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相続に関する法律 イングランド④
2015年12月20日

 

第3部 イングランド法

千葉大学 金子敬明

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

 

 

 

6 遺産管理人

 

完全無遺言相続の場合に、遺産管理人として選任されるよう申請することができる者の順位は、次のとおりである(NCPR1987, r.22(1)

 

① 相続受益者としてネットの遺産について権利を有する者

 

例えば、被相続人には生存配偶者と子とがいたが、小規模遺産ゆえに生存配偶者がネットの遺産のすべてを取るために、実際には子には承継すべき遺産がない場合には、当該子は、ここにいう「権利を有する者」にあたらない。

 

「権利を有する者」が複数いる場合の順位は次の(1)~(8)のとおりであるが、各順位内で複数の者がいる場合には、他の者に通知することなく、各自が単独で人格代表者としての選任を受けることができる。

 

上記「権利を有する者」として、生存配偶者と別の者とがいた場合には、生存配偶者とあと一人(通常は当該「別の者」)とが共同して、人格代表者になる申請をするのが通常である。

 

(1) 生存配偶者

(2) 子(代襲を含む)

(3) 両親

(4) 全血の兄弟姉妹(代襲を含む)

(5) 半血の兄弟姉妹(代襲を含む)

(6) 祖父母

(7) 全血のおじおば(代襲を含む)

(8) 半血のおじおば(代襲を含む)

 

② 相続受益者不存在の場合には、王権(the Crown)に代わってTreasury Solicitor

 

③ ①および②の者がすべて辞退等して除去(clearing off)されたときには、相続債権者や、もし遺産が増えたとしたら遺産から無償での受益ができるようになる者

 

また、裁判所は、本来であれば申請資格があるはずの者を飛ばして(passing over)、後順位の者や、上記リスト外の者を選任する裁量権を有する(SCA1981, s.116)。

 

かくして、ネットの遺産が比較的小規模である等の理由で、生存配偶者がネットの遺産の全部を取得する権利を有する場合には、人格代表者と相続受益者のいずれもが当該生存配偶者のみである、という場合も少なくないことになるが、その場合には、清算の段階と分配の段階(第1 章参照)とを截然と分けることは難しいように思われる。

 

第3 章 部分的無遺言(partial intestacy)

 

1 部分的無遺言の場合における遺産の分配

 

部分的無遺言とは、有効な遺言は存在するが、何らかの事情で当該遺言では個々の遺産の全部ではなく一部分しか処分されていなかった場合に発生する。

 

この場合には、処分されていなかった部分(以下では「未処分遺産」と呼ぶ)について、第2章で述べた完全無遺言相続のルールにしたがった分配がなされる。

 

もっとも、遺言に別段の定めがあればそれが優先する(AEA1925, s.49(1))。遺言で受けた分を勘案して、未処分遺産の分配を特別受益のようにして調整するメカニズムは存在しない。

 

2 部分的無遺言の場合の人格代表者

 

1 概要

 

部分的無遺言の場合には、有効な遺言は存在することになるが、その遺言で遺言執行者が有効に指定されていることも、されていないこともありうる。遺言で指定された者が人格代表者としてgrant を受ける場合には、その者は遺言執行者(executor)となり、選任の際には検認状(probate.

これには遺言の写しが付される)がかれに付与される。

 

そうでない場合には、選任された人格代表者は遺産管理者(administrator)となり、選任の際にはletters of administration という書類がかれに付与される。後者は、遺産管理者であるという点では、完全無遺言相続の場合と同じであるが、部分的無遺言で遺産管理者が選任される場合には、letters of administration に遺言の写しが付される(letters of administration with the will annexed と呼ばれる)点が異なる。

 

2 人格代表者の選任申し立てをなしうる者

 

遺言がある場合(部分的無遺言の場合だけでなく、有効な遺言によって遺産の全部が処分されている場合も含む)に、人格代表者に選任されるよう申し立てることができる者は、次の順位によって決められる(NCPR1987, r.20)。

 

(1) 遺言で遺言執行者として指名されている者16

 

(2) 残余財産を他の者のための信託として保有すべき、残余財産受遺者

 

(3) (2)以外の残余財産受遺者(終身収益権のみ持つ者を含む)、部分的無遺言が生じているときには未処分遺産につき無遺言相続ルールにしたがって相続受益者となるべき者

 

(4) (2)以外の残余財産受遺者(終身収益権のみ持つ者は含まない)の人格代表者、部分的無遺言が生じているときには未処分遺産につき無遺言相続ルールにしたがって相続受益者となるべき者の人格代表者

 

(5) (1)~(4)で出てきた以外の受遺者(終身収益権者や、他の者のための信託として保有すべき受遺者を含む)、相続債権者

 

(6) (1)~(4)で出てきた以外の受遺者(終身収益権者や、他の者のための信託として保有すべき受遺者を含まない)の人格代表者、相続債権者の人格代表者

 

各順位(但し(1)を除く)の中で複数の者がいる場合には、他の者に連絡することなく、各自が単独で人格代表者としての選任を受けることができる。同順位の複数の者から申請があったときには、裁判所は、遺産を、相続債権者及び相続受益者の利益の観点からみて最も有利に管理できそうな者(たち)を遺産管理者として選任する。

 

その際には、候補者の適性(破産者である、ビジネス経験に欠ける、等)がもちろん考慮されるが、適性の観点からは特に決め手がない場合に、実務上の基準(拘束力はない)としては、各候補者の利益の大きさ(相続債権者であれば債権額の大きさ、相続受益者であれば受益資格の大きさ)によって決される17。

 

後順位の者も、先順位者の全員がclearing off されれば申請することができること、また、裁判所は、本来であれば申請資格があるはずの者を飛ばして、後順位の者や、上記リスト外の者を選任する裁量権を有すること(passing over)は、第2 章6で述べたところと同様である。

 

 

 

すみれ

「人格代表者をお願いしますって申し立てるのかな。ノーティスに続いてソリシターも出てきた。王権の代わりにって大役。」

 

 

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