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2016年加工編   法制審議会信託法部会 第1回会議 議事録
2016年01月08日

2016年加工編        法制審議会信託法部会

第1回会議 議事録

 

 

 

第1 日 時  平成16年10月1日(金)  自 午後1時02分

至 午後4時55分

 

第2 場 所   法曹会館「富士の間」

 

第3 議 題

総論的な意見交換

 

第4 議 事   (次のとおり)

 

 

 

議    事

 

  •  それでは,若干の委員・幹事の方がまだ御到着されておりませんけれども,予定した時刻が参りましたので,法制審議会信託法部会の第1回会議を開会いたします。

本日は御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。

 

 

私は,民事局参事官の○○と申します。部会長の選出がございますまで議事を進行させていただきます。

まず,議事に入る前に,法制審議会及び部会について若干御説明申し上げます。

法制審議会は,法務大臣の諮問機関でございますが,その根拠法令である法制審議会令によれば,法制審議会に部会を置くことができることとなっております。この信託法部会は,さきの9月8日に開催されました法制審議会第143回会議におきまして,法務大臣から,信託法の見直しに関する諮問第70号がされ,これを受けまして,その調査審議のために設置することが決定されたものでございます。

 

法制審議会に諮問された事項は,お手元に配布させていただいておりますように,現代社会に広く定着しつつある信託について,社会・経済情勢の変化に的確に対応する観点から,受託者の負う忠実義務等の内容を適切な要件の下で緩和し,受益者が多数に上る信託に対応した意思決定のルール等を定め,受益権の有価証券化を認めるなど,信託法の現代化を図る必要があると思われるので,その要綱を示されたい。

 

 

というものでございます。

それでは,審議に先立ちまして,まず臨時委員の○○民事局長より一言ごあいさつを申し上げます。

  •  民事局長の○○でございます。

どうも委員・幹事の皆様方,お忙しいところをこの法制審議会のために御出席いただいて本当にありがとうございます。

この信託法部会でございますが,ただいま○○幹事から御説明がありましたように,信託法の現代化ということをお願いしているわけでございます。

 

御承知のように,信託法は大正11年に制定されましてから,実質的な改正がされないまま現在に至っておりますが,この間,社会・経済活動の多様化は著しいものがございます。信託を利用した金融商品が幅広く定着するようになっていますし,また資産流動化目的での信託など,信託法が制定された当時には想定されていなかった形態での信託の活用が図られるようになっております。

 

また,平成16年3月に閣議決定されました規制改革・民間開放推進3か年計画においても,「更なる信託スキームの活用に資する商事信託関連法制の見直し」ということが検討課題として挙げられているわけでございます。

 

 

 

 

そのようなことを踏まえまして,法務省としても,民事基本法制の整備の一環として信託法を現代化する必要があるという判断に至りまして,このような諮問をし,部会を立ち上げていただいたということでございます。

 

御承知のように,最近の立法は非常にせかされております。勢い法制審の審議も日程的に過密になり,委員・幹事の方々に御負担をおかけするようなことも生じておりますが,現在のような急速な社会変動の時代に,それに合わせた立法をしようと思いますと,どうしても従来の立法ペースでは間に合わない,やはり相当詰めた,時間的に短縮した立法スケジュールにせざるを得ないということがございますので,私どもとしても審議が充実したものになるよう最大限の努力をいたしますが,よろしくお願いをしたいと思っております。本日はどうもありがとうございます。

 

 

  •  それでは,本日は第1回目の会議でございますので,まず,委員・幹事及び関係官の方々に簡単な自己紹介をお願いいたしたいと存じます。

 

(委員・幹事及び関係官の自己紹介省略)

 

(能見委員が,部会長に互選され,法制審議会会長である鳥居委員により部会長に指名された。)

 

  •  ただいま指名されました能見でございます。よろしくお願いいたします。

先ほど局長からもお話がありましたように,現在,この信託法は大改正の時期を迎えておりまして,恐らく議論すべき問題点がたくさんございます。そういう意味では,短い時間の中で,効率的に,しかし慎重に,かつ深い議論を進めてまいりたいと思いますので,皆様の御協力をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

 

それでは,最初に,配布されている資料について事務局から説明をいたします。

  • それでは,配布資料について御説明を申し上げます。

まず,本日の席上配布資料でございますけれども,先ほど読み上げさせていただきました諮問第70号というものがございます。

 

それから,事前配布資料でございますが,一つは,「信託法部会の審議スケジュール(案)」と題する書面を部会資料1としまして,それから,「信託法制研究会報告書」と題する冊子を部会資料2として事前送付させていただいております。

 

 

すみれ

「信託法制研究会報告書ってどんな内容なんだろ。」

 

 

配布資料は以上でございます。

  • 資料等はちゃんとございますでしょうか。

それでは,次に,今後の当面の審議スケジュールにつきまして,これも事務局から説明をいたします。

 

  •  それでは,お手元にございます部会資料1「信託法部会の審議スケジュール(案)」という書面に基づきまして説明をさせていただきます。

先ほど民事局長のあいさつにもございましたように,信託法は,大正11年に制定されて以来,実質的な改正がされないまま現在に至っておりますが,この間の社会・経済活動の飛躍的な発展・多様化に伴いまして,信託法の現代化に向けての要請は最近とみに高まっております。

 

したがいまして,信託法の改正につきましては早急に措置を講ずる必要があり,来年の臨時国会に法案を提出したいと考えているところでございます。そういたしますと,来年9月の法制審議会総会において答申をいただく必要がございますし,法案の分量なども考えますと,当部会における要綱案が来年の7月末ごろには完成している必要があると考えられるところでございます。

 

そこで,当部会のスケジュールでございますが,来年1月28日の第9回会議までにつきましては,個別論点についての御検討をいただき,その上で,第10回会議から第12回会議までの合計3回につきましては中間試案の検討をいただいた上で,来年2月ごろをもって中間試案を取りまとめて,公表させていただくことを考えております。その上で,来年3月の1か月間を一般に対する意見照会の期間に当てまして,その結果を部会に報告させていただいた上で,引き続き,来年4月から7月までの3か月間で要綱案決定のための審議を行うというスケジュールにしてはいかがかと考えております。

 

 

なお,来年3月以降の会議の日程につきましては,3月の1か月間をパブリックコメントの期間にあてる予定であることなども踏まえまして,改めて委員・幹事の皆様にお諮り申し上げたいと存じますが,原則として隔週金曜日,2週間おきの金曜日に開催させていただくことになる可能性が高いものと思われますので,その旨お含みおきいただければ幸いでございます。

 

  •  ただいまの当面の審議スケジュールにつきまして,何か御意見等ございますでしょうか。よろしゅうございますか。--それでは,これは御承認いただいたということで,進めてまいりたいと思います。

次に,本日の審議でございますけれども,信託法の見直しについて審議をしたいわけでございますが,事前に送付の資料2というもの,分厚いこの報告書でございますが,これが皆様のお手元に事前に送付されているかと思います。最初に,この資料の性格につきまして,これも○○幹事から説明をお願いしたいと思います。

 

 

 

 

 

  •  この報告書でございますが,これは,昨年9月から今年の9月まで,合計22回にわたって行われました信託法制研究会という研究会における議論の結果をまとめたものでございます。

この研究会は大学の先生方が中心となって行われた研究会でございまして,法務省の信託法担当部署からも参加させていただいて,現行信託法の条文ごとにその見直しの要否・内容について共同研究をさせていただき,その成果を関連する項目に従って報告書に取りまとめ,当審議会における参考資料として配布させていただいたものでございます。

 

なお,この報告書では,各項目の冒頭において条文のような形式の記載がされておりますが,これは,この研究会における議論の大まかな方向性をなるべく分かりやすく示すべくとられたものにとどまるものでございます。信託法改正のための要綱案の内容は,すべて当審議会での審議の結果を踏まえて作成させていただくものでございますので,本報告書の形式・内容にとらわれず,忌憚のない御審議を賜りたくお願い申し上げます。

以上が報告書の性格でございます。

 

 

 

 

  •  ということでございまして,この報告書をもとにしながら議論を進めてまいりたいと思いますけれども,何分非常に分厚い報告書であり,かつ,いろいろ細かい論点にもわたっております。いきなり各論から議論していくというのは必ずしも適当でないと思いますので,先ほどの審議スケジュールにございますように,今回と次回において,総論的な,信託の基本的な構造を皆様でお互いに議論して,ある程度共通な認識を経てから細かい各論に進んだ方がよろしいかと思いますので,そういう意味で,総論的な意見の交換というのを2回ほど設けたいと考えております。こんなやり方でよろしゅうございますでしょうか。

それでは,そういう形で進めていきたいと思いますけれども,今日はその総論的な意見交換の第1回目ということでございますが,これもすべて本日できるわけではございませんので,幾つかに分けて御議論いただくということになります。

ということで,○○幹事の方から,どういう形で分けて議論していくかということも含めて,説明をお願いしたいと思います。

 

 

 

  •  では,ただいま○○委員の方からお話がございましたように,本日と次回の2回に分けまして,この報告書の何点かの重要な項目をピックアップさせていただきまして,事務局の方から,この報告書の概要あるいは問題となっておりました点などを簡単に御紹介させていただきたいと存じます。

なお,取り上げる項目でございますけれども,本日は,1番目の「信託の設定について」,2番目の「信託宣言について」,8番目の「信託の公示について」,13番目の「信託財産に対する強制執行等について」,18番目の受託者の「善管注意義務等について」,19番目の受託者の「忠実義務について」,21番目の受託者の「分別管理義務について」,22番目の「信託事務処理の委託について」,24番目の「受託者の損失填補責任等について」,28番目の「受託者の有限責任の許容について」,33番目の「受託者の権限について」,最後に34番目の「受託者の権限違反の行為について」,全部で12項目でございますが,この項目について取り上げさせていただきたいと思います。

 

予定といたしましては,途中休憩までの第1セッションを最初の4項目,それから,休憩後を二つのセッションに分けまして,受託者の義務に関する4項目と,最後に受託者の責任・権限等に関する4項目を,おおむね1時間ずつ,3セッションに分けてやらせていただきたいと考えておりますので,よろしくお願いいたします。

 

  •  ということでございます。よろしゅうございますでしょうか。

 

 

 

 

  •  それでは,私の方から,まず,最初に申しました4項目について,この報告書の内容をかいつまんで御説明いたしました上で自由な意見交換をいただきまして,おおむね2時半過ぎごろまで第1セッションを行いたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

それでは,早速説明に移らせていただきますが,まず一番最初に,「信託の設定について」というところでございます。

 

ここにおいて取り扱う問題というのは,信託法の適用対象となる信託をいかに定義づけるかという点でございます。すなわち,新たな信託法の立法を考えるに際しまして,信託法の各規定が適用になる信託の外延,民事・商事法の体系の中における信託の位置づけを明確にしようとするものでございます。

 

 

すみれ

「信託法ってどこにいるんだろ。」

 

 

ところで,現行法1条によりますと,信託とは,財産権の移転その他の処分があること,それから,他人に一定の目的のために財産の管理又は処分をさせること,これを言うものとされております。

 

 

 

 

まず,太字で書いてございます1でございますが,これは,今申し上げました現行の①と②の要件とほぼ同様の要件をもって信託法が適用になる信託となるための必要な要素,すなわち成立要件と構成するものでございます。

 

ただし,現行法1条においては,「財産権」の処分があることを要件としておりますが,この①では,「財産」の処分があることを要件とするものとしております。これは,信託財産としては金銭的価値に見積もり得るものすべてが含まれ,「○○権」と言えるまでに成熟したものである必要はないということを明らかにする趣旨でございまして,この財産には,特許権等の知的財産権はもちろんのこと,特許を受ける権利,外国の財産権なども含まれると考えております。

 

 

ポリー

「財産の中に熟したりんごと熟していなりんごがあっても良いってことですね。」

 

すみれ

「熟していない方がおいしいよ。」

 

番人

「すみれはカリカリしてる方が好きそうだなからな。」

 

 

また,現行法1条におきましては「財産権ノ移転其ノ他ノ処分」とされているのに対しまして,ここでは,財産の処分の例示といたしまして「担保権の設定」というのを挙げております。これは,いわゆるセキュリティー・トラスト,つまり,債務者を委託者,担保権者を受託者,債権者を受益者とする担保権の設定も信託のスキームを用いれば可能であるということを明示する趣旨でございます。

 

ちなみに,御承知のとおり,規制緩和・民間開放推進3か年計画におきましても,これは平成16年3月に閣議決定されておりますが,そこでは,シンジケート・ローン等において,一人の債権者が他の債権者の債権も含めた被担保債権の担保権者となり,その担保権の管理を行うことができるようにすべきであるとの指摘があることから,信託の在り方を見直す中で制度の整備の必要性を検討するという決定がされておりまして,ここはそのような閣議決定を踏まえたものでもございます。

 

 

すみれ

「担保権の信託か。何それ。」

 

ポリー

「例えば、抵当権と引当になっている債権を切り離して、抵当権の管理を誰かに託すということです。」

 

すみれ

「分かりにくけど、何か意味あるの?」

 

ポリー

「抵当権者がたくさんいる場合とかに便利なようですよ。あまり使われてはいないようですが。信託協会の分類にも載っていませんし。」

 

 

 

次に,②でございますけれども,この報告書でございますと,「財産の処分を受けた者が,【自己の利益を図る目的以外の目的】のために,当該財産の管理又は処分その他当該目的の達成に必要な行為を行うこと」という要素を設けております。これは,現行法1条では「一定ノ目的ニ従ヒ」とのみされておりますのに対し,その実質を明らかにいたしますとともに,受託者のみが利益を得ることとなる場合には,それは単に受託者の所有と位置づければ足りるのであって,これをあえて信託と位置づける必要はないと考えられるからでございます。

 

続きまして,太字の2でございますが,これは,信託の設定段階におきまして,積極財産とともにであれば,委託者が負担している債務を受託者が信託債務として引き受けることができることとしたものでございます。

 

したがいまして,これまでの通説によれば否定されてまいりました積極財産と消極財産を含む包括財産の信託,あるいは事業そのものの信託というものも認められることになると考えているところでございます。

 

 

すみれ

「信託とは別だけど、以前の債務も一緒に引き受けることができるって法律に書かれて、事業の信託って効果が出るぞってなったのか。」

 

ポリー

「前からできるようだったのですが。利用したいという要望を出した人は今、使っているのでしょうか。」

 

 

続きまして,報告書6ページにある(注1),(注2)について説明を申し上げます。

 

まず,(注1)でございますが,御存じのとおり,実務上,信託を利用する流動化のスキームにおきまして,基本的には財産保管機能しか有しない信託が多く見られまして,こういうようなものでは受託者の積極的な行動が予定されず,いわゆるハコとして利用されるにすぎない信託の取扱いが問題となっております。

 

従来は,受託者としては,受益者が信託財産について各種の行為をすることを認容する義務を負うにとどまるものを「名義信託」,受託者が委託者又は受益者の指図に従って管理・処分することになっているものを「受働信託」と言って区別いたしまして,後者の受働信託は信託法上の信託であるが,前者の名義信託は信託法上の信託ではないなどと解されてきたようでございます。

 

しかし,名義信託と受働信託とを区別するのは容易ではない上に,いわゆるハコとして利用されるにすぎない信託が無効とされてしまいますと,証券化や流動化,ひいては信託制度の発展に大きな支障を来しかねないと考えられるところでございます。

 

そこで,名義信託と受働信託といった区別はとらず,信託行為において,受託者は単なるハコ,すなわち財産保管としての機能を有するとのみ定められ,実際にやっていることもハコというようなものにすぎないのであれば,当事者の実現しようとしている意図,すなわち信託行為に定められている受託者の権限と受託者の行為態様が合致しているのであるから,これを有効と解してよいと考えるものでございます。

 

もっとも,単に名義を移したのみで,名義人がそれ以外に全く行為をしないような場合につきましては,恐らく受託者の権限内容を定めた信託行為すらもないと思われますので,そういうようなものは少なくとも信託としては無効と考えてよいと考えるものでございます。

 

 

 

続きまして,6ページの(注2)でございますけれども,これは,英米の実務におきましては,受託者が複数存在するときに,一部がマネージング・トラスティーとなり,他がカストディアン・トラスティーとなって,信託財産はカストディアン・トラスティーのみの名義となるということが認められているとの指摘がございます。

 

 

すみれ

「マネージング・トラスティーがお金の運用の受託者かな。カストディアン・トラスティーがお金と不動産などの管理・保全の受託者かな。」

 

番人

「名前の感じだとそうかもね。運用する人と管理する人か。」

 

 

この点については,いずれか一人が名義人であることを前提といたしまして,信託財産の帰属しない者も,信託行為において受託者と定めれば,信託法上の受託者であると解して差し支えないと考えるものでございます。

 

最後に,最も重要なものの一つと思われます,この報告書で言いますと4ページのアステリスクの点について,敷えんして御説明をしたいと思います。

 

 

信託の大きな特質と申しますのは,信託財産の名義人である受託者の倒産からの信託財産の隔離,すなわち,受託者の個人債権者は当該財産に対して権利を行使することができないという効果を生み出すことにございます。

 

しかるに,例えば所有権の移転を伴う委任がされた場合にも,この1の①,②の要件に形式的には該当いたしまして,したがって信託となってしまいそうでございますが,受任者が破産した場合には,当該財産は受任者の破産財団に入ってしまうものと理解されているのではないかと思うところでございます。すなわち,この場合には受任者の倒産からの隔離の効果を引き出すことが意図されていないわけでございます。このような場合にまでかかる法律関係を信託と構成してしまうことにはちゅうちょを感じざるを得ないところでございます。

 

そういたしますと,民商法上の様々な制度の中で信託を正確に位置づけるという目的を達するためには,1の①,②の要件が満たされれば信託が成立するというのではなく,当該財産の受託者からの倒産隔離効果,あるいは,このような効果を生み出す前提となる分別管理義務を受託者が負うこと,そして,このような受託者の義務を当事者が意図していることを何らかの形で信託の成立要件の一つとして位置づけることが適当ではないかと考えられるわけでございます。

 

他方,その一方で,倒産隔離効果を生み出す分別管理義務を信託の成立要件として位置づける意義については理解しつつも,これを明文化するときは,実際の運用において分別や管理の概念をめぐって争いが起こる可能性があり,信託の成立範囲を必要以上に狭くしてしまうことになりかねないとの懸念に基づく批判がございます。

 

 

番人

「判例で法理として認められてきている部分だね。」

 

ポリー

「民法商法などの中で、信託を正確に位置づけるっていうところには賛成します。」

 

また,分別管理義務を信託の成立要件として明示的に設定いたしますと,例えば営業者に分別管理義務が課されている形態の匿名組合契約についてまでも,成立要件に該当する以上は信託と構成すべきであるというような解釈論を惹起してしまう可能性があり,むしろ,受託者からの倒産隔離を生じさせる意思があることは信託成立の書かれざる要件にとどめておく方が適切であるとの指摘もあり得るところでございます。

 

以上を踏まえまして,受託者が分別管理義務を負うこと,あるいは当事者が倒産隔離の意図を有することを何らかの形で要件とすべきか否かというところが問題になるというのが,この指摘でございます。

 

以上で信託の設定についての説明を終わらせていただきます。

 

 

すみれ

「財産の分別管理は、信託の成立要件にはしないでおこうってことかな。それか書かれざる要件としましょうか、ってことかな。」

 

 

続きまして,「第2 信託宣言について」の説明に移らせていただきます。

御承知のとおり,信託宣言とは,ある人が自分の財産を他人のために自分に信託する旨を宣言することでございまして,以後,その財産は固有財産から信託財産へと性質を変えることになるわけでございます。

 

このような信託宣言は,財産権の移転も占有移転もなく,名義も変わらず,受託者として他人を立てる必要もないということで,手間もコストもセーブでき,信託の普及には都合がいい上に,名義が変わらないのでサイコロジカルにも受け入れやすいなどといわれているところでございます。反面,財産隠匿のおそれが高いということで,否定論も強く展開されてまいりました。

 

 

すみれ

「利用する人からみると、名義が変わらないってのはいいのかな。2番目の受益者と受益者の代理人を置いて、何かあったら受託者を変更するってことかな。」

 

 

ところで,現行法におきましては,信託法1条が他人に対する処分を予定していることから,信託宣言は許容されないものと解するのが通説であったと考えられます。もっとも,解釈論・立法論としてこれを認めるべきであるとの見解も有力でございますし,また,近時,規制緩和の流れの中におきまして,資産流動化に資するために信託宣言を許容すべきであるとの要望も寄せられているところでございます。ちなみに,英米の信託法では信託設定の方法の一つとして信託宣言が認められているという事情がございます。

 

このような状況を踏まえ,報告書には,甲,乙,丙の3案がございます。

 

まず甲案でございますが,これは,現行法どおり信託宣言を認めるべきではないとする見解でございまして,その根拠といたしましては,例えば債務者による執行免脱,財産隠匿のために用いられる危険が高いということ,あるいは,委託者と受託者が同一であるために義務履行が不完全になりやすい,すなわち,委託者イコール受託者であれば自分で自分を監督することは期待できないというような理由が挙げられているところでございます。

 

これに対しまして,乙案というのは,信託宣言を一般的に許容しようという見解でございます。その根拠といたしましては,委託者の債権者は,一般には特定の財産について利害関係を有し執行客体であるとの期待を有しているわけではなく,必要とあれば詐害行為取消権による限度で保護されれば足りるということ,あるいは,信託設定後はむしろ受益者の債権者が受益権を対象に強制執行することができるわけですので,執行免脱財産をつくり出すという批判は当たらないということ,更には,受託者の義務履行を確実にさせるために,受益者による種々の監督権が認められているではないかというような理由が挙げられているところでございます。

 

最後に丙案でございますが,これは,信託宣言が認められる場合を一定の場合に限定する折衷的な考え方でございます。

 

限定の方法といたしましては,例えば信託宣言の目的に着目いたしまして,公益を目的とする場合,他人の扶養又は教育を目的とする場合,あるいは資産流動化を目的とする場合のような限定を加える方法ですとか,あるいは信託宣言の設定手続に着目いたしまして,信託設定の公告,あるいは登記,あるいは公証人による認証等の手続的限定を加える,あるいは,今申しました目的による限定と手続による限定の両方を併用するというような方策も考えられるところでございます。

 

 

 

 

 

続きまして,報告書20ページ目からの「第8 信託の公示について」の説明に移らせていただきます。

 

信託の対抗が問題となる場面といたしましては,受託者個人の債権者が,信託財産を受託者の財産として強制執行してきた場合ですとか,受託者が破産した場合などに,その財産が信託財産であることを主張して強制執行を排除したり,あるいは破産財団に含まれないことを主張する場合が考えられます。これは現行の信託法16条が適用される場面でございまして,信託財産は受託者個人の債権者の引当財産から除かれるということになります。これを信託財産の独立性などと言っているところでございます。

 

その上で,まず太字の1でございますが,これは,登記・登録すべき財産につきましては,登記・登録をもって今申し上げました第三者に対する対抗要件とするのが妥当であると考えられますので,現行法の3条1項の趣旨は維持することとしたものでございます。

 

もっとも,現行制度下で不動産を信託した場合におきましては,受益者の氏名又は名称及び住所をその都度公示するということになっておりますので,受益者が多数存在する信託などにおいては,特に受益者が変更するような場合などを考えますと,事務負担を重くしているという指摘がございまして,信託の公示制度について改善すべき点がないかについてはなお検討する必要があると考えているところでございます。

 

続きまして,太字の2のところでございますが,これは有価証券の信託に関するものでございますが,現行法の3条2項は,勅令の定めるところにより,証券に信託財産であることを表示し,株券及び社債券については,株主名簿又は社債原簿に信託財産であることを記載又は記録しなければ,第三者に対抗することができないとされております。

 

しかしながら,このような取扱いは,大量の有価証券に投資することを目的とする信託におきましては,大量の有価証券が頻繁に売買されることを考えますと,実務上現実的ではないと思われますので,3条2項は削除することとしたいと考えているものでございます。

 

したがいまして,受託者が有する有価証券が信託財産であるか否かは,一般の動産の場合と同じく,信託財産であることを実体的に主張立証し得るか否かの問題として取り扱われることになると考えられるものでございます。

 

最後に,「第13 信託財産に対する強制執行等について」という30ページのところからの御説明に移らせていただきます。

現行の信託法16条というのは信託法にとって中核となる規定であり,ここでは同条の趣旨を維持しようとするものでございます。

 

 

 

すなわち,太字の1でございますが,これによりまして,信託財産について信託前の原因によって生じた権利,例えば,抵当権の設定された不動産を信託事務の処理によって信託財産として取得した場合のそのもともとあった抵当権というような場合が典型でございますが,そのような権利,もう一つは信託成立後の受託者の権限に属する行為によりまして生じた権利,これらの権利を除きましてそれ以外のもの,すなわち,典型的には,受託者の固有財産に対する債権者は信託財産について権利を主張することはできないということになります。

 

このようにいたしまして,信託財産は所有名義人である受託者の倒産リスクからも遮断され,信託財産の独立性が確保されることになるわけでございます。

 

また,太字の2でございますが,これによりまして,受託者の債権者等が今申しました太字の1に違反して信託財産に対して強制執行等をしてきた場合には,受益者等は第三者異議の訴えによりましてその執行を排除できるというものでございまして,この点も現行法16条2項の趣旨を維持しようとするものでございます。

 

とりあえずの説明は以上でございます。

 

  •  それでは,ここまでを一区切りとして御議論いただきたいと思いますけれども,特に順番は指定いたしませんけれども,基本的なことからだんだん複雑な問題へと移った方が議論はしやすいと思いますので,信託の設定あたりから,いかがでございましょうか。信託宣言もある意味で設定の問題ですので,そこら辺まで含めて,いかがでしょうか。

 

 

  •  まず,信託の定義についてなのですが,担保権の設定について明示的な規定を置くことは,資産流動化・証券化の観点から非常に役に立つのではないかなという気がしております。

現状は,資産流動化商品の一つであるABSが,本来であれば,あるいは海外の実例を見ますと,担保付社債として発行されている現状に比べ,我が国においては責任財産限定特約付の無担保社債として発行されているという現状がございます。

 

本来,担保付社債とするべきであるABSが無担保社債になっている一つの原因として,信託法ではなくて,担保付社債信託法の使い勝手の問題といったものもあるかと思いますので,信託法とあわせまして,担保権の信託を検討する際には,担信法の使い勝手についても検討できればいいのではないかなという気がしております。

 

 

ポリー

「ABS(Asset-Backed Securities)の訳は資産担保証券です。お金以外の資産の価値でお金を生み出すようです。」

 

 

それと,第2点目の方に入ってしまうのですが,信託宣言について,英米では資産流動化に用いられていると。例えば,SPCの株式を,ケイマン諸島であるとかジャージー島の信託会社が信託宣言の方法をもって信託設定するというようなことが,現に,日本の資産を対象に,かつ日本の投資家を対象に販売される流動化商品,証券化商品において用いられるケースがございます。

 

こういったものについて,国内でも同様のことが可能になれば,流動化実務上はやりやすくなるのではないかなという気がいたしております。

 

また,委託者と受託者が同一人である信託なのですけれども,韓国の事例なのですが,韓国住宅金融公社という政府100%出資の特殊法人が,自ら保有する住宅ローンといいますか,金融機関から購入した住宅ローン債権を自己信託,自らを委託者,自らを受託者,かつ,自らを当初受益者とする信託を設定いたしまして,その受益権を投資家に販売するという方法でファンディングを行っているという事例もございます。

 

また,我が国でも,例えば信託銀行が住宅ローン債権を証券化する際に,いったんSPCに債権譲渡しまして,SPCが委託者,オリジネーターである信託銀行が受託者となる信託を設定して,受益権を販売するといったスキームが実際にとられていまして,この場合は,もちろん委託者と受託者は別人になるわけですが,もしこれが同一人で可能ということであれば,更に実務上のフレキシビリティーという意味では助かるのではないかなという気がいたしております。

 

 

ポリー

「SPC(special purpose company)の訳は特別目的会社です。主に資産管理を目的とする、他にあまり何もしない会社です。韓国でも自己信託は利用されているんですね。」

 

すみれ

「フレキシビリティー(flexibility)は柔軟性とか。」

 

 

また,積極財産に加えて消極財産もということなのですけれども,これは1番目の論点に戻るのですが,現状でも,信託設定後,信託が債務を負担する,借入れを行うという形での資産流動化取引は多数行われております。いわゆるアセットバックド・ローン,ABLですとか,あるいはノンリコース・ローンと呼ばれている仕組みにおいても,多々,特定の信託財産を引当てに受託者である信託銀行が借入れを起こすという取引が行われております。

 

これが信託設定時においても最初から債務をセットでということが可能になれば,これも実務上のフレキシビリティーの拡大というところにつながるのではないかなという気がいたしております。

 

番人

「自己信託と事業信託はフレキシビリティー(flexibility)の拡大をしてくれるのかな。ノンリコース・ローン(nonrecourse loan)は責任が限定されている貸付だって。」

 

 

  •  最初ですので,概括的なところからお話ししたいと思います。

まず,せっかくの機会ですので,この信託法を,実務のやりやすいように,柔軟な,かつ予見可能性の高いものを目指していきたいと思います。

 

この法制審の部会とは別個に,現在,国際私法で信託も一項目として取り上げられるところでございますけれども,日本の信託法が,ある意味,外国でも使われるような,いわば日本の法令がハブとなるような形で使われるようなものを目指すぐらいにしておかないと,逆に今度は日本国内で行われるものも外国の信託法を使われてしまうことにもなりかねないものですので,この点,やはり国際的な競争ということも考えてこの信託法を考える必要があると思います。

 

 

すみれ

「法律も競争なんだ。大変だね。今はハブになれたかな。」

 

 

次に,第1の個別の話を2点差し上げたいのですけれども,ここで書かれている論点の中で,2点,更に御議論いただきたいところがございます。

 

一つは要物性のことでございます。教科書を広げると,御案内のとおり,要物性が必要だというふうに言われておりまして,ただ,諾成的な信託というものも認められていると言われておりますけれども,実務では,契約をしている時点ではその信託財産がないということも多々ございますので,そうした場合の法的不安定性を考えますと,やはりここで諾成的な信託ということを正面から認めていただくことが必要ではないかなと思っております。

 

 

二つ目は,これはちょっとどういう議論になるのか分からないところもありますけれども,信託否認の法理というのがあり得るのかどうか。例えば,法人格の否認という議論はあると思いますけれども,逆に,今回の場合,信託の否認ということがあり得るのかどうか。

 

例えば,今も実務的に行われていると思うのですけれども,100円の信託財産に対して,今,○○委員からありましたように,ローンを借りると。じゃあ1億円のローンで調達をやって,それで何か行うという取引も考えられないわけではないですけれども,こういう取引が果たして有効なのかどうか。もちろん,いろいろな考慮はあると思いますけれども,そういった点も御議論いただければというふうに思っております。

 

  •  私は,リース・クレジット債権の流動化を利用した資金調達をやっているオリジネーターの立場からいろいろ発言をさせていただきたいというふうに思っております。

まず,信託の定義についてなのですけれども,先ほど○○委員がおっしゃられたとおりでございますけれども,実際に我々,ABSを無担保社債として発行しておりますけれども,セキュリティー・トラストが可能になるということであれば,更に様々なスキームが考えられますので,このあたり,極めて重要ではないかなというふうに思っております。

 

 

 

二つ目に,信託宣言についてですけれども,これは報告書の方にも書いてございますけれども,十数年前から,債権の流動化をやるに際して,当時から信託の法的な安定性というところに着目して利用させていただいているわけですけれども,その組成に際して,ケイマン諸島のチャリタブル・トラストを使ってやっているというところがございます。

 

これについては,最近いろいろな方法が考えられつつあるのですけれども,やはりコスト面,それから時間がかかり過ぎるということもございますので,信託宣言が使えることによって,我々ノンバンクというのは銀行さんと違って預金の受入れができないということから,できるだけ低コストで資金調達をやる必要があるわけなのですけれども,そういったことにも今後いい影響を与えてくるのではないかなということで,是非ともこれを認める方向でお願いしたいなというふうに思っておりますので,よろしくお願いしたいと思います。

 

  •  ただいま,実務的なというのでしょうか,信託が扱われる最前線の中からいろいろな要望が出てまいりました。これに関連して,あるいはほかの観点でも結構ですけれども,いかがでしょうか。

 

 

 

 

  •  私どもの方は信託銀行でございまして,従来,信託法といいますと,信託銀行が受託者として大半といいますか,ほとんどの担い手だったと思います。そういった実務的な観点から,若干お話しさせていただきたいと思います。

1点目は,先ほどの,担保権の設定というのが明示的に入ったこと。これについては,今いろいろな方々が言われたように,非常に使い勝手がいいものだと思いますので,これについては賛成だということです。

 

ただ,信託宣言のところでございますけれども,確かに流動化のところとかを考えますと使い勝手がいいのかなというふうに思います。ただ,それをきちっとした業者が行うのであれば,それはそれでいいと思うのですけれども,基本的に,信託法という観点から見る場合においては,どうも一般の信託銀行以外のところの信託というところでの弊害ということを聞きますと,やはり執行免脱というのが一番多いというふうに聞いております。

 

そういう観点から言いますと,やはり信託宣言というのは,ある意味,使い方によっては非常に弊害の多い制度であるということが言えるのではないかと思います。

 

まあ,だからだめだよということではないのですけれども,ただ,逆に,それじゃあその弊害を防止するためにいろいろな方策を考えていかなければいけないのだと思いますけれども,それが一信託宣言だけでおさまるような形の規制になれば,それはそれでまた別の考え方というのはあるのかもしれませんけれども,当然,ぱっと考えますに,例えば忠実義務の問題であったり,分別管理の問題であったり,そういったところに一般の信託に波及する,それについて考えていかないといけないというところがあるのではないかと思いますので,その点ちょっと懸念しております。

 

そういう意味合いで,現状において,信託宣言については反対というふうに考えております。

 

 

すみれ

「信託銀行の人でも反対の人がいたんだ。悪い評判が信託銀行にも広がるのは嫌だもんね。」

 

 

それと,ちょっと一般的なところの,信託の設定のところに戻って恐縮なのですけれども,現行法での信託といいますのは,正に財産を譲渡して,受託者を債権的に拘束すると。

 

それプラスアルファで,今,分別管理義務というのを加えようか否かというような御提案だと思います。ここのところについては,先ほどの御説明にもありましたけれども,信託の成立要件として書かれてしまうと,やはり弊害の方が多いのではないかと。

 

 

私は,考え方としては非常に納得もできますし,信託銀行の人間として,信託の売りというのは倒産隔離なのだというのは,それは分かります。それで売っていきたいなという気持ちはあります。

 

ただ,我々業界の中には,今まで二つだった要件が三つになるというところがやはりなかなか違和感がありますねというところが本音かなと。ただ,書くことについては,みんなちょっとどうかなと。

 

書かざる要件というところから考えると,そこら辺はちょっと賛否があるというところでございまして,私なんかは,売りとして,何となく,書かざる要件としてなら,セールスポイントとして入れてほしいなというのがあるのですけれども,やはり違和感を持ったところもかなりあるというところでございます。

 

 

すみれ

「分別管理義務はセールスポイントでもあるんだ。」

 

番人

「これが特徴だと思うよ。」

 

 

 

  •  分別管理の問題というか,成立要件としての分別管理というのは,この研究会の報告書の中でも大分議論,あるいはそのもとになった研究会でも議論になったわけですけれども,一方で,ちょっと言い方は適当ではないかもしれませんけれども,信託を設定する意思というのと,これはもちろん要件だと思いますけれども,それと分別管理そのものは,若干違うわけですよね。分別管理というのはある程度形式的なところでとらえていますから。
  • そういう違いもありますけれども,先ほども,書かれざる要件としての倒産隔離の意思と言われましたか,そういうのを書けるかどうか分からないわけですね,書かれざるあれですから。そういうのを要件にしたらどうかというような議論もあって,ここら辺はこれからかなり議論しなくてはいけない点だと思います。

それからもう1点,むしろ私が理解する上で教えていただきたいのですけれども,先ほどから,信託宣言をめぐって,SPCの株式を取得するところが信託宣言をするという形を考えているわけでしょうね。

 

  •  私は全銀協の推薦の者でございますので,まず銀行の立場で申し上げますと,先ほど○○委員の方から信託銀行の観点からのお話があったと私は理解しているわけですけれども,やはり私ども銀行としてもいろいろな業態がございまして,その点,私としてどういう意見を言うか今迷っているところであります。

一つの考え方として,これは都銀懇の規制緩和要望の中でも出ているわけですけれども,都銀懇の意見としては,もう一つの使い方として,いわゆる銀行債権--不良債権もいろいろあったことはございますけれども--のオフバランスを図るために,自らが受託者となって自らの債権を宣言信託によって流動化してしまうと。そうすることによって何がいいかということで,まずはコストのこともございます。

 

それよりも大きなものは,お客様において,やはり債権者が変わらない,よって,お金を払う,いわゆるサービサーの相手先も変わらないと。

 

ポリー

「オフバランスは、貸借対照表からいなくなることです。」

 

 

 

また,もっと現実的なお話をしますと,お客様の開示の中で取引先銀行ということを書くことがありますけれども,そこが,例えば,「何とか銀行」というのが「何とかSPC」になってしまう,また「何とか信託」となってきますと非常に困ってしまうというようなことを考えられる方も中にはいらっしゃいます。

 

 

 

 

そうした中で,一つの考え方としては,かかる流動化を,信託宣言を使うことによってやればいいのではないかというふうに思っております。

 

ただ,○○委員がおっしゃられたように,他方,私も債権回収の現場の中で,不動産登記を上げていったときに,何かわけのわからない特殊な方に信託譲渡されていたということもありまして,やはり執行免脱という問題はありますが,ただ,一つの考え方としては,それに対してはまた別の考え方で制限すべきではないかということもあります。1点コメントしておきます。

 

 

 

 

 

  •  私が確認したかったのは,その信託宣言がどの場面で使われるかということだけなので,皆さん信託に造詣の深い方ばかりですけれども,必ずしもこういう先端的な問題については理解していない場合もあります。私も理解していない。ちょっとそれを確認したいだけで。

SPCを使って,今までケイマン諸島でもってチャリタブル・トラストを使っていたと。それのかわりに信託宣言を使うという考え方は,SPCの株式--あれは株というのかな,株主というのが出てくるわけですね。

 

それで,SPCというのは,できるだけいろいろな倒産の影響を受けないようにしたいので,そのチャリタブル・トラストに最終的に株式を持たせたいというのが,恐らくケイマン諸島などでもってチャリタブル・トラストを使う理由だと思うのですが,そのときに信託宣言を使うということの意味なのですけれども,日本国内でやると,債権流動化のためにSPCを設立して,その株式をどこかが取得し,その取得したところが信託宣言を使ってそこでまたチャリタブル・トラストを作ると,そういう構造なんですか。ちょっとそこら辺が私にはよく分からなかったのですけれども。

 

あるいは,どなたかお詳しい方。

要するに,今までのケイマンのチャリタブル・トラストを使うかわりに信託宣言と言われているのですけれども,何か二つあって,一つは信託宣言そのものを使うことによる使いやすさというのと,今までチャリタブル・トラストを使っていたことの代替機能というのがどこかにあっておかしくないと思うのですけれども,その辺の議論が私には何かよく分からなくて。

 

 

すみれ

「ケイマン諸島は遠いね。」

 

 

  •  その点は,私は○○委員がおっしゃるとおりだと思っていまして,発言しようかどうか迷っていたのですけれども。

このお手元の資料にもあるのですけれども,信託宣言が日本で使えないからケイマンに行くというのは,私は間違っていると思います。ケイマンに行く理由は,信託宣言が日本で使われないからではありませんで,日本にオリジネーターがおり,日本に投資家がいても,なおケイマンに行く理由は,資本関係の切断をする仕組みが日本ではつくりにくく,その結果,格付けをとるときはいい格付けがとれない。これが,ケイマンへ行って,いわゆるチャリタブル・トラストという仕組みを経て日本へ帰ってくれば,格付機関が格付けを出していたという歴史があります。

 

ただ,最近,日本では,中間法人を使ったスキームですとか,特定持分信託という仕組みが流動化のもとでありますけれども,そういうものを使った仕組みについて,格付機関が日本でも資本関係の切断を認めるという方向に今動いていますので,そういう意味では時代は変わりつつあると思います。

 

したがって,信託宣言が使えるようになればケイマンへ行かずに済むという話ではない。これは,資本関係の切断をすると。それが流動化の分野で言えば格付けを取得する上で確立した実務だとしますと,そのための法的なスキームをつくり上げるにはどうしたらいいかという問題であって,信託宣言と直結した問題ではないと私は思っています。

 

 

すみれ

「格付けか。横綱とかいるのかな。」

 

 

もう1点は,今,○○委員がおっしゃったことと関係しますけれども,ケイマン諸島におけるチャリタブル・トラストというのは,向こうの法律で言う信託宣言によってつくられるのが普通なのです。

 

ですから,その話は,日本で仮にチャリタブル・トラストのようなものをつくれば,それによって,ケイマンに行かなくても資本関係を切断しますと格付機関が言った場合には,日本においてもそういうものを作る,その際に,信託宣言による作り方があればなお便利だ,あるいは,信託宣言という設定の仕方がなくても,今の信託法のもとで--特定持分信託はそうなのですけれども--つくり上げた信託について資本関係の切断が認められれば,それはそれで日本国内で完結する話なわけです。

 

したがって,そこはやはり一段飛躍があって,信託宣言を特にケイマンのチャリタブル・トラストとの文脈で議論する場合には,分けて考える必要があると思います。

 

 

 

発言したついでに,もう1点。信託宣言の議論をするときは,今,複数の委員の方から出ましたように,半分以上は,表現は悪いかもしれませんが,業務の範囲の問題というか,業の問題ですので,必ずしもここで議論するのになじむかどうか,私は余り適切な話ではないと思います。

 

 

具体的に言うとどういうことかといいますと,受託者となる人が宣言をした瞬間,受託者になるわけですから,受託業であり,信託業になるわけでありまして,したがって,今の法制に即して言えば,例えば信託銀行が持っている財産について宣言するのは何の問題もないと思いますけれども,信託業務に携わっていないものが宣言をするためには,当然,その瞬間,業法上,例えば新しい信託業法で言えば免許が必要になるわけですから,そういう問題をクリアするという部分がありまして,先ほどからの御発言はそれに関連する部分がかなりあるのですけれども,私としては,この部会は,信託法というのでしょうか,私法の見地からどういうふうに考えたらいいかということについて詰めた御議論をいただく場ではないかと思っています。

 

 

番人

「宣言した瞬間に業になる、かな。営業じゃなければ、ならないと思うんだけど。」

 

 

 

 

 

  •  SPCの株式あるいは議決権,要は資産流動化で言えば流動化対象となる資産を保有する会社の支配権の問題で,海外で信託宣言が用いられている,これは現実でございます。

これ以外に現実の取引として指摘させていただきたいのは,貸付債権の流動化において,銀行が原債権者,オリジネーター,その銀行の100%子会社である信託銀行が受託者となって信託を設定して,その受益権を投資家に販売するということは,現に数多く行われております。

 

このような事例におきまして,この場合は委託者と受託者が親会社・子会社の関係にあるわけですけれども,金融業界の再編の動きもございまして,例えば,委託者と受託者が別人であっても,事後的に合併することによって結果的に同一になる可能性というのは現に数多くあるのではないかなと。

 

現には起きていないと思いますが,委託者と受託者が金融機関の再編に伴って同一人に帰してしまうということは多々あり得るのではないかなというふうな気がしております。

 

そういったことを考えれば,当初より,信託宣言あるいは自己信託の方法によってオリジネーターがイコール受託者となるような信託を認めてもいいのではないかというような気がしております。あくまでも資産流動化の実務の観点からの意見でございますけれども,そういう気がいたしております。

 

 

 

 

 

  •  ほかにいかがでしょうか。
  •  信託の設定についてというところに関連して一言だけ申し上げたいのですが,先ほど,
  • どなたかからでしたか,忘れたのですが,諾成契約としての信託というものを認めるべきではないかという御意見が出たことに関連する発言です。

どういうことかというと,現行の信託法もそうですし,この研究会報告書もそうなのですけれども,ある種の取引について,それを「信託」と呼ぶのだという形になっていて,例えば現在の信託法ですと,「本法ニ於テ信託ト称スルハ」という形でございますね。

 

それに対して,例えば民法587条というのは消費貸借の条文なわけですが,「消費貸借ハ当事者ノ一方カ……相手方ヨリ金銭其他ノ物ヲ受取ルニ因リテ其効力ヲ生ス」という形の条文になっている。

 

 

 

もちろん,これが強行規定かどうかということはまた別問題としてありますけれども,民法587条みたいな条文があるときに,消費貸借は要物契約であるというふうな言い方をするのはまだ分かるのですけれども,信託に関しては,ある種の取引において,どの時点からどういうふうな要件が満たされていれば下記の条文が適用されて,その法律関係が規律されるかという形ででき上がっているのだと思うのですね。

 

したがって,その意味では諾成的に,今現在我々が信託を設定しましたといって,まだ財産は来ていません,しかし信託を我々としては設定したつもりですと。

 

ただ,信託法の適用が起こるのは,ある種の財産が委託者から受託者に対して処分された時点から以降であるというだけの話で,諾成契約が否定されているというふうな言葉が必ずしもなじまない形式になっているのではないかという気がするのですね。

 

 

私が言っていることが絶対正しいと言うつもりはありませんけれども,信託法をつくっていく際に,そういうふうにある種の契約の有効性という形でつくっていくのか,それとも,ある種の取引について,どういった場合には以下の条文が適用されるのかという規律を発動する要件といいますか,そういうふうなものの法律としてつくっていくのかということは立場をはっきりさせておいた方が,今後混乱が起きないのではないかという気がいたします。

 

 

すみれ

「立場か。」

 

 

  •  信託の設定のところの条文の形式をどういうふうにするかという問題で,これは非常に難しい問題をたくさん,今まで議論がありましたように,含んでおりますので,その点はこれから十分議論していきたいと思います。

ほかに御意見ございますでしょうか。あるいは,今,信託の設定と信託宣言に議論が集中しておりますけれども。

 

 

  •  先ほど諾成的信託について問題提起したのですけれども,確かにおっしゃるとおりのことだと思うのですが,ただ,実務的にはそういう議論がございますので,立法として明文化する,もちろん今は書かれていないものですから,この議論,ないしは立法によって明確にしていただいた方が有り難いのではないかということでございます。

信託財産が受託者の手元に来ていないときに,受託者と言われている者の責任が一体どうなのかというところにその議論の実益があるのではないかと思っております。今後,受託者の責任であるとか,また利益吐き出しルールとか,いろいろございます中で,どこの時点からそういう責任が出てくるのかということを明確にするということには,一定の意義があるのではないかなというふうに思っております。

 

ついでに申し上げますと,銀行の立場から設定に関して関心がございますのは,やはり銀行としてはいろいろな預金を預かるという形でございます。昨今,いろいろ判例がございまして,預金債権についても,明示的な信託の設定ということがなくても,信託というふうにされることがございます。

 

これは実は,預金を預かる銀行としては非常に困ったことにもなりかねないということもございまして,ある意味,ここで逆の話をしますけれども,流動化の信託は,どんどん信託として広げてほしいということもあるかもしれませんけれども,預金を預かる銀行としては,明確に,なるべく制限してほしいという,そういう思いもちょっとございまして,ちょっと矛盾したことを申し上げました。

 

 

  •  今の最後の点は私も気になっていて,さっきの信託の定義からすると,金銭についての計算上の分別みたいなのは当然しているわけですよね。預金が信託の定義に入ってしまわないかというのが気にはなっていたのですけれどね。まあ,懸念を表明されて,それはもちろん入らないように考えるのだと思いますけれども。

あるいは,ここら辺までで,何か○○幹事の方で。--よろしいですか。

ほかの論点について,いかがでしょうか。ほかでなくても結構です。

 

 

 

  •  公示のところでもよろしいでしょうか。

先ほど御説明がありました,3条2項につきましては,実務上ほとんどというか全くやっていないような状況ですので,これを廃止いただくことについては全く問題ないと思います。

 

3条1項を残していただくところの趣旨なのですけれども,これは後の方で出てきますけれども,31条のところの登記・登録というもの自体は制度的になくなるというお話だと思うのですけれども,そうしますと,これは意見というよりも質問なのですけれども,公示の目的というのと,どういったものを公示するのかというのがよく分からなくて,もともと1項のところでは,例えば不動産だったら,信託原簿があって大体の信託の内容とかが分かって,管理するのか,処分までできるのか,そういうことを見て権限が分かるというような部分があったので,それが31条のところにつながっていたということだと思うのですけれども,そこのところの絡みで,新しいところでの3条1項の公示の目的というのをちょっと教えていただければと思いますが。

 

  •  これは,先ほどもちょっと申しましたが,一番主たる理由は16条の局面でございまして,第三者から,受託者の財産に対して強制執行が来た場合に,これは信託財産であるということを主張して執行を排除すると。そういう意味で,その受託者が持っている財産には信託財産という色づけがあると,そういう財産の種類であることを明示するということに一番の意義があるいうふうに考えております。

 

 

すみれ

「信託財産という色づけ。登記は受益者のためではなくて、受託者のためってことかな。それが結果的に受益者のためにもなる。登記の内容によっては、間接的に受益者取消権も行使しやすくなる。」

 

 

  •  いわゆる倒産隔離機能といいますか,対抗要件だということだと思うのですけれども,もうそこだけに絞っているというふうに考えてよろしいのでしょうか。

そうすると,これはどこの信託なんですよということだけが分かればいいということなのでしょうか。

 

  •  信託財産の帰属がという意味でございますか。
  •  ええ。要するに,帰属がどこかを特定するためにするものなのか,それとも,やはり今までのように,今度は善意・悪意でその取消しができるかということを多分決めるのだと思うのですけれども,それの参考になりますよね。
  • ある意味,登記を見て,管理しかできませんよというのに処分したら,それは権限外なんだなということがおおよそ分かりますよね。
  • そういうようなところというのは,登記・登録というところで切るのではないけれども,善意・悪意の一つの立証に使うといいますか,そういうところはもうなくなるということなのでしょうか。
  •  付随的にそういう善意・悪意に一つの意味があるということはあり得ると思うのですが,基本的な視点は,さっきおっしゃいましたように,登記・登録をもって処分を取り消せるかどうかの基準とはしない。
  • ということは,登記を見たからといって相手は必ずしもそれが処分権限の範囲かどうか分からないであろうということに基づいておりますので,一番の理由は,先ほどちょっと申しましたけれども,その財産が信託財産であるということを第三者に対して主張できるかどうかということを考えているところでございます。
  •  どの信託財産かということ……,つまり,信信間の倒産隔離とかというところは……。
  •  それはもちろん入っております。どの信託の信託財産かというところまでは入っております。

 

 

 

 

 

 

 

  •  これは結構難しい問題ですよね。○○委員が言われたように。純粋に倒産隔離だけがねらいであるとすると,とにかく,受託者の名義になっているけれども,信託財産であるということさえ表示されればいいわけですよね。
  • それ以外の情報は,付属的な情報はあるけれども,それはなくてもいいわけですけれども。まあ,現在の公示は,不動産に関して言えば,もうちょっと情報提供しているし,31条の関係はもちろんありますしね。それで,31条の関係がなくなるとする,一体どうしたらいいのか,あるいはどこまで公示するのかという,そういう問題ですね。

 

 

すみれ

「信託目録に何を書く、書かないって大事だね。」

 

 

 

 

 

ただ,ちょっと個人的な意見を申し上げてあれだけれども,法人なんかでも,法人の代表者の制限というのを登記するかしないかというような問題もあるわけですけれども,ああいうのを登記すると,取引の相手方は,ある意味で,これももう一段議論がありますけれども,悪意を推定されるようなことになって,かえって取引が不安定になるかもしれない。そこら辺のにらみが信託についてもあるのではないでしょうか。

 

 

番人

「法人の代表者の登記は権利の主体に関する公示で、信託の登記も、受託者を権利の主体と考えると似ているかも。」

 

 

  •  あと,先ほど言いましたことですが,私は,典型的に固有財産と信託財産という局面を言っておりましたが,例えば,ある受託者が,A信託,B信託,二つの信託の信託財産を持っているということがありまして,B信託の債権者がA信託の信託財産にもまとめてかかってきたという場合には,A信託の受益者は,これはB信託とは関係ないということを対抗する必要がございますので,そういう観点からも,その財産が果たしてどの信託に属するかということまでは少なくとも公示しなければいけないと考えております。
  •  細かい話で,今の点で確認なのですけれども,例えば国債であるとか社債であるとか,ペーパーレスに従って,社振法によって,登記というのか登録というのか,これは分からないわけですけれども,この扱いはどうなのかということでございます。

実際に社振法の77条を拝見しますと,信託についての対抗要件ということがございまして,そこで特別の立法がされているということで,登記・登録というかどうかは別として,この社振法については一定の手当てがされているというふうには思っておりますが,ただ,今の信託間の公示というのが果たしてどういうものなのかと。

 

実際にブックにどういうふうに書かれているのか,それが実際にどういうふうな効果を生むのかというのは,この法文だけ見ても分からない部分がございます。ですから,そこについても,私も勉強不足でございますけれども,考える必要があるのではないかと思っております。

 

また,当然のことながら,信託法の改正に従って,それに応じた関係立法の調整もする必要があるのではないかなというふうに思っております。

 

 

番人

「信託目録の番号で分けるんだろね。」

 

 

  •  そうですね。確かに,信託間,一人の受託者が複数の信託を受託しているときに,一方の信託債権者が別の信託財産にかかっていったとき,これは排除できないといけないわけですけれども,それをどういう形で公示するかというのは,今まで余り議論がなかったところですね。
  • ですから,これはちょっと議論しなければいけないと思いますが,いかがでしょうか。
  •  今おっしゃいました点につきましては,報告書の20ページから21ページのところに書いてございますけれども,今御指摘のありました,株券等の保管及び振替に関する法律の37条ですとか,あるいは社振法の75条でしょうか,そのあたりの問題につきましては,これは現行法の3条1項の特則なのか2項の特則なのかという点も含めまして,今後,規定を変更するに当たって検討していく必要性があるということを考えておりますので,そこは明記させていただいているとおりでございます。
  • 今の時点では結論は出ておりません。検討していくということでございます。

 

 

 

  •  1点戻りますけれども,○○委員がおっしゃった○○委員とのやりとりの中で重要な点だと思いますのを,私も1点指摘させていただきます。

それは,公示と,それから登記とか登録の場合に,見れば分かるじゃないかという話ですね。善意・悪意との関係がどうなるか。

 

商法の方では,○○委員がちょっと触れられましたので大変有名な議論がありまして,代表取締役が登記はされていたりされていなかったり何かした場合に,登記を見れば分かるではないか,したがってあなたは悪意でしたと言えるかという話でありまして,非常に議論がある上に,商法の条文で言うと,12条という条文と262条という条文のどちらが勝つかというのは,幾つかの局面で,まあ最高裁の判例まであるような状況なわけです。

 

 

それをこれに即して言いますと,これの登記が信託登記なのか不動産登記なのか,私,ちょっと新しい制度のことをよく理解していないのですけれども,商業登記ではないと思うのですけれども,例えば不動産の場合ですね。

 

それで,こちらの登記をせよということは,それを見れば分かる場合には,後ろの83ページの第34の受託者の権限違反の方でいう善意・悪意とどういうふうに連動するのか。商法の分野での議論で言えば,登記を見なくても善意無過失--商事的に言えば無重過失かもしれませんが--ということがあり得るのかどうなのかというところは整理する必要があると思いますので。

 

こちらで整理すべき問題なのか,第34の方で整理すべき問題なのか,必ずしもはっきりしませんけれども。

 

しかも--かつ,と言うべきかもしれません,第34の方は受託者の権限についての話で,こちらは信託の公示ですので,しかし,見れば分かるという話ではないかというのは,先ほどちょっとおっしゃったように関連し得ることなのかもしれませんので,一言指摘させていただきます。

 

 

 

  •  おっしゃいました点は,信託の公示によって相手が信託財産と分かるのではないかと。それは,何が信託の公示に書かれているかということにかかわってくると思いますけれども,信託の登記あるいは公示において記載すべき事項につきましてはなお今後検討していきたいということでございますので,今の御指摘を踏まえて考えてまいりたいと思います。

 

 

 

  •  これは,現在の不動産登記法,あるいは改正される不動産登記法もそうですけれども,いわゆる信託原簿に証するものが今度は登記の方に繰り入れられるようになりましたので,そこにはかなり情報があるわけですね。
  • ですから,そういうものについては,事実上というのでしょうか,第34といいますか,現在の信託法で言えば31条の取消権の問題ですけれども,その問題を考える際に,要するに,受託者に,その処分をしたときに,権限内の処分であったのか,権限外の処分であったのかというときに,その信託の公示がどう影響するかという問題ですね。
  • 恐らく今度は切り離すので--切り離すというのは,公示と31条の問題は切り離すので,直結はさせないけれども,信託公示の中身いかんによっては,事実上というか,類型ごとにケースバイケースかもしれないけれども,悪意が推定されるなんていうこともあるのかもしれませんよね。
  • ちょっとそこら辺は整理して議論しなくてはいけないと思いますけれども。

 

 

 

番人

「ケースバイケースだと思う。管理・処分の権限について登記されていたから、登記されていなかったからといって、直接に悪意が推定されるってことはないんじゃないか。」

 

 

 

  •  改正されました不動産登記法を見ますと,さっき言いました受益者の氏名・住所等のほかに,信託の目的ですとか,信託財産の管理方法その他の信託の情報と,こういうものも信託登記の登記事項になっておりますので,そういうのは確かに見れば相手はある程度悪意を推認されるということになると思いますが,ただいま申し上げましたように,こういう事項まで果たして登記事項にすべきかどうかという点につきましては,これから検討していきたいということでございます。

 

 

 

  •  ほかにいかがでしょうか。
  •  細かい点になりますけれども,信託の財産の中に債務を含むという話ですけれども,別途議論されると思いますけれども,実務的に事業の信託ということがあると思うのですが,その中で,これは諾成的信託等の議論も絡むのですけれども,とりあえず,多分請負契約とか,そういういろいろな契約だけしておくと。それで,その時点で信託が成立するのかどうかという話もまた別途あるのではないかと。つまり,契約上の地位というもの,つまり資産でもないし債務でもないというものが,それ自体が信託の財産と言えるのかどうか。ちょっと私も勉強不足で恐縮でございますけれども,そこの点について議論をいただきたいというふうに思っております。
  •  私も必ずしも十分理解していないかもしれないけれども,契約だけしておくというのは,例えばどんな契約をしておくのですか
  •  請負契約とか。いろいろな事業でございますから,その事業に関係して,サービス提供契約であるとか。ただし,実際にキャッシュであるとか,物は動いていないと。
  •  主体がね。それが契約だけしていると。それで,今度,事業を信託にするときに,その契約上の地位がどうなるかと,そういう問題ですね。
  •  契約の地位だけを移すということで,ある会社が事業をしています,その事業自体の契約上の地位だけを移しました,ただ,実際のオペレーションはまだ動いていないので,資産も債務も動いていませんと。そうした場合に,じゃあそれは信託なのか。つまり,信託財産というものがあったのかどうか。

 

 

 

 

  •  信託財産がついていればいいけれども,ついていないときにどうなるかという問題ですね。

どうですか。

 

  •  そこは,諾成的な信託契約を認めるかどうかという点にも関係してきますが,十分詰めておりませんので,現時点で,それが信託に当たると言えるかどうか,ちょっと今,明言はできないというところでございます。

 

  •  少なくとも,信託財産を移転するときに信託が設定されるというふうに考えると,今のような,事業主体が何らかの契約を他としたという,その契約上の地位だけを移転するというのは……,しかし,それも財産性があるというと,それ自体が財産だというふうに考えると,できるのかもしれませんね。
  •  既得権とか,そういうことで考えられるのかどうかというのもあると思いますけれども,そこは金銭に認められるものもございますので,そうした場合に,それが信託と言えるのかどうかと。
  •  一方で,純粋に諾成的な信託というのを認めるかどうかという議論をにらみつつ,今の,どこまで財産だと見るかという問題ですね。
  •  ということを今後議論していただければという意見でございます。

 

 

 

 

  •  「要物」,あるいは「諾成」という言葉が多分混乱しているのだと思います。
  • それは先ほど○○幹事がおっしゃったとおりでありまして,消費貸借のように,契約の成立に物の引渡しを要するというタイプのものと,代物弁済,これも教科書などでは要物契約と言われているのですが,しかし,その要物性というのは違っておりまして,債務消滅という効果が発生するには必要だというわけです。
  • ですから,そこの「諾成」,「要物」という言葉の使い方を区別しておきませんと,混乱するかと思います。

それで,多くの問題は,財産の処分という概念で解決できるのではないかなというふうに思います。

 

 

 

 

  •  適切な整理をどうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

 

事務局の方で何か,今までの御意見の中で。

 

  •  今のところまでは。後半部分のところも特によろしいでしょうか。
  •  細かいところは別とすれば,強制執行の問題自体については余り御異論はないのだろうとは思いますけれども,よろしいですか。恐らくたくさん議論されたいのでしょうけれども,余り最初の段階から紛糾してはいけないだろうと思って抑えておられるのだと思いますが。
  •  では,強制執行のところで1点だけ補足しておきます。

この報告書にも書いてございますが,例えば信託財産を所有していることに基づく所有者責任みたいなものですとか,あるいは信託財産との関係で発生した租税債権,それから報告書では一種の信託受益権の買取請求権のようなものに触れておりますので,そういう受益権の取得請求権に基づいて発生した債務ですとか,あるいは信託設定時に債務の引受けをした場合のその債務にかかる債権,それから受益債権のようなものにつきましては,これは当然のことながら信託財産に対して執行することができるということになります。

 

報告書には,信託財産について,信託前の原因によって生じた権利,それから受託者の権限に属する行為により生じた権利ということしか書いてございませんが,今言いましたようなものは,ここに明確には入りにくいわけでございますけれども,当然のことながら信託財産に行けるという前提で考えております。

 

ただ,そのようなものをこの規定の中に加えるか,あるいは加えないで解釈でいくのか,そのあたりにつきましても今後議論をいただければというふうに思っておりますので,先ほどは時間の関係で省略しましたので,補足させていただきます。

 

 

 

 

  •  先ほど○○委員の方から,契約上の地位を移転するという話が出たのですけれども,それは財産の解釈の問題である,処分の解釈の問題であるというふうにも整理できるのですが,あるいはここの強制執行における「受託者の権限に属する行為により生じた権利」という問題なのかなという気もするのですね。
  • つまり,それが信託に属する債務であると。
  • その当該請負契約によって生じる相手方が有するに至る権利というものが信託財産に属することによって具体的にはどういう効果が生じるのかというと,相手方から見ますと,信託財産を差し押さえることができる,当該請負代金の未払いのときに差し押さえることができるという話になるわけでありまして,もちろん受託者から見ますと,自分で仮に支弁すると,信託財産に対して求償していけるとか,そういう話が出てくるのですけれども,そうしたときに,私,実務のことがよく分からないのですけれども,この「受託者の権限に属する行為により生じた権利」というものが,本当にある種の信託が動き始めた後に発生するという場合だけなのか,それとも,これが実は前から発生するという場合もあるのかという問題もあるのかなと思いながら伺っていたのですけれども,それは恐らく信託前の原因によって生じた権利とは違うのだと思うのですね。これは信託財産についてですから。

 

いや,それだけの話で,まだまとまっているわけではございませんけれども。

 

 

 

  •  信託法の16条で,信託財産は後から来るにしても,その信託財産に強制執行していけるような債権がどの段階で発生し得るのかという問題ですよね。そういうふうに16条の問題も関連してくるということだと思います。

この報告書,皆さんお読みになって,非常に分かりやすい報告書なので,お分かりになると思いますけれども,信託の設定のところの担保権の設定のところでさらっと書いてありますけれども,先ほどから議論になっているように,信託の設定としてというか,要するに担保権の設定という形で信託を設定することができるという問題は,ある意味で,被担保債権であるその債権と担保権の帰属者が分離することを認めることになる。

 

例えば社債なんかで言えば,社債権者がいて発行会社があるわけですけれども,そのとき,担保権だけが別の受託者のところに帰属するという状態を作ることになって,これは信託法があるからできるという問題なのか,もうちょっと被担保債権と担保の附従性という原則をどこかで緩和するような議論をどこかでしなければいけないのかと,そんなような問題も実は含まれているけれども,さらっと書いてありますので,理論的には難しい問題があることを御承知いただければと思います。実務的な要請は非常によく分かるのですけれどね。

 

  •  さらっと書いてありますが,それはおっしゃるのは附従性の問題かと思いますけれども,我々が考えているのは,附従性は何をねらっているかというと,担保権を実行して弁済を受ければ債務が消滅するという関係が維持されていれば,附従性を要件とした目的は達せられるのではないかと。
  • そうすると,信託の場合でも,その担保権の実行によって債務が消滅するという関係が維持されていれば,担保権の設定を認めていいのではないかという考えに基づいて書いているところでございますので,よろしくお願いいたします。

 

 

 

 

  •  ただ注意を喚起しただけでございますから。

ほかにいかがでしょうか。

 

  •  これまで何回も議論になっている,要物性,あるいは信託の設定に関するところで,ちょっとコメントさせていただきたいと思うのですが。

信託の設定,信託の成立と受益権の発生というのが,これは一致しないといけないものなのかどうかという点が,先ほど○○委員から,受託者の責任がいつ生ずるかという観点からの御指摘がございましたけれども,受益権の発生時期と信託の成立時期,これも論理的には分かれ得るので,特に実務的には,恐らく,私はよく知らないのですけれども,例えば,信託財産はまだ来ていないけれども受益権は販売したいと。

 

あるいは,これは受益権ではなくて,もうちょっと正確に言うと,受益者たる地位を引き受ける,そういう地位みたいなものが観念されるかと思うのですが,やはり信託の成立と受益権の発生時期というのは論理的には分けられる可能性が高く,それで,この受益権の発生時期というのは,○○委員が先ほど御指摘されたように,多分,財産の処分というのと非常に密接に関連してくると思うのですが,信託の成立をどう見るかということは,またそれとは別にも考え得るのかなというふうに思いましたので,発言させていただきました。

 

  •  先ほどから議論を伺っていると,信託の成立というのでしょうか,今のように,受益権との関係で信託の成立と必ずしも連動させなくてもいいかもしれない,それから,いろいろな受託者の義務の問題も,これはできるだけ最初からというふうにしたいということなのでしょうけれども,それから,○○幹事が言われた,どの債権が信託財産にかかっていけるかという問題,いろいろな局面が「信託の設定」という一字によって全部決まってしまうのか,いろいろ違うのかとか,そういう非常に難しい問題が提起されているように思います。

 

 

 

  •  正に今のお話についてですけれども,民法で要物契約とされるのは,先ほど来出ていますように消費貸借契約等が挙げられているわけですが,これは民法でも,広中先生以来でしょうか,要物性というのは何ゆえに要求されるのかという議論があって,歴史的な研究から,本来は無償契約なんだけれども,しかし,物が渡されてしまうと,契約していない,あるいは契約をやめるとか,そういうようなことは言えないと。
  • ですから,物が渡されてしまうと,もう契約をしたことになるのだ,もう後戻りはできないと。これは当事者間の関係ですね,あくまでも。

そういう意味で,この成立の時期をこうやって画するというような議論があったというところからしますと,今の○○幹事のお話,あるいはその前のお話から考えますと,ちょっと違う形で要物性というのを考えてこられているのかなという感じがちょっとします,信託に関しては。当事者間の,委託者・受託者間の関係で,いつ,契約をしていない,あるいは信託をしていないと言えるのかというような観点から見ていきますと,何ゆえに要物性というのが要求されないといけないのかというのは,ちょっと理論的にも詰めないといけないところかなという気がいたします。

 

  •  民事といいますか,特に報酬も何もないような民事の信託ですと,一種の無償契約的な性格もあるのですけれども,商事の信託は基本的に違いますからね。契約だけでもって受託者の義務などが発生して構わないという考え方は十分あり得る。

なかなか,これからだんだん詰めていきたいという議論で,直ちにいい方向が出ているわけではございませんけれども,もし特に御意見がなければ,ちょっと休憩しましょうか。

 

それでは,これから休憩いたしましょう。その後に再開したいと思います。

 

(休     憩)

 

  •  それでは,時間になりましたので,再開したいと思います。

では,続きの説明を○○幹事からお願いします。

 

  •  それでは,先ほどに続きまして,善管注意義務,忠実義務,分別管理義務,それから信託事務処理の委託の問題につきまして,順次御説明を申し上げます。

まず,報告書39ページ以下の「第18 善管注意義務等について」というところでございます。

 

受託者は,信託財産の所有者となるとはいえ,実質的経済的には自己の財産を管理するものではなく,信頼を受けて,信託行為の定めに従い,他人の財産を管理するものでございますので,受託者が信託事務を遂行するに際して用いるべき注意義務は,自己の財産におけると同一の注意では足りず,善良なる管理者の注意であることが信託法20条において明らかにされているところでございます。

 

ところで,この現行法の20条を御覧いただくと,「受託者ハ信託ノ本旨ニ従ヒ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ信託事務ヲ処理スルコトヲ要ス」と書いてございますけれども,この条文につきましては,「信託ノ本旨ニ従ヒ」という文言が「善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ」というところにかかり,受託者の注意義務の基準が任意規定であることを示しているのか,それとも,「信託事務ヲ処理スルコトヲ要ス」にかかり,受託者が処理すべき信託事務の内容について明らかにしたものなのか,不明確であるというような指摘がございます。

 

そこで,この報告書では,信託事務処理遂行義務と,受託者の注意義務の基準とを明確に分けて規律することが相当と考えたものでございます。

 

まず,太字の1でございますけれども,これは,受託者が負う善管注意義務の前提となる債務の内容として,受託者が信託行為の定めに従い信託事務を処理する義務を負うことを明らかにしたものでございます。

 

続きまして,太字の2のところでございますが,これは,受託者が信託事務を処理する際の注意義務の基準に関するものでございます。

 

なお,「信託行為に別段の定めがない限り」とすることによりまして,受託者の善管注意義務に関する規定が任意規定であり,私的自治の観点から加重・軽減できるものであるということを明らかにした趣旨でございます。

 

続きまして,太字の4でございますけれども,これは,信託財産が金銭である場合の管理方法を定めた現行法21条を削除するというものでございます。

 

現行法21条及びこれを受けた勅令がございまして,これによりますと,信託財産が運用方法について指定も特定もない金銭の場合の管理方法を,公債ですとか銀行預金など極めて安全性の高いと思われる運用方法に限定しております。

 

しかしながら,信託財産が金銭の場合のみ管理方法を限定することは過剰な規制に当たり,合理性がないと考えられます上に,信託財産が金銭の場合においても受託者は善管注意義務に基づいて管理しなければならないわけでございますから,これをもって足りると考えまして,削除をするということでございます。

 

 

最も問題となると思われますのが,最後に太字の3のところでございまして,これは,善管注意義務の個別具体的な規定の要否に関するものでございます。

 

ところで,米国統一信託法典などを見ますと,信託事務の遂行における受託者の注意義務に関する総論的な規定を置きました上で,この義務を具体化した多数の規定を置いているところでございます。

 

また,当報告書の母体となりました研究会におきましても,例えば第三者に対する信託事務処理の委託,信託事務処理におけるコストの負担,特別な能力を有することを表示した場合の責任,あるいは信託におけるいわゆるプルーデント・インベスター・ルールの採否等の諸点を中心に,個別具体的な内容の規定を設けるべきではないかといった指摘もなされたところでございます。

 

 

 

 

しかし,考えてみますと,まず第一に,善管注意義務の個別具体的な内容は,信託目的,信託条項その他の当該信託にかかわる諸事情によって異なり得るところ,どこまで具体的な内容の規定を設けるべきかについては明確な基準がないということがございます。

 

第二に,信託特有の柔軟性を生かして今後様々な形態の信託スキームの発展が予想されることからいたしましても,個別具体的な内容の規定を設けることについてはそもそも限界がありますし,かえって足かせにもなりかねないという事情がございます。

 

また,UTCなどにあります個々の規定が内容とするところについては,いずれも善管注意義務の一般的規定の解釈から導き出すことも可能と考えられるという事情がございます。

 

以上の諸事情を踏まえますと,善管注意義務につきましては,一般的な規定を設けるにとどめ,それ以上に個別具体的な内容の規定を設けることとはせず,解釈に委ねることが相当ではないかというのが,ここに書いてある趣旨でございます。

 

以上で善管注意義務についての説明は終わらせていただきます。

 

 

 

 

 

続けて,43ページからの「第19 忠実義務について」のところに移らせていただきます。ここは重要な問題がありますので,少し詳し目に御説明を順次申し上げてまいります。

 

忠実義務とは,受託者が専ら信託財産あるいは受益者のためにのみ行動すべきであるという原則でございまして,現行法には一般的な忠実義務を明確に規定しているものはなく,受託者と信託財産との間の取引を禁止する信託法22条があるにすぎませんが,しかし,この22条の基礎には忠実義務の考え方が前提になっているとしまして,広く忠実義務をもって受託者の義務として認める見解が一般的でございます。

 

ところで,現行法22条第1項を見ますと,これは,受託者が信託財産を固有財産とすること,それから信託財産について権利を取得することを禁止しておりますが,この規律につきましては,受託者と受益者の利益が対立するのはこれらの場合に限られないから規律対象として狭過ぎるという批判でございますとか,信託財産に対する権利取得の禁止について現行法が一切例外を認めないのは信託事務処理の円滑を損なう結果をもたらすなどの批判がされているところでございます。

 

このように,そもそも22条の規定は,信認関係に基づく受託者の基本的な義務であります忠実義務の根拠規定としては,形式的にも内容的にも不十分であると言わざるを得ず,根本的な立法的解決が望まれているところでございます。

 

そこで,具体的にこの報告書の中身に移らせていただきますが,まず,太字の1でございますけれども,現行法には受託者の忠実義務に関する一般的な規定がなく,体裁に欠けるとの批判があるところでございまして,受託者は専ら受益者の利益のために行動すべきであるという原則を一般規定として明文で示すことは,受託者による信託事務処理の指針を示すという観点からも意義があると考えられます。

 

次に,太字の2(1)でございますが,これは,受託者の利益相反行為,すなわち,受託者の行為によって信託財産ないし受益者に利益又は不利益が生じるおそれがある場合,このような場合の行為の禁止に関するものでございます。

 

ところで,受託者による利益相反行為といたしましては,受益者と受託者の利益が相反する場合,受益者と第三者との間で利益が相反する場合,更には,複数の信託を受託しております場合には,一方の信託の受益者と他方の信託の受益者との間で利害が相反する場合と,三つの場合を想定することができるわけですが,ここでは,今申しました三つの場合のすべてを包括的に禁止対象として捕捉しようとするものでございます。

 

続きまして,太字の2(2)でございますが,これは,利益相反行為の禁止の例外に関するものでございます。

 

ところで,利益相反行為の禁止といいますのは,受益者の利益を保護することをその目的といたしますので,受益者の利益が害されるおそれがない場合まで形式的な基準に基づいて利益相反行為を一律に禁止することは,私的自治に対する過剰な介入にも当たり,相当ではないと考えられるところでございます。

 

そこで,問題となる利益相反行為を受託者が行うことにつきまして,まず,①として,あらかじめ信託行為で許容している場合,それから,②といたしまして,重要な事実の開示を受けた受益者の承認がある場合,これらにつきましては,受益者の利益が害されるおそれはないと考えられますので,このような場合について禁止の例外を認めたものでございます。

 

 

 

 

問題は,①,②以外に,更に第3の例外を認めるべきか否かという点でございます。

 

ところで,受託者が行う可能性のある利益相反行為を信託行為の中にすべて記載するということは不可能でございますし,受益者が多数の場合には,受益者全員の承認を得ることが困難な場合もあり得るところでございます。

 

更に,受託者が信託行為で許容されていない利益相反行為を行おうとするならば,信託行為の変更で対処すればよいとの考え方もあり得るかとは思いますが,問題となる行為の中には,一回限り行われるにすぎないものもございますので,このような行為のすべてについて一々信託行為の変更をするというのは迂遠であると考えられるところでございます。

 

そういたしますと,信託行為の定めや受益者の承認がない場合でも,利益相反行為の例外を認めることが信託財産の効率的な運用機会の確保や信託事務の円滑な処理をもたらし,ひいては受益者の利益にも資すると考えられるところでございます。

 

そこで,第3の例外として,その行為がなされたときを判断基準時といたしまして,「受益者の利益を害しないことが明らかであるとき」という厳格な要件に絞って例外を認めたものでございます。この例外要件に当たる行為といたしましては,定型的な取引条件による行為のほか,個別的でありましても,市場価格ないし時価による取引などが含まれると考えているところでございます。

 

 

番人

「不動産の場合、利益相反取引に関する定めは登記する場合と登記しない場合がある。登記しない場合は、登記原因証明情報で明らかにしておく必要があるんだろうね。」

 

 

 

続きまして,太字の3(1)でございますけれども,これは,受託者の利益取得行為,すなわち,受託者の行為によって受託者が利益を取得するものの,信託財産ないし受益者には利益も不利益も生ずるおそれがないという,いわば信託財産には無関係な場合についての行為の禁止に関するものでございます。

 

忠実義務は,受託者が専ら受益者の利益のために行動すべき義務を申しますので,受益者に損害を与えないことから直ちに受託者が得た利益がいかなる場合も正当化されるものではないと考えられます。

 

そこで,受託者による利益取得行為の禁止規定を設けることが妥当と考えられますが,禁止される行為類型の広狭に応じまして,甲案,乙案の2案を示したものでございます。

 

甲案でございますが,これは,受託者の利益相反行為が禁止されるのは,信託事務処理に当たって利益を得ることに限るとするものでございまして,いわゆる英米で言うノープロフィット・ルールと言われるものに対応するものでございます。

 

例えば,受託者が第三者に信託財産を売却したことに関連して受け取ったリベートは,ここで言う利益に含まれると考えられるものでございます。

 

これに対しまして,乙案といいますのは,受託者が信託事務の処理に当たって利益を得ることに限らず,受託者の地位を利用して利益を得ることを広く禁止するものでございまして,甲案と異なり,この乙案によりますと,受託者が信託の有する情報を利用して利益を得る行為というものまで禁止されることになると考えられるところでございます。

 

最後に,太字の3(2)でございますが,これは,利益取得行為の禁止の例外に関するものでございます。①,②の例外を設けたこと,それから,これに加えて,③として,行為がなされた時を基準時として,受託者がその行為を行うことについて正当の理由があるときには禁止の例外を認めることとしたということ。

 

その理由は,さきに利益相反行為の禁止の例外の中で申し上げたところとほぼ同様でございます。この例外に当たる行為といたしましては,例えば信託不動産を売却する際に,受託者が買主側の仲介業者となって正当な手数料を収受するような行為はこれに当たるのではないかと考えているところでございます。

 

以上で忠実義務の説明は終わらせていただきます。

 

 

 

 

続きまして,51ページ以下の「第21 分別管理義務について」というところに移らせていただきます。

 

ところで,受託者の分別管理義務の具体的内容には二つございまして,第1は,信託財産は受託者の個人財産から分離して管理されなければならないこと,第2は,受託者が複数の信託を受託している場合には,それぞれの信託財産を分離して管理しなければならないということでございまして,受託者はこれらの財産を混蔵して管理してはならないということでございます。

 

このように受託者に分別管理義務が課される趣旨につきましては,受託者個人の債権から信託財産を隔離するということにその本質的な意義があると理解しておりまして,このような効果を生み出すために,その財産をその性質に応じて最善の方法で管理すべきであるという義務を課したものであって,信託財産に対する強制執行の制限とともに信託制度の中核をなすものであると考えております。

 

したがいまして,新制度におきましても,この義務については維持すべきものと考えているところでございます。

 

そこで,具体的に報告書の内容でございますけれども,まず,太字の本文の原則によりますと,受託者は,信託財産となる財産を,まず第1に,登記又は登録することができる財産にあっては,信託の登記又は登録を行うこと,それから,登記・登録のできない財産にあっては,当該財産の性質において最善の状態で受託者の固有財産あるいは他の信託財産から分別して管理すべきこと,となると考えております。

 

なお,ここで「最善の状態による管理」といいますのは,物理的な分別管理が可能なものであれば,帳簿等の計算管理にとどまらず,物理的な分別まですべきものと考えているところでございます。

 

なぜならば,信託財産に属する財産が何であるか,あるいはその現状,特にその財産に損失が生じているか否かというような点を確実に把握するという点,あるいは受託者による忠実義務違反行為の未然防止というような観点からいたしますと,あくまで物理的な分別をすることをもって原則的な管理方法とするのが相当と考えられるからでございます。

 

これに対しまして,物理的管理を観念し得ない金銭債権のようなものにつきましては,帳簿上の計算管理をもって最善な分別管理義務を果たしているというふうに考えるものでございます。

 

以上が原則でございますが,このような原則的なルールを定めた上で,更に,例外といたしまして二つ設けることといたしました。その一つが,信託財産が登記・登録できない財産である場合において,信託行為において特約を設けた場合,①でございます。

 

もう一つは,信託財産が金銭である場合,②でございます。このような例外を設けておりますのは,受託者の固有財産からの分別をすべての財産についての強行規定と解するときは,信託財産を効率的に管理・処分することが困難となるほか,金銭について固有財産と分別して管理することは実務上現実的ではない等の指摘を踏まえたものでございます。

 

以上が分別管理義務についての説明でございます。

 

 

 

 

 

最後に,53ページ以下の「第22 信託事務処理の委託について」というところについての説明に移らせていただきます。

 

現行法におきましては,信託は,受託者に対する個人的・主観的信頼を基礎とする財産管理制度であるというふうな理解をされておりまして,その信頼を保護するために,受託者自らが信託事務の処理をしなければならないものとされ,受託者が他人に対して信託事務処理を委託することは原則として認められておりません。

 

しかし,信託法制定当時に比べまして社会の分業化・専門化が進んだ現代社会におきましては,信託事務処理のすべてを受託者が行うことができることを前提とすることは現実的とは言えず,むしろ,他人に対して信託事務処理の一部を委託することが常態であることを前提とする方が望ましいと考えられるところでございます。

 

そこで,まず,太字の1でございますが,これは,現行の規律を改めまして,信託行為に別段の定めがない限り,受託者は善管注意義務のもとで信託事務処理を他人に委託できるとするものでございます。

 

受託者としては,善管注意義務のもとで信託事務処理を他人に委託すべきか否かを判断すべきであり,その方が,受託者に自己執行義務を課すよりも信託目的達成のためには良好な結果をもたらす可能性が高いと考えるものでございます。

 

次に,太字の2でございますけれども,これは,信託事務の処理を委託した受託者の責任に関する規律でございまして,ここは現行法と同様に,受託者は委託先である他人について原則として選任・監督責任を負うとしたものでございます。

 

次に,太字の3でございますが,これは,信託事務処理を委託された者の責任に関するものでございます。

 

このうち,まず甲案といいますのは,受益者保護の観点から,受任者,第三者に対して受託者と同一の責任を課すこととするというものでございまして,したがって,受益者は,直接の契約関係のない第三者に対しても信託財産に対する損失てん補責任等を問えることになるわけでございます。

 

ただし,受託者と同一の責任を課す範囲を合理的な範囲に制限するために,二つの制限を設けました。

 

一つは,信託事務処理の全部又は重要な一部の委託を受けることを要することとするということ,それから,受任者,第三者が予想外の責任を負うことのないように,第三者はその委託された事務が信託事務の全部又は重要な一部であること,すなわち契約相手方である受託者の背後に受益者等が存在するということを認識していることまで要するとしたものでございます。

 

これに対しまして,乙案というのは,信託事務処理の委託を受けた者が受託者と同一の責任を負うとの規定を不要と考えるものでございます。

 

この考えのもとにおきましては,受益者は第三者に対して直接責任追及することはできなくなりますが,受益者の救済は,不相当な委託をした受託者の善管注意義務違反又は選任・監督上の注意義務違反を追及することなどによって図ることが可能になると考えているところでございます。

 

とりあえずの説明は以上で終わらせていただきます。

 

 

 

  •  それでは,今の善管注意義務から信託事務処理の委託についてまで,この間で御意見をいただきたいと思いますが,いかがでしょうか。

 

 

 

 

 

  •  私ども信託銀行が今回の信託法改正の中で最も重要視している部分について,少しお話しさせていただきたいと思います。

正に忠実義務のところでございまして,忠実義務につきましては,私ども,信託銀行という名前ですので,設立したときから信託業務と銀行業務をやっている,生い立ちからそうだということです。それをまず御理解いただきたいと思います。

 

現行法では,先ほどお話がありましたように,信託法22条で,信託財産の固有財産化と信託財産に対する権利の取得,これを禁止したにすぎない規定になっておりますけれども,今回の御提案の中には,一つは,忠実義務の一般規定が入りましたと,それと,禁止の行為類型として利益相反行為と利益取得行為,この二つが入ったということでございます。

 

ここの部分につきましては,一般規定に真っ向から反対するつもりは全然ありませんけれども,この辺のところを非常にリジッドに解釈されますと,またその外延が明確でない限りにおいては,私どもは非常に脅威に感じております。ということが意見としての1点です。

 

ただ,一方で,長年の要望が認められた部分といいますのは,忠実義務についての禁止規定の例外規定として,信託行為,それと受益者の承認,これによって例外が認められたと。これは非常に歓迎しております。

 

それとプラスアルファで,利益相反行為については,「害しないことが明らかである」というものと,利益取得行為のときにも「正当な理由」というものが入ったということですので,ここら辺の部分については,歓迎もしておりますけれども,その解釈というものもいろいろあると思いますので,この辺の更なる御検討をお願いしたいということです。

 

 

 

 

 

それと,第3の例外のところでもう一つつけ加えますと,利益取得行為の場合の例外のところでございますけれども,利益取得行為というところの例外というものを前提とした場合におきましても,甲案,乙案というのが出されておりますけれども,やはり,実務上の観点からいくと,甲案でないとなかなか回らないなというところがございます。

 

それは,先ほど申し上げたように,信託兼営銀行でございますので,基本的に信託業務で行っているところの情報と銀行業務で行っているところの情報を共有していることが非常に多いということが一つです。

 

特にカストディ業務におきましては,信託勘定というものからお金を貸して,一方で銀行勘定というところからお金を貸している,それの担当者が一人ということですから,正に一人で共有しているという状況にあります。

 

ですから,情報の利用,こちらの方についても,禁止について非常にリジッドに解釈されますと非常に困るというところもございますので,甲案,乙案というふうに書いていただいていますので,そこについては甲案でお願いしたいと。

 

 

 

 

それともう1点,これも報告書の中に書いておりますけれども,ノープロフィット・ルールのところにつきましても,やはり汗水たらして仕事をした対価として得ているものもあると。

 

例として挙げていただいていますように,信託勘定の不動産を売却する場合において,相手方の買手の仲介業者として普通にそういう仕事をしている,それに対して対価を得ているというのは,反射的に利益取得行為になるということだけではないかと思いますので,その辺のところの御配慮もお願いしたいと。

 

済みません,ちょっと数多く言いましたけれども,4点ばかり御意見を述べさせていただきました。

 

 

 

 

 

  •  善管注意義務について,まず一般的な質問なのですが,アメリカなんかを見ますと,この善管注意義務については業態によって別個のルールを定めるというように,いわゆる私法におけるルールと,レギュレーションにおけるルールと分けているということを聞いております。

今般,別途,投資サービス法が検討されるというふうに伺っているところなのですけれども,そこで,この場での議論というのがどういう方向,どういう位置づけなのかということを明確にしておいた方がいいのかなと思って,まず1点御質問させていただきたいのですが,ここではあくまでも,そういった業態によったレギュレーションですね,多分,銀行によっては特別な善管注意義務を定めなければいけないとか,また,投資家への配慮に基づくルールを持たなければいけないという,そういうことについてはまた別のところで議論されるべきものであって,あくまでも信託一般の共通項的な議論,受託者等の善管注意義務を議論すると,そういう認識でよろしいのでしょうか。

 

 

 

 

  •  それはそのとおりですね。
  •  おっしゃるとおりでございまして,ここは,民事・商事を問わず私法の一般ルールとしての善管注意義務を定めているものでございまして,レギュレーションが業法的な規制ということとすれば,それによって受託者がより厳しい義務を負うというようなことについては,ここでの問題ではなくて,業法規制の問題と考えているところでございます。

 

 

番人

「一般ルールとしての条文通りの善管注意義務については信託目録に登記できるけど、する必要は感じられないね。信託業法の適用を受ける人は強制だ。義務の軽減を定めたとしても登記するケースは限られるんじゃないかな。」(業法28条2項)

 

 

  •  忠実義務について,先ほど○○委員がおっしゃったことの補足をしたいと思います。

私ども,専業信託でなくても,ほかの銀行の場合でも,やはり忠実義務というものは非常に大きな問題でございます。といいますのは,もちろん私法上の問題もございますけれども,これは業法の問題が出てきますが,兼営法の10条を介しまして,これに違反すると,いわゆる行政罰といいますかペナルティーがかかるということでございまして,実務的には,これは,コンプライアンスの問題も含み,非常に大きな問題というふうに認識しておりますので,何とぞ,ここについては非常に柔軟にしていただきたいというふうに思っております。

 

 

ポリー

「兼営法の10条って違反すると、国から業務停止や認可の取り消しがされて仕事ができなくなってしまいます。」

 

 

 

具体的な問題事例を若干御紹介いたしますと,二つございまして,銀行においての例でございますが,一つは,いわゆる銀信取引というものがございます。

 

それは,受託行として預かった資産について運用すると。

 

特に短期の資金の運用については,通常は普通預金で運用するというのが一番いいと思うのですが,ただ,それを他行で運用しろというふうになりますと,送金をして,その度に手数料を取られるというのもちょっと問題ですので,やはり自行で運用したいというのがありますが,現行の考え方によりますと,自行預金というようないろいろ議論はございますけれども,なかなか難しいかなと。

 

実務的には,銀貸しという対応をしていることもございますけれども,いずれにしても,やはり制約をされているということでございます。

 

ここで,一定のルールのもと,こういう取引ができれば,受益者にとっても資するものではないかというふうに思っております。

 

 

ポリー

「銀貸しは、銀行勘定貸の略です。今は、信託法、兼営法、で一定の要件を満たせばできることになっています。」(法31条2項)(兼営法は4条かな。)

 

 

もう一つの類型は,いわゆる銀行の貸付債権と信託勘定からの貸付けとの利益相反の問題でございまして,それは具体的な問題は回収の時点で生じるわけです。

 

その問題は,例えば社債管理会社における利益相反の問題も絡みますけれども,そうした場合に,一体銀行としてどういうふうな回収,資金を同一の債務者から配分していけばいいのかということでございます。

 

現状は,プロラタ型で配分することが忠実義務の観点からも穏当な配分ではないかというふうに 言われておりますけれども,そこについてある程度の柔軟性を認めていただきたい。

 

 

すみれ

「プロラタ型って債権額とかに応じて比例式で回収する金額を決めるんだって。3万円返済があれば、銀行へ1万円、信託勘定へ2万円とか。」

 

 

例えば,銀行勘定は担保付であった,それで信託勘定はそうでなかったといった場合,またそのいろいろな条件が違った場合に,なおプロラタで配分しなければならないかとか,いろいろな疑問がございますものですから,ここでデフォルトルール化ということがあれば,非常にやりやすいと思います。

 

このような利益相反の問題は,実は第21の「分別管理義務について」のアステリスクのところでございますけれども,銀行の貸付けにおいて銀行が抵当権者という場合に,信託勘定から貸している債権と,銀行勘定から貸している債権と,配当があったときにどう回収していったらいいのかという問題にもつながり得ることでございますことをちょっとコメントいたしたいと思います。

 

 

 

  •  私は,信託事務処理の委任について発言したいと思うのですけれども。

実際に信託事務の委任でどの程度どういう種類のものを委任されているのかというのは詳しく知らないのですけれども,流動化という観点でだけお話しいたしますと,オリジネーターの方が,信託したクレジット債権について,回収,取立ての関係,これを委任を受けるというケースがございます。この場合であれば,通常,自己のほかの債権と同様に口座引落し等の方法によって集金をすると。

 

これを信託銀行との間で定められた期日までにお支払いをするということをやっていくわけなのですけれども,現実問題として,非常に低額な金額で,ここをたくさん取ってもしようがないところもございますので,単なる事務だけをやっているということがございます。

 

こういったものについても,当然,オリジネーターとしてスキームに深く関与しているわけですから,こちらの甲案の方であれば,かなり大きな責任を負うということになりますけれども,実際に問題が発生するというときは,やはりオリジネーターの倒産とかそういったことになってしまいますので,実際上,受託者の方に重い責任を負わせたとしても余り意味はないのではなかろうかと思いますので,ここのあたりは乙案のような形というのが実態上はワークするのかなというふうな感想を持っております。

 

 

番人

「信託事務処理の委任について、登記する必要は感じられないね。」

 

 

  •  私は,今,四つの義務の説明がありましたね,その四つの義務の関係について,少し総論的な質問が一つ,その後,具体的な話のところで一つ二つ質問させてもらいたいと思うのですが。

 

 

まず第一に,善管注意義務と忠実義務と分別管理義務と自己執行義務に関するような話を四つ並べて,最後の部分は,この文面にあるように,善管注意義務のもとに委託だか委任だか何かという話ですから,いわば善管注意義務の系の話ですから,そうすると三つの話になりますね。

 

私の理解によれば,それが間違っている場合があると思うので訂正していただきたいと思いますが,

 

善管注意義務については,もうはっきり任意規定であるということを明示し,忠実義務については,諮問の中にもはっきり任意規定化するということを言っているわけですが,

 

 

 

分別管理義務のところは,この二つの例外を除いては強行規定であるというふうに解するのかなと思っているのですが,これはどういうことなんだろうかと。

 

これは多分,一番初めの信託の定義のところと絡んでいて,信託の本旨は分別管理にありということなんだろうかと。それは一つの立場なのですが,何だかなという感じが私自身はちょっとするのですね,本当は。

 

当事者だけの関係で言えば。なぜ分別管理のところだけがこんなにもというのが……。それは感想なのですが,まず,この理解が正しいのかどうかだけ確認しておきたいと思いますが。

 

 

  •  おっしゃるとおり,分別管理義務は,それは信託にとってかなり重要な義務という認識もございますが,今,強行規定とおっしゃいましたけれども,登記・登録できるものは確かに登記・登録をしなければいけないわけですが,それ以外のものであれば特約で外せますので,ここは任意規定ということになります。

 

 

 

問題は,登記・登録できるものは常にしなければいけないというあたりにつきましては,実務上は必ずしも直ちに登記・登録しない場合があると聞いておりますが,そこはかなり柔軟に考えておりまして,結局,とりあえず登記・登録をしなくても,最終的に受託者が危機に瀕したときは登記・登録をすることによって信託財産の独立性を確保するというぐらいの意思があれば,そこは分別管理が果たされているというふうに考えますので,強行規定といいましても,最後の最後の局面でそれがきいてくるということで,それほど厳格な意味で強行規定と考えているわけではないということでございます。

 

 

すみれ

「緩やかな意味での強行規定かな。」

 

 

  •  私がきっと十分理解できないのか,こちらの側の責任かもしれないので……。でも,御趣旨は半分は理解いたしました。

 

それで,細かなところで,善管注意義務のところなのですが,これは結局,善管注意義務の基準の話があって,基準を弾力化していいよという,そこが任意規定の意味だということが書いてあって,その中で,基準のとり方について,アメリカのルールで書かれてあるのは二つ。

 

一つは,やはり専門家と素人という基準,これが日本語では専門家と素人というのでは分からないという話になるので簡単に入れにくいという話があって,それはむしろ善管注意義務を負っているところの受託者の実際の態様というのですか,あるいは類型によって判断していこうということかなと思うのですが,もう1点あって,アメリカのルールでは,本人が専門家であるかどうであるかはともかくとして,専門家であると表示した,こういうものについて非常に知識があるというふうに表示した場合は,それがその基準になるのだという話が明文で出ているのですが,これも善管注意義務という概念というのかな,その解釈で,日本法のもとでは,表示したところのレベルまで責任が上っていくというか,そういう形で基準が定められるのだというふうに考えてよろしいでしょうか。それとも,それはまた解釈論の話で,簡単に言えないような話なのか。これは質問なのですが。

 

 

 

  •  そこは,表示をすれば,それが善管注意義務の基準になるというふうに考えております。他方,表示がなければ,たとえ非常に高い能力を持っている者でも,それが基準になるものではないと。あくまで,表示があった場合はそれが基準になるというふうに考えております。
  • 表示がなければ。

例えば,弁護士ということを前提として信託を受けていれば,その弁護士としての能力が善管注意義務の基準となりますが,弁護士の中で特に特定の分野について非常に高い能力があるといたしましても,それを表示していない限りは,あくまで弁護士としての水準の事務処理をしていれば,善管注意義務は満たされると。それより高い特別の能力の使用までしなければいけないというわけではないというふうに考えているところでございます。

 

すみれ

「名刺とかかな。」

 

 

  •  続けてよろしいですか。

 

 

今度は忠実義務について2点ですが,大きな話と小さな話。

 

大きな話は,忠実義務の例外の定め方の問題なのですが,例えば,私が知っている例で,典型的な自己取引で,自行預金というのがありますね。自分のところへ預金をするのだという話なのですが,それをどういう形で外しているかというと,アメリカでは,OCCのレギュレーションか,あるいは各州の制定法でもはっきり外している例があって,それはいいよということになっているのですけれども,逆に言うと,信託の一般法ではそういう形では外していないのですね。

 

だから,日本で業法と私法との関係というのが先ほど一回問題になりましたけれども,業法というと,こっちで一般法は任意規定化しておいて,業法になると規制法だから強行規定化するような部分があるような,そういう加重するような話を連想するかもしれませんけれども,場合によっては,ここで問題になっているような業種のものについては業法の方でむしろ外しているわけですよね,一般私法よりも。

 

だから,そういうような業法というのもあり得るということを考えると,そういう外し方もあるのかなというふうに思うのですね。

 

参考になるのかどうか分かりませんけれども。

 

これは,一般私法のところで,「受益者の利益を害しないことが明らかであるとき」というような極めて一般的な規定で外しておこうということなのですが,そういう外し方もあるかもしれないけれども,そういう外し方でない,業法と一般私法との役割分担というのもあり得るというのは,これはコメントです。

 

 

すみれ

「規模も責任も違うわけだから、そういう考え方もあると思います。」

 

 

二つ目は,今度は具体例として,これも私の理解が十分なのかどうかなのですが,受託者の忠実義務で,利益相反行為が禁止され,しかしこういう形の場合には例外となりますよというので,その③ですが,「受益者の利益を害しないことが明らかであるとき」というので,46ページのところで,この要件を満たす行為としては,

 

 

例えばというので,個別的な取引のうち市場価格によるようなものを挙げておられて,しかも,その判断時は受託者の行為時であるというふうに極めて明確な表現になっておりますね。

 

 

 

そうすると,これはだから自己取引を考えればいいので,信託財産としての不動産を,受託者である私が,この時点での市場価格であるところの,何でもいいのですが,1,000万で買うわけですね。3年たってそれが3,000万になるのですね。そういう夢のようなことがあるといいと思うのですが。

 

それで,私の方はそこで利益を得るのですが,そのときに,これは後の甲,乙案との話になりますが,やはりその時点で何らかの,非常に確実な情報かどうか分かりませんが,私の方で情報を知っていて,それで利益を得るというようなことが,今の例が本当にいいのかどうか分かりませんが,やはりあり得るとは思うのですね。

 

それがやはり,この原案で利益相反行為の禁止の例外がこういう形で定めてあって,かつ,3のところで甲案の方だけでとられると,あるいは甲案によっても解釈にもよるかもしれませんが,構わないということになるのかどうか。

 

ちょっと設例が少し恣意的な例だったかもしれませんが,そういう例だったらこうなるんだよというようなことを教えていただければ有り難いと思います。

 

  •  今の最後の例は,例えば信託財産である不動産を買うというような例を考えているわけですね。

 

  •  そうです。
  •  今までの伝統的な考え方だと,どちらかというとそれは利益相反行為の方,2の方の問題と考えられていたわけですね。今,○○委員は2と3を組み合わせたのですね。

どうですか。もし何かあれば。

 

  •  ここに書いてございますように,利益相反行為に当たるか,利益取得行為に当たるかというのは,あくまで行為時を基準にいたしますので,もしも何も情報がない,純真無垢な状態でその信託財産を取得して,たまたま後で値が上がったというときには,これは違法にならないと考えております。

ただ,46ページの中段,ここでというふうに○○委員が御指摘いただいた後,「もっとも,」というふうに書いてございますとおり,もしも事前に有利な転売先を見つけているというような場合であれば,これは言ってみれば,市場価格での取引であっても受益者の利益を害しているというふうに見ることができますので,こういう場合は利益相反行為の例外には当たらないというふうに考えているところでございます。

 

  •  いえ,今の場合は,転売先を見つけているのではなくて,当該地域の経済状況について特別な情報を既に得ているという話なのですが。情報の利用の話ですから。
  •  そういう場合であっても,この「もっとも,」と書いてあるところと類似するというか,同じような解釈によって,やはり利益相反行為に当たるというふうに解していいのではないかと考えております。
  •  今の○○委員の例は,2と3を組み合わせているのでちょっと分かりにくいけれども,その取引の時点,要するに信託財産を買った時点では正当な価格であって,あるいは信託行為の定めがあって,利益相反行為の禁止には当たらない,2には違反しないと。
  • だけど,特別な情報を持っていて値上がりすることが分かっているというので,2よりは3の方の問題になってくるという,そういう設例なのですね。
  •  では,本当は○○委員のおっしゃるようにシンプルにするべきで,今,○○幹事がおっしゃったように,そもそも2のところでだめだよと言うことができるということですね,今のような事例だと。

 

  •  情報を持っていれば,それはだめだと。それは結局,利益を奪った,得べかりし利益が失われたということで,利益を害したと言えるのではないかと考えております。
  •  これは,こういう分類がいいかどうかということ自体も含めて,今,利益相反行為の禁止と利益取得行為の禁止,これはそれなりに合理性があって,こういう形で整理しているわけですけれども,両者にまたがるような問題とか,今,○○委員の例でちょっと思いついたわけですけれども,いろいろ複雑な問題が出てくる可能性はありますね。

 

ほかにいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

すみれ

「受益者に情報上げて、価格が上がったら少しあげますって言って買えばいいんじゃないかと思ったよ。」

 

 

  •  1点質問なのですが。

ちょっと細かいところになるかもしれませんけれども,資料の中で,利益相反行為というのが,例えば受託者と受益者の利益相反以外に,受益者と第三者との間の利益相反もありますと。その第三者との利益相反というのは,45ページの一番上の方で,要件が別に付加されますと。

 

「受益者の利益を犠牲にして取引の相手方である第三者の利益を図ったという事情が必要である」と,こういったものが含まれますという部分と,そこからずっと下の方に行って,(注3)の4行目のところで,「この第三者の中には,他方の信託の受益者も含まれると解することができる」と書いてあるのですけれども,この関係がよく分からないということです

 

。要するに,別の信託の受益者も第三者に含めるということは同じ要件で律しられるのかどうかということなのですけれども。

 

  •  今の最後のは何ページですって。
  •  45ページの一番上のところに,利益相反行為の一つの類型として,受益者と第三者との間の利益の衝突があった場合については,第三者の利益を図ったという事情が必要なんですよということが書かれていまして,一つ要件がプラスされていると思うのですけれども,そこの部分と,その下のところに(注3)というのがありますけれども,その4行目に,第三者の中には,ほかの信託の受益者も第三者なんだからということで含まれているというふうに書いてあるのですけれども,この場合の要件というのは付加された形になるのでしょうか。

 

  •  それは同じように付加されると考えております。他の受益者も第三者に当たるということで,その受益者の利益を図ったという事情は付加的に必要です。
  •  そういう事情がプラスされるということなのでしょうか。

 

  •  はい。
  •  何となく,一般的に,受益者と第三者との間の利益衝突というのは,信託勘定の普通の取引だろうと思うのですけれども,信託勘定との間というのが,それが第三者との間だったら別ですけれども,信託勘定間で取引が行われたときというのは,それを判断するのは,要は受託者が判断するということになると思いますので,そこは何か少し違うのかなという気がするのですけれども,そこは同じように律してしまっていいのかどうかという,そういう問題意識で今お聞きしていたのですけれども。
  •  ですから,今のインプリケーションというのか,今の御趣旨は,ある信託財産と別の信託財産の,要するに信託財産間の取引ですよね。

 

 

 

  •  信託財産間の例えば直接の取引がありましたというときのことを考えたときに……。
  •  それは,その加重された要件,つまり第三者と受益者の取引の場合には加重された要件があるけれども,それはかぶせるべきではないと。逆に言うと,信託財産間の取引についてはもっと慎重にやれと,そういうことになるわけですか。
  •  慎重にやれというふうにまでは言っていないのですけれども,どうでしょうかという質問をさせていただいているのですけれども。
  •  第三者と受益者の間の取引というのは,おっしゃったように普通の取引,例えば何か信託財産を第三者に売る,不動産でも有価証券でも何でもいいのですけれども,これはもうごく普通の信託の事務処理の中で幾らでも出てくるわけですよね。

 

 

ですから,これがすべて利益相反だと言われては困るので,そこで,特に相手方,第三者の利益を図るような場合にだけ,忠実義務に反するということで加重されているわけですね。

 

ですから,その重い要件を信託財産間の取引についても同じように考えるかどうかと,そういうことですね。

 

 

  •  もう一つあえて言えば,受託者と受益者の関係の重さと,信託勘定間の重さと,第三者との関係の重さと,その三つがどういう関係になるのかということです。
  •  何かありますか。

 

  •  受託者と受益者は一番重く考えておりまして,常に違法であると。受託者と第三者については,おっしゃるように加重要件がかかるということで,では受益者間はどうかというのは,今おっしゃる趣旨は,受益者間はより容易に利益相反が認められていいのではないかという御趣旨ですよね。
  • 受益者と第三者に比べれば,より利益相反になりやすいのではないかと。

私どもは,そこは第三者と受益者で特に要件は違わないのではないかと思っておりましたけれども,今の御指摘を踏まえて,そこは一度検討させていただきたいと思います。

 

  •  これは,今ここでは議論していなかったけれども,公平義務とちょっと関係する問題ですよね。二つ管理しているときに,やはりどちらかの利益を図るような行為が行われてはいけないということで,受託者としてはより慎重に行動するということが恐らくあるのかもしれませんね。それが適当かどうかを議論しようと。

 

 

 

  •  今の最後の御発言を聞いていて,ちょっとまた分からなくなってしまったところがあるのですけれども,○○委員の御発言の続きの話が一つと,○○委員のお話の続きが一つございます。

○○委員の続き,最後の点にかかわることなのですけれども,今は2の(1)の利益相反行為の成立のことで議論されていたと思うのですが,それは,第三者あるいは信信間の取引,あるいはある行為が二つの信託に同時に影響を与えるような行為,利益が相反している状態ですね,それを考えたいのですが,それは2の(2)の③でもちょっと問題になると思うのですね。今は(1)を問題にされていたのですけれども。

 

この③は,「受益者の利益を害しないことが明らかであるとき」と,かなり強い書き方になっておりますが,二つの信託にある行為が影響を与えて,利益対立するような状態で,公平にそれを両方取り扱って処理した場合というのは,この2の(2)の③を満たしたことになるのかどうか。

 

それとも,公平に扱ったという程度ではだめだ,慎重にやるべきだということになるのか。そうなると,今度は,事前に細目を書くなり何なりしておかないと身動きとれなくなってしまうような状況が出てき得ると思うのですけれども。

 

公平に扱う程度でいいというのであれば,それは表現を直すだけの問題かもしれませんけれども,本当に行為規範でそれでいいのかというのが実質の問題ですね。

 

ちょっと公平義務について第20のことを言及されたと思うのですが,これは,ある同じ信託の受益者間の公平ですので,今の話とは一応次元が違って,ただ,次元が違うけれども,信信間の取引のような場合にはそういう同じような発想が適用されると考えていいか,されてはいけないかというのが実質。

 

それで,公平に扱えばいいと考えるならどう表現するかというのが,(1)で利益相反の成立要件を書く以外に,こっちでも問題となるのです。

 

ただ,余りディスカレッジするようなことは言うべきではないかもしれませんが,そういうのを細かく,要件とこの1項,2項とを書き分けるというのが方向として本当に賢明なのかどうかというのは,やや疑問を持ってはおります。

 

非常に細かいことで申し訳ないのですけれども,ちょっと○○委員の御発言の続きでした。

 

○○委員の方の続きというのは,2と3の関係が私にはちょっとよく分からなくなってしまって。

 

一つの見方は,2は割とはっきりした利益相反行為を扱っていて,そこにうまく入らない,こぼれ落ちるのが3で拾われているような整理なのですが,もう一つの見方は,2であると同時に3であるようなことも当然あるというふうな,そういう整理もあると思うのですね。

 

○○委員の質問のような例について,ちょっとどういう意図でこの報告書が書かれたか分からないのですが,利益相反行為について2を満たしてオーケーとなれば,もう3の責任というのはおよそ生じないように考えてよいのか。

 

さっきの説明は,どうもその方向での説明だったのですが,それは本当に自明かというのがよく分からないですね。例えば,どの時点で判断するかという問題についても,2については行為時でいいかもしれないけれども,3についてはある程度結果論を考える余地もひょっとしたらあるかもしれない。

 

 

すみれ

「受益者に損があれば、返すとか。」

 

 

ちょっとそれは否定的な答えだったのではないかというふうに思うのですが。

 

それで,そこがもし行為時,判断時がずれることになると,2と3の関係というのは次元の違うことになって,ある行為が,2はオーケーだけど,3で何か責任を生じさせるということも出てくるのですが,ちょっとその整理が報告書の説明をみても十分分からなかったので。

 

2でカバーされないのが3で拾われるのはいいのですけれども,2に当たった場合に,この3との関係のことを何かお教えいただきたいということです。

 

  •  基本的には2と3は重なる部分がないという理解で考えておりまして,2というのは,受託者の行為によって信託財産ないし受益者に対して利益又は不利益等の影響を及ぼすものであると。3というのは,およそ信託財産とは無関係な行為であるということですので,2にも当たるし3にも当たるというのは,概念的な整理としてはない,というふうな整理はしております。
  •  しかし,本当にそうかどうかというのは,もうちょっと詰めてみたいと思いますけれどね。

それから,さっき○○委員が挙げたような,いろいろ信託財産を買い取って,将来それが値上がりするであろう特別な事情というか情報があるときには,本来だと,例えば2の(2)の②ですか,「重要な事実を開示して受益者の承認を得た」というようなときには,本来,そういう情報を提供して,それで買い取るわけですよね。

 

ですから,そういう事実を隠して買い取ったりすると,たとえその時点では公正な価格であっても,恐らくどこか問題になるのでしょうね。さっき○○幹事からの説明にもありましたように,やはり将来得べかりし利益を奪ったという意味で,結局は③に該当して,受益者の利益を害したという結論になるのだと思いますね。

 

それから,2と3との間の関係はもうちょっと議論したいと思いますけれども,概念的には,おっしゃるように分けてあると。

 

  •  情報優位を利用して利益を得たという場合であっても,今のは2に当たって,3にはおよそ当たらないという整理をされたわけですね。情報優位で自己取引したケースというのは,3にはおよそ当たらないと。
  •  今の場合は,信託財産に不利益が生ずるおそれがあるので,ということでございます。
  •  それから,さっき,公平義務の言葉遣いは○○幹事がおっしゃるとおりで,一応,これは,技術的な整理としては,公平義務というのは,一つの同じ信託の中での受益者間の利益のバランスのことを問題にするので,一人の受託者が二つ別々の信託を持っていれば,その信託間の利益の公平というのは,確かに似ているんだけれども,一応別の問題であることは,おっしゃるとおりです。

 

 

すみれ

「難しいね。同じように見えるけど違うんだ。」

 

 

それで,同じようなルールを及ぼすべきかどうかというのは,これはなかなか難しい問題で,私は,実際には,一つの信託の中の二つの受益者なのか,二つ別々の信託なのかというのは,これはもう本当に,ちょっとした構成でもってすぐ変えられるので,基本的には同じルールが適当ではないかと思いますけれどね。

 

ほかにいかがでしょうか。

 

  •  分別管理義務のところについて,流動化の観点から,意見というよりも質問なのですけれども。

まず,登記・登録ができる資産に関しては登記・登録が要件になる,また分別管理がいわば強行規定になるという理解で,52ページの方に,登記又は登録ができる財産であっても,ある一定の事由が発生したときに登記・登録する義務が課せられていれば,分別管理義務が課されているというふうに解してもよいというような解釈も書かれているのですが,現場的に,あるいは実務的に考えると,どういった場合に分別管理義務が果たされているというふうに解していいのかというのは明確であった方が好ましいのではないかなと。

 

今後,特に,現状,例えば登記あるいは登録ができないものであっても,制度の変更で,登記,登録をすることができるようになることもあり得るかと思いますので,これはちょっと気になっておりまして,例えば,動産を,商品在庫あるいは自動車といったものを信託財産にする場合に,どうすれば分別管理義務が果たせるのかというのはちょっと気になります。

 

それと,ここで金銭についての例外というようなことがあるのですが,信託財産に金銭--というと,多分,日銀券とか硬貨のことだと思いますけれども--が含まれるということは,多分,現実的にはほとんどなくて,必ず債権になってしまっているのではないかなと思います。

 

他行に対する預金であれ。それで,銀信取引というふうなお話も出ましたけれども,現実問題としては,信託財産の中の余資というのは,銀行勘定貸しで運用している,それで受託者がそれをどこかで運用しているというような形になっていますので,現実的には金銭債権なのかなと。

 

それで,その場合に,帳簿上だけで区別していれば,分別管理義務を果たしたことになるのか,また,それによって信託財産の独立性が確保されるというふうに解せられるのかというのが,ちょっと……,済みません,素人的な質問で申し訳ないのですけれども,引っ掛かりました。

 

 

 

 

  •  関連してというか,ちょっと論点から外れるのかもしれませんが,今,預金債権の話が出てきましたが,預金債権というのは基本的には,預金通貨と言われるごとく,経済実体的には金銭と同じように使われていると思うのですが,この問題は論点の第11の「信託財産と固有財産等との識別不能について」も関係することと思うのですけれども,例えば,今,○○委員がおっしゃられた事例の中で,受託者が一般事業会社で,その自分で預かったほかの預金債権なのか現金なのか,それを信託銀行に預けた,又は普通の銀行に預けたといったときに,当該金銭債権というのが信託財産なのか固有財産なのかということがよく分からないのです。

 

 

すみれ

「信託財産とみなされる場合もあるかもね。」

 

 

 

まあ,分別管理というのはどのようにすればいいのかという話なのですけれども,例えば,受託者サイドで,帳簿で,このお金は私のもので,このお金は信託のものだというふうに分別管理をしていましたと。

 

 

ところが,次の問題として,これはまた別の議論を差し上げるのですけれども,今度は普通預金で運用していた場合に,普通預金の別途の議論がございまして,普通預金は基本的には一個の債権になるという話がありまして,そうしますと,銀行の側では基本的には受託債権と固有債権というのが一個になってしまう。

 

そこの整合性が問題になるのかなというふうにも思っています。この問題は今のこの議論とはちょっと違うと思っておりますけれども,預金債権に関して言うといろいろな問題が出てくるかなと思いましたので,ちょっとコメントを差し上げました。

 

 

 

  •  信託財産が債権である場合の分別管理の問題と,その原資というのでしょうか,その債権にしたときのお金がどこから出てきているかという二段階の問題があると思いますけれども,○○幹事,どうですか。

 

 

 

  •  前段階につきましては,この報告書に書いてあるのは,区別して管理と書いてあるわけでして,それは結局,その財産の性質に応じてベストな方法で管理しなければいけないということでございますので,金銭債権であれば,帳簿上の管理をしていれば,分別管理をしていることになると考えます。

後段の点につきましてはそんなに詰めて議論しておりませんが,恐らく,銀行の側で一個の債権となっておりましても,預けた方で複数の帳簿できちっと管理されていれば,受託者としての分別管理を果たしていると言っていいのではないかなという感じがいたします。

 

 

すみれ

「信託の記載と別の計算か。預金なら信託口の通帳で、お金なら金庫にいれて、信託のシール貼るかな。」

 

 

それと,○○委員がおっしゃった最初の制度の変更の点につきましては,これは変更されるまでは登記・登録ができないわけですから,それについては,原則,物理的な分別をしてもらいたいと。

 

登記・登録ができるようになりましたら,これは原則どおり登記・登録をするのが分別義務になりますので,その時点からは,今度,受託者が危機に瀕したときには登記・登録をするんだよという義務を当事者が認識していないと分別管理も果たせないというふうに,段階が変わってくると考えております。

 

 

 

  •  御承知かもしれないけれども,預金のときに受託者の金銭と信託財産の金銭がそれぞれ別の債権になっていれば,分別管理は問題ないのでしょうけれども,最後に○○委員が言われたのは,一つの普通預金の中に入っている。
  • それで,大もとの受託者の方ではちゃんと帳簿でもって,幾らが信託財産で,幾らが固有財産というのを分けているけれども,一つの普通預金債権なんかになっているときにどうするか。これは非常に難しい問題があって,普通預金で出し入れしていますので,今度,出したときに,出したのが一体どっちなのかとか,非常に難しい問題があることはあるのですね。こういう点もまた議論したいと思いますけれども。

 

 

  •  この問題は銀行にとって非常に重要なものでございますので,ここで明解にしていただきたいなというふうな希望を持っております。
  •  今の前提の議論というのは,信託で受け入れたところの預金という……。
  •  ええ,受託者が預金者となって銀行に預け入れた場合ということでございます。
  •  例えば全く他行に預けてしまえば,それは別の債権ということになるわけですよね。
  •  受託者が他行に預ければ,もちろん,それは債権という形になっていますけれども。
  •  そこで例えば識別不能とかというところの部分の規律がかかってくるという,そういうことで……。
  •  もとのお金,預けたときの原資が,受託者の方の固有財産である金銭と,信託財産である金銭が混じって,それで一つの債権として預けたようなときに,どこまでが信託財産か,あるいは分別管理としてそれで十分かという問題だと思いますね。
  •  それは,普通に識別不能の規律で律せられるということでよろしいのですか。

 

 

  •  先ほど○○幹事から説明があったのは,幾らが信託財産であるかという大もとの受託者のところの帳簿で明らかになっていれば,一応分別管理をしているのではないかという答えだと思います。

原則は恐らくそれでいいのだと思いますけれども,さっき言ったように,入れたり出したりしていると,そこが帳簿でちゃんと……。

 

 

 

  •  受託者の義務は,今申しましたようにいいと思うのですが,今度出し入れがあった場合に,一体どこまでが信託財産で,どこまでが固有財産かというのは,そこは検討させていただきます。

 

 

  •  共有とされてしまうと,銀行実務としては非常に困ってしまうということはあります。 ということを一言だけ申し上げたいと思います。だれに幾ら返したらいいのかよく分からないという話で,特に受託者が倒産してしまった場合に出てくるのですけれどね。

 

 

  •  差し押さえられるということですかね。
  •  はい,そういうことです。
  •  イギリスでは,ちょっと古いルールだけど,先入れ先出しルールとか,何か変なルールがあるんですよね。余り合理的じゃない。

まあ,議論させていただきたいと思います。

 

 

すみれ

「変なルールか。簿記でも先入れ先出し法とか習ったな。」

 

 

  •  ちょっと確認ですが,今の場合は,信託財産である金銭債権であれ,預金債権であれ,固有財産である預金債権であれ,返す相手は受託者ではないかと思うわけですが,それではやはり困るという御趣旨でしょうか。

 

 

  •  例えば,その受託者が倒産して,管財人が出てきましたと。固有財産のものとして管財人が返すのか,それとも信託財産として返すのかという話が,二股の形に分かれてしまいますもので,銀行としてはちょっとそのときには困ってしまうという感じがします。
  •  要するに,どっちか一つに決めて……。

 

  •  それと,普通預金というのは一つの債権になる,お金に黒も白もないので一つの債権になるという一つの考え方がございますので,そうしますと,普通預金に共有という概念を持ち込むということについて非常に違和感が出てくるということでございます。
  •  確かに,普通預金についてはいろいろな議論がありますよね。

 

 

すみれ

「お金には黒も白もないのか。さっき財産に色付けという話もあったけど。人によって見え方が違うのがお金ってことだね。」

 

 

  •  ○○委員の御発言にちょっと関連してなのですけれども,預金を受け入れている銀行の実務として,預金を受け入れている銀行が受託者に対して反対債権を持っていた場合に,どこまで相殺できるのかという問題もあり得ると思います。
  •  関連すると思います。
  •  次の53ページの第22についても一つだけ質問をさせていただければと思いますが,1,2,3とありますうちの1,2,特に2をどう説明するかという点についての質問です。

 

これは,現行の26条の1項,2項で,1項では原則として他人に信託事務を処理させることはできないというのを,1ではむしろ原則・例外を逆転しようと,別段の定めのない限り他人に信託事務の処理を委託できるのだと。

 

これは正に現実のニーズに即したもので,もともと26条1項に対して批判の強かったところですし,こう変えられることは本当に結構かと思います。

 

問題は2の方でして,2に関しましては,これは現行の26条2項を原則としてそのまま維持すると。

 

つまり,他人に信託事務を処理させたときには選任・監督についてのみ責任を負うことにするという2項をそのまま維持するということなのですが,これをどう説明するかというのが,質問の趣旨です。

 

 

といいますのは,現行26条1項,2項がどうしてこうなっているかといいますと,これはもともと民法の復代理の規定を参考にしてつくられたものでして,26条1項は,原則として他人に信託事務を処理させてはいけないと。

 

ただ,やむことを得ない事由があるような場合は任せてもいいと。こういう特別な理由がある場合に任せていいということなのだから,この場合にはやはり責任も限定しようと,選任・監督についてのみ責めに任ずというふうにしたと。

 

 

すみれ

「復代理(代理人の代理人)が参考になっていたんだ。」

 

 

そしてまた,信託行為によって他人に信託事務を処理させるとわざわざ認めたのだから,この場合も選任・監督についてのみ限定しようと,こういう趣旨でできてきたと。つまり,原則は任せてはいけないけれども,こういう特に理由があるときに任せていいと,その場合には責任を限定しようと,こういう枠組みでできていたわけですね。

 

ところが,今後,改正する方向では,1項を変える,つまり原則として任せていいということにすると。

 

しかし,その場合にも,まあ特別な理由があるのかどうか分かりませんが,選任・監督にのみ責任が限られるというのは,直ちには説明できないのではないかと。

 

むしろ,信託事務を委託したわけで,その委託どおりのことをしてくれればいいけれども,しなかったら責任を問えるというのが本来の筋であって,何ゆえに選任・監督の責任に限られるのかというのは,やはり説明が要るだろうと思います。

 

 

この53ページの2の部分につきましては,後段の方,つまり,信託法の定めに基づいて委託したときは選任・監督の責任に限ると,これはまだいいのかなと思います。

 

もともと,例えば海外のカストディアンに任せるのだということをお互い分かった上で,日本の信託会社はそこまでできないのでこういうことでやりますということでやった場合には,責任が限定されるというのは分かるわけですけれども,何も言わずに,何もないときに,なぜ選任・監督の責任に限られるのか,これをどう説明するのかという点が質問です。

 

 

信託会社のニーズからするとこうなってもらわないと困るというようのは非常によく分かるのですけれども,本来は,やはり契約なら契約で約束したことは守らないといけないと。

 

ですから,選任・監督までしかやりませんよということを約束したのだったら,そこまででいいですけれども,必ずしもそうはっきりしていないときに,何ゆえにこういう限定が加わるのかというのは,すぐれて理論的な問題ですので,ちょっと説明をお願いしたいということです。

 

 

 

  •  そこまではちょっと……。まあ,信託行為で定めたときは問題ないというのはおっしゃるとおりで,なぜ2の原則の場合,転換されたかという理論的な問題は,ちょっと急に言われても思い当たらないのですが,しかし,法律上他人に委託できるというふうに定めてある以上は,それについて履行補助者と同様の責任を負うというのは厳し過ぎるのではないかという価値判断で,選任・監督責任に限っていいのではないかというふうに決めたと言わざるを得ないところでございますけれども。

 

 

 

  •  もちろん,履行補助者の場合と履行代行者あるいは代人を分けるというような議論は,現行法でも議論のあるところではあるのですけれども,ただ,それも,どこまでのことを受託者が委託者に対して約束したのかと。約束したことを他人に任せるときには,その他人の過失についてまで責任を負う,しかし,選任・監督までしか約束していないというときには,選任・監督上の過失に限られると。

 

これは理論的に極めて筋が通ると思うのです。

 

ですから,履行補助者を持ってくるときでも,やはり,何を約束したのかにどうしても規定されてしまう。

 

ですので,54ページには,こうは言うけれども個々具体的な事情において異なるというのが書いてあるのは,正にそのとおりで,やはり,どこまで約束したかが責任の分水嶺にあると。

 

ですので,デフォルトルールをどう書くのかということを,もう少し説明がつくように考えて書かないと,2項は現行どおりですというわけにはいかないですね。1項を逆転していますのでね。そこを検討を進めた方がいいのではないかということです。

 

 

 

  •  恐らく,1のところの原則が,○○幹事の言われたのを少し違う趣旨で書かれたのかもしれませんけれども,要するに,受託者になっても原則として受託者自身がやるというのではそもそもなくて,それは約束の内容によって決まるのかもしれないけれども,これは受託者がやりますよというものと,これは一応信託で引き受けた全体の中には入っているけれども,そもそも受託者がやるというものではないものもその中には入っている。

 

 

 

例えば,ちょっと報告書の範囲を踏み出して私の勝手な意見かもしれないけれども,信託財産の輸送をするとか,そういうものは,それは全体の信託事務の中には入っているかもしれないけれども,別に受託者がやるということをそもそも予定していないようなものもあると。

 

 

そういうふうに原則で考えていくと,本来受託者がやりますよという内容の信託事務であれば,これは,他人を使うことは,今度それも自由になっているわけですけれども,それについてはもうちょっと責任があってもよさそうな気がしますね。

 

だけども,これはそもそも受託者がやるものとは限りませんという内容であれば,これは,他人を使ってあれした場合に,今度は責任が軽くていい。

 

ただ,そうなると,もっと責任が軽くてもいいかもしれない。選任ぐらいは責任があるかもしれないけれども,監督までするという責任は今度は出てこないのですね,恐らく。

 

 

ですから,そういう意味で,○○幹事の問題提起は,この1と2の間の対応の関係,あるいはそこでの基本的な考え方,整合性があるかどうかを検討しろということだと思いますので,ちょっと1の原則についての理解自体,あるいは私と事務局のペーパーとも違うかもしれませんし,議論させていただければと思います。

 

 

すみれ

「受託者が誰か、信託の目的、信託財産で違ってくるのかな。」

 

 

  •  銀行実務において大きなことですので,もう一度,忠実義務の,先ほど○○委員,○○幹事が問題提起された2と3との関係について,具体的な事例で確認したいのですけれども。

例えば,銀行が信託財産として債務者に対して債権を持っていて,銀行勘定からも同じ債務者に対して債権を持っていましたといったときに,当該債務者の信用悪化情報を受託業務から知り得たと。そうしたときに,銀行勘定を優先して回収したといったときにどうなるのかという話です。

 

 

通常の利益相反の問題,先ほど申し上げたときにプロラタにすれば云々という議論は,私も,利益相反の問題として片づけていたわけです。

 

ところが,この事例の中で,48ページに戻りますけれども,銀行業務と信託業務を兼営している場合には,信託財産に関する情報と固有財産に関する情報は共有が不可避であるから正当事由があるという話ですけれども,これは3について議論されているわけですが,回収というのは,片や利益取得行為という,これは定義にもよると思うのですけれども,正しくそのとおりだと思っているのですけれども,もし2と3ということが区別されるというのであれば,回収は3の規律でいきますと。

 

そうすると,この禁止の例外の③も正当な理由があるということで,じゃあ銀行は大丈夫だという話になる。

 

そうすると,よく考えてみますと,例えば普通一般情報から得た情報で銀行債権を先に回収した場合には,今までは少なくとも利益相反禁止という規律で律せられたところが,まあ私の読み方が非常に嫌らしいのだと思うのですけれども,この規律に行きますと,3で救われるのであれば,ひょっとして2は問題ないねという話にもなりかねないという気もするのですが,そこら辺の関係をどう整理したらいいのかということなのですけれども。

 

 

 

  •  恐らく,まず第一の問題としては,今のように,回収の問題というのが2なのか3なのか,そこもちょっとはっきりしないところがあるし。
  • つまり,債務者の資力が両方の債権を満たすだけの資力がもうないということになれば,先に取っていってしまうということは,当然反射的にもう一つの信託財産を害することになるわけですよね。

ですから,私なんかは,個人的には,2の方に当たるのかなという感じもしていますけれどね。

 

 

 

  •  そう考えるところですが,そこをどう整理するのかということです。
  •  難しい問題あると思います。

余り私は詳しくないけれども,社債管理会社の場合にも似たような問題がありますよね。あれは立法的に解決してしまったけれども。そうじゃないですか。

 

  •  商法311条の話。
  •  ええ。

ここでは一般規定の適用の問題になるので,どういうふうに解したらいいかという……,やはり形式上は利益相反になると思うんですよね。少なくとも,今の場合,利益取得禁止行為の方のルール,3のルールがあって,かつ,さっきの例外規定の③でもって許されるというふうになるというのは,ちょっと難しいんじゃないですか。

 

  •  そこら辺は銀行実務で非常に重要でございますので,明確な議論をしていただきたいと,そういうことです。
  •  先ほどから,いろいろな忠実義務についての御懸念が,○○委員からもありましたし,余り一般的な規定というのは困る場合もあるとかいう御意見もありましたけれども,これも私の個人的な感想ですけれども,銀行の方でもってある程度予想できるようなものについては,これは銀行で正当な業務だと思えば,信託行為の中で規定すれば大丈夫な場合があるわけですね。信託行為で定めたこと自体が公序良俗に反すれば別ですけれども。

 

 

 

ですから,そんなに心配しなくても大丈夫ではないかという気も一方でしますけれども,すべてが書き切れるわけではないので,今のような債権回収の問題というのは。

 

いかがですか。

 

  •  今,○○委員がおっしゃった例は,恐らく我々の理解は利益相反の部類に入ると思います。ただ,そうやって言いますと全部利益相反になってしまいそうな……,さっきから全部利益相反みたいですけれども,確かに,信託財産の利益を害するおそれがある場合については利益相反という仕切りでございますので,おっしゃった例は利益相反の問題ですから,例外規定に当たるかどうか微妙だと言わざるを得ないと考えております。

 

 

  •  ほかによろしいでしょうか。

利益取得行為の禁止の方の典型的な例などについては,これもいろいろありますので,皆さんも十分御承知だと思いますけれども,また個別の検討のところで議論していきたいと思いますが,とりあえず,この部分について,よろしいですか。

 

 

  •  何回も申し訳ございませんが,信託事務の委託のところで,先ほど○○委員の方からお話がありましたけれども,甲案,乙案というのがありまして,こちらの方の考え方なのですけれども,手前勝手だというふうにとられると非常に困るのですけれども,実務的な感覚という形でちょっとお聞きいただきたいと思うのですけれども,やはり基本的には乙案というふうに思っています。

それは要するに,責任をとらせなければ,その方がやりやすいとか,すっきりしているとか,もちろんそういう部分もあるのですけれども,委託者,受益者に対して相対しているのは信託銀行ですので,やはり基本的には,何かあったときには委託者は受託者に対して言ってくる,それで受託者がそれに対して対処するというのが極めて実務的な対応だろうと思います。

 

それで,委託先が何か過失によって損害をもたらしたのであれば,当然,この文章の中にもありましたけれども,その損害賠償請求権というのが信託財産に帰属して,それを受託者が請求に行くと。

 

そういうふうにやらなければ,善管注意義務に反する行為なのだというふうに書かれておりましたけれども,正に実務的な感覚としては,やはり受託者が前面に立って責任を負って,それで委託先に対して取りに行くと。

 

そういうような形で今まで動いておりましたし,例えば弊社の例で言うと,委託先が何か問題を起こしたときには,訴訟を起こしまして損害賠償請求で取りに行っている例もございますので,それの方が非常に実務感覚に即したようなものではないかなと思います。

 

 

 

番人

「損害賠償の請求権は、人じゃなくて信託財産が持つんだ。家族信託ではそういう場面はないと思うけど。」

 

 

 

  •  それでは,ちょっと時間の関係もありますので,これぐらいで,第2ラウンドというか,個別の論点のところで御議論いただきたいと思います。

それでは,最後の部分について,また○○幹事からお願いします。

 

 

  •  それでは,最後の,第24以降,「受託者の損失填補責任等について」というところから御説明を続けさせていただきます。61ページからでございます。

御承知のとおり,受託者に信託違反行為があった場合について,信託法上受益者に認められている救済方法には,一つは現行法27条の受託者に対する損失てん補,あるいは信託財産の復旧請求権,それから信託違反の処分行為取消権,現行法31条がございます。

 

これらは,ともに受託者の信託違反行為から信託財産を守るための手段,いわば車の両輪と言えるようなものでございまして,ここで扱うのは,今言いました第1番目の信託財産に損失を与えた受託者の責任に関するものでございます。

 

ところで,現行法27条につきましては,「管理ノ失当ニ因リテ信託財産ニ損失ヲ生セシメタルトキ又ハ信託ノ本旨ニ反シテ信託財産ヲ処分シタルトキ」という要件と,それに対応します「損失ノ填補又ハ信託財産ノ復旧ヲ請求」という効果の対応関係が必ずしも明確ではないという指摘がございます。

 

そこで,太字の1,2におきましては,この現行法27条の規律内容を基本的に維持しつつ,その内容の整序と明確化を図ろうとしたものでございます。

 

まず,太字の1でございますが,これは,管理の失当や信託の本旨に反する処分という要件に限定することなく,およそ法令又は信託行為の定めに違反した場合には,受益者等は,受託者に酷となる特段の事情のない限り,損失の証明をすることなく原状回復を請求できるとするものでございます。

 

 

 

もっとも,この点につきましては,我が国の損害賠償体系は金銭賠償を原則とすることを前提とすれば,なぜ信託の場合についてのみ原状回復の請求が許容されるのか,あるいは,原状回復のために著しい費用がかかる場合と相応の費用がかかる場合とで救済の在り方の均衡を失するのではないか等の指摘がございまして,この点につきましてはなお検討したいと考えているところでございます。

 

次に,太字の2というのは,受益者等が損失の証明をした場合には,原状回復のほかに金銭によるてん補を請求することも可能であるということを明記したものでございます。

 

例えば,受託者が原状回復をしてもなお信託財産に損失が残る場合には,受益者等は,原状回復請求に加えて,損失のてん補を請求できるということになるわけでございます。

 

なお,太字の3について若干補足いたしますが,これは,現行29条は,その第1項におきまして,受託者が分別管理義務に違反して信託財産を管理したときは27条の責任を負うこと,第2項におきまして,分別管理義務違反があり,それと損害発生との間に因果関係があった以上は,損害発生について受託者に過失がなくても,更に言えば損害発生が天災などの不可抗力によって生じた場合であっても,その責任を免れないということを規定したものでございます。

 

例えば,倉庫がA,B二つありまして,特約もないのに信託財産と固有財産とをともにA倉庫に混蔵保管した,すなわち分別管理義務違反をしていたところ,例えば,第1の例として,A倉庫のみに雷が落ちて焼けてしまったというのであれば,分別管理をしていれば損失が生じなかったということで,責任を免れないと考えられますが,地震でA,B倉庫とも焼失してしまったということであれば,仮に分別していても損失が生じたと言えるから,責任を免れると,こういうことかと考えるわけでございます。

 

そして,太字の3というのは,この29条2項の規律をそのまま維持したものでございます。

 

 

すみれ

「元に戻すって条文に入ってる。会社の取締役より受託者の責任は重いね。」

 

 

 

続きまして,第28の「受託者の有限責任の許容について」というところについての説明に移らせていただきます。72ページからでございます。

 

まず,我が国の信託の構造におきましては,受託者の権限に属する信託取引によって信託財産に帰属することとなった債務に係る債権者,すなわち信託債権者と申しますが,それに対しては,信託財産はもちろん,受託者の個人財産も併存的に責任を負うのが原則でございまして,信託の特徴と言えると思います。

 

そして,このような構造を前提に,受託者が取引の相手方との間で責任財産を信託財産に限定するという有限責任特約を締結することは有効と認められておりまして,現行実務でも,このような責任財産限定特約を付した信託取引が浸透しつつあるというように伺っております。

 

 

 

 

そこで,ここでは,現行法のもとでのこのような取扱いを進めまして,受託者が第三者との間で取引をする場合において,特定の信託の受託者である旨その他一定の事項を明示した場合には,有限責任の効果を付与することとしたものでございます。

 

ただし,有限責任となるための要件として具体的にいかなる事項の明示の要求をするかにつきましては今後の検討事項でございますが,実務の状況等を踏まえますと,単に特定の信託の受託者であるというだけでは足りず,有限責任になるということまでの明示が必要ではないかと考えているところでございます。

 

なお,太字部分に係る有限責任の対象となる債権の種類,一番冒頭の太字部分でございますが,ここは受託者と第三者間の取引によって生じた債権に限られるものでございますが,更に,この報告書の母体となった研究会におきましては,アステリスクの2において示しております,いわゆる有限責任信託類型を設けることの当否も議論になりました。ここでは問題点の概要のみ御紹介しておきたいと思います。

 

 

 

すなわち,経済社会活動の高度化の進展に伴いまして,近時,英米法におけるLLC,LLP,ビジネストラスト等に代表されますように,外部関係については有限責任性を確保しながら内部関係については柔軟性を有する組織による事業の実施や当該事業への投資に対するニーズが高まりを見せているところでございます。

 

 

ポリー

「合同会社は年々設立件数が多くなってきていますね。」

 

 

信託は,内部的な意思決定の仕組みについて柔軟性が確保されていること,委託者,受託者及び受益者のいずれの者の経済状態からも隔離された安定的な財産が形成されること,新たな法人格の創設を必要とせず,既存の法人格を利用するにとどまるため,低コストで容易に設定し得ることなどの特徴を有しております。

 

そういう状況をかんがみますと,受託者の有限責任を原則とした新たな信託の類型が創設された場合には,特にビジネスの分野におけるニーズにこたえることができ,国民の選択肢の多様化にも寄与するものと思われるところでございます。

 

そこで,このような有限責任性を原則とする新たな信託の類型の創設の要否について検討するとしたいというのが,アステリスクの2の趣旨でございます。

 

 

 

では,続きまして,第33の「受託者の権限について」,81ページのところからの説明に移らせていただきます。

 

現行信託法におきましては,受託者の一般的権限についての規定はございませんが,定義に関する第1条の規定,つまり,「本法ニ於テ信託ト称スルハ財産権ノ移転其ノ他ノ処分ヲ為シ他人ヲシテ一定ノ目的ニ従ヒ財産ノ管理又ハ処分ヲ為サシムルヲ謂フ」というように書いてございます。

 

それから,受託者の職務に関する第4条を見ますと,「受託者ハ信託行為ノ定ムル所ニ従ヒ信託財産ノ管理又ハ処分ヲ為スコトヲ要ス」というふうに書いてございます。

 

これらによれば,受託者が一定の目的に従い財産の管理又は処分をする権限を有するということを当然の前提としていると理解できるわけでございます。

 

ここには「財産ノ管理又ハ処分」とございますが,これは,受託者の職務権限の例示にすぎないのでありまして,例えば,公益信託で追加出資を受けることや,土地信託で資金を借りることなど,信託目的,信託行為に定められた任務を果たすためであれば,受託者の権限というのは,信託財産の管理・処分を基礎としつつも,それを超えて,権利取得行為や債務負担行為にも,更には訴訟行為にも及ぶなどと柔軟に解釈されているところでございます。

 

 

 

 

このような理解を前提に,受託者の職務権限につきましては,受託者は信託行為に定められた目的の達成のために必要な行為を行い得るということを明確に規定することとしたものでございます。

 

 

なお,アステリスクで示しております,借入れ,あるいは信託財産に関する担保権の設定の行為というところにつきましては,これは信託財産に損害を与えかねない行為であるから,信託行為の有無にかかわらず,緊急に必要があるときは行うことができるのだということを念のため明確にしておくのが望ましいという考え方もあるでしょうし,他方,これらの行為については,信託財産に危害を与えかねない行為であることから,特別に規制すべく,原則として信託行為の定めがないとできないというふうにすべきという考え方もあるかと思います。

 

 

番人

「抵当権を設定して登記できることが信託目録に登記されている必要があるね。」

 

 

さらに,そもそも信託行為の定めを要求するといたしましても,その行為を技術的に特定できるのか。

 

例えば,信用取引による債務負担は借入れに含まれるのか,デリバティブとは何かというようなものにつきまして,これを明確に特定できないのであれば,信託行為が必要となる行為の外延が不明確となり,かえって信託事務の円滑な進行を妨げるおそれがあるという考え方もございます。

 

これらの考え方を踏まえまして,規定の要否を検討していきたいと現在のところは考えているところでございます。

 

最後に,第34の「受託者の権限違反の行為について」というところの説明をさせていただきます。

 

 

 

 

先ほど説明いたしましたとおり,現行法上受益者に認められている救済方法には,損失てん補等の請求権と,この取消権とがございまして,このうち,ここでは,受託者による信託違反行為の取消しに関するものを扱うということでございます。

 

ところで,本条の取消権につきましては,取引安全の保護と受益者の保護との調和を図った,信託法特有の権利であると説明されておりますが,ここでは,まず前提といたしまして,取消権の期間制限による法律関係の安定化,受益者の追認による法律関係の安定と受益者の保護への考慮などから,現行と同じく,取消権という構成をとることとした上で,とりあえず次の3点につきまして現行法に改善を施すことを書いてあるものでございます。

 

まず,第1に,現行法におきましては,取消しの対象を処分行為としているわけでございますが,この提案におきましては,取消権の対象となる受託者の行為については,処分行為であるか否かにかかわらず,当該行為が受託者の権限に違反したものであるか否かを端的に問題とし,権限違反行為であれば,悪意又は重過失の第三者に対しては取り消すことができるというふうに変えた点でございます。

 

取消しの対象を処分行為に限った場合には,例えば受託者が借入れをした場合には,処分行為に含まれず,相手方は,当該行為が受託者の権限違反であることについて善意でも保護されないことになって,バランスを失してしまうのではないか,あるいは,信託財産が物を購入する場合において,対価が金銭,つまり売買である場合と,対価が信託財産の特定物,すなわち交換である場合とで,規律が果たして異なるかなどの点について明確ではないという問題点があるように思われるからでございます。

 

 

 

 

 

次に,第2に,現行法におきましては,信託財産に関する登記・登録制度の有無によって取扱いが異なるものとされておりますが,ここでは,登記・登録を問題とすることなく,第三者において,先ほど言いましたように,権限違反行為についての悪意・重過失の有無を端的に問題とすることといたしました。

 

 

 

受託者の行為が権限違反であるか否かは,信託の登記・登録からは必ずしも明らかではないという指摘があることに加えまして,信託の登記・登録ができる財産については,登記・登録があるときは,第三者が権限違反につき善意であっても現行法では保護されないのに対しまして,登記・登録がありませんと,第三者が仮に権限違反につき悪意であっても保護されることになるなど,現行法は著しくバランスを欠く結果となると考えられるからでございます。

 

最後に,現行法には「信託ノ本旨」という言葉がございますが,ここではその言葉を用いておりません。

 

委任の場合にも,民法第644条におきまして「委任ノ本旨ニ従ヒ」という表現が用いられているのに対しまして,対外的な効果帰属については受任者の代理権の範囲内にあるか否かで規律されていることからも明らかなとおり,「信託ノ本旨」という表現は,受託者の対外的な取引権限の範囲を画する表現としては妥当性に欠けるのではないかと考えられるからでございます。

 

 

 

なお,補足的に2点ほどつけ加えさせていただきたいと思います。

 

まず,この太字1におけます「取消し」という文言でございますが,これは,信託財産に対する効果帰属を否定するという意味での取消しではございませんで,権限違反行為自体に対する,いわば絶対的な取消しでございまして,第三者としては,信託財産に対する効果帰属を主張できなくなることはもちろん,受託者の固有財産に対する効果帰属をも主張できなくなるというふうに考えているところでございます。

 

第三者において,相手である受託者が正しく受託者の資格で行為しており,しかも権限に違反していることも認識しているにもかかわらず,受託者の固有財産に対する効果帰属というものを最低限の主張として認めてやる必要はないと思われるからでございます。平たく言えば,受託者は悪いが,第三者はもっと悪いという趣旨でございます。

 

最後に,83ページのアステリスクの3にあるところでございますが,この趣旨は,現行法においては,受託者と第三者との間で取引の効果の帰属先の認識が異なる場合についての規律がないことに起因する問題でございます。

 

分かりやすく申しますと,この問題が典型的にあらわれるのは相殺の局面でございまして,例えば信託財産から第三者に対する信託債権があるという場合を想定いたしまして,受託者が第三者に対してその信託債権の弁済を請求してきたといたします。

 

 

別途この第三者は受託者に対して貸付けをしているわけでございますが,受託者としては,自分が個人的に借入れをしたという意思を有していたわけでございますが,他方,第三者としては信託財産に貸し付けたと認識していたといたします。

 

そうしますと,弁済を請求された第三者は,この信託財産に帰属する債権をもって相殺を主張するということになると思われるわけですが,この場合,信託財産の保護を重視すれば,あくまで第三者の債権は受託者個人に帰属しているにすぎないので,相殺関係にありませんので,相殺の抗弁は立たないということになると思われるのでございますが,第三者がこの債権は信託財産に帰属しているのだと,信託財産に貸し付けたのだと信頼したことについて,受託者の行為の外観などから正当な理由があれば,取引の安全を重視して,第三者を保護して相殺の抗弁を立てるという考え方もあるというところでございます。

 

 

 

この点につきましては,信託財産の保護を重視するか,それとも取引の安全を重視するかというバランスの問題になるかと思われますが,なおこの点につきましては検討していきたいというのが,このアステリスク3の趣旨でございます。

 

  •  それでは,今のところまでで御議論をお願いします。

 

 

 

  •  第28の受託者の有限責任の許容について,一つ意見といいましょうか,コメントを申し上げたいと思います。

受託者の有限責任に関しては,事業の証券化であるとか,開発型流動化であるとか,そういったビジネスにおいて非常に有用であり,片や,受託する,通常はSPCでやるわけですが,信託を使った場合に受託する受託者としては,やはりそういう責任を限定するという方法がなければ困るところでありますが,かように契約対象外の者からも債権の請求を一定限度にとどめられるというのは,その種ビジネスにおいて有用だとは思います。

 

他方,銀行の立場からすると,そういうような有限責任性が深く追求され過ぎますと,やはり回収の局面からすると問題になり得る場合があると。そこで,取引の安全性をどこまで高めるかということが重要だと思っております。

 

 

 

 

 

そこで,本報告の中で,その点について,「一定の事項を明示して」というふうなことが書いてございます。この内容についてはいろいろ議論があるということでございましたけれども,私は,これに加えて,やはり「一定の方法」というのが必要ではないのかと。

 

例えば,銀行員に電話で言ったよといったところで,いきなり有限責任を主張されてしまうということであれば,これもリスク管理から見ると非常に問題になるわけですので,やはり取引相手方に対して,何らか確実な方法でそういう問題点--先ほど,有限責任性を明示するべきだという御議論がありましたけれども,そういったリスクを確実に開示できるような方法ということについても御議論いただきたいと思っております。

 

 

番人

「不動産に限らず登記が必要なんだね。」

 

 

 

 

  •  今の第28の受託者の有限責任のところなのですけれども,今もおっしゃいましたように,流動化の実務等におきましては,もともとこういう責任財産限定特約は有効だという考えのもとに取り組んでまいりましたので,今回きちんと定められることによって,明確化されることによって更に安定性が増すということで,大変歓迎をしております。

ただ,ちょっと質問といいますか,どう考えればいいかとちょっと悩んでいるところがあったのですけれども,信託スキームを使いまして債権を流動化するときに,同じオリジネーターが,同じオートローン債権を時期によって切り分けて流動化する,信託するというケースがあるのですけれども,そこの中で,今度は個別の信託財産に基づいてABSが発行されるわけですけれども,その持ち主の方が,万一オリジネーターの倒産の局面において--スキーム自体は,安全性を考慮して,優先部分と劣後部分という形で組成はしておりますが,万一そこの優先部分がカバーできないというような事態が起きたときに,全く同じオリジネーターの債権を,時期が違うだけで--債権自体は譲渡登記等で区別されていますので,個別の区分はつくわけですけれども--足りなかったところの受益者等が他の設定された信託財産の方にかかっていけるのかという問題がありまして,このあたり,信託における信託財産の独立性という問題がありますから,これは全然問題ないというふうに考えていいのかどうかといったところについても,念のため規定する必要があるのではないかなというふうにちょっと思ったのですけれども,そのあたりは特に議論する必要がないのかどうか,ちょっとお尋ねしたいなと思いました。

 

 

 

実際にそういう疑問に至ったのは,信託ではなくて,SPCを使っての流動化のときに,同じSPCを使って発行するとなると,どうしてもそういった問題が出てくるものですから,信託の場合にはそれを考えなくていいのかどうなのかと,そういうところがちょっと疑問としてございます。

 

 

  •  一番最後におっしゃったのは,ちょっと私が理解していないかもしれないけれども,受益者が十分信託財産から取れるかどうかという問題ですよね。
  • 受益者に優先的な受益権を与えていたけれども,実際にはその信託財産が目減りしていて十分そこに行かなかったと。
  • それで第1受益者,第2受益者との間のアンバランスが生じてくると。

これは,受託者の有限責任そのものとはまたちょっと別な問題で,ここで言っている有限責任とは違って。

 

ここで言う有限責任というのは,信託が取引をした債権者との関係,信託債権者と言っていますけれども,それとの間の有限責任なのですね。それで,受益者との関係は,これはまた……,どこでしたか,ありましたね。

 

 

  •  第27のいわゆる物的有限責任の問題かと思います。
  •  これは,基本的には,その信託財産を限度として受益者に弁済するということになりますので,信託財産が目減りしてしまいますと,こ
  • れはしようがないと。ただ,あとは優先劣後の関係をどういうふうに作るかという,そちらのスキームの問題に恐らくなっていくのだろうと思います。

ほかにいかがでしょうか。

 

 

 

  •  有限責任のところで,一つだけ意見を言いますと,正に端的に有限責任のところに入っていくところの要件を御検討いただいているということですので,それを御検討いただければ,もう賛成ということです。

それと,もう1点,質問です。「受託者の権限について」というところですけれども,ここの太字で書いた部分の「受託者は,」の次に,「信託行為に別段の定めがない限り」というのが入っているということではないのでしょうか。要するに,禁止規定があったら借入れができないということではないのでしょうか。どうもよく分からないのですけれども。

 

  •  それは禁止規定があればだめですよね。
  •  入れば,ですよね。それは当然のこととしてそうだということでよろしいのですか。

 

 

  •  要するに,禁止規定などが入っていればだめだという意味だろうと。
  •  信託目的との関係で判断されるのではないかということで,「信託目的の達成のために」というところで読めるのではないかと考えておりますが。
  •  そこで禁止的な形で読めればということですか。
  •  禁止していれば,それはそこで読むのではないかというふうに考えております。
  •  今の○○委員の質問に対する答え方なのですけれども,目的で読むというよりは,この報告書の説明の下から二つ目の段落の後半に書かれていることなのではないかと思うのですね。
  • 例えば,目的は利殖と書いてあって,特定のものに投資物件は列挙されているといった場合は,当然,列挙されていないものに投資してはいかんと,そんなのは特段の定めというところで外れるのではないかというふうな御質問だと思うのですけれども,率直に言って今の第33はそこがうまく表現できていなくて,ただ表現の仕方を工夫しますという説明があって,多分,書き方としては,「特段の定めがない限り」というよりは,「信託行為に従い」とか何とか,そういう制約的な書き方になると思うのですけれども,それがまだうまく書けていないという状態だと理解しているのですけれども。

 

 

 

  •  これはまだ条文ではありませんので。考え方だけ示してあるということだと思いますけれども。要するに,信託目的から明確にすることはだめだというものが出てくれば,もちろんそれは権限の範囲外になりますよね。それから,そこは明確でないと いうときに,また禁止行為が書いてあれば,もちろんそれも外れるし。ここにはそういう考え方が基本的に出ていると思います。

 

 

 

 

  •  第34についてよろしいでしょうか。

これはいろいろな考え方があるところだと思うのですが,考え方のポイント,根本的にこの考え方がいけないというふうにこれから主張するのではなくて,これは現行31条とやはりかなり違う考え方に基づいている案だと思うのです。

 

現行31条は,ある一定の考え方に基づいて,悪意又は重過失という要件を入れているわけですけれども,この83ページの第34になったときに,重過失の場合だけ取り消せるというふうな要件構成に当然になるかというと,これはならないような気がするのですね。

 

 

報告書の後ろの方を見ましても,なぜ重過失にしたかということは必ずしも明確ではない気がいたします。

 

そして,もし仮に,84ページの冒頭にありますように,効果が帰属しないだけでいいじゃないかという意見に対しては,第三者だってその信託財産にかかっていくことができたというふうに信じた場合があって,その人の保護が必要であるという話が書いてあって,それは極めてごもっともであろうという感じがするのですが,こういうふうな外観法理の問題だというふうにとらえますと,一般的には無過失ではないかという感じがするわけです。

 

さらにもう1点申しますと,最後にこれが絶対的な取消しになるのか,それとも受託者が個人で責任を負うという取引になるのかということについて,相手方,第三者はもっと悪いという話が説明に出ましたが,それはやはり重過失であるということが前提になっていて第三者はもっと悪いやつだという話だと思うので,仮にここが過失ということになりますと,そこの部分も本当は変わってくる可能性があるということを,どちらがいいかというよりは,ちょっと指摘をさせていただければと思います。

 

 

 

 

 

  •  同じく第34です。細かいことであり,あるいは説明を読むと既に御説明があるのかもしれませんが,1点だけ申し上げます。

現行31条は,これは相手方と転得者を分けてというか,両方言及しながら規定しております。

 

この第34は,処分だけでなくて,貸付けのような場合というのが含まれてくるということで「第三者」という言葉で一括されているところもあろうかと思いますが,この「第三者」にいわゆる転得者を含むのかどうかということは,ちょっと検討を要するのではないかと思います。

 

31条を手直ししたものの引き継いだ規定だというふうに考えると,そこのところの疑義が生じてきますので,どちらがいいかということについての意見は今持っていないのですけれども,明らかにした形でのルールを作ることが必要ではないかと思います。

 

 

  •  確かに,「第三者」ということで漠然と書いてありますけれども,従来,31条は転得者が入っているのですね。

 

 

  •  これはあくまで,基本的なルールはこういう感じでの議論だったので,具体的に条文化するときに,「第三者」をもっと明確にする必要があるという御指摘はごもっともですので,そこは検討いたします。

 

 

 

  •  ○○幹事が言われたのは,理論的にはもうちょっと難しい問題ではありますね。一種の外観法理的な考え方でもって規定をつくってしまったときに,相手方保護の要件が重過失というのは当然には出てこない,むしろ善意無過失だというので保護するというのが自然ではないかという,それがいいかどうかは別として,そういう御意見だったと思いますけれども。

確かに,従来の31条は,処分行為といいますか,信託財産があって,その信託財産の名義人が受託者で,その名義人が処分したというタイプの相手方の保護ですので,これは名義人が処分したのだから通常は保護されていいだろうということで,主観的な要件の方は悪意重過失の場合だけだめだという形になるのですけれども,それがもうちょっと範囲が広がってきますので,借入れ行為とか,そこになってくると,今のように名義人がしたのだというのとはちょっと違う状況になっていて,一般の取引安全の法理とどう違ってくるのかというようなところが,ちょっと理論的に……。

 

 

 

  •  今,○○幹事が発言されたことで,ああ,そうかと思ったのですが,今の31条と書きぶりが相当に変わっていることの意味なのですけれども,85ページのところで,「信託ノ本旨」という表現があいまいで,それも一つの理由でこういう形にしたのだということなのですけれども,この「権限」ということの意味なのですけれども,そうすると,この条文だと,あるいはまだ条文の形にはなっていませんけれども,典型的には,私が受託者で,信託財産の売却権限はあるのですね。
  • しかし,その利得を我がものとしようと思って売ってしまったと。忠実義務違反の行為であることは明白なのですが,その場合,私が知っている限りは,英米法では,もちろんこれは相手が悪意であれば言うまでもないのですが,取り消して,財産自体を回復することができるということになるのですが,ここは受託者の権限には属しているのだということになるのでしょうか。
  • かつての31条だと,「信託ノ本旨」という話で何だかもっと広いですから,それも入ってくるよと取消しになるのだけれども,今回はもうそれはあきらめると,そういうことになるのでしょうか。

 

 

 

 

  •  民法で言うと,いわゆる権限の濫用タイプですよね。代理権の範囲内に形式的には入っているけれども,その代理権により自分で取得してしまおうというタイプの話ですね。
  •  もう一つ。

今,忠実義務違反で申し上げましたけれども,一般的に英米では,信託違反によりということになっているので,いわゆる善管注意義務違反の場合も。だから,普通だったら今これ売れないよと,そういう場合にぽーんと売ってしまったというような場合もあり得るのですね。

 

  •  そこまで入れるつもりではないのではないかと思うけれども,どうかな。

 

  •  今回はかつての31条よりもずっと狭く……。
  •  かつてのも,それが入るかどうか。要するに,単純な善管注意義務違反--単純なという言い方はあれですけれども,今売ると損だ,もうちょっと待った方がいいとか,そういうときに時期の判断を誤って売ったと。それは善管注意義務違反ということで,内部的な受託者の損害賠償責任を発生させることは当然かもしれないけれども,それ以上に,処分行為を取り消すということになるかどうか。それは,従来の31条でもちょっと問題ではないですか。
  •  ただ,信託行為に厳しく慎重に何とかかんとかという,これこそ信託の本旨と書いておけばいいような気もしますけれども。言葉じりだけで言えばですけれども。

まあ,ともかく,忠実義務違反の方が普通にあり得ることなので,それはどのようになっているのでしょうか。それも権限外という話で,やはり同じようにここで入るのでしょうか。

 

 

 

  •  ちょっと民法のアナロジーでいくと嫌なところだけども。あれは権限は一応あるなんていうふうに考えているものね。それで心裡留保の規定を使ったりして変な処理をしているので。

まあ,ちょっと問題としては考えておきます。

 

  •  割に大きな問題だと思ったものですから。
  •  要するに,「権限」ということでもってどういうものが入ってくるかという問題ですよね。どういうものを「権限」の要素にするか。

ほかに御意見等ございますでしょうか。

 

それでは,本日はどうも長い間ありがとうございました。また次回お願いいたします。

ちょっとアナウンスがありますので,よろしくお願いします。

  •  それでは,次回の予定について御報告いたします。

次回でございますけれども,日時は10月15日,金曜日,午後1時から午後5時まで,この法曹会館の「高砂の間」でやらせていただきたいと思っております。

 

それから,念のため,皆様にちょっとお願いがございますけれども,報告書に記載されていない論点につきましても,この部会で検討が行われないということではなくて,今日もございましたように,必要に応じて審議を進めていきたいと考えておりますので,今後も,新たな論点がございましたら是非とも御提示をお願いしたいと思っております。

 

ただ,最初に申しましたようにスケジュールが相当タイトになっておりますので,充実した審議を行う観点から,なるべく相当な時期に論点をお出しいただくのが,こちらとしても有り難いというふうに考えております。

  •  以上でございますが,何か御質問等ございますか。--よろしいでしょうか。

それでは,これで終わります。どうもありがとうございました。

 

 

 

 

 

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すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。三遊亭楽太郎師匠、禁酒番屋、聴きました。」

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