〒903-0114沖縄県中頭郡西原町字桃原85番地 TEL098-945-9268 受付時間平日9:00~17:00

司法書士宮城事務所 > お便り > 家族信託・民事信託 > 2016年加工編 法制審議会信託法部会 第2回会議 議事録

2016年加工編 法制審議会信託法部会 第2回会議 議事録
2016年01月09日

2016年加工編

 

法制審議会信託法部会

                       第2回会議 議事録

 

 

 

第1 日 時  平成16年10月15日(金)  自 午後1時00分

至 午後4時55分

 

第2 場 所   法曹会館「高砂の間」

 

第3 議 題

総論的な意見交換

 

第4 議 事   (次のとおり)

 

 

 

議    事

 

  •  それでは,法制審議会信託法部会の第2回目の会議を開催したいと思います。

最初に,今日の議事の進行について,○○幹事の方から説明をお願いします。

  •  本日の進行でございますが,あらかじめ皆様のお手元に配布してございますけれども,本日は10項目を扱わせていただきます。

 

その割振りでございますが,全体を四つに分けまして,3時までにいったん休憩をとりますので,それまでに二つのセッション,その後,5時まで二つのセッションに分けさせていただきたいと思います。

 

第1セッションは,「第35 補償請求権について」と「第36 報酬請求権について」で約1時間,続きまして,「第49 受益者が複数の信託の意思決定方法について」と「第53 受益権の有価証券化について」を第2セッションで扱わせていただきまして,途中休憩,それから,「第37 受託者の解任・辞任等について」,「第57 信託行為の変更について」,「第61 信託の終了原因について」を第3セッション,最後に,「第55 私益信託における委託者の権利義務について」,「第63 信託財産に係る倒産処理手続の整備について」,「第69 いわゆる目的信託について」を扱うというように進行させていただきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。

 

  •  それでは,説明の方をお願いします。

 

  •  それでは,補償請求権と報酬請求権の問題につきまして御説明申し上げます。補償請求権の方はいろいろ論点がございますので,若干長目になりますが,御容赦いただければと思います。

 

御承知のとおり,現行法36条1項,2項におきましては,受託者が信託財産に関して負担した租税,公課その他の費用,又は信託事務を処理するために自己に過失なくして受けた損害の補償について,信託財産及び受益者から補償を受けることができるものとしまして,信託に関する費用及び損害の負担の在り方を決めております。

 

補償請求権は,受託者が信託財産又は受益者のために事務を行う場合に,信託事務にかかった費用を最終的に信託財産又は受益者に負担させるための制度でありまして,他人のために事務を行う場合に一般的に見られるものでございます。例えば,委任における費用償還請求権についても民法第650条に規定がございます。

 

ところで,忠実義務の原則からいたしますと,受託者は,信託財産の運用に当たりまして,受託者個人を相手方として取引行為を行うことはもちろん,非取引的な法律関係に立つことも避けなければならないわけですが,受託者が,本来なら信託財産の負担すべき費用を支弁し,又は信託事務の処理に際して損害をこうむった場合にも信託財産から補償を求め得ないとすることは,余りに受託者に酷であると考えられます。

 

そこで,このような費用や損害に関しましては,忠実義務の原則の例外として,信託財産から,又は信託の利益の享受者である受益者から補償を受けられるようにしたのが本条の趣旨であると考えられます。

 

しかしながら,現行法については次のような問題点を指摘することができると考えます。

まず,第1でございますが,現行法は,受益者が,信託行為に定めがなくとも,原則として補償義務を負担するものとしておりますが,このような考え方は不適当ではないかとの点でございます。

 

番人

「受益者に対しては個別に合意したときだね。受益者からしたら最初にお金はだして終わりって思うのが普通って判断。」

 

株式会社における株主の有限責任と比べまして,信託受益者は原則として無限責任を負っていることになるわけですが,例えば,委託者が受益者にもなって営利を追求する土地信託のような類型の場合には,利益を享受する受益者がリスクもまた負担して無限責任を負うことは不合理ではないといたしましても,金銭で出資し,信託運営の途中の段階で信託財産が各種の財産に投資され,最後は金銭で戻ってくるというような一般的な信託商品のスキームにありましては,受益者といっても単なる投資目的で受益者になっているにすぎず,受益者は,自らの最大の損失は受益権の経済的価値がゼロになることであると考えているものと思われます。

 

 

しかるに,受益者が受託者からの補償請求により無限責任を負うというのでは投資商品としての魅力が薄れてしまうため,そのような投資商品を設計するに当たっては受益者の補償請求権をあらかじめ排除していることが必要ではないかといった指摘がなされているところでございます。

 

ちなみに,米国におきましては,受託者は信託財産から費用の補償を受けるものとされ,受益者に対する補償請求権は,特別の合意がない限り否定されているところでございます。

 

 

 

次に,第2といたしまして,受託者が信託財産から補償を受ける権利は他の権利者に優先して行使することができると現行法ではされておりますが,費用の性質を問わず,一律に他の権利者に優先するというのは合理性がないのではないかという指摘でございます。

 

 

すみれ

「費用などは金銭債権になるんだね。共益費用の先取特権、抵当不動産の第三取得者による費用を返してもらう権利で他の信託財産に対する債権者と調整するんだ。」

 

 

以上のほかにも,例えば,受託者が補償請求権を実現するために信託財産を売却するにつきましては,民事執行法上の換価処分手続による必要があるのか,自助売却によることも可能なのか,あるいは,信託財産を処分すると信託目的の達成が事実上不可能になるような場合におきましても,受託者は補償請求権を満足すべく信託財産を処分することができるのか,あるいは,信託財産に対する補償請求権と受益者に対する補償請求権とでは,いずれを先に行使してもよいのか,更には,受託者がそのこうむった損害について補償請求できる場合を受託者自身に全く過失がない場合に限定する必要はないのではないか等の問題点が指摘されているところでございます。

 

 

以上のような問題の指摘を踏まえまして,報告書の記述は,現行の規律を改め,信託に関する費用及び損害の負担の合理化を図ろうとするものでございます。

以下,報告書の記述に従いまして順次説明を申し上げたいと思います。

 

 

 

 

 

 

まず,信託財産に対する補償請求権でございますが,太字の1は,受託者が信託事務を処理するに当たり支出した必要と認めるべき費用について信託財産から補償を受ける権利についての一連の記述でございます。

 

そもそも受託者といたしましては,信託事務の処理に基づき第三者に対して債務を負担した場合には,受託者が信託財産について有する処分権に基づき,直接信託財産をもって支払いに充てることも可能なわけでございますが,いったん受託者の固有財産から支払った後で信託財産に求償する方法をとることも可能でして,ここでは後者のいわゆる立替弁済をした場合の求償方法について定めたものでございます。

 

 

すみれ

「借り入れとかした場合かな。」

 

まず,(1),(2),(5)というのは,信託財産に対する補償請求権の行使の方法といたしまして,信託財産の固有財産化,平たく言えば信託財産に属する金銭から直接充当を受けるという方法,それから,(2)といたしまして,信託財産の売却による方法,それから,(5)といたしまして,信託財産の強制換価手続に対する配当要求の方法,以上の三つの方法があることについて定めたものでございます。

 

このうち,まず(2)の信託財産の売却でございますが,これは,信託財産中に費用に充当すべき金銭がない場合に備えまして,受託者に信託財産の売却権限を与え,その売却代金の中から補償を受けさせようとするものでございます。

 

 

先ほど申しましたとおり,ここでの「売却」の意味については争いがございますが,事務処理の円滑性の観点から,受託者は民事執行法上の換価処分手続による必要はなく,簡易な換価方法である任意売却の方法によることができるということを示したものでございます。

 

なお,ただし書におきまして,当該信託財産の売却により信託目的の達成が事実上不可能となるか,あるいは実質的に損なわれる場合には,受託者は当該信託財産を任意に売却することはできないとしております。

 

これは,例えば,ある土地を唯一の信託財産とする信託におきまして,補償請求権の満足のためとはいえ,その土地の喪失をもたらすような信託財産の売却が行われるときには,当該信託の目的達成による信託の終了を来しかねないわけでございます。

 

 

しかし,前回,善管注意義務に関するところで御説明いたしましたが,受託者は信託事務処理遂行義務を負っておりますので,補償請求権行使のためとはいえ,信託目的の達成と抵触するときは信託財産の売却処分は制限されるということを示したものでございます。

 

 

もっとも,この場合,受託者としては,信託目的達成のためには固有財産からでも立替払いを続ける義務があるというわけではございませんで,後ほど説明いたしますが,受益者に対する補償請求権が可能であればこれを行使すること,又は,一定の手続を踏まえて信託を終了させた上で,信託の清算手続において弁済を受けることをもって対応すべきことになると考えているわけでございます。

 

 

番人

「登記するとなると信託目録に、処分がどういう権利でできることになるか、記録。例えば、処分しても信託の目的が達成できるときは処分できる、別の定めで処分することができる、とか。」

 

 

次に,(5)でございますが,これは,信託財産が他の債権者によって差し押さえられた場合には受託者が配当要求できることを規定したものでございます。

 

先ほど申しましたとおり,受託者は補償請求権の満足を得るために信託財産を任意売却できるわけでございますが,それよりも先に他の債権者に信託財産を差し押さえられた場合には,差押えの処分制限効により,もはや信託財産を任意売却することはできなくなると解されます。

 

この場合におきまして,受託者が強制換価手続に参加することもできないとなれば,受託者の補償請求権が,後ほど説明いたします他の債権者との優先関係の有無にかかわらず,事実上実現できない,すなわち劣後する結果となってしまい,適当ではないと考えられるからでございます。

 

 

 

次に,太字の1の(3)及び(4)でございますが,これは,信託財産から補償を受ける権利につきまして一律に他の債権者に対する優先権を認める現行法の規律を改めまして,優先権を認める範囲を一定の合理的な範囲に制限しようとするものでございます。

 

例えば,信託財産に関して負担した費用といたしましては,信託財産に属する一般の借入債務の弁済費用というようなものもあり得るところですが,このような借入債務の弁済費用の支出がすべての信託債権者の利益となる,換言すれば共益性を有するもの,とまでも言い難いところでございます。

 

そうすると,このような信託財産に帰属する借入債務のようなものにつきましては,受託者がなした弁済費用につき信託財産から補償を受ける権利に優先性を認めることは合理的ではないと考えたものでございます。

 

このような考えのもとに,ここでは,受託者が負担した費用の実質に応じまして信託財産から補償を受ける権利に優先性を認めることといたしました。すなわち,優先性を一定の限度に絞ったということでございます。

 

 

すみれ

「債権者皆のための費用や財産の価値を高めた費用で分けるのかな。」

 

 

そのうち,まず第1でございますが,受託者が信託財産に属する債務の弁済をした場合には,当該債務に係る債権者に代位し,受託者は,この代位された債権者の有した一切の権利,例えば信託財産に対する担保権がついていれば,その担保権を行使できるものといたしました。

 

 

ポリー

「信託財産が債務者で、受託者が弁済で利益を受ける人ですかね。」

 

 

 

前回説明いたしましたが,信託の構造によれば,信託財産に帰属する債務についても,その債務者はあくまでも受託者であり,受託者が債務を弁済したといたしましても,本来の第三者弁済には当たるわけではないのですが,受託者がその固有財産をもってした弁済は,実質的には民法500条の定める「弁済ヲ為スニ付キ正当ノ利益ヲ有スル者」と同視することができ,その限度で弁済による代位の構造を認めまして,法定代位の効果を認めることができると考えたものでございます。

 

それから,第2の優先性ですが,受託者が支出した費用がいわゆる必要費又は有益費に当たる場合,例えば信託財産を修理した場合の補修費等につきましては,信託財産の価値自体が維持増加させられることにより他の信託債権者の利益にもなると考えられますので,民法の留置権者や質権者の費用償還請求権の規律に従って優先性を付与することといたしました。

 

 

 

もっとも,本来,受託者は,信託財産から支出して信託事務を行うべきときに信託財産に資金がないときには固有財産から支出することをいわゆるフィデュシャリー・デューティーとして課されているにもかかわらず,受託者の信託財産に対する費用償還請求権に優先効を認めない場合には,受託者を一種の利益相反の状況に立たせることになり,受託者が固有財産から支出することについて逡巡することになりはしないか,すなわち,受託者としては,信託財産にとって必ずしも芳しくない結果となることは承知しつつも,自己の経済的利益の観点から,自らその行動を抑制せざるを得ない効果を生むのではないかという指摘もあり得るかと思います。

 

 

すみれ

「フィデュシャリー・デューティー(信認義務)だ。」

 

 

例えば,信託財産の保全のため,あるいは信託財産にとって有利な投資機会の活用のためには債務を負担してでも一定の行為を行うことが望ましいと思われる場面でも,このような行為に基づく債務の弁済を請求された受託者がその弁済をした上で信託財産に求償する場合におきまして,その求償権に優先効が認められないこととなりますと,あるいは少なくともそのおそれがあるということになりますと,受託者としては,あえてこのようなリスクを伴う行為をすることを自制する方向に向かうということも考えられます。

 

 

また,信託財産について莫大な所有者責任を問われることになりながら,その信託財産に対する求償権が十分に得られなくなるという事態をおそれ,慎重を期して保険を付することに走るという事態も懸念されるところではございます。

 

このような懸念はございますが,この報告書としては,優先権を制限するという規律をとりあえずとっているというところでございます。

 

 

最後に,太字の1(4),(5)のアステリスク1,2についてでございますけれども,これは,91ページで「もっとも,」以下で記載してあるところでございますが,その趣旨につきまして若干説明を申し上げます。

 

民事執行法の規定を前提といたしますと,不動産執行については民事執行法51条あるいは債権執行については民事執行法154条になりますが,配当要求のためには債務名義又は一般の先取特権を有することの証明が必要となりますところ,必要費又は有益費に当たる費用であろうと一般の信託債務の弁済費用であろうと,このような費用につきまして,信託財産に対する補償請求権に関する債務名義を取得することにつきましては,困難な問題が生じると考えられます。

 

 

 

なぜかと申しますと,この場面におきましては,補償請求権を有する受託者が,信託財産の名義人である受託者に対して債務名義を取得する,すなわち,形式的には同一人間で債務名義を取得しなければならないという事態に陥ってしまうからでございます。

 

しかも,民事執行法上,動産執行,これは133条にございますが,動産執行において配当要求ができるのは,権利を証する文書を有する先取特権者又は質権者に限られておりますので,有名義債権者であるというだけでは動産執行に対しては配当要求できないということになってしまうわけでございます。

 

このような配当要求手続上の問題をクリアするためには,受託者の有する費用償還請求権を共益費用の先取特権とみなせばよさそうなわけでございますが,先ほど申しましたとおり,借入債務の弁済費用にまで共益性を認めることは困難と思われます上に,今度は,民法336条の規定によりますと,一般先取特権とみなすことによりまして,不動産につきましては,登記をしない限り,登記済みの担保権には劣後するということになるわけですが,必要費又は有益費についてもこれでよいかという問題があり得るところでございます。

 

 

以上の次第で,費用償還請求権の順位及び配当要求手続につきましてはなお検討するというふうにしたものでございます。

続きまして,受益者に対する補償請求権についてでございますが,太字の2が,受益者に対する補償請求権に関する一連の規律でございます。

 

まず,冒頭で述べましたとおり,受益者に対する補償請求権を認めることと認めないことのいずれを原則的なルールとすべきかにつきましては,大きな争いのあるところでございまして,ここでは甲案と乙案を併記させていただいております。

 

まず,甲案でございますが,これは,受託者は原則として受益者に対して補償請求権を行使することができるとするものでございまして,現行法の規律を維持するものでございます。

 

その理由でございますが,受託者は,信託の事務処理に当たり信託報酬以外の利益を得ることを禁じられており,善管注意義務をもって信託行為に定められた内容の信託事務を行うことを求められているにすぎない。

 

そういうことからいたしますと,受託者が負担した費用につきましては,信託財産から補償を受けられない場合には,信託による利益を実質的に享受する受益者から補償を受けるとすることが公平であると考えるものでございます。

 

これに対しまして,乙案でございますが,これは原則として受益者に対する補償請求権はなく,信託行為に定めがある場合に限って受益者に対して補償請求権を行使することができるとするものでございます。

 

 

これは,先ほど申しましたように,株主の有限責任の場合に比べまして,投資商品の設計に当たり受益者の無限責任とすることの不適切さについての指摘に加えまして,受託者は信託財産の名義人であって,基本的に広範な裁量権を付与されているのであるから,信託財産を超えて補償請求権が発生することのないようにコストの管理をすべきであるという注意義務があるということを前提としつつ,このような義務を負うことに照らしますと信託財産を超える損失が生じた場合の負担については受託者が負うこととするのが合理的と考えられること,あるいは,受託者としては,費用負担に備えて保険を付するなど,受益者に比べればいろいろの手だてをすることが可能であるということ,贈与型の他益信託におきましては,第三者を受益者として指定した委託者の意思としては,第三者たる受益者に利益のみならずリスクの負担まで負わせるということは想定していないと考えられること,信託スキームの作成に受益者は関与できないことなどを理由とするものでございます。

 

ちなみに,資産流動化法220条を見ますと,信託財産の範囲を超えるリスクを受益者に負担させるのは適当ではないとの考えに基づきまして,受益者に対する補償請求権を排除しております。

 

続きまして,2の(2)でございますが,これは,受益者から補償を受ける権利につきまして,委任における受任者が委任者に対して有するのと同様の権利,すなわち,民法650条の1項,2項ないしは649条と同様の権利を受託者に対して付与するものでございます。

 

ただし,②の債務負担の場合につきましては,委任者に対して代弁済請求を認めている委任の規律とは異なりまして,受益者に対して前払請求権を認めることとしております。

 

 

なお,念のためでございますが,このような権利は,1の甲案であれば原則として,乙案であれば信託行為の定めにある場合に限って認められることになります。

 

なお,ここで,②の信託事務処理の債務負担の弁済費用,それから③の信託事務処理費用につきましては,受託者に受益者に対する前払請求権を認めておりますが,これは,仮に前払請求権を認めないことといたしますと,信託財産に適当な弁済資金がない場合には,受託者はいったん第三者に支払った上で受益者に対して費用の償還を請求するということになるわけですが,そのような解決は迂遠であると思われるからでございます。

 

さらに,2の(3)により,この前払請求権は信託財産に属することとしておりますが,これは,この前払請求権が受託者の固有財産に属するということになりますと,受託者の固有債権者からの差押えが認められることになりまして,受託者に信託事務処理上の費用の前払請求権を与える意義を没却すると考えられるからでございます。

 

続きまして,2の(4)でございますが,これは,受益者から補償を受ける権利の行使の制限,換言すれば,信託財産から補償を受ける権利の行使と,受益者から補償を受ける権利の行使の順序について規定したものでございます。

 

 

現行法上は両者の関係について規定がございませんので,受託者は任意にこれらの権利を行使できるのか,それともいずれかの権利を先に行使しなければならないのかについて解釈が分かれております。

 

 

 

 

ところで,信託におきましては,信託財産の管理運用によりまして受益者に利益を付与することを目的としておりますので,信託事務の処理に要した費用については,まずは信託財産から補償を受けるのが信託の構造及び信託当事者の意図にかなうものと考えられます。

 

 

そこで,信託行為に別段の定めがない限り,信託財産から補償を受ける権利をまず先に行使し,そこで十分な補償が得られない場合に初めて補充的に受益者から補償を受けることができるとしたものでございます。

 

次に,2の(5)でございますが,これは,受託者が信託財産からも受益者からも補償を受けることができない場合,例えば信託目的の達成を妨げる場合であるとか,あるいは,受託者の売却権限が制限されている場合に当たるため信託財産を処分することもできず,受益者に対する補償請求権も認められていないという信託である場合,このような場合には,一定の手続,すなわち,受益者に対する履行の催告や委託者に対する通知等の手続を経た上で信託を終了させる権限を受託者に与えるものでございます。

 

受託者が費用の補償を受けられない場合においても信託事務を継続して行わなければならないとするのは酷であることから,受託者に対して,このような慎重な手続的要件のもとに信託を終了させる権限を付与することとしたわけでございます。

 

なお,ここで委託者に対する通知を要求しておりますのは,信託が終了いたしますと信託設定者である委託者の意図が実現しないことになりますので,信託の終了を回避するための手段をとる機会を委託者にも付与することが適当であると考えられるためでございます。

 

例えば,通知を受けた委託者としては,金銭を追加信託することによって,あるいは信託財産の処分制限を一部解除することによって受託者の補償請求権を満足させ,信託の終了を回避することができることになると思われるわけでございます。

 

なお,このように受託者に信託の終了権限を認めることにつきましては,94ページの(注2)に記載してございますが,受託者に信託終了の権限を付与するまでもなく,例えば信託財産の売却もできず,費用の回収もできないのであれば,目的達成不能という一般事由により信託が終了すると考えればよいのではないか,あるいは,信託を終了するまでもなく,受託者に辞任する権利を認めれば足りるのではないかといった指摘もあり得るところでございます。

 

もっとも,この考え方によりますと,前受託者としては,新受託者が見つからないのを待って目的達成不能として信託終了と判断するか,新受託者の選任を待った上でその所有下にある信託財産から補償を受けることになると解されるわけですが,新受託者が見つからないのをあえて待つというのも迂遠であります上に,たとえ新受託者が見つかったといたしましても,その選任に時間を要し,その間に信託財産の価値が目減りしてしまい,補償請求権の満足が一層難しくなるというおそれを指摘することができるかと思われるところでございます。

 

 

すみれ

「すごい考えているね。」

 

 

なお,太字の3,4でございますけれども,これはいずれも公平の見地から,まず受託者が原状の回復又は損失のてん補義務を履行しない限り,補償請求権を行使できないこと,これは太字の4でございまして,現行法38条と同じでございます。

 

それから,その一方で,受託者としては,補償請求権が満足されるまでは受益者に対する信託財産の引渡拒絶権を有すること,これは太字の3でございまして,現行法に規定はなく,解釈上提唱されているにとどまるものでございますが,このような点を規律したものでございます。

 

 

番人

「同時履行だね。」

 

 

このテーマの最後,太字の5でございますが,これは,受託者が信託事務の処理をするために受けた損害についても,信託事務処理費用に関する規律と同様に,信託財産又は受益者からの補償を認めるものでございまして,この点においては現行法と同様でございます。

 

ただし,現行法は受託者が無過失の場合に限っているわけですが,それと異なりまして,公平の観点から,受託者に過失があった場合でも,過失相殺後の損害賠償額について受託者は補償を受けることができるとしております。

 

ちなみに,委任に関する民法650条3項も受任者が無過失の場合に限っておりますが,それとは異なった規律をここでは提示しているということになるわけでございます。

 

少々長くなりましたが,以上で補償請求権の説明を終わらせていただきます。

 

 

ポリー

「信頼関係がある限り、信託は継続しようってことでしょうか。」

 

 

 

 

 

続いて,95ページからの「第36 報酬請求権について」の説明に移らせていただきます。

 

第36でございますけれども,ここで「報酬」と称するものでございますが,これは信託事務処理を行うことの対価としての報酬に関するものでございまして,受託者が一種の自己取引,双方代理として行った役務提供の報酬,例えば信託財産からの振込手数料の収受ですとか,信託財産たる不動産の売却に伴う媒介手数料の収受等に関するものではないということを念のために付言申し上げます。

 

ところで,現行法は,35条におきまして,信託の引受けに関しまして無報酬を原則としつつ,一定の場合には報酬請求権を認めることとしておりまして,その上で,37条において,補償請求権の規律を報酬請求権にも準用しており,これによって報酬請求権は他の権利者に先立ちて行使できることになりますし,また,受益者に対する報酬請求権も原則として認められるということになります。

 

これに対しましては,信託事務の遂行上当然に発生すべき費用に関する補償と,特約等により例外的にのみ成立する報酬とは明らかに性質が異なるにもかかわらず,両者の差異を無視して同一のルールによって律するのは,特に補償請求権に認められている手厚い保護を報酬請求権にまで認めるという点において行き過ぎではないかといった批判もあるところでございます。

 

ここでは,このような現行の規律の一部明確化と大幅な修正を図ろうというものでございます。

 

 

番人

「報酬の定めは信託目録に登記する必要はあまりないね。」

 

 

まず,太字の1でございますが,受託者が信託報酬を受けることができる場合に関する規律でございます。現行法の35条におきましては,信託の引受けを原則として無報酬としつつ,受託者が報酬請求権を有する旨の特約がある場合,それから受託者が営業として信託の引受けをする場合について,受託者に報酬請求権が認められることを明文で規律しております。

 

 

 

 

そこで,まず,無報酬を原則とする規律を維持すべきか否かが問題となるわけですが,この点につきまして,英米の例を見ますと,英米の信託法の伝統的理論では,報酬の請求は受託者と信託財産との間の利益相反関係をもたらすことから,受託者無報酬の原則がとられ,例外的に信託契約で定められれば受託者は報酬を請求できるとされておりました。

 

しかし,最近では,例えば2000年に採択された米国統一信託法典によりますと,「信託条項が受託者の報酬について特に定めていない場合,受託者は当該状況のもとで合理的と考えられる報酬を得る権利を有する」として,原則として受託者が合理的な報酬を得ることができることを明らかにしておりますし,また英国におきましても,2000年受託者法では,職業的専門家としての受託者は特約がなくても相当な報酬を信託財産から受け取ることができるようになり,有償原則に変わりつつあるところでございます。

 

しかしながら,我が国におきましては,委任が原則として無償とされていることとの整合性の観点から,信託も原則として無償とするとの規律を維持することとしているわけでございます。

 

 

すみれ

「イギリスは委任契約も原則無料なのかな。」

 

 

 

その上で,現行法が明文で認めております,特約のある場合,あるいは営業として信託の引受けをする場合に加えまして,③といたしまして,受託者が商人であって,その営業の範囲内において信託を引き受ける場合,すなわち商法512条に当たる場合についても,これまでの解釈に従いまして,報酬請求権を有する旨を明記することといたしました。

 

なお,信託行為に報酬を支払う旨の定めまではあるものの,報酬の額や計算方法についての定めがない場合,あるいは,そもそも信託行為に定めがないにもかかわらず報酬を受けることができるというような,提案の②,③の場合につきましては,新受託者の報酬請求権に関する現行法49条4項及び8条3項,あるいは商人の報酬請求権に関する商法512条に従いまして,相当な額の報酬を請求できることを明らかにしております。

 

続いて,太字の2でございますが,これは,報酬請求権の引当て及び他の債権者との関係という2点におきまして,現行法とも,先ほどの補償請求権の規律とも異なる,新たな規律内容を提示するものでございます。

 

第1点は,受託者が報酬請求権を有する場合におきまして,支払義務者に関する別段の定めがない限り,信託財産をもって原資とすることとした点でございます。

 

すなわち,先ほど述べました費用償還請求権の場合には,両案並記としておりましたが,これと異なりまして,ここでは,信託財産から満足を得られない場合においても原則として受益者に対しては報酬請求ができないとして,先ほどの乙案に相当するものをとっているわけでございます。

 

これは,費用や損害につきましては,受託者として必ずしも予見できず,又は制御できない種類のものもあることにかんがみますと,信託財産のみにはおさまらないリスクを受託者に負わすのは不公平である,したがって受益者に負わすべきであるという考え方,これは甲案に相当するわけですが,これをとるということも考えられるのでありますが,報酬につきましては,受託者において請求権の存在やその額をコントロールすることが可能であることに照らしますと,信託行為に受益者を報酬支払義務者とする旨の定めをあえて置いていない受託者の保護を図るまでの必要性はないと考えられるからでございます。もとより,報酬の支払義務者につき,特約をもって委託者や受益者を支払義務者として定めることは可能であると考えられます。

 

なお,このように受託者が報酬を信託財産から受け取るということになりますと,忠実義務との抵触が問題になるわけでございますが,ここでの報酬請求権の規律は,忠実義務の例外を定めた特則と位置づけるものでございます。

 

 

ポリー

「忠実義務の例外、委任契約と並べた時の例外、商人の例外、報酬の定めをした場合の例外ですね。」

 

 

続きまして,第2点でございますが,報酬請求権については,他の債権者に対する優先権を付与することとはしない点でございます。

 

名目的には報酬とされておりますが,その実質は,必要費又は有益費に相当するもの,例えば信託財産維持管理費用というようなものであれば別といたしまして,純粋な利潤部分につきましては,受託者にとっても通常の営業上の利益にすぎないのでありまして,一般債権と同視するのが相当だと考えられるからでございます。

 

続きまして,太字の2の(2),(3),それからアステリスクの2のところでございますが,これは,受託者の費用償還請求権に関する規律のうち,まず1点目としまして,信託財産に対する請求権があるということ。ただし優先権に関する規律は除きます。

 

2点目といたしまして,受託者が報酬の支払いを受けられない場合における,一定の手続を経た上での信託終了権限があるということ。

 

 

すみれ

「そっか。終わることができるもんね。」

 

 

3点目といたしまして,受託者が報酬を受けるより前に,まずは自らの原状回復義務等を履行すべきこと。

 

4点目といたしまして,受託者の請求権が満足されるまでは受益者に対する信託財産の引渡しを拒絶できること。このような各規律を準用するものでございまして,その内容は,先ほど補償請求権のところで述べたとおりでございます。

 

最後に,太字の3でございますが,これは,報酬の支払時期及び信託が中途で終了した場合の割合報酬の請求権について現行法には規定がございませんので,信託行為に定めのない限り,委任における受任者の報酬請求権に関する民法648条2項,3項と同趣旨の規律を設けようとするものでございます。

 

ただし,報告書と若干違う考えもございまして,例えば,3の(1)におきましては,「信託報酬の支払時期に関する定めがないときは信託の終了後」とありますが,これは,「受託者の任務終了後」というふうにするのもあり得るかなと思いますし,それから,(2)におきまして,「信託が……履行の中途で終了」とあるのは,「受託者の任務が履行の中途で終了」ということでもいいのかなという気がしているところでございますが,こういう内容を定めたものが太字の3というところでございます。

 

長々説明いたしましたが,以上で終わります。

 

 

 

 

 

 

  •  それでは,今の第35と第36の補償請求権と報酬請求権についてですが,この部分に関しまして御議論をお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。

 

 

  •  実務家の立場からお話し申し上げたいと思います。

まず,36番の報酬請求権の1に関することでございますけれども,この報酬請求権の現行法からの対比として減縮ということになるわけですけれども,これは従来から立法論として議論があったところは承知しておりますけれども,ただ,受託者を行っていた者の立場からすると,既得権が減るということがございますので,そういうエゴイスティックな考えからすると,ちょっと慎重に御配慮されたいというのはあるわけです。

 

 

すみれ

「エゴイスティックな考えか。」

 

 

他方,やはり,例えば私どもは銀行でございますが,銀行の場合は債権者という立場もございますので,その投資物件に関する受益権の価値の減縮ということもあるわけですから,それのバランスが大切だというふうに思っております。

 

 

すみれ

「受託者の報酬が高くて権利が強いと、信託財産が少なくなっちゃうんだ。」

 

 

そこで,具体的にそのバランスを考える際に,一つ確認というか,問題提起をしたいところでございますけれども,先ほど○○幹事からも懸念ということで御説明があったのですけれども,この報告書の91ページにございます信託財産に属する借入債務の弁済費用ということでございますけれども,この弁済費用というのは,単なる利息とかそういうことではなく,信託財産が借り入れた債務そのものを元本・利息も含めて固有財産から支弁するということを想定しているというふうに理解しておりますけれども,こうした場合について,従前であれば,スーパーシニアということで固有財産としても回収の確実性が高かったということが,今回の場合は,代位権ということは維持されるわけですけれども,優先権ということについてはないというふうに理解しております。

 

これが立法論として正しいかということなのでございますけれども,これは先ほど○○幹事のお話にもあったわけなのですが,次の二つの理由からどうなのかというふうに思うわけです。

 

 

 

 

一つは,やはり必要性として,信託財産,特に不動産信託とか,十分なキャッシュが信託財産にない場合において,実際に費用等が発生したときに,信託財産を担保等,まあ引当て財産にしても借り入れて,それで支弁するということもあり得ると思うのですが,そうしたときに,例えば,期日に返せないといったときに,だれからもなかなか至急な回収ができないときに固有財産から支弁をするということは実務上はあり得る話だと思いますし,それはひいては受益者にとっても有益ないし必要だというふうに思っているわけですが,そうしたものはやはり共益的なものだというふうに経済実態上は思っておりますので,そうしたこと自体も優先権を認められないというのはいかがなものかというふうに思っております。

 

 

 

二つ目に,取引行為が違った場合,経済実態が同じであっても優先権が違うのかという話なのですけれども,例えば先ほどの例で優先権が主張できなかったのは,たまたま信託財産を引当てに借入れを行ったということであったわけですが,では直接固有財産から支弁したという場合には優先権が主張できると。

 

とりあえずどの勘定で資金を出したかということが違うだけであって,経済実態的にはそれほど変わらないというふうには思っているわけなのですが,そうした場合でも優先権が違うというのはどうなのかというふうに思っております。

 

そういうことで,これは有益費とか必要費の定義の問題なのかもしれませんけれども,かかる優先権を減縮するということの方向性でございますので,その点については慎重に御検討いただければというふうに思っております。

 

  •  いかがですか,○○幹事,この段階で何かございますか。

 

 

 

 

 

  •  2点目で御指摘のあった,経済実態が異ならないかという点でございますけれども,恐らく,一般の借入れをして,そのうちの費用を必要費に充てたという場合でございますが,そうすると確かに,何もなくて受託者が必要費を拠出した場合には優先権があるのに,一般債権として借り入れた資金をもって充てた場合には優先権がないというのはバランスを失するというのは,おっしゃるとおりかと思います。

その点につきましてはまだ綿密な検討をしたわけではございませんが,例えば100万円のうち50万円を必要費で充てていれば,その部分は優先権がある,それ以外の部分については一般債権ですから優先権がないという規律をとるということも考えられるかと思っております。

 

あと,先ほどは申しませんでしたが,我々の提案ですと,前回申しましたように,有限責任債権にするという方法もあるので,受託者が有限責任にする方法もあるのにあえて無限責任で債務を負っていると。

 

それによって,例えば期限が来ているので請求されて,払わざるを得なくなったという事態になるわけですが,自ら回避する手だてもあるのに,それをとらなかった以上は,そういう不利益を甘受するのもやむを得ないのではないかという考え方もあり得るかなという気はいたしています。

 

ちょっと受託者に厳しいかもしれませんが,一つの考え方としてそのような見解もあり得ると考えています。

 

 

 

 

  •  繰り返しの確認ですが,ここで「費用」というのは,利息だけにはとどまらないということですか。例えば,利息が余りに高かったものを,その利息分については優先権が否定されるとか,そういう話ではなく,正しく元本・利息も含めてという話でございますか。

 

  •  はい,全部でございます。

 

  •  第1点の方ですけれども,どういう場合かという,実際の場合はなかなか難しいのですけれども,本当に共益的な理由でもって借り入れて,信託全体のために共益的に使ったという場合には,それは共益的な債権になる可能性はあるわけですね。

 

それから,さっき例を挙げた,担保して借り入れたという場合であれば,その担保権も代位の対象になりますから,そういう意味では優先権がその担保の範囲内では生じるということにはなります。ですから,それ以外は普通の借入れの扱いになってしまうということですね。

 

 

 

 

  •  補償請求権と報酬請求権の総論的なところの印象と,それから各論にわたって御意見を述べさせていただきたいと思います。

 

まず,総論的なところですけれども,これは皆さん御承知のとおり,現行法36条,37条というところからの比較からしますと,信託財産に対しては,いずれの請求権についても最優先だったということ,受益者に対してもかかっていくことができたということ,そういうところから,一部信託財産について優先権は認められているものの,非常に後退した,受託者の側からすると請求権として非常に減縮されたような格好になってしまった,非常に厳しい規律になったなというのが,まず第一の印象でございます。

 

各論の方に移りますと,まず,補償請求権の方の,信託財産から補償を受ける権利のところでございますが,私どもの業界の方でも議論をしておりまして,ここは若干分かれている部分もありまして,基本的には報告書案に賛成して,要するに,報告書案の中で,例えば必要費と有益費については優先されているということと,債務の弁済をしたときにはその債権に代位することができるということ,それとあとは,補償請求して,それを受けることができなければ終了することができるという規律が入ったと,こういうものが維持できれば,そこについては,まあこういう規律でもいいんじゃないかという意見もございます。

 

ここの意見につきましては非常に少数意見でございまして,これは私の意見でもあるのですけれども,ここの部分については,実務的な感覚からすると,やはり債務がどんどん膨らんでいってどうしようもない状況になる前に,受益者の方と相談して,基本的には終了してしまうんですよということを言いながら,早目に終わらせる,泥沼に入らないような状態で終わらせるというようなこともあるのかなと思って,そういうことが維持できるのであれば,この規律もいいなという意見もございますが,大勢は,やはり現行法の規律を維持していただいて,最優先の扱いを行っていただきたいということです。

 

理由につきましては,先ほど○○幹事の方からも御説明がありましたとおり,実際に信託処理として債務負担をしようとしたときに,やはり最優先でなければどうしても逡巡してしまうということがあるのと,あとは,これが本当に有益費なのだろうか,必要費なのだろうかと,そこがはっきり分からないという部分もありますので,そういう意味合いからも,やはり思い切ったところの債務負担というのができないと。それがひいては信託目的の遂行に悪い影響を与えるのではないかということ。

 

それと,あと,キャッシュが不足しているような場合については,やはり受託者が立替えするというのが非常に自然な形でして,無理に信託財産を売却したり,ほかのところから借入れをするとか,そういうよりも,やはり受託者が立て替えてやっていくというのがどうも自然なような気がいたします。

 

そこら辺のところで,簡便でもありますし,信託目的の達生の観点から,そちらの方がいいのではないかという意見が大勢を占めております。

 

 

 

それと,受益者から補償を受けるところの権利につきましては,現在の信託につきましては,ほとんどが取引,ディールに係るものでございますので,やはり取引の相手方との関係からいたしますと,利益を受ける者が損失も負担すると,そこがやはり何となく,原則的にはそもそも論としてそういうところではないかなというふうに考えております。

 

 

すみれ

「営業信託の受託者は利益を受けるよね。受益者も受けるし難しいね。」

 

ポリー

「そうですね。」

 

 

もちろん,ギフト的な信託もございますし,それについては信託契約によってそれなりの規定を設ける必要もあると思いますけれども。それとあと,他益信託の場合は受益権の放棄をするというような方法も一応考えられるところでありますので,基本的には受益者から補償を受けるというのがデフォルトという形にしていただきたいということで,この案でいくと甲案でございますが,ということを希望しております。

 

あと,理由としては,反対側の理由,乙案の方の採用する理由の中に,受託者が信託をコントロールしていて,当然コスト管理もやるべきだと,そういう注意義務が課せられているというようなお話があったと思います。

 

確かにそういうところはあると思いますが,信託というのは,当然いろいろな種類の信託がございますので,○○幹事の方からもお話がありましたけれども,例えば土地信託であれば,逐次,受益者の意見を聞きながら,いわば指図を受けながらやっているという部分がございます。

 

それと,特定金銭信託等につきましては,受益者からの指図そのものを受けて受託者は動いていくということですので,正にコントロールは受益者がしていると。

 

そういう種類の信託もあるということと,あとは,すべての信託に共通して同じですけれども,やはり工作物責任とか所有者責任にかかわるものですね,そういうものについての負担というのはそもそもどこがするのだろうかという観点からいきますと,やはりこれは受託者がコントロールできるわけでもありませんので,こちらについては受益者の方に,これもデフォルトということでございますけれども,負担していただくのが相当なのではないかなと思っています。

 

 

 

 

続きまして,報酬請求権の方なのですけれども,これも報告書の中にも出ておりますけれども,皆様方に特に知っていただきたいのは,信託銀行が報酬として取っているもののうち,大半なのかどうかよく分かりませんけれども,やはり費用にかかるものが非常に多いということでして,そういう観点から36条,37条横並びの格好で,同じような形で規律されている,それに非常になじんできておりますので,それが報酬請求権と補償請求権というのが違う規模になるというのに非常に違和感を持っております。

 

純粋な利潤だけのことで考えますと,おっしゃるとおりかなというふうな気がしますけれども,それでは,それを区分して,分離して考えることができるのかというと,非常に現実的な問題で考えますと,それを分離して,ここの部分はこうですよ,ここの部分はこうですよというのは,そこは非常に難しい問題でしょうし,実務的に考えると混乱が生じる部分でもあると思いますので,そこは費用として見ていただいて,要するに共益費的なものだというような位置づけで見ておりますので,そこの部分についても補償請求権とパラレルな形でお願いしたいと思っております。

 

 

ポリー

「委託者・受益者から見ると費用と受託者報酬を合計した金額をみてお願いするか決めるんですよね。でも、内容が同じじゃなかったら分けられるし、他の信託財産に関する債権者との間でも不公平が起きる可能性があるから調整ってことですね。」

 

 

 

  •  補償請求権及び信託財産における借入債務の負担について,現実を踏まえてコメントさせていただきたいと思います。

 

信託財産の価額に比べて比較的借入れの金額が大きい事例としましては,伝統的には土地信託,土地を信託銀行に信託しまして,その土地の上に建物を建てるために借入れを行って資金調達するといったものがあるかと思うのですが,最近非常に多く見られる事例,約3年半前からかなり出現してきた事例として,アセット・バックト・ローンと呼ばれるものがございます。

 

これは,委託者が持っています何らかの金銭債権,実例としてはリース債権の場合が多いのですけれども,これを信託財産として信託を設定いたしまして,受託者が信託財産を引当てにローンを借り入れると。

 

それで,ローンを出す方は,要は資金運用する投資家なわけですけれども,その仕組みにおいて,投資家の需要にこたえるために,ローンを出したい人はローンを出すと。それで,受益権を買いたい人には受益権を分割して売却するというような仕組みが実際に行われております。

 

例えば,100億円のリース債権を信託財産として信託を設定しますと,その100億円の信託受益権が発生するわけですけれども,50億円分については投資家Aが融資,貸付けという形で投資したいということで,50億円貸し付けます。

 

そうすると何が起きるかというと,信託受益権のうち50億円は償還されてしまいますと。

 

それで,残る50億円のうち,例えば優先・劣後に分けて30億円・20億円に分けて,30億円分は委託者が別の投資家に売りますと。

 

別の投資家Bは,貸付けという形ではなくて,信託受益権の購入という形で投資したいと。

 

それで,AもBも同じリスク・リターン,同じものを求めたいといった場合に,信託財産から見れば,借入債務に対する弁済も受益権を優先・劣後に分けましたけれども,優先受益権の償還,言いかえれば借入金に対する利払い・元本返済,優先受益権の配当支払い償還を同順位にしたいという要望が強くございます。

 

 

 

 

 

ところが,現状では,その信託財産を引当てに借入れを行う根拠として信託法36条が根拠として考えられていることから,いくら信託契約及び金銭消費貸借契約に借入金の返済と優先受益権の償還は同順位ですとしていたとしても,現行の36条に「先チテ」というようなことがありますから,債権者の方が実は優先するのではないかというような議論が一部になされていまして,そういった懸念を払拭できれば,すなわち,ローンに対する弁済と,受益権を優先・劣後に分けたその優先受益権の償還を同順位にすることができれば,資産流動化の観点からは非常に有り難いなというような気がいたします。

 

 

  •  ちょっと具体的な設定は必ずしも私十分理解していませんけれども,片やローンであって,片や受益権でやった場合には,原則としてまずローンが返済されるわけですね。受益権というのは,いわばローンが返済された残りの財産の中から受益権というのが……。

 

 

 

 

  •  現実には同時に償還していきます。

 

  •  そういうふうにしたいというわけですね。

 

  •  はい,そうです。受益権は優先・劣後に分けて,優先受益権を保有している投資家にとっての経済的なリスク・リターンをローンを出している別の投資家と同等にしたいと,それが本来の意図ですね。

 

  •  これは信託のかなり根本的な構造そのものにかかわるので,36条の問題というよりは--まあ,36条というのは,受託者が一遍立てかえた場合に,後どうなるかという話なので。今の話ですと,受託者が立てかえる以前の問題として,一方でローンがあって,一方で受益権が発行されていて受益者がいると。それをいわば対等に,信託財産を使って弁済したいと,そういう話ですよね。

 

 

  •  そうです。

 

  •  分かりました。

すぐにそういう結論が信託の構造から出てくるのかどうかはかなり難しい点もあると思いますけれども,御議論いただければと思いますが。

 

  •  私の方は,今まで発言された方のように現実を踏まえずに意見を申し上げたいと思います。

 

まず結論から言うと,この第35と第36の補償請求権,報酬請求権については,今,二つ問題になっていますね。

 

受託者対受益者という話と,受託者対債権者という話ですが,とりあえず私の論点は,前者の受託者対受益者という,受益者から補償を受ける権利というところだけに絞って申し上げますけれども,やはり現行法を改正して,報酬請求権のみならず,補償請求権のところでも原則は補償請求権というのはないのだと,信託財産ではなくて受益者に対してという意味ですけれども,そういうものをやはり明らかにする必要があるのだろうと思うのです。

 

それで,以下,少し総論的な話なのですが,というのは,今日はまだこれは総論的な検討という話になっていますよね。私は,総論的な検討というのは,もっと茫漠とした議論があるのかと思ったのですね。

 

80年たって,我々,一体,今,信託というのをどう考えているのだというような話,余り哲学っぽいところまで行かなくてもいいのですけれども,今度の信託法改正の意義というのは何なんだろうというところから話が始まるかと思ったら,何というのか,こういうやり方が一つあるんだなということだけは分かったのですが,そのうちに何か見えてくるだろうということなんですね。

 

これ全部がまとまって,だれかが説明せざるを得ないと思うのですけれども,今度の信託法改正の骨子というのはこれですよという話が出てくるはずなのですが,諮問のところを見ても,キーワードは「現代化」なのですけれども,現代化というのは本当は何の意味もない言葉なので,どういう内容の現代化なのかという話が見えてこないと,やはり方向性が定まらなくて,個別の論点について,各業界を代表している人は,やむを得ずか,あるいは喜んでか,まあどちらでもいいのですけれども,それぞれの利益を代表して,その調整のようなことをここでただ一つ一つやっていて,何らかの調和が出てきて,そうすると,全体としては色は全然明確にならない,これはこうだけれども,違うところは別だという話にならざるを得ないような気がするのです。

 

 

 

すみれ

「確かに。現代化か。80年も経つと業界によってやり方があるんだろね。利益調整か。誰かが説明するんだよね。」

 

 

これは私だけが思っているのではないと思うのですけれども,今まで,信託法について,○○委員を始めとしていろいろな方が書かれてきて,その中で,やはり今の信託法についていろいろ問題があるという指摘があって,今日こういう日を迎えているわけです。

 

その第1点は,これは諮問事項をただ私の言葉で言いかえているだけですけれども,今の信託法というのは本当に私法なんだろうかというそもそもの疑問がある。

 

非常に規制色が強くて,強行規定である必要がないところまで強行規定,あるいは,条文では別段の定めというような話があっても,実際には信託業界としてはこういうことを別段の定めを置きたいと思っても置けないような現実があって,やはり信託法というのは私法であると。

 

私法というのは,私人間の取引を,あるいは私人間の仕組みというのを,ここにおられる方には全部釈迦に説法みたいな話ですけれども,やはり任意法規を基本にしておいて,やむにやまれない場合だけとにかく強行法規を入れておこうという,そういう仕組みを作るのだという私法,一般法としての信託法というのをもう一回考え直してみようというか,そこへ戻るというのが第1点なのかと思っているのですね。

 

その方向性はいろいろなところで出ていると思いますけれども,もっと自覚的にやってみたらいいと思うのです。

 

 

すみれ

「たしかに。私法ってそういうものだといいな。」

 

ポリー

「当事者の合意が基本で、フェアじゃないところだけ強行法規を入れて調整して。これを守っておけば争いになるのも未然に防げる、というルールだといいですね。」

 

 

二つ目が,現代化して何のためかというと,やはり信託を今後とも一層活用していこう,いろいろなところで使おうということだと思うのですけれども,面白い仕組みでもあるし,便利な仕組みでもあると。

 

そのためには,やはり信託というのはどういうところから出てきたかというところに思いを致せば,だれのための信託かというと,受益者のための信託なのですが,現行の信託法というのは受託者のための信託なんだろうか,あるいは債権者のための信託なんだろうかと思わせるようなところがあるのです。

 

 

 

最たるものがこの受益者からの補償請求権であって,これはやはり英米の信託だけが--一概に信託といえば全部英米の信託だと思わなくてもいいとは思うのですけれども,今年の信託法学会でも,アメリカの専門家はこの36条のこういう内容を見て,「shocking」とか「amazing」という言葉を使うわけです。

 

日本は独自のものですと。我々は独自の信託で,信託とかトラストといっても,全然中身は違うんですという話で居直る手もあるのですけれども,本当にそれでいいんだろうかという感じがやはりするのですね。

 

だから,受益者のためのということでないと,委託者及び受益者というのは結局このスキームに入ってこれないわけですから,だから,それはむしろ,やはり受託者であるところの関係者の人も,もっと長期的な利益を考えることがむしろ受託者のためにもなるというふうに考えてくだされば有り難い。

 

 

番人

「独自のものというか、トラストのようなもの、かな。全然中身は違うという説明は難しいんじゃないかな。一応人間がやってることだし。」

 

 

三つ目は,そうは言っても,日本の信託の場合はいわゆる商事信託が主流であって,信託銀行等が一生懸命努力して広げてこられたわけなので,そういう現実を全然無視するわけにもいかない。

 

 

すみれ

「賛成。」

 

 

それに伴って大きな問題点というか,日本の信託法とのギャップというのが出てきているわけで,それが,例えばこの諮問事項で言えば受益権の有価証券化というような話は普通の民事信託では出てこない話ですから,だから,やはりそういうことかと思うのですが,それとの折り合いというのは,まあ最低限度のところで……。

 

私が考えれば,やはり受益者が多数に上るようなところの利害関係というのを。英米の普通の信託法ではそんな話が出てきませんので。ただ,日本ではこういうことですよというので,それはやはりやったらいいかなと。

 

 

すみれ

「有価証券化は、アメリカの人やイギリスの人にも説明しやすいんだ。」

 

ポリー

「問題点というか、特徴ともいえますね。」

 

 

それから,受益権の証券化とか流動化とかそういうものを入れるというのは,それは日本の現実を反映していて,しかも信託の本質とも抵触しないというのですか,そういうものもあるねという話になるのかなと思っているのですが,この部分については,今までの現行法がこうだったからというのは本当はよく分かるのですが,既得権ですから。

 

しかし,やはり80年たって思いを致して,どうなんだろうかというふうに考え直していただけると,私としては有り難いというか,私はそういう考えであります。

 

 

 

 

 

  •  ほかに御意見ございますでしょうか

 

  •  今の○○委員に対して,実務家の立場からコメントしたいと思います。

 

誠にもっともなことでございまして,どういう方向でいくのか,この法律がどういう理念であるのかということをまず確認する作業というのがいずれかのところで必要だと思っております。

 

ただ,私が従前お話ししていたのは,基本的にはその理念がある程度任意化であるとかそういうのも賛成できるものとして,それを前提としてもうちょっと細かい話を申し上げた次第でございますけれども,そこでちょっと2点ほどコメントがございます。

 

1点は,これは別に苦言を申し上げるとかそういう話では全然ないわけなのですけれども,私ども実務家からすると,この報告書をベースとした議論をしているということでございますけれども,この報告書自身は,少なくとも私は積極的に参加できる立場がなかったわけでございますけれども,そういう意味で,ある程度,今が実務家としての意見を主張できるチャンスなのかなと。

 

今までは,学者の先生方も実務のニーズを念頭に置きつつお話しされていると思いますし,また,このメンバーの構成から見ても,昨今の流動化ということを非常に重く見てこのようなメンバーにしているというふうには思っておりますけれども,ただ,実際こういう場で実務家として発言できる場はこれが初めてだというふうに私は認識していますので,むしろそういう場で,こういう実務があるんだよということを御認識いただいた上で初めて実務と理論が合わさって,よりよい理念が出てくるのかなというふうに思っています。

 

 

 

 

 

二つ目に,先ほど,受託者のためになるのか受益者のためになるのか,既得権がどうかという,そういう議論,これも論点として非常に大事な話だし,私としても認識しなければならないと思うのですけれども,その点で一つ,私の私見ですけれども,これは鶏が先か卵が先かという話なのですが,受託者の立場からすると,受託者というのは,おごった言い方かもしれませんが,いわば信託のインフラを提供している場でございますので,そこの配慮というのはそれなりにしていただくのが有り難いというふうに思っておりまして,その点,ある意味ではいろいろな考え方があると思います。

 

会社における取締役の考え方,また破産における管財人の在り方と,いろいろあると思うのですけれども,そこにおける今回の報酬請求権ということもあるわけなのですけれども,共益的なものとして処遇されるのか,債権者よりも劣後するような報酬請求権としてみなすのか,いろいろな考え方があると思いますけれども,そういった議論の中で,一つの考え方としては,やはり受託者はインフラであるということも一つあるのではないかなというふうに思っております。

 

 

すみれ

「受託者は信託のインフラを提供しているっていう意識なんだ。」

 

 

 

  •  一,二,実務的な御指摘をいただいたものですから,感想と若干の意見を申させていただきたいのですけれども。

私も実務はよく知らないので余り言えないのですけれども,一つは○○委員がおっしゃった話で,先ほど○○委員も御指摘になりましたが,それは別に信託固有ではなくて,会社でも個人でもあるのですね。

 

デットとエクイティーという言葉を使わせていただくと,それでお金を出す,これは,サプライサイド側,すなわち機関投資家側にデットとか,つまり先ほどの話ではローンですとかボンドですとかそういう形でないと,運用規制がかかっていたり,税金上いろいろな理由がありまして,やはりローンで持ちたいという投資家と,先ほどので言うと受益権で持ちたいという,こういういろいろな投資家がいるけれども,同順位にしたいというニーズがある。

 

これは,私の理解では,現行法で幾らでもいろいろなやり方があって,既に株式会社とか銀行で行われた例で言いますと,社債なのかローンなのかはともかく,劣後ローンとか劣後債という形をとりながら,法律家は当時,「超劣後」と呼んでいたのですけれども,優先株と同順位まで下げると。

 

これは要するに,債権者の方に,債権に,あるいは債務にですけれども,条件をつける。そういう例が既にあります。ですから,私の理解では,現行法のもとでも幾らでもやる方法があると。

 

その話は,○○委員がおっしゃったように,36条とは直接は関係ない。36条を払った場合にどうなるかという話ですので,間接的には影響しますけれども。そういう問題だと思います。

 

 

 

 

ただ,○○委員が御指摘のような問題は,ストラクチャリングというか,仕組んでいく上でそういう実務の問題があることは全くそのとおりだと思いますけれども,それは信託の場合以外の場合でも既に前例がありますし,いろいろな工夫の仕方が現行法上あって,かつ,36条を議論する上では間接的な論点だというふうに私は理解しています。

 

ついでにもう1点,余計な感想ですけれども,今,○○委員がおっしゃったことに関連して。私も実務のニーズはよく分かっていないと思うのですけれども,流動化ということをおっしゃったものですから。

 

たまたま資産流動化法を作るときは,実務の方とも御相談した上で,36条はやはり適さないと。だから,先ほど○○幹事から御説明がありましたけれども,もう全部外すという立法をしたのですね。

 

その理由は,大きく言うと二つありまして,一つは,すべて○○幹事から御説明があったことですけれども,本来は流動化だけでなくて投資信託もそうだと思うのですが,多数の投資家からお金を集めましたと。

 

払っていただいた以上にまた払ってくださいと,この可能性があるのでは,もう圧倒的に会社型の投資信託とか会社型の流動化に比べて不利ですよね,仕組みが。

 

いわゆる投資家の有限責任という話なのですけれども。したがって,それは最低限確保する必要があるでしょうと。少なくとも資産流動化法に基づくスキームについては,たしか当時は入れなかったわけですけれども,その法律自体を議論していたわけですから。

 

 

 

 

しかし,もう一つ,やはり今日問題になっています,払った場合の優先という問題もありまして,時間の関係で途中は省略しますけれども,あれは金融審議会で議論しましたけれども,私の理解では,実務の方の意見も十分伺った上で,36条は適切でない,特に流動化のような仕組みについては適切でないという判断をした。

 

もちろん,その点について異論の余地はあるかもしれません,抽象的に言えば。でも,そういう歴史があったということも一つあります。

 

それで,今日の話なのですけれども,私もややショックだった面は,先ほど○○委員もおっしゃったことですけれども,どうも実務界から違和感があるというふうに言われますと,うーん,そうかなと思ったりするのですけれども。

 

私の理解は,一つには,補償の方については今まで余り問題になったケースはないのではないかと思うのですけれども。

今まで,取り合いになって,受託者が,やっぱり「先チテ」でああよかったと思ったケースがあるのかないのか,できれば教えていただければという感じがします。

 

 

 

 

 

報酬についても,実際問題として補償と一体に運営されているというのは,確かに現行法はそうですから,御指摘のとおりだと思うのですけれども,この点も,私の理解では,経済実質はともかく,報酬と補償とは経理は別のものですから,そこらあたりが実際にこれまで実務でいわばぎりぎり助かったというか,助からないというか,本当にぎりぎりの局面で,優先がどうなったとか,あるいは報酬と補償が違ったら困ったとかいう局面があったのかどうか。

 

私は,これまで余り例はないと思うのですね。したがって,○○委員がおっしゃるように,今後信託が使われていく中で,しかし今後はひょっとするとファンドでデリバティブに投資して失敗することもあると。

 

こうなると,受益者との関係でこれは有限責任かどうかというのが問題になるでしょうし,あるいは何かで受託者が払って補償する。

 

やはり,「先チテ」か何かで取り合いになるというのは,信託が広く使われていけば出てくるのではないか。

 

そうだとすると,これまでは使われていなかった規定なので,どっちだからよかったということではなくて,しかし今後どっちかには決めなければいけないと,そういう感じでゼロから考えますと,私もというのか,一般的な考え方としては,私は,○○委員のおっしゃったような考え方の方がすぐれているのではないかと。

 

まあ,デフォルト・ルールの話ではありますけれども。すなわち,受益者との関係で言えば,受益者は原則有限責任というか。

 

それから,もちろん土地信託なんかの場合は当事者で決めればいいことだと思います。

 

 

番人

「すっきりする考え方だと思います。」

 

 

最後ですけれども,優先権について,考え方なのですが,ここには「必要費」とか「有益費」と書いてあるのですけれども,まず基本,なぜ優先するかということが非常に難しい問題で,次に,仮に必要費・有益費についても,なぜそれについては優先して,それ以外は優先しないのかというのは,やはり考え方は明らかにしておく必要があると思います。

 

 

 

 

 

私の理解は,それは結局,受託者が支弁することによって信託財産の価値が高まれば,これは他の債権者にとってもプラスなはずなんです,少なくとも理論的には。ですから,高まるものであれば,それはその限りで優先権を認めてもいいでしょうと。

 

ただ,こういう抽象的な言い方をすると,そのための線の引き方はいろいろあるのですけれども,およそ受託者がやることというのは信託財産の価値を高めているのだと,したがって優先すべきだと,現行法を説明するとそういうことだと思うのですけれども,必要費・有益費というふうに切っているということは,そういうものについては少なくとも今申し上げたようなことが言えるでしょうということではないかと思うのですけれども。

 

そこの線引きは具体的には非常に難しいと言わざるを得ないと思いますけれども,果たして必要費がいいのか有益費がいいのか,よく分かりませんけれども,今後のことを考えますと,やはり何らか,今ここで原案が提案しているような線引きというものがあった方が--共益性とかいうことを言いますと,だれにとっても言えるはずなんですね。

 

 

すみれ

「債権者もお金を貸して信託財産の価値を維持した、高めたって言えるってことかな。」

 

 

 

 

 

保証人が払ったって,やはりそれは債務をなくしたので共益的なんだと,代位しただけでは足りないので「先チテ」の優先権をくれという話になってしまいますので,どういう形での線引きなり限定がいいのかは直ちには私も分かりませんけれども,何らかのロジックがある以上は何らかの線引きなり限定--限定という言葉がいいかどうかは分かりませんけれども,範囲というのでしょうか,そういうものがある方が,考え方からしても自然なように思います。

 

 

番人

「ロジックがある以上は範囲を定める必要がある、か。たしかに。」

 

 

  •  2点ありまして,一般的なことと,それから確認です。

 

一般的なことというのは,今の議論でも出てきておりますように,幾つかの理念というか,考え方の調和が必要だと思うのですけれども,その際に,今回のスキームが全体としてどのあたりに落ち着くのかということが重要だと思うのです。

 

 

すみれ

「そうなのかな。」

 

 

例えば今回の件につきましても,これは当然,受益権の放棄との関連もありますし,それから受益権の譲渡の場合にどうなるのか,それから受益証券が発行されているときにはどうなるのかということを全体として考えて,そこで調和を図っていくということが必要かと思います。

 

今,○○委員がおっしゃった受益証券については166ページに今後の検討課題として出ている。

 

これをトータルで考えませんと,一つ一つのところで,多数決といいますか,決めていくと,全体としてはちょっとバランスが悪くなるかもしれない。

 

そういうわけで,今回は総論的なことですけれども,各論をやる際にも,できるだけ横の関係も見ていきたいなというふうに思っております。これが1点です。

もう1点は個別的なことなのですが,補償請求権の優先性ということについて,代位の構成をとるということと,それから補償請求権について優先性が認められるものがあるという,この二本立てになっているかと思います。

 

その両者の関係を確認しておきたいのですが,代位の構成をとる場合には,代位する債権と,代位によって担保される求償権との二層構造になっていて,代位される債権に担保がついているときには,それも行使することができると,このように理解しております。

 

そうしますと,その求償債権自体に優先性が認められる場合があるのかないのか。さっきの○○委員のお話ですと,何かその場合もあるかのようにも聞こえたのですが,代位される債権に優先性がある場合,ない場合,それから求償債権に優先性がある場合,ない場合という組合せが合計4通り成り立ち得るのかどうかというのを整理する必要があるかなというふうに思いました。

 

 

 

 

 

  •  それは次回のラウンドでもうちょっと議論したいと思いますけれども。

少し大きな観点からの御意見があれば。

 

 

 

 

 

  •  先ほど○○委員の方から,実務上の問題があったのかというお話がありましたので,私どもは全部承知しているわけではありませんけれども,私の経験の中からいきますと,まず,信託財産からの優先の問題ですけれども,ほとんどが無限責任の借入れを行っておりますので,有限責任で取り合いになったような例というのはないと思います。

 

ですから,今後ということを前提にした議論ということでございます。

 

もう1点は受益者との関係ですが,今現在,36条というのがありますが,36条1項,2項の問題ではなくて,3項の放棄との関係があって,放棄ができるのかできないのかという観点で,それは受益者との間で争いになったことというのはございます。

 

番人

「不動産の場合、受益権の放棄について制限がある場合は、信託目録に登記する必要があるね。」

 

 

私も,契約のところの書き方とかそういうので争いになったことがあるのですが,それよりも私どもの方が申し上げたいのは,やはりスタンス的なものでそもそもどうなのかという部分で,これが実務上の影響として一つ考えられるのは,要するに偶発債務的なものを負っていますけれども,そこは銀行ですから,今,引当てをしていかないといけないということになっているのですが,そのときに,信託財産だけをもって考えていくのか,それとも受益者の方の信用力も加えた形でその査定をしていくのかというところが違っておりまして,ここは非常に大きな問題で,多分BISの規制とかにもはね返ってくるようなお話になろうかと思います。

 

 

ポリー

「最初の価格決める時に影響が出てくるのですね。それが受託者の自己資本の計算にも影響が出てくると。」

 

 

ですから,一般的な,デフォルトの状態がどちらかというところで判断されてしまうような可能性がありますので,非常に厳密に言えば一つの契約を積算していくということですけれども,政策的に考えてこういうものはどうするんですかと言われたときには,一般的なデフォルトがどっちになっているかというのが割と大きな問題になりそうです。

 

 

すみれ

「政策的に考えるんだ。」

 

 

  •  この受託者の受益者に対する補償請求権,あるいは信託財産の場合ですと優先性の範囲ですけれども,いずれも非常に重要な問題で,いずれまた詳しく検討したいと思いますけれども,先ほど○○委員が言われたように,この信託法自体が全体としてどういう考え方に基づくのか,それが非常に大きな問題ですし,○○委員が言われたように,横の連結というのでしょうか,これはいろいろな問題と関連して,直接は関係なさそうだけれども,例えば受託者の有限責任特約の問題とか,こういうのとも関係しますし,いずれ細かく検討していきたいと思っております。

 

時間の関係もありまして,この点についてはこのぐらいでよろしいでしょうか。もし,是非ということがあれば,お聞きいたしますが,よろしいですか。

 

それでは,次の問題の方に入っていきたいと思います。

 

 

 

 

 

  •  では,続きまして,まず,144ページからの,いわゆる受益者集会等に関する規律についての御説明をしたいと思います。

 

御承知のとおり,一個の信託行為により複数の者が受益者として指定される場合や,一個の信託行為により発生した受益権がその後に分割されて複数の者に帰属する場合など,信託においては複数の者が受益者になることがございまして,特に信託銀行が受託者の信託では,受益者が極めて多数に上るものが多く見られるようでございます。

 

しかるに,現行法は主として受益者が単数の信託を想定して制定されたと思われまして,特に複数の受益者を予定した規定というのは,32条に少しありますが,実質的にはないに等しいところでございます。

 

しかしながら,実務界からは,受益者が多数に上る信託に対応した意思決定のルール等を定めるべきだという要望がございますので,ここでは,それを踏まえて規律の整理を試みたものでございます。

 

まず,太字の1でございますが,これは,複数の受益者による意思決定について,信託行為に定めを置くことを条件として,受益者全員の合意にかえて多数決で行うことを認めるものでございます。

 

受益者が有する信託法上の権利につきましては,151から153ページの別表にございますとおり極めて多数に上るわけでございますが,これを大別すれば,各受益者が単独で行使できるものと,全員の合意を要するものとに分けられることになります。

 

このうち,特に受益者全員の合意を要するものが問題なわけでございますが,受益者複数の場合について,受益者間で意見対立ということがあるかと思います。

 

その場合に,受益者全員の合意を要する事項について,常にそれを全員の合意を要するとした場合には,複数の受益者による権利行使は事実上困難なものになりかねず,また,信託事務処理に当たっても,全員の合意を得ることができないばかりにタイムリーな運営の支障ともなりかねないと思われます。

 

そこで,複数の受益者による合理的な権利行使の途を確保し,信託事務処理の円滑性を確保する観点から,(1)のとおり,あくまでも信託行為に定めを置くことを条件といたしまして,受益者全員の合意を要する事項について多数決で意思決定をするということを認めるものでございます。

 

なお,受益者全員の合意を要する事項のうち,いかなる事項を多数決の対象事項とするかについても信託行為の定めにゆだねられるというふうに考えております。

 

その上で,多数決による意思決定を認めた場合について,いかなる方法で多数決の決議を実施するかにつきましても,信託の特徴の一つである柔軟性を確保する観点から,各信託の設計すなわち信託行為の定めに委ねるものと考えておりまして,例示としては,受益者集会による方法,書面決議による方法なども挙げておりますが,その他にテレビ会議ですとか電話会議などの方法も考えられるところでございます。

 

ポリー

「株主総会とか取締役会を参考にしたのですかね。」

 

 

次に,太字の2でございますが,これは,受益者集会制度を創設した場合に関する原則的ルールを定めたものでございます。

 

今申しましたとおり,多数決制度をとるかどうか,多数決をとるとしていかなる方法をとるかというのは,すべて信託行為の定めにゆだねられるわけでして,受益者集会制度も一つのあり得べき選択肢にすぎないわけでございますが,ここでは,仮に受益者集会制度が採用された場合においては,透明性にすぐれ,合理的と思われます原則的なルールを明らかにすることといたしました。

 

もとより,御覧のとおり,(1)の招集ですとか,(2)の議決権の算定方法,(4)の費用負担のルールなどは,文言中に「信託行為に別段の定めがない限り」とありますとおり,いわゆるデフォルト・ルールにとどまるものでございまして,信託行為に定めがない場合のいわば標準的なセットを提供しようとするにとどまるものでございます。

 

まず,2の(1)は,受益者集会の招集権限についての規定でございまして,受益者集会は必要があると認められる場合には随時招集されるということも明らかにしております。

 

なお,商法の規定などを参考にいたしまして,受益者による集会招集請求権等の規律も整備する予定でございます。

 

次に,太字の2(2)でございますが,これは,議決権の算定ルール及び受益者集会の決議方法について規律したものでございます。

 

特に,受益者集会の決議方法に関しましては,これも商法の規定などを参考にいたしまして,いわゆる普通決議と特別決議とを設けること,それから,その振分けにつきましても,先ほど申しました151ないし153ページの別表記載のとおり,信託の基礎的変更,すなわち,信託行為の変更,併合,分割,終了に関する承認については特別決議事項,それ以外については普通決議事項としております。

 

 

 

 

 

もっとも,今言いましたとおり,あくまでもこれは標準的なデフォルト・ルールでございまして,信託行為によって特定の受益者に承認権限を与えることも可能であると解されるなど,信託の柔軟性にかんがみますと,これは145ページのアステリスクの5に記載しておりますけれども,特別決議と普通決議の振分けですとか,各決議の決議要件,定足数については信託行為で自由に定めることができ,その結果少数受益者が不利益を生ずることになれば,受益権取得請求権によって解決することが相当ではないかというのが基本的な考えでございます。

 

これは,例えば信託行為の変更を一人の受益者にゆだねるということも信託行為で定めればできてよいと考えますと,多数決の場合も,信託行為で定めれば,定足数や決議要件を自由に定めてもいいのではないかということでございます。

 

もっとも,このような考え方に対しましては,145ページのアステリスクの5ですとか,149ページの(注3)に書いてございますけれども,受益者集会という合議体による意思決定手続を定める以上は,受益者保護の観点から,何でも信託行為で自由に定められるというのはおかしいと。

 

例えば,一人が出てきて,一人が賛成と言えば,それで決議が通るというのはおかしいと。やはり決議要件や定足数について一定の限界,強行規定を設けるべきではないかという考え方もあり得るところでございます。これはどちらがいいかというのはまた重要な一つの課題かと思っております。

 

 

番人

「信託された不動産の処分の時とか、後の登記に影響がある場合は信託目録に記録しておく必要があるね。」

 

 

 

それから,太字の2(3)でございますけれども,これは,受益者集会の決議の効力については全受益者に及ぶことを明らかにしております。

 

もっとも,信託においては種類が異なる受益権が設けられていることがあり得ますので,145ページのアステリスクの7に書いてございますとおり,受益者集会の決議が特定の種類の受益権を有する種類受益者に損害を与えるおそれがある場合には,受益者集会の決議の効力は種類受益者に及ばず,別途種類受益者集会のような規律を設けるべきであるとの考え方があり得るところでございます。

しかしながら,信託におきましては,商法の種類株式と異なりまして極めて多様な内容の受益権の創設が可能でございますので,種類とは一体何か,種類受益者集会を開催すべき場合とはどのような場合なのかについてはなお検討したいというふうに示しているところでございます。

 

最後に,太字の2(4)でございますけれども,これは,受益者集会の費用については,受益者集会が信託事務の円滑な処理にも資することにかんがみまして,原則として信託財産をもって負担するというふうにしたものでございます。

 

以上,概略ですが,受益者集会制度についての説明をいたしました。

 

 

 

 

 

続いて,少し飛びますが,報告書165ページ以下の受益権の有価証券化のところにつきまして,概略を御説明いたしたいと思います。

 

現行法では受益権の有価証券化に関しては規定がありません。学説を見ますと,一定の限度のもとで受益権を記名証券又は無記名証券に表章できるという見解と,有価証券,特に無記名証券化のためには制定法や慣習法を必要とするという見解とがございまして,実務上は,特別法の定め,貸付信託法,投信法,資産流動化法にございますが,これがある場合を除いては受益権の有価証券化は行われていないと言われております。

 

しかし,受益権を有価証券化するニーズというのは特別法のある場合に限られないと言われておりまして,受益権の有価証券化を一般的に認める規律を信託法中に設けまして,受益権譲渡の手続の簡易化と効力の強化を図ることによって今後の信託の利用を促進することができると思われます。そういうことで,受益権の有価証券化に関する規律を設け,解釈上の争いを解決したいというふうに考えたものでございます。

 

 

太字の1は,受益証券の発行に関するものでございますが,受益証券を発行するか否かは信託行為によって定めるべきものといたしました。これは,例えば資産流動化法におきましては受益証券の発行を義務づけておりますけれども,一般法たる信託法においては,受益証券の発行を常に義務づけるのは妥当ではなく,個々の信託の設計に委ねることとしたものでございます。

 

続いて,太字の2以降の各論的事項の説明に移る前に,まず前提として,ここで予定している受益証券の性質について若干申し上げます。

 

ここで想定しております受益証券というのは,権利の流通性を高めること,すなわち権利譲渡の手続の簡易化と権利譲渡の効力の強化を図るという目的から,いわゆる講学上の「無記名証券」としての性質を有するものとした上で,記名式と無記名式の双方を発行することを許容するものでございます。

 

無記名証券であります以上,記名式か無記名式かを問わず,無記名証券としての効力,すなわち権利譲渡の手続の簡易化という観点からは,譲渡の合意と証券占有のみをもって足り,民法467条の通知・承諾等の手続を経なくとも受託者及び第三者に対する対抗力が認められると。

 

また,権利譲渡の効力の強化という観点からは,いわゆる資格授与的効力が認められ,善意取得による保護も認められるということになります。

 

なお,169ページの(注5)に記載してございますけれども,講学上の「記名証券」の発行も認める必要があるかということにつきましては,記名証券につきましては,対抗要件として民法467条の手続を必要とし,資格授与的効力や善意取得も認められないなど,有価証券化の目的にそぐわない面がございますので,にもかかわらず,あえて記名証券を認める必要があるかについては,実務上果たしてそこまでのニーズがあるかを踏まえつつ,慎重に考えたいと思っております。

 

最後に,受益証券というのは,株式と同じくいわゆる有因証券でございまして,その受益証券の表章している受益権の内容は,証券上の記載ではなくて,あくまで信託行為によって定まることになります。

 

以上を前提としまして,若干御説明をいたしますと,太字の2でございますが,これは,受益証券に記載すべき事項を法定するものでございまして,その中の③,④から明らかなとおり,受益証券については,記名式の株券に類似するものと,無記名式の無記名社債に類似するものとの双方を認めております。

 

太字の3,4でございますが,無記名証券であるという性質から,権利譲渡には証券の交付を要すること,資格授与的効力,善意取得が認められることを記したものでございます。

 

太字の5,6は,受益証券の譲渡の対抗要件と受益者名簿の作成に関するものでございます。

先ほど申しましたとおり,無記名証券の対抗要件は,本来,証券の占有をもって足りるものでございまして,記名式,無記名式を問わず,債務者である受託者以外の第三者に対する対抗要件についてはこの原則に従っているというのが,6の(2)でございます。

 

一方,受託者に対する対抗要件につきましては,記名式の受益証券の場合に限って,株主名簿における名義書換えを必要とする商法206条の規定と同様に,受益者名簿の作成を要求した上で,受益者名簿の記載をもって対抗要件とすることといたしました。

 

ところで,無記名式の受益証券につきましては,これは5を御覧になっていただければ分かりますとおり,受益者名簿の作成は必要としないということになるわけですけれども,それは,貸付信託の受益権のように,実質的に見て金銭債権と類似し,反復的・継続的な権利行使は考え難いというタイプの受益権については,無記名社債の取扱いに準じ,受益者名簿の作成を要さず,対抗要件ともしないのが相当であると考えられるという点,あるいは,仮に無記名式の場合にも受益者名簿の作成が必要であるとすると,受託者に対する対抗要件も,券面の占有ではなくて,受益者名簿の記載ということになると思われますが,これでは記名式の場合との違いがほとんどなくなってしまうので,せっかく無記名式の受益証券を発行する以上は,多少の手間を省けるメリットもある方がよいのではないかという点などを考慮したことによるものでございます。

 

 

 

 

 

もっとも,169ページの(注6)にございますとおり,無記名式の受益証券についても,特に受託者側から,だれが受益者かを確知する必要性などの観点から,受益者名簿の作成を義務づけた方がよいのではないかという考え方もあり得るということを付記させていただいているところでございます。

 

最後に,太字の7は,受益証券の譲渡に伴う委託者の地位の承継でございまして,ここでは,原則として,受益証券を譲渡すれば委託者の地位も移転するとしております。

 

それは,法律関係の複雑化を回避する,すなわち受益権の譲渡によって委託者と受益者の地位が分かれ,関係者が増えるというような事態を回避したいという観点が含まれているものでございます。もっとも,委託者の地位を固定して,受益権のみを譲渡する,流通させるというタイプの信託もありますので,あくまで任意規定としているところでございます。

 

なお,先ほどの,証券化の場合の補償請求権とか報酬請求権の規律との対比も必要だという観点から申しますと,これは報告書の166ページのアステリスクの1のところに書いてございますが,受益証券を発行する場合については,受益者に対する補償請求権及び報酬請求権を行使することができないという方向で検討しているところでございます。

 

その実質的な理由は,受益証券を譲り受けた者が債務を負担するというのは流通を図るという観点から好ましくないという点ですとか,理論的に申しますと,有価証券というのはあくまで券面の保有者の権利を表章するものであって,債務を表章するというのはおかしいのではないかというような点も踏まえまして,このような方向で検討してはいかがかということを付記させていただいております。

 

以上で説明を終わらせていただきます。

  •  それでは,受益者多数の場合の意思決定の方法,第49と,今の証券化の第53ですが,これに関連して,いかがでしょうか。

 

 

 

 

 

  •  それでは,まず,受益者が複数の信託の意思決定方法について,2点述べさせていただきたいと思います。

 

ここの部分の規律につきましては,以前から信託銀行として是非ともこういう規律を入れていただきたかったというところでございまして,受益者全員の合意にかえて多数決という形のものを採用していただけたと,それについては非常に歓迎しております。

 

なおかつ,本報告書の中の規律によりますと,信託契約で決議方法を自由に選択できるというところもありますので,弾力性に富んだ制度設計ができるのかなというところについても非常に歓迎しております。

 

あと,ちょっとプラスアルファということを。

 

こういう形で信託契約に書くことによってできるのであるとすれば,今,兼営法の5条ノ3で記載されております,みなし承認制度というふうに呼んでいますけれども,そういう形のものもできたら採用させていただければなと。

 

やはり,信託銀行の場合については,受益者が数十万に及ぶものもありますので,そういうものに対しての対応というと,そういうことしかなかなか難しいのかなということもありまして。まあ,そのとき,無条件でということでもなくて,何らかの規律といいますか,そういう形でのものも含めて御検討いただければなというふうに思っております。

 

 

すみれ

「受益者が何十万人もいるの。すごいね。みなし承認制度って最高裁判所の裁判官に、選挙の時に使うやつかな。」

 

 

続きまして,受益権の有価証券化の方のお話ですけれども,これについても以前より要望しておりましたところでありますので,これが実現できるということは非常に歓迎しております。

個別の話で,先ほどの補償請求権との絡みで,有価証券化した場合について受益者に補償請求できるのか否かというところについて,有価証券化したものについては当然それはおかしいんじゃないかというお話がありましたけれども,それは私どももそう思っております。

 

 

逆に,当然,お客さんに売るときに,有価証券化したようなものについて,ゼロになるばかりかマイナスになりますよと,そういう商品を売るわけにもいきませんので,ここについては賛成ということでございます。

 

あともう一つ,受益権の受託者への対抗要件のところでございますけれども,これは,今,券面をもってということですけれども,これをできれば受益者名簿への記載というような形で御検討いただけないかなということです。

 

株式型という形になろうかと思いますけれども,権利行使というのが継続的にやりやすいということもございますけれども,あと,非常に実務的に考えますと,無記名証券で考えますと,書換えをするときの手間暇というのがなくなりますし,そのまま記載していれば,そのまま例えば利払い等も行いやすいと,そういう事務上の観点からも非常に有り難いところであります。

 

 

 

 

 

ただ,これはつい最近気がついたのですけれども,受益者名簿というのは全部つくれないような場合がありまして。

 

例えば,ふと気がついたら,投信なんかはほとんど販売会社しか受益者名簿がありませんので,この辺のところをちょっと検討していかないといけないかなと思っておりまして。たまたまふと気がついてしまったものですから,ここについては,済みません,私どもの方でも検討させていただきたいと思っています。

 

 

すみれ

「ふと気がついたら受益者名簿が全部はなかったやってことかな。」

 

 

 

あと1点,これについては,現行法でもできるのかもしれませんけれども,信託財産を引当てにする債券発行をできるような形にしていただけないかと。現状においても,有限責任の形での社債発行というのはどうもやっているようですけれども,そのときの問題点として,倒産隔離が図れないというようなことがございますので,信託法を使うと,そこら辺のところが解決されるのではないかなと。

 

済みません,よくは分かりませんけれども,そんなことを漠然と考えておりまして,そういう点についても御検討いただければなと思います。

 

 

番人

「日本の法律でできる、国内債券になる、信託財産に限定だって。大きなお金が動くみたいだからあまり関係ないかな。」

 

 

 

  •  また実務家の立場から総論的なことを申し上げたいと思います。

まず,第49の複数受益者の信託の話ですが,ユーザーとしてはやはり使いやすい,それから柔軟的な信託設計ができるようにしたいと思いますものですから,この方向というのは非常に喜ばしいことだと思っております。

 

ただ,1点,ここでも検討というふうに書いてあると思いますけれども,決議の要件等について,強行規定を入れるかどうかということが大きな論点になると思いますけれども,この点,いろいろな賛否両論があるとは思うのですが,ただ,やはり柔軟な,また当初の信託設定の中身,意思とかいうことを考えますと,そういう強行法規というのは本当に要るのかなという気はいたします。

 

もし仮にその強行法規がなくて,自由に設計において,もしその内容がまずいのであれば,それはおのずから市場が判断して駆逐されていくということになると思いますものですから。

 

もちろん民事信託の考慮は必要だとは思いますが,そういうふうなことを基本的に思っています。

 

番人

「民事信託の考慮じゃなくて、多数決取った場合の少数の人の最低限の保護は、信託全般において必要じゃないかと思うんだけど。市場が判断した時には信託のイメージが既に落ちているかもしれないし。」

 

 

 

 

 

その点,特に危ぐいたしますのは受益者集会の定足数なわけですけれども,多分,この受益者集会というのは,法的にはSPC法が初めてだというふうに私は認識しておりますけれども,仄聞するところ,余りこういった実例はないというふうには聞いているのですが,そうすると,こういう商品に関して定足数が本当に集まるのだろうかと。

 

ちょっと商品は違いますけれども,社債において社債権者集会というのがなかなか成立に苦慮しているということもあるわけですので,こういう商品でそういう人が集まってくるかどうかということもありますので,そこら辺は柔軟にしないと,逆に決議が通らず,よって受益者が苦しんでしまうということも念頭に置かなければならないというふうに思っております。

 

次に,第53の受益権の有価証券化ということでございますけれども,基本的には,これはオプションといいますかデフォルト・ローということで,有価証券化するという選択肢が増えるということで,使いやすい,そういうニーズがあるのであれば,それを使うということでございますので,方向性としては賛成したいと思うのですけれども,ただ,そこにおいて懸念がないかどうかということの検証がもう一段必要かなということと,それから,先ほど○○委員からもありましたように横の関係ということではないのですけれども,ほかの制度との関係ということも考えなければならないかと思っております。

 

 

 

どういうことかといいますと,私法上の有価証券というのがどれほど今の社会において必要なのかということですけれども,善意取得があったからよかったなということがペーパーレスの世の中でどれぐらいあるのかというのは,もう一度認識する必要があるかと思います。逆に弊害がないのかと。

 

仄聞するところによると,反社会的な勢力がそういう善意取得を理由としていろいろ問題を起こしているという例を聞き及ぶこともあるものですから,そういうものが本当に必要なのかどうかということを考えなければならないと思います。

 

また,ペーパーレス化ということもありますので,ペーパーレス化するために,社振法とかそういう違う法律になるかもしれませんけれども,現状,社振法での対象は受益証券に限定されていますから,そこに乗せて,その制度において流通を図るという選択肢もふやすために,信託法だけでなく,関連法規の整備を行うということも検討の必要があるのではないかというふうに思っております。

 

 

 

 

  •  まず,受益者が複数の信託の場合の意思決定方法について今回デフォルト・ルールを定められるということについては,基本的に大賛成でございます。

 

実際に実務の中で,特に流動化の中ですけれども,時には,後で議論になります信託の変更等の場合において,どうしても同意を得るという必要が出てくるときもあるのですけれども,先ほどからもお話が出ておりますように,実際なかなか大変なところもございます。

 

したがいまして,こういった形でつくっていただいて,かつ,実際の多数決の内容については各論のところで申し上げたいと思いますけれども,できるだけスムーズにできるような形にしていただければというふうに,まあそういうところを期待しております。

 

特に,この中にも書いてございますけれども,書面決議とか,その他最近のいろいろなツールを使っての意思表示の確認等々を検討していただければというふうに思っております。

 

 

 

 

次に,受益権の有価証券化についてですけれども,これについても,今回,有価証券化が認められるということについては賛成です。

 

反対というわけではないのですけれども,ただし書でちゃんとそうじゃない場合も認められておりますので,非常に現実的であるということではあるのですけれども,流動化をやる場合についても,投資家さんというのは,流動化の場合は,保険会社さんだったり,中小の金融機関,それから学校法人とか事業法人等であるのですけれども,その数がたくさんある場合と,非常に少ない場合,中には1名の場合ももちろんございますし,これらの投資家のニーズというのは様々なケースがありますし,もともと流動化するオリジネーターの方の意図というのがかなり反映する場合もございます。

 

したがいまして,両方が選択されるという方法で,流動化の面では非常によろしいのではないかなというふうに思います。

 

ただ,先ほども言いましたように,投資家というのが限られているケースもございますので,有価証券化をやる場合についても,実際に有価証券化に伴う様々なコストというのが発生するわけですけれども,そういったものについてできるだけ柔軟にできないのかと。

 

特に,資産流動化法の中でも無記名証券の記名式の方は記名社債に類似した制度がとられているのですけれども,これは,事務手続上はこういったものが使いやすいという観点からこういうふうに定められておりますので,必ずしも有価証券化によって株式類似の手続というようなものがそれだけしかないという形だと,ちょっと使い勝手が悪いのかなという意見もございますので,そのあたりについては今後申し上げていきたいなというふうに考えております。

 

 

すみれ

「スクークっていうのがあるらしい。受益権のの有価証券化と受益証券って違うのかな。」

 

 

  •  ほかにいかがでしょうか。

 

  •  受益者集会制度について発言させていただきたいと思います。

 

先ほど○○委員から,この信託法改正の大きな目標が何であるかということを明らかにすべきであるというお話がございましたけれども,私は,この信託法改正の一つの大きな目的は,やはり受益者の実効的な保護にあるのではないかと。

 

すなわち,信託というのはやはり受益者のための制度であるということは疑いなく,現行の信託法が本当に受益者の利益を図るものとなっているかどうか,そのような観点に合わせて信託の利用の裾野が広がり,恐らく受託者の担い手も拡大するであろうと,そういう状況にかんがみますと,受益者の実効的な保護という観点から信託法の改正を議論していくということが必要ではないかと考えております。

 

そのような観点からした場合,受益者集会制度というのは,これは受益者の利益に資する可能性が非常に高いと思われます。

 

いろいろな局面で,例えば信託の基礎的変更ですとか,あるいは受託者の利益相反取引に対する同意等に対して受益者がチェックを行い,自分たちに有利な,受益者の利益に資するようなものについては同意を与えていくと。

 

その場合,少数派の反対によってそれがなし得なくなるというのでは,やはり信託全体,受益者全体にとっては不利益になると考えられるわけであります。そのような観点から,受益者集会制度のようなもので多数決を導入するというのは大変望ましいことではないかと考えております。

 

 

 

 

ただ,ここから若干これまでの委員の発言と食い違ってくる部分もございますけれども,そのように受益者の利益になるかどうかという観点からしますと,やはりある程度の強行法規的な部分というのも残らざるを得ないのではないか。

 

特に,多数決の制度というのは,少なくとも手続的な部分,招集等の手続的な部分ですとか,それから会議体の本質にかかわるところ,例えば過半数で決めるというのであれば,これは会議体の本則にのっとった決め方だと思いますけれども,冒頭で○○幹事が例として挙げましたように,一人出てきて,一人が言えば,それでいいと,そういう受益者集会制度を設けたときに,果たして本当にそれが受益者の利益に資するものなのかどうかという点は十分に議論をする必要があるのではないかと思われます。

 

また,反対する少数受益者に対する一定の保護,こういったものも恐らく強行法規的な規律で律していく必要があろうかと思います。そして,また,そのことが会議体の決定に対して法的安定性を与える根拠となり得るのではないかと思います。

 

商法の株主総会の決議等では,瑕疵がある場合に,その決議の瑕疵を争う訴えというのを起こさなければその決議を取り消せないということとしておりまして,それによって法的安定性が早期に確実になると。

 

逆に,ある程度しっかりしたこういった集会制度を設けておかないと,なかなか瑕疵を争う決議のような制度を導入することが難しく,かえって後から様々なトラブルが生ずる,法的紛争が生ずるおそれがあるのではないか,そのような懸念も一方で持っておりますので,そのような観点も含めて,是非各論の中で御検討いただければと思います。

 

 

ポリー

「なるほど。しっかりした集会制度って大切なんだと思いました。」

 

 

 

 

それからもう1点,有価証券化について一言申し述べさせていただきたいと思います。

 

私も,有価証券化を選択できるということについては大変賛成なのですけれども,やはり世の中の流れは更にもう一歩先を行って,ペーパーレス化についてもやはり同時に考える必要がある。そのときに二通りの考え方がございまして,いったん有価証券化されたものをペーパーレス化するという考え方と,直接電子化するということが選択肢としてはあり得ると思われます。この点,いずれの方法によるのが適切かも含めて,是非,ペーパーレス化まで視野に入れてこの先御議論いただければというふうに思います。

 

  •  今の○○幹事のお話,私も実はちょっと発言しようかなと思っていたのですけれども,有価証券化という事柄なのですけれども,今や,有価証券については--本当に流通するものは紙が出されない,振替えによって流通させる,流通しないものについて紙を出すということになりつつあるわけでございまして,そんなのはばかばかしいから,今まで有価証券を出すことになっていたものも紙を出さなくていいことにしましょうという方向で動いていますので,さっきの○○幹事の分類から言えば,いったん紙を出して有価証券にしたやつを振り替えるというのは,今の株券の保管振替法なんかがそうなんですけれども,もうそんなばかなことはやめて,初めからペーパーレスにしましょうというのが社債振替法の考え方で,今やそれになっていますので,振替制度に乗せるとすれば,一回紙を出すということは考え難いと思います。

 

そこはまた金融庁さんともよく御相談しなければいけないところですけれども,そういう状況下にある中で,紙を出すという制度をここで作ることの意義ということを考えていただく必要があるのかなと思います。

 

  •  なかなかこれも難しい問題ですね。ここだけで決着つくかどうかも分からないぐらい重要な問題だと思いますが,ほかにいかがでございましょうか。

 

  •  先ほどの○○幹事のお話と共通しているところですけれども,私どもの方の理解は,受益権を有価証券化するというのは,ペーパーレス化して振替えのところに乗るということを前提にしたものとして今まで議論していたつもりだったものですから,その方向でお願いしたいということです。

 

  •  ほかによろしいでしょうか。

 

 

 

 

 

 

  •  今のお話を伺って,数点申し上げます。

 

まず,一番最初のペーパーレス化の問題でございますが,これは当然我々も,今,○○委員のおっしゃったのと同じ方向で考えておりまして,まず第一歩として有価証券化を流通の強化のために規定はしておりますけれども,当然ペーパーレス化もにらんだ上で規律の整備を図っていきたいと思っておりますので,そういうことで御了解いただければと思います。

 

それからもう1点,○○委員が最初におっしゃったみなし承認の話でございますが,確かに,我々といたしましては,どのような多数決制度をとるかというのは基本的に信託行為の定めに委ねるというふうに考えてはおりますけれども,例でおっしゃった兼営法のみなし承認,これは単に公告をするというだけの方法でございまして,しかも金融庁長官の認可を得た上で公告をすると。

 

 

すみれ

「通知じゃなくて広告なんだ。」

 

 

 

貸付信託法とか投信法にも似たようなスキームがございますが,このようなものまで果たして許されるのかと。

 

他方,資産流動化法であれば,通知をした上で,反対がなければ承認とみなすと,こちらの方は各受益者が通知があったことで内容が分かるのでいいのですが,公告によって承認とみなすということまで許されるかどうかについては,基本的には信託行為の定めによるとはいっても,なお慎重に検討していきたいというふうに考えているところでございます。

 

それから,○○委員がおっしゃいました,株式類似のものに限るのはどうかという点は,報告書においても,無記名式の証券,すなわち無記名社債類似のものの発行ということも認めておりますことに御留意いただければというふうに思います。

 

最後に,○○幹事が何点かおっしゃった点で,まず,アステリスクの5のところで,何でも自由にするのは限度があるというのは,正に我々が問題視しているところでございまして,そこについては皆様からいろいろ御指摘がありましたが,そこを踏まえてなお慎重に検討していきたいというふうに思っております。

 

それから,少数受益者,反対受益者の受益権取得請求権,これは当然,強行規定になると 我々も理解しておりますので,そのようなことで御理解をいただければと思っております。

 

なお,決議取消訴訟の必要性というようなこともおっしゃったかと思いますが,これにつきましても,社債権者集会のように裁判所の認可があって初めて効力が生ずるというわけではございませんので,株主総会の決議取消訴訟と同じような,一律に効果を決めるような規律をできるだけ整備していく方向で考えていきたいと思っております。

 

  •  よろしいですか。

それでは,ちょうど時間も休憩時間になったと思いますので,ここで休憩します。

 

(休     憩)

 

  •  それでは,休憩時間を終わります。

次は,「第37 受託者の解任・辞任等について」でございます。

では,またこれも○○幹事から説明いたします。

 

  •  では,受託者の解任・辞任と信託の変更,終了,これも重要なものがいろいろ絡みますので,ちょっとお時間をいただいて御説明申し上げます。

まず一番最初は,99ページ以降,受託者の解任・辞任等についての規律でございます。

 

太字の1から4というのは,これは受託者の解任に関するものでございます。現行法47条では,受託者に任務違反その他重要な事由があることを前提に,委託者又は受益者等が裁判所に請求して受託者を解任することを予定しております。

 

しかし,現行法57条によれば,自益信託については,委託者は受託者の意思を問わず,いつでも信託を解除することができることとされております。

 

 

 

 

 

そして,本条が自益信託の場合に委託者に一方的な解除権を認めたのは,信託目的の設定者であると同時に信託財産の実質的所有者である者が信託の終了を希望する以上,これを拒む理由がないという理由が挙げられておりまして,このような趣旨からすれば,他益信託であっても,委託者と受益者の合意があれば,受託者の意思を問わず,いつでも信託を解除できると解されているところでございます。

 

このような考えのもとに,本報告書におきましても,後ほど御説明いたします信託の終了原因の一つとして,「委託者及び受益者が共同して信託の終了の意思表示を受託者に対して行ったとき」という場合を挙げているところでございます。

 

信託のいわゆる解除に関するこのような規律を前提といたしますと,委託者及び受益者は,受託者を変更しようと思えば,現行法47条によらずとも,信託の解除という方法を通じて目的を実現することが可能となるわけですが,しかし,委託者及び受益者がより能力のある受託者を選任したいと考える場合において,新たな受託者の選任のために信託をいったん解除するというのは余りにも迂遠であり,ロスも大きいと考えます。

 

むしろ,受託者の解任については,受益者と委託者の判断にゆだねた上で,解任された受託者に損害が生ずれば別途その損害をてん補するという方法をとることが考えられるところでございます。

 

 

番人

「解任かー。家族信託では予定されてないね。その時は信託を終了させた方が良いんだろうね。」

 

 

そこで,ここでは,太字の1におきまして,民法上の委任契約の受任者が委任者によって,あるいは株式会社の取締役が株主総会によっていつでも解任され得るのと同様に,委託者及び受益者はその合意によりいつでも受託者を解任できるといたしました。

 

自由な解任を認めることによって受益者及び委託者による受託者に対する監督がより強化されるであろうという効果もねらったものでございます。

 

その上で,太字の2といたしまして,受託者の不利な時期に解任したときには損害賠償をしなければならない等の規律を設けております。

 

これは,委任者による受任者の解任に関する民法651条2項と同様でございます。この受託者の損害賠償請求権については,信託事務を処理するに当たって受託者が受けた損害と言えますので,その補償請求権の規律,先ほど御説明いたしましたが,それに従いましてまずは信託財産からその満足を受けるべきものと考えております。

 

 

 

 

なお,太字の3のとおり,太字の1,2は任意規定でございますので,信託行為の定めにより,解任事由を一定の場合に制限すること,あるいは解任の時期にかかわらず損害賠償を不要とする特約も有効であると考えているところでございます。

 

続きまして,太字の4でございますが,これは,受託者に明らかに信託行為に違反した行為があるにもかかわらず,受託者の解任に向けての委託者と受益者の合意が調わない場合,あるいは信託行為において解任事由が一定のものに制限されている場合などに備えまして,ここで,「受託者がその任務に違反したことその他重要な事実があるとき」の委託者又は受益者の裁判所に対する解任請求権の規律を維持したものでございます。

 

このように裁判所による受託者の解任においては,信託違反行為等の実質的な理由を必要とすることにつきましては,現行法はもとより,資産流動化法あるいはアメリカの統一信託法典などにも共通するところでございます。

 

 

次に,太字の5でございますが,これは受託者の辞任に関するものでございます。信託は受託者に対する信頼関係を基礎として財産関係が形成されるものですので,受託者が勝手に辞任することができないとするのが,委託者及び受益者の意思に合致するものと考えられます。

 

そこで,現行法43条,46条におきましては,受託者が辞任できる場合につきまして,信託行為に別段の定めがある場合,受益者及び委託者の承諾がある場合,それからやむをえない事由があって裁判所の許可を得た場合に限っているところでございまして,ここではその規律を維持したというものでございます。

 

最後に,太字の6,7は,受託者の選任に関するものでございます。

 

現行法49条によれば,前受託者の任務が終了して受託者が欠けた場合にも,信託自体は終了することなく,新たな受託者によって信託事務が処理されることを前提としておりまして,利害関係人が裁判所に対して新受託者の選任を請求できるというふうにしております。

 

しかし,私的自治の観点からは,まずは委託者及び受益者の合意によって新受託者の選任をすることができるとするのが合理的でございまして,これを可能であるとする見解が有力というか,通説でございます。

 

 

 

 

 

この点につきましては,現行法上,明文の規律がないので,太字の6でその明文の規律を設けたというにとどまるものでございます。

 

その上で,裁判所に対する新受託者選任請求権は新法においても維持したいと考えておりますが,当該信託にふさわしい受託者を探すということは裁判所にとって必ずしも容易ではないため ,請求者は新受託者の候補者を示して選任請求を行い,その許否を裁判所が判断する枠組みとする趣旨で,太字の7の規律を設けたものでございます。

 

もっとも,このように候補者の提示を法律要件にまで高めますと,これがないと申立てが却下されるということになりまして,申立人にとっても過重な負担を課すという懸念もありますので,手続上あるいは運用上の問題にとどめるべきだという考え方もあり得るということを付言させていただきます。

 

 

 

 

 

次に,182ページ以下の「信託行為の変更について」の説明に移らせていただきます。

 

現行法上,私益信託における信託行為の変更につきましては,23条におきまして,請求を受けた裁判所による信託財産の管理方法の変更権限に関する規定があるにとどまります。

 

しかし,今日の経済社会におきましては,信託行為がなされた時点においては予想し得ない事態が生ずることも十分想定されるわけでして,しかるに,そのような場合において信託行為の変更が柔軟かつ迅速になされないときは,委託者の意図する目的を達成することができないことになりますし,受益者の利益にも資さないと考えられます。

 

そこで,ここでは,委託者,受託者,受益者の利益を適切に確保しながら信託の事後的変更を柔軟かつ迅速になし得るように規律を整備したということでございます。

 

まず,太字の1は,裁判所の許可がなくても,信託当事者の合意によって信託行為を変更できることを定めたものでございます。

 

現行法の23条につきましては,管理方法の変更にはすべて裁判所の許可を絶対的要件として定めたものか,それとも信託当事者の合意が得られないために管理方法の変更ができず,受益者の利益に適合しないまま管理方法が放置されることを防ぐ趣旨にとどまるのかについて争いがございましたが,この点につきましては,本条が私的自治を前提とし,信託当事者の合意があった場合にはそれを無効とする理由はなく,合意の得られない場合に裁判所が私的自治を補完する趣旨と解すべきであるとして,後説,すなわち当事者の合意によっても構わないという説を支持する考え方が有力であったと思われます。

 

更に,ここで言う信託当事者の合意の意味でございますが,これまでの学説によりますと,信託の変更というのは,既存の信託を解除して新しい信託を設定することと同じであると考えられております。

 

 

 

ところで,信託法57条によりますと,信託の解除には委託者と受益者の合意を要すると解されるとともに,新しい信託を受託者が引き受けるか否かは受託者の自由に属するので,結局,三者の合意が必要十分条件だと説くのが有力でございました。

 

以上をまとめれば,信託行為の変更は,委託者,受益者,受託者の合意により行うことができるものと解釈されていたわけでございますが,太字の1は,この解釈を原則として明文化したものでございます。

 

 

 

 

なお,米国統一信託法典によりますと,信託の変更については,委託者及び受益者の同意を要するものの,受託者の同意は必要ないものとされております。

 

選択肢といたしましては,この統一信託法典のように,信託行為の変更については受託者の同意を不要としつつ,変更を不本意とする受託者の辞任を容易に認めると。

 

統一信託法典では通知をすれば辞任できるとなっておりますので,そういう方向性と,信託行為の変更についての受託者の同意を必要とした上で,同意を拒否する受託者の解任を容易に認めるという,先ほど説明したような方向性とがあるわけですが,この報告書では,後者の,同意を必要とした上で解任も自由にできるという考え方によっているわけでございます。

 

続きまして,太字の2でございますが,これは,変更の内容いかんでは,常に三者の合意を要するとした場合には必要以上の手続的・時間的コストがかかり,かえって受益者を始めとする関係当事者の利益にそぐわないこととなる可能性も排除できませんので,関係当事者の利益に配慮しながら柔軟な変更手続を行うことを認めるものでございます。

 

すなわち,変更の内容が信託の目的すなわち委託者の意図に反しないことが明らかであるときは委託者の同意が不要になりますし,受益者の利益に適合することが明らかであるときには受益者の同意が,受託者の利益を害さないことが明らかであるときには受託者の同意がそれぞれ不要ということになるわけでございます。

 

例えば,本文183ページの例にありますように,政省令の改正に伴いまして契約内容の技術的な変更を行う等の軽微な変更である場合には,ここで言いますア又はイによって,委託者や,場合によっては受益者の同意が不要になることがあり得ると思われるわけでございます。

 

また,受益者の意思決定方法,例えば多数決制度を導入すること等に変更するような場合につきましては,ウ又はエによりまして,受託者や場合によっては委託者の同意が不要となることがあり得ると思われるわけでございます。

 

続いて,太字の3ですが,これは,変更に先立つ事前の通知を要求するわけですが,この趣旨といいますのは,太字の2により,信託行為の変更につき,その者の同意が不要であると判断されて,関与しなかった者に対して,変更されることとなる内容をあらかじめ了知させるためのものでございます。

 

もっとも,この通知がなされなかった場合においても,関与を不要とされる要件に適切に合致している限りは変更自体が無効となるわけではございませんが,変更内容をあらかじめ了知させることによりまして,その変更に反対する当事者が,変更を実施しようとする者に対して,変更内容が政策的に得策ではないとか,あるいは,変更によって自己の利益が害されるおそれがあるので2の要件には該当せず,自己の関与が必要なはずであるとして変更に反対する意見を表明する機会を確保しようとするものでございます。

 

なお,付言いたしますと,信託行為の変更が通知どおりなされたとすれば,これに受益者が反対する場合には受益権取得請求権を行使しなければならない可能性があるわけでございますが,そういう事態もあり得るということをその受益者にあらかじめ認識させておくことですとか,あるいは,関与不要と判断された当事者が,自己の利益が害される内容の変更であったとして事後的に変更の適法性を争うと。

 

その方法は,例えば信託行為の変更の無効確認訴訟というようなものになるかと思われますが,そういう可能性があるということをあらかじめ認識させておくといった意味もあるのではないかと考えられるところでございます。

 

 

 

 

 

続きまして,太字の4は,信託行為において特定の第三者に信託行為の変更権を付与することも可能であることを明らかにしたものでございまして,変更権の範囲には特段の制限はございませんが,その内容いかんによっては反対受益者に受益権取得請求権が発生するということになるわけでございます。

 

続きまして,太字の5でございますけれども,これは複雑な規定なのですが,太字の1及び2アの場合,すなわち,信託行為の変更に受託者の関与が必要で,かつ,その変更が受益者の利益に適合することが明らかであるとは言えない,すなわち反対受益者が受益権取得請求権を行使してくる可能性がある場合であることを前提といたしまして,そのような場合には,受託者において,反対受益者による受益権取得請求権の行使にもかかわらず,当該変更を予定どおり実施すべきか否かを判断することを容易にするために設けた規律でございます。

 

仮に複数受益者のうち多数の者が当該変更に賛成であっても,なお相当数の受益者が変更に反対して取得請求権を行使してきたといたしますと,当該受益権の信託財産による取得,実質的には受益権の払戻しによりまして信託財産の規模が縮小し,ひいては信託目的の達成自体に支障が生ずるという可能性もあるわけでございます。

 

このような場合,受託者としては,それにもかかわらず多数受益者との合意に従って信託行為の変更を実施すべきか,それとも,変更を実施すると信託自体の継続が危ぶまれることを重視して変更を中止すべきかについて,判断に窮することが予想されます。

 

このような事態を想定いたしまして,ここでは,変更に関与する受託者において,受益者及び委託者と,又は受益者と信託行為の変更を合意するに当たりましては,受益権取得請求権の行使状況によっては変更を中止することもあり得べしという条件もあわせて合意すべきものといたしまして,受託者としては,この合意された条件に従って変更を実施すべきか否かを最終的に決定すれば,注意義務を尽くしたものと判断されるといたしまして,救済の途を付与したものでございます。

 

ここで合意されるべき条件といたしましては,184ページの末尾から185ページ初めに書いてありますとおり,例えば,受益権を取得するために信託財産から出捐する金額が0円を超えるときには変更を中止するというような金額的上限を示す方法ですとか,より柔軟な条件を提示する方法でも構わないと考えているところでございます。

 

最後に,太字の6でございますけれども,本文自体は現行法23条の趣旨をほぼ再現したものにとどまりますが,重要なのは183ページのアステリスクに記載した点でございまして,事情変更の法理の適用範囲,裁判所の判断の現実的な可否,変更請求手続の在り方等の諸点を踏まえまして,現行法のように「信託財産の管理方法」の変更にとどめるべきか,あるいはこれを広げて「信託財産の分配」に関する条項の変更をも対象とすべきかといった点を中心に検討することを予定しているということでございます。

 

 

 

 

すなわち,信託財産の分配条項の変更となりますと,例えば受益権の内容について,金額や弁済期を変更するということもあり得ることになるわけですが,受益者全員の意思が合致していない中で,裁判所が非訟手続の中において一部利益者の利益を害してでもこのような変更をなし得るのかといった点が問題になるかと考えているところでございます。

 

ちなみに,米国では,信託財産の管理運用条項のみならず,分配条項についても変更できることが統一信託法案では明記されるに至っていることを付言させていただきます。

 

 

 

 

 

最後に,第61「信託の終了原因について」の説明に移らせていただきます。

これは,現行法にも定めのある信託の終了原因につきまして,改めて整理を試みた上,一括して列挙するとともに,信託の終了に伴う信託の清算以外の効果について規律したものでございます。

 

なお,現行法では,「解除」という文言を使っておりまして,それによって,信託関係が将来に向かってのみ消滅し,遡及しないことを60条が規定しておりますが,ここでは,現行法と同様に,信託の終了が将来効のみを有することを当然の前提とした上で,この局面で「解除」という文言を用いることが不適切であることにかんがみまして,「信託終了の意思表示」という文言を用いることとし,あえて遡及効に関する規律は置かなかったものでございます。

 

 

 

 

 

まず,太字の1において示した信託の終了原因につきまして,順次御説明いたしていきますが,前提といたしまして,信託行為の変更を,委託者,受託者,受益者の三者の合意でできるように,信託の終了もこの三者の合意でできることは,明文はないものの明らかでございまして,この場合には,受託者自らも信託の終了に合意している以上,太字の2に定めるような損害賠償請求権は発生しないということになります。

 

その上で,まず,①の「信託の目的を達成したとき又は信託の目的の達成が不能になったとき」と申しますのは,これは現行法の56条後段を見ますと,信託の目的の達成又は達成不能というのが終了事由に挙がっておりまして,それと同じものを規律したということでございます。

 

続きまして,②の「委託者及び受益者が共同して信託の終了の意思表示を受託者に対して行ったとき」というところは,現行法の57条に対応する規律でございまして,信託設定者としての委託者の意思と信託の利益享受主体としての受益者の意思が一致する場合には,信託の終了を妨げる理由はないと考えるものでございます。すなわち,委託者イコール受益者である自益信託の場合はもちろん,他益信託の場合であっても信託は終了することを明らかにしたものでございます。

 

なお,この規律につきましては,信託行為で別段の定めを設けることも可能であり,すなわち任意規定にとどまるということも,現行法57条の解釈と同じでございます。

 

それから,③の場合でございますが,これは言ってみれば②の亜流でございまして,信託行為の変更のところでも申しましたけれども,信託の目的に反しないときは委託者の同意は不要であるということを明らかにしたわけでございます。

 

 

すみれ

「亜流もあるんだね。」

 

 

 

次に,④でございますけれども,これは現行法の58条に対応して,裁判所に対する信託終了の申立権を認めた規律でございます。

 

信託設定当初に予見し得ない事情によりまして信託行為の内容が受益者の利益に適合しない状況に至った場合におきましては,信託を終了させることが受益者の利益にかなうと思われるわけですけれども,先ほど申しました合意等の方法によって信託を終了させることができるとは限らないわけでして,例えば,他益信託であって委託者から信託終了の同意が得られない,あるいは委託者が死亡している場合,あるいは,自益信託であっても,特約で委託者イコール受益者による信託の終了が排除されている場合,こういう場合については,裁判所に対する申立てによって信託を終了させることができるという余地を認めたものでございます。

 

 

 

 

 

なお,現行法と異なりまして,受益者が信託を終了させて信託財産の払戻しを受けなければ債務を完済できないという事情だけでは,当然に裁判所に信託終了を申し立てることができることとはしておりません。このような事情は,あくまでも「予見できない特別の事情」の有無という観点から,裁判所によって判断されることになります。

 

 

なお,資産の流動化におきましては,利益分配の仕組みは,対象資産について受益者等による恣意的なコントロールを排除することがスキーム維持の上で重要でありまして,裁判所による信託の解除に関しても,スキーム維持の上で障害になる,すなわち投資家の投資リスクが増大しスキームの格付に悪影響を与えると言われておりまして,規制改革・民間開放推進3か年計画におきましても,裁判所による信託の解除を規定した信託法58条について,その見直しが検討事項とされているところでございます。

 

 

 

 

ここでは,このような要望事項にも配慮はいたしておりまして,現行法の「已ムコトヲ得サル事由」を改め,「信託行為の当時予見することのできない特別な事情」という,より厳格な要件を設けるとともに,終了申立権者から利害関係人を除外しているところでございます。

 

その次に,⑤の「新受託者が就任しないまま,受託者の任務終了事由が生じた日から【1年】を経過したとき」というのは,これは現行法にない新たな規律でございますが,受託者が不在の状態が長く継続することは信託財産や信託関係者にとっても望ましくないので,信託を存続させておくことは適当ではないと考えられるわけでございます。

 

 

 

 

 

もっとも,このような事情があれば,信託目的の達成不能に当たるとも解されるわけですし,裁判所に対して終了の申立てをすることもできると思われますが,こういう事情を明確にすることにより,いたずらに受託者不在の状況が続いて信託財産の価値の減耗が生ずることを防止することができるとともに,受託者の任務終了に備えて,信託行為であらかじめ後継受託者や複数受託者を指名しておくなどの副次的効果も期待したものでございます。

 

 

すみれ

「後継の受託者を選んでおくことも狙っていたのか。すごいね。」

 

ポリー

「実務上でも受託者と受益者が一緒になることが必要だったようです。」

 

 

最後に,⑥の「他の規定又は信託行為に定める終了事由が発生したとき」と申しますのは,現行法56条前段と現行法59条の双方に対応する規律とする趣旨でございます。

 

続きまして,太字の2と3を簡単に御説明いたします。

 

太字の2というのは,委託者及び受益者が共同で,あるいは受益者が単独でした信託終了の意思表示が受託者にとって不利な時期になされたときは,受託者が損害賠償請求権を有することを規律したもので,現行法の57条におきまして民法651条2項を準用しているのと同じ趣旨でございます。

 

最後に,太字の3でございますが,これは,信託の終了事由が生じた場合においても,信託の当事者がそれを知っているとは限らず,不測の不利益をこうむりかねないことから,信託が終了したことを自己以外の信託当事者に対抗するためには,当該者に対して信託終了を通知し,又は当該者が信託終了を知っていることが必要としたものでございまして,委任に関する民法655条と同趣旨の規定でございます。

 

例えば,受益者が信託終了の事実を知らず,受託者もまた受益者に通知をしなかったときは,受託者が信託事務処理を中止すれば受益者が不測の不利益を受けることにもなりかねませんが,この場合には,受益者は信託事務処理遂行義務を履行しない受託者の責任を問うことができるというふうに考えられます。

 

もちろん,信託の終了を認めて,これを争わないということも可能でございます。

 

逆に,受託者が知らずに信託事務処理を継続したときには,事務管理に基づく有益費償還請求にとどまらず,信託関係はなお存続するものといたしまして,先ほど説明いたしました費用の償還ないし報酬の請求をすることができるものと考えられるわけでございます。

以上でございます。

 

  •  それでは,今の受託者の解任・辞任,信託行為の変更,信託の終了原因,ここらあたりで御議論いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。

 

 

 

番人

「信託財産が不動産の場合、信託目録に記録するかチェックするのは、共同受託か、受託者は個人か法人か、受託者変更、任務終了、辞任、解任の原因が法律の定めたこと以外にあるか、新受託者選任の定め・予備受託者の定めがあるか、などかな。

 

任務終了については、信託が終わる法律の定めと違う決まりがあるか、かな。後の登記が受理されるように。家族信託だとどうだろう。法律と別の定めがなければ基本的には記録しないかな。ケースバイケースだけど。」

 

 

 

  •  第57及び第61について,なるべく総論的なことを述べたいと思います。

 

まず,第57の「信託行為の変更について」でございますけれども,これは,現状,具体的な規定がないということで,実務的には非常に困ったところもございましたので,実質的なところを確保しつつ,柔軟性を得るという意味では,方向性としては非常によいことだと思っております。

 

ただ,実際にこれがワークするのかどうかということは詳細な検討が必要だというふうに思っておりまして,先ほど○○幹事からのお話にもありましたように,例えばこれに違反したときにどうなるのかというようなことも検討しなければならないと。

 

例えば,第57の2のところで,いろいろな要件としてあるわけですが,「明らかであるとき」ということが要件の一つとなっておりますけれども,この「明らかであるとき」というのがどういうときなのかということが分からなければ,実際に判断によってはそれに異議が出てくるとか,そういった紛争が生じる場合があると思います。

 

そのときに紛争が早期に終結できなければ,やはり問題になり得ますし,また,その紛争の結果,その要件に当てはまらないというふうになった場合に,それが無効になるのか,対世効を持ってしまうのかということによっては,現実の取引においては非常に大きな影響が起こりますし,翻ってみれば,実際にこれを発動しよう,適用しようとした者に対して,判断にちゅうちょが生じてしまうということになると思います。

 

 

 

 

 

例えば,典型的には不動産信託とか一つのものであったときに,複数の利害関係を有する受益者等がいまして,その一方だけが明らかでないというふうなことを言った場合に,その者だけの関係で,無効といったらよろしいのでしょうか,関係が崩されたときに,では他方の方においてどういう影響があるのかと。

 

物は不動産が一つで,それの処分について,多分,売るとか修繕するとかそういうのは行為としては一つですけれども,実際の利害関係人が二人以上いたときに一体どうなのかということについて,詳細な検討が必要なのかと思います。

もっとも,実務的には,この2の規律というのは,4で挙げられますようにデフォルト・ローでございますので,そこは実務的な工夫である程度は対応できるのかなというふうに思っております。

 

あと,ちょっと細かい話なのですが,これは他の事項にも関係するところで申し上げたいのですが,通知なのですが,多数の受益者がいるとか,多数の当事者がいるときの通知とあて先は一体どうなのかと。

 

これは,冒頭の補償請求権の終了の時点においても通知ということが出てきましたけれども,そうした通知というのは,発動する側においては,先ほど出てきました受益者集会とかいうところで合意の形成をするというメカニズムが考えられていると思うのですけれども,受動的な,通知を受け取るところのメカニズムというのは一体どうなるのかということは検討しておく必要があろうかというふうに思っております。

 

 

すみれ

「受益者の合意を形成するというメカニズムと、受益者が通知を受け取るというメカニズムか。」

 

 

次に,第61,信託終了原因ということでございますけれども,これも基本的にデフォルト・ルールを機軸としているということでございますが,ただ,一つ,これは別の委員の方も御発言されるのかもしれませんが,証券化・流動化の観点で,いわゆる58条リスク--リスクというのかどうか分かりませんが--と言われるものがございます。

 

どういうことかといいますと,証券化・流動化というのは,高格付を維持するためには,やはりそのプログラムが壊れないということが大前提であるということになります。

 

そうした場合に,裁判所の介入,いわゆる公的な介入ということがあるのであれば,一応理屈上は,そういうゴーイング・コンサーンといいましょうかプログラムの維持ということに疑問符がつくことになります。

 

そうしますと,高格付をとるときには非常に難しくなるという,そういう議論がありまして,実際上大きな話と聞いております。

 

 

すみれ

「58条リスクってものがあったんだ。」

 

 

そこで,今回の提案については,④というのは,先ほど○○幹事から,いろいろな御配慮,例えば資産流動化の議論であるとか,規制緩和の議論であるとかということも受けて,このような提案をされているということはありますけれども,これは信託の本質に絡むのかもしれませんけれども,なお,本来,証券化・流動化というプログラムについて,当初における自治的なものを貫徹することができないのかどうかということを考えますと,そういうものについては別に国家の介入というのは不必要な場合もあるのではないかというふうに思っておりまして,そういう意味で,ここでの強行法規というか国家介入というのが必要なのかどうかということは,是非とも御議論いただきたいと思っています。

 

 

また,細かい話として,利害関係人の申立権を削除したとかいうことで御配慮いただいているということなのですが,なお委託者というのが入っておりますので,そうしますと,証券化みたいな,ある意味,委託者というのはもうそれ独自としては利害関係を持たない,そういう者にまでかかる終了申立権というものを付与するものなのか,その妥当性についても個別論として議論していただければと思います。

 

  •  ほかにいかがでしょうか。
  •  資産流動化・証券化の観点から,先ほど○○委員がおっしゃった58条リスクについて,ちょっと補足させてください。

 

58条だけではなくて,57条,58条は,流動化実務において非常に悩ましい問題になっております。

 

一つの例なのですけれども,資産流動化法という法律がございまして,そこで特定目的会社という,流動化に用いる社団,会社を定めておるわけですけれども,その特定目的会社に対する持分,特定持分ですね,これを信託するという制度が資産流動化法の改正で3年前に導入されました。

 

2001年の11月でしたか,導入されましたけれども,この特定持分信託は,資産流動化法の改正・施行から1年余り使われなかったという経緯がございます。

 

その理由が,そもそも特定持分信託は解除されては非常に困る,解除されてしまうと,特定持分を委託者兼受益者である流動化のオリジネーターが保有することになってしまう,そうするとオリジネーターがその特定目的会社の議決権を行使することができる,特定目的会社をコントロールすることができる,それは投資家の利害に反するということで,用いられなかったと。

 

 

どういう形で利用されるようになったかというと,受益者の数を複数にして,形式的に57条,58条リスクを排除して利用されるようになったわけです。

 

これは極めて不自然な運用だろうと思います。現状,流動化・証券化商品の格付をしている格付機関は5社ありますけれども,現状では,特定持分信託における委託者兼受益者が1名でもいいとしているのはその5社のうち1社だけです。それ以外の格付会社は認めておりません。

 

 

 

 

もう一つ,アセット・バックト・ローン,これも先ほど申し上げたのですけれども,これも単純な形態では委託者がイコール受益者であって,受益者は一人だけなのです。

 

そういった信託財産を引当てに借入れを行うというスキームなのですけれども,これについても,解除されると非常に困るという事情がありまして,57条,58条は極めて悩ましい問題ということで流動化・証券化の関係者の間では問題意識が共有されているかと思います。

 

  •  第57の「信託行為の変更について」なのですけれども,こういう形で現実に合ったような形でのルール化をされるということについては賛成でございます。

 

ただ,先ほどからもお話があったかと思うのですけれども,特に流動化の場合は,委託者,受託者,受益者サイドの弁護士が入って,実際の信託の設定のところから途中の信託行為についてもすべてリーガルチェックをやっていくということをやっておりますので,基本的にあらゆる事態に対応した規定は設けているつもりなわけです。

 

 

しかしながら,それでもやはり想定していなかったような事態が起きて,現実には軽微な変更というのはあり得るわけでございますけれども,そうした場合に,一般的な規定として信託の目的の範囲内というのが,実際はその三者すべて弁護士がついてやっていますので,きれいな形で統一されるのではなくて,中にはタフネゴ,ハードネゴによって結構入り乱れるというようなこともあります。

 

そうしたときに,信託の目的の範囲内とか,どちらかの利益にかなうといったところが,一般的な基準として法律の中で作るのは非常に難しいかなというふうには思っております。

 

ですから,最終的にはやはり解釈の中で出てくるとは思うのですけれども,こういった部分,結構,流動化の方の実態を見ていただいて検討していただいた方がよろしいのではないかなというふうに思います。

 

 

 

 

 

二つ目に,1,2,3の規定にかかわらず,信託行為に別段の定めがあるときは当該定めに従うという規定で,説明の中では,第三者にこれを委託するということで,これについては,当然,委任を受けた者の善管注意義務の中できちんと処理されるので,そこはコントロールされるので問題はないとは思うのですけれども,ここの解釈次第では,これらの規定の中で受益者保護とか受託者保護の規定の部分が潜脱される可能性というのもありますので,どういったところで歯どめをかけるのかというところをもう少し議論しなければいけないのではないかなというふうに感じております。

 

それから,終了原因のところについてですけれども,先ほどから,58条のことについては御意見が出ておりますので,まあそのとおり,私どもも,こういった問題についての対応をされるということについて,非常にうれしく感じております。

 

 

 

 

  •  第57の「信託行為の変更について」というところについて,一言だけ。

今の御発言にもありましたが,信託行為の変更というところは本当に条文が不備で,とにかく何らかの規定を設けてというのは当然のことではありますけれども,こうであってしかるべきだということだと思うのですが,その中身ですね,この1のところで,「委託者,受益者及び受託者の合意により」信託行為の変更をすることができると。

 

まあ当たり前のことで,何ら問題がないようなのですが,私は,受託者は一体どういうような気持ちでその合意の場に出向くのだろうということを考えてみたいのです。

 

つまり,アメリカ法では,ここで受託者の合意なんて入っていないのですね。何で入っていないかというと,入っていなくて大丈夫だからだと思うのです。持って回った言い方になって恐縮なのですけれども,例えば,信託が設定されたときに,周りの人で文句を言う人がやはりアメリカでもどこでもいるわけですね。

 

 

すみれ

「文句がある人はいるんだ。」

 

 

あんな信託は無効だとかいって訴えてくるやつがいる。立ち向かうのは受託者です。受託者にはduty to defend the trust,つまり「信託を防御する義務」というのがあるので,これはちゃんとした信託ですよ,私が受託者です,無効ではありませんと,無効だという主張に対して有効だということを言う義務があるわけですね。何しろ受託者ですから。

 

 

すみれ

「信託はトラストのようなもの、だよね。」

 

 

 

 

ここの「委託者,受益者及び受託者の合意」というときに,受託者は何を胸におさめてやってくるのだろう。

 

自分は今こういうスキームの中でこれだけの報酬を得ているので,もうやめたくないよとか,あるいは,これで借入れか何かを始めて事業を始めて,今やめられたのではそれこそリスクですから,とんでもないことだという自己の利益を主張して入ってきて,委託者は自分の利益,受益者ももちろん自分の利益,それで三者の利益が合致したからこれで合意だという,そういう枠組みなんだろうか,信託ってそういうものなんだろうか,忠実義務とか何とかいうのは何だったんだろうという話を考えると,やはりちょっと違うのかなという気もするのですね。一見これは当たり前のことだと私も思っていたのですけれども。

 

 

 

 

 

それで,2のアのところで,「信託の目的に反しないことが明らかであるとき」に受益者及び受託者,これはいいと思うのです。

 

信託の目的に反しないかどうかは受託者が守りますから。それを考えて行動しないといけないという義務がありますから。

 

イで,「信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき」,これは受託者の義務ですから,だから判断していいと思うのですね。その判断についてほかの人が争うという余地はあると思うのですけれども。

 

 

すみれ

「受託者は争いになる余地があるなら、やらない気もする。」

 

 

ところが,このウとエは問題ですよね。「受託者の利益を害しないことが明らかであるとき」は,ほかの二者。エで,ここでも同じ表現がありますね。だから,そうすると,このウ,エを持ってくると,1へ戻ってきて,信託行為の変更で三者の合意というときの受託者というのは,正に自己利益を代弁する者としてこの合意にやってくるんだなという気がしますね。

 

これは信託なんでしょうか。ディールとしての信託というのはこういうものだよと,プロが三者集まってやってきているという,そういう種類の信託はいいのですけれども,我々が話し合っているのは信託の一般法であってという話になったときに,こういう話なんだろうかと。

 

 

すみれ

「ディールって取引のこと。ギフトが家族信託らしいよ。贈り物。」

 

 

この1の文言でもいいのですけれども,受託者の行為準則は,ここでは自分の利益を言うのではなくて,これで解除か終了か何かになったときに自らのところにある損害の何とかは後で出てくる問題だと思うのですけれども,ここで合意するかどうかを判断するときの行為規範というのか行為準則として,受託者はどういうふうに行動しないといけないのかというのが明らかでないというか,逆に,この規定の中からは,明らかに自己利益で行動していいよというふうに読めるような気がするのですね。

 

ちょっと私の誤解かもしれないので,質問というかコメントというか,感想かもしれないのですが,いかがなものでしょうか。

 

 

 

 

 

  •  質問と言われると,だれかが答えなければいけないことになるけれども。

 

○○委員の御理解のように,先ほどの説明もそうでしたけれども,ディールとしてというのでしょうか,受託者も固有の利益を持っているようなときに,やはりその利益を無視することはできないだろうということで恐らく原案はできているというふうに思います。

 

ただ,すべての信託がそういうものかと言われると,固有の利益を主張してはいけないというか,固有の利益が少なくともそんな重みを持っていない信託というのもあるかもしれない。

 

まあ,そうは思いますけれども,ここの案は,今,商事の信託なんかが一番典型でしょうけれども,そういうのを考えてできている案であるというふうに私は理解していますけれどね。

 

 

ポリー

「商事信託を考えてできているんですね。」

 

 

  •  忠実義務とか,利益相反的な話とか,○○委員,何の考えも,それこそ何も関係ないと思われますか。

 

 

 

  •  そうですね……,忠実義務との関係ね。

まあ,忠実義務というのは,恐らく,もちろんいろいろな場面で問題となりますけれども,一番問題となるのは,信託を行っていく上で,そのときに受益者の利益を考えて行動せよというのが忠実義務ですよね。

 

ここでは,もうもとの枠組みを変えるとか,あるいは終了させる場合も同じような問題がありますけれども,そういう場面での忠実義務というのは,ちょっと同じに考えていいのかどうか,そういうところは少し問題があるかもしれません。

 

いずれもうちょっと詳しく検討したいと思いますけれども。

 

○○幹事,何かこれは。

 

  •  基本的には○○委員がおっしゃったとおり,我々の考えとしては,やはり受託者としては,枠組みが変わったときに,この信託ではとても自分の手に負えないということもあるのではないかと。

 

そういう場合には,アメリカですと辞任するということが自由にできるわけですね,通知をすれば,今では。一応,統一信託法典の規定ではそうなっているので,それとの対応関係で,ここでは,受託者が,自分がこういう信託であればそれに乗っていけるかということの一種の同意権というのを与えるかわりに,もしも委託者,受益者が,この信託はやはり変更したいんだと,この受託者が反対するのであれば,この受託者を解任するしかないということであれば,自由に解任できるという方法でいくということで考えたわけでございます。

 

ですから,自己利益の追求というと,やはり自分の能力を考えて,善管注意義務で判断した上で,自分の任には耐えられないのであれば,それは……。

 

 

 

 

 

  •  それが信託のためでしょう。信託が自分の状態では実現できない。言葉の言いかえだと言われるかもしれないけれども,こうやって受託者の利益を反映させた上で,こういう場合に出ていっていいんだよというのはいかがなものかと思っただけなのです。

 

  •  さっきの忠実義務との関係ですよね,○○委員が一番気にされているのは。

ただ,それはやはり本来の枠組みの中で忠実義務というのが発生して……。

 

  •  私は,この問題はやはり別異に解することはできないと思います。変更して続けていくのですから。

 

  •  だけど,もともとの信託の設定の枠組みは,ある種の合意があってこういう信託だと決まっていて,それを変更しようという場面ですから,それは受託者がもともと負っていた忠実義務の範囲を超えるようなことを要求するわけですよね。今の○○委員の,終了の場面でも忠実義務があって,受益者の利益を優先しなければいけないということになると。

 

 

 

 

  •  duty to defendというのは,そういう場合は変更に抵抗することになりますから。
  •  duty to defendというのは,私も十分理解していないけれども,主として第三者からいろいろ主張されたときに受益者の利益を守るという場面だと思いますけれどね。

 

 

なかなか理論的に難しい問題を含んでいそうな気がいたしますけれども,少なくとも,今,私が答えられるのは,先ほどのような忠実義務を持ってくるのは少し場面が違うのではないかという気がいたしますけれども。

 

 

 

番人

「最初の信託契約の時に、当事者の合意で成り立つんだから、変更の時も原則として当事者全員の合意が必要っていうのは分かりやすいと思います。」

 

 

ポリー

「私もそう思いました。受益者は変わっても、信託の目的は変わらないですし。」

 

 

 

  •  確認させていただきたいのですけれども,第57の4で,信託行為に定めがあるときには,それに従うということなのですが,説明に挙がっているのは,第三者に変更を委任するとか,例えば第三者,特定の客観的なある種の能力を持った人の承認に係らしめるとか,そんなことが念頭にあるのかもしれませんが,この信託行為の定めは,受託者が自由に書きかえられるというのも当然容認するということを含んでいて,それは忠実義務と買取請求権で受益者は保護されているからいいのだという,そういうこと……,少なくとも,この4を見る限りは何も限定がかかっていませんので,そうも読めるのですが,そういう趣旨なのかどうか。

 

そんな何でも好きに書きかえていいですよなんていうことは書かないでしょう。

 

もうちょっと上手に書くと思うのですね。書くとすれば,2のところに引っ掛けて,2のイのところに「信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき」とありますから,「明らかであると受託者が判断するとき」ぐらいに書くのでしょうけれども。そういうふうに書けば,非常に裁量権を持つことができるのですけれども。

 

まず,そもそもこれは自由に受託者が書きかえるというのを許すものかどうかということの確認だけ。

 

  •  信託行為ですから,受託者の自由にというよりは,委託者と合意をすればという前提になりますが。

 

  •  信託行為に別段の定めで「受託者が書きかえられます」と書けるのですか。

 

そうすると,その後の信託の内容をどんどん変えていく権限を最初に与えられればオーケーだという,非常に不定形といいますか,そういうものも許すことになる。

 

かつ,それが一見堂々とそう書かれている。ぎょっとするようなものではなくて,普通はもうちょっと上手に書くでしょうから。

 

先ほどの,セーフ・ハーバーとしてデフォルト・ルールなら何とか書けるといったことも,突き詰めていくとそこのところに非常に引っ掛かってくるものですから,ちょっと……,全く客観的な範囲もなしに,受託者に授権できると,ちょっと何か引っ掛かりは覚えます。ただ,忠実義務の縛りと買取請求権の保護というのは,これは外せないものとしてあるのは当然の前提として。

 

 

 

 

 

  •  これは,要するに,信託行為で最初のときにどこまで決められるかという問題ですよね。そういう問題については今まで余り検討したことがないかもしれませんけれども,ある種の裁量信託だと。

 

もう受託者にいろいろな権限を与えて,信託の変更権についての権限まで最初の段階で与えてしまうと,そういうのがいいかというと問題で,無制限に何でもできるというのはちょっと問題があるような気がいたしますけれども。

 

まあ,これはある種契約一般の問題ですよね。いろいろな契約で,二当事者間で契約したときに一方の契約当事者にいろいろな権限を与えてしまうと。

 

ですから,公序良俗に反するようなものがあれば,それはだめだということになるのでしょうけれども,2のところでここまでいろいろなことを書いているので,もうちょっと具体的に限定したらどうかという御趣旨ですよね。

 

  •  論理的にも,例えば信託の目的の変更まで含むとなると,全然話が違ってくると思うのですが,それに加えて,ちょっと何か利益相反的な,忠実義務で一般でということ以外に,何かそこからかぶってくる制約というのがあるのかもしれない。

 

それは契約一般ではなくて,忠実義務とかそういったところからもあるのかなとも思ったものですから。

 

ただ,ほかの与えられている救済とのバランスもありますので,一概に絶対だめという趣旨で申し上げたのではないのですけれども。

 

 

 

 

 

  •  まあ,信託の目的というのがどの程度重みを持っているかということにも関係すると思いますけれども,信託の目的というのはかなり重みを持っていると考えると,それに反するようなところまで自由に変更する権限を与えるというのはやはり適当ではないだろうという判断はできるかもしれませんね。

 

ただ,単なる純粋な理屈だと,そういうものも変更できるような権限を与えてしまったんだということになると,それはやはりできないというわけでもなさそうな気がする。

 

まあ,しかし,ちょっと政策の問題があるのではないでしょうか。

 

 

すみれ

「政策ってちょこちょこ出てくるけど何なんだろ。」

 

 

  •  契約の話だけ。

当事者の合意によって設定する以上は,当事者が合意すれば何でもいけるのではないかということに対しては,やはり契約の本質の問題がありますので,信託というものの本質に反するようなものは,やはり信託としてできないということになる,そういう限定はあるのではないかと思いますので,蛇足ですが,一言。

 

  •  それはおっしゃるとおりだと思います。
  •  これは単純な質問なのですが,99ページの解任・辞任のところなのですが,ちょっと私が,読み方というか,説明を十分理解していないからかもしれないのですけれども,解任・辞任の規定ですね,「委託者及び受益者の合意により」云々と,例えばこれを一例にして挙げると,これが強行規定だということはないですよね。

 

  •  いや,これは3に書いてありますが,任意規定でございます。第37の。
  •  任意規定なので,そうすると,これを前提にしないような話も出てくるわけですよね。

辞任のところもそうですか。

 

  •  これも現行規定を維持しておりますので……。

○○委員がおっしゃる趣旨は,これも任意規定かという御質問ですか。

 

  •  そうです。
  •  そもそも特約で定めれば辞任できるわけです。
  •  信託行為の変更のところももちろんみんなそうだと,今の話の関連でいうとそういうことだということですよね。

済みません,ありがとうございました。

 

  •  ほかにいかがでしょうか。

 

  •  今の議論の関連で蛇足の話なのですけれども,仮に○○委員のおっしゃるとおり,第57の1のところで受託者が関与できないといった場合に,その受託者にとっての出口として辞任を行うといったときに,非常に細かい議論になるわけですが,辞任後,新任の受託者が見つかるまでの受託者の責任がどうなるのかという話が残るかと思います。

 

今,会社法の現代化の中で,社債管理会社について,辞任したときにも忠実義務がなお残るのかどうかということについて明確化するということが検討されておりますけれども,仮に受託者が,いわばやりたくもないけれども,例えば能力以上のものを要求されたりとか,いろいろな理由でこういう変更にはできないということがあったときに,いわゆる不利な状況に置かれたのにもかかわらず,新任が見つからないために,その間どうしてもリスクが出てくるといいましょうか,受託者からすると不条理なものが出てくるということになると,またそれも問題ではないのかなと。それをまた保護するために,やはりかかる変更の場合には受託者の同意が必要であるということはあっていいのかなというふうには思います。

 

もちろん,合意権というのは,受託者の忠実義務はありますから,非常にエゴイスティックな形で嫌だ嫌だと逃げ回るとか,そういうことは,多分,忠実義務の関係で抑えられるのではないかなというふうには思っておりますけれども。

 

  •  2点,質問させていただきたいと思います。

まず1点は,第57の信託行為の変更のところの6でございますけれども,ここで「信託財産の管理方法」の変更という概念が出てきておりまして,逆に,この管理方法の変更以外の,具体的には受益権の内容そのものについての変更というのは,信託の目的との関係でどういう関係に立つのか,というのが質問でございます。

 

すなわち,2のところでは,「信託の目的」という概念が出てきて,6の方では,「信託財産の管理方法」かどうかという,そういう概念が出てきておりまして,その両者の関係なのですけれども,管理方法以外の変更というのは必ず信託の目的にかかわることになるのか,それとも,こちらで言う「信託の目的」というのはもうちょっと抽象的な概念なのか,両者の関係についてお聞きしたいのが,第1点でございます。

 

 

 

 

第2点は,信託契約の中で信託契約の変更等について手当てをしていたり,あるいは先ほどの受益者集会の定めを置いていたときに,この6項が発動されることがあるのかどうか。

 

それは,信託行為の当時予見することのできない特別の事情があったと解するのか,なかったと解するのか。逆に言うと,信託契約の中で事情変更に応じた手当てをしていたのに,それをスキップして裁判所にいきなり変更等を求めるということを予定しているのかという点を確認させていただければと思います。

 

  •  まず,最初の,裁判所に対する請求の範囲と目的の関係でございますが,これはやはり,財産分配に関する条項の変更といっても,我々の考えとしては,目的の範囲内の変更にとどまるのではないかというふうに考えているところでございまして,目的の変更までするのは,信託のスキーム自体を壊すことになりますので,裁判所としてもそこまではできないというふうに考えております。

 

ですから,受益権の内容を変更するといっても,それが目的に反するという事態がそうあるような気はいたしませんが,やはり限度はあるというふうに考えております。

 

もう一つの方でございますけれども,当事者が合意していてもスキップしていけるのかということにつきましては,これは,事情変更の場合について,なぜ裁判所の関与がこの信託の局面で必要になるのかということにも関連するとは思うのですが,ちょっとこれまで十分考えたことのない論点ではございますけれども,そこはやはり裁判所に対して直接行くということも許されるのではないかという気がいたします。

 

  •  今,○○幹事がおっしゃった点の2点目については,恐らく裁判所としても関心が出てくるところだろうなというふうに考えております。
  • 一般に,この第57の6に限らずに,裁判所の非訟手続による関与というものが現在定められている,あるいは今後定められるというものが幾つか提案されているのですが,私的自治との関係で具体的にどのような場合にこういったものが必要になるのかといったあたりについては,この部会の中でもいろいろと御検討いただきたいところではございます。

 

もう一つは,裁判所としては,恐らく,何が裁判官の判断基準となるのかというのを,このような非訟の手続の場合には,可能な限り明らかにしていただきたいということになるのではないかというふうに考えております。

 

例えば,この第57の6でございますが,「受益者の利益に適合しなくなることとなったとき」とありますが,何をもって受益者の利益に適合しなくなっていると見るのか,あるいは,更に深刻なのは,変更後の契約が本当に受益者の利益に適合していると言えるのかというのを裁判所が判断するのは非常に難しい面がございます。特に,信託というものが多様になりますと,その信託ごとに照らしてそういった問題を検討する必要が生じ得る。

 

あるいは,そういうものではないのかといったあたりを考えますと,実際にこういった変更の事件が裁判所に係属いたしますと,裁判官としては非常に困るのではないかといったあたりを,率直に申し上げますと懸念しているところでございます。

 

それが,財産分配のような実体権にかかわる事項まで含まれるということになりますと余計に深刻ではないかというふうに,現在のところ,感想を持っているというところでございます。

 

 

すみれ

「裁判所も困るというか、事情を把握するのに時間かかりそうだよね。」

 

 

  •  後者の点につきましては,現行の23条でも,確かに管理方法に限られてはおりますが,「受益者ノ利益ニ適セサルニ至リタルトキハ」という条件が定められておりますので,そういうことを裁判所が判断する必要性というのは現行の規定でもあり得るのではないかという気がいたしております。

 

ただ,確かに,裁判所の判断基準が,不明確では困るだろうという問題があり得るとはこちらも考えていますが,そういうことをどう手当てするかをこれから,手続規定の在り方なども含めて検討していきたいというふうに思っております。

 

あと,これは先ほど○○幹事がおっしゃったことにも関係するかもしれませんが,当事者がある程度将来の事情変更を予定して規律を自分たちで定めているような場合については,これはそもそも予見することができない特別の事情と言えるかどうかという要件に引っ掛かってくることもあるのではないかなという気もしますので,付言させていただきます。

 

  •  信託において裁判所がいろいろなところに関与するというのは,これは,もともとの信託法がやはり英米の信託法を一応もとにしているので,いろいろなところにエクイティーの裁判所が出てくるわけですね。

 

ちょっと日本のほかの体系と比べると裁判所の負担が非常に重いということはよく分かるのですが,今回の信託法の改正でそれを一切排除するというのではなくて,やはり裁判所にも一定の役割をお願いしようと。

 

ただ,それが,基準がないがために困るということであれば,それはいろいろこの中で考えていきたいと思っておりますけれども。

 

ただ,根本的に言うと,やはり私的自治との関係,あるいは,今日,どなたかが言われたけれども,私法としての信託法という,そういう性格ともちょっと関係する問題ですよね。非常に大きな問題だと思いますけれども,もうちょっと詰めていきたいと思っています。

 

変更に関連してはこのぐらいでよろしいでしょうか。また個別の議論のところで深めていきたいと思います。

それでは,最後の部分ですけれども。

 

 

すみれ

「アメリカとかイギリスの裁判官て頑張り屋だね。信託に関する件を一杯持っているのかな。」

 

 

  •  では,「第55 私益信託における委託者の権利義務について」から説明を続けさせていただきます。

まず最初,174ページでございますが,これは私益信託における委託者の権利義務に関する提案でございます。

 

現行法のもとでは,委託者は,信託行為の当事者としての地位にかんがみまして,178ページにございますとおり,各種の権利義務を有するとされているところでございます。

 

「現行法上の根拠規定」欄のところに個別の条項を挙げておりますものは,いずれも現行法に根拠規定があるものでございます。

 

これに対して,英米法を見ますと,委託者は信託設定後は信託関係から基本的に離脱し,信託行為に別段の定めをしない限り,原則として権利義務を有しないものと言われております。

 

また,委託者に各種の権利義務を認めますと,委託者と受益者の意見が対立し,受託者としては,いずれの意見に従うべきか判断に窮する場合も予想されるなど,法律関係が錯綜し,信託事務処理の円滑な運営に支障を来す事態が生ずることとなるおそれも否定できません。

 

そこで,そのような事態を回避すべく,ここでは,信託の利益を直接享受するのは受益者であり,委託者は信託行為の当事者ではあるものの,信託行為が成立した後は信託関係は原則として受託者と受益者の間で形成されていくものであって,信託の運営に関しては第一次的には受益者に判断権を委ねるのが相当であるとの考え方に基づきまして,原則として委託者の地位を後退させ,委託者の権利義務を必要最小限にとどめるという考え方を基本にしているものでございます。

 

以下,細かな話ですが,前提としまして,報告書178ページの別表の「種別」欄にありますとおり,委託者の権能を,「信託の監視・監督的権能」,「信託の基礎的な変更に関する権利」,「法律行為の当事者としての権利・義務」,更に「財産出捐者としての地位」の四つに分類した上で検討を試みております。

 

 

まず,1の「信託の監視・監督的権能」につきましては,別表記載のとおり,現行法と比べて委託者の権限をかなり縮小しております。

 

具体的には,現行法上,委託者の権利として直接認められているもの,あるいは利害関係人の権利として--利害関係人には委託者も含まれるとして--委託者に権限が認められているもののうち,受託者の固有債権者からの強制執行等に対する異議申立権に関する16条2項,受託者に対する説明請求権に関する40条2項ですとか,受託者に対する損失てん補請求権に関する27条,29条ですとか,検査役選任請求権に関する41条2項等につきましては,信託行為で委託者自身が留保しない限り委託者には認めないとしております。

 

もっとも,委託者に対して,受益者と同等の権限を与える必要はないといたしましても,自己の設定した信託目的が達成されるか否かについて相応の利害関係を有することにかんがみまして,最低限度の権利としまして,信託財産に関する書類の閲覧請求権,受託者・受益者に対する催告権,受託者・信託財産管理人の選解任権などは,特約で定めなくても原則として付与するということにいたしているわけでございます。

 

それから,委託者は,信託行為という法律行為の当事者でございまして,委託者が信託に関する各種の権能を有することを望む場合には,これを否定する理由はございませんので,信託行為において委託者が個別に権利を留保することとした場合には,その権利を委託者にも認めるということで,別表で「×」と書いてあるものは,信託行為で定めれば留保されるということになるわけでございます。

 

 

 

次に,「信託の基礎的な変更に関する権利」でございますが,信託行為の変更,信託の併合,分割,終了につきましては,信託の枠組み自体に重大な影響を与える行為であって,受益者又は受託者が自由に行うことができるとした場合には,委託者の意図した信託目的に反することが行われかねません。

 

そこで,ここでは,委託者が信託目的の設定に最も深く関与した者であることにかんがみまして,信託の目的に反するようなものについては,原則として委託者の同意を要するものとしております。

 

また,これらについては,174ページのアステリスクの3にも付記しておりますが,裁判所に対する申立権も委託者に認めるというふうにしているところでございます。

 

それから,「法律行為の当事者としての権利・義務」といたしまして,委託者は信託契約の無効・取消しを主張できること,信託行為において委託者が報酬支払義務を負うと定められた場合にはその義務を負うこととしております。

 

また,「財産出損者としての地位」につきましては,指定帰属権利者,すなわち,信託終了事由の発生時点で信託財産が帰属すべき者として信託行為で指定されている者,こういう者がいない場合には最終的な帰属権利者となることとしております。

 

このような最終的な帰属権利者--「法定帰属権利者」と一般に言っておりますが,このような地位を認めておりますのは,これを否定いたしますと,残存する信託財産の帰属先がないことになりますが,受託者にそのまま残余財産を保有させることは委託者の通常の意思に沿うものとは思われず,むしろ財産の出捐者である自己に財産を復帰させることが委託者の通常の意思と推定され,公平にも合致すると考えられるからでございます。

 

以上で委託者の権利義務の説明を終わります。

 

 

 

番人

「委託者に関係することは信託目録に登記が必要かな。基本的には、法律で定められていることは登記しない、登記が求められていなくて後の登記に関係しないことは登記しない。他に当事者の意思でケースバイケースだろうね。」

 

 

続きまして,「第63 信託財産に係る倒産処理手続の整備について」ということで,212ページの方に移らせていただきます。

 

前回,「信託財産に対する強制執行等について」で説明いたしましたけれども,現行法のもとでは,信託財産につき,信託前の原因により生じた権利又は信託事務の処理につき生じた権利に基づく場合を除いては,信託財産に対して強制執行することができないとされております。

 

この規定は信託財産に独立性を付与する中核的な規定であって,この報告書においても,同条の趣旨をそのまま採用しているところでございます。

 

このように信託財産には独立性が付与されておりますが,現行法上,信託財産が倒産状態になった場合についての制度は設けられておりません。

 

そこで,信託財産に係る倒産処理手続を設けるべきか否かが,特にそれだけのニーズがあるか否かという観点から問題となり得るところでございます。

 

ところで,信託財産とともに受託者の個人財産も責任を負う原則的場合を考えてみましても,双方の財務の内容が悪化しつつある場合には,信託債権者としては,とにかく信託財産だけでも財務状態が良好なうちに清算してしまいたいという正当な期待を有するものと考えられます。

 

前回,「受託者の有限責任の許容について」というところで御説明いたしましたが,信託財産に責任財産が限定された有限責任信託債権を認めるといたしますと,そのような債権者の公平弁済を確保するという観点から,倒産処理手続を整備するニーズはより高まると言えると考えられます。

 

また,信託財産に係る倒産処理手続を整備することによって信託債権者間の公平弁済が確保されることになり,土地信託など事業性の高い信託の運営がより円滑に進むことになるといったメリットがあるのではないかという指摘もございます。

 

なお,法的には権利義務の帰属主体ではない信託財産に破産能力を認めることができるかが問題になりますけれども,213ページの(注3)に記載いたしましたが,既に権利能力が認められていない相続財産についても破産能力が認められていることにかんがみれば,この点は問題とはならないと考えられます。

 

 

番人

「なるだけ使わないように整備しておくってことだと良いと思います。」

 

 

以上のような点を踏まえまして,ここでは,太字の本文に記載しましたとおり,信託財産に係る倒産処理手続,特に破産手続を設けるとの方向性を示したものでございます。

 

ところで,この中で重要なのはむしろアステリスクの点でございまして,まず,アステリスクの1でございますが,これは,破産手続に要する費用や時間的コストの観点から,破産手続と同様な厳格な手続を設けるまでもなく,より簡易な手続を設ければ足りるのではないかとの指摘を踏まえた問題提起でございます。

 

仮に簡素化を図るとすれば,214ページの(注4)に記載した①,②,③というような方法があると考えられますし,更には,民法上の限定承認者による配当弁済手続を参考にいたしまして,受託者に信託行為の定めに従った弁済義務を課すといった程度のことも考えられるかという感じがいたします。

 

もっとも,この点に関しましては,簡素化を図ることによって公平弁済確保の観点から劣るところがあるのはやむを得ないといたしましても,いかなる部分を簡素化するかの判断は決して容易なものではございませんし,現在の裁判実務におきましては,破産手続は小規模な事件についても柔軟に対処できる運用がされていると評価することも可能であることに留意が必要かと考えております。

 

それから,アステリスクの2でございますが,一般的な信託においては,信託債権が複数生じ,信託財産によって賄うことができない状態が生ずることはまれであると考えられること,あるいは,広く信託一般について信託財産の破産能力を認めるときは,典型例として想定している信託があたかも事業性のある信託であるとの誤解を生じかねない等の観点を踏まえまして,倒産処理手続の対象を信託一般にすることとはせず,例えばアメリカ連邦倒産法がビジネス・トラストに限って倒産適格を認めていることを参考に,事業を目的とする信託に限定すべきではないかとの考え方があることを示したものでございます。

 

 

 

 

 

もっとも,事業を目的とする信託ではなくても,設備信託等におきましては,信託財産が複数の第三者に損害を与えることもあり得るわけでございまして,倒産処理手続を設ける必要がないとは言えないという指摘もございますし,事業を目的とする信託であるか否かというのは必ずしも明確に判断が可能なものとは言い難いわけでして,このような限定を付すことによってかえって,ある信託が事業目的信託かどうかという入口で争いが生じて手続が遅延するおそれがあるという懸念がございます。

 

最後に,アステリスクの3でございますけれども,これは,事業活動の受け皿あるいはビークルとして信託を利用することも考えられることから,その事業を存続させるというニーズにこたえるという観点に基づきまして,清算型の倒産処理手続に限らず,再建型の倒産処理手続についても設けるべきではないかとの問題指摘を踏まえたものでございます。

 

相当程度の場合には,破産と営業譲渡を組み合わせることをもって対処できると思われますし,清算型に加えて再建型まで必要かということにつきましては,そのニーズも踏まえまして,慎重に検討していきたいと考えているところでございます。

 

最後に,227ページの「いわゆる目的信託について」の説明を簡単にいたします。

 

「目的信託」と申しますのは,広義には,公益信託も含めて,受益者を確定することができないような信託一般を指すと思われますが,特にここでは,公益信託にも当たらず,受益者を確定することもできない信託をいわば狭義の目的信託と称して,その取扱いについて検討するものでございます。

 

 

 

なお,米国では,近時,私益信託であっても,信託目的が明確であれば,受益者が不存在であっても信託を有効として,これをパーパス・トラストと称するようでございまして,「目的信託」という用語はこれに倣ったものでございます。

 

ところで,我が国の通説的な見解によりますと,公益信託,すなわち「祭祀、宗教、慈善、学術、技芸その他公益を目的とする信託」が有効に成立するためには,確定可能な受益者が指定されている必要はない,むしろ指定されていてはならないというのに対しまして,私益信託が有効に成立するためには受益者が確定可能でなければならないとされてまいりました。

 

すなわち,受益者を確定することもできず,公益目的とも言えない,その意味で中間的な信託,ここで言う「目的信託」に当たりますが,このようなものは有効な信託とは認められないということになるわけでございます。

 

 

 

 

 

一方,法人制度を見ますと,公益法人,営利法人のほかに中間法人がございまして,中間法人の定義を見ますと,「社員に共通する利益を図ることを目的とし,かつ,剰余金を社員に分配することを目的としない社団」と定義されておりますように,社員が中間法人の活動から得られる剰余金を取得することができず,しかし法人の活動自体は公益目的に限定されないわけでありまして,法人の世界においては,具体的な利益享受者がおらず,公益目的とも言えない,ここで言う「目的信託」に類似する形態が認められているわけでございます。

 

そうすると,社会的・経済的ニーズへの効率的対応の可否,程度という観点から,法人制度と隣接し,いわば競争関係にあります信託制度においても,受益者不確定・非公益の目的信託を認めるべきか否かが問題とされるべきだというふうに考えられるところでございます。

 

 

 

 

 

 

 

なお,政府の規制改革・民間開放推進会議におきましては,英米法におけるチャリタブル・トラストの創設というのが要望されておりますが,ここで言うチャリタブル・トラストが,確定した受益者もおらず,行政官庁の許可も要しない信託ということであれば,目的信託の創設はこの要望に相当程度かなうということになるようにも思われるところでございます。

 

以上のような観点から,ここでは,消極案たる甲案と,積極案たる乙案を両論併記したものでございます。

簡単に両方の考え方を御説明いたします。

 

まず,甲案というのは,現行法の考え方を維持し,信託とは受益者のための制度であり,あくまでも受益者の存在が中核なのであるから,受益者を確定し得ないような信託はあくまで例外的・限定的であるべきである,公益信託と呼ぶに値するものに限るべきであるとして,目的信託を有効な信託とは認めないものでございます。

 

法人制度との関係では,信託は法人とは異なる制度であって,両者をパラレルに考える必要もなく,法人制度によれば可能であるからといって信託でも可能とする必要はないと考えることになります。

 

この考え方によりますと,227ページに設例を設けさせていただきましたが,例えば,ペットを飼育するための信託ですとか,自己の住居を記念館として管理してもらう信託の例で言えば,ペットや記念館の所有者を受益者とするような契約上の工夫をして,これを私益信託と構成することができない限り無効ということになるでしょうし,また,特定の企業の発展に功績のある人に奨励金を出す信託という例では,受益者の確定可能性を柔軟に解釈して,これを私益信託と構成するか,あるいは,公益の概念を柔軟に解釈して,これを公益信託と構成するかのいずれかによらない限りは無効な信託ということになるかと思います。

 

 

すみれ

「ペットの信託は、行政書士の先生が目的信託によらない仕組みを作って頑張っているんだよね。」

 

 

 

これに対しまして,乙案は,現行法の考え方を修正し,受益者不確定・非公益の目的信託をストレートに有効な信託として認めるものでございます。

 

法人制度との関係で言えば,法人において可能なものは信託においても可能とすべきである上に,例えばペットの信託の例などについて見ますと,わざわざ法人を設立するまでもなく,既存の法人格を用いた信託というスキームをより簡易に構築することを妨げる理由はないと考えるものでございまして,法人と同等又はそれ以上に信託の柔軟性を拡大しようというものでございます。

 

他方,この考え方によりますと,受託者をいかに監督するかが問題となってまいりますので,委託者のほか,信託管理人による監督が可能となるような制度設計をすることも必要となってくると思われます。

 

ちなみに,米国の統一信託法典におきましては,動物の世話のための信託,あるいは特定の受益者が存在しない非公益信託,例えば墓地の管理というようなものも有効かつ強制可能な信託として設定し得ることが認められているということを付言させていただきます。

 

 

すみれ

「強制可能な信託ってどんなことだろ。」

 

 

 

以上でございます。

  •  それでは,最後の部分ですけれども,第55,第63,第69,ちょっといろいろ違った問題を扱っておりますけれども,ここで御議論いただければと思います。

 

  •  それでは,1点質問と,2点意見ということで。

まず,第55の「私益信託における委託者の権利義務について」ですけれども,確認といいますか質問なのですけれども,こちらの方の条文の部分と説明の方を見させていただいて,ちょっとよく分からないのは,これは完全なデフォルトルールを規定されたのか,それとも,最低限度の分の委託者の権利義務を定めて,そこにプラスオンしていくものだけの片面的な形のデフォルトルールなのかというのを,まずちょっとお聞かせいただきたいのですが。

 

 

 

 

  •  御質問の趣旨は,この別表にありますとおりですが,「○」と書いてありますのは当然認められて,「×」というのは信託行為で定めないと認められないと。
  •  それでマイナスしていくということは……。
  •  減らすということですか。

 

  •  最低限度のということで規定されているということであるとしますと,先ほどの信託行為の変更のところか終了のところで,委託者の方の関与,特に裁判所に対しての申立てというところもございますので,こちらの方は委託者の権利をゼロとするというような形の自由度もできれば認めていただきたいなというふうに考えます。

 

  •  まあ,受益者と違いますからね。だから,委託者は,これは一応「○」となっていても,マイナスすることはあっておかしくないと思いますけれども。まだここには十分書いてないと思いますけれども,もうちょっと検討したいと思いますけれども,それはあり得るのではないでしょうか。

 

 

 

 

  •  それと,次の第63の「信託財産に係る倒産処理手続の整備について」のところでございますが,ここの部分につきましては,責任財産を限定したような形の債務というのがふえてくると思いますので,こういう規律は是非ともお願いしたいと。

 

それと,その場合,厳格に公正・平等弁済を目指すということと,あとは簡便化というのと二つありまして,それでどうなんだと言われますとあれですけれども,できるだけその両方を満たすような規律を,ちょっと手前勝手ですけれども,お願いしたいなと思います。

 

  •  ○○委員と発言が重なるところがありますけれども,第55,第56,第69について,総論的なことを述べたいと思います。

 

第55についてなのですが,やはり委託者の権利というのを全部なくしてしまうということをデフォルト・ローにできないのかということでございますけれども,これは,委託者がどこまで関与するかという本質論のことだと思うのですけれども,例えばこういう金融商品があると思います。

 

とりあえず信託をつくっておくと。これは要保護性の関係もあるのですけれども,もう本当にノミナルな金額で信託をつくりますと。

 

その後,受益者が追加出資ということでどんどんお金をふやしていくと。そのような信託というのは,およそ委託者というのはある意味ショバ代を払っているだけであって,その後の経済的な利益というのは余り関心がないというようなことがあると思います。

 

そのようなものに対しても,かかる監督義務等を与えるのが妥当なのかどうかと。もちろん,物によっては,必要ないということを委託者が当初デフォルト・ローということで信託行為に定めてあるのであれば,要らないという考え方は十分成り立ち得るのではないかというふうに思っております。

 

 

番人

「ノミナル?ショバ代。どうしてそんな金融商品を原則として法律にしないといけないんだろ。」

 

 

第63の信託の倒産ということでございますけれども,これも,基本的に非常に選択肢がふえたということで,基本的な方向としては歓迎すべきだと思うわけですが,実務的な観点からすると,やはりどこまでニーズがあるのかということと,これを導入することによるデメリットというのはどうなのかということをもう少し具体的に検討する必要があるのではないかと思っております。

 

それに従って,御議論がありましたように,対象を事業信託とか設備信託に限るのかとか,また手続をどれだけ簡素化するのか,また再生型が必要なのかどうかということを検討すべきだろうと思っております。

 

ここで1点,ちょっと問題を提起したいのは,受託者との関係でございますけれども,通常の倒産であれば,DIPといいましょうか,債務者自体ももう何もする能力もない,またさせるのが適当でないという状況だと思いますけれども,信託の場合は,一応は受託者はまだ健全であるし,またその能力もある,また公平義務とかそういうのを課しても全然おかしくないというようなことだと思うのですけれども,たまたま信託財産が債務超過等にあるといったときに,あえて破産制度みたいな管財人という制度を導入する必要があるのかどうかということでございます。

 

また,仮に管財人を入れた場合に,では受託者と管財人との関係は一体どうなるのかと。また,その管財人が出てきた場合に,今度は受託者の義務が一体どうなるのかと。

 

つまり,管財人がどんどんやっていって,受託者がある意味それを所与として行動したときに,非常に困った状況にならないのか。受託者としての善管注意義務ないしは忠実義務に対して板挟みになるようなことが生じないのかどうかということも分析する必要があるのではないかと思っております。

 

 

 

 

 

それをもしいろいろ考えるのであれば,あえて破産制度ということを入れなくても,例えば,今,特別清算ということについては倒産法部会でも検討されているところだと思いますけれども,その特別清算的な考え方とか,また破産の簡易的なものとかいうことをいろいろ検討することも可能ではないのかなというふうには思っております。

 

第69の目的信託についても,実質的な観点からは,選択肢が増えるということは歓迎すべき方向だとは思っておりますが,やはりここでもニーズとデメリットをよく検討する必要があると思います。

 

先ほど,ニーズとしてはチャリタブル・トラストというのが簡易になりやすいということだと思います。それは確かにそうだとは思いますけれども,それが本当に必須なのかどうかということと,逆にそのデメリットしては,これは想像の話ですからよく分かりませんけれども,例えば脱税的なスキームにこの目的信託というのが使われないかどうかと。例えばの話ですけれども,お金持ちが,とりあえず信託する,それで家族を受益者と指定すれば,そこでいろいろな税金がかかってしまうということですが,とりあえず目的信託にしておけば,かからないと。

 

ところで,信託財産とその家族との間で,いろいろな,労務提供契約とかを結んで,どんどんその信託財産から家族にお金が流れていくと。もちろん,これは別途の税金の考慮が働くことだとは思いますけれども,かようないろいろな,税金とかほかの法秩序の潜脱に使われないかどうかということは,他国の例もよく見つつ検討すべきだなというふうには思っております。

 

 

 

 

 

 

  •  破産の件は,むしろ○○幹事の方がお詳しいと思いますけれども,最初の委託者の件は,デフォルト・ルールとしての委託者の権利をゼロにするというのは,ちょっとやっぱり極端だと思うのですね。

 

ここに書いてある表は,丸がついているところは委託者に一応与えたらいいだろうと。それで,これを外すことができるというふうにしておけば,先ほどのような例の場合には一応足りるわけですね。そういうことができる。

 

ただ,ちょっと細かく見ますと,例えば信託契約の無効・取消し,これはちょっと違った観点ですけれども,こういうのまでだめだというのはちょっと違うかもしれませんね。

 

それから,最後の目的信託ですけれども,これは,今,他方で議論している非営利法人の中で,非営利の財団というのが議論されていまして,これが一番近い。まあ現在はないところですけれども。

 

ここでも同じような議論があって,脱法目的に使われるんじゃないかとか,あるいはメリットというかニーズの方がそんなにないんじゃないかということで議論はされているのですが,そういうものもあっていいのではないかということで一応議論は進んでおります。

 

脱税に関しては,これは法人であれば,相続税法でしょうか,たしか規定があって,公益法人の場合ですけれども,公益法人という形をとっていても,個人が利益を享受しているようなものについては課税することができるという規定が,たしか相続税法だか何でしたか,税法にあるのですね。

 

こういうものと同じようなことが信託の場合にもできれば,脱税の問題は解決できるのだと思います。ただ,ニーズとかそういうものについては,もうちょっとここで検討したらいいかと思います。

 

 

 

 

 

倒産の受託者の権限はどうですかね。

  •  倒産につきましては,まだ細かな検討をしているわけではございませんので,とりあえず,この報告書にありますとおり,倒産手続を整備するニーズはあるのではないかという感触を示しているというところでございます。

 

ですから,そもそも倒産手続・破産手続を入れてどの程度の厳格さを設けるかということも問題ですし,もしもこの法制審の場でそこまでのニーズはないのではないかということになれば,より簡易な制度を設けるという選択肢も十分あるかと思います。破産手続を入れたときに,受託者と破産管財人の権限がどうなるかというのは,信託財産が破産したような場合に,そのまま受託者がそのままその職務を行うことはなく,破産管財人一本にするのではないかと思います。

 

 

 

 

 

  •  目的信託について,先ほど○○委員のおっしゃいましたことを若干補足させていただきます。

 

○○委員御紹介のとおり,非営利財団についての検討が進んでいるわけですが,その中でも,どんな場合でも認めていいんだろうかと,一定の目的や事業による制約が必要か否か,それから,そもそも非営利財団法人というものを認める必要もないんじゃないかというような意見もあったかと思いますので,そちら側の流動的な段階で,余りここで法人との平仄の方ばかりを考えるのも,向こうが変わるとこっちも変わるかということになってしまうかと思います。

 

そこで,むしろ実質をこちらはこちらで考えたらいいと思うのですが,もう既に出ました議論の中で,脱税というのは,多分,税はしっかり取るのだろうと思いますけれども,それ以外に,例えば,財が固定化してだれも手を出せないという財を作るのが適当かとか,ガバナンスが不在になるんじゃないかとか,あるいは相続法秩序との関係が問題になるんじゃないかというような論点があろうかと思います。

 

 

 

 

  •  第63の「信託財産に係る倒産処理手続の整備について」ですが,4点申し上げたいと思います。

 

第1点目は,倒産法部会でどういう議論があったかということを一言確認しておいた方があるいはいいかもしれません。この中には御関係の方もたくさんいらっしゃいますけれども。

 

倒産法部会破産法分科会で2年ほど前に議論をしたときには,正にこの(注1)に書いてあるようなことを議論して,破産能力を認めるということはしないという結論になったわけですけれども,しかし,その前提が変わったということで議論の必要が出てきたということかと思います。以上が第1点です。

 

二つ目に,212ページのアステリスクの1にあるところ,「破産手続と同様の厳格な手続」というのはちょっとよく分かりませんけれども,要するに,破産でいくのか,より簡易な別の手続を作るのかということかと思いますけれども,これはもちろん,一方では,ニーズがどこまであるのかということかと思いますが,逆に,別個に簡易な手続を作るニーズがどのぐらいあるのかという観点から考えてもいいのではないかと。あるものは使う,破産は破産で十分簡易に使えるようにもなっていますので,わざわざ別に簡易なものを作る必要があるのかという角度から考えてもいいのかと思います。

 

 

 

 

 

214ページの(注4)の3行目には,強制執行等の中止・禁止等の制度のないものを作るかどうかというのがありますが,欠乏した財産を公平に分配するという破産にとって最も本質的なものを欠くような制度をつくってもしようがないのではないかというのが,やや蛇足ですけれども,この(注4)を読んで感じた次第です。以上が第2点です。

 

第3点ですが,今申し上げました,破産手続を使いながら,必要な特則を置くというときに,どういう特則があるか。これはこれから考えなければいけないことで,今ここで細かく詰める必要はないとは思いますが,例えば申立権者をどうするのか,それから開始原因をどうするのか,それから手続に複数の財産の範囲がどうなるのか,これは破産で言えば破産財団の範囲ですし,仮にこの後出てまいります再建型,例えば民事再生を使うとすれば,どういうことになるんだろうか,それから,先ほど出てまいりました財産の管理主体や権限ですね。

 

先ほど○○幹事もおっしゃっていましたけれども,管理型である,つまりもともとの財産の管理・処分権限者にかわって手続機関が管理・処分権を専属するタイプの,典型的には破産管財人のようなものを入れるということであれば,それは従前の受託者の財産の管理・処分権はなくなるというか,管財人に全部移ると考えるのが,欠乏した財産を公平・平等に分けるための手続を行うという観点からは最も自然なんだろうと思います。以上が第3点です。

 

 

 

 

 

第4点,最後ですが,再建型の手続についてですけれども,これもまた,一方では,どのぐらいニーズがあるのかということで,民事再生を使うのかどうかということですが,他方では,再建型といったときに一体何をイメージしているのかと。

 

再建型という場合に,従前の事業活動を続けるのかどうか,あるいは法人格が続くのかどうか,あるいは弁済原資が何なのかと,再建型といってもいろいろな角度から物を考えられるわけでして,通常の事業法人の倒産で言うと営業譲渡型の,中身はそのまま続けながら別の枠のもとに移す,つまり,これで言えば,いったん破産で信託を終了させて,その信託の中身を別の信託で引き続きさせるということでもいいのか,あるいは,事業会社の倒産になぞらえて言えば,法人格をそのまま続けさせることに意味があるのか,その辺のニーズを洗う必要があるのではないかと思います。もちろん,この再建型の場合にも,同じように,いわゆるDIP型,つまり従前の受託者がそのまま権限を続けるタイプのもので足りるのか,あるいは,更に再生手続における管理命令のような制度が要るのかということも考える必要が出てくるのではないかと思います。

 

 

 

 

 

  •  倒産処理に関連して一言申し上げたいと思います。

受託者の有限責任が認められる場合で,信託債権に比較して信託財産が過少となる場合が,倒産処理を必要とする場合でありますが,更にそれに信託財産の純資産額を超えて受益者に配当が行われた場合というのを掛け合わせて考えますと,もう一つ問題が生じてくるように思います。

 

すなわち,信託財産の純資産額を超えて配当を受けた受益者が,受けた配当の範囲で信託財産に返還する必要がないか,あるいは,信託の債権者に対して直接責任を負うことを認めてはどうかというようなルールが考えられるだろうと思います。

 

ちょっとこの大部の報告書,注とかアステリスクのところを注意深く読んでいませんので,どこかにそのことが触れられているかもしれませんが,テークノートしておいていただきたいという趣旨で申し上げたいと思います。

 

これは,受託者の第三者責任,第29ですが,前回やったところですけれども,これが受託者の有限責任が認められることに対する対応とされていますが,これとともに今の問題は考えていいのではないかと思います。

 

そして,純資産額を超えて受益者に配当が行われるということは,例えば第27の受託者の受益者に対する物的有限責任の裏側の問題になるのだと思いますが,それとも関連してくると。

 

そして,そもそも,第28の受託者の有限責任をこの報告書で許容しているということから出発する問題で,先ほど○○委員がおっしゃった,複数のところに関連する問題で,小さなことですけれども,ひとつ検討したらいいのではないかと思います。

 

 

 

 

最後に一言申し上げますと,ただ,私は,純資産額を超えた配当が受益者に行われた場合には,それを取り返してもいいのではないかなという方向で考えるのですが,しかし,先ほど受益者に対する補償請求権が話題になったときには,金融商品としての受益権を考えると,受益者が責任を負うということは余り現実的でないという問題があったように思います。その問題と今の問題は,原因というか背景というか,法的な性質は異なるわけですけれども,実質的には共通する。受益者が後から払いなさいと言われるということでありますので。したがって,その面からも考えなければならない問題なのではないかなと思います。

 

  •  補償請求権がある場合には,受益者の有限責任といいますか,括弧つきの「有限責任」ではあるけれども,それに関連する問題ですね。
  •  今日は本当はしゃべり過ぎなので,次回からは○○委員から注意があるかもしれません。

済みません,2点です。

 

 

 

 

1点は,178ページの表の,いわゆる委託者の権利義務のところで,これは補足のつもりなのですけれども,ここへ丸が幾つかついていますね。そこの8番目の「受託者の解任」のところにやはり丸がついていて,でも,先ほどの議論で,解任のところは信託行為で別段の定めをすればどうのこうのと前の99ページに書いてあるわけですから,実際にもこの丸のところが最低限度で強行規定的になっているかというと,そこまでは行ってないんだなということの確認が一つ。

 

二つ目は,目的信託のところなのですけれども,目的信託というのはよく分からないのですが,本当はアメリカで始まったわけでもなくて,いわゆるオフショアで始まったものという話なのですが,需要は3点。

 

 

 

 

 

第1は,アメリカの統一信託法典は,やはりペットと永代供養ですね。アメリカ人というか,英米の信託というのは,まだ生まれていない存在,まだ生まれていない子供というのかな,そういうのも受益者になれるのに,死んだ人はなれないのですね。どういう不平等なのか本当はよく分からないのですが,永代供養というのはやはりベネフィシャリーがいないという話になっている。

 

それで,私はペットなんて持っていませんから全然理解がないのですが,やはりアメリカ人にはこれはものすごく需要があるんだよと,だから認めることにしたというので,ここだけでも,もしかしたら日本においても,ペットの大好きな人はたくさんいますから,信託がここで爆発的なブームになるかもしれない。これを認めればですよ。こういう形のものだという話にして。いや,本当は分からないのですけれども,そういう可能性はやはりある。

 

 

すみれ

「ベネフィシャリー?」

 

 

 

二つ目はセキュリタイゼーションの話で,何でチャリタブル・トラストというのをケイマンまで行ってどうのこうのなんだろうというので,あれが,チャリタブル・トラストではなくて,例えばジャージーではパーパス・トラストでいいですよという話になってきているわけですね。だから,セキュリタイゼーションの一環の中でどうのこうのと,この需要がどの程度あるのかというのは,これは日本での問題でもあるだろうと。

 

 

すみれ

「セキュリタイゼーション?」

 

 

三つ目はオフショアの話ですけれども,本当はベネフィシャリーがいるんだけれども,ベネフィシャリーを隠しておきたい。

 

隠しておきたいというのは,そういうベネフィシャリーが実はこんなにいっぱい財産を持っているということを隠しておきたい場合もあるし,もしかしたら税の関係もあるかもしれないし,相続法制の何とかというのもあるのかもしれないので,この三つ目はやはり問題だと思うのです。

まあ,目的信託を認めるにしても,どういう形でというのはやはり考える必要があるのかなというふうに思っております。

 

 

 

  •  ペットが好きな方を敵に回すつもりはないのですけれども,ここの目的信託に関してなのでございますけれども,現行法ないしは新しく想定される公益信託というものはどういうものなのかと考えますと,公益信託として設定されているときには,受益者というものが確定されていない状態にあるわけですけれども,英米の本を読んでいると,例えばシェークスピアがだれであるかということを研究する人に対してお金を与える信託をとか何とかいう話が書いてあったりしますけれども,そういうふうなことを応募してきた人とか,あるいは選定された人に対して金銭を給付するという形で受益をさせるということが行われるわけですよね。現行法の公益信託というのも,最終的にはそういうふうに,だれかが出てきて,その人に金銭なり現物なりが給付されるということが前提になっているというふうに思うわけです。

 

 

 

 

 

しかるに,227ページに二つ,「権利能力の無い者が実質的に受益者に相当するタイプ」というのと,「受益者として確定することはできないが,何らかの利益を受ける者を想定することができ,信託目的が必ずしも「公益」とは言い得ないタイプ」と。後ろの方は,現行法の定めている公益ではないというだけの話であって,最終的にはある特定の受益者が出てきて,その人に金銭が給付されるということだと思うのですけれども,前者は何を意味しているのかがよく分からなくて。仮にペットを飼育するための信託として,例えば私がペットを買っていて,死ぬときにこういう信託を設定して,その後のペットの所有者が当該信託に,私がそのペットをかわいがっていますので私に金銭を給付してくださいというふうにいいますと,これは後ろの話になってしまうわけで,これは直接に受託者がペットをかわいがるとかいうことを前提にしているのか,それがよく分からなくて。

 

 

すみれ

「なるほど。目的信託でペットを考えるとそうなるよね。」

 

 

 

 

もしそうならば,現行法の公益信託とは少なくとも並ばないものであって,甲案,乙案にしても,「公益信託以外の信託にあっても」という感じになっていて,公益信託であるならば一応現在でもできるけれども公益信託が狭いので,という書き方になっているのですが,本当に前者は公益信託と並び得る性格のものなのかというのが私にはよく分からない。

 

そして,私は,後ろのタイプ,つまり,「特定の企業の発展に功績のある人(従業員に限られない)に奨励金を出す」という,公益でない,しかしながら設定時には受益者が確定できないというタイプの信託を認めるというのはよろしいのではないかと思うのですけれども,永代供養とかペットは,率直に言うと,どうでもいいんじゃないかという気がしてならないのですが。

 

 

 

  •  若干補足です。

○○幹事から御指摘のあったことなのですけれども,倒産制度を何らかの形で導入するというのは,有限責任との関係で,信託財産が細っていくときに債権者がとめられないのは問題だという形で,有限責任というふうにフレームワークを変えた,ちょっと大きな原則を変えたところから出てきた問題で,その並びで言うと,受益者への配当のようなところについてももうちょっとちゃんと手当てする必要があるのではないかと,そういう御趣旨だったと思うのですが,そこまでは全面的にそのとおりだと思うのですが,そこから先の解決で,受益者への返還ということについて言われたかの……。

 

 

  •  信託財産です。
  •  信託財産への,受け取った受益者からの返還を言われたと思うのですが,それも考えられなくもないのですが,恐らく,一番簡易かつ実効性のある解決方法としては,違法配当的なことをした受託者に対する責任だと思うのですね。
  • だから,有限責任を一定の条件で解除するというのが一番実効的な解決だと思うので,266条ノ3的な第三者責任もありますけれども,それはむしろ配当のようなのではないタイプのものを念頭に置いた救済と見て,むしろ有限責任の限界,例外の解除要件のようなものとして考えた方がよりいいのかなと思います。とりわけ,受託者が,受益者が有限責任というふうに,その保証で売っていたときに,後で返せみたいなのが,ちょっと引っ掛かる。
  • 会社の場合も,違法配当の場合は株主に返せと言えるので,それとの並びではそれでいいのかもしれませんけれども,取締役の個人責任と違って,受託者の方はもっとそこの方に重きが置かれてもあるいはいいのかなというふうな印象を持っています。

この辺は,追い追い,また様々な方法を,バランスをとってだと思うのですけれども,若干補足させていただきました。

 

 

 

 

 

  •  恐らく,受託者の有限責任というのを認めたときに出てくる問題で,これもいろいろ詰めなければいけない問題点がたくさんありますので,そこでまとめて議論したいと考えております。

それから,目的信託は,これは本当にいろいろな御意見があると思います。ここでは,要するに,受益者のいないタイプの信託だけれども,公益とは言えないような信託,そういうものについてどの程度ここで考えたらいいかという問題提起として出ているわけですね。ですから,甲案と乙案両方出ているわけですが。

 

ただ,○○幹事が言われたような,後で給付を受ける人間が出てくるというタイプは,その給付を受ける人間に,どこまで受益者としてのいろいろな権能,監督的な権能とかそういうものを与えていいのかというのは,それ自体一つの問題だと思いますし,それから,言ってみれば受益者が全然いないタイプですか,ペットの方は。これはちょっとよく分かりません。

 

○○委員は非常に重要な一つのニーズであるということで,そういう考え方もあるでしょうし,ペット以外の分野でも,建物みたいなものについて,死後,記念館として管理してもらうというときに使えなくはない。ただ,そういうものが適当かどうかというのが大議論があるので,これも含めて,またいずれどこかで議論していただきたいと思います。

 

ただ,公益法人,あるいは中間法人といいますか,非営利法人の方の議論,これは一応切り離して考えることはできるのですけれども,やはり何かある程度そっちをにらみながら議論した方がよさそうに思いますので,そんな形で議論していければと思います。法人の方は,恐らく12月ぐらいにはある程度方向が決まってきますので。

 

少なくとも私が答えられるところはそのぐらい答えましたけれども,何か○○幹事の方でありますか。

 

 

 

 

  •  配当規制の問題について若干御指摘がありました。部内で,配当規制の考え方を入れることも検討いたしましたが,我々が想定しているのは,決していわゆる配当に限らず,民事信託も含めて信託一般の問題ですので,配当という場面に特に注目して規律を設けることが妥当かどうかという問題意識がございまして,落としているということでございます。ただ,本日問題指摘をいただきましたので,また改めて,その点,規定を設けるべきかどうかにつきましては検討いたしたいと思います。

あと,払った配当を取り戻すというのは有限責任の観点から問題があるという御指摘もございましたが,費用などは確かに,例えば受託者が負担した費用を受益者に行けるということになると,正にその有限責任の問題が出てくると思うのですが,受け取ったものを恐らく民法の不当利得の問題として返すぐらいでしたら,それはいわゆる補償責任の有限・無限とは直接関係ないのではないかなという感じもいたしておりますので,ちょっと別途の観点から,そういう規律を設けるべきかどうかについては考えたいと思っております。

 

  •  ほかに御意見ございますでしょうか。

 

 

 

 

  •  今の○○幹事のお話を伺っていて,それからまた,今日一日の御議論で強行規定をどこまで設けるかという御議論がかなりあったかと思いまして,それと先ほどの○○幹事の話も関係があるのかなと思って聞いていたのですけれども,そもそも,信託法という民法と並ぶような信託の基本法,そこの中でいろいろな信託があるわけですけれども,一般投資家が入るような信託もあれば,全然そうでないものもある。そのときに,信託法という枠の中でどこまでをカバーし,そして,既に投資信託とかいろいろな信託について特別の法律があるわけで,そこで一定の投資家保護みたいな規定も設けられているわけですけれども,一般法でどこまで取り込んで考えるべきで,特別法と一般法との切り分けをどこで分けたらいいのかなという問題があるのではなかろうかと。

今日は総論の議論ですので,そういうのがちょっと気になったものですから,一言発言させていただきました。

 

 

すみれ

「信託法は民法と並ぶような法律なんだ。すごいね。」

 

 

  •  それは本当に難しいといいますか,一方で一般法ではあるけれども,特別法ですべての商事的なものをカバーしているわけでもないので,そういう意味では,商事的なものも一応一般法でもってある程度やっていけるようなものも必要だし,しかし,一般法の中には,全然そういうものとは関係ない,実際今は余りないですけれども,民事的な信託というものもやはりあり得るし,今後,そういう分野が伸びていく必要もあるし,そういう意味で非常に範囲が広いようで,しかし余り何でもかんでも取り入れてもおかしいし,そこら辺が悩みの種ですね。○○幹事のおっしゃるとおりだと思いますので,これもだんだん詰めて議論していきたいと思っております。

ほかに何か。

 

ポリー

「民事的な信託というものも出てきましたね。」

 

 

 

  •  先ほどの○○幹事のお話を聞いて,信託法で,やはり立場が全然違うところからの--信託の種類というのはいろいろありますから,それを,信託法と業法という形のつくりこみ方をするのではなくて,例えば,信託法の中でどうしても相入れないようなものについては類型論的な形での規律にするというような考え方というのはできないものなのでしょうか。

 

  •  それはあり得ます。非常に簡単に言えば,例えば,ちょっと切り分けはうまくできないけれども,仮の話として,民事の信託と商事の信託でもって,商事についてはちょっと特則を設けるとか,そういう類型ですよね。

 

  •  商事・民事もそうですし,例えば,1万人の信託というのと,50人の信託というのもやはり全然違うものだと思いますし,土地信託のようなものもそうですし,集団投資スキームというのも違いますし,正に目的信託みたいなものとすると,もう全く違う信託だと思いますので。もちろん,できるだけ統一の法律でということだろうと思うのですけれども,どうしてもというのが何かありそうな気がするので,そういうことも踏まえて御検討いただけたらと。

 

  •  そういうことも踏まえて,これから議論していただければと思います。

それでは,今日はもう時間になりましたので,これで会議を終わりたいと思います。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

すみれ・ポリー・番人

「おつかれ様でした。ゲゲゲの鬼太郎、映画版観ました。」

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA