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相続に関する法律 ドイツ⑧(終)
2015年12月27日

 

第1 部 ドイツ法

神戸大学 浦野由紀子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

第8 章 ドイツにおける相続制度をめぐる議論状況

 

1 近年の相続に関する法改正の内容

 

ドイツでは、「2009 年9 月24 日の相続法及び時効法を改正する法律(Gesetz zur Änderung des Erb- und Verjährungsrechts vom 24.September 2009)」により、相続法が改正されたところである(2010 年1 月1 日施行)。この法改正は、遺留分を漸減させる方向に向かうものであるといえる。

 

 

すみれ

「ドイツは改正したんだね。税金も。」

 

 

具体的には、

①遺留分権利者の有する親族法上の地位によって異なっていた遺留分剥奪の要件が統一され、新たに要件が規定された。

②遺留分権利者に対する相続人の支払義務の猶予事由が拡大された。

③遺留分補充請求権の基礎として遺産に加算される生前贈与は、相続開始前10 年以内のものについて贈与額全額が加算されていたところ、改正により、贈与から1 年経過するごとに基礎財産への加算額が10 分の1 ずつ減額されることになった。

④被相続人の介護をした直系卑属が相続分の調整(寄与分)を請求するには、自己の職業上の収入を放棄して介護したことが要件とされていたが、この要件が不要とされた。

 

また、2008 年には相続税及び贈与税法が改正された65。居住の保護という観点から重要と思われる改正内容は2 点ある。第一に、基礎控除額が、配偶者について500000 ユーロ(改正前は307000ユーロ)、子について400000 ユーロ(改正前は205000 ユーロ)に引き上げられた(ErbStG§16)。

 

 

第二に、被相続人自身が居住していた住宅(家族の住宅:Familienheim)を被相続人の生存配偶者または子が取得し、取得後10 年間居住する場合は、当該住宅は非課税財産とされた(ErbStG§13Abs.1.Nr.4b)。これは、不動産価格が高騰している地域でも、被相続人の近親者が相続税の支払のために「家族の住宅」を手放さなくてもよいようにするためである。

 

 

番人

「家族の住宅については、保護が厚いね。税金払うために家を手放すって、考えてみても変だし。相続税と贈与税は基礎控除額が一緒みたい。税率も一緒かな。」

 

 

2 法改正に関する議論とヨーロッパ諸国の相続法改正の傾向

 

 

2009 年の改正後も、ドイツでは、相続法の改正に関する議論は続いている。遺留分に関しては、その縮減と遺言自由の拡大がなお引き続き提案されている。

また、第68 回ドイツ法曹大会(2010年)66では、相続法の改正に関するさまざまな提案がなされた。具体的には、夫婦共同遺言に関して、その方式を公正証書によることとしたり、相関的処分の拘束力について、要件を厳格化すべきことが提案されているほか、法定相続制度に関して、被相続人とその配偶者の婚姻中の夫婦財産制の内容とは無関係に(§1371 による付加利得の一括調整をやめて)、生存配偶者の法定相続分そのものを引き上げるべきこと(直系卑属とともに配偶者が法定相続人となる場合は、配偶者の法定相続分を2 分の1 とすべきこと)が提案されている。

 

後者は、従来から提案されていたものである67。その理由としては、相続時の付加利得の一括調整について、実際の付加利得を適正に清算できているかが明らかでなく、付加利得共通制の理念(婚姻中に夫婦が実際に取得した財産を平等に分配すること)に反している等の問題点があること、及び、配偶者は遺産に対する取り分(法定相続分)に関して、血族より劣位に置かれるべきではないと考えられるようになっていることが挙げられる。

 

 

 

かつて、相続は「次世代への遺産承継」であり、「家族」内に遺産をとどめなければならないものと考えられていた。しかし、今日では、そのような「家族」よりも夫婦関係がより重要な意味をもつようになっている。配偶者は、通常、被相続人の死亡時に被相続人と世帯を営み、生計をともにしていた唯一の人である。

 

他方、子は、(親からの経済的援助をもとに)すでに独り立ちしているので、被相続人の生存配偶者が死亡するまで、被相続人の遺産の取得を待つことができる状態にある68。そのため、今日では、被相続人は、遺産をまず生存配偶者に取得させてその生活を保障し、生存配偶者も死亡した後に子や他の血族に遺産が帰属すべきことを望む傾向があるという69。

 

このような傾向を受けて、ヨーロッパ諸国における近時の相続法改正には、「配偶者相続権の強化」という傾向70が顕著にみられる。ヨーロッパ諸国のこのような動向からは、法定相続分に関するドイツの現行法の規定(§1931Abs.1)は、孤立した状態にあるといえる。

 

 

 

番人

「ヨーロッパでは孤立した状態なのか。まずは配偶者っていうのがヨーロッパの家族の意識なんだね。その後に、高齢化で独り立ちしている(であろう)子供。配偶者にあげておいたら子供もみてくれるだろうしって考えかな。」

 

〈注〉

・本報告書の執筆にあたり、主として、Leipold,Erbrecht,20.Aufl.2014 を参考にした。

・脚注に引用したウェブサイトへのアクセス日は、2014 年10 月16 日である。

 

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