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相続に関する法律 韓国⑧
2015年12月28日

 

第5部 韓国法

淑明女子大学 郭 珉希

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

4 共同相続人間の相続分の公平な調整

 

さて、指定相続分・法定相続分が決まったからといって、各共同相続人の具体的に取得できる相続分が最終的に確定するわけではない。共同相続人間の公平を図るために民法は「特別受益者の相続分」と「寄与分」に関する規定を設けている。

 

まず、「特別受益者の相続分」を設けたのは、共同相続人の中に特別受益者がある場合、法定相続分に従って他の共同相続人と特別受益者が均分相続することになると、特別受益者は二重の利益を得ることになり、これは共同相続人間の公平に反するからである。

 

そして、共同相続人の中に被相続人を特別に扶養したかあるいは被相続人の財産の維持又は増加に特別に寄与をした者がいるときは、相続分の算定においてその寄与や扶養を考慮すべきである。このような「寄与分」制度もまた共同相続人間の実質的な公平を図るためである。

 

結局、法定相続分が定められていても、特別受益や寄与分といつ制度を通じて、共同相続人間の相続分の調整原理に基づいて具体的な相続分が確定することになるため、実際に共同相続人間の相続財産分割によって配分される割合は、法定相続分と異なる割合になることとなる。

 

(1) 特別受益者の相続分

 

韓国民法 1008 条(特別受益者の相続分)共同相続人中に被相続人から財産の贈与を受け、又は遺贈を受けた者があるときは、その受贈財産が自分の相続分に達しないときはその不足部分の限度内で相続分がある。

 

 

 

(a) 特別受益者の特別受益

 

特別受益者の相続分に関しては韓国民法1008 条は比較的に簡単な条文で定めている。ここでいう特別受益とは、被相続人から生前贈与や遺贈として受けたもので相続分の前渡し(先給)45とみなされる利益のことである。

 

共同相続人の中にこのような特別利益を受けた者は、他の共同相続人との公平を図るために、特別受益が自分の相続分より少ないときは、その足りない部分の限度内のみで相続分があるとしている。

 

つまり、このような特別受益は相続分の一部であるから、各共同相続人の具体的相続分の確定に当たっては、生前贈与分や遺贈分が計算上戻されることになる。

 

したがって、特別受益者は一応、特別受益の返還義務を負うというが、これはあくまで計算のための仮想の合算(返還)にすぎない。このような返還義務を負う特別受益者は原則として共同相続人のみである。共同相続人の直系卑属、配偶者、直系尊属が被相続人から贈与や遺贈を受けたとしても、原則としては共同相続人は具体的な相続分算定における特別受益者としての返還義務は負わない46。

 

相続を放棄した者も他の相続人の相続分を侵害しない限りで、返還義務は負わない。代襲相続の場合は、代襲相続人が共同相続人となる場合には当然返還義務を負うが、特別利益を受ける当時相続人の地位を持っていたかは問わない。

 

 

 

被代襲者が特別受益を受けたときは、代襲相続人が実際の経済的利益を受けた場合にのみ返還義務を負うと解するのが通説である。

包括的な遺贈については、包括受遺者が法定相続人であるかにより、相続順位上、第2 順位以下の者として包括遺贈を受けた者が共同相続人となった場合には返還義務を負担する。

 

韓国民法上、返還すべき特別受益とは、生前贈与と遺贈がある。生前贈与の返還範囲については民法の定めはないが、制度の趣旨に照らして「相続財産の前渡しとして評価できるような特別な贈与」に限る。これまで学説や判例上、特別な贈与と判断してきたのは、例えば、婚姻費用、生計の資本としての贈与、巨額の婚姻式費用、他の共同相続人と異にする高等教育費(留学資金など)がある。

 

しかし、扶養料や生活費、慣例的なお土産、お小遣い、その他の財産譲渡や債務免除は特別利益ではないとする。遺贈の場合については、その目的を問わず、返還の対象になる。

 

但し、遺贈の場合には相続開始の時、まだ相続財産の中に含まれているので、生前贈与のように相続財産に加算する必要はない。生命保険金や死亡退職金は相続財産ではなく、共同相続人の特別受益と解するのが通説である。

 

 

(b) 具体的相続分の算定

 

韓国民法には特別受益者の具体的な相続分の計算方法については詳しい定めがない。特別利益は相続分の一部であるから、特別受益者の具体的相続分は次のように決められる。まず、被相続人が相続開始の時において有している財産の価額にその特別利益(生前贈与)の価額を加えたものを相続財産とみなして、それに各共同相続人の法定相続分率を乗じて法定相続分の価額を算出する。

 

この際、相続財産の評価は相続開始の時を基準にしているので、特別利益(生前贈与)の価額の評価も相続開始の時の価額が基準となるというのが通説である47。そして、算出された各共同相続人の法定相続分の価額から特別受益者の特別受益(生前贈与と遺贈)の価額を控除する計算方法による48。

 

その残額を特別受益者の相続分(具体的相続分)とするということである。他方、具体的相続分の算定の基礎となる「被相続人が相続開始のときにおいて有している財産」には相続債務、すなわち、消極財産は含まれないというのが通説と判例49の態度である。

 

つまり、相続財産の中の積極的財産の総額を意味しており、相続債務は民法1009 条に従って共同相続人に分担される。具体的な相続分の算定の結果、特別受益が相続分に足りない場合には、足りない部分の限度で相続分を受け取ることができる。

 

 

これに対し、特別受益が相続分を超えていたとき、超過特別受益者の具体的相続分はゼロになるが、その超過分を払い戻さなければならないかについて

は少し議論がある。

 

これは、韓国民法の制定当時は、但し書きとして「特別受益者の相続分に関して、受贈財産が相続分を超えた場合にはその超過分の返還を要しない」という規定があったが、1977.12.31.の民法改正によってこれが削除されたからである。

 

通説は1977 年の民法改正でこの但し書きが削除されたのは遺留分制度が導入されたからであって、超過分を返還させようとする趣旨ではないとして否定説をとっている。もし特別受益者の特別受益が本来の相続分を超えていたという事実だけで、遺留分の侵害を問わず、常に返還義務があるというのは、被相続人の意思をあまりにも制限しすぎることになるから不当だとする。

 

判例は下級審ではあるが、超過分は遺留分の侵害がある場合のみ返還すべきであるとしている。特別受益と遺留分との関係では、遺留分には韓国民法1118 条によって1008 条が準用されるので、特別受益は遺留分には劣後する。

 

したがって、特別受益は遺留分を侵害することができなく、遺留分との関係では実際に特別受益が返還される場合もありうる。これまでの内容を整理すれば次のようである。

 

 

 

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