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相続に関する法律 台湾③
2015年12月31日

 

第6部 台湾法

国立台湾大学 黄 詩淳

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

2 法定相続分に関する疑問および対応

 

配偶者の相続分および血族相続における均分主義の定めは、完全に安定したものではない。社会環境の変化につれ、それに対する疑問は当然に提起され始めている。

 

(1) 配偶者の相続分について

 

1975 年に司法行政部の民法研究修正委員会は、民法の改正を目標として、いくつかの改正のポイントを提出した。その中で、「配偶者と直系卑属が共に相続する場合は、その相続分は固定すべきか(例えば配偶者は二分の一を取得。残りは子に分ける)」という問題が提示された4。

 

しかし、その後、1976 年に、行政院長(司法行政部は行政院に属する)がこの改正案に反対していたため、改正作業は中断した5。現在まで配偶者の法定相続分に関する条文が改正されたことはない。とはいえ、1985 年に夫婦財産制に剰余財産分配請求権を導入したことにより、配偶者の死亡にあたっ

て生存配偶者が得られる財産は実質的に増加することになった。これについては第3 章の1でさらに詳述する。

 

(2) 均分相続と農地細分の問題について

 

1975 年に司法行政部長が中国国民党中央常務委員会に対して、「民刑法の改正にあたって政策上考慮すべき問題」を報告した際に、従来から貫かれてきた均分原則に関する疑問が農家相続との関連で提起された。すなわち、「民法は遺産相続について均分相続を採用している。

 

例えば、農民の甲には子5 人がいる。甲の死後、その耕地は5 等分に分割されて、5 人の子に相続される。

この制度は農業社会では公平で合理的であるが、現代工業社会では、農業が既に機械化されたため、均分相続による過小の農地面積は機械化を妨げる。先の例のように、農地を過度に細分化することは、耕作に不利な影響を与える可能性がある。

 

 

 

 

したがって、英米国家のように遺産は遺言で自由に処分すべきだと主張する者がいる。なぜなら、そうすると、農地の細分化が避けられるのみならず、子は遺産に頼ることができず、その独立の精神を養うことができるからである。

 

しかしながら、現行法の均分相続を支持する者は、遺産の自由処分がわが国の社会通念に合わないこと、そして被相続人が不公平な自由処分をする場合は相続をめぐる紛争が起きやすいことを理由として、法の改正に反対する。総じていえば、現行相続制度の下で、如何に農地の相続及びその経営問題を扱うべきかに関しては、更なる研究が必要である」6というのである。

 

 

 

 

 

このように、民法の均分相続制度を改正することに反対する力が強いので、結局、民法ではなく、特別法において、分割の規制と単子相続の促進に関する規定を設置するという対応が採られた。具体的には、1973 年農業発展条例22 条に一定面積以下の耕地の分割と共有への変更を禁止する規定、23 条に農地の単子相続を奨励する規定がそれぞれ設けられた。

 

 

 

 

しかし、農地の細分化ないしは農業の零細化の問題は一向改善されていない。1970 年には家族あたりの農場の平均耕地面積は0.82ha であったのに対して、1980 年には0.79ha へと低減した7。農場の規模拡大を図り、相続による細分化を防ぐため、1980 年に農業発展条例23 条が次のように改正された。

 

すなわち、農地がまとめて一人の(自作能力を有する)相続人に相続または贈与され、且つ農業の経営が継続される場合には、遺産税または贈与税、および五年分の固定資産税(原文は「田賦」。収穫された作物で現物徴収)を免除すること、さらに、当該相続人が現金で他の相続人に補償することを

要する際には、国が10 年以上の低利子ローンの申込に協力することを定めている。

 

 

 

 

 

しかし、2000 年に状況が一変し、上述した零細化防止に関わる条文はすべて撤廃された。このことも社会背景と密接に関連している。すなわち、1990 年代末にWTO の加盟予定とグローバルの波が台湾の農業を襲った。国民経済における農業の比重の低下、農家の高齢化、及び農業科学技術の進展など、新しい社会や経済環境に対応するためには、農業の市場競争力を高めなければならない。

 

すなわち、効率的な経営・管理と新たな資本と技術の導入、言い換えればある程度の市場原理を働かせる必要がある。そのため、市場メカニズムを著しく阻害する「自作農だけが農地を所有できる=農地農有」という伝統的な農地政策には、疑問が投げかけられた。

 

結局、「農地農有」政策は緩和され、「農地が農業の使途に利用される=農地農用」という方針だけが残されることとなった。2000 年に行われた法改正で農家相続に及ぼす重要なポイントは、分割制限の撤廃と免税の優遇の拡大(単子相続の条件の撤廃)の2 点である。言い換えれば、農家相続に特別な配慮をする条文は、すべて取り除かれた。

 

 

番人

「台湾の農業はどうなるんだろう。」

 

 

以上の法変遷を、均分相続の原理が農業経営の要請を上回ったと把握することができない。そもそも所有と経営の不分離を原則とする自作農主義を前提としないのなら、均分相続による農地の所有権の細分化と農業経営の要請とは必ずしも矛盾しないはずである。

 

台湾法の特徴は、かつての厳格な自作農主義を緩和し、農業法の立法で所有と経営の分離を認めたため、(自作農主義の下での)均分相続と農業経営の対立構図が崩れたことである8。したがって、民法における均分相続の原則は現在まで無傷で維持されてきたのである。

 

 

 

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