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相続に関する法律 韓国⑰
2015年12月28日

 

第5部 韓国法

淑明女子大学 郭 珉希

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

 

(a) 法定夫婦財産制度の導入と配偶者相続制度との連係

 

先に述べたように離婚時の財産分割制度と配偶者相続制度との不均衡という韓国の現行の夫婦別産制度の問題点を解消するためにスイス、ドイツなどの制度に倣って夫婦財産制度の改正に基づく提案が主張されている。とりあえず、婚姻中には取引の安定と迅速性を考慮し、夫婦各自の経済的独立性を守るためには、原則として現在の夫婦別産制が適用されるのは認めている。

 

ただし、ここには一定の制限があるが、夫婦の一方が婚姻中に正当な理由なく、重要な財産(例えば、住宅)を処分しようとするには事前に配偶者の同意を要するとされる。

 

 

ポリー

「スイスやドイツが参考にされているのですね。」

 

 

 

そして、婚姻が終了又は解消したときは、夫婦の一方は、原則として他の一方が婚姻中に取得した財産の半分について分割を請求することができるという提案である91。この際、財産分割の割合は、具体的な事情によって増減できる。このようにして、配偶者の死亡による婚姻の解消のときにも、離婚によって婚姻が解消される場合と同様に、夫婦財産関係の清算が相続に先立ってなされるべきであると主張している。

 

詳しくは、死亡による婚姻解消のとき、生存配偶者は、一種の相続債権者として、他の共同相続人(例えば、直系卑属などの生存配偶者を除く共同相続人)に対してその財産の分割を請求することになる。

 

 

現行法によっても、相続財産の分割は共同相続人との協議により、協議に調わなかったときは当事者の請求によって家庭法院が定めるようにとなっているので(1013 条)、死亡による夫婦関係の清算もそのように処理すればいいとしている。

 

多くの場合には、夫婦財産関係の清算と相続財産分割協議は同時に行われることになるだろう。このような見方の一つとして具体的な改正案も提案されている92。

 

韓国民法1009 条(法定相続分) ①同順位の相続人が数人あるときはその相続分は均分とする(現行法と同様)。 ②被相続人の配偶者の相続分は、相続開始のときにおいて被相続人の特有財産に第839 条の2 により定められた剰余財産の分割分を加減したものを相続財産とみなして、次のように定める。

 

 

 

1.被相続人の直系卑属と共同相続するときは、相続財産の2 分の1

 

2.被相続人の直系尊属と共同相続するときは、相続財産の4 分の3

 

第839 条の2(財産分割請求権)①協議上離婚した一方は、他の一方に対して、婚姻中に取得した剰余財産について同等な割合で分割を請求することができる。

 

 

 

②第1 項の財産分割に関して協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭法院は当事者の請求により、当事者の一方が婚姻中に協力によって取得した剰余財産を同等な割合で分割し、その分割方法はその他の事情を参酌して定める。

 

しかし、このような見解には、相続開始の当時、被相続人名義の財産と実際に相続の対象となる財産の範囲が必ずしも一致するとはいえないので、相続財産の範囲が曖昧であるという問題がある。離婚時の財産分割の場合には、常に対立当事者が存在するわけであって、分割対象となる財産の範囲に争いがあれば、裁判手続きによればいいことである。

 

しかし、相続の場合には必ずしもそうではない。相続においては、常に裁判手続きによるとは限らないにもかかわらず、この改正案によることになると、むしろ、共同相続人の間に法的紛争を誘発することになりかねない93。

 

そのことから、この改正案が法定夫婦財産制のモデルとしているドイツ民法が、死亡による婚姻解消時には剰余財産の有無を問わず、相続財産の一定の割合を配偶者相続分としているのも、このような問題があったこそであるという指摘94がある。

 

 

 

(b) 婚姻中の夫婦財産分割制度の導入を前提とする方案

 

韓国では2006 年に、法務部家族法改正特別分科委員会の成案した民法改正案が国会に提出されたが、この中には配偶者の法定相続分を調整する内容が含まれていた95。この改正案は、配偶者の相続分の強化のほかに、「婚姻中の財産分割制度」の導入を前提としているのが特徴である。

 

婚姻中の財産分割制度の立法趣旨は、現行の財産分割請求権は離婚を前提としているので、将来の財産分割請求権の行使が顕著にできなくなる恐れがあるなどの、離婚せずに婚姻中にも財産の確保が必要な一定な事由があるときは、財産分割請求ができるように制度を設けるべきであるということにある。実際に国会に提出された改正案は次のようである。

 

 

韓国民法1009 条(法定相続分) ①同順位の相続人が数人あるときはその相続分は均分とする(現行法と同様)。

 

②被相続人の配偶者の相続分は相続財産の5 割とする。但し、第831 条の3 に従って婚姻中財産分割を受けた場合には同順位の共同相続人と均分として相続する。

 

 

③削除(1990.1.13.)

第831 条の3(婚姻中の財産分割請求権)①夫婦の一方は、次の各号の事由があるときは、婚姻中にも家庭法院に財産分割を請求することができる。

 

 

1.夫婦の一方の同意又はその同意に代わる決定なく他方が第831 条の2 の第1 項又は第2 項の行為をしたとき

2.他の一方が正当な理由なく扶養義務を相当な期間に履行しなかったとき

3.第839 条の2 に従う財産分割請求権の行使が顕著に困難になる恐れがあるとき

4.夫婦が正当な理由なく2 年以上別居しているとき

 

 

②第1 項の財産分割に関してはその性質に反しない範囲で第839 条の2 の第2 項の規定を準用する。

 

③夫婦の一方は第1 項の各号に該当する事由のあることを知ったときから6 ヶ月あるいはその事由のあったときから2年が経過したときは、第1 項による財産分割を請求できない。

 

この改正案は、これまでの配偶者の相続分の強化、ことに共同相続人の数を問わず2分の1 として確保できるようにした政府レベルの公式案であるということに意義がある96。改正委員会によると、婚姻中の財産分割制度を導入によって現行法上の相続分を再調整することを目指して、

共同相続人の数を問わず一定の割合の相続分を確保し、配偶者の相続法上の地位を強化するためであると説明している。しかし、被相続人の直系卑属(子女)が一人の場合、婚姻中に財産分割をしていない配偶者は、相続分が2 分の1(50%)となり、現行法による相続分3 分の2(60%)よりも

少なくなるという問題がある97。

 

 

以上のように、配偶者の相続法上の地位の強化の問題を、夫婦財産制度との関連のもとで解決しようとする見方は、比較的法観点からみても確かに意味のある議論であるのは間違いないのであろう。しかし、生存配偶者と他の共同相続人との間に紛争をもたらすおそれがあるし、これまでの韓国の制度、とくに夫婦財産制度の全体的な見直しや、分割されるべき財産の立証や分割の割合(持分)などに関して複雑な実務的な問題が起こりうるという問題があるのは否めない。

 

(c) 夫婦共有財産の半分を配偶者の先取分として法定する方案

 

最後に、2006 年には、夫婦が婚姻中に取得した財産は一応、共有財産として扱うという前提で、配偶者の相続分を先取分として確保しようとする改正案が議員案として国会に提案されたことがある。

 

韓国民法1009 条(法定相続分)①同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は均分とする。(現行法と同様)

 

②被相続人の配偶者は、夫婦の共有と推定される財産の半分を先取分として請求することができる。

韓国民法830 条(夫婦財産の権利帰属)①夫婦の一方が婚姻前から有していた財産と婚姻中に相続、贈与によって取得した財産は夫婦一方の固有財産とする。

 

 

 

②固有財産の増加分と婚姻中に取得した財産及びその増加分は夫婦の共有のものと推定する。

 

③共有のものと推定される財産が登記又は登録を必要とする場合、名義を有していない一方は相手方に対して共有に関する登記又は登録を請求することができる。

 

 

この改正案は、夫婦共有財産制度の導入を前提として、夫婦共有のものと推定される財産の半分を配偶者の先取分として法定することで、離婚の場合のみならず相続においても夫婦共同体の実質による清算を図っているということに意味がある。

 

しかし、現行法の夫婦別産制とは異なり、夫婦共有財産制度は取引の安全と夫婦の経済的なと独立を害する恐れがあるという指摘がある98。

さらに、配偶者相続の場合、夫婦共有のものと推定される財産がない場合には、配偶者は共同相続人と均分相続することになるから、むしろ、今の現行法の定める配偶者の相続分より少なくなるのも問題として指摘されている。

 

なお、実務上、配偶者と共同相続人との間に先取分の対象となる財産の範囲について紛争が起こりやすいというのも問題である。

 

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