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相続に関する法律 韓国⑥
2015年12月28日

 

第5部 韓国法

淑明女子大学 郭 珉希

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

2 共同相続

 

(1) 相続財産の「共有」の意味

 

韓国民法1006 条(共同相続と財産の共有) 相続人が数人あるときは相続財産はその共有とする。

韓国民法1007 条(共同相続人の権利義務の承継)共同相続人は各自の相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。

 

韓国民法は相続の効果として前述した相続財産の包括的な承継(1005 条)に加えて、共同相続(1006 条及び1007 条)について規定している。共同相続とは数人の相続人が被相続人の財産を共同で承継することである。

 

つまり、民法1006 条が「相続人が数人あるときは相続財産は共有とする」と定めているので、共同相続人は各自の相続分に応じて財産を承継するわけであるが、共同相続財産を分割する前には相続財産を共有することになる。

 

この「共有」の意味ないし法的性質については議論上争いがある。民法1006 条の「共有」が財産法上の「共有」を意味しているのか、それとも、「合有」を意味しているのかの問題である。

 

このような見解の実益あるいは違いは、簡単にいうと、個々の財産に対する持分処分の自由を認めるかどうか、分割の遡及効と関連して相続債権・債務の規律方法(韓国民法1015 条)にあるといえる。

 

 

通説と判例38は、相続財産の共有は本来の共有を意味するとして、共同相続人は個々の相続財産に対する物権的な持分を保有するので、個々の相続財産に対する持分の自由処分ができるし、相続債権・債務が不可分的なのもであれば共有関係にあることになるが、可分的であれば分割債権・分割債務となると説明している。

 

 

韓国民法1015 条(分割の遡及効)相続財産の分割は相続開始の時に遡及してその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

 

(2) 債権・債務の共同相続

 

 

 

債権・債務の共同相続については、不可分であるか可分であるかによって議論がなされている。まず、不可分債権・債務につき、不可分債権は相続財産分割までは共同相続人全員に不可分的に帰属される。共同相続人各自は共同で又は単独で全ての共同相続人のために全部の履行請求ができる(韓国民法40 条)。

 

但し、受け取った給付を相続分に応じて分給しなければならない。不可分債務も各共同相続人に不可分的に帰属され、共同相続人の各自はその債務全部を履行する責任を負う。

 

 

したがって、債権者は共同相続人の一人や全ての共同相続人に対し同時あるいは順次に債務全部の履行を請求することができる。可分債権・債務については、通説・判例の取る共有説によると、可分債権・債務は相続開始と同時に共同相続人に相続分に応じて分割・承継されるという(分割債権関係説)。

 

要するに、可分債権・債務は相続財産分割の対象とはならない。例えば、金銭債務が共同相続された場合、相続財産の分割対象となるかについて判例は次のように判示している。

 

「金銭債務のように給付の内容が可分の債務が共同相続された場合には、これは相続開始と同時に当然に法定相続分に応じて共同相続人に分割して帰属するので、相続財産分割の対象とならない」39とした。

 

これに対して、少数説ではあるが合有説は、相続債権が可分債権であっても不可分債権と同じく共同相続人の全員に帰属されると解すべきであり、相続開始と同時に当然分割されるのではないと主張する。相続債務が可分債務の場合も同じである。

 

つまり、可分債務に対する相続財産の分割は対内的な関係において各自の負担部分として分割されるとの意味にすぎないし、債権者との関係においては債権者の同意がない限り、依然として不可分債務を負担するされている。連帯債務は給付の性質上不可分的なものであるので、各共同相続人は本来の債

務と同じような連帯債務を負担する。

 

 

 

(3) 共同相続財産の管理及び処分

 

共同相続財産の管理については民法上共有の規定を類推適用する。共同相続財産を処分するためには共同相続人の全員の同意が必要である。しかし、個々の相続財産に対する持分及び全部の相続分は処分できる。

 

3 祭祀財産の特別承継

 

家制度や戸主制度は韓国の相続法改正により廃止された。ところで祭祀財産の承継は祭祀相続であり、従来、戸主相続の効果として認められていたのが、未だ民法に残っているのである。そこで、この祭祀財産の相続をどのように捉えるかが問題となった。

 

つまり祭祀財産の承継の法理と相続の法理とを別の制度として捉えるべきかということである。学説は祭祀財産の承継は相続は区別すべきだというのが通説である。この見解によると、祭祀財産は相続財産に含まれることなく、相続分割の対象にもならない。

 

さらに相続を放棄した者や相続人でない者であっても祭祀主宰者として祭祀財産を承継することができるとされている。

 

 

ポリー

「韓国もお墓とか仏壇の承継は独立して残ったのですね。」

 

 

判例は祭祀財産の承継を相続と全く異なる制度として捉えるべきではなく、本質的には相続に属する制度として相続の特例であると考えるべきだとしている40。大法院はこのような考え方に基づいて祭祀財産の承継の場合にも相続回復請求権の短期除斥期間が適用されるとする。

 

さらに、憲法裁判所では、相続財産の中、一定の範囲の祭祀財産を祭祀主宰者が承継すると定めた民法1008 条の3 が祭祀主宰者ではない他の相続人の相続権若しくは財産権を侵害するのではないか、宗孫ではない女子相続人や祭祀主宰者とならなかった他の相続人の平等権を侵害するものではないかというのが問題になったことがある。

 

 

これに関して、憲法裁判所は「韓国民法1008 条3 の立法目的は正当であり、祭祀財産を承継すべき者は「戸主」や「宗孫」ではなく、「実際に祭祀を主宰する者」として原則として共同相続人の協議によって決められ、協議によって宗孫以外に次男や女子相続人も祭祀主宰者となることができる」などの理由で合憲の判断を下した。

 

韓国民法1008 条の3(墳墓などの承継) 墳墓に属する1 町歩以内の禁養林野と600 坪以内の墓土たる農地、族譜と祭具の所有権は祭祀を主宰する者が承継する。

 

 

韓国民法1008 条の3 は墳墓に属する1 町歩以内の禁養林野と600 坪以内の墓土たる農地、族譜と祭具の所有権は「祭祀を主宰する者」が承継すると定めている。ここでいう「祭祀主宰者」とは先に述べたように「実際に祭祀を主宰する者」と解される。

 

戸主制度が廃止された現在の韓国民法においては、「祭祀主宰者」が従来の戸主承継人を意味しているのか事実上祭祀を主宰する者を意味しているのかは、少なくとも判例によって明らかになった。

 

 

但し、祭祀財産の承継権者を「相続人」に限定すべきであるかは問題である。これに関して民法の明確な定めがないからである。ここで判例は、「共同相続人の中に宗孫がいる場合には宗孫が祭祀主宰者となるのが原則であるが、宗孫に祭祀を主宰できない特別な事情がある場合にはこの限りでない」41として、祭祀財産の承継権者たる祭祀主宰者は相続人でなければならないとしている。

 

 

他方、相続放棄者も祭祀財産を承継できるというのが通説である。祭祀主宰者の決定方法についても民法の規定がない。大法院は「共同相続人間の協議で決定し、協議できなかったときは、祭祀主宰者の地位を維持できない特別な事情がない以上、亡人の長男が祭祀主宰者となり、共同相続人に息子がいないときは亡人の長女が祭祀主宰者となる」42としている。

 

ともかく、祭祀財産に限っては、相続財産のように分割して相続するのになじまず、あくまで死者のお祀りを最も適切に行う者が承継すべきだからである。このように、祭祀財産の承継は一般の相続財産と異なり、祭祀を主宰する者が特別承継する特別財産といえる。

 

このことから、祭祀を主宰する者が、相続人として他の一般相続財産を承継する際、祭祀財産の承継は相続分や遺留分の算定に当たっては考慮すべきではないとされる。

 

 

ポリー

「祭祀財産が分割して相続するのになじまず、というのはわかります。」

 

 

民法の定める祭祀財産とは、墳墓に属する1 町歩以内の禁養林野、600 坪以内の墓土の農地、族譜と祭具である。禁養林野とは先祖の墳墓があるか設置する予定で伐木が禁じされ樹木を養うための林野を指す。暮土の農地とは田畑が含まれその受益をもって墳墓管理と祭祀費用に充当される農地のことである。族譜と祭具については内容的にさほど問題はない。

 

他方、遺体・遺骨が祭祀財産であるかについては韓国法では遺体や遺骨は埋葬されてなくても墳墓と一体のものとして当然、祭祀財産に含まれる。したがって、遺体・遺骨は祭祀財産に準してその祭祀主宰者に承継される43。

 

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