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相続に関する法律 韓国⑬
2015年12月28日

 

第5部 韓国法

淑明女子大学 郭 珉希

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

 

2 相続の承認

 

 

(1) 単純承認

 

韓国民法1025 条(単純承認の効果)相続人が単純承認したときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

 

韓国民法1026 条(法定単純承認)次に掲げる事由のある場合には、相続人が単純承認したものとみなす。

 

1.相続人が相続財産について処分行為をしたとき。

2.相続人が第1019 条第1 項の期間内に限定承認又は抛棄をしなかったとき。

3.相続人が限定承認又は抛棄をした後に相続財産を隠匿し、不正消費し、又は故意で財産目録に記載しなかったとき。

 

韓国民法1027 条(法定単純承認の例外)相続人が相続を抛棄したことによって次順位相続人が相続を承認したときは、前条3 号の事由は相続を承認したものとみなさない。

 

相続人が単純承認をしたときは、相続人の固有財産と相続財産が混同され、相続人は相続債務について無限の責任を負うことになる。単純承認の効果が確定すれば、限定承認若しくは抛棄の申告が受付されても効力がない。ただし、特別限定承認(1019 条3 項)の申告は受理することができる。一定な事由のあるときは、単純承認したものと看做される(法定単純承認1026 条)。

 

 

(2) 限定承認

 

韓国民法1028 条(限定承認の効果)相続人は相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを条件として、相続を承認することができる。

 

韓国民法1029 条(共同相続人の限定承認)相続人が数人あるときは、各相続人はその相続分に応じて取得する財産の限度においてその相続分による被相続人の債務と遺贈を弁済することを条件として、相続を承認することができる。

 

韓国民法1030 条(限定承認の方式)①相続人が限定承認するには、第1019 条第1 項又は第3 項の期間内に、相続財産の目録を添付して法院に限定承認の申告をしなければならない。

 

②第1019 条第3 項の規定により限定承認をしたときは、相続財産中に既に処分した財産がある場合には、その目録とともに提出しなければならない。

韓国民法1031 条(限定承認と財産上権利義務の不消滅)相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対する相続人の財産上の権利義務は消滅しない。

 

韓国民法1032 条(債権者に対する公告、催告)①限定承認者は、限定承認をした後5 日以内に、一般相続債権者と遺贈者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその債権又は受贈を申告すべき旨を公告しなければならない。この期間は、2 ヶ月以上でなければならない。

 

②第88 条第2 項、第3 項と第89 条の規定は前項の場合に準用する。

韓国民法1033 条(催告期間中の弁済の拒絶)限定承認者は、前条第1 項の期間の満了前には、相続債権の弁済を拒むことができる。

 

韓国民法1034 条(配当弁済)①限定承認者は、第1032 条第1 項の期間が満了した後に、相続財産をもって、その期間内に申告をした債権者と限定承認者が知っている債権者に、それぞれの債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権のある債権者の権利を害することはできない。

 

②第1019 条第3 項の規定により限定承認をしたときは、その相続人は相続財産において残っている相続財産とともに既に処分した財産の価額を合わせたものをもって第1 項の弁済をしなければならない。ただし、限定承認をする前に相続債権者や遺贈者に対して弁済した価額は既に処分した財産の価額から除外する。

 

韓国民法1035 条(返済期前の債務などの返済)①限定承認者は、弁済期に至らない債権であっても、前条の規定に従って弁済をしなければならない。

 

②条件のある債権又は存続期間の不確定な債権は、法院が選任した鑑定人の評価に従って弁済をしなければならない。

韓国民法1036 条(受贈者への返済)限定承認者は、前2 条の規定に従って相続債権者に弁済を完了した後でなければ、遺贈者に弁済をすることができない。

 

韓国民法1037 条(相続財産の競売)前3 条の「規定に従って弁済するために相続財産の全部又は一部を売却する必要があるときは、民事執行法に従って競売に付さなければならない。

 

韓国民法1038 条(不当な返済などによる責任)①限定承認者が第1032 条の規定による公告若しくは催告することを怠り、又は第1033 条から第1036 条までの規定に違反してある相続債権者若しくは遺贈者に弁済をすることができなくなったときは、限定承認者は、その損害を賠償しなければならない。

 

第1019 条第3 項の規定に従って限定承認をしたときに、その以前に相続債務が相続財産を超えたことを知らなかったことに過失のある相続人が相続債権者若しくは遺贈者に弁済をしたときも、同様とする。

 

②第1 項の前段の場合、弁済を受けなかった相続債権者又は遺贈者は、その情を知って弁済を受けた相続債権者又は遺贈者に対して求償権を行使することができる。第1019 条第3 項の規定に従って限定承認をしたときは、その以前に相続債務が相続財産を超過することを知って弁済を受けた相続債権者又は遺贈者があるときも、同様とする。

 

③第766 条の規定は、第1 項及び第2 項の場合について準用する。

韓国民法1039 条(申告をしなかった債権者など)第1032 条第1 項の期間内に申告をしなかった相続債権者及び遺贈者で限定承認者に知られなかったものは、相続財産の残余がある場合にのみその弁済を受けることができる。ただし、相続財産について特別担保権があるときは、この限りでない。

 

韓国民法1040 条(共同相続財産とその管理人の選任)①相続人が数人あるときは、法院は、各相続人その他の利害関係人の請求により共同相続人の中から、相続財産の管理人を選任することができる。

 

②法院が選任した管理人は、共同相続人を代表して相続財産の管理及び債務の弁済に関する一切の行為をする権利義務がある。

 

③第1022 条、第1032 条ないし前条の規定は、前項の管理人について準用する。しかし、第1032 条の規定に従って公告する5 日の期間は管理人がその選任があったことを知ったときから起算する。

 

限定承認の方式については、日本民法とほぼ同様であるが、韓国民法1029 条は、相続人が数人あるとき、各相続人はその相続分に応じて取得する財産の限度でその相続分による被相続人の債務と遺贈を返済することを条件として相続を承認することができると定めているので、必ずしも共同相続人全員が共同して限定承認する必要はない。

 

これは、限定承認の意思表示は共同相続人全員が共同してのみなすことができる日本民法923 条と異なる点である。限定承認をするためには、考慮期間内に(1019 条1 項又は3 項)、相続財産目録を添付し法院に限定承認の申告をしなければならない。限定承認の効果は、次のように三つの効果があると説明されているのが一般である。

 

第1 に、限定相続人は、物的有限責任を負うこと、第2 に、限定承認があるときは、相続財産と相続人の財産の分離があること(1031 条)、第3 に、限定相続人は相続財産管理義務があるということである。

 

限定承認をした相続人は、相続債務などが相続財産を超えても相続財産の限度内において弁済する責任を負うのみで相続人自分の財産をもって弁済することはない。

 

しかし、このように相続財産の限度内で有限責任を負うということは、責任の範囲が相続財産に限定されるという意味にすぎないので、限定承認をする相続人は相続債務などの全額を承継することとなるが、債務と責任が分離され相続人の固有財産が相続債務などの(強制執行)責任財産となるわけではないということである。

 

したがって、限定承認者は債務の全額を承継するのであるから、相続債権者は、限定承認者に対し相続債務の全額の履行を請求する訴訟を提起することができる。この場合、相続債務全額の支払いを命ずることとなるが、限定相続人が相続により取得する相続財産の限度で支払いすべき旨の留保付判決を下すことになるとされる。

 

限定承認の申告があって、法院が限定承認申告を受理すれば、被相続人の債務に対する相続人の責任は相続財産に限定され、その相続相続債権者は原則として相続人の固有財産に対して強制執行することはできない76 77。

 

しかし、韓国民法は、単純承認しとものとみなされる場合(1026 条3 項)を除いて、限定承認をした相続人の処分行為自体を直接的に制限する規定をもうけていないため、限定相続人の相続財産処分行為が当然に制限されるとはいえない。

 

しかも、限定承認だけで、相続債権者に相続財産に関する優先的な地位を与える規定もないので、限定承認があった場合、相続債権者が相続財産に関して、限定承認者から担保権を取得した固有債権者に対して優先的な地位を主張することはできないとしたのが判例である78。この場合おいて、その優劣は民法上の一般原則によるべきであるとする。

 

 

韓国民法は、相続人が限定承認をしたときは、被相続人に対する相続人の権利義務は消滅しないと定めているが、これは、混同による権利消滅の例外を規定したものと解されている。

 

この規定は、被相続人と相続人との権利義務だけでなく、被相続人と相続人が同一の権利義務を第三者に対してもっといる場合にも適用される。なお、相続人が被相続人の保証人となったときも適用されるので、相続人が限定承認をしても相続人の保証債務は存続する。限定承認による清算手続

きについては、日本民法とほぼ同様である。

 

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