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相続に関する法律 フランス①
2015年12月20日

 

第 2 部 フランス法

立教大学 幡野弘樹

金沢大学 宮本誠子

各国の相続法制に関する調査研究業務報告書より

平成26 年10 月公益社団法人 商事法務研究会

 

法制審議会-民法(相続関係)部会資料より

第1 章 制度の概要

 

1 相続時における配偶者の居住権保護

 

1 夫婦財産制度による保護

 

相続時の問題を論じる前提として、夫婦の婚姻中においても、夫婦財産制度により家族が生活

する住宅の存続が保障されている点を指摘しておきたい。すなわち、フランスにおいては、賃借

権の共同行使、家族住宅の処分権の制限という2 つの形で、家族住宅の存続を保障するための法

制度が整備されている。

 

 

すみれ

「フランスでは、住むところは保障されているんだ。大事だよ。引越し好きな人もいるかもしれないけど、慣れた家に住みたいし。引っ越すとしても時間が欲しいな。勝手に処分も出来ないのかな。」

 

 

 

(1) 賃借権の共同行使

 

賃借権の共同行使については、民法典1751 条1 項が、「職業的または商業的性格を持たず、実際に夫婦双方またはパクスのパートナーが共同で請求をした場合にはパートナー双方の居住の用に供される建物の賃借権は、その夫婦財産制がいかなるものであっても、すべての反対の合意に

かかわらず、また賃貸借が婚姻前に締結された場合であっても、夫婦またはパクスのパートナーの一方および他方に帰属するものとみなされる」と規定している。この規定により、一方配偶者は単独では賃貸借契約を解約や譲渡をすることはできず、他方配偶者の同意を要することになる。

なお、離婚や別居1の際、この賃借権は、「問題とされる社会的および家族的利益を考慮して、離婚または別居の請求を受理した裁判所が夫婦の一方に付与することができる」(1751 条2 項)こととなる。

 

(2) 家族住宅の処分権

 

家族住宅の処分権については、民法典215 条3 項が、「夫婦は、その一方だけでは、家族の住宅を確保する権利も、住宅に備えらつけられる家具も、処分することができない」と規定している。

 

この規定に反して、住宅およびそれに備え付けられた家具が処分された場合、同意を与えなかった者が無効を請求することができる。この規定の趣旨は、配偶者の一方が単独で、その家族から住宅を奪う、またはそれに備え付けられた家具を奪うことを妨げる点にある。

 

なお、かつて破毀院判例は、同条の処分権制限は、第三者に家族住宅に対する権利を遺贈することを妨げないと判示した2が、後に述べるように、現在では2001 年12 月3 日法律(以下では、「2001 年法律」と略称する。)により、生存配偶者の居住権が確保されるに至っている。

 

 

すみれ

「住居に社会的利益、家族的利益も考えてくれるのか。家族的利益って初めて聞いたよ。家具も勝手に処分したらだめなのか。夫婦・パートナーは合わせて1人かな。」

 

番人

「合わせて一人か。確かに。家一つについて、住んでいる人は全員で権利一つって考えることもできるか。ちょっと意見が合わないからって追い出すのも寂しいし。」

 

 

2 相続制度による保護

 

フランスでは、2001 年法律により、生存配偶者の相続上の権利が強化されている。その際に、生存配偶者の相続上の権利が問題となる社会学的・統計学的データから紹介されている。まず生存配偶者の大多数(84%)は女性、すなわち寡婦であり、そのうち87%が60 歳以上である3。そして、女性の平均寿命の長期化に伴う、寡婦の単身生活の長期化も指摘されている4。子(2 人の場合が最も多い5)は50 歳を超え、相続開始時には既に独立している6。以上のような状況が、典型的な場合として措定されている。

 

なお、80%の夫婦は生命保険、恵与7、夫婦財産制の活用等により、生存配偶者の状況を改善しているが、残りの20%の夫婦は法定相続分の規律に服するのみとなっている8。さらには、多くの相続は、住宅とわずかな貯蓄(約1000 ユーロ)を対象とするものであることも指摘されている9。そこで、

 

2001 年法律は、単に割合分としての相続分を生存配偶者に付与するだけでなく、具体的な生存配偶者の生活環境、とりわけ住宅を維持するための規定を置いている。より具体的には、生存配偶者に対して、住居に対する一時的な権利、終身の権利という2 種類の権利を保障するとともに、賃借権の優先的帰属および遺産分割における優先分与を認めている。以下、それぞれについて概観することとする。

 

 

 

すみれ

「2001年といえば、21世紀の始まりだ。それに向けて準備していたのかな。1000ユーロって13万円くらいか。2002年からユーロも始まっているな。住居について、終身の権利が保障されているっていうのは安心できるね。」

 

 

 

 

(1) 1 年間の無償の居住権

 

まず、法律は、生存配偶者に、1 年間法律上当然に、住宅および住宅に備え付けられた動産に対する無償享有権を認めている(763 条1 項10)。生存配偶者が賃貸された不動産に居住している場合、家賃は1 年間相続財産から生存配偶者に償還される(同条2 項)。本条は強行規定である(同条4 項)。また、本条に規定された諸権利は、相続上の権利ではなく、婚姻の直接の効果とみなされている(同条3 項)。したがって、この権利の行使は、相続の承認をもたらさない。

 

 

すみれ

「家賃は、亡くなった人が残したお金から払われるんだ。できるだろうけど、フランスでは強制なんだね。」

 

 

 

(2) 終身の居住権

 

次に、2001 年法律は、生存配偶者に住居に対する終身の居住権、および住居に備え付けられた動産の使用権を認めている(764 条1 項11)。その代わり、763 条の権利とは異なり、居住権および使用権の価額12は、配偶者が受取る相続権の価額から控除される(765 条1 項13)。もっとも、

居住権および使用権の価額が相続権の価額より大きい場合、配偶者は剰余の部分に対する償還義務を負わない(同条3 項)。生存配偶者は被相続人の死亡から1 年間、この居住権・使用権を享受する意思を表明するための期間を有する(765 条の114)。そして、配偶者および相続人は、全員一致の合意により、居住権および使用権を終身定期金または元本に転換することができる(766条15)。

 

なお、この終身の居住権に関しては、この権利が公証遺言により表明された死亡者の反対意思の不在を条件としている(764 条1 項)点について、立法過程でも元老院による抵抗が存在し、生存配偶者の生活環境・生活条件の維持という本改革の主たる目的という観点からも批判がなされているが16、維持されている。

 

(3) 賃借権の帰属

 

なお、賃借権については、先に1(1)で紹介した賃借権の共同名義に関する1751 条が、一方配偶者が死亡した場合の賃借権の帰趨について規定している。すなわち、「配偶者の一方、またはパクスのパートナーの一方の死亡の場合、賃貸借の共同名義人である生存配偶者または生存してい

るパクスの他方のパートナーは、その者が明示的に放棄した場合を除き、賃貸借に対して排他的な権利を有する」(1751 条3 項)。すなわち、先に死亡した一方配偶者の相続人は、生存配偶者が明示的に放棄した場合を除いて、賃借権に対していかなる権利も持たないことになる。

 

 

すみれ

「お家を借りている場合は配偶者(夫・嫁)が優先ね。パクスって、後で説明出てきます。書いてみたけど文章が下手なので消しました。」

 

 

(4) 遺産分割における優先分与

 

さらに、生存配偶者には、遺産分割の際に、その者が実際に居住のために用いている建物および建物に備え付けた動産の所有権または賃借権に対して、優先分与権が認められている(831 条の2)17。とりわけ、生存配偶者が死亡した配偶者が所有する建物に居住していた場合、生存配偶者の優先分与権は、法律上当然のものとなる(831 条の3 第1 項)18。

 

 

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「佃煮ありがとうございました。」(渋柿)

 

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