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相続に関する法律 アメリカ⑯(終)
2015年12月25日

 

第4 部 アメリカ法

横浜国立大学 常岡史子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

4 アメリカの相続税・贈与税制

 

1 遺産税

 

諸州の約半数は、何らかの種類の死亡税を遺産税か相続税(inheritance tax)又は両方の形で課している153。被相続人の遺産に課される遺産税とは対照的に、相続税は遺産の譲受人に課される。各州の相続税制は多様であるが、各相続受益者が支払う額は、通常、受領した財産の価額のみならず相続受益者と被相続人との関係に左右される。

 

たとえば、被相続人の子どもへの遺贈は、通常、甥や姪への遺贈よりも低いレートで課税される。

 

 

一方、連邦政府と数州は、被相続人の検認財産と非検認財産(その他の財産も対象となる場合がある)の総価額に基づいて遺産税(estate tax)を課す。これは被相続人の債務、被相続人の配偶者又は慈善事業への譲渡そして遺産の管理における多様な費用を控除することによって減額される。遺言執行者又は遺産管理人は、通常、最終的な分配をする前に遺産税を支払う。

 

その結果、相続人、受遺者、その他の遺産財産の譲受人は、少なくとも直接には遺産税を支払うことはない。

遺産税の方が遺産管理手続中での支払いであり簡易であると考えられているが、相続税の方がより公平な側面を有する。すなわち、相続税は各相続受益者が受領した額に基づいて課されており、被相続人に近い者ほど優遇されるからである。

 

 

 

連邦遺産税は、被相続人の所有していた財産の純価額に被相続人が実質的に支配していた財産の価額を加えたものの上に課される。そこでは、まず第一段階として、被相続人の総遺産(grossestate)の価額を算定する、これは内国歳入法典(IRC)の§2033 から§2044 で規定されている品目である。それによれば、総遺産とは、被相続人の検認財産に加えて特に、生存中の無償譲渡で被相続人が占有権を有していたか利益享受を支配していたもの(§2036)又は権利移転の変更、修正、撤回若しくは終了の権利を有していたもの(§2038)がこれであり、また、被相続人が一般的な指名権を有していた財産(§2041)も含まれる154。

 

 

 

IRC は、総遺産から一定の控除を許す。被相続人の債務やその他の遺産に対する請求権、被相続人の配偶者控除(婚姻控除)と慈善事業への譲渡(寄付控除)がそれである。

 

 

総遺産から控除を引いたものが、課税しうる遺産(taxable estate)である。遺産税を算定するために、調整された課税可能贈与(adjusted taxable gifts)(1976 年以後になされた課税可能な贈与)が、まず課税しうる遺産(taxable estate)に加えられる。

 

これら2 つの額の合計が、仮の遺産税基礎額であり、それに対して段階的税率が適用されて、仮の遺産税が算出される。それから、1976 年以後の課税可能贈与に対して以前に支払われた贈与税が、控除される。最後に様々なその他の請求権が引かれる。これには、その前10 年以内に別の被相続人の遺産に課税された前の譲渡に関する税金の与信や、外国の死亡税についての与信を含む。

 

しかし、最も重要な与信は、統合与信(unified credit)である。IRC は、「適用可能な除外額」という術語でこれを提起している。

 

 

 

アメリカ議会は、長らく財産の一定額を譲渡課税から免除してきた。1976 年に贈与税と遺産税が統合され、譲渡が生前のものであるか遺言によるものであるかにかかわらず、一定の閾値を超える累積的な無償譲渡に対して一つの税率表が適用されることとなり、免除額は1981 年までに600,000 ドルにまで上昇した。1998 年に議会は、2006 年に100 万ドルに達するまで段階的に免除額を上げていくという修正を施行した。

 

しかしながら、2001 年には、免除をより急速に上昇させることを認め、贈与税免除額と遺産税免除額を再び分離させた。2001 年法のもとで、贈与税免除額は100 万ドルのままであったが、遺産税免除額は2003 年は100 万ドル、2004 年と2005 年は150万ドル、2006 年から2008 年は200 万ドル、2009 年は350 万ドルに上昇し、2010 年に限っては遺産税が廃止された。2011 年以降、再度連邦遺産税が課されているが、2013 年の免除額は525 万ドル、2014 年は534 万ドルとなっている155。

 

 

ポリー

「税金は細かく変わってきているのですね。対応する人々も税務署も大変そうですね。」

 

 

2 婚姻控除

 

1982 年より前は、遺産税における婚姻控除の主たる目的は、別産制州に住む夫婦と共有財産制州に住む夫婦について税金上の扱いを平等にすることにあった156。しかし、1982 年に、連邦遺産税の婚姻控除は、贈与者たる配偶者が受贈者たる配偶者に少なくともその財産における生涯不動産権を与える場合には、配偶者間の贈与はまったく課税の対象にならないとする新たな方針をとるに至った。

 

 

それにより、婚姻控除はその額において無制限のものとなり、現行法では、婚姻控除のためには、贈与者たる配偶者が譲渡税を回避してその生存配偶者に生涯の扶養を与えるため信託を創設することだけでよいということになる(QTIP 信託)。

 

 

その背景には、夫婦は一つの経済的単位であるという考え方がある。財産上の利益が婚姻控除を受けるためには、(a)被相続人に生存配偶者がいること、(b)当該生存配偶者が合衆国の市民権を有するか又は当該財産が適格国内信託(qualified dimestic trust:QDOT)に移転されていること157、(c)控除される権利の価値が、被相続人の総遺産に含まれるものであること、(d)当該権利が被相続人から生存配偶者に移転したこと、(e)当該権利がIRC§2056(b)の意味における「控除されない有期の権利」でないことが、要件となる158。

 

そのため、国際結婚の夫婦について生存配偶者が合衆国の市民権を有さない場合には、QDOT がエステイトプランニングにおいて大きな意味を持っている159。

 

ポリー

「夫婦は一つの経済的な単位ですか。自分から自分へあげるから、税金はないという考えですね。」

 

 

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