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相続に関する法律 台湾⑧
2015年12月31日

 

第6部 台湾法

国立台湾大学 黄 詩淳

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

1 遺贈

 

遺贈について台湾の民法には1200 条から1208 条までの明文の規定が存在する。

 

(1) 遺贈と認定される処分

 

例えば、最高法院86 年度台上字第2864 号判決では、遺言で「遺産の中の甲、乙土地をA(被相続人の孫)に遺贈する」と明確に記載されている場合には、これを裁判所は特定遺贈と認定している。受遺者と遺贈者との関係から観察すれば、遺贈は確かに法定相続人でない者に対するものが多いが、法定相続人への処分を遺贈と解している判例も一定数は存在する39。

 

(2) 遺贈の法的効力

 

遺贈の法的効力について、台湾の民法は物権変動につき形式主義を採り、不動産の物権は登記、動産の物権は引渡しがその効力発生要件となっているため、判例(最高法院86 年台上字第550 号判決)と通説40はともに遺贈は債権的効力しか有しないと考えている。

 

(3) 遺贈の登記手続

 

不動産が遺贈の目的である場合には、まずは相続人が相続登記を経由し、その後に登記移転権利者である受遺者が、登記移転義務者である相続人と共同で、遺贈目的物の移転を申請することとなる。これは土地登記規則の123 条1 項に明文の規定がある。

 

2 相続分の指定

 

被相続人は法定相続分と異なる割合の相続分を指定することができ、これは相続分の指定と呼ばれている。相続分とは、各相続人の遺産に対する割合的な持分であるから、観念的には相続人でない者は相続分の指定を受けることができない。

 

台湾の民法には相続分の指定に関する明文の規定がおかれていないが、判例と学説41はその存在を肯定している。

 

(1) 相続分の指定と認定される処分

 

典型的な相続分の指定は、相続人につき、遺産の何割とか、何分のいくつを与えるという処分42であろう。しかし、台湾の判例は、遺言で遺産の全部または特定の遺産を、特定の相続人に単独で相続させる処分(つまり割合的な処分ではないもの)をも、相続分の指定として認めている。

 

(2) 相続分の指定の法的効力

 

相続分の指定は、本来は相続人の遺産の取り分に対する割合的修正であるため、具体的に遺産の中の何を取得するのかは遺産分割手続を経ないと決まらない。

 

遺産分割によって特定の遺産が特定の相続人に帰属することが確定するまでは、相続分は理論的には遺産に対する割合的な持分である。また、台湾における遺産共有が合有(民法1151 条明文)であり、相続分は潜在的・抽象的な持分にすぎず、個々の財産に対する具体的な持分ではないため、受益相続人は遺産に属する特定の財産の持分を第三者に譲渡することができない。

 

これは合有を採用した以上は当然の帰結であり、日本の状況とは異なっている。

 

相続分の指定が物権的なのか債権的なのかは、上述の譲渡できないという特徴だけからは決定することはできない。台湾の学説はこの点について全く論じていないが、以前筆者は、個々の財産に対する持分を処分できないという性質、また、当然ながら個々の財産の処分もできないこと、

さらに、遺産に対する持分の第三者への一括処分も認められないと解されることから、相続分の指定は物権的な効力を有しないと主張した43。

 

しかし、2011 年最高法院判決(100 年度台上字第1747 号判決)は、相続分の指定が遺贈とは異なり、時効にかからないという解釈を採用している。

さらに、登記実務は、遺言により相続分の指定を受けた受益相続人が、被相続人より先んじて死亡した場合に、その指定された相続分がその直系卑属によって代襲相続されると解している(2003年8 月29 日の法務部解釈法律決字第920036217 号)。

 

これに対して、遺贈では代襲受遺は原則としては認められない(台湾民法1201 条)。相続分の指定と遺贈には、以上のような効力の相違が

あるから、相続分の指定は物権的効力説により親和的である。

 

(3) 相続分の指定の登記手続

 

土地登記規則の第120 条第1 項によれば、共同相続人の一人は相続人全員の利益のために、単独で不動産の合有の登記を申請でき、また、共同相続人全員の同意があれば、共有の登記も申請できる。

 

その際に、同法第119 条第1 項の書類、すなわち戸籍謄本および相続関係図等を提出する必要があるが、これには遺言が含まれていないため、登記官は相続分の指定を知ることができない。そのため、第120 条第1 項の相続登記は必然的に法定相続分の割合に等しい合有の登記ということになる。

 

しかし、内政部の1992 年6 月20 日の台(81)内地字第8181523 号解釈は、相続分の指定の登記は遺贈の登記に関する共同申請主義と異なると解し、受益相続人が遺言および他の必要書類を提出すれば、単独で登記を行うことができるとしている。これは日本法の相続分に関する解釈と同様の結果となる。

 

 

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