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相続に関する法律 アメリカ⑥
2015年12月25日

 

第4 部 アメリカ法

横浜国立大学 常岡史子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

(2) 相続分

 

(a) 配偶者

 

UPC(1990)§2-102(1)は、被相続人に生存している直系卑属も親もないか、被相続人の生存している直系卑属が生存配偶者の直系卑属でもありかつ生存配偶者が被相続人の直系卑属ではない直系卑属を有さない場合、生存配偶者が無遺言遺産全部を取得すると定める。

 

 

もし、被相続人に生存している直系卑属はいないが親がいる場合、生存配偶者はまず200,000[300,000]ドルを取得し、それに加えて無遺言遺産の残高の4 分の3 を取得する(同条(2)項)。被相続人の生存している直系卑属が生存配偶者の直系卑属でもあるが、生存配偶者に1 人又は複数の他の直系卑属がいる場合には、生存配偶者はまず150,000[225,000]ドルを取得し、それに加えて無遺言遺産の残高の2 分の1 を取得する(同条(3)項)。

 

 

被相続人に1 人又は複数の生存している直系卑属があり、この者たちが生存配偶者の直系卑属でない場合は、生存配偶者はまず100,000[150,000]ドルを取得し、それに加えて無遺言遺産の残高の2 分の1 を取得する(同条(4)項)。

 

なお、インフレによる調整のため、2008 年改訂によって、ここで規定されているドルの数字及び第2 編のその他のドルの数字は、50%引き上げられている(上述[]内の数字。なおこれらの数字は年ごとの生計費による調整に服する(UPC§1-109))。

 

 

 

UPC1990 年改訂の目的は配偶者の取得する相続分の増額にあった。この改訂前は、たとえば生存配偶者は、被相続人に生存している直系卑属も親もいない場合にのみ、全無遺言遺産を取得することが許された。そして、生存している直系卑属がいる場合には、その直系卑属は50,000 ドルを超えた遺産残高の2 分の1 を取得するとされていた57。

 

 

 

このようにUPC の配偶者無遺言相続分は、一定額の一括払いと残余残高の一定割合の組合わせ(lump-sum-plus-a-fraction-of-the-remaining-balance)で構成されている 。これは生存配偶者の権利と被相続人の子供の権利と間で合理的なバランスを図り、遺産の規模や家族の状況に応じ

た生存配偶者の相続分の確保を可能とするという考えに基づく58。

 

 

 

ところで、このようなUPC の規定にしたがった場合、生存配偶者が無遺言相続分を取得した後に再婚したときはどうなるであろうか59。

(例)G はA と婚姻し、2 人の間には子(B、C)がいる。G、A とも他に子供はいない。G が無遺言で死亡し(UPC ではA がG の全無遺言遺産を取得する)、数年してA はX と再婚した。その後Aが無遺言で死亡した。

 

 

 

(ⅰ)この場合において、AX 間に子が生まれなかったときは、A にはG との子B、C がいるので、X はA の全遺産ではなく150,000 ドル(現行UPC による)及び残額の2 分の1 を取得し、残額の他の2 分の1 は、B、C が均等に取得する

 

 

 

(ⅱ)もし、G とA の間に子がおらず(G の親もG より先に死亡していて)、A とX の間に子(Yが生まれたときは、X に他に子がいるかどうかで結論が異なる。もしX に前婚の子(Z)がいるときは、X はA の遺産から225,000 ドル(現行UPC による)及び残額の2 分の1 を取得し、残額の他の2 分の1 はY が取得する。X に前婚等の子がいないときは、X はA の全無遺言遺産を取得する。

 

なお、UPC§2-102A は、共有財産制の州のための選択肢としてもう一つの配偶者相続分に関する規定を置く。そこでは、被相続人の特有財産に関する生存配偶者の無遺言相続分について、UPC2-102 と同じ定めをする。そして共有財産については、被相続人に帰属していた共有財産の2分の1 の持分は、生存配偶者が無遺言相続分として取得するとの規定を置く(UPC§2-102A(b))60。

 

 

 

 

(b) 直系卑属と代襲相続(representation)

 

アメリカの全法域において、配偶者に無遺言相続分が与えられた後は、被相続人の子又は死亡した子の直系卑属が、他の親族を排して無遺言遺産の残余を取得するとされている。複数いる子のうちの誰かが被相続人より前に死亡し、自らの直系卑属を残した場合、諸州法は、死亡した子の直系卑属らがこの子を代襲し、当該子の相続分はこの代襲者らの間で分割される旨の規定を置く。なお、代襲相続は直系卑属を対象とし、嫁等子の配偶者(sons in law, daughters in law)には一般に代襲権は認められていない。

 

(ⅰ) イギリス式代襲(per stirpes)

 

約3 分の1 の州は、イギリス方式の代襲分配制度(株分け)をとるとされる。これは厳格な代襲(strict per stirpes)と呼ばれ、直系卑属の各血統を平等に扱う(日本の現行代襲相続と同様)。この代襲相続方式は、息子が死亡した父を代襲し、孫息子が死亡した息子を代襲するというイギリスの長男相続制に多くを負うと言われている61。

 

(ⅱ) 現代的代襲

 

約半数の州が、現代的代襲(modern per stirpes 又はper capita with representation)と呼ばれる頭割り方式を採用する。この方式では、まず被相続人の生存している子の有無が問題となる。生存している子がいるときは、無遺言遺産の分配はイギリス方式の代襲相続と同様となる。

 

生存している子がいない場合、無遺言遺産は生存している権利者がいる最初の世代で(通常は被相続人の孫の世代)、平等に(頭割りで)分割される。すなわち、この方式では、被相続人の無遺言遺産は、生存している一人又は複数の直系卑属がいる被相続人に最も近い世代の段階で、相続分が分割される。その世代段階の中に死亡した直系卑属がいる場合には、その者の直系卑属がイギリス式代襲方式により代襲する。この現代的方式は、被相続人に最も近い生存世代で開始する相続につき各血統を平等に扱うものである62。

 

 

(ⅲ) 各世代での頭割りによる代襲(UPC1990 年版)

 

残りの約12 州は、より新しくより複雑な「各世代での頭割りによる代襲」(per capita at eachgeneration)として知られる制度による。これは、Waggoner 教授によって提唱され63、同教授が報告者であったUPC1990 年版の§2-106(b)が、この方法を採用する64。「各世代での頭割りによる代

襲」は、被相続人との関係で同等の親等にある者は平等の相続分を取得すべきである前提に立つ。

 

これは1990 年改訂前のUPC における代襲相続規定の前提でもあったが、1990 年改訂はこれをよりよく反映する方法へと修正したものである65。

 

 

UPC(1990)§2-103(a)(1)項によると、被相続人の無遺言遺産の全部又は一部が被相続人の直系卑属に「代襲によって」移転する場合には、その遺産の全部又は一部は、(ⅰ)一人又は複数の生存直系卑属を含む被相続人に最も近い世代に生存直系卑属があり、かつ(ⅱ)その同じ世代の中に死亡した直系卑属があり、この者に生存している直系卑属がいるときは、そこでまず相続分は均等に分割される。被相続人に最も近い世代にいる生存直系卑属には、それぞれこの一相続分が割り当てられる。

 

そこで、残余の相続分がある場合にはこれら結合され、あたかも先に一相続分を割り当てられた生存直系卑属らが被相続人より先に死亡したかのように、(ⅱ)の死亡した直系卑属の生存直系卑属の間で同じように分割される。

 

 

UPC§2-106(b)のもとでは、最初の相続分の分割は、一人又は複数の直系卑属が生存しているレベルで行われる(現代的代襲)が、そのレベルでの被相続人の残余相続分は一纏まりにされ、次の世代レベルでの代襲者たちまで降りてそこで平等に分割される。これによって、各世代での相続権者を当該世代における他の相続権者たちと平等に扱うことができる。

 

 

(例66)被相続人G には3 人の子(A、B、C)がいる。A には子U、V、W が、B には子X が、C には子Y、Z がいる。A とB は、G より先に死亡している。

①現行UPC§2-106(b)の「各世代での頭割りによる代襲」方式によれば、G の無遺言遺産につき、まずC が3 分の1 の相続分を取得する。残りの3 分の1 ずつは合体されて3 分の2 とし、さらに、あたかもC、Y、Z がG より先に死亡したかのように擬制して、U、V、W、X 間で均等に分配される。

すなわち、U、V、W、X は各6 分の1 の相続分を取得する。

 

②1990 年改訂前のUPC 旧§2-106 の方法であれば、この場合、C が3 分の1、X が3 分の1、U、V、W が各9 分の1 の相続分を取得する。旧§2-106 はイギリス式代襲方法をとるものではないが、この事例では代襲結果はそれと同一となる(旧§2-106 では同世代の相続人を平等に扱うことができなかったのが、まさにこの事例である)。1990 年改訂による「各世代での頭割りによる代襲」方式は、この場合にも同世代相続人平等の原則を実現することに資する。

 

2 特別受益(advancements)

 

コモンローでは、被相続人が子に与えた生前贈与はいかなるものもその子の無遺言相続分についての特別受益である(その効果は相続分の前払い)との推定が働くとされていた。この推定を覆すためには、当該子は、その財産移転が無条件贈与(absolute gift)であることが意図されており、無遺言遺産に関する相続分に算入されるべきものではなかったことを立証しなければならなかった67。

 

 

コモンローのこの法理は、親は子供らの間での資産の平等な分配を望んでいたであろうという前提に基づくものであり、親による生前贈与を相続分額決定の際に考慮に入れることによって、これを達成することを目的とした。ある親が子に対して特別受益を与え、その子が親より先に死亡した場合、特別受益の額はその子の直系卑属の相続分から控除された。

 

 

贈与者の意図を証明することの困難さから、多くの州法は特別受益に関するコモンローの推定を逆にし、生前贈与は、特別受益であると意図されていたことが示されていない限り、特別受益ではないと推定されるとする。それに対し、UPC§2-109(a)(1990)はさらに進んで、特別受益をなす意図が贈与者又は受贈者によって署名された書面において宣言されていることを要件として規定する68。

 

特別受益であることを証明するために書面を要件とする目的は、記憶に残らない生前贈与について家族間に争訟を引き起こすことを回避することにあるとされる。ただし、無遺言の被相続人の中には、生前贈与が受贈者の無遺言相続分についての特別受益である旨を文書で述べておかなければならないことを知らない者も少なくない点が問題として指摘されている69。

 

生前贈与が特別受益となる場合、それは持戻され遺産に加算されることによって、被相続人の遺産の分配の原資となる(hotchpot estate: 持戻し遺産)。

 

 

すみれ

「あんたには相続分の前渡しであげるんだよって言われない限り、今あげたことになるんだ。この方が実態と合っていると思うな。」

 

 

 

 

なお、UPC§2-109(c)は、受贈者が被相続人より先に死亡した場合におけるコモンローのルールを変更している。すなわちUPC のもとでは、この場合、被相続人が書面で算入する旨を示していない限り、特別受益は受贈者の直系卑属の無遺言相続分に対して算入されない。

 

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