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相続に関する法律 ドイツ⑥
2015年12月27日

 

第1 部 ドイツ法

神戸大学 浦野由紀子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

第5 章 ドイツにおける生存配偶者に対する法的保護のあり方

 

以上がドイツの相続制度の概要であるが、このうち、生存配偶者に対する保護(生活保障)に関わる制度としては、以下のものを抽出することができる。

 

1 生存配偶者の遺産承継に関する制度

 

1 法定相続による場合

 

上述したように、被相続人とその配偶者が法定夫婦財産制(付加利得共通制)に服していた場合は、被相続人の相続において、生存配偶者の相続分が増加する。

生存配偶者が第二順位の血族相続人または祖父母とともに法定相続人になる場合は、相続分のほかに、被相続人との婚姻家庭に属した物44 ( 土地の従物は除く)、及び、結婚祝い(Hochzeitsgeschenk)を先取分(Voraus)として取得する(§1932Abs.1Satz1)。

 

 

番人

「先に取得することができる先取分があるんだ。生活必需品だね。」

 

 

生存配偶者が

第一順位の血族相続人とともに法定相続人になる場合は、先取分として、婚姻家庭に属した物を、相応の家政を営むに必要な限度で取得する(§1932Abs.1Satz2)。先取分の制度は、被相続人の死後も、生存配偶者が従前と変わらぬ生活状態を維持できるようにするためのものである。なお、先取分についての権利を行使するには、生存配偶者は法定相続人であることを要する。

 

生存配偶者は、法定相続を放棄したり、廃除されたりしている場合はもちろん、死因処分によって相続人に指定されている場合も、先取分はない。

 

2 死因処分による場合

 

(1) 先位相続・後位相続

 

生存配偶者の生活保障のために用いることができる死因処分としては、まず、先位・後位相続制度がある。これは、生存配偶者を先位相続人に指定し、子を後位相続人に指定しておくものである。この場合に、先位相続人たる生存配偶者は相続財産の使用・収益権のみを有し、処分権は持たないため、相続財産は他に処分されることなく後位相続人に相続されることになる。

 

この制度は、被相続人の子孫(血統)から相続財産が離脱するのを防ぎつつ、生存配偶者の生活保障を図ろうとする場合に利用される。

 

(2) 共同遺言

 

生存配偶者の生活保障のために利用可能なもう一つの死因処分は、共同遺言(§§2265-2273)である。とくに「ベルリン式遺言」は、生存配偶者の生活保障のための手段として、従来からよく利用されている45。

 

ベルリン式遺言がある場合、第一の相続(夫婦の一方の死亡)では生存配偶者のみが相続人となるが、「終わりの相続人(多くの場合は、夫婦の共通の子)」は第一の相続から廃除されているために、第一の相続で遺留分を主張する可能性がある。そこで、ベルリン式遺言では、第一の相続で終わりの相続人が遺留分を主張することを抑止し、生存配偶者の相続権を保護するために、一定の条項が定められることが多い。そのような条項の一つが、いわゆる「遺留分条項」である46。

 

 

これは、終わりの相続人が、第一の相続の際に遺留分を請求すれば、第二の相続(生存配偶者の相続)の際にも遺留分だけを取得するという解除条件を定めるものである。さらに進んで、生存配偶者の権利をより強化するために、「ヤストロフ条項(Jastrow’sche Klauseln)47」が付けらることもある。

 

これは、第一の相続で終わりの相続人の一人(甲)が遺留分を主張することを条件に、第一の相続で遺留分を主張しなかった他の終わりの相続人(乙)への第一の相続における遺贈(履行期は第二の相続時である)を定めるものである。

 

番人

「遺留分条項、ヤストロフ条項、通称があると決まるな。」

 

 

3 婚姻中における配偶者間の出捐(Ehegattenzuwendung)

 

婚姻中に、夫婦の一方が他方に対して財産を移転する場合がある。このような配偶者間の出捐(財産移転)は、付加利得の前倒しの清算や配偶者の生活保障を目的としてなされるものであり48、遺産承継のための手段としての性質も持っているといえる。判例は、配偶者間の出捐を家族法上

の特殊な契約とみなし49、その内容等に関して判例理論を形成してきた50。

 

もっとも、上述したとおり、遺留分が問題となる場面では、配偶者間の出捐は端的に贈与として扱われ、遺留分権利者から遺留分補充請求権(§2325)を行使される可能性がある。

 

 

2 とくに、生存配偶者の居住の確保に関する制度

 

1 相続制度による場合51

 

(1) 30 日権(Dreßigster)

 

被相続人の世帯に属し、被相続人から扶養を受けていた家族は、相続人に対して、相続開始から30 日間、被相続人がしていたのと同じ扶養をすること、および、住居・家財道具の利用を許容することを求めることができる(§1969)。30 日権を行使しうる「家族」には、配偶者や子のほか、同性パートナーシップ法上の同性パートナーや事実婚配偶者も含まれる。

 

 

番人

「1ヶ月はそんなに意味があるのかな。」

 

 

(2) 死因処分による居住の確保

 

先位相続人指定や用益権の遺贈によって、生存配偶者に居住を確保する方法については、先述したとおりである。

 

2 その他の制度―住居の賃借権の相続に関する特則(§§563、563a)52

 

この特則は、賃借人と密接な関係にあった者(配偶者など)の居住の保護を図ることを目的とするものであり、住居の使用を目的とする賃貸借関係において賃借人が死亡した場合に、賃借人と密接な人的関係にあった者(相続人である必要はない)が、(他の)相続人に優先して、特別承継人として賃借権を承継することを定めている。

 

 

番人

「紛争は飛ばします。できるだけしないようにしたいよ。」

 

第6 章 相続に関する紛争手続

 

1 非訟事件53

 

非訟事件である遺産事件及び分割事件については、遺産裁判所(Nachlassgericht)が扱う。遺産裁判所となるのは、相続開始時の被相続人の住所地の区裁判所(Amtsgericht)である( Gerichtsverfassungsgesetz ( 裁判所法、以下GVG と略記する。) §23aAbs. 2Nr.2 、FamFG§343Abs.1)54。

 

 

遺産事件とは、①死因処分の特別の公の保管(die besondere amtliche Verwahrung)、②遺産の保全(遺産保護を含む)、③死因処分の開封、④相続人の捜索、⑤遺産裁判所に対してなされるべき意思表示の受領、⑥相続証書、遺言執行者証明書、その他遺産裁判所により交付されるべき

証明書、⑦遺言執行、⑧遺産管理、⑨その他法律により遺産裁判所の職務とされている職務、などの事項に関わる事件をいう(FamFG§342Abs.1)。

 

 

分割事件とは、①裁判所が、遺産分割、並びに、夫婦財産共同制、同性パートナー関係財産共同制又は継続的財産共同制を終了させる合有財

産の分割において遂行しなければならない職務、及び、②土地登記法36 条及び 37 条並びに船舶登録法42 条及び 74 条の規定による、夫婦財産共同制、同性パートナー関係財産共同制又は継続的財産共同制に服する合有財産の分割に関する証明書にかかる手続に関わる事件をいう(FamFG§342Abs.2)。

 

 

2 訴訟事件

 

訴訟事件は、通常裁判所が管轄する(GVG§13)。①相続権の確認、②相続人の相続財産占有者に対する請求、③遺贈又はその他の死因処分に基づく請求、④遺留分の請求、又は、⑤相続財産の分割を求める訴えは、被相続人が死亡した時に普通裁判籍を有した裁判所に提起することができる(ドイツ民事訴訟法・ZPO§27Abs.1)。

 

 

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