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相続に関する法律 韓国⑮
2015年12月28日

 

第5部 韓国法

淑明女子大学 郭 珉希

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

 

8 韓国相続法における生存配偶者の地位

 

1 現行韓国民法(相続編)における配偶者の地位

 

(1) 相続順位

 

韓国民法1003 条(配偶者の相続順位) ①被相続人の配偶者は第1000 条第1 項第1 号と第2 号の規定による相続人がある場合にはその相続人と同順位で共同相続人となり、その相続人がいないときには単独相続人となる。

 

②第1001 条の場合に相続開始以前に死亡又は欠格した者の配偶者は同条の規定による相続人と同順位で共同相続人となり、その相続人がいないときには単独相続人となる。

 

韓国民法の規定によると被相続人の配偶者は被相続人の直系卑属と同順位で共同相続人となり、その直系卑属がいないときには被相続人の直系尊属と同順位で共同相続人となる。被相続人の直系卑属と直系尊属ともにいないときには、被相続人の配偶者は単独相続人となる。

 

(2) 相続分

 

韓国民法1009 条(法定相続分) ①同順位の相続人が数人あるときはその相続分は均分とする。

②被相続人の配偶者の相続分は直系卑属と共同で相続するときは直系卑属の相続分の5 割を加算し、直系尊属と共同で相続するときは直系尊属の相続分の5 割を加算する。

 

③削除(1990.1.13.)

 

配偶者の相続分は被相続人の直系卑属あるいは直系尊属の相続分の5 割を加算する(直系卑属の相続分:配偶者の相続分=1:1.5)。ここでの相続権のある配偶者とは法律上の配偶者でなければならず、婚姻中でならば、別居中であるか、事実上離婚状態であるかなどは問題にならない。

 

離婚訴訟中の場合も同じである。重婚の配偶者も法律上の配偶者であることには間違いないので、重婚が取り消されない限り相続権がある。但し、このような場合、その相続分は重婚配偶者のそれぞれが1.5 の割合で相続するのではなく、他の共同相続人の相続分を侵害しないように、法律上認められる配偶者の相続分である1.5 の相続分を重婚配偶者の二人が各1.5 の2分の1 である0.75 の割り合いで分けて相続するとされる。

 

問題は取消事由のある婚姻関係にある夫婦の一方が死亡し相続が開始された後、その婚姻の取消判決が確定した場合、既になされた配偶者の相続

権の効力である。これは婚姻取消の効力に遡及効があるのかの問題であり、特に重婚配偶者の一方が死亡した後に重婚が取り消された場合に重要な問題になる。

 

 

学説は相続人資格喪失説と相続人資格維持説に分かれているが、判例は婚姻取消には遡及効がないとして生存(重婚)配偶者の相続権には影響を及ばさないと解している。

 

つまり、婚姻取消の場合、韓国民法824 条は「婚姻の取消の効力は遡及しない」と定めているだけで、財産相続等に関して遡及効を認める規定がない限り、婚姻中に夫婦の一方が死亡しその配偶者に相続が開始された後に婚姻が取消されたとしても、既になされた相続関係が遡及して無効となったりその相続された財産が法律上原因なしで取得したもの(不当利得)となるとはいえないと判断した81。

 

他方、事実婚の配偶者は相続権はないが、特別縁故者として被相続人の財産について分与請求をすることはできる。但し、このような分与請求権は相続権とはいえない。

 

2 現行配偶者相続制度の問題点

 

韓国において配偶者相続制度は、夫婦財産制度の清算が先になされる外国の相続制度と異なり、相続法においてのみ保護される。配偶者の相続分は、共同相続人の相続分に5 割を加えたものになるが、ここには次のようないくつかの問題点があると指摘されてきた。

 

(1) 相続分の問題―配偶者の相続分の可変性

 

現行民法1009 条(法定相続分)2 項は「被相続人の配偶者の相続分は直系卑属と共同で相続するときは直系卑属の相続分の5 割を加算し、直系尊属と共同で相続するときは直系尊属の相続分の5 割を加算する」と定めている。

 

この規定によると、配偶者の相続分は血族相続人より5 割加算はされるが、頭割りによるので、必ずしも被相続人の相続財産に対して相続分が2分の1 が確保されるわけではない。

 

例えば、被相続人の直系卑属が1 人であれば配偶者の相続分は60%であるが、直系卑属が2 人の場合には約43%、直系卑属が4 人の場合には約27%となる。このように、今の韓国民法の規定は、共同相続人の数が多くなればなるほど、配偶者の相続分が減少するという非常に大きな問題があることが以前から指摘されてきた。

 

 

ポリー

「配偶者の相続分が半分切ると厳しいなという感覚がありますが。子供が親の面倒は観るという考えがあるのでしょうか。」

 

 

 

(2) 夫婦財産関係の清算と配偶者相続分

 

韓国民法が制定されたときから現在に至るまで、夫婦財産関係に対する韓国国民の視覚には大きな変化があった。このような変化を端的に表しているのが、1990 年の韓国民法改正により導入した離婚時の財産分割請求権である(839 条の2)。

 

判例によると、「財産分割制度は、夫婦が婚姻中に取得した財産を夫婦の実質的な共同財産とみなした上で82、一方の配偶者が所得活動を

なさず家事と育児を担った専業主婦であっても、相手方の配偶者の財産取得(若しくは維持・増加)に寄与したと評価され、その財産に潜在的な共有持分を持っているものとみなす制度である」としている83。

 

 

したがって、財産分割は、無償の贈与とは性質を異にしており、元々夫婦の各自に属すべきであったものを婚姻の解消に当たって各自の分を各自に帰属させるという意味を持っている。

 

このように、現在韓国民法においては、離婚による婚姻の解消のとき、夫婦の間の実質的な共有関係が清算されうる離婚時の財産分割請求権が認められている。ひるがえって、死亡による婚姻の解消のときには、生存配偶者は血縁相続人とともに、被相続人の財産を相続するのみで、配偶者の財産に対して実質的な共有持分に基づく清算を請求することはできない。

 

しかし、相続人の財産の中には、死亡した配偶者(被相続人)の財産のみならず、生存配偶者の財産も含まれているものの、生存配偶者がその財産に関して自分が持っている持分を請求することができないということは、離婚時の財産分割とは異なり、つじつまが合わないのである。

 

 

 

しかも、上記で述べたように、現在の韓国民法上、配偶者の法定相続分によると、共同相続人が多数あればあるほど、生存配偶者の相続分は少なくなり、場合によっては、実際に被相続人の財産に対して生存配偶者が持っている共有持分より少ない額を相続分として受け取るしかない場合もありかねない。

 

今日では、直系卑属が被相続人の相続財産の形成に実際に寄与することはあまりないという現実を考慮に入れると、直系卑属が相続人として受けるべき相続分は、形式的にも実質的にも被相続人の財産であって、さらにそうである。

 

 

 

要するに、被相続人の財産とされるもの中には、生存配偶者の財産に属すべき財産も含まれているにもかかわらず、その財産の維持・増加になんの寄与

もしていない直系卑属に、その財産が相続されてしまうという結果になりかねない。

 

このような場合、生存配偶者は、被相続人の財産からは、せいぜい自分の実質的な共有自分を相続分として受けるか、それとも場合によっては、それにも至らない部分を相続することとなり、ほぼ相続分というまでもない額を受けるしかない。

 

そのことから、現在韓国の多くの学説は、「夫婦財産関係の清算」という観点から、離婚により婚姻が解消されるときと、配偶者の死亡により婚姻が解

消されるときとの結果が違ってくるのは不当であると批判してきたのである84。

 

1990 年の民法改正のときに導入された離婚時の財産分割制度が、婚姻中に取得した財産を夫婦の実質的な共有財産とみなすという前提にたっている以上、離婚によって婚姻が解消されるときのみならず、死亡によって婚姻が解消されるときにも、夫婦の実質的な共有関係を清算して、そもそも各自のものを各自に帰属させるのが論理的に貫いているからである。

 

このように、夫婦財産制度と配偶者相続とは密接な関係にあり、法定夫婦財産制度のあり方は配偶者相続の問題において非常に重要な意味を持つといえる。つまり、夫婦一方の死亡による婚姻解消時にも夫婦財産関係の清算が認められるべきであるなら、配偶者の相続分のみならず他の共同相続人の相続分も変わってくるわけである。

 

したがって、韓国において至急な問題は、配偶者の相続分の形式的な調整というよりは、「法定夫婦財産制度」の改正が必要であるとの主張がみられるようになったのである。

 

 

 

(3) 生存配偶者の生活保障の強化の必要性

 

韓国の通計庁の2012 年出生死亡通計によると、2012 年人口1000 名中、死亡者数267.3 名当たり死亡当時の年齢が70 歳以上の場合は、172.5 名であって全体の約65%に及ぶという。

 

このように超高齢化に進行している韓国の事情に照らして、被相続人の平均年齢が高くなるにつれて相続開始の時に第1 順位の被相続人の直系卑属の年齢も高くなったということを意味する。

 

したがって、もはや扶養請求権を有していない直系卑属への相続による扶養の必要は少なくなり、むしろ、年齢の高い配偶者の扶養の要請が相続法において考慮すべき重要な問題となっているといえる。

 

つまり、子女が自発的に被相続人の生存配偶者を扶養しない限り、生存配偶者の生計手段といえるのは、夫婦別産制度下の韓国においては自分名義の財産を除いて、配偶者(被相続人)の死亡による相続財産しかない。現行の韓国の相続法は、このような現実を反映するには非常に不十分なものだという批判がある。

 

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