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親族以外の成年後見人は、信託法164条1項の終了の意思表示ができない、は可能か。
2019年06月06日

 

家族信託専門コンサルタントで司法書士の川嵜一夫先生が、5月30日付メールマガジンに記載されていました。
「親族以外の成年後見人は、信託法164条1項の終了の意思表示ができない。」という条項を入れて、不動産登記の信託目録にも記録する場合がある。

 

 

任意後見を利用する必要があまりない場合(親1人子一人など)に、第三者による信託終了をさせないための条項のようです。

 

 

この条項は初めてみて、機能するのかなと考えてみました。

 

 

結論としてはケースバイケースになります。

 

 

私も現在、「本信託において、信託法164条1項は適用しない。」という条項を信託契約書に入れることが多いです。理由は、委託者兼受益者が1人で信託を終了させてしまうと、民事信託・家族信託の安定性が失われるからです。

 

 

 

さらに、
「受益者に民法上の成年後見人、保佐人、補助人または任意後見人が就任している場合、その者は受益者の権利のうち次の代理権および同意権を有しない。ただし、任意後見人、保佐人および補助人においては、その代理権目録、代理行為目録および同意行為目録に記載がある場合を除く。(1)本信託の終了に関する合意権。」という条項 を入れることもあります。

 

 

これは、親族に限らず民法上の成年後見人等に信託の終了に関する合意権を与えてしまうと、民事信託・家族信託が想定外のときに終了してしまう可能性があるからです。実際に機能するかは未だ分かりません。

 

ただし、任意後見契約に関する法律、成年後見制度の利用の促進に関する法律の趣旨、同委員会議事次第を読みながら、この表現なら

調整可能だと確信したので自分で考えて入れました。

 

信託財産に不動産がある場合、信託目録に記載はしません。信託の終了事由にいくつか記録して、「その他の事項は○○年第○○号月○○号信託契約公正証書(○○法務局所属)及びその変更を証する書面に記載」と記録します。

 

 

 

 

さて、
「親族以外の成年後見人は、信託法164条1項の終了の意思表示ができない。」に戻ります。

この条項がどういう時に問題になり得るかというと、司法書士や弁護士が民法上の成年後見人に就いて、民事信託がされていることを知り、契約書で目にします。

 

 

「なるほど。私は法定代理人だけど、信託終了の意思表示は出来ないのか。」と考える司法書士や弁護士もいるかもしれません。

 

 

「何だこの条項は。法定代理人なんだから、信託終了の意思表示も可能に決まっている。これから自宅を売ろうとしているみたいだから、信託を終了させよう。」と考える方もいるかもしれません。

 

 

どちらが正しいのかは、成年後見人等の主観です。ただし、何が出来るかはある程度の範囲に落ち着きます。
信託を終了させたがっている成年後見人等を例に取ると、信託終了の意思表示自体は可能です。
理由は法定代理人だからです。

 

 

しかし、不動産登記は通りません。
親族以外の成年後見人だからです。よって、信託の終了を命ずる訴訟(信託法165条、166条)を提起することになります。

不動産売買契約はどうでしょうか?

 

買主、不動産業者は受託者がどのような権限を持っているのかを調べます。

その際に、受託者は忠実事務、善管注意義務を基に「成年後見人から信託終了の意思表示が届いていますけど、大丈夫ですよ。信託契約書には、信託法164条1項の終了の意思表示ができない、と書いてありますから。」と説明することになります。説明がなかった場合は、忠実義務違反、善管注意義務違反が問われます。

 

 

 

 

説明があった場合、買主は受託者と売買契約を行うでしょうか。不動産業者は仲介を行うでしょうか。私が買主だったら買いませんが、買うとしたら、この信託契約書を作成した人に対して、何かあった場合は責任を取る旨の書面を要求すると思います。
売買契約自体は、権限を持つ売主と買主の合意で締結出来て不動産登記も通るので、現金決済まで行うことが可能です(融資が絡むと別です)。

 

 

この場合も親族以外の成年後見人は、信託の終了を命ずる裁判(信託法165条、166条)その他の民法上の責任を問う訴訟を提起することになります。

 

 

 

預貯金はどうでしょうか。例えば、受託者が1億円分の預金を管理していて、同居している本人と自分の旅行、株式投資、金の売買、先物取引などを信託財産で信託契約に基づいて行っているとします。
この場合は、成年後見人等の管理している通帳に幾ら入っていて、その金額で業務が出来るのか、本人の1億円がゼロになっても生活していけるか、などのバランスが考慮されることになります。

 

 

金融機関は、信託契約書を保管していて、成年後見人等からの信託終了の意思表示だけでは、民事信託・家族信託専用口座を解約する可能性は低いのではないかと考えます。

 

 

信託の終了を命ずる訴訟(信託法165条、166条)の判決文などが必要になってくると思われます。

いずれにしても、訴訟になってしまうと時間とお金を費やして、精神的負担が生じます。
私の感想は、表現が少し過激かな、というものです。