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相続に関する法律 ドイツ②
2015年12月27日

 

第1 部 ドイツ法

神戸大学 浦野由紀子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

3 法定相続人と法定相続分

 

法定相続人となるのは、血族(§1924)、配偶者(§1931)、生活パートナー(生活パートナーシップ法§10)、及び、国庫12(§1936)である。配偶者または生活パートナーは、血族と並んで法定相続人となる。

 

 

(1) 血族相続人と法定相続分

 

血族相続人については、被相続人ないしその親系(父母、祖父母、曽祖父母…)からそれぞれ生じた者ごとにグループ化して(Parentelsystem)、相続順位を定めている(下図13参照)。後順位グループの相続人は、先順位グループの法定相続人が存在しない場合14にはじめて、法定相続人となる(§1930)。

 

 

番人

「表はコピー出来なかったので省略させていただきました。」

 

第一順位は、被相続人の直系卑属(被相続人の子、孫、曾孫など)である(§1924)。直系卑属のうち、被相続人との関係で親等の近い者が相続人となる(§1924Abs.2)。相続人となるべき直系卑属が相続開始時にすでに死亡している場合、相続放棄した場合、相続欠格者となった場合は、その者の直系卑属が代襲相続する(§1924Abs.3)。

 

被相続人の子が複数いる場合、その相続分は均等である(§1924Abs.4)。被相続人の子の一人がすでに死亡しており、孫が代襲相続する場合は、子が受けるはずだった相続分を株分けする。

 

 

番人

「ドイツでは、日本と違って、子が相続放棄した場合でも、孫が相続することができるんだ。」

 

 

第二順位は、被相続人の父母及びその直系卑属(被相続人の兄弟姉妹、甥、姪など)である(§1925)。相続開始時に父母が生存している場合は、父母のみが均等に相続する(§1925Abs.2)。

 

 

相続開始時に父または母が死亡している場合は、その者の(最も近い親等の)直系卑属が代襲相続し(§1925Abs.2)、死亡した者が受けるはずだった相続分を受ける(直系卑属が複数いる場合は、死亡した者の受けるはずだった相続分を株分けする)。

 

相続開始時に父または母が死亡しており、かつ、その者に直系卑属がいない場合には、生存している他方のみが相続する(§1925Abs.3Satz2)。相続開始時に父母ともに死亡している場合は、それぞれの(最も近い親等の)直系卑属が代襲相続する。

 

 

第三順位は、被相続人の祖父母及びその直系卑属(被相続人のおじ・おば・いとこなど)である(§1926)。相続開始時に祖父母が生存している場合は、祖父母が均等に相続する(§1926Abs.2)。

 

 

相続開始時に、一組の祖父母について、祖父または祖母が死亡している場合は、死亡した者の(最も近い親等の)直系卑属が代襲相続する(§1926Abs.3 Satz1)。死亡した祖父母の一方に直系卑属がいないときは、他方が死亡者の相続分も受ける(他方も死亡している場合には、その直系卑属が、死亡した一方の相続分も受ける。§1926Abs.3)。

 

相続開始時に一組の祖父母について、双方ともに死亡し、かつ、これらの者の直系卑属もいないときは、もう一組の祖父母またはその直系卑属のみが相続する(§1926Abs.4)。

 

 

第四順位は、被相続人の曽祖父母及びその直系卑属である(§1928)。相続開始時に曽祖父母が生存している場合は、曽祖父母のみが相続する。その場合の相続分は、曽祖父母の系統を問わず、均等である。相続開始時に曽祖父母が一人もいない場合は、その直系卑属のうち、被相続人にもっとも近い親等の者が相続する(同一の親等の者が複数いれば、均等に相続する)。

 

なお、後述するように、第四順位以降の血族相続人は、被相続人の配偶者または同性パートナーがいる場合は、相続権がない(§1931Abs.2)。

 

 

第五順位以降は、被相続人の高祖父母以上の直系尊属及びその直系卑属である(§1929)。

 

(2) 配偶者相続人と法定相続分

 

被相続人の配偶者(または同性パートナーシップ法に基づく同性パートナー)は、常に法定相続人となる(§1931)。配偶者(または同性パートナー)の相続権の内容は、まず第何順位の血族相続人とともに相続するのか、および、被相続人と配偶者が婚姻中にどのような夫婦財産制に服していたのかによって定まる(§1931)。

 

 

(a) 一般原則

 

まず、配偶者の法定相続権は、第何順位の血族相続人とともに相続するのかによって、以下のように定められている。

 

①第一順位の血族相続人とともに相続する場合:法定相続分は、配偶者が4 分の1、血族相続人が4 分の3 である(§1931Abs.1)。

 

②第二順位の血族相続人とともに相続する場合:法定相続分は、配偶者が2 分の1、血族相続人が2 分の1 である(§1931Abs.1)。

 

③第三順位の血族相続人とともに相続する場合:第三順位の血族相続人として祖父母が相続する場合は、法定相続分は配偶者が2 分の1、祖父母が2 分の1 である。祖父母の直系卑属が相続人となる場合は、(§1926Abs.3 によれば)その直系卑属のものとなるべき相続分は、配偶者が取得する(§1931Abs.2 Satz2)。

 

④祖父母よりも親系の遠い血族とともに相続する場合:配偶者が全遺産を相続する(§1931Abs.2)。

 

 

番人

「配偶者、パートナーの権利が強いね。祖父母よりも遠い血族だと話しづらいもんね。」

 

 

(b) 付加利得共通制の場合の付加利得の調整:相続法上の解決

 

被相続人と生存配偶者が法定夫婦財産制15である付加利得共通制に服していた夫婦である場合には、夫婦の一方の死亡に際して、婚姻中の付加利得の調整が行われる。これは、相続法上、配偶者の法定相続分((a)参照)を4 分の1 増加させるという形でなされる(§1371Abs.1)。すなわち、付加利得共通制に服していた夫婦については、夫婦の一方が死亡した場合に、相続と夫婦財産の清算が一括して行われる。

 

なお、相続分を増加させるという形での清算は、被相続人が婚姻中に付加利得を実際に得たかどうかに関係なく、また、生存配偶者の得た付加利得の方が多い場合であっても、行われる16。

 

 

番人

「法律では原則として配偶者の相続分は4分の1か。付加利得共通制というものに入っていると約2分の1に変わるってことか。」

 

 

具体的には、(a)の①(第一順位の血族相続人とともに配偶者が相続する場合)において、配偶者の法定相続分は、4 分の1 増額されて、2 分の1 となる(したがって第一順位の血族相続人の相続分は2 分の1 となる)。

 

(a)の②(第二順位の血族相続人とともに相続する場合)において、配偶者の法定相続分は、4 分の1 増額されて、4 分の3 となる。

これに対して、生存配偶者が遺言や相続契約によって廃除され、遺贈も受けない場合には、相続において、上記のような付加利得の一括調整は行われない。この場合には、生存配偶者は、付加利得の調整のために、夫婦財産制に基づく付加利得調整請求権(§1373 以下)を有する。

 

 

この場合の付加利得の調整は、夫婦の婚姻中に実際に生じた付加利得の存否や額に基づいてなされる。

すなわち、各配偶者が婚姻中に取得した付加利得(婚姻終了時の財産額から婚姻開始時の財産額を控除した額)を確定し、被相続人の得た付加利得の額から生存配偶者の得た付加利得の額を引いた額の半額につき、生存配偶者は調整を求めることができる(§1378Abs.1)17。

 

生存配偶者の得た付加利得額のほうが多い場合は、付加利得調整請求権は生じない(この場合に、被相続人の相続人は、生存配偶者に対して付加利得調整請求権を持たない)。相続から排除された生存配偶者は、夫婦財産法上の付加利得調整請求権のほかに、相続人に対して遺留分を請求することができ

る。付加利得共通制に服していた夫婦の一方が死亡した場合における生存配偶者の遺留分については、後述第4 章 2 参照。

 

 

番人

「結婚してから増やした財産は、配偶者が自分で計算するのかな。ややこしそうだよ。」

 

 

 

(c) 夫婦が契約により財産共同制(Gütergemeinschaft)に服していた場合

 

 

夫婦財産契約により、夫婦が財産共同制(夫と妻の財産を合有財産とするもの)に服していた場合(§1416Abs.1)に、夫婦の一方が死亡すると、通常は財産共同制は終了する。遺産となるのは、被相続人の特別財産(Sondergut、§1417)と留保財産(Vorbehaltsgut、§1418)のほか、被相続人の合有財産についての被相続人の持分である(§1482Satz1)。生存配偶者の法定相続分は、§1931Abs.1、2(上述(a)に示した法定相続分)による。

 

 

相続開始後、合有財産は、(婚姻中からの持分を有する)生存配偶者と(被相続人の婚姻中の持分を相続した)相続人による合有共同体(Gesamthandsgemeinschaft)に帰属する。生存配偶者は、被相続人の相続人でもある場合には、二重の意味で合有財産について権利を有することになる。

合有財産を分割する際は、合有財産の債務を弁済した残余財産の半分が生存配偶者に帰属する(§1471Abs.1、§1476Abs.1)。

 

 

(d) 夫婦が契約により別産制(Gütertrennung)に服していた場合

 

夫婦財産契約によって夫婦が別産制に服していた場合は、付加利得の調整の必要性は生じないので、付加利得の調整のための相続分の増加に関する規定(§1371)は適用されない。この場合には、生存配偶者は、原則として、上述の(a)の(付加利得の調整のない)法定相続分を有するにとどまる。例外的に、生存配偶者とともに法定相続人となるのが被相続人の子1 人または2 人である場合は、生存配偶者と子らの法定相続分は均等とされる(§1931Abs.4)。

 

たとえば、生存配偶者が子1 人とともに相続する場合は、法定相続分は各2 分の1 となり、子2 人とともに相続する場合は、法定相続分は各3 分の1 となる。

 

付加利得共通制や財産共同制に服していた生存配偶者ならば、§1931Abs.1 の法定相続分に加えてさらに遺産を取得できる制度が用意されているが、

別産制に服していた生存配偶者にはそのような制度がない。そこで、§1931Abs.4 は、夫婦別産制に服していた夫婦についても、生存配偶者の相続法上の地位を高めることで、被相続人の財産取得に貢献した生存配偶者の無償労働を考慮しようとするものである18。

 

 

「非嫡出子の法的地位に関する法律」(1969 年)によって民法が改正され、非嫡出子の相続分が認められた際に、同時に、上記の§1931Abs.4 と、直系卑属が被相続人の財産の維持・増加に貢献した場合における相続分の調整請求権に関する規定(日本民法904 条の2 の「寄与分」に相当する制度。§2057a)が新設された。後者(§2057a)は、嫡出子を保護するためにその相続分を増加させる機能をもつものである。

 

 

前者(§1931Abs.4)の新設の背景としては、妻が夫の非嫡出子とともに相続することになった場合に、§1931Abs.1 によれば非嫡出子の方がより多額の取り分を与えられることになるのは不公正だと考えられたこと、および、§2057a による相続分の調整請求権が生存配偶者にはなく、直系卑属にしか認められないこととの関係で、バランスをとる必要があったことが挙げられる19。

 

 

もっとも、§1931Abs.4 の新設により、夫婦が付加利得共通制に服していた場合との違いが一部消え去ったことが問題点として指摘されている。たとえば、生存配偶者と子1 人が法定相続人であるケースでは、別産制に服していた場合に生存配偶者が取得する法定相続分(§1931Abs.4より、2 分の1)は、付加利得共通制に服していた場合に生存配偶者が取得する増加相続分(§1931Abs.1 により4 分の1、§1371Abs.1 により4 分の1 で、合計2 分の1)と同じになる。

 

 

しかし、本来は、清算を前提とする付加利得共通制に服していた生存配偶者のほうが、清算が問題にならない別産制に服していた生存配偶者よりも、多くの財産を承継すべきではないか、というのである20。

 

番人

「清算してから相続する形とそのまま相続する形があるのか。」

 

 

 

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