〒903-0114沖縄県中頭郡西原町字桃原85番地 TEL098-945-9268 受付時間平日9:00~17:00

司法書士宮城事務所 > お便り > お便り > 相続に関する法律 フランス⑥終

相続に関する法律 フランス⑥終
2015年12月20日

 

立教大学 幡野弘樹

金沢大学 宮本誠子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

 

 

6 公証人の役割

 

 

1 フランスにおける公証人

 

 

(1) 公証人の職務内容

 

フランスの相続においては、日常生じる法的問題の処理にあたる職業的法律家として、公証人notaire の役割が非常に重要である。

公証人は、公務員ではなく、公務担当者officier public(公署官ともいう)である。当事者からの依頼を受けて仕事をし、報酬を得てはいるが、公務担当者であるために、依頼者の利益を実現するのではなく、中立性neutralité の義務を負う。当事者に対しては、公正で公平な助言conseil désintéressé et impartial をしなければならない。

 

 

公証人の、伝統的で基本的な仕事は、公署証書acte authenitque を作成することである。公署証書は、これを作成する権限を有する公務担当者が、必要とされる厳格な方式をもって作成した証書であり(1317 条)、そのうち、公証人が作成した公署証書は、特に公証証書acte notariéと呼ばれる。

 

公証人には公証権限mission d’authentification があり、証書を作成するにあたり、当然に、調査・通告しなければならない。公証人に、公正で公平な助言をする義務が課されるのは、公証権限を有するからである。公証人に助言義務を課すことで、法律行為をなすのは当事者自身であるのに、その法律行為の有効性と実効性を公証人に担保させることが可能となっている。

 

当事者が話し合いを終えて、公証人に証書の作成のみを依頼することもあるが、そのような場合でも、公証人には、助言義務の延長として、調整する義務devoir de conciliation が課される。通常は、あらかじめ公証人に相談することが多く、公証人は紛争予防の役割も果たしている。

 

 

(2) 公証証書の効力

 

 

公証証書を含む公署証書には、確定日付、証拠力、執行力が付与される。

証拠力については、民法典1319 条が、「公署証書は、契約当事者およびその相続人または承継者の間で、証書が含む合意について完全な証拠力を有する」と規定している。公署証書の証拠力を争うためには、公署証書に対する偽造の申立inscription de faux contre les actesauthentiques の手続き(民事訴訟法典303 条、304 条)によらなければならない。偽造申立に敗訴した原告には民事罰金が課され、損害賠償責任を負うこともある(同305 条)。この手続きによって、公署証書の証拠力が覆されることは極めて稀である。また、執行文のついた公署証書の謄本は、そのままで執行力を有する。

 

 

2 法定相続、贈与・遺贈における具体的な役割

 

 

フランスでは、家族の財産に関してあらゆる局面に公証人が関与している。夫婦財産契約の締結、遺言書の作成など、重要な法律行為をなす場合には、必ず公証人に相談にいく習慣がある。

相続財産(遺産)の処理にも多くの場合に公証人が関与している。相続財産に不動産が含まれている場合、遺言がある場合、被相続人が生前贈与をしていた場合には、必ず、公証人を関与させなければならない77。

 

相続の場面において、公証人は、①被相続人の家族状況、資産状況を明らかにし、②相続税の申告書を作成して、支払わせ、③遺産分割がなされるまでの間、相続財産(遺産)を管理し、④遺産分割を行う。④では、遺産に含まれる積極財産・消極財産の額を確定させ、積極財産から消極財産を差し引いた「純益」を算出し、恵与の持戻しや遺留分減殺もあらかじめ考慮しておいて、最終的に残った額を各相続人等に分配するという役割を果たす。

 

 

 

 

すみれ

「日本の公証人とは少し違うみたい。重要な法律行為をする場合には「必ず」相談にいく習慣があるって、すごい信頼されてるんだね。公証人が関われば、証拠力も「極めて」高いってどのくらいかな。相談しておけば間違いないって感じかな。相談料とかないのかな。公証人が相続税の申告書まで作成するんだ。すごいね。それじゃ、残された家族全員と関わるってことだ。完全に中立は難しいような気がする。」

 

 

 

 

第2 章 問題点

 

 

1 相続制度に関する国民の意識

 

 

1 配偶者間の相続に関する国民の意識

 

 

若干古いが、1980 年頃になされた、配偶者間での相続に関する世論調査と公証人に対する調査を分析・検討したテーズ78によると、死亡に際して配偶者間で特別に財産を移転させる方法としては、将来財産の贈与、夫婦財産制、遺言が考えられるが、そのうち、将来財産の贈与が最も頻繁に用いられている79。婚姻中に夫婦間でなされる将来財産の贈与は、財産が即時に移転するわけでもなく、撤回不可能というわけでもないから、夫婦の状況を調査しながら契約内容を推敲することもできるという点で、公証人にとって安心で、勧めやすい。要式が厳格に要求されており、公証人が贈与契約の証書を作成して、確実に保管することができる。

 

公証人が関与するため、合意の不備、能力の欠如を理由として、その有効性が問題となることもなく、自筆証書遺言よりも確実である80。贈与契約はその契約締結時に証人を要しないため、公正証書遺言よりも秘密にできる点も、当事者が贈与を選択する理由となっている81。遺留分減殺の順序の観点からも、将来財産の贈与は現在の財産の贈与と同順位であり(923 条82)、遺言による処分に劣後してなされるため、受益者となる相手方配偶者にとってより安全であることも考慮されている。

 

 

被相続人が遺言(多くは自筆証書遺言)を作成する場合には、生存配偶者に排他的に利益を与えることを目的としていることはほとんどなく、遺言では一般的に、複数の処分がおこなわれる。ただし、遺言の8 割において、遺言者は配偶者を受遺者の1 人としてはいる83。

 

 

 

2 その他

 

 

(1) 生命保険の利用

 

 

フランス保険企業協会Fédération Française des Sociétés d’Assurances(FFSA)が公表している調査結果によると、フランスにおける生命保険への加入目的は、退職後の生活のためが56%、投資目的が37%、死亡後の家族の生活を守るためが24%である84。生命保険の利用に、貯蓄・投資が念頭に置かれていることがわかる。

 

 

(2) 相続税

 

 

フランスの租税法上では、贈与税・相続税という表現はなく、登録税droits d’enregistrementという。登録税自体は、不動産売買、不動産賃貸、営業財産、社員権等の有償譲渡、会社の設立等、相続及び贈与など様々な法律行為の際に徴収される税であり、そのうちの生存者間の贈与あるいは死を原因とする譲渡において徴収される登録税が、日本における贈与税・相続税にあたる。

 

かつては、配偶者間の相続に最大40%の登録税率が適用されていた。高齢になった際に、夫婦財産契約の内容を夫婦共通財産communauté universelle に変更し、配偶者の一方が死亡時には他方へ共通財産全部を帰属させるという特約をつけることで、配偶者間での相続は生じさせず、登録税の支払いを回避し、共通財産の全部が生存配偶者に帰属するという工夫もなされた。

 

現在では、2007 年8 月21 日の法律第1223 号によって、配偶者間およびPACS のパートナー間での相続への課税は廃止されている。

 

 

 

 

 

 

すみれ

「1980年から今はどんな風に変わってるんだろな。将来財産の贈与契約が頻繁に用いられているってどのくらいかな。配偶者とパートナーには相続税の課税がないんだ。やっぱり2人で1人って感覚かな。」

 

 

 

 

 

2 国内における議論の状況

 

 

フランスでは、2001 年法律により、民法典第3 編第1 章相続のうち、第1 節相続の開始、包括名義及び占有権、第2 節相続するために要求される資格。相続人の資格の証明、第3 節相続人を改正し、2006 年法律により第3 編第1 章第4 節相続人の選択権、第5 節相続権主張者の不存在および相続人の不存在、第6 節受任者による相続財産の管理、第7 節法定不分割制、第8 節分割の改正がなされ、結局、2 つの法律により相続法の全面改正が実現している。

 

どちらの法律についても、学者グループによる準備作業が先行している。カルボニエ学長、カタラ教授が主宰する作業グループの検討作業は、1995 年2 月5 日に国民議会に提出した法律案により参照されていた。しかし、その法律案はその後審議のなされないままであった。2001 年法律の立法段階でも、1995 年に国民議会に提出した法律案をそのまま採用する動きもあったが、結局は、先に述べた通り第1 節から第3 節の改正にとどまった。

 

もっとも、2001 年改正による配偶者相続権の拡大からは、血縁から婚姻へという家族像の変化を読み取ることができる。この点については、どの学説も好意的に受け止めている85。2006 年法律については、カルボニエ教授をはじめとするグループが2003 年に公表した『恵与:法律の提案』86という立法提案を参照している。そこでは、たとえば旧法下では原則として禁止されていた段階的恵与(libéralité graduelle)87を容認する方向での提案がなされていた。

 

さらに、司法省は公証人団体にもアンケートを実施しており、公証人団体は、遺留分の価額弁償の原則化などを提案していた。2006 年法律により、相続法全体の改正が実現したが、それは断片的な改正の集合体に過ぎない、理念的というより技術的であるという指摘がある88。もっとも、全体の大きな流れとしては、段階的恵与の承認や、遺留分の価額弁償の原則化など、さまざまな相続法上の公序の後退を指摘することができる。

 

それは、被相続人の意思がより強く実現されることを意味する。たとえば、カタラ教授は、遺留分制度の改正について「フランスの遺留分は、2007

年1 月1 日に、1000 年の慣習法上の遺留分と2 世紀にわたる民法典の歴史から断絶する」と嘆いている89。もっとも、自由を拡大する際には、遺留分減殺請求権の事前放棄を認める際に、父母の子への影響力の濫用を防ぐために、厳格な要件に服せしめていた例からも分かるように、その自由の濫用に対するしかるべき保護も準備している場合が多いことも指摘しておかなければならない。

 

 

 

 

 

すみれ

「血縁から婚姻へ、っていう流れがあるんだ。実態は法律より変わってるんだろな。遺留分て昔からあるんだね。カタラ教授嘆かないでくださいよ。何でドイツとフランスとイングランドとアメリカと韓国と台湾なんだろ。順番も何か意味があるのかな。」

 

ポリー

「すみれ、お疲れ様です。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA