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相続に関する法律 フランス②
2015年12月20日

 

立教大学 幡野弘樹

金沢大学 宮本誠子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

2 相続分

 

1 死亡時の夫婦共有財産の清算方法

 

(1) 法定共通制

 

フランスの法定夫婦財産制は、法定共通制と呼ばれるものである。法定共通制は、夫、妻それぞれの固有財産と夫婦の共通財産から構成される。まず、共通財産は、積極財産としては、夫婦の個人的勤労および夫婦の特有財産の果実および収入について行う節約に由来する、婚姻中夫婦がともにまたは個別に作った後得財産により構成される(1401 条1 項)。

 

夫婦それぞれが挙式の日に有していた財産、および夫婦が婚姻中に贈与もしくは遺贈により取得する財産は、特有財産となる(1405 条1 項)19。婚姻中に取得した個人的性質を有する財産、例えば衣服なども特有財産となる(1404 条1 項)。なお、特有財産の挙証のなされない限り、すべての動産または不動産は共通後得財産とみなされる(1402 条1 項)。消極財産については、原則として、婚姻中に生じた夫婦の一方の負債の支払いは、共通財産に対して追行できる(1413 条)。ただし、一方配偶者の債権者は、220 条の家庭の維持および子の教育から生じる債務の場合を除き、他方配偶者の利得および給与gain et salaire を差し押さえることはできない(1414 条1 項)。

 

一方配偶者が死亡した場合、共通制が解消され、清算が行われる20。清算をするにあたっては、まず、共通財産と特有財産を区別するため、取戻と償還が行われる。取戻とは、夫婦それぞれが自らの特有財産の取戻を行うことである(1467 条1 項)21。法的には、特有財産は婚姻中もそれぞれの者に帰属していたので、厳密な意味では法律上の取戻ではないが、あたかも取戻すような外観を示しているので、取戻という用語が用いられている。現物が存在する場合には現物で、そうでない場合には金銭で取戻がなされる。

 

次に、償還は、共通財産と夫婦それぞれとの間に生じた債権債務の清算手続である。たとえば、夫婦の一方が共通財産から自己の個人的債務の弁済の便宜を受けていたときには、その者の特有財産から共通財産に対して償還の義務を負う。

 

 

すみれ

「まず、自分の財産を決めるんだ。少し計算がややこしそう。」

 

 

 

 

以上の取戻と償還を経た上で、共通財産の分割が行われる。これは、生存配偶者と死亡した配偶者の相続人との間で、共通財産の共有状態を消滅させる手続である。取戻、償還を経た後に、共通財産の分割時点での評価価額に基づき、各配偶者はそれぞれその2 分の1 を取得する(1475条1 項)。共通財産の分割の際には消極財産も二分されるが、実際上は、清算人たる公証人は、まず債務を弁済し、積極財産として残るものがあれば、それを二分している22。共通消極財産については、配分財産の利益bénéfice d’émolument という制度があり、共通財産の解消の際、一定の条件の下で、一方配偶者が、自己の受け取る積極財産の限度において、かつ、共通財産負債の半分についてしか負担しないという利益が認められる(1483 条、1486 条)。

 

ここで2 点注意が必要である。第1 に、フランスの法定財産制は共通制であるため、夫婦の一方が死亡した際に、夫婦財産の清算として、共通財産の2 分の1 を自らの財産を取得することができる。第2 に、死亡した配偶者に帰属する共通財産の残りの2 分の1 についても、配偶者は相続人として一定の権利を取得することになる。次項で相続分について論じるが、このような夫婦財産の清算を前提としている点に注意が必要である。

 

 

すみれ

「共有状態は解消されるようにしてるんだね。最初から、借金については払える分だけ払うっていうのもいいね。夫婦共通の財産については、残された人は半分と、もう少し権利があることに注意か。」

 

 

 

(2) 約定夫婦財産制

 

以上法定共通制に基づいて説明をしてきたが、夫婦財産契約を締結することにより、法定共通制を部分的に修正することや、別産制、後得財産分配参加制を選択することもできる。

 

法定共通制を部分的に修正する例としては、包括共通制(1497 条6 号)という、現存のおよび将来の動産・不動産のすべてについて、その伝来起源を区別することなく、包括的にそれらを共通財産とすることができるものもある。包括共通制を採用するとともに、共通財産の解消の際の分割の方法として、夫婦の他方へ共通財産全部を帰属させることを約することもできる。この場合、夫婦の一方が死亡した場合、夫婦の財産はすべて生存配偶者に帰属することとなる。

 

しかし、仮に再婚をした夫が、妻との間で今述べたような夫婦財産契約を交わし、その後子ももうけたが、前婚の子もいたという場合、その夫の相続に際し、再婚から生じた子は、夫婦双方が死亡した際に親の財産を受取ることができるが、前婚から生じた子は、再婚夫婦双方が死亡しても相続に招

致されることはない。そこで、1527 条2 項により、先の婚姻の子に対し、その親の死亡時に、子の遺留分を保護するための権利を与えている23。

 

別産制は、夫婦間にいかなる共通財産も構成せず、夫婦のそれぞれに対して、その特有財産の管理・受益・処分の権利を委ねる制度である24。

 

後得財産分配参加制は、婚姻中は、夫婦はそれぞれ各自の財産につき管理・受益・処分の権限を保持する別産制をとりつつ、夫婦財産制の解消の時点において、各自の特有財産のそれぞれについて当初財産と終局財産の双方を評価し、婚姻中の後得財産に対し、夫婦のそれぞれにその価格の半分につき債権的配分利益を認める制度である25。ドイツの付加利益共通制に類似している。

 

なお、フランスでは、一定の要件の下、婚姻中に夫婦財産制の変更をすることが可能である26。1397 条1 項は、約定または法定の制度が適用されてから2 年経過した後に、変更に家族の利益がある場合に、公証証書acte notarié を作成することにより、夫婦財産制の一部または全部を変更することができる。

 

この場合、修正される(つまり変更前の)夫婦財産制の清算について約定しないと無効となる(1397 条1 項)。修正される契約において当事者であった者と夫婦の成人の子には夫婦財産制の変更が通知され、それらの者は、3 か月の期間内に、反対の申立てをすることができる(同条2 項)。反対の申立てがあった場合は、裁判所による認可が必要となる。夫婦の一方に未成年の子がいる場合には、裁判所による認可が義務となる(1397 条5 項)。

 

 

すみれ

「夫婦財産契約かー。実際に契約している夫婦も多いのかな。」

 

 

 

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「犬の心臓」が文庫になっていました。(渋柿)