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2016年加工編   法制審議会信託法部会   第3回会議 議事録
2016年01月10日

2016年加工編

法制審議会信託法部会

                       第3回会議 議事録

 

 

 

第1 日 時  平成16年10月29日(金)  自 午後1時00分

至 午後5時00分

 

第2 場 所   法曹会館「高砂の間」

 

第3 議 題

信託法の見直しに関する検討課題(1)について

 

第4 議 事   (次のとおり)

 

 

 

議    事

 

  •  それでは,法制審議会信託法部会第3回会議を開きたいと思います。

(関係官の異動紹介省略)

  •  それでは,早速今日の審議に入っていきたいと思いますけれども,今日も大体前回と同じように,途中の中間の休みまでに二つに分けて議論し,休みの後も二つに分けて議論するという形でやっていきたいと思います。

それでは,○○幹事の方から説明をお願いします。

 

  •  ただいま○○委員の方から御紹介がありましたように,前半を二つのセッションに分けて議論をいただければというふうに思っております。まず,第1セッションといたしましては,「第1 信託の設定について」,「第3 脱法信託について」,「第4 詐害信託について」。続きまして,第2セッションといたしまして,「第5 受託者の不適格事由について」,「第6 受託者の利益享受の制限について」,「第7 受託者の職務の引受けについて」,「第8 信託の公示について」というところを扱って,途中休憩とさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

 

それでは,早速でございますが,「第1 信託の設定について」というところから,初めに私の方から今回の資料の概要を御説明申し上げます。

第1は,現行法1条の信託の定義に相当する,信託の設定に関する提案でございます。

 

このうち,太字の1,2の記載内容とアステリスクの記載内容は,部会資料2,前にお配りいたしました「信託法制研究会報告書」と同じでございまして,そのポイントは第1回会議の際に御説明申し上げたとおりでございますので,ここでは省略させていただきます。

 

なお,5ページの(注2)のとおり,信託財産の名義人のほかに信託財産の帰属しない者がいる場合についても,信託行為においてこの者を受託者と定めれば,信託上の共同受託者と解してよいものと考えているわけでございますが,この点に関しましては,信託行為を変更すれば無限定に名義人以外の共同受託者を追加できるのかという問題があり得ますところ,この点につきましては,後日,受託者が複数の信託に関する規律のところで改めて御審議を願いたいというふうに思っているところでございます。

 

本日,この中で特に御審議いただきたいのは,次の3点でございます。

 

 

 

 

 

まず第1は,これは第1回会議でも詳細に御説明したところでございますが,信託の定義といたしまして,太字の①,②に加えて,アステリスクの問題,すなわち,当事者において,信託財産に受託者からの倒産隔離の効果を生み出す前提となる分別管理義務を受託者に課すことを意図しているということを,当該法律関係を信託と認めるための要件の一つとして明記すべきかどうかという点でございます。

 

この点につきましては,信託の基本に係る事項でございますので,本日,是非とも詳細な御審議を願えればと思うところでございます。

 

次に,第2点といたしまして,太字の1①におきまして,信託設定における財産の処分の例示として「担保権の設定」を挙げたというところでございます。

 

第1回会議におきましては,担保付社債信託法の場合に限らず,一般の債権についても,信託のスキームを用いれば,債務者を委託者,担保権者を受託者,債権者を受益者とする担保権の設定をすることが可能であるということが解釈上認められていると申し上げるにとどまらず,法律上その可否について争いが生じることを回避するという趣旨で「担保権の設定」を明示したというように,いわば実務的なニーズを踏まえた結論部分のみを簡単に御説明いたしました。

 

この点に関しまして,今回の資料におきましては,被担保債権の債権者と担保権者が分離する結果となる担保権の信託,今後「セキュリティ・トラスト」と申し上げますが,そのようなトラストが信託のスキームを用いればなぜ可能と言えるのかという点につきまして,理論的観点からの考察を加えてみました。これが,資料では2ページの上から7行目以下の部分でございます。

 

この点につきまして若干口頭で御説明申し上げますと,次のとおりでございます。

 

民法上は,質権者及び抵当権者は自己の債権の弁済を受ける権利を有すると規定されておりますことからしますと,民法は債権者と担保権者が同一であることを原則としていると考えられます。

 

しかるに,セキュリティ・トラストにおきましては債権者と担保権者が分離することになりますので,この民法上の原則に抵触しているかのようにも見えます。そこで両者の関係をいかに解するかというのが理論的な問題となるというふうに思うわけです。

 

 

 

 

まず,民法におきましては,担保物権の発生には債権の存在を要件とし,債権が消滅すれば担保権もまた消滅するとされております。これを担保権の付従性と言うのであれば,セキュリティ・トラストのスキームにおきましても,受託者が有する担保権は,受益者の有する債権の存在があって初めて成立するものでございますし,受益者の有する債権に対して弁済がなされれば,受託者の有する担保物権も当然消滅するということでございますので,担保物権の付従性の原則を修正するものではないと言うことができると考えるものでございます。

 

次に,担保物権の随伴性に反するか否かという問題でございますが,これにつきましても,担保物権の随伴性というのは,債権が他人に譲渡されれば担保物権もこれに従って他人に譲渡された債権を担保するということを言うのであるとすれば,今回のセキュリティー・トラストのスキームにおきましても,債権が譲渡されれば,受託者の有する担保権は譲渡された当該債権を担保するということになりますから,担保物権の随伴性の原則を修正するものではないというふうに考えるものでございます。

 

現に,担保附社債信託法のスキームにおきましても債権者と担保権者は分離しておりますが,このスキームが民法上の原則と抵触しているとは解されておりません。

 

これは,担保附社債信託法におきましても,担保物権の付従性,すなわち担保権の実行により回収された金員が社債権者に分配されるということが制度上確保されており,また,担保権の随伴性も確保されているからであると考えるわけでございます。

 

 

 

 

以上によりますと,セキュリティ・トラストのスキームは民法上の原則と実質的に何ら矛盾・抵触するものではなく,セキュリティ・トラストにおける担保権は民法上の担保権にほかならないと言うことができるのではないかと思うわけでございます。

 

なお,セキュリティ・トラストを明文化するに当たりましては,今申し上げました民法関連の問題のほかに,詳論はいたしませんが,5ページの(注3)のところに書かせていただきましたとおり,民事執行手続上の問題,すなわち,手続上の当事者を担保権者と扱っていいのかどうかという問題ですとか,あるいは不動産登記上の問題があり得るところでございます。

 

 

 

番人

「不動産登記では、乙区に抵当権設定と信託の登記が同じ順位で記録。抵当権者は受託者、信託の付記登記には信託目録番号が記録される。信託行為の詳しい内容は信託目録に記録。債権者は受益者で記録される。」

 

ポリー

「設定の時に受益者の同意が必要か、担保されている債権はいつ消滅するのか、など難しいようですね。」

 

 

 

以上お話し申上げた考え方や問題指摘につきまして,御審議をいただければというふうに思います。

 

最後に,第1回会議で御指摘のあった点でございますが,信託契約の要物性の問題でございます。

 

現行法上,信託契約につきましては,当事者の合意のほかに,信託法1条において財産権の移転が必要であるとされておりまして,それを根拠に信託契約は要物行為であると解する見解が有力でございます。

 

ただ,そこで言う「要物性」というのが,契約の成立要件のことなのか,それとも効力発生要件のことなのかというのは必ずしも明らかではないと思われます。

 

しかしながら,この提案に当たりましては,信託契約は要物契約であるか否か,あるいは要物性の意義いかんという解釈にはとらわれず,むしろ,ここで保護しようとしている当事者の利益の実質,すなわち,単なる当事者の合意のみで,財産の処分がない段階においては,財産の処分がなされるまでなら委託者はいつでも意思表示の撤回が可能であると解されかねず,実際に信託事務を行うために準備行為等をしていた受託者や,受益権の帰属を期待していた受益者の利益が害されかねない,そういう実務上の懸念,あるいは法的不安定性と申しますか,そういうものを払拭する必要があるという点に着目いたしまして,このような懸念に対処するという現実的な観点から適切と思われる規律を設けることを提案するものでございます。

 

 

 

 

具体的には,太字の3のとおり,書面による信託契約がなされたとき,又は財産の一部でも履行がなされたときは意思表示の撤回を行うことができないといたしました。

 

これらの場合につきましては,信託契約の成立要件イコール効力発生要件の基準として委託者の信託設定の意思が客観的に明確なものになったと言えますとともに,これによって受益権が発生し,信託財産の処分を待たずとも受益者に受益権が帰属することになると解されまして,委託者,受託者,受益者の利益調整の観点からも適切であると考えられるからでございます。

 

このような考え方につきまして御審議を願えればと思います。

 

では,続きまして,第3の脱法信託につきまして簡単に御説明をいたします。

 

第3は,太字の1におきまして,脱法信託を禁止するもの,太字の2におきまして,脱法信託の例示として,訴訟信託,すなわち,非弁護士が弁護士代理の原則に反して他人のために訴訟活動を行う場合,民事訴訟法54条でございますが,そのような場合と,非弁護士が法律事務を業として取り扱う場合,弁護士法72条に違反する場合を禁止するものでございまして,現行法の10条と11条を基本的に維持しようとするものでございます。

 

 

なお,6ページの説明文中の3行目から書いてございますとおり,ある法令において特定の者について財産権の享有が禁止されている場合において,第10条があるからといって当該者が信託を通じて当該財産権の受益者となることが常に禁止されるわけではなく,当該法令の趣旨を勘案して決すべきであると考えております。

 

これは,例えばでございますが,法令によりある会社の株式を50%以上取得してはならないとされている場合におきまして,その法令の趣旨が50%以上の議決権の行使を防止するという点にあるとするならば,確かに所有者となることは法令違反となるとしても,50%以上の株式を信託した上で,その信託の内容が,配当を受けることはできるが受託者に対して議決権行使の指図はできないというようなものであれば,このような信託を設定して受益者となることまでもがただいま申しました法令違反となるわけではないであろうといったような趣旨を述べているところでございます。

それから,引き続いて書いてございますが,法令に違反して本人が財産権を享有する行為をした場合において,本人の行為に係る私法上の効力が否定されるものでないときは,信託を通じて当該財産権を有することと同一の利益を享受することとなっても,当該信託の私法上の効力までもが否定されるものではないと考えております。

 

これは,例えば,法令によりましてある土地を売買によって取得することが禁止されるといたしましても,その私法上の効力,すなわち売買による所有権の取得という法的効果までは否定しない,法的な制裁は一定の範囲で課されるとしても,所有権の取得という効果までは否定しないというのがその法令の趣旨であるならば,いったん所有権を取得した上で自益信託を設定して受益権を取得することとしても,かかる自益信託設定行為の私法上の効力もまた否定されることにはならないという考えを示したものでございます。

 

最後に,太字の2のただし書でございますが,これは,現在,一定の正当な理由又は合理的な必要性がある場合には任意的訴訟担当を認めるのが判例・学説,更には実務の立場であることを踏まえまして,訴訟信託の禁止の例外を認めたものでございます。

 

 

 

 

 

では,このセッションの最後といたしまして,第4の詐害信託につきまして,これは少々詳しく御説明を申し上げます。

 

第4でございますが,これは,現行法12条の定める詐害信託の取消しに関しまして,その内容をいわば全面的に改めることを内容とする提案でございまして,第3で申し上げました脱法信託の禁止,訴訟信託の原則禁止とともに,不法な信託の禁止に関する第3の規律を定めたものでございます。

 

現行規定によりますと,受託者,受益者の主観的態様いかんにかかわらず,換言すれば,受託者のみならず,受益者が受益権を取得した当時におきまして当該信託の詐害性について善意であるときであっても,債権者は詐害行為取消権を行使することができるというふうになっております。

 

 

確かに,第2項によりますと,受益者が受益権を取得した当時に善意であったことのみならず,現実の給付がなされたときにおいてまでも善意・無重過失であれば,既に受けた利益,すなわち既得権の返還を免れますが,それでも将来にわたって給付を受ける権利は奪われてしまうことになるわけでございますし,まして,たとえ受益権を取得した当時に善意であったとしても,現実の給付がなされたときに悪意・重過失でありますと,既に受けた利益についても全部返還義務が課されてしまうというわけでございます。このような現行の取扱いは,民法上の詐害行為取消権を見ますと,

 

 

 

 

例えば贈与契約の場合におきましては受贈者が契約時に善意であればそもそも取消権を行使することができないとされていることと比較しまして,平仄がとれていないと思われます。

 

すなわち,信託の受益者にとって厳しきに失するのではないかと考えるわけでございます。

 

受益者が受益権の取得時において善意であれば,もはや取り消させる必要はないのではないかということでございます。

 

そこで,この提案におきましては,まず,太字の1にありますとおり,受益者が受益権の取得時において善意であったか否かによってその保護の要否を区別することといたしまして,受益者が受益権の取得時に善意であった場合には,その後,現実の給付がなされたときまでも善意であったか否かにかかわらず,取消権を行使することはできないといたしました。

 

一方,受託者につきましては,信託について直接の利害を有しないものと考えまして,現行法と同様,その善意・悪意は問わないということにしております。

 

なお,受益者の善意・悪意の立証責任につきましては,現行法では,返還義務の範囲を定めるに当たり,取消権を行使する債権者側で立証するというふうに解されておりますが,この提案におきましては,受益者の側で自己の善意を立証すべきものと考えていることを付言いたします。

 

以上,民法424条の詐害行為取消権との比較で申しますと,信託の受託者と受益者につきましては,民法の受益者と転得者のように互いに独立した地位にはなく,むしろ信託の受託者と受益者の両者が相まって民法の受益者の地位あるいは範ちゅうにあると考えるものでございまして,その上で,信託財産が受託者の処分によって信託の外に流出し,信託財産に利害を有する第三者が登場した場合には,この第三者との関係は民法424条によって処理されると考えるものでございます。

 

 

受益者について受益権を取得した当時における善意・悪意を問題にするという点ですとか,受益者側において善意の立証責任を問う点については,いずれもこのような考え方,とらえ方と平仄が合うと考えるものでございます。

 

次に,太字の2でございますが,これは受益者が複数存在する場合に関する規律でございまして,この提案におきましては,受益者が複数存在する場合については,善意の受益者を保護する観点から,一人でも善意の受益者がいれば取消権を行使することはできないとしております。

 

他方におきまして,悪意の受益者についてはその利得分を享受させておく必要はないと考えられますので,民法上の詐害行為取消権とは別に,信託法上の請求権として,債権者の,受益権の取得時において悪意である受益者に対する,既に取得した利益ないし将来にわたる受益を含む受益権の委託者に対する返還,委託者から見れば譲渡請求権を創設することとしたものでございます。

 

 

以上の考え方の当否について御審議を願いたいと思っております。

 

なお,最後に,10ページの注について若干付言いたします。

 

まず,(注1)でございますが,これは,現行法上,受益者が現実の給付時にも善意であるため既得利益が保護される場合におきまして,受託者が価格賠償義務を負うのか否かが明らかではないということを指摘したものでございます。

 

本提案のもとにおきましては,債権者としては,受益者が善意であるため取消権を行使できない場合に,悪意の受託者の責任を追及することができるのかが問題とはなりますが,受託者と受益者をもって一体的に考える以上,債権者としては,悪意の受託者に対してのみ債権者取消権に関する責任を追及することはできず,あくまでも債権者取消権の枠外において一般的な不法行為責任を追及するほかはないのではないかと考えるものでございます。

 

これに対しまして,例えば,受益者が悪意の場合におきまして,受益者が善意の第三者に信託財産を処分して対価を得た場合ですとか,受託者が信託の枠外の第三者に対して信託財産を処分して対価を得た場合,このような場合につきましては,民法424条に基づいて,価格賠償を受託者,受益者全体に対して請求していくということができるのではないかと考えているところでございます。

 

それから,(注2)でございますけれども,これは,次のような問題意識を示したものでございます。

 

 

 

 

 

すなわち,この提案によりまして信託設定のための財産の処分行為が取り消された場合におきましては,受託者はその手元にある信託財産,すなわち受益者に対する未給付部分を委託者に返還しなければならないということになります。

 

ここで受託者が,信託財産の所有権を取得したことを前提に,取消権の行使に先立って既に第三者との間で信託債務を負担してしまっている場合におきましては,受託者としては,信託財産を返還してしまうことにより当該債務を自己の固有財産から信託債権者に対して弁済しなければならないというリスクを負うことになるのではないかと思われるわけでございます。

 

言いかえますと,信託財産が信託債務に関する責任を負担したままの状態で返還されることになるとか,あるいは,受託者において信託債務を清算の上で,残余信託財産のみを委託者に返還することができるとか,そのような考え方をとれば別といたしまして,そうではない限り,受託者といたしましては,詐害行為取消権の消滅時効の期間が経過するまでは,当該信託が詐害信託であればこのようなリスクを抱えることになるという危険性を覚悟しなければならなくなるのではないか。

 

 

このような結論は,悪意の受託者であればともかく,善意の受託者にとっては酷ではないか,民法であれば善意者に対しては詐害行為取消しができませんのに,信託ではできますので,善意の受託者にとっては酷ではないかという問題意識でございます。

 

また,これを信託債権者側から見ましても,責任財産が信託財産に限定された有限責任債権である場合はもちろんといたしまして,固有財産に対してもかかっていける原則的な無限責任債権である場合につきましても,取消権の行使により返還されることとなる信託財産に追求していくことができなくなるといたしますと,信託の詐害設定について無関係な債権者にとっては多大な損害をこうむりかねないのではないかという問題意識でございます。

 

もとより,このような結果,特に後で申しました詐害行為を前提とする債権者が害されるという事態は民法424条の場合にもあり得ることでございまして,仕方がないと割り切らざるを得ないのかという感じもいたすところでございますが,この点につきまして適切な処理方策がないか否かを御審議願いたいというふうに思っております。

 

とりあえずの説明は以上で終わらせていただきます。

 

  •  それでは,ただいまの範囲でもって御議論いただきたいと思いますが,いかがでございますしょうか。

 

  •  何点かあるのですが,まず,第1の信託の設定の,先ほど御説明のありました5ページの(注3),執行法との関係ですけれども,ここでは,手続を起動する者が,通常の場合は債権者がなるというのとは違うシチュエーションなわけですけれども,それは解釈で対応できるだろうというふうに記述してあります。

 

 

もちろん,この方向で議論できれば一番いいと思うのですが,例えば,担保附社債信託法の83条が受託会社の申立権を定め,88条で弁済受領金の分配義務を定めているということまで,全部これは解釈で賄えるのかどうか,まだ少し詰めなければいけないかなという気がしております。

 

 

 

 

 

 

気になりますのは,手続の起動をするイニシアチブを持っている人と,配当を最終的に受け取る人がずれる場合として,ここずっとしばらく問題になっておりますのは,株主代表訴訟において株主が勝訴した場合に株主が強制執行をすることができるかという議論がずっとあるところなのですが,実務を中心にということかもしれませんけれども,消極論もそれなりに強くて,つまり,あれは解釈ではできないという議論もそれなりにあるのですが,そことどういうふうに差をつけていくのかということがこれから問題になろうかと思います。

 

更に言えば,不動産執行のみならず,債権執行でどうなるのかということも考える必要がありましょうし,個別の点で言えば,配当の関係とか執行異議,執行抗告等,不服申立てとの関係も少し整理する--それはもちろん手続法の方でいろいろ考えなければいけないのですが,どこまで解釈論で対応できるのか,なお少し詰める必要があるかなという気がしております。

 

現時点で何か事務局の方で幾つかの点についてもしお考えがあれば,聞かせていただければと思いますが。

 

  •  何かありますか。

 

  •  御指摘のあった執行手続上の問題につきましては,我々といたしましては,このセキュリティ・トラストの担保権者もその地位に基づいて担保権の実行ができるであろうし,あるいは債権者に対する催告ですとか,配当の呼出しですとか,配当の受領ですとか,すべて担保権者を手続上の当事者として扱うことができるというふうに解釈できるのではないかと考えているところでございますが,今お話しになられました担保附社債信託法83条等の解釈の問題なども踏まえまして,執行手続上遺漏がないように整備を図っていきたい,この点につきましては関係部局とも調整して図っていきたいと思っているところでございます。

 

 

 

 

 

 

  •  「第1 信託の設定について」に関して意見を述べたいと思います。3点,主要な議論があるということでございますが,その一つずつを述べたいと思うのですが。

 

分別管理を要件にすることについてどう考えるかということでございますけれども,これについては,実務的な観点から申し上げるわけですが,両論あり得るのかなと思っております。

 

一つは,やはり,信託を,委任とか匿名組合とか,ほかの法形態からどう規律するのかということのメルクマールをどうするかという話だと思うのですけれども,昨今の判例にあるように,信託であると思っていなかったものが,突然,信託であるとされるリスクを考えるならば,やはり信託と信託でないものということの切り分けをはっきりさせる必要があるのではないかというふうに思っているわけです。そこで,一つの切り分けのツールとして,分別管理義務ということを置くことはよいことではないのかなというふうには思っています。

 

 

すみれ

「信託法理ってものかな。信託と判断されるのはリスクになるのかな。実態に基づいた救済手段かなと思ったけど。」

 

 

 

半面,分別管理というそのメルクマール自体が,その義務の内容が抽象的であるということもありますので,そうした場合に,では実際の判断においてこれが本当に義務としてあるのかどうか,履行の有無についてはまた別の話であるということは理解しているのですけれども,メルクマールとして十分なのかどうかということについては,なお一考の必要があるのかなというふうに思っております。

 

二つ目に,いわゆるセキュリティ・トラストに関しての議論でございますけれども,これについては,実務の観点から言いますと,特にシンジケーションのマーケットの拡大及び低クレジットのシンジケーションも拡大しているということにかんがみれば,担保付のローンの流動化,セカンダリーマーケットにおける流動化ということが重要な関心事になっておりますものですから,これは非常に重要なことでございます。

 

 

すみれ

「シンジケーションは何名かで融資すること。セカンダリーマーケットは2つ目の市場。1つ目の市場は証券や債券を出す場面かな。2つ目の市場で売ったり買ったりするのかな。」

 

 

御指摘にあったとおり,方向性としてはいいものの,やはり手続的なものを完備していただきたいと思っておりまして,そこにおいては御議論がありましたけれども,民事執行法の問題とか,不動産登記法の問題とかあると思います。

 

 

 

 

 

それに加えて,非常に細かい話なのかもしれませんけれども,例えばほかの法規範にこれが違反しないのかどうかということもこの場で明確にしておいた方がいいかと思っております。

 

具体的には,今のところ二つ思いつくわけですけれども,一つは,これがある意味脱法信託にならないのかどうかということでございますけれども,考えてみるに,担保の受託者ということは一体何なのかと考えますと,ある意味,競売を実行するということぐらいなのかなと。

 

もちろん,担保の管理ということもあるわけですけれども。そうした場合に,これは二つ目の話になりますけれども,それが弁護士法違反にならないのかどうかというような論点も出てくるのかというふうに思っております。

 

ほかの規律との整理をしておく必要があるのではないかというふうに思っております。

 

三つ目に,要物性の議論でございますけれども,これは,第1回会議の審議の際に私の方からちょっと問題提起を差し上げたもので,このように反映していただきまして,非常に有り難いというふうに思っております。

 

実際のこの3の中身でございますけれども,これも実務的な観点から申し上げると,非常に穏当な内容だと評価できるのではないかなと思っております。

 

やはり一番の関心事は,前回の議論にもあったかもしれませんけれども,信託の契約みたいなものを設定したけれども,その後,実際の財産権の移転があるまでに何かあった場合に,受託者の義務はどうなのかとか,そういう,いわばその中間時における権利義務関係のことでしたけれども,究極的にはそれが撤回できるのかどうかという話になってくると思います。

 

そこで,この3の規律ということは,恐らく営業信託では特に書面における信託契約を締結することが実務だと思いますから,非常に実務的にもワークしやすい方法だと思っています。

 

 

 

 

 

その3種の論点に加えて,2点ほど,できれば問題提起を差し上げたいと思うのですけれども。

 

一つは,これは倒産隔離の議論,後ほどの倒産のところにも関係するかもしれませんけれども,いま一度,信託契約というのは双務契約ではないということを確認したいと思っています。

 

 

すみれ

「両方とも義務を負う契約じゃなかったんだ。委託者は何も義務を負わないってことかな。」

 

 

 

どうしてかと申しますと,例えば受託者が倒産した場合に,これが双務契約であれば,委託者ないしは受益者でもいいのですけれども,信託報酬支払義務という継続的な義務を負っているわけですし,受託者はもちろん管理を行う義務を負っているわけですから,それが仮に双務契約だと性質決定された場合,倒産した場合に管財人の双方未履行契約に関する解除権ということが発生してしまい得るという議論があり得ると思っているわけなのですけれども,それは,考えてみるに,信託の存続に関するものについては,これは財産権の移転ということでもう終わっているわけであって,管理の局面では単にそういう支払いが残っているということでございますので,少なくとも信託の存続自体については倒産には服さなくて,単に信託の受託者の辞任であるとか,受託者との関係で受託義務の問題としてとらえられるということであるということを確認できればと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

二つ目に,これは,「財産」ないしは「財産権」は何なのかという定義の話になりますけれども,将来債権がここで言う「財産」ということを確認できればと思っています。

 

将来債権については,債権譲渡特例法の改正案も今出ておりますけれども,経済的には非常に重要なものになっておりますが,これがここで言う「財産」の問題なのか,それとも,要物性の議論にもつながってきますけれども,そもそも将来債権を信託財産としたものというのが要物性の議論によって影響を受けるのであれば,非常に問題になるわけですが,私の考えるところでは,将来債権というのは一つの財産であって,また,将来金銭を受け取れるという期待ないしは経済価値に従って評価し得るものでございますので,報告書に,「「財産」には,金銭的価値に見積もり得るもの全てが含まれる」ということも書いてございますので,将来債権というのがここで言う「財産」に含まれるということを確認できればと思っております。

 

 

ポリー

「将来に受け取る予定の債権が財産になるっていうのは納得です。」

 

 

すみれ

「期待も財産になるんだ。」

 

 

 

以上,長くなりましたけれども,よろしくお願いします。

 

  •  幾つか,前回からも議論のある点ですけれども。

 

  •  今,何点か御質問がありました点につきまして,答えられる範囲で我々の考え方を御説明いたしたいと思います。

 

まず,セキュリティ・トラストは脱法信託ないし弁護士法72条の問題があるのではないかという点でございますけれども,それは恐らく,受託者は債権者の有する弁済受領権限に係る代理権を与えられたからであると構成する見解かと思うわけでございます。

 

しかし,先ほど申し上げましたけれども,受託者が担保権を実行できますのは,その担保権,抵当権自体に優先弁済を受けることができ,債務名義がなくても競売手続を実施できて,配当も受けることができるという権限が内在しているからだと考えるのであれば,受託者は固有の適格者として本人の地位に基づいて担保権実行を行いますので,御指摘のような問題は起きないと考えております。

 

 

すみれ

「受託者は受託者として差し押さえするから代理人ではないってことか。」

 

 

また,仮に御指摘のような,代理受領権を付与するのだという見解を採用するといたしましても,この提案にございますように,訴訟信託については正当な理由があれば認めるということにしておりますので,このような場合は正当な理由があるという要件に該当するのではないかと思っているところでございます。

 

それから,将来債権につきましては,我々も,「財産」に当たると考えているところでございます。

 

 

 

一番最後の,双務契約ではないというところでございますが,これは学説などを拝見いたしますと,信託契約上報酬が支払われる場合につきましては双務契約であると解する見解もございますので,今,○○委員がおっしゃった話は,委託者との関係では履行が終わっているのではないかというお話だったかと思うのですが,果たして双務契約でないと言い切れるかどうかという点は一つ問題ではないかと思います。

 

 

 

 

御指摘は,双務契約ではあるけれども,何か別の理由から双方未履行双務契約の解除権の対象にはならないという御理解なのか,そこら辺につきまして,もう少しお考えをお聞かせ願えればと思います。

 

仮に双方未履行双務契約といたしましても,受益債権は倒産債権としての拘束を受けないので,両すくみの状態の解消という目的からする解除権の対象にはならないというような考え方もあるところではございますし,他方,破産清算の必要性からということを強調すれば解除権の対象になるというような考え方もあるとは思われますが,そこら辺はなお考えの整理をしないと,一概に双務契約でないと言い切っていいかどうかはなかなか難しい問題があるなというふうに思っているところでございます。

 

 

すみれ

「双方未履行双務契約っていう契約があるんだね。」

 

 

事務局からは,とりあえず以上でございます。

 

  •  私も,3点にわたって。最初の2点は比較的簡単な話なのですが。

分別管理義務というのを信託の定義の中に入れるかということで,入れないということが原案として出ているわけですが,これに対して反対するつもりはありません。

 

ただ,文書の中で,例えば3ページの真ん中あたりで,「このような要件を設定してしまうと,分別管理義務が付随する匿名組合契約全てについて,これを信託と構成すべきであるという解釈論を惹起するのではないかとの懸念も存する」と。

懸念なんだろうかというのが若干気になるところで。分別管理義務のある匿名組合が信託として処遇されるというのは,そんなに変な解釈論だとは私は思いませんので,「懸念」というふうに書かれると,どうかなという気がします。

 

 

ポリー

「たしかにですね。」

 

 

2番目のセキュリティ・トラストなのですが,これは,先ほど○○幹事の方からもお話があったわけですけれども,確かに民事執行法制定のときに,抵当権に優先弁済権があるかという話があって,債務名義は要らないということで,最終的に,内在しているという話になったわけですが,そのときの議論の前提というのは,抵当権者イコール債権者であるということが前提になっていたような気がするわけでありまして,その議論及びそれを前提にしていた民事執行法の現在の債務名義が要らないということを根拠に,抵当権自体に債権の優先弁済受領権が内在しているから固有適格者の地位で手続を追行することができるというのには,若干論理の飛躍があるのではないかという気がします。

 

 

 

別に構わないと個人的には思いますが,最終的には,やはり解釈論で賄っていくというのは難しいところが多々あると思いますので,是非,民事執行法の関係諸規定を整備いただければというふうに考えます。

 

そのときに考えていただきたいのは,配当が手続上なされたときに被担保債権が消滅するのだと,別に受託者が債権者に配ったときに消滅するのではないのだということも,あわせてはっきりさせていただければと思います。

 

 

 

ポリー

「たしかにですね。前提が違いますね。担保されている債権がいつ消滅するのかもはっきりした方が安心ですね。」

 

 

 

 

 

3点目の信託設定契約の話なのですが,これはちょっと私よく分からないところがございます。

 

と申しますのは,書面によらざるものは取り消すことができる,処分がなされたときはこの限りでないというのは,あたかも贈与に関する民法の規定を思い出すわけでございますが,これは民法549条,550条という順番で規定されているわけでありまして,549条においては,贈与契約の成立がどういうふうなことでなされるかというのが書いてあって,550条において,その成立した贈与契約が書面によらざるときは取り消すことができる,ただし履行があったらだめであるというふうになっているわけですよね。

 

これは条文の形で書いていらっしゃるわけではないのであれでございますけれども,現行の信託法とか,あるいは今日の資料の1ページの1のところの信託の定義という形の書き方をして,それで3の,書面によらないときには取り消すことができるということになると,設定というのはどうやるんだろうかという,何か前提が飛んでいるのではないかという気がするのです。

 

それが気になるところであります。

 

 

 

 

 

そして,2番目に,設定については意思表示でできるというふうに仮に書いたといたしましても,贈与に関しては,軽率な場合があるのだとか,いろいろな規定の趣旨というのがあるのですね。

 

しかるに,信託においてもしそういうふうな書き方をきちんとしたとしましても,なぜ書面によらざる信託は設定契約の時点で取り消すことができたり,しかし一部でも処分がなされれば取り消すことができなくなるのかというふうなことに関しまして,贈与と同じような何らかの趣旨,理由説明というのは可能なのかということが,私には若干気になるのですが。

 

 

 

結論から言うと,私の最後に申し上げたことは可能なような気もするのですが,それよりも,ストラクチャーとしてこのような形で3を置くというのは多少難しいのではないかということについて,意見として聞いていただいても結構ですが,もし何かありましたらお教えいただければ幸いでございます。

 

 

番人

「頷くことしかできないな。」

 

 

  •  では,今の最後の設定の点。
  •  御指摘につきまして,要物性の問題にしましても成立要件という効力発生要件を分けるべきではないかという御趣旨かと思いまして,そこはちょっと,我々はそこを一緒のものだと考えて書いてしまっているわけでございますが,贈与契約の規律の仕方などとあわせまして,もう一度そこは考えてみたいと思います。

 

ただ,書面によらざる場合は取り消すことができるとか,一部履行したら取り消せないかという趣旨につきましては,軽率な者を保護するという贈与の趣旨とは異なりまして,ここはむしろ,信託事務処理の準備をした受託者ですとか,受益権の発生を期待した受益者の期待を保護するという観点からは,書面によった場合ですとか,あるいは一部履行がされれば,そういう期待は当然生まれるだろうと。

 

そういう観点から,もはや取り消すことができないという規律をしているというのが,その趣旨ということでございます。

 

 

すみれ

「贈与契約との違いか。受益者が贈与を受ける人としたら、受託者がいることが違いかな。」

 

 

 

もう1点は補足でございますが,○○幹事が先ほど,分別管理義務を定義から落とすということにした上でとおっしゃいましたが,我々は,そこはなお検討するということで,どうするかというのを今検討しているところですので,もし,入れるべきだという御趣旨でしたら,まだそういうことは十分可能ですし,もう要らないということでしたら,そういう前提でということですので,まだ決め打ちしているわけではないということをお含みおきいただければと思います。

 

 

 

 

  •  私は,意見といいますか,感想的なものなのですけれども,先ほどからセキュリティ・トラストの関係で議論されておられると思うのですけれども,この問題点としての一つが,債権者と担保権者の分離というところ,それから執行法上どうなるのかという問題だと思うのですけれども,訴訟実務と執行実務の中でこれに類する例というのがございまして,担保附社債信託法以外にもあるということを御存じの方もいらっしゃるとは思いますけれども,一応御紹介したいなと思って,ちょっと発言させていただきます。

 

 

それは,具体例で言いますと,サービサー会社ですね。法務省認可のサービサー会社は,弁護士法の特例として債権を譲受けた上での回収,それから委託を受けての債権回収ができるわけですけれども,自己の名をもって取立関係ができるという規定がございますので,サービサー会社が立ち上がった当初,例えば訴訟の申立書にしろ担保権実行申立書にしてもですけれども,一般の弁護士が債権回収をやるように代理構成で申立てをするのか,それとも自己の名前でできるということがあるので,自分自身の債権としての訴訟行為,担保権実行行為ができるのかというのがありまして,今の裁判所の実務では,自己の名をもってできるということで,これは,債権回収の委託を受けた債権の訴訟でありましても,また担保権の実行でありましても,サービサー会社単独の名前でもって実行ができるという取扱いがなされておりまして,特にこれについては民事執行法の改正等というのはございませんでしたけれども,実務ではそういう取扱いがされておりますので,一つ参考になるのかなと思いまして,発言をさせていただきました。

 

 

 

 

 

  •  2点だけ申し上げますけれども,1点は簡単な意見で,2点目は質問です。

1点目は,分別管理義務を要件に加えるかどうかというのは,私は消極で,3ページに書かれているようなことに賛成です。

 

やはり,いったん成立したものに受託者にどういう義務を課すかという話を成立の段階に持ってくるというのはどうなんだろうかということですけれども,私の発想は。これは意見です。

 

二つ目は,セキュリティ・トラストというのは,これは分かっていないので教えていただきたいということなのですけれども,「財産の譲渡」,「担保権の設定」と,こう並べてありますね。

 

これが違和感があって,多分,英米では--多分というのは,ちょっといい加減な言い方で恐縮ですけれども,やはりプロパティーのトランスファーという話で全部統一していると思うのですね。

 

 

すみれ

「プロパティーのトランスファー。財産権の移転てことかな。」

 

 

そうすると,向こうでは「財産権」なるものが広いから,こういうスキームをつくった後で担保権の部分だけをトランスファーするというのももちろん信託でできる。

 

それは財産権,プロパティーの中にあるのだからという話だけで済む話を,ここで「担保権の設定」という形で,「設定的移転」という文言もありますが,こういう形で表現しないといけないというのは,これは例えば,いったんこういう担保を設定して,その担保権の部分だけを受託者に譲渡するという形だと,いったん設定したときに何らかの手数料か何か,登記料か何かさせたり,それをまた移転すると更に経費がかかるというような,極めて実際的ではあるけれども,理論とは何の関係もない理由に基づくのでしょうか。

 

 

番人

「登記はさせられるものなんだ。」

 

 

 

  •  これは,1の①にございました「財産の処分」が信託設定の要件でございますが,その例示といたしまして,「財産の譲渡」,「担保権の設定」というのを挙げているということでございまして,その担保権の設定につきましては,何度か申し上げておりますとおり,それが果たして信託のスキームを使ってできるのかどうかという点につきまして争いはあり得ますので,それをなくすということを明確に書いたということにとどまるわけでございます。

 

ちょっとお答えになっているかどうか分かりませんけれども,2点目はそういうことでございます。

 

  •  ○○委員は,まずは担保権がどこかで設定されて,それを移転するというふうに考えればいいじゃないかということですか。

 

  •  まあ,そうですね。

 

  •  ただ,そうすると,どういう担保が設定されるか。要するに信託が設定される前の段階での担保の設定ですよね。

 

そうすると,これはもう債権者といいますか,それは別であってもいいかもしれないけれども,担保権者というのがどこかで出てきて,そうすると,その権利を移転するというわけにいかない。

 

つまり,ここでは受託者に担保権を与えてあるわけですよね。

 

だけど,例えば一番単純な例で言えば,普通の債権者が担保を持っていると,普通の場合。この担保を,しかし,その債権者そのものではなくて,受託者がその担保権を取得すると。

 

まあ,いかないというわけではないけれども。そうすると,今度は,だれが委託者になるかというと,ちょっと違った設定になってくるわけですよね。

 

今までは,債務者自身が委託者で担保を設定すると。だけど,今の○○委員の例だと,むしろ債権者が自分の取得した担保を管理してもらうために受託者に移転すると。恐らくタイプが違ってくるのだと思いますけれども。

 

それで,それ自体,後者も恐らく不可能ではないんだと思いますけれども,少なくとも今ここで考えているのはそういうタイプではなくて,いきなり担保を設定するというタイプなのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

  •  そこにどういう違いがあるのでしょうか。委託者がだれかということは違うということはよく分かりましたが。

 

  •  違うというか,要するに,後者の問題はそう特別な問題はむしろないのかもしれませんね。

 

むしろ被担保債権と担保が分離することがいいかどうかという民法の問題はありますけれども,そうでなければ普通の問題なんですよね。

 

もう既に担保権があるわけですから。だけど,前者といいますか,債務者自身がいきなり担保権を設定するということになると,これは果たしてそういうことができるのかどうかということがはっきりしない。

 

ですから,その点をはっきりさせておくことに意味があると,そういうふうになるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

  •  一言だけ。

 

つまり,英米でモーゲージというのがあって,モーゲージの設定というのは信託ではないというふうに普通に書いてあるのですね。

 

ここで問題にしているのは,そういう状況とは全く異なるシチュエーションを考えておられるのでしょうけれども,「担保権の設定」とだけ書いてあると,もう何でもという気がしたというのが遠因としてはあるのです。

 

 

番人

「モーゲージは譲渡担保のようなもの。」

 

 

 

 

  •  モーゲージの場合には,むしろ債権者に一種のモーゲージというのを設定する,というのか何というのか分かりませんけれども,与えるわけですね。

 

ですから,今の議論との比較で言うと,普通の債権者が担保を取得する行為を,例えば譲渡担保なんかが一番典型かもしれませんが,そういうのを信託で説明するかどうかという問題になるのでしょうね。

 

しかし,これは最初の信託の定義のところに関係すると思いますけれども。

 

1の②に相当する,「財産の処分を受けた者が,【自己の利益を図る目的以外の】の目的のために」と。

 

ですから,普通の債権者が譲渡担保みたいにして受けるのは,それはだめだと。

 

  •  だから,後の方と絡めて,それは排除できるよということと,そもそも今ここで問題にしているのはそういう例でないということは分かるのですけれどもね。

 

  •  ほかに。

 

  •  2点ございます。

1点目は,信託の定義のところでございますが,先ほど来,第3の要件として分別管理義務を課すか否かということが議論されておりますけれども,この点につきましては,第1回目の法制審の場で,業界としては二つ意見がありますというふうに申し上げましたけれども,それは今現在も変わってはいないのですけれども,一つは,信託のセールスポイントとして倒産隔離が図られるということを入れた方がいいのではないかというのと,やはり効果を要件に持ってくるのはおかしいというのと,そういう考え方が二つあります。

 

 

すみれ

「分別管理義務は効果なんだ。分別管理だとどうかな。」

 

 

ただ,この文章をずっと読んでいますと,3ページの2の二つ上のところで,「信託となるためには当事者に受託者からの倒産隔離を生じさせる意思があることが,書かれざる要件として必要になると解する」と書いてありますけれども,何か,分別管理義務という形で置くのではなくて,倒産隔離を生じさせる意思を当事者が持っているのだというような言い方の方がいいのではないかと思うのですけれども。

 

 

すみれ

「倒産することが前提かな。」

 

 

まあ,これについては,業界としてすべて賛成ですという話ではないのですけれども,持ってくるとしたらそういうような書き方なんじゃないかなという気はするのですが。それが1点です。

 

もう1点目は,先ほど○○委員からお話がありましたけれども,設定方法のところですが,○○幹事からも,これは理論的な御意見でございましたけれども,実務的な観点から言いますと,最終的に書面によるかよらないかは別にいたしまして,いったん信託が設定した限りにおいて,それが取消しできないといいますか,委託者の側としては出資する義務を負うと,そういう形になるというのは,実務的な観点からいたしますと非常に歓迎できる規律でございまして,現場の方でもいろいろと議論したのですけれども,本来こういうような形を入れてほしかったねというような話もありますので,この点については非常に歓迎しております。

 

  •  今の○○委員と同じ2点についてです。

 

まず,第1点の分別管理については,先ほど○○委員もおっしゃったような感じで,これを定義に置くということについては,やや違うんじゃないかなという感じがします。つまり,定義で本質を書くのか,それともメルクマールを書くのかということかと思いますけれども,どうもこの分別管理というのは,一つのメルクマールとしては非常に意味があるけれども,定義に入れるほどのものでもないのではないか。

 

むしろ次元が違うような気がいたします。

 

それから,第2は設定方法の点で,正に民法550条のような規律を持ってくることが実務的にこれでよいということであれば,まあそれも悪くないのかなと思いますが,一つ懸念といいますか,ある契約が信託であるというふうに性質決定されると,撤回可能になるという裏の面があると思います。

 

そのことが契約の性質決定の方に影響してくる可能性はないだろうかということを更に検討する必要があるかと思いました。

 

それから,言葉だけの問題ですが,「取り消すことができる」となっておりますけれども,たしか今度の民法の現代語化でも,これは「撤回」という言葉に変わっていたように思いますので,その方が適当ではないかなというふうに思います。

 

 

 

 

 

 

  •  今回,3ページのところで出てくるのですけれども,消極財産も加えることができるということから,事業の信託を行うことも可能であるということになっておりますけれども,この「事業」というのは,よく言うところのいわゆる営業というふうにとらえていいのだろうか,どうなのだろうかと。例えば,すごく分かりやすい例で言うと,何か物をつくっている工場を信託に出すといったときに,そこで働いている労働者というのか従業員,そういう人たちともども信託を設定するということまで可能だということになるのか,それとも,あくまで工場としてのハードというのですか,工場建屋とか中にある機械とか,あるいはそこで使う特許権とかノウハウというようなものだけが信託が可能なのだととらえるのか,ちょっとそのあたりはどういうふうに理解すれば……。質問なのですけれども。

 

  •  今の労働者なんていうのは,一種の契約上の関係があるわけですね,工場といいますか,委託しようとしているものからすれば。

 

そういうものが信託によって一緒に移転していくと。まあ,その中には債務も入ってくるわけですけれども。

いかがでしょうか。

 

  •  今の話ですと,恐らく信託として移転するのはハードの部分であって,ただ,労働者の雇用契約とか,そういうものについてはいわゆる契約上の地位の移転ということで移っていくのではないかというふうに一応理念的には分けて考えるべきではないかと考えるところでございます。

 

  •  そうしますと,信託財産は工場建屋みたいなハードの部分であって,従業員の雇用関係は,受託者と従業員が新たな雇用関係に入ると。

 

もちろん,ということは,雇用関係の切りかわりなので,従業員の承諾がないとできないという労働法上の問題はありますけれども。

 

ということですと,例えば信託が終了したときなんか,従業員とハードの帰属がばらばらになってしまうという可能性もあり得るということになるのですかね。

 

 

番人

「たしかにですね。信託と連動するという契約にしておく必要があると思います。効果の発生も同時になると思います。」

 

 

  •  ここはちょっと皆さん,どういうふうに考えているか分からないけれども,私は,債務が入るということの意味がどこにあるのだろうかというので考えたのですけれども,債務が信託財産として一緒に移転するという場合には,債務ですから,当然,債権者がいるわけですね。その債権者から見たときに,その債権者の引当財産になるのは一体何なのかと。

 

信託と一緒に債務が信託財産の一環をなして移転すると,その設定された信託財産に対しては,もとの債権者の地位にあった人間は,新たな信託財産に対しても信託債権者としてかかっていけるわけですね。

 

だけど,これが,もし債務が移転しない,債務は後から単なる債務引受けでやるということになると,信託目的の範囲内で新たな債務引受けをすれば,これは信託財産にかかっていけるかもしれませんが,そうではない債務になると,必ずしも信託財産にかかっていけるわけではないと。そんなところが違うのかなと。

 

ただ,今のような雇用契約上の地位なんかになりますと,これはどうなんですかね。

 

やはり信託の目的の範囲内という形で引き受けられるので,後からくっついてきても,信託財産にかかっていけるような地位になるような気もしますけれどね,私としては。

 

ただ,ここら辺はもうちょっと詰めなければいけないかもしれませんね,おっしゃるとおり。

 

これは何回ぐらい議論できるんだろうかという全体の話ですけれども,ここで一遍議論してしまうと,ここでおしまいになってしまうのか,あともう1回ぐらい議論できるのかというところが,皆さん気になると思うのですけれども,どうですか。

 

 

 

 

 

  •  予定といたしましては,2月に3回ありまして,その後に中間試案ですので,2月の3回でもう1回できます。それから,次回と次々回では,受託者の権限・責任・義務あたりのポイントになるところを扱いますので,それにつきましては,次回,次々回とあともう1回,1月の最後ぐらいということを予定しておりますので,そういうものについては中間試案までに3回,それ以外の,今日のようなものについては2回ということになります。

 

  •  そういうことで,まだチャンスはあるのですけれども,大体のいろいろな方向性などを御議論いただければいいと思います。

 

  •  私も,信託の成立要件で分別管理義務を要件に加えるかどうかという点を中心にコメントさせていただきたいと思います。

 

私も,各委員の先生方,あるいは実務家の一部の方たちが御指摘のように,この分別管理義務を信託の成立要件にすることは,理論的にも実務的にも望ましくないのではないかと思っております。

 

 

 

 

 

その理由は,信託の機能のうち,確かに倒産隔離機能というのは非常に重要な機能の一つではあると思いますけれども,信託の機能は何も倒産隔離機能に尽きるわけではございませんで,例えばセキュリティ・トラストなんかで機能が実現されるであろう法律関係の単純化機能ですとか,あるいは,様々な債権等の財産権を受益権という性質の異なった権利に転換するという転換機能もございまして,この倒産隔離機能だけが信託の機能ではございませんので,そのような観点からすると,分別管理義務を信託の成立要件にしてしまうのは,むしろ信託の機能を入口のところで狭くしてしまう,そのような悪影響があるのではないかと,このように考えております。

 

それとの関係で,担保権の設定につきましても,これは諸外国でも行われておりますように,法律関係を単純化するという信託の最も基本的な機能の一つの発現だと思いますので,入口のところで,例えば担保権の設定はだめであると,このような議論の仕方はやはり信託の機能を入口から狭めるものであって,適切ではないのではないかと考えております。

 

 

すみれ

「法律機能の単純化か。初めて聞いた。」

 

 

 

なお,匿名組合との関係でございますけれども,分別管理義務が付随すると匿名組合がすべて信託になるかというと,これは,先ほどの転換機能のところで,匿名組合のときに受益権の発生が意図されているのか,受益権が発生するのかという点を考えると,仮に分別管理義務を信託の成立要件としたとしても,匿名組合との区別は十分につき得るのではないかと考えております。

以上,簡単ではございますが。

 

 

 

 

 

  •  さっきから議論になっていますけれども,今までは,信託の意思,信託設定の意思というような,少し抽象的ですけれども,しかし,ある意味で信託の一番中心になるものを意図しているかどうかということで,今の○○幹事の御意見は,それは単に倒産隔離の問題に限らず,どういう受益権を発生させるかとか,そういうものも含まれるという,今までそういう議論をされた方もおられるかもしれませんけれども,新しい議論ですね。

 

 

ほかに,この点,いかがでしょうか。

 

  •  脱法信託のところで訴訟信託についての記述がございますので,若干意見を申し述べたいと思うのですが,必ずしもこの点についてまだ詰まったところまで意見がまとまっていないのですが,若干感想的なことも含めて,申し上げたいと思います。

 

現行法では訴訟信託については禁止ということになっておりますが,御提案の内容では,ただし書で,正当な理由がある場合には訴訟信託を認めるというような枠組みになっているかと思います。

 

印象としては,これまでの法律の枠組みからすると,かなり広く訴訟信託を認めるようなことになるのではないかというふうに受けとめております。

 

弁護士法72条のことが記載されておりますので,そのこととの関係も,恐らく弁護士の立場からすると問題になるのではないかと思うのですけれども,これまでの弁護士法72条の議論や,それから,その72条を超えて,訴訟行為,あるいはそういった行為を認める場合の認め方からすると,司法書士とかサービサーとか,そういったところには認められてきていますけれども,こういった形で広く認める法制というのはこれまでなかったのではなかろうかというふうに,現段階では,私個人としては認識しております。

 

そういった関係で,このただし書については任意的訴訟担当についての議論を踏まえたものだという御指摘がありますけれども,従前の議論からすると,かなり広くこれを認めるものではないかという印象を持っておりまして,この点については,できれば慎重な議論をお願いしたいというふうに考えております。

 

もう少し検討した上で,2順目になるのか3順目になるのか分かりませんが,またまとまった意見を申し上げたいと思いますけれども,とりあえず問題提起という形で意見を述べさせていただきました。

 

  •  一つ質問なのですけれども,仮にこの資料に掲げられています任意的訴訟担当についての解釈論というのをある程度前提としてこのような提案をされているといたしますと,なぜこのようなただし書を,かつ,正当なというような割と一般的な要件でもって書かれる必要があるのかと。

 

任意的訴訟担当についての解釈論にゆだねれば済むことではないかというような考え方もあり得るのではないかと思うのですが,この点についてはいかがでしょうか。

 

  •  任意的訴訟担当につきまして,実務上正当な理由があるときとか,そういう場合を認められるのだというふうな解釈の前提として,それを念頭に書いたということでございまして,もしも書かなくてもそういうものは当然抜けるのだというふうな解釈が可能ということでしたら,あえて書く必要はないのかなと。

 

そこはちょっと,書く・書かないというだけの問題かなという気もいたしますが。

 

  •  そうすると,現行法はそういうものも含めて禁止しているという解釈を前提として,やはりそこは外す必要があると,そういうことですか。

 

  •  現行法上は任意的訴訟担当は認められているということですから,それを追認するということで,現行禁止しているものを外すという趣旨ではございません。

 

  •  よろしゅうございますでしょうか。

 

 

 

 

 

 

詐害信託の方については特に御意見がありませんでしたけれども。

 

  •  詐害信託については1点だけです。

民法424条についての主観的要件の議論ですけれども,倒産法上の否認権についても同じような議論が当てはまるという,これはそっちは解釈論でいくのだという,そういう理解でよろしいでしょうか。

 

つまり,こういうものがあれば受益者の主観的要件でコントロールするということに当然なるという理解だと理解してよろしいでしょうか。

 

  •  その部分に限ってはそういうことでいいと思います。ただ,全ての要件が同じかどうかというのはもうちょっと検討する必要がありますが,受益者で決めるというところは同じになると思います。

 

  •  詐害信託についてですけれども,受益者の権利取得時を基準にしておられますが,この権利取得時というのはいつのことでしょうか。

 

信託行為時だとしますと,受益者が知らない間に権利を取得しているということがあり得て,その場合には常に善意となってしまうのではなかろうかと。

 

そうすると,可能性としては,受益者となったことを知ったときという基準が別に考えられるかと思います。

 

しかし,そうしますと,今度は受益者が複数いる場合に,その善意・悪意が交互に出てきたというようなときに非常に不安定になるという問題もありますから,この権利の取得時というのについては更に検討する必要があるかと思います。

 

  •  そうですね。難しい問題がありそうな気がいたします,直感的に。

何か今の段階で。

 

  •  おっしゃるとおり,受益者が不存在とか,そういう場合もあり得ますが,ここの権利取得時というのは,受益権を知って,それを承認したときというときになるかと考えております。

 

それから,受益者が複数いる場合については,一人でも悪意者がいたら取り消せないという規律でいけるのではないかと考えられますが。取消しはできない,ただ,悪意者に対しては受益権の返還請求権とかそういうものでもって対処するということでいけるのではないかという気がいたします。

 

  •  これは報告書の段階でございますけれども,129ページに「受益権の取得時期」というのがありまして,「信託行為に別段の定めがない限り,受益の意思表示を要しないでその信託から生じる利益を享受する」というようになっている,そことの整合性をお聞きしたわけでございます。

 

  •  意外と難しい問題な気がするけれども,これは私の個人的な意見ですけれども,詐害行為というのは,信託を設定することが設定者の債権者にとって害になるかどうかということなので,原則はやはりその設定時なのではないかという感じがするのですね。

 

ただ,受益権の発生時というのはいろいろあり得ますけれども,後の方の受益権の取得時期だというふうにすると,今度は受益者が悪意になる可能性が高くなり過ぎて,適当なのかどうかという感じがちょっといたしますね。

 

 

すみれ

「難しいね。」

 

 

  •  戻って一言だけ,第1のことについて申し上げたいのですが。

 

定義という話が出たり,設定という話が出たり,いろいろしているのですけれども,現行の信託法というのは,前回も申しましたけれども,通常の契約や,あるいは質権の条文,抵当権の条文なんかとかなり異なった,本法において信託というのはこういうものだという形で書かれている。

 

そう書いてしまいますと,実は,この3の設定方法なんかとうまくいかないということがあるというのは最初に申し上げたところなのですけれども,私が,じゃあ信託に関しても通常の民法の定型契約の条文のように,「効力が生ず」という条文に直すべきであるというふうに主張しているわけではないということだけ,一言申し上げたいのです。

 

 

と申しますのは,実務的には問題があるのかもしれないのですけれども,今般の,例えば地方自治体の公共工事の前払金を信託だと見たというふうな最高裁判例,私は積極的に評価しているわけでありまして,そういうのは,定義というものがあって,それに当てはまったら信託の効果を与えるというようなことをしているから出てくる判決でありまして,また,英米におきましても,コンストラクティブ・トラストとかいろいろな救済法理というのがあるわけですけれども,現行の日本信託法のように,定義の形で,こういうふうな要件が満たされていたら信託と見ることができるという条文になっていたら,そのような救済方法としての信託というのも取り入れる余地が出てくるわけでありまして,そこが,売買の民法の条文や質権の民法の条文と異なる形で,定義という形で書かれている信託法のみそなんじゃないかという気がしていて,ちょっとそこらあたりが,「設定」という言葉を使ったり,「定義」という言葉を使ったり,「意義」という言葉を使ったりすることによって,どうも何かその意義がひょっとして失われるような立法提案に最終的になってしまいますと残念なことになるので , 一言だけ,今申し上げておきます。

 

 

 

すみれ

「コンストラクティブ・トラスト?定義を置くことで意味があるんだね。」

 

 

 

  •  1点目は詐害信託のところでございまして,10ページの(注2)のところ,どうしてもこれが気になりまして。

 

基本的に,ここの部分につきましては,現行法においてもこういうことは言えるのだろうと思いますけれども,受託者が善意の場合において,基本的に債務を負っているような場合について,信託財産がなくなるわけですから,当然その債務をそのまま受託者がかぶってしまうと。

 

有限責任の債権であるとすると,それについて債権者が損してしまうということがありまして,ここの部分につきましては,先ほど○○幹事の方から,当然そういう方向みたいなことも規律としてできるのであればというようなお話がありましたので,受託者の立場といたしましては,そこは是非ともお願いしたいと。

 

その中で出ていましたように,債務付で返還するであるとか,債務の方を優先させて,その残った分を返還するとか,済みません,どういうような形にするといいかというアイデアはないのですけれども,そこら辺のところの御検討をお願いできたらということです。

 

もう1点は,ちょっと戻りまして済みません,言い忘れていたものがありまして,第1の(注2)のところ,5ページですか,「信託財産の帰属しない受託者について」ということで,これについては,議論については共同受託者のところでされるのだと思いますけれども,1点だけ申し上げておきたいのは,昨今かなり信託事務が高度化しておりますので,当然,いろいろなシステムの対応であるとか,そういったところの部分が必要になって,職務を分担するという信託が出てきておりまして,その職務分担の中で信託事務を円滑にするために,信託財産を持つ受託者と持たない受託者,そういうものがもう既に出現していまして,非常に大きな受託財産を抱えているということもございますので。

 

 

あと,今後のことを考えましても,例えば知財等,信託財産の範囲がどんどん拡大していくということと,担い手がどんどん増えるということになると,いろいろなパターンで組合せがあって,例えば弁護士さんと信託銀行が組むとか,それで,その場合に特定の受託者が信託財産を持つというようなことも結構考えられるのではないかなと思いますので,ここの部分については,是非ともこの規律という形でお願いしたいということでございます。

 

 

 

 

 

 

  •  詐害信託については,○○委員のおっしゃったことと同じことを申し上げたいと思います。

 

あと,一番最初に私が申し上げた,倒産隔離の観点で双務未履行かどうかという話については,先ほど○○委員の方から,いわゆる定義を,倒産隔離の設定をしたいという意思を持つかどうかということもあったように,非常に重要なことで,もちろん○○幹事のおっしゃったとおり,そうすることによって柔軟性がなくなってしまうこともあるわけですけれども,ただ,やはり非常に重要な点でございますので,この点は,多分第14のところですね,受託者の倒産のところ,これがいわゆる受託者の撤回ということで解決されるのか,それとも信託契約の解除という形になるのか,そこをもう一度整理していただきたいと思っています。

 

それで,もし必要があるのであれば,かつ,倒産隔離というのは非常に重要だということだと思っておりますので,そう考えられるのであれば,もしそのリスクがあるのであれば,何らかの立法的な手当てなり,また倒産法上の考え方の整理であるとか,ということをお願いしたいと思っております。

 

  •  これはまた倒産のところで議論しましょう,関連する点については。

 

  •  詐害信託と脱法信託について,一つだけ,それぞれ御検討いただきたいという趣旨で。

 

詐害信託につきましては,二つ目の「悪意の受益者に対する返還請求」なのですけれども,これ自体は,民法上の詐害行為取消しとは別に,信託法上の請求権として非常に特殊なものであるという説明がされておりますので,その含意がどこまでかということを改めて御検討ないし確認していただきたいということでして,具体的な中身としまして,委託者への返還,委託者への譲渡の請求となっておりますけれども,民法上の詐害行為取消権の場合,直接交付請求が動産ですとか金銭の場合は認められるというのが一般的であることとの関係で,このケースの場合にはそれと同じような扱いになるのか,それとも,やはりそこは違うということなのかという点が一つ。

 

もう一つは,その範囲につきまして,被保全債権となるようなものとの関係で,これも,詐害行為取消しの場合,それによって上限が画されるということですが,説明の9ページから10ページですと,何となく,上限的な処理が普通はされるであろうというようなニュアンスで書かれておりますので,そのあたりも,もう少し中身として詳細を御検討ないし確認していただければと。

 

それから,脱法信託は,中身のことではなくて,単純に説明の話なのですけれども,1と2の関係につきまして,6ページの下から4行目ですと,2の訴訟信託の禁止というのは,「10条において禁止される脱法事例の具体的例示として規定し禁止することが肝要である」という説明になっておりますけれども,現行規定の趣旨を10条について維持するということになりますと,10条の方は受益者となることによる回避,訴訟信託の方は受託者として行うということで,かなり具体的な例が違ってくるのではないかと思っておりますので,むしろ両者は一般的な脱法禁止のそれぞれ具体的事例という説明になるかと思いますので,ちょっと説明だけ御注意ないし御確認いただければと思います。

 

  •  何か。--よろしいですか。

では,今御注意いただいた点は,そのように織り込みたいと思います。

それでは,次に,休み前のもう一つのセッションですが。

 

  •  では,「第5 受託者の不適格事由について」から「第8 信託の公示について」まででございますが,恐らく第6の受託者の利益享受の制限についてが一番問題が多いので,そこを少し厚めに,あとは時間の関係で非常に簡単に御説明をさせていただきたいと思います。

 

 

まず,不適格事由でございますが,現行法5条の規定する受託者の不適格事由,すなわち,信託の無効事由に関しまして,破産者については現行法を改めて無効事由から外す,それ以外の未成年者,成年被後見人,被保佐人については現行法どおり信託の無効事由とするというものでございまして,その趣旨はこの説明文中に書かせていただいたとおりでございますので,ここでは省略させていただきます。

 

第5については以上で終わります。

 

続きまして,「第6 受託者の利益享受の制限について」でございまして,これはいささか問題があり得ると思いますので,丁寧に説明をさせていただきます。

 

第6というのは,受託者が共同受益者を兼ねる場合を除き,受託者と受益者の兼任を禁止すると規定している現行法9条に関しまして,その禁止の射程範囲と効果を明らかにしようとするものでございます。

なお,本条の趣旨につきましては,13ページの説明の4行目以降に①から⑤まで挙げてありますとおり,種々の見解がございますが,この提案におきましていずれか一つに決めようということではないのですが,基本的には,受託者が受益権を取得すると,受託者を監督すべき独立の受益者がいなくなってしまい,信託の存続を認める意味がなくなってしまう,すなわち,受託者イコール受益者が信託の拘束のない完全な所有権を取得するに至ったものと解すればよいのではないかと考えまして,信託の終了を来すということを基本的な視点とするものでございます。

 

まず,この規律の射程範囲でございますが,太字の1にございますとおり,受託者が受益権の全部を取得した場合に関し,受託者に受益権処分義務を課すというものでございます。

 

すなわち,ほかにも受益者がいる場合,これは,単独受託者が共同受益者の一人である場合と,共同受託者イコール共同受益者である場合とがあり得ますが,このようにほかにも受益者がいる場合については本規律の射程外でありまして,完全に有効な信託としてそのまま存続し続けて構わないと考えるものでございまして,逆に他に受益者がいない場合,すなわち,単独受託者兼単独受益者である場合と,単独受益者が共同受託者の一人である場合とが射程に含まれてくる可能性があるということになるわけでございます。

 

このうち,単独受益者が共同受託者の一人である場合については更にこの規律の射程外ではないかという考え方,すなわち完全な有効な信託と見て構わないのではないかという問題があり得ますので,ここでは,まずは単純な単独受益者イコール単独受益者である場合を念頭に,その効果の考え方について御説明いたします。

 

まず,単独受託者が事後的に受益権全部を取得することによって単独受託者兼受益者という状態が形成された場合を考えてみますと,理論的には,そのような場合に,新受託者の選任ですとか,受益権の再処分によってこのような状態が解消され得ること,実務的にも,13ページの中段以降に①,②と書きましたとおり,受託者が受益権全部を買い取らなければならないニーズがあり得まして,資産流動化法224条にも,受託者が受益権の全部を購入することを予定した規定が置かれております。

 

そういうことに照らしますと,単独受託者が単独受益者を兼ねるという状態が生じたからといって,直ちに信託の終了を来すと考えることについては,その必要性もなく妥当でもないと考えられるわけでございます。

 

そこで,この提案では,受託者が受益権全部を取得した場合でも,信託が当然に終了することとはせず,受託者に受益権の処分義務を課すにとどめるというふうにしたわけでございます。

 

 

ポリー

「たしかに。信託を終了させるまではいかなくてもいいと思います。」

 

 

それでは,今,事後的に生じた場合と申しましたが,信託設定当初からこのような兼任状態が生じることについては許容されるのか,すなわち,信託設定自体が当初から無効となってしまうのか,しまわないのかという問題があると思います。

 

この点につきましては,15ページの(注5)に記載しておりますけれども,もちろん異説もあり得るとは思うのでございますが,このような兼任状態が生じているという事実自体は,信託設定当初であれ信託設定後であれ,変わらないということ,経済実体的にも,いったん受託者と受益者を分けて信託を設定後直ちに受益権全部を受託者が取得することと,当初から受託者が受益権全部を保有しているということとでは有意な区別をする意味に乏しいこと等にかんがみまして,信託自体の無効を来すことはなく,事後的な場合と同様に受託者に受益権の処分義務を課すにとどめる,当初から兼任していた場合でもいいというふうに解しているのが,この提案でございます。

 

 

第3に,太字の1の規律の適用対象となり得るもう一つの場合,すなわち,単独受益者が共同受託者の一人である場合,これを完全に有効な,いわば無傷の信託と見て,そのままこのような兼任状態を維持しながら存続し続けて構わないのか,それとも,欠陥が伴う信託と見て,受託者に欠陥状態を解消させるべく受益権の処分義務を課すこととするかというのが,太字の1のアステリスクの部分のところ,甲案,乙案でございますが,それと14ページの1の7行目以降に書かせていただいたところに関するものでございます。

 

甲案といいますのは,このような場合も太字の1の射程内に入るものとして,単独受益者兼共同受託者に受託権処分義務を課すというものでございまして,受益者を兼ねている受託者に対する監督関係の欠如を重視して,このような状態が継続することは認められないと考えるものでございます。

 

これに対しまして,乙案は,受益者を兼ねていない受託者については監督関係の存在を観念することができるのであるから,なお信託の構造が残っていると言うことができまして,このような状態が継続しても構わない,すなわち太字の1の規律の射程外であると考えるものでございます。

 

なお,いずれの立場をとりましても,信託設定の当初からこのような兼任状態を生じさせたとしても,当該信託の無効を来すものではなく,事後的な場合と同様に,せいぜい,その場合にもしも甲案の立場をとったとしても,受託者に処分義務を課すにとどめれば足りるのではないかと考えるものでございます。

 

最後に,太字の2でございますが,これは受益権の処分義務を課される場合についての効果を規定したものでございます。このような兼任状態が生じますと,受託者の受益者に対する義務というものも観念できませんし,受益者の受託者に対する監督関係が欠如しているということになりますので,このような状態は信託の当然無効を来さないまでも,なるべく速やかに解消されることが望ましいわけでございますので,受託者に受益権の処分義務を課すこととした上で,もしもこの義務を果たせないと,もはや信託の存続を認めず,当該信託は終了するとしたものでございます。

 

なお,受益者は直ちに処分されることが望ましいことは言うまでもないことでございますが,「相当の時期」といたしましたのは,15ページの(注4)にありますとおり,処分先を探すには一定の期間が必要であるということ,それから,他の立法等の例といたしまして,中間法人法,資産流動化法,投資信託及び投資法人に関する法律,商法における親会社株式の処分等の例が,いずれも「相当の時期」となっておりますのを参考にしたというものでございます。

 

 

すみれ

「受益権は処分されることが望ましい、かな。」

 

 

以上の考え方の当否及び甲案,乙案につきましては,是非とも審議を願いたいというところでございます。

 

 

 

 

 

 

続きまして,「第7 受託者の職務の引受けについて」というところでございますが,これは米国統一信託法典などを参考にしている提案でございますけれども,受託者として指名された者による職務の引受けが決まらないまま長期間経過すると,信託財産の帰属先やその管理に関する権利義務といったものが確定せず,その受益者等の地位が極めて不安定な状態に置かれますので,そのような状態を速やかに解消して,受託者として指名された者による就職の有無を速やかに確定させるべく,太字の1のとおり,受益者等に催告権を認めまして,その上で,太字の2のとおり,相当の期間内に確答がなかった場合は,受託者が忠実義務等厳格な義務を負うことにかんがみて,就職を拒絶したものとみなす。

 

それによって,委託者及び受託者が新受託者を選任するですとか,あるいは利害関係人が裁判所に新受託者の選任を請求するという機会を与えることとしたものでございます。

 

なお,16ページの(注1)に詳しく記載しておりますが,この規律の適用範囲につきましては,基本的には遺言信託の場合になるのかと思いますが,契約信託も含まれ得る,両方が含まれるというふうにここでは解しているところでございます。

 

それから,回答の相手方でございますが,第一次的には,受託者の就職に最も利害関係の大きい受益者,その者がいないときには,なるべく速やかに信託における受託者の就職を確定するという観点から,催告してきた者,これが一番つかまえやすいので,その者でいいのではないかというふうに考えているのが,(注3)というところでございます。

 

以上で職務の引受けについての説明を終わらせていただきます。

 

 

 

 

最後に,「第8 信託の公示について」でございますが,これは,信託の公示に関して定めております現行法3条に関しまして,登記・登録できる財産の対抗要件に関する第1項を維持し,有価証券の取扱いに関する第2項は削除しまして,有価証券上の表示や名簿上の記載をもって対抗要件の問題とはしないということを提案するものでございます。

 

なお,現行法上の信託の登記・登録制度について見直すべき点などがありましたら,あるいは,どのように見直すべきかという点につきましては,是非とも御審議いただきたいということで,今後の検討課題ということであえて太字で付記させていただいているところでございます。

 

ところで,この第3の点が特に問題となるのでございますが,今後の検討課題といたしまして,今までの信託法制研究会--この審議会の前身に当たります研究会ですとか,この部会の第1回会議において指摘のあった事項は,この20ページの説明の丸三つに記載してあるような事項でございまして,その中身について,ここでは一々説明いたしませんが,本日は,特に,現行法上の制度あるいはこの信託法が見直された暁にはどういう登記制度,登録制度が望ましいかということにつきまして,是非とも皆様の方から御意見を賜れれば大変有り難いというふうに思っておりますので,よろしくお願いいたします。

 

  •  余り中心的でないことを簡単に。

 

第5の制限能力者の規定と,第7の職務の引受けというのは平仄が合っているのでしょうか。

 

つまり,とりわけ遺言で設定したようなときなんかを考えますと,制限能力者を受託者に指定していたら,次の人が選ばれるような手続をするというのが筋であって,信託行為が絶対的に無効になるというのが何となく違和感があるのですが。

 

 

 

 

 

  •  そうですね。遺言なんかの場合が特に問題になるんですかね。

 

契約でもって信託設定をする場合には,当の受託者というのは,普通,その段階で分かっているし,余り問題は生じないかもしれないけれども,遺言で,実際にその遺言の効力といいますか信託の効力が発生する時点では受託者がどうなっているか分からないという場合があり得て,そういうときには特に問題になるかもしれませんね。

 

何かありますか。

 

  •  いえ,おっしゃるとおりかなと思います。

ここは,こういう者を信託の受託者にしたら絶対的に無効だという解説書の例などを単に読んでしまったのですが,おっしゃるとおり,信託自体を滅失させなくとも,処分の引受けの催告というのではなくて,また新受託者を選任する機会などを与えて,なるべく信託を継続させればいいのではないかという御趣旨はなるほどと思いますので,その点につきまして,ちょっと検討したいと思います。

 

 

番人

「たしかに。信託を終了するまでしなくていいと思います。」

 

 

 

  •  ほかに。

 

  •  第6と第8について,質問と意見を述べたいと思います。

 

まず,第6について,質問が一つなのですけれども,甲,乙案の選択の議論として,実務的な感覚からは,単純に柔軟性が高い乙案の方がいいというふうに考えたくもなるわけなのですが,そこで,この議論の中で,その認める理由として,14ページのところなのですけれども,「乙案は……監督関係が存在し,信託構造は残っていることを理由に」とありますけれども,この「監督関係が存在し」ということ,これがある意味もう動かし難い定説なのかどうかということを確認したいと思います。

 

と申しますのも,いろいろな実務がございまして,実務においては,共同受託というのはそんなに例があることではないと認識しておりますけれども,その場合でも,その両者間において相互に監督しているということが本当にあるのかどうかというのがなかなか疑問でございまして,そういうものが本当にあるのか,また,その中身は一体何なのか,また,あるとしても,それは別に強行法規的なものでなくても,ある意味デフォルト・ローといいましょうか,委託者が例えば二人の受託者を選任する際において,お互い監視し合ってくださいねということを言えばそれで足りるのではないかということだと思いますので,共同受託者間の監督義務というのがどうなのかと。

 

そして,それを前提としたこの乙案なのかどうかということを確認したいと思います。

 

 

すみれ

「たしかに。お互いに監視する義務が法律にあったら気を遣いそうだ。」

 

 

第8の信託公示ということで,質問が一つと,コメントが一つでございます。

一つは,ここで言う「登記」,「登録」,第3条で言う「登記又ハ登録スヘキ財産権」ということでございますけれども,ここでまず確認したいのは,このところ改正がございますけれども,債権譲渡ないしは動産登記というのは,これはここで言う登記すべき財産権ということではないので,この第3条の適用あるものではないということを確認したいと思います。

 

それから,つながるわけなのですけれども,例えば海外にある資産で,それは海外の資産においては,多分,その当地法における登記・登録制度又は公示制度等あると思うのですけれども,そういうものというのはどう考えたらいいのかと。

 

この字面どおり登記・登録というふうに考えていいのか,それとも,これは国際私法の文脈で解釈することになるのか。

 

また,逆に,これもちょっと議論は成立していたと思うのですけれども,海外の信託,海外法の準拠法による信託で,国内において公示制度がどうなのかという,これはちょっと信託法の話と違うとは思うのですけれども,例えば,ここで社振法の議論が出てきていると思うのですけれども--これはもう信託法の話ではなくて,社振法プロパーの話になるかもしれませんけれども,例えば,社振法等では,信託なら信託で帳簿に載せろというふうなことが書いてありますけれども,海外で,例えば「trust」というふうなことを,日本の帳簿に載せるときに,これを「信託」というふうに言うのかどうかというようなこともありまして,そういう意味で,登記・登録というのが,いわば国際私法的な文脈でどういう問題が生じ得るのかということをいま一度整理する必要もあるのではないかということも申し述べたいと思います。

 

それから,コメントなのですけれども,○○幹事からも重要であるということでお話があった,財産の公示の中身でございますけれども,特に20ページで,不動産信託の場合の,受益者が変動したときには,その都度,「受益者の氏名又は名称及び住所」を変更しなければならないということについて触れられておりますけれども,これは実務的な感覚から言うと,ほとんど意味がなく,コストだけかかっているということなので,できるだけそういうものは削除していただきたいということでございます。

 

この登記というのは,受益者の変動ないしは受託者に対する対抗ということでもないというふうに理解しております。

 

そういう意味では,法的な意義があるということについては甚だ疑問でございますし,他方,これはいろいろ議論があると思いますけれども,プライバシーの関係もありますので,そういう不要なものをあえて公示制度に付すということはできるだけ避けた方がいいのではないかというふうに思っております。

 

 

ポリー

「受益者がどんどん変わる場合は大変でしょうね。」

 

 

 

  •  いろいろとそれなりに難しい問題の指摘があったと思いますけれども,今の段階では答えられますか。

 

  •  共同受託者間の問題につきましては,共同受託者間の規律のところで検討いたしますが,基本的には共同受託者間には相互監視義務があって,ただ,意思表示に対して反対したものについては責任を負うかどうかと,そういうような規律について今後検討していきたいと思っていますので,監視義務はあるけれども,それがどの程度のものかというのは,今後の御審議にゆだねたいというふうに思っているところでございます。

 

それから,債権譲渡特例法の問題ですとか,海外の資産の問題というのは,実はまだこの段階で検討し切れていなかった問題で,恐縮ながら直ちにお答えすることができませんので,ちょっと持ち帰らせていただければというふうに思います。

 

  •  3点だけ,簡単に。

 

まず1点は,○○幹事がおっしゃったように,第5のところで,「受託者となることができない」というのはいいけれども,それで信託全体を無効にする必要があるかどうかは本当に問題だと思います。ちなみに,英米では無効にはしません。ただ,裁判所へ行かないといけないという話にどうしても英米ではなりますけれども,かわりを補充する努力をすると。

 

それから,同じことなのですが,第6の甲案か乙案かというのですが,単独受益者が共同受託者の一人である場合について,英米では一般にこれは完全に有効な信託なので,乙案ですね。受託者に受益権処分義務というのは全くないことになります。完全に有効ですから。

 

 

 

 

 

  •  単独受託者が共同受益者の場合でございますか。

 

  •  単独受益者が共同受託者の一人である場合は大丈夫なのです。一応参考のためにということで。

 

3点目なのですけれども,今度は一対一の対応のものですね,この本文のところの。受託者が受益権の全部を取得した場合にも,実務上信託を存続させる価値があるよという話なのですけれども,英米では余りこういうことは問題にしていなくて,ただ,どういうことなんだろうかと本当は思っているのですね。

 

 

番人

「受託者と受益者が1年間一緒でもいいって、日本だけなのかな。」

 

 

 

それで,それは終了してしまうわけです,簡単に言うと。

 

終了させなくてもいい場合だって,やはり向こうだってあると思うのですが,普通の私法の関係だけ考えると,たまたま私のところに全部が集約したときでも,本当にこれはまだ存続するという話になれば,これですぐに受益権を分けますね。

 

そうすると,本当に存続し続けるような話で,この段階ではだれも文句を言わないだろうというような話なのかと思っているのですが,現実にこの効果が出てくるのは,受託者は受益権の全部を取得した場合であってもとにかく信託を存続させるというのは,具体的な効果としては,この間に,破産,倒産,差押え,何でもいいのですけれども,そういうものがあったときに,これはまだ信託が存続しているので,この財産は色がついていますよということが言えるということですね。

 

 

すみれ

「破産とかに使うのかな。」

 

 

そうなると,信託の設定段階でこういうスキームをつくっておくと,もう色がついているから大丈夫というのか,これは信託財産なので差押えできないとかいうような話もできそうなのですが,これはさっきの詐害信託等の別個のことで処理できるから大丈夫ですよというふうに考えればよろしいのですね。

 

 

 

 

すみれ

「財産に色がついている、か。」

 

 

  •  今のは,最初の段階でやることを特に問題にされたわけですね。受託者がすべての受益権を持っているような形で最初に信託を設定してしまうと。

 

  •  とりあえず信託設定しましたよと言ってしまえば,とりあえずやってくるのをとにかく防げるという。

 

  •  詐害というのは,ちょっとどの場面を考えているのか分かりませんけれども,委託者との関係では,これは一応委託者と受託者は別だという前提で考えていますけれども。

 

  •  ああ,そうですね。

 

  •  ですから,委託者の債権者にとっての詐害行為はまた別の問題ですね。むしろ,今のは,受託者のもとで受託者が同時に全部受益権を持っているので,そういう信託はどうだろうかということだと思いますね。

 

 

 

 

  •  第6の点ですけれども,実務感覚にも英米法にも対抗して大変申し訳ないのですけれども,このアステリスクの甲案か乙案かということにつきまして,私自身は,受託者の中に全面的に受益権を享受している者というのは,結局,現在の忠実義務についての動向からしますと,受益者の同意を得ればそれが解消されるということですので,およそ忠実義務を負わないような受託者をつくり出すということは非常に問題ではないかというので,懸念を感じております。

 

解消の道としては,受益者たる地位を分散するか,受託者というのを解消するかという両面はあるのだろうと思いますけれども,適正ではないのではないかのかという感覚を現時点では持っております。

 

 

 

 

それから,先ほど○○委員が御指摘になりました,監督関係が存在するという点でして,共同受託者間の問題はともあれ,ここでの問題は,受益者が受託者を監督するという,そちらの関係の問題であろうというふうに理解しております。

 

ですから,受益者でない受託者との関係では,受益者がきっちり監督するという関係があり,しかし,自らが受託者であるものについては全くその監督関係がないと,それでそういうような受託者をつくり出すことが適切かという問題であろうかと思っております。

 

 

番人

「なるほど。」

 

 

ですので,強いて言えば甲案の方がというふうには思っておりますけれども,乙案であるという場合に更に検討していただきたい話といたしまして,一つは,既に出てきております信託宣言との関係で,信託宣言についてどうなるかということが決まった段階でこれを組み合わせるというような話が出てくるのか。

 

これは一般的にもともとの1の問題とも絡む問題ですけれども,もう一つは,既に先ほどお話のありました信託財産の帰属しない受託者を認めることとの関係で,他の共同受託者というのが,信託財産の帰属していない,名義のない受託者であってもよいのかと,これもまた後に検討する課題とされておりますので,そこが固まりましてから改めてこちらも,乙案である場合にはどうなるかというのを検討していただいてはどうかと思います。

 

あと,これは中身について質問させていただきたいのですが,第7の1,2の催告をする者と回答を受ける者で,1につきましては信託管理人が入っておらず,2では信託管理人が入っているのですが,(注2)を見ますと,「利害関係人」にそういうものは挙がっておりませんが,これはそれでよろしいのか,また,どうしてなのかということを御説明いただければと思います。

 

 

 

 

 

  •  済みません,もう一回お願いいたしますが,信託管理人が2には入っていて,1には入っていないと。催告できるかということでございますね。
  •  はい。それはできないという趣旨でお書きになっているということでしょうか。

 

  •  できるのではないかと思います。受益者の代表者ですからできるということで考えております。

 

  •  そうであれば,そういうようにお願いします。
  •  はい。

 

  •  それ以外はいずれも難しい問題なので,皆さん御意見がいろいろあると思いますので,御発言をいただければと思いますが,いかがでしょうか。

 

  •  第6と第8について,よろしいでしょうか。

まず,第6の1の本文と2ですけれども,こういう規律につきましては,解説のところにも書いていただいていますけれども,下から二つ目のパラグラフのところ,「また,」以下ですね,流動化の場合に,とりあえず受益権を取得して,そこから販売していこうかというようなことも考えられますし,特にこの2の方が,実際,受益者の保護と言っては何ですけれども,換価処分できないことというのは結構ありまして,例えば不動産の関係の信託なんかについては,幾つかに分かれているような場合について,急激に不動産の価格が下落してきたと,普通,全員で売却しないとできないのだけれども,でもやっぱり換価処分するような必要性が出てきたと,こういうような場合については,やはり利用価値があるかなと。

 

 

基本的には,ばらばらと部分的に受益権を取得していくということでしょうけれども,タイミング的に全部取得してしまうということもよく考えられることでして,とりあえず取得して,そのまま持ったままというのは,もともとリスクを背負ったことになりますし,また違う形で販売していくということにはなると思いますので,受益者を分散するというふうにしようと思います。

 

しようと思うのですが,どうしてもタイムラグというのが出てきますので,この規律というのは非常に有り難い規律だろうと思います。

 

 

 

 

 

 

それともう一つ,合同運用の信託,これについてはまた別途議論がなされるということですけれども,ちょっと頭出しといたしまして,やはり合同運用信託の場合については,受益権の全部を取得した場合についても,全体から見ると,経済的効果とかいうと一部を取得したにすぎないような状態ですので,これについては終了するというのはどうかなということがありますので,できれば,特則を設けていただくとか,別途合同運用のところで御検討をお願いしたいということでございます。

 

それが第6です。

 

もう一つ,第8ですが,これについてはやはり実務上いろいろな問題がございまして,まず,3条1項を存続させる,この意義につきましては,第1回目のときに御質問させていただいて,基本的には,端的に言ってしまいますと,信託財産間も含めた形での倒産隔離を図るときの対抗要件に使うというのが目的なのだというようなお話だったと思います。

 

それで,31条の取消権に関するところの利用というのはもう廃止するというお話でしたので,そういう観点からいくと,不動産の登記でいきますと,今の信託原簿ですね,信託の権限についたようなもの,それについてはもう廃止していただいて何ら構わないのかなと。

 

信託の実務上からいきますと,結構いろいろと聞いてみましたら,受託者としての権限に基づいて売却するというのはほとんどないと。基本的に,今,流動化でよくやっている部分については,受益権を売却するという方法をとっていますので,信託財産を売却する権限があるかないかというようなことというのはほとんどないと。

 

それであるとか,最終的に信託財産を売却するときでも,いったん受益者に対して交付する形をとって,そこから売却するという方法をとっていますので,実際にその信託が管理信託なのか管理処分信託なのかが問題になるようなケースというのは実務上余りないのかということですので,そういう観点からも言いますと,今の信託原簿になるようなものがなくて,どの信託財産に属するものか,その特定性だけを持たせる,そういうような形の登記にしていただけたらなというのが1点です。

 

 

 

なおかつ,次のところの保振・社振とも絡むのですけれども,保振・社振法のところからいきますと,これは登記・登録すべきものではないということにはなっておりますけれども,これは多分,信託財産と固有財産との対抗要件として使われているものですけれども,意見の中には,3条1項の部分についてもう捨象してしまって,信託財産と固有財産間の対抗要件にまでしてしまってもいいんじゃないかと。

 

まあ,これは全体の意見ということではありませんけれども,そういうことまで出ておりまして,登記・登録のところの制度につきましては,できるだけ簡略化していただきたいと。

 

社振・保振につきましては,一つの考え方としては,そういう対抗要件も全部なくしてしまったとしても,識別不能の規律というのが別途ありますので,それに基づいて,口座というのは少なくとも信託財産と固有財産を分けていますので,それでもっても規律できるんじゃないかという意見もあります。

 

ただ,枠組みとしてありますので,この枠組みについてはそのまま存続させてもいいのではないかとも考えております。

 

  •  ほかにいかがですか。

 

 

 

 

 

  •  第6のところですね,私も,とにかく参考のために乙案になるよという話なのですけれども,乙案のままだといいのですけれども,受益権処分義務というのが,このシチュエーションですが,単独受益者が共同受託者の一人であるというのが問題だという場合は,受益権を処分してしまうと,つまり信託はなくなるわけですよね,普通には。

 

あるいは全然別の人を受益者にするという話になって,それはやはりおかしいと思うのですね。

 

だから,何らかのことをやるのだったら,その単独受益者であり共同受託者である人が受託者から外れるという辞任義務を課すみたいな話の方が筋が通っているような気がします。ここの対比の関係ではということですけれども。

 

  •  あり得る考え方の一つではあるかもしれませんね。要するに,一致しているのを外す外し方のもう一つのやり方ということですね。

ほかに。

 

  •  余りしゃべらない方がいいのかもしれないことなのですが,○○幹事が持って帰って検討するとせっかくおっしゃってくれたことで,ディスカレッジしても何ですが,国際的な側面を考えるときに,やはり問題は区別して,何がここでやるべきことで,ここでやらなくていいようなことまで抱え込むのはどうかと思ったので,若干,問題整理だけさせていただければと思うのですが。

 

どの法律が適用されるかという準拠法選択,つまり抵触法の問題と実質法の問題は区別しなければいけなくて,ここでやっているのは,日本法が適用される,しかも信託関係の話なんですね。先ほど問題があった,在外の財産がという話は,今,信託についての準拠法も規定を置くかどうか,法例の改正の方で検討していると思いますが,仮にそこでどう置かれようが,そこで置かれている規定によって準拠法が決まるような話では恐らくないと思います。

 

不動産なんかについて言えば,登記・登録すべき財産についての準拠法で考える話だとすれば,財産所在地法で決まるわけで,いずれにせよ,海外の話というのは,基本的に日本の信託法のこの話とは切り離されて,向こうで登録できるかという,そこで決まってくると思うのです。だから,その辺の仕分けだけすれば,恐らくこの問題は関係ないのではないかと思います。

 

 

番人

「私もそう思います。日本法が適用される、信託関係の話。」

 

 

 

もう一つ重要なのは,社振法の話を指摘されたのですが,日本の社振法が適用されて,そこで登記・登録するような種類の権利だとした場合に,これは海外で設定された信託との関係でどう扱われるかという話は,日本の信託法が適用されないような信託について社振法がどういう立場をとっているかという,社振法という実質法の解釈問題であって,日本の信託法,あるいはこの改正される信託法が何を書こうが,基本的には関係ない話ですから,もちろん準拠法の話を整理していただくのは結構なのですが,恐らく,我々の作業との関係では,ほとんど何も手をつけられないような話だと思います。

 

 

 

 

 

  •  それはおっしゃるとおりだと思います。こちらでもって先ほど問題としては提起されましたけれども,すべてこの審議会で扱うわけではなくて,この審議会で扱うべき問題はおのずと限定されている。ただ,問題の背景として考慮はいたしたいと思います。

 

恐らくこの点についてまだ御議論なされたい方がおられると思いますけれども,ここでちょっと休憩いたします。それで,再開した後,まだ御議論が残っていれば,少しだけやって,次のセッションに移りたいと思います。

それでは,休憩いたしましょう。

 

(休     憩)

 

  •  それでは,時間になりましたので,再開したいと思います。

先ほどの範囲でもってなお御意見がおありの方はお願いしたいと思いますけれども,いかがでしょうか。

 

  •  13ページの甲案,乙案のことに関しましては,○○幹事がおっしゃったことは極めて重要だと思います。現在,共同受託者のうちの一人であると,もう一人いればいいようなものなのですけれども,もう一人いる人がどういうタイプの人なのか,正に共同受託で,財産は片方だけに帰属して,片方は窓口業務だけをやっているというような共同受託体制というものが仮に認められるとして,片方の人は窓口業務だけやっている方の人ですと言われてしまいますと,これは事実として一人で全部やっているということになるわけですので,そうしますと,もう一歩申しますと,本来は実質的に判断すべき問題だと思うのですね。

 

ただ,私は分かりませんけれども,それで実務がもつのかという話があって,実質的に判断しますというふうに言われますと,はっきりしてくれなければ困るという話になるわけでありまして,そうなりますと,逆に消去法的には甲案になってしまうのではないかという気がするということだけ指摘させていただきます。

 

 

 

 

  •  この第6の問題は,まだかなり問題点があると思います。

 

皆さんの方から御議論もいただきましたし,私も,個人的には,どう考えたらいいか,まだ悩んでいるのは,今まで,現行の9条に関しては,大体普通の信託というのでしょうか,余り受益者が多数いないタイプの信託を考えていて,今度,多数の受益者が出てきて,おまけに受益者集会なんていう形で受益者が権利を行使するようになると,受益権の一部を持っている受託者だけど,いわば過半数を抑えている受託者というのが出てきたようなときにどうしたらいいかなんていう問題も,先ほどの合同運用の場合はちょっと逆な形になるわけですけれども,実質的に考えなくてはいけない問題点が少しあるのかなと思いますが,また次のラウンドでもうちょっと論点を整理して議論したいと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。

 

大体,公示についての議論はいただきましたね。

それでは,後半の第1セッションの方に移りたいと思います。

 

 

 

 

  •  では,後半の最初といたしまして,「第9 信託財産の範囲について」から「第12 信託財産の相続財産からの分離について」まで,四つをあわせて御説明いたしますが,恐らく,「第11 信託財産と固有財産等との識別不能について」というのが一番議論が多くてしかるべきところかと思いますので,ほかのところは簡単に御説明をしたいと思います。

 

まず,信託財産の範囲でございますが,これは現行法14条の規定を維持することを提案するものでございます。

 

現行法14条につきましては,当初の信託設定において信託財産とされたもの及びその代位物はもちろんといたしまして,より広い範囲の積極財産及び消極財産が信託財産に含まれることになることを明らかにした規定と理解しております。

 

すなわち,例えば信託財産が贈与を受けた場合の贈与財産ですとか,信託財産を引当てとした借入れにより受託者が取得した金銭,これは代位物ではないわけですが,こういうものも信託財産に含まれるという趣旨と理解しております。

 

 

また,受託者の信託財産処分行為により受託者が取得した反対給付につきましては,当該処分行為が受託者の権限内である場合であっても,あるいは権限違反である場合であっても,信託財産には含まれることになるというふうに理解しております。

 

 

すみれ

「信託の受託者として行動した分は信託財産になるってことか。」

 

 

以上で第9の説明は終わらせていただきます。

 

続きまして,第10の方に移りますが,これは,信託財産の添付,すなわち,ある信託財産と他の信託財産又は受託者の固有財産との附合,混和,加工に関しまして,各信託財産と固有財産とが格別の所有者に属するものと擬制した上で民法の添付に関する規定を適用するとしております現行信託法30条の規律を維持することを提案するものでございます。

 

なお,第11との関係で申し上げておきますと,第10における「混和」と第11における「識別」との区別でございますが,これは22ページの(注)に書いてあるとおりでございます。

 

若干補足いたしますと,「混和」というのは,複数のものの物理的な混交により事実上これを弁別することが不可能になった結果,全体を一つのものとみなさざるを得なくなった場合には,原則として主たる財産の所有者が合成物全体の所有権を取得することとし,所有権を失う従たる財産の所有者には不当利得に相当する償金請求権をもって対応すべき場合でございます。

 

 

 

 

 

例えば,種類が異なるものとしてよく例が挙がりますが,信託財産に属するコシヒカリと固有財産に属するササニシキが混ざった,高級ワインと低級ワインが混ざった,あるいは,種類が同じであっても同じだと考えられまして,例えば,信託財産に属するコシヒカリと固有財産に属するコシヒカリが混交したと。

 

いずれもこれらはもう事実上一つのものとみなさざるを得なくなったという場合でして,ここで言う「混和」に当たるものと理解するわけでございます。

他方,第11の「識別不能」というのは,複数のものが混合したことにより,その帰属関係が不明瞭にはなりましたが,なお物理的に混交したわけではなくて,弁別することが可能であるため,一つのものとみなすことまでは要せず,常に共有が生ずるとして対処することが可能な場合を言うわけでございまして,若干例を申し上げますと,例えば,信託財産に属する羊1頭と固有財産に属する羊1頭とを区分して,牧場で飼育していたところ,地震によって垣根が失われたと。1頭の羊になってしまうわけではもちろんなくて,あくまで2頭でございますが ,帰属が不明になったと言うことができるわけでございます。

 

それから,例えば信託財産に属する製品と固有財産に属する製品とを番号で管理していたら管理帳簿が滅失した場合,こういうのも,物としては複数ですが,帰属が不明になると。こういうのが,第11の「識別不能」の場合と理解しているわけでございます。

 

以上を前提に,続きまして,第11の識別不能についての規律について,若干詳し目に御説明を申し上げます。

第11は,識別不能が生じた場合の財産の帰属関係と分割方法に関する提案でございます。

 

太字の1でございますが,これは,識別不能の状態が生じた場合には,対象財産の主従の区別にかかわらず,各財産が識別不能財産中の各財産を共有することとし,その持分の割合を識別不能当時の財産の価額の割合としつつ,証明不能の場合に備えて均等と推定するというものでございます。

 

このように物権的共有とみなすことによりまして,識別不能となった後に受託者の固有債権者から識別不能財産に対する差押えがあった場合には,受益者は共有持分権に基づいて第三者異議の訴えを提起して差押えを排除することができますし,受託者が破産した場合であっても,受益者は破産管財人に対し,共有持分権存在確認訴訟を提起することができるなど,物権的な救済を得ることができることになるというわけでございます。

 

 

また,価格割合算定不能の場合に共有と推定することとし,すべて信託財産であるというような推定をしなかったのは,そのような推定をしますと,受託者や受託者の債権者にとって余りにも不公平で不利であるというふうに考えられるからでございます。

 

なお,この共有ルールというのは,財産一般,すなわち財産が金銭である場合についても同様に妥当するものと考えております。すなわち,報告書の段階では,金銭の識別不能の場合については,固有財産とするという甲案と,共有とするという乙案を双方提示しておりましたが,ここでは,共有とするという乙案を提案するということでございます。

 

 

 

これは,25ページの3というところで記載しておりますけれども,確かに判例上,金銭の所有者は原則としてその占有者と一致すると解されておりますが,識別不能金銭についても共有ルールを適用する場合でも,信託財産の所有権はあくまでも受託者にあるとの原則は維持しておりますので,この判例の趣旨に抵触するものではないと考えられます。

 

 

 

 

 

その上で,①で記載しておりますとおり,受託者の手元にある識別不能金銭について,一定の限度で,固有財産とは異なる,信託財産としての特別の取扱いを認めることができるか否か,言いかえますと,受託者の所有に属する識別不能財産について,それが固有財産としての所有か信託財産としての所有かという内部的な分配の部分がここで問題になるわけでして,これは判例の射程外の問題であると考えるわけでございます。

 

 

すみれ

「わー、難しそう。」

 

 

さらに,実質的にも,②,③で記載しましたとおり--②,③というのは,25ページの下から26ページの上でございますが--受益者や信託債権者の保護や,他の取扱いとの均衡などからも,識別不能金銭についての共有ルールを適用することが妥当であると考えるわけでございます。

 

それから,太字の2でございますが,これは,報告書の段階におきましては検討事項としておりました識別不能共有財産の共有物分割ルールについて新たに提案するものでございます。

 

すなわち,識別不能財産について,信託財産や固有財産がこれを共有することとみなしたといたしましても,だれをもって共有物分割請求を行うことができる当事者たる共有者として取り扱うべきか,受託者か受益者か,あるいは共同受託者かというようなことは,なお検討を要する事項でございますので,ここでその当事者を信託の類型ごとに明らかにしようというものでございます。

 

ここでは,太字の2のルールを詳細まで御説明するのは,非常に細かな規定になっておりますので控えさせていただきますが,基本的な概要といたしましては,次のとおりでございます。

 

すなわち,分割協議,これは分割割合について及び分割の方法についての,双方の協議を含むわけでございますが,その当事者を原則として受託者といたします。

 

というのは,まずは信託事務処理をゆだねられている者からということで受託者といたしまして,ただし,自己の固有財産や他の信託財産との関係で,当該受託者が分割にかかわることが利益相反関係を生ずるという場合には,例外的に,共同受託であれば他の受託者が,それもいない場合には受益者が当事者として登場することといたしております。

 

それで協議が調わない場合には,それぞれの者が裁判上の分割請求をすることができるというわけでございます。

 

ただし,報告書の第19で,今度提案いたします利益相反行為の禁止の除外事由,例えば信託行為の定めがある場合などですが,そういう場合には受託者のみで分割協議まではすることができる,裁判上の請求まではできませんが,分割協議まではそういうことができるというのが,この規律の大まかな骨子ということでございます。

 

以上について御審議を願いたいと思います。

 

なお,最後に,25ページの(注1)について若干付言させていただきます。

 

 

 

 

これは,第1回会議で提起されました,信託財産に属する金銭と固有財産又は他の信託財産に属する金銭等を入金して一つの普通預金口座が開設された場合について,当該普通預金口座に係る預金債権の帰属関係の考え方について問題提起をしたものでございます。

 

普通預金口座に係る預金債権の帰属に関してましては,周知のとおり,最近,損害保険料ですとか弁護士の預り金についていろいろと注目すべき判例が出されているところでございまして,この判例の評価についてはいろいろな議論がございますが,普通預金につきましては特殊性がある,すなわち,定期預金のようにいったん預金を入れるとそれで一応出入りがなくなるというものと違いまして,入金がある度にその額について消費寄託契約が成立し,その結果発生した預金債権が既存の預金債権と合算されて一個の預金債権となるというような流動性を持っていると考えられまして,出捐者はだれかという考えはとりにくいわけで,判例のコメントでも,いわゆる出捐者説,客観説と呼ばれるものですが,それは定期預金についてとられてきたものであるが,普通預金についてはこの立場をとっていない,むしろ契約法理における当事者確定ルール一般に基づいて預金者を認定したと解することができると,この判例の趣旨についてはそのような指摘がなされているわけでございます。

 

さらに,出捐者説の誕生の背景にあった無記名式定期預金の新規受入れの廃止ですとか,最近の本人確認法の施行などに伴って,契約法理における当事者確定ルールがより一層広がっていくという動きもあるのではないかというような指摘も示されているところではございます。

 

 

ポリー

「本人確認が厳しくなってきた時期ですかね。」

 

 

このような動向を踏まえまして,最初に述べました固有財産と信託財産の混合した普通預金の帰属ルールについていかに考えるべきか,これにつきましては,是非とも皆様の方から御教示を賜りたいということでございます。

以上で,識別不能についての説明は終わらせていただきます。

 

次に,第12の「信託財産の相続財産からの分離について」でございますが,これは,受託者が死亡した場合でも信託財産が受託者の相続財産に属さないということを規定する現行法15条は削除するということを提案するものでございます。

 

現行法では,受託者死亡後,新受託者選任までの信託財産の帰属について明文がないので,相続財産に含まれないことを明確に規定しておく意義はあったと思うのですが,報告書に記載しましたとおり,受託者の死亡によってその任務が終了しても,新受託者が就任しない限り,相続人のあることが明らかでない相続財産の場合と同様に,信託財産を法人とみなすというふうにいたしますと,信託財産が受託者の相続財産に含まれないことは明らかなので,第15条の趣旨はもちろん維持するわけですが,あえて規定は要らないだろうということで,削除すると考えたわけでございます。

以上で終わります。

 

 

 

 

 

  •  それでは,ここまでの範囲でお願いいたします。

 

  •  第11から入ってよろしいでしょうか。識別不能のところですが。

 

まず,識別不能の1の「識別不能財産の共有等」の規律でございますが,この規律につきましては,従来より,私どもの方が行っている業務でいきますと,信託財産が非常に大量だと。それを一々分別管理していくのは,特に信託財産間での分別というのは非常にコストもかかりますし,手間暇もかかると。

 

そういう観点からいきますと,このルールが適用されると,その辺のところの簡略化といいますか,非常にいい規律ではないかというふうに考えております。

 

ただ,2の「識別不能財産中の各財産の分割」のところですが,(1)の「固有財産と信託財産との識別不能」については,何かこういう方向性かなと思うのですが,(2)の「信託財産と他の信託財産との識別不能」については,多分,実務上からいきますと,かなりの部分は,予想される限りのものは信託契約に書きまして,それに従ってということだと思うのですが,予想できないようなものについてこの規律を適用するとしますと,やはり受益者同士で協議するというのはなかなか難しいのではないかと。

 

特に,人数が多くなると,まず一堂に会して協議するというようなことがなかなかできづらいのではないかと思うことと,イのところで,協議が調わないときには裁判所の方へということですけれども,いったん協議を行わないといけないということであるとすると,まず一番最初に協議ができなくて,その状態で裁判所に行けるかどうかというような問題がありますので,実務上の観点からいきますと,一つは,例えば受益者間の問題についても受託者が何らかの形で関与するというようなものと,イのところで,協議が調わないときはというのではなくて,直接行くことができると。

 

これは何か,民法上の共有のところについては議論があって,判例も出ているやに聞いておりますけれども,ここのところが明確になるような形の規律をお願いできないかなというふうに考えております。

  •  今のに関連して,いかがでしょうか。もちろん,直接関連しなくても結構ですけれども。

 

 

 

 

  •  第11の識別不能についてコメントしたいと思います。

 

預金の話を前々回の審議会で問題提起を差し上げたところでございますけれども,早速,(注1)ということで一定の御検討をいただいたということで,ありがとうございました。

 

ただ,この点については,やはり普通銀行としては非常に大きな問題としてとらえているところでございまして,銀行内ないしは銀行界内でいろいろ議論をしたところでございますけれども,なかなかいい考え方が出ないというのが現実でございまして,一つの考え方としては,最悪こういうことが発生した場合に,通常,銀行というのは,債権者が分からなくなると,支払い停止を入れて,結局,このルールでいきますと,分割協議というところまで待って,それでお支払いをすると。

 

普通預金の話であれば流動性でございますので,非常に日常的な資金ということの必要性も高いものですから,それは非常に御迷惑をかけてしまうのかなとも思いますので,そこら辺どうしたらいいのかと悩んでいるところでございます。

 

一つの考え方としては,これは信託法の規律と預金契約上の規律とどう整合するかということだと思っているのですけれども,信託法の規律というのはこのままに置いたとして,預金契約上の規律を維持することができないか,うまく整合性をとることができないかという考え方があるのではないかなというふうには思っています。

 

まだ整理されているところではないわけですけれども,対外的な債権・債務関係というところまでは,この共有化といいましょうか,信託法の規律は及ばないということです。

 

それが理論上どう発展するかというのは分からないのですけれども,例えば対抗という考えを持つのか,善意者に対する保護というふうに考えるのか,ちょっとよく分かりませんけれども,信託の共有化というのが,いわゆる債務者との関係では及ばないというような規律又は考え方と言うことができるのではないかというふうに思っております。

 

ちょっと整理されていない段階でお話し申上げて非常に恐縮でございますけれども,本件については非常に重要な問題であるということを改めて申し上げたいと思います。

 

補足しますと,銀行の話ばかりして恐縮なのですけれども,別の話,つまり,ここもとのペイオフということで,預金保険の関係で名寄せをしろという話もありまして,やはり銀行としては,債権者がだれなのかということを言われているということもありまして,やはりこういう共有化ということがもう一つ入ってきますと,まあこれだけではないわけですけれども,非常に厄介な問題が出てきたかなというのが,銀行実務者としての率直な感想でございます。

 

 

 

 

 

それから,質問なのですけれども,これに関連することなのですが,1のところで,共有の規律の考え方として,「識別することができない状態に至ったときは……共有するものとみなすものとする」となっておりますけれども,いつから共有化ということになるのか,また,そういう概念自体を持つことが正しいのかどうか分かりませんけれども,普通預金の場合は,基本的に資金が入ったり出たりということになるわけですので,そうした場合に,ある時点から共有化されて,持分をだれかが幾つ持つということになった場合に,それがその後の預金の共有化関係についてどういう影響を及ぼすのかということを考える際において,そのいつの時点ということをはっきりさせておかないと,その後の議論の発展ができないというふうに思っておりまして,ここはちょっと御質問したいところでございます。

 

 

 

  •  いつの時点から識別できないということになったのかというその基準ですね。

 

これもいろいろな例があるのかもしれないけれども,信託財産に属する財産が入っている預金があって,その後,別のお金がただ一回入っただけだと,まだ金額的には識別できそうなんですね,その段階ですと。

だけど,それが何回か繰り返されると,分からなくなってくると,そんな問題がありそうですね。

 

直ちにこれに答えることができるかどうか分かりませんけれども,もし今の時点で回答すべき点があれば。

 

  •  直ちには答えられないのですが,普通預金ですと,やはり入金すると一つのものになってしまうという非常に特殊性のある預金でございますので,普通の財産の識別不能の場合の考え方がそのまま直ちに当てはまるかどうか,ちょっと分からないところでございまして,一般には帳簿上管理していれば帰属が分かっているからいいと思うのです が,普通預金口座に入金されてしまうと一つのものになってしまう以上は,帳簿の管理をされていたからといっても,識別不能になってしまうのではないかなという感じもするのでございます。

 

ちょっと,どの時点からとは言えませんが,考え方としては,例えば,入金されたらたちまち識別不能になるという考え方もあり得るのかなと。

 

ちょっと,現時点で直ちに,どういう考えか,私からは申し上げられませんが,そういう考えもあり得るのかなという気はいたします。

 

  •  関連して確認したいのですけれども。

だめと言われそうなのですけれども,普通預金の識別可能というのを,ある意味,一つの債権となるということの特殊性をとらまえて,銀行,債務者に対して,固有財産である,ないしは信託財産であるということを明示しなければ,全体として識別不能であると,そこに持っていくという議論はできないのですか。

 

つまり,今までの議論というのは,どちらかというと受託者サイドで,このお金は固有財産だ,信託財産だというのが分かっているという話なのですけれども,預金債権という特殊性をとらまえて,それだけでは--少なくとも,お金を銀行からおろして効果があるわけですから,そういうことで,いわゆる銀行から払戻しができるというようなことをもって識別できるというようなことができないかどうかということですけれども。

 

 

番人

「たしかに。自分の理解は合ってるのか。通帳の名義で分けることはできないのかな。譲渡禁止特約がついているんだから、預金債権の譲渡ではなくて、名義人の通帳に入っているものは名義人の債権ってことで。」

 

 

  •  払戻しができるといっても,幾ら払い戻していいかというのが……。
  •  つまり,銀行に対してある意味対抗というのか,よく分かりませんけれども,銀行が識別可能であるというところまでが必要であるというようなことを一つのメルクマールとするということができないかどうかということです。信託法プロパーの話ではないかもしれませんけれども,ちょっと……。

 

 

 

 

 

 

  •  前提として,預金以前に,普通の債権のときにも,お金を混ぜて貸したと,そういうときに,債権は一本ですけれども,その混ぜたお金の出所が金額的に分かっていると,こういうのはどういうふうに言うのかというのがまず前提にありそうですね。これが金額的に分かっていれば,債権は一本だけれども,一応識別は……。

 

  •  普通の債権ですと,準共有とかいう話がありますので,いいと思うのですが,普通預金だけにちょっと特殊かなという気がいたしますが。

 

  •  非常に個別の話になってしまいますし,信託の話でないのかもしれませんが,普通預金も,受託者の手元に,預金残高10万円のうち6万円は固有財産,4万円は信託財産とか,あるいは,3万円はA信託財産,1万円はB信託財産ということが分かっていれば,それで識別可能な状態ではないのでしょうか。

 

  •  金額が分かっていれば,識別可能だと思います。
  •  そこに入って,特に出るとなんですかね,あるいは目的が分からないというか,使途が分からない形で出ると,どっちが減ったのかがよく分からないというようなことになるのが,一つの例と。

 

それから,ここにもあるように,もろもろの場合もあるように,帳簿がなくなってしまった,6万円,3万円,1万円という帳簿がなくなってしまうと,そこで識別不能になるのではないでしょうか。

 

  •  あくまでも受託者サイドの帳簿等によって可能かどうかという話ですよね。

繰り返しになりますけれども,それは預金の一つの債権というところの規律と合うのかどうかという議論があると思うのですけれども。

 

  •  余り関係ないのではないかという気もするけれども。

 

  •  全然関係ないですね。債権を準共有できるというのは,なぜ普通預金が何か特殊性があるという話か分かりませんし,普通預金は一つの債権だという話がどう関係あるのか全然分からないのですけれども。これは単なる準共有じゃないのですか。

 

  •  強調するのがいいかどうか分かりませんけれども,いずれにせよ,○○幹事が言われたように,普通預金の場合は出したり入れたりしていて,どれが出たかというのが分からなくなってくると,要するに混然一体としてしまうことになるわけですよね。

 

だけど,それが全部トレースできる場合には,識別は可能だと言ってもいいのかもしれないと思いますけれどね。

 

 

 

 

 

  •  それは,普通の動産とか不動産とかでも同じではないですか。つまり,この動産が,信託財産から100万円出し,固有財産から100万円出して200万円相当のある動産を購入したということになりますと,その割合が1対1であるということが明らかになっていれば,これは別に識別不能なのではなくて,あたかも他者との共有のような形で信託財産の割合と固有財産の割合がはっきりしているということなのではないかと思うのです。

 

  •  私も,今の点,全然異論なく,そうだと思います。

 

  •  ここら辺は皆様の御意見を伺って少し議論を整理してみたいと思いますけれども。まあ,もうちょっと,一体どういうことが識別不能なのかということを明らかにするということですね。

 

  •  今の点と違うのですが,第11の識別不能についてであります。細かいことで,重要性は余り高くないかと思いますが,一言申し上げさせてください。

 

2の(2)のアの③にかかるのですが,「信託財産の他の信託財産との識別不能」の中の,各信託の受託者が異なる場合というものです。

 

これは,27ページのウの第1パラグラフにその例が書かれているのですが,もっと簡単な例で,甲信託についてAが受託者,乙信託についてBが受託者という場合についても,今の③は適用されるべきもののように思うのですが,しかし,それは別に信託とは無関係に,AさんとBさんがそれぞれ所有しているものが1頭の羊ともう1頭の羊のときに分からなくなってしまった場合ということにすぎないのではないかと思うのですね。

 

私が1頭の羊を持っていて,○○幹事が1頭の羊を持っていて,どっちがどっちか分からなくなってしまったという場合,これはどう解決するのか,本当のところはよく分からないのですが,しかし,その問題もここで解決しようと,背後に信託がそれぞれ控えているがゆえにここで解決しようとしているので,やや越権なのではないかなと思います。

 

実質的にはこういうふうに解決することになって構わないと思うのですが,信託法の中で解決すべき問題ではないように思います。

 

  •  そう言われてみると,少しそういうところもあるかもしれませんね。少し検討させていただければと思います。

ほかに,いかがでしょうか。--よろしいですか。

それでは,次に行きましょうか。また後で議論があれば戻ることにして。

 

  •  それでは,第13から説明をいたします。

第13は,信託法にとって中核となる規定であります16条の趣旨をそのまま維持するというものでございまして,この規定により,受託者の固有財産に対する債権者は信託財産について権利を主張することはできなくなりまして,受託者の債権者が信託財産に対して強制執行をしてきた場合には,受益者等は第三者異議の訴えによって執行を排除できるということになります。

 

このようにして,信託財産は所有名義人である受託者の倒産リスクから遮断されて,信託財産の独立性が確保され,受益者に物権的救済が図られるということは,第1回会議でも御説明したところでございます。

 

なお,規定の要否については検討いたしますが,信託財産に対して執行可能な権利として,これも前回若干申し上げましたが,ここに書いてありますような権利,信託の設定時に債務の引受けをした場合における当該債務に係る債権,いわゆる受益債権,信託の変更に反対する受益者に付与される受益権取得請求権,信託財産との関係で発生した租税債権,それから信託財産を所有することにより負担する法定の損害賠償債務に係る債権が考えられるわけですが,更に,今回の提案では,29ページの最後の行からございますとおり,受託者が信託事務の処理に関して行った不法行為に係る損害賠償請求権も,同様に信託財産に対して執行可能な権利と考えることとしております。

 

 

 

 

 

この点につきましては,従来の学説によりますと,受託者個人はその固有財産をもって損害賠償責任を負担するものの,このような不法行為に係る損害賠償請求権については,信頼関係違反行為についてまで信託財産にその責任を負わせるべきではなく,現行法の文理上は,このような債権は信託事務の処理につき生じた権利には当たらないとの理由で,信託財産に対してかかっていくことはできないと解されてきたようでございます。

 

しかしながら,法人でありますと,その代表者や従業員の不法行為が法人の事業との関連で行われれば,法人自身の財産をもって責任を負うとされている民法44条や715条に比べますと,従来の学説の取扱いは均衡を失するという感がいたします。

 

すなわち,信託が単なる財産の管理であった,対外的な行為が少なかった時代であればともかくとして,現在のように対外的な取引が活発に行われる状況のもとでは,受託者の不法行為によって信託財産が一切影響を受けないというのは適当ではないと考えられるわけでございます。

 

むしろ,受託者の信託事務処理によって得られた利益が帰属する信託財産の負担において,受託者の信託事務処理上の少なくとも過失に基づく違法行為に基づく責任も受託者個人に負わせ,あわせて信託財産にも負担させることが相当と思われるということで,こういう提案をさせていただいたところでございます。

 

続きまして,「第14 受託者倒産の場合における信託と倒産手続の関係」についての御説明に移らせていただきます。

まず,太字の1でございますが,これは,受託者について破産手続が開始した場合の信託との関係について規律したものでございまして,(1)から(3)までのいずれの規律も,信託財産が受託者名義の財産ではあるものの,先ほど御説明いたしましたとおり,受託者の固有財産からは独立した財産であることから来る,いわば論理的な帰結を示したものであると言うことができると思います。

 

すなわち,まず,信託財産は受託者の固有財産に属しませんので,受託者が破産しても破産財団を構成しないことにつきましては解釈上明らかであるとされてきておりますが,現行法上,明文の規律がありませんので,(1)においてそれを明記したということでございます。

 

次に,(2)でございますが,受益債権は,形式的には破産債権の定義に該当してしまいますが,実質的には信託財産のみを引当財産とする債権でございますので,信託財産が破産財団に属しない以上は,受益債権についても破産債権とはならないものと解すべきことになります。

 

なお,32ページの1(2)の「なお,」以下で書きましたとおり,信託財産のみに責任が限定される,いわゆる有限責任債権についても同様に破産債権とはならないと解するものでございます。

 

最後に,1の(3)ですが,まず前提として,報告書の第39というところに書いていたわけですが,自然人である受託者について破産手続が開始した場合には,原則として任務終了事由となりますが,委任の場合と同様に,それにもかかわらず,任務終了事由とならないという特約を設けることは有効と考えることを前提といたします。その上で,自然人である受託者が破産した場合におきまして,受託者の固有財産との関係では破産手続が開始したということになるわけですが,信託財産は破産財団には属しない自由財産でございますので,今申し上げましたような任務が終了しないという特約がなされている限り,信託財産との関係での受託者の任務は終了せず,破産者がそのまま受託者の職務を行うことになるものと考えられます。(3)はその旨を記載したものでございます。

 

以上に対しまして,2でございますが,これは,受託者に対しまして再生手続又は更生手続,再建型倒産処理手続が開始された場合の信託との関係について規律したものでございます。

 

まず,(1)でございますが,これは,信託財産が再生債務者財産又は更生会社財産に属しないことを明らかにしたものです。

 

(2)は,受益債権又は,いわゆる有限責任債権が,先ほど申しましたとおり,再生債権又は更生債権とはならないことを明らかにしたものです。いずれも,破産手続に関する1(1)と同じく,信託財産の独立性から導かれる議論かと思われます。

 

次に,2の(3)でございますが,信託事務処理により生じた信託債権は原則として受託者の固有財産をも引当てといたしますので,再生債権又は更生債権として再生計画又は更生計画による変更の対象にはなるわけですが,しかし,信託債権は信託財産との関係ではいわば第三者の財産上に物上担保を有するのに類似する実質があると見ることができますので,計画による権利変更は,受託者の固有財産との関係では効力がありますが,信託財産との関係では効力がない,したがいまして,変更されていないままの権利を行使することができるとしたのが,(3)でございます。

 

最後に,(4)でございますが,これは,本来ですと,先ほど受託者の任務終了の関係で申し上げましたところによりますと,再建型倒産処理手続では債務者の事業の再建を図ることが目的であるということにかんがみれば,この手続によって原則として受託者の任務は終了せず,したがって,2の(1)のとおり,信託財産は再生債務者財産及び更生会社財産に属しないということになるわけでございます。

 

しかしながら,この(4)では,今のような,原則として任務が終了しないということを前提としながらも,再生手続において管理命令が発せられ管財人が選任された場合,又は更生手続の開始によって更生管財人が選任された場合におきましては,管財人の権限は受託者の固有財産にとどまらず,信託財産についての受託者の職務及び管理処分権も管財人に専属するものとしております。

 

このような見解をとりましたのは,裁判所の選任した管財人のもとで債務者の事業の再建を目的とするからには,固有財産のみならず,信託財産も含む債務者の財産全体を管財人の掌握するところとする必要があるわけでございまして,信託財産の管理処分権も管財人の権限の及ぶところとしなければ,およそ事業の再建はおぼつかないと思われるからでございます。

 

そのことは,例えば,信託の受託業務を主たる事業とする信託会社について再生手続が開始された場合を想定すれば,明らかではないかと思われます。

以上のような考え方の当否について御審議をお願いしたいというふうに思っております。

 

 

 

 

 

続きまして,「第15 相殺に関する規定の取扱いについて」というところに移らせていただきます。これは,信託と相殺に関する規律の提案でございます。

 

現行法17条では,「信託財産に属する債権」と「信託財産に属せざる債務」との相殺を禁じております。

 

この規定につきましては,受託者が相殺の意思表示をする場合を念頭に置いて規定されているように見えるわけですが,相手方である第三者からの相殺も禁止されると考えるべきであるとされておりまして,禁止の趣旨につきましては,受託者からの相殺については,受託者からの相殺を認めると利益相反行為になると考えられるためである,第三者からの相殺につきましては,これを認めると信託財産の独立性に反することとなるためであるなどと説明されているところでございます。

 

このように,相殺が禁止される理由というのは相殺権の行使主体によって異なるものと考えられますので,ここでは,相殺が禁止される趣旨を,信託財産の独立性の確保,受託者の利益相反行為の禁止,それから,いわゆる有限責任となる債権における受託者の利益の保護,この3類型に分けまして,それぞれの観点に従って,現行法よりも細分化された明確な規律を設けますとともに,現行法上規定のない受託者と第三者間の相殺契約についても規律を設けることとしたものでございます。

 

まず,太字の1の「法定相殺」のところにつきまして,順次御説明を申し上げます。

まず,(1)でございますが,これは,信託財産の独立性確保の見地から,「信託財産に属する債権」と「信託財産に属せざる債務」とについて,第三者である債権者からの相殺を認めないとしたものでございまして,趣旨は現行法17条と同様ということになります。

 

ただし,現行法17条のように第三者からの相殺を一律に禁止するというのではなくて,このような相殺を受託者の側から承認する余地を,あくまでもこのような承認が利益相反行為の禁止の例外に該当することを条件として,認めることとしております。

 

これは例えば,第三者には資力に問題があって,受託者としては,相殺を承認して信託債権を受託者等に対する求償権の形に転化させた方が信託にとって有利となる場合もあり得るということ,それから,前にも申し上げましたが,37ページの(注2)に付記してありますとおり,第三者の信託債務が期限の利益を有する場合には,第三者からは期限の利益を放棄して相殺できますが,受託者からは期限があるのに勝手に相殺をすることはできないということ,そういう2点から,受託者側からの相殺の承認というものを認めるということにしたわけでございます。

 

次に,(2)でございますが,これは,やはり,信託に属する債権と信託に属せざる債務とについて,受託者の利益相反行為の禁止の観点から,今度は受託者からの相殺を原則として認めないとしたものでございます。

 

ただし,現行法17条のように一律に相殺を禁止するというのではなくて,先ほど申しました(1)と同様に,例外として,利益相反行為の禁止に該当しない事情があれば,受託者からの相殺を許容するとしております。

 

次に,(3)でございますが,これは,(1),(2)と異なりまして,現行法の規定には規律がない局面でございますが,受託者の利益を保護するという観点から,「第三者が信託に対してのみ執行することができるいわゆる有限責任債権」と,「受託者の固有財産に属する当該第三者に対する債権」とについて,第三者の側から相殺することはできない,相殺できるとしますと受託者の利益を害するので,そういうことはできないと。

 

他方,受託者の側からは,自分で利益を放棄するわけですから,相殺することができるということを規律しているものでございます。

 

なお,37ページの(注4)に書かせていただきましたが,ここで問題となっておりますいわゆる有限責任債権につきましては,責任限定取引により生じた有限責任取引債権に限らず,第三者が受益者である受益債権も含まれるとここでは考えております。報告書の第27というところで記載しておきましたが,受益債権は信託財産のみをもって履行の責に任ずる物的有限責任債権であるということで,同じように考えられるからでございます。

 

もっとも,このように受託者の側からであれば受益債権についても相殺を許容するということにつきましては反対説もあるわけでございます。

 

すなわち,忠実義務によって信託財産を管理している受託者としては,受益者からの受益債権の履行請求に対して,これを履行しないで,かえって相殺によって自己の貸付金債権の回収を図ることは,受託者と受益者の利益相反となり忠実義務に反するのではないかという理由から,反対説もあることを付言させていただきます。

 

次に,太字の2でございますけれども,これは,受託者と第三者間の相殺契約に関するものでございます。

 

信託に属する債権と信託に属せざる債務との相殺につきましては,1の(1)のとおり,第三者からの相殺も受託者からの相殺も原則として禁止することとしつつ,利益相反行為の禁止の例外に当たる事情がある場合に限って,受託者による承認又は相殺を認めるとしているわけでございますが,この2では,相殺契約の場合についてもその趣旨を維持すべく,契約による相殺も原則としては禁止されることとしつつ,例外的に,受託者の利益相反行為の禁止の例外に当たる事情がある場合には,このような契約による相殺も認められることを規律したものでございます。

 

なお,最後に,報告書の(注1),承認による相殺の効力の発生時期,それから(注4),受託者の信託財産に対する補償義務に関する根拠規定の要否につきまして,報告書では要検討事項としておりましたが,それにつきましての検討結果について簡単にお示ししたいと思います。

 

まず,承認による相殺の効力の発生時期ということにつきましては,37ページの(注1)のところで記載しております。

 

第三者からの相殺の意思表示に対して,これは1の局面ですが,受託者がこれを承認したことにより有効となる相殺の効力発生時期の問題というのが前々から指摘されておりましたが,これは,37ページの(注1)の記載のとおり,相殺適状のときにまでさかのぼる,したがって,この間に信託債権に対して差押えがあったとしても,その効力は相殺により覆ってしまうことになると考えるものでございます。

 

次に,(注5)の関係では,これは1の(1),(2)の場合ですとか,2の場合において,信託財産に属する第三者に対する債権と,第三者に属する受託者の固有財産に対する債権とを相殺したという場合につきましては,受託者は信託財産に対して補償債務を負う,逆に言いますと信託財産に受託者に対する補償債権が帰属するという形になるわけでございますが,そこにつきまして,38ページの(注5)に記載しましたとおり,このような補償債務について法的根拠規定の必要性があるかということが一応問題となり得るわけでございます。

 

 

この点につきまして検討いたしましたが,結論的にはそれは不要ではないかということで,そこで利益相反行為の例外事情,例えば信託行為の定め,あるいは受益者の承認があれば,それは信託財産に補償する義務があるという旨の規定がそこに含まれている,合意しているというふうに解することもできるでしょうし,受益者の利益を害しないことが明らかであるという場合に該当する場合であれば,それは受託者が相殺後に相殺見合額を信託財産に補償する旨の合意まで含んでいて初めて受益者の利益を害しないとの判断がされるものと解されますので,いずれの場合につきましても,このような信託法に定める承認,合意などのようなものを根拠として,受託者は信託財産に補償義務を負うものと解することができると考えられるわけでございます。

 

 

相殺契約についてもこの契約が法的根拠になると考えられますので,特段の規定は必要ないのではないかと(注5)のところで結論づけさせていただいたところでございます。

 

 

 

 

 

続きまして,「第16 信託財産との混同について」と「第17 委託者の占有の瑕疵の承継について」を続けて説明させていただきます。

 

第16でございますが,これは信託財産の混同に関する提案でございまして,現行法18条に比べましてその規律の範囲を広げまして,固有財産と信託財産との間では,およそ民法179条に規定する物権の混同も,あるいは520条の規定する債権の混同も生じないことをいわば確認するものでございます。

 

 

すみれ

「いきなり消えてしまったら困るもんね。」

 

 

現行法18条を見ますと,信託財産が受託者の固有財産から独立した別個の財産であることにかんがみまして,所有権以外の権利,例えば地上権が信託財産であるといたしますと,その後に受託者がその目的となる財産,例えば地上権の目的となる土地を取得したとしても,地上権たる信託財産は消滅しないということを規定しているわけでございます。

 

しかし,信託財産と固有財産との間で物権の混同が生じますのは,今申しましたように,信託財産が制限物権で,その後で固有財産に所有権が帰属したという場合に限らず,逆に,固有財産たる所有権がまずあって,それについて,その後で信託財産が地上権を取得したと,時系列的に逆の場合もあるわけでございまして,解釈上,このような場合も本条の趣旨から混同の例外に当たるとされております。

 

また,信託財産に対して受託者が権利を取得するという場面について考えてみますと,現行法上は,相続等の包括承継によるやむを得ない場合を除きましては,受託者が信託財産について権利を取得できないという信託法22条の規定がありますので,混同の問題を生ずる余地がなかったわけでございますが,そこにつきまして,一定の条件のもとで受託者が信託財産について権利を取得することも許されるといたしますと,信託財産について受託者がこれを目的とする権利を有することとなる場合,例えば,最初に信託財産たる所有権があって,それに対して固有財産が地上権を取得するというような場合ですとか,余りない例かもしれませんが,固有財産が地上権であって,それについて他人が所有していた財産である土地が信託財産として受託者に帰属するという,そういう場合もあり得ることになるわけでございます。

 

 

 

以上のような四つすべての場合につきまして,太字の1では,いずれの場合も民法179条の混同の例外に当たることを現行の規律より広く明文化したわけでございます。

 

 

 

 

 

 

また,債権につきましても混同が生じ得ますところ,39ページの説明文中の③にありますとおり,債権と債務がそれぞれ同一の受託者の信託財産と固有財産に属することになった場合にも,信託財産の独立性にかんがみまして,民法520条の例外に当たると解されます。これも,本条の規定趣旨からは当然と解釈されてきましたが,明文をもって規律することとしたものでございます。

 

最後に,占有の瑕疵の承継の問題について御説明を申し上げます。

 

第17でございますが,これは,受託者は委託者の占有の瑕疵を常に承継するとしております現行法13条を削除し,占有の瑕疵の承継の問題は民法の原則によるとすることを提案するものでございまして,報告書で言いますと,規定を設けないとする乙案を支持するものでございます。

 

現行法13条におきましては,民法187条の特則として,受託者は,信託財産の占有につき,委託者の瑕疵を常に承継する旨が規定されておりまして,その趣旨としては,悪意の委託者が自ら受益者となりながら,善意の受託者に当該財産を信託することによって不当に利益を得ることとなる弊害が生ずるおそれをあらかじめ定型的に排除したものだと解されております。

 

具体的な事例としては,例えば即時取得の可否ですとか,取得時効期間の長短に関しまして,悪意の占有者が善意の受託者に信託を設定して,その悪意という瑕疵を治癒させて,自らがその信託の受益者となって,即時取得や10年間の短期取得時効の恩恵を実質的に得ようというような場合を排除しようというわけでございます。

 

 

すみれ

「所得時効とかも考えられいてたんだ。」

 

 

しかしながら,受託者はあくまでも信託財産について委託者たる占有者の承継人に当たるものでありますので,占有の瑕疵の治癒という濫用目的の信託設定に対しては,民法187条の原則によった上で,民法90条の適用等によって受託者独自の占有態様の主張を排除することができるものと解すればよいのではないかと思うわけでございます。

 

もっとも,このような考え方に対しましては,占有の瑕疵の治癒という目的による信託の濫用の危険がある以上は,いわば予防的観点から,受託者による独自の占有態様の主張をあらかじめ定型的に排除しておくことが望ましく,現行の規定を維持するべきであるという指摘もあり得るかとは存じます。

 

 

しかしながら,現行の規定のもとでは,他益信託の形をとった場合に受益者が占有の瑕疵につき善意である場合など,必ずしも濫用目的の信託設定とは言えないような場合まで,少なくとも規定上は一律に委託者の占有の瑕疵が受託者に承継されてしまうことになりますが,このようにいわば硬直的な規定を設けるよりは,濫用目的の信託設定については,受益者の主観的態様を始めとする事案の態様に応じまして,公序良俗等の規律によって柔軟に対応することの方が望ましいのではないかと。

 

 

といいましても,自益信託ではほとんどの場合において濫用目的に当たるということになるかと思いますが,いずれにしても,民法の公序良俗等の規定によって柔軟に解釈する方が望ましいと判断されるわけでございます。そういうことで規定の削除を提案したということでございます。

このような考え方につきまして御審議をいただければと存じます。

 

  •  それでは,ただいまの範囲でまた御議論をお願いいたします。

 

  •  まず,第13の強制執行等についてなのですが,29ページから30ページにかけて,受託者が信託事務の処理に関して不法行為を行ったという場合の損害賠償債権も信託財産にかかっていくことができるようにしようというのは,分からないではありません。

 

 

例えば取引的な不法行為というものを考えてみますと,それは不法行為構成でもいけるわけですし,債務不履行の構成でもいけるわけであって,不法行為の構成をとったからいけないということにならないというのは分かって,それはそうなんだろうと思います。

 

 

しかし,私,説明がよく分からないのは,30ページの6行目から7行目にかけて,「そのような信託事務の処理によって得られた利益が帰属する信託財産の負担において被害者の救済がなされるべきであると考えられる」というわけですが,これは確認なのですけれども,受益者は受託者に対して信託財産の復旧は求め得るのですよね。故意であろうが,過失であろうが。

 

 

  •  はい。

 

  •  ということは,「負担において」というのは,補償みたいな役割を果たすという意味であって,決して信託財産が最終的に負担をするという意味ではないわけですよね。それだけを確認させていただければ結構なのですが。

 

 

  •  今の○○幹事が言われた限りではもちろんそのとおりですけれども,私はもうちょっと広く理解していたのです。一般的にいろいろな信託事務が行われるわけですけれども,そういう信託事務というのは信託財産に利益が帰属するわけですね。そういう過程でというか,そういう信託事務の中のどれか一つでたまたま不法行為が行われたというときに,それならばやはり一定の要件のもとで信託財産が負担してもいいのではないかと,そういう一般的な考え方が考えられて書いてあるのではないかと思いましたけれども。

 

ちょうど法人の場合の715条の責任を説明するのと同じような説明なんだと思いますけれども,それだとおかしいのですか。

 

  •  715条に関しては,例えば求償を制限しようとか,いろいろまた話はありますよね。これは,信託に関して受託者が故意又は過失であって,受託者の名前で行為をしているにもかかわらず求償が制限されたりすることもあり得るということなのでしょうか。

 

  •  求償というのは,信託財産から。
  •  受託者の固有財産に対する……。
  •  求償が制限されるということは……,ちょっとにわかには考えにくいけれども。715条の方はそういうことがあり得るけれどもというのは,それとの関連はどういうことですか。

 

  •  ですから,715条とパラレルに話をするような場面ではないのではないかと。

 

  •  違うからという意味ですか。
  •  はい,例えばですね。

補償責任とかというふうなことで基礎づけられる話なのか,それとも,例えば取引的不法行為ですと債務不履行との関係というのは非常に微妙なわけですよね,そういったところから基礎づけられる話なのかというと,後者じゃないんですかね。

 

  •  債務不履行とパラレルだから,負担すると。
  •  例えばですね。
  •  それも一つの考え方かもしれませんけれども,そういうふうに限定する……。恐らくもうちょっと広く,不法行為一般でもって……,ここに書いてある説明はもうちょっと広いことを含んでいると思いますけれどもね。

 

  •  715条の使用者から被用者への求償の制限のところまではちょっと後回しにしますと,不法行為の被害者にとって,固有財産に対しては不法行為に基づく損害賠償請求できるけれども,しかし信託財産に対しては損害賠償請求できないという局面になるのが不適切な例というのは,○○幹事がおっしゃる取引的不法行為に限らず,信託の事務処理にかかわる不法行為であれば,広く当てはまるのだろうと思います。

 

したがって,まずは,信託財産もまた不法行為損害賠償債務を負うとすることは,この案のとおり,適切な解決なのだろうと思います。その上で,715条の求償を制限している現在の判例の考え方をここに持ち込むのかどうかというのは,また別問題なのだろうと思います。

 

 

  •  今の考え方でいくと,故意・過失の区別ということが出てこないのではないかという気がいたします。

 

被害者の側から見ますと,故意の場合には固有財産にしか請求できないということの説明がなかなかつきにくいのではないかと。

 

受託者の故意のリスクというのは信託財産が持つのか,被害者が持つのかというと,やはり近いところにある信託財産の方かなという気がいたします。

 

 

すみれ

「被害者への説明か。たしかですね。」

 

 

 

  •  それはよく分かりますね。

 

 

 

 

 

 

  •  私は,ちょっと一人だけ異論を。

今の御意見は分からないでもないのですけれども,これは今までも,あるいは英米でも,この不法行為のところは書いてないのですね,結局のところ。それはどうしてなんだろうかと。

 

 

ポリー

「イギリスやアメリカには、ないんですね。」

 

 

 

それで,二つ,ちょっと。

まず,法人との比較をしているのですが,やはり何でも法人と一緒にする必要はないのですね。信託という別のスキームをつくっているわけですから。

それで,実質論としてもちょっと違うのではないかと私は思いますけれども。

 

それからもう一つ,これは本当の実質論になりますけれども,受益者というのがいますね。それから,今,不法行為の被害者がいて,多分,どっちが気の毒かという話で議論をなさっておられるのでしょうけれども,それは本当は同じように気の毒なのであって。

 

つまり,そのポイントはこういうことなのですけれども。たまたま被害者が被害に遭った後ですが,この人は信託の何とかのことで例えばトラックを運転していて私をはねたんだということが分かって,それでこういうことになるというのが本当にフェアなのかというのがよく分からなくて。

 

これは何らかの形で差押権を認めるということになりますね。そういう場合には,本当は--例えば,受託者は普通の過失責任については保険に入っていることも考えられる,あるいは受託者自身が自分で固有財産をたくさん持っていると。

 

しかし,私が被害者ならば,そういうことが分かれば,とりあえず差し押さえてしまうわけです。

 

これはタクティックですから。私の方が半分は飛び出していってトラックにはねられた場合というのは過失相殺の問題になりますけれども,とにかく差し押さえてしまうと,その信託は動かないという話で,交渉上のアドバンテージも得られるわけですね。ちょっとどうなんだろうかという感じが私はしますけれども。

 

ただし,日本法においては,取引上の不法行為と債務不履行構成というのが物すごく近接していて,そこの場面ではそんな区別できないんじゃないのと言われてしまうと,そこだけは日本的なところで,まあ,あり得るのかなという気がしますけれども。

 

 

 

 

 

 

 

  •  ほかにいかがでしょうか。

 

  •  今,議論になっているところなのですけれども,実務者の方から行きますと,現在の法律の解釈というのが,信託財産にかかっていけない,それによって信託財産の独立性というのが守られているという部分がありまして,それがこういう形の解釈に変わってしまうというのは,やはり非常に不安なところがありまして。

 

先ほど,被害者の方の救済なのか受益者の方の救済なのか,どちらかということであったと思いますけれども,基本的に受託者に資力がある場合については,信託財産に行っても,後で受託者の方に求償するという形で対応ができるのであればいいですけれども,もちろん,これから先,どんな受託者が入ってくるか分かりませんので,そういう場合において,受託者に資力がないということを前提にした場合においては,やはり信託財産自体が毀損されてしまうと。

 

もちろん,その不法行為の被害者の人というのは気の毒なのですけれども,信託財産の独立性というか,今まで考えてきた信託というもののイメージというものがありますので,それがちょっと崩れるというような感じがいたしますので,この規律というか,解釈というのはちょっとどうかなというふうに考えております。

 

  •  別の論点でよろしいでしょうか。

第14についてコメントが一つと,相殺,第15についてコメントが一つあります。

 

第14の受託者倒産に関しまして,くどいようですが,前半で御議論させていただいた受託者の倒産隔離の話ですけれども,ここでもちょっと議論を差し上げたいのですけれども,仮に双務未履行契約だとした場合でも受託者の倒産隔離が図られるかということですけれども,こういう理解ができるかどうかという質問なのですけれども。

 

 

 

 

 

まず第1に,この第14の規律において固有財産との分離がなされていると。

 

問題は,ゴーイング・コンサーンといいましょうか,受託者が倒産した場合に信託自体が壊れてしまわないかどうかということが実務的には次に気になるところでございますけれども,ここはちょっと後の議論で恐縮なのですけれども,第39において受託者の任務終了事由が書いてあると。

 

そこにおいて,破産手続に関してなのですが,受託者の任務が終了すると。

 

それで,第40について,破産管財人というのは一時的に信託財産の保管をしたり,引継ぎに必要な行為をすることを要するものとするということで,第41の受託者交代までつながるという話なのですけれども,そう考えたときに,ちょっとこの議論とずれて恐縮なのですけれども,片や破産法においては双務未履行契約における管財人の解除権というのがある,片や信託法においてはこういうことで,いわば信託を維持させて新受託者に引き継ぐという義務があると。

 

どちらが特別法なのかよく分かりませんけれども。

 

 

すみれ

「信託法と破産法はどっちが特別法なんだろね。信託法があとから出来たらから信託法なんだろか。」

 

 

よって,結果としては,信託の規律--破産法に限ってはこの現行法でありますけれども--においては,破産管財人からの解除請求権というのは行使し得ないものであるというふうなことが言えないかどうかということでございます。

 

次に,相殺に関しての話でございますけれども,ここは銀行にとっても非常に重要なことと思っておりますが,なおまだ整理できておりませんが,一つ問題提起と質問をしたいところなのですけれども。

 

 

いわゆる善意の第三者の保護というのをどう図るのかということでございますけれども,典型的な例といえば,いわゆる信託銀行からお金を借りて,それで預金をしたと。

 

 

その当該お客さん,第三者というのは,例えば銀行が倒産した場合には,少なくとも相殺の期待権を持っている。

 

 

すみれ

「銀行も倒産してしまうのか。」

 

といったときに,たまたま借入れが信託財産からのものであると。

 

今の銀行実務においては,銀行が貸付けを行うことについて,別段,これは信託財産から出てますよとか,こういう勘定から出てますよということは言わないものですので,そうした場合に,この相殺の制限の規律に従った場合には,この第三者の相殺の期待が損なわれるのではないかということでございます。

 

 

これについてはいろいろな議論があると承知しています。

 

例えば民法478条の類推適用であるとか,又は外観法理をできるのかとか,そういう話があるとは思うのですけれども。また,それに付随して,そもそも受託行というのは,貸し出すときに,これがどこからの貸付けであるかということについての開示義務を負うのかどうかとか,そういう議論にもつながっていくかと思うのですけれども,いずれにしても,1点,善意の第三者の保護というのをどう考えるのかということをちょっと問題提起したいと思っております。

 

 

 

 

 

  •  いろいろな問題提起をされましたけれども,しばらく皆さんの御意見を伺ってから,その後でお答えしましょうか。

今まで議論された点について,いかがでしょうか。

 

 

  •  今,第14の点について○○委員がいろいろとコメントをおっしゃっていましたので,それに関連してなのですけれども。

 

 

まず,全体的な感想,流動化の観点からの感想なのですけれども,倒産隔離というのは非常に重要なポイントではあるのですが,これまで,受託者の倒産については余り議論されてこなかったのではないかなというような気がしております。

 

 

それと,質問なのですけれども,第14の2の(3)のところなのですが,「再生計画又は更生計画による信託財産に属する債務に係る債権の免責又は変更は,信託財産との関係では,その効力を主張することができないものとする」とされていまして,33ページの真ん中のところで,信託財産に属する債務として,例えば信託事務処理に生じた債権について,固有財産を引当てとする部分に関しては再生債権あるいは更生債権というような扱いになるものの,信託財産が負担すべきものについてはそうではないというようなことが書かれていると思うのですが,信託財産に属する債務というのは,第1に戻っていただいて,第1の2で信託の設定時に債務の引受けを行うことができるというような新たな考え方を持ち込んでいるわけですけれども,こういった形で信託設定時に最初から財産に付随していた債務というものもあるかと思いますし,また,信託設定後に信託事務処理により生じた債権ではあるのでしょうけれども,現実的にある取引として,アセットバックド・ローン,ABLというものがあります。

 

 

これは,責任財産限定特約付で受託者たる信託銀行が借入れを行います。

 

借りる方は固有財産で支弁しようという意図は全くありませんし,貸す方も信託財産のみを引当てに貸しているというような形だろうと思うのですけれども,こういった形で,責任財産限定特約付の債務,つまり双方とも,受託者あるいは債権者とも,信託財産のみに負担させようという意図の債権については,これは多分,当事者の意図としては,受託者の倒産の影響は受けるべきではないということだろうと思うのですけれども,そういうふうに理解していいのかどうかという疑問がございます。

 

 

すみれ

「そういう風に理解して良さそうだけど。当事者も限られているんなら。」

 

 

それと,これは会社更生,民事再生に限定されないと思うのですけれども,破産の場合も同じ問題が起きると思うのですけれども,とりあえず裁判所が保全命令を出して受託者による債務の弁済をすべて禁じたような場合に,当初から信託財産に付随していた債務の弁済であるとか,あるいは責任財産限定特約付の債務の弁済が妨げられるようなことはないのかなというのがちょっと気になっております。

 

 

すみれ

「信託債権のことかな。」

 

 

 

  •  ちょっと,いろいろ細かいところは,私も破産とか会社更生の方はよく分かりませんけれども,基本的な考え方は,いずれにせよ受託者というものが倒産しても信託自体には影響がないと。それで信託はそのまま続くので,あとは受託者をどうやってかえるかということが問題だという構造なわけですね。

 

ですから,○○委員が言われたのは,私,少し誤解しているかもしれませんが,最初の双務契約性というのでしょうか,受託者が倒産して何を解除--解除権があっておかしいということを言われたわけですけれども,あのときに問題にされていた解除権というのは,何の契約を……。

 

  •  それもあると思うのです。信託契約というのがあって,それに従って,例えば報酬支払義務と,それから,受託者においては管理処分する義務というのがあった場合に,もうそれは一つの契約ですねと。

 

 

もちろん,実際,通常の契約とは違って受益者というのがいるわけですから,経済実体的には全部移っていますし,もちろん委託者の地位を全部移してしまえば,それはいいわけですけれども,ただ,なお契約というのはあるわけですから,それの未履行があった場合に,信託契約自体が双務契約だということを前提とした場合に,やはり管財人の方からは双務未履行契約の解除権の行使ができ得るのではないかという話です。

 

 

 

  •  それがそうじゃないという……。
  •  まあ,それが適当でない,経済合理性からすると適当でないというふうにしないと信託の特徴がなくなってしまうのではないかと。それで,そのためにどういうふうに考えたらいいのかと。

 

一つの考え方としては,そもそも信託契約というのは双務契約ではないというふうに考えるのか。まあ,これはいろいろ説が分かれていると認識しておりますけれども。

 

もう一つの考え方としては,今申したとおり,そもそも信託に関しては別の規律があるわけだから,破産法の規律にかかわらず信託契約は壊れないというふうに考えるのか,またそういうふうに立法するのかということでございます。

 

  •  私もちょっと,破産法が絡むので余りよく分かりませんけれども,信託の設定の段階を考えると,委託者と受託者の間でもって信託を契約で設定したと。最初に問題になるのは,その契約の性質というのでしょうか,そこで双務契約的かどうかということを言われたのだと思いますけれども,恐らく,今,○○委員御自身が言われたように,信託が設定された後,受託者が破産しても,信託自体はずっと継続するという前提で考えていくのであるとすると,ロジックが少し飛んでいるかもしれませんけれども,結論的には,やはり解除というような問題は生じない,それをむしろ封じているというふうに理解するのがいいのではないかと思いますけれども,なおもうちょっと正確に御議論いただければと思いますが。

 

 

  •  なお正確かどうかよく分からないのですけれども。

まず,今の点ですね,信託契約が管財人等の双方未履行双務契約に係る解除権の対象になるかということですけれども,そんなに理屈をこね回さなくても,多分,解除権の対象にならないというふうに導けるのではないかと。

 

 

つまり,第13の帰結として第14があるわけですが,第14では,信託財産というのは破産財団に属しないし,再生債務者財産や更生会社財産に属さないということになっていると。

 

そうすると,再生の場合は再生債務者がそのまま管理処分権を持つのでちょっと見えにくいので,議論を置いておきまして,破産や更生のように管財人がいるタイプのシンプルな場合を考えますと,管財人の仕事というのは,財産の管理処分なわけですね。

 

それは何を管理処分するかといえば,破産財団あるいは更生会社財産に属するものの管理処分をするわけで,その一環として解除権というのがあるわけです。

 

 

ですから,その外側にあるものについて解除権を持つということは,破産法本来の理屈からして,多分ない。

 

例えば,類似の関係で申しますと,自然人が破産した場合に,自然人の雇用契約について管財人は解除権を持たないということになっていますが,それは,雇用契約というのは,破産財団とは別に,肉体を使って労務を提供して,それに対する対価を受ける契約であって,財団の外側の法律関係だからという説明を多分するのだと思うのですね。

 

それといわば類似の関係ですので,従前の考え方で言いますと,要するに自由財産関係の契約と同じ,だから解除権は性質上及ばないという整理を多分できるのではないかと思います。ですから,先ほどの○○委員の御説明ですね,正にもともと外側なのだという説明で多分よろしいのではないかというふうに思います。それが第1点です。

 

 

番人

「たしかに。雇用と考えると分かりやすいです。」

 

 

 

第2点ですが,第14の2の(4)ですね,第14自体はもちろんこういう仕切りになるのではないかと思うのですけれども,いわばこの2の(4)の後始末をどうするかなのですが,2の(4)は,再生の場合に管理命令が出て管財人が選任されたと,あるいは,更生手続の場合は必ず管財人が選任されますので,管財人がいて受託者の職務や信託財産の管理処分を続けるわけですが,ここから発生したコスト,管財人の報酬なんかはそれぞれ共益債権になって,そう考えますと,再生債務者財産あるいは更生会社財産に対して最優先順位で請求できるということになるのですが,そのままで終わると何かおかしいような気もして。

 

もともと信託財産の管理処分から発生するコストなわけですから,最終的にはそちらの方に帰属させなければおかしいような気もします。

 

 

そう考えますと,報酬請求権については別に,報酬のうち,その信託財産の管理処分に係るものについては,例えば直接信託財産に行けるようにするのか,あるいはいったん再生債務者財産なり更生会社財産なりに請求できた後,そこから更に請求できるようにするのかということが考えられます。

 

 

しかし,そうかなとも思うのですが,もしかしたらそうではなくて,結局,再生債務者財産なり更生会社財産なりに報酬を負担させて,それでおかしいというのは,何がおかしいかというと,再生債権者や更生債権者の取り分がその分減ってしまうという問題なのですが,もしかしたら受託者の倒産というのはそういうもので,更生債権者あるいは再生債権者というのはもともとそういう負担つきのものしかないのだと,そういうふうに自分の取り分が減っても仕方ないんだというような地位を持っているのかどうかですね。

 

 

まあ,こういうふうに考えることは多分なくて,やはり前者のように,つまり,最終的には信託財産に負担させるスキームがいいのではないかと思いますけれども,考え方としては,論理的には一応両方あり得る。

 

 

結論としては,私は,原則どおり,報酬請求権は信託財産に係るものから発生するものを全部含めて,いったん再生債務者財産なり更生会社に請求させて,その後,信託財産と再生債務者財産なり更生会社財産の間で調整するという形に仕組めればいいかなというふうに思いますが,それは現行法でもある問題ですので,もしかしたら解釈問題で済むのかもしれないし,解釈で難しいということであれば何か規律を置くことが必要になるかなという気がいたします。

 

 

 

 

 

 

  •  私も,結論的には,やはりそういうのが適当な気がします。ちょっとどういう筋道で行くのか,私にはよく分からないけれども。

何かありますか。

 

 

 

 

  •  先ほど御質問があった項目のうち,破産管財人の解除権につきましては,○○委員と○○幹事の方から御説明いただきましたとおりだと考えております。

 

結局,信託財産の独立性というのがここの規律の趣旨でございますので,そうしますと,○○委員の方からおっしゃった例えばABLの場合で責任財産限定特約があるような財産ですとか,そもそも固有財産を引当てとしていないような財産については,それは計画とかの対象にならないのであろうし,それから,保全命令などが固有財産についての再生手続でかかったとしても,信託財産についてはその影響は及ばないというふうに区別して考えればいいのではないかと思います。

 

 

それから,最初に○○委員がおっしゃったもう一つの御指摘,第三者の保護が必要であるということは,これは我々のペーパーでももちろん意識はしておりまして,相殺のところでは,37ページの(注3)で,やはり第三者の意識と受託者の意識が違う場合について第三者をいかに保護するかという問題はあると考えているところでございまして,先ほどおっしゃったとおり,まず第三者に属する信託銀行の国有財産に対する債権があって,信託財産から借りたものについて,第三者はこれは信託銀行の国有財産から借りたと思っていたけれども,実は信託財産から借りていたというように認識が違う場合であるとか,あるいは逆に,例えば,信託財産に属する第三者に対する債権があった場合において,第三者の方から信託銀行に金を貸したと。

 

これは,信託銀行としては自分の国有財産で借りていたと思っていたけれども,第三者としては信託財産に貸したと思っていたと。

 

すなわち,いずれの場合も第三者の方で相殺の期待を持っているわけでございますが,そういう点についていかに保護するかというのを,受託者の権限外行為の取消し一般のところであわせて取り扱わせていただきます。

 

基本的には,第三者を保護して取引の安全を図るべきか,信託財産の安全を図るべきかという価値判断の問題に帰着するものかと思います。

私からは以上でございます。

 

 

 

 

 

  •  ほかにいかがでしょうか。

 

  •  第15の相殺のところでございますが,まず,「1 法定相殺」の(1),(2)ですけれども,ここの規律につきましては,現行法で17条と22条があるせいで,受益者の保護を図りたくても図れないというようなジレンマがあったりもしましたので,そこが非常に明確になったということもありまして,非常に有り難い規律かなと。

 

ただ,(1)のところの「受託者がその承認をしたとき」というのがちょっとよく分からなくて,先ほど,第三者から相殺適状があって,受託者から適状でないような状態について承認するというのはどういうことかというのがちょっとよく分からなかったところがあるのですが,そういうところを除けば,方向性として,こういう規律を入れていただけるというのは有り難いと。

 

 

 

(3)については,現行法では相殺されてしまう部分でもありますので,そこが相殺されないというのは,受託者の側からすると有り難いなと。

 

あと,この(3)のところから派生して,(注4)で,受益債権の部分についても(3)の規律が適用されるというのと,逆に受託者の方からは相殺ができるということについては,この規律についても非常に有り難いなというふうに思っています。

 

 

それで,先ほど来出ています第三者の保護の話なのですが,こちらの方については,基本的には第三者の保護というよりも受益者の保護を図るということをとりあえず優先したいなというふうに考えておりまして,特別の規律というのは置くこともないかなと。

 

 

実務上の問題として,実際,勘定を明示してということはしていないのですけれども,相殺ができないような形のものについては,例えば,借入れしている人のところに行って,これは相殺できませんよというようなことを個別に言ったり,実務上の対応というのはかなりやってきています。

 

 

そういう観点から見て,もちろん,これは全部が全部,実務上これでクリアできるかどうかは分かりませんけれども,基本的には受益者の方の保護を優先したいというふうに考えています。

 

 

  •  なかなか,信託財産から貸すときに,というか,あるいは信託銀行が貸すときに,必ず出所を言わなくてはいけないなんていう話につながってきそうな感じがして……。まあ,余計な話ですが。

 

 

  •  大半の部分については,相殺ができるような形で信託契約に書いたり,そういう形にしておりますけれども,まれなケースがありまして,そういうケースについても徐々に対応を始めているというところがありますので。

 

 

  •  第13の強制執行等についての仮処分に関する問題なのですが,詐害信託との関係で,詐害信託が行われた場合に仮処分の決定をとるということをやることがあるわけですけれども,この仮処分の登記をするに当たって,法務局の方でどうも意見が分かれているようで,登記の対応をしていただけないというケースがあるようです。

 

 

番人

「保全処分の登記だよね。登記できないときもあるんだ。法務局は必要性をみるのかな。名義の問題ではないと思うけど。受理せざるを得ないような気がする。」

 

 

 

この点については,詐害行為取消しの仮処分決定が出ても登記ができないというのは,やはりおかしいことだと思いますので,この立法の過程の中できちんと明確にしていただければと。

 

具体的には,先ほど第13の中で幾つか類型を挙げられましたけれども,ここにもう1個加えることを明確にすることを御検討いただけないかと思います。

 

 

 

 

  •  登記の場面ではなくて,この信託の場面でですか。
  •  詐害信託の場面でです。
  •  例えば,どういう規律を加えてということでございますか。

 

  •  要するに,信託法16条1項との関係で,登記ができないという理解をされている法務局があるようで,それとの関係で統一していただけないかということです。

 

  •  要するに,もう受託者の名義に一応なっているわけですね。例えば不動産が。
  •  そこから更にどこかに移ると,詐害信託の取消しをして判決を得ても,更に面倒なことになるということで,仮処分をしたい,登記を得たいというケースです。

 

  •  一応問題は分かりましたけれども,何か仮処分そのものの扱いの問題なのかなという気もします。

 

 

  •  登記の方の問題ですね。登記と現行法16条の問題です。
  •  16条の問題になりますでしょうか。16条というのは,信託財産であることを特色づけるための,第三者からの強制執行を排除するための規律ということなのですが,今おっしゃったのは,詐害信託の取消しの場面での仮処分で,ちょっと局面が,ここの16条で……,問題があるのはもちろんかと思いますけれども,第13の場面の問題とはちょっとずれるのではないかなというような気がいたします。

 

  •  まあ,どこかの場面で統一的な処理をしていただければというふうに思うのですけれども。

 

  •  分かりました。どこかで関連するところでまた考えておきたいと思います。

 

  •  ちょっと実質ではない点なので申し訳ないのですが,ストラクチャーの話なのですが,相殺のここの規定の制約と忠実義務の規定の関係がちょっとまた分からなくなってきまして,どう整理されているのか伺えればと思うのですけれども。

 

36ページの下の方で,受託者からの相殺で,受託者が固有財産に属する債権を持っていて,信託財産に属する債務を相殺する場合,これは要するに信託財産を固有財産で返すような話だから,原則これは問題なくて,ただ,競合貸付けみたいなことがある場合に初めて何か特殊な問題が起きる。

 

 

 

それで,そういう特殊なケースだから扱いませんと,これはいいと思うのですが,その後,これは忠実義務で処理できるとお書きなのですね。

 

もし忠実義務でこの問題が処理できるのであれば,第15の1の(2)も全部できるのではないかという疑問にもつながりまして,もし第15の1の(2)が,受託者からの相殺一般が忠実義務の一般の禁止及びその取消しとか無効とかの効果で処理できないというのであれば,ここのところもやはりこの形では処理できないような気がするわけです。

 

 

これはどう整理されたのか,忠実義務でも処理できるように確認的に書いたのかどうかというのが必ずしもよく分からないところです。

 

ひょっとしたら,普通の取引行為と違って,無効取消しによって相手方の債権が復活してみたいなことまでがやりにくいから,こういう規定をあえて置いたというのであれば,ここで要らないと言われている局面も規定しておかなくてはいけなかったのかもしれませんし,そこはそんな差がないのであれば,そもそも(2)が要らないのではないかというのにつながる。

 

それともう一つ,更に言うと,ほかの局面でもやはり忠実義務の効果との調整というのは考えた方がいいところがあるかもしれなくて,例えば,この(2)に反する相殺をしてしまった後,受益者の承認をとって追認してもらうというのもできておかしくないと思うのですけれども,これはどこで読むのかというと,現在は利益相反行為の禁止の例外では読めないのですね。

 

これはたしか三つあって,同意と信託行為の規定とフェアネスだったと思いますけれども,同意というのは,あくまでも相殺するときの同意であって,してしまった後の追認ではないものですから,そうすると,忠実義務違反一般の追認とか権限外の行為の追認とか,そっちでいくと思うのですが,それがこの1の(2)にもかぶると読まなければいけなくなると思うのですけれども,そうなってくると,ますます仕分けが,忠実義務違反の行為一般の禁止の話とこの1の(2)の禁止とがはっきりしなくなってくる。

 

 

だから,一度整理はされて,何のためにこの(2)というのが規定として必要なのかというのを検討する必要があるかなという,ストラクチャーとしてですね,感触を持ちました。

 

 

 

 

 

 

  •  この辺の相殺の禁止というのは,確かに,最終的になぜ禁止されているかという根拠を突き詰めていくと忠実義務などの問題にぶつかってくるという限りではオーバーラップしているのだと思いますけれども,恐らく今までの規定の仕方というのは,ここもある程度それを受け継いでいるわけですけれども,相殺ができる場面を規定するのではなくて,一応このタイプの相殺はだめですよというものを挙げて禁止する,それで,それ以外についても忠実義務の一般原則でだめな場合が出てくるかもしれないけれども,それについては定型的に相殺の形式としては必ずしもだめだと言えないので,そこは規定していない,そういう考え方なのではないかと思いますけれどね。

 

 

すみれ

「例示列挙かな。」

 

 

 

  •  (2)は,完全に利益相反取引の要件をそのまま引っ張ってきて,この範囲はだめと言っているので,利益相反行為でだめというのと,ここでだめと書くことの違いというのが,範囲としては全然出てきていないのですね。

 

それだけに,従来,漠然と相殺禁止を置いていた場合と比べると,よりどういう関係なのかという問題が際立ってしまうという特徴があると思うのですね。

 

そのほかの利益相反の規定の類推みたいなものがあるというふうに言うのであれば,こんな書き方で(2)を置くのが本当にいいのかどうか,やはり体裁として気になるわけです。

 

  •  要するに,利益相反の原則そのものだから書く必要ないだろうと。
  •  こんな書き方で書くのであればですね。それか,そうでなければ,利益相反のところの規定をもっと丹念に引用するか,いずれかをしないと,非常に中途半端な気がしますね。

 

  •  何かありますか。

 

  •  今の相殺の点については,今,○○委員がおっしゃいましたように,我々は,基本的に相殺できない類型を切り出して書いたということでございますけれども,これを書くことによってかえって漏れてしまう場合があるのではないかという御指摘かと思いますので,規律の仕方をどう見直すかと。

 

我々としてはこれで足りているのではないかと思っていたわけですが,考えてみたいと思っております。

 

あと,○○委員が先ほどおっしゃった点,受益者を保護すべきだというのは,本当にそうかどうか,反対するわけではないですが,そこは受益者の保護と第三者の保護のバランスを考える必要があって,ほとんどの場合には言ってしまっているのだからいいということでしょうが,それは第三者の保護要件が欠ける場合だと考えればいいのかなという気もいたしまして,我々,これから検討いたしますが,一律に受益者を保護して,第三者の取引の安全を犠牲にしていいかどうかというと,そこはなおまだ問題があるなというふうに考えておりますので,ちょっと一言,留保をつけさせていただきます。

 

 

 

 

 

  •  結構根本的な問題で,ここだけではなくて,ほかのところでも,権限違反の行為が行われたときに,一種の表見代理的なもので相手方を保護するかどうかとか,そういうのに共通する問題ですね。

ほかにいかがでしょうか。

 

 

  •  簡単なことで教えていただきたいことなのですが,第14です。1の(2)の,「受益債権は,破産債権としないものとする」という,これは財産の独立性の一つのあらわれだと思いますが,これは端的に言うと,今日の対象ではありませんが,報告書の第27と同じことを破産の局面で示したというふうに考えたら,それで過不足ないですか。

 

  •  はい,そういう趣旨でございます。

 

  •  私も内容について教えていただきたいところがあるのですが。

2点ございまして,一つは,第15の相殺に関する規定の取扱いについて,37ページ(注1)という点で,受託者からの承認の話で,この効力発生時期の問題が書かれておりますけれども,ここでは恐らく二つの問題がありまして,効力発生時期はいつかということと,遡及する場合に差押えとの関係がどうなるかという2点なんだろうと思います。

 

御説明によりますと,相殺適状のときというのは,具体的には,第三者からの相殺について,相殺禁止が外れたような形での相殺適状のときから効力が発生するとされた上で,しかも差押えに優先するという帰結だろうというふうに考えておりますけれども,その理由づけの話なのですけれども,ここに書かれている理由づけが適切なのかというのはちょっと気になるところですので,御教示ないし御確認なり,いただければと思います。

 

一つは,受託者からの承認によって,第三者がした相殺について相殺禁止が外れているならば,相殺適状になる時点に効力がさかのぼるということにいたしますと,債権譲渡の禁止特約がついているものについて異議なき承諾がされたときに,116条によって差押えがあったときにはその権利を害することができないというふうにしている平成9年の最高裁と類似の構造になるのではないかという問題が出るように思われまして,それとは場面が違うということを言っていくということになるのかなと思うのですけれども,承認によって,あるいは承諾によって遡及する,その間に第三者が来ているというときの説明が,それとの関係で必要になるのではないかと。

 

 

 

 

それからもう一つ,理由のところで,「受託者から相殺をした場合には,その効力発生時期は相殺適状の時となることを勘案すると」というふうに書かれていることの意味がはっきりとよく分かりませんで,もちろん,受託者から相殺をしたらそうなるわけですが,受託者からは相殺ができないような場面でこれは一番きいてくるという御説明で,かつ,その場合,相殺適状の時期は,受託者からするものは相殺適状を満たしていないということですので,この「勘案すると」という理由づけがどうきいているのかというので,御趣旨などを説明していただければと思います。

 

もう1点は,第14に関しまして,これもよく理解ができなかったところなのですけれども,1の(3)で,「法人である受託者を除く」というふうにされています。

 

そこの説明が,32ページの(3)のなお書のところになっておりまして,法人の場合は解散するため受託者の任務は終了することになるので,終了しないものとされている場合においても任務は終了するので,管財人が行うこととはならないというふうに書かれているのですが,その解散事由,破産手続の開始があったとしても,法人自体はなお清算法人という形で残るのではないかというふうに考えられますことと,それから,この規律とはどう関係しているのかという点でして,更に別途,終了事由については,別段の定めがあるときは破産によって終了しないという規定が報告書では提案されていたかと思いますが,それとの関係で,ここはむしろ法人については別の定めはなし,強行規定であるという理解なのか,ちょっとそのあたり,関係が分かりませんでしたので,もしよろしければ御説明いただければと思います。

 

 

  •  最後の点ですが,法人については当然終了するということは,破産手続開始によって法人が解散いたしまして,清算の目的の範囲内で存続するということになるわけでございますけれども,そのような権利能力が限定されたものについて,受託者としての任務が続くというのは適当ではないのではないかという価値判断が入っておりまして,したがって,自然人の場合は終了しないとしても,法人の場合には破産手続の開始によって常に終了するというふうに解しているということでございます。

 

それからもう一つ,相殺の書きぶりでございますけれども,これは余りそこまで意識せずに書いてしまっておりまして,ちょっと答えにくいところがございます。

 

  •  また御検討いただければと思います。

 

  •  ○○幹事の前者の御回答なのですけれども,つまり,受託者が法人の場合ですと,破産した場合に受託者の職務を破産管財人が行うことにならないということと,それから,第42の「受託者倒産の場合における信託財産の取扱い等について」ということで,破産管財人が新受託者が選任されるまで管理をするというふうに私は理解しているのですが,そこはどういう関係になるのでしょうか。

 

  •  私が申し上げたのは,受託者である法人が破産手続の開始をされますと,法人は解散して,清算目的の範囲で存続して,しかし,そのようなものについては信託の受託者としてはふさわしくないということで,任務が終了するということですが。

 

  •  その受託者の破産管財人との関係というのはどうなるのですか。

 

  •  それは手続は並行しますから,任務が終了することによって……。

 

  •  単純に分からないだけの話なのですけれども。したがって,受託者の職務を破産管財人が行なうこととはならないということは……。

 

  •  要するに,「職務」というのが,いわば権限全般という意味でして,いわゆる引継事務みたいなものはやりますが,それを超えた受託者としての権利義務全般までは及ばないと,そういう趣旨で。

 

  •  管理処分とかいうことであった場合に,ちょっと細かい話で,また第42の話になって恐縮なのですけれども,管理信託の場合に,その引継ぎの間の管理というのは,当該破産管財人は行うのですか,それとも行わないのですか。

 

  •  そこは,管理はするとしても,受託者としてではなくて,破産管財人として管理継続するということになります。

 

  •  分かりました。ありがとうございました。

 

  •  先ほどの繰り返しになるのですけれども,この第13で,受託者が不法行為をした場合に,いきなり信託財産にかかっていけるというのは,やはり大きなことだと私は思うのです。今までにないリスクをとにかく信託財産に負わせることになるというのは,やはり大きな変更であって,もう少し慎重な配慮が望まれると思うのですね。

 

例えば,30ページの一番上に,「不法行為は信託事務処理ではないから」と書いておきながら,その下の6行目のところで,「信託事務の処理によって得られた利益が帰属する」と。

 

だから,利益があるわけはないですよね,この不法行為によって。しかし,一般論として,今までちゃんと信託事務をやってきたから利益が帰属してたんじゃないかと言えば,へ理屈で言えばですよ,受託者に就任した初日に不法行為をやられたのでは,もうたまったものではない。

 

大体,受託者の方にかかっていけばいいわけなんですから,基本的に。それを,こうやって信託財産にいきなりかかっていけますよというのは,従来にない……,つまり,この信託制度というのは,信託財産の倒産隔離であれ何であれというようなことを非常に日本で強調しているのに,ここで新たなリスクをわざわざ負わせるというのが,ちょっと私……。

 

 

 

まあ,ともかく,これは非常に--意外に,かもしれないですけれども--重要な変更をしようとしているのではないかという点を,もう一言だけ,同じことを繰り返させていただきます。

 

 

すみれ

「信託財産の価値が下がるのは嫌なんだね。日本は外国に対して、倒産隔離であれ何であれということを非常に強調しているんだ。」

 

 

 

  •  それでは,今日も非常に活発な御議論をいただきましたけれども,必ずしもまだ十分議論が尽くされていない点がありますが,これはまた,先ほど○○幹事からも話がありましたように,まだもう1ラウンドか2ラウンドぐらいは……。
  •  この件につきましてはもう1ラウンドございます。

 

  •  議論ができますので,そこで御議論いただきたいと思います。

それでは,本日の会議はこのぐらいにしたいと思います。

 

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すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。加藤典洋、村上春樹は難しい、読みました。」

 

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