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任意補助人 試論
2018年06月18日

 

1、      任意補助人はどんなものか

 

任意補助人という用語は現在のところ、私の知る限りでは利用されていない。任意後見制度の代理権目録を利用して、民法上の補助人と同じような役割が出来ると考える[1][2]。利用者本人が、自身の症状に合わせながら任意保佐人、任意後見人と段階を経て同意権、代理権を受任者に与えていくことが可能となる。また民事信託の受託者や信託監督人、受益者代理人との連携を考えることができる。民法上は最も本人の意思を尊重できる補助制度が、後見制度に比べて20分の1以下の利用件数しかない事実[3]には様々な理由を考えることができる(法定後見をやむを得ず申立てたなど。)。本人が決めた者に受任者が確定される任意後見制度の中で、実質的に補助類型の仕組みを作ることが出来れば使い勝手の良い制度になると考える。

 

2、      先行研究

夫婦の任意後見人となる者が中心となり、受託者である信託銀行に指示を出して財産管理の負担を軽くし、任意後見人は身上監護の割合を多くしていく、というものがある[4]

任意後見契約における代理権目録において、民事信託との調整を図ることが可能か、消極的内容を記載することは可能か、という問題提起がなされている[5]

本稿では任意後見人と民事信託の受託者は同一人であっても構わないという立場を採るが、同一人である場合の利害関係・利益相反関係を整理するものがある[6]

また任意後見支援型信託の文例も研究されている[7]。この研究での契約書例は、任意後見監督人の選任の申立て等を停止条件として信託契約が発効するため、信託専用口座を作成する際に金融機関との事前調整を要する場合があると考える。金融機関には、信託専用口座を作成する際に委託者の本人確認及び意思確認を行うところがあり、任意後見人が信託契約書を持って行ってすぐに受け付けてくれるとは限らない。

 

3、      方法

 

任意後見契約締結後に任意後見監督人の選任の申立てを行う要件として、本人が補助・保佐・後見の各要件に該当する精神の状況にある者全てとしていることから[8]、補助類型に該当した時点で任意後見監督人の選任申立てを行うことを前提とする。最初に代理権又は同意権を与えるのは、年金受取口座の管理や要介護認定の申請等の一部の事務に限る。よって、任意後見契約締結後に直ちに任意後見監督人の選任申立てをすることも妨げられない。その後に本人の心身の状態に応じて同意権、代理権を付与、または同意権から代理権への変更が順次行われるように最初の任意後見契約の中で仕組みを作っておくことが望ましい[9]。何故なら任意後見契約における代理権目録には変更に関する規定がなく、任意後見人の同意権や代理権を徐々に増やしていこうとすると、その度に任意後見契約を締結する必要がある。又は法定後見へ移行[10]する選択肢もある。

 

(1)本人または任意後見監督人の同意又は承認

(2)本人または民事信託の受託者、信託監督人、受益者代理人の同意又は承認

(1)または(2)、もしくは(1)と(2)の併用による。

例えば、身上監護事務に関しては任意後見監督人による同意を、財産管理に関する事務については信託監督人による同意を要件とすることが考えられる。この同意は民法上の補助・保佐制度において家庭裁判所が行う同意権付与・代理権付与の審判に該当する[11]

 

4、      議論

任意後見監督人は、家庭裁判所によって選任され[12]公的な役割を担う。上記の例で財産管理に関する事務について、信託監督人による同意によって任意後見人に代理権が付与された場合、信託財産ではない財産について監督を行うのは任意後見監督人である。信託監督人と任意後見人の連絡体制を整えるか、信託監督人は信託財産及び民事信託の受託者のみを監督し、その他の財産に関する事務の同意は任意後見監督人に同意権を与えるなど後に利害が対立する可能性が少なくなるようにする必要がある。

任意後見監督人を承認権者、同意権者とするには、任意後見契約締結時にその住所及び氏名が特定されていなければならない[13]。任意後見監督人は、家庭裁判所が選任するので任意後見契約締結時は特定することが出来ない。よって任意後見監督人を承認権者、同意権者とすることは、現状において不可能である。

 

 

5、今後に向けて

任意後見人の代理権目録が一定の手続きを経て変更可能となることが望まれる。また任意後見監督人、家庭裁判所による監督を、本当に必要な方に必要な限度で行う、監督の方法を面談中心にして、事務(通帳を全部コピーして報告)などを簡易に(例えば写真に撮ってメールする、銀行が提供するアプリを利用する等)して親族の負担を減らさなければ、一部の横領と呼ばれることをやっている方のために、利用を考える人の拒絶反応が今後も強くなっていくのではないかと考える。

 

 

 

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[1] 任意後見契約に関する法律第三条の規定による証書の様式に関する省令附録第1号様式の注4及び第2号様式の注3

[2] 民法15条から19条まで、民法876条の6から876条の10まで。

[3] 最高裁判所事務総局家庭局平成28年の実情調査では、後見開始申立て26,836件に対して、補助開始申立ては1297件。

[4] 新井誠ほか編『民事信託の理論と実務』2016日本加除出版「信託制度と成年後見制度の融合」P147~P153

[5] 渋谷陽一郎「民事信託と任意後見の交錯と協働」『信託フォーラムvol.9』P39~P45

[6] 山中眞人、山﨑芳乃「事例から考える民事信託と任意後見の併用」『信託フォーラムvol.9』P46~P53

[7] 遠藤英嗣『新しい家族信託』2016日本加除出版P444~P451。

[8] 小林昭彦ほか『新しい成年後見制度の解説』2017きんざいP251

[9] 任意後見契約に関する法律第三条の規定による証書の様式に関する省令付録第1号様式に記載の権限に、本人又は第三者の同意や承認を停止条件としていくことが考えられる。

[10] 任意後見契約に関する法律第10条3項。この場合、任意後見人が法定後見人になるとは限らない。

[11] 民法13条、15条、876条の4、876条の9

[12] 任意後見契約に関する法律7条

[13] 任意後見契約に関する法律第三条の規定による証書の様式に関する省令附録第1号様式の注4及び第2号様式の注3