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相続に関する法律 アメリカ⑦
2015年12月25日

 

第4 部 アメリカ法

横浜国立大学 常岡史子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

すみれ

「ここは怖いから解説やめよ。」

 

 

3 相続障害(bars to succession)

 

(1) 被相続人の殺害

 

諸州法は、被相続人を殺害した者に遺言や無遺言相続による遺産の取得権を認めないとする規定を置くが、その具体的内容は多様である。そこではたとえば、そのような法律が、遺言や無遺言相続と同様に、非検認の財産移転(合有財産権、生命保険、年金等)の場合にも適用されるかという問題がある。

 

もし適用されないのであれば、裁判所は擬制信託(constructive trust)の設定等により殺害者が遺産から利益を得ることを防ぐ方途を講じる必要が生じよう70。州法には、殺害者が無遺言遺産、遺贈、生命保険金等を取得することはできないとしつつ、その他の形態の財産取得を認めるものもある71。この点につき、UPC§2-803(1990. rev.1997)は、被相続人を殺害した者について、検認財産のみならず非検認財産の承継も阻止する。

 

そこでは、殺害者は選択的相続分(elective share)や家族手当(family allowance)、家産手当(homestead allowance)も取得できないとする。UPC はまた、同条に該当しない殺害者の不法行為によって獲得された財産や権利についても、「殺害者はその不法行為によって利益を得ることはできない」という衡平上の原理と一致するように扱わなければならない旨の規定を置く(UPC§2-803(f))。

 

 

殺害者が遺産の取得を阻止される場合、誰が取得するか。諸州法の一般的な扱いは、殺害者が殺害された被相続人よりも先に死亡したと擬制する。UPC では、UPC§2-803(b)が、殺害者が無遺言相続分を放棄したと同様に扱われると規定する。

 

そこで、UPC§2-1106(2002. rev.2006)の放棄に関する規定によれば、放棄者は「分配時(time of distribution)の直前に死亡した」と擬制

される。「分配時の直前」とは、放棄者に遺産中の財産の権利が帰属したであろう時を指すとされ、これはすなわち遺言や無遺言相続の場合には被相続人の死亡時を意味する(後述第2 章24)72。

 

それゆえ、殺害者が殺害された被相続人より前に死亡したと扱われるならば、次に、裁判所は殺害者の直系卑属やその他の相続人の代襲や代替贈与を認めるべきかという問題が生じる。この点については、州によって解決が異なっており、カリフォルニア(California Probate Code§§250-259)

やロードアイランド(State of Rhode Island General Laws§ 33-1.1-2)は、州法によって殺害者の直系卑属による取得を阻止する。そのような法律を有さない他の州では、判例法により、殺害者の直系卑属の権利を制限するかどうか事例に応じて判断がなされている。

 

 

なお、UPC§2-803(g)は、重罪または故意の殺害についての最終的な刑事上の有罪判決があることが、本条の意味における殺害者であることを結論として証明すると規定する。しかしながら、刑事裁判における無罪評決は、殺害者として無罪を表明された当該個人の地位を決定するものではない。有罪判決がない場合、裁判所は、証拠の優越の原則のもとで(合理的疑いの余地なくという刑事法の基準ではない)、その者が殺害について刑事的に責任を問われるであろうかどうかにつき決定しなければならない。

 

裁判所がそのように考えた場合には、その者は遺産の取得を阻止される。

民事証拠基準を用いる理由は、検認法は殺害者がその不法行為から利益を得ることを懸念し、他方、刑事法は被訴追者の保護を念頭に置くという相違にある。したがって、殺害者が自殺した場合にも、殺害者の遺産取得は同条のもとで阻止されると考えられている73。

 

(2) 被相続人の遺棄・虐待等

 

アメリカでは、遺産の取得を阻止される行為は、通常、被相続人の殺害に限られるが、それ以外に親族関係や婚姻、養子等身分関係に基づく相続障害のルールがある。たとえば、州によっては、被相続人を遺棄した配偶者や、子の扶養を拒否した親が、それぞれ遺棄された配偶者や子の遺産を取得することを認めていない。たとえば、カリフォルニア(California probateCode§§250-259)やイリノイ(Illinois 755 ILCS 5/2-6.2)などでは、相続人によって虐待された子又は高齢の親族からの相続を否定する法律を置く。

 

UPC§2-114(2008)は、州法のもとで、親権が非扶養、遺棄、虐待、ネグレクト等のために剥奪されたであろう親は、子から相続できないと規定す

る。

 

 

すみれ

「ポリー、お願いします。」

 

 

4 相続放棄(disclaimer)

 

相続人や受遺者は被相続人の財産の取得を放棄することができる。放棄につき、伝統的には相続人についてはrenounces、受遺者についてはdisclaims という語が用いられてきたが、現在では、双方についてdisclaimer の語が用いられるのが一般的となっている(UPC§2-1102 以下)。

 

放棄は、被相続人死亡後のエステイトプランニングとして用いられることがあり、その目的は節税や債権者に対し遺産を守ることにあると言われている74。

 

 

コモンローでは、ある者が無遺言で死亡すると、物的財産権(real property)及び人的財産権(personal property)の権原(title)は法律上当然に相続人に移転した。無遺言相続の承継者は、これらの権原が自分に移転するのを防ぐことはできなかった。相続人が相続財産の承継を拒否した場合には、コモンローはその相続人の放棄(renunciation)を、あたかも権原がその相続人に移転しその後その相続人から次の無遺言相続人に移転したかのように扱っていた。

 

 

 

このルールは、土地に結び付けられ封建的義務につき責任を負う者が途切れなく存在していることが必要であるという、今日ではもはや意味を持たない当時の時代背景に基づくものであったとされる。他方、被相続人が遺言を残した場合、受遺者は遺贈を拒否することができ、それによって受遺者に権原

自体が移転するのを防ぐことができると考えられていた(生存中のものであれ遺言によるものであれ、贈与は受贈者によって受領されることを要件としたことによる)75。

 

 

 

ポリー

「土地に結び付けられた責任を負う人が必要って、意味ないでしょうか。時代遅れですかね。

必要だと思うんですが。所有権てなんですかね。世界のどの国も大昔はそんな考えはなくて、土地は自然が与えたもので、誰の所有物でもなかったようです。日本でも今は、所有権が法務局から登記で保証されていて、上から下まで全部権利を持っていると考えられているかもしれないですが。鎌倉時代には、土地は領主の勢力範囲を示すものだったようです。」

 

 

 

死亡時の権原移転に関する無遺言相続と遺贈のこの相違は、税金上の結果にも影響を及ぼす。すなわち、無遺言相続人がその相続分を放棄した場合において、コモンローのルールが適用されたときには、あたかもその相続人が無遺言遺産相続分をいったん取得し、その後に放棄を理由として次に遺産を取得した者に課税対象となる贈与を行ったかのように扱われる76。対象的に、受遺者が遺贈を放棄したときは、贈与税の問題は生じない77。

 

この相違を解消するため、ほほ全州で放棄に関する法律が置かれており、そこでは放棄者を、被相続人又は「分配時(time of distribution)」78より前に死亡したと擬制する。UPC も同様の規定を置く(UPC§2-1105、2-1106(2002. rev.2006)。これによれば、遺産は放棄者には移転しなかったのであり、放棄者がその譲渡を行うわけではないことになる。

 

 

 

統一財産権放棄法典(Uniform Disclaimer of Property Interests Act(UDPIA)1999. rev.2006)は、2002 年にUPC§2-1101~§2-1107 として吸収され、約3 分の1 の州で採択されているが、放棄のできる期間について具体的な規定を置いていない。ただし、多くの州法は、放棄は放棄される権利が発生してから9 か月以内になすことを要すると規定する。

 

この9 か月という期間は、1976年に内国歳入法典(Internal Revenue Code(IRC))§2518 が制定されたことに応じたものである

とされる79。

 

 

UPC 及び多くの州法は、放棄の効果はあらゆる目的のために被相続人の死亡時に遡及すると規定する(UPC§2-1106(2002. rev.2006))。したがって、無遺言相続の場合には、放棄は無遺言死亡者の死亡時に効果を生じる(UPC§2-1106(b)(1))。そのため、被相続人の債権者は放棄者から

被相続人の債務を回収することはできない。ただし、放棄の無効と制限についてUPC は§2-1113(2002. rev.2006)に規定を置く。それによれば、放棄の権利を書面で放棄したとき((a)項)、放棄しようとした財産の利益を受領したとき((b)(1)号)、放棄しようとした財産の利益を意図的

に譲渡し、負担を課し又は抵当に入れ、あるいはそのような契約をしたとき((b)(2)号)、放棄しようとした財産の利益が司法上の売却をなされたとき((c)項)等の場合、放棄をすることはできなくなる。

 

 

 

 

 

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