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受益証券
2018年08月23日

 

 

1、      民事信託・家族信託における動向

 

一般書などに現れ、いつの間にか消えた条項があります。「本信託については、受益権証書は発行しない[1]」という受益証券発行信託(信託法207条~。)ではないことを示す条項です。理由としては、この条項をもって、信託契約は信託業法の適用がない民事信託・家族信託であることを証明することが出来る、というような説明が2015年~2017年頃まで行われていました。

引いた参考文献は弁護士の著作ですが、個人的には司法書士に多かったような感覚を持っています。

 

当初、この説明を聞いたとき、信託法では、受益証券が発行されない信託が原則で、例外として受益証券を発行する場合は、信託行為に定める(信託法207条)。だから、受益証券については、原則として何も記載しないのが民事信託の契約書ではないかな、と一回も契約書を作成していないのに思っていました。

私の実務では受益証券に関する条項はありませんが、なぜこのような条項が出てくるのか、ということについては私なりの仮説があります。

 

 

2、司法書士に特有の認識

 

平成18年に会社法が改正されました。司法書士が主に業務で扱う株式会社は、株式の譲渡制限があり、株券を発行しない会社です。

 

 

定款に、全ての株式に譲渡制限の定めがある会社は、公開会社ではない株式会社となりました(会社法2条1項5号)。

改正前は、株式会社が株券を発行しない場合は、定款にその旨を記載する必要がありました(改正前商法第206条の2)。

改正後は、考えが逆になり、株券を発行する場合は定款に記載する必要があることになりました(会社法214条)。

 

株式の譲渡制限の定めを定款に記載=公開会社ではない株式会社(通常の司法書士業務)

株券を発行する場合は定款に記載=株券発行会社(通常の司法書士業務では、数は多くない)

 

 

この2つの考えがごっちゃになって、

「本信託については、受益権証書を発行しない。」=民事信託・家族信託

という記載がみられるようになったのではないか、というのが私の仮説です。

 

 

 

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[1] 遠藤英嗣『新しい家族信託』2016日本加除出版P455など。