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相続に関する法律 アメリカ①
2015年12月25日

 

第4 部 アメリカ法

横浜国立大学 常岡史子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

第1 章 はじめに

 

1 本調査研究の目的

 

本調査報告の目的は、アメリカにおける相続法制の概要を示し、わが国における相続法制のあり方及び法整備の必要性を検討するための基礎資料を提供することにある。そこでは、相続時における生存配偶者の保護(住居の確保を含む)、相続分(死亡時に夫婦共有財産の清算が行われる州にあっては、夫婦財産制の在り方も含む)、遺産分割方法、遺言制度などが具体的な調査対象である。

 

 

相続法制のあり方は、家族のあり方に対する意識の差異を背景として国や地域ごとに多様である。英米法系に属するアメリカの相続法も、その出発点においてイギリスの制度の影響を受けつつも、連邦制のもとで州ごとに異なる家族法、相続法を持ち、その内容は多様である。そこで、統一法典による相続・遺言法制の統一が企図されている。統一州法委員全国会議(The National Conference of Commissioners on Uniform State Laws:現Uniform Law Commission(以下ULC と記述))とアメリカ法律家協会(American Bar Association(以下ABA と記述))によって1969 年に公表された統一検認法典(Uniform Probate Code(以下UPC と記述))1がその代表といえる。

 

 

ポリー

「日本の法律とは作られ方が違いますね。アメリカはイギリスの流れを汲んでいますが、アメリカ流に変化していったんです。変化の仕方はどうなんでしょうか。そこにアメリカという国が少し顔を観せているかもしれません。州ごとに法律が違うということは、国に近いです。法律は実態より遅く、使われない法律や思っていたものと違う使われ方をするものです。」

 

 

UPC を採択している州は現在18 州であり、他の州では遺産相続や遺言について独自の州法を有する所も少なくない(別表1:UPC Enactment Chart 参照)2。また、相続法制は婚姻中の夫婦財産制と密接につながるため、所得共有制(community property:共有財産制)をとるカリフォルニアのように相続開始時においてはまず共有財産の清算を行い、さらにそれを補完するため信託等を利用する制度を置く州もある(第3 章17 参照)。

 

 

ポリー

「まず、共有状態を解消する州もあるんですね。補完するために信託が利用されている州は、相続の法律だけでは足りなかった部分を信託で補っているとみることができます。」

 

 

 

アメリカでは、UPC においても諸州法においてもいわゆる遺留分制度に相当するものはないと一般に言われている。しかしその一方で、配偶者の選択的相続分制度(elective share)や家産手当(homestead allowance)、家族手当(family allowance)、免除財産制度(exemption)等により生存配偶者や子の保護のための制度を別途用意しており、日本の現行民法の相続法に比して、相続人の種類に応じたきめの細かい対応を備える側面も有する(第4 章参照)。したがって、アメリカにおけるUPC 及び州法の相続法制を見ることは、相続における生存配偶者その他相続人の位置づけや保護の内容を検討する上で有益な視点を与えると考えられる。

 

 

ポリー

「相続人の立場に応じて細かく対応するのですね。その結果、画一的に遺留分のようなものを保証するというのは、アメリカにはないのですか。」

 

 

以下では、UPC の無遺言相続制度及び遺言相続制度を考察した上で(UPC には無能力者の財産管理制度や後見手続についても規定があり、その意味では相続の場面に限らず広く財産管理の手続について示すことを意図した統一法典であるといえる3)、ニューヨーク州とカリフォルニア州を中心に幾つかの州法について記述する。さらに、相続外の財産承継制度として重要性を持つ信託制度との関係において、統一信託法典(Uniform Trust Code (以下UTC と記述))にも言及する。

 

 

相続・遺言法制のみならず他の手段による財産承継の手法を見ることは、日本法における相続による財産移転を総合的な見地から考察することに資すると思われる4。

 

 

ポリー

「信託制度は相続外の制度。どれくらい重要なんでしょうか。」

 

 

 

 

2 アメリカにおける相続法制の概要

 

1 包括承継の原則と遺産管理

アメリカは、相続に際して遺産を裁判所の監督のもとに管理するというイギリスのシステムを承継したとされるが、これは、信用の置けない遺言執行者や相続人らから被相続人の債権者や相続による受益者(beneficiary5)を守るために設計された制度であったと言われている6。その点で、相続財産の管理に必ずしも裁判所が関与することを常とはしない大陸法系諸国とは異なるシステムを有する。

 

ポリー

「財産を管理する人は信用がおけないのが原則ですか。盗らないように最初からしばっておこうって考えるんですね。」

 

 

ただし、アメリカの中でもフランス法の伝統を受け継ぐルイジアナ州は、大陸法系の相続制度を持つ。そこでは被相続人の遺産は包括承継の原則(universal succession)に服する。相続人又は残余遺産受遺者(residuary devisee or residuary legatee )7は、被相続人の死亡とともに被相続人の地位を承継して、被相続人の権原(title)を取得し、また債務を承継し、被相続人の遺言に従い金銭遺贈(legacy)の支払義務等を負う(Louisiana Civil Code§§880,935,1585,1602,1743; Rvised Statute §47: 2408)8。

 

 

 

 

包括承継は、相続人や残余遺産受遺者が全員行為能力(capacity)を有する成人であるならば、非常に利点の多い制度であるとの指摘がある9。UPC は、包括承継を検認管理(probate)に代わる選択肢として認めている(UPC§3-312~§3-322)。これは、被相続人が無遺言で死亡した場合における相続人又は遺言をなした場合の残余遺産受遺者が、通常であれば人格代表者(personalrepresentative)によって支払われるであろう被相続人の債務や税金等を弁済する責任を引き受けることによって、遺産管理手続なしに遺産を受け取ることを許すものである(UPC§3-312)。

 

 

相続

人または残余遺産受遺者は、包括承継の申請を裁判所(補助裁判官:registrar)に提出し、補助裁判官は、必要な当事者が含まれておりかつ当該遺産が現時の紛争にかかわっていないこと等を確認の上、申請を許可し包括承継の書面(written statement of universal succession)を発行する(UPC§3-314、§3-315)。

 

これにより、包括承継を認められた包括承継人(相続人又は残余遺産受遺者)は、遺産に属する財産について完全な所有権を持つ。この者らは、租税債務も含め10、被相続人の債権者に対する責任を引き受ける。包括承継人は包括承継の申請に加わらなかった他の相続人や残余遺産受遺者に対して人的に法的責任を負い、包括承継人が残余遺産受遺者の場合には、他の受遺者らに支払われるべき財産額についても法的責任を負うことになる(§§3-316~3-322)。

 

 

 

UPC のこの包括承継に関する諸規定は、いまだどの州も採択していないとされるが、包括承継そのものはルイジアナ以外でも見られないわけではない11。たとえば、カリフォルニア州法では、無遺言相続(intestacy)若しくは遺言によって(testacy)、生存配偶者に移転した財産は、当該生存配偶者がそれについて検認管理がなされることを選択しない限り、遺産管理手続には服さないと規定する。

 

生存配偶者が、検認管理を選択しなかった場合には、当該生存配偶者は遺産財産の諸権原(title)を取得し、遺産に対して課されるべき被相続人の債務について人的責任を引き受ける。ただし、カリフォルニア州のこの規定は生存配偶者のみを対象としており、たとえば被相続人の子は、成年に達し行為能力を有する場合であっても、この者に移転した遺産についてこのような検認管理の例外を認められてはいない(California Probate Code §§13500~13650(2008))。

 

ポリー

「配偶者には手間のかかる検査がなくて良かったです。子供は検査があって大変ですね。検認の期間はどのくらいかかるんでしょうか。」