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平成 28 年度 政策レビュー結果(評価書)
2017年04月17日

(出典:国土交通省HP、2017年4月17日閲覧)
MICE 誘致の推進

平成 29 年 3 月国土交通省

 

 

 

(評価書の要旨)

テーマ名 MICE 誘致の促進 担当課
(担当課長名) 観光庁国際観光課
(課長:田中由紀)

 

 

評価の目的、必要性 「MICE 誘致の推進」に係る平成 28 年度取りまとめ政策レビューについては、これまで取り組んできた国際会議の誘致・開催を促進する施策の進捗状況や効果について評価・分析を行うことで、今後の施策立案に寄与することを目的とする。
対象政策

 

国や日本政府観光局(JNTO)において、これまで実施してきている MICE 政策は、「我が国の MICE 国際競争力の強化に向けて」(平成 25 年「MICE 国際競争力強化委員会最終とりまとめ」)に基づくものであるところ、当該とりまとめにおいて提言された施策について、評価を行う。

 

 

政策の目的 MICE、とりわけ国際会議の誘致・開催は、「人が集まる」という直接的な効果はもちろん、人の集積や交流から派生する付加価値や大局的な意義がある。具体的には、①ビジネスやイノベーションの機会の創出、②地域への経済効果、③国・都市の競争力向上が考えられることから、国際会議の誘致・開催促進を通じて、海外から日本に対して、多くの人や優れた知見、投資を呼び込む。

 

 

評価の視点

 

 

日本再興戦略(2015 年 6 月 30 日閣議決定)において、「2030 年にはアジアNO.1 の国際会議開催国としての不動の地位を築く」という目標が掲げられた。その実現に向けて、「我が国の MICE 国際競争力の強化に向けて」(MICE 国際競争力強化最終とりまとめ)で定めた以下4つのテーマに基づき実施されてきた施策が、国際会議等の誘致・開催に効果的に寄与しているかどうかを検証する。
テーマ①:都市の誘致競争力の強化テーマ②:MICE プレイヤーの強化
テーマ③:チームジャパンの誘致体制の構築
テーマ④:国・都市の戦略実現ツールとしての MICE の活用

 

 

 

評価手法 (1)国際会議協会(ICCA)等の国際会議統計を利用して、我が国における国際会議開催件数の達成状況を検証する。
(2)「2030 年にはアジア NO.1 の国際会議開催国としての不動の地位を築く」という目標を達成するために掲げたテーマに紐付く施策に関し、施策の進捗効果・課題について、評価・分析を実施する。
評価結果 1.都市の誘致競争力の強化

 

 

【課題】
●グローバル MICE 都市の育成
・コンベンションビューロー(CB)の人的・財的資源の不足、定期的な人事異

動による専門人材の育成不足
・JNTO と各 CB の役割分担
・地域内のステークホルダー(ホテル、旅行事業者、会議運営事業者(PCO) 等)間の連携不足 等
●ユニークベニューの開発利用・促進
・施設側にユニークベニューとしての活用の意義・メリット等の理解が浸透しておらず、新たな施設の開放が限定的 等

 

 

 

【今後の対応方針】
●課題解決に積極的な都市への優先的支援
・CB が抱える予算や人事ローテーション等の課題に具体的な対策を講じようとする都市を優先して支援し、それら都市の競争力向上を優先的に促進
●JNTO の体制強化
・国レベルの司令塔としての役割を明確化し、個別案件は各都市の CB に委ねる等、役割分担を徹底
・JNTO でプロモーション一般を担う人材とは区別した MICE 専門人材の育成・配置を制度化
・国際会議に関するデータベースを構築して活用を促進
●ステークホルダーの組織化・ユニークベニュー活用の推進
・国レベル・都市レベルの双方で、JNTO・CB を中心としたステークホルダーの組織化を推進
・ユニークベニュー活用を定着させるため、ステークホルダーの組織を活用し、実績を積み重ねながら、施設・利用者双方におけるノウハウ蓄積や認知度向上を促進

 

 

 

2.MICE プレイヤーの強化
【課題】
●MICE 分野の人材育成
・専門ノウハウを中長期的に蓄積していくために不可欠な人材育成プロセスがなく、JNTO による年1~2回のセミナーがあるのみ

【今後の対応方針】
●JNTO によるトレーナー向けトレーニングの導入
・各都市の人材育成を継続的・効果的に推進するため、JNTO において各都市における MICE 人材育成の担い手(=トレーナー)に対する研修制度を導入

 

 

 

 

3.チームジャパンの誘致体制の構築
【課題】
●研究者等の MICE 誘致活動の改善/MICE アンバサダープログラムの導入
・アンバサダーによる発掘案件数等が諸外国に比べると低い 等
●政府横断的体制の構築・在外公館や関係府省との連携
・招請レターや在外公館によるロビー活動等の実績はあるものの、件数は少なく拡大の余地大 等
●日本の新しい MICE ブランドの構築・強化/MICE を活用した日本の情報発信・ブランディング活動の展開
・新たに導入した MICE ブランドについて、そのコンセプトに対する CB・PCO 等の理解が低い

 

 

 

【今後の対応方針】
●アンバサダープログラムにおける役割分担の見直し
・当面は、アンバサダーを通じた学会等の会議開催意欲の啓発・向上や、表彰等によるアンバサダーの位置づけの向上(※将来的には各都市への移管に向けた戦略構築が課題)

 

 

●府省連絡会議を通じた情報共有促進・支援強化
・「MICE 推進関係府省連絡会議」を中心に、各府省にまたがる課題の解決や支援体制の強化を推進

 

 

●MICE ブランドの活用促進
・国レベルのブランドを補完する都市レベルのブランドの構築を促進し、国レベルのブランドと組み合わせて、効果的なプロモーションを実施

 

 

4.国・都市の戦略実現ツールとしての MICE の活用
【課題】
●成長分野をターゲットとした MICE 誘致・開催に向けた連携
・成長分野に特化した誘致戦略、誘致体制が不十分等
●国際会議誘致・開催の実施体制
・地域での誘致活動の司令塔役を担うべき都市・CB が、地元の大学・学会・産業界等との連携が不十分なため、その役割を十分果たせていない 等

 

【今後の対応方針】
●成長分野をターゲットとした国際会議誘致策
・医学・科学・技術分野の国際会議を優先的に誘致する方針を、国・都市の誘致戦略の中で明確化し、誘致活動に反映
●海外事例を踏まえた誘致実施体制の抜本的見直し
・各誘致案件では都市の CB が司令塔役を担うことが不可欠なことについて、
JNTO が関係者を啓発するとともに、そのような体制の都市を支援する仕組みを構築
政策への反映の方向 我が国・都市がグローバルレベルの国際会議誘致競争に打ち勝つため、MICE 国際競争力強化委員会最終とりまとめ(平成 25 年 8 月)を踏まえて、都市の誘致競争力の強化、MICE プレイヤーの強化、チームジャパンの誘致体制の構築、国・都市の戦略実現ツールとしての MICE の活用に取り組む。

 

第三者の知見の 国際会議等の誘致件数や、それを支える施策の実施状況について、有識者により構成される MICE 国際競争力強化委員会において、ご意見を頂いている。また、国際会議の誘致・開催に関する国内外の幅広い関係者から、我が国の政策についてのコメントを頂いた。さらに国土交通省政策評価会における本テーマに対する意見及び個別指導の際の助言等を活用する。

 

 

実施時期 平成 27 年度~平成 28 年度

目 次

第1章 評価の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
1.評価の目的、必要性
2.対象政策
3.評価の視点
4.評価手法
5.第三者の知見の活用

第2章 我が国の国際会議等誘致政策の現況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
1.MICE について
(1)MICE の意義
(2)政策レビューの対象分野
(3)国際会議誘致・開催の意義
(4)国際会議誘致・開催に係る関係者
2.国際会議誘致に係る世界的な動向
(1)世界の国際会議開催件数の推移
(2)国際会議開催件数上位 10 か国
(3)アジア・大洋州の国際会議開催件数
3.国際会議誘致に係る我が国の状況
(1)GDP・人口と国際会議開催件数
(2)国内都市・海外競合都市の会議開催件数と世界順位
(3)国際会議等の経済波及効果の算出事例
4.我が国の国際会議誘致政策の目的と目標
(1)目的
(2)目標
5.我が国の国際会議誘致政策の変遷と現在の実施施策
(1)観光庁発足前(1980 年代後半~2000 年代前半)
(2)観光庁発足前後(2000 年代後半~2011 年頃)
(3)現在(2011 年頃~現在まで)
(4)現在の国際会議等政策

第3章 評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
1.国際会議誘致政策の実施状況と評価
(1)「グローバル MICE 戦略都市」の育成
(2)ユニークベニューの開発・利用促進

(3)国際会議分野の人材育成
(4)研究者等の国際会議誘致環境の改善/ MICE 誘致アンバサダープログラムの導入
(5)政府の横断的体制の構築・在外公館や関係府省との連携
(6)新しい MICE ブランドの構築/MICE を活用した日本の情報発信・ブランディング活動の展開
(7)成長分野をターゲットとした国際会議誘致・開催に向けた連携
(8)国際会議誘致・開催の実施体制

第4章 今後の政策の方向性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97
1.MICE 誘致推進策における国際会議の位置づけ
2.都市の誘致競争力の強化に向けて
(1)課題解決に積極的な都市への優先的支援
(2)JNTO の体制強化
(3)ステークホルダーの組織化・ユニークベニュー活用の推進
3.MICE プレイヤーの強化に向けて
4.チームジャパンの誘致体制の構築に向けて
(1)アンバサダープログラムにおける役割分担の見直し
(2)府省連絡会議を通じた情報共有促進・支援強化
(3)MICE ブランドの活用促進
5.国・都市戦略実現ツールとしての MICE の活用に向けて
(1)成長分野をターゲットとした国際会議誘致政策
(2)海外事例を踏まえた誘致実施体制の抜本的見直し
6.国際会議の誘致以外も含めた MICE 促進策の本格始動に向けて
(1)インセンティブ
(2)展示会
(3)企業ミーティング
(4)MICE 業界全体の横断的組織の構築

図表一覧

図1:MICE の意義
図2:政策レビュー対象分野
図3:世界・地域別の国際会議開催件数の推移(2006~2015 年)
図4:国際会議開催件数上位 10 ヵ国(2015 年)における開催件数の推移
(2006~2015 年) 図5:アジア・大洋州主要5ヵ国の国際会議開催件数(1991~2015 年)
図6:アジア・大洋州主要 5 か国の国際会議開催件数に対する日本のシェア推移
(1991~2015 年)
図7:アジア・大洋州における都市別国際会議開催件数の推移
(2013~2015 年/上位 20 都市)
図8:国際会議開催件数上位 20 ヵ国の GDP と開催件数
図9:アジア・大洋州における都市別の人口と国際会議開催件数
図 10:国内主要 10 都市における国際会議開催件数と世界順位の推移図 11:国際会議等の経済波及効果の算出事例
図 12:訪日外国人旅行者数全体に占めるビジネス目的旅行者数の推移
図 13:国際会議誘致・開催に対する自治体・コンベンションビューローの課題図 14:海外競合都市調査対象都市一覧
図 15:海外競合都市調査対象都市概要図 16:海外競合都市の組織体制
図 17:グローバル MICE 強化都市の組織体制図 18:海外競合都市のターゲット
図 19:海外競合都市からみた競合都市
図 20:国際会議誘致パンフレット(台湾 TAITRA)
図 21:国際会議の誘致・開催に向けた JNTO/コンベンションビューローの関わり国際会議誘致活動を優位に進めるために追加で必要な情報
図 22:ユニークベニューHAND BOOK
図 23:小倉城天守閣広場における国際会議レセプション(ICIAE 2015 Extra Party) 図 24:ユニークベニュー利用可能施設のリスト化
図 25:ユニークベニューベストプラクティス集
図 26:ユニークベニュー利用の際の施設の対応状況図 27:施設からユニークベニュー利用を断られた理由図 28:ユニークベニュー開発に向けた効果的な方法図 29:ユニークベニュー海外事例及び日本の事例
図 30:国際会議分野の人材育成

図 31:アジア・大洋州主要国の CMP 取得者数
図 32:研究者等の誘致活動への立候補/協力の意思図 33:国際会議誘致における課題
図 34:自治体・コンベンションビューローと研究者等の連携状況
図 35:国内学会の誘致力強化に向け、観光庁・コンベンションビューロー・JNTO・自治体に対して期待すること
図 36:国際会議誘致に係る作業全般への対応について
図 37:ビッドペーパーの作成に臨まれるサポート体制について
図 38:国際会議誘致のためのコンベンションビューローによるビッドペーパーの作成状況について
図 39:MICE 誘致アンバサダープログラム詳細
図 40:アンバサダープログラム支援内容への満足度について図 41:アンバサダープログラムの関係者への紹介について図 42:アンバサダープログラムの内容について
図 43:MICE 誘致アンバサダーの推薦状況について
図 44:アンバサダープログラム海外事例(シンガポール) 図 45:アンバサダープログラム海外事例(マレーシア) 図 46:アンバサダープログラム海外事例(エディンバラ) 図 47:国内における在外公館との連携事例
図 48:国際会議招請レター発出事例
図 49:アジア・大洋州諸国における分野別国際会議開催の割合(2011~2015 年度) 図 50:日本の MICE ブランドコンセプトのイメージ
図 51:日本の MICE ブランド(Japan. Meetings & Events) 図 52:MICE ブランドリーフレットのイメージ
図 53:日本の MICE ブランドの普及・啓発 図 54:日本の MICE ブランドに対する認知度
図 55:国内の MICE ブランドのプロモーションでの活用状況等図 56:MICE ブランド海外事例(デンマーク)
図 57:MICE ブランド海外事例(メルボルン)
図 58:日本における分野別国際会議の開催件数推移(2006~2015 年)
図 59:アジア・大洋州主要国における分野別国際会議の開催件数推移(2006~2015 年) 図 60:国際会議誘致・開催の実施体制(韓国・大田広域市)
図 61:国際的な都市アライアンスの設立
図 62:国際会議誘致・開催の実施体制(シンガポール) 図 63:ソウル MICE カード
図 64:みなとみらい 21 共通飲食券

図 65:横浜版インバウンドパス
図 66:海外競合都市と差別化を図っていく上でのコンベンションビューローの課題図 67:コンベンションビューローの大学・学会・産業界等との連携状況と課題
図 68:国際会議誘致・開催の体制整備

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1章 評価の概要
1.評価の目的、必要性
「MICE 誘致の推進」に係る平成 28 年度取りまとめ政策レビューについては、これまで取り組みを行ってきた国際会議の誘致・開催を推進する施策の進捗や効果について評価・分析を行うことで、今後の施策立案に寄与することを目的とする。
世界全体の国際会議の開催件数は年々増加しており、特に急速な経済成長を背景にアジアの開催件数が伸びている。韓国・中国・シンガポール・豪州等のアジア諸国においては、国際会議の誘致の取組を強化しており、今後更なる拡大が見込まれるため、誘致競争がより厳しくなると考えられる。我が国の国際会議分野の国際競争力強化を引き続き図るため、国際会議誘致の進捗状況について評価を行う必要がある。

2.対象政策
国や日本政府観光局(以下、「JNTO」という。)において、これまで実施してきている国際会議誘致政策は、「我が国の MICE 国際競争力の強化に向けて」(平成 25 年「MICE 国際競争力強化委員会最終とりまとめ」)に基づくものであるところ、当該とりまとめにおいて提言された施策について、評価を行う。

3.評価の視点
日本再興戦略(2015 年 6 月 30 日閣議決定)において、「2030 年にはアジア NO.1 の国際会議開催国としての不動の地位を築く」という目標が掲げられた。その実現に向けて、
「我が国の MICE 国際競争力の強化に向けて」(MICE 国際競争力強化最終とりまとめ) で定めた以下4つのテーマに基づき実施されてきた施策が、国際会議等の誘致・開催に効果的に寄与しているかどうかを検証する。

テーマ①:都市の誘致競争力の強化テーマ②:MICE プレイヤーの強化
テーマ③:チームジャパンの誘致体制の構築
テーマ④:国・都市の戦略実現ツールとしての MICE の活用
4.評価手法
(1)国際会議協会(以下、「ICCA」という。)等の国際会議統計を利用して、我が国における国際会議開催件数の達成状況を検証する。
(2)「2030 年にはアジア NO.1 の国際会議開催国としての不動の地位を築く」という目標を達成するために掲げたテーマに紐付く施策に関し、施策の進捗効果・課題について、評価・分析を実施する。

5.第三者の知見の活用
国際会議等の誘致件数や、それを支える施策の実施状況について、有識者により構成される MICE 国際競争力強化委員会において、ご意見を頂いている。また、国際会議の誘致・開催に関する国内外の幅広い関係者から、我が国の政策についてのコメントを頂いた。さらに国土交通省政策評価会における本テーマに対する意見及び個別指導の際の助言等を活用する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2章 我が国の国際会議等誘致政策の現況

1. MICE について
(1)MICE とは
MICE とは、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字のことであり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称である。 MICE は、企業・産業活動や研究・学会活動等と関連している場合が多いため、一般的な観光とは性格を異にする部分が多いものである。このため、観光振興という文脈でのみ捉えるのではなく、MICE について、「人が集まる」という直接的な効果はもちろん、人の集積や交流から派生する付加価値や大局的な意義についての認識を高める必要がある。

図1:MICE の意義

(2)政策レビューの対象分野
国及び JNTO においては、MICE 振興については、従来国際会議の誘致・開催に係る施策を中心に実施してきた。MICE のうち、企業等の会議(Meeting)及び企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)の開催決定については、各企業の独自の判断に依る部分が大きく、国際的に統計データが十分に整備されていない。また、近年、企業等の会議(Meeting)や企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ 旅行)(Incentive Travel)の推進に向けた取組みを開始したところであるが、まだ日が浅く政策レビューには時期尚早である。
また、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)については、これまで観光庁の施策としては実施していない。
このため、本レビューは国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)の誘致・開催を対象とする。なお、MICE 誘致・開催に係る施策は、本来は国際会議以外を含めた幅広いものであり、MICE 全体の施策レビューは、今後の課題として対応を検討していく必要がある。

図2:政策レビュー対象分野

(3)国際会議誘致・開催の意義
国際会議の誘致・開催について、国レベルで支援策を講じてきているが、国が関与すべき理由としては、主に以下の3つの理由がある。

① 地域への高い経済効果
国際会議開催を通じた主催者、参加者、出展者等の消費支出や関連の事業支出は、国際会議開催地域を中心に大きな経済波及効果を生み出す。国際会議は会議開催、宿泊、飲食、観光等の経済・消費活動の裾野が広く、また滞在期間が比較的長いと言われており、一般観光客以上に周辺地域への経済効果を生み出すことが期待される。
例えば、観光庁の経済波及効果の簡易測定ツールによると、1万人規模の国際会議が開催された場合、約 39 億円の経済波及効果をもたらすと推計されている。また、米国のMICE 業界団体では自らの経済規模を 2000 億ドル超※と見積もるなど、国際会議開催による経済波及効果は極めて大きいと海外でも指摘されている。
※米国の民間 MICE 産業団体である Convention Industry Council による試算

② ビジネスの機会やイノベーションの創出
国際会議開催を通じて世界から企業や学会の主要プレイヤーが我が国に集うことは、我が国の関係者と海外の関係者のネットワークを構築し、新しいビジネスやイノベーションの機会を呼び込むことである。国際会議の開催は多様な人々の交流を促し、ビジネス・イノベーション振興等につながる様々な効果を生み出す。
企業が参加する国際会議は最新のビジネス・製品情報に関する情報発信・共有の場であり、また、商談の場でもある。学会等の国際会議も最新の研究成果・技術革新の動向を報告・共有する場であり、アイディア創出や更なる技術革新につながるものである。国際会議開催を通じて参加者同士がフェイス・トゥ・フェイスで交流することによる信頼関係の醸成は、新たなビジネスマッチングや共同研究等も生み出し、長期的なパートナーシップの構築につながるなど、ネットワークの形成を通じた様々な効果が期待される。
特に、日本を代表する企業、ビジネスナレッジ、人材が集積し、交通網が高度に発達した都市の中心部においては、国際会議参加者間にとどまらない活発な交流が行われることで、これまでの国際会議の役割を超えた、次世代の日本をけん引する新たなイノベーションやグローバルレベルの産業創出につながる可能性を秘めている。
このように国際会議は、ビジネスやイノベーションの機会を創造するいわば経済のソフトインフラを提供する役割を担っている。

③ 都市の競争力・ブランド力の向上
国際会議開催を通じた国際・国内相互の人や情報の流通、ネットワークの構築、集客

力などはビジネスや研究環境の向上につながり、都市の競争力、ひいては、国の競争力向上につながるものである。シンガポールや豪州をはじめとした多くの国・都市が、国・都市の経済戦略の中で、その達成手段の一つとして国際会議開催を位置付け、戦略分野
/成長分野における産業振興、イノベーション創出のためのツールとして国際会議や見本市を活用している。例えば、都市の競争力に関する主だった分析調査を見ても、国際会議等の開催を都市の競争力の評価指標として組み込んでいるケースは極めて多い。
我が国においても、国際会議を国・都市競争力向上のツールとして認識し、今以上に活用することが重要である。国際会議に関する戦略はすなわち我が国の経済発展・知の集積のための戦略でもある。また、国際会議の開催は、観光などのポスト・コンベンションの活動も含めて、ジャパン・ブランドを発信・PR する絶好の機会でもある。都市の魅力や成長分野について情報発信をする場としての効果があり、すなわちシティーセールスのツールとしての意味を有する。

 
上記のように国際会議の誘致・開催には当該国・都市地域の発展、成長に寄与する大きな意義があり、近隣のアジア・太平洋州地域でもシンガポールや韓国、オーストラリアといった国々が、国を挙げて誘致・開催に積極的に取り組んでいる。
激化する国際的な誘致競争に対応していくためには、我が国においても、国が国際会議等政策全体の司令塔として政策立案や関係機関との連携促進、都市レベルでの競争力強化支援等を行い、我が国の国際会議誘致競争力を強化していくことが必要である。更に、国が中心となって、現存する様々な課題の解決を図っていくことで、我が国の国際会議誘致・開催を一層促進していくことが求められている。
また、地方自治体は、それぞれの都市・コンベンションビューローが中心となって、国際会議を誘致・開催する体制を構築するとともに、自ら積極的に誘致戦略を策定するなど誘致競争力を強化していくことが望まれる。

(4)国際会議誘致・開催に係る関係者
国際会議の誘致活動は、国際的な都市間競争であり、学会・協会等の国内主催者の他、数多くの MICE プレイヤーが関わって実施されている。
① 学会・協会等国際主催者
② 都市・コンベンションビューロー
③ 宿泊事業者(ホテル等)
④ 国際会議場
⑤ ユニークベニュー
⑥ DMC※・旅行業者
⑦ 運輸事業者
⑧ 会議運営事業者(PCO)
⑨ 展示会・イベント事業者
⑩ 国・日本政府観光局(JNTO)

 

 

※DMC(Destination Management Company)
MICE 開催地に関する専門知識やネットワークを有し、MICE に付随するイベントやアフターコンベンションの企画・手配から実施、ロジスティクスに関するマネジメント等の関連業務をワンストップ的に担う事業者

 

 

2. 国際会議誘致に係る世界的な動向

(1)世界の国際会議開催件数の推移
国際会議関連団体及び事業者を会員とする国際団体 ICCA(International Congress and Convention Association/国際会議協会)の統計によれば、世界全体の国際会議の開催件数は増加傾向にあり、2006 年から 2015 年の直近 10 年で約 36%の増加となっている。地域別の開催件数については、国際機関・学会の本部の多くが設置されている欧州が世界全体の約半数を占めているが、開催件数の伸率で見ると中東や中南米地域が、それぞれ約 150%増、約 51%増と特に高い伸びとなっている。アジア地域は約 31%増加しているものの、日本は約 28%の増加にとどまっている。

図3:世界・地域別の国際会議開催件数の推移(2006~2015 年)
(2)国際会議開催件数上位 10 カ国
国際会議開催件数を国別に見ると、2006 年から 2015 年の直近 10 年連続して、開催件数第1位はアメリカ、第 2 位はドイツとなっている。また、3 位以下は、年毎に一部順

位の変動はあるものの、イギリス、スペイン、フランス、イタリアと欧州諸国が上位を占めている。
日本の開催件数は、ここ数年は世界 7 位を堅持しているものの、2015 年実績では世界
6 位のイタリアとは 149 件(倍率にして約 1.4 倍)と大きな差がある。また、近年オランダ、カナダといった日本の直後に位置する国が件数を伸ばしている。
図4:国際会議開催件数上位 10 カ国(2015 年)における開催件数の推移(2006~2015 年)

(3)アジア・大洋州の国際会議開催件数
アジア・大洋州地域の我が国を含む主要 5 カ国(日本、中国、韓国、シンガポール、
オーストラリア)の開催件数は増加傾向であるが、地域内の主要 5 カ国の総開催件数に占める我が国のシェアは、1991 年は 51%であったが、2015 年には 26%となり、低下傾向にある。開催件数においても、2012 年以降、辛うじて 3 年連続の首位を保っているものの、地域内の競争は激しくなっている。

図5:アジア・大洋州主要 5 カ国の国際会議開催件数(1991~2015 年)

図6:アジア・大洋州主要 5 カ国の国際会議開催件数に対する日本のシェア推移(1991~2015 年)
アジア・大洋州における都市別の国際会議開催件数(2015 年実績)を見ると、日本で最も開催件数の多い東京がアジア・大洋州では8位、国内2位の京都がアジア・大洋州では 12 位となっている。近年、開催件数を大きく伸ばしている都市としては、香港、マニラ、台北などがあり、都市単位で見ると我が国は必ずしもアジア No.1の国際会議開催国とは言えない。

図7:アジア・大洋州における都市別国際会議開催件数の推移(2013~2015 年/上位 20 都市)

‘15 順位 都市 2013 2014 2015 ‘13→‘15
増減
1 シンガポール 175 142 156 -19
2 ソウル 125 99 117 -8
3 香港 89 98 112 +23
4 バンコク 93 73 103 +10
5 北京 105 104 95 -10
6 台北 78 92 90 +12
7 シドニー 93 82 86 -7
8 東京 79 90 80 +1
9 クアラルンプール 68 79 73 +5
10 上海 72 73 55 -17
11 メルボルン 52 61 54 +2
12 京都 43 47 45 +2
13 マニラ 28 22 41 +13
14 ニューデリー 35 35 41 +6
15 バリ 55 38 40 -15

 

 

 

 

 

3. 国際会議誘致に係る我が国の状況

(1)GDP・人口と国際会議件数
国際会議開催件数上位 20 カ国(2015 年実績)における GDP と国際会議開催件数との関係を比較すると、国際会議の開催件数は概ね GDP に比例していることが見てとれる。欧州においては GDP は日本よりも低いものの、開催件数では日本を上回る国が多くあるが、これは、国際機関・学会の本部の多くが欧州に設置されており、欧州内で持ち回り開催する国際会議が多いことが影響していると考えられる。欧州以外で見ると GDP との関係において、我が国全体の国際会議開催件数は他国と同水準と考えられる。

図8:国際会議開催件数上位 20 カ国のGDP と開催件数

アジア・大洋州における国際会議開催件数上位 20 都市(2015 年実績)と日本国内の国際会議開催件数 10 件以上の都市において、人口と開催件数との関係を比較すると、人口の規模に応じて国際会議の開催件数も多くなる傾向にある。他方、日本の都市と同程度の人口規模である海外の都市でも、会議開催件数は日本のそれぞれの都市を上回る都市が多く存在する。我が国の都市は、その規模に応じて国際会議の誘致件数をさらに伸ばす余地があると考えられる。

図9:アジア・大洋州における都市別の人口と国際会議開催件数

(2)国内都市・海外競合都市の会議開催件数と世界順位
国内主要 10 都市における国際会議開催件数は、2010 年と 2015 年の比較では増加して
いる都市が 7 都市と大半を占めるが、世界順位で見ると大きく後退している都市が 7 都市と逆に大半を占める。うち 6 都市は、世界順位を 10 位以上と大きく落としている。日本全体では国際会議開催件数は増加しており、世界順位も近年は 7 位を堅持しているものの、海外の競合都市の誘致競争力の高まりを受けて、国内都市の誘致力は相対的に低下してきている可能性がある。

図 10:国内主要 10 都市における国際会議開催件数と世界順位の推移

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2010 年比増減

札幌 開催件数 16 7 16 13 19 18 2
世界順位 112 273 142 182 125 139 -27

仙台 開催件数 8 – 6 5 6 9 1
世界順位 215 – 319 371 318 254 -39

東京 開催件数 68 50 69 79 90 80 12
世界順位 27 41 31 26 22 28 1

筑波 開催件数 11 5 11 8 9 9 -2
世界順位 159 345 207 265 240 254 -95

横浜 開催件数 25 16 18 17 18 22 -3
世界順位 70 132 125 148 134 117 -47

名古屋 開催件数 7 – 11 15 11 14 7
世界順位 249 – 207 159 208 182 67

大阪 開催件数 16 19 11 20 10 23 7
世界順位 112 109 207 117 222 115 -3

京都 開催件数 42 29 61 43 47 45 3
世界順位 45 69 36 55 54 57 -12

神戸 開催件数 13 14 22 18 15 13 ±0
世界順位 139 150 100 136 164 191 -52

福岡 開催件数 14 19 23 12 15 30 16
世界順位 129 109 97 193 164 85 44

北九州 開催件数 – 5 5 – – – –
世界順位 – 345 363 – – – –

沖縄 開催件数 – 6 – 9 16 13 7(※2011 年比)
世界順位 – 312 – 242 152 191 121(※2011 年比)
(出典:ICCA Statistics Report 2010-2015)

 

 

 

 

 

 

なお、2016 年 11 月に観光庁及び JNTO が実施した専門家パネル※(以下「専門家パネル」という。)の中で、日本は ICCA の公表データではアジア大洋州で 1 位となっているものの、競争が激化していることから、安定的な地位とはなっていないと指摘されている。現状維持のみでは、マーケット・シェアが下がっていくことが懸念されるため、より本格的な取り組みが必要との意見が出された。

※2016 年 11 月、国際会議協会(ICCA)総会の期間中、観光庁及び JNTO は海外にて活躍する国際会議の教育・運営の専門家 12 名と、日本の MICE 誘致・開催に係る課題等について意見交換を行った。

(3)国際会議等の経済波及効果の算出事例
国際会議による来訪者は、一般観光客と同様に宿泊や交通に支出するが、国際会議開 催による経済的効果はそれに留まらず、主催者等の消費支出や関連の事業支出を通じて、全国に大きな経済波及効果をもたらす。地方自治体やコンベンションビューロー等によ り、これら経済波及効果を算出している事例もあり、大規模なものでは数十億円を超え るような大きな効果も算出されている。国際会議の意義を広く一般に普及させていたく ためには、こうした調査結果を積極的に紹介していくことが必要である。

図 11:国際会議等の経済波及効果の算出事例
催事名 時期
(期間)
開催場所 参加者数
(人・日)
利用施設 経済波及効果
(百万円)
調査主体

伊勢志摩サミット 2016 年 5 月
26~27 日
(2 日間)
三重県伊勢 市・志摩市等 2,000
(※参加する政府関係者数の実人数)
志摩観光ホテル ザ・クラシック等 107,860
(※各所で開催される関連会議含む)
中部圏社会経済研究所

第 3 回国連防災世界会議 2015 年 3 月
14~18 日
(5 日間)

宮城県仙台市

6,500
仙台国際センター等

1,720

七十七銀行
第 58 回日本糖尿病学会年次学術集会 2015 年 5 月
21~24 日
(4 日間)

山口県下関市

11,500

海峡メッセ下関他 1,130
(※地元にもたらした経済波及効果) 下関観光コンベンション協会、下関市

第 99 回国際キワニス年次総会 2015 年 7 月
17~20 日
(4 日間)

千葉県千葉市

2,832

幕張メッセ

1,100 ちば国際コンベンションビューロー

IMF 総会 2012 年 9 月
9~15 日
(7 日間)
東京都千代田区等

11,600 東京国際フォーラム、帝国ホテル、ホテルオークラ等

25,000

TCVB

4.我が国における国際会議誘致政策の目的と目標
(1)目的
国際会議等の誘致・開催は、本章1(3)で述べたとおり、①地域への高い経済効果、
②ビジネスの機会やイノベーションの創出、③都市の競争力・ブランド力の向上、といった意義があり、近隣のアジア・大洋州地域でもシンガポールや韓国、オーストラリアといった国々が、国際会議等の誘致・開催に国を挙げて積極的に取り組んでいる。
我が国においても、国際会議等を国・都市の競争力向上等のツールとして認識し、今以上に活用していくことが重要であるが、国際会議等の意義やその効果について、必ずしも広く認識されているとは言い難く、激化する国際的な誘致競争に対応していくためには、解決すべき様々な課題があるのが現状である。
このため、国が中心となって、国際会議等開催による経済効果等のデータを整備して関係者の理解・協力を得られるようにすること、コンベンションビューローの組織体制を強化すること、受入地域の魅力を向上させ、他国の都市との差別化を図るなどの課題を解決していき、我が国の国際会議等誘致力を一層強化していく必要がある。
(2)目標
我が国を訪れる外国人旅行者数を見ると、全体の約2割以上を国際会議参加等のビジネス目的の旅行者が占めており、「明日の日本を支える観光ビジョン」(2016 年 3 月決定)に掲げられた、訪日外国人旅行者数 2020 年に 4000 万人、2030 年に 6000 万人といった政府目標を達成するためには、これらの外国人の来訪を促す施策も極めて重要である。
また、国際会議は会議開催、宿泊、飲食、観光等の経済・消費活動の裾野が広く、また滞在期間が比較的長いと傾向があることから、一般観光客以上に周辺地域への経済効果を生み出すことが期待されており、訪日外国人旅行消費額 2020 年に8兆円、2030 年に 15 兆円といった政府目標を達成するためにも、国際会議等により来訪する外国人を増加させる施策は極めて重要である。

図 12:訪日外国人旅行者数全体に占めるビジネス目的旅行者数の推移
これまで「国際会議」に関する政府目標としては、2006 年9月の安倍内閣総理大臣(当時)の所信表明演説及び 2007 年に閣議決定した「観光立国推進基本計画」において、
「今後5年以内に我が国における国際会議の開催件数を5割以上伸ばし、アジアにおける最大の開催国を目指す」との目標が掲げられている。
この目標が掲げられた当時、シンガポール、中国、韓国など近隣のアジア諸国において、国際会議の開催を主要産業として位置付け、多額の予算を投じて、誘致活動や開催に対して支援するとともに、参加者に対する様々な便宜供与、誘致・運営に携わる人材の育成強化等に取り組んでおり、国際会議開催件数を急速に伸ばしてきていた。反面、
1990 年代にはアジアにおける圧倒的な国際会議等先進国であった我が国では、国を挙げた国際会議等政策の取組が遅れており、競合国との関係では相対的に競争力を失いつつあったことから、国を挙げた国際会議誘致・開催推進体制の整備、誘致活動や開催・受入れに対する支援等が急務とされていた。

その後、国際的な国際会議等誘致競争の激化に対応するため、我が国の国際会議等の競争力の抜本的な強化が求められる中、2012 年 11 月に観光庁が中心となって「MICE 国

際競争力強化委員会」が設置され、国際会議等市場動向等の現状分析、国際会議等分野のマーケティング戦略・取組のあり方、我が国の国際会議等誘致関係主体の国際競争力強化方策等の検討が開始された。同委員会の提言は、2013 年 6 月に決定された「日本再興戦略 2013」や「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」にも盛り込まれることとなり、同時に「日本再興戦略 2013」において、「2030 年(平成 42 年)にはアジア
№1の国際会議開催国としての不動の地域を築く」とする新たな政府目標が掲げられた。以降、我が国における国際会議等誘致政策は、同目標の達成を目指して推進されてい
る。

5.我が国の国際会議誘致政策の変遷と現在の実施施策
(1) 観光庁発足前(1980年代後半~2000年代前半)
観光庁発足以前の1980年代後半から1990年代においては、国際会議の開催による多大な意義についての関心が高まり、全国の多くの地方自治体・都市が国際会議の振興に熱心に取り組むようになった。しかし、当時の各地方自治体・都市は、誘致受入体制及び関連施設の未整備、人材やノウハウの不足など、解決すべき多くの課題を抱えており、国際会議開催件数を国際比較すると、我が国は欧米諸国に比べ大きく立ち遅れていたのが実態である。
そこで、国(当時の運輸省)は、国際会議(コンベンション)都市としての基礎的条件が整っている都市を国際コンベンション・シティとして指定し、当該都市を諸外国に宣伝すること等の支援を行うことを目的とする「国際コンベンション・シティ構想」を起ち上げ、1988年に全国25都市を国際コンベンション・シティとして指定し、海外宣伝、人材育成、ノウハウ及び情報の提供等に係る支援措置を開始した。
その後、1994年6月には「国際会議等の誘致の促進及び開催の円滑化等による国際観光の振興に関する法律(コンベンション法)」が成立し、同法に基づき、国は同年、「国際会議観光都市」として全国42都市(2017年3月現在では53都市)を認定した。認定を受けた都市に対しては、(特)国際観光振興会(後の日本政府観光局(JNTO))が国際会議等の誘致に関する情報の提供、諸外国における宣伝及び誘致活動に対する支援を実施するとともに、一定の要件を満たす国際会議等については、寄付金の募集、交付金の交付を行うなど、当該国際会議等の主催者への援助を行った。
(特)国際観光振興会は、我が国におけるインバウンド専門の公的機関として、1995 年に本部に国際コンベンション誘致センターを設置し体制を強化するとともに、調査・コンサルティング、コンベンション開催決定権者の招へい・受入等の活動や、海外宣伝事務所を通じた国際会議の誘致・宣伝活動を実施していた。
このような取組を行っていた1990年代には、我が国は経済的な優位性といった背景もあり、国際会議の開催においてアジアの中で圧倒的な存在感を示していた。1991年時点では、アジア・大洋州主要国の国際会議開催件数に対する日本のシェアは半数の約51% を占めており、「この時期、国際会議は当然のように日本で開催されていた」とする国際会議関係者のコメントもある。
しかし、当時の国際会議誘致・開催に係る国の政策は、国際会議を受け入れる施設が整備されている都市を国際会議観光都市として認定し、その都市数を増加させることに重きが置かれており、真に国際的な競争力を有する都市の育成という観点では、専門ノウハウを有する職員の確保や海外での誘致活動に必要な予算の確保といった施策については、必ずしも十分な取組が行われていたとは言い難い。一方、一部のアジア諸国は、急速な経済発展とともに国を挙げて国際会議誘致の取組を強化してきており、国際会議件数の観点において、アジアにおける我が国のシェアは相対的に低下を始めた。

(2)観光庁発足前後(2000年代後半~2011年頃)
2003年、国は史上初の本格的な訪日旅行プロモーションとなる「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を開始するが、これは当初は主に一般観光・レジャー目的の訪日旅行需要喚起を目的としたものであった。一方、ビジネス目的の訪日外国人旅行者については、訪日外国人旅行者数全体の20%(当時)を占めているにも関わらず、国を挙げた国際会議誘致支援の予算も十分に確保されておらず、必ずしも十分な取組がなされているとは言い難い状況であった。この結果、近隣のアジア諸国が多額の予算を投じて国家的な国際会議誘致活動を行っているのに対し、我が国では誘致主体による取組が中心にとどまっており、国を挙げた推進体制を整え、ビジネス需要の核となる国際会議の誘致に向けた取組を強化することが急務とされていた。
このため、2006年には、国土交通省の他、関係省庁や旅行、文化等の関係機関・団体からなる検討会が発足し、国際会議、国際文化、スポーツイベント等を通じた観光交流拡大に向けて、誘致に関する課題や方向性を取りまとめるなど、取組の強化が図られていく中、2006年9月の安倍内閣総理大臣(当時)の所信表明演説及び2007年に閣議決定した「観光立国推進基本計画」において、「今後5年以内に我が国における国際会議の開催件数を5割以上伸ばし、アジアにおける最大の開催国を目指す」との目標が掲げられることとなった。
その後、2007年には、全府省庁がメンバーとなって「国際会議の開催・誘致推進による国際交流拡大プログラム」が取りまとめられ、内閣総理大臣や所管大臣等のトップによる招請状の発出、国が主催者となる国際会議の所要予算計上など、本プログラムに沿って、国を挙げた誘致・開催推進体制の整備、誘致活動や開催・受入れに対する支援が進められることとなった。
また、2006年12月に観光立国を実現するための基本理念や政府の体制等を示した「観光立国推進基本法」が成立したことを受け、2008年10月に観光庁が発足した。合わせて同庁内に国際会議等の誘致・開催の推進を専門に所掌する参事官が設置され、政府として国際会議等政策に対する体制強化が図られるといった大きな変革が実行された。
当時、国として実施していた国際会議の誘致・開催支援施策としては、観光庁を中心に関係省庁とも連携し所管大臣等による招請状の発出、在外公館による国際会議の開催国決定権者等に対する働きかけ等のほか、海外で開催される国際コンベンション見本市への出展や、国際会議の開催国決定権者等の我が国への招請を通じて、国際会議の開催適地としての日本の魅力のPR等が挙げられる。また、「国際会議等の誘致の促進及び開催の円滑化等による国際観光の振興に関する法律(コンベンション法)」に基づく国際会議観光都市の認定と支援や、JNTOにおいて、寄付金・交付金制度を通じた国際会議の開催支援や円滑な開催のためのノウハウの提供等を実施しており、従前に比べると内容の充実が図られてきていた。
このような取組が実施される中、国際会議の開催件数では2000年代には我が国はアジ

アで概ね1位を堅持しており、国際会議の開催・誘致の推進については一定の成果を上げてきたところである。しかし、シンガポールや韓国等のアジアの誘致競合国やアメリカ、オーストラリア等においては、国際会議のみならずMICE(Meeting, Incentive travel, Convention, Event/Exhibition)全般の振興に積極的に取り組むようになっており、これら国際会議以外のものについても訪日外国人旅行者数の増大、経済効果、地域の国際化・活性化等に大きな意義を持つことから、我が国としても国際会議だけでなく、MICE 全般の推進が求められるようになってきた。
そこで、2009年7月には国及び関係主体が具体的に果たすべき役割や活動内容、時期等についてまとめた「MICE推進アクションプラン」を策定するとともに、2010年を従来の国際会議誘致からMICE全般の推進へと変革していく年、すなわちMICE元年とすべく、
「Japan MICE Year」と設定し、我が国がMICEの開催適地であることを集中的・積極的に海外に向けてアピールする取組が開始された。そして、これらを契機として、世界水準の人材を育成するための研修事業や世界有数のMICE見本市への出展規模の大幅拡大など様々な取組の強化が図られることとなった。更に国内的に浸透しているとは言い難い
MICEの意義等についても広く周知し、実践的知識やノウハウを習得してもらうことを目的として同年7月には「Japan MICE Year シンポジウム」を大阪にて開催した。

 
2011年3月に発生した東日本大震災の影響については、我が国での国際会議等開催を 見直す動きがある国際会議主催者等に対して、日本での開催維持を求めるレターの発出 や国際会議の本部等のキーパーソンの招請などによる取組を実施し、国際会議等のキャ ンセルや外国人参加者減少の防止に努めたところ、2011年には一時的に落ち込むことと なったが、2012年以降は国際会議開催件数においてアジアで第1位となり回復を見せた。
一方、アジア・大洋州地域諸国の著しい経済成長とともに、中国、韓国、シンガポール等の競合国が国策として国際会議誘致に注力し国際競争力を急速に増してきたことで、アジア・大洋州域内の国際会議誘致競争は激化してきている。同域内主要国における国際会議開催件数に占める我が国のシェアは、圧倒的な存在感を示していた1991年当時の51%から低下を続け、2012年には27%にまで落ち込む結果となり、国際開催件数ではアジア首位という地位にありながら、その価値は相対的に低下してきていることが明らかになってきた。我が国の国際会議関係者からは「アジアにおける国際会議市場は、日本の独占市場ではなくなった」、「必ずしも日本が無条件で選択されなくなり、競争が激化している。」等のコメントもあり、競合国の成長という環境の変化はあるものの、我が国の誘致競争力自体が低下しているといった懸念もされる状況となり、我が国の国際会議誘致政策の転換が求められるようになっていった。

 

 

 

 

 

 

(3)現在(2011 年頃~現在まで)
我が国の国際会議誘致政策の方向性について、時代の変化に応じた転換が求められ出していた2012年、観光庁は国内外の国際会議等関係者に対し、日本の国際会議等の誘致・開催をめぐる課題等についてヒアリングを実施しその方向性の再検討に着手した。その結果、ヒアリングからは主に以下の指摘が確認された。

○日本への国際会議等の誘致・開催を促進するためには、自国のポジショニングをしっかりと行うことが必須。
○ユニークベニューとして利用できない場所が多い。手続きに時間がかかり過ぎる。
○国際会議等に関する人材不足は日本の国際会議等開催環境において特に課題視されている。主催者のビジネス目的を理解し、言語対応を含め十分なコミュニケーションを取ることの出来る人材をコンスタントに育成していく必要がある。
○コンベンションの誘致や、開催時の事務局業務に多大な労力が必要なため、国内の大学教授、研究者等は、自国開催に対して消極的なことも少なくない。
○海外各国の在外公館が国際会議等の誘致活動に協力し、効率的な情報発信、誘致活動を行っている。我が国においても、在外公館等の海外拠点との連携の在り方を検討する必要がある。
○日本は情報発信が不足しているため、国際会議等開催地としての基礎的な情報が知られていない。日本で国際会議等を開催することによる、ビジネス上のメリットを訴求することが重要。
○成長しているアジアの国際会議等市場の中で、一般的には日本よりも中国の注目度が高い傾向があるが、医薬分野については、競争力の高い関連企業が多い日本の方が学会誘致の可能性が高いのではないか。

これらの指摘を受け、我が国のこれまでの国際会議等政策について大幅な見直しが必 要との認識の下、観光庁は2012年12月に国際会議等に関する有識者や関連事業者、都市 やコンベンションビューロー等の誘致主体から構成される「MICE国際競争力強化委員会」を立ち上げ、日本の国際会議等分野の国際的な競争力の抜本的な強化を図るための具体 方策の検討を開始した。

 

 
2013年8月、当委員会の成果物として、「MICE国際競争力強化委員会最終とりまとめ」
(我が国のMICE国際競争力の強化に向けて)を策定し、国際会議誘致政策の課題と今後講じるべき施策を整理した。同とりまとめでは、国際会議誘致における自治体・コンベンションビューロー、民間事業者、国・JNTO、国内主催者等のプレイヤーが果たすべき役割が示されると共に、国が支援すべき4つのテーマ(①都市の誘致競争力の強化、②MICEプレイヤーの強化、③チームジャパンの誘致体制の構築、④国・都市の戦略実現ツールとしてのMICEの活用)とそれに紐付く具体的な施策(次項(4)参照)が提示さ

れた。
これらは、競合各国・都市がより意欲的・戦略的に国際会議誘致に取り組み、誘致競争のレベルが着々と上がる中で、我が国・都市の誘致への取組がグローバルスタンダードから後れをとりつつある状況を打開すべく、我が国の国際会議誘致力を抜本的に強化する方策として示されたものであり、これまで見本市出展やキーパーソン招請といったプロモーションが中心であった国際会議誘致促進事業とは一線を画するものである。
その後、今日に至るまで観光庁の国際会議等政策は、当該最終とりまとめにて示され内容を基盤としており、グローバルMICE都市の育成やMICEアンバサダープログラムの導入、ユニークベニューの開発・利用促進等の新たな施策も含めて、国際会議等誘致の国際競争力強化を図るための取組が実施されている。
また、同年6月に閣議決定された「日本再興戦略2013」においては、「アジアNo.1 の国際会議開催国としての不動の地位を築く」という国際会議政策に係る新たな政府目標が設定された。さらに同時期には、政府一丸となって成長戦略により力強い日本経済を立て直し、近隣諸国以上に魅力にあふれる観光立国の実現に向け強力に施策を推進すべく「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」が取りまとめられ、国際会議等の誘致促進についても、同プログラムの四本柱の一つとして位置付けられた。
「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」は、2014年6月と2015年6月にそれぞれ改訂が行われ、いずれにおいてもMICE政策については、「MICE国際競争力強化委員会最終とりまとめ」を踏まえた国際競争力の強化に向けた施策等が行動計画として示されている。
なお、2009年以降、国として国際会議のみならずMICE全般の推進を掲げてきたところではあるが、国際会議誘致を巡る国際的な競争が激化する中、これを強力に推し進める必要があったことなどから、これまでの我が国のMICE施策は国際会議の誘致・開催の促進を中心として実施されてきたのが実態であり、2013年の「MICE国際競争力強化委員会最終とりまとめ」についても、国際会議を中心に議論がなされた上で提言されたものである。

2016年3月には、国を挙げて観光を我が国の基幹産業へと成長させ、「観光先進国」を目指していくため、「明日の日本を支える観光ビジョン」が取りまとめられたところであり、同ビジョンにおいては、「MICEの誘致促進に向け、政府レベルで支援する体制を構築するため、関係府省連絡会議を年内に新設し、(中略)将来的に、官民連携の横断組織を構築し、オールジャパン体制での支援を実施」とするMICE政策が記載されている。同ビジョンの決定後、同年5月に策定された「観光ビジョン実現プログラム2016」(観光ビジョンの実現に向けたアクション・プログラム2016)においては、MICE誘致の促進に係る具体的なアクションが盛り込まれた。これらに基づいて、同年12月に「MICE推進関係府省連絡会議」が設置され、国際会議以外も含めたMICE全体の推進体制が構築された。今

般の政策レビューは上述のとおり従来の施策の中心であった国際会議の誘致・開催に係る政策に焦点を当てるが、今後はMICE全体に係る政策を進め、MICE全体の取組みをレビューしていくことが課題である。

 

 

 

(4)現在の国際会議等政策
2013年以降、国際会議等政策は「アジアNo.1の国際会議開催国としての不動の地位を築く」という政府目標の下、「MICE国際競争力強化委員会最終とりまとめ」で提言された内容を基に実施されている。この提言では、以下の4つのテーマとそれに紐付く具体的な施策が示されており、それぞれのポイントは以下のとおりである。続く第3章では、これら具体的な施策につき、各々の内容に応じた手法に基づき評価を行うこととする。

【テーマⅠ:都市の誘致競争力の強化】
1)「グローバル MICE 戦略都市」の育成
国際的な国際会議等誘致競争を勝ち抜くためには、顧客となる会議主催者や参加者のニーズに応えるとともに、海外競合都市との差別化を図る観点等から、国際会議を誘致・開催する都市が国際会議等関連のハードやソフトの機能を高め、効果的なプロモーション・誘致活動を行っていくことが求められる。このためには、都市レベルでマーケティングの視点から戦略的に MICE にアプローチすることが必要となる。
今後、世界のトップグループに並ぶ MICE 都市の育成を図るとともに、限られたリソースの下で最大の成果を得るため、選択と集中の視点で、誘致ポテンシャルが高くかつ十分な実力と意欲を有する都市を対象として、国が集中的な支援を行っていく。

「グローバル MICE 都市育成事業」において派遣したアドバイザーの評価に基づき評価する。

2)ユニークベニューの開発・利用促進
文化施設や公共空間等のユニークベニューとしての利用は、我が国が海外に比べて遅れている取組の一つであり、従来から対応が求められている。
このため、ユニークベニューの開発、利用促進に当たっての課題と対応方策について、施設関係者、利用事業者、自治体関係者等により整理・検討を行う。合わせて、各種手続、料金設定等、ユニークベニューの利用に当たっての運用手法を検討するモデル事業を実施するとともに、施設側関係者がユニークベニュー利用に施設を供する際のノウハウ等をとりまとめたガイドラインを策定する。

ユニークベニューの実証支援事業の取組状況及びPCO やコンベンションビューローを対象としたアンケート調査に基づき評価する。

【テーマⅡ:MICE プレイヤーの強化】
3)MICE 分野の人材育成
国際的に通用する MICE 人材育成のための専門的なセミナーや研修の実施を国が行

う事を通じて、実務者向けの人材育成を推進する。

CMP(Certified Meeting Professional)取得者数の国際比較や、国際会議誘致分野の人材育成に係る国内セミナー実施状況に基づき評価する。
※CMP= Certified Meeting Professional(MICE 業界の国際認証)

 

 

 

 

【テーマⅢ:チームジャパンの誘致体制の構築】
4)研究者等の MICE 誘致環境の改善/MICE アンバサダープログラムの導入
国際会議等誘致における我が国の最大の強みの一つは、世界トップ水準の研究機関・学協会や企業を有することでが、こうした研究者・ビジネスマンや学協会は、会議誘致経験の不足、業務多忙や費用面の課題等の理由から、その多くが国際会議の誘致に積極的に関与できていないのが現状である。国際会議の潜在的需要の掘り起こしのためには、学会、産業界等の国際的なリーダーを中心とした国際会議等誘致体制の構築を図ることが必要である。
このため、海外有力都市で導入が図られ、大きな成果を挙げている国際会議等分野のアンバサダー制度を我が国に導入する。具体的には、国内外で強い指導力・影響力を有する研究者や産業界のリーダー等を MICE アンバサダーに任命し、国際会議等誘致体制構築への働きかけ、個々の国際会議等の誘致立候補に向けたアクション等について取り組む。国は MICE アンバサダーを任命するとともに、アンバサダーの国内外の各種活動に対して JNTO とともに様々なバックアップを行っていく。

研究者等を対象としたアンケート調査や MICE アンバサダーへのプログラムに関するアンケート調査、海外事例に基づき評価する。

5)政府の横断的体制の構築・在外公館や関係府省との連携
国際会議等の誘致・開催を強力に進めていくためには、政府全体が一体として取り組んでいくことが必要である。各種国際会議等の誘致・開催に関する取組を一体的に推進するため、関係府省の国際会議等誘致・開催に関する情報の集約・共有等を行うこととし、観光庁がイニシアティブを取りつつ政府内横断的な体制を構築する。
また、各種国際会議等の国際会議等誘致を政府として積極的にサポートするため、関係府省庁は大臣招請レター発出等の誘致支援に取り組む。さらに、在外公館や JNTO 等の海外拠点を活用しつつ、海外の国際会議主催者(国際本部等)に対する働きかけを強化する。

国際会議誘致に係る在外公館との連携状況や、関係府省大臣の国際会議招請レターの発出状況に基づき評価する。

6)日本の新しい MICE ブランドの構築・強化/ MICE を活用した日本の情報発信・ブランディング活動の展開 MICE 開催適地としての日本のプロモーション活動を引き続き積極的に展開・強化す
る。この一環として、観光庁、JNTO を中心に MICE 分野のブランド力を強化するため、新たなコンセプトを構築し、ロゴの策定を行う。また、海外のミーティングプランナー等に対する効果的・効率的な情報発信を行うため、JNTO のホームページが我が国の主立った MICE 関係先(主要 CB、MICE 施設、会議運営事業者等)のポータルサイトとして機能するよう拡充強化を図る。

PCO やコンベンションビューローを対象としたアンケート調査に基づき評価する。

【テーマⅣ:国・都市の戦略実現ツールとしての MICE の活用】
7) 成長分野をターゲットとした MICE 誘致・開催に向けた連携
MICE の意義の一つは、国際会議等の開催を通じて関連分野の世界のトップレベルの人材を我が国に呼び込み、ビジネスやイノベーションの振興等を図ることであるが、こうした視点は我が国の自治体やコンベンションビューロー等をはじめとした関係者には一般的には希薄であり、国際会議等の十分な活用が図られていない。今後我が国でも、国際会議等を国や都市の戦略実現ツールとして活用していくことが国や都市のトップをはじめとした関係者に広く求められる。
この具体化のため、医療分野(健康長寿分野)や次世代インフラなど、国や都市の重要推進分野の国際会議等の戦略的活用に向け、関連産業界と国際会議等誘致関係者の連携枠組みの構築を図る。

海外の取組事例の分析や国の科学・技術・医学分野の会議開催件数の国際比較に基づき評価する。

8) 国際会議誘致・開催の実施体制
都市のMICEマーケティングの中心的担い手であるコンベンションビューローの組織体制や財源強化等は我が国のMICE競争力強化に当たっての最重要課題の一つである。海外ではこうした人的・予算的強化のために様々なアプローチを行っており、我が国コンベンションビューローの強化を将来的に図っていく観点から、こうした海外の事例の収集・調査分析を行い、我が国への適用可能性等について検討を行う。また、こうしたコンベンションビューロー運営・財源手法等の改革を自発的に検討する自治体に対して、国として適切な支援を行うこととする。

また、コンベンションビューローと、ホテルや会議運営事業者(PCO)等の国際会議等民間事業者は、国際会議等誘致・開催に当たって協力して取り組む関係にあるが、会議主催者や開催会議に関する関連情報について、主催者側の意向等の理由から関係者間で十分には共有されていない場合が多い。
このため、いくつかの都市において、コンベンションビューローとホテル、会議運営事業者(PCO)等の国際会議等民間事業者間との情報共有の一層の促進を図る試行モデルの構築に国として取り組み、得られた経験・ノウハウを必要に応じて国内関係者と共有する。

国際会議誘致に成功している他の競合国の国際会議誘致体制に基づき評価する。

 

 

 

 

 

第3章 評価
1.MICE 誘致政策の実施状況と評価
前章で述べた「MICE 国際競争力強化委員会最終とりまとめ」(我が国の MICE 国際競争力の強化に向けて)において提言された4つのテーマに紐付く8つの施策について、以下のとおり個別に評価を行う。

(1)「グローバル MICE 都市」の育成
1)現状
国際会議等の誘致・開催は、ビジネスパーソンや研究者を我が国に呼び込むことにより、ビジネス機会やイノベーションの創出、地域に対する経済波及効果を生み出し、国や都市の国際的な競争力を強化する施策としてきわめて重要な役割を果たす。近年、国際会議等のこのような機能に着目し、アジア諸国をはじめとした海外の有力国・都市が国際会議等の誘致活動を強化している。
このような厳しい競争の中で勝ち抜くためには、顧客のニーズを満たすとともに海外競合都市との差別化を図る観点や、マーケティングの視点からの戦略的なアプローチが強く求められている。海外の有力国・都市では、伝統的な誘致活動から脱皮し、総合的なマーケティング戦略に基づく高度かつ効果的な誘致を進めており、我が国関係者も現行の取り組みを大幅に強化することが求められている。
上記の状況を踏まえ、平成 25 年 6 月にグローバル MICE 戦略・強化都市(以下、「グローバル MICE 都市」)7 都市が選定され、グローバルレベルの誘致競争力を持つ都市を目指し、2 年間にわたる支援事業を実施した。時を同じくして、平成 25 年 6 月に閣議決定された日本再興戦略では「2030 年には、アジア No.1 の国際会議開催国としての不動の地位を築く」という目標が立てられた。この目標の達成に向けて、国際会議の誘致先進国と同様に、日本全体の国際会議誘致力の底上げの為、平成 27 年 6 月に新たにグローバル MICE 強化都市 5 都市(以下、グローバル MICE 都市)を選定し、支援事業を実施した。

 

 

 

【グローバル MICE 戦略・強化都市およびグローバル MICE 強化都市 一覧】平成 25 年 6 月採択
グローバル MICE 戦略都市:特に大型国際会議の誘致ポテンシャルを有する都市東京都、横浜市、京都市、神戸市、福岡市
グローバル MICE 強化都市:一定水準以上の誘致力を有する都市大阪府・大阪市、名古屋市・愛知県

平成 27 年 6 月採択
グローバル MICE 強化都市:一定水準以上の誘致力を有する都市

札幌市、仙台市、千葉県千葉市、広島市、北九州市

 

 

 

【取組状況】
上述の通り、観光庁はグローバル MICE 都市を選定し、国際会議誘致に関するマーケティング及びプロモーション活動の強化・高度化に向けた支援事業として、次の4点を実施してきた。

①市場/競合都市調査分析
海外都市に関する調査分析を行い、グローバル MICE 都市へ提供することを目的に、国内都市および海外の主要都市を定量的に評価比較し、国内都市のグローバル市場 における成長ポテンシャルと改善点などの調査、海外都市の MICE 戦略に関するブランディング・具体的な誘致活動、ステークホルダー連携活動等都市の取組調査を行 った。

②アドバイザー派遣
グローバル MICE 都市に対して、国際会議誘致・開催におけるマーケティング戦略の策定・高度化や誘致活動におけるコンサルティングの実施を目的とし、国際会議誘致・開催分野における高度な専門知識と国際ネットワークを有する外国人専門家を招聘・派遣した。
実施内容例:
・SWOT分析を行い、強み・弱みの抽出
・「開催地」「コンベンション・ビューロー」における査定を行い、問題点・改善点の抽出
・グローバル MICE 都市化を目的した戦略プランの策定
・戦略プラン達成に向けたアクションプランの設定
・アクションプランの進捗管理
・セールスツール(ビッドペーパー・誘致プレゼンテーション)作成手法研修
・ブランド開発
・新規セールスターゲット開拓手法の研修
・海外見本市の商談手法の研修 等

③広告宣伝支援
MICE 専門誌の記者を日本へ招聘し、記事広告を作成・広告媒体への掲出を実施した。さらに、北米・欧州・アジアの MICE 専門誌にグローバル都市の素材を掲出した小冊子を作成、海外見本市での配布をするなどプロモーション活動も実施した。

④ステークホルダーの連携促進
グローバル MICE 都市に存在する MICE 関連の産業に従事する民間業者(会議施設運営会社やホテル等)、大学・研究機関やコンベンションビューロー等のステークホルダーの連携を促すことを目的とした啓もうセミナー等を実施した。

 

 

 

 

 

2)課題
上記のような支援事業を通じ、各グローバル都市へ派遣した専門家(外国人アドバイザー)によるコンサルティングを行った結果、総合的に①コンベンションビューロースタッフの国際会議誘致活動のノウハウ・知識の不足、②主催者・参加者ニーズに合致した商品の不足といった2点について課題の指摘を受けた。
これの要因として、国際会議等を誘致するにあたり先導的な役割を担うコンベンションビューローの組織体制が十分でないこと、MICE 商品を作成するにあたり巻き込むべきステークホルダーとの連携が不足していること、またナショナルビューローとなる JNTO と地域のコンベンションビューローの役割分担が不明確である点等が挙げられる。以下、それぞれに対応する課題をまとめる。

【海外専門家から指摘のあった課題】
①コンベンションビューローの課題
・人的・財的資源が不足している。
・定期的な人事異動の制度により、継続的な教育が困難である。専門スキルをもった人材の育成強化が必要。
・国際会議誘致成功・失敗の敗因分析の分析が十分行われていない。誘致の成功・失敗に係る要因分析や、マーケティング等を行う体制の構築が必要。

②JNTO の課題
・JNTO と CB の役割を明確化されていないため、MICE 開催地のプロモーションが効果的にできていない。
・ICCA 等の国際団体に広く参画し、バイヤー等との国際的なネットワークの構築が十分ではない。
・国内主催者(ローカルホスト)を増すためには、支援プログラム強化が必要。

③ステークホルダー連携の課題
・国際会議の必要性を理解し、ステークホルダー連携を深めるためには、国際会議の誘致・開催によりもたらされる経済効果等の重要性を示す事例やデータを提供が必要
・ステークホルダー(ホテル・施設・旅行会社等)に対し、国際市場で通用するプロ

ダクトとサービスを提供するための専門的なスキルトレーニングが必要
・地元主催者や学協会向けの支援プログラムが必要
一方、自治体やコンベンションビューローといったディステネーション側から見た国際会議誘致・開催に対する課題についてアンケートを行ったところ(図 国際会議誘致・開催に対する課題)、「人的リソース、職員能力・経験不足、活動資金」といった組織としてのリソース不足を課題と感じているケースや「ユニークベニューの開発や地域の大学や研究機関との連携」を指摘する声が多く、また、「地域内事業者との連携や周辺地域との連携、開発支援のノウハウ」を指摘する声が多くあがった。

図 13:国際会議誘致・開催に対する課題
(出典)観光庁 平成 27 年度「地域の特性を活かした MICE のあり方に関する調査事業」報告書
(調査対象)JNTO 国際会議統計 2011-2013 において、「外国人参加者数が 50 人以上の国際会議
の開催実績を持つ地域」の 58 のコンベンションビューロー及び自治体

【今後取り組むべき改善策】
海外アドバイザーから指摘された課題点と自治体・コンベンションビューローからヒアリングしたアンケート結果を元にした、今後の具体的な取り組むべき改善策の具体例を下記にまとめる。

① JNTO/CB の強化
・人員・予算、グローバルで戦うための専門スキルが不足しており、強化が必要。
・MICE 専門家育成の方策の検討が必要
・海外からの問い合わせ対応の強化が必要
・M&I 及び C 誘致のための誘致戦略の構築が必要
・海外マーケット情報の入手・分析が必要
・国際会議の誘致成功・失敗の要因分析が必要

② JNTO の強化
・JNTO と CB の役割を明確にすべき
・海外事務所にスペシャリストを配置すべき

③ ステークホルダーの強化
・関連産業からのサポートが必要(例:MICE 商品の開発、ユニークベニューの開発)
・ステークホルダーに対するトレーニングが必要(啓発・スキル等)
・学協会が国際会議を主催する力を強化・支援するプログラムが必要
3)海外事例
観光庁では、グローバル MICE 都市への支援事業の実施とともに、平成 27 年にグローバル MICE 強化都市に選定された札幌市、仙台市、千葉県千葉市、広島市、北九州市の 5 都市における海外競合都市の事例調査「地域の特性を活かした MICE の推進に係る調査事業」を行った。本事業では、これらの 5 都市との競合が想定される海外都市における国際会議誘致の取組やその体制、誘致戦略等を把握・比較することを通じ、グローバル MICE 強化都市への情報提供を行うことを目的としている。

図 14:海外競合都市調査対象都市一覧

図 15:海外競合都市調査対象都市概要

都市

MICE 推進主体

人口規模 ICCA 基準開催件数
(2014
年)

特徴
台北
TAITRA 約270 万人 92 件 MICE 誘致において職員の専門性向上に注力。
高雄 約277 万人 23 件
バンコク
(タイ) Thailand Convention, Exhibition Bureau
約831 万人
73 件 近年大きく発展を遂げ、多くの企業が立地するアジア有数の都市。
メルボルン
(オーストラリア) Melbourne Convention Bureau
約418 万人
61 件 専門学問領域を有する職員を雇用し、ビューローと学術会との繋がりを強化。
ハイデラバード
(インド) Hyderabad Convention Visitors Bureau
約364 万人
18 件 近年急成長しているインドの都市で世界的なIT 企業が集積。
(出典)観光庁 平成 27 年度「地域の特性を活かした MICE のあり方に関する調査事業」報告書
(国際連合 demographic yearbook 2014、各国政府 Web サイト、ICCA Statistics Report 2014 より作成)

【調査結果】
ヒアリング結果等を元に、組織体制、ターゲット分野、競合都市、誘致活動等に係る特徴的な取組み等カテゴリに分けて調査結果を整理した。

①組織体制
・調査対象都市のコンベンションビューロー等の職員数にはばらつきがあるものの、国際的にも高い誘致競争力を有するハイデラバードでは 4~5 名となっており、比較的少人数の体制で国際会議誘致にあたっている事例も見られた。
・このような少人数の体制で国際会議誘致に当たっている都市においては、人数を増やす事よりも人材育成を通した職員のスキル・ノウハウ向上を重要視している。人材育成手法としては、ICCA 等の国際団体の総会やセミナーへの派遣等が一般的であり、CMP(Certified Meeting Professional)等の国際資格取得の推奨・支援を行っているケースも存在する。
・その一方で、メルボルンのように多くの職員数を抱える都市も存在する。担当業務や外部組織の活用状況等、本調査では把握しきれていない諸事情に依るところもあるため、一概に全ての都市コンベンションビューローが少人数で運営されているとは言えない点には注意が必要である。

図 16:海外競合都市の組織体制

都市 国際会議担当者数 備考
台北 50 名程度
(MICE 部門全体)
• CMP の取得や各種セミナー等を通じた人材高度化に注力。
高雄
バンコク
(タイ) 非公開 • 機密情報のため、非公開
メルボルン
(オーストラリア)

30 名 • より多くの国際会議誘致に向けて、各分野の学術領域に関する専門性を有する職員を中途で採用。
• 海外都市(ロンドン、ニューヨーク、ワシントン、クアラルンプール、上海)に計 6 名(30 名に含む)のパートタイム職員を配置。
ハイデラバード
(インド)
4~5 名 • 人材育成による“質”の向上に注力
• ICCA 主催のセミナー等への参加を通じた能力向上・ネットワーク強化。
(出典)観光庁 平成 27 年度「地域の特性を活かした MICE のあり方に関する調査事業」報告書
図 17:グローバル MICE 強化都市の組織体制
一方、平成 27 年に観光庁が「グローバル
MICE 強化都市」として選定した5都市(札幌・仙台・千葉・広島・北九州)のコンベンションビューローを対象に、各々の組織体制についてヒアリングした結果、国際会議担当者数は4~9名程度となっており、上述した海外競合都市(特に台北・高雄・メルボルン)に比べると、比較的少人数の体制で運営していることが分かった。

観光庁がグローバル MICE 強化都市を対象に行ったヒアリング結果(平成 29 年 3 月時点)

②ターゲット分野
・調査対象としたほぼ全ての都市において、日本国内の都市同様に、ターゲット分野が明確に設定されていた。
・最も多くの都市がターゲット分野として設定しているのは、ヘルスケア等も含めた「医療」であり、ほぼ全ての競合都市がターゲット分野としている。
・これはヘルスケアやバイオ等も含めた広義の「医療」分野が国際的な成長産業であることと、国際会議マーケットにおいて同分野が件数・参加者人数で圧倒的なシェアを有していることに起因している。
・その他のターゲット分野について、その選定理由を見ると、都市内に立地する大学・研究機関が強みを有する分野や、行政が成長産業として位置づけている分野等となっている。
・本調査に限らず、これまで観光庁調査で実施した海外都市調査においても、国際会議の誘致の目的の一つに、成長産業の発展促進を掲げているケースが多く見られ、国際会議を産業振興策の一環として位置づけている都市も多いと言える。

図 18:海外競合都市のターゲット

都市 分野 分野選定理由
台北 • 医療
• 科学
• テクノロジー • ICCA データベース上で開催件数が多い3 分野をターゲットとして設定。
高雄

バンコク
(タイ)
特に設定していない • 近年アジアや北米を中心に、比較的小規模な分科会が多数形成されており、それらに注目している。
メルボルン
(オーストラリア) • 医療
• サイエンス
• テクノロジー
• エンジニアリング
• 教育

• 州政府が産業振興に注力している分野をターゲット分野として設定。
ハイデラバード
(インド) • 医療、ヘルスケア、Bio-
Tech、メディカルツーリズム
• IT、金融
• ハイテク
• 音楽等エンターテイメント

• 同市内における企業・研究機関の集積の存在
(資源)とその発展促進(戦略)。
• エンターテイメントは経済波及効果が目的。

③競合都市

(出典)観光庁 平成 27 年度「地域の特性を活かした MICE のあり方に関する調査事業」報告書

・多くの都市では近隣都市を競合都市として認識している。具体的にはシンガポールやクアラルンプール、シドニー、メルボルンや、韓国及び日本の諸都市が該当する。
・これは、特に地域(リージョン)間ローテーションをしている国際会議の存在が大きく影響していると考えられる。同じ地域(リージョン)内に立地する都市間では、競合する機会が多く、競合都市としての認識が高まることが推測される。

図 19:海外競合都市からみた競合都市

都市 海外競合都市 備考
台北 • シンガポール
• インドネシア
• 日本
• アジア圏全体の都市を意識。
高雄
バンコク
(タイ) • シンガポール
• 韓国
• マレーシア • アジア太平洋地域、中東、北米等に立地する都市も競合として認識している。
メルボルン
(オーストラリア) • シドニー
• シンガポール • アジア太平洋地域の大都市の中でも、特に施設規 模・構成が類似していることから左記の都市とよく競合する。
ハイデラバー • クアラルンプール • 見本市、MICE 関連の情報誌等の情報を参考に、競合


(インド) • 台北
• メルボルン 都市の情報を収集。
(出典)観光庁 平成 27 年度「地域の特性を活かした MICE のあり方に関する調査事業」報告書
④誘致活動等に係る特徴的な取組み
上述した①~③に関連する事項も含め、各都市のコンベンションビューロー等が実施している特徴的な取組みについて、以下各都市別に情報を整理する。

(ア)台北・高雄(台湾 TAITRA)
国際会議の 4 分野で異なるアプローチよる誘致戦略
• TAITRA では、国際会議毎に異なる以下の 4 つのパンフレットを提供しており、用途に応じて使い分けている。
台湾全体の魅力をアピール(Meet Taiwan = M)
台湾では毎年、80 以上の専門性の高い B to B 見本市を開催しており、ICT 分野で世界 2 番目の規模を誇る「台北国際コンピューター見本市」や、世界に名高い「台北国際自転車見本市」などがある。
2013 年台北国際コンピューター見本市には、1,724 社が出展し、来場者は
約 13 万人に達した。
2013 年台北国際安全博覧会には、世界 100 カ国から 25,807 人が来場した。旅行ガイドブックの出版社、ロンリープラネットでは、2012 年の海外旅行先ランキングにおいて、台湾を 9 位に位置づけている。
台湾の優位性をアピール(Meet Inspiration = I)
会場の提案、入札に関する相談、経費助成から業者選びに関する情報を提供している。
会議への参加者にイベント、レストラン、ホテル等の様々な情報を提供する MEET TAIWAN カードを紹介している。
台湾で楽しめるアクティビティをアピール(Meet Passion = C)
四季の主要イベントや観光地を紹介し、会議前後に組み込むインセンティブツアーの日程に最適な選択肢を提供している。
台湾へのアクセスの良さ・施設設備をアピール(Meet Expo = E)
台湾では、「台北世界貿易センター第 1 展示ホール」、「南港第 1 展示ホール」、2014 年に開設した「高雄展示ホール」の 3 つの大規模な施設がある。台湾はアジア太平洋地域の中枢にあり、東京から 3 時間、香港・上海から
1.5 時間というように、国際会議においても望ましい立地条件である。

図 20:国際会議誘致パンフレット(台湾 TAITRA) (出典)TAITRA 提供資料

国際資格 CMP(Certified Meeting Professional)取得の奨励・支援
• 国際的に通用する人材を育成し、グローバルマーケットでの認知度を高めることを目的に、TAITRA 職員の CMP(下記参照)取得を奨励・支援している。
• CMP とは世界で約 14,000 人が取得する国際資格。日本国内では 13 名が取得
(2016 年 8 月時点)
• CMP 取得の主なメリット
世界で通用するミーティング・プロフェッショナルの証
→海外主催者、エージェント等からの信頼獲得世界中の資格保有者とのネットワーク構築
→資格保有者のためのイベント開催などでのネットワーキング構築等体系的な理解深化
→資格取得のための学習を通じた能力向上
(イ)メルボルン(オーストラリア)
国際会議誘致のキーパーソン意向把握を目的とした学術専門性を有する職員の採用
• メルボルンは開催補助金を支給できる制度を有しているが、近年はこのような補助金に頼らずに誘致を行うことに注力している。
• その一貫として、コンベンションビューロー職員に各学術分野において専門領域や人的ネットワークを有する職員を中途採用する取り組みを始めている。
• 各学術分野や産業領域で現在どのような点が注目されており、そのトピックについて誰が影響力を有しているかといった点を深く理解できている人材を獲得することで、ターゲットとすべき国際会議や、誘致成功率を上げるためにコ

ンタクトすべきキーパーソンを正確に把握するという意図がある。
• 雇用される職員は必ずしも国際会議誘致やそれに類する業務経験があるわけではないが、前職で得た学術専門性や大学教員等とのネットワークを活用し、国際会議誘致におけるメルボルンの競争力強化に資することが求められる。
市民、経済界の理解を促進するための継続的な誘致成果測定
• メルボルン CVB やその活動資金の多くが、州政府や市政府から拠出されていることから、その妥当性を市民や経済界に PR するために、組織の活動の成果を測定している。そのため、できるだけ精緻な数値的裏づけに基づき会議誘致の成果を把握することに努めている。
• 経済波及効果の測定では、国際会議参加者の消費の状況を調べる必要がある。メルボルン CVB では 3 年に 1 度程度の頻度で、実際にメルボルンで開催された複数の MICE(特に国際会議)の参加者(約 3,000 人)を対象としたアンケートで、参加者の消費状況を把握し、経済波及効果を最新の結果にアップデートしている。また、この経済波及効果の測定は博士号を有する職員が、一定の費用をかけて実施しており信頼性を担保している。
• ビューローの活動資金のみならず、州政府による開催補助金の支給の際にも、その会議の誘致によってもたらされる経済効果の大きさが支給額決定の要因ともなっている。経済効果の大きさを把握することは、政府支出や組織の活動の妥当性を示すうえでも必要だと考えられている。
(ウ)ハイデラバード(インド)
組織の設立時のフィージビィリティスタディー(FS 調査)
• ハイデラバード CVB は 2011 年に発足。発足に際しては、州政府の予算から FS 調査が実施された。
• ISB という世界的に有名な地域のビジネススクールが調査を実施し、ステイクホルダーとなる空港、市内のホテル、PCO、コンベンションセンター、大学等の研究機関、政府機関に対し広くヒアリングを実施した。
• それぞれのニーズの把握を行うとともに、国際会議の必要性を説明し各種ステイクホルダーから理解を得ていった。
• またその調査の中でキーパーソンとなる人物も把握し、設立後の協力体制の構築に役立てた。
• FS 調査の中では、立ち上げ後 5 年間の誘致件数や参加者数、そこから発生する経済効果等を示し、具体的な数字を示しながら理解を獲得したため、現在では都市を上げて国際会議の誘致・開催に取り組める体制が構築できている。
地域の民間企業を幅広く巻きこみ組織の人材不足を補う

• ハイデラバード CVB は 4~5 名の職員で活動する小規模な組織である。
• しかし発足時に民間企業等の各種ステイクホルダーの理解を得ることが出来ていたため、地域の企業からサポートを受け、民間主体の誘致活動を展開している。
• 組織のボードメンバーは 7 人いるが、州政府出身のボードメンバーは 1 人のみ
であり、他の 6 人は民間企業の代表者である。
• 活動を進めていくためには民間企業による先導が不可欠と考えており、民間企業とマーケティング手法の共有等も行っている。
• さらにこの様な推進体制を構築している事から、誘致の際にはコンベンションビューローだけでなく、民間や学術界からキーパーソンを選定し協力してもらう等の体制が組めている事も大きな強みとなっている。
• また地域の会員企業からの年会費が活動資金の大きなウェイトを占めており、活動資金についても民間企業からの支援を受けている。

4)今後の方針
海外アドバイザーから指摘された課題点、自治体・コンベンションビューローからヒアリングしたアンケート結果および海外事例を参考に、今後優先的に取り組むべき課題点と方針をまとめる。

①JNTO は、ナショナルビューローとしての役割を明確にし、海外のバイヤー招請や国際団体(ICCA・PCMA 等)の会合等を誘致することで、国内のコンベンションビューローへネットワーキングの機会提供を増やす必要がある。
②コンベンションビューローは、KPI 指標の精緻化・PDCA サイクルを活用した事業管理・効果的なセールス手法(ビッドペーパーの書き方等)等の継続的な教育実施を行い、高度な専門スキルを有した人材の育成が必要。
③市の重点産業分野の国際会議誘致をすることにより、自都市の地域経済の発展およびサスティナブル化に繋がることを、自治体が理解し、積極的に国際会議誘致政策を進めることが必要。
④幅広なステークホルダーに国際会議の重要性の啓発を継続的に行い、サポート体制を常に構築するための協議会の設定が必要である。
⑤商品を造成するにあたり、幅広なステークホルダーからの協力を得る、主導的な役割を担う旅行会社(DMC)が必要である。

(2)ユニークベニューの開発・利用促進
1)現状
ユニークベニューは、「歴史的建造物や公的空間等で、会議・レセプションを開催することで特別感や地域特性を演出できる会場」のことである。「博物館・美術館」「歴史的建造物」「神社仏閣」「城郭」などは展示物や建物自体に地域性や希少性があり、特別感のある施設である。このような魅力的な地域資源を特別に開放し、有効活用するユニークベニューという手法が近年、海外を中心に定着している。
海外の都市において、国際会議開催時に文化施設や公的空間等といったユニークベニューを利用したレセプション等の開催は、国際会議誘致の観点から一般的となっている。
ユニークベニューの開放・利用は、国際会議主催者や参加者へのメリットだけではなく、ユニークベニューとしての施設・空間の活用を積極的に行うことで、施設側にも新たな来館者層の開拓、自己収入の獲得につながっている。

我が国においても、国際会議誘致・開催成功の要因となり、かつ地域ならではの魅力を持つ施設・空間をより多くの人々に知ってもらう機会となるユニークベニューを開拓していくことが求められている。2016 年 8 月~9 月に観光庁が行った MICE 誘致アンバサダーを対象に行ったアンケート調査によれば、ユニークベニューの開放・利用について、国際会議誘致活動を優位に進めるために追加で必要な情報として、ユニークベニュー提供が挙げられている。また、JNTO/コンベンションビューローが、ユニークベニューやエクスカーションの開発を行ってほしいとの意見もある。

図 21:国際会議の誘致・開催に向けた JNTO/コンベンションビューローの関わり国際会議誘致活動を優位に進めるために追加で必要な情報

(出典)観光庁 MICE 誘致アンバサダーへのアンケート結果(2016 年 8~9 月実施)

このような国際会議等の誘致・開催におけるトレンドを受け、観光庁では 2013 年に
「ユニークベニュー利用促進協議会」を立ち上げた。協議会は過去 6 回開催され、モデルイベントの実施、ベストプラクティス集の作成やユニークベニューのリスト化などを行い、我が国のユニークベニューの開発・利用促進を図ってきている。

2014 年 3 月、「ユニークベニューHANDBOOK 博物館・美術館編」を作成し、観光庁ホームページで掲載した。同 HANDBOOK 内では、ユニークベニューの意義や施設の活用に至るまでのプロセス、国内外の事例等を紹介するとともに、ユニークベニューとしての貸出条件の設定や情報提供等の実務について紹介しており、博物館・美術館関係者、イベント誘致や企画策定等で協力するコンベンションビューロー、イベント・ミーティングプランナー、運営会社等関係者にも活用できる内容となっている。

図 22 ユニークベニューHAND BOOK

2015 年 3 月、北九州市産業経済局及び西日本産業貿易コンベンション協会の協力を
得て、小倉城天守閣前広場において初の国際会議レセプション(ICIAE 2015 Extra
Party)を開催した。桜が満開の季節に「お城」という日本らしい空間で、祇園太鼓等地元ならではの演出や料理で、14 ヶ国 70 人以上の研究者や技術者、学生のおもてなしを行った。
来場者を対象に行ったアンケートでは、「再訪意向あり」「会場について友人・知人に話題にする」が9割台半ばを占め、参加者の次回訪問意欲喚起や、帰国後の口コミによる施設認知向上等、開放施設側にとっても、ユニークベニューの開放がメリットとなることを啓発する結果となった。

図 23:小倉城天守閣広場における国際会議レセプション(ICIAE 2015 Extra Party)

また、2015 年 3 月、東京及び地方都市の博物館・美術館、歴史的建造物等で、ユニークベニューとして利用可能な施設を日・英でリスト化し、観光庁及び日本政府観光局ホームページで公表した。現在も希望に応じ、随時ホームページへの掲載を行っている。

図 24:ユニークベニュー利用可能施設のリスト化

2015 年 3 月、「ユニークベニューベストプラクティス集」を作成し、国内の歴史的建造物や神社仏閣、道路・市場等の屋外空間等で実際に開催されたユニークベニューの活用事例を紹介した。

図 25:ユニークベニューベストプラクティス集
平成 28 年度は、「MICE の誘致拡大に向けたユニークベニュー活用促進事業」を行っている。これは、日本国内で開催される国際会議、ミーティング又はインセンティブ旅行において、歴史的建造物や公的空間等を使用してレセプションや会議等を開催するユニークベニューとしての利用に際し、その開催費用の支援(上限 100 万円)を行い、主催者や参加者に対してアンケート調査を実施して、ユニークベニューの普及に向けた課題を検証するものである。
第 1 回選定委員会では 4 案件、第 2 回選定員会では 5 案件の、計 9 件を選定した。選定案件に対して、利用者、主催者、施設側のそれぞれの観点からユニークベニュー利用としての課題や利点をまとめ、公表予定である。
一方、本事業については課題も残されている。本事業の申請件数は僅か 14 件のみという結果となり、施設側を含め、未だユニークベニュー利用のメリットに対する理解が不足している。また、ユニークベニューの利用にあたっては、博物館や美術館等、地域固有の資源を本来の目的以外の用途に供することが出来る場所で開催することが重要となるが、当該 9 件で対象となった施設については、何ら施設側の特別な措置がなくとも、施設の本来の目的の範囲内でレセプション等を開催できるケースが多かった。今後、公的施設を中心に、ユニークベニュー利用のメリットに対する理解を一層普及させていくと共に、ユニークベニュー利用に伴う課題の解決を促す仕組みを取り入れて事業を行っていく必要がある。

2)課題
ユニークベニューの開発・利用促進における課題を確認するため、主にユニークベニューを開発し利用する立場である PCO やコンベンションビューローを対象にアンケートを行った。
ユニークベニュー利用の際に断られたケースがあるとした割合は 42%であり、断られたケースは無い 19%の 2 倍以上にのぼる。断られた施設群としては、美術館、博物館、水族館や歴史的建造物、神社等が挙げられた(図 ユニークベニュー利用の際の施 設の対応状況)。施設から断わられた理由として一番多かったのが「飲食制限」60%、次に「展示品保護規約」「時間外利用」となっている(図 施設から断られた理由)。

図 26:ユニークベニュー利用の際の施設の対応状況
(出典)観光庁 コンベンションビューロー/PCO へのアンケート結果(2016 年 8~9 月実施)
図 27:施設からユニークベニュー利用を断られた理由

(出典)観光庁 コンベンションビューロー/PCO へのアンケート結果(2016 年 8~9 月実施)
ユニークベニューを案内できても、「一部のエリアでしか飲食が許可されない」、「開

催時間の制約がある」、「音を出すことは不可」といった制限により、日本では、思い描いているようなイベントが出来ないことがわかり、結果的に、日本の雰囲気を感じることが可能な、日本庭園がある会議・宿泊施設などの通常利用となるか、もしくは他国の開催となってしまうことが多い。

関係者へのヒアリングにより我が国におけるユニークベニュー開放・利用の課題で主なものを挙げる。
・問い合わせが日本語対応のみとなっている施設も多く存在する。
・海外のようにウェブ予約などに対応している施設は皆無。都度、電話等による受付となっており、システマチックでない。
・ユニークベニューであると認識されている施設であっても、実際に利用できるエリアは、展示品も外も見えない単なるセミナールームであることも多い。
・休館日あるいは夕方以降の利用が原則であることから、休館日以外の日中の施設一部利用について問い合わせを受けていても、機会損失が起きている可能性がある。
・問い合わせを受けた施設担当者にインセンティブが働きにくい状況である。
・利用時間制限が厳しいため、主催者側は、一般のホテルの宴会場などの方が、魅力的に映ってしまう。

3)今後の方針
今後、我が国のユニークベニュー利用拡大に向けては、利用者へユニークベニューの選択肢をより多く提示できる環境が望ましい。つまりユニークベニューの数を増やすことが必要である。ユニークベニューを増やすためには、まず施設側に国内外のユニークベニュー利用実態・有益性の説明・周知が必要である。海外のユニークベニューの先進事例を見ると、施設開放による収入が、施設の保存・修理のための重要な自己収入財源になっている。また施設・空間の開放を積極的に行うことで、新たな訪問者層の開拓につながっている。このような施設側にとってのメリットを明確にして施設開放に向けて取り組みやすい環境を作っていくことが重要である。開放に向けた調整役としては地域の特性・特徴を熟知し地域ならではの魅力を持つ施設・空間を一元的に管理・把握することができるコンベンションビューローが最適である(図 ユニークベニュー開発に向けた効果的な方法)。ユニークベニューの活用は、国際会議主催者や参加者へのメリットだけではなく、ユニークベニューとしての施設・空間の開放を積極的に行うことが、施設にとってのメリットになり、ひいては都市のブランド力向上にもつながるものである。

図 28:ユニークベニュー開発に向けた効果的な方法

(出典)観光庁 コンベンションビューロー/PCO へのアンケート結果(2016 年 8~9 月実施)
政府としても事業報告書やウェブサイト、セミナーを通じて、国際会議の誘致推進におけるユニークベニューの必要性を、施設側やコンベンションビューロー等、関係者に対して積極的に訴えていくことが必要である。

図 29:ユニークベニュー(海外事例)

ユニークベニュー(日本の事例)

(3)国際会議分野の人材育成
1)現状と課題
国際会議誘致・開催に関する人材不足は、本章2.(1)「「グローバル MICE 都市」の育成」で述べたとおり、海外の MICE 専門家から深刻な課題であるとの指摘を受けている。国際会議に関する人材不足の解消と、国際会議産業に精通した知識を有する人物の育成を目的として、日本政府観光局では毎年、国際会議分野の人材育成事業を行っている。人材育成事業の内容は、初級者を対象としたセミナーおよび実務者を対象としたセミナーをそれぞれ年 1 回のペースで実施している。

図 30:国際会議分野の人材育成

初級者を対象としたセミナーは、国際会議観光都市やコンベンション推進機関等において、コンベンション業務を担当する職員のうち、概ね実務経験3年未満の職員を対象としている。具体的には、研修会で「日本における MICE の現状と課題」、「国際会議の基礎」、「インセンティブ旅行の基礎及びアジアからのインセンティブ旅行に係るケーススタディ」等の演目で JNTO 職員が講義し、国際会議業務に携わって日が浅い実務担当者の基礎を築くためのセミナーを開催している。併せて、参加者間の交流を深める意見交換会を行っている。

また、実務者セミナーでは、国際会議関連業務に従事し、概ね3年以上の経験を有すると共に、英語による意思疎通ができる職員を対象に、国際水準のノウハウを持つ海外講師2名を招聘し、国際会議の誘致・開催・マネジメント等に関する実践的な研修を実施することで、世界で通用する国際会議人材の育成を図っている。具体的には、国際会議開催における専門能力を示す国際認証の一つであるCMP(Certified Meeting Professional)※育成プログラムを実施し、CMP 試験に合格できるスキル獲得を目的として、MPI が英国 Leeds Beckett University と共同で開発したプログラムを、講義、ケーススタディ紹介、演習及び模擬テストを盛り込んだ参加型学習スタイ

ルにより実施している。
CMP の保有は事実上の業界標準となる知識と経験を有することが海外でも認められるものである。国際会議等の誘致・開催は国際的な都市間での競争であり、都市の売り込み先は海外の主催者であることも多い。国際会議等の誘致・開催にあたっては CMP が果たす役割は大きい。
アジア・大洋州主要国の CMP 取得者数を記した表を下記する。図 31:アジア・大洋州主要国の CMP 取得者数

日本の CMP 取得者数は 13 人(2016 年8月時点)と、国際会議開催件数で都市別上位にランクしている他のアジアの競合国に比べると少ない。

2)今後の方針
国際都市間の競争を制して日本の各都市に国際会議等を誘致し開催するには、CMP 取得者の増加を目指すことが一つの手段として有効である。そのためには教育・研修プログラムの提供が必要となる。前述した日本政府観光局主催の実務者対象 MICE セミナーは、CMP 試験に合格できるスキル獲得を目的とした 2 日間のプログラムだが、一般的に CMP 取得には約 100 時間程度必要との専門家の指摘もあり、十分な教育・研修プログラムが提供されているとはいえない。今後、プログラムを拡充し、より充実した内容にすることが必要である。
厳しい誘致競争の中で勝ち抜くためには、グローバルレベルでの高い誘致能力や運営能力を持つ人材の確保が急務である。今後、海外の先進的な取組を行うコンベンションビューローや国際業界機関が提供する育成プログラム、海外の国際会議分野の専門家の活用等を通じて、我が国における人材育成プログラムの体系化及びそのプログラム内容の改善・充実化について検討を行い、高度な専門人材の育成及び確保に取り組む必要がある。

(4)研究者等の国際会議誘致環境の改善/ MICE 誘致アンバサダープログラムの導入
1)現状
国際会議の誘致や、開催時の事務局業務には誘致する都市の選定、誘致・開催費用の工面、立候補書類(ビットペーパー)の作成や誘致に向けた関係者へのロビー活動など多大な労力が必要である。国際会議の誘致・開催の主催者となる大学の教員や研究者は、国際会議誘致に向けた立候補意思有りが 60%と高く(図 誘致活動への立候補/ 協力の意思)、前向きな回答が多い。一方で、先に述べた事務局業務に関する人員や誘致・開催に係る費用の不足で誘致できないことがある(図 国際会議誘致における課題)。
また、域内の大学・研究機関との連携も半数以上ができていないと回答されており、 誘致・開催におけるノウハウの共有が必ずしも図られていないことがわかる(図 自治体・コンベンションビューローの連携状況)。誘致・開催に係る作業には、例えば開催都市の選定や誘致・開催費用の工面方法など、学会の種類等の関わらず国際 会議の誘致・開催の主催者が共通して必要な情報があり、ノウハウの共有は有効で ある。
この点に関し、学会の誘致力強化に向け、大学の教員は政府・自治体に対し、学会 誘致・開催ノウハウのセミナー・トレーニングの提供や助成金の提供を希望している
(図 国内学会の誘致力強化に向け、観光庁・コンベンションビューロー・JNTO・ 自治体に対して期待すること)。

図 32:研究者等の誘致活動への立候補/協力の意思

N=356

(出典)観光庁 平成 27 年度「地域の特性を活かした MICE のあり方に関する調査事業」報告書

図 33:国際会議誘致における課題

(出典)観光庁 平成 27 年度「地域の特性を活かした MICE のあり方に関する調査事業」報告書
図 34:自治体・コンベンションビューローと研究者等の連携状況

(出典)観光庁 平成 27 年度「地域の特性を活かした MICE のあり方に関する調査事業」報告書
図 35:国内学会の誘致力強化に向け、観光庁・コンベンションビューロー・JNTO・自治体に対して期待すること
(出典)観光庁 MICE アンバサダー/MICE 誘致アンバサダーへのアンケート結果(2016 年 8 月~9 月実施)

国際会議誘致に係る作業は、44%が学会側が全面的に管理していると回答しており
(図 国際会議誘致に係る作業全般への対応について)、学会側が主管理し JNTO・コンベンションビューロー・PCO 等がアドバイスしているケース 23%を加えると、学会側の管理が 67%と半数以上である。誘致に係る作業のなかでも煩雑なビットペーパーの作成については、学会しか記載できない部分を除いてコンベンションビューローが作業することを望む声が挙がる(図 ビットペーパーの作成に望まれるサポート体制について)。
コンベンションビューローへのアンケート結果(図 国際会議誘致のためのコンベンションビューローによるビットペーパーの作成状況について)では、ビットペーパーの作成に全く関与していないと回答した割合は 49%となっており、コンベンションビューローの一層の参画が必要である。

図 36:国際会議誘致に係る作業全般への対応について
(出典)観光庁 コンベンションビューロー及び MICE アンバサダー/MICE 誘致アンバサダーへのアンケート結果
(2016 年 8 月~9 月実施)
図 37:ビッドペーパーの作成に臨まれるサポート体制について
(出典)観光庁 MICE アンバサダー/MICE 誘致アンバサダーへのアンケート結果(2016 年 8 月~9 月実施)

図 38:国際会議誘致のためのコンベンションビューローによるビッドペーパーの作成状況について

(出典)観光庁 コンベンションビューローへのアンケート結果(2016 年 8 月~9 月実施)

このような状況を背景として、国際競争力強化委員会最終とりまとめ(平成 25 年 8 月)を受け、観光庁は MICE を戦略的に誘致するため、産業界や学術分野において国内外に対し発信力やネットワークを有する方々を日本の「MICE アンバサダー」として委嘱する「MICE アンバサダープログラム」を平成 25 年に開始した。平成 27 年 8 月には
JNTO 運営とし、名称を「MICE 誘致アンバサダープログラム」に変更した。その際、日本国内における国際会議開催の意義についての普及啓発活動に加え、それぞれの専門分野において、具体的な国際会議の日本への誘致活動を行っていただくことにより、日本の国際会議件数の増加や日本国内における国際会議開催の意義に対する理解度の向上、並びに海外における日本のプレゼンス向上を目的としている。現在までに 47 名
(平成 29 年 3 月 8 日時点)が認定されている。

プログラム内容は大きく分けて3つ。
・JNTO による国際会議誘致に関する支援メニューの提供
・JNTO によるアンバサダー同士の情報共有の場の提供
・アンバサダーによる広報活動

以下に MICE 誘致アンバサダープログラム詳細を記す。

図 39:MICE 誘致アンバサダープログラム詳細

2)課題
観光庁は、今回、アンバサダープログラム支援内容について評価を確認するため、プログラム支援の提供を受けたアンバサダーに対しアンケートを実施した(図 プログラム支援内容の満足後について)。アンバサダープログラム支援内容について、内容は充実している・役立つが他のプログラムも欲しいを合わせると 94%の評価を得ている。また、アンバサダーが、他の関係者へアンバサダープログラムを紹介した割合は
88%となっており、ここでもプログラムが評価されていることが分かる(図 アンバサ ダープログラムの関係者への紹介について)。
以上のことから、プログラムは一定の効果を発揮しているといえる。他方で、プロ グラムの内容拡充に期待する声も多くある。(例えば立候補書類(ビットペーパー)作成 に関し、開催候補都市の情報やプレゼン資料の素材の提供等は行っているが、必ずし も学会側でしか記載できない項目以外すべての作業を請け負っているわけでは無く、 学会側しか記載できない項目以外すべての作業を請け負える支援が望まれていること。公的な金銭補助の情報に関し、情報の提供のみだけではなく具体的な資金計画の提示 を含めた提案などが望まれている。今後の改善に関しては、個別ヒアリング等を通じ て、拡充に期待する内容を抽出しプログラムの内容充実に努めていくことが必要であ る。

図 40:アンバサダープログラム支援内容への満足度について
(出典)観光庁 MICE アンバサダー/MICE 誘致アンバサダーへのアンケート結果(2016 年 8 月~9 月実施)
図 41:アンバサダープログラムの関係者への紹介について

(出典)観光庁 MICE アンバサダー/MICE 誘致アンバサダーへのアンケート結果(2016 年 8 月~9 月実施)
コンベンションビューロー・PCO に対してもアンバサダープログラム支援内容への評価確認及び、推薦についての課題を調べるためアンケートを実施した。
内容充実しており役立つ・役立つが他のプログラムの充実も希望するとした割合が
33%、一方でアンバサダープログラムを知らないとした割合も 33%あった。プログラム支援内容の拡充とともに、プログラムの周知も課題であることが明らかになった。

図 42:アンバサダープログラムの内容について
(出典)観光庁 コンベンションビューロー/PCO へのアンケート結果(2016 年 8 月~9 月実施)
コンベンションビューローやPCO の 51%がアンバサダープログラムへ推薦検討したことが無いと回答している(図 MICE 誘致アンバサダーの推薦状況について)。国際会議主催者になり得る大学の先生等に、アンバサダープログラムを紹介していく立場であるコンベンションビューローや PCO へのプログラム認知度が低いことにより、推薦の検討につながっていないと考えられる。

図 43:MICE 誘致アンバサダーの推薦状況について

(出典)観光庁 コンベンションビューローへのアンケート結果(2016 年 8 月~9 月実施)
3)海外事例
自国に国際会議を誘致し開催件数を伸ばすため、国際会議誘致・開催主催者に対し て各国や自治体もいわゆるアンバサダープログラムとして様々なサポート・支援メニ

ューを提供している。我が国の施策「MICE 誘致アンバサダー」の内容拡充に向けて参考になるプログラム内容もあるため、海外事例をいくつか紹介する。
アンバサダープログラムには主に二つの側面があり、第一に国際会議を自国へ誘致するために関係者を動機づけるインフルエンサーとしての役割を担うこと、第二に具体的な案件を持ち実際の国際会議を自国へ誘致する活動を行っている人であることである。
それぞれの側面に対応するため、国としての支援と、コンベンションビューロー等の自治体が主体となる支援がある。
はじめに、国が支援するアンバサダーの事例としてシンガポール、マレーシアを挙げる。ここでは、国際会議を自国へ誘致するために関係者を動機付けるインフルエンサーとしての役割を担うことを主な目的としている。よって国際会議誘致・開催の主催者になり得る人や、そういう人へ主催者になるように働きかけることのできる影響力を有する産業・学術業界のリーダーやキーパーソンを対象として、ネットワーキングイベント等を開催し、国際会議誘致・開催の機運を高める機会の醸成をプログラムの趣旨として実行している。

① シンガポール
シンガポールでは、各業界の専門家、オピニオンリーダーをメンバーとし、ネットワーキング構成のためのイベントへの招待や、各種セミナー等での講演の場の提供を行っている。
図 44:アンバサダープログラム海外事例(シンガポール)
② マレーシア
マレーシアでは、国の政策にあう業界のキーパーソンをメンバーとし、産業界・大学/研究機関への会議誘致のためのプレゼン機会の提供や、認定者への権威付けの一環として表彰やガラディナーへの招待を行っている。

図 45:アンバサダープログラム海外事例(マレーシア)

③エディンバラ
自治体やコンベンションビューローが支援するアンバサダーの事例としてエディンバラ(イギリス)を挙げる。ここでは、先に述べたインフルエンサーとしてのアンバサダーよりも、より具体的な案件を有している人を対象として、国際会議誘致・開催にかかわる作業全般へのサポートを目的としたプログラムである。エディンバラ(イギリス)では、学術やビジネスの分野のエキスパートをメンバーとしている。具体的な会議誘致に係る支援メニューを提供し、プロ仕様のビットペーパー作成や、ユニークベニュー等の会場の一括紹介や都市幹部とのミーティングアレンジ等を行っている。
図 46:アンバサダープログラム海外事例(エディンバラ)

4)今後の方針
アンバサダーによる継続的な誘致案件の増加、アンバサダーによる啓発活動を通じた新たなリード案件発掘や国内主催者の発掘を増やすため、アンバサダーに対する表彰、アンバサダー同士のネットワーキングの場、アンバサダーを活用した国際会議誘致に関する啓発・普及活動を充実強化していく必要がある。
なお、誘致活動は国際会議を誘致したいと思う都市が主体となって行うべきものであることから、将来的にアンバサダープログラムは都市のコンベンションビューローが設立・運用するのが望ましいが、現在はまだ都市のアンバサダープログラムが多く設立されている状況ではない。今後、都市のアンバサダープログラム設立を目指すコンベンションビューローの指針・モデルとなるべく、JNTO のアンバサダープログラムを改善・改良しアンバサダーの満足度を向上させていくことが当面の目標となる。平行して、アンバサダープログラムのコンベンションビューロー等への周知を図っていくことが必要である。そして、最終的に都市のコンベンションビューローがそれぞれのアンバサダープログラムを設立・運用していくことが望まれる。
アンバサダーへのアンケートや海外事例の研究結果を踏まえ、本プログラムの今後の方針をまとめる。

①アンバサダープログラムの改善
現在の支援メニューである立候補書類作成支援やプレゼンテーションスキルアップ指導等に関してアンバサダーへのアンケート結果より満足するとした評価が 3 割以上あるものの、アンバサダー側が支援メニューの提供を受ける際にどのタイミングで支援を受けられるのかわかりにくく支援メニュー提供の機会を逸するケースがあった。また、国際会議誘致に係る活動のプロセス全般のスケジュール管理を望む声も多かった。国際会議誘致のノウハウや知見が少ない主催者であっても不安なく誘致活動に取り組めるように、アンバサダープログラムの運用方法の見直しを図る必要がある。まず、国際会議誘致に係る活動は都市のコンベンションビューローが全体を統括する司令塔の役割を担うことになる。つまり都市のコンベンションビューローは誘致活動に係るプロセス全般のスケジュール管理を行うことが必要である。アンバサダープログラムの運用に当たっても、会議開催候補都市のコンベンションビューローが当該会議の誘致活動の全体の司令塔になることが求められ、JNTO はその全体スケジュールの中でコンベンションビューローの求めに応じ、または適宜、都市のコンベンションビューローと JNTO の協議により、支援メニューを適切なタイミングで提供していくことが望ましい。アンバサダーに対し、プログラムを開始する際には、このような都市のコンベンションビューローと JNTO の役割分担を事前に明確に説明する必要がある。これら役割の明確化により、アンバサダーによるアンバサダープログラムの満足度向上につながると考える。また、アンバサダープログラムを通じ、JNTO は支援メニューの提供以

外にも誘致活動へのアドバイスを都市コンベンションビューローへ行うことができる。これにより、国際会議誘致のノウハウが JNTO から都市のコンベンションビューローへ伝授され、都市のコンベンションビューローに誘致ノウハウが蓄積されていくメリッ トもある。

国際会議の誘致には、誘致主催者となる大学の教員や研究者が本来の仕事である研究業務等以外に、国際会議運営全般に係る作業が発生するため、その負担を軽減するサポートが必要である。

②コンベンションビューローやPCOに対するアンバサダープログラムの周知
コンベンションビューローや PCO へのプログラム認知度向上は、案件保有者への適切なアプローチと新規案件発掘につながり、リード件数及び誘致件数の増加になる。案件発掘のために直接主催者とのコンタクトを試みるコンベンションビューロー/PCO へアンバサダープログラムを周知徹底し、認知度を向上させることが必要である。特にコンベンションビューローでの認知度が低い原因の一つとして、コンベンションビューローの人事異動が短期で行われるため職員間での共有不足が発生していることも上げられる。このことはコンベンションビューロー全体としての体制・あり方に係る改善が必要である。アンバサダープログラムとしては、JNTO の WEB サイト拡充や観光庁/JNTO の各種セミナー・イベントを利用し、コンベンションビューロー/PCO へ周知の強化を行うことが重要である。

③アンバサダープログラムのあり方・将来の方向性について
国際会議誘致は基本的には都市間競争であり、アンバサダーは、海外の会議主催者に対し開催地である日本の都市を PR する役割を担う。また、国内においては当該都市のコンベンションビューロー等の関係者に対して当該都市の会議開催を検討する研究者等を紹介し、当該都市における国際会議誘致の可能性を高めることが期待される。このため、将来的には会議開催地となる都市のコンベンションビューローが主体となり、
JNTO はコンサルテーションを担う体制に移行するのが望ましい。都市のアンバサダープログラムの定着に向けた環境整備を進めるため、JNTO による制度の普及・啓発活動に加え、制度運用のノウハウ等を提供できる仕組み作りが必要である。

なお、国のアンバサダープログラムとは別に、すでに都市単位でアンバサダープログラムのようなコンベンションビューローによる会議主催者のネットワークの構築を実施・着手している以下のような事例もある。

熊本:2015 年に熊本市での会議開催実績のある主催者や今後熊本でのイベント開催

に影響力のある企業など 3 名を「熊本市 MICE アンバサダー」に任命。市内での MICE イベント開催に対する助言や国内外の MICE 関係者に対する熊本市の魅力の発信、熊本での MICE 普及啓発活動に対する協力を実施。

福岡:2016 年に「福岡市 MICE アンバサダー事業」を開始。福岡市の強みを活かす 6 つの重点分野の第一人者或いはリーダーとして福岡市の MICE 誘致に尽力される方
10 人を MICE アンバサダーに任命し、会議やイベントの福岡での開催を支援するとともに福岡市が開催する MICE セミナー等での啓発活動に協力いただいている。
いずれも特定の国際会議の誘致を行う研究者を支援する国のアンバサダープログラムとは異なるものであるが、今後国のアンバサダープログラムの主体を都市に移管していくことも見据え、国と地方の制度の関係を整理していくことが望ましい。

国のアンバサダープログラムを都市主体に移行させていく場合、対応するコンベンションビューローの課題としては、まず、人的リソースの不足があげられる。国際会議の誘致・開催を進めていくためには、コンベンションビューローの体制強化は必須であり、何らかの誘導策の検討が必要である。また、多くの都市において国際会議誘致にかかる専門的知見が不足している段階では、アンバサダープログラムの運用に関しても JNTO のサポートが必要となる。具体的には、コンベンションビューローに対するビッドサポート等の主催者支援や誘致活動のノウハウの提供が求められる。

ノウハウの提供には様々は手法が考えられるが、例えば現状 JNTO が MICE 誘致アンバサダーに対して一括して行っている支援メニューを都市が主体となってアンバサダープログラムを運用していく場合、例えばビットペーパーやプレゼン資料作成等をコンベンションビューローが中心となって行い、地域の独自の MICE 向けプログラムの提案・提供やユニークベニューの提案を取り入れることで、より地域の特性を生かした誘致活動を行うことができる。その際、
JNTO は都市に対してコンサルを随時行うことで、誘致活動に関するノウハウを都市に伝授することが可能となる。

都市が国際会議誘致・開催に係る支援を行うためには、地域のコンベンションビューローが誘致・開催に関するノウハウを得る事が必要であるが、ビッドペーパーやプレゼン資料の提供・作成支援等の実務において適切な知識を有することが重要である。そのため、コンベンションビューローへの教育の機会の提供としてセミナー等を JNTO が開催し、コンベンションビューローの人材育成に務める必要がある。

(5)政府の横断的体制の構築・在外公館や関係府省との連携
1)現状と課題
国際会議開催地決定権者への政府要人による働きかけは、国際会議誘致成功への有効な手段である。諸外国では各国の在外公館が国際会議の誘致活動に協力し、効率的な情報発信、誘致活動を行っている。我が国においても、国際会議誘致を成功へ導くためには、国を挙げた誘致活動・ロビー活動が重要であることを認識しており、在外公館等の海外拠点との連携を行っている。

我が国の在外公館との最近の連携事例として、過去5年間で下記2件あり、いずれも誘致に成功している。

図 47:国内における在外公館との連携事例

・「第 23 回世界神経学会議」誘致に係る連携

・「第 15 回世界音楽療法大会」誘致に係る連携
国際会議の誘致のためには、在外公館との連携も有効な手段となるが、現状では連携件数は少なく、必ずしも十分に活用されていない。どのような場合に在外公館との連携が可能となるか、考え方を整理した上で、関係者に周知していく必要がある。また、在外公館側の協力を得やすくするためには、JNTO やコンベンションビューロー等が国際会議誘致のためのプロモーションキットとして何が提供できるか、予め明らかにしておくことも必要である。

関係省庁との連携取り組みの事例として、招請レターの発出があげられる。関係府省庁発出の会議招請レターは、国がその会議を支援していることを保証するものである。開催国が会議誘致に前向きであることは、開催地決定権者に対し会議開催成功へのイメージや安心感を与えることができ、開催地決定に際して一つの決定要因となりうる、会議誘致成功への有効な取組である。

招請レター発出実績は、過去 5 年間(平成 23 年~平成 27 年度)で 140 件、うち総理レター6 件である。アジア・大洋州諸国における分野別国際会議開催割合(2015 年)を見ると、科学・技術 34%、医学 17%、農業等 10%と多岐分野に渡る。

招請レターについては、多方面の協力を得られている一方で、調整に時間がかかることもあり、日本全体で行われている誘致活動件数に比べて、レター発出数は必ずしも多くない。 中には、国内主催者が、誘致に係る各種書類手続きの手順を十分に把握していないために、招請レターを依頼するタイミングを逃したり、依頼の検討ができていなかったりするケースも見られる。このため、JNTO やコンベンションビューローが誘致活動の手続きを管理する体制を構築して、国内主催者側に手続きのスケジュール等について能動的に助言していく必要がある。また、関係省庁における手続きの迅速化のためには、招請レターの雛形化や、
JNTO やコンベンションビューローによる文案作成等を検討することも必要である。
また、国際的な誘致の場では、閣僚クラスによる誘致ビデオレターが出せることが多い。我が国では事例は多くはないが、ニーズはあるので、国レベルでどのようなサポートができるか、政府レベルで検討していくことも重要である。

図 48:国際会議招請レター発出事例

図 49:アジア・大洋州諸国における分野別国際会議開催の割合(2011~2015 年度)
2)海外事例
①Business Visits & Events Partnership (BVEP) 及び Events Industry Board (EIB)
英国においては、商用訪問及びイベント(Business Visits and Events)に関わる関係者が傘下となっている産業横断的な組織として Business Visits & Events
Partnership という組織が形成されている。1999 年にBusiness Tourism Partnership という組織が発足し、これがその後 Business Visits & Events Partnership に改組され、オリンピック直前には、BVEP が中心となってオリンピックを活用して英国に商用旅行を持ってくるための官民連携の運動を展開した。
BVEP は、中央や地方の観光局、会議産業団体、ホテル関係団体、コンベンション・ビューロー、学会関係団体、英国イベント産業のための超党派議員グループ、文化・メディア・スポーツ省、貿易投資総省など、産学官幅広く MICE 分野をカバーする関係者がメンバーとなり、MICE 産業の経済効果等各種調査を実施したり、ベストプラクティスを収集したりするほか、産業界の声を代表して、政府等に働きかけを行っ

ている。
英国政府は 2015 年3月に英国の MICE 戦略を発表しているが、BVEP など MICE 関係団体が従来から働きかけていた施策が盛り込まれることとなったのは注目に値する。具体的には、文化・メディア・スポーツ省内に Business Visits and Events
Board(仮称)を設置し、政府全体で支援を実施すべき案件を抽出して政府横断的に各種支援策を講ずることとする、政府レベルのイベント助成金制度を構築するなどの施策が盛り込まれており、これらは BVEP が 2014 年に Meetings and Events Manifesto for Britain としてまとめたものがベースとなっている。これを受けて、
2015 年に文化・メディア・スポーツ省内に Events Industry Board (EIB)が設置され、当該ボードで MICE 戦略の実施を監督することとされた。EIB は MICE 産業界関係者からなる産業界主体の組織で、産業界と行政府のつなぎ役となっている。
さらに、MICE 戦略に呼応する政府レベルの MICE 支援措置として、2016 年にはEvent Support Programme という助成制度が発足した。これは、世界のビジネス・イベントをイギリスに呼び込む、すでにイギリスでの実施が確定しているビジネス・イベントの経済価値を高める、新たな国際ビジネス・イベントを創設するということに対する支援策で、Visit Britain が運営することとなっており、当該プログラムの採択案件選定には上述の EIB も関与している。採択案件の具体例として、2016 年にマンチェスターで開催された「欧州科学オープンフォーラム 2016」の際に、マンチェスター空港到着ターミナルで5週間にわたるビルボード広告掲載に支援したり、2017 年2月に開催された「BIM(Building Information Modeling)ショーライブ 2017」の際に、国内外からの参加者のための BIM ウェブサイトの拡充(プラットフォームの構築)を支援するなど、計7件の事業に対し支援を行った。

②Convention Industry Council (CIC)
Convention Industry Council (CIC)は、米国バージニア州アレクサンドリアに本拠を構えるMICE産業の業界団体で、ホテル、旅行会社、ミーティング・プランナー、DMO、国際会議場・展示場等、MICE産業に関わるすべてのセクターが会員となっている。所属機関の中にはグローバルに活動しているものもあれば、米国内限定で活動しているものもある。したがって、CIC自体は米国を代表する業界団体であるが、所属会員の活動範囲は米国内に留まらない。
1949年に設立されたCICは、世界的なMICE産業のトレンドに関する情報交換を行い、
MICE産業関係者全般に対する調査を通じて、MICEの意義を産業界の声として取りまとめ、対外的に啓発普及・情報発信を行い、また政治家や経済界等に対するロビー活動を実施している。また、Certified Meeting Planner(CMP)というミーティング・プランナーの専門家を認定する資格試験を実施し、ミーティング・プランナーの質の向上や国際的な普及に貢献しているほか、APEX (accepted practices

exchange) Initiative という業界用語集、標準RFP(Request for Proposal)、ロジスティックスや会場設営等のチェックリストなどに関する業界標準を作成し、公開している。CMPもAPEXも、こうした取り組みを通じて、MICEの質の向上を目指すものであり、MICE個別の分野にとらわれず、横断的にMICE全体の底上げを図っている。このほか、CICでは、MICE産業の意義に関する調査を行い、その結果を米国議員等に対するロビー活動や社会における産業の認知度向上のために用いている。具体的には、米国におけるMICE産業の経済波及効果を算出しているほか、フェイストゥフェイスのミーティングの意義について扱った、“FACE TIME: It Matters”キャンペーンを展開している。このうち、FACE TIMEキャンペーンは、フェイストゥフェイスのミーティングの意義についてミーティング・プランナーや業界有識者へのアンケート調査、インタビュー調査等を実施し、MICEの意義について業界関係者が様々な場面で啓発普及活動に活用できるよう、プレスリリースのサンプル、印刷物等に挿
入するための説明文書、ロゴ等、様々なツールを公開している。
3)今後の方針
2016年3月に取りまとめられた「明日の日本を支える観光ビジョン」においては、「政府レベルのMICE支援体制を構築するため、関係府省連絡会議を年内に新設」することが掲げられたところであり、これを受けて、2016年12月に観光庁を事務局とする「MICE 推進関係府省連絡会議」が設置された。今後は、この連絡会議が政府横断的なMICE支援の取組のプラットフォームとなり、国を挙げたMICE政策がより一層推進されることが期待される。
また、「明日の日本を支える観光ビジョン」においては、「将来的に、官民連携横断組織によるオールジャパン体制での支援を実施」することも掲げられている。現在の我が国における国際会議等業界の状況としては、コンベンションビューロー、会議運営会社、展示会主催者等、国際会議に関わるそれぞれの関係者の業界団体は組織されているが、諸外国で見られるような国際会議全体をカバーする業界横断的な組織は存在しない。MICEは、MICEのそれぞれの課題等もあるが、ミーティング・プランナーが
MやI、Cそれぞれに対応することもあり、国際会議に展示会が併催、或いは展示会に国際会議が併催されるといったことも多く、MICE横断の共通課題も種々存在する。国際会議の質を向上させるとともに、幅広く国際会議についての認知度を上げるためには、国際会議業界が一丸となって、国際会議に関する各種調査やMICEの意義に関する啓発普及活動等を展開し、政財界等に政策提言をしていくことも求められる。現状では、
MICE業界は個別の業界団体ごとの対応が中心となっており、MICE全体の状況が把握しにくい一因ともなっている。今後、MICEを一層推進していくためには、我が国においても、これまでの域を超えたオールジャパン体制の構築が必要である。

(6)新しい MICE ブランドの構築/MICE を活用した日本の情報発信・ブランディング活動の展開
1)現状と課題
海外の競合国では、自国の特性を活かした国際会議の誘致・開催を促進するためのブランド戦略を構築し、それを活用したプロモーションを行うことにより、国際会議開催国としての訴求力の向上に努めている。一方、平成 26 年時点で我が国ではそのような日本における国際会議開催のブランドは構築しておらず、海外の関係者に日本開催を訴求するような効果的なプロモーションを行うことができなかった。そのため、
JNTO やコンベンションビューロー、PCO 等、MICE 業界の関係者が一体となる日本のブランドを構築し、海外での日本の MICE ブランドの認知度を向上させるとともに、海外の競合国との差別化を行うことで、日本で国際会議を開催することによビジネス上のメリットを訴求する必要があった。
平成 27 年4月、観光庁は国際会議誘致促進のため、関係者に対し共通の理念や目的意識の統一を図ることを目的に、MICE ブランド(コンセプト、ガイドライン、ブランドライン等)を構築し、以下のブランドコンセプトを作成した。

① 日本の MICE ブランドコンセプトの構築
日本の MICE ブランドコンセプト構築にあたっては、競合国・都市のブランディング戦略やマーケティング活動等の事例研究を行うと共に、各都市主要コンベンションビューローやホテル、PCO、海外メディア等の国内外のステークホルダーに対する MICE のブランディングについての意見収集等を通して日本の現状分析を行い、「日本の MICE の価値」の訴求だけに留まらず、今後「日本の MICE が進化すべき方向」や、その結果達成される「日本の MICE が目指すべき姿」を合わせた概念で、ブランドコンセプトを表現した。

図 50:日本の MICE ブランドコンセプトのイメージ

「日本の MICE の価値」を「日本の MICE が進化すべき方向」で深めていくことにより、もたらされるあるべき姿を「日本の感性と知性がビジネスを未来に動かす」という言葉で表現し、具体的には国内関係者や海外主催者に対し、以下のメッセージを訴求している。
<海外の主催者に対するメッセージ>
・日本の感性と知性
訪日することで、品質や技術力、創造力を下支えする日本文化や日本人の感性と知性に触れることができる。
・ビジネスを未来へ動かす
日本での MICE の開催により、参加者はインスピレーションやひらめきを得られて、さらにビジネスを未来へと成長させることができる。
<国内の関係者に対するメッセージ>
・日本の感性と知性
日本の感性と知性は、学術の振興や産業の発展の源であり、日本ならではの強みとして、誇りに思うことができる。
・ビジネスを未来へ動かす
MICE の開催により、MICE に関わる産学官関係者の成長とビジネスの進化につながるだけではなく、学術の振興や産業の発展を通じて、経済を成長させることができる。

上記のメッセージを踏まえ、海外における日本の MICE 事業の認知度向上のため、その事業内容をより正しく分かりやすく伝えることを目的として、ブランド名称を「Japan. Meetings & Events」と定めるとともに、日本の MICE ブランドコンセプトを一言で表現する言葉として「New ideas start here」をブランドタグラインとして使用することとした。本タグラインの具体的な内容は以下のとおりとなる。

<海外向けタグライン>
日本独自の文化、日本の先端技術、コミュニティにおける新しい交流が、参加者にインスピレーションやひらめきを与え、学術や産業をさらに進化させる。
<国内向けタグライン>
MICE に関わる産学官関係者に、日本にはユニークな芸術や文化、先進的な学術研究、革新的な技術や製品の創出があることの再認識を促す。
MICE は将来につながる学術の振興と産業の発展を生み、地域及び日本の経済を成長させることの理解や共感を高める。

また、上記の新しい日本の MICE ブランドコンセプトを視覚的に象徴するデザインとして、ブランドロゴを以下のとおり作成し、国内関係者に本ロゴの使用を普及することで、MICE ブランドの浸透を図っている。
図 51:日本の MICE ブランド(Japan. Meetings & Events)

② 日本の MICE ブランドコンセプトの普及啓発
MICE ブランドを構築すると同時に、その普及啓発に向けて以下の取組を行っている。

ア.リーフレットの制作・配布
日本の MICE ブランドを説明したリーフレットを制作し、国内 MICE 関係者等に配布している。MICE 関係者が幅広く MICE ブランドを利用できるよう、使用者からの申請があれば MICE ブランドラインの使用を許可し、MICE 産業に係る関係者の名刺や企業

パンフレットへの MICE ブランドラインの掲載を可能としている。

図 52:MICE ブランドリーフレットのイメージ
イ.シンポジウムの開催
2015 年3月に MICE 産業に係る関係者等に対して、MICE ブランディングに関するシンポジウムを開催し、日本の MICE ブランド「Japan. Meetings & Events」の意義や具体的な活用方法、国のブランドを踏まえた地域・都市のブランディングのあり方等について、普及啓発を図った。

図 53:日本の MICE ブランドの普及・啓発

④ 日本の MICE ブランドコンセプトの認知度
日本の MICE ブランドコンセプトは平成 27 年4月に構築されたものの、その認知度や活用については課題が残されている。平成 28 年8月、観光庁が日本の MICE ブランドを活用する立場にあるコンベンションビューローや PCO に対してアンケート調査を行ったところ、以下のような結果となった。
コンベンションビューローや PCO において、ブランド自体は 75%程度が認知しているものの、ブランドコンセプトに対する認知については 56%に留まっており、ブラン

ドコンセプトを認知している団体でも、「日本の MICE ブランドを説明できている」とした割合は 33%と低い結果となり、コンベンションビューローや PCO にとって、日本の MICE ブランドコンセプトに対する理解が低いことが分かった。

また、コンベンションビューローや PCO に対して行われた「MICE ブランドのプロモーションでの活用状況の調査」では、「MICE ブランドを全く活用していない」が 57%、
「ほとんど活用していない」が 36%と、MICE ブランドの活用状況は極めて低く、本来積極的に MICE ブランドを使用し MICE 誘致を PR するべきコンベンションビューローや PCO への MICE ブランド浸透が急務であることが分かった。

図 54:日本の MICE ブランドに対する認知度
(出典)観光庁 コンベンションビューロー/PCO へのアンケート結果(2016 年 8 月~9 月実施)

図 55:国内の MICE ブランドのプロモーションでの活用状況等
(出典)観光庁 コンベンションビューロー/PCO へのアンケート結果(2016 年 8 月~9 月実施)
2)海外事例と今後の方針
海外では我が国と同様に MICE ブランドを立案し、それを用いたキャンペーンを効果的に展開している国・都市がある。
例えばメルボルンの MICE キャンペーンは、“Melbourne IQ”をタグラインとして、メルボルンが様々な学術的知見の集積地であり、MICE の開催地としてふさわしいことをアピールしている。キャンペーンでは、映像、印刷物、インターネット、広告を通じた展開を実施している。

図 56:MICE ブランド海外事例(デンマーク)

また、デンマークでは、”Meeting Incentive Networking in Denmark”の頭文字である MIND=知性という言葉を前面に出し、デンマークの優位性を訴求している。見本市等への出展やイベント、招請事業を通じブランド・コンセプトを訴求するキャンペーンを展開している。

図 57:MICE ブランド海外事例(メルボルン)

海外各国の事例にみられるように、メルボルンやデンマークでは MICE ブランドを構築し、そのブランド訴求のためのキャンペーンを効率的に行っている。我が国でも
MICE ブランド構築および普及へ取り組んでいるものの、認知度向上には課題が未だ残

るのが実態である。
MICE ブランドには、主に、①日本の MICE に係る関係者が共有する共通の理念や目的意識を持つため、②海外から日本に MICE を呼び込む際に海外の MICE 主催者に対して日本での MICE 開催の意味・意義を訴求するといった目的がある。
前者の目的達成のためには、国内で開かれる MICE 関連のセミナーやイベント等あらゆる機会を利用して、MICE 関係者に日本の MICE ブランドの意義等を説明し、理解促進を行う必要がある。その上で、日本の MICE 関係者が一丸となって MICE 誘致活動の際に統一ブランドを訴求することにより、海外の MICE 主催者に対して日本を MICE 開催地としての意味を明確に理解してもらうと共に、日本での MICE 開催の潜在需要を喚起していくことが重要となる。今後は、日本の MICE ブランドの更なる浸透に向けた取組強化が求められる。

(7)成長分野をターゲットとした国際会議誘致・開催に向けた連携
1)現状と課題
我が国では 2015 年 6 月「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」を策定し、そのなかで国際会議の誘致に関して「日本が優位性を有し、更なる発展が期待される科学、技術、医学分野を重点分野とし、当該分野に関する国際会議の誘致に集中的に取り組む」こととされた。
日本における 2006 年~2015 年分野別国際会議の開催件数推移を見ると、科学系の会議件数の伸びが 1.28 倍と一番高く、医学系 1.04 倍増、技術系 1.01 倍増と横ばいで
ある。一方、アジア・大洋州主要国における推移を見ると、科学系は 1.34 倍増、技術
系 1.52 倍増、医学系 1.47 倍増と増加傾向にある。アジア・大洋州での会議件数の伸びに比べ、我が国は同分野の会議件数の伸びは大きくなく、成長分野の会議が十分に取り込めていないという課題がある。

図 58:日本における分野別国際会議の開催件数推移(2006~2015 年)

出典:ICCA 国際会議統計を基に観光庁作成

図 59:アジア・大洋州主要国における分野別国際会議の開催件数推移(2006~2015 年)
出典:ICCA 国際会議統計を基に観光庁作成

※「ICCA2015World ranking: number of meetings per country」にランクするアジア・大洋州諸国の各年の分野別開催件数の合計をグラフ化
2)今後の方針
これらのことから、当該分野に特化した国際会議の誘致戦略を立てることが必要である。そのためには、戦略に即した誘致体制の構築と、体制強化(予算・人員・専門ノウハウ)が必要である。

(8)国際会議誘致・開催の実施体制
1)現状と課題
我が国の国際会議誘致・開催の実施体制を評価するために、国際会議誘致に成功している他の競合国の国際会議誘致体制を検証し、我が国のコンベンションビューローの分析結果を述べる。

<海外事例>
国際会議誘致における国際的な都市間の競争が熾烈を極めるなか、それぞれの国や都市は都市や地域の特徴を生かした誘致戦略を実行しており、我が国の都市が今後の誘致戦略を立てるうえで、参考にすべきである。
ここでは、各都市や国の重点分野や地域の特徴・特性を生かし、その分野に即した国際会議を集中的に誘致する施策を講じている海外事例として、大田広域市(観光)とシンガポールを挙げる。
大田広域市(韓国)では、1970 年代から科学技術都市を目指した産業振興策を展開し、公的研究機関や財閥企業の研究機関・製造拠点等が多数立地する。科学技術分野に大きな強みを持つため、国際会議等の誘致対象分野として集中的な誘致を実施するため、国際的な都市アライアンス Global science & Convention Alliance を設立した。アライアンス及びその加盟都市の科学技術分野の国際会議主催者等へのプロモーション活 動やアライアンス加盟都市で開催された国際会議に関する情報等の共有を行っている。

図 60:国際会議誘致・開催の実施体制(韓国・大田広域市)
図 61:国際的な都市アライアンスの設立

シンガポールでは、国内水技術関連産業を集中的に育成し、水ビジネスを国家としての成長産業と位置づけている。水資源関連の多数の海外企業がシンガポールに研究開発機能等を進出させ、アジア有数の水ビジネス拠点として確立されている。2008 年から水技術に関する国際会議・国際展示会<シンガポール国際水週間(SIWW*)>を毎年開催し、133 ヶ国から 2 万人規模の国際会議・展示会となっている。
*SIWW・・・Singapore International Water Week

図 62:国際会議誘致・開催の実施体制(シンガポール)

このように地域の強みを生かした分野の国際会議を集中的に誘致することで、その場所で国際会議を開催する意味・意義が明確化され、会議主催者への開催地選択時のメリット・意義を訴求しやすくなる。大田広域市(韓国)のように本来は競合都市となり得る地域・都市の特徴が似ている海外の各都市とアライアンスを組むことは、1 都市だけでは拾いきれない情報を広く収集することができる。国際会議は数年ごとに各都市や大陸を移動して開催することが多く、共通分野の会議情報を海外都市と共有化することで、当該分野の国際会議情報が一元的に入手できることで、誘致に関する人員・費用の効率化につながると考えられる。

国際会議誘致後は、国際会議の開催に関しては、国際会議を受け入れる会場、宿泊施設、飲食関連施設、移動の手段、催しものの開催など、総合的な受入体制を作ることで、会議参加者および会議主催者を満足させ国際会議開催成功に導くことが大切である。つまり、国際会議を受け入れる地域が一体となった取組が必要となる。国際会議を開催する地域が一体となり、会議参加者を受入る取組は、会議参加者および会議主催者に会議開催成功を印象付ける事ができ、その地域の国際会議開催地としての魅力向上につながる。ここでは、受入地域の事業者が連携して国際会議参加者への会議開催メニューを提供している国内・海外の事例を一つずつ挙げる。

海外の地域連携事例のとしてソウル(韓国)を挙げる。ソウル(韓国)では、MICE 参加者へ「Seoul Welcome Kit」を無償配布し、その中に MICE Card が入っている。MICE
Card は通常初期購入費が発生するところ無料となり、また T-money(電子マネー)が使用できる施設では、どこでも使用できる(使用場所例:公共交通機関、コンビニ、アミューズメントパーク等)。海外からの参加者にとって、開催地での移動や買い物の支払いが容易になり、利便性が高いサービスである。

図 63:ソウル MICE カード
国際会議開催成功を納めることにより、国際会議主催者や参加者に、その場所で国際会議を開催したメリットを感じてもらい、次の国際会議誘致につなげることができる。この一連の取組は、国際会議開催都市として知名度を上げることができるため、重要である。先に挙げた 2 都市の事例にある国際会議参加者の利便性を高める施策は非常に有効な手段といえる。
国内の地域連携事例として横浜を挙げる。横浜では、パシフィコ横浜が中心となり、横浜の民間事業者が連携して MICE 参加者への会議開催メニューを提供している。国際会議参加者が主に移動するみなとみらい地区、中華街などと連携し特定の MICE 開催時にMICE オリジナルクーポンを発行し、ワンドリンクサービスや割引を受けられる MICE 開催クーポンの発行や、観光等特典付き一日乗車券インバウンドパス(仮称)の実証実験の取組を行っている。このような会議参加者への利便を図る取組は、会議参加者にとり、会議場のなかだけにとどまること無く、会議場周辺へ周遊するきっかけになる。会議参加者が会議場の外を周遊することにより、受入地区に点在する例えば飲食店などの関連業者も会議受入の利益を感じることができる。来場者、受入側の双方にとって国際会議開催によるメリットの享受が可能となる。

図 64:みなとみらい 21 共通飲食券 図 65:横浜版インバウンドパス
世界の各都市が国際会議誘致競争を繰り広げるなか、我が国の都市も海外競合都市と差別化を図り、世界から選ばれる国際会議都市になる必要がある。国際会議を誘致するために、自治体やコンベンションビューローは地元の大学や産業界と連携し、かつ都市の魅力を国内外に伝えていくうえで、担う役割は大きい。
しかしながら今年実施したコンベンションビューローへのアンケート結果では、必ずしも我が国のコンベンションビューローが役割を実行できていないという課題が浮き彫りになっている。
海外競合都市と差別化を図っていくうえでコンベンションビューローが抱える課題として
「地元関係者の連携不足/理解不足で協力が得られない」「人員が確保できていない」といった事が挙げられる。また、コンベンションビューローの大学・学会・産業界との連携状況と課題では「連携は十分ではない、取り組んでいない」とした回答が 82%と高く、その一因として
「MICE への理解が不十分」であることが挙げられた。

図 66:海外競合都市と差別化を図っていくうえで 図 67:コンベンションビューローの大学・コンベンションビューローが抱える課題 学会・産業界等との携状況と課題
出典;観光庁 コンベンションビューローへのアンケート結果(2016 年 8 月~9 月実施)

2)今後の方針
これまで見てきたとおり、国際会議の参加者および会議主催者を満足させ国際会議開催を成功に導くためには、国際会議を受け入れる開催地の関係者が一体となった取組が必要である。しかしながら、誘致活動の司令塔である都市・コンベンションビューローと地元の大学、産業界等の連携は充分進んでなく、司令塔としての役割も充分に果たせていないのが現状だ。このことから、都市・コンベンションビューローが来場者、受入側の双方のメリットの享受を鑑みた上で、幅広い地元の関係者との連携関係の構築・強化を図ることにより、総合的な受け入れ体制の構築を目指す必要がある。
また、国際会議誘致競争においては、都市間で国際的なアライアンスの構築による情報の共有などを通じて、将来的な面も含め他の競合都市よりも誘致を有利に進めていくことも可能となる。今後我が国においても、当該都市の強みを活かした誘致力強化を促進するため、海外の先進事例を参考に、国際的なレベルでの都市間の連携・協力体制の構築を目指していくことが求められる。
更に国レベルでは、地域レベルでの活動を促進させるため、経済波及効果の算出や官民連携の横断組織の構築によるオールジャパン体制での国際会議誘致支援体制を構築していくことが求められる。

第4章 今後の政策の方向性

1.MICE 誘致の推進策における国際会議の誘致の位置付け
第2章1.(2)で述べたとおり、本レビューにおいては、MICE 誘致の推進策のうち国際会議の誘致に焦点を当てた。しかしながら、MICE 誘致の推進策は、本来は国際会議の誘致以外に企業ミーティング(M)、インセンティブ(I)、展示会・イベント(E)に対する対応策も含まれるべきであり、今後これまで以上にインバウンドを伸ばしていく観点からは、MICE 全体に対する誘致策を促進していくことが望まれる。
他方で、MICE はそれぞれ異なる性格のビジネス・イベントであることから、ただちに全てを対象に本格的な対応を展開していくことは困難が伴う。この点については、専門家パネルの中でも、各国の MICE 専門家から次のように指摘されている。
インセンティブは京都と最近伸びてきている東京を除き、日本の多くの都市はまだインセンティブ市場に対して十分な準備が出来ているとは言い難い。まずは国際会議の誘致体制を強化していくことが最優先課題ではないか。
展示会は市場環境に左右される要素が大きく、デスティネーションのセールス活動とは異なる。日本が展示会ビジネスをより伸ばしていくことは考えられるが、中国等アジア他国の取組も大きく、伸びているため、短期的な効果のみにとらわれるのではなく、長期的な視点が必要である。
企業ミーティングは、デスティネーションによって決まるのではなく、ミーティングの企画側にとっての需要と供給の主要な都市を中心に場所が選定される。このため、企業にとって日本で会議を開催する意味がある場合は日本で開催されるが、そうでない場合に日本での開催を働きかけても成果につながらず、取組みが難しい分野である。
上記のような観点から、日本はまずは国際会議以外に展示会関係者や MICE メディア等も含まれているが、日本はまずは国際会議の誘致強化が最優先課題であるという点で見解が一致している。今後国際会議以外の MICE に対する取り組みも強化していく必要があるのは当然であるが、その際も国際会議の誘致に対する取組みをさらに強化していくことがまず求められる。
本章では、政策レビューをまとめるに当たって、国際会議以外の MICE 促進策も念頭に置きつつ、これまで政府や JNTO 及びコンベンションビューローが実施してきた国際会議誘致の強化策を振り返り、今後の政策の方向性を検討することとする。
2.都市の誘致競争力の強化に向けて
(1)課題解決に積極的な都市への優先的支援
国際会議の誘致に携わる都市を強化するために、政府ではグローバル MICE 都市に対

して海外 MICE 専門家を派遣して、国際会議誘致のための戦略構築やブランド構築、ビッドペーパー作成等の国際会議誘致に係る専門スキルのトレーニング等を実施してきた。当該事業は、一定の効果を上げてきているが、第3章1.(1)で述べたように、派遣された MICE 専門家からは、国際競争の前線で誘致活動を展開していくためには、現状では関係者の経験が不足しており、専門的知見も不十分であることが指摘されている。多くの都市は人的にも予算上も資源が限られており、国際会議の誘致活動の段階で能動的な活動はあまり行えておらず、日本国内のホストが誘致したい場合に受身的に支援しているという評価を受けている。また、2015 年 10 月に ICCA 総会の場で観光庁が開催した専門家パネルの場では、ポテンシャルのある国際会議の誘致を進めていくためには、能動的に国際会議案件を発掘し、誘致活動を自らが管理していく必要があり、やる気のある国内ホストが出てくるのを待っているだけでは、機会損失のコストが大きいとの意見が出された。また、専門家パネルの参加者にはビューローや国際会議誘致に関するコンサル等も含まれているが、国際的な実態を踏まえた見解として、国内ホストによって持ち込まれた案件であっても、誘致活動は全てにおいてコンベンションビューローがリーダーシップをとって進めるべきと述べられている。このためには、コンベンションビューロー側に専門性が求められることは言うまでもない。コンベンションビューローにノウハウが集積されている都市は、他のデスティネーションに比べて大きなアドバンテージがあるが、日本のコンベンションビューローの多くは予算及び専門人材を強化する必要があるほか、サプライヤーの取り組みも他国並みに高度化させていく必要がある。
MICE 専門家の評価や専門家パネルでの議論を踏まえると、これまでの政策は、都市やコンベンションビューローの活動を国際レベルに引き上げるところにまでは十分到達できておらず、特に誘致活動をコンベンションビューローが主体的に引っ張っていくという点については、引き続き課題が残っている。
こうした問題の背景には、 都市やコンベンションビューローに十分な予算がないこと、人事異動のローテーションで MICE 担当職員が短期間で代わってしまうこと等があり、2013 年に公表された MICE 国際競争力強化委員会の取りまとめで指摘されていた課題は解決されていない。国際会議の誘致力を強化していくためには、今後も都市の強化策は引き続き必要であるが、政策の方向として予算や人事ローテーションといった課題の解決なくしては改善の効果は薄いため、こうした課題に向けて具体的に対策を講じていく都市を対象に支援することにより、課題が解決される方向に誘導していくことが必要である。

(2)JNTO の体制強化
専門家パネルでは、我が国は国内の都市間競争が激しく、この結果国際的な誘致活動の場で混乱を招いているとの指摘があった。日本として系統だって調整されたアプローチが求められているが、国際会議を誘致する都市の多い我が国においては、都市間の調

整のみに委ねていては必ずしも適切に誘致活動が進められないため、JNTO が全体を統括すべきとの意見も多く出された。これに関連して、我が国は都市間のコミュニケーションがあまりないが、誰がどのリード案件を進めているか、コストのかかる重複を避けるためにも、関係者間の調整は重要とのコメントもあり、この点に関する JNTO の役割に対する期待も大きい。従来のグローバル MICE 都市の強化策のみでは、こうした点に対する対応につながらないため、JNTO とコンベンションビューローの役割分担を明確にしていくことが必要である。国際会議の誘致における JNTO の位置付けは、これまで必ずしも対外的に示されていなかったが、国際会議誘致戦略の一環として、国レベルの司令塔としての JNTO の役割を内外に示していくことが必要であると考えられる。
また、国レベルの政府観光局は、質の高い CRM システム(Customer Relationship Management and Sales Management Database)を構築して、コンベンションビューロー側にリード案件を効率良く提供する方策を作る必要があるとの声も大きい。我が国は、
JNTO の本部、海外事務所、コンベンションビューローがそれぞれ個別のデータベースを構築しており互換性がないため、作業が非効率になっている面も否めず、関係者調整が滞ったり重複したりすることにつながっている。司令塔としての JNTO が、国際会議に関するデータベースをどのように構築し、関係者とシェアしていくかについて、方針を示すことも有効であると考えられる。

(3)ステークホルダーの組織化・ユニークベニュー活用の推進
国際会議の誘致・開催に当たっては、宿泊事業者(ホテル等)、会議運営事業者(PCO)、旅行業者、展示会・イベント事業者、運輸事業者等の民間事業者や、大学・研究機関、コンベンションビューローなど、多岐の分野にまたがるステークホルダーが関わっている。
海外ではこうした多岐の分野にまたがるステークホルダーをカバーする産業団体が存在し、対外的な啓発活動、事業者間の情報交換・連携構築、人材育成、政府等への働きかけなど、MICE 産業全体の共通の課題に対して産業界として組織的な対応を行うことを通じて、MICE 産業の振興に寄与している事例がある。
一方、我が国では、宿泊、会議運営といったそれぞれの分野毎の産業団体は存在する ものの、MICE 全体の観点から関係事業者を横断的にカバーする団体は必ずしも存在せず、結果として MICE 産業の振興に向けて、これらステークホルダーが一体的に取り組む基盤がないのが実態である。
今後、我が国の MICE 競争力を強化するためにも、我が国においても MICE 関係事業者の組織化がなされることが強く期待される。このため、国際会議誘致・開催の重要性の啓発を継続的に実施するとともに、幅広いステークホルダーが連携できる体制の構築を目指した取組が必要である
また、国際会議誘致のための重要なツールとして、ユニークベニューのより一層の開

発・利用促進が求められている。各地域の施設等をユニークベニューとして国際会議に活用するには、国際会議誘致における都市の司令塔であるコンベンションビューローのノウハウの蓄積や調整能力が求められるところであるが、主催者や施設側に対して利用情報や利用時の調整、活用に係るノウハウの提供が進んでおらず、結果として、ユニークベニューの開発・利用に繋がっていないといった状況が見受けられる。観光庁では、これまでガイドブック作成や実証支援等を実施しているが、都市の司令塔であるコンベンションビューローと連携があまり行われないまま取組が実施されていたことから、今後はコンベンションビューローと連携した取組の強化が喫緊の課題となる。
今後、ユニークベニューを日本に本格的に定着させるため、国や JNTO、コンベンションビューロー等が連携して開催実績を重ねることで、施設側・利用者側の双方に対し利用ノウハウの提供や意義・メリット等の認知度の向上を図り、開催モデルの開発を進めていくことが必要である。
3.MICE プレイヤーの強化に向けて
第3章1.(3)で都市や JNTO をはじめとして MICE に携わる関係者の人材育成の重要性を説明した。専門家パネルの場でも、ホテルや会議場の容量があるだけではビジネスを呼び込めないという点は強く指摘されており、都市は会議場等の「ハードウェア」だけでなく、地元のサービス提供者の質や経験といった「ソフトウェア」が重要であることを認識すべきとされている。具体的には国際会議等の主催者側のゴールを十分に理解し、提案内容をカスタマイズし、提供するサービスを主催者のゴールに見合ったものにしていくことができる力が必要であり、国際競争の場で活用できる専門ノウハウを中長期的に蓄積していくための人材育成プログラムが必須である。JNTO が国際会議誘致に関わる関係者向けに年に 1〜2 回のセミナーを提供しているだけでは、海外の競合国と肩を並べる専門性を身につけることは困難であり、抜本的な人材育成プログラムを練り直す必要がある。
また、海外の国際会議関係者からは、我が国の関係者はミーティング・プランナーに対して情報をあまり積極的に提供しないため、かえって不安を惹起するという点や、我が国の関係者とのコミュニケーションの過程で、必要な情報が正しく伝達されて理解されているか不明である場合が多いという点が指摘されている。これらは、我が国の関係者が国際的な競争の場での経験不足によるものとするコメントも多く、特に我が国のサプライヤーの経験不足を指摘する声も多い。こうしたことから、サプライヤーに対する人材育成プログラムについても強化していくことが求められる。本来はコンベンションビューローが地元のサプライヤーの育成を図る役割を担うが、専門家パネルからは、日本の場合はコンベンションビューローも含めて人材育成が必要と指摘されており、そのためにも JNTO が中心となって関係者のトレーニングを強化していくべきとの意見が出

されている。したがって、人材育成については、JNTO 及びコンベンションビューローそれぞれがどのような形で充実強化していくかを明らかにし、特に JNTO は人材育成の担い手をトレーニングしていくということに対しても対応していくことが必要である。
4.チームジャパンの誘致体制の構築に向けて
(1)アンバサダープログラムにおける役割分担の見直し
専門家パネルでは国内の学協会の強化も国際会議の誘致力強化に効果がある点が指摘されており、アンバサダープログラムの充実強化は有効であると考えられるが、第3 章1.(4)で述べたとおり、諸外国のアンバサダープログラムと比較すると、我が国のものは課題もある。
具体的には、アンバサダーを通じた新たな誘致案件の発掘や、国内ホストとなり得る新たなアンバサダーの発掘の件数が、諸外国に比べてまだ少ない。これまで、アンバサダープログラムは、アンバサダーに対する国際会議誘致の支援を重点的に実施してきたところであるが、併せてアンバサダーを通じた学協会等への会議開催に対する意欲の向上等啓発の強化が必要である。諸外国では、アンバサダーに対する表彰やハイレベルの関係者が参加するディナー等を通じてアンバサダーの位置付けを高める方策を講じているところであり、このような取り組みにより、アンバサダーからさらに国際会議の案件や情報の提供を受ける仕組みづくりも有効であると考えられる。
我が国のアンバサダープログラムは発足から 3 年が経過し、アンバサダーが誘致して
いた国際会議で開催地が決定された件数は 18 件(成功率約 75%)(※2017 年 2 月 28 日
時点で誘致未決定案件が 13 件あり)である。国際会議誘致件数や誘致成功率の向上のためには、現行 JNTO が提供しているアンバサダープログラムの支援メニューの充実を行うことに加え、将来のアンバサダープログラムのあり方である都市のアンバサダープログラム発足に向けて JNTO の国際会議誘致におけるノウハウをコンベンションビューローへ普及・啓発していくことが重要である。第3章1.(4)で説明した海外事例に見られるように、アンバサダープログラムは、国際会議の誘致件数を増やすための手段として活用される場合と、アンバサダーを通じた潜在的なリード件数を増やすための手段として活用される場合とがある。特に前者の場合、抱えるアンバサダーの数は数十人から
100 人を超える規模になることが多く、我が国でこうしたアンバサダープログラムを運用していくためには、国レベルでのプログラムではなく、最終的には都市によるアンバサダープログラムに移管していくことが望ましい。こうしたことから、中長期的にアンバサダープログラムをどのように発展させていくべきか、戦略を構築していくことも今後の課題である。

(2)府省連絡会議を通じた情報共有促進・支援強化
MICE の誘致・開催を強力に進めていくためには、政府全体が一体として取り組んでいくことが必要である。特に、政府自身が主催・誘致する国際会議については、主管省庁が中心となって誘致・開催に向けた取組が行われているものの、それらの情報が必ずしも一元的に把握・整理されていないため、政府系会議の誘致活動における政府内の連携、サイドイベントの戦略的活用などが十分に取り組まれていない。
在外公館等の要人によるキーパーソン(開催決定権者)への働きかけや各会議分野に応じた関係省庁による招請レター発出等の協力が求められるケースが多くあり、これらは国際会議誘致段階における有効な手段であることから、我が国の誘致活動を有利に進めるため、平成 28 年 12 月に設立した「MICE 推進関係府省連絡会議」を中心に、関係府省等との政府横断的体制を整え、誘致にかかる課題解決に向けた取組や支援体制の強化を図っていく。

(3)MICE ブランドの活用促進
一般的に、国際会議の主催者は都市を選択するのであって、国を選択するわけではないため、都市のブランディングは極めて重要である。我が国は、国としての MICE ブランドを構築しているが、都市レベルでの MICE ブランドはあまり確立されていないケースが多い。この点について、専門家パネルは、日本全体としての MICE ブランドは有効であり、都市のブランドはその傘下に位置付けられるものと考えられるとの見解が出されている。国レベルのブランドを補完するような形で都市レベルのブランドをしっかり構築していくことが求められており、特に 国際会議の誘致についてこれから本格的に国際の場で競争していく都市は、JNTO の主導のもと、国の MICE ブランドと都市ブランドを組み合わせた効果的なプロモーションの方策について調整していくことが必要である。例えば、国際会議等の見本市や商談会の場で、JNTO が自治体やコンベンションビューローと共に出展する際に、JNTO が都市のブランディングのあり方について、従来以上にきめ細かく、国の MICE ブランドとの関係も踏まえてアドバイスしていくこと等が有効であると考えられる。

5.国・都市の戦略実現ツールとしての MICE の活用に向けて
(1)成長分野をターゲットとした国際会議誘致政策
専門家パネルでは、国際会議をより成功させるためには、質の高いリード案件に集中し、もっとも重要な分野を優先させるべきという点が強調された。可能性の低い案件、インパクトの小さい案件に対して資源を割くのではなく、選択と集中により誘致活動を展開していくことが必要である。MICE 国際競争力強化委員会の取りまとめでは、我が国は「医学・科学・技術分野」を重点分野とすべきことが述べられているが、第3章1.
(7)で述べたとおり、これらの分野の国際会議開催件数の伸びは、世界全体での伸びよりも低くなっており、必ずしも重要分野の誘致活動を重点的に進められていない可能性がある。国内ホストとして日本の学協会が自ら国際会議の誘致に動いている案件については、JNTO やコンベンションビューローはニーズに応じた支援を提供すればよいが、新たに国際会議の案件を発掘して誘致を効率的に進めるためには、国としてあるいは地域として優先順位の高い分野の国際会議の誘致をターゲットとすることが重要である。そのためには、JNTO 及びコンベンションビューローは、誘致戦略の中に優先的に進めるべき国際会議の分野を明示することが必要である。

(2)海外事例を踏まえた誘致実施体制の抜本的見直し
専門家パネルに参加した多くの専門家からは、「日本でどのように国際会議誘致が進められるのかあまり理解できていない」とする声が多く聞かれており、日本の関係者が国際的なプランナーに対して、どのようにすれば日本で会議を成功させることができるかについて、より積極的に説明し支援していくことが求められている。国際会議運営会社や国際会議場、コンベンションビューロー等、国際的に活動する立場にある関係者が、国内の商習慣の説明等も含め、ていねいに関係者に説明することが重要である。こうした点からも、国際会議の誘致活動に当たっては、コンベンションビューローが全体を統括する司令塔の役割を果たし、国際的にも関係者を適切につなぐ役割となることが求められる。こうしたコンベンションビューローの役割について、関係者の理解を得る必要があり、JNTO が中心となって国際会議誘致のための体制について啓発を図っていくとともに、司令塔となることについて積極的な都市やコンベンションビューローを支援していく仕組みを構築していくことが必要となる。
国際会議誘致のための理想的な体制は、図 68 のようなものになると考えられ、今後、あらゆる関係者が一丸となって国際会議誘致の更なる発展に向けて取り組むことが期待される。
図 68:国際会議誘致・開催の体制整備

また、第3章1.(8)で述べたとおり、国際会議誘致競争においては、都市間で国際的なアライアンスを構築し、国際会議のリード情報や誘致の可能性のある国際会議等に関する情報の共有、アンバサダーや産業界のリーダーの相互ネットワークによるロビー活動等を通じて、情報やネットワークの面でその他の競合都市よりも誘致を有利に進めていくことも可能である。今後我が国においても、海外の先進事例を参考
に、当該都市の強みを活かした誘致競争力を強化するため、国際的なレベルでの都市間の連携・協力体制の構築を目指していくことが求められる。

6.国際会議の誘致以外も含めた MICE 促進策の本格始動に向けて
我が国の MICE 促進策としては、本章の冒頭に述べたとおり、国際会議誘致について、国際的に競争できる体制を構築していくことが喫緊の課題となっている。国際会議誘致はこれまでの施策の積み重ねもあり、MICE 促進策の中でも比較的早い段階での効果出現も期待できることから、まずはこれを最優先に取り組んでいくこととする。その上で、今後のインバウンドのさらなる拡大を目指していくためには、国際会議以外の MICE に対する取り組みの強化が重要な課題であり、今後これらを積極的に推進していく必要がある。専門家パネルでは、国際会議誘致以外についての対応策のポイントについても触れており、今後の MICE 全体の促進策の参考になるため、最後にこれらについても今後の方向性を示すこととする。

(1)インセンティブ
インセンティブは、単なるグループ・ツアーではなく、参加者に対していかに特別感を出したプログラムにできるかが重要な要素となるが、専門家パネルでは、我が国においてはインセンティブに必要な要素について必ずしも十分に理解されていないと指摘されており、トレーニングが必要である。
なお、本章 3.で述べたとおり、国際会議誘致について人材育成が必要であるが、インセンティブのためのプログラムや誘致策は、国際会議と同一ではないため、インセンテ ィブに特化した専門的知見の習得が必要となる。我が国に MICE で来訪する外国人旅行者のうち、インセンティブによる来訪者は国際会議による来訪者よりも多いことからも、インセンティブに向けた対応強化は、今後一層重要になってくる。

(2)展示会
IAEE(International Association of Exhibitions and Events)の CEO であるデイブ・デュボワ氏によると、Certified Exhibition Manager (CEM)という資格を保持していることは、世界の展示会主催者に対して安心感を与えるとのことである。展示会業界についても、専門性について資格認定されたサプライヤーと仕事をすることによる安心感が重要であると言える。中国は国家が補助金を出して資格保有者を増やしており、現在 800 人程度になっていると言われている。
専門家パネル参加者によると、アジアにおいては、台湾、タイ及びシンガポールが展示会に対して積極的な政策や戦略を持ち、展示会ビジネスを拡大するための活動を展開してきている。我が国の展示会産業の規模は、アジアにおいては中国に次いで第 2 位と
なっているが、中国の展示会産業の規模は我が国の 4 倍以上である。展示会産業の規模はGDP に比例すると言われるが、中国のGDP は我が国の2 倍程度であることを考えると、我が国はもっと展示会産業の規模を拡大できる余地があるはずである。我が国において 展示会を拡大していく際は、これらアジアの国々の動向を十分に踏まえる必要があろう。

その場合、展示会のプロデューサーがアジアやそれ以外の地域でどのような分野の展示会を開催しているかについて、データベースを構築し、特定分野の展示会プロデューサーに照準を当てた戦略も必要になってくると専門家パネルは指摘している。

(3)企業ミーティング
企業ミーティングは他のMICE よりも短い期間で開催が決定される傾向にあり、また、開催地は企業側の事情で決定されるため、必ずしもデスティネーションマーケティングで誘致するとは言えない面もある。このため、インセンティブや国際会議と比べて、企業ミーティングの誘致は一層ハードルが高い。専門家パネル参加者からは、この段階で企業ミーティング誘致に焦点を当てるのはかえって効率が悪いと指摘されている。このため、インセンティブや国際会議の誘致力を高める過程で、MICE デスティネーションとしての日本の認知度を上げていくアプローチが必要である。

(4)MICE 業界全体の横断的組織の構築
第3章1.(8)で述べたとおり、海外の MICE 主要国には、MICE 業界の横断的な組織があり、MICE の質的向上や啓発普及を図り、政府や自治体等に対して政策提言を行っている。我が国においては、コンベンションビューローや会議運営会社、展示会主催者等、
MICE の個別のプレイヤーごとの組織は存在しているが、MICE 全体の位置付けを高めていくためにも、MICE 業界横断的な組織の構築を進めていくことが求められる。JNTO が今後国レベルの司令塔としての役割を果たすべく体制を強化していくことと併せて、JNTO が横断組織の要となって、幅広い組織の構築を進めていくことを検討することが望ましい。