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相続に関する法律 アメリカ⑤
2015年12月25日

 

第4 部 アメリカ法

横浜国立大学 常岡史子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

 

 

2 相続人と相続分

 

(1) 相続人の範囲・順位

 

(a) 配偶者

 

UPC の無遺言相続法は、平均的な無遺言被相続人が有したであろう意思を実現するという方針に基づく。それは無遺言の場合には、まず生存配偶者が遺産全部を取得することを望むであろう、子や直系卑属がいる場合には遺産の額に応じてこれらの者と分かち合うことになろうというものである。その背景には、従来の諸州法における無遺言相続の場合の配偶者相続分は少なすぎるという認識があったとされる33。

 

 

 

 

すみれ

「配偶者は遺産全部なんだ。」

 

 

 

諸州における無遺言相続法は、半世紀前には生存配偶者の相続分を4 分の1 から3 分の1 とするのが典型的であったが、徐々に増加し、現行法の多くは、生存配偶者に少なくとも被相続人の無遺言遺産の2 分の1 の相続分を認める。

 

UPC は生存配偶者の相続分について鷹揚な姿勢を示し、たとえば、被相続人のすべての直系卑属が生存配偶者の直系卑属でもあり、生存配偶者が他に直系卑属を有していない場合には、生存配偶者は被相続人の直系卑属を排除して全遺産を取得するとする(UPC§2-102(1))。

 

 

 

そこには、このような状況のもとでは、全無遺言遺産を配偶者に与え、子供たちには何も残さないのが被相続人の通常の意思であろうという考えがある。また、未成年子がいる場合その者のために後見人を付すること(guardianship)を回避できるという便宜もある。

 

UPC の影響により、州法においても、生存配偶者に被相続人の無遺言遺産のすべてを与えるという法律は珍しいものではなくなっている。

 

 

すみれ

「アメリカでは子供には何も残さないのが通常の意思だって考えるのか。国によって色々だな。」

 

 

 

 

なお、UPC§2-102(3)項(4)項は、一方配偶者が他方配偶者以外の者との間に子を有する場合、生存配偶者の相続分をより少なく設定する。これは、自ら血のつながった直系卑属に財産を残したいという被相続人の意思を反映させたものである。

 

そこには、生存配偶者の取得する相続分はこの者自身のためのものであるとともに、生存配偶者が死亡したときにはその子に財産が移転し、生存配偶者は被相続人の財産を次に伝達する導管(conduit)でもあるとの発想がある34。直系卑属がいない場合、約半数の州はUPC§2-102(2)項と同様の規定を置く。

 

 

 

 

すみれ

「配偶者は導管か。よく分からない。」

 

 

 

 

すなわち、被相続人の親がいる場合、生存配偶者がこの親とともに遺産を無遺言相続する。親がいない場合、UPCでは生存配偶者が傍系親族を排して全無遺言遺産を取得する(UPC§2-102(2))。一方、州の中には、少数であるがこの場合に被相続人の兄弟姉妹に無遺言相続分を認めるところもある35。無遺言相続法における生存配偶者規定には婚姻が経済的なパートナーシップを含む関係であるとの理念があるが、さらに被相続人死亡後の家族の経済的保護という観点から、どこまで相続権を認めるかという政策がそこに反映される。

 

 

 

 

 

(b) 同性婚・ドメスティックパートナー無遺言相続権を支える主要な理念が被相続人のありうべき意図に効果を与え、被相続人が家族としていた者たちの経済的保護にあるとすると、ドメスティックパートナーもこれに該当するように思われる。近年の報告に、アメリカでは同性カップルに何らかの法的な認証を与えることについては比較的支持が多いものの、このカップルに婚姻までを許すべきであると考えるのは約20%にとどまり、約44%が反対を示すというものがある36。

 

 

 

 

 

同性婚を認める州では同性配偶者も生存配偶者の無遺言相続権が認められ、また、カリフォルニア(California Probate Code §§37, 6400-6414)やニュージャージー(New Jersey RevisedStatute§3B:5-3 (2013))、は、配偶者と同様の無遺言相続権を有する法的パートナーシップ関係(domestic partnership)制度を置く。また、コロンビア特別区(Code of the District of Columbia§19-101-19-115)、オレゴン(Oregon Revised Statutes§ 106.340(2013) )、ネバダ(NevadaRevised Statutes§122A.200)、ワシントン(Revised Code of Washington §11.62.030)、ハワイ

(互恵的受益者(reciprocal beneficiary)と呼ぶ。Hawaii Revised Statutes §560:2-212 (2013))等は、ドメスティックパートナーのための無遺言相続権を認める。コロラドでは、「指定受益者の合意」により非婚のパートナー間で配偶者類似の無遺言相続権を与えることができる37。

 

 

 

 

 

 

1995 年にLawrence W. Waggoner 教授が、「性的関係のあるパートナー」のための無遺言相続分を規定するUPC§2-102B を入れるよう提案を出したが、これはULC による採択には至らなかった。

 

2002 年に、JEB はWaggoner 教授の提案を再考し、Thomas P. Gallanis 教授を特別報告者に任命した。これは、JEB の企画としては成就しなかったが、Gallanis 教授によるモデル規定が公表され、そこでは、配偶者類似の無遺言相続権と選択的相続権(elective share)を与えるドメスティックパートナーシップは、登録または「共同の世帯を営んでいること」の証拠によって証明されるとしていた38。なお、UPC 自体は、その後の改訂作業においても、ドメスティックパートナーの相続権を規定化するには至っていない。

 

 

 

 

(c) 配偶者以外の相続人

 

被相続人に生存している直系卑属がいる場合、この被相続人の尊属と傍系親族は無遺言遺産について権利を有しない。直系卑属がいない場合、UPC は、配偶者の無遺言相続分を控除した残余を被相続人の親が取得すると規定する(UPC§2-102(2))。

 

 

 

 

 

配偶者も直系卑属も親もいない場合には、被相続人のより遠い尊属又は傍系親族(collateralkin)が無言相続権を得る。被相続人とその直系卑属を除く被相続人の親の直系卑属は、第一順位の傍系親族(first-line collaterals)と呼ばれる。被相続人の親と親の直系卑属を除いた被相続人の祖父母の直系卑属は、第二順位の傍系親族(second-line collaterals)である。

 

被相続人に生存している配偶者、直系卑属、親がいない場合、アメリカの諸法域では、無遺言財産は兄弟姉妹又はその直系卑属に移転するとされている39。兄弟姉妹が死亡している場合にはその直系卑属(被相続人の甥、姪)が、代襲によって相続する。この代襲方法は、通常は被相続人の直系卑属の代襲の場合と同様である(後述(2)(b)参照。UPC の場合、§2-106(c)の甥、姪等の代襲方法は、直系卑属の代襲の場合の§2-106(b)と実質的に同じであり、各世代における頭割り(per capita at each generation)である)。

 

 

 

第一順位の傍系親族がいない場合、誰が次の相続承継ラインに来るかは州によって異なり、2つの基本的な案がある。血系システム(parentelic system) と親等システム(thedegree-of-relationship system)がそれであり、血系システムのもとでは、無遺言遺産は祖父母とその直系卑属の手に渡り、もしこれらの者がいない場合には曾祖父母とその直系卑属にわたる、そしてもしこれらの者もいない場合には曾曾父母とその直系卑属に、というように相続人が見つかるまで尊属から各血統(parentela)を降りて行く。

 

一方、親等システムのもとでは、無遺言遺産は親等を計算して最も近い親族に渡る(親等の数え方は日本と同様)40。各州とも、「笑う相続人」を出さないために典型的には祖父母とその直系卑属のところで線を引く。これらの法域では、曾祖父母及びそれ以上離れた尊属によって辿られる親族には無遺言相続権を認めない。UPC§2-103(a)(1990. rev.2008)も同様である。

 

なお2008 年の修正で、UPC§2-103(b)は、被相続人の継子による無遺言相続を創設している。それによれば、継子は、生存している祖父母か祖父母の直系卑属又はより近い親等の親族がいない場合、最後の承継者として無遺言遺産を取得する41。この点につき、カリフォルニアではさらに進んでおり、無遺言相続権を継子のみならず義父母、義兄弟姉妹にまで拡大する。ただし、義理の息子、義理の娘は含まれていない42。

 

 

 

(d) 半血の親族

 

イギリスでは、全血の親族関係に重きが置かれ、コモンロー裁判所は半血の者を無遺言相続による土地の相続から排除していたとされるが、このルールは、アメリカではすでに廃止されている43。多くの州法及びUPC は、半血の親族を全血の親族と同様に扱う(UPC§2-107(1990))。ただし、バージニア(Code of Virginia§64.2-202)、フロリダ(Florida Statutes,Title XLII ESTATESAND TRUSTS732.105)、テキサス(Texas Estates Code Sec. 201.057)、ルイジアナ(Louisiana CivilCode §893)等、半血の親族の相続分を全血の親族の2 分の1 とする州もある。

 

また、半血の者は同じ親等の全血の親族がいない場合にのみ無遺言相続権を有するとする州(Mississippi Codes §91-1-5)や、オクラホマのように半血の者と同じ親等の全血の親族がいて、遺産が尊属を通じて被相続人に渡ったものであり、半血の者がその尊属の直系卑属でない場合には、この半血の者は無遺言相続権を有さないとする州(Oklahoma. Statute §84-222.)もある。

 

 

 

 

(e) 婚外子

 

コモンローは、婚姻外で生まれた子を「誰の子でもない子」(filius nullius)と扱い、父母いずれとも相続関係を認めていなかった。アメリカでは、このような扱いはもはやされておらず、すべての州において少なくとも婚外子と母の間の相続関係は認められている44。ただし、婚外子と父の間の相続については州によって差異があり、かつては裁判例においても、たとえば父が子の母と婚姻するか、父の生存中に裁判所によって子の父である旨の判断が正式に下された場合にのみ、婚外子に父の相続権を認めるとしたものがあった45。

 

 

 

現在では、各州とも婚外子による父

の無遺言相続権を認める方向をとっており、そのためには、父母が後に婚姻することによって子と父との親子関係が証明されたとするもの、父の認知があればよいとするもの、父の生存中の司法判断によるとするもの、父の死亡後も明白かつ確信を抱くに足る証拠があればよいとするもの等がある46。

 

 

 

 

 

UPC は、2008 年の改訂で親子間の無遺言相続権に関し一連の重要な修正を行った(第2 編第1章第2 節「親子関係」(§§2-115~2-122))。その鍵となるのは親子関係の存在の有無であり、UPC同第2 節は婚外子、養子、生殖補助医療によって出生した子らに関する親子関係の存否とその確

立に関する諸規定を置く。そして同節の規定によって親子関係が存在し又は確立された場合には、無遺言相続に関して「その親はその子の親であり、その子はその親の子である」と定める(UPC2-116(2008)47)。

 

 

 

 

婚外子については、UPC§2-117(2008)が、「§2-11448、§2-11949、§2-120 又は§2-12150で異なる定めがなされている場合を除き、父母の婚姻関係の有無にかかわらず、子とその生物学上の親との間には親子関係が存在する。」と規定する。親子関係が存在すると同節に従って認められる場合、UPC は§2-705(e)51の場合を除いて無遺言相続において婚外子を嫡出子と区別することはしていない52。

 

 

 

 

(f) 養子

 

養子の無遺言相続権に関する各州法の扱いは一律ではなく、①養子は養親及び養方の親族との間でのみ相続関係を有する、②養子は養親及び養方の親族とともに、実親及び実方の親族との間でも相続関係を有する、③②の場合において、養子が実親及び実方の親族との間に相続関係を有するのは養子が継親の養子である場合に限るとする3 種類に大別される53。

 

 

 

 

UPC は従来より③の立場をとる(§2-114(b)(1990))。UPC§2-114(b)(1990)は、2008 年の改訂で§2-118、§2-119 に置き換えられたが、§2-118 及び§2-119(2008)はUPC§2-114(b)(1990)を承継している54。§2-118(2008)は、養子と養親の間の相続関係に関するものであり、養子と

その養親の間には親子関係が存在すると規定する((a)項)。したがって、養子と養親の間には無遺言相続権が認められる(UPC§2-116(2008))。

 

§2-118(b)(2)項、(c)項は2008 年改訂で新たに加えられた条文であり、§2-118(b)(2)は、継親が継子を養子とするための法的手続を申立てたが手

続が了しない間に死亡したときは、その継子は継親によって養子とされたものと扱われるとする。

 

 

 

 

 

同条(c)項は、生殖補助医療で出生した子又は代理懐胎による子に関するものであるが、そのような子をその親の配偶者の養子とする法的手続が申し立てられたが手続を了する前に当該配偶者が死亡した場合について、同様に規定する。

 

 

 

 

  • 2-119(2008)は、養子と実親との相続関係に関する規定であり、同条(a)項は、同条(b)項から(e)項で規定されている場合を除き、養子とその生物学上の親との間には無遺言相続に関し親子関係は存在しないと定める。

 

 

 

その例外として同条(b)が、生物学上の親の配偶者の養子となった者とその生物学上の親及び他方の生物学上の親との間には、無遺言相続上、親子関係が存在する旨を規定する55。さらに、§2-119(c)項、(d)項、(e)項が2008 年改訂で加えられ、(c)項は、養子が生物学上の親の親族の養子となった場合、(d)項は、生物学上の親が2 人とも死亡した後に養子なった子、(e)項は、生殖補助医療又は代理懐胎による子がさらに他者の養子となる場合に関する規

定となっている。

 

 

 

 

 

なお、2 つの血統により被相続人と親族関係を有する者(生物学上の血統と継親の養子となったことによる血統が併存するような者)については、大きい方の相続分が与えられる血統の親族関係に基づく相続分のみが認められる(UPC§2-113(1990))。

 

 

 

(g) 生殖補助医療による子

 

 

 

生殖補助医療によって出生した子の無遺言相続権について、現行UPC§2-120(b)は、精子を提供した第三者とそれによって出生した子の間には親子関係は存在しないと定める。他方、同条(c)項は、生殖補助医療によって出生した子と分娩した母の間には親子関係が存在するとし、また、同条(d)項により、子を分娩した母の夫の精子がその夫の生存中に生殖補助医療のために使用された場合、その夫と生殖補助医療によって生まれた子の間に親子関係が存在すると規定する。

 

なお、UPC§2-120(k)は、父の死亡後に懐胎された子にも父の相続権も認める。ただし、その要件として、①その親が生存中に署名した書面によって死後の懐胎に同意していたか、又はそのような同意が明白かつ確信を抱くに足る証拠によって証明されることかつ、②その子がその親の死亡後36 か月

経過前に懐胎され若しくは45 か月経過前に出生したことが挙げられている。

 

 

 

 

代理母については、UPC§2-121(b)に規定が置かれ、代理懐胎によって生まれた子の親を指名する裁判所の命令によって、その親とその子の間の親子関係が確立すると定める。また、その子と代理母の間には原則として親子関係は存在しないとされている(UPC§2-121(c)56)。したがって、この場合代理母との間には無遺言相続権も生じない。

 

 

 

(h) 相続人不存在

 

無遺言死亡者に無遺言相続法のもとで相続権を有する生存者が誰もいない場合、無遺言財産は、州に帰属する(UPC§2-105)。

 

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