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相続に関する法律 アメリカ⑫
2015年12月25日

 

第4 部 アメリカ法

横浜国立大学 常岡史子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

第4 章 諸州の相続制度

 

ほぼすべての州法はUPC に何らか影響や示唆を受けていると言われている138。そのなかで、(1) 独自の修正を伴いつつもUPC 全部を施行する州として、アラスカ、アリゾナ、コロラド、フロリダ、ハワイ、アイダホ、メイン、マサチューセッツ、ミシガン、ミネソタ、モンタナ、ネブラスカ、ニュージャージー、ニューメキシコ、ノースダコタ、サウスカロライナ、サウスダコタ、ユタが上げられる。

 

(2) (1)以外のほぼすべての州は、UPC の一部を施行する。特に、UPC 第2 編(無遺言相続、遺言、贈与的移転)の導入が多くみられる(カリフォルニア等)。(3) 自州の州法の非UPC 規定の解釈に際して、裁判所がより現代的な検認・遺産管理等のモデルとしてUPC に言及する場合がある139。

 

 

 

(4) コモンローのための適切な解釈ルールを決めるための二次的あるいは説得的権威として言及される場合がある140。

以下では、ニューヨークとカリフォルニアを中心に、州の検認法を概観する。

 

1 ニューヨーク州

 

1 遺言、支配権及び信託に関する法律(Estates, Powers & Trusts(EPT))

 

ニューヨークは、New York Consolidated Laws に“Estates, Powers & Trusts(EPT)”として、第1 編から第14 編までを置く。第1 編「総則」、第2 編「本法に従う処分を規定するルール」、第3 編「遺言実体法」、第4 編「親族及び無遺言遺産の分配」、第5 編「家族の権利」、第6 編「遺産

の分類、創設、定義及び遺産を規定するルール」、第7 編「信託」、第8 編「公益信託」、第9 編「永久拘束と収益積立」、第10 編「支配権」、第11 編「信認義務:支配権、義務及び制限;人格代表者又は個人の資格における行為」、第11-A 編「統一元本及び収益法典 、第12 編「遺産相続人及

び遺言受益者に対する債権者及びその他の者の行為」、第13 編「遺産に影響を与えるその他の規定」、第14 編「廃止;他の諸法との関連一覧表;発効日」という構成である。

 

そのうち第2 編から第5 編が無遺言相続及び遺言に関する主要諸規定である。

 

 

 

2 相続人と相続分

 

無遺言相続における相続人及び相続分については、EPT§ 4-1.1 が規定する141。同条によれば、①配偶者と直系卑属がいる場合には、配偶者が50,000 ドルと残余遺産の2 分の1 を、直系卑属が残高を取得する(直系卑属については代襲相続あり142)。

 

②配偶者がいて直系卑属がいない場合には、配偶者が全無遺言遺産を取得する。③配偶者がおらず直系卑属がいるときは、全無遺言遺産を直系卑属が取得する(代襲相続あり)。④配偶者直系卑属もおらず、被相続人の親がいるときは、親が全無遺言遺産を取得する。

 

⑤配偶者、直系卑属、親がいない場合において、被相続人の親の直系卑属がいるときは、親の直系卑属が全無遺言遺産を取得する(代襲相続あり)。⑥配偶者、直系卑属、親、親の直系卑属がいない場合において、被相続人の祖父母がいるときは、父方の祖父母が2 分の1 を取得する。父方の祖父母がいないときは、その直系卑属がこの2 分の1 を取得する(代襲相続あり)。

 

他の2 分の1 は、母方の祖父母が取得する。母方の祖父母がいないときは、その直系卑属がこの2 分の1 を取得する(代襲相続あり)。父方又は母方の一方の祖父母がおらずかつその祖父母の直系卑属もいない場合には、他方の祖父母が全無遺言遺産を取得する。

 

他方の祖父母もいない場合には、その直系卑属が全無遺言遺産を取得する(代襲相続あり)。本号において、祖父母の直系卑属にはその祖父母の孫より遠い卑属を含まない。➆配偶者、直系卑属、親、親の直系卑属、祖父母、祖父母の子又は孫がおらず、祖父母のひ孫がいる場合には、2 分の1 を

父方の祖父母のひ孫が頭割りで、他の2 分の1 を母方の祖父母のひ孫が頭割りで取得する。

 

父方又は母方の一方の祖父母のひ孫がいない場合、他方の祖父母のひ孫が全無遺言遺産を取得する(EPT4-1.1(a))。

 

 

 

なお、無遺言相続において半血の親族と全血の親族は区別されず、同様に扱われる(同条(b)項)。また、胎児の相続権も認められている(同条(c)項。生きて出生することを条件とする)。

 

婚外子については、母との関係では母の嫡出子となる(EPT§ 4-1.2(a)(1))。それに対して、父との関係では、(A)父の生存中に裁判所が父子関係を宣言する命令をなすかもしくは、子の出生証明書が届け出られた地区の登録官に提出された認知届を、子の父母が完成させた場合、(B)父が証人の前で子を認知する証書に署名し、当該証書が60 日以内に州の社会福祉事務所に登録のために届出られ、同事務所が7 日以内に届出があったことを子の母もしくは後見人に書留で通知した場合、又は(C)父であることが明白かつ確信を抱くに足る証拠(たとえば、遺伝標識テスト(geneticmarker test)や父が自分の子であると公に認めかつ周知させていること)によって証明された場合に、婚外子は父の嫡出子となる(EPT§ 4-1.2(a)(2))。

 

 

養子は、原則として養親との間でのみ無遺言相続関係が生じる。ただし、継親の養子となる場合又は、生物学上の親の祖父母もしくは祖父母の直系卑属の養子となる場合には、実方の親族との無遺言相続関係も失わない(ただしこれは、1987 年8 月31 日より後に死亡した被相続人の遺産に適用される。New York Code Domestic Relations §117)。

 

 

 

3 生存配偶者と子の保護

 

ニューヨークは別産制を原則とする。生存配偶者や子の保護に関しては、選択的相続分や免除財産、遺言作成後に婚姻した配偶者や出生した子に関する諸規定が置かれている。

 

生存配偶者の選択的相続分については、1930 年8 月31 日より後でかつ1966 年9 月1 日より前に作成された遺言につき、被相続人の直系卑属がいる場合には配偶者の選択的相続分は純遺産(債務、管理費用、相当な葬儀費用を控除したもの。ただし遺産税は控除しない。)の3 分の1、その他の場合は2 分の1 とされている (ETP§5-1.1(a)(1)(A)) 。

 

ただし、被相続人が1992 年9 月1 日以降に死亡した場合については別途規定があり、生存配偶者の選択的相続分は、①50,000 ドルかもしくは純遺

産の元本価額が50,000 ドルより少ない場合にはその元本価額、又は②純遺産の3 分の1 の①か②かいずれか大きい方とされている(ETP§5-1.1-A(2))。

 

免除財産は、ETP§5-3.1 に規定があり、生存配偶者又は生存配偶者がいないか相続権を失った場合には21 歳未満の子が、財産の種類ごとに総額一定金額まで(たとえば、台所道具、楽器、ミシン、宝石、衣服、家具電気製品等については20,000 ドルまで等)取得できるとしている。

 

 

 

4 遺言と家族関係の変動

 

なお、被相続人が遺言を作成した後に婚姻した生存配偶者について、書面による婚姻前契約で当該生存配偶者のために財産を与える旨の取決めがなされなかった場合には、当該生存配偶者は被相続人が無遺言で死亡した場合に取得するのと同じ無遺言相続分を取得する権利を有すると定める(§5-1.3(a))。また、被相続人が遺言を作成した後に生まれた子についても、被相続人の遺産の一定割合を取得する権利が認められている(ETP§5-3.2)。

 

一方、遺言者が、その配偶者に財産を与え又はこの者を遺言執行者や信託の受託者に指名する遺言を作成した後に、その配偶者との婚姻が離婚や婚姻の無効・取消等により解消された場合、遺言で明白に異なる定めをしない限り、そのような処分や指名は法律上撤回される(ETP§5-1.4)。

 

 

2 カリフォルニア州

 

1 カリフォルニア検認法典(California Probate Code)

 

カリフォルニアは、California Probate Code として第1 編から第11 編まで21700 条からなる遺産の検認手続に関する大部な法律を置く。各編は、第1 編「前置規定及び定義」第2 編「総則」、第3 編「手続」、第4 編「後見、財産管理その他の保護手続」、第4.5 編「委任状」、第4.7 編「健

康管理決定」、第5 編「非検認譲渡」、第6 編「遺言及び無遺言相続」、第7 編「遺産管理手続」、第8 編「遺産管理手続を経ない遺産の分配」、第9 編「信託法」、第10 編「遺産税」、第11 編「遺言、信託その他の証書の解釈」から構成されている。

 

 

 

 

2 共有財産の清算

 

その特徴は、まず共有財産制州であることから来る夫婦の一方の死亡時における共有財産の帰趨にある。第2 編第1 章が「共有財産及び準共有財産に関する一方配偶者の死亡の効果」として規定する。それによれば、夫婦の一方が死亡した場合、共有財産・準共有財産の2 分の1 は生存配偶者の帰属し、他の2 分の1 は被相続人に帰属する(§100(a),§101(a))。

 

ただし、夫婦が、共有財産・準共有財産の総額を按分ではない割合で分割することや、個々の物や資産ごとに分割すること等を書面で合意した場合には、それによることができる(§100(b),§101(b))。

 

 

3 相続人と相続分

 

相続受益者(無遺言相続人及び遺言による受遺者)への遺産の分配については、第2 編第6 章に規定がある。無遺言相続に関しては、共有財産につき、上述のように§100、§101 により、特段の合意がない場合、生存配偶者が被相続人に帰属する共有財産・準共有財産の2 分の1 の無遺言相続分を取得する(§6401(a)(b))。

 

 

 

一方、特有財産については、カリフォルニアは広範な無遺言相続人の範囲を定める。すなわち、6401(c)によれば、生存配偶者(又は生存ドメスティックパートナー)は、①被相続人に直系卑属、親、兄弟姉妹又は兄弟姉妹の直系卑属がいない場合、全無遺言遺産を取得する。

 

②(A)被相続人に子が1 人(又はその代襲相続人)のみいる場合、(B)被相続人に直系卑属がいないが親又は親の直系卑属もしくはそのいずれかの直系卑属がいる場合には、生存配偶者は無遺言遺産の2 分の1 を取得する。③(A)被相続人に2 人以上の子がいる場合、(B)被相続人に1 人の子と1 人又は複

数の死亡した子の直系卑属がいる場合、(C)被相続人に2 人以上の死亡した子の直系卑属がいる場合には、生存配偶者は無遺言遺産の3 分の1 を取得する。

 

 

 

そして、これらの場合において、被相続人の直系卑属は、被相続人に対して同じ親等である場合には相続分を均分して取得し、より親等の離れた者がいる場合には、§240 に規定する方法で取得する(§6402(a))。直系卑属がいない場合には、被相続人の親が均等に取得する(§6420(b))。

 

 

 

直系卑属も親もいない場合には、親の直系卑属が、もし被相続人に対して同じ親等であるならば、均等に取得する。しかし、より離れた親等の直系卑属がいる場合には、この者は§240 条で規定する方法で取得する(§6402(c))。配偶者、直系卑属、親又は親の直系卑属がいないが、祖父母

又は祖父母の直系卑属がいる場合、祖父母は均等に取得し、祖父母がいない場合には祖父母の直系卑属が、被相続人に対して同じ親等であれば均分して取得する。

 

ただし、これらの者の中により遠い親等の者がいるときは、§240 条に規定する方法で取得する(§6420 条(d))。配偶者、直系卑属、親、親の直系卑属、祖父母、祖父母の直系卑属がいない場合、先に死亡した配偶者の直系卑属がいるときは、この直系卑属が、先に死亡した配偶者に対して同じ親等である場合には、均分して取得する。

 

ただし、これらの者の中により遠い親等の者がいるときは、§240 に規定する方法で取得する(§6402(e))。

 

 

 

 

配偶者、直系卑属、親、親の直系卑属、祖父母、祖父母の直系尊属、又は先に死亡した配偶者の直系卑属がいない場合、他の近親者がいるときはこの者が均等に取得する。ただし、異なる祖先を持つ2 人以上の同親等の傍系親族がいる場合、最も近い祖先を持つ傍系親族がより遠い祖先を持つ傍系親族よりも優先する(§6402(f))。

 

近親者も先に死亡した配偶者の直系卑属もいないが、先に死亡した配偶者の親又はそのような親の直系卑属がいる場合には、親が均分して取得し、親がいないときはその直系卑属が、先に死亡した配偶者に対して同親等である場合には均分して取得する。ただし、より遠い親等の直系卑属がいるときは、§240条に規定する方法に従って取得する(§6402(g))。

 

さらに、§6402.5 には、不動産、動産につきそれぞれ無遺言相続人の範囲につき特則がおかれている。このような詳細な諸規定の背景には、

相続人の不存在により被相続人の遺産が州に帰属するのを回避しようとの意図が見られる(§6402.5(a)(5),(b)(5))。

 

 

 

なお、代襲相続に関する§240 は、無遺言遺産は被相続人と最も近い直系卑属の世代において生存している卑属につき等しい相続分で分割され、当該世代で死亡している者に直系卑属がいるときは、その最も近い卑属の世代の者が各一相続分を取得し、さらにその世代の中で死亡している者に直系卑属がいるときは、この死亡した者の相続分はその直系卑属の間で同法の方法で分割されると定める。

 

また、無遺言相続人らについて半血か全血かは原則として区別されない(§6406)143。胎児の相続権も生きて出生したことを条件として認められている(§6407)。婚外子も嫡出子と区別はされていない。§6450(a)は、無遺言相続において父母の婚姻の有無は子の生物学上の親との親子関係の存在に影響を与えないと規定する。

 

 

 

養子については、無遺言相続に関して養親との親子関係の存在が認められ(§6450(b))、生物学上の親との親子関係は断絶する(§6451(a))。ただし、継親の養子となる場合には、生物学上の親との相続関係は切れないとされている(§6451(a)(1)(2))。

 

また、正式に養子の手続をしていない子についても、継親又は里親との間の関係が子が未成年の時に開始し、その関係が継続していて、かつもし法的に可能であればこれらの親が正式に養子としたであろうということを養子の側で証明するときには、そのような継親、里親との間に無遺言相続権が認められる場合がある(§6454)。

 

4 生存配偶者と子の保護

 

カリフォルニアでは、寡婦産及びかん夫産は原則として認められていない(§6412)。しかし、家産手当や免除財産については、§6500 に規定がある。それによれば、財産目録が提出されてから60日間が経過するまで又は裁判所が申立に基づき十分な理由により命じた期間が経過するまで、存配偶者及び未成年の子は家族住居、家族の衣類、家具その他の被相続人の財産を占有する権原を有し、これらは金銭判決の執行を免れる。

 

 

また、財産目録が提出され遺産管理が継続している間、裁判所は申立により、その裁量をもって、家族住居を除いて、金銭判決の執行を免除された被相続人の財産の全部又は一部を生存配偶者ないし被相続人の未成年の子に与えることができる(§6510)。

 

家産手当については、同じく財産目録が提出され遺産管理が継続している間、裁判所は申立により、その裁量をもって一検認家産を選び144、生存配偶者ないし被相続人の未成年の子の使用に供することができる(§§6520, 6521)。ただしこの使用は無期限であってはならず、生存配偶者の生存中又は未成年子の成人到達を超えてはならない(§6524)。

 

 

 

家族手当についても§6540 以下に規定が置かれている。そこでは、遺産管理手続中において、諸事情を考慮し、生存配偶者、被相続人の未成年子又は、被相続人の成年子で身体的、精神的障害により生活費を稼ぐことができず被相続人の扶養を受けていた者に、必要な扶養料を得る権利を認める(§6540(a))。また、それ以外の成年子や被相続人の親についても、裁判所が裁量によって相応の家族手当を認めることができる(§6540(b))。家族手当の給付は、遺産の最終的な分配命令がなされるまで又は、遺産が支払い不能の場合には遺産管理状の発行から1 年以内に限られる(§6543(a))。

 

なお、非相続人の遺言から除外された配偶者(§§21600-21601)や子の保護(§§21620-21623))については、第11 編第6 章に規定が置かれている。それによれば、被相続人の遺言等作成後に婚姻した配偶者は、被相続人に帰属する共有財産・準共有財産の2 分の1(§§100, 101)、被相続

人の特有財産については、被相続人が遺言等をせずに死亡した場合に取得したであろう配偶者相続分(ただし特有財産の価額の2 分の1 を超えてはならない)を取得する(§21610)。

 

また、遺言者の遺言作成後に離婚、取消によって婚姻が解消された場合には、当該遺言で異なる定めが明白になされていない限り、前配偶者のためになされた財産処分や信託受託者への指名等は撤回されたものとなる(§6122)。

 

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