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相続に関する法律 台湾④
2015年12月31日

 

第6部 台湾法

国立台湾大学 黄 詩淳

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

2 遺産共有

 

被相続人の死亡の時点から相続が開始し、当然に相続財産は共同相続人に帰属することとなる。

さらに、台湾法は日本法と同様に、包括承継の原則に基づいて、相続開始の時点から、相続人は、被相続人の財産に属した全ての権利義務を承継する(中華民国民法第1148 条1 項)。

 

しかし、仮に相続人が複数である場合には、もともと被相続人一人に属した権利義務関係は、複数の相続人にどのように帰属するのか、つまり、共同相続の法的状態が問題となる。本節においては、この相続開始後の第一段階ともいえる「遺産共有」の状態、具体的には、台湾の遺産共有の性質と権

利行使の方法について論じたい。

 

1 遺産の合有

 

共有という団体内部の結合関係の強度は、それに属する各共有者の持分の処分権及び分割請求権の有無などに依存する。ドイツでは、民法における様々な共同所有の形態を、三類型―共有(Miteigentum)・合有(Eigentum zur gesamten Hand)・総有(Gesamteigentum)―に分けて説明

している。

 

この概念を自国に輸入し、既に存在した共同所有団体に当てはめ、その類型にあるべき法律効果を画一的にその団体へ適用するという解釈方法論については、疑問を提起する論者もある9が、ここでは説明の便宜のため、とりあえず遺産共有の形態をドイツ流の理論を借用して分類する。

 

 

番人

「共有、合有、総有ってドイツ産だったのか。」

 

 

 

中華民国民法1151 条は、「相続人が数人あるときは、遺産分割の前においては、各相続人は遺産全部に対して公同所有関係にある」と規定している。では、この「公同所有関係」は共有、合有または総有のいずれに該当するのであろうか。

 

台湾の代表的な教科書によれば、公同所有とは、法律の規定または契約により公同関係となった数人が、公同関係に基づいて一物の所有権を共有することである。公同所有の主な事例には、組合財産、未分割の遺産、および祭祀公業の三種類がある10。個々の公同所有関係の強度は異なるが、共通点もある。

 

すなわち、各公同所有者の権利は公同所有物の全部に及ぶこと、各公同所有者は潜在的な持分しか有しないこと、公同所有物の処分と他の権利の行使は、公同所有者の全員の同意を得べきであること、公同所有関係の存続中は、各公同所有者は公同所有物の分割を請求できないこと、などである。

 

 

次は、合有と総有の定義をみてみる。合有においては、各共同所有者は、目的物に対する管理権能と収益権能とを留保する。すなわち、持分権を有する。しかし、主体の間に、例えば共同して一つの事業を営むというような、共同の目的があり、共同所有は、この共同目的達成の手段と

されている。

 

したがって、各共同所有者の管理権能は、この共同目的達成のための規則によって拘束され、その共同目的の存続する限り、各共同所有者は、持分権を処分する自由もなく、また分割を請求する権利もない。

 

ドイツ民法は、組合財産・夫婦共有財産・共同相続財産について、これを合有と定めた11。一方、総有では、共同所有者の持分が潜在的にも存せず、持分の処分や分割請求が問題にならず、各共同所有者は目的物に対して使用・収益権を有するのみである。

 

要するに、所有権に含まれる管理機能と収益機能とは全く分離し、各共同所有者は、共有における持分権をもたない。最も団体的色彩の強い共同所有形態である12。

 

日本における総有の代表例は、慣習上見られる入会権のほか、慣習上の物権(温泉権)と権利能力なき社団の財産もそうであると説明されている13。

 

 

台湾における分割前の遺産には、各相続人は具体的な持分を有しないが、潜在的な持分を有するので、合有に該当するものだと考えられる。台湾の民法物権編における公同共有(合有)の規定、すなわち827~830 条は、遺産にも適用が可能である。

 

但し、遺産が一般の合有財産と異なるのは、もともと合有関係の法理によれば、各共有者は合有関係の存続中は、共有物分割を請求できないはずである(民法829 条、682 条1 項)が、1164 条は、「相続人は何時でも遺産分割を請求することができる。

 

但し、法律上に別段の規定があるか、又は契約に別段の約定があるときは、その限りでない」と定めている。この規定の趣旨は、遺産の合有関係を永久に維持する意味はなく、合有関係によって経済流通が阻害されること防ぐためのものだと言われている14。

 

遺産合有の規定について、批判がないわけではない。合有関係の下では相続人は相続財産について自由に持分を処分することができず、取引の安全を害する恐れがあるというのである15。しかし、相続編が施行されてから現在まで、該当する条文は変更されなかった。次は合有の下での法律関係を検討する。

 

 

 

2 債権と債務の共同相続

 

遺産分割前に、共同相続人は遺産に対して合有関係にあるため、共同相続人は相続債権・債務についても当然に合有関係となる。

 

(1) 債権

 

遺産分割前に、各共同相続人は遺産に対して合有関係にあるため、共同相続人は相続した債権について具体的な持分を有しない。したがって、相続債権は金銭債権のような可分債権か不可分債権かにかかわらず、遺産分割前には合有債権と考えざるを得ない。

 

この相続債権の合有状態について、実務上最も多く見られる争いは、共同相続人が共同して相続債務者に対して弁済を請求しなければならないのかということである。すなわち、訴訟上、これを必要的共同訴訟と解し、共同相続人全体が原告となるべきか、または不可分債権の規定16を類推し、共同相続人の一人が全体のために弁済を請求できるか、という問題である。

 

学説は後者の見解に賛成し、すなわち、相続人の一人が相続人全体の利益のために、債務者に対して相続人全体へ弁済請求できると主張

している17。その根拠としてはドイツ民法第2039 条18が挙げられている19。

 

(2) 債務

 

相続債務は、合有財産に属するため、合有の債務であると同時に、相続債権者の保護及び共同相続人間の公平を図るために、民法の規定によって、連帯債務でもある。すなわち、1153 条は、「(1 項)相続人は、被相続人の債務に対して、相続により得た遺産の範囲内において、連帯責任

を負う。(2 項)相続人相互間においては、被相続人の債務に対して別段の約定がある場合を除いて、その相続分に応じて負担する」と定めている。共同相続人は相続債務に対して連帯責任を負うため、民法債編の連帯債務に関する規定(272~282 条)は相続債務にも適用される。

 

 

(a) 対外関係

 

民法273 条1 項を適用すると、相続債権者は共同相続人の一人・数人または全体に対して全部または一部の給付を請求することができる。問題は、債務が性質上、不可分である場合に、債権者は連帯債務を理由として共同相続人の一人に対して起訴すれば足りるのか、または合有のため、

共同相続人全体を被告とすべきなのか(必要的共同訴訟)である。

 

実務上は、賃借不動産の明渡義務がしばしば問題となる。最高法院51 年20台上字第1134 号判例は、必要的共同訴訟説に立っている。すなわち、「上告人は契約満了を理由として、賃借人の相続人に対して不動産の明渡を請求したが、相続人であるA を被告としなかった。原審がこれを当事者適格に反するとして、上告人の訴えを棄却したことは適法である」と述べ、相続人全体を被告とすべき必要的共同訴訟説を支持している。

 

(b) 内部関係

 

民法1153 条2 項は、共同相続人の内部の債務分担割合を規定している。この条文によれば、共同相続人間ではその「相続分」に応じて債務を負担するため、連帯債務者が「人数」に応じて(平等の割合で)連帯債務を分担すると定めた民法第280 条本文のルールは、相続債務には適用されない。

 

 

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