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相続に関する法律 韓国⑤
2015年12月28日

 

第5部 韓国法

淑明女子大学 郭 珉希

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

4 相続の効力

 

1 相続財産の包括的な承継

 

韓国民法1005 条(相続と包括的権利義務の承継) 相続人は相続開始の時から被相続人の財産に関する包括的な権利義務を承継する。但し、被相続人の一身に専属したものは、その限りでない。

 

相続では相続開始の時から被相続人の財産に属する一切の権利義務が相続人に承継される。韓国民法1005 条は具体的な権利義務を特定することなく財産関係が一体として相続人に相続されると定めており、これを包括承継という。

 

したがって、相続法上の相続財産とは、相続人が被相続人から承継する財産法上の客体として、被相続人の積極財産のみならず消極財産も含まれる。

なお、まだ権利・義務として具体化されてないあらゆる法的地位も含まれる。

 

但し、被相続人の一身に専属したものは承継されない(1005 条但書)。一身専属的な権利義務にどのようなものが含まれるのかという問題は実は結構難しい問題である。

 

 

 

(1) 物権など

 

物権は原則として相続財産に含まれる。相続による物権の承継は法律の規定による物権変動であるから、相続登記は要しない(187 条)。物権が相続されるとしても、但し、合有持分、農地、農地受分配権などは一定な制限がある。

 

例えば、合有者の相続人は合有者の地位を承継することはできない。例えば、合有者が死亡した場合、残存合有者が2 人以上であるなら残存合有者の合

有になり、残存合有者が一人であるときは残存合有者の単独所有となる26。

 

なお、相続により農地を取得した者が実は農業を営んでいないときは、その相続農地のうち、1万m2 以内の範囲でしか農地を所有することができない(農地法7 条1 項)。農地受分配権者27が死亡したとき、その農地も相続の対象になるが、相続人となるべき者が農家あるいは農地の耕作によって生計を営んでいる財産相続人でなければその農地受分配権は相続できない28。

 

 

ポリー

「実際に農業を営んでいない方には、相続の際に取得のストップをかけておくという考え方はありだと思います。」

 

 

他の物権と異なり観念的な占

有権が相続されるかどうかが問題になるが、韓国民法193 条は「占有権は相続人に移転する」と明示的に規定している。この際、相続人が現実的に相続財産に対する占有を取得したかどうかは問題にならない。但し、占有権の相続には相続分に関する規定は適用されないので29、共同占有には相続分というのがない。

 

なお、特許権、商標権、著作権のような知的財産権や鉱業権・漁業権30なども原則として相続される。

 

 

(2) 債権・債務及び債権法上の地位

 

(a) 債務

 

債務は原則として相続される。しかし、人格権や親族法条の権利・義務のような非財産権、一身専属的な債務、委任契約における当事者の地位や雇用契約における勤労者の地位のような個人的な信頼に基づく継続的な法律関係においての当事者の地位は相続されないというべきである。

 

保証債務については、通常の保証債務及び保証人の地位はその責任の範囲が確定されているので、相続の対象となる。継続的な保証の場合には保証期間と保証限度額の定めがなければ相続されるとすべきではないが、相続開始の以前に既に生じた具体的な保証債務は相続される31。

 

 

ポリー

「韓国でも保証債務は相続されるのですね。」

 

 

(b) 賃借権

 

債権及び債権法上の地位について、相続されるかどうかが問題とされているのは賃借人の賃借権、損害賠償請求権、離婚による財産分割請求権、生命保険金請求権、退職金・遺族給与などがある。

 

賃借権については、賃借権も価値のある財産権(債権)であるから、賃借権が相続財産に含まれることに関してはあまり異論がない。但し、同居者の住居生活の保障のため、韓国の住宅賃貸借保護法には賃借権の承継に関する特別規定が設けられている。

 

例えば、賃借人が死亡したがその相続人がいない場合、住宅で家庭共同生活を営んでいた事実婚の配偶者に死亡した賃借人の権利・義務の承継を認めている(住宅賃貸借保護法9 条①)。

 

 

なお、正当な相続人がいる場合であっても賃借人がその相続人と家庭共同生活をしていない場合には、家庭共同生活をともにしていた事実婚の配偶者と2 寸以内の親族とが共同に賃借人の権利・義務を承継すると定めている(同法9 条②)。

 

 

ポリー

「実際に生活している方を優先させるのですか。」

すみれ

 

「浮気して、亡くなった方が悪いかも知れないから難しいところだよ。賃貸だったらいいのかもしれないけど。」

 

 

 

賃貸借関係から生じた債権・債務は賃借人の権利義務を承継した者に帰属する。賃借人の承継権者は賃借人の死亡後一ヶ月以内に、賃貸人に対する反対の意思表示をもって賃貸権承継を放棄することもできる(同法9 条③)。

 

(c) 損害賠償請求権

 

通常の損害賠償請求権一般が相続財産に含まれることには異論がない。しかし、生命侵害による損害賠償請求権(財産的損害賠償請求権及び精神的損害賠償請求権)が相続の対象となるかについては議論がある。

 

特に、被相続人が即死した場合に即死者の損害賠償請求権を即死者の相続人が相続できるのかが問題となる。なぜなら、被相続人の損害賠償請求権が発生する段階では、請求権者たる被相続人が死亡しているからである。

 

即死した者、すなわち、死者に損害賠償請求権を帰させることができないのではないかという疑問から始まる。

 

否定説は死者には損害賠償請求権が帰属できないことからその相続性が否定され、とりわけ、死亡者(被相続人)の精神的損害賠償請求権は一身専属的権利であるから相続人に相続されるわけがないとする32。

 

したがって、遺族は固有の損害として損害賠償請求権を取得すると考えるべきだとする。これに対し、韓国の通説と判例は、被害者の財産上の損害である逸失利益であろうが、精神的な損害としての慰謝料であろうが、一旦、死亡者に帰属し再び相続人に承継されるとして、いずれも相続性を認めている。

 

さらに、判例は「精神的損害に対する慰謝料請求権は、被害者がこれを破棄あるいは免除したという特別な事情がない限り、生前に請求意思を表示する必要もなく、原則として相続すると解するのが相当である」と判示した33。

 

(d) 離婚による財産分割請求権・生命保険請求権

 

離婚による財産分割請求権については、離婚後死亡した場合と、離婚訴訟及び財産分割請求を併合した訴訟中に死亡した場合とが問題とされる。前者の場合の財産分割請求権は請求の意思を表示したかどうかを問わず、当然、相続されるが、清算的な要素のみ相続されるだけで扶養的な要素は相続されないという。

 

後者の場合には、財産分割請求権は離婚を前提とするものであるから、死亡による婚姻解消の場合には財産分割請求権が発生しないのでその相続性は認められない。したがって、離婚訴訟中、当事者が死亡したときには、離婚訴訟と併合した財産分割請求も離婚訴訟と同時に終了するというのが判例である34。

 

生命保険金請求権において、生命保険金とは保険契約に基づき、被保険者が死亡することによって指定された受取人(保険受益者)に支払われるものである。したがって、生命保険金あるいは生命保険金請求権は原則として被相続人の相続財産とはいえない。そもそも相続人が保険受益者に指定されていたとしても、保険受益者たる相続人の取得した保険金請求権は契約の効力によるものであって、相続によるものではない。これは相続人の固有財産となり、相続財産には含まれない35。

 

 

このように、生命保険金は相続財産には含まれないこととなるが、相続人が保険受益者として保険金を受け取った場合、共同相続人の特別受益として評価されるというのが通説である。

 

 

ポリー

「相続財産に含まれなくても贈与として評価されるなら結果として同じですね。」

 

 

なぜなら、被相続人による保険料支給の対価が保険金請求権であるから、その受益者が共同相続人なら、これは被相続人からの贈与あるいは遺贈に当たる無償の財産移転にほかならないからである。他方、保険受益者が相続人ではなく第三者である場合にも保険金請求権は相続財産に含まれない36。しかし、保険契約者が自分を保険受益者として指定した場合には、保険金請求権は相続財産に含まれる。

 

 

(e) 退職金・遺族給与など

 

退職金については、勤労者が生存中退職して既に受け取った退職金は当然相続財産に含まれる。死亡退職金については特別法によって定められている。ここでいう死亡退職金とは私企業の勤労者や公務員が死亡した場合に、使用者が遺族に対して支払う退職金のことである。

 

通常、死亡退職金については法令や企業の定款でその受領者の範囲や順位を定めている。私企業の場合、勤労基準法施行48 条以下の趣旨に照らして企業の死亡退職金の規定は使用者と勤労者との間に締結された第三者のための契約の性質を有しているものと解される。

 

なお、公務員の死亡退職金に関しては、法律によって受領権者の範囲と順位が決されるものとして遺族の固有の権利として取得するのである。したがって死亡退職金や遺族給与は相続人の固有の権利として捉えるべきであって相続財産には含まれないという。

 

香典や弔意金は相続分に応じて共同相続人に贈与されたものとして考えるべきだというのが判例であって相続財産ではないとする37。

 

 

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