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民事信託・家族信託契約書の標準化試論
2018年02月02日

 

はじめに

1    民事信託契約書のアウトライン

 

1―1    典型契約・有名契約(信託法2条2項1号、4条1項、信託業法2条1項、8項、3条、7条、50条の2、商法502条13号)

信託法という法律に規定のある典型契約であり、法律中に名称が定義されている有名契約である。私法上の権利義務関係を扱うのは営業信託も同様であり、民事という用語は本来不要であるが、現在のところ信託の引受けを行う受託者の範囲を限定するという意味で利用されている。

なお、当事者の性質に着目した場合、個人対個人の契約は消費者契約法の適用がある民事契約・消費者契約となる。

 

1―2    不要式契約・諾成契約(信託法第4条1項)

民事信託契約の様式について、信託法に定めはなく、不要式契約である(ただし、自己信託は要式契約。信託法3条1項3号、信託法施行規則3条)。また委託者と受託者の意思表示のみで効力を生じる諾成契約である。

 

1―3    有償契約[1](信託法2条1項)

委託者は、所有する財産を信託財産とし、受託者は、その財産の管理または処分などを行う権利義務を引き受ける有償契約である。

 

1―4     双務契約(信託法2条1項)

委託者は、所有する財産を信託財産とする義務を負う。受託者は、信託目的に従って信託財産を管理または処分などを行う義務を負う。契約当事者の双方が互いに債務を負担する双務契約である。

 

1―5    処分証書

信託契約が行われたことを示す意思表示その他の法律行為が記載された文書であり、処分証書である。

 

1―6    契約自由の原則(契約締結の方式の自由)

契約締結の当事者である委託者と受託者は、原則としてそれぞれの自由な意思により、民事信託契約を締結するか、受託者は誰にするか、どのような内容の信託契約を締結するかを判断する。例え不備がある信託契約であっても、違法でなければ契約の効力は生じ、不備な部分は効力が生じない、または契約当事者及び受益者その他の関係人が不利益を被るという結果を導く。

 

 

2    標準化に対する見解の相違

 

2―1  肯定(積極説)と否定(消極説)の主な見解

 

主な見解を図1にまとめる。

 

 

 

2―2    用語、意味、使用例

 

現在民事信託について使用されている雛型、書式などの用語について、その意味と使用例を図2にまとめる。

 

 

 

2―3     民事信託契約書の特徴

主に親族間の契約であり、既に何らかの関係がある。そして民事信託を設定した後も、その関係は続く[8]。そのため民事信託契約書の本文では、当事者間の行為規範を明確にすることに焦点を当て、民事信託の中における委託者、受託者、受益者その他の関係人の権利義務を具体化することが必要と考えられる。

全く同じ親族間の関係というものはないが、解決したい問題や叶えたい希望は一定の範囲で分類することができるものと考えられる(家庭裁判所における調停、審判は分類されている。家事事件手続法別表第1、第2)。

 

3    1、2、を踏まえて

 

 

3―1    違うのか?同じではないか。

 

(1)図1の肯定(積極説)と否定(消極説)の主な見解は、反対の立場を取っているように読むこともできる。

しかし、宮田浩志『家族信託まるわかり読本』では、活用事例を無限ではなく22に絞っている。そこには依頼者のニーズが多い、活用しやすいなど何かしらの理由があると考えることができる。また、事例ごとに契約書の様式も自ずと一定の範囲に決まってくる、収まってくるのではないかと考えることができる。

遠藤英嗣『家族信託契約』の見解は、信託契約だけでなく、契約書全般に対していえることである。売買契約書、金銭消費貸借契約書においても、個人間契約の場合、専門職が作成する契約書は依頼者の考えや要望をもとにする。自由な発想は、信託法その他の法規に反しない限り、という注釈が必要である。

 

(2)図2には、「雛型」、「標準」、「定型」の使用例がない。

「雛型」に関しては、写して(コピー&ペーストして)終わり、というあまり良くないイメージがあるから、という理由を考えることができる。

「モデル」は、司法書士が司法書士に向けたものであることを考慮する必要がある。

 

「標準」、「定型」は、なぜ使用されていないのか。又は使用されているとしてもあまり目立つことがないのか。まだニーズが掴みきれていない、ニーズを形にするには時間、量ともにまだ足りないことが考えられる。また、標準、定型、契約書(例)、書式(例)に関する定義が専門職各々で異なる。

 

異なることによってオーダーメイドの○○「型」信託契約書「例」、○○問題解決の民事信託「設計図」、○○財産活用のための民事信託書式「例」、実務で使える○○信託の「条項例」、などの用語が生まれる。

その結果、実務の場面での活用方法を誤る可能性がある。例えばどこを変更するのか、変更して契約の一貫性が保てるか、全体としてどのような建付けの契約書にするのかを考える必要がある。

 

しかし、それは「標準」、「定型」を研究し実現するという目的を妨げるものではなく、民事信託に関わる人の利益を考えるなら非難されるものでもない。

 

3―2   今後の展望

(1)民事信託実務の中で、依頼者の目的を反映し合理的であると考えられる契約書の様式が生き残る[9]

(2)民事信託契約書の様式は、法律文書であることの普遍性と、時代による変化を伴う。よって標準契約書などの作成ではなく、契約書などの標準化が目的となる。

(3)民事信託契約書と契約後の業務に対する標準化について、「文脈」「論理」が必要となる。

 

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[1] 道垣内弘人編著『条解信託法』P29

[2] 標準化、定型化の「化」は、形や性質がかわること。かえること。新村出編『広辞苑第五版』1998岩波書店

[3] 特に注釈がない場合は、新村出編『広辞苑第五版』1998岩波書店による。

[4] (一社)日本規格協会HP「JISとは」より引用。

[5] 「例」について、過去または現在の事物で、典拠・標準とするにたるもの。新村出編『広辞苑第五版』1998岩波書店。法令用語ではないことにつき、法制執務研究会編『新訂ワークブック法制執務』。2007ぎょうせい。

[6] 田中豊『法律文書作成の基本』2011日本評論社P295

[7] 条項について、法令用語研究会編「法律用語事典」2012)有斐閣

[8]田中豊『法律文書作成の基本』2011日本評論社P345

[9] 参考として、田中豊『法律文書作成の基本』2011日本評論社P340