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人役権的自己信託
2017年06月02日

人役権的自己信託

 

 

(大垣尚司「自己信託―もうひとつの民事信託」『民事信託の理論と実務』2016  日本加徐出版 P290~)

 

1、地役権は、設定行為で定めた目的(例:国道329号線に出るため)に従い、他人の土地(要役地)を「自己の土地の」便益に供する権利なので、他人の土地を単に「自己の」便益のために供する権利(いわゆる人役権)は、地上権(工作物・竹林の所有)、永小作権(耕作・牧畜)を除くと用益物権として設定することができない。

 

2、このため、そうした権利は賃借権として構成するしかないが、この場合20年を超える契約ができず(民法604条)、登記がないとその後に要役地を取得した者に対抗できない(民法605条)。また、建物所有目的以外の使用目的を適切に公示することが難しいという問題もある(不動産登記法81条1項6号)。

 

3、もし、「個人所有の里山を自由に散策して昆虫や季節の山菜を私的利用の範囲内で採取する権利(里山入山権)」や個人所有の海岸で海水浴をする権利(プライベートビーチ権)」等を物権的な権利として売却することができれば、建物建築に適さない土地の価値を有効活用できる。

 

4、何らかの原因関係に基づいて、承役地の所有者がこれを信託財産とし、相手方を第1受益者、自分自身を残余財産受益者として、(1)第1受益者に一定目的に従って承役地を自己の便益のために使用させること、(2)同目的のために承役地の権限を維持し適切に管理すること、(3)信託期間経過後に残余財産である承役地を残余財産受益者に返還することを目的とし、信託登記をすれば、受益権は実質的に人役権に近いものになる。受益権には譲渡性を付与することもできるし、譲渡禁止としたり制限を付したりしてもよい(信託法93条)。

 

5、物権である本来の人役権の場合、承役地(底地権)が売却されると対抗力のある人役権者は、承継人に対して当然に権利主張できる。これに対して、人役権的自己信託の場合、設定者は受託者として承役地の売却ができなくなるが、自己の有する残余財産受益権(底地権に相当)を処分することにより、同様の効果を得ることができる。

 

 

 

自己信託設定公正証書

 

(目的)

第○条 本信託は、次の事項を目的として、第○条記載の信託財産を受託者が管理、運用、処分する。

(1)第1受益者に里山散策を目的として使用させること。

(2)(1)のために信託財産を維持し適切に管理すること

(3)信託期間経過後に残余財産を残余財産受益者に返還すること

 

(信託財産)

第○条 本信託設定日の信託財産は、次の第1号から第2号までとする。設定後に第3号から第4号によって発生した財産も信託財産とする。

(1) 別紙1記載の不動産の所有権(以下、「信託不動産」という。)

(2) 金銭○○万円(今後、「信託金銭」という。)

(3) 受益者から追加信託を受けた財産

(4) その他の信託財産より生じる全ての利益

 

(信託設定者)

第〇条 自己信託を設定する者は、次の者とする。

住所                       

氏名 甲 生年月日

 

(後任の受託者)

第○条 受託者の任務が終了した場合の後任受託者は、次の者とする。

住所

氏名 甲の子○○ 生年月日

 

(信託財産の管理方法)

第○条

1 受託者は、信託不動産について次の信託事務を行う。

(1)所有権の権利の変更登記と信託登記の申請

(2)信託不動産の性質を変えない修繕・改良行為

2 受託者は、信託金銭について次の信託事務を行う。

(1)信託に必要な表示または記録等

(2)受託者個人の財産と分けて、性質を変えずに管理

(3)その他信託目的を達成するために必要な事務

3 受託者は、信託事務の一部について必要があるときは、受託者と同様の管理方法を定め、第3者へ委託することができる。

4 受託者が信託事務処理費用を信託財産から支出する場合、支出の前に受益者に対して前払いを受ける額及びその算定根拠を通知する必要はない。

 

(計算期間)

第○条 本信託の計算期間は、毎年1月1日から12月31日までとする。最初の計算期間は信託の設定日から始まり、最後の計算期間は信託の終了した日までとする。

 

(公租公課の精算)

第○条 本信託の税金や保険料などは、設定日の前は設定者、設定日とその後は、信託財産から支払う。

 

(信託財産に関する報告)

第○条 受託者は、計算期間に行った計算を、固定資産税の納税通知書及び領収書と信託口通帳を受益者へ提示する方法により受益者へ報告する。

 

(受益者)

第〇条 本信託の受益者は次の者とし、各受益者は同じ割合の受益権を1個取得する。

(1)住所

氏名 乙 生年月日

(2)住所

氏名 丙 生年月日

(3)住所

氏名 丙 生年月日

 

(受益権)

第○条

1 次のものは、元本とする。

(1)信託不動産の所有権

(2)信託不動産の里山入山権

(3)信託不動産のプライベートビーチ利用権

(4)信託金銭

2 次のものは、収益とする。

(1)信託財産から発生した利益

3 元本又は収益のいずれか不分明なものは、受託者が判断する。

4 受益者は、受託者の承諾を得た場合、受益権を譲渡、質入れ及び担保設定その他の処分をすることができる。

5 受益者の受益権の割合は均等とし、受益権は共有としない。今後受益者が増減しても同様とする。

 

(信託の変更)

第○条

1 本信託の変更は、受託者と受益者の合意による。

2 受益者の人数に変更があった場合、各受益者に同じ割合の1個の受益権が指定される受益権の分割・併合があったものとする。

 

 

(信託の期間)

第○条 本信託の期間は、設定日から終了した日までとする。

 

(信託の終了)

第○条 本信託は、次の場合に終了する。

(1)受託者と受益者が合意したとき

 

(清算受託者)

第○条 この信託が終了したときの受託者は、引き続き清算の事務を行う。

 

(残余財産の引渡し方法)

第○条 清算受託者が、残余財産の帰属権利者に、信託財産の全てをその債権関係とともに引き渡し、最終計算の承認を得たときに、清算手続は終了する。

 

(残余財産の受益者)

第○条

1、本信託における残余財産の受益者は、甲とする。

2、残余財産の受益者は、自己の有する残余財産の受益権を自らの裁量で譲渡、質入れ及び担保設定その他の処分をすることができる。

 

(契約に定めのない事項)

第○条 本信託に定めのない事項は、受託者と受益者が協議の上決定する。

 

 

別紙1

 

信託財産目録

 

第1 信託不動産

1土地

所在

地番

地目

地積

 

所在

地番

地目

地積

 

第2 信託金銭

金○○万円

 

 

以上