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相続に関する法律 韓国㉑
2015年12月28日

 

第5部 韓国法

淑明女子大学 郭 珉希

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

3 遺言の効力

 

1 一般的な効力

 

韓国民法1073 条(遺言の効の力発生時期)①遺言は遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。

②遺言に停止条件のある場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときはその条件が成就した時からその効力を生ずる。

 

遺言は死因行為であるので、遺言者が死亡した時から効力を発生する。但し、遺贈を受ける者は遺言の効力が生じた後にその効力を断ることができる。遺言が条件付きであるとき、停止条件付遺言は、その条件が遺言者の死亡後に成就したときから効力を生ずる。

 

解除条件付遺言については、民法には定めはないが、そのような遺言も可能であり、条件の一般法理に従い条件が成就したらそのときから遺言の効力を失うと解する。遺言によって認知することもできるが、遺言で婚外者を認知するときは、遺言執行者は家族関係登録簿などに関する法律に従ってその就任したときから1 ヶ月以内に認知届けを出さなければならない。

 

遺言認知による効力は遺言の効力発生時、すなわち、遺言者の死亡時というのが多数説である。

 

2 遺言の撤回と無効・取消

 

韓国民法1108 条(遺言の撤回)①遺言者は、いつでも、遺言又は生前行為により、遺言の全部又は一部を撤回することができる。

②遺言者はその遺言を撤回する権利を放棄することはできない。

 

 

韓国民法1109 条(遺言の抵触)前後の遺言が抵触又は遺言後の生前行為が遺言と抵触するときは、その抵触する部分の前の遺言は、これを撤回したものとみなす。

 

韓国民法1110 条(破毀による遺言の撤回)遺言者が故意に遺言証書又は遺贈の目的物を破毀したときは、その破毀した部分に関する遺言はこれを撤回したものとみなす。

 

韓国民法1111 条(負担付きの遺言の取消し)負担付きの遺贈を受けた者がその負担義務を履行しない時は、相続人又は遺言執行者は、相当の期間を定めてその履行を催告し、その期間内に履行がないときは、法院に遺言の取消を請求することができる。

 

遺言者はいつでも、遺言又は生前行為により遺言の全部又は一部を撤回することができる。遺言者の最終の意思は尊重すべきであるということから、遺言撤回の自由が認められるのである。

 

遺言を撤回する方法は、遺言者の意思による「任意撤回」と法定の要件を満たしたら撤回があったものとみなされる「法定撤回」がある。まず、任意撤回については、必ずしも遺言による必要はなく、生前行為で撤回することもできる。

 

遺言者は撤回する権利を放棄できないので(1108 条2 項)、遺言者の遺言撤回の自由は剥奪されない。次に、法定撤回については、1109 条と1110 条

が遺言の抵触と破毀による撤回の二つを規定している。また、遺言の抵触には二つの場合について規定がある。

 

第1 に、前遺言と後遺言とが抵触するときのことで、抵触部分について前遺言が撤回したものとみなされる。第2 に、遺言と遺言後の生前行為とが抵触するときも、前遺言が撤回したものとみなされる。

 

ここでいう抵触について、判例は、前の遺言を失効させなくては遺言後の生前行為が有効とならない場合のことであって、単に法律上又は物理的な執行不能となるような場合のみにとどまらず、後の行為が前の行為と両立せしめない趣旨のもとにさなれたことが明らかであれば抵触に当たるとした101。

 

抵触の範囲や存否は前・後の事情を合理的に考えて、遺言者の意思が遺言の一部でも撤回しようとしたのであったか、それともその全部を不可分的に撤

回しようとしたものかを、実質的に執行の不能となった遺言の部分との関わりのも、慎重に判断すべきである。

 

破毀による遺言の撤回については、遺言者が故意に遺言書又は遺言の目的物を破毀したときは、その破毀した部分の遺言は撤回したものとみなされる。遺言の撤回がなされると最初から遺言がなかったこととなる。

 

但し、遺言を撤回した後、またその遺言の撤回を撤回した場合、前の遺言が復活するのかについては、韓国民法には規定がないので、学説上争いがある。

 

 

遺言も法律行為であるので、法律行為一般の無効事由があれば無効となる。また、法定の遺言の有効要件に違反している場合にも無効となる。遺言の重要部分に錯誤がある場合や詐欺・強迫の場合による取消も適用される。

 

遺言者の撤回権と別に取消権を認めるのは遺言者の死亡後や意思能力の喪失の場合に実益がある。特に、遺言者の死亡後に、遺言の取消権は相続人が相続し、相続人が取消権を行使することになるだろう。負担付きの遺贈を受けた者がその負担義務を履行しない時は、相続人又は遺言執行者は、相当の期間を定めてその履行を催告し、その期間内に履行がないときは、法院に「遺言の取消」を請求することができる(1111 条)。

 

3 遺贈

 

(1) 意義

 

遺贈とは、遺言者が遺言によって自己の財産の全部又は一部を他人に与える無償の単独行為である。

 

遺贈と死因贈与は、両方とも死因行為という点には違いがないが、形式が単独行為なのか契約なのかが異なるだけであるため、死因贈与には遺贈の規定が準用される。遺贈の規定の中で、単独行為の性質に基づく規定、例えば、遺贈能力、方式(1065 条から1072 条まで)、承認と放棄(1074 条、1075 条)、包括的受贈者の地位に関する1078 条などは準用されない102。

 

韓国民法上、遺贈には包括遺贈及び特定遺贈及、負担付遺贈があるが、日本民法の964 条のように、包括遺贈や特定遺贈の意味を定める規定はない。その但書の定める「遺留分に関する規定に違反することができない」という遺贈と遺留分の関係に関しても少なくとも明文上にはない。

 

遺贈の当事者として、まず、受遺者となるものは、遺贈により利益を受ける者である。受遺者は遺言の効力が生じる時に権利能力がなければならない。胎児と相続欠格者については1000 条3 項と1004 条が受遺者に準用される(1064 条)。受遺者がその要件を満たさない場合には遺贈の効力は生じないの

で、遺贈の目的の財産は相続人に帰属する。

 

しかし遺言者が別段の意思を表示したときはその意思に従う。次に、遺贈のもう一人の当事者は、遺贈を履行する義務を負う者、つまり、遺贈義務

者である。遺贈の目的の財産の譲渡義務は遺言者の死亡後に執行されるため、遺言者は遺贈義務者ではない。遺贈義務者は、例えば、相続人、遺言執行者、包括的受遺者、相続人のない財産管理人などのことであろう。

 

遺贈義務者である相続人は数人あるときは、その相続分に応じて遺贈義務を負う。

 

 

ポリー

「遺贈と死因贈与は単独の行為か契約か「だけ」の違いなのですね。家族の間で行われることが多いので、そういう表現になるのでしょうか。」

 

 

(2) 包括遺贈

 

韓国民法1078 条(包括的受遺者の権利義務)包括的遺贈を受けた者は相続人と同一の権利義務を有する。

 

包括遺贈とは、積極財産と消極財産とを包括する相続財産の全部または一定の割合を遺贈の内容にする処分行為である。これに対し、特定遺贈とは特定の具体的な財産を遺贈の内容にする処分行為であって、特定遺贈においては消極財産は承継されない。

 

包括的遺贈であるか特定遺贈であるかの区別については、通常は相続財産に対する割合の意味でなされたものは包括遺贈、そうではないものが特定遺贈となるが、遺言公正証書などに遺贈した財産が個別的に表示されたというだけでは特定遺贈と断定すべきではなく、相続財産がすべていくらかを審理して他の財産がないと認められる場合には、これを包括遺贈と判断することができるとした判例103がある。

 

 

包括的受遺者は相続人と同一の権利・義務を包括的に承継する。したがって、遺言の効力の発生と同時に相続財産の全部又は一定の割合を当然に承継するのであって、遺贈義務者による遺贈の履行を要しない。包括的受遺者が数人ある時又は相続人があるときは共同相続関係にあることになる。

 

包括遺贈の承認と放棄には、遺贈の承認と放棄に関する民法1074 条から1077 条までが適用されるのではなく、相続人のそれと同様に、相続の承認と放棄に関する民法1019 条から1044 条までが適用される。判例は、相続人の相続回復請求権及びその除斥期間に関する民法999 条もまた包

括的遺贈の場合に類推適用するとしている104。しかし、包括的受遺者と相続人は次のような点では違いがあるとされている。

 

(a)相続能力のない法人であっても受贈能力がある。(b)包括的受遺者は遺留分権や相続分譲受け権を有しない。(c)包括遺贈には代襲相続の規定は適用されず、遺言者の死亡の前に包括的受遺者が死亡したときは遺贈は失効する(1089 条)。

 

(3) 特定遺贈

 

民法遺言の効力の節の規定の殆どは特定遺贈に関する内容を規定してる。韓国民法上、特定遺贈に関する規定の内容や解釈においては日本民法のそれとあまり異ならないので、以下では関わる韓国の規定のみをまとめておくことにとどまりたい。

 

(a) 特定遺贈の承認と放棄

 

韓国民法1074 条(遺贈の承認・放棄)①遺贈を受ける者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈を承認又は放棄することができる。

 

②前項の承認及び放棄は遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

 

韓国民法1075 条(遺贈の承認、放棄の取消禁止)①遺贈の承認及び放棄は取消しをすることができない。

 

②第1024 条2 項の規定は、遺贈の承認及び放棄について準用する。

 

韓国民法1024 条(承認、放棄の取消禁止)①相続の承認及び放棄は第1019 条第1 項の期間内でも取消しをする

ことができない。

 

②前項の規定は総則編の規定により取消しをすることを妨げない。

 

韓国民法1076 条(受贈者の相続人の承認、放棄)受贈者が遺贈の承認又は放棄をしないで死亡したときは、その相続人は自己の相続権の範囲内で、遺贈の承認又は放棄することができる。ただし、遺言者が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 

韓国民法1077 条(遺贈義務者の催告権)①遺贈義務者その他の利害関係人は、相当な期間を定め、その期間内に承認又は放棄をすべき旨を受贈者またはその相続人に催告することができる。

 

②前項の期間内に受贈者またはその相続人が遺贈義務者に対して催告に対する確答をしないときは、遺贈を承認したものとみなす。

 

(b) 受贈者の果実取得権と費用償還請求権

 

韓国民法1079 条(受贈者の果実取得権)受贈者は、遺贈の履行を請求することができる時からその目的物の果実を取得する。ただし、遺言者が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 

韓国民法1080 条(果実受取費用の償還請求権)遺贈義務者が遺言者の死亡後に、その目的物の果実を収取するために必要費を支出したときは、その果実の価額を範囲内で果実を取得した受贈者に償還を請求することができる。

 

韓国民法1081 条(遺贈義務者の費用償還請求権)遺贈義務者が遺贈者の死亡後に、その目的物について費用を支出した場合には第325 条の規定を準用する。

 

韓国民法325 条(留置権者の償還請求権)①留置権者が留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還を請求することができる。

 

②留置権者が留置物について有益費を支出したときは、それによる価額の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、法院は所有者の請求によりその償還について相当の期間を許与することができる。

 

(c) 担保責任と物上代位、第三者の権利の目的である財産の遺贈

 

韓国民法1082 条(不特定物遺贈義務者の担保責任)①不特定物を遺贈の目的とした場合において、遺贈義務者はこの目的物に対して、売主と同じく、担保の責任を負う。

 

②前項の場合において、目的物に瑕疵があったときは、遺贈義務者は瑕疵のない物件をもってこれに代えなければならない。

 

韓国民法第1083 条(遺贈の物上代位性)遺言者が、遺贈の目的物の滅失、毀損若しくは占有の侵害によって第三者に対して損害賠償を請求する権利を有するときは、その権利を遺贈の目的としたものとみなす。

 

韓国民法第1084 条(債権の物上代位性)①債権を遺贈の目的物とした場合において、遺言者がその受け取った物件が相続財産中に在るときは、その物件を遺贈の目的としたものとみなす。

 

②前項の債権が金銭を目的とした場合において、その受け取った債権額に相当する金銭が相続財産中にないときであっても、その金額を遺贈の目的としたものとみなす。

 

韓国民法第1085 条(第三者の権利の目的である物権又は権利の遺贈)遺贈の目的である物件又は権利が遺言者の死亡の時において第三者の権利の目的であるときは、受贈者は遺贈義務者に対してその第三者の権利を消滅させるべき旨を請求することができない。

 

 

韓国民法第1086 条(遺言者が別段の意思を表示したとき)前3 条の場合に、遺言者が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 

韓国民法において、遺贈の物上代位や債権の遺贈の物上代位の場合に、それぞれ、遺贈者の有する損害賠償請求権、又は遺言者が受け取った物件や金額が遺贈の目的と看做される(1083 条と1084 条)。この点はただ推定するのにすぎない日本民法999 条と1000 条と違う点である。

 

なお、韓国民法には、遺贈の目的物の付合や混和(日本民法999 条2 項)についてはその定めがない。さらに、韓国民法1086 により遺贈の物上代位と債権の遺贈の物上代位には、遺言者の別段の意思が優先することが定められているが、日本民法には、物上代位の場合に限っては、このような但書が条文上には定められていないのが異なる。

 

 

(4) 負担付遺贈

 

韓国民法1111 条(負担付きの遺言の取消し)負担付きの遺贈を受けた者がその負担義務を履行しない時は、相続人又は遺言執行者は、相当の期間を定めてその履行を催告し、その期間内に履行がないときは、法院に遺言の取消を請求することができる。

 

韓国民法1088 条(負担付遺贈と受贈者の責任)①負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。

 

 

②遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は財産分離によって減少したときは、受贈者はその減少の限度において、負担した義務を免れる。

 

負担付遺贈の受遺者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。負担付遺贈の受遺者が遺贈を放棄した場合、負担の利益を受ける者が自ら受遺者となることができるかについては韓国民法上の規定はないので学説上の争いがある。

 

負担付遺贈の目的の価額が限定承認や財産分離請求によって減少した場合に負担義務を免れる。遺留分返還請求による減少については、規定はないが、そのときも負担した義務を免れるというべきであろう。

 

 

ポリー

「韓国では、負担付き遺贈は実際に効果があるのでしょうか。」

 

 

 

(5) 遺贈の無効・取消

 

韓国民法1087 条(相続財産に属しない権利の遺贈)①遺言の目的である権利が遺言者の死亡のときにおいて相続財産に属しなかったときは、遺言は効力を生じない。ただし、遺言者が自己の死亡のときにおいてその目的物が相続財産に属しなかったときであっても、遺言の効力を生じさせる意思であったときは、遺贈義務者はその権利を取得して受贈者に移転する義務を負う。

 

②前項の但書において、その権利を取得することができないとき、又はその取得に可分の費用を要するときは、その価額を弁償することができる。

 

韓国民法第1089 条(遺贈の効力発生前の受贈者の死亡)①遺言は遺言者の死亡以前に受贈者が死亡したときは、その効力を生じない。

 

②停止条件付きの遺贈については、受贈者がその条件の成就前に死亡したときはその効力を生じない。

 

韓国民法1090 条(遺贈の無効、失効の場合と目的財産の帰属)遺贈がその効力を生じないとき、又は受贈者がこれを放棄したときは、遺贈の目的の財産は相続人に帰属する。ただし、遺言者が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 

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