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相続に関する法律 韓国㉒
2015年12月28日

 

第5部 韓国法

淑明女子大学 郭 珉希

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

4 遺言の検認と執行

 

1 意義(遺言の検認・執行)

 

韓国民法1091 条(遺言証書、録音の検認)①遺言の証書又は録音を保管した者若しくはこれを発見した者は、遺言者の死亡後、遅滞なく、法院に提出して、その検認を請求しなければならない。

 

②前項の規定は、公正証書や口授証書による遺言については適用しない。

 

韓国民法1092 条(遺言証書の開封)法院が封印のある遺言証書を開封するときは、遺言者の相続人、その代理人その他の利害関係人の立会がなければならない。

 

民法1091 条の遺言証書の法院の検認は遺言証書の形式、態様などの遺言の方式に関する全ての事実を調査・確認して相続開始後の偽造、変造、隠匿、破毀などのおそれを防止するために定められたものである。遺言の検認手続きは一種の検証手続き、あるいは証拠保存手続きであるので、遺言内容の真否やその効力などのような実体法的な効力を判断するものではない。

 

したがって、判例105は、民法1092 条が定めている遺言証書の開封手続きは封印のある遺言証書の検認には必ず開封が必要であるからその手続きを規定したまでであって、適法な遺言であれば、このような検認や開封手続きを経てなくとも遺言者の死亡によって直ちに効力を生ずると解すべきだと

判断したことがある。韓国民法は、検認や開封手続きの違反に対する過料などの制裁も定めていない。

 

2 遺言執行者

 

遺言の検認とは別に、遺言の執行とは、遺言の効力が発生した後、遺言に表示されている遺言者の意思を実現する行為若しくはその手続きのことである。このような執行行為若しくは執行手続きを担う者が遺言執行者である。

 

(1) 遺言執行者の地位と決定

 

韓国民法1101 条(遺言執行者の権利義務)遺言執行者は遺贈の目的である財産の管理その他の遺言の執行に必要な行為をする権利義務がある。

韓国民法1103 条(遺言執行者の地位)①指定又は選任による遺言執行者は相続人の代理人とみなす。

 

②第681 条から第685 条まで、第687 条、第691 条及び第692 条の規定は遺言執行者について準用する。

 

韓国民法682(複任権の制限)①受任人は委任人の承諾又はやむをえない事由がなければ、第三者にして自己に代わり、委任事務を処理させることはできない。

 

 

②受任人が前項の規定によって第三者に委任事務を処理させた場合には、第121 条、123 条の規定を準用する。

韓国民法1098 条(遺言執行者の欠格)制限能力者と破産宣告を受けたものは、遺言執行者となることができない。

 

遺言執行者の地位は民法の規定によると相続人の代理人としての地位を有する。したがって、遺言執行者は相続人の代理人として相続財産を善良な管理者の注意をもって任務を果たすべきであり、相続人に対する報告義務や金銭消費の責任などを負う。

 

なお、1103 条2 項の682 条の準用によって、遺言執行者には原則として複任権も制限される。遺言執行者は遺言訴訟に必要な訴訟手続きにおいて法定訴訟担当者として当事者適格を有しており、その範囲では、相続人は当事者適格がないというのが一般である106。

 

遺言執行者がある場合には、相続人は相続財産に対する処分権を喪失することになるはずであるが、韓国民法はこのような内容の規定は設けていない。

制限能力者と破産宣告を受けた者は遺言執行者となることができない(1098 条)。

 

韓国民法は遺言執行者の決定について、指定遺言執行者、法定遺言執行者、選任遺言執行者の三つの方法によることにしている。

 

(a) 指定遺言執行者

 

韓国民法1093 条(遺言執行者の指定)遺言者は遺言で遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

韓国民法1094 条(委託による遺言執行者の指定)①前条の委託を受けた第三者はその委託があったことを知ってから、遅滞なく、遺言執行者を指定して、これを相続人に通知しなければならないし、その委託を辞そうとするときは、これを相続人に通知しなければならない。

 

②相続人その他の利害関係人は、相当の期間を定めて、その期間内に遺言執行者を指定することを委託された者に催告することができる。その期間内に指定の通知がなかったときは、その指定の委託を辞退したものとみなす。

 

韓国民法1097 条(遺言執行者の承諾、辞退)①指定による遺言執行者は遺言者の死亡後に、遅滞なく、これを承諾するか辞退するかを相続人に通知しなければならない。

 

②選任よる遺言執行者は、選任の通知を受けてから、遅滞なく、これを承諾するか辞退するかを法院に通知しなければならない。

 

③相続人その他の利害関係人は、相当の期間を定めて、その期間内に承諾するかどうかを確答すべき旨を、指定又は選任による遺言執行者に催告することができる。その期間内に催告に対する確答をしなかったときは、遺言執行者が就任を承諾したものとみなす。

 

 

指定による遺言執行者は、遺言者の死亡後に、遅滞なく、これを承諾するか辞退するかを相続人に通知しなければならない(1097 条2 項)。指定の委託を受けた者がある場合に、韓国民法は、まず、委託を受けた第三者はその委託があったことを知ってから、遅滞なく、遺言執行者を指定して、これを相続人に通知しなければならない。

 

しかし、相続人は、指定の委託を受けた者が遺言執行者を指定するのをいつまでも待っていられるわけにはいかない。そもそも、「指定又は選

任遺言執行者の就任の承諾・承諾」については、1097 条があって相続人(その他の利害関係人)は催告権を有するが、「指定の委託を受けた者の委託の承諾・辞退」を問う催告権は規定がない(1097 条、特に同条の3 項)。

 

そこで、韓国民法は、相続人その他の利害関係人は、その者に対して、「遺言執行者を指定するかどうか」を確答すべき旨の催告をすることができるした上で、相当の期間内に指定の通知がなかったときは、その「指定の委託を辞退したもの」とみなすと定めている(1094 条2 項)。

 

この規定があることによって、相続人その他の利害関係人は、指定された遺言執行者又は指定を委託された者の就任の承諾のみならず(1097 条3 項)、指定を委託された者に対して、指定権の行使の可否を問うことで、委託の辞退とみなす催告権を有することになる。

 

なお、相続人は、1094 条による指定の委託を受けた者の辞退の通知を待たずに催告権を使することができる。

 

 

(b) 法定遺言執行者

 

韓国民法1095 条(指定遺言執行者がない場合)前2 条の規定によって指定された遺言執行者がないときは、相続人が遺言執行者となる。

韓国民法は、指定遺言執行者がないときは、直ちに、家庭法院による選任執行者が遺言執行者となるのではなく、一応、相続人が遺言執行者となる法定遺言執行者の制度を設けている。

 

これは、指定遺言執行者がないとき、又は死亡、欠格、その他の自由で遺言執行者がなくなったときは、利害関係人の請求によって家庭法院が遺言執行者(選任遺言執行者)を選任するまでの間に、時間的間隙があるので、それを埋めるために、法律で相続人を遺言執行者とみなしたのである。

 

(c) 選任遺言執行者

 

韓国民法1096 条(法院による遺言執行者の選任)①遺言執行者がないとき、又は死亡、欠格、その他の事由によってなくなったときは、法院は利害関係人の請求によって、遺言執行者を選任しなければならない。

 

②法院が遺言執行者を選任した場合には、その任務に関して必要な処分を命ずることができる。

 

韓国民法1097 条(遺言執行者の承諾、辞退)②選任よる遺言執行者は、選任の通知を受けてから、遅滞なく、これを承諾するか辞退するかを法院に通知しなければならない。

 

③相続人その他の利害関係人は、相当の期間を定めて、その期間内に承諾するかどうかを確答すべき旨を、指定又は選任による遺言執行者に催告することができる。その期間内に催告に対する確答をしなかったときは、遺言執行者が就任を承諾したものとみなす。

 

選任よる遺言執行者は、選任の通知を受けてから、遅滞なく、これを承諾するか辞退するかを「法院」に通知しなければならない。民法1096 条による法院の遺言執行者の選任は、民法1098条の遺言執行者の欠格事由に該当しない限り、当該法院の裁量に属する問題である107。

 

韓国民法1105 条(遺言執行者の辞退)指定又は選任による遺言執行者は、正当な事由があるときは、法院の許可を得て、その任務を辞することができる。

 

韓国民法1106 条(遺言指定者の解任)指定又は選任による遺言執行者にその任務の懈怠があるとき又は正当ではない事由があるときは、法院は、相続人その他の利害関係人の請求によって、遺言執行者を解任することができる。

 

(2) 遺言執行者の任務

 

韓国民法1099 条(遺言執行者の任務の着手)遺言執行者がその就任を承諾したときは、遅滞なく、その任務をお行わなければならない。

韓国民法1100 条(財産目録の作成)①遺言が財産に関するものであったときは、指定又は選任よる遺言執行者は、遅滞なく、その財産目録を作成し、相続人に交付しなければならない。

②相続人の請求があるときは、前項の財産目録の作成に相続人を立ち会わせなければならない。

 

韓国民法1102 条(共同遺言執行)遺言執行者が数人ある場合には、任務の執行はその過半数で決する。ただし、保存行為は、各自がこれをすることができる。

 

韓国民法1104 条(遺言執行者の報酬)①遺言者が遺言でその執行者の報酬を定めていない場合には、法院は、相続財産の状況その他の事情によって指定又は選任による遺言執行者の報酬を定めることができる。

 

②遺言執行者が報酬を受ける場合には、第686 条第2 項、3 項の規定を準用する。

 

韓国民法686 条(受任人の報酬請求権)②受任人が報酬を受けた場合には委任事務を完了してからではないと、これを請求することができない。但し、期間によって報酬を定めたときは、その期間が経過した後にこれを請求することができる。

 

③受任人が受任事務を処理する間に受任人の責任のない事由によって委任が終了したときは、受任人は既に処理した事務の割合に応じる報酬を請求することができる。

 

韓国民法1107 条(遺言執行費用)遺言の執行に関する費用は相続財産の中から、これを支払う。

韓国民法1103 条(遺言執行者の地位)②第681 条から第685 条、第691 条及び第692 条の規定は遺言執行者に準用する。

 

韓国民法691 条(委任終了時の緊急処理)委任終了の場合に、急迫な事情があるときは、受任人、その相続人あるいは法定代理人は委任人、その相続人又はその法定代理人が委任事務を処理することができるまでにその事務の処理を継続しなければならない。

 

この場合については、委任の存続と同一の効力がある。

韓国民法692 条(委任終了の対抗要件)委任終了の事由はこれを相手方に通知したとき又は相手方がこれを知ったときでなければ、これをもって相手方に対抗することができない。

 

 

 

 

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