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相続に関する法律 アメリカ⑩
2015年12月25日

 

第4 部 アメリカ法

横浜国立大学 常岡史子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

 

4 遺産管理・検認手続

 

1 検認手続の開始

 

ある者が死亡し検認が必要となる場合、まず最初に被相続人の事務を行う人格代表者(personalrepresentative)の選任がなされる。UPC§3-102 は、財産の移転や遺言執行者の指名が有効となるためには、遺言は補助裁判官(registrar)による非公式の検認命令又は裁判所による検認裁判によって有効であると宣言されなければならないと規定する。

 

また、UPC§3-103 は、ある者が被相続人の人格代表者の権原を取得し、義務と責任を引き受けるためには、裁判所又は補助裁判官(registrar)によって選任され、資格を付与され、遺産管理状を発行されなければならないとし、また、遺産の管理は遺産管理状の発行によって開始すると定める。すなわち、検認を行うとは、検認裁判所の監督のもとで遺産の管理をなすことを意味する。

 

検認手続の主要な機能は、(a)新所有者に権原(title)移転の証拠を与える(権原を明らかにし、新所有者による当該財産の取引を可能とする)、(b)被相続人の債務支払いのための手続を調えることにより債権者を保護する、(c)被相続人の債権者への弁済の後、遺産を取得すべき者に被相続人の財産を分配することにある116。

 

したがって、遺言によって指名され又は裁判所若しくは補助裁判官によって選任された人格代表者は、信認義務を負い(fiduciary)、遺産の目録を作成

して被相続人の財産を収集する。また、被相続人の遺産管理が継続する間、諸財産を管理し、被相続人の債権者への弁済や納税の処理をする。それらがなされた後、人格代表者は、遺産取得の権原を有する者に遺産を分配する。

 

2 人格代表者(personal representative:遺産管理人(administrator)又は遺言執行者(executor))の選任

 

被相続人が遺言を残して死亡した場合において、遺言の中で遺言を執行し検認財産を管理する人格代表者が指定されているときは、その者は通常、遺言執行者(executor)と呼ばれる。遺言が執行者を指定していない場合や、指定された執行者が役割を果たすことができないか果たす意思がない場合、又は被相続人が無遺言で死亡した場合には、裁判所が人格代表者を指定し、この者は一般に遺産管理人(administrator)と呼ばれる。

 

管理人は、通常は優先順位を付された者たちの法定のリストから選ばれる117。典型的には、生存配偶者、子供、親、その他の親族、受遺者、債権者らである(UPC§3-203)。

 

3 正式検認(formal probate)と略式検認(informal probate)

 

UPC は通知検認(notice probate)と一方の申立による検認(ex parte probate)の二つを規定する。前者は、厳格方式の検認(probate in solemn form)というよりも正式検認(formal probate)、後者は普通方式の検認(probate in common form)というよりも略式検認((informal probate)と呼

ばれる。いずれによるかは、遺言執行状又は遺産管理状を請求する者が選択することができる。

 

ただし、正式検認であろうと略式検認であろうと、被相続人の死亡から3 年以内に開始されなければならない(UPC§3-108(1990))。

 

正式検認は、UPC によれば利害関係のある当事者への通知後に裁判所に申し立てられる司法上の決定である(§3-401)。この正規の手続は、遺言を検認するため、略式検認手続を阻止するため又は無遺言相続であることの宣言的判決(declaratory judgement of intestacy)を担保するために用いられる。正式検認は、控訴されなければそれが終局判決となる。

 

一方、略式検認は、遺言執行者や遺産管理人が典型的には信頼された家族の一員であり、受益者も家族の誰かであるという場合によく機能する。そのような場合には、遺言や遺産の管理に異論がないのであれば、時間や費用のかかる正式検認による必要はない。UPC は、略式検認を標準とするが、利害関係を有する者は遺産管理中いつでも正式検認の申立を提出することができる(UPC3-502)。

 

UPC§3-301 は略式検認の要件を定めるが、そこでは何人に対する通知も要せず、人格代表者の指名を求める申立ができる。略式検認の申立が遺言の検認のためである場合には、遺言書の現物を添えなければならない。遺言執行者は、その最善の認識をもって(to the best of his knowledge)、

遺言が有効に執行されたことを宣誓することでよく、証人による証明は要求されていない。

 

要件を満たす署名がなされていると見られ、遺言執行の諸要件に合致したことを示す認証条項(attestation clause)を含む遺言は、さらなる証明を要せずに補助裁判官によって検認される(UPC§3-303)。人格代表者は、指名後30 日以内に、遺言によって明らかに相続から排除されている相続人を含め、すべての利害関係人に通知する義務を負う(UPC§3-705)。

 

 

 

4 裁判所による遺産管理の監督

 

正式検認では、裁判所は遺産を管理する人格代表者の活動を監督する。この監督は、時間と費用がかかるものとなっている。裁判所は、遺産の財産目録と価額評定、債務の弁済、家族手当(familyallowance)、不動産に関するオプションの許可、不動産の売却、資金の借入れと遺産財産への抵当権設定、遺産財産の賃貸、連邦遺産税額、人格代表者の手数料、弁護士費用、仮の分配と最終的な分配、そして人格代表者の解任等について、承認を与えなければならないとされている118。

 

 

略式検認では、人格代表者に指名された後、この者は裁判所の厳格な監督を受けることを要せずに遺産を管理する。人格代表者は、遺産を処理するにあたり広範な受託者(trustee)の権限を有する。遺産を収集すること、各財産の権原(title)を明らかにすること、遺産の売却、他の資産への投資、債権者への弁済、被相続人の事業の継続、残った遺産の分配について、人格代表者は裁判所の承認なしに行うことができる(UPC§3-715)。

 

人格代表者が、債権者に通知を発し、遺産を管理し、すべての請求を弁済し、判明しているすべての無遺言相続権者、債権者その他の権利者に計算書を送ったという宣誓付供述を提出することによって、遺産管理は終結する(UPC§3-1003)。

 

 

ポリー

「住宅ローンを組んでいた場合は、どうなるんでしょうか。払えるお金があれば、人格代表者が代わりに払うんですかね。そして担保も消すのでしょうか。」

 

 

5 被相続人の債権者の請求

 

諸州法は、債権者らに具体的な期間内にその訴訟上の請求を提出するよう求める規定を置き、その期間経過後に提出された請求は認めない旨を定める。これは、非請求法(nonclaim statute)と呼ばれている。それには2 種類あり、(a)検認手続開始後、短期間内において提出されなかった請求を阻止するもの(UPC§3-801(a)は4 か月)と、(b)検認手続が開始されようと否と、被相続人の死亡後比較的長期間内において提出されなかった請求を阻止するもの(UPC§3-803(a)(1)は1 年)である。

 

(a)については、通常、債権者らは検認手続が開始されてから新聞公告等によって請求提出の要件を通知されたものとされるが、この点に関して、連邦最高裁判所は、デュープロセス条項(Due Process Clause)に従い、検認手続の開始から起算される短期出訴期限規定によって債権者らの訴訟上の請求が阻止される前に、判明しているか又は合理的に確認できる債権者は現実の通知を受領することを要すると判示している119。

 

 

 

6 遺産管理の終結

 

UPC§3-1001 によれば、正式検認手続の終結に関し、人格代表者又は利害関係人は遺産の完全な終結命令を求める申立をすることができる。ただし、人格代表者はいつでもこの申立ができるが、その他の利害関係人は、原則として最初の人格代表者が選任されてから1 年経過した後にのみ申し立てることができる。

 

略式検認の場合には、遺産を管理する人格代表者又は受遺者は、遺産の終結命令を求める申立をすることができる。ただし、これは被相続人の遺言者の地位に関する終局判決とはならない。

 

人格代表者はいつでもこの終結命令の申立ができるが、受遺者は、原則として最初の人格代表者が選任されてから1 年経過した後にのみ申し立てることができる(UPC§3-1002)。

 

さらに、人格代表者は、裁判所の命令によって禁止されていない場合には、裁判所の監督管理手続において管理されている遺産を除いて、最初の総人格代表者(general personalrepresentative)の選任の日から6 か月を経過した後、裁判所への申立により遺産手続を終結させることができる(UPC§3-1003)。

 

 

 

なお、遺産の額が少額である場合、無遺言相続人らは検認手続を回避することが許される。これに関しUPC は、被相続人の承継人であると主張する者は、人格代表者の選任なしに、被相続人の承継人である旨の宣誓供述書のみで遺産財産の収集を行うことができるとし、その宣誓供述書には、(1)物的担保や負担を控除した遺産の価額が25,000 ドルを超えないこと、(2)被相続人の死亡後30 日が経過していること、(3)人格代表者の指名の申立てが係属中ないし指名済みでないこと、(4)権利を主張している承継人が財産の支払い又は引渡しの権原を有していることが記載されていなければならない旨を定める(UPC§3-1201(a))。

 

また、UPC は、少額遺産のための略式管理手続(summary administration for small estates)を認め、全遺産の価額が、物的担保や負担を控除して、家産手当(homestead allowance)、免除財産(exempt property)、家族手当(familyallowance)、遺産管理費用、相当な葬儀費用及び、被相続人の最後の疾病に関する相当で必要な医療費を超えないことが財産目録と価額評定から明らかである場合には、人格代表者は、債権者に通知を与えることなしに、即座に権利者らに遺産を分配し、宣誓付供述によって遺産手続を終結させることができるとしている(UPC§§3-1203,3-1204)。

 

 

ポリー

「25,000ドルは、約300万円です。その時は、手続が早く終わるんですね。」

 

 

検認費用の高額さということがしばしば指摘されているが、そこには検認裁判所の手数料、人格代表者の報酬、弁護士費用、鑑定人や訴訟のための後見人(guardian ad litem)の費用等が含まれる。裁判所の手数料は通常、州ごとに定められている120。

 

人格代表者の報酬は法律で決められている場合もあるが、裁判所が諸事情を考慮して決定するとされていることも少なくない。UPCも、人格代表者はその役務に対して相当な報酬(reasonable compensation)を得る権利を有すると規定するにとどまり(§3-719)、必要に応じてその報酬額等につき裁判所の調査を受ける(§3-721)。

 

 

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