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相続に関する法律 台湾⑫
2015年12月31日

 

第6部 台湾法

国立台湾大学 黄 詩淳

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

4 一身専属性の復活(2012 年)

 

ところが、2007 年に削除された3 項は、驚くべきことに5 年後の2012 年にまた復活した。立法理由は再び剰余財産分配請求権が夫婦の身分に基づいて生じたものであることを強調し、次に、裁判所が夫婦間の協力程度によりその金額を調整することができるという同条2 項の規定に基づき、この権利が夫婦「自身」に密接に関係し属人性を有するから、一身専属的であり、他人に譲渡できるような財産権ではないと述べている59。

 

当然ながら、民法の研究者はほとんどこの改正に反対している60。

 

 

番人

「研究者が反対しても改正されたんだ。他の人たちはどうだったんだろう。」

 

 

5 小括

 

剰余財産分配請求権を一般的な権利として捉え、かつ夫婦一方の死亡時にその発生を肯定するならば、それは確かに生存配偶者の保障に資するといえる。しかも、婚姻関係存続中に形成された財産のみが清算の対象となるので、この保障の仕組みは、(日本法のような)単純な相続的構成と比べれば公平である。

 

問題は、台湾の現行法は、第三者とりわけ債権者が夫婦間に介入することをあまりに危惧し、この権利の相続性・譲渡可能性をすべて否定してしまい(義務の相続性・引受可能性は不明であるが)、結局は、(少なくとも)夫婦の中で剰余の少ない一方の配偶者の死亡に際して、その相続人は、剰余の多い生存者に対して財産の分配が主張できなくなる。

 

このような法改正は、夫婦財産の公平な清算を阻害しており、不当である。改善の方法としては、このような一身専属の規定を再び削除するか、あるいは、せめて剰余財産分配請求権の相続性を肯定し、移転性のみを否定すればよいであろう61。

 

2 限定承認を原則とした法改正

 

21 世紀に入ってからの相続編におけるもっとも重要な法改正は、2008 年と2009 年6 月に行われた。その契機は相続債務の問題である。すなわち、相続放棄や限定承認の手続きをせず、多額な債務を相続してしまった未成年の相続人が多数存在し、その救済が急務であると認識され、立法府は相続編の一部改正に踏み切った62。

 

ただ、2008 年の改正は、無能力または制限行為能力の相続人(当時の民法1153 条2 項)、および相続開始後に初めて責任を生じた保証債務(同1148 条2 項)に限り、限定責任が適用され、内容的には中途半端なものであったため、施行されてから間もなく再改正を余儀なくされた。

 

次に2009 年の改正は、もはや相続人や相続債務の種類を問わず、完全なる限定責任の原則を導入し(現行法1148 条2 項)、しかも、相続人が特別な手続をしなくても限定責任を主張できるという法改正である。

 

このような過激な改正は、多くの疑問と困難を残している。例えば、本来、限定承認のために、相続人は一定期間内に相続財産の目録を作成して裁判所に提出し、限定承認の旨を申述しなければならないが、現行法は、これを不要としたため、将来、遺産の範囲や相続債務の範囲について争いが生じやすくなるのであろう。そのため、研究者は厳しい批判をしている63。

 

 

番人

「何もしなければ、限定承認になるんだ。もらったものの限りで借金とかは支払うんだ。」

 

3 家事事件法の施行

 

2012 年6 月1 日に、台湾において家事事件法が施行された。これまでの家事事件手続は、一部は民事訴訟法(例えば、婚姻訴訟事件、親子訴訟事件など)に、他は非訟事件法(例えば、子の氏の変更事件、不在者財産管理人選任事件など)において規定されていた。

 

このように審理に関する法規が異なる法典の中に散在すると、相互に関連性のある家事事件でも、異なる裁判官が異なる手続きで審理するようになりがちであり、裁判所の人的資源を浪費し、ひいては判決が互いに矛盾するといった状況になりかねない。

 

よって、婚姻や親子関係に関する家事訴訟手続きと家事非訟手続きを家事事件法にて統合し、法律の併合によって家族をめぐる紛争や相関する他の家

事事件をより適正に、より迅速に解決並びに包括処理できるよう取り計らうとともに、子の利益の最大化及び家庭の円満化を図ることを目的として、家事事件法は制定された。

 

同法は、全200条から構成され、「総則」、「調停手続」、「家事訴訟手続」、「家事非訟手続」、「履行の確保及び執行」、「附則」等六編によって規定されている。同法はソーシャルワーカーの立会い、手続監護人、家事調査官、手続の併合、仮処分制度、履行の確保、子の引渡し及び子との面会交流の強制執行等の新たな制度も創設した。

 

家事事件法3 条によって、家事事件は、甲、乙、丙、丁、戊の5類型に分かれている。このうち、甲類、乙類、丙類は「家事訴訟事件」と呼ばれ、家事事件法37 条によって、家事訴訟手続の適用対象となる。また、丁類と戊類事件は「家事非訟事件」と呼ばれ、家事事件法74 条によって、家事非訟手続の適用対象となる。

 

分類の基準は、(1)争訟性の有無、(2)当事者或いは関係者が有する手続きに対する処分権の範囲、(3)裁判所の職権・裁量権による介入の必要性である。

この5類型の事件とそれの分類基準を合わせて、以下の<表2>で示すこととする。

<表2 省略>

表の左から争訟性が高く、右に行くにつれ争訟性が段々下がっていくことになる。続いて、争訟性がある甲類、乙類、丙類の三つの事件において、表の左にある甲類事件は、表の右にある丙類事件より、裁判所の職権・裁量権による介入の必要性が強いので、当事者の有する手続きに対する処分権の範囲が狭くなる。

 

そして、家事非訟事件である丁類と戊類事件について、表の左にある丁類事件は、表の右にある戊類事件と比べると、丁類事件は当事者の有する手続処分権が少ないので、裁判所の職権・裁量権による介入の必要性がより強くなる。

 

相続に関する事件は、家事事件に分類されるため、家庭裁判所(原文:家事法院)に管轄される。そのうち、相続回復、遺産分割、遺留分、遺贈、遺言書真正の確認等は、丙類事件すなわち訴訟手続による(家事事件法3 条3 項6 号)。

 

まあ、相続放棄、相続人の不存在、遺言執行者の選任等、争訟性が少ない事件は、非訟的な丁類事件に属する(同法同条4 項9、10 号)。さらに、家

事事件における包括処理の必要性に鑑みて、手続の類型分化または請求権の差異により、当事者が複数の訴えを起こさなければならなくなることで、当事者に不本意な出費や裁判の矛盾がもたらされないようにするため、家事事件法は、併合審理・併合裁判を広く認めている。

 

すなわち、同法41 条1 項は、「複数の家事訴訟事件または家事訴訟事件と家事非訟事件が同一の事実上及び法律上の原因に基づくときに、当事者は、一つの家事訴訟事件について管轄権を有する家事法院に申し立てることができ、民事訴訟法53 条と248 条の制限を受けない」と定めている。

 

したがって、遺産をめぐる相続人間の紛争は、現在では包括的に家庭裁判所に管轄され、一つの手続で解決されることとなる。

 

 

 

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