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相続に関する法律 アメリカ②
2015年12月25日

 

第4 部 アメリカ法

横浜国立大学 常岡史子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

 

 

2 被相続人の財産の移転方法

 

(1) 検認財産(probate property)と非検認財産(nonprobate property)

 

アメリカにおいて、検認(probate)とは、裁判所において遺言の有効性を証明し確認する手続のみを指すものではない。検認裁判所(probate court)は遺言の検認のみならず、被相続人の遺産管理の全過程を管轄する。すなわち、遺産管理の開始、遺産に属する諸財産の収集、債権者らの請求の清算、遺産の決算や分配等である。また、検認裁判所は、未成年者その他の制限行為能力者に関する事務やその者の財産に関しても管轄を有する場合がある12。

 

 

 

 

被相続人の遺産は、検認財産と非検認財産に分けることができる。検認財産は、被相続人の遺言又は無遺言相続によって検認手続を通して相続受益者に移転する財産である。それに対して、非検認財産とは、遺言や無遺言相続以外の手段によって検認手続外で移転する財産をいう。アメリカでは、被相続人の死亡による財産の承継は、遺言や無遺言相続制度のもとで検認手続によってなされるよりも、非検認の移転方法によってなされるのがより一般的であると言われている13。

 

 

 

ポリー

「どの国の人も、裁判所は避けようとしますね。裁判所も仕事が少なくなっていいかもしれないですね。1人1人の遺産の清算を全部管理するのは大変だと思います。」

 

 

 

 

非検認の財産移転方法の主たるものは、合有財産権(joint tenancy)による不動産(realproperty)や動産(personal property)の共同所有、生命保険の利用、死亡時支払条項付きの契約(contract with payable- on-death provisions(POD))、信託の利用である14。

 

 

合有財産権による方法としては、夫婦が不動産や銀行口座、株式口座、投資信託(特にmutualfund)口座を合有財産として所有する場合が挙げられる。夫婦の一方が死亡すると、合有財産におけるこの者の権利は消滅し、生存配偶者が全合有財産を所有する。ここでは、被相続人の死亡によって生存配偶者に権利が移転するとはとらえない。

 

したがって、たとえば合有不動産について生存配偶者の権原(title)を完全なものにするためには、この者が被相続人の死亡証明書の提出を公署等にすることで足りる。

 

 

ポリー

「合有財産権はイギリスでも出てきましたね。簡単な届出で配偶者に移るのはいいですね。パートナーが亡くなった後に手続が多いのもつらいですし。日本の地方銀行でもできないでしょうか。せめて葬儀費用だけでも、合有できると助かると思うのですが。信託銀行は遠いです。信託を使うなら、住宅に関しても夫婦共有になっている場合に利用できるといいと思います。」

 

 

死亡時支払条項付きの契約(POD 契約)とは、被相続人が、銀行、雇用者又はその他の個人若しくは会社との間で、指名された受益者に被相続人の死亡時に財産が分配される旨を約する契約をいう。年金プランにおける遺族年金がこれに当たる。納税延期の投資プラン(IRAs, 401(k)s等)で、死亡による受益者を指名することもよく行われる。POD 契約によって約された財産を取得するためには、受益者は財産を保管している管理人に被相続人の死亡証明書を提出すればよい。

 

 

 

 

アメリカでは、遺言の代わりに信託の利用もよく行われている。財産が信託に付された場合、受託者は一人又は数人の指定受益者の利益のために財産を保有し、受益者は生涯不動産権(estatefor life)、残余権(remainder)、その他の類型の権利を取得する。信託財産は、信託証書の条項に従って受託者により受益者に分配される。被相続人の遺言によって設定された遺言信託において保有されている財産は、検認手続を通じて移転されるが、被相続人の生存中に生前信託(intervivo trust)に置かれた財産は検認手続に服さない。アメリカでは、遺言信託よりも生前信託が洗練されたエステイトプランニングとして好まれている15。

 

 

ポリー

「生涯不動産権は、亡くなるまでその土地を利用することができるということです。誰から?国からですかね。所有権とは少し違うようです。期間があるという意味で、日本における定期借地権の参考にもされたようです。生前の信託の方が洗練されている。何が洗練されているんでしょうか。何もしないよりは遺言、遺言よりは信託という段階で利用されているようです。」

 

 

非検認財産の分配は、裁判所における手続を要しない。ただし、もちろん分配や管理はそのもととなるPOD 契約や信託契約、それらの捺印証書(deed)の諸条項と一致するように行われなければならない。一方、遺言による受遺者又は無遺言相続による承継人への検認財産の分配は、人

格代表者(personal representative)16の指名を伴う遺言の検認や無遺言の事実認定を含む裁判所での法的手続を必要とする。

 

 

 

 

(2) 検認(遺産管理)手続

 

(a) 手続の開始

 

検認遺産(probate estate)の管理手続は各州や法域ごとにかなり多様性があるが、一般的な概要としては、被相続人が死亡すると、被相続人の死亡時の住所地の法域における裁判所で、遺言の検認手続又は無遺言相続等遺言執行者がない場合には遺産管理人の選任手続がなされることになる(第一次的又は住所地管轄(primary or domiciliary jurisdiction))。

 

遺産中、不動産が他の法域に存するときは、当該法域における副次的遺産管理手続(ancillary administration)が必要となる。副次的遺産管理手続を要求する目的は、当該不動産がある州の登録制度によって不動産の権原(title)を証明すること、当該財産を当該地域の債権者の保護のために検認手続に服させることにある17。

 

ポリー

「もし亡くなった方が、不動産を他の州に持っていると、土地ごとに手続が違って、ややこしくなるかもしれないってことですね。」

 

 

 

各州は、遺言執行者に遺言執行状(letters of testamentary)を、遺産管理人に遺産管理状(letters of administration)を発行するため手続規定を置く18。州によっては、争訟によらない検認手続と争訟による検認手続を区別するところがある(主にミシシッピー河東部の州であり、かつてイギリスの教会裁判所で遺言執行者に普通方式の遺言検認手続(in common form)か厳格方式の遺言検認手続(in solemn form)かの選択権を与えていたことに由来するとされる)19。

 

 

ポリー

「教会裁判所って不思議な響きです。教会でもあって裁判所でもあったんでしょうか。」

 

 

普通方式の検認は、他の者への通知や訴状の発せられない一方的手続によってなされるもので(ex parteproceeding)、遺言の適正な執行は遺言執行者の宣誓によって証明されるが、場合によってはその他の証人が必要とされることもある。

 

遺言がいったん検認を認められると遺言執行状が発行され、遺言執行者は遺産の管理を開始するが、一定期間内において、利害関係を有する当事者は利害関係通告(caveat)を提出し厳格方式による遺言検認手続を求めることができる。

 

一方、厳格方式の検認手続では、利害関係を有する当事者への通知は訴訟引受命令(citation)によって行われ、適正な遺言の執行は複数の認証証人(attesting witness)の証言によって証明されるべきものとなり、遺産管理への裁判所の関与がより大きなものとなる。多くの州は、普通方式の検認手続に拠っている。

 

 

(b) 人格代表者(遺言執行者・遺産管理人)による管理

 

被相続人の死亡により検認手続が必要となる場合、裁判所はまず、被相続人の事務を監督する人格代表者を選任し、遺言執行状又は遺産管理状を発行する。人格代表者は信認義務を負い(fiduciary)、遺産の目録を作成して被相続人の財産を収集する。そして、被相続人の遺産に属する財産の管理をするが、その中で被相続人の債権者への弁済や税金の支払い等をなし、最終的に残った遺産につき権原を有する者への分配を行う。

 

この管理の過程において、人格代表者は、必要に応じて遺産中の不動産や個人企業(sole proprietorship)の売却等をなすこともできる。

 

 

 

 

ポリー

「信認義務(fiduciary)。日本の信託銀行とか、託される人が持っている義務です。」

 

 

 

(c) 遺産管理手続の終結

 

遺言執行者や遺産管理人といった人格代表者は、可能な限り迅速に遺産の管理と分配を完了することが求められる。人格代表者の訴訟活動に対する司法承認(judicial approval)は、この者に対する訴訟原因(cause of action)について諸出訴期限(statute of limitations)が進行しない場合に、人格代表者を責任(liability)から免れさせるために必要である。人格代表者は、裁判所が解任を許可するまで、信認義務から解放されない20。

 

 

 

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