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相続に関する法律 台湾⑦
2015年12月31日

 

第6部 台湾法

国立台湾大学 黄 詩淳

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

3 遺留分

 

台湾民法の遺留分に関する規定は1223 条~1225 条までの3 ヵ条であり、ゲルマン・フランス型の遺留分制度に属すると一般的に考えられている28。その理由は、民法は法定相続主義を採用して、全ての法定相続人に遺留分を与える。

 

法定相続人はその相続人の資格に基づいて遺留分権を有する。すなわち、法定相続権は遺留分権の基礎である。したがって、相続欠格または相続放

棄した相続人は相続開始時に相続権を有しないことになるので、遺留分権も有しない。次に、遺留分は遺産の一部であり、遺産の上に存在するものであるから、遺留分が侵害された場合、返還請求の目的は原則として遺産の現物に限られる。

 

1 遺留分権利者

 

台湾民法1223 条によれば、法定相続人の全ての者が遺留分権利者である。それには、被相続人の直系卑属、父母、兄弟姉妹、祖父母及び配偶者が含まれている。

 

2 遺留分の率

 

遺留分権利者の遺留分の率は、被相続人との関係の親密度によって異なる。民法1223 条によれば、直系卑属、父母及び配偶者はその相続分の二分の一であり、兄弟姉妹、祖父母の遺留分はその相続分の三分の一である。したがって、遺留分の前提として、まず相続分を計算しなければな

らない。法定相続人とその順位が、11 で述べたとおり、1138 条、1140 条、1141 条、1144 条に規定されており、これらの条文に基づいて計算した結果として、各人の遺留分は、以下の通りである。

 

(1) 配偶者

 

配偶者が単独相続するとき、その相続分は遺産の全部であり、遺留分は遺産の二分の一である。

配偶者が被相続人の直系卑属、父母、兄弟姉妹、祖父母と共同相続するときについては、次に検討する。

 

(2) 直系卑属

 

被相続人に子A・B・C 三人がいる場合、A・B・C それぞれの相続分は遺産の三分の一である。

遺留分は三分の一の半分、すなわち遺産の六分の一である。直系卑属が配偶者とともに相続するときは、配偶者の相続分は他の相続人と頭割りで計算する。例えば、被相続人には子三人と配偶者がいる。配偶者の相続分は遺産の四分の一であり、遺留分は遺産の八分の一である。他の子の相続分も遺留分も配偶者と同様である。

 

(3) 父母

 

父母のみが相続人であるとき、父と母の各人の相続分は遺産の二分の一であり、その各人の遺留分は遺産の四分の一である。父母と配偶者が共同相続するとき、配偶者の相続分は遺産の二分の一であり、父と母の各人の相続分は遺産の四分の一である。そして父と母の各人の遺留分は、相続分の二分の一であるため、遺産の八分の一である。

 

(4) 兄弟姉妹

 

兄弟姉妹の遺留分は上記の者と異なり、相続分の三分の一である。相続人が兄弟姉妹四人である場合に、各人の相続分は遺産の四分の一であり、遺留分は相続分の三分の一であるため、遺産の一二分の一である。

 

相続人が配偶者と兄弟姉妹四人である場合には、配偶者の相続分は二分の一、兄弟姉妹全体の相続分も二分の一であるから、各人の相続分は八分の一である。その遺留分は二四分の一である。

 

(5) 祖父母

 

祖父母の遺留分は相続分の三分の一である。相続人が父系と母系両方の祖父母である場合に、各人の相続分は遺産の四分の一であり、遺留分は遺産の一二分の一である。父系と母系両方の祖父母と配偶者が共同相続する場合に、配偶者の相続分は遺産の三分の二であり、祖父母全体の相続分は三分の一。各人の相続分は一二分の一で、遺留分は三六分の一である。

 

 

 

 

 

 

3 遺留分の計算

 

遺留分額を算定する方法について、民法1224 条は「遺留分は、第一一七三条により計算した相続すべき遺産の中から債務額を控除して計算する」と定めている。第1173 条29は遺産分割の際に、相続開始時の遺産額に特別受益額を加える規定である。

 

したがって、1224 条によれば、「遺留分算定の基礎となる財産」の計算方法は、(ⅰ)被相続人が相続開始時に有した財産に、(ⅱ)特別受

益財産を加え、さらに(ⅲ)債務額を控除する、ということになる。

 

次に、各遺留分権利者の遺留分額の計算について、1224 条によって算出した「遺留分の基礎となる財産」に基づき、さらに1223 条に規定された一定の率を乗じた結果、各人の遺留分額が出てくる。

 

4 遺留分の減殺

 

1225 条は、「遺留分権利者は、被相続人のなした遺贈によってその得べき額に不足を生じたときは、その不足額に応じて、遺贈財産を減殺することができる。遺贈を受けた者が数人いるときは、その得た遺贈の価額に比例して減殺しなければならない」と規定している。

 

つまり、遺留分権利者が現実に被相続人から受けた利益が、その遺留分額に達しないときに、はじめて遺留分侵害があるとして、遺留分権利者は遺留分減殺をすることができる。また、遺留分が不足している(=遺留分が侵害される)とき、遺留分権利者が減殺請求するか否かはその自由に委ねられる。

 

(1) 遺留分侵害額の計算

 

問題は、「遺留分権利者の現実に被相続人から受けた利益」とはどのようなものかである。この点について、民法は直接の規定を用意していないし、学説も詳しく論じていない。しかし、通常、「遺留分権利者の現実に被相続人から受けた利益」とは、被相続人から受けた特別受益30の価額

や遺贈の価額のほか、相続によって現実に得た財産(遺産分割で得た財産)もそれに含まれる。

 

(2) 遺留分を侵害する法律行為の効力

 

遺留分を害する法律行為は、当然無効なのか、あるいは一応有効であるが、遺留分権利者からの減殺を受けてはじめて効力を失うか、という問題がある。判例(最高法院58 年台上字第1279号判例)と通説31は、遺留分を侵害する法律行為は無効ではなく、ただ遺留分を侵害した遺贈が減殺の対象となるにすぎない、と主張している。

 

(3) 減殺権の法的性質

 

減殺権は財産権であることについて、学説上は異論がない。つまり、減殺権は一身専属の権利ではないため、相続ないし譲渡することが可能であり、遺留分権利者の債権者も代位行使できる32。

減殺権の性質については学説が分かれているが、判例33と通説34は物権的形成権説である。

 

(4) 減殺の対象

 

民法1225 条は、「遺留分権利者は、被相続人のなした遺贈によってその得べき額に不足を生じたときは、その不足額に応じて、遺贈財産を減殺することができる。遺贈を受けた者が数人いるときは、その得た遺贈の価額に比例して減殺しなければならない」と規定しており、遺留分減殺

の対象は一見すると、遺贈だけであると思われる。

 

もっとも、民法1187 条は、「遺言者は、遺留分の規定に反しない範囲内において、遺言をもって自由に遺産を処分することができる」と定め

ており、通説によれば、「遺言をもって遺産を処分する」ことには、遺贈に限らず、相続分の指定と遺産分割方法の指定なども含まれる。そのため、遺贈、相続分の指定と遺産分割方法の指定は遺留分減殺の対象となる。

 

また、贈与者の死亡と伴って効力を生じる死因贈与もまた遺留分減殺の対象とされている。したがって、減殺の対象は、終意処分に限定され、(特別受益を含むもの)生前処分には及ばない。

 

(5) 減殺の行使

 

遺留分減殺権の行使は、物権的形成権説を採った以上、それは受遺者や受贈者に対する権利者の一方的な意思表示であり、しかも裁判外でも行使できると解されている。この点において台湾と日本は同様である。

 

(6) 減殺権の消滅の期間

 

日本民法には遺留分減殺請求権の消滅時効(1 年、1042 条を参照)を定める明文があるのに対して、台湾には条文上は規定がない。様々な見解が存在するが、判例(最高法院103 年台上字第880 号判決)と通説35は、減殺権の性質が相続回復請求権のそれに類似することを理由として、相

続回復請求権の消滅時効(2年と10 年、民法1146 条)が類推適用されると解している。

 

5 日本との比較

 

これまで、台湾の遺留分と遺留分減殺請求の制度の概要を論じてきた。台湾の法定相続人は、すべて遺留分を有する。これに対して、日本では兄弟姉妹は法定相続人であるが、遺留分権を有しない。

 

台湾の条文は、遺留分を「相続分の何分の一」という文言で規定している。そのため、遺留分を不可侵的な相続分とみるのが一般的である。また、日本法と比べると、台湾法には価額弁償の規定がなく、現物返還が原則であり、且つ相続開始前の遺留分放棄という制度も存在しないため、よりフランス・ゲルマン型の遺留分に近いといえる。

 

 

番人

「兄弟姉妹には遺留分があるんだ。」

 

 

 

台湾の判例通説によると、遺留分減殺請求権の法的性質は、物権的形成権であり、日本・フランスとはあまり違いがない。しかし、減殺請求の対象である処分の法的性質において、台湾と日本とでは差異が生じる。

 

比喩的にいえば、両者は同じ刀物(遺留分減殺請求権)を有していても、切断する対象(減殺請求の対象)がそもそも異なるので、同じ結果が出てくるはずはないと考えられる。次の4は、減殺請求の対象、すなわち法定相続分の変更を伴う遺贈などの終意処分について分析していく。

 

 

番人

「台湾でも遺留分の請求の方法も、日本と同じで相手に請求した時に効力が発生するんだ。」

 

 

4 遺言による財産処分

 

台湾民法1187 条は、被相続人は遺留分に反しない限り、遺言により自由に遺産を処分することができると定めている。これは日本民法964 条の規定に類似しており、「遺言による財産処分」とは何かについて明言していない。

 

台湾の学説は、「遺言による財産処分」とは何かについてまったく触れておらず、ただ「遺言事項」を定義しているだけである。すなわち、通説によれば、遺言事項は、監護人の指定、遺産分割方法の指定・指定の委託、遺産分割の禁止、遺言の撤回、遺言執行者の指定・指定の委託、死亡退職金を受給する遺族の指定、寄付行為、遺贈、相続分の指定である36。

 

その中の、遺贈、相続分の指定、及び遺産分割方法の指定は同様に被相続人の遺産の配分に関する指示であり、しかも遺留分減殺請求の目的となる37ため、本稿では遺言による財産処分という概念で一括する。この三者は確かに概念的には区別されているが、具体的な状況の下で、例えば、「遺産の中の甲土地はA に分配する」という処分は、一体特定物の遺贈なのか、またはA の価値が法定相続分を超えたため相続分の指定に属するのか、あるいは遺産分割方法の指定かは必ずしも容易に判断できないと考えられる38。

 

以下は台湾の判例と学説の見解を考察するが、結論を先取りすれば、かつての裁判例は確かに学説の指摘通り三種類の遺言による財産処分を特

に区分せずに取り扱っていたが、最近公表されたいくつかの最高法院の判決は、三者の違いを明確に意識し、学説が想定していなかった遺言による財産処分の効力を認め始めている。

 

 

 

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