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受託者
2018年02月13日

 

 

民事信託契約書のうち、受託者を取り上げる。

 

受託者

 

 

 

1     受託者

 

1―1            条項例

(受託者)

第○条

1 本信託の受託者は、次の者とする。

【住所】【氏名】【生年月日】

2 受託者の任務が終了した場合、後任の受託者は、次の者とする。

【住所】【氏名】【生年月日】

 

(受託者)

第○条

1 本信託の受託者は、次の者とする。

【住所】【氏名】【生年月日】

2 受託者の任務は、次の場合に終了する。

(1)受託者の死亡

(2)精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合

(3)精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である場合

(4)その他信託財産を管理できない状態になった場合

3 受託者の任務が終了した場合、受益者が新たな受託者を定める。

4 前項の規定により受託者に定められた者が、相当な期間を定めて催告しても受託者に就任しない場合は、受益者は新たな受託者を定める。

 

チェック方式

(受託者)

第○条

1 当初受託者は、次の者とする。

【住所】【氏名】【生年月日】【委託者との関係】

□【本店】【商号】

2 受託者の任務は、次のいずれかの事由が生じた場合に終了する[1]

□ただし、信託法58条1項は適用しない。

□(1)受託者の死亡[2]

□(2)受益者の同意を得て辞任したとき[3]

□(3)受託者に成年後見人または保佐人が就いたとき。

□(4)受託者が法人の場合、合併による場合を除いて解散したとき。

□(5)受託者が、受益者からの報告請求に対して2回続けて報告を怠った場合。

□(6)受益者と各受託者が合意したとき[4]

□(7)【受託者が○○歳になったとき・                

□(8)受託者が唯一の受益者となったとき。ただし、1年以内にその状態を変更したときを除く。

□(9)その他信託法で定める事由が生じたとき[5]

3 □受託者の任務が終了した場合、後任の受託者は次の者を予定する[6]

【住所】【氏名】【生年月日】【委託者との関係】

□(後任の)受託者の任務が終了した場合、新たな受託者を次の順位で予定する[7]

第1順位:任務終了前の受託者が、あらかじめ書面により指名した者。

第2順位:信託監督人が指定した者。

第3順位:その他信託法に基づいて選任された者。

4 任務が終了した受託者(その相続人のほか、信託財産を管理すべき者を含む。)は、後任の受託者が信託事務の処理を行うことができるようになるまで、受益者への通知、信託財産の保管その他の必要な事務を行う[8]

5 受託者に指定された者が、本信託の利害関係人[9]による催告から1か月以内[10]に受託者に就任しない場合は、受益者は新たな受託者を定める。

6 後任受託者は、前任の受託者から受託者としての権利義務を承継[11]し、次の

各号に掲げる必要な事務を行う。

(1)債務の弁済、費用の清算[12]

(2)前受託者の任務終了が辞任による場合を除いて、必要な場合の債務引受け。

(3)その他の信託財産の引継ぎおよび信託事務を処理するための受託者の変

更に伴う必要な手続。

□【                       

 

1―2            受託者の資格

信託契約において、受託者として契約をすることができない者は、未成年者、成年被後見人、被保佐人である(信託法7条)。信託期中における受託者の任務終了事由は、信託法56条から58条に規定されている。信託管理人、信託監督人、受益者代理人に就任している者も受託者となることはできない(信託法124条、137条、144条。)。

ただし、当事者の意図しないときに信託を終了させないために、辞任して受託者となることは妨げられない。なお清算受託者に関する任務終了事由も同様である[13]

法人を受託者とすることは妨げられない。例えば共有不動産の名義を一つにする、親族内の財産管理を目的として一般社団法人を受託者にすることができる。個人が受託者となる場合との違いは、法人であることによるコスト及び統治が挙げられる[14]

3名の共有不動産を信託するとして、受託者として一般社団法人を利用する場合、社員及び理事が共有者の3名であるときの違いは何か。実質3名の共有状態と変わらないと考えることもできるが、敢えて違いを探すなら定款において、意思決定方法を柔軟にすることが可能であることを挙げる。(1)社員や理事の数を○名以内と定款で定めること、(2)一定期間内に受託者法人又共有者のうちの1人による受益権の購入を検討し、共有状態の最終的な解消を目的とすることも必要と考える。受益権購入の際は自己取引の禁止・制限に留意する(信託法31条)。

 

1―3            受託者の任務終了事由及び後任受託者

本稿では、辞任及び解任も任務終了として扱う(信託法56条1項5号、6号)。

信託法58条1項の規定を適用した場合、自益信託で受益者が1人のとき、委託者兼当初受益者が1人で受託者を自由に解任することができる。受託者から委託者及び受益者による損害賠償を請求することはできる場合がある[15]が、(1)受託者に不利な時期の判断、(2)賠償される損害の範囲及び(3)受託者を解任した者が損害賠償責任を免れるやむをえない事由の判断が明確でなく、民事信託の安定性確保の観点から選択肢に含める(信託法58条3項)。

受託者が1年間唯一の受益者となったときを選択肢に挙げている。本来信託の終了事由(信託法163条1項2号)を定める条項であるが、専門家ではない受託者の注意を促すために任務終了事由にも記載する。

受託者が受益者からの報告請求に対して2回続けて報告を怠った場合を、当然に任務が終了する事由としている。これは、信託法58条4号の受託者による任務違反、信託財産への著しい損害及びその他重要な事由があった場合の受託者解任の規定に対する例示列挙である(信託法29条、38条、56条1項7号。会社法433条、976条1項4号。)。受託者による情報開示がなければ、受益者は受託者の任務違反及び信託財産への損害など判断は不可能である。受益者の報告請求及び受託者の情報開示は、信託行為によって免除・軽減出来ないものである。民事信託においては、信託法38条2項の除外事由に該当することもほぼ無いと考えられ、明確な任務違反の1つとして選択肢に含める。

後任受託者を特定する条項、後任受託者を選任する方法について定める条項について、受託者が自己で急死した場合及び信託監督人が就任していない場合は、その条項は空振り規定となり信託法の規定に沿って新受託者を選任する(信託法62条)。

 

1―4            受託者の変更

 

1、家族信託の融資について、受託者(債務者)が変更になった場合、後任の受託者が就任を承諾すると債務はその時点で自動的に後継受託者に移るのだろうか。(1)信託行為後の融資(2)受託者は信託財産のためにする意思で融資を受けた(3)融資は受託者の権限内の行為(4)融資された金銭は信託財産責任負担債務となる(5)信託専用口座へ入金がされている。(1)から(5)の事実を前提とした場合、債務は前受託者の任務が終了した時に自動的に移ると考える。なお受託者が辞任した場合は、新受託者が就任した時に債務は自動的に移ると構成する(信託法21条、56条、57条、75条)。

受託者が死亡した場合、(ア)債務は受託者の相続人に及ぶのだろうか。債務は死亡した受託者の相続人に及ぶ(信託法76条、民法896条)。債権者は、死亡した受託者の相続人に対して債務の履行を請求することができる。

相続人が債務の履行を行った場合、新受託者や信託財産法人管理人に償還を請求することができる。ただし、受益債権など、信託財産に属する財産のみを持って履行する責任を負う債務については、前受託者は履行責任を負わない。

新受託者は就任する際、責任財産を信託財産に限定しながらも、重畳的な債務引受をして連帯債務者となるか否かを判断する必要がある。

 

2     追記 民事信託契約書の条項においてチェック方式を利用する際の留意点

 

留意点として2点を挙げる。1点目は契約書中に「本信託契約第○条の場合(を除いて)」などと、契約書中の条項を援用することを可能な限り排除することが必要となる。援用する条項がチェックされていない場合は、空振り規定となり援用の効力のみが発生せず、意図しない条項を生み出す可能性がある。

2点目として信託契約の一貫性の確保を挙げる。例えば、信託設定の当初財産として不動産にチェックを入れなかった場合、自己信託、信託の変更・分割・併合及び債権者との関係などと整合性が取れない限り不動産を追加信託することは出来ない(信託金銭により不動産を購入することは可能である。)。

 

3     追記 受託者の表明保証

条項例

(受託者の表明保証)[16][17]

第〇条 受託者は委託者に対して、本日、次の各号が真実かつ正確であることを表明し、保証する。

(1)受託者は、信託契約を締結し、信託の事務の処理という義務を履行するために必要とされる実質的な能力、意欲、相当な時間、そして信用力を有している。

(2)受託者は、信託法並びに信託行為で定めた受託者の義務の内容及び信託財産の所有者となることの責任を理解しており、受託者責任を履行するための責任財産を有している。

(3)受託者においては、信託の事務の処理という義務を履行することに対して悪影響を及ぼすような訴訟、仲裁、調停、行政上の手続が係属していない。

(4)受託者には、信託の事務の処理という義務を履行するにあたり、悪影響を及ぼすような信用状況の悪化、重い負債の存在、支払不能や破産手続や民事再生手続の申立事由の存在のおそれなどは存在しない。

(5)受託者は、信託当事者あるいは信託関係者との間で利益相反関係は存在せず、かつ、信託当事者間における牽制関係を損なうような関係は存在しない。

 

上記の受託者による表明保証条項の例は、民事信託において受託者となる者の(最低限の)資格と考えても良い内容である。よってこのような内容の条項例についてチェック方式は採らない。機能としてリスクの分担、効果として受託者の情報開示がある[18]。また民事信託においては、受託者が金融機関や法人と取引する際に、一定の信用を得るために必要となる可能性が出てくると考える。「経営者保証に関するガイドライン」(平成26年金融庁)においては、経営者保証を求めない又は保証を外す要件の1つが、法人と経営者との関係の明確な区分・分離(社会通念上許容できる範囲内であれば許容される)とされている。

契約の内容及び当事者の関係は異なるがM&Aで株式譲渡契約を締結する際においても、売主だけでなく買主に表明保証条項を設ける例がある[19][20]

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

[1] 信託法56条1項各号。

[2] 信託法56条1項1号。

[3] 信託法57条1項本文から委託者の同意権を除外。

[4] 信託法57条1項7号。

[5] 受託者の破産手続開始の決定、解任などが入る。注意的に契約書に入れる際は、7号に記載。契約書に入れない場合は9号で手当てする。

[6] 信託法62条1項。

[7] 後任受託者を指定している場合は、(後任の)のかっこ書きを外す。

[8] 信託法76条1項、77条2項、78条。民法654条。

[9] 利害関係人には、法定後見人、保佐人、補助人、任意後見人を含む(信託法92条1項16号)。

[10] 参考として信託法77条3項、184条3項。

[11] 信託法75条1項2項、76条2項。

[12] 前受託者による費用請求について、山田誠一「受託者が費用の償還に関し信託財産に対して有する権利」『信託の理論的深化を求めて』2017(公財)トラスト未来フォーラム研究叢書)

[13]道垣内弘人編著『条解信託法』2017弘文堂P755

[14] 権利能力なき社団が委託者兼受益者になることについて、谷口毅「権利能力なき社団を当事者とする信託」『信託フォーラムvol.7』があるが、受託者を一般社団法人にするかは検討が必要である。

[15]道垣内弘人編著『条解信託法』2017弘文堂P377、民法651条2項

[16]渋谷陽一郎『民事信託における受託者支援の実務と書式』2016民事法研究会P82

[17] M&Aにおける改正民法後の表明保証について、『旬刊商事法務№2157』2018商事法務P27~。

[18] 藤原総一郎『M&Aの契約実務』2011中央経済社P147~

[19] 梅田亜由美『中小企業におけるM&A実務必携 法務編』2016きんざいP273、

[20] 主な判例として、東京地判平成18年1月17日

1     受託者

 

1―1      条項例

(受託者)

第○条

1 本信託の受託者は、次の者とする。

【住所】【氏名】【生年月日】

2 受託者の任務が終了した場合、後任の受託者は、次の者とする。

【住所】【氏名】【生年月日】

 

(受託者)

第○条

1 本信託の受託者は、次の者とする。

【住所】【氏名】【生年月日】

2 受託者の任務は、次の場合に終了する。

(1)受託者の死亡。

(2)精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合。

(3)精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である場合。

(4)その他信託財産を管理できない状態になった場合。

3 受託者の任務が終了した場合、受益者が新たな受託者を定める。

4 前項の規定により受託者に定められた者が、相当な期間を定めて催告しても受託者に就任しない場合は、受益者は新たな受託者を定める。

 

チェック方式

(受託者)

第○条

1 当初受託者は、次の者とする。

【住所】【氏名】【生年月日】【委託者との関係】

□【本店】【商号】

2 受託者の任務は、次のいずれかの事由が生じた場合に終了する[1]

□ただし、信託法58条1項は適用しない。

□(1)受託者の死亡[2]

□(2)受益者の同意を得て辞任したとき[3]

□(3)受託者に成年後見人または保佐人が就いたとき。

□(4)受託者が法人の場合、合併による場合を除いて解散したとき。

□(5)受託者が、受益者からの報告請求に対して2回続けて報告を怠った場合。

□(6)受益者と各受託者が合意したとき[4]

□(7)【受託者が○○歳になったとき・                

□(8)受託者が唯一の受益者となったとき。ただし、1年以内にその状態を変更したときを除く。

□(9)その他信託法で定める事由が生じたとき[5]

3 □受託者の任務が終了した場合、後任の受託者は次の者を予定する[6]

【住所】【氏名】【生年月日】【委託者との関係】

□(後任の)受託者の任務が終了した場合、新たな受託者を次の順位で予定する[7]

第1順位:任務終了前の受託者が、あらかじめ書面により指名した者。

第2順位:信託監督人が指定した者。

第3順位:その他信託法に基づいて選任された者。

4 任務が終了した受託者(その相続人のほか、信託財産を管理すべき者を含む。)は、後任の受託者が信託事務の処理を行うことができるようになるまで、受益者への通知、信託財産の保管その他の必要な事務を行う[8]

5 受託者に指定された者が、本信託の利害関係人[9]による催告から1か月以内[10]に受託者に就任しない場合は、受益者は新たな受託者を定める。

6 後任受託者は、前任の受託者から受託者としての権利義務を承継[11]し、次の

各号に掲げる必要な事務を行う。

(1)債務の弁済、費用の清算[12]

(2)前受託者の任務終了が辞任による場合を除いて、必要な場合の債務引受け。

(3)その他の信託財産の引継ぎおよび信託事務を処理するための受託者の変

更に伴う必要な手続。

□【                       

 

1―2            受託者の資格

信託契約において、受託者として契約をすることができない者は、未成年者、成年被後見人、被保佐人である(信託法7条)。信託期中における受託者の任務終了事由は、信託法56条から58条に規定されている。信託管理人、信託監督人、受益者代理人に就任している者も受託者となることはできない(信託法124条、137条、144条。)。ただし、当事者の意図しないときに信託を終了させないために、辞任して受託者となることは妨げられない。なお清算受託者に関する任務終了事由も同様である[13]

 

 

法人を受託者とすることは妨げられない 。 例えば共有不動産の名義を一つにする、親族内の財産管理を目的として一般社団法人を受託者にすることができる。個人が受託者となる場合との違いは、法人であることによるコスト及び統治が挙げられる。

3名の共有不動産を信託するとして、受託者として一般社団法人を利用する場合、社員及び理事が共有者の3名であるときの違いは何か。実質3名の共有状態と変わらないと考えることもできるが、敢えて違いを探すなら定款において、意思決定方法を柔軟にすることが可能であることを挙げる。(1)社員や理事の数を○名以内と定款で定めること、(2)一定期間内に受託者法人又共有者のうちの1人による受益権の購入を検討し、共有状態の最終的な解消を目的とすることも必要と考える。受益権購入の際は自己取引の禁止・制限に留意する(信託法31条)。

 

1―3            受託者の任務終了事由及び後任受託者

 

本稿では、辞任及び解任も任務終了として扱う(信託法56条1項5号、6号)。

信託法58条1項の規定を適用した場合、自益信託で受益者が1人のとき、委託者兼当初受益者が1人で受託者を自由に解任することができる。受託者から委託者及び受益者による損害賠償を請求することはできる場合がある[14]が、(1)受託者に不利な時期の判断、(2)賠償される損害の範囲及び(3)受託者を解任した者が損害賠償責任を免れるやむをえない事由の判断が明確でなく、民事信託の安定性確保の観点から選択肢に含める(信託法58条3項)。

 

受託者が1年間唯一の受益者となったときを選択肢に挙げている。本来信託の終了事由(信託法163条1項2号)を定める条項であるが、専門家ではない受託者の注意を促すために任務終了事由にも記載する。

 

受託者が受益者からの報告請求に対して2回続けて報告を怠った場合を、当然に任務が終了する事由としている。これは、信託法58条4号の受託者による任務違反、信託財産への著しい損害及びその他重要な事由があった場合の受託者解任の規定に対する例示列挙である(信託法29条、38条、56条1項7号。会社法433条、976条1項4号。)。受託者による情報開示がなければ、受益者は受託者の任務違反及び信託財産への損害など判断は不可能である。受益者の報告請求及び受託者の情報開示は、信託行為によって免除・軽減出来ないものである。民事信託においては、信託法38条2項の除外事由に該当することもほぼ無いと考えられ、明確な任務違反の1つとして選択肢に含める。

 

後任受託者を特定する条項、後任受託者を選任する方法について定める条項について、受託者が自己で急死した場合及び信託監督人が就任していない場合は、その条項は空振り規定となり信託法の規定に沿って新受託者を選任する(信託法62条)。

 

 

1―4     受託者の変更

 

1、家族信託の融資について、受託者(債務者)が変更になった場合、後任の受託者が就任を承諾すると債務はその時点で自動的に後継受託者に移るのだろうか。(1)信託行為後の融資(2)受託者は信託財産のためにする意思で融資を受けた(3)融資は受託者の権限内の行為(4)融資された金銭は信託財産責任負担債務となる(5)信託専用口座へ入金がされている。(1)から(5)の事実を前提とした場合、債務は前受託者の任務が終了した時に自動的に移ると考える。なお受託者が辞任した場合は、新受託者が就任した時に債務は自動的に移ると構成する(信託法21条、56条、57条、75条)。

 

 

受託者が死亡した場合、債務は受託者の相続人に及ぶのだろうか。債務は死亡した受託者の相続人に及ぶ(信託法76条、民法896条)。債権者は、死亡した受託者の相続人に対して債務の履行を請求することができる。

相続人が債務の履行を行った場合、新受託者や信託財産法人管理人に償還を請求することができる。ただし、受益債権など、信託財産に属する財産のみを持って履行する責任を負う債務については、前受託者は履行責任を負わない。

新受託者は就任する際、責任財産を信託財産に限定しながらも、重畳的な債務引受をして連帯債務者となるか否かを判断する必要がある。

 

2     追記 民事信託契約書の条項においてチェック方式を利用する際の留意点

 

留意点として2点を挙げる。1点目は契約書中に「本信託契約第○条の場合(を除いて)」などと、契約書中の条項を援用することを可能な限り排除することが必要となる。理由は、援用する条項がチェックされていない場合、空振り規定となり援用の効力のみが発生せず、意図しない条項を生み出す可能性がある。

2点目として信託契約の一貫性の確保を挙げる。例えば、信託設定の当初財産として不動産にチェックを入れなかった場合、不動産を追加信託することは出来ない(信託金銭により不動産を購入することは可能である。)。

 

3     追記 受託者の表明保証

 

条項例

(受託者の表明保証)[15][16]

第〇条 受託者は委託者に対して、本日、次の各号が真実かつ正確であることを表明し、保証する。

(1)受託者は、信託契約を締結し、信託の事務の処理という義務を履行するために必要とされる実質的な能力、意欲、相当な時間、そして信用力を有している。

(2)受託者は、信託法並びに信託行為で定めた受託者の義務の内容及び信託財産の所有者となることの責任を理解しており、受託者責任を履行するための責任財産を有している。

(3)受託者においては、信託の事務の処理という義務を履行することに対して悪影響を及ぼすような訴訟、仲裁、調停、行政上の手続が係属していない。

(4)受託者には、信託の事務の処理という義務を履行するにあたり、悪影響を及ぼすような信用状況の悪化、重い負債の存在、支払不能や破産手続や民事再生手続の申立事由の存在のおそれなどは存在しない。

(5)受託者は、信託当事者あるいは信託関係者との間で利益相反関係は存在せず、かつ、信託当事者間における牽制関係を損なうような関係は存在しない。

 

上記の受託者による表明保証条項の例は、民事信託において受託者となる者の(最低限の)資格と考えても良い内容である。よってこのような内容の条項例についてチェック方式は採らない。機能としてリスクの分担、効果として受託者の情報開示がある[17]。また民事信託においては、受託者が金融機関や法人と取引する際に、一定の信用を得るために必要となる可能性が出てくると考える。「経営者保証に関するガイドライン」(平成26年金融庁)においては、経営者保証を求めない又は保証を外す要件の1つが、法人と経営者との関係の明確な区分・分離(社会通念上許容できる範囲内であれば許容される)とされている。

契約の内容及び当事者の関係は異なるがM&Aで株式譲渡契約を締結する際においても、売主だけでなく買主に表明保証条項を設ける例がある[18][19]

 

 

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[1] 信託法56条1項各号。

[2] 信託法56条1項1号。

[3] 信託法57条1項本文から委託者の同意権を除外。

[4] 信託法57条1項7号。

[5] 受託者の破産手続開始の決定、解任などが入る。注意的に契約書に入れる際は、7号に記載。契約書に入れない場合は9号で手当てする。

[6] 信託法62条1項。

[7] 後任受託者を指定している場合は、(後任の)のかっこ書きを外す。

[8] 信託法76条1項、77条2項、78条。民法654条。

[9] 利害関係人には、法定後見人、保佐人、補助人、任意後見人を含む(信託法92条1項16号)。

[10] 参考として信託法77条3項、184条3項。

[11] 信託法75条1項2項、76条2項。

[12] 前受託者による費用請求について、山田誠一「受託者が費用の償還に関し信託財産に対して有する権利」『信託の理論的深化を求めて』2017(公財)トラスト未来フォーラム研究叢書)

[13]道垣内弘人編著『条解信託法』2017弘文堂P755

[14]道垣内弘人編著『条解信託法』2017弘文堂P377、民法651条2項

[15]渋谷陽一郎『民事信託における受託者支援の実務と書式』2016民事法研究会P82

[16] M&Aにおける改正民法後の表明保証について、『旬刊商事法務№2157』2018商事法務P27~。

[17] 藤原総一郎『M&Aの契約実務』2011中央経済社P147~

[18] 梅田亜由美『中小企業におけるM&A実務必携 法務編』2016きんざいP273、

[19] 主な判例として、東京地判平成18年1月17日