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相続に関する法律 イングランド②
2015年12月20日

 

第3部 イングランド法

千葉大学 金子敬明

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

 

 

第2 章 完全無遺言相続(total intestacy)

 

 

1 相続受益者の範囲とその権利11(AEA1925, s.46)

 

 

無遺言相続の場合の相続受益者として、生存配偶者と、血族とがあること、また、両者が競合した場合の生存配偶者の取り分が、競合する血族が誰であるか(被相続人の卑属か、親か、等)によって変わってくること、は日本法と同様である。

 

 

但し、血族については、かれが相続受益者としての資格をもつことは、かれが18 歳になる(もしくはそれ以前の年齢で婚姻する)までは確定しない(つまり、被相続人の死亡後、18 歳になる前に死亡すれば、相続受益者たる資格は当初からなかったことになる)とされており、日本のように、相続開始時に生存しさえしていればその時点で遺産の承継資格があることが確定する、という仕組みにはなっていない。

 

 

なお、以下で無遺言相続受益者が「遺産」から得る権利、というときには、相続債務を清算した後のネットの遺産(以下では「ネットの遺産」と呼ぶ)であることに注意すべきである(AEA1925,s.33(4))。

 

 

また、2014 年10 月1 日から、生存配偶者の権利強化を図る立法が施行されるが、ここでは基本的に同改正前の規定に基づいて説明し、改正の内容については5で触れることにする。

 

 

1 被相続人よりも28 日以上長く生存した配偶者(surviving spouse)

 

無遺言相続受益者となる生存配偶者は、被相続人よりも28 日以上長く生存したことが必要であり、かつ、別居の裁判(judicial separation)を得ていた配偶者は除外される。生存配偶者は、ネットの遺産から次の権利を得る。

 

 

 

 

すみれ

「18歳になるまで相続というのはないんだね。誰か大人に学費やらは出してもらうのかな。ネットの遺産て、インターネットの遺産かと思った。」

 

 

 

 

 

 

 

 

(1) 被相続人に子(代襲含む)もいる場合であれば、まず、ネットの遺産から、被相続人の身の回りの動産(personal chattels)、および定額として現在のところ25 万ポンド(相続開始時から支払時までの利息を含む。この定額は法定遺贈statutory legacy と呼ばれることもある)を取得する権利を与えられる。

 

 

よって、被相続人に子がいる場合でも、ネットの遺産が小規模であれば生存配偶者以外の者は何も承継しない、ということも少なくない。さらに、以上の2 つに加えて、ネットの遺産からこれらを差し引いた残余の2 分の1 につき、終身収益権(life interest)を得る権利を有する。

 

 

この終身収益権に対応する元本は、人格代表者を受託者とする制定法上の信託(statutory trusts)の形式で保有される(AEA1925, s.46(1)(i)(2))。なお、生存配偶者はこの終身収益権を、元本価値(capital value)に転換して受け取れるよう人格代表者に請求することもできるが、その請求権の行使期間はgrant 時から原則として12 ヶ月間である。

 

 

(2) 被相続人に子はいないが一定範囲の親族(specified relative. 具体的には、被相続人の両親か、全血の兄弟姉妹。後者については代襲あり)がいる場合には、生存配偶者は、被相続人の身の回りの動産および定額として現在のところ45 万ポンド(相続開始時から支払時までの利息を含む)に加えて、ネットの遺産からこれらを差し引いた残余の2 分の1 を、元本で得る権利を有する。

 

 

(3) 上記2 つのいずれにもあてはまらない場合には、生存配偶者はネットの遺産の全部を得る権利を有する。

 

なお、相続の際にまず夫婦財産の清算をするという発想は、日本法と同様、みられない。但し、そのような発想は、家族給付(family provision)のところで問題となる。これについては第7章(特に31)で扱う。

 

 

2 血族

 

血族としては、次の順序で、無遺言相続受益者としての資格が与えられる。以下の(1)、(3)及び(4)((4)(b)を除く)の各場合には、ネットの遺産は、人格代表者を受託者とする制定法上の信託(statutory trust)の形式で保有される。

 

 

(1) 子(代襲を含む。卑属issue ともいう)

 

 

生存配偶者がいない場合には、子(代襲を含む)がネットの遺産の全部について権利を得る。

生存配偶者がいるときは、ネットの遺産から1(1)で生存配偶者が得る権利を差し引いた残余の全部につき権利を得る。いずれの場合でも、子が複数のときは均等割合で分け、代襲があるときは株分けによる。

 

 

子としては、養子も含み(イングランドでは、実親との関係が断絶されるタイプの養子しか認められていない)、婚姻内の子か婚姻外の子かによる区別もない。

 

 

(2) 両親(parents)

 

 

生存配偶者がいない場合には、被相続人の親がネットの遺産の全部について権利を得る。生存配偶者がいる場合には、ネットの遺産から1(2)で生存配偶者が得る権利を差し引いた残余の全部につき権利を得る。いずれの場合でも、両親とも生存していれば均等割合で分ける。

 

 

(3) 全血の兄弟姉妹(brothers and sisters of the whole blood)

 

 

生存配偶者がいない場合には、全血の兄弟姉妹がネットの遺産の全部について権利を得る。生存配偶者がいる場合には、ネットの遺産から1(2)で生存配偶者が得る権利を差し引いた残余の全部につき権利を得る。いずれの場合でも、該当者が複数のときは均等割合で分け、代襲があるときは株分けによる。

 

 

(4) その他の血族

 

 

生存配偶者がいない場合に限り、次の順序で、ネットの遺産の全部について権利を得る。(a) 半血の兄弟姉妹、(b) 祖父母、(c) 全血のおじおば、(d) 半血のおじおば。

 

 

3 相続受益者不存在(bona vacantia)

 

1 および2 によって相続受益者たる資格を得る者がいない場合(相続開始時には小さい子がいたが、後に18 歳になる前に子を残さずに死亡した、というような場合も含む)には、王権(the Crown)が遺産の全部について権利を得る。王権は、裁量により、遺産から特別縁故者に分配をすること

ができる(AEA1925, s.46(1)(vi))。

 

 

 

 

すみれ

「25万ポンドって約4,500万円。子供の権利が強いね。イングランドでは普通養子縁組はなくて特別養子縁組だけなんだ。子には嫡出やら非嫡出やらがなくて子は子で分かりやすい。王権。王家?国かな。人格の代表者は法律で認めれられた信託(statutory trust)の受託者にも変身するんだね。」

 

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