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相続に関する法律 ドイツ③
2015年12月27日

 

第1 部 ドイツ法

神戸大学 浦野由紀子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

 

第2 章 死因処分による遺産承継

 

1 死因処分

 

死因処分には、受領を要しない一方的な意思表示によるもの(遺言・終意処分)と、契約によるもの(相続契約)がある。本報告書では、遺言制度一般についてごく簡単に概要を示すほか、とくに共同遺言・相続契約について紹介する。

 

2 遺言

 

1 遺言の種類(普通方式)

 

遺言には、普通方式と特別方式がある。普通方式の遺言には、全文と氏名を自書して作成する自筆証書遺言(§2247)と、公証人に対して終意を口頭で述べ、これを公証人が筆記することにより作成される公的遺言(§2232)がある。

 

2 遺言事項

 

遺言でなしうる事項は法定されている。このうち、相続・遺産承継に関する事項としては、相続人の指定(§1937)、遺贈(§1939)、負担の定め(§1940)、遺産分割の禁止(§2044)、遺産分割に関する定め(§2048)、補充相続人の指定(§§2096-2098)、後位相続人の指定(§2100)、

遺言執行者の指定(§2197)、遺留分の剥奪・制限(§§2333-2338)、遺言の撤回(§2253)などがある。以下では、このうち、とくに遺贈について

とりあげる。

 

3 遺贈の意義

 

遺贈とは、被相続人が遺言によって、受遺者に、この者を相続人に指定することなく、財産上の利益を与える処分である。遺贈によって、受遺者は、遺贈目的物についての権利を直接被相続人から承継するのではなく、遺贈義務者に対する履行請求権を取得する。

遺贈がもちうる経済的意義として、生存配偶者や子にとって、他の処分によるよりも税法上・私法上有利な処分をなしうる点が挙げられる21。

 

たとえば、被相続人が、その所有する住宅について、生存配偶者がその生存中住宅を使用し、後に子が住宅を取得するようにしたい場合、生存

配偶者を先位相続人、子を後位相続人に指定する方法と、生存配偶者に対して住宅の用益権を遺贈する方法(Nießbrauchsvermächtnis)がある。

 

生存配偶者は、前者の場合には、先位相続人として§§2112-2115 の規定の範囲で当該遺産の処分権を有するが、後者の場合は、用益受遺者と

して、当該遺産の処分権は持たず、使用収益について債務法上の請求権のみを持つ一方、遺産債務については責任を負わずに済む。

 

租税に関しては、相続税及び贈与税法(Erbschaftsteuer- undSchenkungsteuergesetz(ErbStG と略記する))によれば、前者の場合は、先位相続人たる生存配偶者が完全な相続人として納税義務を負い(後位相続によって処分権が制限を受けることは考慮されない)、先位相続財産から相続税を支払わなければならない(ErbStG§6)。

 

後者の場合は、評価法(Bewertungsgesetz)の規定(§§13-14)に基づく用益権の資本価値を取得したものとして課税され、一括納税か定期納税かを選択することができる(ErbStG§23)。

 

 

番人

「用益受益者の場合は、誰が管理とか必要な処分とかするんだろ。管理者とか受託者とか所有者とかが別にいるのかな。それとも所有権は消えたってやつか。それとも最後の相続人が所有権を持つのかな。」

 

 

 

3 共同遺言(Das gemeinschaftliche Testament)

 

1 共同遺言とは

 

共同遺言とは、夫婦(および、同性パートナーシップ法に基づく同性カップル)が1 つの遺言書で共同でおこなう遺言であり、各自が一方的におこなう二つの死因処分からなる(§2265)。共同遺言を利用すれば、夫婦は、一方および他方の死亡後の自分たちの財産をめぐる法律関係について、生前に合意したとおりの内容を実現できる。

 

共同遺言は、契約ではなく遺言なので、§2265以下に別段の定めがない限りは遺言に関するすべての規定が適用される。しかし、共同遺言は、配偶者の一方の死亡後に、生存配偶者が共同遺言で定めた相関的処分に拘束されるという点(§2271Abs.2 など)では、相続契約と共通する。

 

番人

「共同遺言の形は日本なら家族信託で同じ形が作れるね。日本にあってもいいんじゃないかな。」

 

2 共同遺言の要件

 

共同遺言は、遺言の方式に従ってなされなければならない。自筆証書遺言の方式(前文の自書と署名。§2247)による場合は、夫婦の一方が自筆証書遺言の方式に従って遺言内容を自書したうえで署名したものに、他方が署名することで足りる(§2267)。

 

 

共同遺言は、夫婦双方の処分を含んでいなければならない。ある遺言が共同遺言であるためには、外形上同一の証書で作成されていることは要しないが、「共同で遺言をする意思」が遺言書に示されていることを要するとされている22。

 

 

3 共同遺言の内容:相関的処分について

 

単独の遺言でなしうるすべての遺言事項は、共同遺言でもすることができる。さらに、単独で遺言する場合と異なり、共同遺言では、相関的処分(die wechselbezügliche Verfügung)をすることができる(§§2270、2271)。相関的処分とは、夫婦の一方の処分が無効になったり撤回され

た場合は、他方の処分も無効になることを定めた処分である(§2271Abs.1)。

 

4 共同遺言の効力

 

共同遺言では、まず夫婦で互いを相続人に指定し、夫婦ともに死亡した後は、最終相続人として第三者(多くの場合は、夫婦の共通の子など)が遺産を取得する旨の処分が定められることがある。この場合、最終的に当該第三者が夫婦の遺産を承継することになるが、その法律構成については2 つの可能性がある(疑わしい場合には、後者のように解釈される。§2269Abs.1)23。

 

一つは、最初に死亡した配偶者の遺産については生存配偶者が先位相続人で、第三者が後位相続人であり、生存配偶者の遺産については第三者が相続人となるものである。

 

 

これによれば、第三者は、夫婦各自の遺産を、各自からそれぞれ相続することになる。もう一つは、生存配偶者のみが最初に死亡した配偶者の完全な相続人(Vollerbe)で、第三者(終わりの相続人:Schlußerbe)は生存配偶者の相続人である(いわゆる「ベルリン式遺言」)。

 

これによれば、第三者は、夫婦双方の遺産を、生存配偶者からまとめて相続することになる。なお、ベルリン式遺言は、税法上はあまり有利な処分とはいえない。なぜならば、第一の相続において、生存配偶者は完全な相続人として納税義務を負うが(ErbStG§6)、その取得遺産総額が、生存配偶者に認められる基礎控除額を超えうるからである(終わりの相続人(通常は子)の分の基礎控除額は考慮されない)。

 

番人

「夫婦で共同遺言を作る場合は、生存している配偶者が先の順位の相続人ということを記載しておく必要があるね。」

 

 

4 相続契約

 

1 相続契約とは

 

相続契約とは契約の形式をとってなされる死因処分であり、被相続人を拘束し、被相続人による一方的な変更ができない点で、自由な撤回が可能な遺言による処分とは異なる。共同遺言が夫婦間に限定されているのとは異なり、相続契約は、任意の者と締結することができる24。

 

相続契約は、公正証書でなされなければならない(§2276Abs.1Satz1)。

 

相続契約の当事者の一方は被相続人でなければならないが、その相手方は死因処分を行う必要はない25。相手方の役割は、被相続人のした表示を契約の形式で承諾することである。相続契約の相手方は、当該相続契約によって指定相続人や受遺者になる者である必要はない。

 

2 相続契約の内容

 

相続契約においてなしうる処分には、一方的な(単独行為による)死因処分(§2299)と契約による処分があるが、相続契約は、少なくとも一つ、契約による処分を含んでいなければならない。

 

相続契約でなされる処分のうち、契約による処分のみが拘束力を有する(§2278Abs.1)。被相続人は、相続契約をした場合でも、生存者間の法律行為により財産を自由に処分することができる(§2286)。被相続人が契約によって指定された相続人を害する意図で財産を他に贈与した場合には、契約による相続人は、受贈者に対して、贈与目的物の返還を求めることができる(§2287)。

 

 

被相続人が相続契約による受遺者を害する意図で、遺贈目的物を破壊等して遺贈の履行を不能にした場合は、受遺者は、相続開始時に、遺贈の価値の補償を求めることができる(§2288Abs.1)被相続人が相続契約による受遺者を害する意図で、遺贈目的物を売却等した場合は、相続人が目

的物を調達する義務を負う(§2288Abs.2Satz1)。

 

 

番人

「日本の死因贈与契約か、家族信託契約書を公正証書で作るってことか。」

 

(1) 契約による処分

 

死因処分のうち、契約によってすることができる処分は、相続人指定、遺贈及び負担のみである(§2278Abs.2)。これら以外の処分は、常に、一方的な死因処分である。(相続契約でなされた相続人指定、遺贈及び負担が、契約による拘束力に服する処分であるのかどうかは、契約当事者

の明示的な意思があればそれによる。当事者の意思が明確でない場合は、解釈による26。)契約による処分については、撤回できない。

 

番人

「日本の死因贈与契約よりは強いね。あとから違う遺言書いても契約の方が勝つんだ。相続契約の相手方が、相続人を決めることができるんだ。信託法の受益者指定権者みたいだな。妻がパートナーに、私が亡くなったあと子供3名のうち誰にあげるかは、あなたが決めてください、って約束をしておくんだろうか。」

 

 

相続契約中の契約による処分とは異なる死因処分は、相続契約の前になされていた場合には、相続契約による受遺者の権利を害するものであるかぎり、相続契約により、その効力を失わされる(§2289Abs.2Satz1)。

 

相続契約中の契約による処分とは異なる死因処分が相続契約の後になされた場合には、当該処分は、相続契約による受遺者の権利を害するものであるかぎり、無効である(§2289Abs.2Satz2)。

 

(2) 一方的な死因処分

 

相続契約の中の一方的な死因処分については、契約としての性質を持たず、遺言に関する規定適用されるので(§2299Abs.2Satz1)、たとえば、自由に撤回することもできる。

 

 

 

 

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