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相続に関する法律 韓国⑫
2015年12月28日

 

第5部 韓国法

淑明女子大学 郭 珉希

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

5 相続財産分割の効果

 

(1) 遡及効

 

韓国民法1015 条(分割の遡及効)相続財産の分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

 

相続財産が分割されれば、共同相続人間の共有状態が、相続開始の時に遡ってその財産が既に相続人の単独所有であったことになる。例えば、相続財産の分割の協議により共同相続人の一部が固有の相続分を超える財産を取得することになったとしても、これは相続開始の時に遡って被相続人から直接に承継されたと考えるべきであり、他の共同相続人から贈与されたものだとみなすべきではない67。

 

実務では、相続登記と関わって、被相続人から買収した不動産が協議分割によりその共同相続人の一人の名義で相続登記がなされた場合、他の共同相続人がその持分所有権移転登記の手続きを行う義務があるかについて議論がある。

 

大法院は、協議分割により共同相続人の一人の名義で相続登記がなされた場合、協議分割の遡及効によって、他の共同相続人は当該の不動産を相続したとはいえないし、現在の登記簿上の名義人でもないので登記義務者となるわけでもないから、その不動産に対する持分所有権移転登記の手続きを履行する義務もないと判断している68。

 

 

 

 

相続分割の遡及効で第三者の権利を害することはできない。ここの第三者とは、相続財産分割の以前に利害関係を結んだ者を意味し、善意か悪意かは問わないが、民法の定める権利変動の成立要件と対抗要件を備えたものでなければならない。学説と判例はさらに第三者の範囲を広げて、分割後登記前に利害関係を有している善意の第三者も含まれるという69。

 

 

(2) 共同相続人の担保責任

 

韓国民法1016 条(共同相続人の担保責任)共同相続人は、他の共同相続人が分割によって取得した財産について、その相続分に応じて、売主と同じく担保の責任を負う。

韓国民法1017 条(相続債務者の資力に対する担保責任)①共同相続人は他の相続人が分割によって取得した債権について、その分割の時における債務者の資力を担保する。

 

②返済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については返済をするべき時における債務者の資力を担保する。

 

 

 

韓国民法1018 条(無資力共同相続人の担保責任の分担)担保責任のある共同相続人の中に償還の資力のない者があるときは、その負担部分は求償権者及び資力のある他の共同相続人が、それぞれの相続分に応じて分担する。ただし、求償権者の過失によって償還できなかったときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。

 

7 相続の承認と放棄、相続人の不存在

 

1 相続人の相続拒否の自由

 

(1) 相続の承認と抛棄の立法趣旨

 

相続人に包括的に承継される相続財産には、権利だけではなく、義務も含まれているので、これを強制的に相続させることは望ましくない。したがって、韓国民法は、相続人に相続するかどうかについて選択権を付与することによって相続人を保護している。

 

相続の「承認」と相続の「抛棄」70がそれである。相続の承認とは、相続の効果を拒まないと宣言することである。このような相続の承認には、権利・義務を全面的に受け入れる「単純承認」と、承認はするものの、被相続人の債務と遺贈による債務は相続財産の範囲内で返済するだけで、相続人の固有財産をもって責任を負うことにはならない「限定承認」とがある。

 

相続の抛棄とは、相続開始のとき発生した権利・義務の承継を相続開始にさかのぼって消滅させようとする相続人の意思表示のことを指す。承認・抛棄はどれでも相手方のない単独行為であり、相続人の行使上の一身専属権である。

 

承認・抛棄は相続開始後(相続開始事実を知ってから3ヶ月以内)に行使できるので、相続開始の前の抛棄は認められない。判例によると、相続人の一人が、被相続人の生前に相続を抛棄することを約定したことがあっても、相続開始後に民法の定める手続きと方式に従って相続の抛棄をしない以上、相続開始後にあらためて自分の相続権を主張することが権利の濫用又は信儀則に反するとはいえないとして、正当な権利行使と判断したものがある71。

 

 

(2) 考慮期間

 

韓国民法1019 条(承認・抛棄の期間)①相続人は相続開始があったことを知ったときから3 ヶ月以内に単純承認又は限定承認、放棄をすることができる。ただし、その期間は利害関係人又は検事の請求によって家庭法院がこれを延長することができる。

 

②相続人は第1 項の承認又は放棄をする前に相続財産を調査することができる。

 

③第1項の規定に関わらず、相続人は相続債務が相続財産を超えたという事実を重大な過失なく第1 項の期間内に知らず単純承認(第1026 条の規定によって単純承認した者とみなす場合を含む)をした場合にはその事実を知った時から3 ヶ月以内に限定承認をすることができる。

韓国民法1020 条(制限能力者の承認・抛棄の期間)相続人が制限能力者であるときは、第1019 条第1 項の期間は、その親権者又は後見人が相続の開始があったことを知ったときから起算する。

 

韓国民法1021 条(承認・抛棄期間の計算に関する特則)相続人が承認又は抛棄をしないで第1019 条第1 項の期間内に死亡したときは、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知ったとこから第1019 条第1 項の期間を起算する。

 

 

韓国民法1022 条(相続財産の管理)相続人はその固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、単純承認又は抛棄したときは、この限りでない。

 

韓国民法1023 条(相続財産の保存に必要な費用)①法院は、利害関係人又は検事の請求によって相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。

 

②法院が財産管理人を選任したときは、第24 条から第26 条までの規定を準用する。

 

韓国民法上、このような相続人の相続拒否の自由は、期間によって制限される。詳しくいうと、相続人は、相続を承認するか抛棄するかを相続開始の事実を知ったときから3 ヶ月以内に決めなければならない(1019 条)。これを「考慮期間」と呼ぶ。相続人はこの期間中に相続財産を調べることができる。相続人の積極的な選択がないままこの期間が過ぎてしまったときは、単純承認したものとみなされることになる(1026 条2 号)72。

 

学説と判例は、民法1019 条1 項の考慮期間を除斥期間と解している73。韓国民法1019 条1 項は、「相続の開始があったことを知ったとき」

を起算点としているが、これについては、見解が分かれている。

 

通説及び判例は、相続人が相続の開始の事実を認識し、さらに自分が相続人となったことを認識したときを意味するという(相続人地位人認識説)。相続人が相続財産を認識したかどうか、相続の承認・抛棄制度を認識していたかどうかは、1019 条1 項の期間の進行に影響を及ぼさない。

 

 

つまり、判例は、相続人が相続開始のことは認識したが、自分が相続人となったことを知らなかったときは74、考慮期間は進行しないと解するが、ひるがえって、相続開始及び相続人となった事実は知ったが、相続財産の存否や相続の承認・抛棄制度の存在を知らなかったときは、1019 条1 項の期間の進行には妨げないと判示している75。こ

 

れに対して、少数ではあるが、相続開始があったことを知ったときとは、相続開始の事実と自分が相続人となったことを知って、かつ積極・消極の相続財産の存在を知ったときから起算すべきであると解する見解もある。これによると、相続人の承認や抛棄を考慮できるような積極・消極財産の存在を知らなかったら、考慮期間は起算されないとする。

 

起算点に関する特則としては、相続人が制限能力者である場合(1020 条)、承認・抛棄しないで死亡した場合(1021 条)がある。

 

 

 

2002 年に新しく設けられた1019 条3 項は、単純承認の擬制による違憲性を立法的に解決したものとされる。つまり。考慮期間が過ぎた場合であっても、相続人が、「相続債務が相続財産を超えること」を重大な過失なく知らなかったときは、その事実を知った時から3 ヶ月以内に再び限定承認をすることができると定めたのである。

 

 

ポリー

「法律で3ヶ月の例外を認めたのですね。」

 

 

他方、利害関係人又は検事の請求により家庭法院は考慮期間を延長することができる(1019 条但書)。考慮期間中に当事者の責任のない事由で期間延長請求ができなかったときは、その事由がなくなったときから2 週間以内に延長請求ができる。

 

(3) 承認と抛棄の取消しの禁止

 

韓国民法1024 条(承認・抛棄の取消の禁止)①相続の承認及び抛棄は、第1019 条第1 項の期間内でも、これを取消すことができない。

 

②前項の規定は、総則編の規定により取消しをすることを妨げない。しかし、その取消権は追認することができる時から3 ヶ月、承認又は抛棄の時から1 年内に行使しなければ、時効によって消滅する。

 

韓国民法1022 条(相続財産の管理)相続人はその固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、単純承認又は抛棄したときは、この限りでない。

 

韓国民法1031 条(限定承認と財産上権利義務の不消滅)

 

相続の承認及び抛棄の取消は考慮期間内でも取消すことができないが、民法総則編の規定による取消を妨げない。日本民法919 条4 項は、限定承認又は抛棄を総則編により取消しをするにはその旨を家庭裁判所に申述することを定めているが、韓国民法にはそのような規定はない。

 

相続人が限定承認するときは、相続人の被相続人に対して有していた権利義務は消滅せず、相続財産の管理義務も存続する。

 

 

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ハガキ1320151226