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相続に関する法律 フランス③
2015年12月20日

 

立教大学 幡野弘樹

金沢大学 宮本誠子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

 

 

 

2 相続人と相続分

 

(1) 血族相続人

 

相続人は、配偶者と血族相続人に二分することができる。血族相続人については、4 つの順位がある(734 条1 項27)。第1 順位が子およびその卑属、第2 順位が父母、兄弟姉妹および兄弟姉妹の卑属(以下、「優先傍系血族」とする)、第3 順位が父母以外の尊属、第4 順位が兄弟姉妹およびそれらの者の卑属以外の傍系血族である。先順位の者がいる場合には、後順位の者は相続人とはならない(734 条2 項)。

 

なお、代襲相続は、子の卑属、優先傍系血族の卑属について認められる(752-755 条)。

 

735 条は、「子またはその卑属は、性別も、長子であることの区別もなく、たとえそれらの者が異なる結合から生まれた者であっても、父母またはその他の尊属を相続する」と規定し、子の間の平等を定めている28。

 

 

すみれ

「父母と兄弟姉妹が同じところにいるのは、日本と違う。わざわざ性別も、とか長子であること、とか異なる結合、とか字が入るんだね。」

 

 

 

 

 

父母、兄弟姉妹および兄弟姉妹の卑属については、次のような形で相続分が定められている。

被相続人の父母がともに生存しており、被相続人に子孫がおらず、優先傍系血族がいるとき、父母がそれぞれ4 分の1 の相続分を取得し、残りの2 分の1 は優先傍系血族に帰属する(738 条1項29)、父母の一方のみが生存するとともに、優先傍系血族がいるとき、父または母が4 分の1 の相続分を取得し、優先傍系血族が4 分の3 の相続分を取得する(738 条2 項)。父母がおらず、優先傍系血族のみいるとき、それらの者がすべての相続財産を取得する(737 条30)。相続人として、父母のみしかおらず、優先傍系血族がいないとき、父母が2 分の1 ずつ相続分を取得する(736条31)。

 

相続人として、父母の一方がおり、優先傍系血族がいないとき、父母の一方がすべての財産を相続する。ただし、両系相続fente というルールがあり、被相続人よりも先に死亡した父または母の系に直系尊属がいる場合には、生存している父母の一方が2 分の1、先に死亡した父または母の系の直系尊属が2 分の1 の財産を取得する(747 条32)。その際、最も近い親等の尊属が他のすべての尊属を排除し、同一の親等の場合には頭分けで分ける(748 条33)。

 

第2 順位までの相続人がいない場合、相続財産は、父母以外の尊属に帰属する(739 条34)。この場合も両系相続のルールにより、父系、母系の尊属それぞれが全体として2 分の1 の財産を取得する。一方の系に尊属がいない場合には、他方の系の尊属がすべての財産を取得する(748 条3項)。

そして、第3 順位までに相続人がいない場合、相続財産は、優先傍系血族以外の傍系血族に帰属する(740 条35)。この場合も、父形の系の者と母型の系の者とで、相続財産が折半される(749条36)。各系において、最も近い親等の者が他の者を排除し、同一の親等の者の間では財産を頭分けする(750 条37)。

 

(2) 生存配偶者

 

生存配偶者の相続分については、他の相続人として、直系卑属がいる場合とその他の場合で分けて論じることとする。

 

(a) 直系卑属との競合

 

直系卑属が存在する場合について、2 つの場合を区別して規律されている。

 

第1 に、すべての子が被相続人・生存配偶者夫婦から生まれている場合、生存配偶者は財産全体に対する用益権か、4 分の1 の所有権かを選択することができる(757 条38)。この選択権は、厳格な様式主義に服さず、あらゆる方法により証明でき(758 条の239)、いつでも行使可能である。ただし、すべての相続人は、書面で配偶者に選択権の行使を促すことができ、3 箇月以内に書面で選択しない場合は用益権を選択したと見なされる(758 条の340)。さらに、生存配偶者が用益権を選択した場合、生存配偶者または虚有権者41たる相続人は、用益権から終身定期金への転換を請求することができる(759 条42)。

 

すみれ

「用益権っていったら全部使っていいってことか。所有にはこだわらなくても、使えるならいいしな。」

 

 

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第2 に、1 人または数人の子が、その夫婦から生まれたのではない場合、もはや生存配偶者に選択権はなく、4 分の1 の所有権を受取ることになる(757 条)。生存配偶者に用益権を認めると、用益権者である生存配偶者と、虚有権者である子、とりわけ被相続人の前の婚姻の子との間で長期間の権利競合が生じることになる。そこで、紛争の予防するために、生存配偶者に用益権という選択肢を認めないこととしている。

 

 

すみれ

「虚有権者ってなんだろ。」

 

(b) その他の血族相続人との競合

 

死亡者が直系卑属を残さず、父母双方を残した場合、生存配偶者は財産の2 分の1 を受取り、父母はそれぞれ4 分の1 ずつ受取る(757 条の1 第1 項43)。父母どちらか一方のみ生存している場合は、生存配偶者が4 分の3 を受取る(757 条の1 第2 項)。そして、死亡者の子またはその卑属も、父母も存在しない場合、生存配偶者がすべての財産を受取る(757 条の244)。なお、相続人として、生存配偶者と優先傍系血族がおり、子も父母もいない場合であり、被相続人がその父母から受け取った財産が相続財産の中に現物で残存している場合、その財産は、生存配偶者と優先傍系血族で二分する(757 条の345)。

 

(3) パクスのパートナー、内縁concubinage パートナーの相続上の権利

 

最後に、補論として、パクス(PACS)のパートナー、内縁パートナーの相続上の権利についてここで概観しておく。

 

(a) パクス

 

パクスは、民事連帯規約(pacte civil de solidarité)の略語であり、同性または異性の2 人の成人が締結する共同生活を組織するための契約であると定義されている(515 条の1)。パクスは、パートナー間に物的援助の義務(515 条の4)などの効果は生じさせるが、一方的に関係を解消することができ、さらに親子関係に関する効果は一切なく、子の養育等の義務を生じさせるものでもない。その点に婚姻との大きな相違点が存在する。

 

相続上の権利については、婚姻とは異なり、一部の例外を除いて、パクスのパートナーには発生しない。パクスのパートナーに認められる相続上の権利は、以下のようなものがある。第1 に、パクスのパートナーは、居住用の住宅の賃貸借契約について、賃借権の共同行使ができる点(1751 条1 項、第1 章1(1)を参照)、一方のパートナーが死亡した場合に、他方のパートナーが賃借権を主張できる点(1751 条3 項、第1章12(3)を参照)は婚姻をしたカップルと同様である。第2 に、生存配偶者に認められた1 年間の無償居住権に関する763 条1 項・2 項の規定が、パクスのパートナーにも準用されている(515条の6 第3 項)。また、優先分与に関する831 条、831 条の2、832 条の3、832 条の4 について、パクスのパートナーに準用されている(515 条の6 第1 項)。

 

 

すみれ

「こちらが教授によるパクスの説明でした。日本でも役所で証明書が出るようになって、生命保険が出てきたりしている。携帯電話の家族割も、家族信託も。フランスはいつからなんだろ。」

 

 

(b) 内縁

内縁concubinage は、「カップルとして生活する異性または同性の2 人の間で営まれる、安定性と継続性を有する共同生活により特徴づけられた事実上の結合である」(515 条の8)と定義されている。婚姻に伴う義務や負担を負わない以上、民事法の観点からすると、何らの約束もせずに共同生活を送る選択をした者と評価される。立法準備作業に参加した学者の1 人も、内縁パートナーは「独身者である」46と評価している。

 

相続上の権利としても、周知の内縁パートナーが賃借権の主張ができる(1989 年7 月6 日法律14 条)など、個別規定でわずかに認められているにすぎない。なお、判例は、一方のパートナーの労働を手伝ったが、報酬を受け取っていなかった他方のパートナーに対して、不当利得による保護を与えており47、この判例は一方のパートナーが死亡したケースでも応用されうると考えられている48。

 

すみれ

「独身者。応用されうる。カップル。縁。定義も応用もされたくもないな。」