます。

 

 

そこで,受託者が,特定の信託に係る受益者に対して不当な利益又は損害を与える目的で当該権限を行使した場合に限りまして,信託財産間の競合行為が禁止されるといたしまして,禁止の範囲を合理的な限度で制限することを提案しているものでございます。

 

 

以上のような①から③につきましての禁止の例外でございますけれども,それは8ページのイに書いているものでございまして,先ほど御説明したところとさほど変わらないのですが,受益者の利益を保護するという観点から禁止の例外を定めるということにしておりまして,その趣旨は,先ほど申し上げたとおりでございます。信託行為の定めと受益者の承認がある場合ということになります。

 

 

 

 

 

 

なお,不当な目的が要件になっておりますので,受益者の利益を害しない場合という例外要件は設けないとしております。

 

 

すみれ

「目的が不当だから、受益者の利益を損なうってことか。」

 

 

最後に,提案3の利益取得行為の禁止とその例外について,御説明を続けさせていただきます。

 

まず,いわゆる信託財産の機会を奪取する行為の禁止でございまして,これは8ページ以降のアになりますが,受託者は専ら受益者のために行動する義務を負いますが,他方で受託者個人の立場で取引をすることもあります。

 

信託行為の定めにより与えられた権限に基づき行うことができる取引につきましては,専ら信託事務の処理として行うべきであって,受託者が個人の資格で行うことはおよそ認められないと,このように厳格にしてしまうことは相当ではないと考えられます。

 

 

現行の実務の下でも,例えば銀行業務と信託業務を兼営する銀行におきまして,信託行為の定めにより信託財産をもって第三者に貸付けができるとされている場合には,固有財産では貸付けができないとなってしまうのは相当ではないと考えられます。

 

 

そこで,信託財産間の競業行為と同様に,受託者が不当な利益を得る目的又は受益者に損害を与える目的で当該権限を行使した場合に限りまして,固有財産で信託財産の機会を奪取したものとして当該行為が禁止されることを明らかにしております。

 

 

 

続きまして,イでございますが,これは,受益者の利益保護という観点から,このような競合行為の禁止の例外を定めるものでございます。

 

 

続きまして,狭義の利益取得行為の禁止,9ページの(2)のところの御説明に移らせていただきます。

 

受託者は,信託財産に影響を与えない場合であっても,その地位を利用して不当な利益を取得する行為は禁止されるべきであると考えられます。

 

このような考えに基づきまして受託者による取得が禁止される利益としては,これから述べるような利益が考えられるところでございます。

 

まず第1に,受託者が信託行為の定めに違反して信託財産を利用することにより取得する利益というものが考えられます。

 

 

例えば,信託の土地上に建物を建てて算出したというような例,資料9ページの例13)のような例もございますし,それ以外にも,例えば,貴重な価値のある動産,立派なダイヤとか,世界に1枚しかない絵とか,そのようなものを預かっていて,そのままの状態で保管すべきところを,鑑賞料を取って第三者に鑑賞させた場合の鑑賞料,このような利益が挙げられるかと思います。

 

 

このような利益の取得を禁止する見解は,他人の事務を自己の利益のためにする意思をもって管理した場合におきまして,事務管理の規定を準用して,侵害者の得たすべての利益を本来の権利者に引き渡すべきであるという,いわゆる準事務管理の法理を認める見解と整合的ではないかと考えているところでございます。

 

 

第2といたしまして,受託者が信託事務を処理するに当たって利益を取得する行為,例えば手数料とかリベートを取得するということが考えられますが,このようなものが,禁止の対象となる利益として考えられるところでございます。

 

 

番人

「信託報酬としてもらってくださいってことかな。」

 

 

 

受託者がこれらの利益を取得することは必ずしも常に信託財産に対して影響を及ぼすとは考えられないために,利益相反行為の禁止によって捕捉されない場合があると思われますので,そこで,受託者によるこのような利益の取得行為を禁止すべきか否かということが問題になります。

 

第3でございますが,これは,受託者が受託者としての地位に基づいて得た信託の情報を利用して取得した利益が禁止の対象となる利益と言えるかと考えられるところでございます。

 

ところで,一般的には,ここで言いますと,最後に言いました③よりも,手数料やリベートを得る②,それから,②よりも,例えば人に絵を見せてもうけたという①が信託財産に対する危険性が高く,すなわち禁止すべき必要性が高いと思われまして,資料の甲案から丙案までで一番禁止の必要性が高い①に類型するものだけというのが丙案,それで,乙案,甲案と禁止の対象を広げていきまして,逆に丁案というのは,このようなものは,信託財産に影響が及ばない以上,禁止する必要はないという四つの案を提示させていただいているところでございます。

 

 

最後に,この禁止の例外でございますが,これは,信託財産に影響を与えるおそれがないにもかかわらず利益取得を禁止しますのは,受託者が受益者に対し強い信認義務を負うことがその理由でございますので,その利益取得行為について信託行為で許容されている場合ですとか,あるいは受益者の承認がある場合には,そのような信任義務は解除されていると考えることが可能だと思われます。

 

 

他方で,信託行為の定めとか受益者の承認がない場合にすべてこのような利益取得行為が禁止されるということは,受託者に不測の事態をもたらすおそれがあると考えます。

 

特に,信託銀行のように銀行業務と信託業務を兼営している場合におきましては,信託財産に関する情報と固有財産に関する情報の共有が不可避的であるとの指摘がございまして,信託行為ですべての利益取得行為を記載することは不可能であると考えられますし,受益者の承認を得るというのも,先ほど言いましたように,受益者が多数である場合は難しいと考えられるところでございます。

 

 

そこで,③といたしまして,かつ受託者の行為が過剰に規制されることを防止するために禁止の範囲を合理的に制限する観点から,「受託者がその行為を行うことについて正当な理由があるとき」という禁止の例外を認めることとしております。

 

以上が,禁止の範囲とその例外ということでございます。

 

 

 

 

続きまして,この違反の効果につきまして御説明を続けさせていただきます。忠実義務違反の効果でございますが,利益相反行為の禁止の規範に違反した場合と,利益取得行為の禁止に違反した場合がありますので,両者を分けて御説明いたしたいと思います。

 

 

まず,利益相反行為の禁止につきましては,これは資料5ページのアステリスクの1に書いてあるところでございますが,これがいわば非常に基本的なところでございまして,この規範に違反した場合の法律行為は受益者・受託者間では無効であると考えております。

 

これによりまして,受益者は,特段の請求をすることなく,いわばそのままで物権的な救済を受けることができることになります。

 

 

このように措置いたしましたのは,利益相反行為というのは受託者が最も容易になし得る忠実義務違反の典型的な行為でありますところ,これを無効とすることはそのような行為を抑止することに資すると考えられること,また,当該行為が受託者の中で起こる限りにおきまして第三者の期待を害することもなく,無効として差し支えないと考えられることなどによるものでございます。

 

 

 

 

 

したがいまして,例1)の事例でございますが,信託財産である不動産を信託行為の定めに違反して自らの固有財産として信託の登記を抹消した場合におきましては,そのような信託財産と固有財産との取引は無効でございまして,受益者は,当該不動産が依然として信託財産であることを主張することができることになるわけでございます。

 

 

番人

「受託者の固有財産とする登記が通ったってことか。」

 

 

 

これに対しまして,信託財産を固有財産化した場合におきまして,受託者が固有財産化した財産について第三者が関連することとなる例2)から例4)までのような事例になりますと,ここでは,取引の安全を考慮する必要が出てまいります。

 

 

忠実義務違反は,特に悪性の高い権限違反と言えますので,後ほど第34というところで説明しますように,受託者の権限違反の場合におけるルールに従うことが適当であると考えられます。

 

すなわち,受益者は,悪意重過失の第三者に対しては取消権を行使できるということになりますが,善意無重過失の第三者に対しては取消権を行使することができないとなるわけでございまして,例2)で記載したような例でございますと,第三者に対する取引は取り消されないことになりまして,したがいまして,受益者は受託者の手元の転売利益を捕捉するしかない,物には追及できないということになりますが,第三者が悪意であれば,受益者は取消権を行使することができまして,そうなると,もともとの財産が信託財産として戻ってくるということになるわけでございます。

次に,受益者が取消権を行使することができない場合につきましては,受益者は,第三者との取引の効果を信託財産に帰属させる旨の請求,5ページのアステリスク1においてハイフンで書いてございますが,一種の介入権のような規定と,それから損失のてん補,原状回復又は利益吐き出しの請求という債権的な請求というものが考えられるところでございます。

 

 

 

 

 

先ほど言いましたように,1番目の請求権は商法上の介入権の規定を参考にしたものでございますが,いずれにせよ,受託者に効果が帰属するという信託の特性にかんがみまして,商法における介入権の構成とは異なりまして,受益者の請求により物権的な効果が発生するとして差し支えないものと考えられます。

 

 

もっとも,このような権限を行使することによって第三者の利益を害するときは介入権を行使することができないというのが,そのハイフンの下のポツのところで書いているところでございます。

 

 

それから,2番目の損失てん補とか利益吐き出しの請求権というのは,債権的な効果を発生させる請求権を規定するものでございます。

 

 

例えば例4)を例にとって説明いたしますと,最初の信託財産と固有財産の自己取引は受託者と受益者との間では無効ですので,受託者が固有財産化した財産を第三者と交換して取得した不動産は依然として信託財産ということになるわけでございます。

 

 

しかしながら,当該不動産の価格は受託者の思惑に反して暴落しておりますので,受益者としましては,無効な自己取引が行われた時点におきましては受託者は相当な代価を取得しているはずですので,もともとの無効な自己取引を追認して,受託者が取得した代価の方をもって信託財産となし,不動産の方は放棄するということで問題の解決を図るか,それとも,受託者が取得した不動産が信託財産であるとして物権的な請求を受けられることを前提に,なお足りない分は損失てん補請求をするという救済を受けることになるかと考えられるわけでございます。

 

 

次に,受託者が利益取得行為の禁止に違反した場合の行為につきましては,これは,8ページのアステリスクの9というところに書いてございますとおり,そもそも固有財産に効果を帰属させようとするものですので,この行為自体は無効とはならない,「取引は有効」と書いてございますが,無効とはならないで,受益者が取り消すこともできないということになります。

 

 

そこで,受益者といたしましては,例11)というところに書いてございますけれども,取引の効果を信託財産に帰属させることを内容とする請求権を行使する,介入権のような権利を行使するか,損失てん補請求権を行使するかという選択になるかというふうに考えられるところでございます。

 

最後に,利益吐き出し責任につきまして説明を申し上げます。

 

正しくこのような規定を設けるかどうかというのが,御審議いただきたい極めて重要な事項でございます。

 

 

 

 

 

報告書におきましては,まずは利益吐き出し責任の法的な性格を,不法行為等との関係から明らかにすることが肝要であって,その上で,いかなる形で利益を算出するか,すなわち,中間最高価格をとらえるか等の問題点につきましては,利益吐き出し責任を設けることが決まった後の技術的な問題だというアプローチをとっております。

 

 

しかし,今回の提案におきましては,受益者の救済のためのスキームの中で利益吐き出し責任が独自の機能を果たし得る場面は具体的にいかなる場面なのだろうかということをまずあぶり出しまして,そのような具体的な場面で,いわゆる利益の算定の仕方を含めて,利益吐き出し責任を独自のものとして設けることとすべきかどうかを議論したらどうかというアプローチに変えているところでございます。

 

 

具体的に独自の機能を有する局面はいかなる場合かという点ですが,まず,利益相反行為の禁止の局面では,対象財産の中間最高価格を基準として返還すべき利益を算出し,この返還を受託者に求めていくこととするか否か,あるいは,これまでの善管注意義務の判断基準とは別の基準により受託者が返還しなければならない利益の範囲を構築していくものとするか否か,あるいは更に,利益について実際にそのような利益に該当する金額の損害は生じていない旨の反証の機会を受託者に与えないこととすべきか否か,などにつきまして論じる必要があると考えられます。

 

 

もう少し,具体的に申しますと,例2)で挙げておりますように,受託者が信託財産を固有財産化し,第三者に高く転売したという場合におきまして,受託者は確かに高く転売したわけですが,もっと受託者が頑張っていればもっと高く転売できていただろうというような場合には,具体的な転売利益のみならず,最善の努力をしていたならば得られたであろう利益までも請求できるのだろうかという点について考えてみます。

 

 

そうしますと,ここにおいて忠実義務の規定を設けることによりまして,受託者と受益者間では自己取引は無効になりますので,仮に利益吐き出し責任に関する規定がなくても,忠実義務に関する規定及び損失てん補責任に関する規定があれば,その財産が信託財産であったと仮定することができることになりまして,その上で,受託者が当該財産をより高い価格で売却しなければ善管注意義務違反に問われることになるか否かということを考えることによって,問題は判断されることになると思われます。

 

 

したがって,このような事例におきましても,場合によりましては,受託者がもっと高く転売しなければ責任を問われる場面も出てくるわけでありますが,いずれにせよ,受託者が善管注意義務を果たしたか否かによって決せられることになりまして,損失てん補責任における損失の解釈によってあえて利益吐き出し責任を持ち出すまでもなく,受益者を相当程度救済することも可能であると考えられます。

 

 

 

 

しかしながら,ここにおきまして,このような善管注意義務違反ということを問うことなく,とにかく中間最高価格によって受託者に返還義務を課すのだと,あるいは善管注意義務とは別の基準により受託者に義務を課すのだということにすれば,すなわち忠実義務の規定と損失てん補責任によってのみではとらえ切れないことになりますので,利益吐き出し責任の規定を設ける意義が出てくると思われます。

 

 

また,受託者が得た利益につきましても,損失てん補責任であれば,実際の損失はそのようなものではなかったとの反証が当然許されるわけでございますが,反証の機会を与えないということにすれば,利益吐き出し責任に関する規定を別に設ける意義が出てくるわけでございます。

 

 

 

このように,利益相反行為との関係では,忠実義務と損失てん補責任ではとらえ切れない独自の機能を利益吐き出し責任に持たせることとすべきかについて,御議論いただければと思います。

 

 

なお,利益取得行為の禁止との関係につきましては,まず,競合行為につきましては,利益相反行為と同様に,忠実義務と損失てん補の規定で足りるかという問題がございます。

 

それ以外の,いわゆる狭義の利益取得行為の禁止の局面では,準事務管理的なもの,リベートに当たるようなもの,あるいは競合行為以外の情報利用行為につきましても,ここでは信託財産に損失がないわけですので,忠実義務違反と損失てん補責任の規定では捕捉できないわけでございます。

 

 

すなわち,これらの行為を禁止しようと思えば利益吐き出し責任のような規定が必要になってくるわけでございまして,禁止しても受託者に利益を吐き出させなければ絵にかいたもちのようなものでございまして,このようなものも監督する必要があるかどうかという観点から,規定の必要性につきまして御議論をいただければと思っております。

 

 

 

 

 

続きまして,公平義務等につきましてざっと説明を続けさせていただきたいと思います。

 

 

公平義務につきましては,一つの信託に複数の受益者がいる場合において,これらの受益者を公平に扱うべき義務のことを言っております。

 

 

もっとも,複数の受益者がいる場合でも,信託行為に信託事務の内容が定められている場合におきまして,受託者がその定めに従って信託事務を行うことは善管注意義務のもとでの信託事務遂行義務の履行にすぎないと位置づければ足りるものでありまして,別途公平義務という観念を持ち出す必要はないと思われます。

 

 

これに対しまして,受託者が信託行為に明記されておらず,信託の本旨をもっても補うことのできない裁量的な信託事務につきまして,信託行為に定められた受益権の差異を踏まえながら履行すべき義務につきましては善良な管理者の注意の下でなされることを前提とする信託事務遂行義務をもってカバーすることができませんので,このような裁量的な信託事務遂行の局面をもって公平義務として位置づけるものでございます。

 

 

このように,公平義務は,一つの信託の中に複数の受益者が存する場合の利益相反を問題とするものである点におきまして,複数信託の受益者間の利益相反を問題とする忠実義務と類似するものと考えられます。

 

 

報告書におきましては,公平義務違反の効果について,善管注意義務違反の場合と同様に損害賠償責任を発生させるにとどまるものか,それとも忠実義務違反の場合と同様に違反行為の効果にまでかかわるものなのかにつき問題提起をしておりましたが,一つの信託の中に二人の受益者がいるのか,この異なる信託の受益者であるのかということは構成の仕方で容易に変えられることにかんがみましても,基本的に公平義務は忠実義務と同じルールに服させることが相当であると考えられます。

 

 

そこで,公平義務違反の効果は忠実義務違反の効果に類するものととらえまして,単なる損害賠償責任を発生させるにとどまらず,違反行為の有効・無効にかかわる問題として整理することといたしております。

 

 

すみれ

「公平に扱う義務も重いんだね。」

 

 

もっとも,公平義務の定義,要件及び効果につきましては,信託法上明文もない上に,解釈上,忠実義務と全く同一ともいえないと考えられます。

 

例えば,義務違反の要件について言いますと,忠実義務の場合におきましては,複数信託間の受益者間の利益相反行為,競合行為の場面におきまして忠実義務違反があったと言えるためには,受託者に特定の信託に係る受益者に対して不当な利益又は損害を与える目的があったことを要すると解されると先ほど御説明いたしましたのに対しまして,複数受益者間の利益相反行為の場面におきましては,受託者間に公平義務違反があったと言えるためには,受託者に故意・過失は要するものの,不当な目的までは不要であると考えているところでございます。

 

 

また,義務違反の効果について言いますと,例えば競合行為の場面におきまして,忠実義務違反の場合には,受託者が同一とはいっても,A信託に効果が帰属する第三者との行為についてB信託の受益者に取り消させるのは行き過ぎであって,このような行為は有効であると,別の信託には干渉できないと考えられるわけでございますが,公平義務違反の場合には同一信託内でございますので,受託者と第三者の行為につき第三者が悪意重過失であれば,不利益を受ける受益者が取り消すことができると考えるわけでございます。

 

 

 

このように義務違反の要件と効果が異なり得ることに加えまして,公平義務におきましては,忠実義務の他の重要な側面,すなわち,受益者と受託者間,あるいは受益者と第三者間の利益相反という局面を扱うものではないという点にかんがみましても,公平義務をもって忠実義務とは類似するものの,なお別個に内容及び効果を明らかにする規定を設けることが相当と考えるわけでございます。

 

 

 

 

以上のような理解を前提にいたしまして,提案では,本文におきまして公平義務の内容を明記するとともに,ただし書で行為の有効性にかかわる公平義務違反の免除要件を規定するものでございます。

 

 

この免除要件は,問題となる利益状況の性質上,複数信託に係る受益者間の利益相反行為の禁止の例外事由と近接するものでございますが,しかし,さきに若干述べましたとおり,異なる信託間の忠実義務違反となるためには受託者の不当な目的を要するのに対しまして,同一信託内の公平義務につきましては,公平な取扱いがあれば原則として義務違反となり,例外的に受託者に正当な理由があれば適法になると考えておりまして,このような意味で,受託者は公平義務の履行については忠実義務よりも厳格な対応を求められると考えているわけでございます。

 

 

すみれ

「不公平な取扱いがあれば、原則として義務違反てことかな。」

 

 

最後に,アステリスクの2でございますが,これは,例外要件にも当たらない公平義務違反の効果につきまして,2案提示しているものでございます。

 

その内容は,受託者と第三者間の行為につきましては,取引の安全への配慮から原則有効とする点で忠実義務の場合と異なるところはございませんし,甲案,乙案と併記してありますが,そこについても異なるところはございません。

 

異なるのは受託者と受益者間の取扱いというところでございまして,甲案というのは,同一信託の問題にとどまることから,取引の安全への配慮は不要として,無効であると,乙案では,信託外の第三者と,公平義務違反により利益を受ける方の受益者との要保護性を同視して,原則として有効であるとしている点が,甲案と乙案の違いでございます。

 

違反行為の効果の考え方も含み,以上のような点につきまして御審議をいただければと思います。

 

 

 

 

 

続きまして,少し飛びますが,第24の損失てん補責任のところと,第26の消滅時効等のところをあわせて簡単に御説明いたします。

 

第24でございますけれども,資料の43ページになりますが,これは,現行法第27条の規定する受託者の損失てん補責任等に関する提案でございます。

 

 

現行法27条の責任は,受託者に信託違反行為について故意・過失があるということ,信託違反行為と損害との間に因果関係があるということに加えまして,救済方法として,損失のてん補,すなわち,金銭賠償のほかに,信託財産の復旧,すなわち現物による原状回復が認められているということ ,しかも,これらの賠償は受益者に交付されるのではなくて,信託財産に編入されるという点において信託に特徴的なものでございます。

 

 

ポリー

「何かあって損害を受益者が回復しても、受益者じゃなくて信託財産に入るんですね。」

 

 

 

この提案では,この責任の特殊性を維持しつつ,現行法第27条の規定の整理を図ろうとするものでございます。

 

なお,本資料の第24の内容も報告書の記述とほとんど同一でありまして,第1回会議においてそのエッセンスを御説明したところでございますが,信託法上受益者等が受託者に対して追求できる基本的な救済手段として,第19の忠実義務のところでも言及したところでありますので,簡単に言及させていただくことといたします。

 

まず,提案1では,管理失当や信託の本旨に反する処分といった要件に限定することなく,およそ法令又は信託行為の定めに違反した場合には,損失の証明を要することなく,受益者等は原状回復を請求することができるといたしました。

 

ただし,信託財産の管理の不手際で物理的な毀損が生じた場合におきまして,信託財産の財産的価値はそれほど減少していないが物理的に復旧するには多大な費用がかかるなど,受託者に酷となる特別の事情が認められるときには,受益者等は原状回復請求はできないとしているところでございます。

 

ただし,この点につきましては,44ページの第2パラグラフのところ,冒頭の方に書きましたとおり,金銭賠償を原則とする我が国の損害賠償体系において,なぜ信託だけ原状回復が許容されるのか,あるいは,例えば善管注意義務違反により信託財産が毀損され,価値が100万円減少したといたしますと,補修に120万円で足りるというのであれば,120万円を負担して原状回復すべしということになるわけでございますが,仮に補修に200万円もかかる,著しく多額の費用がかかるということであると,今度は原状回復は請求できなくなって,受託者としては100万円の損失てん補でいいということになってしまうのではないか,それではバランスを欠くのではないかという指摘もございますので,この提案1の後段の規律の在り方につきましては,なお検討したいと考えております。

 

 

次に,提案の2でございますが,受益者が損失の証明をした場合には,原状回復にかえて,あるいは追加して,金銭によるてん補を請求することもできるとしたものでございます。

 

 

最後に,提案3でございますが,これは,受託者の分別管理義務違反に関しまして,その違反と損害発生との間に因果関係がある以上は,損失てん補又は原状回復の責任を免れない旨,現行法29条の内容をそのまま移記したものでございます。

 

 

最後に,第26の消滅時効についての御説明に移らせていただきます。

これは,受託者の損失てん補責任,原状回復責任,及び,認められるとすれば利益吐き出し責任に関する消滅時効期間及び除斥期間に関する提案でございます。

 

 

これは,米国の統一信託法典の1005条におきまして,受益者が受託者に対して信託違反の責任を問うための手続につきまして期間制限を設け,受益者が信託違反を発見し,又は発見し得るときから1年間,受託者の任務終了,信託の終了時から5年間と定めていることなども参考としたものでございます。

 

 

 

 

 

まず,提案の1から3は,いずれも消滅時効に関する提案でございます。

 

まず,時効期間でございますが,我が国の現行法には何ら規定がございませんが,今申しましたような受託者の責任というのは,いずれも,受託者が受益者との間で既に形成されるに至っている信認関係に違反した場合に認められるものでございますので,債務不履行の性質を基本的に有すると解されることを根拠に,一般の債権ないし債務不履行による損害賠償請求権に準じて,原則として民法167条1項により,10年間と考えるものでございます。

 

次に,時効の起算点でございますが,第24で御説明いたしましたとおり,受託者の責任につきましては受益者又は他の受託者が追及できるとしているのですが,このうち他の受託者の請求権に関しましては,客観的な受託者の信託違反行為の時をもって起算点とすることとしております。

 

 

これに対して,問題となるのは受益者の請求権の消滅時効の起算点でございまして,この点は従来より意見の異なってきたところでございますので,今回の資料では,甲案,乙案の両案併記とさせていただいております。

 

 

いずれも,消滅時効の進行開始時には受益者として指定された者が受益者となったことを知ったことを要するという点は変わりないのですが,異なるのは,受託者の信託違反行為につきまして,そのような違反行為が客観的にあればいいのか,それに加えて受益者がそれを知っていることまで要するのかという点でございます。

 

 

両案の根拠は資料に詳しく記載させていただいたところでございますが,あえて一言で言えば,甲案というのは,受益者による受託者に対する種々の監督権があるのだから,客観的な信託違反行為のときより更に起算点を遅らせるまでの必要はないと考えるものでございますが,乙案というのは,受益者による監督権があるといっても,受託者の任務違反行為を実際に認識するのは困難であり,受益者保護の観点からは,違反行為の認識をもって起算点とすべきであると考えるものでございます。

 

 

 

さらに,この点につきまして,これまでの議論を踏まえ若干付言いたしますと,ここでの消滅時効の起算点は,委任における任務違反行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点とも平仄を合わせるべきではないかと思われるわけですが,委任においてはどのように解されているのか,あるいは,受託者の受益者に対する説明義務を重視しますと,信託違反行為について虚偽の説明を繰り返していた場合には,その都度債務不履行があって,消滅時効の起算点が後ろにずれていくのだとすると,究極的には,受益者が認識するに至ったときをもって起算点となると考えるべきなのか,あるいは,米国の統一信託法典が受益者の認識をもって消滅時効の起算点としているのは果たしてどのような意義があり,参考とすべきなのか,などの点が関連してくると思われます。

 

 

 

 

 

最後に,提案4の除斥期間でございますが,消滅時効に関する甲案であれ,乙案であれ,時効の進行開始には少なくとも受益者となったことを知ったときからと解します以上は,一般の債務不履行による損害賠償請求権と異なり,除斥期間の規定を設けないときはいつまでたっても権利が消滅しないことにもなりかねません。

 

このような不都合にかんがみまして,客観的な信託違反行為のときから民法と同じく20年間の除斥期間の規定を設けることを提案するものでございます。

 

 

なお,以上申しましたように,消滅時効期間と除斥期間につきましては,それぞれ10年間,ただし営業信託であれば5年間,除斥期間を20年間とするとの提案内容でございますが,消滅時効の起算点につきまして受益者の認識を問う乙案をとった場合には,権利消滅期間をより短期間とすることもあり得ることにつきまして,50ページの(注2)というところで付言申し上げました。

 

 

番人

「民法の債権関係の改正に併せて5年、10年になるのかな。」

 

 

以上,るる説明いたしましたが,あわせまして御審議いただければと思います。よろしくお願いいたします。

 

  •  それでは,ただいま説明がありました,善管注意義務から時効のところまで,途中飛んでいるところもありますけれども,ここで御議論いただきたいと思いますが,いかがでございましょうか。

 

  •  ここの部分につきましては信託銀行にとって非常に重要なところですので,若干長くなりますけれども,御容赦願いたいと思います。

まず,第18の「善管注意義務等について」のところでございますが,ここの部分については,1から4まで検討したものがありますが,業界の方での大勢の意見は大体この方向でお願いしたいということでございますが,一部,今般の提案で改正された,「信託の本旨に従い」という部分について,内容があいまいなので,どういうところを基準に物事を考えたらいいのか分からないので,やはりこれをもとの形に戻してほしいという意見もございました。

 

 

それと,特に3の「善管注意義務の具体化」のところにつきましては,具体化してしまいますと,一つの基準ができるということでいいことなのですが,毎年見直しするわけにもいきませんので,時代の変化に応じた形で,信託の柔軟性というものが阻害されるおそれがあるということでございまして,原案どおりの一般規定だけでよいのではないかという意見でございます。

 

 

 

 

続きまして,忠実義務のところです。ここのところは,ちょっと長々と御説明させていただきます。

 

まず,総論的なところで三つ。

一つは,この忠実義務といいますのは,基本的には無過失責任なのか過失責任なのかということで,ちょっとよく分からないのですが,もしも無過失責任ということであったとすれば,過失責任という形にしていただきたいと。

 

 

これにつきましては,例えば,非常に稀有な例かもしれませんけれども,固有勘定で保有していた株券があって,それを売りましたと。

 

それで,たまたまその株券を信託勘定で買いましたと。

 

その場合につきましては,当然,無過失責任であったとすると,それは忠実義務に反する,利益相反で反する行為であるということになってしまいます。

 

これは基本的には許されていいことだと思いますし,ほかの例外のところで救われることかもしれませんけれども,そういう俎上に乗ってしまうということもありまして,現在改正が検討されております信託業法につきましても,これはいったん俎上に乗ってしまうということになっておりますので,これを過失責任ということにしていただけないかということが1点でございます。

 

 

2点目は,先ほど○○幹事の方からお話がありましたけれども,枠組みといいますか,利益相反行為と利益取得行為,これが,前回の規律でいきますと,受益者に利益・不利益が関係するかどうかということで線を引いていたわけで,私どもにとっては非常に分かりやすかったというところでございますが,今般におきましては,競合の部分が利益取得--広義の利益取得ということだと思いますが--に入ってきたということで,そこはちょっと分かりづらいなというところと,あとは,2の(1)の③と④の部分というのは,受益者と受託者間の利益相反の部分と受益者と受託者以外のものが両方とも入ってきていますので,ここはちょっと分かりにくいなということと,あと,2の(2)の②と③の関係もちょっと分かりづらいということで,ここにつきましては,反対ということではないのですけれども,ちょっと分かりづらいので,ここら辺のところの御説明か枠組みか,その辺のところをちょっと工夫していただけたらなと思います。

 

 

3点目ですが,これは忠実義務の総則の規定でございますが,これにつきましては,禁止行為の範囲というのが,先ほど○○幹事からもお話がありましたけれども,2と3以外にならないということであれば,こういう趣旨ですよということであれば,賛成ということでございます。

 

 

 

 

次に,各論に移らせていただきます。

 

まず,2の利益相反行為のところでございますが,そこの(1),受益者と受託者間の利益相反のところにつきましては,禁止の例外が7ページに書いてありますが,③で,「受益者の利益を害しないことが明らかであるとき」という規定が入っておりまして,この要件を満たす行為として,これも先ほどお話がありましたけれども,16ページで,「定型的な取引条件による取引のほか,個別的取引のうち市場価格又はそれと同等以上と評価される価格で取引を行う場合,更には,社会通念に照らして経済的な合理性が認められる取引などが含まれる」というふうな説明がなされております。

 

 

そういうことと,第三者と受益者の利益相反につきましては,これは6ページの(1)の③,④ですか,「第三者のために」という主観的要件が入っております。

 

 

ここの部分につきましては,13ページにおきまして,この要件の意味について,「受益者の利益を犠牲にして第三者の利益を図ること」であることが説明されております。ここら辺のところからいたしますと,正に実務に即した規律でございますので,是非ともこの維持をお願いしたいということでございます。

 

 

次に,(2)の複数の信託の受益者間の利益相反につきましても,アの①と②で,「特定の信託に係る受益者のために」と,これも主観的要件が入っていることと,③の信託間の競合の場合については,「不当な利益又は損害を与える目的で」という要件が入っておりますので,これも非常に実務に即した形の規律でありまして,これについても是非とも維持していただきたいということでございます。

 

 

すみれ

「受託者が証明しなくて良いってことかな。」

 

 

続きまして,3の利益取得行為のところでございますが,(1)の競合行為のところですが,これについても,「不当な利益を得る目的で,又は受益者に損害を与える目的で」というような要件が入っておりますので,この点についても是非とも維持していただきたいと考えております。

 

 

 

 

あと,(2)の狭義の利益取得の禁止のところですけれども,これは,①,②,③と書いています,この状況というのがちょっと分かりづらい,どういうようなものが該当するのか分からないなということで,丁案でないとだめだというような意見もあるわけですけれども,業界の意見の中には,私の個人的な意見もそうなのですけれども,③の信託財産に係る情報の利用について,やはりこれがポイントでして,そもそも利益取得行為としてこれが禁止されてきますと信託銀行は回らないということでございまして,この③だけは是非とも外していただきたいと考えております。

 

 

②につきましては,例14)に書いてありますように,リベートをもらうと,これはさすがにまずいのではないかな,禁止すべきではないかなと思っておりますので,これは入ってもやむを得ないのかなと。

 

 

したがって,乙案というのもやむを得ないのかなと思っております。ただし,その場合には,禁止の例外といたしまして,イの③の「受託者がその行為を行うことについて正当な理由があるとき」,これだけはどうしても入れていただきたいと考えております。

 

 

最後に,利益吐き出し責任のところでございますが,利益吐き出しのところの意見を申し上げる前に,忠実義務違反の効果として,物権的な救済について先ほどお話がありましたが,印象としては,非常に重いなというのが素直なところの心証でございます。

 

 

ただ,これについては容認するということを前提に御意見を申し上げたいと思います。

 

今般の提案でございますと,例3)に象徴的にあらわれておりますが,受託者が忠実義務違反を行って購入した信託不動産を善意の第三者の不動産と交換して,その不動産の価格が高騰した場合に,受益者はその不動産が信託財産であることを主張できるということが書いてありますけれども,更に,損失てん補責任につきまして,これは23ページでございますが,この説明で,「当該財産が信託財産であったと仮定して,受託者が当該財産を当該より「高い」価格で売却しなければ善管注意義務の違反に問われ,受託者の裁量の範囲内にあると判断されないときは,上記の利益をも「損失」として返還しなければならないものである」というふうな記載がございます。

 

 

こういうところからいきますと,利益相反行為と競合行為の違反の効果として,これ以上の救済が必要なんだろうかと。

 

例えば中間最高価格を基準に利益吐き出しとして返還するということは,受託者にとって余りにも厳しい規律になるのではないかと。

 

そもそも提案の損失のてん補だけでも非常に重くて,忠実義務違反の未然防止策としては十分ではないかというふうに考えております。

 

 

 

 

最後に,公平義務の部分につきましては,(2)の,公平義務違反のうちの受託者が受益者との間で行う行為の効果のところでございますが,甲案,乙案ということが提示されておりますが,利益相反行為の効果との平仄であるとか,利益を得た受益者と不利益を受けた受益者との間の調整が図りやすいのではないかという点から,甲案に賛成する意見が大勢を占めておりますが,一方で,善意無重過失の受益者の場合,いったん受けた利益を返還させるのはやはりちょっとバランスが悪いのではないか,実務上好ましくないのではないかと,だから乙案が整合するのだという意見も,少数意見でありますが,ありました。

とりあえず以上でございます。

 

 

  •  いろいろ全般にわたりましたので,今,すべてについて議論を深めることができるとは限りません,ちょっと後回しになる点もあるかもしれませんけれども,御意見の部分は分かりましたけれども,最初の善管注意義務について,「信託の本旨に従い」という言葉があいまいなので,もとに戻してくれという言い方をされたのですか。

 

  •  「信託契約の定めに従い」と,そういう意見もあったということでございます。

 

 

すみれ

「委任契約と同じようにっってことかな。」

 

 

  •  関連して,いかがでございましょうか。

 

  •  私は,善管注意義務のところではなくて,忠実義務のところだけで五つぐらい。

質問が幾つかあるのですけれども,第1点は,5ページ目の1の「忠実義務」のところで,ここは「信託行為の定めに従い」ということになっていますよね。善管注意義務のところでああいうふうな形で変えて,ここはこのままにしておくというのは,何か意味があるのか,ちょっと私,分かりかねて……。これが第1の質問で,今の○○委員のお話ともきっと関係があるようなことだと思います。

 

 

二つ目は,これはちょっと言葉尻かもしれませんが,この忠実義務の総論的な規定を残そうという中で,これは後の方で細かな規定が置かれるので一種の訓示規定だという言われ方をしたような気がしていて,訓示規定はないだろうと私は思うのですが。

 

 

何であれ,信託法の条文でやはりちゃんと……。訓示規定というのは,私の理解によれば,法律上の効力はない,ただの宣伝文ですので,そういう意味ではないだろうと。これは確認みたいなことです。

 

 

三つ目は,ここからがなかなか難しいところだと思うのですが,7ページ目の一番上に例外というのが三つ書いてありますね,①,②,③と。

 

 

私,ちょっと聞き落としたのかもしれないのですが,8ページ目にも例外規定というのがあって,今度は①,②と,ここで一つ足りないわけですね。

 

 

 

これは英米法においては--という,また例によって例のごとくの話になるのですが--最初の方の自己取引については①,②,信信間の取引については,8ページ目の①,②に加えて,その取引自体がフェアであるとか,定型的な取引であるとか何とかいう話になって,この例外3項と2項の関係が英米法では逆なのですが,これにやはり強烈な違和感を私は覚えるのです。

 

これはどういうことなんだろうかと。これは日本の実務を考えるとこういうことなんですよと,それに○○委員も大賛成なんだからそうなのかもしれないのだけれども,どうなんだろうかと。

 

 

 

 

 

 

私も,任意規定化するのは大賛成なのです。だから,例外を定めるのは当然のことで,硬直的な規定を定めておくのはおかしい,ここはもう大前提として恐らく全員が賛成してくださると思うのですけれども,忠実義務があってその例外を定めておくという体制は何のためなのかというと,一言で言うと,透明性なんですね,結局のところは。

 

 

だから,向こうのルールでも,忠実義務というのは本当に厳しいですよ,しかしこうすれば大丈夫ですよというのは,こうやって一見自己取引に当たるような--一見どころか,正に自己取引に当たるようなことをしているのだけれども,それは正当なことなんですよということをどこかの条文に書いてあるから大丈夫,ではなくて,事後でも,あるいは事前でも,ちゃんと受益者のところに明らかにして,私たちはちゃんと公明正大にやっていますということを示すためのルールなんですね,透明性を図るための。

 

 

だから,それがこういう形で,パターナリスティックと言えばパターナリスティックですが,こういう規定で法律の方で始末してくれると。

 

 

これが業法であれば,それはまた別の話だと私も思っているのですけれども,一般信託法の方で,こういう,透明性がなくてもいいよと,自分たちでちゃんとフェアにというか,それなりの判断なのだと思いますけれども,利益を害しないことが明らかなんだという形でやっておけば大丈夫ですよということだと,害しないことが明らかである限りは黙っていてもいいわけですから。

 

だから,そういうのはどうなんだろうかという話があって,さっきのクエスチョン3は,このバランスのとり方の2対3が3対2になっているというのをどう考えたらいいのだろうかというのが一番大きな点かと思います。

 

 

 

 

4番目です。9ページ目に,今度は利益取得行為の禁止というので,甲案,乙案,丙案,丁案と。この情報利用というのは,やはり私も難しいと思っていて,ここが一番かぎだとおっしゃる○○委員の意見と全く同じなのですけれども,上から2行目のところに,「信託事務と自らの事務との間にファイヤーウォール……」という話がありますね。

 

ちゃんとここでも指摘されていて,信託財産に係る情報を,固有部門というのか,信託銀行なら銀行部門で利用してどうのこうのというのは,結局ファイヤーウォールの存在と関係があって,つまり,こっちでなくせばファイヤーウォールはなくてもいいよという話になる。

 

 

そうなってもいいんですよということなのかどうか。

 

私の理解では,アメリカの信託銀行その他では,ファイヤーウォール,ファイヤーウォールとあれだけ厳しく言っている,日本は違うんですよということが言えるのかどうかという話と関係があるような気がいたします。

 

 

すみれ

「ファイヤーウォール?情報を別々で管理することかな。」

 

 

 

もう1点だけ,利益吐き出し責任の話なのですけれども,これもちょっと大ざっぱな話なのですが,それから,日本法ではそうじゃないんだからと言われそうな話なのですけれども,結局,英米法では,この信託というのはエクイティーで発展してきたのだと。

 

 

番人

「日本法ではそうじゃないんだから、っていうことじゃなくて。うーん、何て言えばいいんだろ。」

 

 

そのエクイティーというのはどういうものかというと,裁判所が相当の裁量権を持っているのですね。

 

だから救済のところも非常に裁量が広くて,個々のケースごとで,損害賠償で中間最高価格ということもあれば,そうでないこともあるし,差止めを認めたり,利益の吐き出しということでガーンとやる場合もあるし,利益の吐き出しまではいいですよという場合もある。

 

日本の場合は裁判所が慎重で,とにかく何かの法律の条文がないと自分たちはそんな救済のところを--裁判所だから救済のところは頑張ればいいと私なんかは思うのですが,とにかくそれは簡単にはいかないんですよという話にやはりなるのだろうと思うのです。

 

 

それで,この甲案であれ,乙案であれというか,私は甲案の方がいいと思いますけれども,こういうようなこともできるんですよというメッセージを裁判所に送るということが必要なのではないかと思うのです。

 

 

これでないといけないということではなくて,裁判所というのは,やはり個々具体的な事件を相手にしてきちっとしたことをやってくださるところなので,そのときに,ああ,ここまではやれるという,これをやらないといけないという意味に解釈する必要はないわけだから,そういう意味で,救済のバラエティーを広げてあげようと,もちろん少なくとも信託のところはということですけれども,そういう話に持っていけないんだろうかなというのが,私の感触です。

 

 

 

 

 

 

 

  •  今,お二人の御意見の中に,単なる御意見にとどまらず,質問もございましたので,幾つか,○○幹事の方からお願いします。

 

  •  まず,「信託行為の定めに従い」がいいのか,「信託の本旨に従い」がいいのかというのは,我々としては,書いてないものでも膨らんで,信義則的な義務を負うのがいいのではないかということで,「信託の本旨」という文言を改めて使ったというところで,○○委員の御発言も,特に反対というよりは,そういう意見もあったということで承らせていただくということにとどめたいと思います。

 

 

それから,無過失責任か過失責任かというところにつきましては,実はまだこちらで十分考えていたわけではなかったのですが,ただ,その効果が例えば損失てん補責任とかになってくるのであれば,これはさすがに過失責任だという気はするのですが,行為の有効・無効にかかわるときというのは,過失がなくても,やはり自己取引が違法であれば無効になるんじゃないかなという気がいたしますので,効果の関係で過失責任かどうかというのが決まってくるのではないかなという気がいたしますが,その辺りは御専門の方々からまた御指摘をいただければというふうに思っております。

 

 

ポリー

「なるほど。効果の関係で責任も決まるって考えるんですね。」

 

 

それから,2の(2)の②と③の関係が分かりにくいという御指摘がありましたが,8ページで言いますと3の(1)というところで,いわゆる機会奪取行為,信託財産の機会を固有財産で奪取する行為という競合行為を抜き出した関係で,それと似たような状況になるということで,7ページの(2)の③で複数の信託がある場合の権限競合の場合も抜き出したという,言ってみれば,3の(1)と平仄を合わせて抜いているという感じでございます。

 

 

 

 

ただ,御指摘のように,②と③の関係というのは若干限界が不明確でございまして,考えによっては,③は②の一部分だというふうにも考えられるところでございますので,もしもあえて規定が要らないということになるのであれば,またそこは整理したいと思っておりますが,一応,3の(1)を抜いた関係で引っ張り出しているのですということが我々の考えでございます。

 

 

それから,9ページの①から③の関係が分からないとおっしゃいましたが,例えば,①は,美術品を勝手に展示したような場合で,②は,おっしゃったようにリベートをもらったような場合,③は,確かにちょっと分かりにくいのですが,競合行為には当たらないけれども情報を利用した場合というようなことでございまして,そのように御理解いただければと思います。

 

御意見は,乙案ならいいけれども甲案は勘弁してほしいという御趣旨と思われますので,そのように理解させていただきます。

 

 

 

すみれ

「勘弁してほしいこともあるんだ。」

 

 

 

それから,○○委員の方の御指摘でございますけれども,まず,「信託行為の定めに従い」は意味があるか,何で「信託の本旨に従い」ではないのだというところですが,そこは,実はまだ忠実義務の方までは十分検討ができていなくて,善管注意義務の方が「信託の本旨に従い」でいいということで固まりましたら,忠実義務の方も考えてみたいと考えているところでございます。

 

 

それから,訓示規定はないだろうということでございますが,我々の理解でございますけれども,一応違反行為ということで(2),(3)の場合で全部尽くしていて,これは一種の行為規範という意味にとどめるのではないか,もしもこれが効果に及ぶとすると,免除規定のようなものも設けてこなくてはいけなくなるのではないかという整理でございます。

 

 

しかしそこはおかしいのではないかという御指摘をなお敷えんしてお伺いできれば,例えばどういう意味を持たせたらいいのかという点などを教えていただければと思うところでございます。

 

 

それから,例外規定が平仄が合っていないのではないかという御指摘でございますが,事務当局と致しましては,7ページの,信託行為の定めと,受益者の承認と,受益者の利益を害しないというこの三つが原則例外規定と考えているのです。

 

 

ただ,例えば,6ページにございますように,③と④というのは,これは目的要件がそもそも違法となるところで入っておりまして,第三者等の利益を図っていながら受益者の利益を害しないということはないのではないかということで,御覧のように,7ページの③のところで,(ア③又は④の場合は除く)となっております。

 

 

それから,(2)におきましては,①から③すべて,「特定の信託に係る受益者のために」というような目的要件が入っておりますので,こういう目的を満たして初めて違法になってきますので,そのようなものが,今度は受益者の利益を害しないということで例外的に不適用になるということはないのではないかということで,例外を①,②だけにとどめているということでございます。

 

 

つまり,受益者の利益を害するというのを目的要件にして原則の方に持ってくるのか,それとも,そういう目的要件というのはかけずに,例外の方で適法としていくのかという位置づけの違いでございまして,特に(1)の場合よりも(2)の場合の方が責任が軽いと考えているわけではなくて,むしろ同じように考えているというように御理解をいただければと思います。

 

ただ,あえて言いますと,(1)の①,②よりは,③,④ないし(2)の場合の方が,目的要件がないと違法にならないという意味では違法になる条件が厳しい,受託者にとってはそれだけ,目的がなければ違法にはそもそもならないというメリットというか,そういう効果の違いが出てくると考えているところでございます。

 

 

とりあえず,以上でございますが,なお不足がありましたら,御指摘いただければと思います。

 

 

 

 

 

 

  •  お二人,よろしいですか,今ので。

 

  •  信信間の取引で,目的規定を入れているのですね。これも本当は異例なことですね,多分。

 

まあ,別に異例であるから悪いということはないのかもしれないのだけれども,信信間の取引で,もしも自分が市場を読み違えたというような話になると,それは善管注意義務の方でやろうというお考えですか,そうすると。

 

どっちかを利するためなんていう目的は全然ない,しかし後から考えると本当にひどい取引だったねというのは,善管注意義務違反でいこうということですか。

 

  •  そうなります。

 

  •  事柄をそんなに複雑にすることはないと私は思うのですけれども。

 

  •  善管注意義務違反の問題は,また別途,忠実義務の問題といわば同時にといいますか,忠実義務で救われないものが善管注意義務違反になるということはあり得るわけですよね。

 

それを目的としているというわけではないけれども。目的ではないという意味は,受益者のためにという主観的な要件というのでしょうか,あるいは意図というものを要件として加えている……。

 

 

  •  利益相反のところで意図を入れるのというのは,一般的にどうなんでしょうか。

 

 

  •  信信間の。

 

  •  利益相反というのは,いわば形式犯的な,そういうところへ身を置くのがいかんという話でルールができているのかと私は思っているのですけれども,身を置いただけではなくて,悪い意図があるのだということになると,利益相反というものの本質が相当に狭まるという感じがしますけれども。

 

  •  恐らくそれも一つあり得る考え方なのでしょうけれども,信託財産と信託財産の間の取引というのは,受託者と信託財産の取引ほど悪性が強いわけではない,あるいは危険性が強いわけではない。

 

また,信託財産と信託財産の間の取引というのは,これは人によって評価が違うかもしれませんけれども,比較的多くあり得ると。

 

  •  だから,英米では,フェア・ディールであればいいよという形で外しているのですけれども。

 

 

番人

「フェアディールって主観的要件が入っているのかな。入っていないってことかな。」

 

 

 

  •  やっているところは同じなんだと思いますけれどね。

 

  •  違った外し方をしようというわけですか。

 

  •  先ほど○○幹事から答えがあったところについて,よろしいですか,○○委員,とりあえず。

そうしたら,ほかの御意見を伺いたいと思いますけれども。

 

  •  実は,発言しようと思ったことは今の○○委員と○○委員の間で話が出てしまったのですが,同じ話でございまして,2点,確認したいのですが。

 

まず,6ページの,「第三者との間において,当該第三者のために,受益者の利益と当該第三者の利益とが相反する行為」というものが禁止されているということなのですが,これは,先ほども御確認がありましたように,主観的意図がなくても第三者の利益を図ることになってしまったということで,善管注意義務違反にはなり得るということは是非確認しておきたいと思うわけでありまして,どうも○○委員の御発言を聞くと,第三者のために図っていなければもうこれは大丈夫なんだというふうな御理解のもとに,信託の業界がこれでいいとおっしゃったというふうに聞こえましたものですから,そんなことはないだろうということを是非確認しておきたいと思います。

 

 

 

 

 

次に,先ほど○○委員がおっしゃった,信信間の取引の場合にそういう主観的意図を入れるのはどういう意味があるのだということなのですが,私もこれは非常に違和感があるわけでありまして,それは結局,信信間の取引というものを全く特殊な扱いをしていない,第三者との間の取引と同じに扱うということにほかならないのではないかという気がするのです。

 

 

そして,これを利益相反の中に入れるというのは,これはおかしいのであって,今の民法的な枠組みで言えば代理権の濫用と言われているものの範囲でありまして,決して利益相反の話ではないわけですよね。

 

そうなりますと,形式的な意味では利益相反の話ではないわけでありまして,そうしますと,信信間に関しては形式的な意味の利益相反ではなくて,濫用の場合だけを制約するというか制限するというふうになってしまっていて,これは少しおかしいんじゃないかなという気がします。

それだけの話で,出た話で恐縮でして,申し訳ございませんでした。

 

 

 

 

 

  •  第18の善管注意義務,第19の忠実義務について,全般的に実務の立場から申し上げたいと思います。

 

まず,これは前回も申し上げたかもしれませんけれども,そもそも受託者の義務を議論する場合には,もちろん公正・公平的な取扱いを求めるということもありますけれども,やはり自由な経済行為を維持するためにデフォルト・ルールを推進していきたいということと,もう一つは,受託者として,こういう信託のプラットフォームを提供している者として,やはり過度な規制とか責任を課す場合にかえって萎縮効果を及ぼすことになって,信託の発展に寄与しないということもありますものですから,そこら辺のバランスをよく考える必要があると思います。

 

 

 

 

 

そこで,私の属している組織は信託も受託もやっておりますし,また信託をユーザーとして使っている場合もございますので,そういうバランスをどう図ったらいいのかということをつらつら考えたところで,以下のコメントをしたいと思います。

 

第18の善管注意義務でございますけれども,これは1点ですが,これは前回もどこかで議論が出たと思うのですけれども,デフォルト・ルールでやるということでございますが,どこまで信託行為に規制を書けばどこまでデフォルトになるのか,無限定なのかどうかということです。

 

 

 

極端な話,全く善管注意義務を負わないものとするという定款を書いた場合に,これが有効なのか,また,そもそも--これは信託の定義というところにつながるのかもしれませんけれども--それが信託なのかどうかということです。

 

 

もちろん,実務の立場から,特に商業信託の場合にはそういうデフォルト・ルールも認められるのではないかなということも思っておりますけれども,そこをどう整理されるのかというのを是非確認したいところでございます。

 

また,規定の仕方が,例えば善管注意義務ではなく,全般的に自己の同一の注意義務を負うものとするというような考え方もありますし,そういったいろいろなバリエーションがどこまで認められるのか,またどういうふうに記載すればいいのか,これは通常の契約の解釈のルールに従うのか,例えば信義則であるとかそういうルールに従うということだけ考えればいいのか,やはり信託独自の解釈ルールというのがあり得るのかどうかということも議論すべきではないのかなと思っています。

 

 

すみれ

「それだと義務はない方が良いような気もする。」

 

 

 

第19の忠実義務に関してでございますけれども,これも幾つかございます。

 

まず,総論でございますけれども,第1に立てつけの話なのですが,前回の報告書と比べて大分細分化されたものに思えます。

 

これは議論のきっかけとしていろいろな事象を分解して整理していくということは非常にいいことだと思うのですけれども,実際の立法にあっては,やはり法律のユーザーからして分かりやすいものにしなければならないと思いますものですから,そこをどうしていくのかということがあります。

 

抽象的に同じものであるのであれば,一つにまとめて簡潔なものということも一つ,テクニカルな話は立法として考える必要があるのではないかと思います。

 

2番目は,これは善管注意義務と同じ話でありまして,忠実義務の禁止の例外として信託行為に書いてある,許容されているということがありますが,これも同様に全く忠実義務は免除されるものとするというふうに書いた場合に,それが一体どうなるのかどうかということも議論する必要があると思います。

 

 

 

3番目に,これはちょっとここの議論ではないのですけれども,現在,国会で審議されている信託業法の関係で,その信託業法の附則のところにも書いてありますように,業法自体は3年で見直すということもありますし,また金融審での中間報告もありまして,結局,この法律の結果が信託業法の見直しということにも関係するものですから,そこら辺の平仄も一応見通しながら考える必要があると思います。

 

 

 

すみれ

「今までの信託法が利用しにくかったのかな。」

 

 

 

次に,個別の話を申し上げたいと思いますけれども,大きく分けて三つです。

 

一つは,競合行為の禁止というところで,8ページの3の(1)というところでございます。

 

これは,前回ちょっと私が申し上げたところでもありますけれども,ファイヤーウォールとかプロラタ回収とかいうことについてどうなのかということでございます。

 

まず,ファイヤーウォールに関しては,先ほど○○委員の方からもお話が出ましたけれども,そこが実際,実務としてはなかなか難しいのではないかなというふうに私は思っておりまして,もちろん,銀行実務であるとか信託実務においてそういうファイヤーウォールというものが実際に難しいということもありますけれども,もう一つは,やはり受託者としての善管注意義務の観点から,固有勘定の情報を集めなければならないというようなこともありまして,そうした場合に,かえってファイヤーウォールを置くことが善管注意義務の観点からどうなのかということがあり得るということを指摘したいと思っております。

 

 

もちろん,概念的には,一方的なファイヤーウォール,つまり,固有勘定から信託勘定だけの情報の流入は認める,逆は認めないというようなこともあり得るかもしれませんけれども,ただ,実務においてはそういうことというのはなかなか難しいというふうに思っております。

 

 

また,ファイヤーウォールを作る結果,同じ話をしますけれども,結局,受託者として利用できるような情報が活用できないということになれば,かえって受益者の利益にそぐわないことが出てくるということでございます。

 

 

 

 

例えば,今も大宗はそうですけれども,なぜ信託銀行というところに頼むのかというと,銀行全体としてのネットワークとか情報とかそういったものを期待して,それを信任の一つの契機として依頼するということもあるわけですから,単なる受託者というところの一部門だけに依頼して,そこがファイヤーウォールで囲まれているということは,やはり受益者の意思にはそぐわないのではないかなというふうに思っております。

 

 

プロラタに関しましては,これは報告書の18ページに書いてございますけれども,これも前回申し上げたかもしれませんが,18ページの第1パラグラフでございますが,固有勘定,信託勘定から両方貸出しした場合に,同条件で失期したときにどうなるかということについて,ここでは,受託者が固有財産に属する債権を優先的に回収することは云々というのが書いてございますが,ここはプロラタ回収ということは認められるのではないかということを確認したいと思っております。

 

 

 

次の論点,二つ目としまして,9ページの狭義の利益取得行為を述べさせていただきます。

 

ここも○○委員の御発言がありましたけれども,甲案,乙案,丙案,丁案と並べられておりますが,やはり③,「信託財産に係る情報を利用して利益を取得する行為」ということについては強く反対したいと思っています。

 

 

やはり情報というのは非常に定義しづらいことがございますし,そういうものを規制しておくのはいかがかということもございます。

 

それから,今さっき申し上げたことと同じ話なのですけれども,基本的に情報ノウハウというのは非常に流通しやすいというものもありますので,例えば,信託勘定を行って得た情報について,いろいろな銀行の場合,例えば国債に投資をして,その投資をした結果いろいろなマーケット動向を知り得るということもあると思うのですけれども,そうした場合に,そういうノウハウを銀行全体として使ったらいけないのか,もしそうした場合に全部利益を吐き出さなければならないのかということになりますと,非常に漠然とした規制にかかるというふうに思っております。

 

 

また,そういう情報というのは一つのエクスパティーズということもあるとすれば,むしろ受託者としての権能というか能力を使ったという,固有財産としてのエクスパティーを使っていくこともあり得ますものですから,そこを利益取得禁止ということで画するのはいかがかというふうに思っております。

 

 

すみれ

「エクスパティーズ?」

 

 

最後に,3番目として,利益吐き出しルールについて述べたいと思います。

 

ここは今回初めて論点として取り上げられるというふうに思っておりますけれども,前回もちょっと議論は出ていたと思いますが,そういう意味では,ちょっと素朴な疑問から提起したいと思うのですけれども,なぜこういうルールが必要なのかというところがよく分からないというのが実感でございます。

 

なぜ委任とか取締役とかそういうルールと違う--もちろん,いろいろ考え方はあると思いますけれども,そういうルールをここであえて置くのかと。

 

この説明文においては,所有権を有するということで,そういう委任とかいうものとは違うものを置くのが適当だという趣旨が書いてあると思いますけれども,その所有権ということ自体が,じゃあ果たしてこういうルールを置く理由になり得るのかどうかという話でございます。

 

 

 

 

 

また,経済的な話をしますと,こういう重いルールをした場合に,受託者に対して萎縮効果を及ぼすことによってかえって信託の利用が阻害されるということも繰り返し述べさせていただきたいと思います。

 

それから,その最後のところでちょっと確認したいところですけれども,甲案,乙案ということが出ております。

 

この点については,今のところ,私はどちらかというのは意見を決めかねているところでございますけれども,甲案というのは,これは補てんする請求額の上限がもう決まっているということなのかどうかということです。

 

つまり,利益金というのが,これもいろいろ議論が出てくると思っていますけれども,結局これは,実際に得た利益ということが吐き出しの対象となっているのか,それとも,同じく中間最高価格ということも含めて利益ということを考えていて,よって,ある意味,甲案と乙案は,上限ということについて言えば同じなのかどうか,どちらなのかどうかということを質問させていただきたいと思います。

 

ちょっと長くなって恐縮ですけれども,以上でございます。

 

 

 

  •  幾つか新しい論点も出てきましたけれども,ちょっと整理しましょうか。

 

 

 

 

 

 

  •  では,順次お答えしていきたいと思います。

まず,最後の点,甲案,乙案の違いということでございますが,正に利益吐き出し責任の利益は何か,中間最高価格なのか,あるいは現実に得た利得に限るのかというところも議論していただきたいというところでございます。

 

 

ただ,甲案,乙案の違いといいますのは,要するに,受託者から反証の機会がないのが甲案,受託者からの反証の機会があるのが乙案ということになります。

 

先ほどもちょっと言いましたが,いわゆる狭義の利益取得行為禁止を認めていながら利益吐き出し責任がないときは,損失が受益者にないわけですので,例えば信託財産の処理に当たって利益を取得しても吐き出さなくてよくなったらどうするのかなという,行為規範だけを定めたことになってしまうのではないかというのが……,別にどちらの立場に立っているわけでもないのですが,甲案によらないと意味がないのではないかという気がしているところは付言させていただきます。

 

 

 

 

 

次に,免除することも可能なのかどうかというお話がありましたけれども,忠実義務とか善管注意義務ですね,これは確かに報告書では若干指摘させていただきましたが,結局,免除するというのが果たしてどういう意味なのかというのにもかかってくるのではないかと思います。

 

 

例えば,忠実義務も善管注意義務もないというものであれば,これは単なる所有権移転であって,もはや信託ではないのではないかという気がいたしますし,自己と同一の注意義務でいいというのは,結局それは重過失を免除するというようなものでございますので,そういうものであれば,信託行為に定めていればいいのではないかなという気はいたします。

 

 

結局,全部免除するというのは信託ではないという気がいたしますが,それ以上にどこまでが禁止されるかというのは,やはりあとはもう公序良俗とかの判断によるのではないかなというふうな感じがしております。

 

 

それから,プロラタ回収は認められるのではないかというお話がございまして,これはここのペーパーでは書いていなくて,事務局の中で議論したにとどまるわけでございますが,確かに,取った分を全部固有財産が取るというのは,これは明らかに違法でございますが,プロラタだったらいいのではないかなという気がいたしております。

 

 

ただ,これは従来から問題になっているところでございますので,もし何か御指摘があれば,是非いただければと思います。

 

 

 

 

それから,委任と違って何故利益吐き出し責任を設けるのかという点は,さっき言いましたように,利益吐き出しは,損失てん補ではとらえきれない損失がない場合の問題ですとか,反証の問題ですとか,あるいは,この点は報告書にも書いてありますことで,○○委員からも御指摘のあった,名義を移転するということの違いというようなことから,こういう規定を設ける意義はあるのかなということでございまして,ただ,これは事務局が甲案支持というわけでもなくて,正にどうすべきかというのをここの場で御議論いただければという趣旨でございます。

 

私からは,とりあえず以上でございます。

 

 

 

 

 

  •  1点だけ。

 

 

5ページの,これも先ほど○○委員が御指摘になられた点なのですが,忠実義務の話は以下に尽きているので,最初に1のことを置いても,一応それは置いたというだけであって,2以降に尽きているというふうな御理解であるというふうに○○幹事の方からお返事があったような気がするのですけれども,そうなりますと,例えば9ページの今現在問題となっております情報というものに関して,乙案をとって,情報を利用して利益を取得する行為というものが乗らなくなりますと,これはもう情報利用は完璧に自由であって,どんな場合も忠実義務違反にならないということになるのでしょうか。

 

 

  •  忠実義務違反ということはないということになります。

 

  •  それは本当にそういう解釈になるんでしょうかね,仮にこういうふうな形の条文ができた場合。

 

つまり,今,情報をここに乗せるということに対しては実務の委員の方から批判が出ているわけですけれども,仮にこれを切ったら……。

 

確かに,おっしゃられるような御説明を伺うと,全部どんな情報も使ってはいけないというふうにしたら身動きがとれなくなるだろうということはよく分かるわけですが,じゃあ信託財産の負担で取得した情報というものを自由に固有の商売に使うことができるのかというと,それはやはりだめだという場合ももちろんあるわけであって,じゃあそれは善管注意義務違反なのかというと,そうではなくて,それはやはり,ひどい場合は5ページの1の忠実義務違反にはなることがあるというふうに考えるべきではないだろうかと思うのですが。

 

 

したがって,○○委員と同じように,一応単なる導入文句というふうに考えるのは妥当ではないような気がいたしますが。

 

 

 

 

  •  今のように,9ページのところの乙案などをとって,しかし情報の利用については一定の制約があるべきだという立場をとれば,忠実義務の一般原則といいますか総則が生きてくるわけですよね。

 

そういう形ももちろんあり得ると思います。先ほど幾つかの発言で,情報の利用については自由であるべきだというのは,ファイヤーウォールさえ要らないという意見もちょっとあったような気がしたので,それはもっと積極的に,およそ忠実義務違反にならないという主張も含んでいるような気がしました。だけど,これはどっちがいいかという問題ですね。

 

 

  •  およそ忠実義務違反にならないという御意見であるならば,積極的に反対したいと思います。

 

 

  •  今の御指摘のところにつきましては,一切だめということではなくて,情報の利用の仕方によってはもちろん競業行為に当たるというような場合もあると思いますので,そういう場合に当たるときにそういう情報を利用して行えば,これは忠実義務違反ということになりますので,情報の利用がすべて許容されるかというと,利用の仕方によっては,もちろん,ほかの規律にかかって忠実義務違反ということにはなると思います。

 

ただ,情報の利用の全てを捕捉するということには,御指摘のように,ならないというふうにはなります。

 

 

  •  直接受益者に損害を与えない,そして情報を利用する方の受託者の利益になるというタイプが問題になるわけですよね。損害を与えるタイプは,ほかの方でもってとらえることができるから。

 

まあ,ここは一つ大きな,忠実義務というものについての考え方ですけれども,特に具体的には,情報についてどういう規制があるべきかという,いわば根本のところを議論するということですね。

 

 

 

 

  •  ここは,○○幹事のお話では,そういう競業禁止義務違反とかに当たる情報の利用形態は違法という前提をとっても,なお,やはり情報禁止を外すというのは積極的に反対という御見解でしょうか。

 

 

  •  いえ,そういうつもりではございません。

 

  •  それでは,ほかで禁止されるなら,まだ……。

 

  •  はい。しかし,そのためには,今現在飾り文句と言われている5ページの1というものにある程度積極的な位置づけを与えておくということが必要なのではないかというだけでございます。

 

  •  ほかにいかがでしょうか。

 

  •  今の論点だけではないのですけれども,主として受益者の立場からの発言ということで。

まず,善管注意義務違反の方の関係ですが,これは,「信託行為に別段の定めがない限り」というのを明文で入れるという案ですけれども,善管注意義務違反については,これが任意規定であることは現在の解釈でも同じだと思いますので,あえてこのような言葉を入れると,何か信託行為の別段の定めが増えるのではないかというような懸念がありますけれども。受益権を細分化して大勢に販売するような商品の受益者の立場から考えると,先ほどから話に出ていましたような,全く善管注意義務違反を負わないとか,かなり極端なことが書かれていても,なかなかそういうのに気づかないまま受益権を買ってしまうような個人というのは現実にはたくさん世の中にいるということもあって,こういう表現をあえて入れた方がいいのかどうかという,その辺のいきさつやら動機やら,その辺をちょっと伺いたい。

 

 

 

 

 

それから,善管注意義務の個別化の話ですが,報告書の方に書いてありますUTCの例のように,信託の種類によっては,分散投資とかそういう個別化がされていた方が,これは受益者の立場からすれば,法律上の義務としてそうなっているということで安心なのですが,結論としては,そういう具体的な規定を設けるのは限界があるというようなまとめ方をされて,ここではこういう個別化は入れないという結論になっていますけれども,そうすると,日本の信託に関する法体系の中でこういう善管注意義務の個別化というのはどの法律にもないままの状態で,ずっとそれでいいという,そこまでお考えになった上でのこの結論なのかどうかということですね。

 

別にこの法律ではなくても,どこかにあった方がいいと,そういう考えです。

 

 

 

 

それから,忠実義務の関係では,第1項のこの総論規定は,これは当然入れる必要がある規定だと思います。

 

これは,これ以下の2,3,4ですべてあらわされているというもので,今考えたらこの2,3,4しかないかもしれないけれども,やはり,こういうふうに事前に考えることより現実の方が複雑ですから,こういう一般的な規定は効力のあるものとして入れることは不可欠であると考えます。

 

 

特に,実際の紛争の場面で,忠実義務違反であるから損害賠償せよというような請求ができる余地が残っているというのは大変重要なことです。実際の紛争は,本当に形に当てはまらないものがたくさん出てくることは常にあるということです。

 

 

すみれ

「たしかに。請求できる余地があるから紛争にならないって方向で進むといいな。」

 

 

それから,情報利用の話ですけれども,情報利用について,これは余り具体的なイメージがないので,情報を利用して,それで結果的に信託財産を毀損するという場合は幾らでもあると思いますから,そういうのが外れるということになりますと,情報利用による利益の問題というのは難しい部分があるかと思いますが,外形的なもの,特に忠実義務違反のところでは,受益者の立場からすれば,外形的に利益が相反するような形になっているかどうか,そこから判断するということになりますので,先ほどの主観的な要件を入れるかどうかということとも関連しますけれども,外形的な形で判断できて,かつ外形的に利益相反の形になっているけれども,こういう事情でこれはやりますよ,害は与えませんからということで納得できるような形がある場合にこれをそのままやれるという形にしてもらった方が,受益者としてははるかにいい制度であるというふうに考えます。

 

 

ポリー

「なるほど。受益者は外形で判断して受託者に聞いて、受託者はこういう事情ですって説明した良いのですね。」

 

 

 

  •  善管注意義務に関しては,この草案全体そうですけれども,デフォルト・ルールと強行規定というのは一応明確にしようということで,デフォルト・ルールで別段の定めを許すものについてはそういうことを明記するという方針のもとで書いてあるというだけで,特別により広く別段の定めの範囲を認めようとか,そういう意図は特にありません。これは1点,私の方から,簡単なことですけれども。

 

 

 

あと幾つかは内容にかかわる問題ですけれども,これはどうでしょうか。

  •  個別規定の要否という点ですけれども,確かに米国統一信託法典にはそのような規律があり,設ける方がいいという御意見もあるにはあったのですが,なかなか切り出しが難しいということですとか,将来的に,ここに書いてあるとおりですが,信託が発展したときにその足かせになりかねないのではないかということで,一般的な善管注意義務の規定の解釈にゆだねているというところでございます。

 

 

それで,ほかの法律のところまでは意識しているというわけではなくて,恐らく善管注意義務の内容を個別に書いた法律というのが,私の知る限り,日本の法律では思い当たらないのでございますが,もしそういう法律が出てくれば,それは解釈上の参考にはなると思うのですが,ほかの法律を見た上で我々の法律はなくてもいいというふうな判断をしたわけではなくて,あくまで個別の規定を設けることが現実的には難しいですし,そういう必要もないのではないかという判断でこうしているというところでございます。

 

 

 

 

 

 

  •  まあ,やはり忠実義務の一般的規定があった方がいいという話と,情報利用ですね。

 

 

  •  そこについてはちょっと今の段階で結論は出ませんので,第1項の必要性,何人かの委員の先生方から御指摘がありましたが,その点,位置づけなども踏まえて検討したいと思います。

 

 

  •  今,情報の利用の関係がずっと議論されていますので,私も一言だけ申し上げておきたいのですけれども。

 

 

原則として,情報の利用については,先ほど○○委員からありましたように,利用するということについては基本的には賛成といいますか,やむを得ないのかなというところは当然あるのですけれども,しかしながら,20ページの(注6)のところに書いてございますけれども,例えば債権の流動化等であれば,信託している債権についての内容のレポーティング等,非公知の情報を提供するというようなことも現実にあるわけですね。

 

 

したがいまして,やはりすべてが禁止というのは確かにおかしいところがございますので,そういうような特殊な情報,特にここに書いてございます非公知情報,こういったものについてはやはり禁止という形をやらないと,利益を得たかどうかということとはまた別な法益があると思いますので,そのあたりは是非とも今の御検討の中に入れていただけたらと思います。

 

 

 

  •  おっしゃるとおり,信託の情報を利用してはいけないというときに,どういう情報を利用してはいけないのかということについての限定というのですかね,それは必要なことですね。正にこの20ページの(注6)に書いてあることですけれども。

 

 

 

 

  •  信託におきます善管注意義務とか忠実義務というのは,受託者に課せられる非常に重要な義務だと思うのですね。

 

 

例えば会社と比較しますと,代表取締役の行為は取締役会で他の取締役が監督できるとか,株主総会があるとかという,ある種の監視機能が入ると思うのですけれども,信託の場合は,受託者の行為に対する常設的な監視機能は恐らくないのではないかと思いますし,それから,この注にも出てきますように,物権的な権利が受託者にぽこっと移転している形をとっていますから,受託者に依存する度合いというのは非常に高いといいますか,そこに信頼を置いてやる度合いが高いと。

 

 

その裏返しで,極めて高度な善管注意義務とか忠実義務を要求されるというのは,一般的な組み立てとしてはしようがないというか,必要なんじゃないかなというふうに思います。

 

その結果,この忠実義務のところに書かれていますことも,見方によっては厳しいという感じもするのですけれども,こういうものが要求されてくるというのは仕方ないと思いますし,利益の吐き出しというものも,どの程度が妥当かという御議論はあるかもしれませんけれども,やはりこういうものが出てくるというのも仕方ないのじゃないかなというふうに思います。

 

 

 

 

それから,先ほど,9ページの(2)の利益取得行為の禁止のところで,情報の問題というのが御指摘がありまして,確かに情報というのは難しいことはあれなのですけれども,やはりこれも,一般的な議論としては,まず忠実義務等々で課せられている義務,法律上の義務はがちっとかけると。

 

 

それを何とか逃れるというか,緩和するためには,信託行為の中で具体的に明記して,委託者,受益者がはっきり分かるという形で明記するような形で緩和措置をとっていくというような形に組み立てざるを得ないのではないかなというふうに思います。

 

 

  •  非常に重要な御指摘が幾つもあったと思いますけれども,いろいろなところで,委任と信託との比較というのが出てくるのですけれども,決定的に違うのは,やはり委任というのは基本的には委任者が受任者を監督するという立場になっていて,信託はそういう関係になっていないというのが非常に大きな違いですね。

 

そこからすべての結論が出てくるわけではありませんけれども,そういう違いを考えながらこの問題も考えたいということですけれども。

 

 

 

 

 

 

  •  私も,その情報利用の問題もこの中で非常に重要で,忠実義務のところですが,7ページ目の①,②,③の③ですね,結局のところ。

 

 

忠実義務一般のところで,自己取引ですらいいよと,受益者の利益を害しないということが明らかなんだからというのは,私は,実務的なセンスとしては当然のようなことだと思うのです。

 

 

しかし,これを入れるのは極めてユニークなことなのだということだけは確認しておかないといけないですね。

 

 

これは英米では認められていない,とにかくフェアだというだけで自己取引を認めますよという話はないので,やはりそれはよほど注意をする必要がある。

 

 

しかし,大勢はどうも,大声でこれが大事ですよと言っている人はもしかして私一人だという孤独感みたいなのはありますが,せめてこれはちょっと検討してもらいたいのですが。

 

 

すみれ

「わー。大変だね。」

 

 

何度も言うように,これを堂々とやるのだったら全然何の問題もないという話でやっているわけですよね。だから堂々とやればいいと思うのです。

 

 

そのためには,もしこういう形のものを入れるのであれば,後で少なくとも情報提供義務の中に,こういう形の一見自己取引に当たるようなことはやりましたが,これは受益者の利益を害しないと,こういうきちっとした市場取引であれ,定型取引であれ,何であれと,そういう形でとにかく情報だけは提供する,透明性だけはちゃんと確保しますよと,事後的であれ,そういう話で持ってきてくれると,私もアメリカ人に説明できる。

 

 

まあ,アメリカ人に説明なんかしなくていいよというのかもしれないのですけれども,日本だけはとにかく実務はこれでやってるんですからというのだけで押し通すというのは,やはり私は本当は抵抗があるのです。だから,何かプラスアルファの一つの可能性は,情報提供義務の中には,事後的であれ何であれ,やはり入れておくと。私個人としては,最大限の妥協みたいな話なのですけれども。

 

 

すみれ

「アメリカの人や他の国の人に説明するのも必要だしね。」

 

 

 

  •  この③のところの,免責といいますか禁止の例外の部分というのは一定程度必要な場合が確かにあるということは多くの人たちが承認しているのですけれども,ただ,その範囲がちょっと明確ではないというのが一つ問題だし,それから,今,○○委員が言われたように,それをやるのであれば,何らかの形で明確に情報として残されているべきだと。ちょうどこの②の「重要な事実を開示して」と,これは事前の情報ですけれども,これと似たような機能を果たさせるということですね。

勝手なことを言ったけれども,今のでいいですか。

 

  •  いえ,御指摘は重要な点かと思いますので,その点は説明ができるような形でどうするか検討したいと思います。

 

  •  それでは,まだ御意見があるかもしれませんが,ここでちょっと休憩して,また休憩の後,御意見があれば承って,先に進むという形をとりたいと思います。

それでは,休憩いたします。

 

(休     憩)

 

  •  再開いたします。

今の前半の説明の部分で,なおまだ御意見がおありの方はどうぞお願いいたします。

 

  •  1点だけ補足させていただければと思います。

一番最初の御質問との関係で,忠実義務というのは過失責任かというようなお話があって,損失補てん等はともかくとして,行為の有効・無効に関しては過失じゃなかろうかなというようなお答えをされたと思うのですけれども,有効・無効についてはまずそれで結構だとして,損失のてん補,あるいは原状回復,利益の吐き出しについてどうかという点だけ,ちょっともう一度お考えいただけないかなというのがありまして。

 

それは,後ろの方の時効との関係で,債務不履行責任類似のものとしてとらえるというような御発想があるのかなと思うのですが,そういう側面があるというのは確かかもしれませんけれども,他方で,不当利得ないしは準事務管理としての側面,つまり,自分の財産が奪われた,それの原状回復ないしは損失のてん補という側面があるというのを考えますと,これは単純に過失責任の問題かというのはやはり考えないといけない。

 

 

これは何を意味しているかといいますと,損失のてん補,原状回復,利益の吐き出しと並べておられますけれども,この効果の意味をもう少し考えておく必要があるのじゃないかなという気がいたします。

 

それと,やはり要件とは連動してくるところがありますので,ちょっとお考えいただきたい。

 

そして,三つの中でも損失のてん補と原状回復というのは比較的同質の性格を持つのかなというのは言えるわけですけれども,利益の吐き出しに関しましては同列に扱えるのか,これも先ほどの10ページの甲案,乙案のところでは,特に乙案では損失の額と推定するという,推定というのは本当に推定なのかそうでないのかという点はもちろん関係するところではあるのですけれども,損失の延長線上で本当に考えるべき事柄なのかどうか,そうではなくて,ある種の制裁的な,あるいは予防的な側面というのをもし重視するとするならば,ほかの忠実義務違反の効果としての損失てん補,原状回復が仮に忠実義務違反のみがあればいいという要件で足りるとしますと,この利益の吐き出しというのは同じように考えていいのかどうか,そのあたり,もうちょっと効果の性格に即して考えを深めておく必要があるのではないかなという,1点だけです。

 

 

 

 

 

 

  •  特に,この利益の吐き出しはどういうふうに性格づけるかということから始まって,非常に難しい問題があるということはおっしゃるとおりでございます。

ほかに御意見ございますか。

 

 

 

  •  資料でいいますと10ページのイの③,利益取得禁止行為の例外といたしまして,「正当な理由があるとき」ということが挙げられておるのですが,裁判所の立場からいたしますと,これは受託者の責任についての訴訟があった場合に,最終的にこの要件がかぎとなって責任の有無というのが判断されるということになると。

 

 

そういった裁判の規範としては,「正当な理由があるとき」というだけでは余りにも不明確に過ぎて,裁判規範として機能しないのではないかという,そういった懸念を抱いております。より明確にしていただきたいということでございます。

 

 

資料の20ページから21ページの方に参りますと,なぜこのような要件が必要なのかということにつきまして20ページの最後の方に,情報の共有ですとか,あるいは銀行勘定を通じてしかできない場合といった場合が挙げられているのですが,一方,21ページの方で,具体的に正当な理由があると判断される例といたしましては,買主側の仲介業者として手数料を収受するような行為というふうに挙げられておりますが,20ページの方の必要性の話と,具体的に仲介業者の話というのがどういうふうにリンクしているのかというのもよく分からないところでございまして,なぜこのような要件が必要なのかということと,どういう場合に実際に正当な理由があるということになるのかというのを更に検討していただきまして,それを具体的な要件として挙げていただくようなことの検討をお願いできないかということでございます。

 

 

同様に,公平義務の関係でも,例外規定として「正当な理由があるとき」というふうになっておるのですが,これにつきましても同様に,明確性に欠けるのではないかという懸念を抱いております。

 

 

こちらの方も,資料の方では,例といたしまして株式と債券をともに運用するというような信託の例が挙げられているのですが,一方では29ページの(注2)の方を見ますと,この場合は不公平は生ずるものの,ともに利益を得ているので,そもそも正当な理由を持ち出すまでもなく公平義務違反が生じていないというような記載もされておりまして,そういった意味では不公平が一体どういう場合に生じたと言うのかということとの関係で,「正当な理由」というのは具体的にどういう場合なのかというのがなお明確ではないのではないかと考えております。

 

 

 

逆に言いますと,ここに挙げられた事例ですと,ともに利益を得ていて不公平を生じていないということであるならば,逆に片一方の受益者に本当に不利益が生じた場合には,なぜ正当な理由によってこういった公平義務違反が例外的に免除されるのかといったあたりも含めて御検討いただいた上で,その場合には,「正当な理由」というのは具体的にはどういう場合なのかといったあたりも,更に御検討いただければというふうに考えている次第でございます。

 

 

 

 

 

  •  確かに,「正当な理由」というのを私ももうちょっと明確化したいという感じがするのですけれども,今はとりあえず考え方が示されているというぐらいで,またいずれもうちょっと議論を深めたいと考えております。

 

  •  2点ほど。情報の話と,それから利益の吐き出しについて,追加的にコメントしたいと思うのですが。

 

先ほど,○○幹事の方からお話がありましたとおり,どうしたら受託者として救われるのかという話につながるわけですが,9ページの例12)のところで,例えばファイヤーウォールがなかった場合の話があるのですけれども,そうした場合に,多分受託者としてファイヤーウォールを設ければ,ある意味セーフハーバー・ルールとして救われるのかという話も出てくるわけです。

 

 

ただ,恐らく多分それは難しいと,ファイヤーウォールがあったとしてもそれが実際に抜け道があったらどうかとかいう話になると,結局そこは,受託者としてどこまで挙証責任に耐えられるまでの実務をしなければならないかという,例えば一々取引について確認書を関連部に回さなければいけないとか,そういった話で,非常に実務に対して重い負担を課してくるのじゃないかという話があると思います。その点を指摘したいことが一つです。

 

 

もう一つ,休み前に○○委員からお話がありました,情報に関してもいわゆる信託行為で定めればそれでいいのじゃないかという話です。

 

その点は確かにおっしゃるところはあるのですが,ただ情報というのはやはり千差万別でございますし,例えば一概に,この情報はいいけれどもこの情報はだめだと,また,全部はいいというふうに言うことも難しいと思うのです。

 

いろいろな状況の進展によって事々変わってくるわけですから。そうした場合に,書くべきというのは分かるのですけれども,具体的にどの程度書けばいいのかということが非常に分からないということでございます。

 

 

やはり情報というのは非常に抽象的なものですので,それを一律に規定するというのはなかなか難しいのではないかということをコメントしたいと思います。

 

 

 

 

 

二つ目に,利益吐き出し責任の話なのですが,これは一つの質問になるのかもしれませんが,そもそもこの法制度自体に素朴に疑問があるという話をしましたが,御質問というのは,この法制度自体が日本の法秩序に合うのかどうかということについて,多分いろいろなところで議論があったのかもしれませんけれども,私には何か懲罰的な民事的制裁というような感じがするわけですけれども。

 

 

といいますのは,この利益というのは単に不当に得たものだけではなくて,例えばそれに加えて受託者の独自のエクスパティーズをもって付加価値を高めたというものも奪われる結果になると。

 

 

また,中間最高価格ということになるのであれば,中間最高価格のところで売れば確かに受益者に対してメリットがあったのかもしれませんが,逆に受益者はそのマーケットにさらされている間,いわばリスクを負担しているということもあるわけですから,そうしたリスクだけは回避できて,結果として益だけ取るというような考え方自体が公平なのかどうかということもあると思うのです。

 

 

そうした場合,それぞれを考えた場合に,この法制度自体が本当に日本の秩序に合うのかどうか,何か非常に過度な制裁的な色彩を持っているのではないかということを思いまして,ちょっと御質問する次第でございます。

 

 

 

 

 

  •  この利益吐き出しという制度が,どの程度現在の民法とかほかの制度の中で位置づけられるか,これは非常に難しいというか,重要な問題なのですけれども,私は,先ほど○○幹事からもありましたけれども--あるいは,○○幹事御自身はそういう意見ではないかもしれませんが--ある種の不当利得として説明することは十分可能性があるのだろうと思うのですね。

 

 

不当利得の理論の中にも,普通損失と利益を対応させて,両方が要件になっているというのが多くの説ですけれども,損失の方はなくてもいいという,そういう有力な説もあって,そういう考え方からすると,利益の方が不当かどうかという判断をして,そして不当な利益であればそれを返すということが不当利得の制度から十分説明できるのではないかというふうに思っております。

 

 

ただ,何を返すかというのがやはり問題で,今のように付加的な価値をつけて利益を上げた,確かに便乗して利益を上げているわけですけれども,それを全部返すのか,あるいは一定の割合に評価して返すのかとか,そこが非常に大きな問題ですね。それは,いわば二段階の,最初はまず根拠の問題,その次に実際の適用の問題として二段階の重要な問題があると思いますけれども,そういうことも含めて利益吐き出しについては更に検討していったらいいのではないかと思います。

○○幹事の方から何かありますか。

 

 

 

 

 

  •  利益吐き出しの法的性格論につきましては,従来よりいろいろ,今,○○委員がおっしゃった不当利得で基礎づける考え方ですとか,あるいは不法行為ではどうか,事務管理ではどうかと,いろいろと議論をしてきたのですが,なかなかそういう抽象論といいますか,法的性格論から入るとそこで紛糾してしまいまして先に進めなかったということがございまして,本日はそのアプローチをちょっと変えまして,そういうものがないと実際に困る場合があるかどうかというところから議論を進めてはいかがかというふうに提示させていただいたところでございます。

 

 

理論的には,今,○○委員がおっしゃいましたように,不当利得の損失の部分はともかくとして利得の方で説明するという考え方も十分あり得るのかなという気がしておりますが,そこについては事務局側に確たる見解があるというわけではございませんで,むしろそういう法的性格論,あるいは必要性もあわせまして,この場で規定の要否についての議論を是非いただければと,我々としては思っているところでございます。

 

 

  •  これまでに出された御意見等と重複する部分もございますけれども,御質問,御意見を含めて3点ほど述べさせていただきたいと思います。

 

 

まず第1は,○○委員初めこれまで多くの御指摘があった忠実義務の一般規定の意義でございますけれども,私も,体系的に見ても実質的に見ても,この忠実義務の一般規定は必要であり,かつ有益であると思っております。

 

善管注意義務については,例えば4ページの説明の中で,善管注意義務の内容というのは諸事情によって異なり得て,どこまで具体的な内容の規定を設けるべきかについては明確な基準もない上に,信託に特有の柔軟性を生かして,今後様々な形態の信託スキームの発展が予想されると,このことは私は忠実義務にも全く同様に当てはまって,忠実義務違反の行為,あるいは忠実義務違反の類型も,恐らく挙げ尽くそうと思っても尽くせないのではないかと思っております。

 

 

したがって,この善管注意義務の方については開かれたままにしておいて,忠実義務規定についてだけ閉じ込めるということは,体系的にも無理ですし,これから述べるように実質的にもやはり難しい面があるのではないかと思っております。

 

 

 

 

 

 

その実質面でございますけれども,実は取締役にも忠実義務の一般規定がありまして,取締役については更に競業取引ですか,利益相反取引とか様々な類型化,具体化された行為類型の禁止等がございますけれども,取締役の忠実義務に関する一般規定も使われないことはないと言われております。

 

 

 

例えば,今までの判例であらわれましたのは,例えば取締役が在任中に競業準備行為を行う,競業行為というのは商法上禁止されているのですけれども,競業準備行為というのは明確には規定されておりませんで,判例の中ではこれをとらえて忠実義務に違反するといったようなものもございます。

 

 

 

 

 

それから,例えばもう1点私が気になりますのは,受託者が受益者から受益権を買い取るような行為,これは忠実義務の類型に当たるのか,当たらないと考えられているのか,私は受託者が受益権を受益者から買い取る,これはここに挙がっているような利益相反行為ではないとは思うのですけれども,しかし典型的な例として,例えば信託財産の中に将来非常に価値のあるものが含まれている,でも受益者はそれを知らない,こういう状況のときに受益権を例えば安く買い取ってしまうというような意味での利益相反行為というのは考え得ると思っております。

 

そういった,ここに挙げ尽くされないような,あるいはどれかに当たるとしたら是非後で御教示いただきたいと思うのですけれども,類型化され尽くせないような行為を一般条項でとらえるという意味が,実質的にも残っているのではないかと考えております。

 

 

それから,2点目でございますけれども,これも何度もこれまでの議論の中でも論じられております信託財産の機会を奪取する行為,あるいは信託財産に係る情報を利用する行為でございますけれども,これについてはむしろ御質問ということになるかと思いますけれども,8ページの3の(1)のアでは,「不当な利益を得る目的で,又は受益者に損害を与える目的で」と,これが一体どういうふうに解釈されることになるのだろうかと。

 

 

後の説明を読みますと,それほど加害の意思とか不当な利得を得るというその主観面がそれほど重視されていないようにも思われますけれども,むしろ例えば英米でこういった信託財産の機会とか情報というときには,例えばあるチャンスが信託事務のラインに属しているのか,あるいは信託財産で本当にそれが利用できるチャンスなのかどうか,あるいは信託財産がその機会を利用する期待ないし利益はどの程度あるのか,むしろこういった不当利得あるいは加害の目的というよりも,信託財産に帰属すべき機会とか情報という観点から論じられているように思いますので,そのこととの関係でこのように規定することは,アメリカのような信託財産の機会ですとか信託財産の情報に関する理論と要件が異なってくることになるのか,それとも,そこは同じで,あとは解釈の問題ということになるのか,その点をお聞きしたいというのが2点目でございます。

 

 

番人

「信託財産とか信託事務が主語になってくるんだ。」

 

 

 

 

それから,最後に3点目でございますけれども,これは○○委員からアメリカと大きく違うと御指摘された,受益者の利益を害しないことが明らかであるという忠実義務の禁止の例外でございますけれども,これは私は理論的には忠実義務というのはやはり受益者の利益のための義務だと思いますので,受益者の利益を害しないときが明らかであれば忠実義務の例外となってもいいと思うのですが,しかしやはり問題は,そうだとすると受益者の利益になりますといって受託者が例えばどんどん自己取引をしてしまう,受益者は何も知らない,そういう状況が懸念されて,そうだとすると,やはりこの忠実義務が骨抜きになる可能性があろうかと思います。

 

 

したがって,この受益者の利益を害しないことが明らかであることを免除の要件にすることには私は賛成ですけれども,それによってどういう取引とかどういう行為がなされたかは,受益者に対し開示するような義務があるのではないかと。

 

 

そして,その受益者が開示されたときに,利益を害しないことが明らかですから,普通はそこでいいと言うのだと思いますけれども,そうすると同意を得るのも一挙手一投足という感がないでもないですけれども,しかし例えば受益者が多数いるような場合を考えると,受益者の承諾なくてもこのような要件のもとで忠実義務を解除するということは残しておいてもいいのではないか,こういうふうに考えております。

 

 

 

 

 

 

  •  いろいろ難しい問題が更に議論されましたけれども,特に質問の部分は8ページの「不当な利益を得る目的で」,「損害を与える目的で」というのが入っていること,英米法との違いということですけれども,これはどうですか。

 

 

  •  この要件を作るに当たりまして,実は英米法との比較というのをしたわけではなくて,むしろここで考えましたのは,これは割と厳格な要件になっておりまして,ほかの例えば(1)のアの③の「第三者のために」とか,そういうのに比べるとより厳密な悪意といいますか,特別な目的がないと違法にならない,それだけその機会が競合する場合というのは多いだろうから,適法といいますか,忠実義務の違法性が阻却される場合が多くないと実務は動かないだろうということで,より厳格な要件を定めたという趣旨はございます。

 

 

 

 

 

具体的にこれがどういう場合に当たるかと申しますと,とりあえず現時点ではこの文言を解釈していくしかないかなというふうに考えているところでございますけれども。

 

 

あと,開示する義務というのは,先ほど○○委員の方からもおっしゃいましたけれども,これは確かに正しい行為をやったという自信があるのであれば,結果報告でもした方がいいという御指摘はそのとおりと思われる点がございますので,その点はまた今後第2回目の審議をいただく際に,前向きに検討して御報告いたしたいと思います。

 

  •  受託者と受益権の取引は。

 

  •  それにつきましては,ここでは忠実義務の問題があり得るということは認識しておりますけれども,契約一般の問題ということで,忠実義務の問題そのものとしては考えておりません。

 

 

  •  確かに,受益権の買取りというのは,今までは忠実義務の問題にしていなくて,あくまで信託財産そのものを買い取る場合が自己取引だとされていたのですけれども,具体的な利益状況のもとの中では,○○幹事が言われたように,利益が相反するという場合もあり得るかもしれませんね。現在のところ,そういうようなのは類型化されていないというだけで,将来の可能性はある。

 

 

  •  可能性はあると思います。今おっしゃった例なんかは,言ってみれば信託財産というのは受益者が持っているというか,不即不離のようなところがございますので,確かに直感的には同視していい部分もあるかなとは思いますが,今までの伝統的な解釈は,それは別だというふうに解されてきたと理解しておりますが,御指摘を踏まえて,そこまで含むべきかどうかということは考えてみたいと思います。

 

 

 

 

 

  •  先ほどから,情報のお話が出ていますので,実務家としての感覚というのをちょっとお話ししたいと思うのですけれども。

 

 

先ほど,○○幹事の方から,信託財産の中でコストをかけたりしてつくった情報を固有勘定の方で使ってというのはどうなのだろうかと,そういうことについては基本的にはやはりいけないことだというふうに考えておりまして,我々の方はそういうことをやりたいということではなくて,事業の形態からいって,もうこれは皆さんよく御存知だと思うのですけれども,銀行業務と信託業務で付随業務もいろいろな業務をやっていますと,なおかつ,貸付けの業務というのは勘定が信託の勘定もあれば銀行の勘定もあります。

 

ということは,それを営業体がやるとすれば,全部情報が入ってきます。

 

ということは,それはその情報を使わないことにはどうしようもないというところがあるので,それを制限されると非常に大変なので,そこら辺のところの御配慮をお願いしたいということで今までお願いした次第でありまして,そういう極端な部分については,やはりおっしゃるようにそれはまずいことだろうなとは考えております。

 

 

 

 

 

  •  今の問題は,うまく線が引けるかどうかは分かりませんけれども,どういうタイプの情報かということによって,少し区切りをつけることができるかもしれませんね。

 

 

  •  そういう情報については,お客さんの方がシビアでして,秘密保持契約を締結させられたり,できないような状況にもなっておりますし,例えばファイヤーウォールのお話が出ましたけれども,当初不動産投資がかなり多くなってきたときに,そういう投資部門とほかの部門とをファイヤーウォールを設けようかというようなことで検討したこともあったのですが,ただ,情報については非常に微妙なところがあって,お客さんの意向を聞きながら情報を流すような部分もありますし,例えば不動産であったらエンドのユーザーまでだったら流していいのですよとか,業者まで流していいのですよとか,そんなような微妙なところがあるものですから,びしっとファイヤーウォールというふうに区切って言うのは,それこそひいては受益者の方々のためにならないというか,より迅速にいい相手を見つけるためにはない方がそこはいい場合も多いものですから,そこら辺のところはもう掛け値なしに,お客さんのためにとってその方がいいという判断でファイヤーウォールというのは設けなかったということがありました。

 

 

すみれ

「お客さんの方が情報に関して厳しいんだ。」

 

 

 

  •  忠実義務はとりあえずこのぐらいでよろしいでしょうか。

 

何人かの方からは利益吐き出しについての御議論をいただきましたけれども,これももし若干御感触等がございましたら伺っておきたいと思いますが。--よろしいですか。

 

それでは,あと公平義務とか……。これもある程度御議論いただきましたが,公平義務というのはかなり忠実義務と近いところがありますが,それとの関連で御議論いただきましたし,それ以外の点について,例えば時効等についてもよろしいですか。

 

  •  時効のところで若干。

今般の御提案で,1番のそういう損失てん補関係についての消滅時効が認められたというのは,私ども受託者にとっては非常に有り難いことだと思っております。

 

 

ここの部分はこれでいいのですが,例えば--例えばと言ったらあれですけれども,権限違反の行為を行ったときについては,現行法では例えば31条に対応して33条という規定がありまして,非常に短い期間での取消しの時効が認められているのですけれども,こういったものについて御検討されていないのであれば,そういう形の短期間の時効を設けることについて御検討をお願いしたいということが一つ。

 

 

それともう一つ,これも受託者側からばかりで申し訳ないのですけれども,例えば固有勘定と信託勘定の間で忠実義務違反が行われたときに,無効の状態になりますと,その無効の状態というのを受託者側から確定させるような方策というのはどうなんでしょうか。

 

 

ずっとそのままの状態で置かれておりますと,例えば株式等の価格が変動するようなものであったとすると,受益者側からすると一番高くなったところでいってやれというようなこともありまして,受託者側としてはそんなことをしてしまった,そういう状況になったということは悪いことだと思うのですけれども,ある程度合理的なところで確定させるような方策,これはちょっと時効とは違うお話だとは思うのですけれども,そういうようなところの御検討もいただけないかなということです。

 

 

 

 

 

  •  時効の問題,現行法では第33条の問題につきましては,将来的には検討するべきだと考えております。

 

まず基本的に権限違反行為の効果について,取消権構成でいいかどうかというところを最初に御議論いただいておりまして,それでいいということであれば,もちろん33条のような規定は設ける方向で考えております。

 

ただ,33条につきましては,期間制限が1月と1年ですが,特に1月は幾ら何でも短過ぎるという御指摘があって,そこはもう少し長期化するのかなと思っておりますが,そういう方向で規定を整備していくつもりでおります。

 

あともう一つ,無効を確定する方法につきましては,確かに無効ですと期間制限ということはなかなか難しいということになりますので,例えば一定の催告をして確定するとか,そういう手続が要るのかなという気はいたしますが,ちょっとそこは今まで十分考えたことがないところですので,要否を含めまして検討いたしたいと思います。

 

 

 

すみれ

「追認とかかな。」

 

 

 

  •  ほかによろしいでしょうか。
  •  第26のあたりでよろしいわけでしょうか。
  •  どうぞ。

 

 

 

 

 

  •  第26について2点ありまして,一つは時効の援用についての規定が必要ないだろうかということです。受益債権については,時効の援用についての規定はたしかあったと思いますので,それと対応するようなものが必要ないだろうかということです。

 

 

それからもう一つは,消滅時効の起算点について,甲案,乙案というのが45ページで提示されておりますけれども,米国の統一信託法典を引用しておられますが,統一信託法典の場合には受託者が積極的に情報を提供するということが前提となって,それから時効がスタートするようになっているのではないかと思います。そういうのから見ると,やはり甲案よりも乙案の方がよりそれに近いのかなという気がいたします。

 

 

その場合に,ただ期間が長過ぎるではないかということで,最後50ページの(注2)というところで1年・5年という御提案があるわけですが,これも今申し上げましたとおり,UTCの1005条というのは,受託者の情報提供が前提となっているわけですので,この案は持ってきにくいのではないか,もう少し長くてもいいのじゃないかなという気がいたします。

 

 

 

 

  •  重要な指摘だと思います。どうもありがとうございました。

 

  •  第24について,一言発言いたします。

2で原状回復ができない場合があるというところの要件ですけれども,趣旨としてはこれは「過分な費用」ではないかと思います。

 

 

「著しく多額の費用」というのは絶対額を指しているように思われますので,そうであれば不適切であって,何かと比較してなのですけれども,費用がかかり過ぎる場合に原状回復ではなくて損失てん補でいくべきだという趣旨ではないかと説明のところを読むと感じられますので,そのように改めていただくのがよろしいのではないかと思います。

 

 

  •  「過分な費用」という,文言的には例えば「著しく過分」とか,単なる「過分」と言うと,過分の程度にもよりますが,そういう……。

 

  •  それは,どちらもあり得るのだろうと思いますが,「著しく過分」の方が原状回復を原則とするという趣旨が残りますので,差し当たってそちらの方を私の今の意見とさせていただきますが,余りそこは自信がありません。

 

 

 

  •  原状回復が原則というのは,ほかの法理の体系でどうかという問題点の指摘などもございまして,今,○○幹事の方は原状回復が原則なんだから「著しく過分」のときだけはできないというのでいいのではないかとおっしゃいましたが,この点につきまして,何か,原状回復はここが原則でいいのだという根拠といいますか,現行法がそうなんだからというのか,何かございますでしょうか。

 

 

 

  •  やはり経済的な価値を扱っているのではなくて,どういう態様か,どういうものであるかということも含めて,それを受託しているというのが信託の基本的な在り方だろうと,それを変更するならば信託法で変更すればいいと,そういうふうに考えます。

 

 

番人

「たしかに。不動産だと。自宅だと。」

 

 

  •  それでは,第一セッションといいますか,前半部分がやっと終わったところですけれども,残りの時間は次のセッションを……。

 

 

 

 

  •  それでは,分別管理義務,信託事務処理の委託と,それから帳簿作成作成義務等につきまして,御説明いたします。

 

まず,「第21 分別管理義務について」でございますが,これは第1回会議でも御説明いたしましたが,受託者個人の債権者あるいは他の信託の債権者から信託財産を隔離する効果を生み出す意義を有するものを分別管理義務と考えておりまして,ここでは受託者の固有財産からの分別及び信託財産からの分別の両者に共通する原則的なルールと例外とを提案しているものでございます。

 

 

資料の記載内容は,金銭について,前回,第11として共有ルールを提案しておりまして,それを前提に若干の修正をした以外には報告書と全く変わっておりませんので,その内容につきましては第1回会議でも簡単に御紹介したところでございますが,もう一回,実務的に重要なところですので概要を御説明したいと思います。

 

 

まず,原則的ルールでございますが,要するに受託者としては信託財産の独立性を確保するために,その財産を性質に応じて最善の状態で受託者の有する他の財産から分離して管理すべきであると解するものでございます。

 

 

具体的に申し上げますと,受託者としては,分別管理義務を履行したと言えるためには,原則として,登記・登録ができる財産であれば信託の登記・登録をすべきであり,登記・登録ができない財産であれば,物理的に管理可能なもの,例えば動産であれば物理的に分別すべきであり,物理的管理が不可能な,例えば金銭債権のようなものであれば,帳簿上各別に計算管理をすべきであると考えております。

 

 

なお,2点,付言いたしますと,まずこれも第1回会議の際に申し上げましたが,登記・登録できる財産であれば登記・登録するのが原則と申し上げた点につきましては,とりあえずそのような義務を免除している場合でも,受託者が経済的苦境に陥ったときは,遅滞なく登記・登録をすることが意図されている限りは,なお原則的な分別管理義務が履行されていると考えております。

 

 

それから,登記・登録ができないものの物理的に管理可能な財産については,帳簿上の計算管理にとどまらず,あくまで物理的に分別して管理することをもって原則としております。

 

 

これは,帳簿上の計算管理によるよりも,物理的な分別の方が,受益者にとっては信託財産の現状の把握に資するであろうし,受託者についても忠実義務違反の防止に資すると思われるからであるという理由によるものでございます。

 

 

すみれ

「お金を金庫に入れておく、とかかな。」

 

 

以上の原則に対しまして例外でございますが,まず登記・登録すべき義務については例外はありません。登記・登録を,留保つきではあれ必ずしなければいけないということになります。

 

次に,登記・登録ができない財産のうち,物理的管理が不可能な金銭債権などにつきましては,帳簿上各別に計算管理すべき義務があるわけですが,これも例外を認めておりません。この点につきましては,後ほど御説明いたします。

 

 

これに対しまして,物理的管理が可能な動産については,信託行為に別段の定めがあるときか金銭であるときには分別管理は物理的方法によらなくてもよいという例外を認めて,帳簿上各別に計算管理をすることをもって足りるといたしております。

 

 

その理由は,金銭であれその他の動産であれ,混蔵保管されている場合であっても,帳簿さえ適切に作成管理されていれば,受益者は混蔵保管されている財産全体の中の信託財産の共有持分について物権的に第三者に対抗できると考えられますので,なお信託の意義を肯定することができるからでございます。

 

 

 

 

なお,先ほど申し上げましたように,信託財産が金銭債権であって帳簿上の計算管理が要請される場合ですとか,あるいは物理的に管理可能な財産について特約があり,あるいは金銭であるため,帳簿上の計算管理をもって定めるとされている場合につきましては,この帳簿上の管理義務というのは信託の意義を認めるいわばよすがとなる受益者の物権的な共有持分の主張の担保となりますとともに,受託者の帳簿作成義務から当然に導かれる受託者として最低限の義務でありますので,このような帳簿上の分別管理義務まで免除することは認められないと考えるものでございます。

 

 

以上,要するに受託者の原則的な分別管理義務の方法の例外が認められますのは,登記・登録のできない種類の信託財産であって,かつ,動産や金銭などの物理的に分別管理が可能である種類の信託財産である場合にとどまるわけでして,それ以外の種類の信託財産につきましては,原則的な分別管理の方法,つまり不動産であれば登記,金銭債権であれば帳簿管理に常によるべきこと,しかも物理的な分別管理まで免除されるという場合であっても,帳簿上各別に計算管理すべき義務までは免除され得ないと考えているものでございます。

 

 

 

 

 

続きまして,第22の「信託事務処理の委託について」というところでございますが,これは少し丁寧に御説明をいたします。

 

第22でございますが,これは受託者が他人に委託できる場合につきまして,現行法より拡大するとともに,報告書とも若干異なる新たな内容を提案しているものでございます。

 

 

まず,提案1について御説明いたします。

現行法第26条におきましては,信託は,受託者に対する個人的・主観的信頼を基礎とする財産管理制度であるとの理解のもとで,そのような信頼を保護するために受託者自らが信託事務を処理しなければならないものとして,受託者が他人に対して信託事務処理を委託できる場合を,信託行為に定めがある場合のほか,「已ムコトヲ得サル事由アル場合」として狭く限定しております。

 

 

しかし,信託法制定当時に比して社会の分業化,専門化が進んだ現代社会においては,信託事務のすべてを受託者が行うことができることを前提とすることは現実的とは言えませんので,資料35ページの(注1)というところにも記載いたしましたが,他人に対して信託事務の処理をしかるべく委託することの方が,受益者の利益に資するものと考えるわけでございます。

 

 

 

以上は第1回会議でも説明したところでございまして,報告書においては,受託者が信託行為に別段の定めがない限り,善管注意義務のもとで信託事務の処理を他人に委託することができるとの考え方に基づく規律を示したところでございます。

 

 

 

しかしながら,今申しましたように,他人への事務処理の委託を自由とした上で,受託者の善管注意義務にゆだねますと,委託者の受託者に対する期待の内容いかんにかかわらず,受託者としては,自分以外であっても,とにかく当該事務処理を行うことについて相応の能力を有する者に対して事務委託をしている限り,少なくとも善管注意義務には違反していないことになると思われるわけでして,すなわち受託者としては,いわば一種のコーディネーターといいますか,司令塔といいますか,そういう立場で信託事務につきまして自己の能力より低くても,とにかく業界水準に足りる能力を有している先に次々と委託さえしていれば,何ら責任を問われないことになりそうでございます。

 

 

しかし,これでは委託者が受託者の能力に期待して信託していた場合には,その期待を満たさないことになりかねないと思うわけでございます。

 

 

 

 

 

そこで今回の提案におきましては,受託者の能力に対する委託者の正当な期待も保護すべく,受託者は委託者の信頼を受けたものとして受託者が信託事務を委託するについては,特約がない限り「相当な場合」であることを要するものといたしました。

 

その際には,米国統一信託法典第807条の規律,すなわち「受託者は,同じような能力を持つ合理的な受託者なら当該状況において委任するのが適切だと思われる義務につき,委任することができる」という規定も参考にしているところでございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは,一見しますと自己執行義務を前提とする現行法の規律を踏まえた上で,現行では他人に委託できる場合を「已ムコトヲ得サル事由」と狭く限っているのを,「相当な事由」というふうに大きく広げたようにも解されるところではあります。

 

 

 

すみれ

「うん。」

 

 

しかしながら,現行法があくまでも委託者の期待を重視して,委託者の自己執行義務に偏った規制的な内容となっており,受託者の権限行使を妨げる側面があったのに対しまして,この提案では,現代社会の実情を踏まえますと,受益者の最善の利益を図るためには,信託事務処理の柔軟で効率的な第三者への委託を正当化する方が適切であり,それが委託者の通常の意思にも合致するとの認識に基づきまして,委託者側の期待と受託者側の外部委託のニーズとのバランスを図る内容へと,基本的な発想自体を改めている趣旨でございます。

 

 

すみれ

「そうなんだ。委託者の期待から受益者の利益に変わったんだ。」

 

 

そこで,「相当な事由」があるか否かは今申しましたようなバランスにかかわる事項,すなわち委託者の期待,それは受託者自らの能力を標準とすべきか,業界水準でいいかということにもかかわりますが,そのような期待ですとか,事務の内容,委託先の能力等を総合的に考慮して決すべきでございます。

 

例えば,受託者より高い能力を有する専門家を使用することや,特に高度な能力を要しないものの,受託者が自ら行うよりは外部に委託した方が費用や時間等の点で合理的な事務,典型的には郵便ですとか物資の運送業務などにつきましては,相当な事由ありとして外部に委託できる場合が多いと考えております。

 

 

なお,念のため付言いたしますと,受託者としては原則として自ら信託事務を処理すれば足りるわけでして,自分より能力の高い第三者がいたからといって,常に委託しなければならないというわけではもちろんありません。

 

 

もっとも,能力とか時間,費用,アクセスの容易さなど,総合的に考慮いたしまして,明らかに第三者に委託した方が受益者の利益に資するというような場合につきましては,例外的に委託しないことが義務違反と判断されることもあり得ますが,これは受託者の外部に対する信託事務処理委託の可否とは別個に,善管注意義務違反の有無の問題として判断されるべき事項だと考えております。

 

 

 

 

 

ところで,報告書におきましては,(注2)といたしまして,今申し上げた専門的な事務ですとか機械的事務の外部委託,あるいは受託者としてはこれを利用する以外には選択の余地のない中央集中的な証券保管・決済システムなどを利用する事務などにつきまして,いずれも提案の1に係る外部委託の可否に関する規律の対象外であるとの指摘があることを示しましたところ,第1回会議においても同様の指摘がなされたところでございます。しかしながら,この提案におきましては,指摘にかかる事項もふまえまして,およそいかなる事務でも第三者に事務を委託する以上は,一律に1及び2の規律の適用対象となるものと考えております。

 

これは,信託事務の外部委託が厳しく制限されております現行の規律とは異なりまして,相当な場合には外部委託できるとの緩やかな規律に転換する以上,もはや事務の内容によって規律の適用を区別する意味の多くは失われたと考えられることですとか,むしろ一律に1及び2の適用対象になるとした上で,受託者の選任監督責任の履行の問題として解決することの方が簡明であると考えられることによるわけでございます。

 

 

 

もっとも,先ほど言いました反対論の指摘は,例えば専門家や運送業者につきましては,選任はともかく,監督すべき義務といったようなものを観念すること自体が不自然であるとの考えや,更に日銀や証券保管振替機構などに至りましては,選任責任すら問題にすることは不自然であるという考えが背後にあるような気がいたします。

 

 

すみれ

「日本銀行を選任するのか。」

 

 

確かに,そのような考え方には傾聴すべきところがあるわけでございますが,特に専門家への委託について,選任監督責任が全くないと言い切れるかは疑問でありまして,このような場合も1の規律の対象,したがいまして2の規律の適用対象に含めまして,一応は受託者の選任監督責任が及ぶとした上で,実際には監督義務とはいっても極めて限定的なものである,せいぜい定期的なモニタリング程度のものであるというにとどまりまして,選任監督義務違反が問われることは事実上ほとんどないと考えることによって対処することが可能であり,これで実務上も不都合は生じないのではないかと考えるわけでございます。

 

 

 

 

 

 

次に,提案の2について御説明いたします。2の(1)でございますが,これは提案の1を踏まえまして,受託者が信託事務の処理を適法に第三者に委託した場合における受託者の責任が,選任監督責任にとどまることを明らかにしたものでございます。

 

 

ところで,報告書におきましては,受託者が信託事務を適法に第三者に委託した場合の責任につきまして,特約による場合であると否とを問わず,選任監督責任のみを負うものとしておりましたが,この点につきましては第1回会議におきまして,第三者の委託を原則として禁止した上で限定的にこれを認める現行法のもとであれば,例外的に適法に委託できた場合の受託者の責任が選任監督責任にとどまることは理解できるものの,第三者への委託を原則として自由とした上で,しかも当該委託が特約で認められた場合でもないのに,第三者に委託した受託者の責任が選任監督責任で足りるものとされる理論的根拠が薄弱であるとの指摘がなされました。

 

 

ポリー

「受託者の権限や、信託の目的の書き方で変わってきそうですね。」

 

 

しかしながら,今回の提案におきましては,特約がない場合において受託者が第三者に委託できるのは,善管注意義務のもとではあれ,自由というわけではなく,相当な場合であることを要するのでありますから,このような条件を満たした上で適法に委託がなされたものである以上,受託者の責任を選任監督責任にとどめることとしても不合理ではないと解されるところでございます。

 

 

 

さらに,今回の提案におきましては,2の(2)として,「相当な場合」でないのに不適法に第三者に信託事務を委託した場合の受託者の責任も明記しております。

 

 

すなわち,この場合におきましては,第三者に委託した点において受託者にそもそも義務違反がありますので,第三者の故意過失にかかわらず,受託者としては,自己の義務違反と因果関係にある損害,すなわち委託をしなければ生じなかったと考えられる損害につきまして責任は免れないということを明らかにしたものでございます。

 

 

 

最後に,提案の3でございますが,これは信託事務の委託を受けた第三者の責任について,報告書と同様に甲案,乙案を提示しているものでございます。

 

 

その具体的な内容及び考え方は,第1回会議で御説明したとおりでございまして,一言で言いますと,甲案というのは受益者保護の観点から,一定の要件を満たした場合に第三者が主として受益者に対して直接の責任を負うこととしたものでございます。

 

 

これに対しまして,乙案というのは,このような一定の条件を課した限定的な第三者の責任を認めるまでもなく,第三者は,委託者との関係で契約関係にあり,受益者との関係で前面に立つ受託者の責任のみを考えておけば足りる解するものでございます。

 

 

以上,甲案,乙案その他,御審議をいただければと思います。

 

 

 

 

 

最後に帳簿作成義務等に関する第23につきまして御説明いたします。

これは,受託者の帳簿等の作成保存義務及び情報提供義務,並びに受益者等の帳簿等の閲覧請求権及び説明請求権に関する提案でございます。

 

現行法を見ますと,第39条におきまして,信託事務が適正に行われることを担保するために,受託者に帳簿や財産目録の作成義務を課しておりまして,第40条におきまして受益者等の有する監督的権能を実効的なものとするために,利害関係人による帳簿等の閲覧請求権や受益者等による説明請求権を規定しております。しかし,現行法の規律に対しましては,例えば,作成義務のある書類の内容が適切であるか,利害関係人に財産目録のみならず帳簿の閲覧請求権まで認めるのは行き過ぎではないか,受益者等が閲覧請求できる「信託事務の処理に関する書類」とはどのようなものか,受託者に請求を待たずとも積極的に情報を提供すべき義務を認めるべきではないか,あるいは受託者及び受益者からの閲覧請求等を正当に拒否できる事由を明記すべきではないか等,種々の問題点が指摘されているところでございます。

 

 

そこで,この提案では,現行法の規律の大枠は維持しながらも,作成保存すべき書類の内容及び期間,受託者の情報提供義務,書類の種類に応じた閲覧請求権者,閲覧請求等に対する拒否事由等の諸点で追加,変更を加えることとしたものでございます。

 

 

まず,提案の1でございますが,受託者の作成・保存義務に関しまして,まず帳簿のほかに,実際的な有用性の観点から,財産目録にかえて信託財産の状況及び信託の収支に関する書類の作成義務を課しております。

 

 

さらに,帳簿のほか,信託事務に関する重要な書類,これは例えば契約書等を念頭に置いておりますが,このようなものにつきましては10年間の保存義務を課するとしております。

 

 

このように,提案1におきまして受託者の作成を要すべき書類の範囲を一括列挙した上で,この範囲の書類の中から,提案2及び3におきまして受益者等に対する情報提供,受益者等からの閲覧請求の対象を適切に定めようとするものでございます。

 

 

なお,保存期間の点につきましては,報告書の段階では,受託者に10年間の保存義務を課すことは長きに失するのではないかとの指摘がありまして検討いたしましたが,この提案では消滅時効期間ですとか,商法上の商業帳簿等の保存期間の規律なども踏まえまして,一律に10年間とすることは受託者に酷ではないかとの指摘も考慮して,受託者は受益者に帳簿等を引き渡すことによって保存義務を免れるというようにしております。

続いて提案の2でございますが,これは受託者の情報提供義務に関するものでございます。

 

現行法は,受託者にこのような義務を定めておりませんが,積極的に受益者に対して信託財産状況等に関する報告をするよう受託者に義務づけることは,受益者の監督権能を実効的なものとする上で効果的であると考えられます。

 

 

そこで,あくまでもデフォルト・ルールとしてではございますが,信託財産の状況及び信託の収支に関する書類のカテゴリーにつきまして,その内容についての提供義務を規定することといたしております。

 

最後に提案の3ですが,これは受益者等の閲覧・謄写請求権及び説明請求権に関するものでございます。

 

先ほど申し上げましたように,現行法では信託債権者等の利害関係人にも帳簿等の閲覧請求ができることとされておりますが,提案3では,これを改めまして,(1)といたしまして,利害関係人が閲覧請求できるのは信託財産の状況及び収支に関する書類に限るというふうにいたしました。これは,現行の商法や中間法人法における取扱いとも整合するところでございます。

 

 

その反面,この書面につきましては,その性質上,受益者の権利が害されかねない機微な情報が含まれているとはほとんど考えられないと思いますので,閲覧拒否が必要になる事態を想定した規律を設ける必要はないものと判断いたしました。これは,報告書におきましては,閲覧拒否事由を定めるか否かについて検討するとしていた点につきまして,消極に結論したものでございます。

 

 

なお,特に悪質なケースは,権利濫用等の一般条項を用いて排除することもできると考えております。

 

 

これに対しまして,(2)でありますが,これは信託事務に関する帳簿と,それから信託事務に関する重要な書類というこの二つのカテゴリーにつきましては,受益者以外の利害関係人には閲覧・謄写請求権を認めず,最も利害関係が深く,監督権能も付与されている受益者のみが閲覧・謄写請求できることとしたものでございます。この受益者のみができるという点は,説明請求権についても同様でございます。

 

 

 

なお,受益者が受託者に対して閲覧・謄写請求又は説明請求をするに当たっては,その理由を明示することを要します。

 

 

これは,請求の理由が明らかにされないときは,受託者としてはいかなる書類を出すべきかが分からない,あるいは後に説明する請求拒否事由があるか否かについて適切に判断できないという問題があると考えられるからでございます。

 

 

もとより,この理由の提示に当たりましては,あくまでその請求の対象と理由を明らかにすれば足りるのでありまして,それ以上に請求を裏づける事実の立証が必要となるわけではないのであって,実質的に閲覧請求権等を制限する根拠とはなり得ないものと考えております。

 

 

 

最後に,(3)でございますが,これは(2)において受益者から閲覧請求等があった場合の拒否事由を明定したものでございます。

 

 

現行法では,特段,拒否事由を定めておりませんが,受益者が多数の集団信託などにおきましては,一部の受益者の濫用的な閲覧請求が他の受益者の利益を害する場合もあり得ると考えられます。

 

 

その反面,受益者による信託事務の処理に関する監督権行使のための基本的な権利である帳簿閲覧請求権等について,これが恣意的に排除されてはならないと考えられます。そのような双方の観点から,受益者が請求を拒否できる事由を明文をもって限定的に列挙したものでございます。

 

 

拒否事由のうち,①から⑥というのは,株主の会計帳簿閲覧請求権に関する拒否事由を定めた現行商法293条ノ7を参考としたものでございます。

 

 

これに加えて,⑦といたしまして,請求した受益者以外の者の利益を害する等の弊害を排除する観点から,受益者の権利の確保又は行使に関する調査にとって必要と合理的に認められる限度を超える請求が行われたときには,閲覧請求等を拒否できるとの規律を新たに設けることといたしました。

 

 

このような拒否事由を新設することにつきましては,基準として不明確にならざるを得ず,受益者の閲覧請求権等が必要以上に制約されるおそれがあるとの観点から反対する考え方もあり得るかとは思いますが,しかし他人の情報にも関連する書類の閲覧請求に対しまして,請求受益者にとって権利の確保又は行使について合理的な必要性のない情報であれば,請求理由を踏まえ,①や②で拒否できるとは思うのですが,しかしこれらが必要性を伴うものである場合については,解釈によって適切に解決できるかは明らかではなく,そのため特に受託者が守秘義務を負うような情報の開示を常にしなければならなくなるというのも相当ではないと思われます。

 

 

そこで,当該請求によって受益者以外の者の利益を害するおそれのある情報が明らかになるときに限るという旨,情報の性質,内容を慎重に限定した上で,このような情報につきましては請求受益者側の調査上の必要性と請求受益者以外の者の利益保護とのバランスを考慮して,受託者が閲覧拒否することもできることを定めたものでございます。

 

 

 

以上のような考え方につきまして,御審議をいただければと思います。

  •  それでは,「第21 分別管理義務について」,「第22 信託事務処理の委託について」,それから「第23の帳簿作成義務等について,これらについて御議論をお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。

 

 

 

 

 

  •  ここの部分につきましても,受託者にとって非常に重要なところですので,これも若干長くなると思いますけれども,御容赦願いたいと思います。

 

 

まず,分別管理義務のところでございますが,分別管理義務の例外として,①のところの記載でございますが,「信託財産について信託の登記又は登録ができない場合において信託行為に別段の定めがあるとき」という表現になっているわけですが,先ほど○○幹事の方からの御説明であるとか,資料の<説明>のところを見ますと,基本的には登記・登録を免除するようなこともできる,ただしそれこそ明日にでも倒産しそうなときにはやらないといけないと,そういうような御趣旨だと思うのですけれども,ここの書きぶりを見ますと,常に,必ずやらないといけないというような形でしか読めないものですから,多分趣旨としてはそういうことではないと思いますので,書き方のところを何とかお願いできないかなというのが一つです。

 

 

 

 

それと,あとは現行実務におきましては,固有財産と信託財産の物理的分別管理というのはかなり厳格にやっているのですけれども,信託財産間においては実施することが非常に困難な場合もありまして,合同で管理されているところも多いということでございますので,識別不能の規律というのも入っておりますので,信託財産間におきましては,信託行為の定めがなくても分別管理を要しないというような例外,そういうことを設けてほしいというような意見もございました。ちょっとここら辺は分かれておるのですけれども,そういう強い意見もあったということでございます。

 

 

 

あとは個別のお話に移りますが,ここのアステリスクがついております根担保のところのお話ですけれども,これについても長年悩んできた部分でございますので,是非とも規律の決定の方をお願いしたいというふうに思います。

 

 

あと,社振りとか保振りとかに今保管している場合が多いのですけれども,社振りの方につきましては,現物がなくなってしまって,ある請求権に変わったということですので,基本的にそこの分別管理については帳簿でいいというふうに理解しております。

 

 

そこから敷えんいたしますと,では保振りとどう違うのでしょうかと,保振りは混蔵保管していますので,そうするとそこの違いからいきますと,ベストエフォート的に考えると,いったん保振りから出して,それを分別管理するとかというようなこと,そこまでというのはないのじゃないかと思いますので,ここについても要するに帳簿という形での管理というのが認められてもいいのじゃないかなと思います。

 

 

すみれ

「ベストエフォート的?」

 

 

 

そこからまた敷えんいたしますと,今度は海外のカストディーとかに保管の委託をしたような場合,このような場合について,そこの保管先についてまで信託勘定間で例えば分別管理を求めて口座を分けるのか,そういう必要があるのかというようなところを考えますと,ここについても自らの管理下において分別する場合については分別管理というのは物理的な物が必要だと思うのですけれども,委託する分については帳簿の管理ということで何とか認めてもらえないかなということでございます。それが分別管理でございます。

 

 

 

 

 

続きまして,信託事務処理の委託のところでございますが,これについては1番と2番ともに提案内容に違和感がないという意見が多数を占めたわけですが,ただ今般の提案で入った「相当な場合に」というところの部分と,あと2の(2)のところの「責任」,これがちょっと重いのじゃないかという意見が出ておりまして,ここの理由としては,基本的には他人に信託事務処理を委託することが常態であるようなことを前提とした規律ということからすると,ちょっと違うのじゃないですかという意見もありました。

 

 

 

 

大勢はこれでいいのじゃないかということが多かったのですが,そういう強い意見もございました。

 

 

次に,3番の信託事務の処理を委託された者の責任ですが,これについては第1回目の部会の方で,私の方から意見を申し上げましたので,理由については前回申し上げたことに付加して若干申し上げたいと思います。

 

 

乙案の賛成理由だったわけですけれども,今般は仮に甲案をとるとすればということですけれども,まず信託事務処理の全部又は重要な一部であることを知っている場合と知らない場合,そこで責任が分かれるということですので,受託者として考えた場合,やはりこういう場合には知らせないということになってしまうのじゃないかなということが一つ。

 

 

 

それと,重要な一部というのが委託先については非常に分かりづらいので,そこが非常に不明確であろうというのと,あとは現行法でもいろいろな議論があると思うのですけれども,受託者と同一の責任というのが解釈としてよく分からない部分がありまして,場合によっては受託者の義務をすべて負うのじゃないかというような解釈をされる方々もいらっしゃって,かなりそこら辺のところが不明確であるという部分もありますので,そういう意味合いで甲案については反対と。

 

 

乙案の賛成理由については,前回申し上げたとおりでございます。

 

あと,「第23 帳簿作成義務等について」のところでございますが,これは受益者からの請求の拒絶事由のところ,これの⑦,多分ここの部分もかなり議論があるところだろうと思いますが,「受益者の権利の確保又は行使に関する調査にとって必要と合理的に認められる限度を超える請求が行われたとき」,この要件を是非とも維持していただきたい。

 

 

あとは,この括弧の中の「受益者以外の者」という「者」の中には,受託者というものも入っているのではないかというふうに私どもの方は解釈しておりまして,受託者の営業上の秘密という部分についても,やはり我々にとって非常に重要なものでごさいまして,受託者にとって利益を害するおそれがある情報でございますので,この規律については是非とも維持していただきたいということでございます。

 

 

 

 

 

  •  ほかにいかがでしょうか。

 

  •  32ページの「第22 信託事務処理の委託について」について,2点,質問と意見を述べさせていただきたいと思います。

 

非常によく考えて,工夫してつくられたものだというのはよく分かりまして,なるほどと思った次第ですが,その上で質問がまず第1です。

 

1の「信託事務の処理を委託をする権限」で,前半が「受託者は,他人に信託事務の処理を委託することが相当な場合には,他人に委託することができるものとする。ただし,信託行為に別段の定めがある場合には,この限りでないものとする」と,この「相当な場合には」という部分というのはある種総合的な判断をせざるを得ないのだという御指摘で,その際には委託者がどういう期待を持ってこの信託をしたのか,あるいは事務の内容,そしてまた委託先の能力等々というのを総合的に考慮するのだということをおっしゃったと思うのですが,そうしますと,この「相当な場合」の判断をする際には,どのような信託事務を委託したのかということが,そして信託事務を委託する際にどのようなことが約束されたのかということがかなり重要な,あるいは恐らく決定的な意味合いを持ってくるのではないかと思われます。

 

そうしますと,この「ただし,別段の定めがある場合にはこの限りでない」というのが,両者の関係が極めてよく分からないところでして,相当な場合だとされつつ別段の定めがあるのでだめだというのがどうして出てくるのかというのがもう一つよく分からないところです。

 

 

信託事務そのものの性質と,それ以外の,その性質とはかかわりなく行われた特約というのを分離して考えておられるのだろうとは予想はするわけですけれども,ただこの種の信託事務の処理については,そしてこういう期待のもとでその受託者に委託しているという場合については,受託者が自分が行うとしかこの信託行為は解釈できないというような場合は,何かこの本文ただし書は一体的に判断される場合ではないかなと思われますので,この本文とただし書の書き方というのは,ちょっと分かりにくいなというのがまず第1点です。

 

 

すみれ

「たしかにですね。」

 

 

それから第2点は,それとも関係するのですが,これは証明責任をどう考えておられるのかということを確認させていただければと思います。

 

これは二つ考え方があり得まして,一つの考え方は,委託者--受益者でもあり得るのかもしれませんけれども,責任追及する側がこういう信託行為を行い,しかし受託者が他人を使ったということで損害なり損失なりが発生したということで責任追及をしていく,それに対して受託者側が,他人に委託することに相当な理由があったのだということを主張立証し,かつ,その選任監督に過失がないのだということを主張立証するというのが一つの可能性として考えられる。

 

 

 

もう一つの可能性は,責任追及する側がこういう信託行為を行い,かつ,しかも受託者が他人に委託した,しかもそれに相当な理由がないというところまで主張立証して初めて責任追及できるのか。

 

 

しかし,この考え方をとる場合にはもう一つの請求があり得て,相当の理由をも争わずに,あるいはそれはあるとせざるを得ないような場合でも,信託行為をし,他人に委託し,かつその受託者が選任監督に過失があるということまで含めて責任追及していくと,こういう可能性がもう一つある。どちらでお考えなのか。

 

 

先ほどの御説明を聞いていますと,どうも第1の考え方をベースに考えておられるのかなというふうに思ったわけですけれども,その限りでは多分証明責任の分配は現行法のもとでと変わらないというふうにお考えなのかなと思ったのですけれども,その点をちょっと確認できればと思います。

 

 

  •  まず後半の点ですが,おっしゃるとおりで,我々としては相当の事由があったということを受託者の側が立証しなければいけないというふうに考えているところでございます。

 

それから,もう一つの書きぶりが分かりにくいということでございますが,御指摘がありましたとおり,相当な場合は委託できるわけですが,信託法に別段の定めで委託は絶対できないと禁止されている場合には委託できないということでございます。

 

 

 

 

  •  証明責任が第1の考え方だということで分かりやすくなったのですけれども,そうしますと,もう一度言いますと責任追及する側が信託行為を行い,しかし受託者が他人を使った,それで損失で責任追及すると。

 

それに対して受託者側が,使うことに相当の理由があるのだと,かつ選任監督にも過失がないのだということを言った上で,その上で,では委託者の方が,いや,別段の定めがあるじゃないかということを言い出すのでしょうか。

 

 

  •  それはつまり,違法な委託になるわけですね。

 

  •  はい,だからそれはすごく妙な感じがするのですが,いかがでしょうか。

この本文とただし書の書き方というのは,今私が言いましたような証明責任の分配をどうも想定せざるを得ないような書き方かなと思うのですけれども。何か妙ですよね。

 

 

といいますのは,この信託事務の処理については相当な理由があると,第三者に委託することについてと。しかし,その上で,いや,別段の定めがあるというのが出てくる。それが明示の定めである場合は比較的分かりやすいのですけれども,そうでない場合もあり得ますよね。

 

 

黙示の特約というのがあり得ますね。そうなってきたときに,何かちょっと重複しているのじゃないかな,妙な感じがあるなというのが私の一番最初の疑問です。

 

 

  •  委託したことでまず請求原因になりまして,抗弁が相当な事由があったと,それをつぶすために今度特約があったというのが,再抗弁ですか,出てくる。そういう筋書きではないかと思います。

 

 

  •  分かりますけど,内容的に大幅に重なりはしないかというのが質問の趣旨です。

 

 

 

 

 

  •  おっしゃるとおりのことは,ちょっと内容的に重なるところがありますね。構造的には,証明責任の分配としては一応説明できる。

 

  •  現行法ではどうなっているかというと,相当の理由が,最初の御説明にもありましたように「已ムコトヲ得サル事由」というのが一つあって,それ以外に,「已ムコトヲ得サル事由」があるというふうに抗弁する可能性以外に,そうではなくて,信託行為によって他人を使うことが許されているという抗弁を受託者の方がするというのが現行法の証明責任の分配になっていて,それを変えられるのかということですね。

 

 

  •  基本的には第三者への委託は自由な方向になっていますので,信託行為の別段の定めというのは今おっしゃった許可ができるという場合ではなくて,むしろ許可されていない場合というふうに考えておりますので,そうすると確かに証明責任の観点から不明瞭な部分が生じてくるというのは御指摘のとおりかとは思いますが,ここでの定めというのは,受益者の側から信託行為で禁止されている場合であるということを立証してもらうということになるのかなと考えておりました。

 

 

 

  •  一見,証明責任の細かい分配のように見えて,実は基本的な考え方が問われているところで,要するに何が言えれば請求できるのか,何が言えれば責任を否定できるのかという考え方が問われているのですね。

 

 

それで,現行法の考え方というのは,もともと他人を使ってはいけないという条文になっていますので,それで使った以上は責任追及できる。

 

 

それに対して「已ムコトヲ得サル事由」だとか,あるいは信託行為で別段の定めがあるから使えるのだよと,そういう形で立ててくるのですね。

 

 

そこがちょっと……,うまく考えられたところはあるのですけれども,やはり詰めて考えるとなかなか難しいところがあって,そこの整理が多分問われていて,そして一番難しいのが今の「別段の定めがある場合」というのをこういう形で書くと,そのあたりのごまかし切れないところがあらわれてくるのかなというのが質問の趣旨です。何度も申し訳ありません。

 

 

  •  持ち帰って検討いたします。

 

 

  •  今回の案は,一応現行法と違って「相当な場合には」という条件がありますけれども,一般的に許容するという前提のもとで,今の○○幹事の説明ですと信託行為で「別段の定め」というのを,今度はそれを一般的には認められる場合だけれども,更にそれを特約でもって制限している場合を指すのだという構造なわけですね。

 

 

 

  •  関連して,よろしいですか。質問です。

今の御発言の応酬と前提が違うのですが,信託行為に別段の定めというのは,処理を委託することができる場合を列挙しているケースではどういうふうに考えられるのか。それは「相当な場合」に含めて考えるのでしょうか。

 

 

私は,卒然と読んでいたときには,「別段の定め」は両方あるかもしれないし,あるいは正に委託可能なことをリストアップしていれば,相当かどうかのテストを経ずにオーケーということは当然に含まれるだろうと思っていたのですが,今のお二人の話では,どうもそこには触れられずに,反対の方だけ議論がなされたのかと。

 

 

すみれ

「わー。そうですね。」

 

 

  •  恐らく,これは,「できる」と書いてあれば,それは相当なテストは経ずにオーケーだと思います。逆に,書いてあるということは書いてないものがあるわけで,それをやったときにはやはり原則禁止ということになるのではないか,表裏あるのかなという気がいたしますが。

 

 

  •  「別段の定め」には両方あるわけですね。

 

  •  あり得ると思います。
  •  本文を中心にして,両側に別段の定めを置くことができると。

 

  •  あるけれども,かねて○○幹事が,重なる部分というのが両方同じ方向で,認める方向の「別段の定め」の場合に重なってしまうのじゃないですかねと。

 

  •  今の御指摘,本当は言いたかったことの一つなんですが。

ということは,受託者側で相当の理由があるということと,もう一つ別に,信託行為で使うことが許されているという抗弁も認めるという御趣旨なのでしょうか。そうすると,同じ事実が二つ,抗弁と再抗弁に出てきてしまうのではないでしょうか。

 

 

考え方としては,○○幹事が言われたのは,現行法の基本的なベースに近い形でおっしゃったのかなとは思うのですけれども。そして,実際に信託行為においてこういうことができるよと書くというのは,むしろ望ましい姿だと思いますので,こういう約定がある以上はできるのだというのが抗弁に出てくるというのは素直かなと,私なんかは思いはするのです。それがベースで最初の質問をさせていただいたわけですけれども。

 

 

 

  •  これは,必ずしも挙証責任のことまで十分考えた上での文言ではないような気がしますけれども,ただこうやって本文があってただし書になっていると,○○幹事が言われるようなことがあって,両者の関係が正に重なったりするので,そこはちょっと嫌ですね。

 

 

  •  今の○○幹事と○○幹事の御質問で,大体私のお尋ねしたいところは分かったのですけれども,ちょっと思っていましたのは,当初の案が信託行為に別段の定めがない限り他人に信託事務の処理を委託することができるということで,もともと原則自由ですよということの当初の案があったのが,今回,今ありましたように,相当の事由がある場合ということでいったんハードルが高くなって,それから私の方としては緩められる,若しくはまた更にハードルが高くすることも両方可能なのかなというふうな理解をしておったのですけれども,そういうものと,それからもう一つ,もともとここの部分の見直しというのが,信託事務処理を委託することが常態化しているという現状にかんがみということだったと思いまして,流動化を始めとして実際に事務処理をいろいろなところに委託している実態からいきますと,どうも相当な事由があるときというのでここに例示されているように,受託者より能力が高いとか,時間とか処理コストがかからないとか,後の方にはかなりかかってくる,対象となる部分はあると思うのですけれども,前段の受託者の能力の高さに着目して云々ということになってしまうと,幾ら安くてもやはりだめなのかなというところもありますので,ここはちょっと,かなり最初の案を見たときからすると違和感があって,もうちょっと当初の形に戻した方がいいのかなというふうな意見を持っていたのですけれども。

 

 

 

特に,受託者の機能,受託者に対する委託者の信頼とか期待といった部分については,そこまで考える必要がないのかどうなのか,ちょっとお聞かせいただければと思うのですけれども。

 

 

  •  基本的には,どういう場合に外部にといいますか,受託者が仕事を外に委託できるかというのは,やはり期待といいますか,最初は両当事者間の契約関係で決まるのだと思いますけれども,ここでのルールというのは,しかしそうは言っても基本的なスタンスとしてどういうのを設けるか,現行法のように原則はだめだということを明確にした上で,別段の定めがあればいいというふうにするのが出発点だったわけですけれども,それを前回,報告書の方で大幅に原則と例外を変えて,全部自由にした上で善管注意義務の問題にしたと。

 

 

 

今度は,少しそこが全部完全な自由じゃなくて,「相当な場合」というハードルをつけた上での自由なんですね。しかし,そうは言っても基本的には自由な立場で,ですからもし全面的に自由にすべきだという立場からすれば,一種のハードルを高くしたということはおっしゃるとおりです。

 

 

 

 

先ほどから問題となっておりますように,「相当な場合」ということでどういうものが入ってくるかというのと,信託行為の「別段の定め」ということで,それがどういうふうに原則に対してかかってくるか,これが現行法とは逆--逆という言い方は正確じゃないかもしれませんが,現行法は別段の定めでもって,いわば原則禁止を許すような形になっていますけれども,今度はちょっと違うので,条件つきでもって許されているものがあるので,それをもうちょっと広げるという場合もあるでしょうし,狭めるという場合もあるでしょうし,ちょっと「別段の定め」というのがいろいろな機能を果たすのですね,そこは少し複雑になっているかもしれません。

 

 

 

 

 

  •  同じ第22に関連してなのですが,3の委託された者の責任ですが,これは全く独立の話なのでしょうか。

 

 

それとも,1において相当性を判断するのに,どういったタイプの契約で第三者に委託するということならば認められるというふうな形で入ってき得る話なのだろうかというのが,まず1点,気になるところです。

 

 

とりわけ,○○委員がおっしゃったように,では,なるべく伝えないようにしておけばいいですよねみたいな話になりますと,あるいは相当性というものを責任の減免特約と無関係に判断できるのかというと,それも何か怪しいような気がするというのが第1点です。

 

 

第2点は,ちょっとそれとは話が違って,そこら辺がうまく整理ができた上に委託された者の責任というものが問題となったときなんですが,私は甲案の(1)の「全部又は重要な一部であることを知って」というのは,認識とかそういう問題じゃないような気がするのです。

 

 

 

つまり,受託者の職務というものをシェアして,自分も受託者の任務を負ってやるのだというふうに第三者が考えている場合には受託者としての任務を負うけれども,例えば信託専業会社ができて,そこから頼まれたらそれは信託の一部だろうというのが分かってしまうわけですが,分かったからといって突然郵政公社がその郵便物の分別管理義務を負うわけではないわけですから,知っている・知らないの問題じゃなくて,委任の趣旨みたいな問題じゃないかなと思うのですが。

 

 

すみれ

「郵政公社だ。」

 

 

 

二つ話しましたが,かなり性格の違う話なのですけれども。

  •  前者は関連させない方……。関連させると,非常に厄介なことになると思うけれども。減免していることを考慮の要素に入れて,相当な場合かどうかというのを判断しろということになるわけでしょう。そういう形じゃない話。

 

 

  •  それは,どちらかというと善管注意義務のところで判断するのですか。つまり,運送業者を使うのは当たり前である,それは当然であると。

 

 

ところが,きちんとした義務を負う,それで保険がかかっている業者と,自己のものと同一の注意しか負わないという約束のもとの運送業者がいたというときに,後者にするのは,それはこの違反ではないけれども善管注意義務違反になり得るということなのですかね。

 

 

 

 

 

 

  •  少なくとも,外部に委託することができるかどうかの基準としての相当性の中には,今のような契約の内容そのものは入ってこない。

 

これは一つの整理の仕方ですけれどもね。その上で,今,○○幹事が言ったように,しかしそうは言っても使った運送業者との間の契約関係が適当じゃないというときには,それは善管注意義務の問題にもなるでしょうし……。

 

 

ちょっと,どこで拾ったらいいか分からないけれども,少なくとも外部委託できるかどうかというところの基準で扱うのは,何か違うものというか,いろいろな別な要素をたくさん持ち込んでしまうことになって,非常に判断が難しくなりそうな……。

 

 

  •  業者を選ぶというのもここに入らなくて,証券を購入するということは当該受託者には直接には難しい行為であると。ということになりますと,どんな証券会社でもそれはいいと,1はクリアして。それの選任が悪いとき……。そうか,選任の義務で……。

 

 

  •  問題になるのだね。
  •  なるほどね。1はクリアするけれども,選任が悪いからだめだということになるのですか。

 

 

  •  だめだというのは,どこでだめだと言うかでしょう。第22のところでだめだというのか……。

基本的には,外部委託の場合にも……。これは,2の受託者の責任のところの選任監督義務,そこで判断すればいいのかな。

 

 

  •  2も,一応善管注意義務から派生してきているものとされておりますので,2の方で判断していくのかなという気がいたします。

 

  •  今言われたもう一つは,何でしたか。

 

  •  甲案の(1)に関して,知っている・知らないの問題じゃなくて。

 

  •  それは,おっしゃるような気がするけどね。

 

 

  •  確かにそうです。重要な一部ですかね,証券の保管を委託するわけですから。そこについては,しかし(2)で正当な理由があるときは減免特約をするという方向で対処できないかなという気はいたしましたけれども。

 

およそ第三者は,そんな委託は受けないでしょうから,そういうときには(2)で。

 

一応(1)であると,受益者に対して責任を負ってしまうわけですが,受託者が正当な理由があるものとして責任の減免特約をすれば,そうすると第三者は受益者に対する直接の責任はなくなりますので,そういう二段構えでの対処の仕方はあるのかなというふうには考えておりましたけれども。「知って」を緩く解釈すると,ですけれどもね。

 

 

  •  現行法がどういう考え方でできていたかといいますと,要するに委託者は受託者に対して一定の信託行為をしてくれということを頼んだわけですから,当然信託事務を処理することについての責任は問えるはずだと。

 

 

ただ,受託者が選任監督上の責任に限定される場合が一定の場合に発生するとするならば,その限りで問える責任が少なくなってしまうので,それはおかしいはずだと,もともと信託事務の処理を頼んだのだから,だから更に委託された第三者については,受託者と同じ責任を負わせないことには,委託者のもともと持っていた地位が害されることになってしまうという発想でできた規定だと思いますね。

 

 

そうすると,今の○○幹事の御指摘というのは全くそのとおりでして,要するに選任監督上の責任に限定されるということと,更に再委託を受けた者が責任を負うという場合が,恐らく連動するというのが現行法の考え方だとしますと,この第三者の方が同一の責任を負うと,受託者と同一の責任を負う場合には,翻って選任監督上の責任に限られるものとしても,委託者との関係では別に問題はなかろうと。

 

ですから,信託事務の処理をどうシェアするかということが,受託者と再委託を受ける者との間で,そこでの合意内容というのでしょうか,うまく分配されたときにそういう責任の分担が認められると。

 

 

そうじゃなくて,一方で選任監督上の責任に限られ,しかし再委託を受ける者には知らされないままで責任を負わないということになってきますと,本当に選任監督上の責任に限ってよかったのかというのが問われてくるところが,現行法の発想を前提にすれば出てくるのかなとは思うのですが,ちょっとそのあたりの考え方の整理が,乙案はともかくとして甲案でもちょっと見えにくかったなというのが最初にあるのですが。

 

 

 

いずれにしましても,先ほど言われましたように,知っている知っていないという問題ではなくて,信託事務の処理をどう行うのかということが,委託者との関係でどう行うのかということ,そしてその組織づくりというのでしょうか,そこが非常に重要じゃないかなと思うのですが,いかがでしょうか。

 

 

  •  恐らく,さっきの繰り返しになりますけれども,甲案でいろいろな処理の仕方を一応許容しているけれども,つまり第三者が全く同じ責任を負う場合と軽い責任を負う場合と,それを選択できるような形になっているけれども,ここに書いてあるだけだとそれが今の2のところの責任に結びつくのかどうかというのははっきり書いていないけれども,そこと連動させて考えるべきだという御趣旨ですね。それは,何かあってもよさそうな気がしますね。

 

 

 

 

 

 

  •  これは2の話ですけれども,委託することが相当な場合には,選任及び監督についてのみ責任を負うという規定にして,具体的にどんな場合なのかというのを33ページの方で見ますと,先ほど○○委員の方からお話があったように,二つ挙げられていて,受託者より高い能力を有する専門家を使用する場合,それからもう一つが特に高度な能力を要しない事務について,受託者が自ら行うより他人に委託した方が費用や時間などの点で合理的な場合と,二つ挙げられています。

 

 

これについて考えてみると,何か高い能力を有する専門家を使用する場合は選任及び監督についてのみその責任を負うというのがしっくりするような気がするのですが,もう一方の,こっちの方が安いよというやつだと,何か民法の履行補助者の責任のあたりとパラレルに考えたら,これは同じ責任を負う,選任及び監督に限定されない,結果について責任を負うという方が適切なような気がするのですね。

 

 

例えば,花屋が花を自分で届けるよりも,宅急便の方が安いからといって,それで届かなかったら花屋が選任及び監督しか責任を負わないというのは,ちょっと実際とは違うと思いますので,その辺のところはいかがでしょう。

 

 

 

  •  ここは,今おっしゃったのとは少し違う考え方でできていると思うけれども,どうですかね。要するに,選任監督の責任に限定して,履行補助者の過失みたいな考え方をとらないという……。

 

 

基本的には,こちらの方が安いよということでもって選ぶのも,少なくとも第1の要件,「相当な場合」という前提は満たす必要がありますけれども,そういう範囲内では受託者としては自由に外部に出すことができると。

 

  •  外部に出すのは自由でいいのですけれども,責任は負うと。

 

  •  責任は負いますけれども,そのときの責任は,しかし選任監督というのがここでの一応の考え方ですね。それでは足りないのではないかというのが,今の御意見ですね。

 

  •  口を挟んでいいのかどうか……。

やはりアメリカその他では,そういう区分が結局はできない。今のような例だと分かりやすいのですけれども,やはりグレーのところがあって切れないので,一つのルールでということになっているということです。参考までに。

 

 

 

 

  •  選任監督というのは,一応1の要件のところでもって外部に出していいという前提はクリアしていますので,あとは実質的に監督あるいは選任についての過失があれば責任を負いますよというのがここの考え方ですけれども,履行補助者という考え方になってくると,そういうことに関係なく,全面的に責任負いなさいという,そういう考え方ですよね。それはあり得なくはないのかもしれないけれども,一つはやはりより当事者の選択というか,自由な契約による選択というものを許すスキームとして考えていこうと。

 

 

 

もともとの案は,もっと広く,基本的には受託者の善管注意義務の問題として考えればいいだろうということで,そういう考え方に基づいていますので,それ自体が適当でないという御意見としてはもちろん分かりますけれども,ある種の一つの大きな選択,どっちでいくかという大きな選択の問題ですね。

 

 

  •  一連の議論での補足なのですが,「知って」というところは適当でないということを述べたいわけですが。

 

甲案にすべきか乙案にすべきかということは別として,「知って」ということになりますと,棚からぼたもちといいましょうか,結局その受任者がそれを知っているか知っていないかという偶然で受益者に対しての効果は変わってくるということは,果たして受益者が期待したことだろうかということと思います。

 

 

ですから,そういう規律ということよりは,そもそも今回第22のところでは結局1のとおり規律したわけですから,現行法規と対峙する1のようにデフォルト化したわけですから,仮に委託者が受託者に対してある程度のアウトソーシングについても責任を持てよということであれば,この「ただし」のところでの別段の定めのところに,そのように例えばアウトソーシングするのであれば,一つのテクニカルな話なんですけれども,アウトソーシング先の債務不履行というのは,もちろん一義的な受託者に損害賠償請求しろということもありますし,直接的に,情報的な問題があるかもしれませんけれども受益者に対して直接請求することもできるというようなことを書くことを条件として,アウトソーシングを認めるというようなことを信託行為に書けばいいのではないかと思っております。

 

 

よって,別に受益者,又はこういう「知って」ということになりますと,先ほどから出てきますように,結局アウトソーシングを受ける先からすると,信託銀行から受託をするのだから,後で「知って」というふうに言われないかどうかということもあるわけですので,ちゅうちょするという,シュリンクするような効果も出てくるわけですから,そういう意味もあわせ考えますと,そもそも「知って」ということについて一つのメルクマールとすることはどうかなと。

 

 

むしろ,もし直接的に受益者に対しても責任を負うというようなことを隠したいということであれば,この「知って」ということではなく,○○幹事とはちょっと議論が違うかもしれませんけれども,その一部であることについてその責任を引き受けてというようなこと,契約はちょっと難しいと思いますけれども,そういうようなアウトソーシング先のある意味の委任契約に際しての契約意思ということを図って隠した方が,関連した当事者の意思にかなっている,期待にかなっているものではないのかなと思います。

 

 

 

 

 

  •  なかなか難しいのは,1,2,3がみんな関連しているのですよね,全体の仕組みをどう考えるかと。

 

 

3のところは,これは委託された者の責任ですから,ある意味で受託者から仕事を任された人間がどういう責任を負うのかというのが分からないようなルールは困るだろうと。

 

それから,○○委員が言われたような問題もありますけれども,少なくともまず第1にはどういう責任を負うか分からないというのは困るだろうということで,この原案では信託事務の処理の全部又は重要な一部であることを知っていて委託を受けた場合というのは,信託の一部を分担しているということになるので,そういうときには受託者と同一の責任を負わせても構わないのではないか,そういう考え方でできているわけです。

 

 

ただ,そういう考え方で説明するにしても,ただ「知って」というのではやはり足りないのではないかというのが,今の○○委員のお話だと思いますけれども,そういう意味でやはり一部分担するのだ,引き受けるのだというような意思があるということで,受託者と同一の責任を負わせるというのがいいのではないかという御意見だったと思うのです。それは,一つあり得ることですね。

 

 

 

ただ,そういう考え方をとったときに,(1)と(2)との関係がどうなるか,矛盾はしないのかもしれないけれども,どうなるのかというのをもうちょっと詰めた方がいいかもしれませんね。

 

それから,先ほどから問題となっている履行補助者の問題もそうですけれども,履行補助者の場面というのはやはりちょっと違うかもしれないと思うのは,ここでは信託の事務の処理の委託の場合には,少なくとも処理を委託されるいわば第三者といいますか,最後の委託された者ですけれども,ある意味では履行補助者に近いような見方をすることもできますけれども,基本的にはこういう委託をされる者というのは独立のもので,独立の責任を負うという前提で恐らく考えているのだろうと思うのですね。

 

 

そういう意味で,三者の間でどういう形で分担したらいいかということを考えなくてはいけないという意味で,1,2,3というのが全部関連している。

 

 

 

その上で,どういう原則でやっていくのか,ちょっと繰り返しになりますけれども,私の勝手な整理だけれども,やはり一応相当な場合という要件をクリアすれば,他人に事務を委託しても構わないのですというところから出発してどうなるか。

 

 

そこで,○○幹事が言われた従来との比較ですけれども,ちょっと微妙かもしれないけど,一定の場合には,相当な場合には信託事務を処理を委託しても構わない,そういう意味では受託者あるいは受益者からすると,全部を受託者がやるということを最初から期待してはいけないという--ちょっと言い方は強過ぎるかもしれませんけれども,そういう制度のもとで考えると,それでまず1がクリアされて,2のところもクリアされたときに,2と3が連動しない形で,つまり選任監督だけの責任なのに3のところでもって甲案で(2)というのが出てくる可能性が,論理的には一応あり得る。

 

 

余り納得されないかもしれないけれども,従来の考え方と少し違う。今までのは,信託の場合には受託者がすべて必ずやらなければいけなくて,それに対する全面的な期待が委託者側にあったのが,そこが保証されていないというところがちょっと違うのじゃないかと思うのですけれども。

 

 

 

 

 

 

  •  ちょっと別の話になりますけれども,よろしいですか。
  •  余り時間がなくて,申し訳ないけれどもできるだけ手短にお願いします。

 

  •  21,22,23と,キーワードは強行規定,任意規定という話なのですけれども,21は○○委員がおっしゃったことと関係があって,分割管理義務について最低何が強行規定なのかというと,帳簿上の分別というのはもう強行規定ですというお話があって,それだけと言ってもいいですか。

 

 

 

  •  登記・登録も。
  •  それでは,○○委員の趣旨とは違って……。

 

 

  •  絶対的な登記・登録ではなくて,いざというときには登記・登録をする。そういう柔らかな義務ということになります。

 

 

すみれ

「柔らかな義務かぁ。」

 

 

 

  •  分かりました。

それから,22の今の話とはちょっとあれなのですが,これ強行規定はどこなんだろうと思うと,2の(2)はこれは強行規定ですか。

 

それから,3のところも甲案は強行規定ではないですよね。外すことができるのですから。ただし,「正当な理由があるときは」というので,ここの外し方だけ加重しているのですね。これはバランスとしてどうなのだろうかという,そういう点です。22は。私の方の観点は。

 

 

23へ行きます。帳簿作成義務。この1の帳簿作成義務は,これはきっと強行規定だという趣旨ですね。

 

それから,2の情報提供義務は「信託行為に別段の定めがない限り」とあるから,これは強行規定から外していますね,任意規定で。

 

今度3ですね,「利害関係人は」何とかかんとかというの,これ強行規定ですか。それとも信託のスキームのつくり方で,利害関係人にもう少しプラスの権利を与えてもいいという趣旨ですか。あるいは,全然なしということは--全然なしはなかなか難しいのかもしれないけれども。

 

 

 

それから,むしろ普通にアメリカで問題になっているのは次の受益者が説明を求めることができるというか……,とにかく請求権のところで問題になるのは三つ。

 

 

 

番人

「次の受益者かぁ。そうですね。家族信託であれば争いになるなら信託終了でも良いと思うんだけど。」

 

 

 

一つは,信託のそもそもスキーム,信託証書あるいは信託情報というのか,それが全部私に開示してくれますかという話が一つですね。

 

それから二つ目が,実際に信託が動き出して,信託財産の管理運用の状況を知りたい。三つ目が分配のところで,これは1と連動するのですけれども,実際に複数の受益者がいる場合に,私はここだけもらっているのだけれども,隣の細野委員はこんなにもらっているということを知ることができるかどうかみたいな話なのですけれども,これは何か,帳簿等というところへこの三つを全部入れ込んでいるのか,ここでは何か信託財産の管理運用のところだけが表に出てきているものだから,どこまでを含んで情報提供義務とか説明とかいうことを言っているのか。

 

 

これ,民事信託ではすごく問題になるのですね,だれが受益者で,私のお兄ちゃんの方が私よりいっぱいもらっているとかいうような話があって,だから情報提供義務を制限しようという話があり,しかし一方ではやはり強行規定として情報提供はやらんといかんというのがあって,最大のジレンマになっているものですから,ということです。

 

 

 

 

番人

「ここで民事信託が出てくるのかぁ。家族間ではそんなに問題にならないような気もするけど。」

 

 

  •  今のは,結構難しい問題かもしれませんね。要するに,基本的には受益者が自分の受益権について知る権利があって,それを評価する,自分の受益権はどういうものであるかということを評価するためにほかと比較しなければいけないというときですね。

 

ちょっと理論的にかなり難しい問題のような気がするのですけれども。

 

  •  細かいことは復習させていただきますが,一言で言えば,帳簿閲覧請求権というのは非常に重要な権利だと,権利保全のための重要な権利だと考えておりますので,基本的には強行規定であるというふうに考えておりまして,2の情報提供義務だけはほかの方法もありますので,これは任意規定ですが,3とかの利害関係人であれ受益者であれ,これは単独の権利で,かつ強行的なものであると。だからプラスするのは構わないとしても,これを削減する方向に行くのはだめだというふうに考えております。

 

 

  •  その上で,「帳簿等」というところに何が入るかという問題ですね。では,これはもうちょっと考えます。

 

まだ御意見がおありだったかもしれませんけれども,時間が来てしまいました。また今回の積み残しがありますので,次回の冒頭にでももし御意見があれば伺うということでよろしいでしょうか。

それでは,今日はどうもありがとうございました。

 

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すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。」

 

眼は、いつでも思った時にすぐ閉じることができるようにできている。

しかし、耳のほうは、自分では自分を閉じることができないようにできている。

なぜだろう。  (大正10年3月、渋柿)―「柿の種」寺田寅彦より

 

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